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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】材料の巻き出し
(51)【国際特許分類】
   B65H 49/18 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B65H49/18
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020520318
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018078604
(87)【国際公開番号】W WO2019081347
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】62/575,589
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1719981.1
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504132032
【氏名又は名称】ヘクセル コンポジッツ、リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】503308494
【氏名又は名称】ヘクセル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリス、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロッチザーノ、アントニー
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-135376(JP,U)
【文献】実公昭42-021585(JP,Y1)
【文献】特開2000-350538(JP,A)
【文献】実公昭48-004195(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0084098(US,A1)
【文献】特開2007-326658(JP,A)
【文献】特開2005-262595(JP,A)
【文献】特開平03-239420(JP,A)
【文献】特開昭56-009133(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03343285(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 49/18
D05B 47/00
A61K 59/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールから材料を巻き出す方法であって、前記巻き出しの最初の接触点での離脱角度は、常に0±20°の範囲内にあり、前記巻き出しの最初の接触点は、スプールの回転軸線から600mm以下であり、
前記スプールは、前記巻き出しの最初の接触点に対して横方向に移動できるハンモックタイプの支持体内に配置され、前記スプールは、前記巻き出しの最初の接触点に対して横方向に往復運動する、方法。
【請求項2】
前記材料は、繊維、テープ、およびマルチフィラメントトウから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料は、最大毎分50メートルの速さで巻き出される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記巻き出しの最初の接触点は、前記スプールの回転軸線に対して横方向に移動しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スプールの横方向の往復運動は自由運動である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スプールの横方向の往復運動は、前記材料の巻き出しによって駆動される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記スプールの往復横方向運動の速度、巻き出し中の前記スプールの回転速度、および前記巻き出しの最初の接触点での巻き出された材料の移動速度が同期され、前記材料を損傷することなく均一に巻き出すことができるように、巻き出し材料に適切な張力がかかることを確実にする、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記同期はコンピュータ制御される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記巻き出された材料は熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂で含浸される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記含浸は前記巻き出しと連続的である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記含浸材料は成形されて複合物品を形成する、請求項または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
