(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】窓や電子機器のディスプレイのためのアンチグレア、プライバシースクリーン
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20230113BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20230113BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230113BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B5/00 B
G09F9/00 313
G09F9/00 338
G02F1/1335
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021095726
(22)【出願日】2021-06-08
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521247847
【氏名又は名称】ルミニット・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Luminit LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】アング,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】アービン,ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】アルメイダ,リベレット
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-258242(JP,A)
【文献】特開2010-145976(JP,A)
【文献】特開2014-142637(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105711211(CN,A)
【文献】特開2019-008028(JP,A)
【文献】特開2004-233957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0060431(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/33818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 5/00
G09F 9/00
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された錐台の配列を備え、前記基板の屈折率が前記錐台の屈折率と同一であり、前記錐台間の空間の屈折率が前記錐台の前記屈折率よりも低く、入射光が少なくとも一方向に制御され、
前記錐台は、前記基板と接する面である基部と前記基部に対して反対側の上面との間にある幾何学的形状の任意の部分であって、前記基部の外縁と前記上面の外縁とを繋ぐ側面が前記基部に対して傾斜しているものであり、
前記錐台の配列は、異なる形状及び/または異なるサイズの複数の前記錐台を備え、
前記錐台の前記上面の一部が前記錐台の表面の残りの部分よりも高くなっているか、または、前記錐台の前記上面の一部が高くなっているのは、前記錐台の前記上面の周囲の縁部または前記錐台の上面内の領域であるディスプレイまたは窓用のプライバシースクリーン。
【請求項2】
前記錐台の前記基部は前記錐台の前記上面よりも大きい請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項3】
前記基板及び前記錐台は同じ材料または異なる材料で構成されている請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項4】
前記錐台はディスプレイの画素と完全に一致している請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項5】
反射防止コーティングまたは透明誘電体コーティングを備える請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項6】
前記基板は、フレキシブルまたはリジッドである請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項7】
前記錐台は、円錐台、正方形錐台、五角錐台、六角錐台、八角錐台、n角錐台、長方形錐台、ダイヤモンド錐台、菱形錐台、四辺形錐台、星形錐台、ドーナツ錐台、不規則なポリゴン錐台、または、ある形状の前記錐台の中央領域を除去して中空化した錐台で構成される請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項8】
前記錐台の高さは前記錐台の幅と同じである請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項9】
前記錐台の前記上面は互いに同一平面上にあり且つ前記基板の表面と平行であるか、または、前記錐台の前記上面は互いに平行であるが前記基板の前記表面とは平行ではないか、または、前記錐台の前記上面の傾きは前記基板の前記表面に対して勾配をもって変化している請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項10】
前記錐台は、前記基板の表面の平面から80度の急峻さを有する急勾配の側壁を備え、前記基板を照らす光は、前記基板の前記表面の法線に対して±30度の主視野角内では有意な反射グレアを生じないが、前記主視野角外ではグレアを生じる請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項11】
前記錐台の前記基部に対する前記錐台の側部の内角は、45度から90度の範囲にある請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項12】
