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特許7209726アミノピリミジンおよびその中間体の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】アミノピリミジンおよびその中間体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20230113BHJP
   C07D 213/61 20060101ALI20230113BHJP
   C07C 233/58 20060101ALI20230113BHJP
   C07C 231/02 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C07D401/14
C07D213/61 CSP
C07C233/58
C07C231/02
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020535626
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 US2018067500
(87)【国際公開番号】W WO2019133605
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】62/610,302
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504236628
【氏名又は名称】サイトキネティックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ケビン
(72)【発明者】
【氏名】モーガン, ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】モーガンズ, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】福山 透
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-525377(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039367(WO,A1)
【文献】特表2010-526130(JP,A)
【文献】Caserio, Frederick F. et al.,Small-ring Compounds. XXI. 3-Methylenecyclobutanone and Related Compounds,Journal of the American Chemical Society,1958年,80,pp. 5837-5840
【文献】Hoz, S. et al.,Mechanism and Stereochemistry of General Acid Catalyzed Additions to Bicyclobutane,Journal of Organic Chemistry,1986年,51(24),pp. 4537-4544
【文献】DATABASE PubChem,3,3-Dimethoxycyclobutane-1-carbonitrile,Create Date: 2007年2月8日,検索日:2022年10月31日,PubChem CID 13204884
【文献】Gomtsyan, A. et al.,Synthesis and Pharmacology of (Pyridin-2-yl)methanol Derivatives as Novel and Selective Transient Receptor Potential Vanilloid 3 Antagonists,Journal of Medicinal Chemistry,2016年,59(10),pp. 4926-4947
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物、
【化1】
(1)、
またはその塩を調製する方法であって、以下:
(i) 式(1A):
【化2】
(1A)
の化合物を2-クロロ-3-フルオロピリジンと反応させ、式(1B):
【化3】
(1B)
の化合物を形成することと、
(ii) 式(1B)の前記化合物を水性酸と反応させ、式(1C):
【化4】
(1C)
の化合物を形成することと、
(iii) 式(1C)の前記化合物を式(1)の前記化合物またはその塩に変換することと、を含む、方法。
【請求項2】
1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンを2-シアノ酢酸tert-ブチルと反応させ、式(1A)の前記化合物を形成することによって、式(1A)の前記化合物を得ることを、更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンと前記2-シアノ酢酸tert-ブチルとの反応が、塩基の存在下にて実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基がカリウムtert-ブトキシドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(1D):
【化5】
(1D)
の化合物を式(1A)の前記化合物に変換することにより、式(1A)の前記化合物を得ることを、更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(1E):
【化6】
(1E)
の化合物を式(1D)の前記化合物に変換することにより、式(1D)の前記化合物を得ることを、更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(1F):
【化7】
(1F)
の化合物を式(1E)の前記化合物に変換することにより、式(1E)の前記化合物を得ることを、更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(i)が塩基の存在下にて実行される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記塩基がナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(ii)の前記水性酸が水性塩酸である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(iii)が、式(1C)の前記化合物を式(1G):
【化8】
(1G)
の化合物に変換することと、式(1G)の前記化合物を式(1)の前記化合物またはその塩に変換することと、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(iii)が、式(1G)の前記化合物を式(1H):
【化9】
(1H)
の化合物に変換することと、式(1H)の前記化合物を式(1)の前記化合物またはその塩に変換することと、を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(iii)が、式(1H)の前記化合物を式(1I)
【化10】
(1I)
の化合物に変換することと、式(1I)の前記化合物を式(1)の前記化合物またはその塩に変換することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(iii)が、式(1I)の前記化合物を
【化11】
(式中:Xはクロロまたはフルオロである)と反応させ、式(1J):
【化12】
(1J)
(式中:Zは保護基または水素である)の化合物を形成することと、
式(1J)の前記化合物を式(1)の前記化合物またはその塩に変換することと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(iii)が、式(1J)の前記化合物を
【化13】
と反応させ、式(1K):
【化14】
(1K)
(式中:Zは保護基または水素である)の化合物を形成することと、
式(1K)の前記化合物を式(1)の前記化合物またはその塩に変換することと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(iii)が、式(1)の前記化合物またはその塩を単離することを、更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式(1B):
【化15】
(1B)
の化合物またはその塩。
【請求項18】
式(1B):
【化16】
(1B)
の化合物またはその塩を調製する方法であって、式(1A):
【化17】
(1A)
の化合物を2-クロロ-3-フルオロピリジンと反応させ、式(1B)の前記化合物を形成することを含む、方法。
【請求項19】
1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンを2-シアノ酢酸tert-ブチルと反応させ、式(1A)の前記化合物を形成することによって、式(1A)の前記化合物を得ることを、更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンと前記2-シアノ酢酸tert-ブチルとの反応が、塩基の存在下にて実行される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記塩基がカリウムtert-ブトキシドである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式(1D):
【化18】
(1D)
の化合物を式(1A)の前記化合物に変換することにより、式(1A)の前記化合物を得ることを、更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
式(1E):
【化19】
(1E)
の化合物を式(1D)の前記化合物に変換することにより、式(1D)の前記化合物を得ることを、更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
式(1F):
【化20】
(1F)
の化合物を式(1E)の前記化合物に変換することにより、式(1E)の前記化合物を得ることを、更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
式(1A)の前記化合物と前記2-クロロ-3-フルオロピリジンとの反応が、塩基の存在下にて実行される、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記塩基がナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
式(1D):
【化21】
(1D)
の化合物またはその塩。
【請求項28】
式(1D):
【化22】
(1D)
の化合物またはその塩を調製する方法であって、式(1E):
【化23】
(1E)
の化合物を式(1D)の前記化合物またはその塩に変換することを含む、方法
【請求項29】
式(1F):
【化24】
(1F)
の化合物を式(1E)の前記化合物に変換することにより、式(1E)の前記化合物を得ることを、更に含む、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アミノピリミジンおよびその塩を調製するための新規なプロセスが、本明細書中に提供されている。また、本プロセスにおいて使用されている新規な中間体およびその調製物も、本明細書中に提供されている。
【背景技術】
【0002】
骨格筋細胞および心筋細胞の細胞骨格は、他の全細胞の細胞骨格と比較して一意である。密接に詰め込まれた細胞骨格タンパク質(呼称:サルコメア)の略結晶性のアレイからなる。サルコメアは、細いフィラメントおよび太いフィラメントの交互配列として優雅に編成されている。太いフィラメントは、ミオシン、すなわち、ATP加水分解の化学エネルギーを力と方向付けられた運動に変換するモータータンパク質、で構成される。細いフィラメントは、らせん状に配列されたアクチンモノマーで構成される。アクチンフィラメントに結合している4つの調節タンパク質が存在し、それにより、カルシウムイオンを介した収縮の調節が可能になる。細胞内カルシウムの流入によって、筋肉の収縮が開始され、それに伴い、ミオシンモータードメインおよび細いアクチンフィラメントの反復的な相互作用によって、太いフィラメントおよび細いフィラメントが互いに滑り合う。
