(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】液状還元剤組成物及び還元洗浄方法
(51)【国際特許分類】
D06P 5/08 20060101AFI20230113BHJP
D06P 5/04 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
D06P5/08 Z
D06P5/04
(21)【出願番号】P 2021509692
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014406
(87)【国際公開番号】W WO2020196902
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019061046
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517118995
【氏名又は名称】台湾日華化学工業股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】寺西 陽子
(72)【発明者】
【氏名】細田 正昭
(72)【発明者】
【氏名】品川 和博
(72)【発明者】
【氏名】陳 啓哲
(72)【発明者】
【氏名】游 文宏
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/063680(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/132682(WO,A1)
【文献】特表2019-500507(JP,A)
【文献】特開2017-214680(JP,A)
【文献】特開平02-091285(JP,A)
【文献】国際公開第2007/072892(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)還元糖、
(B)(B1)芳香族炭素環を有
し、ポリオキシエチレン鎖を20~95質量%含み、且つ重量平均分子量が1500~50000であるポリエステル樹脂と(B2)
トリスチレン化フェノールのエチレンオキシド10~30モル付加物及びカルダノールのエチレンオキシド10~30モル付加物からなる群から選択される化合物とからなる群から選択される1種以上の化合物である、芳香族炭素環を有する両親媒性成分、及び
水、
を含
み、
前記(A)還元糖と前記(B)両親媒性成分との質量比(A):(B)が、70:30~98:2である、液状還元剤組成物。
【請求項2】
前記(B)両親媒性成分が、前記(B1
)ポリエステル樹脂及び前記(B2
)化合物の組合せである、請求項1に記載の液状還元剤組成物。
【請求項3】
さらに(C)アニオン性化合物を含む、請求項1又は2に記載の液状還元剤組成物。
【請求項4】
前記液状還元剤組成物が、任意に(C)アニオン性化合物を含み、
前記液状還元剤組成物100質量%基準で、前記(A)還元糖の量が10~60質量%であり、前記(B)両親媒性成分と前記(C)アニオン性化合物との合計量が0.1~20質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液状還元剤組成物。
【請求項5】
基材を、
(A)還元糖、及び
(B)(B1)芳香族炭素環を有
し、ポリオキシエチレン鎖を20~95質量%含み、且つ重量平均分子量が1500~50000であるポリエステル樹脂と(B2)
トリスチレン化フェノールのエチレンオキシド10~30モル付加物及びカルダノールのエチレンオキシド10~30モル付加物からなる群から選択される化合物とからなる群から選択される1種以上の化合物である両親媒性成分、
の存在下で洗浄することを含
み、
前記(A)還元糖と前記(B)両親媒性成分との質量比(A):(B)が、70:30~98:2である、基材の還元洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状還元剤組成物及び還元洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維の染色加工に際しては、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、ホルムアルデヒドスルホキシル酸の金属塩、塩化第一錫等の還元剤が各種の工程において使用されている。これらの還元剤は、いずれも粉末固体又は結晶状であって飛散し易く、作業場周辺に飛散した場合に、作業者の健康への悪影響が懸念されるとともに、周辺に保管されている布を変色させ、また別途に用意した繊維加工用処理液や捺染色糊に混入して悪影響を及ぼす等の様々なトラブルの原因ともなっている。
【0003】
また、最近の染色加工工場においては、作業員の高齢化、人員の削減等の観点から、液状化された染料又は薬品を自動的に秤量、調薬するシステムが普及しており、この面からも液状の還元剤が要望されている。
【0004】
しかし、従来の還元剤の水溶液、例えば、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム等の水溶液は、還元剤の溶解後直ちに使用すればその効力に問題は生じないけれども、ストック溶液として保存した場合には、徐々に還元力が低下してしまい、目的とする還元力が得られないという問題点がある。また、これらの還元剤の水溶液は、不快な臭気を発生するという作業環境上の問題、及び人体及び環境への影響が大きいという問題も有している。
【0005】
一方従来より、還元性を示す物質として還元糖が知られている。例えば、特許文献1には、還元性糖類等の弱還元剤(A)とHLB6以上のポリオキシアルキレン系界面活性剤(B)とからなることを特徴とするポリエステル/ウール混合繊維染色物のソーピング剤及び該ソーピング剤を用いてpHが中性の浴でポリエステル/ウール混合繊維染色物を処理する方法が記載されている。また、特許文献2には、a)式(I)で表される特定の化合物と、場合によりb)式(II)で表される特定の化合物と、場合によりc)他の添加物を含有する混合物とを用いた、染色した又は印刷したポリエステル含有織物の還元的後洗浄方法が記載され、c)他の添加物が単糖又は二糖であってよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-91285号公報
【文献】特表2000-514879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
還元糖は、液状還元剤として調製容易であるため自動調液システムに好適であり、また水溶液中での還元力の経時的な低下が比較的少ないため水溶液での保管及び管理がしやすい傾向がある。また還元糖は、硫黄臭が少なく、人体及び環境への影響が少ない(例えば生分解性が良好である)という利点も有する。しかし、特許文献1に記載されるソーピング剤は、還元剤としてハイドロサルファイトを使用したものに比べ還元洗浄効果が弱いという問題があった。また、特許文献2に記載される還元剤の主成分は、a)式(I)の化合物及びb)式(II)の化合物であって、単糖又は二糖は補助的に使用されているのみであり、引用文献2に記載される技術では還元剤の経時安定性に改善の余地があった。
【0008】
本発明の一態様は、還元力の経時的低下、臭気、並びに人体及び環境への影響が少ないという還元糖の利点を得つつ、良好な堅牢度を更に得ることが可能な、液状還元剤組成物、並びに基材の還元洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] (A)還元糖、
(B)(B1)芳香族炭素環を有するポリエステル樹脂と(B2)下記一般式(1):
【化1】
[式中、
Arは芳香族炭素環を表し、
Yは下記式(1-1)、(1-2)又は(1-3):
【化2】
で表される置換基であり、
RはOH基又はNH
2基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基であり、
mは0~5の数であり、pは0~5の数であり、但しm+pは0~5であり、
R
1は炭素数2~4のアルキレン基を表し、
nは(R
1O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって1~200の数を表す。]
