(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】可塑剤組成物、およびこれを含む塩化ビニル系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20230113BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230113BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20230113BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230113BHJP
C08K 3/014 20180101ALI20230113BHJP
C07C 69/75 20060101ALI20230113BHJP
C07C 69/44 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L101/00
C08K5/10
C08K3/013
C08K3/014
C07C69/75 Z
C07C69/44
(21)【出願番号】P 2021535140
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 KR2019013763
(87)【国際公開番号】W WO2020130315
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0167915
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミュン-イク・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】キ・ジョ・シム
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022708(JP,A)
【文献】特開2015-223700(JP,A)
【文献】特開2015-217608(JP,A)
【文献】特開2017-014480(JP,A)
【文献】国際公開第2018/075663(WO,A1)
【文献】特開平03-128977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
C08L 101/00
C08K 5/10
C08K 3/013
C08K 3/014
C07C 69/44
C07C 69/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートおよびジ(2-エチルヘキシル)アジペートを含
み、
ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートおよびジ(2-エチルヘキシル)アジペートの重量比は95:5~70:30である、可塑剤組成物。
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂、および
請求項1
に記載の可塑剤組成物を含む、塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して前記可塑剤組成物を30~70重量部で含む、請求項
2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
ASTM D746によって測定したLTB(Low Temperature Brittleness)が-41℃以下である、請求項
2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
ASTM D1003によって測定したヘイズが9%以下である、請求項
2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項6】
安定剤、発泡剤、充填剤、および二酸化チタニウム(TiO
2)から構成される群より選択される1種以上をさらに含む、請求項
2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項
2の塩化ビニル系樹脂組成物を含む成形品。
【請求項8】
床材、壁紙、ターポリン、人造皮革、玩具、または自動車下部コーティング材である、請求項
7に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温特性に優れて可塑剤の移行性(migration)を改善することができる可塑剤組成物およびこれを含む塩化ビニル系樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は塩化ビニルの単独重合体および塩化ビニルを50%以上含む混成重合体であって、懸濁重合と乳化重合で製造される汎用熱可塑性プラスチック樹脂の一つである。そのうち、乳化重合で製造されるポリ塩化ビニル系樹脂は可塑剤(Plasticizer)、安定剤(Stabilizer)、充填剤(Filler)、発泡剤(Blowing Agent)、顔料(Pigment)、粘度調節剤(Viscosity Depressant)、二酸化チタン(TiO2)および副原料を混合してプラスチゾル(Plastisol)形態あるいはグラニュール(Granule)形態に加工されコーティング成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形加工法を通じて床材、壁紙、ターポリン、人造皮革、玩具、自動車下部コーティング材などの広範囲な分野に使用されている。
【0003】
