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特許7209847作動システム、および作動システムを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】作動システム、および作動システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/024 20060101AFI20230113BHJP
   B64C 13/42 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F15B11/024 Z
B64C13/42
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021539425
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 US2020015227
(87)【国際公開番号】W WO2020209924
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】62/797,927
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507027656
【氏名又は名称】ムーグ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,ローウェル・バン・ルンド
(72)【発明者】
【氏名】シーラフ,ロバート・ジャスティン
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-124500(JP,U)
【文献】米国特許第05983782(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0002028(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/024
B64C 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材を基準として可動部材を変位させるための作動システムであって、前記可動部材がフェイルセーフ位置を有し、前記フェイルセーフ位置から離れるように変位可能であり、前記作動システムが、
前記可動部材を前記固定部材に接続するアクチュエータと、
液圧供給ライン、第1の液圧制御ライン、第2の液圧制御ライン、および液圧リターンラインを有する液圧システムと、
前記固定部材を基準として前記可動部材を変位させるために前記アクチュエータを駆動するように構成される、前記液圧システムによって動力供給される液圧回転モータであって、前記液圧回転モータが、前記第1の液圧制御ラインに液圧的に連通される第1の制御ポート、前記第2の液圧制御ラインに液圧的に連通される第2の制御ポート、および前記液圧リターンラインに液圧的に連通されるリターンポートを有する、液圧回転モータと、
前記液圧システムおよび前記液圧回転モータに液圧的に連通されるフェイルセーフ弁であって、前記フェイルセーフ弁が前記可動部材に動作可能に接続される、フェイルセーフ弁と
を備え、
前記フェイルセーフ弁が、前記液圧供給ライン内の液圧が所定の常圧以上であるときの非起動状態、および前記液圧供給ライン内の液圧が前記所定の常圧未満であるときの起動状態を有し、
前記フェイルセーフ弁が前記非起動状態にある場合、前記第1の液圧制御ラインが前記液圧回転モータの前記第1の制御ポートに液圧的に連通され、前記第2の液圧制御ラインが前記液圧回転モータの前記第2の制御ポートに液圧的に連通され、前記液圧回転モータの前記リターンポートが前記液圧リターンラインに液圧的に連通されて、前記液圧回転モータが通常通りに動作し、
前記フェイルセーフ弁が前記起動状態にあって前記可動部材が前記フェイルセーフ位置から離れている場合、前記第1の液圧制御ラインおよび前記液圧回転モータの前記第1の制御ポート、または前記第2の液圧制御ラインおよび前記液圧回転モータの前記第2の制御ポートが前記液圧リターンラインに液圧的に連通される
作動システム。
【請求項2】
前記アクチュエータがヒンジ軸を画定するギア付き回転アクチュエータであり、前記可動部材が前記固定部材を基準として前記ヒンジ軸を中心として両方の角度方向に角度的に変位可能であり、前記フェイルセーフ位置が前記ヒンジ軸を中心とした前記可動部材の所定の角度位置である、請求項1に記載の作動システム。
【請求項3】
前記固定部材が航空機の固定翼であり、前記可動部材が前記航空機の操縦翼面である、請求項2に記載の作動システム。
【請求項4】
前記フェイルセーフ弁が、コマンドスプール、前記液圧供給ラインに液圧的に連通されるコマンドポート、前記第1の液圧制御ラインおよび前記液圧回転モータの前記第1の制御ポートに液圧的に連通される第1の制御導管、前記第2の液圧制御ラインおよび前記液圧回転モータの前記第2の制御ポートに液圧的に連通される第2の制御導管、ならびに前記液圧リターンラインおよび前記液圧回転モータの前記リターンポートに液圧的に連通されるリターン導管を有し、
前記コマンドスプールが、前記第1の制御導管および前記第2の制御導管が前記リターン導管に液圧的に連通されない非起動位置と、前記可動部材が前記フェイルセーフ位置から離れている場合における前記第1の制御導管および前記第2の制御導管の少なくとも一方が前記リターン導管に液圧的に連通される起動位置とを有し、
前記コマンドスプールが前記起動位置の方に付勢され、
