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  • 特許-ホルタ心電計 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】ホルタ心電計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/332 20210101AFI20230116BHJP
   A61B 5/257 20210101ALI20230116BHJP
   A61B 5/276 20210101ALI20230116BHJP
【FI】
A61B5/332
A61B5/257
A61B5/276
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019238732
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021106673
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】593091452
【氏名又は名称】ケンツメディコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 智雄
(72)【発明者】
【氏名】荻原 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 英司
(72)【発明者】
【氏名】荻原 由紀彦
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-223184(JP,A)
【文献】特開2004-167006(JP,A)
【文献】特開2004-121360(JP,A)
【文献】特表2018-515293(JP,A)
【文献】特開2000-126145(JP,A)
【文献】特表2011-518578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の電気信号を取得する電極と、
前記電極で取得した前記電気信号に基づいて、前記電極の位置が適切であるか否かを報知する報知部と、
前記電極で取得した前記電気信号に基づいて、前記電極の位置が適切であるか否かの判定処理を実行する判定部と、
前記電極で取得した前記電気信号を経時的に記憶させる指示を入力可能な入力部と、
前記入力部に前記指示が入力されると、前記電極で取得した前記電気信号を経時的に記憶するメモリと、
前記報知部を収容する本体と、
前記本体の生体側の面に設けられる接着シートと、を備え
前記接着シートは、
前記電極の表面に配置され、前記電極の表面を生体の表面に固定する第1接着部と、
前記第1接着部の表面を覆う第1剥離テープと、
前記本体を生体の表面に固定する第2接着部と、
前記第2接着部の表面を覆う第2剥離テープと、を備えており、
前記第1接着部の表面が前記第1剥離テープで覆われていると、前記第1接着部は生体の表面に接着不能であり、
前記第2接着部の表面が前記第2剥離テープで覆われていると、前記第2接着部は生体の表面に接着不能であり、
前記第1剥離テープと前記第2剥離テープは、独立して前記第1接着部と前記第2接着部から分離可能となっており、
前記判定部は、前記入力部に前記指示が入力されるまで前記判定処理を繰り返す、ホルタ心電計。
【請求項2】
前記報知部は、前記電極で取得した前記電気信号の大きさを表示する表示器である、請求項1に記載のホルタ心電計。
【請求項3】
前記報知部は、
前記電気信号の大きさが、第1の閾値以上のときに第1の態様で報知し、
前記電気信号の大きさが、前記第1の閾値より小さいときに前記第1の態様とは異なる第2の態様で報知する、請求項1又は2に記載のホルタ心電計。
【請求項4】
前記報知部は、
前記電気信号の大きさが、前記第1の閾値より小さい第2の閾値以下のときに前記第2の態様で報知し、
前記電気信号の大きさが、前記第1の閾値より小さく、かつ、前記第2の閾値より大きいときに第3の態様で報知する、請求項3に記載のホルタ心電計。
【請求項5】
前記報知部は、前記電極で取得した前記電気信号の大きさを視覚的に認識可能な態様で表示するように構成されており、