前記配列内の隣接する錐台の前記基部間に隙間があるか、または隙間がない請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項13】
隣接する錐台の前記基部間の隙間が、前記錐台の前記基部の幅の0~5倍のサイズで構成されている請求項
12に記載のプライバシースクリーン。
【請求項14】
複数の前記錐台は、錐台の逆表面レリーフ、または錐台と錐台の逆表面レリーフとが混在されたものであり、前記逆表面レリーフ構造は、周囲の材料よりも低い屈折率を有する請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項15】
前記基板とは別の第2の基板は前記錐台の前記上面に接着されており、前記錐台の前記上面は前記第2の基板の表面と接触しており、前記第2の基板は、前記錐台及び前記錐台を備える前記基板に相当する第1の基板と同じ屈折率を有しており、前記錐台の前記上面と前記第2の基板の前記表面との間の界面を通過する光の著しい後方散乱がなく、前記界面のために前記第1の基板、前記錐台、及び前記第2の基板を通過する光の透過率の低下がない請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項16】
第2の基板が各錐台の前記上面の一部に接触しており、前記第2の基板が前記錐台及び第1の基板と同じ屈折率である請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項17】
前記錐台は、前記プライバシースクリーン全体に拡がる請求項
1に記載のプライバシースクリーン。
【請求項18】
フォトリソグラフィー工程、機械的工程、または電子ビームエッチング工程によって、基板の表面にフォトレジストコーティングを配置し、
前記フォトレジストコーティングを、錐台または逆錐台を有する微細構造またはナノ構造の配列を備える錐台パターンで露光し、
前記錐台または逆錐台の配列は、
異なる形状
及び/または異なるサイズの複数の前記錐台または逆錐台を備え、
前記錐台の上面の一部が前記錐台の表面の残りの部分よりも高くなっているか、または、前記錐台の前記上面の一部が高くなっているのは、前記錐台の前記上面の周囲の縁部または前記錐台の上面内の領域であり、
前記フォトレジストコーティングのうちの露光された領域を除去して、前記錐台の配列を有するコーティングまたはフィルムを含むプライバシースクリーンを複製するためのマスターを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、窓や電子機器のディスプレイ用のアンチグレア、プライバシースクリーンに関するものである。特に、このスクリーンは、主視聴者に対する環境グレアを選択的に減少させる一方で、主視聴者の視野の外側にいる他の人に対するグレアを増加させるように設計されている。このプライバシースクリーンは、主視聴者の視界の質を向上させ、近くの傍観者による不要な視聴を妨げる。
【背景技術】
【0002】
従来のテレビは、画面にグレーの着色を施すことで、映像を邪魔する外光を防いでいた。しかし、グレアは、光源がテレビガラスの滑らかな表面に反射することで発生する。このグレアを克服する1つの方法は、テレビ画面のグレアを軽減するようにテレビと照明を配置することだった。また、より高価なテレビ画面では、光の直接反射を防ぐために拡散板を付けるという方法もあった。しかし、これらの実装では、画面の霞みの原因となるユーザーの背後にあるライトという事実を修正できなかった。
【0003】
携帯の電子機器では、特に混雑した場所において、グレアに加えて、プライバシーの欠如が大きな問題となる。暗い色の強化ガラスやプラスチックフィルムが市販されており、それらを使用することもできるが、これらの対策はあらゆる角度からのグレアを軽減するだけで、プライバシー保護にはほとんど効果がない。さらに、これらのタイプのスクリーンプロテクターは、画面の明るさや鮮明さに悪影響を及ぼす。また、携帯の機器では、薄暗い画面を補うために機器の画面の輝度を上げると、バッテリーの消耗が激しくなる。マイクロルーバースクリーンプロテクターのような他の手段では、光の透過率の低下、画面の鮮明さの低下、色のコントラストの低下、画像の歪み、ユーザーの背後の光によるグレアなどに悩まされるおそれがある。
【0004】
このように、電子機器の画面のプライバシーが確保されないという問題を解決すると同時に、主視聴者にとってはグレアが減少し、他の人にとってはグレアが増加するという効果的な解決策が必要であり、本開示では、以下のように対処している。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、基板上に配置された錐台の配列を備え、前記基板の屈折率が前記錐台の屈折率と同等であり、前記錐台間の空間の屈折率が前記錐台の屈折率より低く、入射光が少なくとも一方向に制御される電子ディスプレイまたは窓用のプライバシースクリーンに関する。
【0006】
一実施形態では、前記基板及び前記錐台は同じ材料で構成されている。
【0007】
別の実施形態では、前記錐台の頂部の幅は約8~16ミクロンで、基部の幅は約10~20ミクロンである。
【0008】
別の実施形態では、前記錐台の基部は前記錐台の頂部よりも大きい。
【0009】
別の実施形態では、前記錐台は機器のディスプレイの画素と完全に一致している。
【0010】
別の実施形態では、前記基板は、フレキシブル、リジッド、またはそれらの組み合わせである。
【0011】
別の実施形態では、前記錐台は、円錐台、正方形錐台、五角錐台、六角錐台、八角錐台、n角錐台、不規則なポリゴン錐台、星形錐台、ドーナツ錐台、ある形状の前記錐台の中央領域を除去して中空化した錐台、またはこれらの組み合わせで構成される。
【0012】
