(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20230116BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20230116BHJP
B60R 16/027 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R21/203
B60R16/027 Q
(21)【出願番号】P 2018144839
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594183299
【氏名又は名称】株式会社松尾製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野々山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 修
(72)【発明者】
【氏名】陳内 僚介
(72)【発明者】
【氏名】金武 智宏
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和臣
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-201949(JP,A)
【文献】特開2015-160438(JP,A)
【文献】特開平08-332960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/28
B60R 21/16 - 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ装置が、ホーン装置を作動させるためのホーンスイッチ機構を介して、前記エアバッグ装置の取り付けのための貫通孔を有する金属製の芯金に取り付けられてなり、
前記ホーンスイッチ機構は、先端部分が前記貫通孔に挿通された状態で同先端部分に係合する係合部材を介して前記芯金に係止されるとともに前記ホーン装置を作動させるための電気回路の一部をなす金属製のピン部材と、前記貫通孔の内面と前記ピン部材の外面とを接触させない態様で前記内面および前記外面の間に介設される合成樹脂製の樹脂キャップと、を備えてなるステアリングホイール
であって、
前記電気回路の一部をなす態様で前記ピン部材と前記芯金とを常時接続する接続経路を複数備
え、
前記接続経路は、
導電性を有する前記係合部材が前記芯金の外面および前記ピン部材の外面に接触する態様で設けられてなる第1接続経路と、
導電性を有する接続部材が前記ピン部材の外面および前記貫通孔の内面に接触する態様で設けられてなる第2接続経路と、を有し、
前記接続部材は、前記ピン部材が挿通されるベース部、および、前記ベース部から前記樹脂キャップの内面に沿って延びて前記ピン部材の外面に接触する内側接触部、および、前記ベース部から前記樹脂キャップの外面に沿って延びて前記貫通孔の内面に接触する外側接触部、を備えることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記貫通孔の内面と前記樹脂キャップの外面とが接触する部分における前記内面および前記外面は、共に、前記ピン部材の先端側に向かうほど先細のテーパ形状をなしている請求項
1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
エアバッグ装置が、ホーン装置を作動させるためのホーンスイッチ機構を介して、前記エアバッグ装置の取り付けのための貫通孔を有する金属製の芯金に取り付けられてなり、
前記ホーンスイッチ機構は、先端部分が前記貫通孔に挿通された状態で同先端部分に係合する係合部材を介して前記芯金に係止されるとともに前記ホーン装置を作動させるための電気回路の一部をなす金属製のピン部材と、前記貫通孔の内面と前記ピン部材の外面とを接触させない態様で前記内面および前記外面の間に介設される合成樹脂製の樹脂キャップと、を備えてなるステアリングホイール
であって、
前記ピン部材が挿通されるベース部と、前記ベース部から前記樹脂キャップの内面に沿って延びて前記ピン部材の外面に接触する内側接触部と、
前記ベース部から前記樹脂キャップの外面に沿って延びて前記貫通孔の内面に接触する外側接触部
と、を備えるとともに導電性を有する接続部材を備えてなることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項4】
前記貫通孔の内面と前記樹脂キャップの外面とが接触する部分における前記内面および前記外面は、共に、前記ピン部材の先端側に向かうほど先細のテーパ形状をなしている請求項
3に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記ホーンスイッチ機構は、前記ピン部材に挿通されるとともに前記樹脂キャップにおける前記エアバッグ装置側の部分を前記芯金側に付勢する圧縮スプリングを備えており、
前記ベース部は、環状をなして、前記ピン部材が挿通された状態で前記圧縮スプリングと前記樹脂キャップとの間に挟持されている請求項