【0003】
ヒト細胞における13通りのクラスのミオシン中ミオシンIIクラスは、骨格筋、心筋、および平滑筋の収縮を司っている。このクラスのミオシンは、アミノ酸組成および全体的構造が、他の12通りのクラスのミオシンとは有意に異なる。ミオシンIIによってホモ二量体を形成され、長いαらせんの二重コイル状の尾部を介して2つの球状頭部ドメインが一体的に連結されて、サルコメアの太いフィラメントのコアを形成する。球状頭部は、触媒ドメインを有し、この触媒ドメイン内で、ミオシンのアクチン結合およびATPアーゼ機能が生起される。いったんアクチンフィラメントに結合すると、リン酸が(ADP-PiからADPに対し)放出され、触媒ドメインの構造的立体配座が変造されて、ひいては、球状頭部から延在する軽鎖結合レバーアームドメインの配向が変わってくる。この動作はパワーストロークと呼ばれる。ミオシン頭部の配向が、アクチンに対する関係においてこのように変化すると、その一部である太いフィラメントが、結合している細いアクチンフィラメントに対し相対的に動く。球状頭部とアクチンフィラメント(Ca2+調節性)との結合が解除され、且つ触媒ドメインおよび軽鎖が開始立体配座/配向に戻ると、細胞内の動きおよび筋肉の収縮を司る触媒サイクルが完了する。
【0004】
アクチンとミオシンとの相互作用に対するカルシウムの影響は、トロポミオシンおよびトロポニンによって媒介される。トロポニン複合体を構成する3つのポリペプチド鎖は、カルシウムイオンに結合するトロポニンC、アクチンに結合するトロポニンI、およびトロポミオシンに結合するトロポニンTである。骨格トロポニン-トロポミオシン複合体は、一度にいくつかのアクチンユニットにまたがって延在するミオシン結合部位を調節する。
【0005】
上記の3つのポリペプチドの複合体が、トロポニンである。このトロポニンは、脊椎動物の筋肉内のアクチンフィラメントと密接に関連している、付属タンパク質でもある。トロポニン複合体は、筋肉形態のトロポミオシンと連携して作用し、ミオシンATPアーゼ活性のCa2+依存性を媒介することにより、筋肉の収縮を調節する。トロポミオシン結合、阻害、およびカルシウム結合活性にちなんで命名されたのが、それぞれトロポニンポリペプチドT、IおよびCである。トロポニンTは、トロポミオシンに結合し、筋肉の細いフィラメント上にトロポニン複合体を配置する役割を担うものと考えられている。トロポニンIはアクチンに結合する。トロポニンIおよびT、ならびにトロポミオシンによって形成される複合体は、アクチンとミオシンとの相互作用を阻害する。骨格トロポニンCが結合し得るカルシウム分子数は、最大4つまでとされている。数々の研究が示唆しているように、筋肉内のカルシウムのレベルが上昇すると、トロポニンCは、トロポニンIの結合部位をアクチンから引き抜き、露出させる。これにより、トロポミオシン分子の位置も変位し、その結果、アクチン上のミオシン結合部位が露出して、ミオシンATPアーゼ活性が刺激される。
【0006】
米国特許第8962632号に開示されている1-(2-((((トランス)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メチル)アミノ)ピリミジン-5-イル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、次世代の高速骨格筋トロポニン活性化因子(FSTA)であり、神経筋もしくは非神経筋の機能障害、筋力低下、および/または筋疲労に関連する衰弱性の疾患ならびに病態にて生活している人々のための、有望な治療薬とされている。
そのような化合物を低コストにて、しかも全般的に高収率且つ高純度にて調製するための、改良型の方法に対するニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8962632号明細書
【発明の概要】
【0008】
一態様では、式(1):
【化1】
(1)
の化合物またはその塩を調製する方法であって、以下:
(i) 式(1A):
【化2】
(1A)
2-クロロ-3-フルオロピリジンと反応させ、式(1B):
【化3】
(1B)
の化合物を形成することと、
(ii) 式(1B)の化合物を水性酸と反応させ、式(1C):
【化4】
(1C)
の化合物を形成することと、
(iii) 式(1C)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む、方法が提供されている。
【0009】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(2A):
【化5】
(2A)
(式中:XおよびXはそれぞれ独立に脱離基である)の化合物を式(2B):
【化6】
(2B)
(式中:Rは任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールである)の化合物と反応させ、式(1A)の化合物を形成することによって、式(1A)の化合物を得ることを、含む。
いくつかの実施形態において、XおよびXは独立に、ハロ、トリフル酸塩、トシル酸塩、メシル酸塩、またはアセトキシである。
【0010】
いくつかの実施形態において、XおよびXは独立に、ハロである。
【0011】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンを2-シアノ酢酸tert-ブチルと反応させ、式(1A)の化合物を形成することによって、式(1A)の化合物を得ることを、含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンと2-シアノ酢酸tert-ブチルとの反応は、塩基の存在下にて実行される。
【0013】
いくつかの実施形態において、塩基は、カリウムtert-ブトキシドである。
【0014】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(1D):
【化7】
(1D)
の化合物を式(1A)の化合物に変換することにより、式(1A)の化合物を得ることを、含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(1E):
【化8】
(1E)
の化合物を式(1D)の化合物に変換することにより、式(1D)の化合物を得ることを、含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(1F):
【化9】
(1F)
の化合物を式(1E)の化合物に変換することにより、式(1E)の化合物を得ることを、含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)は、塩基の存在下にて実行される。
【0018】
いくつかの実施形態において、塩基は、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドである。
【0019】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)の水性酸は、水性塩酸である。
【0020】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は、式(1C)の化合物を式(1G):
【化10】
(1G)
の化合物に変換することと、式(1G)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は更に、式(1G)の化合物を式(1H):
【化11】
(1H)
の化合物に変換することと、式(1H)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は更に、式(1H)の化合物を式(1I):
【化12】
(1I)
の化合物に変換することと、式(1I)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は更に、式(1I)の化合物を
【化13】
(式中:Xはクロロまたはフルオロである)と反応させ、式(1J):
【化14】
(1J)
(式中:Zは保護基または水素である)の化合物を形成することと、
式(1J)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は更に、式(1J)の化合物を
【化15】
と反応させ、式(1K):
【化16】
(1K)
(式中:Zは保護基または水素である)の化合物を形成することと、
式(1K)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、ZはBocである。いくつかの実施形態において、Zは水素である。
【0026】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は、式(1)の化合物またはその塩を単離することを、含む。
【0027】
別の態様では、式(1B):
【化17】
(1B)
の化合物またはその塩が提供されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、式(1B):
【化18】
(1B)
の化合物またはその塩を調製する方法であって、以下:
式(1A):
【化19】
(1A)
の化合物を2-クロロ-3-フルオロピリジンと反応させ、式(1B)の化合物を形成することを、含む、方法が提供されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンを2-シアノ酢酸tert-ブチルと反応させ、式(1A)の化合物を形成することによって、式(1A)の化合物を得ることを、含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンと2-シアノ酢酸tert-ブチルとの反応は、塩基の存在下にて実行される。
【0031】
いくつかの実施形態において、塩基は、カリウムtert-ブトキシドである。
【0032】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(1D):
【化20】
(1D)
の化合物を式(1A)の化合物に変換することにより、式(1A)の化合物を得ることを、含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(1E):
【化21】
(1E)
の化合物を式(1D)の化合物に変換することにより、式(1D)の化合物を得ることを、含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(1F):
【化22】
(1F)
の化合物を式(1E)の化合物に変換することにより、式(1E)の化合物を得ることを、含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、式(1A)の化合物と2-クロロ-3-フルオロピリジンとの反応は、塩基の存在下にて実行される。
【0036】
いくつかの実施形態において、塩基は、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドである。
【0037】
別の態様では、式(1D):
【化23】
(1D)
の化合物またはその塩が提供されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、式(1D):
【化24】
(1D)
の化合物またはその塩を調製する方法であって、(1E):
【化25】
(1E)
の化合物を式(1D)の化合物またはその塩に変換すること含む、方法が提供されている。
【0039】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(1F):
【化26】
(1F)
