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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20230113BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20230113BHJP
   H02P 101/45 20150101ALN20230113BHJP
   H02P 103/10 20150101ALN20230113BHJP
【FI】
H02P9/00 A
H02P9/04 J
H02P9/00 C
H02P101:45
H02P103:10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021176492
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】松尾 興祐
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正利
(72)【発明者】
【氏名】西濱 和雄
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】池上 ▲徳▼磨
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特許第6923722(JP,B1)
【文献】特開2021-48671(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
H02P 9/04
H02P 101/45
H02P 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主巻線と補助巻線とを含む固定子を有する発電機と、
前記主巻線に接続された整流器と、
前記補助巻線に接続され、前記主巻線および前記補助巻線の電圧を制御する電力変換器と、
前記補助巻線の電圧指令値に応じた制御信号を前記電力変換器へ出力する制御装置とを備えた発電システムにおいて、
前記制御装置は、前記主巻線の磁束が前記補助巻線に干渉することにより生じる前記補助巻線の電圧変化分を前記主巻線の電流と電圧とに基づいて算出し、前記電圧変化分を前記補助巻線の電圧指令値に加算する
ことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の発電システムにおいて、
前記主巻線の電圧を検出する電圧センサと、
前記主巻線の電流を検出する電流センサとを備え、
前記制御装置は、前記主巻線の電流と前記補助巻線に係る主巻線抵抗との乗算値と前記主巻線の電圧との差分を前記電圧変化分として算出する
ことを特徴とする発電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の発電システムにおいて、
前記制御装置は、前記主巻線の電流と前記補助巻線に係る主巻線抵抗との乗算値と前記電力変換器の電圧指令に補正ゲインを乗じた主巻線電圧推定値との差分を前記電圧変化分として算出する
ことを特徴とする発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2巻線誘導発電機を備えた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
主巻線と補助巻線を有する固定子を備えた発電機を用いたドライブシステムが知られている。例えば、特許文献1では、複数組の巻線群を有する多重巻線電動機の各巻線群毎に、巻線群を駆動する電力変換器を備えた多重巻線電動機の駆動制御装置において、各巻線群のうちの第一巻線群を駆動する第一電力変換器を制御する第一制御部の信号を用いて、第一電力変換器以外の他の電力変換器を制御する他の制御部の信号を補償する補償量を求める補償量演算部を備え、他の制御部が、制御におけるむだ時間を有する制御系であって、補償量演算部により求めた補償量により他の制御部の信号を補償して他の電力変換器を制御し、第一制御部の信号は補償せずに第一電力変換器を制御するようにすることで、片方向通信の制御構成においても巻線群間の干渉を抑制でき制御系を安定化できる、単純な構成の多重巻線電動機の駆動制御装置を提供している。
【0003】