前記報知部は、前記判定部で判定された結果を、判定結果に応じて異なる色で表示する、請求項1~4のいずれか一項に記載のホルタ心電計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、ホルタ心電計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、心電図波形を測定するために使用されるホルタ心電計が開示されている。このようなホルタ心電計は、電極を備えており、測定時には、電極を生体の表面の適切な位置に取付ける必要がある。適切な位置に電極を取り付けることにより、電極が生体の電気信号を取得し、この電気信号から心電図波形が得られる。電極を取り付ける際には、ホルタ心電計の表示部に表示される心電図波形、又は、外部機器に送信された心電図波形を確認しながら、電極の位置を移動させる。心電図波形が十分に取得できる電極の位置を見つけたら、その位置に電極を固定し、測定を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-088643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のホルタ心電計では、心電図波形を確認しながら電極を取り付けるための適切な位置を決定している。このため、心電図波形を読み取ることができる知識を有している者でなければ、電極を生体の適切な位置に取付けることができなかった。
【0005】
本明細書は、ホルタ心電計を被検者に取付ける際に、容易に適切な位置に取付けることができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示するホルタ心電計は、生体の電気信号を取得する電極と、電極で取得した電気信号に基づいて、電極の位置が適切であるか否かを報知する報知部と、を備える。
【0007】
上記のホルタ心電計では、報知部により電極の位置が適切であるか否かが報知されるため、電極を取り付ける際に心電図波形を読み取る必要がない。このため、心電図波形を読み取る知識を有していなくても、容易に適切な位置に電極を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係るホルタ心電計の概略構成を示す正面図。
図2】実施例に係るホルタ心電計の概略構成を示す背面図。
図3】実施例に係るホルタ心電計の制御系を示すブロック図。
図4】実施例に係るホルタ心電計による電気信号の測定を開始する処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
(特徴1)本明細書に開示するホルタ心電計では、報知部は、電極で取得した電気信号の大きさを表示する表示器であってもよい。このような構成によると、電極の適切な位置を視覚的に容易に把握し易くすることができる。
【0011】
(特徴2)本明細書に開示するホルタ心電計では、報知部は、電気信号の大きさが第1の閾値以上のときに第1の態様で報知し、電気信号の大きさが第1の閾値より小さいときに第1の態様とは異なる第2の態様で報知してもよい。このような構成によると、検査者は、電極が適切な位置にあるのか否かを容易に把握することができる。
【0012】
(特徴3)本明細書に開示するホルタ心電計では、報知部は、電気信号の大きさが第1の閾値より小さい第2の閾値以下のときに第2の態様で報知し、電気信号の大きさが、第1の閾値より小さく、かつ、第2の閾値より大きいときに第3の態様で報知してもよい。このような構成によると、報知部が報知する態様の種類が増えるため、電極を取り付ける際に状況に応じて柔軟に対応することできるようになる。例えば、第1の閾値以上の大きさとなる電極の位置を見つけることは難しいが、第2の閾値以上となる位置に電極を取り付ければ測定できることがある。このような場合に、柔軟に対応することができる。また、電極の位置を変化させる方向と電気信号の大きさが変化する方向との関係を判断できるため、電極を取り付ける適切な位置を見つけ易くなる。
【0013】