前記液圧供給ライン内の液圧が前記所定の常圧以上である場合に前記コマンドスプールが前記液圧供給ライン内の液圧により前記非起動位置で維持され、
前記液圧供給ライン内の液圧が所定の常圧未満である場合に前記コマンドスプールが付勢力により前記起動位置で維持される
請求項1に記載の作動システム。
【請求項5】
前記フェイルセーフ弁が、弁ハウジング、前記弁ハウジングを通って延在する弁軸、および前記弁ハウジングを基準として移動可能であるメータリングスプールを有し、
前記メータリングスプールが前記可動部材に接続され、その結果、前記弁軸を中心とした前記メータリングスプールの回転位置が前記固定部材を基準とした前記可動部材の位置によって決定され、
前記メータリングスプールが、前記可動部材の前記フェイルセーフ位置に対応する、前記弁軸を中心としたヌル回転位置を有する
請求項1に記載の作動システム。
【請求項6】
前記フェイルセーフ弁が前記起動状態にある場合、前記メータリングスプールが、前記第1の液圧制御ラインおよび前記液圧回転モータの前記第1の制御ポートを前記液圧リターンラインに液圧的に連通させるために前記ヌル回転位置から離れるように前記弁軸を中心として第1の回転方向に回転可能であり、
前記フェイルセーフ弁が前記起動状態にある場合、前記メータリングスプールが、前記第2の液圧制御ラインおよび前記液圧回転モータの前記第2の制御ポートを前記液圧リターンラインに液圧的に連通させるために前記ヌル回転位置から離れるように前記弁軸を中心として前記第1の回転方向の反対の第2の回転方向に回転可能である
請求項5に記載の作動システム。
【請求項7】
前記メータリングスプールがトランスミッション機構により前記可動部材に接続される、請求項5に記載の作動システム。
【請求項8】
前記アクチュエータがヒンジ軸を画定するギア付き回転アクチュエータであり、前記可動部材が前記固定部材を基準として前記ヒンジ軸を中心として両方の角度方向に角度的に変位可能であり、前記弁軸が前記ヒンジ軸と平行である、請求項5に記載の作動システム。
【請求項9】
前記フェイルセーフ弁が、弁ハウジング、前記弁ハウジングを通って延在する弁軸、および前記弁ハウジングを基準として前記弁軸に沿って変位可能であるメータリングスプールを有し、
前記メータリングスプールが前記可動部材に接続され、その結果、前記弁軸に沿う前記メータリングスプールの軸方向位置が前記固定部材を基準とした前記可動部材の位置によって決定され、
前記メータリングスプールが、前記可動部材の前記フェイルセーフ位置に対応するヌル軸方向位置を有する
請求項1に記載の作動システム。
【請求項10】
前記フェイルセーフ弁が前記起動状態にある場合、前記メータリングスプールが、前記第1の液圧制御ラインおよび前記液圧回転モータの前記第1の制御ポートを前記液圧リターンラインに液圧的に連通させるために前記ヌル軸方向位置から離れるように前記弁軸に沿って第1の軸方向に変位可能であり、
前記フェイルセーフ弁が前記起動状態にある場合、前記メータリングスプールが、前記第2の液圧制御ラインおよび前記液圧回転モータの前記第2の制御ポートを前記液圧リターンラインに液圧的に連通させるために前記ヌル軸方向位置から離れるように前記弁軸に沿って前記第1の軸方向の反対の第2の軸方向に変位可能である
請求項9に記載の作動システム。
【請求項11】
前記メータリングスプールがトランスミッション機構により前記可動部材に接続される、請求項9に記載の作動システム。
【請求項12】
固定部材を基準として可動部材を変位させるための作動システムを動作させる方法であって、前記可動部材がフェイルセーフ位置を有し、前記フェイルセーフ位置から離れるように変位可能であり、前記作動システムが、前記可動部材を前記固定部材に接続するアクチュエータ、液圧システム、および前記固定部材を基準として前記可動部材を変位させるために前記アクチュエータを駆動するように構成される、前記液圧システムによって動力供給される液圧回転モータを備え、前記方法が、
A)前記液圧システムおよび前記液圧回転モータに液圧的に連通されるフェイルセーフ弁を提供するステップと、
B)前記フェイルセーフ弁と前記可動部材との間で機械的に接続させるステップと、
C)前記液圧供給ライン内の液圧が所定の常圧以上である場合、前記液圧システムの第1の液圧制御ラインと前記液圧回転モータの第1の制御ポートとの間、前記液圧システムの第2の液圧制御ラインと前記液圧回転モータの第2の制御ポートとの間、および前記液圧システムのリターンラインと前記液圧回転モータのリターンポートとの間、に液圧的に連通させるステップと、
D)前記液圧供給ライン内の液圧が前記所定の常圧未満であり、前記可動部材が前記フェイルセーフ位置から離れている場合、前記液圧回転モータの前記第1の制御ポートと前記液圧システムの前記リターンラインとの間に、または前記液圧回転モータの前記第2の制御ポートと前記液圧システムの前記リターンラインとの間に液圧的に連通させるために前記機械的な接続により前記フェイルセーフ弁を動作させるステップと
を含む
方法。
【請求項13】
前記フェイルセーフ弁が、前記機械的な接続により前記可動部材に接続されるメータリングスプールを備え、前記メータリングスプールが前記可動部材の前記フェイルセーフ位置に対応するヌル位置を有し、前記方法が、前記機械的な接続を変更することにより前記メータリングスプールの前記ヌル位置を調整するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アクチュエータがヒンジ軸を画定するギア付き回転アクチュエータであり、前記可動部材が前記固定部材を基準として前記ヒンジ軸を中心として両方の角度方向に角度的に変位可能であり、前記フェイルセーフ位置が前記ヒンジ軸を中心とした前記可動部材の所定の角度位置である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記固定部材が航空機の固定翼であり、前記可動部材が前記航空機の操縦翼面である、請求項14に記載の作動システム。