型への前記含浸材料の導入は前記含浸と連続的である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
スプールが回転可能に取り付けられ得る軸と、前記軸から600mm以下に位置する巻き出された材料の静止した最初の接触点とを含み、前記巻き出しの最初の接触点での離脱角度は、常に0±20°の範囲内にあり、
前記スプールが前記巻き出しの最初の接触点に対して横方向に移動できる前記スプール用のハンモックタイプの支持体を備え、前記スプールは、前記巻き出しの最初の接触点に対して横方向に往復運動するようになっている、スプールから材料を巻き出すための装置。
【請求項14】
前記材料は、最大毎分50メートルの速度で巻き出されるようになっている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記巻き出しの最初の接触点は、前記スプールの回転軸線に対して横方向に移動しないようになっている、請求項13または請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記スプールの横方向の横方向運動が自由運動であるようになっている、請求項13~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記スプールの横方向の横方向運動が、前記材料の巻き出しによって駆動されるようになっている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記スプールの往復横方向運動の速度、巻き出し中の前記スプールの回転速度、および前記巻き出しの最初の接触点での巻き出された材料の速度が同期され、前記材料を損傷することなく均一に巻き出すことができるように、巻き出し材料に適切な張力がかかることを確実にするようになっている、請求項1317のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記同期がコンピュータ制御されるようになっている、請求項18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプールなどのコアからの材料の巻き出しに関する。特に、巻き出し後にレイアップされる材料の巻き出し、特に、樹脂を含浸させて型内にレイアップさせ、型内で硬化される材料の巻き出しに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、任意の線状材料の巻き出しに関して有用であり得るが、繊維、テープ、およびマルチフィラメントトウ(例えば、後に繊維強化複合材料の生産で使用されるカーボンまたはガラス繊維のマルチフィラメントトウ)の巻き出しに関して特に有用である。そのようなマルチフィラメントトウは、しばしばスプールに巻かれた状態で供給され、使用するために巻き出され、その後、熱硬化性または熱可塑性のいずれかの樹脂組成物で含浸され、続いて成形および硬化操作に供されて繊維強化物品を製造する。
【0003】
マルチフィラメントトウは、複合物品を形成するために使用され得る。トウは、未硬化または部分的に硬化した形態で熱硬化性樹脂組成物を含浸させるか、または熱可塑性組成物を含浸させることができる。このように含浸されたマルチフィラメントトウなどの繊維の層は、プリプレグとして知られている。プリプレグは、通常、プリプレグの複数の層として、型内にレイアップされ、その中で硬化されて、複合物品を形成し得る。あるいはまた、マルチフィラメントトウをバッグなどの容器内の型内にレイアップさせることができ、液体熱硬化性樹脂を、おそらくは真空下でバッグに注入することができ、これによってマルチフィラメントトウに含浸させ、その後、樹脂を硬化して完成した複合物品を製造することができる。
【0004】
そのような手順では、繊維またはマルチフィラメントトウは、それらが以前に巻き付けられたスプールから都合よく提供される。次に、そのような巻かれた繊維およびトウは、しばしば含浸、レイアップ、および成形の連続プロセスの一部として、スプールから巻き出され、複合物品を製造することができる。
【0005】