1~4のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置が取り付けられたステアリングホイールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置をステアリングホイールに取り付けることが多用されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のエアバッグ装置は、エアバッグ本体やインフレーターが固定されたベースプレートを備えている。そして、このベースプレートが、ホーンスイッチ機構を介して、ステアリングホイールの芯金に取り付けられている。
【0003】
ホーンスイッチ機構は金属製のピン部材を有しており、同ピン部材の先端側の部分には、外形が部分的に細くなった部分(首部)が設けられている。一方、ステアリングホイールの芯金におけるピン部材に対応する位置には貫通孔が形成されており、この貫通孔の縁部には金属線材からなるクリップが取り付けられている。
【0004】
そして、エアバッグ装置をステアリングホイールに取り付ける際には、ピン部材の先端が芯金の貫通孔に挿通されるとともに、同ピン部材の首部にクリップが嵌められる。これにより、ステアリングホイールの芯金にホーンスイッチ機構ともどもエアバッグ装置が係止される。
【0005】
この状態で、ホーン装置を作動させるべく、エアバッグ装置(詳しくは、意匠部品であるパット部)が芯金側に押し込まれると、ホーン装置に接続されているベースプレートと車両アースに接続されているステアリングホイールの芯金とがホーンスイッチ機構を介して接続されて、ホーン装置が作動する。一方、エアバッグ装置が芯金側に押し込まれていないときには、それらベースプレートおよび芯金は接続されず、ホーン装置は作動しない。
【0006】
特許文献1に記載のステアリングホイールでは、ホーンスイッチ機構のピン部材における先端側の部分に筒状の樹脂キャップが取り付けられている。この樹脂キャップは、ピン部材の外面と芯金の貫通孔の内面とを接触させない態様でそれらピン部材および芯金の間に介設されている。これにより、ホーンスイッチ機構が芯金に係合する部分において樹脂製の樹脂キャップと金属製の芯金とが接触するようになるため、共に金属製のピン部材と芯金とが接触するものと比較して、それらの接触面において生じる音が小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、エアバッグ装置をステアリングホイールに取り付ける際には、ピン部材の首部にクリップが嵌められる。このときピン部材の首部の内面とクリップの外面とが擦られることによって、それら面の接触状態にばらつきが生じるおそれがある。こうしたピン部材の首部とクリップとの係合部分(接触部分)は、ホーン装置の作動時においては同ホーン装置に電力を供給する電気回路の一部を構成する。そのため、ピン部材の首部とクリップとの接触状態のばらつきは、ホーンスイッチ機構と芯金との間の導通性能の向上を阻む一因になる。
【0009】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホーンスイッチ機構と芯金との間の導通性能の向上を図ることのできるステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためのステアリングホイールは、エアバッグ装置が、ホーン装置を作動させるためのホーンスイッチ機構を介して、前記エアバッグ装置の取り付けのための貫通孔を有する金属製の芯金に取り付けられてなり、前記ホーンスイッチ機構は、先端部分が前記貫通孔に挿通された状態で同先端部分に係合する係合部材を介して前記芯金に係止されるとともに前記ホーン装置を作動させるための電気回路の一部をなす金属製のピン部材と、前記貫通孔の内面と前記ピン部材の外面とを接触させない態様で前記内面および前記外面の間に介設される合成樹脂製の樹脂キャップと、を備えてなるステアリングホイールにおいて、前記電気回路の一部をなす態様で前記ピン部材と前記芯金とを常時接続する接続経路を複数備えている。
【0011】
上記構成によれば、エアバッグ装置の取り付けのためにホーンスイッチ機構のピン部材とステアリングホイールの芯金とが係合する構造であるとはいえ、それらピン部材および芯金を、ホーン装置を作動させるための電気回路の一部をなす複数の接続経路のそれぞれによって導通させることができる。これにより、ピン部材と芯金とを接続する経路の信頼性を高くすることができるため、ホーンスイッチ機構と芯金との間の導通性能の向上を図ることができる。
【0012】
上記ステアリングホイールにおいて、前記接続経路としては、導電性を有する前記係合部材が前記芯金の外面および前記ピン部材の外面に接触する態様で設けられてなる第1接続経路と、前記樹脂キャップの内面に沿って延びて前記ピン部材の外面に接触する内側接触部、および、前記樹脂キャップの外面に沿って延びて前記貫通孔の内面に接触する外側接触部、および、前記内側接触部および前記外側接触部を一体に接続するベース部、を備えるとともに導電性を有する接続部材が設けられてなる第2接続経路と、を採用することができる。
【0013】
上記ステアリングホイールにおいて、前記貫通孔の内面と前記樹脂キャップの外面とが接触する部分における前記内面および前記外面は、共に、前記ピン部材の先端側に向かうほど先細のテーパ形状をなしていることが好ましい。
【0014】
上記ステアリングホイールを有する車両の振動や運転者によるホーンスイッチ機構の操作などに起因して、ピン部材および芯金の係合部分に、ピン部材の軸方向において同ピン部材と芯金とを相対移動させる力が作用する場合がある。