【請求項16】
ステップDが、前記操縦翼面が前記フェイルセーフ位置から第1の角度方向に変位させられる場合に前記液圧回転モータの前記第1の制御ポートと前記液圧システムの前記リターンラインとの間で液圧的に連通させるステップ、および前記操縦翼面が前記フェイルセーフ位置から前記第1の角度方向とは反対の第2の角度方向に変位させられる場合に前記液圧回転モータの前記第2の制御ポートと前記液圧システムの前記リターンラインとの間で液圧的に連通させるステップを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている、2019年1月28日に出願した米国仮特許出願第62/797,927号の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002]本発明は航空機操縦翼面のための作動システムなどの、作動システムのフェイルセーフ動作に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]航空機の飛行操縦翼面を位置決めするための飛行制御作動システムの設計では、液圧回路内の電気作動式弁への電力の損失および/または液圧回路内の液圧の損失などの、作動システムの故障の発生時に、操縦翼面(例えば、固定翼に移動可能に設置されるフラップまたはスラット)をニュートラルな位置または中心の「ヌル」フェイルセーフ(null failsafe)位置に戻してそこで維持することが望ましい。飛行制御作動システムが操縦翼面を動かすのに線形液圧アクチュエータに依存する場合、故障モードにおいては、操縦翼面をセンタリングすることは単純な方式で行われている。線形液圧アクチュエータが、シリンダチャンバを2つのチャンバへと分割するピストンをシリンダチャンバ内に有する。ピストンを第1の軸方向に動かすために、加圧された液圧流体が第1の制御ライン(本明細書では「P1」と称される)を通して第1のチャンバの中に供給され、第2のチャンバ内の液圧流体が第2の制御ライン(本明細書では「P2」と称される)を通してシリンダチャンバから流れ出ることが可能となり、それによりピストンが変位させられる。理解されるように、第1のチャンバのボリュームが増大し、第2のチャンバのボリュームが減少する。逆に、ピストンを第1の軸方向とは反対の第2の軸方向に動かす場合、加圧された液圧流体が第2の制御ラインP2を通して第2のチャンバの中に供給され、第1のチャンバの中の液圧流体が第1の制御ラインP1を通してシリンダチャンバから流れ出ることが可能となる。故障モードにおいて操縦翼面をセンタリングすることは「壁孔(hole-in-the-hole(HITW))」ポートを使用して単純な方式で行われている。HITWポートは、線形液圧アクチュエータの液圧シリンダの壁を通る形で、壁の軸方向中間位置のところに設けられる。通常の動作条件で線形液圧アクチュエータがその意図される移動範囲で動作する場合、HITWポートがピストンによって閉じられる。しかし、故障事象が発生すると、ピストンが一方向またはもう一方の方向に過移動してそれによりHITWポートがピストンの高圧側に開き、その結果、液圧流体が液圧リターンラインに逃げる。リターンラインからの液圧により、液圧マニホルドがピストンの低圧側を液圧的に塞ぐことができ、それにより線形液圧アクチュエータのピストンを中央ヌル位置の方に強制的に移動させ、中央ヌル位置で、ピストンが再びHITWポートを遮断してピストンが液圧的にロックされる。
【0004】
[0004]回転液圧アクチュエータとも称される液圧回転モータは線形液圧アクチュエータと類似の方式で動作するが、シリンダを基準として線形的に動くピストンの代わりにステータを基準とした軸を中心に回転するロータを有する。一対の液圧制御ラインP1およびP2が、モータハウジング内の対応するポートにより、液圧回転モータのそれぞれの可変チャンバに連通される。ロータを第1の方向に回転させる場合、加圧された流体が第1の制御ラインP1によりモータに供給され、流体が第2の制御ラインP2によりモータから離れることが可能となる。第1の方向の反対の第2の方向にロータを逆回転させる場合、加圧された流体が第2の制御ラインP2によりモータに供給され、流体が第1の制御ラインP1によりモータから離れることが可能となる。
【0005】
[0005]Lebrunらの米国特許第5,983,782号が、線形液圧アクチュエータとは対照的である回転液圧アクチュエータに合うように適合されるHITWの概念の代替のバージョンを教示している。より具体的には、Lebrunらは2つの可変ボリュームサブチャンバへと各々分割される弓形チャンバを画定するそれぞれの放射羽根を有する外側ステータおよび内側ロータを有する回転液圧アクチュエータを開示している。サブチャンバが、上で説明した制御ラインP1およびP2に類似の第1および第2の制御ラインに接続され、液圧流れが制御ライン内で選択的に制御され得、それによりロータがステータを基準として反対の第1および第2の回転方向に回転する。フェイルセーフモードにおいてロータをそのヌル位置の方に回転させるための戻り圧力を提供するために、Lebrunらの図1の参照符号22によって示されるHITWポートがステータ内に設けられる。
