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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】液体急結剤、吹付けコンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/14 20060101AFI20230113BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230113BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20230113BHJP
   C04B 22/12 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C04B22/14 A
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B22/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022003391
(22)【出願日】2022-01-12
【審査請求日】2022-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】水野 博貴
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 昌浩
【審査官】中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-047048(JP,A)
【文献】特許第6989719(JP,B1)
【文献】特開2021-143090(JP,A)
【文献】特開2018-030731(JP,A)
【文献】特開2005-060201(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112608065(CN,A)
【文献】特開2022-76297(JP,A)
【文献】特開2022-72727(JP,A)
【文献】特開2021-178751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムがAl換算で8.0~20.0質量%、硫黄がSO換算で10.0~30.0質量%含有され、フッ化物イオン濃度が1.0~500ppmである液体急結剤。
【請求項2】
下記の条件で測定される27Al-NMRによって得られるスペクトルにおいて、化学シフト-1.0ppm以上3.0ppm以下の範囲にピークを有する請求項1に記載の液体急結剤。
(条件)
観測核:27Al
試料管回転数:12Hz
測定温度:25℃
パルス幅:5μsec(45°パルス)
待ち時間:5秒
外部標準:塩化アルミニウム水溶液
【請求項3】
前記化学シフト-1.0ppm以上3.0ppm以下の範囲のピークの半値幅が10.0ppm以下である請求項2に記載の液体急結剤。
【請求項4】
pHが7以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の液体急結剤。
【請求項5】
全アルカリ量RO(Rはアルカリ金属)が1.0質量%以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の液体急結剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の液体急結剤とカルシウムアルミネートを主成分とした粉体急結剤とを併用してなる吹付けコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体急結剤、吹付けコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をコンクリートに混合した急結性コンクリートの吹付け工法が用いられている。この工法は、掘削工事現場に設置した計量プラントで材料を計量混合して吹付けコンクリートを調製し、ポンプで圧送、途中で合流管の他方から圧送した急結剤と混合し、地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。
【0003】
吹付け工法に使用される急結剤は大きく分類すると、カルシウムアルミネートやアルカリ金属アルミン酸塩等を主成分とする粉体急結剤と、アルカリ金属アルミン酸塩や硫酸アルミニウムなどを主成分とする液体急結剤の2種類が挙げられる。
【0004】
近年では、トンネル建設現場等に従事する作業者の健康確保の観点から、吹付け時の粉塵量が少なく、アルカリ薬傷の懸念がないアルミニウム塩を主成分とする酸性の液体急結剤の使用が望まれている。
【0005】
一方で、液体急結剤は、粉体急結剤と比較して急結性が低い課題があった。そこで、急結性改善策として、例えば特許文献1に示されるような硫酸イオン濃度を高めることによって強度を改善させる対策がなされている。しかし、高濃度の液体急結剤は、長期間保存すると、液中に析出物が生成したり、液がゲル化したり、懸濁粒子が沈降したりする場合があった。硫酸アルミニウムの水に対する溶解度は20℃で27%であり、共存する溶質や液温によって変動するが、溶解度以上の硫酸アルミニウムを含有する液体急結剤は、貯蔵安定性が悪く、製造直後の性状を保持することが難しい課題があった。
【0006】