繊維は、マルチフィラメントトウであろうと個々の繊維であろうと、通常は輸送のために回転コアまたはスプールに巻き付けられる。それらは通常、スプールの長さに沿って繊維またはマルチフィラメントトウの均一または実質的に均一な分布を提供するために、またそれがスプールに沿って堆積されるときにそれが層状に構築されるときに繊維またはマルチフィラメントの質量内に繊維またはマルチフィラメントトウの均一または実質的に均一な分布を提供するために、スプールの端部から端部まで巻き付けられる。
【0006】
したがって、巻き出し動作は、巻き付けパターンに合わせてスプール全体で往復実行されなければならない。しかしながら、この従来の巻き出しは、スプールの長さにわたって材料がスプールから取り出される角度にばらつきをもたらす。例えば、巻き出しが中央の位置から行われる場合、スプールからの取り出し角度は約90°であるが、材料がスプールの中心から巻き出されると、角度はスプールの両端部で90°よりかなり小さくなる。材料がスプールに沿って移動するときに材料が取り外される角度は、スプールの長さとスプールの表面からの取り出し点の距離によって変動する。したがって、材料が巻き出されるにつれて、角度、したがって材料の張力が変動する。
【0007】
この取り出し角度の変動は、スプールから引き出されるときに繊維またはマルチフィラメントトウに作用する力に変動を生じさせ、繊維またはマルチフィラメントトウ内に変動を生じさせる。具体的には、繊維トウが巻き出されているコアの中心からいずれかの端部に移動するにつれて張力が増加し、端部で張力が最大になる。繊維トウが巻き出しているコアの他方の端部へ向かって移動するように方向を変えると、巻き出しの鋭角によって作成されたこの張力がトウに作用して、繊維トウ自体が転がり、繊維トウにねじれができるような環境を作り出し、これは偽ねじれとしても知られている。マルチフィラメントトウが使用される場合、トウ内のフィラメントは一般的に互いに平行であり、トウの1つの重要な特性は、トウ内の繊維の分布が、樹脂による繊維の所望の程度の含浸を達成できるようなものであることである。しかしながら、上述のように、巻き出し中に繊維またはマルチフィラメントトウが受ける力の変動は、偽ねじれを引き起こし、繊維または繊維の分布を歪め、および/またはトウの広がりを制限し、トウの大部分と同じように均一には広がらず、樹脂の含浸と分布が不均一になり、最終的にはプリプレグのギャップとプリプレグから製造された複合製品の欠陥をもたらす可能性がある。
【0008】
巻き出しの別のプロセスでは、巻き出された材料の最初の接触点がスプールに沿って横方向に前後に移動し、これによって材料がスプールの長さに沿ってどこでもほぼ90°の角度で巻き出される。しかしながら、トラバースの各々の端部で、巻き出しが発生する方向を逆にする必要がある。ここでも、方向の変化点で、繊維またはマルチフィラメントトウに異なる力が加えられ、再びトウ内の繊維または繊維の分布が邪魔され、これにより、偽ねじれの付与など、同じ問題を引き起こす。
【0009】
スプールが最初の接触点に対して機械的に往復運動し、離脱角度が実質的に0°であるMcCoy Machinery Co Inc.から入手できる巻き出しシステムなど、繊維がスプールから引き出される最大角度を低減することにより、これらの問題を低減する試みが行われている。しかしながら、これが達成されるためには、スプールの表面と巻き出しの最初の接触点との間の距離を増加させる必要があり、これは、容易にまたは経済的に利用できるよりも多くのスペースを巻き出し装置に必要とするため、非実用的であることが判明した。さらに、このアプローチは、スプールの表面と最初の接触点との間に長い距離を必要とし、スプールと最初の接触点との間の繊維またはトウの損傷および/または破壊のリスクを増大させる。また、これらの手法では、スプールを往復させるための電動式駆動装置を用意する必要があり、これは複雑でコストが掛かる。また、連続繊維レイアップ操作におけるマルチフィラメントトウによる偽ねじれの克服におけるそのようなシステムの価値は認識されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、この問題に対処すること、および/または一般的に改善を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲のいずれかに規定された方法および装置が提供される。
【0012】
本発明は、スプールから材料を巻き出す方法であって、前記巻き出しの最初の接触点での離脱角度は、常に0±20°の範囲内にあり、前記巻き出しの最初の接触点は、スプールの回転軸線から600mm以下である方法を提供する。
【0013】
本発明はさらに、スプールが回転可能に取り付けられ得る軸と、軸から600mm以下に位置する巻き出された材料の静的な最初の接触点とを含み、巻き出しの最初の接触点での離脱角度は、常に0±20°の範囲内にある、スプールから材料を巻き出すための装置を提供する。
【0014】
