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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】複合材料コンポーネントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/42 20060101AFI20230113BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20230113BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230113BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
B29C70/42
B29C70/06
B29K105:08
B29L23:00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021157868
(22)【出願日】2021-09-28
(62)【分割の表示】P 2018552816の分割
【原出願日】2017-03-28
(65)【公開番号】P2022000353
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】1605888.5
(32)【優先日】2016-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590005438
【氏名又は名称】ロールス‐ロイス、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROLLS-ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マレンゴ,ジョバンニ アントニオ
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-504984(JP,A)
【文献】特表2014-504220(JP,A)
【文献】特表2013-511406(JP,A)
【文献】特表2018-515367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/42
B29C 70/06
B29K 105/08
B29L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と一体型フランジとを含む複合材料コンポーネントを製造する方法であって、
本体部(36)およびフランジ形成部(40,42)を有するツール(32)上に繊維強化材を配置してプリフォーム(200)を提供し、
前記プリフォーム(200)は、本体領域(210)と前記本体領域(210)に連続して長手方向に隣接するフランジ領域(212,214)とを含み、前記本体領域(210)は、前記複合材料コンポーネントの前記本体に対応し、前記フランジ領域(212,214)は、前記複合材料コンポーネントの前記一体型フランジに対応し、
前記プリフォーム(200)は、2つの長手方向端部(226)の間に長手方向に延在し、
前記プリフォーム(200)のトレーリングプライ(202,204)は、前記フランジ領域(212,214)に最も近い前記長手方向端部(226)と対向するプライ端部との間で長手方向に延在し、
前記トレーリングプライ(202,204)は、前記長手方向に沿った配向を持つように配置されており、
前記プリフォームの前記フランジ領域(212,214)が変形して前記複合材料コンポーネントの前記一体型フランジを形成するように、前記フランジ形成部(40,42)と前記本体部(36)との間に相対運動を生じさせ、
前記フランジ形成部(40,42)と前記本体部(36)の前記相対運動は、前記トレーリングプライ(202,204)と前記フランジ形成部(40,42)との間に摺動を引き起こし、前記一体型フランジの成形中に前記プリフォームの少なくとも前記フランジ領域(212,214)に引っ張り力を発生させる、複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項2】
前記トレーリングプライ(202,204)の対向する前記プライ端部は、前記プリフォームの対向する前記長手方向端部(226)と隣接する、請求項1に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項3】
前記繊維強化材は、前記トレーリングプライ(202,204)が前記本体領域(210)と前記フランジ領域(212)との間の境界に垂直な向きを有するように配置される、請求項1または請求項2に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項4】
前記繊維強化材は、前記トレーリングプライ(202,204)が前記ツール(32)の前記本体部(36)と前記フランジ形成部(212,214)との間の境界に対して垂直な向きを有するように配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項5】
前記フランジ領域(212,214)は、複数のプライ層に配置された繊維強化材の複数のプライを含み、ベースプライ層は複数の前記プライ層のうち前記ツール(32)に対して最も近い層であり、
前記繊維強化材は、前記トレーリングプライ(202,204)が少なくとも部分的に前記ベースプライ層を形成するように配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項6】
前記フランジ領域(212,214)は、複数の前記プライ層に配置された複数の繊維強化材のプライを含み、
前記繊維強化材は、前記トレーリングプライ(202,204)が前記フランジ領域(212,214)の中間プライ層または前記ツール(32)から最も遠い前記フランジ領域(212,214)の最外プライ層を少なくとも部分的に形成するように配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項7】
前記フランジ領域(212,214)は、前記本体領域(210)から前記フランジ領域(218)の対向する外側端部まで延在し、前記トレーリングプライ(202,204)は、ンナープライ端部(224)から前記フランジ領域(218)の外側端部を越えてプリフォーム(226)のそれぞれの長手方向端部まで長手方向に延在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項8】
前記プリフォームの厚さは前記フランジ領域(218)の前記外側端部を越えて減少する、請求項7に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項9】
前記トレーリングプライ(202,204)が、前記フランジ領域(218)の前記外側端部を少なくとも20mm超えて全体的に縦方向に延在する、請求項7または請求項8に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項10】
前記フランジ領域(218)の前記外側端部を越えて延在する少なくとも2つのトレーリングプライ(202,204,232,234)を有し、