また、特許文献2では、電気的仕様が互いに同等である複数の巻線群を有する多重巻線回転機と、複数の巻線群毎に設けられる複数の電力変換器と、電流検出器とを備える多重巻線回転機システムに適用される制御装置において、非干渉化部は、磁気結合による干渉電圧を補償する非干渉制御演算を行う。非干渉化部は、自系統の注目軸の制御器後指令電流に係る逆モデル項に、他系統の注目軸の制御器後指令電流に係る相互インダクタンス及び電流微分値を含む非干渉制御項を「統合」する。また、自系統の相手軸の制御器後指令電流に係る角速度及び自己インダクタンスを含む非干渉制御項と、他系統の相手軸の制御器後指令電流に係る角速度及び相互インダクタンスを含む非干渉制御項とを「統合」する。これにより、非干渉化部の制御構成を簡素化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-101090号公報
【文献】特開2016-149904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
主巻線と補助巻線を有する固定子を備えた誘導発電機において、主巻線と補助巻線は磁気的に結合しているため、それぞれの巻線に生じる電流や電圧が相互に影響しあうため、制御系の安定性が悪化する。
【0006】
前述の特許文献1では、多重巻線電動機の各巻線毎に電力変換器を設けており、第一電力変換器の指令値を用いて、第一電力変換器以外の電力変換器を制御する他の制御部の信号を補償することで、巻線間の干渉を抑制している。しかし、この方式は各巻線毎に電力変換器を設けているため、その台数分コストが増加することとなる。
【0007】
また、特許文献2でも、多重巻線回転機の各巻線毎に電力変換器を設けており、特許文献1と同様、電力変換器の台数分だけコストが増加する。更に、非干渉化部の制御構成を簡素化する技術を発明しているが、これは複数の巻線の電気的仕様が互いに同等である上で成立する技術であるため、電気的仕様が互いに異なる多重巻線回転機においては適用できない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、2巻線誘導発電機の主巻線および補助巻線の出力電力を1台の電力変換器で安定的に制御することが可能な発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、主巻線と補助巻線とを含む固定子を有する発電機と、前記主巻線に接続された整流器と、前記補助巻線に接続され、前記主巻線および前記補助巻線の電圧を制御する電力変換器と、前記補助巻線の電圧指令値に応じた制御信号を前記電力変換器へ出力する制御装置とを備えた発電システムにおいて、前記制御装置は、前記主巻線の磁束が前記補助巻線に干渉することにより生じる前記補助巻線の電圧変化分を前記主巻線の電流と電圧とに基づいて算出し、前記電圧指令値に前記電圧変化分を加算するものとする。
【0010】
以上のように構成した本発明によれば、主巻線の磁束が補助巻線に干渉することにより生じる補助巻線の電圧変化分で補助巻線の電圧指令値を補償することにより、1台の電力変換器で補助巻線の出力電圧を安定的に制御することが可能となるため、補助巻線の出力電圧に概ね比例する主巻線の出力電圧も安定化に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2巻線誘導発電機を備えた発電システムにおいて、主巻線側および補助巻線の出力電力を1台の電力変換器で安定的に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施例におけるダンプトラックの構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施例における発電システムを適用した電気駆動システムの構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施例における制御装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の第1の実施例における電流指令演算部および電圧指令演算部の処理を示すブロック図である。
図5】本発明の第1の実施例における周波数指令演算部の処理を示すブロック図である。
図6】本発明の第1の実施例における電圧指令補償部の処理を示すブロック図である。
図7】本発明の第2の実施例における電圧指令補償部の処理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。また、本実施形態は、本発明に係る発電システムをダンプトラックの電気駆動システムに適用したものであるが、本発明の適用対象はこれに限定されない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施例におけるダンプトラックの構成を示す。図1において、ダンプトラックは、車体30と、原動機1と、車体30の上側後方に上下方向に回転可能に取り付けられた荷台31と、車体30の上側前方に設けられた運転席32とを備えている。また、車体30の下方前側には左右一対の従動輪33が配置されており、車体30の下方後側には左右一対の駆動輪34が配置されている。駆動輪34は、走行用モータ5によって駆動される。鉱山向けダンプトラックは、積み込み場で土砂を積載し、積み込み場から放土場まで走行し、放土場で放土し、放土場から積み込み場まで走行するという一連の作業サイクルを繰り返し行う。