この用途において、巻き出しの最初の接触点は、巻き出された材料が静止ローラーまたは駆動ローラー、アイレット、またはコームなどの表面に最初に接触して、巻き出し材料の所望の位置および方向を提供する位置を指す。材料がスプールの軸に対して90°の角度でスプールから取り出されるように(つまり、材料が巻き出される位置と最初の接触点との間の距離が可能な限り短くなるように)、材料がスプールから巻き出しの最初の接触点に移動するとき、巻き出しの最初の接触点での離脱角度は0°として定義される。したがって、最初の接触点での離脱角度は、巻き出し材料が、最初の接触点と材料が巻き出されるスプールの軸との間の垂線に対して測定された最初の接触点に到達する角度である。この角度には、名目上、スプールの一方の端部で正の値が与えられ、スプールの他方の端部で負の値が与えられる。
【0015】
巻き出しの角度が0±20°の範囲にある場合、本発明の方法および装置は、繊維、テープ、およびマルチフィラメントトウを、最高毎分50メートルの速度でスプールから巻き出し、偽ねじれの減少または排除を含む、繊維、テープ、トウ、およびトウ内のフィラメントの歪みを大幅に減少させることができることを我々は発見した。これは、スプールが巻き出しの最初の引き出し点に対して横方向に前後に移動し、好ましい実施形態では、最初の引き出し点が固定されている場合に、特に達成され得ることを我々は発見した。したがって、本発明の方法および装置では、スプールは、巻き出しの最初の接触点に対して横方向に往復運動できるように取り付けられることが好ましい。スプールの横方向の往復運動は、機械的に駆動されてもよく、または、好ましくは、スプールの運動は自由運動である。例えば、横方向の往復運動は、材料の巻き出しからの力により駆動される。これは特に有利である。なぜなら、スプールの横方向の往復運動が、スプールからの材料の巻き出しによって駆動されるとき、スプールの運動は、材料の巻き付けの不規則性を考慮するように自動的に調整されるからである。例えば、巻き方向が反転する前に、巻き付けられた材料が常にはスプールの端部に到達しない場合、巻き方向が変わると、巻き方向が変化する通常の位置に留まるのではなく、スプールの横方向の運動が変化し、したがって、スプールの横方向の運動は常に、巻き出された材料が最初に巻き付けられた方向と常に一致したままである。
【0016】
スプールの横方向の往復運動は、任意の適切な方法で達成できる。好ましくは、スプールの横方向の往復運動は、材料の巻き出しによってのみ駆動される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、巻き出しの最初の接触点は、スプールの回転軸線から400mm以下である。実用上の理由から、ほとんどの場合、巻き出しの最初の接触点と回転軸線との間の最小距離は少なくとも100mmである。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、巻き出しの最初の接触点での離脱の角度は常に0±10°の範囲にある。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、巻き出しの最初の接触点は、スプールの回転軸線に対して横方向に移動しない、すなわち、最初の接触点は、左右に移動しない。巻き出しの最初の接触点はまた、スプールの回転軸線に向かって、またはスプールの回転軸線から離れて移動しないことも好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、巻き出しの最初の接触点は垂直に動くことができるが、巻き出しの最初の接触点とスプールの回転軸線との間の距離が変化しないことが特に好ましい。本発明の特に好ましい実施形態では、巻き出しの最初の接触点の位置は静止している。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態では、スプールの運動方向が、その回転の軸に沿うように、スプールは、巻き出しの最初の接触点に対して横方向に(laterally)、すなわち横方向に(transversely)移動できるハンモックタイプの支持体内に配置されてもよい。繊維材料をスプールから巻き出す動作は、ハンモック内でスプールの横方向の動きを開始し、これによって巻き出し角度を維持するようにスプールが動く。ハンモック支持体の表面は、ハンモックの表面と繊維材料によって提供されるスプールの表面との間の所望の程度の摩擦を達成して、繊維を損傷することなく、所望の速度でスプールの運動を確実にするように選択する必要がある。カーボンまたはガラス繊維のマルチフィラメントトウで使用するのに適した材料の例には、Taconic Wildcat UKから入手可能な標準グレード7058 TygadurなどのPTFEコーティングされたガラスクロスが含まれる。
【0021】