の化合物を式(1E)の化合物に変換することにより、式(1E)の化合物を得ることを、含む。
【発明を実施するための形態】
【0040】
定義
本明細書中に用いられている用語は、本明細書において、別途の記載が陳述されていない限り、または文脈によって他の意味が示唆されていない限り、下記定義中にある通りの意味とする。それらの定義中におよび本明細書全体を通して、例えば相互に排他的な要素もしくは選択肢を含めることにより、特に禁忌もしくは黙示されている場合を除き、「a」および「an」という用語は、1つ以上を意味するのに対し、「または(or)」という用語は、文脈によって許容される場合には、および/または(and/or)を意味する。それゆえ、単数形「a」、「an」、および「the」は、本明細書、および添付の特許請求の範囲において用いられている場合、文脈上他の意味に解釈されることが明白でない限り、複数の指示対象を含む。
【0041】
本開示における様々な箇所、例えば、本開示の任意の実施形態または特許請求の範囲において、1つ以上の特定の構成要素、要素もしくはステップを「含む」化合物、組成物、または方法に言及する。具体的には、実施形態に含まれる化合物、組成物または方法はまた、特定の該構成要素、要素もしくはステップであるか、あるいはこれらから成るか、あるいはこれらから本質的に成る。「で構成される(comprised of)」という用語は、「を含む(comprising)」という用語と同義に使用されており、且つ等価な用語として陳述されている。例えば、本開示の組成物、デバイス、製造品、または構成要素またはステップを「含む」方法は、開放されており、これらは該組成物または方法に加えて、追加的な構成要素(1つもしくは複数)またはステップ(1つもしくは複数)を含むか、あるいはこれらを読み取る。但し、これらの用語は、引用されていない要素で、意図された目的に対応していて本開示の組成物、デバイス、製造品または方法の機能を破壊する要素は、含まないものとする。同様に、本開示の組成物、デバイス、製造品または方法で、構成要素またはステップから「成る」ものは閉鎖されており、かなりの量の追加的な構成要素(1つもしくは複数)または追加的なステップ(1つもしくは複数)を有する該組成物または方法を含まないし、あるいはこれらを読み取ることもない。更になお、「から本質的に成る」という用語は、本明細書中に更に定義されているように、引用されていない要素であっても、意図された目的に対応していて本開示の組成物、デバイス、製造品または方法の機能に対し実質的な影響を及ぼすものでない限り、組み入れることを承認するものである。本明細書中に用いられているセクション見出しは、編成のみを目的としたものであって、記載の主題を限定するものと解釈すべきではない。
【0042】
本明細書中に用いられている「約」は、化合物または組成物の特定の特性を説明するために提供される数値または値の範囲に関連して使用されている場合、特定の特性を依然として記載しながらも、値または値の範囲は、当業者に合理的であると見なされる程度まで逸脱し得ることを示唆するものである。偏差は、特定の特性の測定、判定もしくは導出に用いられる機器(1つもしくは複数)の精確度または精密度の範囲内にある偏差を包含するものが、合理的とされる。具体的には、この文脈において使用されている「約」という用語は、特定の特性を依然として記載しながらも、数値または値の範囲が、列挙された値または値の範囲の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%もしくは0.01%(例えば10%~0.5%もしくは5%~1%)だけ変動し得ることを示唆するものである。
【0043】
「アルキル」とは、指定された個数の炭素原子(すなわち、C~C10は、1~10個の炭素を意味する)を有する飽和直鎖状および分岐鎖状一価炭化水素構造、ならびにこれらの組み合わせを指し、且つ含む。特定のアルキル基は、1~20個の炭素原子(「C~C20アルキル」)を有するものである。アルキル基とは、より具体的には、1~8個の炭素原子(「C~Cアルキル」)、3~8個の炭素原子(「C~Cアルキル」)、1~6個の炭素原子(「C~Cアルキル」)、1~5個の炭素原子(「C~Cアルキル」)、または1~4個の炭素原子(「C~Cアルキル」)を有するものである。アルキルの例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチルなどの基、ならびに、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルの同族体および異性体、ならびにそれらに類するものが挙げられる。
【0044】
本明細書中に用いられている「アルケニル」は、不飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状一価炭化水素鎖、またはそれらの組み合わせで、少なくとも1つのオレフィン性不飽和部位(すなわち、式C=Cの少なくとも1つの部分)を有し、且つ指定された個数の炭素原子(すなわち、C~C10は2~10個の炭素原子を意味する)を有するものを指す。アルケニル基は、「シス」または「トランス」配位にある場合もあれば、あるいは「E」または「Z」配位にある場合もある。特定のアルケニル基は、2~20個の炭素原子(「C~C20アルケニル」)を有するもの、2~8個の炭素原子(「C~Cアルケニル」)を有するもの、2~6個の炭素原子(「C~Cアルケニル」」)を有するもの、または2~4個の炭素原子(「C~Cアルケニル」)を有するものである。アルケニルの例としては、限定されるものではないが、エテニル(またはビニル)、プロプ-1-エニル、プロプ-1-エン-2-イル、プロプ-2-エニル(またはアリル)、2-メチルプロプ-1-エニル、ブト-1-エニル、ブト-2-エニル、ブト-3-エニル、ブタ-1,3-ジエニル、2-メチルブタ-1,3-ジエニルなどの基のほか、その同族体および異性体、ならびにそれらに類するものが挙げられる。
【0045】
本明細書中に用いられている「アルキニル」は、不飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状一価炭化水素鎖、またはそれらの組み合わせで、少なくとも1つのアセチレン性不飽和部位(すなわち、式C≡Cの少なくとも1つの部分)を有し、且つ指定された個数の炭素原子(すなわち、C~C10は2~10個の炭素原子を意味する)を有するものを指す。特定のアルキニル基は、2~20個の炭素原子(「C~C20アルキニル」)を有するもの、2~8個の炭素原子(「C~Cアルキニル」)を有するもの、2~6個の炭素原子(「C~Cアルキニル」」)を有するもの、または2~4個の炭素原子(「C~Cアルキニル」)を有するものである。アルキニルの例としては、限定されるものではないが、エチニル(またはアセチレニル)、プロプ-1-イニル、プロプ-2-イニル(またはプロパルギル)、ブト-1-イニル、ブト-2-イニル、ブト-3-イニルなどの基のほか、その同族体および異性体、ならびにそれらに類するものが挙げられる。
【0046】
本明細書中に用いられている「シクロアルキル」は、C~C10の飽和または不飽和非芳香族炭化水素環基を指す。シクロアルキルが架橋を有する場合もある。シクロアルキルの例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
【0047】
本明細書中に用いられている「アリール」は、C~C12の不飽和非芳香族炭化水素環基を指す。アリールは、単環式または多環式(例えば、二環式、三環式)であり得る。アリール(Ary)は、限定されるものではないが、アリール環、ヘテロアリール環、シクロアルキル環および/またはヘテロシクリル環をはじめとする環(例えば、1~3環)と融合し得る。一変形態様において、アリール基は、6~14個の環状炭素原子を含む。アリール基の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、ビフェニル、およびそれらに類するものが挙げられる。
【0048】
本明細書中に用いられている「ヘテロアリール」は、1~10個の環状炭素原子および少なくとも1つの環状ヘテロ原子、例えば、限定されるものではないが、ヘテロ原子(窒素、酸素、硫黄など)を有する不飽和芳香族環状基で、任意で、窒素原子および硫黄原子(1つもしくは複数)が酸化され、且つ任意で、窒素原子が四級化されるものを指す。環状炭素または環状ヘテロ原子にて、ヘテロアリール基は、分子の残部に結合し得る。ヘテロアリールは、限定されるものではないが、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび/またはヘテロシクリル環をはじめとする環(例えば、1~3環)と融合し得る。ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、ピリジル、ピリミジル、チオフェニル、フラニル、チアゾリル、およびそれらに類するものが挙げられる。
【0049】
「複素環」、「ヘテロシクリル」または「ヘテロシクロアルキル」は、1~10個の環状炭素原子および1~4個の環状ヘテロ原子、例えば窒素、硫黄または酸素などを有する飽和または不飽和非芳香族基で、任意で、窒素原子および硫黄原子が酸化され、且つ任意で、窒素原子(1つもしくは複数)が四級化されるものを指す。ヘテロシクリル基は、単環または複数の縮合環を有し得るが、ヘテロアリール基は除外される。2つ以上の環を含む複素環は、縮合環、スピロ環もしくは架橋環であるか、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。縮合環系において、1つ以上の縮合環は、アリールまたはヘテロアリールであり得る。ヘテロシクリル基の例としては、限定されるものではないが、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル、およびそれらに類するものが挙げられる。
【0050】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを指す。別の実施形態において、ハロはフルオロである。別の実施形態において、ハロはブロモである。
【0051】
「ヘテロアルキル」は、アルコキシ基で置換されているアルキルを指す。ヘテロアルキル基の例としては、限定されるものではないが、メトキシメチル、エトキシメチル、およびそれらに類するものが挙げられる。
【0052】
「オキソ」は、=O残基を指す。
【0053】
本明細書中に用いられている「置換」は、指定された原子または基上の任意の1つ以上の水素原子が、水素以外の1つ以上の置換基で置換されていること、但し、指定された原子の通常の価数を超えないことを条件とすることを意味する。1つ以上の置換基としては、限定されるものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アシル、アミノ、アミド、アミジノ、アリール、アジド、カルバモイル、カルボキシル、カルボキシルエステル、シアノ、グアニジノ、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、ヒドラジノ、イミノ、オキソ、ニトロ、アルキルスルフィニル、スルホン酸、アルキルスルホニル、チオシアン酸塩、チオール、チオン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
本明細書中に用いられている「任意で、置換される」とは、或る基が、当該の基に関して列挙された置換基のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ)で置換されない場合もあれば置換される場合もあり、該置換基が同じである場合もあれば異なる場合もあることを意味する。一実施形態において、任意で、置換された基は、1つの置換基を有する。別の実施形態において、任意で、置換された基は、2つの置換基を有する。別の実施形態において、任意で、置換された基は、3つの置換基を有する。別の実施形態において、任意で、置換された基は、4つの置換基を有する。