別の実施形態では、前記錐台の1つの以上のパラメータが、光学性能を最適化するために変化され、前記パラメータは、高さ、大きさ、1つの錐台の中心から隣接する錐台の中心までの間隔、配置、前記基板の表面に垂直な軸を中心とした前記錐台の回転、前記錐台の側部と前記錐台の基部との間の角度、前記錐台の前記基部に対する前記錐台の上面の中心性、前記錐台の屈折率、及びこれらの組み合わせを含む。
【0013】
別の実施形態では、各錐台の幾何学的形状は、大きい錐台から小さい錐台を減算した結果であり、前記大きい錐台と前記小さい錐台とは同じ上面を共有しており、前記上面は前記基板の表面の平面に平行である。
【0014】
別の実施形態では、前記錐台の上面は互いに平行であり、且つ、前記基板の表面の平面に平行であるか、前記基板の前記表面に平行でないかのいずれかである。
【0015】
別の実施形態では、前記基板の表面に平行な頂部を有する前記錐台は、前記基板の前記表面の平面から約80度の急峻さを有する急勾配の側壁を備え、前記基板を照らす光は、前記基板の前記表面の法線に対して約±30度の主視野角内では反射性グレアを生じないが、前記主視野角外ではグレアを生じる。
【0016】
別の実施形態では、前記錐台の基部に対する前記錐台の側部の内角は、45度以上である。
【0017】
別の実施形態では、前記配列内の隣接する錐台の基部間に隙間があるか、または隙間がない。
【0018】
別の実施形態では、隣接する錐台の基部間の隙間は、前記錐台の前記基部の約0~5倍のサイズで構成されている。
【0019】
別の実施形態では、各錐台は、最初に、隣接する錐台と重ならないように前記基板の表面上にランダムに配置され、様々なサイズの追加の異なる錐台が既存の錐台の間に繰り返し配置され、前記錐台間の最初のスペースは様々なサイズの追加の異なる錐台で埋められ、全ての錐台は完全にそのままの状態である。
【0020】
別の実施形態では、各錐台は、最初に、隣接する錐台と重ならないように前記基板上にランダムに配置され、様々なサイズの追加の異なる錐台が既存の錐台の間に繰り返し配置され、前記錐台間の初期のスペースは、予め決められた境界線を除いて、様々なサイズの追加の異なる錐台で埋め尽くされ、どの錐台も互いに重ならず、全ての錐台が完全にそのままの状態である。この予め決められた境界線は、錐台間の隙間を提供する。
【0021】
別の実施形態では、前記基板の表面上の微細構造またはナノ構造は、錐台の逆表面レリーフ、または錐台と錐台の逆表面レリーフとの混合物であり、前記逆表面レリーフ構造は、周囲の材料よりも低い屈折率を有する。別の実施形態では、前記基板上の前記微細構造またはナノ構造は、錐台と逆錐台との組み合わせである。
【0022】
別の実施形態では、第2の基板は前記錐台の上面に接着されており、前記錐台の前記上面は前記第2の基板の表面と接触しており、前記第2の基板は、前記錐台及び第1の基板と同じ屈折率を有しており、前記錐台の前記上面と前記第2の基板の前記表面との間の界面を通過する光の著しい後方散乱がなく、前記界面のために前記第1の基板、前記錐台、及び前記第2の基板を通過する光の透過率の著しい低下がない。
【0023】
別の実施形態では、プライバシースクリーンは、反射防止コーティング、透明誘電体コーティング、またはそれらの組み合わせを備える。
【0024】
また、本明細書では、片面に微細構造またはナノ構造の配列を備えるフレキシブルまたはリジッド基板を製造する方法であって、均一な厚さのフォトレジストポリマーを前記基板にコーティングすることを含み、前記微細構造またはナノ構造を形成するためにラスタリングレーザービームを照射して、モールド、レプリカ、最終部品、またはそれらの混合物を作ることを含む方法を開示している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図7】長さが幅よりも大幅に長い長方形錐台の配列。
【
図8】表面の縁部が外周に延びている錐台の側面図。
【
図9】表面の縁部が外周に延びている錐台の斜視図。
【
図10】正方形錐台を隙間なく並べた格子状配列の側面図。
【
図11】各錐台の間に隙間がある正方形錐台の配列の平面図。
【
図12】各錐台の間に隙間がある正方形錐台の格子状配列の側面図。
【
図13】幅及び隙間よりも著しく長い長さを有する長方形錐台の配列。
【
図15】2つの異なるサイズ且つ一定の市松模様のパターンの正方形錐台の配列。
【
図16】2つの異なるサイズ且つ一体のパターンの正方形錐台の配列。
【
図19】同心円状に配置された正方形の経路をたどる長方形錐台を表す。
【
図21】湾曲した波の経路をたどる長方形錐台を表す。
【
図22】基板の裏面にある正方形錐台の配列で構成されるフィルムの側面図。
【
図34】フィルムの第1面に垂直な主視野角を示す錐台の配列を有するフィルムの側面図(縮尺通りに描かれていない)。
【
図35】フィルムの第1面に垂直でない主視野角を示す錐台の配列を持つフィルムの側面図(縮尺通りに描かれていない)。
【
図36】2つの屈折率(n1とn2)の間の界面のフィールドの側面図。
【
図37】2つの屈折率(n1とn2)の間の界面のフィールドの側面図。
【
図38】2つの屈折率(n1とn2)の間の界面のフィールドの側面図。
【
図39】2つの異なる屈折率(n1とn2)の間にある平らな界面のフィールドを、各界面の上にn2を、各界面の下にn1を置いて等角的に見た図。
【
図40】構造内に配置された2つの屈折率(n1とn2)間の界面の側面図。
【
図41】基板上の正方形錐台の配列の側面図であって、錐台及びベース基板において屈折率がn1であり、錐台の上の空間において屈折率がn2である側面図。
【
図42】2つの異なる屈折率n1とn2の間の界面のフィールドの構成を示す側面図。
【
図43】基板上に正方形錐台を配列した側面図であって、錐台と底の基板の屈折率がn1であり、錐台の上であり且つ錐台の頂部上にある第2の基板の下である空間の屈折率がn2である側面図。
【
図44】基板と異なる屈折率の領域が埋め込まれた基板の側面図。
【
図45】基板と異なる屈折率の領域が埋め込まれた基板の側面図。
【
図46】2枚の基板の間に正方形錐台を配列したフィルムの側面図。
【
図47】全ての材料の屈折率が実質的に同じである錐台の頂部に第2の基板が接着されている正方形錐台の配列の側面図。