で表される化合物とからなる群から選択される1種以上の化合物である、芳香族炭素環を有する両親媒性成分、及び
水、
を含む液状還元剤組成物。
[2] 前記(B)両親媒性成分が、前記(B1)芳香族炭素環を有するポリエステル樹脂及び前記(B2)一般式(1)で表される化合物の組合せである、上記態様1に記載の液状還元剤組成物。
[3] さらに(C)アニオン性化合物を含む、上記態様1又は2に記載の液状還元剤組成物。
[4] 前記液状還元剤組成物が、任意に(C)アニオン性化合物を含み、
前記液状還元剤組成物100質量%基準で、前記(A)還元糖の量が10~60質量%であり、前記(B)両親媒性成分と前記(C)アニオン性化合物との合計量が0.1~20質量%である、上記態様1~3のいずれかに記載の液状還元剤組成物。
[5] 基材を、
(A)還元糖、及び
(B)(B1)芳香族炭素環を有するポリエステル樹脂と(B2)下記一般式(1):
【化3】
[式中、
Arは芳香族炭素環を表し、
Yは下記式(1-1)、(1-2)又は(1-3):
【化4】
で表される置換基であり、
RはOH基又はNH
2基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基であり、
mは0~5の数であり、pは0~5の数であり、但しm+pは0~5であり、
R
1は炭素数2~4のアルキレン基を表し、
nは(R
1O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって1~200の数を表す。]
で表される化合物とからなる群から選択される1種以上の化合物である両親媒性成分、
の存在下で洗浄することを含む、基材の還元洗浄方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、還元力の経時的低下、臭気、並びに人体及び環境への影響が少ないという還元糖の利点を得つつ、良好な堅牢度を更に得ることが可能な、液状還元剤組成物、並びに基材の還元洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示の態様について説明するが、本発明は以下の態様に限定されない。
【0012】
<液状還元剤組成物>
本発明の一態様は、(A)還元糖、(B)両親媒性成分、及び水を含む液状還元剤組成物を提供する。(B)両親媒性成分は、(B1)芳香族炭素環を有するポリエステル樹脂と(B2)下記一般式(1):
【化5】
[式中、
Arは芳香族炭素環を表し、
Yは下記式(1-1)、(1-2)又は(1-3):
【化6】
で表される置換基であり、
RはOH基又はNH
2基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基であり、
mは0~5の数であり、pは0~5の数であり、但しm+pは0~5であり、
R
1は炭素数2~4のアルキレン基を表し、
nは(R
1O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって1~200の数を表す。]
で表される化合物とからなる群から選択される1種以上の化合物である。
【0013】
(A)還元糖
本開示の液状還元剤組成物は(A)還元糖を含む。(A)還元糖は、遊離又はヘミアセタール結合したアルデヒド基或いはケトン基をもつ糖である。(A)還元糖は、アルデヒド基が有する還元性に起因して、液状還元剤組成物の適用対象(例えば染色加工後の繊維上の余剰の染料)に対して還元作用を有する。還元糖は、水溶液中で還元力が経時的に低下しにくいことに加え、生分解性が良好で人体及び環境への影響が少なく、臭気も少ないという利点を有する。(A)還元糖は、単糖類又はオリゴ糖類(すなわち二糖以上かつ概ね十糖以下の糖)であり得る。(A)還元糖としては、単糖類及び二糖類が好ましい。
【0014】
(A)還元糖としては、例えば染色加工後の繊維の還元洗浄における良好な洗浄性(すなわち染料の所望の還元を進行させて未退色(すなわち還元不良)の及び退色(還元された)余剰染料が繊維表面に残留しないようにすること)及びこれにより良好な堅牢度を得る観点から、単糖類の中ではアルドース類、例えばグリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、及びタロースが好ましく、二糖類の中ではマルトース、ラクトース、ツラノース、及びセロビオースが好ましい。その中でも、単糖類が好ましく、アルドース類がより好ましく、キシロース、及びグルコースがさらにより好ましい。
これらの還元糖は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0015】
(B)両親媒性成分
本開示の液状還元剤組成物は(B)両親媒性成分を含む。(B)両親媒性成分は、(B1)芳香族炭素環を有するポリエステル樹脂(本開示で単に「(B1)ポリエステル樹脂」ということもある。)と(B1)一般式(1)で表される化合物とからなる群から選択される1種以上の化合物である。(B)両親媒性成分は、水中に(A)還元糖とともに存在することで、(A)還元糖と還元対象物(例えば染色加工後の繊維上の余剰の染料)との良好な接触を確保して還元作用を良好に発現させることができるものと考えられる。このため、本開示の液状還元剤組成物を染色加工後の繊維の還元洗浄に用いる場合、(A)還元糖を未染着の染料に良好に接触させ続けることができ高い還元洗浄効果(従って高い堅牢度)が得られるものと考えられる。
【0016】
(B1)ポリエステル樹脂
(B1)ポリエステル樹脂は芳香族炭素環を有する。(B1)ポリエステル樹脂は、親水性部位として、アニオン性基(未反応のカルボキシ基、スルホン基を有するポリエステル樹脂の場合の当該スルホン基、等)、(ポリ)アルキレン(例えばエチレン、プロピレン又はブチレン)オキシ基を有するポリエステル樹脂の場合の当該(ポリ)アルキレンオキシ基、等を有し、疎水性部位として親水性部位以外の部位(具体的には芳香族炭素環、エステル結合等)を有する界面活性剤であり得ることから両親媒性成分として機能する。(B1)ポリエステル樹脂は、典型的には、多価アルコール成分由来単位と、多価カルボン酸成分由来単位とを有する共重合体である。
【0017】
多価アルコール成分としては、炭素数2以上のアルキレングリコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール等)及びその重合体(例えばジエチレングリコール等のオリゴマー、分子量150~5000のポリエチレングリコール等のポリマー)等の脂肪族ジオール化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3官能以上のポリオール化合物;等が挙げられる。これらの中でも、洗浄性及び堅牢度とポリエステル樹脂製造時の粘度コントロールの容易性との観点から、脂肪族又は芳香族のジオール化合物が好ましく、脂肪族ジオール化合物がより好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、分子量150~5000のポリエチレングリコール、及びネオペンチルグリコールが更に好ましい。これらの多価アルコールは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
多価カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;上記芳香族ジカルボン酸又は上記脂肪族ジカルボン酸のエステル誘導体(例えば、炭素数1~3のアルキルエステル、フェニルエステル、エチレングリコールとのエステル等);クエン酸、ベンゼントリカルボン酸等の3官能以上のポリカルボン酸;スルホカルボン酸及びその塩並びにこれらのエステル誘導体;β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸;等が挙げられる。スルホカルボン酸及びその塩並びにこれらのエステル誘導体としては、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4-スルホフタル酸等の芳香族スルホカルボン酸、及びこれらのスルホカルボン酸の、金属塩、置換基を有していても良いアンモニウム塩、これらのエステル誘導体(例えば、炭素数1~3のアルキルエステル、フェニルエステル、エチレングリコールとのエステル等)等が挙げられる。ここで、金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。置換基を有していても良いアンモニウム塩としてはアンモニウム塩、モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、N-メチルエタノールアンモニウム塩等が挙げられる。洗浄性及び堅牢度とポリエステル樹脂製造時の粘度コントロールとの観点から、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、置換基を有していても良いアンモニウム塩が好ましい。