【0006】
[0006]上で説明したHITWポートは、加圧された動作流体を閉じ込めるステータまたはシリンダを通る形で設けられる。上で説明したHITWポートの欠点は、フェイルセーフモード中のヌル位置のロケーションを決定するアクチュエータ内でのポートのロケーションが固定され、変更され得ないことである。したがって、液圧線形アクチュエータまたは液圧回転アクチュエータのヌル位置が、アクチュエータの製造後、容易に調整され得ず、アクチュエータが、設計されたヌル位置を有する特定の用途にしか適さない。
【0007】
[0007]Lebrunらによって開示される回転液圧アクチュエータに特有の別の短所は、ステータを基準としたロータの回転モーションの範囲が360度未満の角度に制限されることである。したがって、ロータを継続的に回転させることが可能ではない。一部の航空機は抵抗を低減するために薄い翼を使用する必要があり、したがって、従来の線形液圧アクチュエータの代わりにギア付き回転アクチュエータ(GRA:geared rotary actuator)によって駆動される非常に薄い(つまり、高さの低い)後縁操縦翼面(trailing edge control surface)を必要とする。ギア付き回転アクチュエータが操縦翼面ヒンジ軸に直接に取り付けられ、液圧回転モータが同じ軸上に位置し、GRAを複数回の回転で継続的に駆動する。Lebrunらによって教示される回転液圧アクチュエータは、その角度モーションの範囲が制限されることを理由として、この種の用途には適さない。GRAを使用することで空気抵抗を低減することが補助されるが、これまで、操縦翼面をヌルフェイルセーフ位置で安全に平衡状態にするためのHITWの構造部を提供する方法は存在しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]本開示は、液圧線形アクチュエータの代わりに液圧回転モータによって供給される液圧電力を使用して可動部材が作動するような作動システムにおいて利用される。一用途で、可動部材が、液圧回転モータによって動力供給されるGRAにより、固定翼を基準として作動する飛行操縦翼面である。本開示は、稼働中の液圧モータ内に固定のポートを必要とすることなく、故障事象時に飛行操縦翼面を空気力学的にニュートラルである位置つまりヌルフェイルセーフ位置まで戻すための同様のHITW機能を提供する。故障事象は、例えば、液圧マニホルドを制御するための電気的な指令能力の損失および/または液圧の損失である可能性がある。
【0009】
[0009]本開示の実施形態によると、フェイルセーフ弁がGRAに動力供給する液圧回転モータに付随し、さらに、操縦翼面に機械的に接続される。フェイルセーフ弁が液圧式飛行制御システムから通常の指令圧力(command pressure)を受けると、フェイルセーフ弁が機能停止状態となり、飛行制御システムが通常モードで動作する。しかし、フェイルセーフ弁に対しての液圧指令圧力の損失があると、操縦翼面がそのヌル位置つまりニュートラルなフェイルセーフ位置から離れている場合にはフェイルセーフ弁が起動され、モータ液圧制御ライン(つまり、P1またはP2)のうちの1つを液圧回転モータのためのケースリターンラインRに接続する。結果として、故障事象時、操縦翼面が液圧的に動力供給されることになり、つまりそのフェイルセーフ位置まで空気力学的に漸進的に動かされる(ratchet(ed))ことになる。
【0010】
[0010]フェイルセーフ弁が、固定される部材を基準とした操縦翼面の位置によりメータリングスプールの回転位置または軸方向位置を決定するような形で操縦翼面に直接にまたは関節的に接続されるメータリングスプールを有することができ、メータリングスプールが可動部材のフェイルセーフ位置に対応するヌル位置を有する。メータリングスプールがそのヌル位置から第1の方向に変位させられると、フェイルセーフ弁が第1の制御ラインP1をドレンリターンラインRに連通させる。逆に、メータリングスプールがそのヌル位置から第2の反対方向に変位させられると、フェイルセーフ弁が第2の制御ラインP2をドレンリターンラインRに連通させる。
【0011】
[0011]Lebrunらによって提案される解決策とは異なり、GRAに動力供給する液圧回転モータが複数回の回転で自由に動作することができる。その理由は、液圧回転モータ内の物理的なHITWに角度的制限が課されないからである。さらに、可動部材をメータリングスプールに接続するためのトランスミッション機構を再構成することにより、操縦翼面または他の可動部材のフェイルセーフ位置が多様な用途のために容易に変更され得る。
【0012】
[0012]次に、添付図面を参照する以下の詳細な説明で、開示される実施形態の性質および動作形態をより完全に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】[0013]フェイルセーフ弁を非起動状態で示している、本開示の実施形態によるフェイルセーフ弁を組み込む液圧式飛行作動システムを示す概略図である。
図1B】[0014]フェイルセーフ弁を起動状態で示している、図1Aと同様の概略図である。
図2】[0015]液圧回転モータおよび液圧回転モータによって駆動されるギア付き回転アクチュエータ(GRA)に従って組み立てられるフェイルセーフ弁を示す斜視図である。
図3】[0016]フェイルセーフ弁、液圧回転モータ、およびGRAの一部分を示す立面図である。
図4】[0017]フェイルセーフ弁、液圧回転モータ、およびGRAを示す端面図である。