【
図48】フィルム上の環境光源-スクリーン無しのランバート入力光の方向。
【
図49】フィルム上の環境光源の放射強度分布プロットの光線図-スクリーン無しのランバート入力光の方向。
【
図52】フィルムから反射された光の放射強度分布図。
【
図53】単一の光学素子のフィルムから反射した光の放射強度分布図。
【
図54】コリメートされた入力によるランバート反射板。
【
図55】コリメートされた入力によるランバート反射板の放射強度分布図。
【
図56】フィルムとランバート反射板を組み合わせて反射させた光の放射強度分布図。
【
図57】フィルムとランバート反射板を組み合わせて反射させた光。
【
図58】錐台を使ったプライバシースクリーンの製造方法。
【
図59】不均一な錐台を使ったプライバシースクリーンの製造方法。
【
図60】3種類の錐台の側面図で、錐台の頂部が全て基板の表面と平行であるか、錐台の頂部が全て互いに平行だが基板の表面とは平行ではないか、または修正された錐台の上面の傾きが基板の表面に対して勾配をもって変化している側面図。
【
図61】正方形錐台を交互に90度回転させた平面図の例。
【
図62】錐台の頂部が各錐台の基部の上で中央部に位置していないノンライト錐台の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ノートパソコン、タブレット、携帯電話、電子書籍リーダーなど、環境光の下で使用される電子画面では、鮮明でコントラストの高い画像を提供するために、滑らかな光学面からの直接反射像によるグレアと、拡散反射面からの霞みを抑制する必要がある。鮮やかな画像は、情報を得るための読書、気を散らさないための読書、そして快適な視界を提供するために不可欠である。鮮明且つ明瞭な画像は、眼精疲労及びその他の生物学的問題を軽減する。さらに、ユーザーが公共の場や半公共の場にいる場合、画面のプライバシーは重要である。
【0027】
本願は、紫外光、可視光、赤外光の一部または全部を透過する固体の基板を有するプライバシースクリーンに関する。最初のスクリーン面からの反射光を散乱させることで、強い撮像の鏡面反射を分散させ、また、意図した主視聴者の方向に散乱する光線を減らす。光の大部分は、表面の法線に近い位置にあって電子インクを格納する二次層に透過しなければならない。このようにして、主ユーザーが見たときに、第1面からの散乱光に比べて、電子インクからの反射光が相対的に強くなり、高いS/N比が確立される。目的は、眼精疲労及びその他の長期的な目の生物学的劣化を軽減することである。加えて、副次的な効果として、第1面からの散乱光が主視野角の外側で強くなることも好ましい。そのため、ノイズ信号は望まれていない視聴者に向かって反転する。これにより、公共の場で電子機器を使用する場合に、主視聴者のプライバシーが向上する。
【0028】
このプライバシースクリーンは、光学的に透明な材料からなる表面微細構造を含む透明な基板を含んでおり、この微細構造は、窓やディスプレイスクリーンの平面に対する法線からの選択された角度の範囲内の光を通過させ、窓やディスプレイスクリーンに到達させる光学要素として機能する。他の入射光は、微細構造の中で内部全反射(TIR)された後、反射して視聴者に戻る。 したがって、このようなスクリーンは、主視野角の範囲内でスクリーンを見ている主視聴者への環境グレアを減少させる一方で、視聴者の視野外にいる他の視聴者へのグレアを増加させて、視聴者にはプライバシーを提供し、主視聴者のスクリーンの視界を向上させることができる。
【0029】
より具体的には、本出願は、基板の表面に錐台と呼ばれるナノ構造や微細構造を備える基板を備えたプライバシースクリーンに関するものである。錐台は、基板の幅及び/または長さの全体を覆うか、または基板を部分的に覆うことができる。錐台とは、一般的に、2つの平行な平面の間にある幾何学的形状の任意の部分と定義される。
図1は、正方形錐台の図である。
図2は、円錐台の図である。
図3は、五角錐台の図である。錐台は、正方形錐台の配列の平面図の例である
図4及び
図5に示すように、配列されている。何れの例も、錐台の基部が錐台の上面よりも大きいため、錐台の側部が斜めになっている。
図6は、長方形錐台の配列の図である。
図7は、長さが幅よりも大幅に長い長方形錐台の配列の図である。錐台の長さは、スクリーンの長さ全体に及ぶことができる。長方形錐台は、プライバシースクリーン全体、またはプライバシースクリーンの端部を超えて拡がることができる。この実施形態は、1つの軸におけるグレアを低減する一方で、垂直軸におけるグレアを低減しないという効果を有することができる。
【0030】
別の実施形態では、錐台の縁部のように、錐台の上面の一部が、錐台の表面の残りよりも高くなっている。
図8は、錐台の上面の周囲に延びる縁部を表面に有する錐台の側面図である。
図9は、上面の外周に延びる縁部を有する錐台の斜視図である。一般的に、縁部は0.1~5ミクロンの幅と高さを有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、錐台の基部の幅は約1~500ミクロンであり、錐台の上面の幅は約0.5~499ミクロンである。一般的に、錐台の高さは約1~500ミクロンである。別の実施形態では、錐台は、高さと基部のアスペクト比が約1:1で、高さが錐台の基部と同じようになっている。個々の錐台では、錐台の基部が錐台の頂部よりも広い。
【0032】
錐台の上面は、錐台の基部の上で中央部に位置していても、中央部を外れて位置していてもよい。
図62は、頂部が錐台の基部の上で中央部に位置していないノンライト錐台の側面図である。上面は、配列全体の勾配のオフセットに応じて中央部を外れることも、一定のオフセットに応じて中央部を外れることもできる。また、一部の錐台は中央部に配置され、一部の錐台は中央部から外れて配置されることができるため、錐台の側部の傾斜は異なる。また、