前記トレーリングプライ(202,204,232,234)は、前記フランジ領域(218)の前記外側端部を越えた第1の距離だけ延在する第1のトレーリングプライ(202,204)と、前記フランジ領域(218)の前記外側端部を越えて前記第1の距離よりも大きい第2の距離だけ、前記プリフォームの前記長手方向端部(226)で終結するように前記第1のトレーリングプライ(202,204)を越えて延在する第2のトレーリングプライ(232,234)と、を有し、
前記トレーリングプライ(202,204,232,234)の少なくとも一部分はフランジの成形作業中に前記ツールの前記フランジ形成部に対して相対的に摺動する、請求項7~9のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項11】
前記各フランジ領域(218)の前記外側端部を越えて延在する前記トレーリングプライ(202,204)に対応する前記複合材料コンポーネントを除去する工程をさらに含む、請求項7~10のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項12】
前記複合材料コンポーネントは、前記複合材料コンポーネントの長手方向端部に対向する第1および第2のフランジを有し、
前記ツールは、第1および第2のフランジ形成部(40,42)をそれぞれ有し、
前記プリフォームは前記第1および第2のフランジ領域(212,214)および前記第1および第2のトレーリングプライ(202,204,232,234)を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項13】
前記ツールの前記フランジ形成部(40,42)は、前記ツールのレイアップ構成における前記ツールの本体部(36)のレイアップ面(38)に連続するレイアップ面(44,46)と、前記フランジ形成部の前記レイアップ面(44,46,38)と前記ツールの成形構成における前記ツールの本体部との間に延在する側面(48,50)と、を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項14】
前記ツールの前記フランジ形成部(40,42)と前記本体部(36)との相対的な移動方向は、前記フランジの範囲に平行である、請求項1~13のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項15】
前記複合材料コンポーネントは、ガスタービンエンジン(10)用のケーシング(24)のように環状または部分的に環状の複合材料コンポーネントであり、
前記ツールの前記本体部(36)および前記フランジ形成部(40,42)は、相対的に半径方向に移動するように構成され、前記フランジは放射状である、請求項1~14のいずれか1項に記載の複合材料コンポーネントの製造方法。
【請求項16】
本体と一体型フランジとを有する複合材料コンポーネント用のプリフォーム(200)であって、
前記プリフォームは、
本体領域(210)および前記本体領域(210)に連続して長手方向に隣接するフランジ領域(212,214)を有し、前記本体領域(210)は、前記複合材料コンポーネントの前記本体に対応し、前記フランジ領域(212,214)は、前記複合材料コンポーネントの前記一体型フランジに対応し、
前記プリフォーム(200)は、2つの長手方向端部(226)の間に長手方向に延在し、
前記プリフォームのトレーリングプライ(202,204)は、前記フランジ領域(212,214)に最も近い前記長手方向端部(226)と対向するプライ端部との間で長手方向に延在し、
前記トレーリングプライ(202,204)は、前記長手方向に沿った配向を持つように配置されており、
前記プリフォーム(200)は、本体部(36)およびフランジ形成部(40,42)を有するツール(32)上に設けられ、
前記プリフォーム(200)は、成形作業中に前記フランジ形成部(40,42)と前記本体部(36)との間に相対運動が生じるように、前記プリフォーム(200)の前記フランジ領域(212,214)が変形して前記フランジを形成し、
前記プリフォーム(200)は、前記フランジ形成部(40,42)と前記本体部(36)との間に相対運動を生じさせることによって、前記プリフォーム(200)の前記トレーリングプライ(202,204)と前記ツールの前記フランジ形成部(40,42)との間に摺動を発生させ、前記フランジの成形中に前記プリフォームの少なくとも前記フランジ領域に引っ張り力を生じさせることを特徴とする、プリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、本体と一体型フランジとを有する複合材料コンポーネントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、特定の材料特性の組み合わせを必要とするコンポーネントへの適用が増加している。特に、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)のような複合材料は、高い剛性と軽量性のために、航空宇宙産業および他の産業のコンポーネントに広く使用されている。
【0003】
ガスタービンのケーシング上の環状フランジのようなフランジや翼用のスパーの側部を有するコンポーネントを製造することが頻繁に望まれている。このようなコンポーネントが複合材料から製造される場合、フランジの形成は工学的問題を引き起こす可能性がある。例えば、特に、アクセスが困難な可能性がある成形型の主要部とフランジとの間の屈曲領域において、フランジ形状の成形型上に複合材料を積層することは困難である。
【0004】
一体型フランジを有する複合材料を製造する方法が、英国特許第2486231号明細書に開示されており、第1の部分と可動の第2の部分とを有する複合材料のプリフォーム用の環状成形型が開示されている。一方向材の複合材料テープの層を成形型上に敷設した後、型および予備成形品をオートクレーブ中で加熱し、可動の第2部分を作動させて半径方向外側に移動させ、それによりフランジを形成するためのツールである可動の第2部分を覆うプリフォームの端部領域を変形させる。
【0005】
英国特許第2486231号明細書では、フランジはプリフォームの円筒領域から突出し、その間の遷移領域の断面形状は略正方形である。換言すれば、円筒領域とフランジとの間は曲率が高くなっている。英国特許第2486231号明細書では、遷移領域の形状は、部分的にフランジが形成された高い曲率の端部を有する反作用成形ツール(counteracting forming tool)(または雌型成形ツール)によって画定される。
【0006】
