(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱伝達するためのシステム及びそのシステムの動作方法
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 671
(21)【出願番号】P 2021046465
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】10 2020 107 631.2
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2021 101 127.2
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナビット ドゥラニ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ヘッツェル
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ハース
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-199113(JP,A)
【文献】特開2019-209938(JP,A)
【文献】特開2019-211014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0265819(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0001737(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0366800(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0008516(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a、1b)であって、前記システムは、
-圧縮機(4)、凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)、膨脹部材(9、10)が上流側に設置されて車室の供給空気を調節するための蒸発器として動作する1つ以上の冷媒-空気熱交換器(6、7)、及び膨脹部材(13)が上流側に設置されて自動車の駆動部品を温度調節するための冷却剤と冷媒間の熱伝
達をするための蒸発器として動作する1つ以上の第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)を備え
、
冷媒と周囲空気との間の熱伝達のための冷媒-空気熱交換器(17)が、冷媒の流動方向で前記第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)の後に配置された冷媒回路(2a、2b)と、
-前記第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)及び車室の供給空気を加熱するための加熱熱交換器として動作する冷却剤-空気熱交換器(31)を備える1つ以上の冷却剤回路(3)と、を含み、
前記冷媒回路(2a、2b)は、低圧側に
、前記第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)の上流側に設置された前記膨脹部材(13)から分岐して、蒸発器として動作する前記熱交換器(6、7、8)を迂回する
ように形成されたバイパス流動経路(18)を備え
、
前記膨脹部材(9、10)が上流側に設置されて前記車室の供給空気を調節するための前記1つ以上の冷媒-空気熱交換器(6、7)、前記膨脹部材(13)が上流側に設置された前記第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)、及び前記バイパス流動経路(18)に、それぞれ互いに同時に、そして互いに独立的に、冷媒が供給されるように形成されていることを特徴とする、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項2】
前記冷媒と周囲空気との間の熱伝
達のため
の冷媒-空気熱交換器(17)は、周囲空気を意図した通りに案内するための空気ダクト内に配置され、前記空気ダクトは、流動案内装置(63)により閉鎖できることを特徴とする請求項
1に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項3】
空気案内装置(63)は、能動的に制御及び調整可能に形成されていることを特徴とする請求項
2に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項4】
前記冷媒回路(2a、2b)は、高圧側に、凝縮機/ガス冷却器として動作する前記第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を迂回するバイパス流動経路(19a、19b)を備えて形成され、前記バイパス流動経路は分岐点(20)から入口部(21、23)まで延びることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項5】
前記入口部(21)は、膨脹機能と3つのポート(a、b、c)を有する3方向バルブ(21)として形成されていることを特徴とする請求項
4に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項6】
前記3方向バルブ(21)は、第1ポート(a)において、前記第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を迂回するバイパス流動経路(19a)に連結され、第2ポート(b)において、前記第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)に連結され、そして第3ポート(c)において、
前記冷媒と周囲空気との間の熱伝
達のための冷媒-空気熱交換器(17)に連結されていることを特徴とする請求項
5に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項7】
前記冷媒回路(2b)は、
前記冷媒と周囲空気との間の熱伝
達のため
の冷媒-空気熱交換器(17)を迂回するバイパス流動経路(25)を備えて形成され、前記バイパス流動経路
(25)は、分岐点(24)から入口部(26)まで延びて、前記分岐点(24)は前記第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)と
前記冷媒と周囲空気との間の熱伝
達のため
の冷媒-空気熱交換器(17)間に配置され、膨脹機能と3つのポート(a、b、c)を有する3方向バルブ(24)として形成されていることを特徴とする請求項
1乃至
4のいずれか1項に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項8】
前記3方向バルブ(24)は、第1ポート(a)において、
前記冷媒と周囲空気との間の熱伝達のため
の冷媒-空気熱交換器(17)を迂回するバイパス流動経路(25)に連結され、第2ポート(b)において、
前記冷媒と周囲空気との間の熱伝
達のため
の冷媒-空気熱交換器(17)に連結され、そして第3ポート(c)において、凝縮機/ガス冷却器として動作する前記第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)に連結されていることを特徴とする請求項
7に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項9】
低圧側に、蒸発器として動作する前記熱交換器(6、7、8)の周囲に形成されるバイパス流動経路(18)と蒸発器として動作する前記第2冷媒-冷却剤熱交換器
(8)を有する流動経路とがそれぞれ分岐点(13)から入口部(15)まで延長して形成され、前記分岐点(13)は膨脹機能と3つのポート(a、b、c)を有する3方向バルブ(13)として形成されていることを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項10】
前記3方向バルブ(13)は、第1ポート(a)において、蒸発器として動作する前記熱交換器(6、7、8)を迂回する前記バイパス流動経路(18)に連結され、第2ポート(b)において、蒸発器として動作する前記第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)を有する流動経路に連結され、そして第3ポート(c)において、車室の供給空気を調節するための蒸発器として動作する冷媒-空気熱交換器(6、7)を有する流動経路に対する分岐点に連結されていることを特徴とする請求項
9に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項11】
第1ポート(a)及び第2ポート(b)は、それぞれ流出口として形成され、第3ポート(c)はそれぞれ前記3方向バルブ(13、21、24)の流入口として形成されていることを特徴とする請求項
5乃至
10のいずれか1項に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項12】
前記3方向バルブ(13)は、一動作位置において、全てのポート(a、b、c)が閉鎖されるように形成されていることを特徴とする請求項
9乃至
11のいずれか1項に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項13】
前記3方向バルブ(13、21、24)は、一動作位置において、前記第1ポート(a)が閉鎖されて前記第2ポート(b)及び第3ポート(c)が開放されるか、または一動作位置において、前記第2ポート(b)が閉鎖されて前記第1ポート(a)及び第3ポート(c)が開放されるように形成されていることを特徴とする請求項
11又は
12に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項14】
前記3方向バルブ(13、21、24)は、閉鎖された第1ポート(a)、開放された第2ポート(b)、及び開放された第3ポート(c)を有する動作位置において、前記開放されたポート(b、c)間の通路が部分的に、または完全に開放されて、冷媒が前記3方向バルブ(13、21、24)を貫流する時、膨脹されるか、または圧力損失なく、前記3方向バルブ(13、21、24)を通じて案内されるように形成されていることを特徴とする請求項
13に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項15】
前記冷却剤回路(3)は、前記車室の供給空気を加熱するための加熱熱交換器として動作する第1冷却剤-空気熱交換器(31)及び冷却剤から周囲空気に熱伝達のための第2冷却剤-空気熱交換器(33)を備えて形成されていることを特徴とする請求項1乃至
14のいずれか1項に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項16】
前記冷却剤回路(3)は、第1流動経路及び第2流動経路を有し、前記第1流動経路と前記第2流動経路はそれぞれ、一分岐点から一入口部まで延びるように形成され、互いに同時に、そして互いに独立的に冷却剤が供給できるように配置され、加熱熱交換器として動作する前記第1冷却剤-空気熱交換器(31)は前記第1流動経路内に、そして冷却剤から周囲空気への熱伝