【0019】
洗浄性及び堅牢度とポリエステル樹脂製造時の粘度コントロールの容易性との観点から、多価カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、スルホカルボン酸及びその塩並びにこれらのエステル誘導体が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、スルホカルボン酸及びその塩並びにこれらのエステル誘導体がより好ましい。
【0020】
多価カルボン酸成分は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
一態様において、(B1)ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分由来単位と多価カルボン酸成分由来単位とを有しかつ当該多価アルコール成分由来単位及び当該多価カルボン酸成分由来単位のうち一方が芳香族、他方が脂肪族である共重合体であることが好ましく、脂肪族ジオール成分由来単位と芳香族ジカルボン酸成分由来単位とを有する共重合体であることがより好ましい。
【0022】
(B1)ポリエステル樹脂は、洗浄性及び堅牢度、並びに(B)ポリエステル樹脂製造時の重合反応の容易性の観点から、スルホカルボン酸及びその塩並びにこれらのエステル誘導体から選ばれる多価カルボン酸成分に由来する部位を、多価カルボン酸成分に由来する部位全体100モル%に対して、好ましくは5~80モル%、より好ましくは10~50モル%含む。(B1)ポリエステル樹脂中の上記部位の量は、NMR(核磁気共鳴)法で確認できる。
【0023】
(B1)ポリエステル樹脂は、洗浄性及び堅牢度の観点から、(ポリ)エチレンオキシ基を有することが好ましく、処理時の泡立ちを低くするという観点からは、(ポリ)エチレンオキシ基と(ポリ)プロピレンオキシ基とを共に有することが好ましい。洗浄性及び堅牢度の観点から、(B1)ポリエステル樹脂は、(ポリ)エチレンオキシ基を、好ましくは20~95質量%含む。
【0024】
(B1)ポリエステル樹脂は、洗浄性及び堅牢度の観点から、重量平均分子量が1,500~50,000であることが好ましく、1,500~20,000であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量が1,500以上である場合、洗浄性及び堅牢度がより良好であり、50,000以下である場合、液状還元剤組成物の調製時に他成分との配合がより容易となる傾向がある。
【0025】
なお、本開示において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、検出器:RI/HLC-8320GPC(TOSOH製)、カラム:Asahipak GF-510HQ(昭和電工)、粒径5μm、7.5×300mm(内径×長さ(mm))を用い、移動相に溶離液:0.05M-NaNO3水溶液/アセトニトリル=1/1を用いて、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準物質として測定される。
【0026】
(B1)ポリエステル樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。(B1)ポリエステル樹脂の製造方法には、特に制限はなく、エステル交換法、直接重合法等の、従来から行われている方法を用いることができる。
【0027】
(B2)一般式(1)で表される化合物
一態様において、(B)両親媒性成分は、(B2)一般式(1):
【化7】
[式中、
Arは芳香族炭素環を表し、
Yは下記式(1-1)、(1-2)又は(1-3):
【化8】
で表される置換基であり、
RはOH基又はNH
2基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基であり、
mは0~5の数であり、pは0~5の数であり、但しm+pは0~5であり、
R
1は炭素数2~4のアルキレン基を表し、
nは(R
1O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって1~200の数を表す。]
で表される化合物を含む。一般式(1)で表される化合物は、(Y)
m((R)
p)Ar-で表される部位を疎水性部位、-(R
1O)
nHで表される部位を親水性部位とする界面活性剤であり得ることから両親媒性成分として機能する。
【0028】
Arは、芳香族炭素環を表す。当該芳香族炭素環は、単環(すなわちベンゼン環)又は多環(すなわち縮合環)(例えばナフタレン環等)であってよく、堅牢度の観点から、好ましくは単環である。
【0029】
Yは、良好な洗浄性及び堅牢度を得る観点から、式(1-1)、(1-2)又は(1-3)で表される置換基であり、好ましくは式(1-2)で表される基である。分子中に複数存在する場合のYは同一であっても異なっていてもかまわない。
【0030】
Rは、良好な洗浄性及び堅牢度を得る観点から、OH基又はNH2基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基である。Rは、飽和若しくは不飽和の鎖式脂肪族炭化水素基、飽和若しくは不飽和の脂環式基、又は芳香族基であってよい。好ましい態様において、Rは、炭素数1~30の飽和鎖状炭化水素基、又は炭素数2~30の不飽和鎖状炭化水素基(例えば、モノ,ジ又はトリ不飽和基)、又は炭素数6~10の芳香族基である。Rの炭素数は、Rが鎖状炭化水素基である場合は、より好ましくは12~24であり、Rが芳香族基である場合は、より好ましくは6である。Rの特に好ましい例としては、フェニル基、炭素数12~18(特に好ましくは炭素数15)の飽和又はモノ,ジ,又はトリ不飽和の鎖状炭化水素基、が挙げられる。
m及びpの各々は、良好な洗浄性及び堅牢度を得る観点から、0~5であり、但しm+pは0~5である。またm+pは、好ましくは1~5、より好ましくは2~3である。
【0031】
R1Oで表されるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、及びプロピレンオキシドを挙げることができ、(R1O)nは1種のアルキレンオキシドの単一付加物でも2種以上のアルキレンオキシドの混合付加物でもよい。混合付加物の場合はブロック付加物でもランダム付加物でもかまわない。一般式(1)で表される化合物は、洗浄性及び堅牢度の観点から、(ポリ)エチレンオキシ基を有することが好ましく、処理時の泡立ちを低くするという観点からは、(ポリ)エチレンオキシ基と(ポリ)プロピレンオキシ基とを共に有することが好ましい。
nは、良好な洗浄性及び堅牢度を得る観点から、1~200であり、1~100が好ましく、10~30がより好ましい。
【0032】
一般式(1)で表される化合物の中でも、洗浄性及び堅牢度の観点から、ジ又はトリスチレン化フェノールのエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド付加モル数10~30モル(すなわち一般式(1)中のnが10~30))、及びカルダノールのエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド付加モル数10~30モル(すなわち一般式(1)中のnが10~30))が好ましく、ジ又はトリスチレン化フェノールのエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド付加モル数10~30モル)がより好ましい。