スプールの自由運動を採用する本発明の代替の好ましい一実施形態では、スプールは、スプールがマンドレルに沿って前後に自由に移動できるように、マンドレルによって提供される軸に回転可能に取り付けられる。ここでも、取り付けは、スプールとマンドレルの間の摩擦が、スプールがマンドレル上を自由に往復できるようなものでなければならない。この実施形態では、スプールの軸は、マンドレルの回転軸線である。
【0022】
本発明のさらに別の好ましい一実施形態では、スプールはマンドレルに固定して取り付けられており、マンドレルはスプールと共に、巻き出しの最初の接触点に対して横方向に往復移動することができる。
【0023】
スプールの自由運動を採用する本発明の特定の一実施形態では、スプールは、マンドレルが内側シリンダーに沿って前後に自由に移動するように内側シリンダーに回転可能に取り付けられたマンドレルに取り付けられる。この実施形態では、好ましくは、マンドレルは中空であり、内側シリンダーの周りに配置することができ、材料がスプールから巻き出されるときにシリンダーの長さに沿って軸方向にマンドレルの動きを往復させる手段が提供される。ここで、スプールの軸はシリンダーの軸である。この実施形態では、マンドレルの動きを往復させる手段は、シリンダーの表面の周りに螺旋状に延びる溝、好ましくは2つの溝を含むことができ、それによってマンドレルの内面に設けられたキーを溝内に配置することができる。したがって、繊維、テープ、またはトウがスプールから巻き出されると、繊維、テープ、またはトウの張力は、キーに力が伝達され、それをらせん状溝内に移動させ、次いでマンドレルをシリンダーの外側に沿って軸方向に前後に移動させるようにマンドレルに力を及ぼす。通常、2つのらせん状溝がシリンダーの表面に設けられているため、第1の溝によってマンドレルはシリンダーの軸に沿って一方向に移動し、第2の溝によってマンドレルはシリンダーの軸に沿って反対方向に移動する。したがって、マンドレル上のスプールは、材料の巻き出しの力により、内側シリンダーに対して動かされる。スプールが回転すると、すべてが内側シリンダーのらせん状のキー溝のキーによって制御されるそのマンドレル上のスプールの前後左右の動きを駆動し、これによって巻き出しは繊維状材料の巻き付けパターンと一致し、したがって巻き出されるときの繊維状材料の張力の制御は、キー溝の摩擦力の制御によって提供される。
【0024】
この実施形態の別の形態では、キーはスプールの内面に設けられてもよい。しかしながら、キーは、好ましくはマンドレルの内面に提供され、マンドレルは、スプールがマンドレルの外側の周りに取り付けられることができるように設計される。このようにして、各スプールに特別な構造を必要とせずに、1つのマンドレルを多数のスプールの巻き出しに使用できる。また、これによって、本発明は、厚紙などの典型的なより弱い材料のスプールを使用して実行されることが可能になる。
【0025】
本実施形態で使用する材料の選択は、キーがらせん溝内に保持され、キーまたはシリンダー、またはシリンダーに形成された溝のいずれかに損傷を与えることなく溝内を自由に運動することができるようにすべきである。
【0026】
上記の実施形態はすべて、スプールからの巻き出し点が、材料が巻き出されるスプール上の位置に関係なく、巻き出された材料の最初の接触点と実質的に一直線に維持されることを可能にし、これにより、巻き出されたまたは巻き出し材料における偽ねじれの発生が減少または排除される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、スプールの往復運動の速度、巻き出し中のスプールの回転速度、および巻き出しの最初の接触点での巻き出された材料の移動速度は、材料を損傷することなく均一な巻き出しを可能にするために巻き出し材料に適切な張力が確実に存在するように同期される。そのような同期は、コンピュータ制御することができる、および/または適切な場合には、内側シリンダーのらせん状キー溝のピッチから制御することができる。適切な速度は、材料の性質に依存し、巻き出しが連続製造プロセスの一部である場合、速度は、後続の製造プロセスで必要な速度と一致することが好ましい。
【0028】
本発明の方法はコンピュータ制御することができ、本発明の装置には、巻き出しプロセス中にスプールの経路をたどってスプールがその移動中に安定に保たれるようにするセンサを設けることができる。
【0029】
本発明では、所望の速度で材料をスプールから巻き出すための手段が提供され、これらは、巻き出しの最初の接触点自体に配置され得るか、または最初の接触点の下流に配置され得る。ニップ点または従動ローラーなど、スプールから材料を巻き出すための任意の適切な手段を使用することができる。したがって、巻き出しの最初の接触点は、ニップ点または従動ローラーなどの回転面、または固定シリンダーおよびアイレットまたはコームなどの静止面であってもよい。
【0030】