特に、壁紙や床材などの内部インテリア製品は住居および事務空間で最も多く露出される製品であって、60%以上が塩化ビニル系樹脂を用いて製造されている。最近、壁紙と床材の主要争点は環境に優しい壁紙に関するものであり、環境に優しい特性に対する判断基準は空気清浄協会で施行している揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOCs)の放出量によって付けられるHB等級(最優秀、優秀、良好まで3段階)と国内で環境ホルモン懸念物質と思われるフタレート系可塑剤(DEHP、BBP、DBP、DINPなど)含有の有無によって決定されている。
【0004】
壁紙と床材用塩化ビニル系樹脂組成物中で可塑剤は最も多い含量を占める液状成分であり、このような可塑剤の例としてフタレート系製品であるDEHP(ジ-2-エチルヘキシルフタレート;Di-2-EthylHexyl Phthalate)、DINP(ジ-イソノニルフタレート;Di-IsoNonyl Phthalate)、DIDP(ジ-イソデシルフタレート;Di-Iso-Decyl Phthalate)、BBP(ブチルベンジルフタレート;Butyl Benzyl Phthalate)、DBP(ジ-n-ブチルフタレート;Di-n-butyl phthalate)が挙げられ、特にDINPが広く使用されてきた。
【0005】
しかし、フタレート系可塑剤は、社会的に人のホルモン作用を妨害するか混乱させる内分泌系かく乱物質(endocrine disrupter)として環境ホルモンと疑われていて規制が進行中である。よって、最近はフタレート系可塑剤の代わりに非-フタレート系可塑剤を使用する例が報告されている。
【0006】
一例として、韓国公開特許第2008-0105341号にはノンフタレート(non phtalate)系可塑剤であるDOTPを単独またはDINP(ジ-イソノニルフタレート;Di isononyl phthalate)と混合したものを使用していることが開示されており、前記DOTPはフタレート系可塑剤ではないため環境ホルモン論争から抜け出すことは可能であるが、物性側面から長所がなく、既存製品の製造原料として使用していた添加剤(安定剤、粘度低下用添加剤)との相溶性に問題があり、壁紙生産時発泡性低下、冬期に急激な粘度上昇などの様々な問題が発見されている。
【0007】
DOTP以外に、非-フタレート系可塑剤のうち、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)、DEHCH)があり、常温および低温粘度が低くて優れたコーティング特性を実現することができ、ゲル化速度が速く、発泡物性に優れ、特にフタレート系可塑剤などの環境的問題が殆どなく、塩化ビニル系樹脂の可塑剤として脚光を浴びている。
【0008】
しかし、前記のDEHCHの様々な長所にもかかわらず、DEHCHは紙移行性(migration)が既存の環境に優しい可塑剤に比べて悪いため、壁紙用途として使用することに多くの制約がある。可塑剤の移行性は可塑剤が塩化ビニル系樹脂内に存在するが時間の経過につれて次第に塩化ビニル系樹脂外部に流出される現象を意味し、これは特に人体に直接的な影響を及ぼし得る床材、壁紙、ターポリン、人造皮革、玩具、自動車下部コーティング材などでの使用を制限する重要な要因である。
【0009】
このような移行性を改善するために、韓国公開特許第2016-0047221号ではDEHCHとシトレート系化合物を含む可塑剤組成物を開示した。しかし、前記韓国公開公報の可塑剤組成物はシトレート可塑剤特有のいやな臭いと可塑剤の高温揮発問題があって使用に限界がある。
【0010】
可塑剤の移行性は可塑剤と塩化ビニル系樹脂間の物理/化学的物性などに大きく影響を受けるため予測が多少難しく、したがって多様な可塑剤を適用して移行性特性を試験評価しなければならない。
【0011】
一方、可塑剤が含まれている製品を屋外で使用する場合、寒い冬季やロシア、北アメリカなどの極寒地域では可塑剤の可塑化効果が急激に低下して柔軟性が落ち小さい衝撃にも壊れやすい問題が発生する。
【0012】
よって、移行性を防止し低温特性に優れ環境に優しい可塑剤を開発する必要性が台頭している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】韓国公開特許第2008-0105341号
【文献】韓国公開特許第2016-0047221号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前記の問題点を解決するためのものであって、可塑剤の移行性特性を改善することができ、低温特性に優れ、環境に優しい可塑剤組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記可塑剤組成物を含む塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、塩化ビニル系樹脂組成物を含む成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、本発明の一側面は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートおよびジ(2-エチルヘキシル)アジペートを含む、可塑剤組成物を提供する。
【0018】
本発明の他の一側面は、塩化ビニル系樹脂、および前記可塑剤組成物を含む塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による可塑剤組成物は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートおよびジ(2-エチルヘキシル)アジペートと共に含むことによって可塑剤の移行性、低温特性、およびヘイズを改善することができる。
【0020】