【0033】
一般式(1)で示される化合物は、常法に従って、下記一般式(2):
【化9】
[式中、Ar、Y、R、m及びpは一般式(1)で定義したのと同じである。]
で表されるフェノール類1モルに対して、一般式(1)中の(R
1O)に対応するアルキレンオキシドを平均nモル付加させることによって得ることができる。
【0034】
一般式(2)で表されるフェノール類の好適な構造は、一般式(1)のAr、Y、R、m及びpの好適例として前述した構造に対応する構造である。一般式(2)で表されるフェノール類としては、フェノール、フェニルフェノール、クミルフェノール、ナフトール、スチレン化フェノール(例えば、ジ又はトリスチレン化フェノール)、カルダノール等を好ましく挙げることができる。
【0035】
一般式(2)で表されるフェノール類は、常法に従って、下記一般式(3):
(R)p-Ar-OH (3)
[式中、Ar、R及びpは式(1)で定義したのと同じである。]
で表される化合物を、式(1-1)、(1-2)又は(1-3)で表されるYの所望の構造に応じてベンジル化、スチレン化、又はメチルスチレン化することにより得ることができる。
一般式(1)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
(B)両親媒性成分としては、1種の化合物を単独で又は2種以上の化合物を混合して使用することができる。洗浄性及び堅牢度の観点から、(B)両親媒性成分として、(B1)ポリエステル樹脂と(B2)一般式(1)で表される化合物とを併用することが好ましい。その場合の、液状還元剤組成物中での配合比率は、質量基準の(B1):(B2)で、70:30~30:70が好ましく、60:40~40:60がより好ましい。
【0037】
洗浄性、堅牢度、及び製品安定性の観点から、(A)還元糖と(B)両親媒性成分との配合比率は、液状還元剤組成物中での質量基準の(A):(B)で、99:1~50:50が好ましく、99:1~70:30がより好ましく、99:1~80:20がさらにより好ましい。
【0038】
(C)アニオン性化合物
好ましい態様において、液状還元剤組成物は、洗浄性及び堅牢度の観点から(A)還元糖及び(B)両親媒性成分に加えて、(C)アニオン性化合物を含む。なお本開示の(B)両親媒性成分はアニオン性化合物であり得るが、本開示の(C)アニオン性化合物は(B)両親媒性成分に包含されない構造の(すなわち(B)両親媒性成分とは異なる)アニオン性化合物であることが意図される。(C)アニオン性化合物は、(B)成分の効果を向上させることができ、良好な洗浄性及び堅牢度に寄与するものと考えられる。
【0039】
(A)還元糖及び(B)両親媒性成分と(C)アニオン性化合物との配合比率は、良好な洗浄性及び堅牢度を得る観点から、液状還元剤組成物中での質量基準の〔(A)+(B)〕:(C)で、99:1~50:50が好ましく、99:1~70:30がより好ましく、99:1~85:15、99:1~90:10がさらにより好ましい。
【0040】
(C)アニオン性化合物としては、特に制限はなく、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数4~24のアルコール又はアルケノールのアニオン化物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数4~24のアルコール又はアルケノールのアルキレンオキシド付加物のアニオン化物、フェノール類のアニオン化物、フェノール類のアルキレンオキシド付加物のアニオン化物、炭素数4~24のアルキルフェノール類のアニオン化物、炭素数4~24のアルキルフェノール類のアルキレンオキシド付加物のアニオン化物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数4~44の脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物のアニオン化物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数4~44の脂肪酸アミドのアルキレンオキシド付加物のアニオン化物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数4~24の脂肪酸塩、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数4~24の脂肪酸のアルキレンオキシド付加物のアニオン化物、ポリアルキレングリコールやプルロニック型非イオン性化合物(すなわち、ポリオキシプロピレン鎖と、これを挟む2つのポリオキシエチレン鎖とからなるブロック共重合体)のアニオン化物、テトロニック型非イオン性化合物(すなわち、プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの縮合物のエチレンオキシド付加物)のアニオン化物等が挙げられる。アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、及びプロピレンオキシドを挙げることができる。付加物は1種の化合物が付加されてなる生成物(単一付加物)でも2種以上の化合物が付加されてなる生成物(混合付加物)でもよい。混合付加物の場合はブロック付加物でもランダム付加物でもかまわない。
【0041】
上記アニオン化物としては、例えば、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、カルボン酸塩及びスルホコハク酸塩を挙げることができる。アニオン化は常法に従って行うことができる。
【0042】
また(C)アニオン性化合物として、油脂類のスルホン化物、ナフタレンスルホン酸若しくはそのホルマリン縮合物又はこれらの塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩等も使用することもできる。
【0043】
(C)アニオン性化合物のアニオン性基は、少なくとも一部(100%であってもよい)が中和されていてよく、又は全く中和されていなくてもよい。
(C)アニオン性化合物は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0044】
(C)アニオン性化合物の中でも、洗浄性及び堅牢度の観点から、(B2)一般式(1)で表される化合物の硫酸エステル塩、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール又はアルケノールの硫酸エステル塩、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール又はアルケノールのアルキレンオキシド付加物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、下記式:
【化10】
【0045】
[式中、Rは水素又は炭素数1~22のアルキル基を表し、XはNa、K、又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンを表す。]
で示されるナフタレンスルホン酸塩、又は下記式:
【化11】
[式中、Rは水素又は炭素数1~22のアルキル基を表し、XはNa、K、又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンを表し、nは正の整数である。]
で示されるナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ポリアルキレングリコール又はプルロニック型非イオン化合物又はテトロニック型非イオン化合物の硫酸エステル塩、が好ましく、
【0046】
(B2)一般式(1)で表される化合物の硫酸エステル塩、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール又はアルケノールのアルキレンオキシド付加物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、がより好ましく、
【0047】