【0015】
図2は、図1に示すダンプトラックに搭載された電気駆動システムの構成図である。図2において、電気駆動システムは、原動機1と、主巻線と補助巻線を有する固定子を備えた2巻線誘導発電機2と、整流器3と、走行用インバータ4と、走行用モータ5と、回生放電抵抗器6と、電力変換器7と、補機用インバータ8と、補機用モータ9と、始動用バッテリ10と、制御装置11と、第1電圧センサ12と、第1電流センサ13と、回転センサ14と、第2電圧センサ15と、第2電流センサ16と、第3電圧センサ17とを備えている。ここで、原動機1と、2巻線誘導発電機2、整流器3、電力変換器7、制御装置11と、第1電圧センサ12、第1電流センサ13、回転センサ14、第2電圧センサ15、第2電流センサ16、および第3電圧センサ17は、本実施例における発電システム40を構成している。
【0016】
原動機1は2巻線誘導発電機2の回転子を回転させる。2巻線誘導発電機2の主巻線は、整流器3を介して走行用インバータ4に接続されている。走行用インバータ4は走行用モータ5に接続されている。回生放電抵抗器6は走行用モータ5が発電しているときには整流器3と走行用インバータ4に接続されている。2巻線誘導発電機2の補助巻線は、電力変換器7を介して補機用インバータ8に接続されている。補機用インバータ8は補機用モータ9に接続されている。始動用バッテリ10は2巻線誘導発電機2が始動しているときに電力変換器7と補機用インバータ8に接続される。
【0017】
また、走行用モータ5は、補機用モータ9よりも出力が大きく、補機用インバータ8が要求する電力よりも走行用インバータ4が要求する電力のほうが大きいため、整流器よりも高価なインバータは、走行用インバータ4に接続するよりも、本実施例のように、要求する電力の小さい補機用インバータ8に接続することで、コストが低減される。
【0018】
主巻線と補助巻線は磁気的に結合しているため、2巻線誘導発電機2の主巻線と補助巻線の電圧は概ね比例する。そのため、電力変換器7で2巻線誘導発電機2の補助巻線の電圧を変化させることで、2巻線誘導発電機2の主巻線の電圧を制御できる。2巻線誘導発電機2が同期発電機であると、電圧を制御する励磁巻線への通電にブラシが必要となるが、本発明のように誘導発電機を用いることで、ブラシが不要となる。
【0019】
次に、図3を参照し、電力変換器7を制御する制御装置11の構成について説明する。制御装置11は、3相/2相変換部18a,18b,18c、電流指令演算部19、周波数指令演算部20、電圧指令演算部21、電圧指令補償部22、および2相/3相変換部23から構成される。制御装置11は、演算処理機能を有するコントローラ、外部機器との間の信号入出力を行う入出力インタフェース等で構成され、ROM等の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより各部の機能を実現する。本実施例において、制御装置11は、制御装置11に入力される主機側の直流電圧指令値VmDC*及び補機側の直流電圧指令値VaDC*と一致するように、電力変換器7に対して電圧制御及び電流制御を行う。
【0020】
電圧制御は、電流指令演算部19にて、第1電圧センサ12、第3電圧センサ17から取得した値(主機側の直流電圧VmDCと、補機側の直流電圧VaDC)を用いて、例えば比例積分演算を行い、補助巻線電流指令値Iad*,Iaq*を出力する。電流制御は、電圧指令演算部21にて、第1電流センサ13から取得した値(補助巻線の3相電流Iau,Iav,Iaw)を、3相/2相変換部18cでdq軸上に座標変換した値(d軸補助巻線電流Iad、q軸補助巻線電流Iaq)を用いて、例えば比例積分演算を行い、補助巻線電圧指令値Vad*,Vaq*を出力する。電圧指令演算部21にて、回転センサ14から取得した値ωrと、周波数指令値ω1*は、それぞれ2巻線誘導発電機2の回転子が回転することにより生じる誘起電圧と、dq軸間の干渉成分を補償するために用いている。
【0021】