コンポーネントの主領域とフランジとの間に比較的低い曲率遷移が存在する複合材料コンポーネントを製造することが望ましい場合もある。例えば、曲率の変化が小さいと応力集中が減少し、コンポーネントの構造的特性が改善される。フランジ付き成形型が使用される場合、低曲率の遷移領域が成形型上に画定され得る。しかしながら、可動部分を有するツールがフランジを形成するために使用される場合、レイアップ面はレイアップ形状において実質的に連続であるので、低曲率の遷移領域はツールのレイアップ面上に予め規定することができない。本願の発明者らは、プリフォームの外側に遷移領域の輪郭を画定するために反作用成形ツール部分を設けたとしても、形成されたコンポーネントの遷移領域が所望の形状に適合しないか、アライメントにおける平面外のしわの形成およびプライの位置ずれなど、この領域に欠陥を形成することを発見した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、本体と一体型フランジとを含む複合材料コンポーネントを製造する方法であって、本体部とフランジ形成部とを有するツール上に繊維強化材を配置してプリフォームを提供し、前記プリフォームは、本体領域と前記本体領域に連続して長手方向に隣接するフランジ領域とを含み、前記本体領域は、前記コンポーネントの前記本体に対応し、前記フランジ領域は、前記コンポーネントの前記一体型フランジに対応し、前記プリフォームは、2つの長手方向端部の間に長手方向に延在し、前記プリフォームのトレーリングプライ(trailing ply)は、前記フランジ領域に最も近い前記長手方向端部と、前記フランジ領域内に位置するまたは途中で前記本体領域に入るインナープライ端部との間に長手方向に延在し、前記プリフォームの前記フランジ領域が変形して前記コンポーネントの前記一体型フランジを形成するように、前記フランジ形成部と前記本体部との間に相対運動を生じさせ、前記フランジ形成部と前記本体部との間の前記相対運動は、前記トレーリングプライと前記フランジ形成部との間に摺動を引き起こし、前記一体型フランジの成形中に前記プリフォームの少なくとも前記フランジ領域に引っ張り力を発生させる。
【0008】
前記トレーリングプライは、インナープライ端部で終端する。前記インナープライ端部は、インナープライプライ端部が前記プリフォームの対向する前記長手方向端部から離間するように、前記フランジ領域内に、または前記本体領域の途中に配置されてもよい。前記プリフォームの繊維強化材は、2つの長手方向端部で終端する。
【0009】
前記引っ張り力は、前記インナープライ端部を隣接するプライに対して長手方向に移動させるものであってもよい。前記隣接するプライは、前記プリフォームの厚み方向に対して隣接していてもよい。
【0010】
前記繊維強化材は、前記トレーリングプライが長手方向と実質的に整列した配向を有するように配置することができる。前記繊維強化材は、前記トレーリングプライが、前記プリフォームの前記本体領域と前記フランジ領域との間の境界に実質的に垂直な向きを有するように配置することができる。前記本体領域と前記フランジ領域との間の境界は、前記コンポーネントの前記フランジを形成するための成形中にフランジ領域が延在(または偏向や迂回)する線または領域であってもよい。前記境界は、前記フランジ形成部と前記コンポーネントの前記本体部との間の境界を実質的に覆うことができる。言い換えれば、前記トレーリングプライは、前記フランジ領域が前記本体領域から延在する方向および/または前記コンポーネントの前記フランジが本体から延在する方向と実質的に整列した向きを有することができる。
【0011】
前記繊維強化材は、前記トレーリングプライが前記ツールの前記本体部と前記フランジ形成部との間の境界に実質的に垂直な向きを有するように配置することができる。
【0012】
前記フランジ領域は、複数のプライ層に配置された繊維強化材の複数のプライからなり、そのベース(またはより低い)プライ層は複数の前記プライ層のうち前記ツールに対して最も近い層であり、前記繊維強化材は、前記トレーリングプライが少なくとも部分的に前記ベースプライ層を形成するように配置される。
【0013】
各プライ層は、厚み方向に1つのプライから形成されてもよいが、プライ層を横方向または縦方向に隣接する複数のプライなどプライ層を共に形成する複数のプライを含んでもよい。
【0014】
前記フランジ領域は、前記プライ層に配置された複合材料の複数のプライから形成することができ、前記繊維強化材は、前記トレーリングプライが少なくとも部分的に前記フランジ領域の中間プライ層または前記ツールから最も遠い前記フランジ領域の最外プライ層を少なくとも部分的に形成するように配置される。前記トレーリングプライは、前記プリフォームのそれぞれの長手方向端部と接するアウタープライ端部を有してもよい。
【0015】
前記フランジ領域は、前記本体領域から前記フランジ領域の対向する外側端部まで延在することができる。前記トレーリングプライは、前記インナープライ端部から前記フランジ領域の外側端部を越えてプリフォームのそれぞれの長手方向端部までほぼ長手方向に延在する。
【0016】
前記プリフォームの厚さは、フランジ領域の外側端部(すなわち、前記プリフォームのそれぞれの長手方向端部)を超えて減少してもよい。前記フランジ領域における前記プリフォームの厚さは、前記フランジ領域の前記外側端部まで実質的に一定であってもよい。
【0017】
前記フランジ領域の前記外側端部を越える前記プリフォームの厚さは、前記プリフォームの前記フランジ領域の最大厚さまたは平均厚さの50%以下であってもよい。前記フランジ領域の前記外側端部を越えて延在する繊維強化材の層が10プライ未満であってもよい。前記フランジ領域は、その外側端部まで少なくとも10プライの厚さを有することができる。前記フランジ領域の前記外側端部における前記プリフォームの厚さの段階的変化が存在し得る。そのトレーリングプライは、前記フランジ領域の前記外側端部を越えて延在することができる。
【0018】
前記トレーリングプライは、前記フランジ領域の前記外側端部を少なくとも20mm超えて全体的に長手方向に延在することができる。前記トレーリングプライは、前記フランジ領域の前記外側端部を少なくとも30mm、少なくとも50mm、または少なくとも100mm超えて、概して縦方向に延在することができる。前記トレーリングプライは、少なくとも200mm、少なくとも250mm、または少なくとも300mmの全縦方向範囲を有することができる。
【0019】
前記フランジ領域の前記外側端部を越えて延在する少なくとも2つのトレーリングプライがあってもよく、第1のトレーリングプライは前記フランジ領域の前記外側端部を越えて第1の距離だけ延在し、第2のトレーリングプライは前記フランジ領域の前記外側端部を越えて前記第1の距離よりも大きい第2の距離だけ、前記プリフォームの前記長手方向端部で終結するように前記第1のトレーリングプライを越えて延在し、前記トレーリングプライの少なくとも一部分はフランジの成形作業中に前記ツールの前記フランジ形成部に対して相対的に摺動する。
【0020】
前記各トレーリングプライは、成形中に前記ツールの前記フランジ形成部に対して摺動して各トレーリングプライに引っ張り力を生じ、それにより成形中にフランジ領域に引っ張り力を生じさせてもよい。前記各トレーリングプライは、前記ツールの前記フランジ形成部との間の摩擦摺動接触、または前記ツールの前記フランジ形成部の上に配置された剥離ライナーであってもよい。
【0021】
本発明に係る方法は、前記各フランジ領域の前記外側端部を越えて延在する前記トレーリングプライに対応する複合材料を除去する工程をさらに含むことができる。
【0022】
本発明に係る方法は、前記フランジ領域の前記外側端部に対応する複合材料を除去すること、例えば、L字形断面を有するZ字形断面を有するフランジをトリミングする工程をさらに含むことができる。
【0023】
複合材料コンポーネントは、前記コンポーネントの長手方向端部に対向する第1および第2のフランジを有することができる。前記ツールは、第1および第2のフランジ形成部を有してもよく、前記プリフォームは前記第1および第2のフランジ領域および前記第1および第2のトレーリングプライを有してもよい。前記第1および第2のトレーリングプライは、重なり合わない(すなわち、前記プリフォームの対向する端部にあってもよい)。前記第1および第2のトレーリングプライのそれぞれのインナープライ端は、長手方向に離間していてもよい。