(B2)一般式(1)で表される化合物の硫酸エステル塩(当該硫酸エステル塩における(B2)一般式(1)で表される化合物に由来する構造のさらに好ましい例は、(B2)一般式(1)で表される化合物に関して前述したのと同じである。)、炭素数16~18のアルコール又はアルケノールのエチレンオキシド付加物(好ましくはエチレンオキシド付加モル数10~30モル)の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、がさらにより好ましい。
【0048】
(D)追加の成分
液状還元剤組成物は、任意に、追加の成分をさらに含んでもよい。追加の成分としては、例えば、(B1)ポリエステル樹脂、(B2)一般式(1)で表される化合物及び(C)アニオン性化合物とは異なる追加の界面活性剤(非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤)が挙げられる。一態様において、(D)追加の成分は、(D1)カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤(以下、(D1)界面活性剤ともいう。)、並びに(D2)還元剤、からなる群から選択される少なくとも1種を含む。(D1)界面活性剤は、特にポリエステル/ポリウレタン混繊維の堅牢度向上に有利である点で、好ましくは、カチオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含み、より好ましくはカチオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤である。
【0049】
(D1)界面活性剤
[カチオン性界面活性剤]
カチオン性界面活性剤としては、下記一般式(4)で表されるアミン化合物、当該アミン化合物の中和物(すなわち塩)、及び当該アミン化合物の4級化物からなる群から選択される少なくとも1種を例示できる。
【化12】
[式中、
R
1は、エステル基及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の基で分断されていてもよい炭素数8~26の1価の炭化水素基を表し、
R
2及びR
3は、それぞれ独立に:水素原子;エステル基及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の基で分断されていてもよい炭素数8~26の1価の炭化水素基;又は(AO)n基(式中、Aは炭素数2~4のアルキレン基を表し、nは(AO)で表されるアルキレンオキシド基の平均付加モル数であって1~100の整数であり、但し、R
2及びR
3の両方が(AO)n基である場合の複数のnの合計は1~100である。)を表す。]
【0050】
一般式(4)で表されるアミン化合物の中和物とは、上述のアミン化合物を酸で中和することによって得られる化合物(塩)である。中和に用いる酸としては、塩酸、硫酸、メチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0051】
一般式(4)で表されるアミン化合物の4級化物とは、上述のアミン化合物のうち、R2及びR3の各々が炭化水素基又は(AO)n基である化合物(すなわち3級アミン)を4級化剤で処理することによって得られる化合物である。4級化剤としては、塩化メチル、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン等が挙げられる。
【0052】
一般式(4)の前述の炭化水素基の各々の炭素数は、好ましくは10~22、より好ましくは12~22、特に好ましくは12~20である。
【0053】
R2及びR3は、それぞれ独立に、好ましくは(AO)n基又は炭素数1~2のアルキル基である。Aは、好ましくはエチレン基である。
【0054】
nは、好ましくは1~50、より好ましくは10~50である。分子中に複数存在する場合のnの合計は、好ましくは1~50、より好ましくは10~50である。
【0055】
[両性界面活性剤]
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、イミダゾリン型、アルキルアミノスルホン型、アルキルアミノカルボン酸型、アルキルアミドカルボン酸型、アミドアミノ酸型、及びリン酸型の両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、アルキルベタインが好ましい。特に、カチオン性界面活性剤として例示した上記一般式(4)で表される化合物をクロル酢酸ナトリウムで処理して得られるアルキルベタインが好ましい。一般式(4)中の炭化水素基の炭素数、並びにR2及びR3の好適な態様は、カチオン性界面活性剤について前述したのと同様である。
【0056】
[非イオン性界面活性剤]
非イオン性界面活性剤としては、アルコール類、アミン類、アミド類、脂肪酸類、多価アルコール脂肪酸エステル類、油脂類、及びポリプロピレングリコールの、アルキレンオキシド付加物、等が挙げられる。
【0057】
アルコール類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24の、アルコール、アルケノール及びアセチレンアルコールが挙げられる。
【0058】
アミン類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~44の脂肪酸アミン等が挙げられる。
【0059】
アミド類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~44の脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0060】
脂肪酸類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24の脂肪酸等が挙げられる。
【0061】
多価アルコール脂肪酸エステル類としては、多価アルコールと直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24の脂肪酸との縮合反応物が挙げられる。
【0062】
油脂類としては、植物性油脂、動物性油脂、植物性ロウ、動物性ロウ、鉱物ロウ及び硬化油が挙げられる。
【0063】
アルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、1,4-ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0064】
上記の非イオン性界面活性剤について、HLBは特に限定されないが、洗浄性の観点から、HLBとしては、5~20が好ましく、10~20がより好ましく、10~18がさらにより好ましい。
【0065】
(D2)還元剤
還元剤としては一般に使用されている還元剤を例示でき、具体的には、二酸化チオ尿素、ハイドロサルファイト系化合物(ハイドロサルファイトナトリウム、ハイドロサルファイトカルシウム等)、亜鉛スルホキシレートアルデヒド、ナトリウムスルホキシレートアルデヒド、酸性亜硫酸ナトリウム等を例示できる。
【0066】
液状還元剤組成物中、(A)還元糖及び(B)両親媒性成分と、(D1)界面活性剤との配合比率は、質量基準の〔(A)+(B)〕:(D1)で、50:50~95:5が好ましく、55:45~90:10がより好ましい。上記範囲の比率は、ポリエステル/ポリウレタン混繊維の洗浄における堅牢度向上において特に有利である。
【0067】
液状還元剤組成物は、(A)還元糖、(B)両親媒性成分、及び水、並びに任意成分としての(C)アニオン性化合物及び/又は(D)追加の成分を混合し均一にすることで得ることができる。なかでも、(A)還元糖の水への溶解しやすさの観点から、(A)還元糖を水に溶解後、(B)両親媒性成分、並びに任意に(C)アニオン性化合物及び/又は(D)追加の成分を添加し混合して均一にすることが好ましい。
【0068】
洗浄性、堅牢度、及び製品安定性の観点から、液状還元剤組成物中、(A)還元糖の量は10~60質量%、(B)両親媒性成分と(C)アニオン性化合物との合計量は0.1~20質量%であることが好ましい。また、上記組成を有する液状還元剤組成物が(D)追加の成分を更に含む場合、(D)追加の成分の総量は0.1~20質量%であることが好ましい。
【0069】