達のための前記第2冷却剤-空気熱交換器(33)は前記第2流動経路内に配置されていることを特徴とする請求項
15に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項17】
前記第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)は、第2冷却剤回路の部品として形成されていることを特徴とする請求項1乃至
16のいずれか1項に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項18】
前記第2冷却剤回路は、冷却剤から周囲空気への熱伝
達のための冷却剤-空気熱交換器(41)を備えて形成されていることを特徴とする請求項
17に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項19】
第1冷却剤回路(3)の冷却剤から周囲空気への熱伝
達のための冷却剤-空気熱交換器(33)及び/または第2冷却剤回路の冷却剤から周囲空気への熱伝
達のための冷却剤-空気熱交換器(41)は、前記冷媒回路(2a、2b)の
前記冷媒と周囲空気との間の熱伝
達のための冷媒-空気熱交換器(17)と共に、前記流動案内装置(63)によって閉鎖可能であり、周囲空気を意図した通りに案内するための空気ダクト内に配置されていることを特徴とする請求項
2乃至
18のいずれか1項に記載の、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム。
【請求項20】
-蒸発器として動作する1つ以上の冷媒-空気熱交換器(6、7)を貫流する時、車室の供給空気から冷媒回路(2a、2b)内を循環する冷媒に熱を伝達する段階及び/または
-蒸発器として動作する1つ以上の冷媒-冷却剤熱交換器(8)を貫流する時、冷却剤から前記冷媒回路(2a、2b)内を循環する冷媒に熱を伝達し、1つ以上の駆動部品を温度調節する段階と、
-冷媒-冷却剤熱交換器(5)を貫流する時に、前記冷媒回路(2a、2b)内を循環する冷媒の熱を冷却剤回路(3)内を循環する冷却剤に伝達する段階と、を含み、
前記冷却剤は、緩熱されて少なくとも部分的に液化し、そして前記冷却剤回路(3)の冷却剤は加熱されることを特徴とする、請求項1乃至
19のうちのいずれか1項に記載の車室の空気を空調して自動車の
駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a、1b)の動作方法。
【請求項21】
請求項1乃至
19のうちのいずれか1項に記載の車室の空気を空調して自動車の
駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a、1b)を再加熱モードまたは加熱モードで動作させるための請求項
20に記載の方法であって、
冷媒回路(2a、2b)の冷媒と周囲空気との間の熱伝
達のための冷媒-空気熱交換機(17)及び/または第1冷却剤回路(3)の冷却剤から周囲空気に熱伝
達をするための冷却剤-空気熱交換器(33)及び/または第2冷却剤回路の冷却剤から周囲空気への熱伝
達のための冷却剤-空気熱交換器(41)が配置される、周囲空気を意図した通りに案内するための空気ダクトの流動案内装置(63)が閉鎖されて前記空気ダクトに周囲空気が供給されず、前記冷媒回路(2a、2b)の冷媒と周囲空気との間で熱が伝達されず、及び/または冷却剤から周囲空気に熱が伝達されないことを特徴とする、車室の空気を空調して自動車の
駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a、1b)の動作方法。
【請求項22】
前記流動案内装置(63)は、前記システム(1a、1b)の動作モードによって、そして必要によって能動的に制御されることを特徴とする請求項
21に記載の、車室の空気を空調して自動車の
駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a、1b)の動作方法。
【請求項23】
請求項1乃至
19のうちのいずれか1項に記載の車室の空気を空調して自動車の
駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a、1b)が周囲空気を熱源とする加熱モードで動作する時の、請求項
20に記載の方法であって、
バイパスモードで分岐点(13)として形成される3方向バルブ(13)は、他の動作モードで動作する時、蒸発器として動作する熱交換器(6、7、8)を迂回するバイパス流動経路(18)を通じて冷媒が案内され、前記熱交換器(6、7、8)には冷媒が供給されないように動作され、前記3方向バルブ(13)は、他のモードで動作する時、蒸発器として動作する1つ以上の冷媒-空気熱交換器(6、7)を有する流動経路に対する分岐点に連結された第3ポート(c)と前記バイパス流動経路(18)に連結された第1ポート(a)との間では完全に開放されて、他のモードで動作する時、蒸発器として動作する冷媒-冷却剤熱交換器(8)を有する流動経路に連結された第2ポート(b)は閉鎖されることを特徴とする、車室の空気を空調して自動車の
駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a、1b)の動作方法。
【請求項24】
入口部(21)または分岐点(24)として形成されて、周囲空気を冷媒の熱源として使用するための3方向バルブ(21、24)は、冷媒が前記3方向バルブ(21、24)を貫流する時、高圧レベルから低圧レベルに膨脹されるように動作し、前記3方向バルブ(21)は第3ポート(c)と第1ポート(a)との間で冷媒を膨脹方式で貫流させるために開放されており、第1ポート(a)は閉鎖されることを特徴とする請求項
23に記載の、車室の空気を空調して自動車の
駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a、1b)の動作方法。
【請求項25】
請求項1乃至
19のうちのいずれか1項に記載の車室の空気を空調して自動車の
駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a、1b)を使用する、電動式ドライブまたは電気モータと内燃機関で構成されたハイブリッドドライブを備えることを特徴とする自動車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱伝達するためのシステムに関する。本システムは凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器、車室の供給空気を調節するための蒸発器として動作する1つ以上の冷媒-空気熱交換器、及び自動車の駆動部品を温度調節するための冷却剤と冷媒との間の熱伝逹のための蒸発器として動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器を備える冷媒回路と、第1冷媒-冷却剤熱交換器及び加熱熱交換器として動作する冷却剤-空気熱交換器を備える冷却剤回路とを含む。本発明はまた、上記システムを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、異なる駆動概念を有する自動車が知られている。これらの概念は、内燃機関、電気機関(電気モーター)、または両タイプの機関の組合せを使用したドライブを基盤とする。その結果、内燃機関と電気モーター駆動式ドライブが結合された自動車は、ハイブリッドドライブを有するので、自動車は必要に応じて電気、電気/内燃機関、または内燃機関方式で駆動できる。この場合、バッテリーが内燃機関を通じてだけでなく電気回路網を通じて充電できるハイブリッドドライブが装着された自動車(一般的にプラグインハイブリッドまたはPHEV(「plug in hybrid electric vehicle」と称される)の多くは、内燃機関を通じてのみ充電できるバッテリーが装着された自動車よりも強力なバッテリーを備えて形成されている。
【0003】
電気またはハイブリッドドライブが装着された従来の自動車は、一方で、高電圧バッテリー、内部充電器、変圧器、インバータ、及び電気モーターのような追加部品を含んで形成されることにより、一般的に純粋な内燃機関ドライブを有する自動車よりも高い冷却需要を有する。空調システムの冷媒回路の他にも、ハイブリッド駆動式自動車は、駆動部品から放出される熱を排出するために循環する冷却剤が、空冷式熱交換器を通じて案内される冷却剤回路を備えて形成されている。特に、高電圧バッテリーの許容温度制限を遵守するために、バッテリー冷却には空調システムの冷媒回路との熱的結合のための追加冷媒-冷却剤熱交換器を備える冷却剤回路またはバッテリー冷却器として形成された直接冷媒冷却式熱交換器バッテリーが提供される。バッテリー冷却のために冷媒の蒸発器として動作する冷媒-冷却剤熱交換器はチラーと称される。知られているように、PHEVから熱を分配するためのシステムは結果的に1つ以上の冷媒回路及び冷却剤回路を有する。
【0004】
他方で、電気自動車及びハイブリッドドライブ装着車両はもちろん、燃料電池車両及び高効率内燃機関駆動車両は、熱的快適性の要件によって、低い周囲温度では車室を加熱するのに充分な廃熱を発生しないことが知られている。費用効率的で空間を節約する第1ソリューションは、例えば、車室に流入する供給空気を加熱するためのPTCヒーターで形成された電気ヒーターである。しかし、PTCヒーターが搭載されたシステムは、車室暖房のための供給空気の吹き出し温度が低い場合、高いエネルギー消費を有する。エネルギー效率的に動作できない電気補助ヒーターはまた、バッテリー駆動自動車の走行距離を短縮させる。第2のエネルギー節約ソリューションは、多様な熱源とヒットシンクを使用するが、電気ヒーターを使用する第1ソリューションよりも遥かに大きな空間を占める熱ポンプ機能のある空調システムである。
【0005】
バッテリー駆動自動車内で熱分配のための熱ポンプ機能のある従来技術で公知となった空調システムの形成は非常に複雑で、冷媒側面と冷却剤側面の両方、及び空気側面で多くの部品を必要とし、これは高いシステム費用を引き起こす。それと同時に、例えば、自動車の従来の空調システムの空調ユニット内には、車室の供給空気を冷却及び/または除湿するための蒸発器として動作する冷媒-空気熱交換器と、凝縮機/ガス冷却器として動作する冷媒-空気熱交換器と、それぞれの場合に車室の供給空気を加熱するための冷却剤-空気熱交換器と共に3つ以上の熱交換器が配置される。特許文献1には、エンジン冷却回路と、蒸発器、圧縮機、車室用に調節される空気に冷媒から熱を供給するための熱交換器、及び冷媒回路の冷媒とエンジン冷却回路の冷却剤との間の熱伝逹のための熱交換器を有する冷媒回路を含むハイブリッド車両の熱分配装置が開示されている。この場合、冷媒と冷却剤との間の熱伝逹のための熱交換器は、冷却剤から蒸発される冷媒への熱伝逹のための蒸発器として、そして凝縮される冷媒から冷却への熱伝逹のための凝縮機として動作する。
【0006】