【0024】
前記ツールの前記フランジ形成部または各々の前記フランジ形成部は、前記ツールのレイアップ構成における前記ツールの本体部のレイアップ面に連続するレイアップ面と、前記フランジ形成部の前記レイアップ面と前記ツールの成形構成における前記ツールの本体部との間に延在する側面と、を有していてもよい。
【0025】
前記ツールの前記フランジ形成部と前記本体部との相対的な移動方向は、前記フランジの範囲に平行であってもよい。
【0026】
前記複合材料は、ガスタービンエンジン用のケーシングのように環状または部分的に環状のコンポーネントであってもよい。前記ツールの前記本体部および前記フランジ形成部は、相対的に半径方向に移動するように構成され、前記フランジは放射状であってもよい。
【0027】
長手方向は、複合材料の軸方向であってもよい。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、本体と一体型フランジとを含む複合材料コンポーネントを製造する方法であって、本体部とフランジ形成部とを有するツール上に繊維強化材を配置してプリフォームを提供し、前記プリフォームは、本体領域と前記本体領域に連続して長手方向に隣接するフランジ領域とを含み、前記本体領域は、前記コンポーネントの前記本体に対応し、前記フランジ領域は、前記コンポーネントの前記一体型フランジに対応し、前記プリフォームは、2つの長手方向端部の間に長手方向に延在し、前記プリフォームのトレーリングプライは、前記フランジ領域に最も近い前記長手方向端部と対向するプライ端部との間で長手方向に延在し、前記トレーリングプライは前記長手方向と実質的に整列した向きを有し、前記プリフォームの前記フランジ領域が変形して前記コンポーネントの前記一体型フランジを形成するように、前記フランジ形成部と前記本体部との間に相対運動を生じさせ、前記フランジ形成部と前記本体部との間の前記相対運動は、前記トレーリングプライと前記フランジ形成部との間に摺動を引き起こし、前記一体型フランジの成形中に前記プリフォームの少なくとも前記フランジ領域に引っ張り力を発生させる。
【0029】
前記トレーリングプライの対向するプライ端部は、前記プリフォームの対向する長手方向端部と接していてもよい(すなわち、前記トレーリングプライは、前記プリフォームの長手方向の全長にわたって延在してもよい)。代替的には、対向するプライ端部は、本発明の第1の態様に関して説明したように、例えば、前記対向するプライ端部が、前記プリフォームの対向する長手方向端部から離間するように、前記フランジ領域内に、または前記本体領域の途中に配置されてもよい。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、本体と一体型フランジとを含む複合材料コンポーネント用のプリフォームが提供され、本体部とフランジ形成部とを有するツール上に繊維強化材を配置してプリフォームを提供し、前記プリフォームは、本体領域と前記本体領域に連続して長手方向に隣接するフランジ領域とを含み、前記本体領域は、前記コンポーネントの前記本体に対応し、前記フランジ領域は、前記コンポーネントの前記一体型フランジに対応し、前記プリフォームは、2つの長手方向端部の間に長手方向に延在し、前記プリフォームのトレーリングプライ(trailing ply)は、前記フランジ領域に最も近い前記長手方向端部と、前記フランジ領域内に位置するまたは途中で前記本体領域に入るインナープライ端部との間に長手方向に延在し、前記プリフォームは、前記本体部と前記フランジ形成部とを有するツール上に設けられ、前記プリフォームは、成形作業中に前記フランジ形成部と前記本体部との間に相対運動を生じ、前記プリフォームの前記フランジ領域が変形して前記フランジを形成するように構成され、前記プリフォームは、前記フランジ形成部と前記本体部との間の前記相対運動が、前記プリフォームの前記トレーリングプライと前記ツールの前記フランジ形成部との間に摺動を引き起こし、それにより、前記一体型フランジの成形中に前記プリフォームの少なくとも前記フランジ領域に引っ張り力を発生させる。
【0031】
前記プリフォームは、本発明の第1および第2の態様に関して上述したプリフォームの特徴のいずれかを有することができる。
【0032】
当業者であれば、互いに排他的な場合を除いて、上記の態様のいずれか1つに関して記載された特徴が、他のいずれかの側面において準用され得ることを理解するであろう。さらに、相互排他的な場合を除いて本明細書に記載された任意の特徴は本明細書に記載された他の任意の態様に適用され、かつ/または、本明細書に記載された他の任意の特徴と組み合わせられ得る。
【0033】
本発明は、添付した図面を参照して、例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ガスタービンエンジンの概略側断面図である。
図2】ガスタービンエンジンのケーシングの概略側断面図である。
図3】レイアップ構成のツール上の複合材料コンポーネントのプリフォームの概略部分断面図である。
図4】成形構成における図3のプリフォームおよびツールの概略部分断面図である。
図5】ツールの成形部分の概略部分断面図である。
図6図5のツールの概略部分斜視図である。
図7図3のプリフォームの概略部分断面図である。
図8】成形構成の別のプリフォームおよびツールの概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1には、回転軸である主軸11を有するガスタービンエンジン10が概略的に示されている。エンジン10は、軸流シリーズにおいて、吸気口12、推進ファン13、中圧圧縮機14、高圧圧縮機15、燃焼装置16、高圧タービン17、中圧タービン18、低圧タービン19および排気ノズル20を含む。ナセル21は、一般に、エンジン10を取り囲み、吸気口12と排気ノズル20とを備えている。環状ケーシング24は、ファン13の周囲にナセル21内に配置されている。
【0036】
ガスタービンエンジン10は、吸気口12に入る空気がファン13によって加速されて2つの空気流、すなわち中圧圧縮機14への第1の空気流とバイパスダクト22を通過する第2の空気流とを生成する推進力を提供するために従来の方法で動作する。中圧圧縮機14は、その中に導かれた空気流を圧縮して高圧圧縮機15に送り、高圧圧縮機15においてさらなる圧縮が行われる。
【0037】
高圧圧縮機15から排出された圧縮空気は、燃焼装置16に導かれ、そこで燃料と混合され、混合物が燃焼される。その結果得られる高温燃焼生成物は、その後、膨張して、ノズル20を通って排出される前に高圧タービン17、中圧タービン18および低圧タービン19を駆動して追加の推力を提供する。高圧タービン17、中圧タービン18および低圧タービン19の各圧力タービンは、高圧圧縮機15、中圧圧縮機14およびファン13をそれぞれ適切な相互接続シャフトによってそれぞれ駆動する。
【0038】
本開示が適用され得る他のガスタービンエンジンは、別の構成を有してもよい。一例として、そのようなエンジンは、代替数の相互接続シャフト(例えば2つ)および/または代替数の圧縮機および/またはタービンを有することができる。さらに、エンジンは、タービンから圧縮機および/またはファンへの駆動トレインに設けられたギアボックスを備えることができる。
【0039】