液状還元剤組成物の黄変を防止する観点、及び還元洗浄浴に液状還元剤組成物を添加した場合に還元洗浄浴のpH調整の手間が少ないという観点から、液状還元剤組成物のpHとしては3.0~8.0が好ましく、3.0~7.0がより好ましい。
【0070】
液状還元剤組成物のpHはpH調整剤(アルカリ又は酸)を使用して調整してもよい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム等の炭酸塩;硼酸カリウム、硼酸ナトリウム等の硼酸塩;硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩;ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸カリウム、ゼオライト等の無機アルカリ金属塩;ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の有機アミン類;アンモニア等を挙げることができる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物が好ましい。
酸としては、乳酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、シュウ酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸;塩化水素、硫酸、硝酸等の無機酸を挙げることができる。
これらのpH調整剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
本開示の液状還元剤組成物は、例えば繊維の染色加工における還元洗浄剤として特に有用であるが、他の用途、例えば、染色後の染色機の汚れを除去するための洗浄剤、インジゴ染料及び建染染料等による綿の染色に際して染料をロイコ型にして水溶性を高めるための還元剤、各種繊維の捺染における防抜染加工剤、ポリエステル繊維の捺染加工における未固着染料の除去のためのソーピング工程での還元剤等の用途にも好適に使用できる。
【0072】
<基材の還元洗浄方法>
本発明の一態様は、基材を、(A)還元糖、及び(B)(B1)芳香族炭素環を有するポリエステル樹脂と(B2)一般式(1)で表される化合物とからなる群から選択される1種以上の化合物である両親媒性成分、の存在下で洗浄することを含む、基材の還元洗浄方法を提供する。
【0073】
基材の還元洗浄方法は、(A)還元糖及び(B)両親媒性成分、並びに任意成分としての(C)アニオン性化合物及び/又は(D)追加の成分の存在下で基材を洗浄することを含んでいればよく、本開示の液状還元剤組成物をそのまま還元洗浄浴として使用してもよいし、本開示の液状還元剤組成物を水及び/又は水性媒体で希釈して還元洗浄浴として使用してもよいし、(A)還元糖と(B)両親媒性成分と任意成分としての(C)アニオン性化合物及び/又は(D)追加の成分とを同時に又は順次、水及び/又は水性媒体を含む還元洗浄浴に添加してもよい。例えば、(A)還元糖と(B)両親媒性成分と任意成分としての(C)アニオン性化合物及び/又は(D)追加の成分とを、液状還元剤組成物に関して前述した組成比となるように、同時に又は順次、水及び/又は水性媒体を含む還元洗浄浴に添加してよい。
【0074】
一態様において、基材の還元洗浄方法は、ポリエステル系繊維材料の染色後の還元洗浄に使用することができる。ポリエステル系繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びそれらの共重合物からなるポリエステル繊維材料、並びに、これらのポリエステル系繊維材料とその他の合成繊維材料(例えば、ポリウレタン繊維材料等)及び/又は天然繊維材料との複合繊維材料が挙げられる。基材(すなわち染色後のポリエステル系繊維材料)の形態としては糸、編み物、織物、不織布、わた等が挙げられる。例えば、ポリエステル繊維材料とポリウレタン繊維材料との複合繊維材料である混繊維において、ポリエステル/ポリウレタンの比率は、質量基準で、好ましくは50/50~99/1、より好ましくは70/30~97/3である。
【0075】
適用可能な染色機械としては、ウインス染色機、液流染色機、ジッカー染色機、チーズ染色機、ビーム染色機、オーバーマイヤー染色機、かせ染色機等の、通常一般に使用される染色機械を挙げることができる。染色後の染色処理液に少なくとも(A)還元糖及び(B)両親媒性成分を添加して還元洗浄浴としてもよいし、染色処理液を排液し新浴に少なくとも(A)還元糖及び(B)両親媒性成分を添加して還元洗浄浴としてもよい。
【0076】
還元洗浄浴中の、(A)還元糖と(B)両親媒性成分と任意の(C)アニオン性化合物との合計量は、好ましくは、0.1~10g/l、又は0.2~5g/l、又は0.5~3g/lである。上記合計量が0.1g/l以上である場合、堅牢度向上効果が良好である。上記合計量を10g/lを超えて増量しても使用量に見合う堅牢度の向上が見られない傾向があることから、上記合計量は好ましくは10g/l以下である。
【0077】
還元洗浄浴中の(D1)界面活性剤の量は、好ましくは0.01~5g/l、又は0.05~4g/l、又は0.1~2g/lである。上記量が0.01g/l以上である場合、堅牢度の向上効果がいっそう良好である。上記量を5g/lを超えて増量しても使用量に見合う堅牢度の向上が見られない傾向があることから、上記量は好ましくは5g/l以下である。
【0078】
還元洗浄浴中の(D2)還元剤の量は、好ましく0.1~10g/l、又は0.5~10g/l、又は1~10g/lである。上記量が0.1g/l以上である場合、堅牢度の向上効果がいっそう良好である。上記量を10g/lを超えて増量しても使用量に見合う堅牢度の向上が見られない傾向があることから、上記量は好ましくは10g/l以下である。
【0079】
還元洗浄浴は、洗浄性及び堅牢度の観点から、アルカリ剤を、好ましくは0.1g/l~10g/l、より好ましくは0.5g/l~5g/l含む。アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物が好ましい。
【0080】
還元洗浄浴は、洗浄性及び堅牢度の観点から、pHが11~13.7が好ましく、12~13.5がより好ましい。pHが13.7を超える場合は、アルカリ量に見合う性能の向上が見られない傾向にあることから、pHは好ましくは13.7以下である。還元洗浄浴のpHは、前述のpH調整剤を使用することで、調整することができる。
【0081】
浴比(すなわち、質量基準での、基材:還元洗浄浴の比)は、1:2 ~1:50が好ましく、1:5~1:30がより好ましく、1:5~1:20がさらに好ましい。
【0082】
還元洗浄浴中の(A)還元糖、(B)両親媒性成分、並びに任意の(C)アニオン性化合物及び/又は(D)追加の成分の好適な配合比率は、還元洗浄剤組成物において前述した配合比率と同様である。
【0083】
洗浄性及び堅牢度の観点から、還元洗浄時の処理温度は、60~100℃が好ましく、85~95℃がより好ましい。処理時間は5~30分が好ましい。洗浄性及び堅牢度の観点から、還元洗浄処理後は湯洗、次いで水洗を行うことが好ましい。また、酸返しを行うことも好ましい。
【0084】
還元洗浄浴は、(A)還元糖、(B)両親媒性成分、並びに任意の(C)アニオン性化合物及び/又は(D)追加の成分以外に、例えば、水性媒体、精練助剤、キレート剤等の成分を含むことが可能である。
【0085】
水性媒体としては、水に混和する親水性溶剤が好ましい。親水性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ソルフィット、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド等が挙げられる。
【0086】
精練助剤としては、例えば、オルトリン酸、トリメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等のリン酸化合物及びこれらの塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、及びアンモニウム塩を挙げることができる。
【0087】