特許文献2は、冷媒回路、パワートレイン冷却剤回路、及び加熱トレイン熱運搬回路を備える自動車用熱流管理装置を示す。冷媒回路は圧縮機、間接凝縮機、膨脹部材、周辺熱交換器、蒸発器、及びそれぞれ割り当てられた膨脹部材を有するチラーを備える。パワートレイン冷却剤回路は冷却剤ポンプ、チラー、電気モーター熱交換器、及びパワートレイン冷却剤ラジエーターを備えて形成されており、一方、加熱トレイン熱運搬回路は冷却剤ポンプ、間接凝縮機、及び加熱熱交換器を備えて形成される。冷媒回路は、一方では冷却器を通じてパワートレイン冷却剤回路と連結されており、他方では間接凝縮機を通じて加熱トレイン熱運搬回路と熱的に連結されており、パワートレイン冷却剤回路と加熱トレイン熱運搬回路は冷媒回路を通じて互いに間接的にのみ熱的に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102013105747号明細書
【文献】独国特許出願公開第102019109796号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、特に純粋な電気(電動式)ドライブまたは電気及び内燃機関コンビドライブが装着された自動車に関し、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱伝達するためのモジュール式システムを提供することにある。上記システムは車室の供給空気の快適な加熱の他に、パワートレインの部品を調節し、特に電気ドライブの高電圧バッテリーの温度調節を可能にする。それと同時に上記システムは冷却装置モードと加熱モードの両方で最大効率で動作できる。システムに必要な空間はもちろん、製造、メンテナンス及び運営費用が最小になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、多様な熱源及びヒットシンクの連結によって熱流管理システムと称される、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するための本発明によるシステムによって達成される。
上記システムは、冷媒回路及び1つ以上の冷却剤回路を含む。上記冷媒回路は圧縮機、凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器、膨脹部材が上流側に設置されて車室の供給空気を調節するための蒸発器として動作する1つ以上の冷媒-空気熱交換器、及び膨脹部材が上流側に設置されて自動車の駆動部品を温度調節するための冷却剤と冷媒との間の熱伝逹のための蒸発器として動作する1つ以上の第2冷媒-冷却剤熱交換器を備えて形成される。
上記駆動部品は好ましくは自動車の電気パワートレインの電気部品、例えば、高電圧バッテリーまたは電気モーターである。冷媒の液化が、例えば、冷媒R134aを使用する場合のような臨界以下の動作で行われるか、または二酸化炭素を使用する特定周囲条件で行われる場合は、熱交換器が凝縮機と称される。熱伝逹の一部分は一定の温度で行われる。臨界超過の動作または熱交換器内で臨界超過の熱が放出される場合は、冷媒の温度が一定して減少する。この場合は、熱交換器がガス冷却器と称される。臨界超過の動作は、例えば、二酸化炭素を冷媒として使用する冷媒回路の特定の周囲条件または動作方式において示される。
【0010】
上記1つ以上の冷却剤回路は、冷媒回路の第1冷媒-冷却剤熱交換器と車室の供給空気を加熱するための加熱熱交換器として動作する冷却剤-空気熱交換器を備えて形成される。
【0011】
本発明の概念によれば、冷媒回路は低圧側に蒸発器として動作する熱交換器を迂回するバイパス流動経路を有する。冷媒回路は好ましくは、膨脹部材が上流側に設置された車室の供給空気を調節するための1つ以上の冷媒-空気熱交換器及び膨脹部材が上流側に設置された、駆動部品を温度調節するための冷却剤と冷媒間の熱伝逹のための第2冷媒-冷却剤熱交換器、そしてバイパス流動経路にそれぞれ互いに同時に、そして互いに独立的に冷媒が供給されるように形成される。それと同時に冷媒回路はそれぞれ蒸発器として動作する熱交換器と冷媒の流動方向に上記熱交換器の前に設置された膨脹部材を有する2つ以上の流動経路とバイパス流動経路を備える。上記流動経路は互いに平行して配置され、必要によって個別的に、または互いに同時に冷媒が供給される。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態によれば、冷媒回路には冷媒と周辺空気との間の熱交換のための追加冷媒-空気熱交換器が提供されており、このような追加冷媒-空気熱交換器は冷媒の流れ方向に第1冷媒-冷却剤熱交換器の後に配置される。冷媒回路と1つ以上の冷却剤回路との間の熱的連結部として形成された第1冷媒-冷却剤熱交換器及び冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための冷媒-空気熱交換器は互いに直列に配置される。
【0013】
冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための冷媒-空気熱交換器は好ましくは周囲空気を意図した通りに案内するための空気ダクト内に配置されている。特に、自動車の前方領域で一端部面に位置設定された上記空気ダクトは特に端部面で流動案内装置により閉鎖される。上記空気案内装置は好ましくは能動的に制御可能であり、そして好ましくは電気駆動方式で調整される。空気ダクトは空気案内装置により完全に、または部分的に開放されるか閉鎖される。空気ダクト内には断面を通じて周囲空気を吸入するためのファンが配置される。
【0014】
本発明の一改善例によれば、冷媒回路は高圧側に凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器を迂回するバイパス流動経路を有し、このようなバイパス流動経路は一分岐点で一入口部まで延びる。
【0015】
本発明の第1代案的な実施形態によれば、入口部は膨脹機能と3つのポートを有する3方向バルブで形成されている。この場合、上記3方向バルブは好ましくは第1ポートで凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換機を迂回するバイパス流動経路に連結されており、第2ポートで凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器に連結されており、そして第3ポートで冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための冷媒-空気熱交換器に連結されている。
【0016】
本発明の第2代案的な実施形態によれば、冷媒回路は冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための上記冷媒-空気熱交換器を迂回するバイパス流動経路を備えて形成されており、上記バイパス流動経路は一分岐点で一入口部まで延びる。上記分岐点は好ましくは第1冷媒-冷却剤熱交換器と、冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための冷媒-空気熱交換器との間に配置されており、膨脹機能と3つのポートを有する3方向バルブとして形成されている。この場合、上記3方向バルブは好ましくは第1ポートで冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための冷媒-空気熱交換器を迂回するバイパス流動経路に連結されており、第2ポートで冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための冷媒-空気熱交換器に連結されており、そして第3ポートで凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤の熱交換器に連結されTいる。
【0017】
本発明の追加の好ましい実施形態によれば、低圧側で、蒸発器として動作する熱交換器の周囲に形成されたバイパス流動経路と蒸発器として動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器を有する流動経路とがそれぞれ一分岐点から一入口部まで形成されている。上記分岐点は好ましくは膨脹機能と3つのポートを有する3方向バルブとして形成されている。この場合、上記3方向バルブは好ましくは第1ポートで蒸発器として動作する熱交換器を迂回するバイパス流動経路に連結されており、第2ポートで蒸発器として動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器を有する流動経路に連結されており、そして第3ポートで車室の供給空気を調節するための蒸発器として動作する冷媒-空気熱交換器を有する流動経路に対する分岐点に連結されている。
【0018】
3方向バルブは、スイッチング位置によって遮断バルブ及び/または膨脹バルブとして異なる機能で動作する。3方向バルブの場合、好ましくはそれぞれ第1ポート及び第2ポートが冷媒の流出口として形成されており、そして第3ポートが冷媒の流入口として形成されている。3方向バルブはそれぞれの場合好ましくは、第1動作位置では全てのポートが閉鎖されて、第2動作位置では第1ポートが閉鎖されて、第2ポート及び第3ポートは開放されるか、または第3動作位置では第2ポートが閉鎖されて、第1ポート及び第3ポートは特に完全に開放されるように形成されている。これと同時に3方向バルブはそれぞれの場合、閉鎖された第1ポート、開放された第2ポート、及び開放された第3ポートを有する第2動作位置で上記開放されたポート間の通路が部分的に、または完全に開放されて冷媒が上記3方向バルブを貫流する時、膨脹されるか、または圧力損失なく上記3方向バルブを通じて案内されるように形成されている。
【0019】
本発明の一改善例によれば、冷却剤回路が、上記車室の供給空気を加熱するための加熱熱交換器として動作する第1冷却剤-空気熱交換器(31)及び冷却剤から周囲空気に熱伝逹のための第2冷却剤-空気熱交換器を備えて形成されている。冷却剤回路は好ましくはそれぞれの場合、一分岐点から一入口部まで延びて、互いに同時に、そして互いに独立的に冷却剤が供給される第1流動経路と第2流動経路を有する。この場合、加熱熱交換器として動作する第1冷却剤-空気熱交換器は上記第1流動経路内に、そして冷却剤か周辺空気への熱伝逹のための第2冷却剤-空気熱交換器は上記第2流動経路内に配置されている。
【0020】
冷却剤回路の入口部または分岐点は好ましくは3方向バルブとして、または冷却剤-冷却剤熱交換器として形成されている。
【0021】
本発明の特別な長所は、自動車の駆動部品の温度を調節するための冷却剤と冷媒との間の熱伝逹のための第2冷媒-冷却剤熱交換器が追加の第2冷却剤回路の部品として形成されるという点である。第2冷却剤回路は好ましくは冷却剤から周辺空気に熱を伝達するための冷却剤-空気熱交換器を有する。第1冷却剤回路の冷却剤から周囲空気への熱伝逹のための冷却剤-空気熱交換器及び/または第2冷却剤回路の冷却剤から周囲空気への熱伝逹のための冷却剤-空気熱交換機は、好ましくは、冷媒回路の冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための冷媒-空気熱交換器と共に周囲空気を意図した通りに案内するための、流動案内装置により閉鎖可能な空気ダクト内に配置されている。冷却剤-空気熱交換器及び冷媒空気熱交換器には好ましくは順に、または同時に、そしてそれによって互いに独立的に周囲空気が供給される。周囲空気が連続的に供給される冷媒-空気熱交換器及び冷却剤-空気熱交換器の配置において、上記冷媒-空気熱交換器は周囲空気の流動方向に、好ましくは冷却剤-空気熱交換器間に配置されており、この場合、第1冷却剤回路の冷却剤-空気熱交換器には真っ先に周囲空気が流入する。代案的に、冷媒-空気熱交換器は、真っ先にまたは最後に周囲空気が流入するように周囲空気の流れ方向に配置される。