図60に示すように、錐台の頂部は互いに平行であり、基板の表面とは平行ではないことがある。更に、錐台の頂部は、一定の量、変化する量、勾配、またはそれらの組み合わせによって、傾斜させることができる。中心から外れたり、傾いたりするパラメータの両方は、プライバシースクリーンの主視野角を変えることができる。錐台の組み合わせや組成が異なると、グレアの映り方が異なるためである。一実施形態では、各錐台の幾何学的形状は、大きい錐台から小さい錐台を減算した結果であり、大きい錐台と小さい錐台はと同じ上面を共有しており、上面は基板の表面の平面に平行である。
【0033】
図4は、隣接する錐台の基部間に隙間がない配列を示す。隙間のない正方形錐台の配列の側面図を
図10に示す。同じく正方形錐台の配列の平面図の例である
図11では、隣接する錐台の基部間に隙間がある。隣接する錐台の基部間の隙間は、錐台の基部の幅の約0~5倍のサイズで構成されている。
図12は、隙間のある正方形錐台の配列の側面図である。
図13は、各基部の幅よりも著しく長い長さを有し、且つ、錐台間の隙間を構成する錐台の長方形配列を示す。
【0034】
別の実施形態では、錐台は、円錐台、正方形錐台、五角錐台、六角錐台、八角錐台、n角錐台、長方形錐台、ダイヤモンド錐台、菱形錐台、四辺形錐台、星形錐台、ドーナツ錐台、不規則なポリゴン錐台、ある形状の錐台の中央領域を除去して中空化した錐台、またはそれらの組み合わせである。錐台は、錐台の逆表面レリーフ、または錐台と錐台の逆表面レリーフとの混合物であることができ、逆表面レリーフ構造は、周囲の材料よりも低い屈折率を有する。
図14は、六角錐台の配列の平面図である。いくつかの実施形態では、配列内の錐台は全て同じ形状及びサイズである。しかし、錐台配列の様々なパターンの平面図を示す
図15及び
図16に示すように、錐台は、異なる形状及び/または異なるサイズであってもよい。各錐台は、最初に、隣接する錐台と重ならないように基板の表面上にランダムに配置され、様々なサイズの追加の異なる錐台が既存の錐台の間に繰り返し配置され、錐台間の最初のスペースは様々なサイズの追加の異なる錐台で埋められ、全ての錐台は完全にそのままの状態である。別の実施形態では、全ての錐台は、各錐台の周囲にある所定の境界を除いて完全にそのままの状態である。錐台は、互いに回転させることもできる。
【0035】
別の実施形態では、錐台は、正方形または長方形の錐台の断面を有するが、別の方向にパターンの経路をたどることができる。このようにして、構造体は修正された錐台を形成する。例えば、
図7の長方形錐台は、
図17に示すように、断面が長方形の錐台で、他の次元の平行線のパスをたどる錐台と表現してもよい。同様に、
図18~
図21は、錐台がたどり得る経路を示す他のパターンを示す。これらは、錐台の中心がたどるパターンの平面図である。これらの場合、断面は長方形錐台であるが、他の実施形態では、断面は他の断面を有する錐台であってもよい。
図17は、平行な長方形錐台の配列を、基板上の各錐台の中心の経路の配列を示す平行線として示す。
図18は、同心円の経路をたどる長方形錐台の平面図を示す。
図19は、同心円状に配置された正方形の経路をたどる長方形錐台の平面図を示す。
図20は、三角波の経路をたどる長方形錐台の表示を示す。
図21は、湾曲した波の経路をたどる長方形錐台の平面図を示す。長方形錐台は、プライバシースクリーンの全長、またはスクリーンの幅に沿って拡がることができ、また、スクリーンの端部を越えて拡がることもできる。
【0036】
基板は、基板の片面に錐台を有しており、錐台の基部が基板の裏面に取り付けられている。基板と錐台とは、同じ材料でも異なる材料でもよい。基板は、ポリマー、ガラス、セラミック、金属、またはそれらの組み合わせとしてもよい。一実施形態では、基板は、ポリカーボネートまたはポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリマーフィルムである。基板は、柔軟性、剛性、またはそれらの組み合わせを有していてもよい。
【0037】
基板は、紫外光、可視光、赤外光、またはそれらの混合光に対して透明である。透明度は、基板及び錐台が非常に狭い範囲の光に対して透明であるように、または非常に広い範囲の光に対して透明であるように調整可能である。一実施形態では、基板及び錐台の屈折率は同じであり、別の実施形態では、基板及び錐台の屈折率は似ているが正確には同じではない。
【0038】
図22に示すように、基板の上面に反射防止コーティングを施すことができる。環境からの光が基板の前面に入射すると、反射防止コーティングは、光が基板の前面で反射するのを防ぐ。したがって、環境光は基板を透過して錐台に到達する。反射防止コーティングは、表面全体または表面の一部を覆うことができる。反射防止コーティングは、錐台の上面を覆うことができるが、錐台の側部を覆うことはできない。反射防止コーティングは、1つまたは複数の誘電体層としてもよい。基板は、反射防止コーティングと透明誘電体コーティングとの両方を備えていてもよい。
【0039】
一実施形態では、基板及び微細構造の屈折率が実質的に同じであるため、ほとんどの光が基板から微細構造へと透過できた。基板の外側及び錐台間の空間の屈折率は、より高い屈折率を有する錐台の屈折率とは大きく異なる。錐台の側壁は、
図23~33の光線トレーシングに見られるように、基板の平面に対してある角度で基板を透過した光に全内部反射が起こるように、十分に急勾配である。
【0040】
図23~33は,正方形錐台の配列を有するフィルムにおいて,基板の前面を照らす入射光が,基板の法線面に対してある角度を有している場合の側面図である。光線トレーシングは、それぞれの状況における光の経路を示す。
図23は、入射角が0度の場合を示す。
図24は,入射角が5度の場合を示す。
図25は,入射角が10度の場合を示す。
図26は、入射角が15度の場合を示す。
図27は、入射角が20度の場合を示す。
図28は、入射角が25度の場合を示す。
図29は、入射角が30度の場合を示す。
図30は、入射角が40度の場合を示す。
図31は、入射角が50度の場合を示す。
図32は、入射角が60度の場合を示す。
図33は、入射角が70度の場合を示す。
【0041】