図2に示すように、例示的なケーシング24は、エンジンの主軸11と同軸の、軸方向に延在する実質的に円筒形の本体26を備え、前方半径方向フランジ28および後方半径方向フランジ30は、それぞれ本体26に取り付けられている。
【0040】
図3は、コンポーネントを形成するためのツール32の一部、この例では図2のケーシング24、およびコンポーネントのプリフォーム200を概略的に示す。ツール32は、概して環状であり、ケーシング24の主軸11に対応するツール軸33の周りに配向されている。ツール32は、レイアップ作業中に繊維強化材を受容するための外側および円筒形本体レイアップ面38を備える環状本体部36を有する。この例では、本体部36は、円周方向に延在する湾曲した本体パネルを含み、これらの本体パネルは、共に円筒形のレイアップ面38を画定する。この例では、それぞれ60°の角度範囲を有する6つの湾曲した本体パネルがある。本体部36は、例えば本体部36の内面または本体パネルに固定されることによって本体部36に熱的に結合された複数の本体加熱要素を含む本体ヒータ39を備える。これにより、本体部36およびその上に収容された任意の繊維強化材は、例えば硬化操作中に加熱されてもよい。この例では、本体パネルは熱伝導性の金属、特にステンレス鋼またはアルミニウムで構成されている。
【0041】
本体部36の軸方向に隣接して、軸方向のいずれかの側に、各々が複数のフランジ形成部40,42を有する前方および後方フランジ形成組立体がある。各フランジ形成部40,42は、レイアップ動作の間に繊維強化材を受容するための外側フランジレイアップ面44,46を有する環状ブロックであり、これらは合わせて前方および後方円筒形レイアップ面を形成する。この例では、各フランジ形成部40,42は12°の角度範囲を有し、各フランジ形成組立体は30個のフランジ形成部40,42を含む。
【0042】
図3に示すように、フランジ形成部40,42の外側フランジレイアップ面44,46は、レイアップ面44,46のそれぞれが円筒状のレイアップ面の一部分を形成するように実質的に長手方向(すなわち、ツール軸33と平行)に延在する。
【0043】
各フランジ形成部40,42は、レイアップ構成(図3)と成形構成(図4)との間で本体部36に対して半径方向に移動可能である。レイアップ構成では、フランジ形成部40,42のレイアップ面44,46は、隣接する本体部36のレイアップ面38と実質的に連続して隣接しており、それらが共に実質的にこの例では円筒形のツールの連続的なレイアップ面を有する。本体部36に対するフランジ形成部40,42の成形形状への半径方向外向きの移動により、フランジ形成部40,42の半径方向に延在する前方および後方側面48,50が本体部のレイアップ面38,44,46とフランジ形成部との間にそれぞれ延在するように、レイアップ面44,46が本体部36のレイアップ面38の半径方向外側に配置される。
【0044】
各フランジ形成部40,42は、その内部に埋め込まれたフランジヒータ52を有しているため、フランジ形成部40,42およびその上に受容された繊維強化材は、成形または硬化操作中に加熱され得る。例えば、ヒータ要素52は、フランジ形成部のキャビティ内に受け入れられてもよい。この例では、各フランジ形成部40,42は熱伝導性金属、特にステンレス鋼またはアルミニウムで構成されている。
【0045】
本体ヒータ39およびフランジヒータ52は、後述するように、フランジ形成および硬化操作を制御するためのコントローラ(図示せず)に接続される。同様に、フランジ形成部40,42のためのアクチュエータ(図示せず)は、フランジ成形動作におけるそれらの相対運動を制御するためにコントローラに接続される。
【0046】
本体部36およびフランジ形成部40,42は、支持構造(図示せず)上に支持されてもよく、フランジ形成部40,42は、後述するように、本体部36に対して相対的に移動できるように支持構造に対して半径方向に移動可能であってもよい。
【0047】
他の例では、ツールは、フランジ形成部40,42に軸方向に隣接するさらなる部分を含むことができ、これは連続部分と呼ばれ得る。例えば、レイアップ作業中に繊維強化材を受容するための半径方向外側のレイアップ面をそれぞれ有する本体部から各フランジ形成部またはアセンブリの反対側に前方および後方の連続部分が存在してもよい。このようなレイアップ面は、連続部分のレイアップ面がツール32の連続したレイアップ面の一部を形成するように、レイアップ構成のフランジ形成部のレイアップ面44,46と隣接して連続していてもよい。このような連続部分は、本体部36およびフランジ形成部40,42と同じ支持構造に支持されてもよい。
【0048】
図4に示すように、ツール32は、後述で詳細に説明するように、本体部(およびその上に受け入れられたプリフォーム)の半径方向外側に配置され、フランジ形成部40,42に対向する前方および後方フランジ支持部54,56をさらに含む。フランジの形成のために反作用の支持面を提供するように、成形構成を形成する。この例では、ツール32の周りに角度をなして間隔を置いて配置され、ツールの主支持構造に取り外し可能に取り付け可能な反作用(counteracting)支持構造(図示せず)上に支持された複数の前方および後方フランジ支持部54,56がある。フランジ支持部は、反作用支持構造に取り外し可能に取り付け可能である。
【0049】
フランジ支持部54,56は、それぞれ、使用中のプリフォームまたはコンポーネントの実質的に円筒形の領域または遷移領域上に載るための半径方向内面58と、半径方向に延びかつ実質的に平坦なフランジ支持面60を有し、フランジ支持面60は軸33に対して垂直であり、フランジ形成部40,42の側面48,50に対向するように構成されている。内面58とフランジ支持面60との間に円周方向に延在する遷移曲線が存在する。遷移曲線は、使用時に、プリフォームおよび成形コンポーネントの本体領域とフランジ領域との間に連続的な湾曲が存在するように、比較的低い曲率を有してもよい。これにより、フランジ支持部54,56は、フランジ形成部と関連して成形作業中に半径方向フランジの形状を画定するように構成される。他の例では、フランジ支持部54,56の内面58とフランジ支持面60との間に比較的高い曲率または実質的に正方形の移行部が存在してもよい。
【0050】
さらに、他の実施例では、フランジ支持部54,56に、成形中にフランジ支持部54,56およびプリフォームのフランジ領域を加熱するための一体のまたは取り付けられたヒータまたは加熱要素を設けることができる。
【0051】
図5は、前方フランジ形成部40の5つに対応する駆動機構62の一部を示すが、後方フランジ形成部42の駆動機構も同様に構成される。各フランジ形成部40に対応して、駆動機構は、駆動機構ツール32に取り付けられ、レイアップ構成と成形構成との間のフランジ形成部40の直線的な半径方向移動を制御するためのコントローラに接続されたリニアモータ64を備える。
【0052】
図6は、全体の1/6に対応するツール32の一部を示しており、特に、本体部36、前方フランジ形成部40、および前方連続部分65を含むツール32の例示的な配置を示している。ツール32の前方部分のみが示されているので、本体部36に隣接する後方フランジ形成部は図示されていない。図6は、上述したフランジ支持部54を支持するフランジ支持構造66の配置例を示す。図6は、上述したように前方フランジ形成部40を動かすための駆動機構62の一部を示している。