【0022】
上記課題はまた、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するための上記システムを動作させるための本発明による方法によって解決される。上記方法は次の段階を含む。
【0023】
-蒸発器として動作する1つ以上の冷媒-空気熱交換器を貫流する時、車室の供給空気から冷媒回路内を循環する冷媒に熱を伝達する段階及び/または
【0024】
-蒸発器として動作する1つ以上の冷媒-冷却剤熱交換器を貫流する時、冷却剤から冷媒回路内を循環する冷媒に熱を伝達し、1つ以上の駆動部品、好ましくは電気パワートレインを温度調節、特に冷却する段階と
【0025】
-冷媒-冷却剤熱交換器を貫流する時、冷媒回路内を循環する冷媒の熱を冷却剤回路内を循環する冷却剤に伝達する段階、この場合、上記冷却剤は緩熱され、少なくとも部分的に液化し、そして上記冷却剤回路の冷却剤は加熱される。
【0026】
本発明の一改善例によれば、上記システムが再加熱モードまたは加熱モードで動作する時、冷媒回路の冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための冷媒-空気熱交換器及び/または第1冷却剤回路の冷却剤から周囲空気への熱伝逹のための冷却剤-空気熱交換器及び/または第2冷却剤回路の冷却剤から周囲空気への熱伝達のための冷却剤-空気熱交換器が配置されている、周囲空気を意図した通りに案内するための空気ダクトの流動案内装置が閉鎖されて上記空気ダクトに周囲空気が供給されず、上記冷媒回路の冷媒と周囲空気との間で熱が伝達されず、そして/または冷却剤から周囲空気に熱が伝達されない。この場合、上記流動案内装置は好ましくはシステムの動作モード及び必要によって能動的に、特に電気的に制御される。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態によれば、システムが周囲空気を熱源とする加熱モードで動作する時、バイパスモードで分岐点として形成された3方向バルブは、他の動作モードで動作する時、蒸発岐路として動作する熱交換器を迂回するバイパス流動経路を通じて冷媒が案内されて、上記熱交換器には冷媒が供給されないように動作させる。この場合、上記3方向バルブは、他のモードで動作する時、蒸発岐路として動作する1つ以上の冷媒-空気熱交換器を有する流動経路に対する分岐点に連結された第3ポートと上記バイパス流動経路に連結された第1ポートとの間では完全に開放されて、他のモードで動作する時、蒸発岐路として動作する冷媒-冷却剤熱交換器を有する流動経路に連結された第2ポートは閉鎖される。
【0028】
入口部または分岐点として形成された3方向バルブは、周囲空気を冷媒の熱源として使用するために、冷媒がこのような3方向バルブを貫流する時、高圧レベルから低圧レベルに膨脹するように動作する。3方向バルブは第3ポートと第1ポートとの間で、冷媒と周囲空気の間の熱伝逹のための、特に周囲空気から冷媒に熱伝達のための冷媒-空気熱交換器に上記冷媒を膨脹方式で貫流させるために開放されており、第1ポートは閉鎖される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態は、電動式ドライブまたは電気モーターと内燃機関で構成されたハイブリッドドライブを備える自動車でシステムの使用を可能にする。
【発明の効果】
【0030】
純粋な電気駆動式または内燃機関を備えるハイブリッド駆動式自動車のための熱ポンプ機能が統合された本発明によるシステムは、要約すれば次のような多様な長所がある。
【0031】
-冷房、除湿、及び暖房だけでなくバッテリー及びパワートレインの部品の温度調節、特に冷却を通じて車室の空気を空調して非常に広範囲な周囲温度で電気自動車の熱管理に対する全ての要求事項を満たし、
【0032】
-高い水準の廃熱回収、この場合冷媒回路の廃熱を使用して電気パワートレインの部品から熱を回収して車室の供給空気をエネルギー効率的に加熱し、この場合
【0033】
-高い水準の廃熱使用と共に特に再加熱モードで動作する間、最大効率が達成され、
【0034】
-冷媒側と空気側の両方で複雑性の低いコンパクトなデザインでモジュール式構造及び最小設置空間が達成され、そして
【0035】
-製造及びメンテナンス及び運営にかかる費用が低い。
【0036】
本システム、特に冷媒回路は使用される冷媒に関係なく、そのためR134a、R744、R1234yfまたは他の冷媒にも対応している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】低圧側のバイパス流動経路を有する冷媒回路及びこのような冷媒回路とそれぞれ熱的に連結された2つの冷却剤回路、そして周囲空気を周囲空気熱交換器に案内するための能動的に制御可能な空気案内装置を含む、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するための第1システムを示す図である。
【
図2a】電気パワートレインの駆動部品の能動冷却と共に冷却装置モードで動作する間の、
図1によるシステムを示す図である。
【
図2b】冷却装置モードで動作する間の、
図1によるシステムを示す図である。
【
図2c】電気パワートレインの駆動部品の能動冷却で動作する間の、
図1によるシステムを示す図である。
【
図3a】電気パワートレインの駆動部品と冷媒のヒットシンクまたは熱源として周囲空気の受動冷却と共に再加熱モードで動作する間の、
図1によるシステムを示す図である。
【
図3b】電気パワートレインの駆動部品の能動冷却と共に再加熱モードで動作する間の、
図1によるシステムを示す図である。
【
図3c】電気パワートレインの駆動部品及び冷媒のための熱源として周囲空気の能動冷却と共に再加熱モードで動作する間の、
図1によるシステムを示す図である。
【
図4a】加熱モードで、特に、電気パワートレインの駆動部品と冷媒のための熱源として周囲空気の能動冷却で動作する間の、
図1によるシステムを示す図である。
【
図4b】冷媒のための熱源として周囲空気を使用して加熱モードで動作する間の、
図1によるシステムを示す図である。
【
図4c】電気パワートレインの駆動部品の能動冷却と共に加熱モードで動作する間の、
図1によるシステムを示す図である。
【
図5】低圧側の第1バイパス流動経路、高圧側の第2バイパス流動経路、及び冷媒と周囲空気との間の熱伝逹のための冷媒-空気熱交換器の循環のための第3バイパス流動経路を有する冷媒回路及びこのような冷媒回路とそれぞれ熱的に連結された2つの冷却剤回路を含む、車室の空気を調和して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するための第2システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、特にバッテリーまたは電気モーターのような自動車の電気パワートレインの駆動部品だけではなく、車室の供給空気を調節するための蒸発器として動作する熱交換器(6、7、8)を有する冷媒回路(2a)及び同様に車室の供給空気を調節するための第1冷却剤回路(3)を含む、車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するためのシステム(1a)を示す。第1冷却剤回路(3)は、特に、冷媒から冷却剤への熱伝逹のために、冷媒-冷却剤熱交換器(5)を通じて冷媒回路(2a)に熱的に連結されている。第2冷却剤回路で循環する冷却剤と自動車のパワートレイン、特に電気パワートレインの駆動部品との間で熱を伝達するために、そしてそれと同時に、必要に応じて上記駆動部品を温度調節するために形成される第2冷却剤回路は、2つの熱交換器(8、41)のみを用いて例示されている。両方の冷却剤回路(3)は、それぞれ冷媒回路(2a)に直接熱的に連結されている。
【0039】
好ましくは互いに流体的に分離された、システム(1a)の冷却剤回路(3)には、それぞれ互いに独立的に、互いに異なる冷却剤が供給される。これらの冷却剤は、それぞれ冷却剤回路(3)のうちの1つに割り当てられ、その結果、冷却剤のうちの1つは、動作モードによって冷却剤回路(3)のうちの1つの内で循環しない。冷却剤回路(3)は流動の側面で互いに完全に分離されている。
【0040】
冷媒回路(2a)は、冷媒を吸入及び圧縮するための圧縮機(4)を備える。圧縮及び過熱された気体状態の冷媒は、冷却剤冷却凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)に案内される。第1冷媒-冷却剤熱交換機(5)を貫流する時、熱は冷媒から第1冷却剤回路(3)を循環する冷却剤に伝達される。この場合、冷媒は必要によって、そしてシステム(1a)の動作モードによって緩熱(de-heated)されて液化し、場合によっては過冷却される。冷媒回路(2a)は、第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を通じて高圧側の第1冷却剤回路(3)と熱的に連結されている。
【0041】
冷媒の流れ方向に、第1冷媒-冷媒熱交換器(5)に後続して、冷媒は第1分岐点(11)、冷媒の流れ方向に、第1分岐点(11)の下流に配置された第2分岐点(12)、及び冷媒の流れ方向に、第2分岐点(12)の下流に配置された第3分岐点(13)で、必要によって、4つの流動経路のうちの1つ乃至3つに分割される。4つの流動経路のうちの3つはそれぞれ膨脹部材(9、10、13)及び蒸発器として動作する熱交換機(6、7、8)を備える。第4流動経路は、蒸発器として動作する熱交換器(6、7、8)を迂回する第1バイパス流動経路(18)として形成されている。
【0042】
流動経路を通じて案内された冷媒の部分質量流れ(partial mass flow)は、第1入口部(14)または第2入口部(15)で再び集まり、共通冷媒質量流れとして圧縮機(4)によって吸入される。冷媒回路(2a)は閉鎖されている。
【0043】
それぞれが蒸発器として動作する熱交換器(6、7、8)を有する流動経路または第1バイパス流動経路(18)には、必要によって個別的にまたは共通で、そして同時に冷媒が供給される。部分質量流れの比率は、必要によって0%~100%になり得る。
【0044】
第1分岐点(11)で、冷媒の質量流れは、第1流動経路を通じて案内される第1部分質量流れと第2流動経路を通じて案内される第2部分質量流れとに分けられる。第1流動経路内には、冷媒の流動方向の上流側に配置された第1膨脹部材(9)を有する蒸発器として動作する第1冷媒-空気熱交換器(6)が配置され、一方で第2流動経路内には、冷媒の流動方向の上流側に配置された第2膨脹部材(10)を有する蒸発器として動作する第2冷媒-空気熱交換器(7)が配置されている。冷媒の第1部分質量流れと第2部分質量流れは、第1入口部(14)で互いに混合される。それぞれの冷媒-空気熱交換器(6、7)を貫流する時に蒸発される冷媒は、車室に供給される空気質量流れから熱を吸収する。この場合、空気質量流れは、除湿及び/または冷却される。第1冷媒-空気熱交換器(6)は、車室の前方領域に供給される供給空気質量流れ(supply air mass flow)を調節するために空調ユニットの第1ハウジング(60)内に配置されており、一方で第2冷媒-空気熱交換器(7)は、車室の後方領域を調節するための空調ユニットの第2ハウジング(61)内に配置されている。