図4は、電流指令演算部19および電圧指令演算部21の処理を示すブロック図である。電流指令演算部19は、主機側の直流電圧指令値VmDC*と直流電圧VmDCとの差分を比例積分し、d軸補助巻線電流指令値Iad*として出力する。図中のKmv_pは主機側電圧制御比例ゲインであり、Kmv_iは主機側電圧制御積分ゲインである。
【0022】
また、電流指令演算部19は、補機側の直流電圧指令値VaDC*と直流電圧VaDCとの差分を比例積分し、d軸補助巻線電流指令値Iad*として出力する。なお、図中のKav_pは補機側電圧制御比例ゲインであり、Kav_iは補機側電圧制御積分ゲインである。
【0023】
電圧指令演算部21は、d軸補助巻線電流指令値Iad*とd軸補助巻線電流Iadとの差分の比例積分値から、dq軸間に生じる干渉成分を減算し、d軸補助巻線電圧指令値Vad*として出力する。ここでいうdq軸間に生じる干渉成分は、d軸補助巻線電流指令値Iad*とd軸補助巻線電流Iadとの差分の積分値にω1*Lσm/Rσaを乗算することで得られる。なお、図中のKmc_pは主機側電流制御比例ゲインであり、Kmc_iは主機側電流制御積分ゲインである。
【0024】
また、電圧指令演算部21は、q軸補助巻線電流指令値Iaq*とq軸補助巻線電流Iaqとの差分の比例積分値に、dq軸間に生じる干渉成分と誘起電圧ωr*μ*φ2dとを加算し、q軸補助巻線電圧指令値Vaq*として出力する。ここでいうdq軸間に生じる干渉成分は、補機側電流制御積分ゲインKac_iを用いた、q軸補助巻線電流指令値Iaq*とq軸補助巻線電流Iaqとの差分の積分値に、ω1*Lσm/Rσaを乗算することで得られる。なお、図中のKac_pは、補機側電流制御比例ゲインであり、Kac_iは補機側電流制御積分ゲインである。
【0025】
図5は、周波数指令演算部20の処理を示すブロック図である。周波数指令演算部20は、回転センサ14から取得した周波数ωrにすべり周波数指令演算部20aで算出された周波数指令値ω1*を加算し、周波数指令値ω1*として出力する。
【0026】
次に、電圧指令補償部22の役割について説明する。図2において、2巻線誘導発電機2は、主巻線と補助巻線が磁気的に結合していることにより、巻線間で干渉成分が生じる。この現象は、数1式に示す2巻線誘導機2の補助巻線部における状態方程式を用いて説明できる。
【0027】
【数1】
【0028】
数式1における記号は以下の通りである。
【0029】
Rσm:dq軸モデルにおける補助巻線に係る主巻線抵抗
Rσa:dq軸モデルにおける補助巻線に係る補助巻線抵抗
Lσm:dq軸モデルにおける補助巻線に係る主巻線自己インダクタンス
Lσa:dq軸モデルにおける補助巻線に係る補助巻線自己インダクタンス
μ:補助巻線に係る一次換算係数
τ2:二次時定数(=二次インダクタンス/二次抵抗)
p:微分演算子
Imd,Imq:d軸主巻線電流、q軸主巻線電流
Vmd,Vmq:d軸主巻線電圧、q軸主巻線電圧
Vad,Vaq:d軸補助巻線電圧、q軸補助巻線電圧
φ2d,φ2q:d軸二次磁束、q軸二次磁束
ω1:一次周波数
【0030】
数1式を整理すると、数2式が得られる。
【0031】
【数2】
【0032】
数2式より、補助巻線電圧について、dq軸上の主巻線電流Imd,Imq及び主巻線電圧Vmd,Vmqが含まれていることが分かる。この主巻線電流及び主巻線電圧に係る項が、補助巻線に対する主巻線の干渉成分であり、2巻線誘導発電機2を制御する上で不安定化の原因となる。従って、この干渉成分を制御装置11で補償することで、主巻線及び補助巻線間に磁気的な結合がある場合でも、2巻線誘導発電機2を安定して制御することができる。具体的には、電圧指令演算部21で算出した補助巻線電圧指令値Vad*,Vaq*に対して、電圧指令補償部22で算出した電圧補償量ΔVad*,ΔVaq*をそれぞれ加算する。
【0033】
図6は、電圧指令補償部22の処理を示すブロック図である。第2電圧センサ15、第2電流センサ16から取得した値(主巻線の3相電流Imu,Imv,Imw、主巻線の3相電圧Vmu,Vmv,Vmw)をそれぞれ3相/2相変換部18a,18bで座標変換し、その座標変換した値(Imd,Imq,Vmd,Vmq)を電圧指令補償部22の入力とする。d軸電圧補償量ΔVad*は、d軸主巻線電圧Vmdと、d軸主巻線電流Imdと補助巻線に係る主巻線抵抗Rσmの乗算値との差分であり、q軸電圧補償量ΔVaq*は、q軸主巻線電圧Vmqと、q軸主巻線電流Imqと補助巻線に係る主巻線抵抗Rσmの乗算値との差分である。このように電圧センサ15および電流センサ16から取得した値を直接使用することで、演算遅れなく補償電圧量ΔVad*,ΔVaq*を算出することができる。
【0034】