キレート剤としては、例えば、EDTA、HEDTA、DTPA、及びこれらの塩;フィチン酸、エチドロン酸等のホスホン酸及びそのナトリウム塩等の塩類;シュウ酸、クエン酸、アラニン、ジヒドロキシエチルグリシン、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、グルタル酸、マロン酸等の有機酸及びこれらの塩;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸等のポリアミノ酸類;ポリカルボン酸、ポリマレイン酸及びこれらの塩等を挙げることができる。
キレート剤の中でも、環境に与える影響を考慮すると、クエン酸ナトリウム等の有機酸又はその塩が好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0089】
<測定方法>
(1)重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、検出器:RI/HLC-8320GPC(TOSOH製)、カラム:Asahipak GF-510HQ(昭和電工)、粒径5μm、7.5×300mm(内径×長さ(mm))を用い、移動相に溶離液:0.05M-NaNO3水溶液/アセトニトリル=1/1を用いて、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準物質として測定した。
【0090】
<材料>
(A)還元糖
キシロース(D-(+)キシロース、ナカライテスク株式会社製)
グルコース(D-(+)グルコース、ナカライテスク株式会社製)を用いた。
【0091】
(B1)ポリエステル樹脂
[ポリエステル樹脂bの合成]
反応容器にテレフタル酸ジメチル174.6g(0.9モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩(スルホン酸塩基を有する多価カルボン酸)29.6g(0.1モル)、エチレングリコール58g、分子量2000のポリエチレングリコール816g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら150℃から230℃まで約3時間かけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。ついでチタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していき、内圧を約10kPaとし、250℃±5℃で2時間反応させてポリエステル共重合体(樹脂b)1010gを得た。得られたポリエステル共重合体(樹脂b)は、多価カルボン酸成分中のスルホン酸塩基を有する多価カルボン酸の量が10モル%であり、ポリエステル共重合体中のポリオキシエチレン鎖の含有量は約80質量%であり、ポリエステル共重合体の重量平均分子量は約5500であった。
【0092】
[ポリエステル樹脂a、c~iの合成]
多価カルボン酸成分中の、スルホン酸塩基を有する多価カルボン酸の量、ポリエステル共重合体中のポリオキシエチレン鎖の含有量、ポリエステル共重合体中に含まれるポリオキシエチレン鎖の分子量、ポリエステル共重合体の重量平均分子量が表1に記載のようになるように変更した以外は樹脂bと同様に反応を行って、ポリエステル樹脂a、c~iを得た。
【0093】
【0094】
(B2)一般式(1)で表される化合物
3SP10E:トリスチレン化フェノールのエチレンオキシド10モル付加物
定法に従ってフェノールに3モルのスチレンを反応させ、その後10モルのエチレンオキシドを反応させたものを使用した。
3SP20E:トリスチレン化フェノールのエチレンオキシド20モル付加物
定法に従ってフェノールに3モルのスチレンを反応させ、その後20モルのエチレンオキシドを反応させたものを使用した。
3SP30E:トリスチレン化フェノールのエチレンオキシド30モル付加物
定法に従ってフェノールに3モルのスチレンを反応させ、その後30モルのエチレンオキシドを反応させたものを使用した。
カルダノール10E:カルダノールのエチレンオキシド10モル付加物
定法に従ってカルダノールに10モルのエチレンオキシドを反応させたものを使用した。
カルダノール30E:カルダノールのエチレンオキシド30モル付加物
定法に従ってカルダノールに30モルのエチレンオキシドを反応させたものを使用した。
【0095】
(C)アニオン性化合物
下記化合物を用いた。なお表中に示す(C)アニオン性化合物の量は固形分としての量である。
O4E-S:オレイルアルコールのエチレンオキシド4モル付加物の硫酸化物(オレイルアルコールのエチレンオキシド4モル付加物に、定法に従ってスルファミン酸を反応させ、硫酸エステルアンモニウム塩(固形分40質量%)としたものを使用した。)
O10E-S:オレイルアルコールのエチレンオキシド10モル付加物の硫酸化物(O4E-Sと同様にして得られた硫酸エステルアンモニウム塩(固形分40質量%)を使用した。)
3SP20E-S:トリスチレン化フェノールのエチレンオキシド20モル付加物の硫酸化物(O4E-Sと同様にして得られた硫酸エステルアンモニウム塩(固形分40質量%)を使用した。)
カルダノール20E-S:カルダノールのエチレンオキシド20モル付加物の硫酸化物(O4E-Sと同様にして得られた硫酸エステルアンモニウム塩(固形分40質量%)を使用した。)
PEG600-2S:ポリエチレングリコール600の2モル硫酸化物(O4E-Sと同様にして得られた硫酸エステルアンモニウム塩(固形分40質量%)を使用した。)
L64-S:プルロニックL-64(製品名、株式会社ADEKA製)の1モル硫酸化物(O4E-Sと同様にして得られた硫酸エステルアンモニウム塩(固形分40質量%)を使用した。)
TR704-4S:テトロニックTR-704(製品名、株式会社ADEKA製)の4モル硫酸化物(O4E-Sと同様にして得られた硫酸エステルアンモニウム塩(固形分40質量%)を使用した。)
ABS-Na:テイカパワーL121(アルキルベンゼンスルホン酸、テイカ株式会社製)の水酸化ナトリウム中和物(固形分40%)
MON7:エレミノール MON-7(ラウリルジフェニルスルホン酸ソーダ、三洋化成工業株式会社製)
ナフタレンスルホン酸(粉末):試薬、ワコー純薬製
デモールN:β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、花王株式会社製
パーム油脂肪酸塩:パーム油脂肪酸の水酸化ナトリウム中和物(固形分40質量%)
PC300:セロポールPC-300(ポリカルボン酸ソーダ、三洋化成工業株式会社製)
A4Na:Phoslex A-4(ブチルアシッド ホスフェイト、SC有機化学株式会社製)の水酸化ナトリウム中和物(固形分40質量%)
【0096】
(D1)界面活性剤
カチオン性界面活性剤(1):
硬化牛脂アミン(アミンABT-R、日本油脂株式会社製)のエチレンオキシド20モル付加物のエピクロルヒドリン4級化物(50質量%水溶液)
カチオン性界面活性剤(2):
硬化牛脂アミン(アミンABT-R、日本油脂株式会社製)のエチレンオキシド35モル付加物のジメチル硫酸4級化物(50質量%水溶液)
【0097】
その他の化合物
O16E:オレイルアルコールのエチレングリコール16モル付加物
S40E:ステアリルアルコールのエチレンオキシド40モル付加物
CO43-FA:ひまし油のエチレンオキシド43モル付加物とフタル酸とのポリエステル(ひまし油のエチレンオキシド43モル付加物(1モル)とフタル酸(1モル)とを定法にしたがってエステル化反応したものを使用した。)
PEHA700E200P:ペンタエチレンヘキサミンのエチレンオキシド700モルプロピレンオキシド200モル付加物
ステアリルアルコールの硫酸エステルナトリウム塩(ステアリルアルコールを定法に従ってクロルスルホン酸を使用して硫酸エステル化し水酸化ナトリウムで中和して得られた化合物を使用した。)
ステアリン酸ソーダ(ステアリン酸を水酸化ナトリウムで中和して得られた化合物を使用した。)
【0098】
[染色布の作製]
(実施例1~43、比較例1~12)
供試布:精練上がり、ポリエステルジャージーニット(糸番手150d、目付280g/m2) 12.5g
染料:Disperse black PB-SF 300% 3%o.w.f