本発明は、繊維またはテープなどのスプールからの任意の材料の巻き出しに適用することができる。しかしながら、それはマルチフィラメントトウ、特に炭素、ガラスまたはアラミド繊維のそのようなトウの巻き出しに特に有用である。マルチフィラメントトウは、トウ内で互いに実質的に平行に配置された数千の非常に小さい繊維から構成され得るトウを含む。典型的には、トウ内のフィラメントの数は、1,000~12,000~50,000以上の範囲であり得る。約12,000の炭素フィラメントのトウはHexcelから、約24,000の炭素フィラメントのトウはTorayから、約50,000の炭素フィラメントのトウはZoltekから入手できる。本発明で巻き出すことができるテープは、含浸された繊維、例えば、トウプレグまたはスリットテープなどの任意の比較的狭い幅の材料(すなわち、スプールの長さに沿った異なる位置でスプールの周りに巻き付けることができる材料)を含む。
【0031】
本発明は、繊維トウが最高90重量%の一方向繊維を必要とする低重量製品の製造に使用される場合に特に有用である。なぜなら、それらの製造のための多くのプロセスにおいて、トウ内の繊維は、樹脂含浸の前にばらばらにする必要があり、以前の巻き出しプロセスを使用したときに発生した繊維の偽ねじれまたは歪みにより、拡散と含浸が困難になり、時には不可能になるからである。さらに、偽ねじれは、繊維またはトウから製造される最終製品に欠陥をもたらす可能性がある。したがって、本発明の方法は、好ましくは、巻き出された材料が熱可塑性または熱硬化性樹脂で含浸されるステップを含み、さらにより好ましくは、含浸は巻き出しと連続的である。本発明の好ましい実施形態では、含浸材料を成形して複合物品を形成し、さらにより好ましくは、型への含浸材料の導入は、含浸と連続的である。本発明が特に有用である別の用途は、繊維またはトウが織製品に使用され、偽ねじれが製織プロセスを損ない、また、完成した織製品に欠陥をもたらす可能性がある場合である。
【0032】
本発明が有用であることが判明したさらに別の用途は、トウまたはテープがスプールから取り出されてレイアップ面に連続的に供給され、レイアップの前または後に樹脂を含浸させ、最終的に硬化させる自動繊維配置機などの自動テープレイアップの様々な形態などの連続処理技術におけるものである。他の用途の中でも、これらのプロセスは、自動車および航空宇宙部品の製造や、風力タービンブレードの製造に使用されている。
【0033】
好ましい繊維は、炭素繊維およびガラス繊維である。ハイブリッドまたは混合繊維系も想定され得る。ひびの入った(すなわち、伸びて壊れた)繊維または選択的に不連続な繊維の使用は、連続的な物品の製造プロセスにおける製品のレイアップを容易にするために有利である可能性がある。低繊維面積重量の典型的な繊維強化材内の繊維の表面質量は一般的に10~80g/mであり、より従来のプリプレグでは一般的に80~600g/mであり、より重量の大きい工業タイプのプリプレグでは300~4000g/mである。好ましくは、低繊維面積重量プリプレグおよび従来のプリプレグについては、それぞれ10~70g/mおよび100~600g/mであり、特に好ましくは、低繊維面積重量および従来のプリプレグで、10~35g/mおよび100~300g/mである。トウ毎の炭素フィラメントの数は、1,000~320,000、やはり好ましくは3,000~160,000、最も好ましくは6,000~48,000で変動し得る。ガラス繊維補強材には、600~2400texの繊維が特に有用である。
【0034】
本発明が有用である例示的な単方向繊維トウは、Hexcel Corporationから入手可能なHexTow(登録商標)炭素繊維から作製される。単方向繊維トウの製造に使用するのに適したHexTow(登録商標)炭素繊維には、それぞれ6,000または12,000フィラメントを含み、重量が0.223g/mと0.446g/mであるトウとして利用可能なIM7炭素繊維、12,000フィラメントを含み、重量が0.446g/m~0.324g/mのトウとして利用可能なIM8~IM10炭素繊維、12,000フィラメントを含み、重量が0.800g/mで、最大80,000または50,000(50K)のトウで利用可能なAS7炭素繊維が含まれる。トウは、通常、3~7mmの幅を有し、これは、本発明の方法および装置を使用してスプールから巻き出され、その後、トウを保持し、それらを平行かつ一方向に保つために通常コームを使用する機器での含浸のために供給され得る。
【0035】