(特徴4)本明細書に開示するホルタ心電計は、報知部を収容する本体と、本体の生体側の面に設けられる接着シートと、をさらに備えていてもよい。接着シートは、電極の表面に配置され、前記電極の表面を生体の表面に固定する第1接着部と、第1接着部の表面を覆う第1剥離テープと、本体を生体の表面に固定する第2接着部と、第2接着部の表面を覆う第2剥離テープと、を備えていてもよい。第1接着部の表面が第1剥離テープで覆われていると、第1接着部は生体の表面に接着不能であってもよく、第2接着部の表面が第2剥離テープで覆われていると、第1接着部は生体の表面に接着不能であってもよい。第1剥離テープと第2剥離テープは、独立して第1接着部と第2接着部から分離可能となっていてもよい。このような構成によると、電極を固定するための第1接着部と、本体を固定するための第2の接着部とを別個に生体に接着させることができるため、第1の接着部のみを生体に固定した状態で電極を取り付ける位置を探すことができる。このため、電極を取り付ける際に何度も生体に貼り直した場合に、第1接着部の接着力が低下することはあっても、第2接着部の接着力は低下しない。このため、電極を取り付ける適切な位置を見つけることが困難であった場合(例えば、第1接着部を何度も生体に貼り直した場合)にも、ホルタ心電計の本体を確実に生体の表面に固定することができる。また、第1接着部を利用して電極を取り付ける位置を調整できるため、第1接着部が貼り直される生体の表面の面積が少なくなる。このため、接着部が貼り直されることによる生体表面の不快感(例えば、かゆみ等)を低減することができる。
【実施例
【0014】
以下、実施例に係るホルタ心電計10について説明する。ホルタ心電計10は、被検者の心臓付近の体表面に装着され、被検者の心電図波形を生成するための電気信号を測定する。以下、ホルタ心電計10において、ホルタ心電計10を被検者の体表面に装着したときに、体表面に対向する面を裏面と称し、その反対側の面(すなわち、装着時に露出する面)を表面と称することがある。また、ホルタ心電計10は、医師等の医療従事者や被検者自身により装着することができる。以下では、ホルタ心電計10を被検者の体表面に装着する者(医療従事者や被検者自身等)を装着者と称することがある。
【0015】
図1及び図2に示すように、ホルタ心電計10は、本体12と、電極30と、接続部32と、粘着シート40と、剥離テープ42を備えている。
【0016】
まず、本体12の構成について説明する。図1図3に示すように、本体12は、表示器14と、スイッチ16と、ブザー18と、増幅器20と、加速度センサ22と、メモリ24と、コントローラ26を備えている。
【0017】
表示器14は、本体12の表面側に配置されている。表示器14は、電極30から取得した電気信号の大きさに応じて、取得した電気信号の大きさを視覚的に認識可能な態様で表示するように構成されている。具体的には、表示器14は、直線状に配置された複数(本実施例では、8個)のLEDランプ14a~14hを備えており、複数のLEDランプ14a~14hは、取得した電気信号の大きさに応じて点灯するように構成されている。すなわち、表示器14は、LEDランプ14a~14hによって電気信号の大きさを表示するレベルメータである。
【0018】
LEDランプ14aは、ホルタ心電計10を体表面に装着したときに最も下方に位置するように配置されている。LEDランプ14bは、LEDランプ14aより上方に位置するように配置されており、LEDランプ14c~14hも順に上方に位置するように並べて配置されている。取得した電気信号の大きさが大きくなるにつれ、点灯するLEDランプ14a~14hの数が増加する。具体的には、取得した電気信号が大きくなるにつれ、LEDランプ14a、14b、14c・・・14hの順に、点灯するLEDランプ14a~14hの数が増加する。なお、複数のLEDランプ14a~14hの配置位置は、特に限定されず、装着者が視認可能な位置に適宜設定することができる。また、取得した電気信号の大きさが最も小さいときに、最も上方に位置するLEDランプが点灯してもよい。また、複数のLEDランプは、左右に並べて配置してもよい。
【0019】
また、8個のLEDランプ14a~14hのうち、取得した電気信号が最も小さいときに点灯するLEDランプ14aは、取得した電気信号の大きさが所定の閾値(以下、閾値Aともいう)以下のときに点灯する。例えば、本実施例では、LEDランプ14aは、取得した電気信号の大きさが0.5mV以下のときに点灯する。また、本実施例では、LEDランプ14aは、赤色で点灯する。取得する電気信号の大きさが0.5mV以下の場合、取得した電子信号から生成される心電図波形も小さくなり、適切な大きさを有する心電図波形を生成できない。この場合、LEDランプ14aのみを赤色で点灯することにより、取得する電気信号の大きさが小さすぎることを装着者に報知する。これにより、装着者は、ホルタ心電計10を装着する位置が適切ではないことを視覚的に把握することができる。