分散均染剤:NICCA SUNSOLT RM-3406 0.5g/l
pH調整剤:80質量%酢酸 0.4g/l
染色機:MINI-COLOR(ニッセン 300mlタイプ)
浴比:1:12(浴量150ml)
染色:60℃→(昇温2℃/分)→130℃×40分→70℃まで冷却し取り出し→湯洗5分→水洗5分→50℃乾燥
(実施例44~52、比較例13~14)
供試布:精練上がり、ポリエステル/ポリウレタン=85/15 混紡ニット布 12.5g
染料:Disperse black PB-SF 300% 5%o.w.f
分散均染剤:NICCA SUNSOLT RM-3406 1g/l
pH調整剤:80質量%酢酸 0.4g/l
染色機:MINI-COLOR(ニッセン 300mlタイプ)
浴比:1:12(浴量150ml)
染色:60℃→(昇温2℃/分)→130℃×40分→70℃まで冷却し取り出し→湯洗5分→水洗5分→50℃乾燥
【0099】
[還元洗浄試験方法]
(実施例1~43、比較例1~12)
供試布:上記染色布 12.5g
液体苛性ソーダ48質量%:3g/l
還元洗浄剤:液状還元剤組成物3g/l
染色機:MINI-COLOR(ニッセン 300mlタイプ)
浴比:1:12(浴量150ml)
還元洗浄:60℃→(昇温3℃/分)→85℃×20分→70℃まで冷却し取り出し→湯洗5分(有又は無)→水洗5分→50℃乾燥
(実施例44~52、比較例13~14)
供試布:上記染色布 12.5g
液体苛性ソーダ(フレーク):2g/l
還元洗浄剤:実施例3、11、13の各々の液状還元剤組成物5g/l(50質量%水溶液として)+カチオン性界面活性剤(1)又はカチオン性界面活性剤(2)2g/l(50質量%水溶液として)
染色機:MINI-COLOR(ニッセン 300mlタイプ)
浴比:1:12(浴量150ml)
還元洗浄:60℃→(昇温3℃/分)→85℃×20分→70℃まで冷却し取り出し→湯洗5分(有又は無)→水洗5分→50℃乾燥
【0100】
[実施例1]
40℃の水50質量部に、(A)還元糖としてキシロース40質量部を添加し攪拌溶解させた。次に(B)両親媒性成分として前述のポリエステル樹脂b 10質量部を添加し攪拌溶解させて、(A)還元糖を40質量%、(B)両親媒性成分を10質量%、及び水を50質量%含む液状還元剤組成物を得た。この液状還元剤組成物を20~25℃で1日放置した。
【0101】
MINI-COLOR染色機(ニッセン 300mlタイプ)のポットに、水、上記の1日放置後の液状還元剤組成物、及びpH調整剤を入れて混合し、液状還元剤組成物を3g/l、pH調整剤として48質量%水酸化ナトリウムを2g/l含む均一な還元洗浄浴を調製した。次いで、上記で染色処理を行ったポリエステルジャージニットを、浴比=1:12になるように還元洗浄浴に投入し、この還元洗浄浴を3℃/分で60℃から85℃に昇温し、85℃で20分間還元洗浄を行った。その後、70℃まで冷却し、湯洗5分、水洗5分を行ったのち、50℃で乾燥を行い、還元洗浄布を得た。また、還元洗浄後に湯洗を行わなかった場合の還元洗浄布も作製した。
得られた還元洗浄布の溶剤堅牢度について、下記の基準によって評価した。
【0102】
評価項目(1)溶剤堅牢度
還元洗浄布を1cm角に切り取り5Aろ紙上に置いた。その上にスポイトを使用しアセトンを5滴滴下し、直ちに、5Aろ紙より大きいシャーレで上下から10秒間挟んだ。10秒後にシャーレを取り、ろ紙上にアセトンと共に展開した染料の濃度を、汚染用グレースケール(JIS L 0805:2005)により等級判定を行った。
評価が等級の中間の場合、例えば、3級と4級との中間の場合は3-4と表示した。また性能がわずかに良好な場合には等級に「+」をつけ、性能がわずかに劣る場合には等級に「-」をつけた。
【0103】
評価項目(2)製品安定性試験
実施例及び比較例で使用した液状還元剤組成物をガラス製の蓋付き容器に入れ、室温(20~25℃)で直射日光を避けて保管し、1日後に、外観及び開封時の臭気確認を行った。
【0104】
[実施例2~43、比較例1~10]
(A)還元糖、(B)両親媒性成分、(C)アニオン性化合物、ハイドロサルファイト及びその他の化合物について、種類及び使用量(質量部)を表2~6に示すように変更した以外は実施例1と同様に操作を行って還元洗浄処理布を得た。得られた還元洗浄処理布の溶剤堅牢度について、実施例1と同様に評価した。
【0105】
[比較例11~12]
ハイドロサルファイト及びその他の化合物を表6に示すようにして得られた液状還元剤組成物を1日放置せずすぐに使用した以外は、実施例1と同様に操作を行って還元洗浄処理布を得た。得られた還元洗浄処理布の溶剤堅牢度について、実施例1と同様に評価した。
【0106】
[実施例44~52、比較例13~14]
表7(還元洗浄浴に対する液状還元剤組成物並びにカチオン性界面活性剤(1)及び(2)の使用量g/l)及び表8(表7に示す量を各成分の固形分比率として表記したもの)に示す量で各成分を含む還元洗浄浴を用いてポリエステル/ポリウレタン混紡ニット布を還元洗浄し、還元洗浄処理布を得た。得られた還元洗浄処理布の溶剤堅牢度について、実施例1と同様に評価した。
【0107】
[比較例15]
液状還元剤組成物を1日放置せずすぐに使用した以外は比較例13と同様に操作を行って還元洗浄処理布を得た。得られた還元洗浄処理布の溶剤堅牢度について、実施例1と同様に評価した。
【0108】
[比較例16]
液状還元剤組成物を1日放置せずすぐに使用した以外は比較例14と同様に操作を行って還元洗浄処理布を得た。得られた還元洗浄処理布の溶剤堅牢度について、実施例1と同様に評価した。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
実施例1~43、及び比較例3~10で使用した液状還元剤組成物は、1日後に外観の変化及び臭気の発生はなかった。
比較例1~2で使用した液状還元剤組成物は、1日後に、外観については分離等はないものの若干黄変しており、また臭気の発生があり、大きな性能の低下が認められた。
比較例11~12で使用した液状還元剤組成物は、外観に変化なく、臭気の発生もほとんどなかった。
実施例1~14と比較例3~10との比較より、(A)還元糖と、(B1)ポリエステル樹脂又は(B2)一般式(1)で表される化合物である特定の両親媒性化合物とを併用することにより、(A)還元糖と、(B1)ポリエステル樹脂又は(B2)一般式(1)で表される化合物以外の化合物とを併用した場合に比べ堅牢度が向上することが分かった。
実施例15~20より、(B)両親媒性成分として(B1)ポリエステル樹脂と(B2)一般式(1)で表される化合物とを併用することにより、さらに堅牢度が向上することが分かった。
また、実施例21~43より、(A)還元糖及び(B)両親媒性成分に加えて(C)アニオン性化合物をさらに使用することにより、よりいっそう堅牢度が向上し、還元剤としてハイドロサルファイトを使用した場合と遜色のない堅牢度を示すことがわかった。
【0117】
実施例44~46、実施例47~49及び50~52、並びに比較例13及び14の比較より、(A)還元糖及び(B)両親媒性成分を併用することにより、ポリエステル/ポリウレタン混繊維の洗浄における堅牢度が、還元剤としてハイドロサルファイトを使用した場合と比べて良好になることがわかった。また、(A)還元糖及び(B)両親媒性成分に加えて(D1)界面活性剤としてのカチオン性界面活性剤をさらに使用すると、当該カチオン性界面活性剤を用いない場合と比べて、ポリエステル/ポリウレタン混繊維の洗浄における堅牢度がいっそう向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の液状還元剤組成物は、自動調液システムに容易に適用できる他、経時で還元力の低下及び臭気の発生がないため、保管及び管理がしやすい。また、当該液状還元剤組成物は、一態様において、還元剤として還元糖を用いていながら、還元剤として例えばハイドロサルファイトを用いた従来の還元洗浄剤に比べ、遜色のない堅牢度を得ることができる。さらに、当該液状還元剤組成物は、人体及び環境への影響が少なく、生分解性が良好であり、排水負荷を軽減することができる。そのため、本発明の液状還元剤組成物は、例えば繊維の染色加工の各工程において極めて有用である。