また、強度改善策として、例えば特許文献2のようなフッ化アルミニウム、アルミニウムのフッ化水素酸を成分とするアルミニウムの酸性又は塩基性溶液、ケイ酸リチウム、アルミン酸リチウムよりなる液体急結剤が提案されている。あるいは特許文献3のような硫酸アルミニウムとフッ化水素酸との反応で得られるフッ化物含有水溶性アルミニウム塩、水酸化アルミニウム、および水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム等からなる液体急結剤の開発を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-193388号公報
【文献】特開2001-130935号公報
【文献】特開2005-89276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような技術はフッ素化合物の添加により強度特性は改善される一方、昨今建設現場における環境保全の観点からフッ素の溶出を抑制するような対策が必要になってきており、前述したフッ化物イオンを含有する化合物を液体急結剤に添加すると、硬化体からのフッ素溶出の懸念が生じる課題があった。
【0009】
以上より、本発明は、優れた急結性及び貯蔵安定性を有するとともに、フッ素溶出を抑制する液体急結剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記のような課題を踏まえて鋭意検討を行った結果、所定量のアルミニウム、硫黄及びフッ素を有する液体急結剤が、上記の課題を解決できることを見出だし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0011】
[1] アルミニウムがAl換算で5.0~20.0質量%、硫黄がSO換算で10.0~30.0質量%含有され、フッ化物イオン濃度が1.0~500ppmである液体急結剤。
[2] 下記の条件で測定される27Al-NMRによって得られるスペクトルにおいて、化学シフト-1.0ppm以上3.0ppm以下の範囲にピークを有する[1]に記載の液体急結剤。
(条件)
観測核:27Al
試料管回転数:12Hz
測定温度:25℃
パルス幅:5μsec(45°パルス)
待ち時間:5秒
外部標準:塩化アルミニウム水溶液
[3] 前記化学シフト-1.0ppm以上3.0ppm以下の範囲のピークの半値幅が10.0ppm以下である[1]又は[2]に記載の液体急結剤。
[4] pHが7以下である[1]~[3]のいずれかに記載の液体急結剤。
[5] 全アルカリ量RO(Rはアルカリ金属)が1.0質量%以下である[1]~[4]のいずれかに記載の液体急結剤。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の液体急結剤とカルシウムアルミネートを主成分とした粉体急結剤とを併用してなる吹付けコンクリート。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた急結性及び貯蔵安定性を有するとともに、フッ素溶出を抑制する液体急結剤を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)を詳細に説明するが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書における「%」は特に規定しない限り質量基準とする。
【0014】
[1.液体急結剤]
本実施形態に係る液体急結剤は、アルミニウムがAl換算で5.0~20.0%、硫黄がSO換算で10.0~30.0%含有され、フッ化物イオン濃度が1.0~500ppmである。
【0015】
液体急結剤中のアルミニウムは、強度発現性及び貯蔵安定性の観点から、液体急結剤の質量を100%とすると、Al換算で5.0~20.0%であり、6.0~20.0%が好ましく、8.0~15.0%がさらに好ましい。
【0016】
液体急結剤部中の硫黄は、強度発現性及び貯蔵安定性の観点から、液体急結剤の質量を100%とすると、SO換算で10.0~30.0%であり、15.0~29.0%が好ましく、15.0~20.5%がさらに好ましい。
【0017】
液体急結剤中のフッ化物イオン濃度は、硬化体からの溶出低減の観点から、1.0~500ppmとし、1.0~450ppmが好ましく、1.0~350ppmがさらに好ましい。
【0018】
液体急結剤の27Al-NMRによって得られるスペクトルにおいて、化学シフト-1.0ppm以上3.0ppm以下の範囲にピークを有するものが好ましい。また、当該ピークの半値幅は、例えば、10.0ppm以下が好ましく、9.0ppm以下がより好ましく、8.0ppm以下がさらに好ましい。これにより、急結剤の貯蔵安定性を向上できる。なお、半値幅は、例えば、0.1ppm以上でもよい。
【0019】
ここで、液体急結剤の27Al-NMR測定は、市販の測定装置、例えば、日本電子製の超伝導核磁気共鳴装置(ECX-400)を用い、下記の条件で行うことができる。
(条件)
観測核:27Al
試料管回転数:12Hz
測定温度:25℃
パルス幅:5μsec(45°パルス)
待ち時間:5秒
外部標準:塩化アルミニウム水溶液
【0020】
液体急結剤のpHは、7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。pHが7以下であることで、環境負荷低減効果および人体への悪影響を抑制させることができる。また、pHは2以上であることが好ましい。なお、液体急結剤のpHは、pHメーターを用いて測定することができる。