【0020】
また、8個のLEDランプ14a~14hのうち、LEDランプ14aとは離間して配置され、取得した電気信号が大きいときに点灯する3個のLEDランプ14f~14hは、取得した電気信号の大きさが閾値Aより大きい所定の閾値(以下、閾値Bともいう)以上のときに点灯する。例えば、本実施例では、LEDランプ14fは、取得した電気信号の大きさが1.0mV以上のときに点灯し、LEDランプ14gは、取得した電気信号の大きさが1.1mV以上のときに点灯し、LEDランプ14hは、取得した電気信号の大きさが1.2mV以上のときに点灯する。また、LEDランプ14f~14hは、赤色のLEDランプ14aとは異なる色で点灯し、本実施例では、LEDランプ14f~14hは、青色で点灯する。取得する電気信号の大きさが1.0mV以上の場合、取得した電気信号から適切な大きさを有する心電図波形を生成できる。この場合、LEDランプ14f~14hのうちの少なくとも1つを青色で点灯することにより、取得する電気信号の大きさが十分に大きいことを装着者に報知する。これにより、装着者は、ホルタ心電計10を装着する位置が適切であることを視覚的に把握することができる。
【0021】
さらに、8個のLEDランプ14a~14hのうち、LEDランプ14aとLEDランプ14f~14hとの間に配置される4個のLEDランプ14b~14eは、取得した電気信号の大きさが閾値Aより大きいときに点灯する。例えば、本実施例では、LEDランプ14bは、取得した電気信号の大きさが0.6mV以上のときに点灯し、LEDランプ14cは、取得した電気信号の大きさが0.7mV以上のときに点灯し、LEDランプ14dは、取得した電気信号の大きさが0.8mV以上のときに点灯し,LEDランプ14eは、取得した電気信号の大きさが0.9mV以上のときに点灯する。LEDランプ14fが取得した電気信号の大きさが閾値B以上のときに点灯することから、取得した電気信号の大きさが閾値Aより大きく、かつ、閾値Bより小さいときは、LEDランプ14aに加えてLEDランプ14b~14eのいずれかのLEDランプが点灯する。したがって、LEDランプ14b~14eは、取得した電気信号の大きさが閾値B以上のときも点灯するが、LEDランプ14f~14hが点灯しない状態においては、取得した電気信号の大きさが閾値Aより大きく、かつ、閾値Bより小さいときに点灯するということができる。例えば、本実施例では、LEDランプ14b~14eは、取得した電気信号の大きさが0.5mVより大きく、かつ、1.0mVより小さいときに点灯するということができる。
【0022】
また、LEDランプ14b~14eは、赤色のLEDランプ14a及び青色のLEDランプ14f~14hとは異なる色で点灯し、本実施例では、LEDランプ14b~14eは、緑色で点灯する。取得する電気信号の大きさが0.5mVより大きく、かつ、1.0mVより小さい場合、取得される電気信号は、十分に大きいとは言えないが、取得した電気信号から解析可能な程度の大きさを有する心電図波形を生成できる。この場合、LEDランプ14b~14eのうちの少なくとも1つを緑色で点灯することにより、取得する電気信号の大きさが、最適ではないものの比較的大きいことを装着者に報知する。これにより、装着者は、ホルタ心電計10を装着する位置が最適ではないものの、不適切ではないことを視覚的に把握することができる。このため、緑色のLEDランプ14b~14eが点灯しているが、青色のLEDランプ14f~14hが点灯していないときに、装着者は、可能であれば、青色のLEDランプ14f~14hが点灯するまでホルタ心電計10の位置を移動させる。この際、取得する電気信号が大きくなるほど、点灯するLEDランプ14b~14eの数が多くなるため、装着者は、ホルタ心電計10をどちらの方向に移動させればよいかを判断することができる。一方、何度電極30の位置を移動させても青色のLEDランプ14f~14hが点灯する位置が見つけられない場合には、赤色のLEDランプ14a及び緑色のLEDランプ14b~14eの少なくとも1つが点灯する位置に、ホルタ心電計10を固定してもよい。
【0023】