【0045】
第2分岐点(12)で、冷媒の質量流れは、第2流動経路を通じて案内される第2部分質量流れと第3流動経路を通じて案内される第3部分質量流れとに分けられる。第3流動経路内には、冷媒の流動方向の上流側に第3膨脹部材(13)を有する蒸発器として動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)が配置されている。冷媒の第3部分質量流れは、第2入口部(15)で残りの質量流れに混合される。
【0046】
第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)を貫流する時に蒸発される冷媒は、図示しない第2冷却剤回路を循環する冷却剤の熱を吸収する。この場合、冷却剤が冷却される。チラーと称される第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)は、ポート(40)を通じて、特に自動車の電気パワートレインの駆動部品を調節するための、例えば、高電圧バッテリーのようなバッテリー、電気モーター、内部充電器、変圧器、またはインバターを温度調節するための第2冷却剤回路に連結されている。
【0047】
システム(1a)が有するポート(40)上で冷媒回路(2a)の低圧側に連結された図示しない第2冷却剤回路は、特に周囲温度の値が高い時に、既設定された限界値未満にバッテリーを冷却して、バッテリーの温度を維持するのに使われる。ウォーターチラーと称される第2冷却剤回路は、同様に特に、電気パワートレインの部品から廃熱を回収することにも使われる。この場合、熱は蒸発熱として、冷媒回路(2a)を循環する冷媒に伝達される。このような方式で、可能な加熱出力の他に、システム(1a)の効率が最大化される。特に、加熱モードで動作する場合、第2冷却剤回路を有するシステム(1a)の形成は、特に電気駆動部品によって発生する廃熱を収集して第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)の冷媒に蒸発熱を提供できるようにする。このような廃熱回収は、自動車の全般的なエネルギー効率と熱効率を向上させることを助ける。そうでなければ、損失熱出力として計上される熱は、蒸発熱としてシステム(1a)によって吸収され、これは加熱モードで動作する時にシステム(1a)の出力及び効率を増加させる。
【0048】
第3分岐点(13)で、冷媒は、第3流動経路またはバイパス流動経路(18)を通じて案内される。バイパス流動経路(18)は、冷媒連結ラインの他に追加部品を有さず、冷媒が蒸発器として動作する熱交換器(6、7、8)を経るように案内する役割を果たす。第3流動経路を通じて流れる冷媒の質量流量は、第2入口部(15)で残りの質量流量と混合される。
【0049】
第3流動経路またはバイパス流動経路(18)を通じて案内される冷媒の質量流量が第1または第2流動経路に逆流することを防止するために、第1入口部(14)と第2入口部(15)との間に逆流防止装置(16)、特にチェックバルブ(16)が提供される。
【0050】
冷媒回路(2a)は、このような冷媒回路(2a)と第1冷却剤回路(3)との間の熱的連結部として設計された第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)と第1分岐点(12)との間に、冷媒と周囲空気との間の熱を伝達するための第3冷媒-空気熱交換器(17)を有する。したがって、システム(1a)は、第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)及び/または第3冷媒-空気熱交換器(17)で、必要性及び動作モードに応じて、冷媒から熱が減衰するように冷媒側に形成されている。
【0051】
冷媒は、凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)から流出した後、特に過冷却器/ガス冷却器として動作する冷媒-空気熱交換器(17)に案内される。周囲空気熱交換器として冷媒-空気熱交換器(17)を貫流して冷媒から周囲空気に熱が放出される時、冷媒は状態、必要性、及び動作モードによって過冷却されるか、過緩熱されて、液化し、そして場合によって、例えば、第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)から熱が伝達されないか、または非常に軽微な程度の熱だけが伝達される時に過冷却される。
【0052】
冷媒回路(2a)は、低圧側に配置される第1バイパス流動経路(18)の他に、第4分岐点(20)から第3入口部(21)まで延びる高圧側に配置された第2バイパス流動経路(19a)を有する。この場合、第4分岐点(20)は、圧縮機(4)と第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)との間に形成されており、一方で、第3入口部(21)は、第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)と第3冷媒-空気熱交換器(17)との間に提供されている。第4分岐点(20)で、冷媒は第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を通じて、または第2バイパス流動経路(19a)を通じて案内される。第2バイパス流動経路(19a)は、冷媒連結ラインの他に、他の部品を有さず、冷媒が第1冷媒-冷却剤熱交換機(5)を通過させるように案内する役割を果たす。
【0053】
第3分岐点(13)及び第3入口部(21)は、何れも膨脹機能のある3方向バルブとして形成されている。2つの3方向バルブ(13、21)は3つのポート(a、b、c)を有する。ポート(a、b)はそれぞれ流出口として形成されており、ポート(c)は流入口として形成されている。この場合、第1の3方向バルブ(13)は第1ポート(a)を通じて第1バイパス流動経路(18)に連結されている。第1の3方向バルブ(13)はまた、第2ポート(b)を通じて蒸発器またはチラーとして動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)に連結されており、一方で第2分岐点(12)に対する連結は第3ポート(c)を通じて形成されている。第2の3方向バルブ(21)は第1ポート(a)を通じて第2バイパス流動経路(19a)に連結されており、第2ポート(b)を通じて凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)に連結されており、一方で第3冷媒-空気熱交換器(17)に対する連結は第3ポート(c)を通じて形成されている。
【0054】
2つの3方向バルブ(13、21)は互いに異なる動作方式で動作し、特に遮断バルブ及び膨脹バルブとして動作する。3方向バルブ(13、21)において、遮断バルブと膨脹バルブの機能は1つの部品内に結合されている。第1機能では、3つのポート(a、b、c)が何れも閉鎖されており、これはシステム(1a)の動作モードに応じて、第2冷媒-冷却剤交換機(8)と第1バイパス流動経路(18)の何れにも冷媒が供給されないようにするために、第1の3方向バルブ(13)の動作にとって特に重要である。第2機能においては、それぞれ第1ポート(a)が閉鎖されており、一方で第2ポート(b)と第3ポート(c)は開放されている。この場合、3方向バルブ(13、21)は一方では、貫流時に冷媒が膨張されるか、または3方向バルブ(13、21)が完全に開放されて冷媒がほとんど圧力損失なく通過するように設定される。このような第1の3方向バルブ(13)の動作において、冷媒は、第3ポート(c)を通じて流入し、膨脹されるかまたは圧力損失なしに第2ポート(b)を通じて第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)方向に流出する。第2の3方向バルブ(21)がこのように動作すると、冷媒は、第2ポート(b)を通じて流入し、膨脹されるかまたは圧力損失なしに第3ポート(c)を通じて第3冷媒-空気熱交換器(17)の方向に流出する。特に、電子部品で形成された第2の3方向バルブ(21)によって、冷媒回路(2a)の高圧レベルと低圧レベルとの間に任意の圧力が設定される。いわゆる中間圧力レベルの設定において、第3冷媒-空気熱交換器(17)は周囲空気熱交換器として、熱を周囲空気に放出するための凝縮機/ガス冷却器として、または周囲空気から熱を吸収するための蒸発器として動作する。第3機能では、それぞれ冷媒の圧力損失なしにバイパス流動経路(18、19a)を通じて冷媒が案内される。この場合、第2ポート(b)は閉鎖されており、第1ポート(a)と第3ポート(c)は完全に開放されている。3方向バルブ(13、21)はいわゆるバイパスモードで動作する。
【0055】
好ましくは膨脹バルブとして形成される膨脹部材(9、10)は、必要によって完全に閉鎖されるように形成されて、動作モードの変更、特に加熱モードと冷却装置モードとの間の変更が連続的に、そして圧縮機をオフにせずに行われる。第3冷媒-空気熱交換器(17)を通る冷媒の流動方向が反転される冷媒回路(2a)の形成が省略でき、これは他の何よりも冷媒回路(2a)内でオイルトラップ及び冷媒トラップが防止されるため、単純化したオイル管理につながる。
【0056】
冷媒回路(2a)は、第2入口部(15)と圧縮機(4)との間の低圧領域にアキュムレーター(22)を備えて形成されている。結果的にアキュムレーター(22)は冷媒の流動方向で圧縮機(4)の前に配置されている。
【0057】
第1冷却剤回路(3)は、冷媒回路(2a)で凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)の他に、冷却剤を循環させるための冷却剤ポンプとして形成された第1移送装置(30)、冷却剤から車室の供給空気に熱を伝達するための第1冷却剤-空気熱交換器(31)、及び追加加熱熱交換器(32)を備える。追加加熱熱交換器(32)は、冷却剤の追加加熱のための電気ヒーター、例えば、PTCヒーターとして形成され、この時、冷却剤から吸収された熱が車室の供給空気に伝達される。選択的に動作可能な追加加熱熱交換器(32)は特に、高電圧PTCヒーターとして空気側により高く好適に調整された加熱出力及び力学を保証する。
【0058】
また、第1冷却剤回路(3)は、冷却剤と周囲空気との間、特に冷却剤から周囲空気への熱伝逹のための第2冷却剤-空気熱交換器(33)を備えて、それによって周囲空気熱交換器として形成される。
図1に図示しない、第1冷却回路(3)内での第2冷却剤-空気熱交換器(33)の連結は次のように設計される:
冷媒の流動方向に、第1移送装置(30)に後続して提供される分岐点で、冷却剤の質量流れは第1流動経路を通じて案内される第1部分質量流れと、第2流動経路を通じて案内される第2部分質量流れとに分割される。第1冷却剤-空気熱交換器(31)は第1流動経路内に配置されており、一方で第2冷却剤-空気熱交換器(33)は第2流動経路内に配置されている。冷却器の第1部分質量流れと第2部分質量流れは特に、3方向バルブで形成される入口部で互いに混合された後、第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を通じて吸入される。このような方式で冷却剤-空気熱交換器(31、33)は互いに独立的に動作するか、または互いに同時に冷媒が供給される。