【0021】
液体急結剤における全アルカリ量RO(Rはアルカリ金属)は、作業者の安全性の観点から、1.0%以下が好ましく、0.8%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。また、0%以上であってもよい。なお、液体急結剤中の全アルカリ量ROは、原子吸光法により測定することができる。
【0022】
液体急結剤は、例えば、硫酸アルミニウム、各種ミョウバン、水酸化アルミニウム、と硫酸等の原料とを混合し、高熱で反応させることによって得ることが出来る。加熱温度としては、70~100℃が好ましく、85~100℃がより好ましく、85~95℃がさらに好ましい。反応時間としては、30~150分が好ましく、60~150分がより好ましく、90~120分がさらに好ましい。
【0023】
フッ化物イオンの供給源としては硫酸アルミニウム等の原料にも微量ながら含有されているが、天然又は合成の氷晶石、フッ化ナトリウム、及びフッ化アルミニウム等の原料を液体中で意図的に混合することで強度の改善効果も認められる。良好な生産性の観点から、原料は硫酸と、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム又は各種ミョウバンと、天然又は合成の氷晶石を用いることが好ましい。氷晶石としては、不溶性析出物の発生を抑制する観点から、含有されるチオライト及びエルパソライトの量が氷晶石中5質量%以下のものが好ましい。
フッ素を含有することによって急結剤添加による急激な水和による偽凝結を緩和することができ、良好な施工性が得られる。一方、過剰量のフッ素を含有することによって水和に進行が妨げられ、急結性および強度発現性の低下や、硬化体からのフッ素の溶出も懸念される。なお、調製した液体急結剤中のフッ化物イオンの濃度は、市販の分析装置、例えば、Thermo Scientific製のイオンクロマトグラフィー(ICS2100)によって測定することができる。分析に際しては、予めフッ化物イオンが検量線内となるように希釈することで、測定を実施することができる。
【0024】
本実施形態の液体急結剤の調製方法としては、例えば、水酸化アルミニウム、硫酸及び氷晶石を、アルミニウムがAl換算で5.0~20.0%、硫黄がSO換算で10.0~30.0%含有、フッ化物イオン濃度が1.0~500ppmとなるように混合し、85~95℃で90~120分加熱することで調製することができる。
ここで、アルミニウム分の原料と硫黄分の原料の比率において、アルミニウム分の原料の比率を大きくすると、化学シフトが所望の範囲に入りやすく、硫黄分の原料の比率を大きくすると、半値幅が小さくなりやすい。
【0025】
液体急結剤は、既述の成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で種々の添加剤を含有させることができるが、取扱い性の観点から、アルミン酸ソーダは含有しないことが好ましい。
【0026】
[2.吹付けコンクリート]
本実施形態に係る吹付けコンクリートは、本発明の液体急結剤とカルシウムアルミネートを主成分とした粉体急結剤を併用することが好ましい。
【0027】
吹付けコンクリートは、実際的にはセメントを用いるが、当該吹付けコンクリートに用いるセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)を挙げることができる。
【0028】
吹付けコンクリートは、実際的には骨材を用いるが、当該骨材は特に限定されるものではなく、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は、吹付けできれば特に限定されるものではない。細骨材としては、川砂、山砂、海砂、石灰砂、及び珪砂などが使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利などが使用可能であり、砕砂、砕石も使用可能である。
【0029】
[3.粉体急結剤]
本実施形態に係る粉体急結剤はカルシウムアルミネートを主成分とした粉体急結剤であることが好ましい。カルシウムアルミネートを主成分として含有することで、良好な急結性と強度発現性を高めることができる。
ここで「カルシウムアルミネートを主成分として含有する」とは、粉体急結剤中の急結剤成分中、カルシウムアルミネートの含有量(質量基準)が最も多いことをいう。
【0030】
本実施形態の粉体急結剤におけるカルシウムアルミネートの含有量は、粉体急結剤中、30%以上であり、30~80%であることが好ましく、45~60%であることがより好ましい。30%以上であると良好な凝結性状が得られやすくなる。なお、80%以下であると良好な長期強度発現性が得られやすくなる。
【0031】
カルシウムアルミネート(以下、CAともいう)は、CaOとAlを主成分とし、水和活性を有する化合物の総称であり、CaO及び/又はAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいは、CaOとAlを主成分とするものにこれらが少量固溶した物質であり、CA類は結晶質、非晶質のいずれであってもよい。
【0032】