本実施例では、表示器14のLEDランプ14a~14hの色及び点灯している数によって、装着者に電極30の配置位置が適切であるか否かを報知する。別言すると、本実施例の表示器14は、心電図波形のように時間軸を用いて電気信号を表示するものではなく、取得される電気信号がどのくらいの大きさであるのか、また、電極30の位置が適切であるか否かを表示するように構成されている。例えば、装着者が心電図波形から電極の位置が適切であるか否かを判断する場合、装着者は、心電図波形を読み取る知識を有している必要がある。本実施例のホルタ心電計10では、時間軸を含む心電図波形等を用いることなく電極30の位置が適切であるか否かを表示するため、装着者が心電図波形等を読み取る知識を有していなくても、被検者の体表面の適切な位置にホルタ心電計10を装着することができる。
【0024】
また、本実施例では、ホルタ心電計10を被検者の体表面に装着する際に心電図波形を確認する必要がない。このため、ホルタ心電計10の本体12に心電図波形を表示したり、ホルタ心電計10を被検者の体表面に装着する際に、取得した電気信号をホルタ心電計10から外部機器に送信して、外部機器に心電図波形を表示したりする必要がない。このように、測定の際に心電図波形を表示する構成を必要としないため、ホルタ心電計10を製造する際のコストを低減することができる。
【0025】
スイッチ16は、本体12の表面に配置されている。スイッチ16を第1の態様で押下する(例えば、所定時間(例えば、5秒間)長押しする)ことにより、ホルタ心電計10が起動される。また、ホルタ心電計10が起動した状態でスイッチ16を第2の態様で押下する(例えば、所定時間(例えば、2秒間)長押しする)ことにより、心電波形の測定を開始し、取得する生体の電気信号をメモリ24に経時的に記憶させる。また、心電波形の測定を開始した後にスイッチを第3の態様で押下する(例えば、1回押下する)ことにより、メモリ24には生体の電気信号と共にフラグが記憶される。例えば、被検者に異常(例えば、胸痛やめまい等)が生じたときに、被検者自身が第3の態様でスイッチ24を押下する。これにより、被検者に何らかの異常が生じたことをフラグにより記録できる。メモリ24から他のPC(図示省略)に測定した電気信号を出力する際には、電気信号と共にフラグも出力される。他のPCは、測定開始からの測定時間に基づき測定開始時の標準時刻(標準時に基づく時刻)を算出することができる。具体的には、他のPCは、測定開始のタイミングと電気信号を取得したタイミングとの間の時間(すなわち、測定時間)を算出する。次いで、他のPCは、他のPCが有する標準時刻を基準として、電気信号を入力した標準時刻から測定時間を逆算する。これにより、他のPCは、測定開始時の標準時刻を算出できる。これにより、ホルタ心電計10が標準時刻に関する情報を備えていなくても、他のPCは、測定開始時の標準時刻を特定することができる。同様にして、測定開始のタイミングからフラグが付けられたタイミングまでの時間に基づき、他のPCは、フラグが付けられた標準時間を特定することができる。
【0026】
ブザー18は、本体12に配置されており、ホルタ心電計10が操作されたことを装着者に報知する。例えば、ブザー18は、スイッチ16が押下されたときに、ホルタ心電計10の起動や測定開始等を装着者に報知する。また、ブザー18は、生体の電気信号の測定中にホルタ心電計10に不具合が生じたときに被検者にその旨を報知してもよい。
【0027】
増幅器20は、電極30とコントローラ26の間に配置され、これらに接続されている。増幅器20は、電極30から入力される生体の電気信号を増幅し、増幅した電気信号をコントローラ26に出力する。
【0028】
加速度センサ22は、XYZ軸の3方向の加速度を測定するセンサである。加速度センサ22により、ホルタ心電計10の姿勢が測定される。すなわち、加速度センサ22は、ホルタ心電計10を装着した被検者の姿勢を測定する。これにより、被検者の状態が立位であるのか臥位であるのか等を判定することができる。加速度センサ22により、被検者が所定時間を超えて臥位であることが検出されたとき、表示器14のLEDランプ14a~14hの光量を小さくする。被検者が所定時間を超えて臥位である場合、被検者は睡眠中である可能性が高いため、LEDランプ14a~14hの光量を小さくすることによって、被検者の睡眠を妨げることを抑制できる。一方、加速度センサ22により、被検者が所定時間を超えて立位であることが検出されたとき、表示器14のLEDランプ14a~14hの光量を大きくする。被検者が所定時間を超えて立位である場合、被検者が活動中である可能性が高いため、LEDランプ14a~14hの光量を大きくすることによって、LEDランプ14a~14hを視認し易くできる。