【0059】
空調ユニットの第1ハウジング(60)内部には、第2冷却剤-空気熱交換器(31)が特に、車室の前方領域に供給される供給空気質量流れを調節するために提供される。この場合、冷媒回路(2a)の蒸発器として動作する第1冷媒-空気熱交換器(6)は、供給空気の流動方向で、加熱熱交換器として動作する冷却剤-空気熱交換器(31)の前に配置されて、結果的に、例えば、加熱モードとして動作するシステム(1a)内で車室の供給空気が加熱されるか、または再加熱モードで動作するシステム(1a)内で冷媒-空気熱交換器(6)を貫流する時、除湿された、そして/または冷却された車室の供給空気が再び加熱される。
【0060】
完全に図示しない第2冷却剤回路は、冷媒回路(2a)に対する熱的連結部として、上述の第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)の他に、同様に冷却剤を循環させるための冷却剤ポンプとして形成される1つ以上の運搬装置、パワートレインの部品を温度調節するための、特に冷却するための1つ以上の冷却剤熱交換器、及び冷却剤と周囲空気との間、特に冷却剤から周囲空気への熱伝逹のための第3冷却剤-空気熱交換器(33)を備える。それと同時に第2冷却剤回路は、例えば、3/2方向バルブによって連結されるか分離される複数の下位冷却剤回路から形成され、そして冷媒回路(2a)に関連して能動冷却のために、または冷却剤-空気熱交換器(33)に関連して受動冷却のために動作する。
【0061】
周囲空気による熱伝逹のために形成された第1冷却剤回路(3)の第2冷却剤-空気熱交換器(33)、冷媒回路(2a)の第3冷媒-空気熱交換器(17)、及び第2冷却剤回路の第3冷却剤-空気熱交換器(41)は、周囲空気の流動方向(62)で指定された順に、自動車車体のフロント領域に配置される。第1冷却剤回路(3)の第2冷却剤-空気熱交換器(33)には、第1熱交換器として周囲空気が流入する。代案的に、熱交換器(17、33、41)には互いに同時に周囲空気が供給される。
【0062】
周囲辺気が供給され、それによって周囲空気熱交換器として動作する第1冷却剤回路(3)の第2冷却剤-空気熱交換器(33)、冷媒回路(2a)の第3冷媒-空気熱交換器(17)、及び第2冷却剤回路の第3冷却剤-空気熱交換器(41)は、空気ダクト内に配置されており、空気ダクトは冷却空気ルーバーと称される流動案内装置(63)によって閉鎖される。自動車の前方に設けられる冷却空気ルーバー(63)は、好ましくは電気的に調整可能であり、特に必要によって完全にまたは部分的に開放されるか閉鎖される。また、空気ダクト内部にはファンが設けられ、ファンは動作中に開放された冷却空気ルーバー(63)を通じて周囲空気を吸入して熱交換器(33、17.41)の熱伝逹表面を通じて移送する。ファンは特に、自動車が停止状態であるか、非常に低い速度である時に動作させる。
【0063】
冷媒回路(2a)は、必要によって、システム(1a)を制御するために、センサー(51、52、53、54、55)を有する。この場合、第1センサー(51)及び第2センサー(52)は温度センサーとして形成されている。第1温度センサー(52)は、第1流動経路内で、冷媒の流動方向に蒸発器として動作する第1冷媒-空気熱交換器(6)の後に配置されており、一方で第2温度センサー(52)は、第2流動経路内で、冷媒の流動方向に蒸発器として動作する第2冷媒-空気熱交換器(7)の後に配置されている。また、第3センサー(53)、第4センサー(54)、及び第5センサー(55)は、それぞれ圧力-温度センサーとして形成されている。この場合、第1圧力-温度センサー(53)は第3流動経路内で、冷媒の流動方向に蒸発器として動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)の後に配置されており、一方で第2圧力-温度センサー(54)は冷媒の流動方向で圧縮機の後に、そして第3圧力-温度センサー(55)は冷媒の流動方向で第3冷媒-空気熱交換器(17)の後に配置されている。
【0064】
また、追加のセンサー(56、57、58)が提供されている。この場合、第6センサー(56)、第7センサー(57)、及び第8センサー(58)は、それぞれ温度センサーとして形成されている。第3温度センサー(56)は第1冷却剤回路(3)内で、冷却剤の流動方向に加熱熱交換器として形成される第1冷却剤-空気熱交換器(31)の前に配置されており、一方で第4温度センサー(57)は空調ユニットの第1ハウジング(60)内部で供給空気の流動方向で蒸発器として動作する第1冷媒-空気熱交換器(6)の後に、且つ加熱熱交換器として形成される第1冷却剤-空気熱交換器(31)の前に配置されており、そして第5温度センサー(58)は空調ユニットの第2ハウジング(61)内部で供給空気の流動方向で蒸発器として動作する第2冷媒-空気熱交換器(7)の後に配置されている。
【0065】
図1によるシステム(1a)が、
図2aに示すように、特に電気パワートレインの駆動部品を能動的に冷却する冷却装置モードで動作する時、第1冷媒-空気熱交換器(6)で、または第2冷媒-空気熱交換器(7)で車室の供給空気から冷媒回路(2a)に循環する冷媒に、または第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)で特に電気パワートレインの1つ以上の部品から冷媒回路(2a)に循環する冷媒に伝達される熱は、第3冷媒-空気熱交換器(17)で冷媒から周囲空気に伝達される。車室の前方領域のための供給空気は、流動方向(64)で第1冷媒-空気熱交換器(6)が配置される空調ユニットの第1ハウジング(60)を通じて案内され、一方で車室の後方領域のための供給空気は、流動方向(65)で第2冷媒-空気熱交換器(7)が配置される空調ユニットの第2ハウジング(61)を通じて案内される。第2冷却剤回路の冷却剤は、移送方向(66)に、好ましくは逆流熱交換器として動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)を通じて移送される。
【0066】
高圧冷媒は、第3冷媒-空気熱交換器(17)から流出した後、分岐点(11、12)で3つの部分質量流れに分割される。3つの部分質量流れのそれぞれの冷媒は、膨脹されて蒸発器として動作する冷媒-空気熱交換器(6、7)のうちの1つ、または蒸発器として動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)に供給される。この場合、第3分岐点(13)として形成される第1の3方向バルブ(13)は膨脹モードで膨脹部材として動作する。低圧側の第1バイパス流動経路(18)は閉鎖されており、冷媒が供給されない。
【0067】
また、第3入口部(21)として形成される第2の3方向バルブ(21)はバイパスモードで動作する。第2の3方向バルブ(21)は、第1ポート(a)と第3ポート(c)との間で完全に開放されて冷媒がほとんど圧力損失なく第2の3方向バルブ(21)を通過する。高圧側の第2バイパス流動経路(19a)は開放されている。第1冷却剤回路(3)の第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)には冷媒が供給されない。
【0068】
自動車の前方に配置される冷却空気ルーバー(63)は、ファンが活性化しない状態では第3冷媒-空気熱交換器(17)、第3冷却剤-空気熱交換器(41)、または、場合によって第2冷却剤-空気熱交換器(33)の必要な出力及び自動車の走行速度によって閉鎖されるか開放されており、ファンが活性化した状態では常に開放されており、そうすることで周囲空気が冷却空気ルーバー(63)を通じて、そして第3冷媒空気熱交換器(17)の熱伝逹表面を通じて流れる。
【0069】
図2bには、車室の供給空気のための冷却装置モードでのみ動作する間の、
図1によるシステム(1a)が示され、一方で
図2cは、特に電気パワートレインの駆動部品の能動冷却でのみ動作する間、
図1によるシステム(1a)を示す。
【0070】
図2aによるシステム(1a)の動作と異なって、
図2bによる動作において、高圧冷媒は、第3冷媒-空気熱交換器(17)から流出した後、第1分岐点(11)で2つの部分質量流れにのみ分割される。2つの部分質量流れの冷媒は、それぞれ膨張部材(9、10)を貫流する時に膨脹されて蒸発器として動作する冷媒-空気熱交換器(6、7)のうちの1つに供給される。第3分岐点(13)に形成される第1の3方向バルブ(13)の場合、3つのポート(a、b、c)が何れも閉鎖されて、第2冷却剤回路の第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)にも第1バイパス流動経路(18)にも冷媒が供給されない。
【0071】
図2aによるシステム(1a)の動作と異なって、
図2cによる動作において、高圧冷媒は、第3冷媒-空気熱交換器(17)から流出した後、完全に、膨脹部材として第1の3方向バルブとして膨脹モードで動作する第3分岐点に案内される。第1の3方向バルブ(13)を貫流する時、冷媒は膨脹されて蒸発器として動作する第2冷却剤回路の冷媒-冷却剤熱交換器(8)に供給される。第1膨脹部材(9)及び第2膨脹部材(10)は閉鎖されて、低圧側の第1バイパス流動経路(18)の他に、また、第1冷媒-空気熱交換器(6)を有する第1流動経路及び第2冷媒-空気熱交換器(7)を有する第2流動経路は何れも閉鎖されて冷媒が供給されない。
【0072】
また、第3入口部(21)として形成される第2の3方向バルブ(21)は、バイパスモードで動作する。第2の3方向バルブ(21)は、第1ポート(a)と第3ポート(c)との間で完全に開放されて冷媒がほとんど圧力損失なく第2の3方向バルブ(21)を通過する。高圧側の第2バイパス流動経路(19a)は開放されている。第1冷却剤回路(3)の第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)には冷媒が供給されない。
【0073】
図3a~3cは、それぞれ再加熱モードで動作する間の、
図1によるシステム(1a)を示し、一方で
図4a~4cは、それぞれ加熱モードで動作する間の、
図1によるシステム(1a)を示す。
【0074】
システム(1a)が加熱モードまたは再加熱モードで動作する時、空調システムの廃熱、特に第1冷媒-空気熱交換器(6)または第2冷媒-空気熱交換器(7)で車室の供給空気から、冷媒回路(2a)を循環する冷媒に伝達される熱と、第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)で特に、電気パワートレインの1つ以上の部品から、冷媒回路(2a)を循環する冷媒に伝達される熱は、何れも車室の供給空気を加熱するために使用される。それと同時に冷媒のための凝縮機/ガス冷却器として動作する第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を貫流する時に加熱されて、第1冷却剤回路(3)を循環する冷却剤は、冷却剤から車室の供給空気に熱を伝達するために加熱熱交換器として動作する第1冷却剤-空気熱交換器(31)を通じて案内される。
【0075】
図1によるシステム(1a)が