【0053】
次に、ツール32を使用して複合材料を製造する方法を、図3図8を例にして説明する。
【0054】
ツールは、支持面(床など)上で軸33が垂直方向に延在するように向けられている。ツール32は、取り付けられている場合はフランジ支持構造66を取り外し、複数のフランジ形成部40,42をレイアップ構成に戻すように駆動機構62を制御することによって、レイアップ動作のために準備される。したがって、連続レイアップ面は、本体部36、前方および後方フランジ形成部40,42(および、他の例ではいずれかの連続部分)の半径方向外側の面によってツール32上に画定され、半径方向外側の位置からアクセス可能である。
【0055】
レイアップ作業では、予備含浸された繊維強化材の一方向テープを、自動テープ敷設(ATL)装置を使用して連続するレイアップ面に適用し、それにより実質的にツール32上に円筒形の複合材プリフォーム200を形成する。
【0056】
繊維強化材は、本体領域210と、本体領域210の軸方向のいずれかの側に軸方向に隣接する前方フランジ領域212および後方フランジ領域214とを有し、本体領域210がフランジ領域212,214(図3)の各々と隣接して連続するプリフォーム200を提供するためにツールに適用される。繊維補強テープは、ツールの環状の周りに適用されて、連続する円筒状層を形成する。プライ層は、例えば0°(すなわち、軸方向に整列)、±60°、および90°(すなわち、横方向)の配向を有することができる。
【0057】
しかしながら、この特定の例では、繊維強化材が最初に適用されて、図3,4に示され、図7でより詳細に示されるように、前方および後方のトレーリングプライ202,204を形成する。
【0058】
図7は、本体領域210の一部、前方フランジ領域212、およびトレーリングプライ202を含む、プリフォーム200の前方部分を断面で示す。
【0059】
本体領域210と前方フランジ領域212との間に境界216が存在し、これは、前方フランジ領域212が成形動作中に本体領域から偏向するかまたは変形する場所に対応する。したがって、境界216の位置は、下側の本体部36と前方のフランジ形成部40との間の境界を参照することによって決定することができ、例えば、この境界の真上に位置すると考えることができる。それにもかかわらず、プリフォームの本体領域およびフランジ領域は互いに実質的に連続しているため、形成されたコンポーネントの本体とフランジとの間に連続的な曲がりが存在することがあるので、プリフォームの本体領域210およびフランジ領域212と重なる遷移領域に位置するようにする。
【0060】
図7に簡略化して示すように、本体領域210からの複数のプライは前方フランジ領域212内に入り、前方フランジ領域212の外側端部218(すなわち、本体領域210から最も遠い端部)で終端する。
【0061】
さらに、この例では、プリフォーム200の最下層の層の一部を形成するトレーリングプライ202が設けられる。トレーリングプライ202は、アウタープライ端部222とインナープライ端部224との間に長手方向に延在する。この例では、トレーリングプライ202は、インナープライ端部224から前方フランジ領域212の外側端部218を超えて長手方向に延び、トレーリングプライが前方フランジ領域212を越えて突出する。この例では、前方トレーリングプライ202のアウタープライ端部222は、プリフォームの前方長手方向端部226を画定する。プリフォームの対応する後方長手方向端部は、対応する後方側のトレーリングプライ204のアウタープライ端部によって画定される。他の実施例では、各々のトレーリングプライまたはトレーリングプライは、対応するフランジ領域のアウタープライ端部に沿って実質的に終端してもよい。
【0062】
インナープライ端部224は、インナープライ端部224がプリフォームの対向端部226から分離されるように、本体領域210の途中で終わっている。特に、この例では、完成コンポーネントの前方フランジの所望の長さは150mmであり、前方フランジ領域212の長手方向の長さは200mmであり(後述するようにZ形状成形に対応するため)トレーリングプライの長手方向長さは300mmであり、トレーリングプライ202は前方フランジ領域212の外側端部218を50mm超えて長手方向に延び、本体領域210内に50mm(すなわち境界216を越えて)延在している。本体領域の軸方向の長さは1500mmである。
【0063】
他の例では、インナープライ端部224は、フランジ領域212で終端してもよく、例えば、実質的に境界216で、またはフランジ領域212の中間の長手方向の点で終端してもよい。
【0064】
この例では、レイアップ動作は、繊維補強テープが最初に適用されて、前方および後方のトレーリングプライ202,204を形成するように制御される。その後、複数のプライが適用されて、本体領域210が形成され、図7に示すように、複数のプライがトレーリングプライ202のインナープライ端部224の上に配置され、それにより、プリフォーム内にマイナーステップが形成されてもよい。したがって、トレーリングプライ202は、全体としてプリフォームのベースプライ層の一部を形成するだけである。
【0065】
7つのプライ(トレーリングプライ202を除く)の厚さが図7に示されているが、図面は単に例示的なものであり、プリフォームはより大きい(またはより小さい)プライの数を含み得ることが理解される。
【0066】
この特定の例では、前方および後方のトレーリングプライ202,204はそれぞれ、約0.25mmの厚さに対応する1本の繊維強化材から形成され、その上に20プライの上層を有する本体領域210および前方および後方フランジ領域212,214は、約5mmの厚さに対応する。これは単純化された例であり、プライの厚さおよび数はプリフォームの長手方向の長さに沿って変化し、厚さの段階的変化または長手方向長さにわたる厚さの漸減が存在し得ることが理解されよう。例えば、10~40プライ以上であってもよい。
【0067】
この特定の例では、前方および後方のトレーリングプライ202,204は、0°の向きで適用され、その結果、層の向きは、プリフォーム200の軸方向または長手方向と整列し、それによって形成されるコンポーネントと整列する。この例において上部プライ(すなわち、本体領域210およびフランジ領域212,214を形成するために配置されたもの)は、最終的なコンポーネントにおいて望ましい構造特性を得るための当該技術分野において知られているように、複数の異なる向きで適用される。特に、この例では、ツール軸33に対してそれぞれ+60°、-60°および90°の向きを有する上部プライがある。また、0°の向きを有する上部プライも存在し得る。他の例では、AFP(Automatic Fiber Placement)またはハンドレイアップなどの他のレイアップ技術を使用することができる。
【0068】
図3に示すように、繊維強化材は、前方フランジ領域212および後方フランジ領域214が、それぞれのフランジ形成部40,42のレイアップ面44,46の途中まで部分的に延び、他の例では、フランジ領域212,214および/またはトレーリングプライ202,204は、それぞれの上にそれぞれ延在することができる上述したように、フランジ形成部40,42の本体部36とは反対側の連続部に形成されている。
【0069】