本発明に由来する巻き出された材料がその後樹脂で含浸される場合、使用される樹脂は典型的には熱硬化性樹脂である。適切な樹脂の例は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、およびビスマレイミド樹脂である。プロセス温度で低粘度の樹脂が好ましい。好ましい樹脂は、ホットメルトエポキシ樹脂であり、含浸は、所望の粘度の樹脂を提供する最適温度で行われる。通常、樹脂には硬化プロセスを促進する活性剤が含まれており、活性剤は促進剤としばしば併用される。ジシアンジアミドは、尿素ベースの促進剤と併用され得る典型的な活性剤である。使用されるべき活性剤とエポキシ樹脂の相対量は、樹脂の反応性と繊維強化材の性質および量に依存する。典型的には、エポキシ樹脂の重量を基準にして、0.5~10重量%の尿素ベースの硬化剤または尿素誘導硬化剤が使用される。
【0036】
巻き出された材料が樹脂で連続的に含浸される連続プロセスにおいて、本発明を使用するときに使用されるべき巻き出しの速度は、樹脂の流れが巻き出された材料の所望の程度の含浸をもたらすように、使用されるプロセス温度およびその温度での含浸で使用される樹脂組成物の粘度、ならびに樹脂組成物による材料の含浸に使用される他の条件によって決定され得る。好ましい樹脂は、0.1Pa.s~100Pa.s、好ましくは6~100Pa.s、より好ましくは18~80Pa.s、さらにより好ましくは20~50Pa.sの粘度を有する。樹脂含有量は、硬化および成形後に複合物品が樹脂の20~50重量%、より好ましくは21~47重量%、さらにより好ましくは22~45重量%、最も好ましくは30~40重量%を含むようなものであることが好ましい。本発明で使用される巻き出し速度は、これらの要件に従って調整することができる。
【0037】
含浸に使用される樹脂がエポキシ樹脂材料成分またはエポキシ樹脂である場合、それはビスフェノールAの市販のジグリシジルエーテルのいずれかから、単独または組み合わせて選択することができ、このクラスの典型的な材料にはGY-6010(Huntsman Advanced Materials、ダックスフォード、イギリス)、Epon 828(Resolution Performance Products、ペルニス、オランダ)、およびDER 331(Dow Chemical、ミッドランド、ミシガン州)が含まれる。
【0038】
このビスフェノールAエポキシ樹脂成分は、好ましくは、全樹脂マトリックスの30~50%w/wを構成し、残りは、異なる熱硬化性樹脂成分材料および/または熱可塑性材料および/または任意の他の既知の樹脂マトリックス成分(例えば、硬化剤(例えば、ゴム材料))とすることができる。
【0039】
好ましいエポキシ樹脂は、150~1500の範囲のエポキシ当量(EEW)、好ましくは200~500の範囲のEEWなどの高い反応性を有する。適切なエポキシ樹脂は、単官能性、二官能性、三官能性、および/または四官能性エポキシ樹脂から選択される2つ以上のエポキシ樹脂の混合物を含み得る。
【0040】
本発明は、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】a)からc)は、巻き出しがスプールの表面を横切る従来技術の方法における巻き出しのシーケンスを示す。
図2】本発明が関係する巻き出しの角度および距離を示す概略図である。
図3】本発明の概略図である。
図4】巻き出し中のスプールの運動を方向付けるために内側シリンダー上に交差するらせん溝を使用する本発明の一実施形態を示す。
図5】スプールの運動を駆動するために図4のシステムでキーが使用され得る方法を示す。
図6図5の配置で使用され得るキーの構造を示す。
図7図4および図5のシステムの動作を示す。
図8図4および図5のシステムの動作を示す。
図9a図4図8に示されるらせん状溝によって制御されるときの巻き出しの位置を示す。
図9b図4図8に示されるらせん状溝によって制御されるときの巻き出しの位置を示す。
図9c図4図8に示されるらせん状溝によって制御されるときの巻き出しの位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、スプール(2)から繊維(1)を巻き出し、その軸(3)を中心に回転させる従来技術の方法を示し、繊維は、巻き出しの最初の接触点であるアイレットまたはコーム(4)を通して離脱される。図1aは、スプールの中点で、表面に対して直角に取り出されている繊維を示している。この位置では、巻き出された繊維の最初の接触点での離脱角度は0°である。図1bは、繊維がスプールから巻き出されるときに、繊維がスプールの表面に沿って移動し、スプールから取り出される角度(a)をどうやって変更するかを示している。図1bでは、巻き出された繊維の最初の接触点での離脱の角度は(90-a)°であるため、繊維が取り出された位置がスプールに沿って移動すると、最初の接触点での離脱の角度が増加することが分かる。スプールの一端からの取り出しと他端からの取り出しを区別するために、この角度には、スプールの一端での正の値と、スプールの他端での対応する負の値が割り当てられる。例えば、図1bの角度aが60°である場合(繊維の最初の接触点での離脱角度が30°である場合)、この点での離脱角度は+30°と呼ばれ、スプールの他端の対応する位置での離脱角度は、-30°と呼ばれる。これらの離脱角度の変化により、繊維は局所的な力、ならびに引張応力にさらされる。理解を容易にするために、繊維は2本のストランドを有するものとして示されているが、それは多数の繊維を有するマルチフィラメントトウであり得る。図1cは、繊維の移動方向が変わると、個々の繊維が互いにねじれて、望ましくない偽ねじれと呼ばれるものを形成する可能性があることを示している。