いくつかの実施形態において、任意に置換された基は、1~2個、2~5個、3~5個、2~3個、2~4個、3~4個、1~3個、1~4個または1~5個の置換基を有する。当然のことながら、本明細書において、化学的残基が「任意で、置換されている」場合、本開示は、残基が置換されている実施形態、および残基が非置換である実施形態を含む。
【0055】
本明細書中に用いられている「保護基」は、本明細書において、別途の記載が陳述されていない限り、または文脈によって他の意味が示唆されていない限り、連結されている原子もしくは官能基の能力が所望されない反応に関与することを防止または実質的に低減させる部分を指す。原子または官能基の典型的な保護基は、Greene (2014), “Protective groups in organic synthesis, 5thed.”, Wiley Interscienceに記載されている。酸素、硫黄および窒素のようなヘテロ原子の保護基を使用することによって、求電子化合物との不必要な反応を最小限に抑える、または回避することが可能となる。それ以外にも、保護基を使用することによって、保護されていないヘテロ原子の求核性および/または塩基性が低減または排除される場合もある。保護された酸素の例としては、非限定されるものではないが、-ORPR(式中:RPRは、ヒドロキシルに対する保護基である)が挙げられる。ヒドロキシルは、いくつかの実施形態においてエステル(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、または安息香酸塩)として保護される。ヒドロキシルの他の保護基は、有機金属試薬または他の高度に塩基性の試薬の求核性との干渉を回避する。この目的を期して、いくつかの実施形態において、ヒドロキシルは、エーテルとして保護されている。このエーテルとしては、限定されるものではないが、例えば、アルキルまたはヘテロシクリルエーテル(例えば、メチルまたはテトラヒドロピラニルエーテル)、アルコキシメチルエーテル(例えば、メトキシメチルまたはエトキシメチルエーテル)、必要に応じて置換されたアリールエーテル、およびシリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBS/TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2-(トリメチルシリル)エトキシ]-メチルシリル(SEM))が挙げられる。窒素保護基には、-NHRPRまたは-N(RPR(式中:RPRのうちの少なくとも1つは窒素原子保護基であるか、または両方のRPRが一緒になって窒素原子保護基を画定している)において見られるように、一級もしくは二級アミンの保護基が含まれる。
【0056】
保護基が保護を施すのに好適とされる条件は、分子内の他の部位にて所望される化学変換(1つもしくは複数)を行うのに必要とされる反応条件下にて、および適宜に新たに形成された分子の精製中に、望ましくない副反応が発生するのをおよび/または保護基が時期尚早に喪失するのを防止することが可能であること、ならびにこれを実質的に回避することが可能であることである。それゆえ、新しく形成された分子の構造または立体化学的完全性に悪影響を及ぼすことのない条件では、保護器を除去しても差し支えない。いくつかの態様において、保護基は、官能基の保護に関して前述されたものが、好適とされる。例えば、非環式または環式塩基性基の塩基性窒素原子に適した保護基は、酸に不安定なカルバミン酸塩系の保護基、例えば、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)である。
【0057】
本明細書中に開示されている各化合物は、塩の形態であり得る。本化合物は、少なくとも1つのアミノ基を含み得ることから、このアミノ基を用いて、酸付加塩を形成し得る。例示的な塩としては、限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))といった塩が挙げられる。
【0058】
塩は、別の分子、例えば、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンの介在を伴う場合がある。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる、任意の有機または無機の残基であり得る。更になお、医薬的に許容される塩は、その構造内に複数の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子の実例は、医薬的に許容される塩の一部なっている場合に、は、複数の対イオンを有し得る。ゆえに、塩は、1つ以上の荷電原子および/または1つ以上の対イオンを有し得る。
【0059】
「医薬的に許容される塩」とは、医薬用途において有用性を与える範囲内の毒性プロファイルを有する塩を指す。
【0060】
いくつかの実施形態において、医薬的に許容される塩は、P. H. Stahl and C. G. Wermuth, editors, Handbook of PharmaceuticalSalts: Properties, Selection and Use, Weinheim/Zurich: Wiley-VCH/VHCA, 2002に記載されている該塩類から選択される。塩の選択は、医薬品が必然的に呈する特性、例えば、様々なpH値における適切な水溶性に依存するものであり、この特性は、意図した投与経路(1つもしくは複数)、取り扱いに適した流動特性および低吸湿性(すなわち、吸水率対(versus)相対湿度)に応じた結晶化度、ならびに所要保管期間に応じた(すなわち、40°C、相対湿度75%にて保管した場合の劣化または固体の変化を判別するための)加速条件下における、化学的および固体の安定性を判別することにより、決定される。
【0061】
方法
一態様では、式(1):
【化27】
(1)
の化合物またはその塩を調製する方法であって、以下:
(i) 式(1A):
【化28】
(1A)
の化合物を2-クロロ-3-フルオロピリジンと反応させ、式(1B):
【化29】
(1B)
の化合物を形成することと、
(ii) 式(1B)の化合物を水性酸と反応させ、式(1C):
【化30】
(1C)
の化合物を形成することと、
(iii) 式(1C)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、
を含む、方法が提供されている。
【0062】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)は、塩基の存在下にて実行される。
【0063】
いくつかの実施形態において、塩基は無機塩基である。無機塩基の例としては、限定されるものではないが、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、ナトリウムtert-ブトキシド、炭酸カリウム、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、およびそれらに類するものが挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態において、塩基は有機塩基である。有機塩基の例としては、限定されるものではないが、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エタノールアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、ベンジルアミン、プロカイン、リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびN-メチルグルカミンが挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態において、塩基は、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドである。
【0066】
いくつかの実施形態においてステップ(i)は、有機溶媒中で実行される。有機溶媒の例としては、限定されるものではないが、ヘキサン、ペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、酢酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、およびメタノール、ならびにそれらに類するものが挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、本明細書中に例として与えられている有機溶媒の任意の相溶性混合物である。
【0068】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、水を含まない。
【0069】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は水を含有している。
【0070】
いくつかの実施形態においてステップ(i)は、トルエン中で実行される。有機溶媒の各列挙は、全ての組み合わせが具体的且つ個別に列挙されている場合と同じように、塩基の各列挙と組み合わせることが可能であることが、理解される。例えば、いくつかの実施形態においてステップ(i)は、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの存在下にてトルエン中で実行される。
【0071】
いくつかの実施形態においてステップ(i)は、約100°C、約90°C、約80°C、約70°C、約60°C、約50°C、約40°C、約30°C、約20°C、約10°C、約0°C、約-10°C、約-20°C、約-30°C、約-40°C、約-50°C、または約-60°Cにて実行される。
【0072】
いくつかの実施形態においてステップ(i)は、約100°C未満、約90°C、約80°C、約70°C、約60°C、約50°C、約40°C、約30°C、約20°C、約10°C、約0°C、約-10°C、約-20°C、約-30°C、約-40°C、約-50°C、または約-60°Cにて実行される。
【0073】
いくつかの実施形態においてステップ(i)は、少なくとも約100°C、約90°C、約80°C、約70°C、約60°C、約50°C、約40°C、約30°C、約20°Cの温度、約10°C、約0°C、約-10°C、約-20°C、約-30°C、約-40°C、約-50°C、または約-60°Cにて実行される。
【0074】
いくつかの実施形態においてステップ(i)は、約10°Cおよび約-60°C、約0°Cおよび約-60°C、約-10°Cおよび約-60°C、約10°C~約-40°C、約0°C~約-40°C、約-10°C~約-40°C、約10°C~約-30°C、約0°C~約-30°C、または約-10°C~約-30°Cの温度にて実行される。
【0075】
いくつかの実施形態においてステップ(i)は、約-20°Cの温度にて実行される。温度の各列挙は、ありとあらゆる組み合わせが具体的且つ個別に列挙されている場合と同じように、塩基および/または有機溶媒の各列挙と組み合わせることが可能であることが、理解される。例えば、いくつかの実施形態においてステップ(i)は、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの存在下にて、トルエン中で、約-20°Cの温度にて実行される。
【0076】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)の水性酸は、無機酸である。無機酸の例としては、限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、およびそれらに類するものが挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)の水性酸は有機酸である。有機酸の例としては、酢酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、イセチオン酸、コハク酸、吉草酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ピラノシジル酸、およびそれらに類するものが挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態において、水性酸は、本明細書中に例として与えられているような酸の任意の相溶性混合物である。