図5】[0018]フェイルセーフ弁がその非起動状態にあり、図4の線5-5に概して沿うフェイルセーフ弁を示す断面図である。
図6】[0019]フェイルセーフ弁の、弁アーム、スリーブ、およびメータリングスプールを示す一部透視斜視図である。
図7】[0020]フェイルセーフ弁がその起動状態にあり、フェイルセーフ弁のメータリングスプールおよび弁アームがそのヌル位置にある、フェイルセーフ弁を示す断面図である。
図8A】[0021]メータリングスプールがそのヌル位置から第1の変位方向に変位させられた、フェイルセーフ弁を示す端面図である。
図8B】[0022]液圧流れを示している、図8Aの線8B-8Bに概して沿うフェイルセーフ弁を示す断面図である。
図9A】[0023]メータリングスプールがそのヌル位置から離れて第2の変位方向に変位させられた、フェイルセーフ弁を示す端面図である。
図9B】[0024]液圧流れを示している、図9Aの線9B-9Bに概して沿うフェイルセーフ弁を示す断面図である。
図10】[0025]操縦翼面とフェイルセーフ弁との間の1つの考えられるトランスミッション機構を示す概略側面図である。
図11】[0025]操縦翼面とフェイルセーフ弁との間の1つの考えられるトランスミッション機構を示す概略側面図である。
図12】[0025]操縦翼面とフェイルセーフ弁との間の1つの考えられるトランスミッション機構を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0026]図1Aおよび1Bが、例えばギア付き回転アクチュエータ(GRA)10により航空機の固定翼2に接続されるフラップまたはスラット3などの、航空機の操縦翼面を作動させるための液圧駆動式飛行制御作動システム1を概略的に示す。GRA10が、図1Aおよび1Bに示されるように、単一の液圧回転モータによって駆動される単一入力GRA、または一対の液圧回転モータ12Lおよび12Rによって駆動される二重入力GRAであってよい。液圧回転モータ12L、12Rが、主制御弁14、バイパス弁16、および閉止弁18を有する液圧システムによって制御され得る。例えば、液圧システムが、GRA10の左側端部のところで液圧回転モータ12Lを制御するためのHyd1で示される第1の液圧サブシステムおよびGRA10の右側端部のところでもう一方の液圧回転モータ12Rを制御するための第2の液圧サブシステムHyd2を有する二重冗長システムであってよい。より具体的には、第2の液圧サブシステムHyd2が液圧回転モータ12Rの第1の制御ポートC1に液圧的に連通される第1の液圧制御ラインP1、液圧回転モータ12Rの第2の制御ポートC2に液圧的に連通される第2の液圧制御ラインP2、および液圧回転モータ12RのリターンポートRPに液圧的に連通されるケースドレンリターンラインRを有する。
【0015】
[0027]本開示によると、液圧モータ12L、12Rおよび操縦翼面3のうちの少なくとも1つがフェイルセーフ弁20に接続される。図1Aおよび1Bでは、GRA10の右側端部の液圧モータ12Rに従って1つのフェイルセーフ弁20のみが示されるが、GRA10の左側端部の液圧モータ12Lに従って別のフェイルセーフ弁が提供され得ることが理解されよう。
【0016】
[0028]図1Aでは、フェイルセーフ弁20がその非起動状態で示されている。フェイルセーフ弁20がその非起動状態にある場合、通常、液圧式飛行制御作動システム1が動作しており、フェイルセーフ弁20が機能していない。図1Bでは、フェイルセーフ弁20がその起動状態で示されており、これは、液圧式飛行制御作動システムに故障が発生してそれにより液圧回転モータ12Rへの液圧の損失が発生している、ことを意味する。フェイルセーフ弁20の起動状態で、操縦翼面3がその空気力学的なヌル位置またはニュートラルなフェイルセーフ位置にない場合、フェイルセーフ弁20が液圧モータ12Rのための液圧制御ラインP1およびP2のうちの適切な一方を液圧モータのためのケースドレンリターンラインRに接続し、それにより操縦翼面3がそのフェイルセーフ位置まで移動することが可能となる。
【0017】
[0029]図2~7が、フェイルセーフ弁20および液圧回転モータ12Rの1つの考えられる構成を示す。見ることができるように、第2の液圧サブシステムHyd2の液圧制御ラインP1およびP2が、フェイルセーフ弁20のハウジング21内の第1の制御ポート41および第2の制御ポート42にそれぞれ接続され、第2の液圧サブシステムHyd2の液圧供給ラインSが弁ハウジング21内のコマンドポート43に接続され、第2の液圧サブシステムHyd2のケースドレンリターンラインRが弁ハウジング内のリターンポート44に接続される。描かれる実施形態では、フェイルセーフ弁20が、第1の制御ポート41および液圧モータ12Rの第1の制御ポートC1に連通される第1の制御導管51と、第2の制御ポート42および液圧モータ12Rの第2の制御ポートC2に連通される第2の制御導管52と、リターンポート44および液圧モータ12RのリターンポートRPに連通されるリターン導管54とを有することができる。したがって、コマンドポート43が液圧供給ラインSに液圧的に連通され、第1の制御導管51が第1の液圧制御ラインP1および液圧回転モータ12Rの第1の制御ポートC1に液圧的に連通され、第2の制御導管52が第2の液圧制御ラインP2および液圧回転モータ12Rの第2の制御ポートC2に液圧的に連通され、リターン導管54が液圧リターンラインRおよび液圧回転モータ12RのリターンポートRPに液圧的に連通される。
【0018】