よって、本発明の可塑剤組成物を含む塩化ビニル系樹脂組成物は環境的な問題を解決することができ、低温でも可塑剤としての特性が良好に維持されて床材、壁紙、ターポリン、人造皮革、玩具、自動車下部コーティング材などとして使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0022】
本発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有することができるところ、特定実施形態を例示し下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0023】
以下、発明の具体的な実施形態によって可塑剤組成物、およびこれを含む塩化ビニル系樹脂組成物についてより詳しく説明する。
【0024】
可塑剤組成物
本発明による可塑剤組成物は、特定の2種の可塑剤の相互作用によって可塑剤の移行性、低温特性、およびヘイズを顕著に向上させることができるのに着眼したものである。
【0025】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートおよびジ(2-エチルヘキシル)アジペートを含む。
【0026】
前記ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate))は下記の化学式1で表される化合物であり、英文略字でDEHCHと呼ばれることもある:
【化1】
【0027】
DEHCHは、常温および低温粘度が低くて優れたコーティング特性を実現することができ、ゲル化速度が速く、発泡物性に優れる特徴がある。特に、既存のフタレート系可塑剤に比べて揮発性有機化合物の発生を最少化することができるため、フタレート系可塑剤を代替することができる。塩化ビニル系樹脂の可塑剤としてDEHCHを単独で使用する場合にも塩化ビニル系樹脂の物性を実現することができるが、DEHCHはフタレート系可塑剤と比較して移行性(migration)が高い問題がある。
【0028】
可塑剤の移行性とは、高分子樹脂と混合された可塑剤中の一部が高分子樹脂の外部に流出される現象を意味し、一部の可塑剤(主にフタレート)の場合、流出された可塑剤が体内に流入すれば生命活動に直接関与する内分泌系の正常的な活動を阻害するか非正常的な反応を触発させて致命的な危害を与える可能性があって、可塑剤の移行性をできる限り抑制する必要がある。
【0029】
一方、寒い冬季やロシア、北アメリカなどの酷寒地域で可塑剤の可塑化効果が落ちる現象を防止し柔軟性を維持するために低温特性の向上した可塑剤を使用する必要がある。
【0030】
よって、本発明による可塑剤組成物は、DEHCHと共に他の可塑剤としてジ(2-エチルヘキシル)アジペートを混合して使用する。このような混合使用によって可塑剤として優れた特性をそのまま維持すると同時に、移行性がより抑制され、低温特性とヘイズも向上される効果を得ることができる。
【0031】
前記ジ(2-エチルヘキシル)アジペート(di(2-ethylhexyl)adipate))は下記の化学式2で表される化合物であり、英文略字でDEHAと呼ばれることもある:
【化2】
【0032】
DEHAは、低温特性に優れる長所があるが、過量使用時、移行性と製品のヘイズ(haze)特性が劣勢になる短所がある。
【0033】
本発明の可塑剤組成物によれば、DEHCHとDEHAを混合使用することによって優れた可塑剤としての特性、移行性の抑制、低温特性とヘイズ向上効果を同時に達成した。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートおよびジ(2-エチルヘキシル)アジペートの重量比は95:5~50:50であり得る。より具体的に、前記重量比は、95:5~50:50、または95:5~60:40、または90:10~60:40であり得る。
【0035】
ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートおよびジ(2-エチルヘキシル)アジペートの重量比が前記範囲である時、移行性を抑制し低温特性およびヘイズをより改善することができる。特に、移行性と低温特性の最適化された均衡を考慮する時、90:10~60:40の重量比が最も好ましいのであり得る。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、前記可塑剤組成物は、前述のDEHCHおよびDEHA以外に他の可塑剤化合物を含まない。即ち、前記可塑剤組成物は、DEHCHおよびDEHAのみからなるものであり得る。
【0037】
塩化ビニル系樹脂組成物
また、本発明の他の一実施形態によれば、塩化ビニル系樹脂、および前記可塑剤組成物を含む塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【0038】
より具体的に、前記塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して前記可塑剤組成物を30~70重量部、または40~70重量部、または50~70重量部で含むことができる。
【0039】
前記塩化ビニル系樹脂組成物は、本発明による可塑剤組成物を含むことによって可塑剤の移行性、低温特性、およびヘイズ特性がより改善できる。前記塩化ビニル系樹脂はポリビニルクロリド(polyvinyl chloride、PVC)であって、重合度が700~1,200であるものを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0040】
本明細書全体で塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニル系単量体単独、または塩化ビニル系単量体およびこれと共重合可能な共単量体が共重合された(共)重合体をいう。この他に懸濁剤、緩衝剤、および重合開始剤などを混合して懸濁重合、微細懸濁重合、乳化重合、またはミニエマルション重合などの重合方法によって製造できる。