【0079】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)の水性酸は、塩酸である。
【0080】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)は、約100°C、約90°C、約80°C、約70°C、約60°C、約50°C、約40°C、約30°C、約20°C、約10°C、または約0°Cの温度にて実行される。
【0081】
いくつかの実施形態においてステップ(i)は、約100°C未満、約90°C、約80°C、約70°C、約60°C、約50°C、約40°C、約30°C、約20°C、または約10°Cにて実行される。
【0082】
いくつかの実施形態においてステップ(i)は、少なくとも約90°C、約80°C、約70°C、約60°C、約50°C、約40°C、約30°C、約20°C、約10°C、または約0°Cの温度にて実行される。
【0083】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)は約50°Cの温度にて実行される。温度の各列挙は、ありとあらゆる組み合わせが具体的且つ個別に列挙されている場合と同じように、水性酸の各列挙と組み合わせることが可能であることが、理解される。例えば、いくつかの実施形態において、ステップ(ii)は、塩酸の存在下にて約50°Cの温度にて実行される。
【0084】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は、式(1C)の化合物を式(1G):
【化31】
(1G)
の化合物に変換することと、式(1G)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。いくつかの実施形態において、式(1C)の化合物から式(1G)の化合物への変換は、DCMとメタノールとの混合物中で実施される。いくつかの実施形態において、式(1C)の化合物から式(1G)の化合物への変換は、NaBHの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1C)の化合物から式(1G)の化合物への変換は、約-78°Cの温度にて実施される。
【0085】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は更に、式(1G)の化合物を式(1H):
【化32】
(1H)
の化合物に変換することと、式(1H)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。いくつかの実施形態において、式(1G)の化合物から式(1H)の化合物への変換は、DCM中で実施される。いくつかの実施形態において、式(1G)の化合物から式(1H)の化合物への変換は、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST)の存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1G)の化合物から式(1H)の化合物への変換は、約0°C~約10°Cの温度にて実施される。
【0086】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は更に、式(1H)の化合物を式(1I):
【化33】
(1I)
の化合物に変換することと、式(1I)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。いくつかの実施形態において、式(1H)の化合物から式(1I)の化合物への変換は、メタノール中で実施される。いくつかの実施形態において、式(1H)の化合物から式(1I)の化合物への変換は、ラニー・ニッケルの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1H)の化合物から式(1I)の化合物への変換は、アンモニアの存在下にて実施される。
【0087】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は更に、式(1I)の化合物を
【化34】
(式中:Xはクロロまたはフルオロである)と反応させ、式(1J):
【化35】
(1J)
(式中:Zは保護基または水素である)の化合物を形成することと、
式(1J)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。いくつかの実施形態において、Xはクロロである。いくつかの実施形態において、Xはフルオロである。いくつかの実施形態において、ZはBocである。いくつかの実施形態において、Zは水素である。いくつかの実施形態において、式(1I)の化合物から式(1J)の化合物への変換は、NMPの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1I)の化合物から式(1J)の化合物への変換は、DIPEAの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1I)の化合物から式(1J)の化合物への変換は、DMAPの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1I)の化合物から式(1J)の化合物への変換は、BocOの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1I)の化合物から式(1J)の化合物への変換は、THFの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1I)の化合物から式(1J)の化合物への変換は、約60°Cの温度にて実施される。
【0088】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は更に、式(1J)の化合物を
【化36】
と反応させ、式(1K):
【化37】
(1K)
(式中:Zは保護基または水素である)の化合物を形成することと、
式(1K)の化合物を式(1)の化合物またはその塩に変換することと、を含む。いくつかの実施形態において、ZはBocである。いくつかの実施形態において、Zは水素である。いくつかの実施形態において、式(1J)の化合物と
【化38】
との反応は、トルエン中で実施される。いくつかの実施形態において、式(1J)の化合物と
【化39】
との反応は、ヨウ化銅の存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1J)の化合物と
【化40】
との反応は、リン酸カリウムの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1J)の化合物と
【化41】
との反応は、トランス-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミンの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1J)の化合物と
【化42】
との反応は、約100°Cの温度にて実施される。
【0089】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は、式(1)の化合物またはその塩を単離することを、含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、式(1)の化合物またはその塩を調製する方法は更に、式(2A):
【化43】
(2A)
(式中:XおよびXはそれぞれ独立に脱離基である)の化合物を式(2B):
【化44】
(2B)
(式中:Rは任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールである)の化合物と反応させ、式(1A)の化合物を形成することによって、式(1A)の化合物を得ることを、含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、XおよびXは独立に、ハロ、トリフル酸塩、トシル酸塩、メシル酸塩、またはアセトキシである。
【0092】
いくつかの実施形態において、XおよびXは独立に、ハロである。いくつかの実施形態において、XおよびXは両方とも、フルオロである。いくつかの実施形態において、XおよびXは両方とも、クロロである。いくつかの実施形態において、XおよびXは両方とも、ブロモである。いくつかの実施形態において、XおよびXは両方とも、イオドである。いくつかの実施形態において、XおよびXは、異なる。いくつかの実施形態において、Xは、フルオロである。いくつかの実施形態において、Xは、クロロである。いくつかの実施形態において、Xは、ブロモである。いくつかの実施形態において、Xは、イオドである。いくつかの実施形態において、Xは、フルオロである。いくつかの実施形態において、Xは、クロロである。いくつかの実施形態において、Xは、ブロモである。いくつかの実施形態において、Xは、イオドである。Xの各列挙は、全ての組み合わせが具体的且つ個別に列挙されている場合と同じように、Xの各列挙と組み合わせることが可能であることが、理解される。
【0093】
いくつかの実施形態において、Rは、任意で、置換されたアルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、非置換アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、任意で、置換された直鎖状アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、任意で、置換された分岐鎖状アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、任意で、置換されたC~Cアルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、任意で、置換された直鎖状C~Cアルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、任意で、置換された分岐鎖状C~Cアルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、tert-ブチルである。
【0094】
および/またはXの各列挙は、全ての組み合わせが具体的且つ個別に列挙されている場合と同じように、Rの各列挙と組み合わせることが可能であることが、理解される。いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物は1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンであり、式(2B)の化合物は2-シアノ酢酸tert-ブチルである。
【0095】
いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)と式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)との反応は、塩基の存在下にて実行される。いくつかの実施形態において、塩基は無機塩基である。無機塩基の例としては、限定されるものではないが、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、ナトリウムtert-ブトキシド、炭酸カリウム、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、およびそれらに類するものが挙げられる。いくつかの実施形態において、塩基は有機塩基である。有機塩基の例としては、限定されるものではないが、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エタノールアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、ベンジルアミン、プロカイン、リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびN-メチルグルカミンが挙げられる。いくつかの実施形態において、塩基は、塩基の任意の相溶性混合物、例えば、本明細書中に例として与えられているものである。いくつかの実施形態において、塩基は、カリウムtert-ブトキシドである。塩基の各列挙は、全ての組み合わせが具体的且つ個別に列挙されている場合と同じように、X、X、および/またはRの各列挙と組み合わせることが可能であることが、理解される。例えば、いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物は1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンであり、式(2B)の化合物は、2-シアノ酢酸tert-ブチルであり、塩基はカリウムtert-ブトキシドである。
【0096】
いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)と式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)との反応は、有機溶媒中で実行される。有機溶媒の例としては、限定されるものではないが、ヘキサン、ペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N-メチルピロリドン(NMP)、酢酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、およびメタノール、ならびにそれらに類するものが挙げられる。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、有機溶媒の相溶性混合物のいずれか、例えば、本明細書中に例として与えられているものである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、水を含まない。いくつかの実施形態において、有機溶媒は水を含有している。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、DMI、DMAc、DMSO、およびNMPからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、DMIである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、DMAcである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、DMSOである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、NMPである。有機溶媒の各列挙は、全ての組み合わせが具体的且つ個別に列挙されている場合と同じように、X、X、R、および/または塩基の各列挙と組み合わせることが可能であることが、理解される。例えば、いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物は1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンであり、式(2B)の化合物は2-シアノ酢酸tert-ブチルであり、塩基はカリウムtert-ブトキシドであり、有機溶媒はDMIである。
【0097】
いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)と式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)との反応は、約200°C、約190°C、約180°C、約170°C、約160°C、約150°C、約140°C、約130°C、約120°C、約110°C、約100°C、約90°C、約80°C、約70°C、約60°C、約50°C、約40°C、約30°C、約20°C、約10°C、約0°C、約-10°C、約-20°C、または約-30°Cの温度にて実行される。いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)と式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)との反応は、約200°C、約190°C、約180°C、約170°C、約160°C、約150°C、約140°C、約130°C、約120°C、約110°C、約100°C、約90°C、約80°C、約70°C、約60°C、約50°C、約40°C、約30°C、約20°C、約10°C、約0°C、約-10°C、約-20°C、または約-30°C未満の温度にて実行される。いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)と式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)との反応は、少なくとも約200°C、約190°C、約180°C、約170°C、約160°C、約150°C、約140°C、約130°C、約120°C、約110°C、約100°C、約90°C、約80°C、約70°C、約60°C、約50°C、約40°C、約30°C、約20°C、約10°C、約0°C、約-10°C、約-20°C、または約-30°Cの温度にて実行される。いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)と式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)との反応は、約200°C~約100°C、約200°C~約110°C、約200°C~約120°C、約200°C~約130°C、約200°C~約140°C、約180°C~約100°C、約180°C~約110°C、約180°C~約120°C、約180°C~約130°C、約180°C~約140°C、約160°C~約100°C、約160°C~約110°C、約160°C~約120°C、約190°C~約130°C,または約160°C~約140°Cの温度にて実行される。いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)と式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)との反応は、約150°Cの温度にて実行される。いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)と式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)との反応は、約160°Cの温度にて実行される。温度の各列挙は、全ての組み合わせが具体的且つ個別に列挙されている場合と同じように、X、X、R、塩基および/または有機溶媒の各列挙と組み合わせることが可能であることが、理解される。例えば、いくつかの実施形態において、式(2A)の化合物は、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンである。式(2B)の化合物は、2-シアノ酢酸tert-ブチルであり、塩基はカリウムtert-ブトキシドであり、塩基はDMIであり、且つ、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパンと2-シアノ酢酸tert-ブチルとの反応は、約150°Cの温度にて実行される。
【0098】
いくつかの実施形態では、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)、式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)、および塩基を、有機溶媒に順次添加する。いくつかの実施形態では、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)、塩基、および式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)を、有機溶媒に順次添加する。いくつかの実施形態では、式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)、および塩基を、有機溶媒に順次添加する。いくつかの実施形態では、式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)、塩基、および式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)を、有機溶媒に順次添加する。いくつかの実施形態では、塩基、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)、および式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)を、有機溶媒に順次添加する。いくつかの実施形態では、塩基、式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)、および式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)を、有機溶媒に順次添加する。いくつかの実施形態では、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)、式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)、および塩基を、有機溶媒に同時的に添加する。
【0099】
いくつかの実施形態では、式(2A)の化合物(例えば、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン)と式(2B)の化合物(例えば、2-シアノ酢酸tert-ブチル)との反応生産物を蒸留した後に、ステップ(i)で使用する。
【0100】
いくつかの実施形態において、式(1)の化合物またはその塩を調製する方法は更に、式(1D):
【化45】
(1D)
の化合物を式(1A)の化合物に変換することにより、式(1A)の化合物を得ることを、含む。いくつかの実施形態において、式(1D)の化合物から式(1A)の化合物への変換は、トルエン中で実施される。いくつかの実施形態において、式(1D)の化合物から式(1A)の化合物への変換は、TEAの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1D)の化合物から式(1A)の化合物への変換は、TFAAの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1D)の化合物から式(1A)の化合物への変換は、約0°Cの温度にて実施される。
【0101】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(1E):
【化46】
(1E)
の化合物を式(1D)の化合物に変換することにより、式(1D)の化合物を得ることを、含む。いくつかの実施形態において、式(1E)の化合物から式(1D)の化合物への変換は、メタノール中で実施される。いくつかの実施形態において、式(1E)の化合物から式(1D)の化合物への変換は、アンモニアの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1E)の化合物から式(1D)の化合物への変換は、約40°Cの温度にて実施される。
【0102】
いくつかの実施形態において、本方法は更に、式(1F):
【化47】
(1F)