(まとめ)
本実施例では、主巻線と補助巻線とを含む固定子を有する発電機2と、前記主巻線に接続された整流器3と、前記補助巻線に接続され、前記主巻線および前記補助巻線の電圧を制御する電力変換器7と、前記補助巻線の電圧指令値Vad*,Vaq*に応じた制御信号を電力変換器7へ出力する制御装置11とを備えた発電システム40において、制御装置11は、前記主巻線の磁束が前記補助巻線に干渉することにより生じる前記補助巻線の電圧変化分ΔVad*,ΔVaq*を前記主巻線の電流Imd,Imqと電圧Vmd,Vmqとに基づいて算出し、電圧変化分ΔVad*,ΔVaq*を前記補助巻線の電圧指令値Vad*,Vaq*に加算する。
【0035】
以上のように構成した本実施例によれば、主巻線の磁束が補助巻線に干渉することにより生じる補助巻線の電圧変化分ΔVad*,ΔVaq*で補助巻線の電圧指令値Vad*,Vaq*を補償することにより、1台の電力変換器7で補助巻線の出力電圧を安定的に制御することが可能となるため、補助巻線の出力電圧に概ね比例する主巻線の出力電圧も安定化に制御することが可能となる。
【0036】
また、本実施例における発電システム40は、前記主巻線の電圧Vmd、Vmqを検出する電圧センサ15と、前記主巻線の電流Imd,Imqを検出する電流センサ16とを備え、制御装置11は、前記主巻線の電流Imd,Imqと前記補助巻線に係る主巻線抵抗Rσmとの乗算値と前記主巻線の電圧Vmd,Vmqとの差分を電圧変化分ΔVad*,ΔVaq*として算出する。これにより、電圧変化分ΔVad*,ΔVaq*を演算遅れなく算出することが可能となる。
【実施例2】
【0037】
本発明の第2の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0038】
図7は、本実施例における電圧指令補償部22の処理を示すブロック図である。図7において、電圧指令補償部22には、第2電圧センサ15で検出した主巻線電圧Vmd,Vmqに代えて、電圧指令演算部21から出力される補助巻線の電圧指令値Vad*,Vaq*が入力される。電圧指令補償部22は、巻線誘導発電機2の主巻線の電圧が補助巻線の電圧に概ね比例するという性質を利用し、補助巻線の電圧指令値Vad*,Vaq*に補正ゲインK(補助巻線電圧に対する主巻線電圧の比)を乗じて主巻線電圧Vmd,Vmqの推定値を算出する。
【0039】
(まとめ)
本実施例における制御装置11は、発電機2の主巻線の電流Imd,Imqと発電機2の補助巻線に係る主巻線抵抗Rσmとの乗算値と電力変換器7の電圧指令値Vad*,Vaq*に補正ゲインKを乗じた主巻線電圧推定値との差分を電圧変化分ΔVad*,ΔVaq*として算出する。
【0040】
以上のように構成した本実施例においても、第1の実施例と同様の効果を達成することができる。また、主巻線電圧Vmd,Vmqを検出する第2電圧センサ15が不要となるため、発電システム40の構成を簡素化することが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…原動機、2…2巻線誘導発電機、3…整流器、4…走行用インバータ、5…走行用モータ、6…回生放電抵抗器、7…電力変換器、8…補機用インバータ、9…補機用モータ、10…始動用バッテリ、11…制御装置、12…第1電圧センサ、13…第1電流センサ、14…回転センサ、15…第2電圧センサ、16…第2電流センサ、17…第3電圧センサ、19…電流指令演算部、20…周波数指令演算部、20a…すべり周波数指令演算部、21…電圧指令演算部、22…電圧指令補償部、30…車体、31…荷台、32…運転席、33…従動輪、34…駆動輪、40…発電システム。
【要約】
【課題】2巻線誘導発電機の主巻線および補助巻線の出力電力を1台の電力変換器で安定的に制御することが可能な発電システムを提供する。
【解決手段】主巻線と補助巻線とを含む固定子を有する発電機2と、前記主巻線に接続された整流器3と、前記補助巻線に接続され、前記主巻線および前記補助巻線の電圧を制御する電力変換器7と、前記補助巻線の電圧指令値Vad*,Vaq*に応じた制御信号を電力変換器7へ出力する制御装置11とを備えた発電システム40において、制御装置11は、前記主巻線の磁束が前記補助巻線に干渉することにより生じる前記補助巻線の電圧変化分ΔVad*,ΔVaq*を前記主巻線の電流Imd,Imqと電圧Vmd,Vmqとに基づいて算出し、電圧変化分ΔVad*,ΔVaq*を前記補助巻線の電圧指令値Vad*,Vaq*に加算する。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7