[0030]フェイルセーフ弁20が、弁ハウジング21の一方の端部から突出する弁アーム22を有することができる。弁アーム22が、操縦翼面3に接続されるトランスミッション機構(図示せず)に接続されるためのその突出部分上にクレビス24を有することができる。GRA10のヒンジ軸11を中心とした操縦翼面3の動きがトランスミッション機構により弁アーム22に伝達され得、それにより弁アーム22がフェイルセーフ弁20のハウジングを基準としてその長手方向軸を中心として回転する。トランスミッション機構の実施例が図10に関連して示されており、後で説明される。介在するトランスミッション機構を使用する代わりに、弁アーム22が操縦翼面3に直接に接続されてもよい。
【0019】
[0031]フェイルセーフ弁20が中心軸25を画定するシャフト23を有することができ、弁アーム22が中心軸25を中心として回転する。メータリングスプール26が弁スリーブ28内に収容され得、弁アーム22に結合され得、それによりシャフト23の軸25を中心として弁アーム22と共に回転する。弁軸25を中心としたメータリングスプール26の回転が弁スリーブ28を基準としたものであり、弁スリーブ28が弁ハウジング21内の固定位置に留まる。メータリングスプール26が、メータリングスプール26の端部上に摺動可能に設置される有孔コマンドスプール30に対してキーにより固定され得る。ばね32がハウジング21の栓付き端部に係合され、コマンドスプール30を軸方向において図5および7の左側に付勢する。図2~7では、弁アーム22およびメータリングスプール26が、操縦翼面3のフェイルセーフ位置に対応するヌル回転位置(null rotational position)A0のところで示される。描かれる実施形態では、メータリングスプール26のヌル回転位置A0が、図4で最も良好に見ることができるように、垂直方向に延在するクレビス24を特徴とする。
【0020】
[0032]フェイルセーフ弁20が、第1の制御導管51とリターン導管54との間の、または第2の制御導管52とリターン導管54との間の液圧的な連通を可能にするように構成されるが、これはフェイルセーフ弁がその起動状態にある場合のみである。例えば、メータリングスプール26および弁スリーブ28がそれぞれの通路61および71を画定することができ、その結果、メータリングスプール26が弁軸25を中心として第1の回転方向に回転させられてヌル回転位置A0から離れると、メータリングスプール26内の通路61が弁スリーブ28内の通路71に重複する形で連通されるようになり、それにより図8Bを参照して後でより詳細に説明されるように液圧流体が第1の制御導管51からリターン導管54まで流れることが可能となる。同様に、メータリングスプール26が弁軸25を中心として第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転させられてヌル回転位置A0から離れると、メータリングスプール26内の通路62が弁スリーブ28内の通路72に重複する形で連通されるようになり、それにより図9Bを参照して後でより詳細に説明されるように液圧流体が第2の制御導管52からリターン導管54まで流れることが可能となる。液圧流体が、弁スリーブ28を通る複数の径方向開口部74を経由してリターン導管54に到達することができる。
【0021】
[0033]図5では、フェイルセーフ弁20がその非起動状態にあり、対して図7では、フェイルセーフ弁20がその起動状態にある。フェイルセーフ弁20の状態はコマンドスプール30の軸方向位置によって決定され得る。液圧供給ラインS内の液圧が所定の常圧以上である場合、コマンドポート43を通して供給される液圧が、ばね32による付勢力に逆らってコマンドスプール30を図5の右側に強制的に移動させるのに十分な大きさとなり、その結果、コマンドスプール30がリターン導管54につながる径方向開口部74を遮断し、それにより一方で第1の制御導管51とリターン導管54との間のおよび他方で第2の制御導管52とリターン導管54と間の液圧的な連通を防止する。理解されるように、飛行制御作動システムの第2の液圧サブシステムHyd2の機能不良または故障により液圧供給ラインS内の液圧が失われると、コマンドポート43のところの液圧が所定の常圧未満まで減少することになり、ばね32がコマンドスプール30を図7で見て軸方向において左側に変位させることになり、それによりリターン導管54につながる径方向開口部74の遮断を解除し、フェイルセーフ弁20をその起動状態にする。
【0022】
[0034]次に、その起動状態にあるフェイルセーフ弁20の動作をさらに説明するために、図8A,8B、9A、および9Bを参照する。フェイルセーフ弁20がその起動状態にあるとき、メータリングスプール26の回転位置が、フェイルセーフ弁20により液圧制御ラインP1またはP2のいずれをドレンリターンラインRに接続するかを決定することができる。メータリングスプール26の回転位置が操縦翼面3の角度位置によって決定され得、メータリングスプール26が、弁アーム22と操縦翼面との間にある弁アーム22および存在する場合の介在するトランスミッション機構を経由する形で操縦翼面3に接続されている。上で言及したように、操縦翼面3がそのフェイルセーフ位置から離れると、フェイルセーフ弁20が、液圧制御ラインP1またはP2のうちの一方をドレンリターンラインRに接続する。
【0023】