さらに詳しく説明すると、急勾配の壁を有する錐台は、錐台の基部と側壁との間の角度がある閾値よりも大きい。別の実施形態では、基板の表面に平行な頂部を有する錐台は、基板の表面の平面から約80度の急峻さを有する急勾配の側壁を備え、基板を照らす光は、基板の表面の法線に対して約±30度の主視角範囲内では反射性グレアを生じないが、主視角外ではグレアを生じる。錐台の基部に対する錐台の側部の内角は、約45度から90度の範囲にある。この構造により、錐台の側壁上で内部全反射を起こしてフィルムを完全に透過する光の割合と、錐台及び/または錐台の頂部が接着された第2の基板の表面上で複数の内部全反射を起こして光が最終的に第1の基板の前面に反射される別の割合とが得られる。反射された光は、それから第1の面を通り、フィルムの法線に対して角度を持って透過し、主視聴者の視野角の外側にある。主視野角とは、主視聴者が基板を観察する角度である。この基板は、主視野角を中心とした角度範囲でグレアを最小化することによって、主視聴者のグレアを最小化する。同時に、主視野角の角度範囲外の角度ではなおもグレアが発生する。グレアは、外部の視聴者が基板やその反対側にある文字や画像などを見ることを難しくする。
【0042】
図34は、基板の主視野角と、グレアが最小となる主視野角の周りの角度の範囲とを示す2次元側面図である。主視野角の周りの角度の範囲は、図の平面内にある。3次元の錐台は、グレアが軽減される主視野角の周りの3次元の角度範囲を有することができる。これは、3次元空間の複数の軸に垂直な錐台の側壁を有することによって達成される。例えば、正方形錐台、六角錐台、長方形錐台、八角錐台等がある。このように、複数の錐台で構成されたプライバシースクリーンは、グレアが最小となる主視野角の周りの角度範囲の3次元円錐を形成することができる。この円錐の形状は、錐台の側壁の数や、錐台の側壁の3次元的な位置関係を変えることによって調整することができる。グレアを軽減する角度の3次元の範囲は、不規則な円錐形の中にあってもよい。グレアを最小にする角度の範囲やグレアを最大にする角度の範囲が3次元空間でどのように形成されるかを示すために、
図34のような2次元の図が使用可能である。グレア光の反射が存在する主視野角の範囲外の角度がある。視野角の範囲外のこの範囲ではグレア光の反射が存在するため、プライバシースクリーンを見ることも、プライバシースクリーンの反対側にあるものを見ることも困難である。そのため、主視野角の範囲外に存在する反射したグレア光は、主視聴者がプライバシースクリーンを通して見る際のプライバシーを高める。
図35は、基板の第1面に垂直でない主視野角を示す錐台の配列を有する基板の側面図である。ここでは、主視野角の角度の範囲が円錐形のようになっているため、グレア光の反射を最小限に抑えることができる。グレアは、主視野角の外側にある角度の範囲でも存在する。角度の範囲は、主視野角の両側で異なる。
【0043】
図36~40は、様々な方法で配置することができる2つの異なる屈折率の領域の界面のアイデアを示す。
図36は、2つの屈折率(n1とn2)の間の界面のフィールドの側面図を示す。
図37は、2つの屈折率(n1とn2)の間の界面のフィールドの側面図を示す。
図38は、2つの屈折率(n1とn2)の間の界面のフィールドの側面図を示す。
図39は、2つの屈折率(n1とn2)の間にある平らな界面のフィールドを、各界面の上にn2を、各界面の下にn1を置いて等角的に見た図を示す。
図40は、構造内に配置された2つの屈折率(n1とn2)間の界面の側面図である。
図40は、2つの異なる屈折率の間のこれらの界面を、基板の裏側に配列として配置された正方形錐台と同じパターン及び効果を有するように設計する方法を示す。
図41は、基板上の正方形錐台の配列の側面図であって、錐台及び基板において屈折率がn1であり、錐台の上の空間において屈折率がn2である側面図である。
【0044】
別の実施形態では、第1の基板の裏側における全内部反射は、
図42に示すように、第1の基板内に屈折率の低い領域を埋め込むことによって達成される。
図42は、2つの異なる屈折率n1とn2の間の界面のフィールドの構成を示す側面図である。
図43は、基板上に正方形錐台を配列した側面図であって、錐台と基板の屈折率がn1であり、錐台の上且つ錐台の上の第2の基板の下の空間の屈折率がn2である側面図である。
図43と
図42とを比較すると、同じ形状と機能を有する基板を作るために、2つの異なる方法が使用され得ることが示される。屈折率の低い領域は、基板の屈折率よりも低い屈折率の固体、液体、または気体を埋め込んだり、真空の領域を作ったりすることによって作ることができる。屈折率の低い領域は、錐台の形状の極性が逆になっている。
【0045】
別の実施形態では、真空または周囲の基板よりも屈折率の低い材料からなる様々な形状および配置の領域を基板に埋め込んでもよい。その2つの例が
図44及び
図45に示される。
図44は、屈折率n1の基板に、基板と異なる屈折率n2の領域が埋め込まれた基板の側面図を示す。
図45は、屈折率n1の基板に、基板と異なる屈折率n2の領域が埋め込まれた基板の側面図を示す。
【0046】
錐台の1つの以上のパラメータが、光学性能を最適化するために変化されてもよく、パラメータは、高さ、大きさ、1つの錐台の中心から隣接する錐台の中心までの間隔、配置、基板の表面に垂直な軸を中心とした錐台の回転、錐台の側部と錐台の基部との間の角度、錐台の基部に対する錐台の上面の中心性、錐台の屈折率、及びこれらの組み合わせを含む。
図60は、3種類の錐台の側面図で、錐台の頂部が全て基板の表面と平行であるか、錐台の頂部が全て互いに平行だが基板の表面とは平行ではないか、または修正された錐台の上面の傾きが基板の表面に対して勾配をもって変化している側面図を示す。
【0047】
一実施形態では、