【0029】
コントローラ26は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。コントローラ26は、表示器14、スイッチ16及びブザー18に接続されており、表示器14、スイッチ16及びブザー18を制御している。また、コントローラ26は、増幅器20に接続されており、電極30が取得し、増幅器20で増幅された電気信号を取得する。コントローラ26で取得した電気信号は、メモリ24に記憶される。また、コントローラ26は、加速度センサ22に接続されており、加速度センサ22から取得した情報からホルタ心電計10の姿勢(すなわち、被検者の姿勢)を判定し、それに応じて表示器14(詳細には、表示器14のLEDランプ14a~14hの光量)を制御する。
【0030】
電極30は、銀等の導電性材質からなる電極板を有している。電極板を被検者の体表面に接触(詳細には、粘着シート40を介して接触)させることによって、生体の電気信号を取得することができる。電極30は、N電極である電極30aと、-電極である電極30bと、+電極である電極30cによって構成されている。電極30a~30bは、電極板がホルタ心電計10の裏面側に位置するように配置されている。詳細には、剥離テープ42を剥離した状態で、電極板が粘着シート40を介して被検者の体表面に接触するように配置されている。電極30aは、本体12の略中央に配置されており、電極30bは、本体12の下端(詳細には、ホルタ心電計10を被検者に装着したときの下端)に配置されている。電極30cは、本体12から離間しており、電極30a、30bより下方に配置されている。本体12と電極30cは、接続部32によって接続されている。
【0031】
粘着シート40は、ホルタ心電計10の裏面の略全体を覆うように配置されている。詳細には、粘着シート40は、ホルタ心電計10を裏面側から見たときに、ホルタ心電計10全体より僅かに内側に位置するように配置されている。粘着シート40により、ホルタ心電計10を被検者の体表面に固定することができる。なお、本実施例では、粘着シート40は、ホルタ心電計10の裏面の略全体を覆う寸法を有しているが、このような構成に限定されない。粘着シートは、ホルタ心電計を被検者の体表面に固定できればよく、ホルタ心電計の裏面の略全体より小さい寸法を有していてもよい。粘着シート40は、導電性材料で形成されている。このため、電極30は、粘着シート40を介して生体の電気信号を取得する。
【0032】
剥離テープ42は、粘着シート40と略同一の形状を有しており、粘着シート40全体を覆うように配置されている。剥離テープ42は、電極30とその周辺に設けられる第1部分44と、第1部分44を除く位置に設けられる第2部分46を備えている。本実施例では、ホルタ心電計10は、3つの電極30a~30cを備えているため、第1部分44も、3つの電極30a~30cのそれぞれ対応する位置に3つ設けられている。第1部分44を剥離すると、電極30a~30cとそれらの周辺の粘着シート40のみが露出する。第2部分46を剥離することなく、第1部分44のみを剥離することにより、被検者の体表面にホルタ心電計10全体を固定することなく、電極30a~30cのみを固定することができる。すなわち、ホルタ心電計10を生体の表面に固定する前に、電極30a~30cのみを仮留めできる。これにより、被検者の体表面にホルタ心電計10全体を固定する前に、電極30から生体の電気信号を取得できる。なお、本実施例では、第1部分44は、電極30とその周辺に設けられているが、このような構成に限定されない。第1部分は、電極30を被検者の体表面に固定できる構成であればよく、電極30の一部のみに設けられていてもよいし、電極30と一致する位置に設けられていてもよい。なお、第1部分44は、「第1剥離テープ」の一例であり、第1部分44と対応する位置の粘着シート40は、「第1接着部」の一例である。
【0033】
第2部分46は、剥離テープ42全体のうちの比較的大きい面積を占めている。このため、第2部分46を剥離することにより粘着シート40の比較的大きい面積が露出し、ホルタ心電計10を被検者の体表面に固定することができる。なお、第2部分46は、「第2剥離テープ」の一例であり、第2部分46と対応する位置の粘着シート40は、「第2接着部」の一例である。