[0035]図8Aおよび8Bでは、メータリングスプール26が弁軸25を中心として第1の回転方向に回転させられてそのヌル回転位置A0から離れており、その結果、第1の液圧制御ラインP1とドレンリターンラインRとの間の液圧的な連通が確立される。第1の制御ポート41を通して第1の液圧制御ラインP1に連通される第1の制御導管51が、通路71および61を通して、シャフト23とメータリングスプール26の内径との間に画定される環状通路63に液圧的に連通される。環状通路63がフェイルセーフ弁20の内部に沿ってメータリングスプール26の開口部65まで軸方向に延在することができ、それにより液圧流体が通路63から外に移動してばね32を配置しているところの環状空間に入り、さらに弁スリーブ28内の径方向開口部74を通ってリターン導管54に到達することが可能となる。液圧流体が、リターン導管54からリターンポート44を通ってドレンリターンラインRまで移動する。
【0024】
[0036]図9Aおよび9Bでは、メータリングスプール26が弁軸25を中心として第2の回転方向に回転させられてそのヌル回転位置から離れており、その結果、第2の液圧制御ラインP2とドレンリターンラインRとの間の液圧的な連通が確立される。第2の制御ポート42を通して第2の液圧制御ラインP1に連通される第2の制御導管52が、通路72および62を通して、環状通路63に液圧的に連通される。上で説明したように、環状通路63が開口部65につながっており、それにより液圧流体が通路63から外に移動してさらに径方向開口部74を通ってリターン導管54に到達することが可能となる。液圧流体が、リターン導管54からリターンポート44を通ってドレンリターンラインRまで移動する。
【0025】
[0037]例えば、操縦翼面3がそのフェイルセーフ位置から離れて上方に傾くときに第2の液圧サブシステムHyd2が電気供給を失うと、Hyd2の閉止弁18が電力なしで開状態から閉状態へ移ることからフェイルセーフ弁20がコマンドポート43のところで低下した圧力を受けるようになり、フェイルセーフ弁20がその非起動状態からその起動状態に移行する。弁アーム22およびメータリングスプール26の位置、および通路61および62の離間構成により、流れ通路が開けられ、それにより第2の液圧制御ラインP2からのモータ制御圧力がドレンリターンラインRまで誘導され、液圧モータ12Rが第1の制御ポートC1のところで第1の液圧制御ラインP1からの全システム圧力を受け、それにより液圧回転モータを駆動して操縦翼面3をそのフェイルセーフ位置まで作動させる。操縦翼面3がそのフェイルセーフ位置から下方に傾く場合には逆のことが起こり、つまり、フェイルセーフ弁20が第1の液圧制御ラインP1からのモータ制御圧力をドレンリターンラインRまで誘導することができ、液圧回転モータ12Rが第2の制御ポートC2のところで第2の液圧制御ラインP2からの全システム圧力を受け、それによりモータを駆動して操縦翼面3をそのフェイルセーフ位置の方に作動させる。操縦翼面がいずれかの方向からそのフェイルセーフ位置に到達すると、モータ制御圧力が均一化され、リターンラインRへのポート(porting to return line R)が閉じられ、それにより、操縦翼面3がそのフェイルセーフ位置で液圧的にロックされる。
【0026】
[0038]上で言及したように、GRA10が一対の液圧モータ12Lおよび12Rによって駆動され得る。以下の表が図1Aおよび1Bに描かれる例示のシステムの種々のモードを表す。
【0027】
【表1】
【0028】
[0039]第1および第2の液圧サブシステム(Hyd1およびHyd2)の両方が液圧動力を有し、主制御弁14および閉止弁18を動作させるための電力が存在する場合、飛行制御作動システム1がその通常の起動モードで動作することになり、それにより操縦翼面3の位置を制御する。
【0029】
[0040]第1の液圧サブシステムHyd1が液圧動力を有するが第2の液圧サブシステムHyd2が液圧動力を失っており、主制御弁14および閉止弁18を動作せるための電力が存在する場合、飛行制御作動システム1がバイパスモードで動作することになり、このバイパスモードでは、液圧回転モータ12の第1および第2の液圧制御チャンバが互いに液圧的に連通され、その結果、液圧流体がこれらの2つのチャンバの間を自由に流れることができるようになり、それにより完全に機能的な第1の液圧サブシステムHyd1が、液圧回転オータ12Lの動作のみにより、GRA10を能動的に駆動することが可能となり、ここでは液圧回転モータ12Rからの抵抗が最小となる。
【0030】
[0041]逆に、第2の液圧サブシステムHyd2が液圧動力を有するが第1の液圧サブシステムHd1が液圧動力を失っており、主制御弁14および閉止弁18を動作せるための電力が存在する場合、飛行制御作動システム1がバイパスモードで動作することになり、このバイパスモードでは、液圧回転モータ12Lの第1および第2の液圧制御チャンバが互いに液圧的に連通され、その結果、液圧流体がこれらの2つのチャンバの間を自由に流れることができるようになり、完全に機能的な第2の液圧サブシステムHyd2が、液圧回転モータ12Rの動作のみにより、GRA10を能動的に駆動することが可能となり、ここでは液圧回転モータ12Lからの抵抗が最小となる。
【0031】
[0042]両方の液圧サブシステムが液圧動力を失う場合、第1の液圧サブシステムHyd1が上述のバイパスモードで動作することになる。しかし、フェイルセーフ弁20がその起動状態に移行することになり、その結果、第2の液圧サブシステム2が空気力学的荷重下で操縦翼面3をその空気力学的にニュートラルであるフェイルセーフ位置まで漸進的に動かすのを可能にする。電力が存在するかどうかにかかわらず、液圧サブシステムHyd1およびHdy2がそれぞれバイパスモードおよびラチェットモードで動作することになる。