図3に示すように、レイアップ動作が完了した後、可撓性膜228(すなわち、真空バッグ)、例えばシリコンゴムのシートが、ツール32上のプリフォーム200上に配置され、長手方向プリフォーム200がツール32と可撓性膜228との間が密封された環境になるように、前方および後方端部(すなわち、プリフォームの長手方向端部の外側)に配置される。可撓性膜228は、例えば、接着テープを用いて密封される。
【0070】
真空チューブ(図示せず)は、可撓性膜228を通ってツール32と膜228との間に囲まれた空間に延在され、真空ポンプのような真空源が真空チューブに適用してプリフォーム200が占める空間に部分真空を形成する。この例では、大気からの不均衡な圧力が真空バッグを介してプリフォーム200に加えられるように、部分真空が形成される。
【0071】
成形動作は、コントローラによって開始され、加熱装置(すなわち本体ヒータ39およびフランジヒータ52)がプリフォーム200を閾値形成温度(この例では80℃)に加熱する。この例では、コントローラは、フランジ領域212,214が閾値形成温度に達するようにヒータを制御するが、本体領域210の実質的な部分は、例えばフランジヒータ52を作動させるだけではなく、ヒータ39を用いて本体領域210をフランジ領域212,214よりも低い温度に加熱する。
【0072】
プリフォームのフランジ領域が閾値形成温度に達すると、コントローラは、駆動機構62に、レイアップ構成(図3)から成形構成(図4)へ半径方向外側にフランジ形成部40,42を駆動させる。フランジ形成部40,42が半径方向外側に移動すると、フランジ形成部40,42に隣接するプリフォーム200の最も低いプライ層がフランジ形成部上を摺動する。この例では、前方および後方のトレーリングプライ202,204は、フランジ形成部40,42上に最も低いプライ層を形成し、したがって、これらのプライは、フランジ形成部40,42に対して摺動する。他の例では、トレーリングプライは、フランジ形成部40,42に隣接するプリフォーム内の最も低いプライ層の一部を占めるだけである。
【0073】
フランジ形成部40,42の移動により、フランジ形成部40,42の側面48,50の周りおよびフランジ形成部40,42の対向するフランジ支持面のフランジ支持面60の周りでフランジ領域212,214が塑性変形するコンポーネントの前方および後方半径方向フランジを形成する。これとは対照的に、プリフォームの本体領域210は、ツール32の本体部36に対して実質的に定位置にとどまっている。それぞれのフランジ領域212,214と本体領域210各フランジ形成部40,42に隣接する本体領域のレイアップ面38の部分から引き離されて、後述するようにプリフォームの移行曲がり部を形成する。
【0074】
プリフォーム200の最下層の、隣接するフランジ形成部40,42に対する摺動運動は、最下層層とフランジ形成部40,42の外面(または後述するようにその上に配置された剥離ライナー)との間に作用する摩擦または剪断粘性力によって抵抗が生じる。剪断粘性力は、それぞれのフランジ形成部40,42に対して摺動する最も低いプライ層の面積に比例する。剪断粘性力はまた、可撓性膜を介してプリフォームに加えられる圧力に依存する(そしてともに増加する)。
【0075】
摩擦力またはせん断粘性力は、フランジ形成部40,42の相対スライド移動方向(すなわち、摺動運動に抵抗するように)の最下層のプライ層に加えられる。したがって、せん断粘性力は、最下層の層に引っ張り力をもたらす。
【0076】
プリフォーム内のプライは互いに摩擦接触しているので、最下層のプライ層の引っ張り力はプリフォームの厚さ全体にわたって反応し、その結果プリフォーム内に合成引っ張り力が生じる。図4に示すように、この引っ張り力は、フランジ領域212,214が本体領域210からプリフォームのそれまで、最短経路をたどるように、フランジ形成部40,42と共にプライのフランジ領域212,214を引き寄せるまたは引っ張る傾向がある。これにより、フランジ領域212,214が反作用フランジ支持面60に押し付けられ、プリフォームが本体部36のレイアップ面38とフランジ形成部40,42のそれぞれの側面48,50との間の接合部から持ち上げられる。
【0077】
対比として、プリフォームに著しい引っ張り力がない場合、プリフォームは、各反作用フランジ支持面60と、本体部36とツール32のそれぞれのフランジ形成部40,42との間の接合部との間に形成された空隙230(図4)内に拡張する可能性がある。これは、重力作用が顕著である場合や可撓性膜228を介して加えられる大きな圧力が存在する場合に、本体とフランジとの間の(例えば、反作用フランジ支持面60によって画定されるような)低曲率遷移領域によって引き起こされるより大きな空隙が特に問題となる可能性があり、依然として高い曲率または正方形の遷移に影響を及ぼす可能性がある。
【0078】
したがって、プリフォームの引っ張り力は、フランジが形成されるときに生じ得るシワなどのフランジ領域212,214に欠陥を形成することを回避するのに役立つ。
【0079】
さらに、本体領域とフランジ領域との間の遷移領域の周りの経路長さは、最も低いプライ層のために最長であり、プリフォームの上部層のために減少することが理解されよう。それにもかかわらず、反対側は、側面48,50とレイアップ面44,46との間のそれぞれのフランジ形成部40,42の縁の周りに延在するプリフォームの領域にも当てはまり、経路長の違いによる引っ張り力の損失が最小限に抑えられます。それにもかかわらず、プリフォームに付与される引っ張り力は、例えばこれらの領域におけるバンチング(bunching)を低減するためにプライの相対的なスライドを促進することによって、これらの領域における成形欠陥を低減するのに役立つ。
【0080】
トレーリングプライ202,204は、フランジ形成部40,42(即ち、フランジ領域212,214)に隣接するプリフォームの領域において最も低いプライ層を形成するので、トレーリングプライ202,204の間の摩擦抵抗は、摺動時にフランジ形成部40,42とフランジ形成部40,42がプリフォームをもたらす引っ張り力を決定する。例えば、引っ張り力は、トレーリングプライ202,204を伸張させて、トレーリングプライ202,204とフランジ形成部40,42との間の摩擦接触面積を増加させることによって、増加させることができる。図3に示すように、例えば、トレーリングプライ202,204は、それぞれのフランジ領域212,214の外側端部218を越えて延在する。特に、トレーリングプライ202,204は、フランジ領域212,214の外側端部218を超えて約50mm延び、フランジ領域212,214の範囲は約200mmである。したがって、トレーリングプライ202,204は、フランジ領域の約25%のそれぞれのフランジ領域を超えて長手方向の範囲を有する。他の実施例では、トレーリングプライは、(フランジ領域に対して絶対的でも比例的でも)大きくても小さくてもよく、フランジ領域の外側端部218と隣接していてもよい。フランジ領域212,214は、最終的に(後述するように)約150mmまでトリミングされる。
【0081】
この例では、トレーリングプライ202,204は、フランジ領域212,214内のそれぞれのインナープライ端部224で、またはプリフォームの本体領域210の途中、特に本体領域210内の約50mmで終わる。各トレーリングプライ202,204の引っ張り力は、トレーリングプライ202,204をプリフォームの隣接プライ(またはプライ)に対して摺動させて、インナープライ端部224が隣接するプライに対してプリフォーム内を摺動するようにすることができる。これにより、トレーリングプライ202,204は、(湾曲領域に起因して互いに対して摺動するプライとは反対に、または引っ張り力下でプライの伸長により)成形中にプリフォーム内で並進運動を行うことができる。例えば、トレーリングプライは、約3mmの並進運動を受けることができる。