【0034】
電極30の適切な配置位置は、被検者毎に異なるため、装着者は、電極30の位置を何度も移動して電極30の適切な配置位置を探すことがある。剥離テープ42全体を剥離した後、電極30の配置位置を移動させると、粘着シート40を何度も貼ったり剥がしたりすることになり、粘着シート40全体の粘着力が低下することがある。剥離テープ42は、第1部分44と第2部分46を別個に剥離できるように構成されているため、電極30の適切な配置位置を探す際には、電極30に設けられる第1部分44のみを剥離し、第2部分46を剥離しない状態で電極30を固定(仮止め)できる。このため、装着者が電極30の配置位置を決定するまでの間、ホルタ心電計10の裏面の比較的大きい面積を占める第2部分46に対応する粘着シート40の粘着力は低下しない。したがって、電極30の位置を何度も移動させた場合であっても、ホルタ心電計10を確実に被検者の体表面に固定することができる。また、電極30の位置を調整するために粘着シート40の貼り直しを複数回行ったとしても、粘着シート40が貼られる表面積が小さくなるため、被検者の不快感を低減することができる。
【0035】
次に、本実施例のホルタ心電計10による電気信号の測定を開始する処理について説明する。ホルタ心電計10による測定を開始する際には、まず、電極30から十分な大きさの電気信号が取得されるように、ホルタ心電計10を生体の表面の適切な位置に装着する必要がある。ホルタ心電計10の適切な装着位置は、被検者毎に異なる。以下に、ホルタ心電計10を起動した後、ホルタ心電計10を適切な装着位置に装着して測定を開始するまでの処理について説明する。
【0036】
ホルタ心電計10の起動は、装着者がスイッチ16を第1の態様で押下する(例えば、長押しする)ことによって実行される。ホルタ心電計10が起動されると、図4に示すように、まず、コントローラ26は、電極30で取得された電気信号が増幅器20を介して入力されたか否かを判定する(S12)。電極30が被検者の体表面に配置されると、電極30は生体の電気信号を取得する。コントローラ26に電気信号が入力されていない場合(ステップS12でNO)、電極30が生体の表面に配置されていないと判断される。このため、ステップS12に戻り、電気信号が入力されるまで(すなわち、電極30が被検者の体表面に配置されるまで)待機する。
【0037】
ここで、装着者が電極30を被検者の体表面に配置する手順について説明する。装着者は、ホルタ心電計10の起動後、剥離テープ42の第1部分44(具体的には、電極30a~30cに対応する位置に配置される3箇所の第1部分44)を剥がす。このとき、第2部分46は剥離せず、粘着シート40に接着させた状態を維持する。すると、3つの電極30a~30cとその周辺の粘着シート40のみが露出する。次いで、装着者は、被検者の体表面にホルタ心電計10の裏面を押し付ける。これにより、3つ電極30a~30cが、粘着シート40を介して被検者の体表面に接触する。この状態では、剥離テープ42の大部分を占める第2部分46が剥離されていないため、ホルタ心電計10全体を被検者の体表面にしっかりと固定することができない。このため、装着者は、ホルタ心電計10を体表面に押さえつけ、ホルタ心電計10を支えてもよい。このような状態になると、電極30は生体の電気信号を取得し、電極30で取得した電気信号は、増幅器20を介して増幅されてコントローラ26に入力される。
【0038】
コントローラ26に電気信号が入力されると(ステップS12でYES)、コントローラ26は、取得した電気信号を解析する(S14)。そして、コントローラ26は、解析結果に基づいて取得した電気信号の大きさを検出し、電気信号の大きさに応じて表示器14のLEDランプ14a~14hを点灯させる(S16)。装着者は、LEDランプ14a~14hを確認することにより、電極30の配置位置が適切であるか否かを視覚的に把握することができる。
【0039】
例えば、赤色のLEDランプ14a及び緑色のLEDランプ14b~14eが点灯すると共に、青色のLEDランプ14f~14hのうちの少なくとも1つが点灯している場合、その位置に配置される電極30から十分な大きさの電子信号を取得できる。すなわち、電極30は適切な位置に配置されている。この場合には、装着者は、このときの電極30の位置を電極30の配置位置と決定し、ホルタ心電計10を固定する。具体的には、剥離テープ42の第2部分46を剥離し、その位置にホルタ心電計10を固定する。その後、装着者は、測定を開始させるため、スイッチ16を第2の態様で押下する(例えば、一回押下する)。