【0032】
[0043]第2の液圧サブシステムHdy2が液圧動力を有するが、電力が失われている場合、第1の液圧サブシステムHyd1が上述したバイパスモードで動作することになる。フェイルセーフ弁20がその起動状態に移行することになり、その結果、第2の液圧サブシステムHyd2が操縦翼面3に液圧的に動力供給してそのフェイルセーフ位置に到達させる。第1の液圧サブシステムHyd1が液圧動力を有するかどうかにかかわらず、液圧サブシステムHyd1およびHyd2がそれぞれバイパスモードおよびパワートゥフェイルセーフモードで動作することになる。
【0033】
[0044]操縦翼面3に対してのメータリングスプール26および弁アーム22の接続は、操縦翼面3のフェイルセーフ位置をメータリングスプール26のヌル位置に対応させるように運動学的に設計され得る。例えば、図10~12に示されるように、トランスミッション機構80が操縦翼面3を弁アーム22(およびひいてはメータリングスプール26)に機械的に結合し、その結果、図11に示されるように操縦翼面3がその空気力学的にニュートラルである位置にある場合にメータリングスプール26がそのヌル位置にくる。描かれる実施形態によって示されるように、操縦翼面3のフェイルセーフ位置が、GRA10の軸11を中心とした枢動モーションの範囲における操縦翼面3の例えば中心角度位置などの中間の角度位置にあってよい。トランスミッション機構80が、操縦翼面3のそのフェイルセーフ位置からの変位方向に応じて、弁アーム22およびメータリングスプール26を反対である第1および第2の方向に変位させてそのヌル位置から離すように構成され得る。結果として、示される実施形態では、操縦翼面3が図10に示されるように第1の方向に変位させられてそのフェイルセーフ位置から離れる場合、トランスミッション機構80が弁アーム22およびメータリングスプール26を第1の方向に変位させ、操縦翼面3が図12に示されるように反対の第2の方向に変位させられてそのフェイルセーフ位置から離れる場合、トランスミッション機構80が弁アーム22およびメータリングスプール26を反対の第2の方向に変位させる。トランスミッション機構80が、そのフェイルセーフ位置から離れる操縦翼面3の変位に対しての所望の運動学的応答を提供する任意の構成を有することができ、その結果、弁アーム22およびメータリングスプール26がヌル位置から離れる対応する意図される変位を受けることになる。理解され得るように、トランスミッション機構80が、操縦翼面3の位置とメータリングスプール26との間で所望の対応関係を達成するために、多様な種類の歯車、歯車列、連結装置、連結システム、および他のトランスミッション構成要素を有することができる。図10~12に示されるトランスミッション機構80が、ヒンジ軸11から離間される枢動点82Aのところで操縦翼面3に枢動可能に結合される第1の端部と、クレビス24に枢動可能に結合される第2の端部82Bとを有する操縦翼面連結装置82を有する。図10~12に示されるトランスミッション機構80の構成は単に説明を目的としており、トランスミッション構成を、示される構成のみに限定することを意図されない。
【0034】
[0045]上述の図に描かれる実施形態では、メータリングスプール26が両回転方向においてそのヌル回転位置から離れるように弁軸25を中心として回転可能である。しかし、フェイルセーフ弁20が、同様の機能を達成するために、メータリングスプール26を、両方の軸方向においてヌル軸方向位置から離れるように弁軸に沿って軸方向に移動可能とするようにも設計され得ることが当業者には理解されよう。この種類の修正のために、トランスミッション機構80および弁アーム22が、メータリングスプールの軸方向位置をシフトすることを目的として、ヒンジ軸11を中心とした操縦翼面3の角度モーションを、メータリングスプール26に伝達される線形モーションへと変換するように、再構成され得る。例えば、トランスミッション機構が、角度モーションを線形モーションへと変換するためのベルクランク連結機械を有することができる。
【0035】
[0046]本開示の態様で、フィルセーフ弁20または液圧回転モータ12Rに対して構造的修正を一切行うのを必要とすることなく、単にトランスミッション機構80を再構成することにより、作動する可動部材(例えば、操縦翼面3)のフェイルセーフ位置が多様な用途に適合するように調整され得る。可動部材のフェイルセーフ位置が中心の位置である必要はなく、その移動範囲の可動限界のところまたはその近くにあってもよい。この特徴により、従来技術の既存のHITWのデザインに優る重要な利点が得られる。
【0036】
[0047]認識され得るように、本開示は、液圧線形アクチュエータの代わりに液圧回転アクチュエータによって動力供給されるGRAを採用する液圧駆動式飛行制御作動システムなどの、液圧回転アクチュエータを採用する作動システムにおける、「HITW」によるフェイルセーフ機能を提供するものである。本開示の解決策は、作動する部材の多種多様な移動範囲およびフェイルセーフ位置に合うように容易に適合され得る。
【0037】
[0048]本開示は例示の実施形態を説明するが、本詳細な説明は、本発明の範囲を、記載される特定の形態に限定することを意図されない。本発明は、当業者には容易に明らかとなり得るような、説明される実施形態の代替形態、修正形態、および均等物を包含することを意図される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12