【0041】
前述の塩化ビニル単量体と共重合が可能な他の単量体は、例えば、エチレンビニルアセテート単量体およびプロピオン酸ビニル単量体を含むビニルエステル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチルビニルエーテル、およびハロゲン化オレフィンを含むオレフィン系単量体;メタクリル酸アルキルエステルを含むメタクリル酸エステル系単量体;無水マレイン酸単量体;アクリロニトリル単量体;スチレン単量体;およびハロゲン化ポリビニリデンなどがあり、これらを1種以上混合して塩化ビニル単量体との共重合体を製造することができる。しかし、本発明が前述の単量体に限定されるのではなく、製造時、要求される塩化ビニル系樹脂組成物の物性や用途などによって、本発明の属する技術分野で一般に塩化ビニル単量体と重合反応を通じて共重合体を形成するのに使用される単量体は特別な制限なく使用が可能である。
【0042】
前記塩化ビニル系樹脂組成物は、添加剤、例えば安定剤、発泡剤、充填剤、および二酸化チタン(TiO2)から構成される群より選択されるいずれか一つ以上を追加的に含むことができる。前記添加剤は、塩化ビニル系樹脂組成物で向上させようとする物性によって適合するように選択できる。
【0043】
前記安定剤は塩化ビニル系樹脂でHClが分離されて発色団であるポリエン構造を形成して主鎖の切断、架橋現象を起こして発生する多様な物性変化を予防する目的で添加されるものであって、Ca-Zn系化合物、K-Zn系化合物、Ba-Zn系化合物、有機Tin系化合物;メタリック石鹸系化合物、フェノール系化合物、リン酸エステル系化合物または亜リン酸エステル系化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上のものを含む。本発明で使用できる安定剤としてより具体的な例はCa-Zn系化合物;K-Zn系化合物;Ba-Zn系化合物;メルカプチド(Mercaptide)系化合物、マレイン酸系化合物またはカルボン酸系化合物などの有機Tin系化合物;Mg-ステアレート、Ca-ステアレート、Pb-ステアレート、Cd-ステアレート、またはBa-ステアレートなどのなどのメタリック石鹸系化合物;フェノール系化合物;リン酸エステル系化合物;または亜リン酸エステル系化合物などであり、使用目的によって選択的に含まれる。本発明では特に、K-Zn系化合物、好ましくはK-Zn系複合有機化合物を使用するのが好ましい。
【0044】
前記安定剤は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して好ましくは0.5~7重量部、さらに好ましくは1~4重量部が含まれる。安定剤の含量が0.5重量部未満であれば、熱安定性が落ちる問題点があり、7重量部を超過すれば、加工性が落ちる問題がある。
【0045】
本発明で使用される発泡剤は、化学的発泡剤、物理的発泡剤またはこれらの混合物のうちから選択されるいずれか一つ以上のものを含む。
【0046】
前記化学的発泡剤としては特定温度以上で分解されてガスを生成する化合物であれば特に制限せず、アゾジカーボンアミド(azodicarbonamide)、アゾジイソブチロニトリル(azodiisobutyro-nitrile)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(benzenesulfonhydrazide)、4,4-オキシベンゼンスルホニル-セミカルバジド(4,4-oxybenzene sulfonyl-semicarbazide)、p-トルエンスルホニルセミ-カルバジド(p-toluene sulfonyl semi-carbazide)、バリウムアゾジカルボキシレート(barium azodicarboxylate)、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド(N,N’-dimethyl-N,N’-dinitrosoterephthalamide)、トリヒドラジノトリアジン(trihydrazino triazine)などを例として挙げることができる。また、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどを例として挙げることができる。
【0047】
また、物理的発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水、空気、ヘリウムなどの無機発泡剤または1~9個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素化合物(aliphatic hydrocarbon)、1~3個の炭素原子を含む脂肪族アルコール(aliphatic alcohol)、1~4個の炭素原子を含むハロゲン化脂肪族炭化水素化合物(halogenated aliphatic hydrocarbon)などの有機発泡剤が挙げられる。
【0048】