の化合物を式(1E)の化合物に変換することにより、式(1E)の化合物を得ることを、含む。いくつかの実施形態において、式(1F)の化合物から式(1E)の化合物への変換は、メタノール中で実施される。いくつかの実施形態において、式(1F)の化合物から式(1E)の化合物への変換は、アンバーリスト-15の存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1F)の化合物から式(1E)の化合物への変換は、トリメトキシメタンの存在下にて実施される。いくつかの実施形態において、式(1F)の化合物から式(1E)の化合物への変換は、約55°Cの温度にて実施される。
【0103】
別の態様では、式(1B):
【化48】
(1B)
の化合物またはその塩が提供されている。
【0104】
別の態様では、式(1B)の化合物またはその塩を調製する方法であって、本明細書中に記載されている通りである方法が、提供されている。
【0105】
別の態様では、式(1D):
【化49】
(1D)
の化合物またはその塩が提供されている。
【0106】
別の態様では、式(1D)の化合物またはその塩を調製する方法であって、本明細書中に記載されている通りである方法が、提供されている。
【0107】
合成化学式
本明細書中に提供されている或る特定のプロセスは、以下に図示されている例証的な合成化学式、および後述の特定の実施例を参照して説明されている。本明細書に記載の或る特定の反応および変換は、当該技術分野において公知の方法を使用して実施することが可能である。本明細書中に開示されている或る特定の化合物を合成するために使用可能な方法および試薬は、例えば、米国特許第8962632号、国際公開第2011/133920号、国際公開第2011/133888号、および国際公開第2011/133882号に記載されている。当業者に認識されるように、本明細書中の様々な化合物を得るためには、反応化学式を介して適宜に保護ありまたは保護なしで最終的に所望される置換基を運搬されるように出発物質を好適に選択することである。そうすることによって、所望される生成物を得ることが可能となる。代替的に、最終的に所望される置換基を使用する代わりに、反応化学式を介して運搬可能な好適な基で、適宜に所望される置換基で置換可能な基を使用することが必要とされる場合もあれば、またはその使用が所望される場合もある。加えて、当業者に認識されるように、保護基を使用して、或る特定の官能基(アミノ基、カルボキシ基、または側鎖基)を反応条件に対して保護することが可能であり、そのような基は、適宜に標準条件下にて除去される。
【0108】
化合物の特定のエナンチオマーを得ることが所望される場合、鏡像異性体を分離または分割するための任意の適切な従来の手順を用いて、鏡像異性体の対応する混合物から達成することが可能である。それゆえ、例えば、ジアステレオマー誘導体は、エナンチオマーの混合物(例えば、ラセミ化合物)と適切なキラル化合物との反応によって生成することが可能である。その場合、ジアステレオマーを任意の便宜的な手段、例えば結晶化によって分離することにより、所望されるエナンチオマーを回収することが可能である。別の分解プロセスで、キラル高速液体クロマトグラフィーを使用して、ラセミ化合物を分離してもよい。代替的に、所望される場合は、特定の鏡像異性体を、記載されているプロセスの1つにおいて適切なキラル中間体を使用して得ることも可能である。
【0109】
また、中間体または最終生産物において、化合物の特定の異性体を得ること、あるいはさもなければ反応生産物を精製することが所望される場合には、クロマトグラフィー、再結晶およびその他の従来の分離手順を使用してもよい。
【0110】
本明細書中に用いられている略語の説明は、下表の通りである。
略語
【表1】
【0111】
スキーム1
スキーム1は、式(1C)の化合物を合成する化学式の例を示したものである。
【化50】
【0112】
スキーム2
スキーム2は、式(1C)の化合物を合成する代替の化学式の例を示したものである。
【化51】
【0113】
スキーム3
スキーム3は、式(1C)の化合物を式(1I)の化合物に変換する化学式の例を示したものである。
【化52】
【0114】
スキーム4
スキーム4は、式(1I)の化合物を式(1)の化合物に変換する化学式の例を示したものである。
【化53】
【実施例
【0115】
実施例1
3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボニトリルの合成
【化54】
フラスコに、N-メチルピロリドン(30mL)、シアノ酢酸tert-ブチル(8.08g)を室温にて加えた。結果として得られた溶液に、カリウムtert-ブトキシド(7.71g)、1,3-ジブロモ-2,2-ジメトキシプロパン(5.00g)を、0°Cにて加えた。別のフラスコに、ヨウ化カリウム(158mg)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(42mg)、N-メチルピロリドン(25mL)を、室温にて加えてから、結果として得られた溶液を165°Cに加熱した。この溶液に、予め調製された混合物を140~165°Cにて滴下し、165°Cにて2時間撹拌した。反応混合物に水(65mL)を加えた。結果として得られた溶液をトルエン(40mL、3回)で抽出し、次いで、合わせた有機層を水(20mL、3回)および1規定NaOH水溶液(20mL)で洗浄した。
結果として得られた有機層を減圧下、50°C未満にて濃縮し、3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボニトリル(収率66%、GCアッセイ)をトルエン溶液として得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ3.17(s,3H),3.15(s,3H),2.93-2.84(m,1H),2.63-2.57(m,2H),2.52-2.45(m,2H)。
【0116】
実施例2
3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボン酸メチ3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボン酸メチルの合成
【化55】
反応器を0.02MPa以下の真空にしてから、窒素で3回大気に不活性化した。MeOH(339.00kg)、3-オキソシクロブタンカルボン酸(85.19kg、746.6mol、1.0当量)、アンバーリスト-15イオン交換樹脂(8.90kg、10%w/w)、およびトリメトキシメタン(196.00kg、1847.3mol、2.5当量)を反応器に入れ、結果として得られた混合物を55±5°Cに加熱し、6時間反応させ、3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボン酸メチルMeOH溶液を得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ3.70(s,3H),3.17(s,3H),3.15(s,3H),2.94-2.85(m,1H),2.47-2.36(m,4H)。
【0117】
実施例3
3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボキサミドの合成
【化56】
実施例2に記載されているようにして調製された3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボン酸メチルMeOH溶液を25°C未満に冷却し、遠心分離した。濾過ケーキをMeOH(7.00kg)で洗浄し、濾液をポンプで反応器に送った。溶液を55°C未満の真空下にて濃縮させ、本系が2体積以下になるまで濃縮させた。MeOH(139.40kg)を反応器に入れ、溶液を55°C未満の真空下にて濃縮させ、本系が2体積以下になるまで濃縮させた。MeOH(130.00kg)を反応器に入れ、溶液を55°C未満の真空下にて濃縮させ、本系が2体積以下になるまで濃縮させた。結果として得られた溶液の半量を、MeOH(435.00kg)で希釈し、30°C未満に冷却した。NHガス(133.80kg)を反応器に35°C以下で24時間注入した。混合物を40±5°Cにて72時間撹拌した。結果として得られた溶液を50°C未満の真空下にて濃縮させ、本系が2体積以下になるまで濃縮させた。MTBE(181.00kg)を反応器に入れた。結果として得られた溶液を50°C未満の真空下にて濃縮させ、本系が2体積以下になるまで濃縮させた。PE(318.00kg)を反応器に入れた。結果として得られた混合物を5±5°Cに冷却し、5±5°Cで4時間撹拌し、遠心分離した。濾過ケーキをPE(42.00kg)で洗浄し、湿潤した濾過ケーキを真空オーブンに入れた。濾過ケーキを30±5°Cにて少なくとも8時間乾燥させて、3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボキサミドを、オフホワイトの固体(112.63kg、94.7%収率)として得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ5.76(bs,1H),5.64(bs,1H),3.18(s,3H),3.17(s,3H),2.84-2.76(m,1H),2.45-2.38(m,4H)。
【0118】
実施例4
3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボニトリルの合成
【化57】
反応器を0.02MPa以下の真空にしてから、窒素で3回大気に不活性化した。トルエン(500.00kg)、3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボキサミド(112.54kg、706.9mol、1.0当量)、およびTEA(158.00kg、1561.3mol、2.20当量)を反応器に入れ、結果として得られた混合物を0±5°Cに冷却した。TFAA(164.00kg、781mol、1.10当量)を0±5°Cにて滴下した。結果として得られた混合物を20±5°Cにて10時間撹拌し、5±5°C未満に冷却した。HO(110.00kg)を15°C未満で反応器に入れた。結果として得られた混合物を30分間撹拌し、水相を分離した。水相をトルエン(190.00kg)で2回抽出した。有機相を合わせ、HO(111.00kg)で洗浄した。含水量が0.03%以下になるまで、共沸によりHO除去した。結果として得られた溶液を20°C未満に冷却して、3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボニトリル・トルエン溶液(492.00kg、アッセイ含有量17.83%、収率87.9%)を得た。
【0119】
実施例5
1-(3-フルオロピリジン-2-イル)-3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボニトリルの合成
【化58】
反応器を0.02MPa以下の真空にしてから、窒素で3回大気に不活性化した。実施例4に記載されているようにして調製されたトルエン中の3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボン酸メチルMeOH溶液(17.8%3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボニトリル・トルエン溶液246.00kg、1.05当量)、および2-クロロ-3-フルオロピリジン(39.17kg、297.9mol、1.00当量)を、反応器に入れた。反応器を真空にし、0.02MPa以下にして、次いで窒素で3回大気に不活性化した。混合物をゆっくりと-20±5°Cに冷却した。NaHDMS(2M THF溶液)(165.71kg、1.20当量)を-20±5°Cにて滴下した。結果として得られた混合物を-15±5°Cにて1時間撹拌した。2-クロロ-3-フルオロピリジンがHPLCにて測定して2%以下になるまで、混合物を撹拌した。反応器の温度を維持しながら、軟水(16.00kg)を0°C未満で滴下した。結果として得られた溶液を、別の反応器に移した。反応器の温度を維持しながら、NHCl水溶液(10%w/w、88.60Kg)を0°C未満で滴下した。軟水(112.00kg)を反応器に入れ、水相を分離して集めた。水相を酢酸エチル(70.00kg)で抽出し、有機相を収集した。有機相を飽和NaCl(106.00kg)で洗浄し、収集した。上記のステップを繰り返して、有機相の別の回分を得た。有機相の2つの回分を70°C未満の真空下にて濃縮させ、本系が2体積以下になるまで濃縮させた。結果として得られた溶液を30°C未満に冷却して、1-(3-フルオロピリジン-2-イル)-3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボニトリル溶液を得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ8.42-8.38(m,1H),7.50-7.45(m,1H),7.38-7.33(m,1H),3.28(s,3H),3.13(s,3H),3.09-3.05(m,4H)。