図61に見られるように、交互に配置された錐台が互いに90度回転している正方形錐台の配列がある。この実施形態では、各列の交互に配置された錐台も90度ずつ交互に回転するように、各列の交互に配置された錐台は他の列の交互に配置された錐台と組み合わされている。別の実施形態では、交互に配置された錐台の回転は、0度から360度の間の任意の角度とすることができ、錐台は、正方形以外の他の形状、例えば、六角形や三角形や八角形等の形状とすることができる。さらに、一連の錐台の各錐台を0度から360度の間で一定量ずつ連続的に回転させ、それをパターンとして繰り返す一連の錐台があってもよい。例えば、連続における最初の正方形錐台は0度回転し、2つ目は15度回転し、3つ目はさらに15度回転して合計30度回転し、連続における4つ目の正方形錐台は合計45度回転し、連続における5つ目の正方形錐台は60度回転し、連続における6つ目の錐台は75度回転してもよい。次に、この連続はフィルム全体で何度も繰り返される。この実施形態では、これらの繰り返しの連続の複数列が組み合わせられることになる。傾斜した錐台の側部を複数の方向に向けて配置することで、主視聴者にとってはグレアが減少し、主視野角の範囲外の視聴者にとってはグレアが増加する方向が増える。錐台の傾斜した側面は、上述のようなパターンで回転させたり、ランダムに回転させたりすることによって、複数の方向を向くように配置されてもよい。
【0048】
別の実施形態では、
図46及び
図47に示すように、プライバシースクリーンは2枚の基板を有し、それらの間に錐台がある。
図41に示すように、第1の基板、錐台、及び第2の基板の屈折率は、全て実質的に同じである。屈折率が一致しているため、錐台を透過した光は、第2の基板をも透過する。
図46は、2枚の基板の間に正方形錐台を配列し、第1の基板の前面に反射防止コーティングを設けたプライバシースクリーンまたはフィルムの側面図を示す。
図47は、錐台の頂部に第2の基板が接着されている正方形錐台の配列の側面図を示す。この実施形態では、錐台の頂部の全エリアについて、第2の基板の表面と完全に接触している。
【0049】
2枚の基板を使用する実施形態では、基板は同じ組成でもよいし異なる組成でもよい。また、2枚の基板の屈折率は同じであってもよいし、異なっていてもよい。一実施形態では、第2の基板は錐台の上面に接着されており、錐台の上面は第2の基板の表面と接触しており、第2の基板は、錐台及び第1の基板と同じ屈折率を有しており、錐台の上面と第2の基板の表面との間の界面を通過する光の著しい後方散乱がなく、界面のために第1の基板、錐台、及び第2の基板を通過する光の透過率の著しい低下がない。その第2の基板に隣接または接着される錐台の頂部には、反射防止コーティングが施されていない。
【0050】
別の実施形態では、錐台の頂部の大部分と第2の基板との間に小さな隙間が残っている。隙間は、錐台の頂部が平らではなく、錐台の頂部の一部が上面の残りの部分よりも高くなっていることによって形成されてもよい。
図8は、錐台の頂部の表面の縁部が外周に延びている錐台の側面図を示す。第2の基板は、錐台の頂部のうち、残りの部分よりも高くなっている部分である縁部の頂部と完全に接触することになる。しかしながら、縁部のない錐台の頂部と第2の基板の表面との間には隙間ができるであろう。この隙間には、空気や真空や他の材料等、錐台よりも屈折率が低く、錐台の間の空間の屈折率と同程度の屈折率を有する物質を充填することができる。一般的に、縁部は0.1~5ミクロンの幅と高さを有する。あるいは、別の実施形態では、各錐台の頂部は、錐台の頂部の周囲が錐台の頂部の残りの部分よりも高くなっているのではなく、錐台の頂部の中央部が錐台の頂部の残りの部分よりも高くなっているであろう。各錐台の中央部が高くなり、それが第2の基板に接触することになる。第2の基板を第1の基板の錐台の頂部に接触させると、錐台の頂部の大部分と第2の基板の間に小さな空気の隙間が残り、性能を向上させることができる。あるいは、各錐台の頂部のうち、中央部や外周部ではなく、別の部分を高くしてもよい。
【0051】
図48~53は、基板に入射した光、基板を透過した光、基板で反射した光を示す。
図48は、スクリーン無しのランバート入力光の方向を有するフィルム基板上の環境光源のグラフを示す。
図49は、スクリーン無しのランバート入力光の方向を有するフィルム基板上の環境光源の放射強度分布プロットを、限られた数の光線で表現した光線図である。
図50は、プライバシースクリーンへのランバート入力の結果と、フィルムを透過する光のプロファイルとを示す放射強度分布図を示す。
図51は、基板、正方形錐台の配列、及び錐台の上にある第2の基板を有するプライバシースクリーン用の単一の光学素子の放射強度分布図を示す。
図52は、基板、正方形錐台の配列、及び錐台の上にある第2の基板を有するプライバシースクリーン用の、フィルム基板から反射された光の放射強度分布図を示す。
図53は、単一の光学素子のフィルム基板からの反射光の放射強度分布図を示す。
【0052】
一実施形態では、錐台を有する基板を電子書籍リーダーのディスプレイに適用し、透過光が電子書籍リーダーの表示に使用される。錐台を有する基板を透過した光は、電子書籍リーダーのディスプレイを照らし、その後、電子書籍リーダーのディスプレイで反射し、再び基板を透過して主視聴者に届く。この実施形態では、モアレ効果等の不利な視聴効果を回避するように、錐台の大きさを電子書籍リーダーのディスプレイの画素の大きさと一致させてもよく、基板上の錐台の配列を電子書籍リーダーの画素の配列と一致させてもよい。
図54~57は、電子書籍リーダーの表面にある基板に入射した光と、電子書籍リーダーで反射した後、電子書籍リーダーから基板を透過した光の組み合わせを示す。
図54は、コリメートされた入力によるランバート反射板である。
図55は、コリメートされた入力によるランバート反射板の放射強度分布図である。
図56は、フィルム基板とランバート反射板を組み合わせて反射させた光の放射強度分布図である。
図57は、フィルム基板とランバート反射板を組み合わせて反射させた光である。
【0053】