前記の化合物の具体的な例を挙げれば、脂肪族炭化水素化合物としてメタン、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタンなどがあり、脂肪族アルコールとしてメタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールなどがあり、ハロゲン化脂肪族炭化水素化合物としてメチルフルオリド(methyl fluoride)、ペルフルオロメタン(perfluoromethane)、エチルフルオリド(ethyl fluoride)、1,1-ジフルオロエタン(1,1-difluoroethane、HFC-152a)、1,1,1-トリフルオロエタン(1,1,1-trifluoroethane、HFC-143a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(1,1,1,2-tetrafluoroethane、HFC-134a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(1,1,2,2-tetrafluoromethane、HFC-134)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(1,1,1,3,3-pentafluorobutane、HFC-365mfc)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(1,1,1,3,3-pentafluoropropane、HFC.sub.13 245fa)、ペンタフルオロエタン(pentafluoroethane)、ジフルオロメタン(difluoromethane)、ペルフルオロエタン(perfluoroethane)、2,2-ジフルオロプロパン(2,2-difluoropropane)、1,1,1-トリフルオロプロパン(1,1,1-trifluoropropane)、ペルフルオロプロパン(perfluoropropane)、ジクロロプロパン(dichloropropane)、ジフルオロプロパン(difluoropropane)、ペルフルオロブタン(perfluorobutane)、ペルフルオロシクロブタン(perfluorocyclobutane)、メチルクロリド(methyl chloride)、メチレンクロリド(methylene chloride)、エチルクロリド(ethyl chloride)、1,1,1-トリクロロエタン(1,1,1-trichloroethane)、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(1,1-dichloro-1-fluoroethane、HCFC-141b)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(1-chloro-1,1-difluoroethane、HCFC-142b)、クロロジフルオロメタン(chlorodifluoromethane、HCFC-22)、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(1,1-dichloro-2,2,2-trifluoroethane、HCFC-123)、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(1-chloro-1,2,2,2-tetrafluoroethane、HCFC-124)、トリクロロモノフルオロメタン(trichloromonofluoromethane、CFC-11)、ジクロロジフルオロメタン(dichlorodifluoromethane、CFC-12)、トリクロロトリフルオロエタン(trichlorotrifluoroethane、CFC-113)、1,1,1-トリフルオロエタン(1,1,1-trifluoroethane)、ペンタフルオロエタン(pentafluoroethane)、ジクロロテトラフルオロエタン(dichlorotetrafluoroethane、CFC-114)、クロロヘプタフルオロプロパン(chloroheptafluoropropane)、ジクロロヘキサフルオロプロパン(dichlorohexafluoropropane)などが挙げられる。前記の発泡剤の含量は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.5~5重量部であるのが好ましく、発泡剤の含量が過度に少ない場合には発泡を行うためのガスの生成量が過度に少なくて発泡効果が微小であるか期待できず、過度に多い場合にはガスの生成量が過度に多くて要求される物性を期待しにくい。
【0049】
本発明の充填剤は塩化ビニル系樹脂組成物の生産性、乾燥状態の感触(Dry touch)感を向上させる目的で使用され、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウムまたは粘土からなる群より選択されるいずれか一つ以上のものを含む。
【0050】
前記本発明による塩化ビニル系樹脂組成物で、前記充填剤は好ましくは10~150重量部、さらに好ましくは50~130重量部含まれてもよい。充填剤が50重量部未満で含まれている場合、寸法安定性と経済性が低まる問題点があり、130重量部超過して含まれている場合、発泡表面が良くなく、加工性が低下される問題点がある。
【0051】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、二酸化チタン(TiO2)を添加して白色度および隠蔽性を向上させることができる。前記二酸化チタンは塩化ビニル系樹脂100重量部に対して好ましくは1~20重量部、さらに好ましくは3~15重量部が含まれてもよい。二酸化チタンが3重量部未満で含まれている場合、白色度および隠蔽性が落ちて印刷後に色がよく出なく、15重量部超過して含まれている場合、発泡表面が低下される問題点がある。
【0052】
本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は塩化ビニル系樹脂、前記可塑剤組成物、および選択的に添加剤を使用して当業界に一般に知られた方法によって製造でき、その方法において特に限定されない。
【0053】