図3aによる冷媒のヒットシンクまたは熱源として、特に電気パワートレインの駆動部品と周囲空気の受動冷却を伴う再加熱モードで動作する時、第1冷媒-空気熱交換器(6)で車室の供給空気から冷媒回路(2a)を循環する冷媒に伝達される熱が、必要によって比例的に第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)で冷媒から第1冷却剤回路(3)を循環する冷却剤、そして第3冷媒-空気熱交換器(17)で冷媒から周囲空気に伝達されるか、または第3冷媒-空気熱交換器(17)で追加熱が周囲空気から吸収されて、このような周囲空気は第1冷媒-空気熱交換器(6)で車室の供給空気から冷媒回路(2a)を循環する冷媒に伝達される熱と共に第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)で冷媒から第1冷却剤回路(3)を循環する冷却剤に伝達される。車室の前方領域のための供給空気は、流動方向(64)に、第1冷媒-空気熱交換器(6)と第1冷却剤-空気熱交換器(31)が供給空気の流動方向(64)に順に配置された空調ユニットの第1ハウジング(60)を通じて案内されて、第1冷媒-空気熱交換器(6)が過流する時、除湿されて冷却され、続いて第1冷却剤回路(3)の第1冷却剤-空気熱交換器(6)が過流する時、加熱される。
【0076】
第3冷媒-空気熱交換器(17)から流出する冷媒は、圧力レベルによって第1膨脹部材(9)を貫流する時、膨脹されるか圧力損失なく第1膨脹部材(9)を通じて案内されて、蒸発器として動作する第1冷媒-空気熱交換器(6)に供給される。第2冷媒-空気熱交換器(7)の前(上流側)に配置される第2膨脹部材(10)は常に閉鎖されている。第2冷媒-空気熱交換器(7)は冷媒によって貫流されない。第3分岐点(13)として形成される第1の3方向バルブ(13)の場合、3つのポート(a、b、c)の何れも閉鎖されて第2冷却剤回路の第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)にも第1バイパス流動経路にも冷媒が供給されない。
【0077】
第3入口部(21)として形成される第2の3方向バルブ(21)は、必要によって、そしてそれによって周囲空気の使用によって冷媒のためのヒットシンクまたは熱源として異なるモードで動作する。第2の3方向バルブ(21)の第1ポート(a)は常に閉鎖されており、そうすることで第2バイパス流動経路(19a)に冷媒が供給されず、第1冷却剤回路(3)の冷却剤に熱を伝達するための冷媒が第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を通じて流れる。一方で、第2ポート(b)と第3ポート(c)との間の第2の3方向バルブ(21)は、完全に開放され、そうすることで冷媒がほとんど圧力損失なく第2の3方向バルブ(21)を通過する。冷媒は、高圧レベルで第3冷媒-空気熱交換器(17)の方向に、第3ポート(c)を通じて第2の3方向バルブ(21)から流出する。その後、冷媒は、凝縮機/ガス冷却器として動作する第3冷媒-空気熱交換器(17)を通じて案内される。この場合、熱は冷媒から周囲空気に伝達される。第1膨脹部材(9)を貫流する時、冷媒は高圧レベルから低圧レベルに膨脹する。他方で、第2ポート(b)と第3ポート(c)との間にある第2の3方向バルブ(21)は、冷媒が第2の3方向バルブ(21)を貫流する時、膨脹されるように設定される。冷媒は、中圧レベルまたは低圧レベルで第3冷媒空気熱交換器(17)の方向に、第3ポート(c)を通じて第2の3方向バルブ(21)から流出する。その後、冷媒は、周囲空気の温度に関連して冷媒の圧力水準によって、凝縮機/ガス冷却器または冷媒用蒸発器として動作する第3冷媒-空気熱交換器(17)を通じて案内される。この場合、動作モードによって熱が冷媒から周囲空気に、または周囲空気から冷媒に伝達される。冷媒が第2の3方向バルブ(21)を貫流する時、低圧レベルに膨脹されると、第1膨脹部材(9)が完全に開放され、そうでなければ冷媒が第1膨脹部材(9)を貫流する時、低圧レベルに膨脹される。
【0078】
自動車の前方に配置された冷却空気ルーバー(63)は、ファンが活性化しない状態では第3冷媒-空気熱交換器(17)、第2冷却剤-空気熱交換器(33)、または第3冷却剤-空気熱交換器(41)の必要な出力及び自動車の走行速度によって閉鎖されるか開放されており、ファンが活性化した状態では常に開放されており、そうすることで周囲空気が冷却空気ルーバー(63)を通じて、そして第3冷媒-空気熱交換器(17)の熱伝逹表面を通じて流れる。
【0079】
図1によるシステム(1a)が
図3bによる、特に電気パワートレインの駆動部品の能動冷却と共に再加熱モードで動作する時、第1冷媒-空気熱交換器(6)の車室の供給空気からだけではなく、第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)の第2冷却剤回路の冷却剤から、それぞれ冷媒回路(2a)を循環する冷媒に伝達される熱が、第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)で冷媒から第1冷却剤回路(3)を循環する冷却剤に伝達される。車室の前方領域のための供給空気は、それぞれ流動方向(64)に、第1冷媒-空気熱交換器(6)と第1冷却剤-空気熱交換器(31)が供給空気の流動方向(64)に順に配置された空調ユニットの第1ハウジング(60)を通じて案内され、第1冷媒-空気熱交換器(6)を過流する時、除湿されて冷却され、続いて第1冷却剤回路(3)の第1冷却剤-空気熱交換器(6)を過流する時、加熱される。
【0080】
第2冷却剤回路の冷却剤は、好ましくは逆流熱交換器として動作する第2冷却剤-冷却剤熱交換器(8)を通じて流動方向(68)に移送される。
【0081】
高圧冷媒は、第3冷媒-空気熱交換器(17)から流出した後、分岐点(11)で2つの部分質量流れに分割される。2つの部分質量流れのそれぞれの冷媒は、膨脹されて蒸発器として動作する冷媒-空気熱交換器(6)または蒸発器として動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)に供給される。この場合、第3分岐点(13)として形成される第1の3方向バルブ(13)は、膨脹部材として膨脹モードで動作する。低圧側の第1バイパス流動経路(18)及び第2冷媒-空気熱交換器(7)の前(上流側)に配置された第2膨脹部材(10)は何れも閉鎖されている。第2冷媒-空気熱交換器(7)にも第1バイパス流動経路(18)にも冷媒が供給されない。
【0082】
第3入口部(21)として形成された第2の3方向バルブ(21)は、一方では第1ポート(a)が閉鎖されて第2バイパス流動経路(19a)に冷媒が供給されず、冷媒が第1冷却剤回路(3)の冷却剤に熱を伝達するために第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を通じて流れ、他方では第2ポート(b)と第3ポート(c)との間の通路が完全に開放されて冷媒がほとんど圧力損失なく第2の3方向バルブ(21)を通過する方式で動作する。冷媒は、高圧レベルで第3冷媒-空気熱交換器(17)の方向に第3ポート(c)を通じて第2の3方向バルブ(21)から流出する。
【0083】
自動車の前方に配置された冷却空気ルーバー(63)は、閉鎖されて周囲空気が冷却空気ルーバー(63)を通じて第3冷媒-空気熱交換器(17)に案内されない。第3冷媒-空気熱交換器(17)は動作しない。
【0084】
図3cには、冷媒のための熱源として周囲空気及び特に、電気パワートレインの駆動部品を能動冷却と共に再加熱モードで動作する間、
図1によるシステム(1a)が開示される。
【0085】
図3bによるシステム(1a)の動作と違って、一方では自動車の前方に配置される冷却空気ルーバー(63)が開放されて周囲空気が冷却空気ルーバー(63)を通じて、そして第3冷媒-空気熱交換器(17)の熱伝逹表面を通じて流れる。第3冷媒-空気熱交換器(17)は動作中であり、この場合、冷媒は周囲空気から追加熱を吸収し、このような周囲空気は第1冷媒-空気熱交換器(6)で車室の供給空気から、そして第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)で第2冷却剤回路の冷却剤からそれぞれ冷媒回路(2a)を循環する冷媒に伝達される熱と共に第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)で冷媒から第1冷却剤回路(3)を循環する冷却材に伝達される。他方で、第3入口部(21)として形成された第2の3方向バルブ(21)は、周囲空気を使用するために冷媒の追加熱源として動作する。第2の3方向バルブ(21)の第1ポート(a)は閉鎖されて第2バイパス流動経路(19a)に冷媒が供給されず、冷媒は第1冷却剤回路(3)の冷却剤に熱を伝達するために第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を通じて流れる間、第2ポート(b)と第3ポート(c)との間の第2の3方向バルブ(21)は、冷媒が第2の3方向バルブ(21)を貫流する時に膨脹するように設定されている。冷媒は中圧レベルまたは低圧レベルで蒸発器として動作する第3冷媒-空気熱交換器(17)の方向に第3ポート(c)を通じて第2の3方向バルブ(21)から流出する。第3冷媒-空気熱交換器(17)を貫流する時、熱は周囲空気から冷媒に伝達される。第2の3方向バルブ(21)を貫流する時、冷媒が低圧水準で膨脹されると、第1膨脹部材(9)及び第3分岐点(13)として形成された第1の3方向バルブ(13)は第3ポート(c)と第2ポート(b)との間でそれぞれ完全に開放され、そうでなければ、冷媒は第1膨脹部材(9)及び膨脹モードで膨脹部材として動作する第1の3方向バルブ(13)が低圧レベルに膨脹される。
【0086】
図1によるシステム(1a)が
図4aによって、冷媒の熱源として周囲空気と、特に電気パワートレインの駆動部品の能動的冷却と共に加熱モードで動作する時、第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)で第2冷却剤回路の冷却剤からだけではなく第3冷媒-空気熱交換器(17)で周囲空気からそれぞれ冷媒回路(2a)で循環する冷媒に伝達される熱が第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)で冷媒から第1冷却剤回路(3)で循環する冷却剤に伝達される。
【0087】
車室の前方領域のための供給空気は、流動方向(64)に、第1冷却剤-空気熱交換器(31)が配置されている空調ユニットの第1ハウジング(60)を通じて案内されて、第1冷却剤回路(3)の第1冷却剤-空気熱交換器(31)を過流する時、加熱される。第2冷却剤回路の冷却剤は、流動方向(66)に、好ましくは逆流熱交換器として動作する第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)を通じて移送される。自動車の前方に配置された冷却空気ルーバー(63)は開放されて、周囲空気が冷却空気ルーバー(63)を通じて、そして第3冷媒-空気熱交換器(17)の熱伝逹表面を通じて流れる。
【0088】
図3cによるシステム(1a)の動作との本質的な相違点は、第1冷媒-空気熱交換器(6)の前(上流側)に配置された第1膨脹部材(9)と第2冷媒-空気熱交換器(7)の前(上流側)に配置された第2膨脹部材(10)の両方が閉鎖されて、第1冷媒-空気熱交換器(6)と第2冷媒空気熱交換器(7)が冷媒によって貫流されない点である。車室の供給空気は、除湿も冷却もされず、加熱されるだけである。