【0120】
実施例6
1-(3-フルオロピリジン-2-イル)-3-オキソシクロブタンカルボニトリルの合成
【化59】
反応器を0.02MPa以下の真空にしてから、窒素で3回大気に不活性化した。反応器に水(603.00kg)を加えて撹拌した。濃塩酸(157.30kg)を35°C未満で反応器に入れた。実施例5に記載されているようにして調製された1-(3-フルオロピリジン-2-イル)-3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボニトリル溶液(206.00kg)を反応器に入れ、結果として得られた混合物を50±5°Cに加熱し、50±5°Cにて3時間反応させた。HPLCにより測定して、1-(3-フルオロピリジン-2-イル)-3,3-ジメトキシシクロブタン-1-カルボニトリルの含有量が2.0%以下になるまで、混合物を反応させた。反応混合物を30°C未満に冷却し、酢酸エチル(771.00kg)で抽出した。水相を収集し、酢酸エチル(770.00kg)で抽出した。有機相を合わせ、合わせた有機相を軟水(290.00kg)およびブライン(385.30kg)で洗浄した。有機相を60°C未満の真空下にて濃縮させ、本系が2体積以下になるまで濃縮させた。プロパン-2-オール(218.00kg)を反応器に入れた。有機相を、系が1体積以下になるまで、60°C未満の真空下で濃縮した。PE(191.00kg)を40±5°Cで反応器に入れ、結果として得られた混合物を60±5°Cに加熱し、60±5°Cにて1時間撹拌した。次いで、混合物をゆっくりと5±5°Cに冷却し、5±5°Cにて5時間撹拌した。混合物を遠心分離し、濾過ケーキをPE(48.00kg)で洗浄し、湿潤した濾過ケーキを収集した。水(80.00kg)、濃塩酸(2.20kg)、プロパン-2-オール(65.00kg)、および湿潤した濾過ケーキを、この順番でドラム缶に投入した。結果として得られた混合物を20±5°Cにて10分間撹拌した。混合物を遠心分離し、濾過ケーキを、18.00kgのプロパン-2-オール、22.50kgの軟水、および0.60kgの濃塩酸を含む混合溶液で洗浄した。濾過ケーキを真空オーブンに入れ、30±5°Cにて少なくとも10時間乾燥させた。重量が変化しなくなるまで濾過ケーキを乾燥させ、1-(3-フルオロピリジン-2-イル)-3-オキソシクロブタンカルボニトリルを、オフホワイトの固体(77.15kg、68.0%収率)として得た。H NMR(CDCl,400MHz)δ8.45-8.42(m,1H),7.60-7.54(m,1H),7.47-7.41(m,1H),4.18-4.09(m,2H),4.02-3.94(m,2H)。
【0121】
実施例7
1-(3-フルオロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシシクロブタンカルボニトリルの合成
【化60】
1-(3-フルオロピリジン-2-イル)-3-オキソシクロブタンカルボニトリル(231g、1.22mol)のDCM(2L)とMeOH(200mL)の混合溶液に、-78°CにてNaBHを少しずつ加えた。反応混合物を-78°Cにて1時間撹拌し、メタノールと水の混合物(1:1)でクエンチした。有機層を水(500mL×3)で洗浄し、NaSOで乾燥させて、濃縮した。残留物をシリカゲル(50%EtOAc/ヘキサン)で精製して、表題化合物を琥珀色の油状物(185.8g、77.5%)として得た。
低分解能質量分析(LRMS)(M+H)m/z193.2。
【0122】
実施例8
(1s,3s)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブタン-1-カルボニトリルの合成
【化61】
1-(3-フルオロピリジン-2-イル)-3-ヒドロキシシクロブタンカルボニトリル(185g、0.96mol)のDCM(1L)溶液に、DASTを0-10°Cにて少量ずつ加えた。添加が完次第、反応物を6時間還流させた。反応物を室温に冷却し、飽和NaHCO溶液に注いだ。混合物を分離し、有機層を水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。残留物をシリカゲル(100%DCM)で精製して、表題の化合物を、8:1のトランス:シス混合物の褐色の油状物(116g)として得た。上記の褐色の油状物(107g)を70°Cにてトルエン(110mL)とヘキサン(330mL)に溶解した。溶液を0°Cに冷却し、0°Cにて一晩撹拌した。沈殿物を濾過し、ヘキサンで洗浄して、トランス異性体を白色の固体(87.3g)として得た。LRMS(M+H)m/z195.1。
【0123】
実施例9
((1r,3r)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メタンアミンの合成
【化62】
(1s,3s)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブタン-1-カルボニトリル(71g、0.37mol)とラネーニッケル(約7g)の混合物(700mL)の7Nアンモニア・メタノール溶液に、水素(60psi)を2日間充填した。反応物をセライトパッドに通して濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を高真空下で濃縮して、表題化合物を薄緑色の油状物(70g、97.6%)として得た。LRMS(M+H)m/z199.2。
【0124】
実施例10
カルバミン酸t-ブチル5-ブロモピリミジン-2-イル((トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メチル)の合成
【化63】
((1r,3r)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メタンアミン(37.6g、190mmol)、5-ブロモ-2-フルオロピリミジン(320g、181mmol)、DIPEA(71mL、407mmol)、およびNMP(200mL)の混合物を、室温で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をEtOAc(1500mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム(500mL)で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。結果として得られた固体をTHF(600mL)に溶解し、続いてDMAP(14g、90mmol)およびBocO(117.3g、542mmol)をゆっくりと添加した。反応物を60°Cに加熱し、3時間撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製して、59.7gのカルバミン酸t-ブチル5-ブロモピリミジン-2-イル((トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メチル)を白色固体として得た。
【0125】
実施例11
カルバミン酸t-ブチル5-(3-シアノ-1H-ピロール-1-イル)ピリミジン-2-イル(((トランス)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メチル)の合成
【化64】
カルバミン酸t-ブチル5-ブロモピリミジン-2-イル((トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メチル)(1.0g、2.8mmol)のトルエン(窒素で脱気)溶液15mLに、ヨウ化銅(100mg、0.6mmol)、リン酸カリウム(1.31g、6.2mmol)、トランス-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン(320mg、2.2mmol)、および3-シアノピロール(310mg、3.6mmol)を加えた。反応物を100°Cに加熱し、2時間撹拌した。次いで、反応物を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製して、1.1gのカルバミン酸t-ブチル5-(3-シアノ-1H-ピロール-1-イル)ピリミジン-2-イル(((トランス)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メチル)を、清澄な油として得た。
【0126】
実施例12
1-(2-((((トランス)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メチル)アミノ)ピリミジン-5-イル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの合成
【化65】
カルバミン酸t-ブチル5-(3-シアノ-1H-ピロール-1-イル)ピリミジン-2-イル(((トランス)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メチル)(1.1g、3.1mmol)のDMSO(10mL)溶液に、炭酸カリウム(1.3g、9.3mmol)を加えた。混合物を0°Cに冷却し、過酸化水素(3mL)をゆっくりと加えた。反応物を室温に加温し、90分間撹拌した。反応物をEtOAc(75mL)で希釈し、ブライン(50mL)で3回洗浄した。次に有機層をNaSOで乾燥させ、濾過した。濃縮して得られた粗固体を、シリカゲルクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl)で精製して、1.07gの白色固体化合物を得た。この化合物を25%TFA/CHCl中に溶解させ、1時間撹拌した。次いで、反応物を濃縮し、酢酸エチル(75mL)に溶解し、飽和炭酸カリウム溶液で3回洗浄した。次に有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、結果として得られた粗固体を75%酢酸エチル/ヘキサンで粉砕した。結果として得られたスラリーを超音波処理し、濾過して、500mgの1-(2-((((トランス)-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル)メチル)アミノ)ピリミジン-5-イル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを、白色固体として得た。LRMS(M+H=385)。
【0127】
本明細書に記載の方法、化合物、および組成物の前述の書面での説明によって、当業者は、本明細書に記載の方法、化合物、および組成物を作製し使用することができるが、本明細書の特定の実施形態、方法、化学式および実施例の変形、組み合わせ、ならびに等価物の存在が、当業者に理解および認識されるであろう。したがって、本明細書中に提供されている方法、化合物および組成物は、上記の実施形態、方法、化学式、または実施例によって限定すべきものではなく、寧ろ、本明細書中に提供されている方法、化合物、ならびに組成物の範囲および趣旨内の、全ての実施形態および方法を包含するものである。
【0128】
本明細書中に開示されている各参考文献は、その全体が、参照により援用されている。