別の実施形態では、錐台を有する基板は、LEDディスプレイ、LCDディスプレイ、コンピュータディスプレイ、電話ディスプレイ、タブレットディスプレイ、またはその他のタイプの電子ディスプレイ等のディスプレイのスクリーンに適用される。この実施形態では、モアレ効果を回避するように、錐台の大きさをディスプレイの画素の大きさと一致させてもよく、基板における錐台の配列をディスプレイにおける画素の配列と一致させてもよい。別の実施形態では、錐台はディスプレイの画素とほぼ完全に位置合わせされており、各画素ピッチ内に1つ以上の錐台が整数個存在する。一実施形態では、錐台は長方形錐台であり、一方の軸に整数個の錐台があり、他方の軸に整数個の錐台があってもよい。これらの2つの軸の錐台の数は異なっていてもよいが、整数でなければならない。
【0054】
別の実施形態では、錐台を有する基板は、電子ディスプレイや窓等の表示面に適用され、プライバシースクリーンとして機能する。ディスプレイや窓用のプライバシースクリーンは、基板上に配置された錐台の配列を含み、基板の屈折率が錐台の屈折率と同等であり、錐台間の空間の屈折率が錐台の屈折率よりも低く、入射光が少なくとも一方向に制御されている。
【0055】
成形製造プロセスにより、簡単且つ大面積の配列を製造することが可能となり、これらの配列を小型から大型のディスプレイに適用できる。製造プロセスの一実施形態では、最初に、直接書込レーザー(DWL)技術を用いてフォトレジストで錐台をパターニングする。フォトレジストの厚さは、基板に至るまでパターン化された錐台の高さに合わせて正確かつ均一に制御されている。一実施形態では、錐台の頂部は、フォトポリマーが塗布された露出した基板によって定義される。これにより、錐台に滑らかで整った頂部が提供され、全ての錐台が互いに同一平面上となる。DWLツールセットは、ラスタリングレーザービームを使用して、1回または数回のパスでレジストの深さ全体を露光する。また、フォトマスクアライナー及び/またはステッパー、及びスキャナー等の他の従来のフォトリソグラフィー技術もまた、接触または近接リソグラフィーを使用してこれらの構造体を作るために使用されてもよい。グレースケールで撮像したり、露光条件等のリソグラフィープロセスを調整したりすることによって、望ましい錐台角度を実現することができる。次に、レジストの錐台にシード層を蒸着した後、電鋳プロセスを用いてモールドを作成する。次に、錐台は、モールド転写プロセスを用いて、透明なフレキシブルまたはリジッド板に複製される。
【0056】
別の実施形態では、基板の片面に微細構造またはナノ構造の配列を含むフレキシブルまたはリジッド基板を製造する方法は、均一な厚さのフォトレジストポリマーで基板をコーティングすることを含み、一連の同一または非同一の微細構造またはナノ構造を現像して形成するためにラスタリングレーザービームを照射し、微細構造またはナノ構造は錐台または逆錐台を備え、現像されたフォトレジストは、モールド、レプリカ、最終部品、またはそれらの混合物を作るために使用することができる方法である。
【0057】
別の実施形態では、
図58に示すように、マスターを作る方法は、ガラス等の平滑で平坦な基板を得て、一方の表面にフォトレジストコーティングを配置し、フォトレジストコーティングを錐台パターンで露光し、フォトレジストの露光された領域を除去することを含む。これは、フォトリソグラフィープロセス、ダイヤモンドターニング等の機械的プロセス、電子ビームエッチングプロセスによって行うことができる。
図58は、図の上から下へ向かってこの方法の5つのステップを示す。次に、ガラス基板上のパターン化されたフォトレジストは、錐台を複製するためのマスターとして使用される。錐台の頂部となる部分のフォトレジストを完全に除去することで、その部分のガラス基板が露出される。マスターは、フォトレジストの逆パターンのコピーを作るのに使われる。錐台の頂部は、平滑なガラス基板の露出面に形成されているため、全て平坦な同一平面上にある。そのため、必要に応じて、新しい部分の錐台の頂部を第2の基板に接着することができる。
図59は、この状況の逆を示す。
図59は、図の上から下へ向かってこの方法の5つのステップを示したもので、全ての錐台の頂部についてガラス基板が完全には露出されていないため、フォトレジストマスターから複製された部分の錐台の頂部が同一平面上になっていない。これは、第2の基板が全ての錐台の頂部に接着され、錐台の頂部が第2の基板と完全に接触することを目的とする場合、あまり望ましくない。しかしながら、ほとんどの錐台と第2の基板との間に小さな隙間が存在することが望ましい場合、少数の錐台が露出されたガラス基板に対して形成され、残りの錐台は深さが浅く、ガラス基板に到達しないことが望ましい場合がある。この実施形態では、ガラス基板に対して形成された頂部を有する錐台を、第2の基板に接着することができる。残りの錐台は、錐台の頂部と第2の基板との間に隙間を有することになる。第2の基板に接触する錐台は、しっかりとした接触点を提供し、錐台の残りと第2の基板との間に一定の距離を作るであろう。
【0058】
別の実施形態では、プライバシースクリーンは、基板上の微細構造またはナノ構造によって形成することができ、微細構造またはナノ構造は、錐台の逆表面レリーフである。この実施形態では、逆表面レリーフ構造が基板上に形成され、それから、より屈折率の高い別の材料で表面レリーフ構造を埋める。逆表面レリーフ構造は、それを埋めている材料よりも屈折率が低い。どちらの材料も、プライバシースクリーンが作用する光の波長に対して透過的である。逆表面レリーフ構造を埋めている第2の材料の上面は平滑である。この実施形態の利点は、プライバシースクリーン内に空気を必要としないことである。
図41は、そのような実施形態の側面図を示す。緑色の領域は、逆錐台の表面レリーフを有する基板である。緑色の領域の屈折率はn2であり、青色の領域の屈折率はn1である。青色の領域は、逆錐台の表面レリーフ構造に充填される2つ目の材料である。この実施形態では、n2はn1よりも小さい。
【0059】
本出願の主題の代替の実施形態は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明が属する技術分野の通常の技術者に明らかになるであろう。ここに示されている特定の実施形態に関するいかなる限定も意図されておらず、また推論されていないことを理解していただきたい。