【0089】
図4bは、冷媒の熱源として周囲空気だけを使用する加熱モードで動作する場合、
図1によるシステム(1a)を示し、一方で、
図4cは特に、電気パワートレインの駆動部品の能動的に冷却して、そして冷媒の熱源として部品を使用する加熱モードで動作する間、
図1によるシステム(1a)を示す。
【0090】
図4aによるシステム(1a)の動作と違って、一方で、第3分岐点(13)として形成された第1の3方向バルブ(13)は、
図4bによる動作の間、バイパスモードで動作する。第1の3方向バルブ(13)は、第3ポート(c)と第1ポート(a)との間で完全に開放されて冷媒がほとんど圧力損失なく第1の3方向バルブ(13)を通過する。低圧側の第1バイパス流動経路(18)は開放されている。第2冷却剤回路の第2冷媒-冷却剤熱交換器(8)には冷媒が供給されない。第1バイパス流動経路(18)を通じた冷媒の流れによって、冷媒回路(2a)の吸入側圧力損失を最小化するために、冷媒が第3冷媒-空気熱交換器(17)からアキュムレーター(22)に直接案内される。他方で、第3入口部(21)として形成された第2の3方向バルブ(21)は、冷媒の熱源として周囲空気を使用するために、常に、冷媒が第2の3方向バルブ(21)を貫流する時、低圧レベルに膨脹されるように動作する。
【0091】
図4aによるシステム(1a)の動作と違って、一方では、自動車の前方に配置された冷却空気ルーバー(63)が
図4cによる動作中に閉鎖されて、周囲空気が冷却空気ルーバー(63)を通じて第3冷媒-空気熱交換器(17)に案内されない。第3冷媒熱交換器(17)は動作しない。他方で、3方向バルブ(13、21)の動作は、冷媒が第2ポート(b)から第3ポート(c)に第2の3方向バルブ(21)を貫流する時、高圧レベルから低圧レベルに膨脹して、第3ポート(c)と第2ポート(b)との間の第1の3方向バルブ(13)が完全に開放されるか、第2ポート(b)と第3ポート(c)との間の第2の3方向バルブ(21)が完全に開放されて、そして冷媒が第3ポート(c)から第2ポート(b)に第1の3方向バルブ(13)を貫流する時、高圧レベルから低圧レベルに膨脹されるように互いにマッチされる。その結果、3方向バルブのうちの1つ(13、21)は、冷媒を高圧レベルから低圧レベルに膨脹させるために膨脹モードで動作して、他方の3方向バルブ(13、21)は冷媒をほとんど圧力損失なく冷媒を通過させるために完全に開放されている。
【0092】
図5は、低圧側の第1バイパス流動経路(18)、第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)周囲を流動するための高圧側の第2バイパス流動経路(19b)、及び冷媒と周囲空気との間で熱を伝達するための第3冷媒-空気熱交換器(17)周囲を流動するための第3バイパス流動経路(25)を有する冷媒回路(2b)とそれぞれ冷媒回路(2b)と熱的に連結された2つの冷却剤回路(3)を備える車室の空気を空調して自動車の駆動部品を通じて熱を伝達するための第2システム(1b)が示す。
【0093】
図1による第1システム(1a)と第2システム(1b)との間の主要な相違点は、第3入口部(21、23)の形成と共に第1の冷媒-冷却剤熱交換器(5)を迂回する第2バイパス流動経路(19a、19b)、及び第3冷媒-空気熱交換器(17)を迂回する第3バイパス流動経路(25)を有する冷媒回路(2a、2b)形成にある。
【0094】
冷媒回路(2b)の高圧側に配置された第2バイパス流動経路(19b)は、第4分岐点(20)から第3入口部(23)まで延びる。この場合、システム(1a)の冷媒回路(2a)の場合と同様に、第4分岐点(20)は、圧縮機(4)と第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)との間に形成されており、一方で、第3入口部(23)は第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)と追加の第5分岐点(24)との間に提供されている。第2バイパス流動経路(19b)は冷媒連結ライン内に遮断部材、特に遮断バルブを有する。第4分岐点(20)で、冷媒は再度第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を通じて、または第2バイパス流動経路(19b)を通じて案内される。
【0095】
システム(1a)の冷媒回路(2a)の第3入口部(21)のように、第5分岐点(24)は、膨脹機能と3つのポート(a、b、c)を有する第2の3方向バルブとして形成されている。この場合、システム(1b)の冷媒回路(2b)の第2の3方向バルブ(24)は、第1ポート(a)を通じて、3方向バルブ(24)から第4入口部(26)まで延びる第3バイパス流動経路(25)に連結されている。第4入口部(26)は、第3冷媒-空気熱交換器(17)と第1分岐点(11)との間に提供されている。第2の3方向バルブ(24)はまた、第2ポート(b)を通じて第3冷媒-空気熱交換器(17)に連結されており、一方で、第3ポート(c)を通じて第3入口部(23)まで連結される。第3バイパス流動経路(25)を通じて案内される冷媒が、第3冷媒-空気熱交換器(17)に逆流することを防止するために、第4入口部(26)と第3冷媒-空気熱交換器(17)との間には第2逆流防止装置(27)、特にチェックバルブ(27)が提供されている。特に、チェックバルブとして形成された第1逆流防止装置(16)は、
図1のシステム(1a)の冷媒回路(2a)の場合のように、第1入口部(14)と第2入口部(15)との間に配置されている。
【0096】
システム(1b)の冷媒回路(2b)の第2の3方向バルブ(24)はまた、異なる動作方式で、特に遮断バルブ及び膨脹バルブとして動作する。遮断バルブと膨脹バルブの機能は、1つの部品内に結合されている。上記動作方式のうちの1つとして、第1ポート(a)及びそれと共に第3バイパス流動経路(25)は閉鎖されており、一方で、第2ポート(b)及び第3ポート(c)は開放されている。この場合、システム(1b)の冷媒回路(2b)の第2の3方向バルブ(24)は、一方では貫流する時に冷媒が膨脹するよう設定されるか、または第2の3方向バルブ(24)が完全に開放されて冷媒がほとんど圧力損失なく案内される。システム(1b)の冷媒回路(2b)の第2の3方向バルブ(24)がこのように動作すると、冷媒は第3ポート(c)を通じて流入し、膨脹されるか圧力損失なく第2ポート(b)を通じて第3冷媒-空気熱交換器(17)の方向に流出する。特に電子部品として形成される、システム(1b)の冷媒回路(2b)の第2の3方向バルブ(24)によって、冷媒回路(2b)の高圧レベルと低圧レベルとの間の全ての圧力が設定される。中間圧力レベルの設定を通じて、第3冷媒-空気熱交換器(17)は、周囲空気に熱を放出するための凝縮機/ガス冷却器として、または周囲から熱を吸収するための蒸発器として動作する。追加の動作方式は、冷媒の圧力消失なしに第3バイパス流動経路(25)を通じて冷媒が案内できるようにする。第2ポート(b)は閉鎖されており、一方で第1ポート(a)と第3ポート(c)は完全に開放されている。システム(1b)の冷媒回路(2b)の第2の3方向バルブ(24)はバイパスモードで動作する。
【0097】
第2システム(1b)、特に冷媒回路(2b)の個別動作モードに関しては、第1システム(1a)に関連する
図2a~2c、3a~3c及び4a~cの説明が参照になる。
【0098】
図5による第2システム(1b)が、特に、電気パワートレインの駆動部品の能動冷却を含むか、または含まないか、または特に、電気パワートレインの駆動部品の能動冷却だけを含む冷却装置モードで動作する時、第5分岐点(24)として形成される第2の3方向バルブ(24)は、それぞれの場合で、第3ポート(c)と第2ポート(b)との間の通路が完全に開放され、冷媒が第3冷媒-空気熱交換器(17)の方向に、ほとんど圧力損失なく第2の3方向バルブ(24)を通過するように動作する。高圧側の第2バイパス流動経路(19b)は開放されている。いずれの場合も、第1冷却剤回路(3)の第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)には、冷媒が供給されない。
【0099】
図5による第2システム(1b)が再加熱モードまたは加熱モードで動作する時、高圧側の第2バイパス流動経路(19b)は常に閉鎖されて、冷媒が第1冷却剤回路(3)の第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)を通じて案内される。
図5による第2システム(1b)が特に、電気パワートレインの駆動部品を能動冷却と共に再加熱モードで動作して、そして特に、電気パワートレインの駆動部品の能動冷却と共に加熱モードで動作する時、第2の3方向バルブ(24)はバイパスモードで動作する。第2の3方向バルブ(24)は、第3ポート(c)と第1ポート(a)との間で完全に開放されて、冷媒はほとんど圧力損失なく第2の3方向バルブ(24)を通過する。第3バイパス流動経路(25)は常に開放されているので、冷媒は第3バイパス流動経路(25)を通じて通過し、そして第3冷媒-空気熱交換器(17)周囲に案内される。第3冷媒-空気熱交換器(17)には冷媒が供給されない。第3バイパス流動経路(25)による冷媒の流動によって、冷媒回路(2b)の圧力損失を最小化するために、冷媒は第1冷媒-冷却剤熱交換器(5)から第1分岐点(11)に直接案内される。
【符号の説明】
【0100】
1a、1b システム
2a、2b 冷媒回路
3 第1冷却剤回路
4 圧縮機
5 第1冷媒-冷却剤熱交換器
6 第1冷媒-空気熱交換器
7 第2冷媒-空気熱交換器
8 第2冷媒-冷却剤熱交換器
9 第1膨脹部材
10 第2膨脹部材
11 第1分岐点
12 第2分岐点
13 第3分岐点、第3膨脹部材、第1の3方向バルブ
14 第1入口部
15 第2入口部
16 (第1)逆流防止装置
17 第3冷媒-空気熱交換器
18 第1バイパス流動経路
19a、19b 第2バイパス流動経路
20 第4分岐点
21 第3入口部、第2の3方向バルブ
22 アキュムレーター
23 第3入口部
24 第5分岐点、第2の3方向バルブ
25 第3バイパス流動経路
26 第4入口部
27 第2逆流防止装置
30 第1移送装置
31 第1冷却剤-空気熱交換器
32 追加加熱熱交換器
33 第2冷却剤-空気熱交換器
40 第2冷却剤回路のポート
41 第3冷却剤-空気熱交換器
51 第1センサー、冷媒の第1温度センサー
52 第2センサー、冷媒の第2温度センサー
53 第3センサー、冷媒の第1圧力-温度センサー
54 第4センサー、冷媒の第2圧力-温度センサー
55 第5センサー、冷媒の第3圧力-温度センサー
56 第6センサー、冷却提議第3温度センサー
57 第7センサー、供給空気の第4温度センサー
58 第8センサー、供給空気の第5温度センサー
60 空調ユニットの第1ハウジング
61 空調ユニットの第2ハウジング
62 周囲空気の流動方向
63 周囲空気の流動案内装置、冷却空気ルーバー
64 第1ハウジング(60)の供給空気流動方向
65 第2ハウジング(61)の供給空気流動方向
66 冷却剤の流動方向
a、b、c 3方向バルブ(13、21、24)のポート