前記塩化ビニル系樹脂組成物は、床材、壁紙、ターポリン、人造皮革、玩具、自動車下部コーティング材などとして使用でき、特に可塑剤の移行性特性が改善され低温特性が良好な効果がある。
【0054】
本発明による塩化ビニル系樹脂組成物はASTM D746によって測定したLTB(Low Temperature Brittleness)が-41℃以下であって、より具体的に、-41℃以下、-42℃以下、または-43℃以下、または-44℃以下であり得る。前記温度の下限値は低いほど好ましいので、その下限値は理論的には制限がないが、例えば-60℃以上、または-55℃以上、または-52℃以上、または-50℃以上であり得る。
【0055】
また、本発明による塩化ビニル系樹脂組成物はASTM D1003によって測定したヘイズが9%以下、より具体的に、9%以下、または8.5%以下、または8%以下、または7.5%以下であり得る。前記ヘイズの下限値は低いほど好ましいので、その下限値は理論的には制限がないが、例えば1%以上、または2%以上、または3%以上であり得る。
【0056】
一方、本発明の他の一側面によれば、前記塩化ビニル系樹脂組成物を含む成形品が提供される。前記成形品はその用途によって前記塩化ビニル系樹脂組成物に安定剤、充填剤、および/または発泡剤などの添加剤などを追加的に添加して製造できる。
【0057】
前記成形品は床材、壁紙、ターポリン、人造皮革、玩具、自動車下部コーティング材などとして使用でき、特に可塑剤の移行性特性が改善され低温特性が良好な効果がある。
【0058】
以下、下記実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらのみで限定されるのではない。
【実施例】
【0059】
可塑剤組成物および塩化ビニル系樹脂組成物の製造
実施例1
ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(DEHCH)およびジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DEHA)を9:1の重量比で混合して可塑剤組成物を製造した。
【0060】
ポリ塩化ビニル100重量部、前記可塑剤組成物60重量部、熱安定剤(松原産業BZ-150T 1.5重量部、BP-251S 0.5重量部)2.0重量部、エポキシ補助熱安定剤(松原産業のE-700)2重量部を計量してMixerで混合した後、Roll millを使用して混練および製造した。
【0061】
実施例2~4
ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(DEHCH)およびジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DEHA)をそれぞれ下記表1に記載されたような重量比で混合して可塑剤組成物を製造した。
【0062】
その後、前記実施例1と同様な方法で塩化ビニル系樹脂組成物を製造した。
【0063】
比較例1~11
ジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DEHA)、ジイソノニルフタレート(di isononyl phthalate、DINP)、またはジオクチルフタレート(di octyl phthalate、DOTP)を単独でまたは下記表1に記載されたような重量比で混合して可塑剤組成物を製造した。
【0064】
その後、前記実施例1と同様な方法で塩化ビニル系樹脂組成物を製造した。
【0065】
【0066】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造された塩化ビニル系樹脂組成物に対して、可塑剤の移行性、低温特性、およびヘイズを下記のように評価して表2に示した。
【0067】
(1)可塑剤移行性
可塑剤移行性評価は次の通り行った。
【0068】
製造された塩化ビニル系樹脂組成物をRoll mill加工(170℃、3分)とPress加工(180℃、8分)を順次に行って2mm平板を製造した。製造された平板を直径約4cmの円形試片に切断した。試片の上/下部にPolypropylene材質の油分吸収用油紙を位置させ、5kg荷重、60℃で7日間放置して可塑剤移行を促進させた。可塑剤移行実験終了後、試片と油紙の重量変化率を測定した。
【0069】
試片の重量変化率は[(試片の重量変化/試験前試片の重量)×100]で計算し、油紙の重量変化率は[(油紙の重量変化/試験前油紙の重量)×100]で計算した。試片の重量減少量は油紙の重量増加量と同一であって、本実験では試片の重量変化率のみで可塑剤移行性を評価した。
【0070】
(2)Low Temperature Brittleness(LTB)
ASTM D746によって測定試片の50%以上が砕ける温度を測定した。
【0071】
(3)ヘイズ(Haze)
ASTM D1003によってヘイズを測定した。
【0072】
【0073】
前記表1を参照すれば、本発明によってDEHCHとDEHAを組み合わせて使用した実施例の可塑剤組成物は移行性、低温特性、およびヘイズが全て優れているのを確認することができた。
【0074】
一方、DEHCHを単独で使用した比較例1の場合、可塑剤移行性やヘイズは良好であったが、低温特性であるLTBが薬-40℃であって混合使用の場合より良くなかった。
【0075】
DINPを単独でまたはDEHAと混合使用した比較例2~6の場合、DEHAの含量が多くなるほどLTBが低まる傾向を示すが、実施例よりは良くなく、DINPはフタレート系であって環境に優しい可塑剤として分類されず、規制が多くて使用が制限されている。DOTPを単独でまたはDEHAと混合使用した比較例7~11の場合、低温特性は良好であったが、可塑剤移行量が大きくてヘイズ特性が非常に劣勢であった。