【0040】
コントローラ26は、ステップS16のLEDランプ14a~14hの点灯後、スイッチ16が押下されたか否かを判定する(S18)。スイッチ16が押下されると(ステップS18でYES)、コントローラ26は、取得した電気信号をメモリ24に経時的に記憶させる(S20)。これにより、ホルタ心電計10による電気信号の測定を開始する処理を終了する。この後、ホルタ心電計10は、スイッチ16から測定終了の指示が入力されるまで、測定を続行する。
【0041】
一方、赤色のLEDランプ14aのみが点灯し、緑色のLEDランプ14b~14e及び青色のLEDランプ14f~14hが点灯していない場合、その位置に配置される電極30から十分な大きさの電子信号を取得できない。すなわち、電極30は不適切な位置に配置されている。この場合には、装着者は、電極30の位置を変更する。上述したように、コントローラ26は、ステップS16のLEDランプ14a~14hの点灯後、スイッチ16が押下されたか否かを判定する処理(ステップS18の処理)を実行する。装着者が電極30の位置を変更するとスイッチ16が押下されないため、コントローラ26は、スイッチ16が押下されたという情報を取得しない(ステップS18でNO)。この場合、ステップS12に戻り、ステップS12~ステップS18の処理を繰り返す。すなわち、コントローラ26は、装着者により配置位置が変更された電極30から電気信号を取得し、取得した電気信号の大きさに応じて表示器14のLEDランプ14a~14hを再点灯させる。これにより、装着者は、変更した位置における電極30の電気信号の大きさを、LEDランプ14a~14hから把握することができる。装着者は、LEDランプ14a~14hを確認しながら、少なくとも1つの青色のLEDランプ14f~14hが点灯するまで、電極30配置位置を変更する。これにより、装着者は、電極30を配置するための適切な位置を見つけることができる。なお、装着者は、何度電極30の配置位置を変更しても、青色のLEDランプ14f~14hが点灯する電極30の配置位置が見つけられない場合には、少なくとも1つの緑色のLEDランプ14b~14eが点灯した位置を、電極30の配置位置として決定してもよい。
【0042】
装着者は、電極30の配置位置を決定したら、剥離テープ42の第2部分46を剥離し、ホルタ心電計10を固定する。その後、装着者は、測定を開始させるため、スイッチ16を第2の態様で押下する(例えば、一回押下する)。これにより、コントローラ26は、スイッチ16が押下されたという情報を取得し(ステップS18でYES)、電気信号の測定を開始する(S20)。
【0043】
なお、本実施例の表示器14は、LEDランプ14a~14hを備えていたが、このような構成に限定されない。表示器により電極30の配置位置が適切であるか否かを報知できればよく、表示器の表示態様は特に限定されない。例えば、表示器は、電極30の配置位置が適切であるか否かを、文字等を表示することによって報知してもよい。具体的には、コントローラ26は、取得した電気信号に基づいて電極の位置が測定に際して適切であるか否かを判定し、その判定結果に基づいて電極の位置が適切であるか否かの情報を文字等により表示器に表示させてもよい。また、本実施例のホルタ心電計10は、表示器14により電極30の配置位置が適切であるか否かを報知していたが、このような構成に限定されない。例えば、ホルタ心電計は、表示器に代わり、音声等によって電極30の配置位置が適切であるか否かを報知するスピーカ等の報知部を備えていてもよい。具体的には、コントローラ26は、取得した電気信号に基づいて電極の位置が測定に際して適切であるか否かを判定し、その判定結果に基づいて電極の位置が適切であるか否かの情報を音声等により報知してもよい。
【0044】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
10:ホルタ心電計
12:本体
14:表示器
16:スイッチ
26:コントローラ
30:電極
40:粘着シート
42:剥離テープ
44:第1部分
46:第2部分
図1
図2
図3
図4