結晶質の具体例としては、CaOをC、AlをA、RO(NaO、KO、LiO)をRとすると、CAやこれにアルカリ金属が固溶したC14RA、CA、C12やC11・CaF、CA・Fe、及びC・CaSO等が挙げられるが、急結性が良好であることから、非晶質のカルシウムアルミネートが好ましい。また、非晶質のカルシウムアルミネートの場合、ガラス化率は80%以上であることが好ましい。
【0033】
カルシウムアルミネートのCaO/Alモル比は特に限定はされないが、極初期及び長期の強度発現性を考慮すると、当該モル比は2.0~3.0が好ましく、2.2~2.8がより好ましい。モル比が2.0以上であると、極初期の凝結性状を良好にすることができ、3.0以下であると、良好な長期強度発現性が得られやすくなる。
【0034】
カルシウムアルミネートのブレーン比表面積は、4000~8000cm/gであることが好ましく、5000~7000cm/gであることがより好ましい。4000~8000cm/gであることで、初期強度発現性が得られやすく、吹付け時のモルタル及び/又はコンクリートの取扱い性を良好にすることができる。
なお、ブレーン比表面積とは、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に記載された比表面積試験に基づいて測定されたものである。
【実施例
【0035】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
[実施例1~9]
<液体急結剤の調製>
硫黄分、アルミニウム分及びフッ素分を表1に示す量となるよう各種原料を調整、混合し、90℃で2時間加熱することで液体急結剤を作製した。また、フッ化物イオンは水酸化アルミニウム及び硫酸にも微量ながら含有されているが、その最大値は100ppm程度であり、それ以上のフッ化物イオンを得るために氷晶石を意図的に混合した。
【0037】
<使用材料>
Al源:水酸化アルミニウム、工業用品用
SO源:硫酸、工業用品用
フッ化物イオン源:氷晶石、工業用品用、フッ素分として52~54%含有
溶媒:純水
【0038】
27Al-NMR測定>
調製した液体急結剤は日本電子製の超伝導核磁気共鳴装置(ECX-400)を用いて下記の条件で行い、ピークの化学シフト及び半値幅を測定した。結果を下記表1に示す。
【0039】
27Al-NMR測定条件>
観測核:27Al
試料管回転数:12Hz
測定温度:25℃
パルス幅:5μsec(45°パルス)
待ち時間:5秒
外部標準:塩化アルミニウム水溶液
【0040】
<凝結試験・圧縮強度試験>
普通ポルトランドセメント(pH14、工業品)100質量部と、調製した液体急結剤10部と、水(上水道水)40質量部とを混合し、試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを用いて、凝結試験・圧縮強度試験を行った。試験は、JIS R5201「セメントの物理試験方法」に準拠し、始発時間及び終結時間ならびに各材齢における圧縮強度を計測した。結果を下記表2に示す。
【0041】
<硬化体のフッ化物イオン溶出試験>
圧縮強度試験の試験体作製方法と同様の方法で試験体を作製し、「コンクリートライブラリー11」に準拠し、溶出試験を実施した。作製した試験体は純水に浸漬し、24時間後に試験体を取り出し、浸漬水をイオンクロマトグラフィーにてフッ化物イオンの定量分析を実施した。結果を下記表2に示す。
【0042】
<貯蔵試験>
液体急結剤の貯蔵安定性を評価するために貯蔵試験を実施した。貯蔵性が低下すると特に低温環境において液体急結剤中に析出物が生成する。液体急結剤を10℃環境1か月間静置し、その析出物をろ紙にて抽出し、液体急結剤100g当たりの析出物量を算出した。結果を下記表2に示す。
【0043】
[比較例1~6]
実施例1~9と同様にして、液体急結剤を作製し、各試験により評価した。結果を表1及び2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
<吹付けコンクリートの調製>
セメント400kg、水200kg、細骨材1100kg、粗骨材(新潟県姫川水系6号砕石、密度2.67g/cm)716kgのコンクリートを調製した。このコンクリート中のセメント100質量部に対して、液体急結剤及び粉体急結剤を表3に示す配合で混合し、吹付けコンクリートを調製した。液体急結剤としては、実施例1~5の液体急結剤を使用し、粉体急結剤としては、表3に記載のカルシウムアルミネート粉末を使用した。
また、得られた吹付けコンクリートを用いて、圧縮強度試験を行った。試験結果を表3に示す。
初期強度:JSCE-G561に準じて型枠に吹付けて、材齢10分、3時間、1日時点での引き抜き強度より、圧縮強度に換算し、初期強度を測定した
長期強度:JSCE-F561に準じて型枠に吹付け、JIS A1107に準じて材齢28日時点でコアを採取して、圧縮強度を測定した。
【0047】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の液体急結剤は、例えば、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルや、法面等において露出した地山面へ吹付けるセメントコンクリート等に対して好適に使用できる。
【要約】
【課題】優れた急結性及び貯蔵安定性を有するとともに、フッ素溶出を抑制する液体急結剤を提供することを目的とする。
【解決手段】アルミニウムがAl換算で5.0~20.0質量%、硫黄がSO換算で10.0~30.0質量%含有され、フッ化物イオン濃度が1.0~500ppmである液体急結剤である。
【選択図】なし