【0082】
この例では、トレーリングプライ202,204は、ツール32の長手方向軸33に対して0°(すなわち、軸方向の整列)の向きを有する。上述したように、プリフォームのフランジ領域212,214の変形(フランジ領域212,214において最も低いプライ層を形成する)トレーリングプライの摺動運動および結果として得られる引っ張り力がプライのスタック内で反応することによって影響される。理解されるように、最も低いプライ層に加えられる引っ張り力は、ツール軸33を通って延在する平面内で作用する(例えば、フランジ形成部40,42のレイアップ面44,46に対する領域上に軸方向に沿って、フランジ形成部40,42の側面48,50に半径方向に沿って)形成されている。本出願人は、プライが、プライの操縦効果と呼ばれている引っ張り力の方向に向かって変形、伸長または平行移動することによって、プライの配向と整列しない引っ張り力に応答することができることを見出した。そのようなステアリング効果は、プライシワなどの望ましくない成形効果をもたらすことがある。トレーリングプライはツール32の軸33に対して0°の向きを有するので、トレーリングプライの操縦効果は回避される。他の例では、プリフォーム200の2つの長手方向端部の間に延在する単一のトレーリングプライがあってもよい。
【0083】
フランジ成形動作が完了すると(図4)、コントローラは硬化動作を開始し、形成されたフランジを含むプリフォーム200を少なくとも閾値硬化温度まで加熱する(この実施例では、 135℃。コントローラはまた、不均衡な圧力が可撓膜228を通ってプリフォームに加えられるように、真空源を制御する。
【0084】
6時間の硬化時間の後、コントローラは加熱装置をオフにし、硬化したケーシング24をツール32上で冷却させる。フランジ支持構造66を分離し、可撓性膜228および関連装置を硬化したコンポーネントから除去する。フランジ形成部40,42はレイアップ構成に後退し、硬化したケーシング24はツール32から取り外される。
【0085】
次に、ケーシング24をトリミングして、トレーリングプライ202,204、および場合によっては形成されたフランジ領域212,214の望ましくない部分を除去する。この例では、形成されたフランジ領域212,214の軸方向に延在する部分は、半径方向部分からの関連する湾曲部と共に除去され、2つの半径方向に延在するフランジを残すことができる。
【0086】
図8は、ツールの成形構成におけるツール32上のプリフォーム200’のさらなる例を示す。この例のプリフォーム200’は、プリフォーム200の各長手方向端部に2つのトレーリングプライが存在する点で、上述したプリフォーム200と異なる。
【0087】
特に、各端部において、第1のトレーリングプライ202,204が、それぞれのフランジ領域212,214の外側端部218を越えて、例えば50mmだけ延在する。第1のトレーリングプライ202,204は、上述したように、フランジ領域212,214の最も低いプライ層を少なくとも部分的に形成する。
【0088】
さらに、第2のトレーリングプライ232,234が、プリフォームのそれぞれの長手方向端部226の間で第1のトレーリングプライを越えて延在し、それぞれのフランジ領域212,214内のインナープライ端部または本体領域210の途中で終端する。他の例では、第2のトレーリングプライ232,234は、プリフォームの対向する長手方向端部に向かって延在してもよいし、その対向する長手方向端部で終端してもよい。
【0089】
この例では、各第2のトレーリングプライ232,234は、それぞれのフランジ領域(すなわち、スタックの半径方向内側と半径方向アウタープライの間の層)に中間プライ層を形成するが、他の例では、第2のトレーリングプライは、それぞれのフランジ領域に半径方向外側のプライを形成してもよい。
【0090】
各第2のトレーリングプライは、それぞれの第1のトレーリングプライ202,204の外側プライ端部を越えて延在するので、上述したように、第2のトレーリングプライ232,234は、フランジ形成動作中にそれぞれのフランジ形成部40,42に対して摺動する。したがって、これにより、上述したように、プリフォーム内の隣接するプライにおいて反応して第2のトレーリングプライ232に張力が生じ、それによりフランジ形成動作中にフランジを形成するのを助ける。
【0091】
さらに別の例では、互いに重なり合う2つ以上のトレーリングプライがあり、フランジ成形動作中にフランジ形成部(またはツールの連続部分)と摺動するように摩擦接触するように配置されてもよい。
【0092】
本発明の実施例をガスタービン用ケーシングの製造に関して説明してきたが、本開示は、成形作業中に予備成形品を工具の一部に対して摺動させることによって形成されたフランジまたはコンポーネントの端部において本体部分から逸れる他の部分を有する任意の構造に等しく適用可能である。特に、本発明は、環状構造および非環状構造の両方に適用可能である。軸上表記に対する上記の開示における任意の言及は、非環状コンポーネントの文脈における長手方向を指すものとして解釈され得る。さらに、半径方向への参照は、非環状コンポーネントとの関連で長手方向に垂直な方向として解釈されてもよい。
【0093】
非環状構造の一例は、翼用のスパーである。翼のための桁は、一般に、中央本体と2つの側部フランジとを備える。
【0094】
プリフォームの領域の厚さに関する言及は、プリフォームの領域にわたる平均厚さに関連し得ることが理解されるであろう。
【0095】
本体部およびフランジ形成部のいずれか一方が、成形作業中に支持構造に対して移動することができることは理解されよう。例えば、本体部および反作用フランジ支持構造は、フランジ形成部が固定された支持構造に対して相対的に移動するように作動され、その結果プリフォームがフランジ形成部の上に引き出されてもよい。
【0096】
本発明の例は、自動テープレイイング(ATL)を参照して記載されているが、自動繊維配置(AFP)、自動フィラメントワインディング、および手動レイアップなどの他のレイアップ動作を使用してもよいことが理解されるであろう。
【0097】
繊維強化材がツールのレイアップ表面上に配置され、ツールのライニング表面と接触する本発明の実施例を説明したが、剥離ライナーまたは他のライナーをレイアップ表面、および繊維強化材を剥離ライナー上に適用することができる。それにもかかわらず、繊維強化材と成形中にツールのレイアップ面との間に相対的な摺動が存在してもよく、例えば、繊維強化材は、ツールに固定され得る剥離ライナーに対して摺動してもよい。
【0098】
本発明は上述の例に限定されるものではなく、本明細書に記載された概念から逸脱することなく様々な改変および改良を行うことができることが理解されよう。互いに排他的な場合を除いて、特徴のいずれかを別個に、または他の特徴と組み合わせて使用することができ、本開示は、本明細書に記載される1つまたは複数の特徴のすべての組み合わせおよび部分組合せに及ぶ。
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