【0043】
図2は、本発明が関係する巻き出し方法および装置の寸法の図である。図2では、1aは巻き出しの最初の接触点(4)の真向かいにある第1の位置から繊維が巻き出されていることを示し、1bはスプール(2)の長さに沿った第2の位置から繊維が巻き出されていることを示し、dはスプールの回転軸線と巻き出しの最初の接触点との間の距離である。Θは、巻き出しの最初の接触点での離脱角度である。したがって、1aとして示されている位置で繊維が巻き出される場合、最初の接触点での繊維の離脱角度は0になり、1bで示されている位置で繊維が巻き出される場合、最初の接触点での離脱角度はΘになり、(スプールの他方の端部に向かう同等の位置に対して逆の数字をもつ)正または負の値を割り当てることができる。本発明では、角度Θは0±20°の範囲内に留まるべきである。
【0044】
図3a~図3dは、本発明の巻き出し方法および装置を概略的に示す。符号5で示されるスプールは、異なる位置で示される各図の同じスプールである。市販の装置の一部となるスプール支持、駆動、および制御機構は図示されていない。図3は、繊維状材料(6)が巻かれたスプール(5)を示している。材料(6)は、スプール(5)から巻き出され、巻き出しの最初の接触点であるアイレットまたはコーム(7)に渡される。繊維は、図示されないアイレットまたはコームを越えて駆動装置によって取り除かれる。図3aは、矢印(9)で示される方向に回転しているスプール(5)の一端部(8)からの巻き出しを示している。スプールは、図3aに示す位置から、図3bおよび図3cに示す矢印(10)で示す方向に移動し、図3dに矢印(11)で示すように反対方向に移動する。このようにして、図3b、図3c、および図3dに示すように、繊維状材料は、スプールの長さに沿った異なる位置からではあるが、実質的に同じ角度でスプールから引き出され続ける。巻き出しは、スプールの連続的な往復運動によって継続するため、巻き出しはスプールの表面に対して約90°で継続し、巻き出しの最初の接触点での離脱角度は約0°のままである。
【0045】
図4は、厚紙スプール(13)上の繊維状トウ(12)が、らせん状溝(16)および(17)が設けられたシリンダー(15)上に移動可能に配置できる中空マンドレル(14)の周りに取り付けられている一実施形態を示す。
【0046】
図5は、図4の中空マンドレル(14)の内面にキー(18)が存在し、内側シリンダー(15)に形成されたらせん状溝(16)および(17)にキーをどのように挿入することができるかを示す。
【0047】
図6は、らせん状溝にキー止めするために使用することができる歯部を備えたキー(18)を示す。
【0048】
図7および図8は、スプール(13)からの繊維(19)の引き出しにより、繊維の引き出し角度はほぼ同じままで、マンドレル(14)が図7に示されるような右端(20)から図8に示されるような左端(21)にどのように移動するかを示している。
【0049】
図9a、図9b、および図9cは、らせん状溝(16および17)と、巻き出しの最初の接触点であるアイ(22)への繊維(19)の巻き出しに使用できるパターンを示す。
【0050】
したがって、図4図9に示すように、らせん(16、17)は、巻き出されたスプール(13)上の繊維状材料(12、19)の巻き付けパターンに一致するように、内側シリンダー(15)の表面に切り込まれている。マンドレル(14)は、らせん状溝(16、17)がキー溝として機能するように、らせん状溝(16、17)内に配置するキー(18)を内面に有する。このようにして、繊維状材料(12、19)が巻き出されてスプール(13)から引き離されると、スプール(13)が回転し、それが回転すると、それはマンドレル(14)上のスプール(13)の前後運動を駆動する。運動は、キー(18)と内側シリンダー(15)の表面上のらせん状溝(16、17)の相互作用によって制御される。このようにして、巻き出しは、繊維材料(12、19)の巻き付けパターンと一致し、したがって、キー溝摩擦力の制御によって提供される、巻き出されるときの材料の張力の制御が存在する。
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図2
図3a-3d】
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c