【0015】
上記構成によれば、ステアリングホイールを、係合部材と樹脂キャップとの間に芯金が挟み込まれた構造にすることができる。そのため、前記力としてピン部材を芯金の貫通孔から引き抜く力が作用するときには、第2接続経路の一部をなす接続部材と芯金との接触部分(第2接触部分)の面圧が低くなるものの、第1接続経路の一部をなす係合部材と芯金との接触部分(第1接触部分)の面圧が高くなる。このときには、面圧の高い第1接続経路の第1接触部分を通じて、ホーンスイッチ機構と芯金との間での適正な導通を得ることができる。一方、ピン部材を芯金の貫通孔に押し込む力が作用するときには、第1接続経路の一部をなす第1接触部分の面圧が低くなるものの、第2接続経路の一部をなす第2接触部分の面圧が高くなる。このときには、面圧の高い第2接続経路の第2接触部分を通じて、ホーンスイッチ機構と芯金との間での適正な導通を得ることができる。
【0016】
このように上記構成によれば、軸方向にピン部材と芯金とを相対移動させるような力が作用する場合であっても、第1接続経路の一部をなす第1接触部分の面圧、および第2接続経路の一部をなす第2接触部分の面圧の一方が高い状態のままで維持されるようになる。これにより、第1接続経路および第2接続経路のいずれかの導通性能を高いままで維持することができるため、ホーンスイッチ機構と芯金との間の導通性能を高いままで維持することができる。
【0017】
前記課題を解決するためのステアリングホイールは、エアバッグ装置が、ホーン装置を作動させるためのホーンスイッチ機構を介して、前記エアバッグ装置の取り付けのための貫通孔を有する金属製の芯金に取り付けられてなり、前記ホーンスイッチ機構は、先端部分が前記貫通孔に挿通された状態で同先端部分に係合する係合部材を介して前記芯金に係止されるとともに前記ホーン装置を作動させるための電気回路の一部をなす金属製のピン部材と、前記貫通孔の内面と前記ピン部材の外面とを接触させない態様で前記内面および前記外面の間に介設される合成樹脂製の樹脂キャップと、を備えてなるステアリングホイールにおいて、前記樹脂キャップの内面に沿って延びて前記ピン部材の外面に接触する内側接触部と、前記樹脂キャップの外面に沿って延びて前記貫通孔の内面に接触する外側接触部と、前記内側接触部および前記外側接触部を一体に接続するベース部と、を備えるとともに導電性を有する接続部材を備えてなる。
【0018】
上記構成では、エアバッグ装置の取り付けのためにピン部材の先端部分に係合部材を係合させる際に、同ピン部材と係合部材との係合部分(詳しくは、接触面)の接触状態にばらつきを生じさせるおそれがある。
【0019】
上記構成によれば、ホーン装置を作動させるための電気回路の一部をなす態様でピン部材および芯金を常時接続する経路として、係合部材を含まない経路、すなわち接続部材からなる経路を設定することができる。そのため、ピン部材と係合部材との係合部分(すなわち接触状態にばらつきが生じるおそれがある部分)を含まない経路を、それらピン部材および芯金を常時接続する経路として設定することができる。したがって、ホーンスイッチ機構と芯金との間の導通性能の向上を図ることができる。
【0020】
上記ステアリングホイールにおいて、前記貫通孔の内面と前記樹脂キャップの外面とが接触する部分における前記内面および前記外面は、共に、前記ピン部材の先端側に向かうほど先細のテーパ形状をなしていることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、樹脂キャップの外面を貫通孔の内面に押し付けるようにして同樹脂キャップを設けることにより、それらの接触面圧を高くすることができる。そのため、そうした接触面圧が高くなる部分に、ピン部材および芯金を導通させる経路の一部をなす接続部材の外側接触部を配置することができる。これにより、外側接触部と貫通孔の内面との接触面圧を容易に高くすることができるため、ホーンスイッチ機構と芯金との間の導通性能の向上を図ることができる。
【0022】
上記ステアリングホイールにおいて、前記ホーンスイッチ機構は、前記ピン部材に挿通されるとともに前記樹脂キャップにおける前記エアバッグ装置側の部分を前記芯金側に付勢する圧縮スプリングを備えており、前記ベース部は、環状をなして、前記ピン部材が挿通された状態で前記圧縮スプリングと前記樹脂キャップとの間に挟持されていることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、圧縮スプリングと樹脂キャップとの間に接続部材のベース部を挟持させることにより、同接続部材をホーンスイッチ機構にしっかり支持させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ホーンスイッチ機構と芯金との間の導通性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態のステアリングホイールの(a)は正面図であり、(b)は側面図。
【
図7】樹脂キャップの(a)は平面図であり、(b)は(a)の7b矢視図であり、(c)は(a)の7c矢視図。
【
図8】接続部材の(a)は平面図であり、(b)は(a)の8b矢視図であり、(c)は(a)の8c矢視図。
【
図9】(a)および(b)は仮固定状態の樹脂キャップおよび接続部材の斜視図。
【
図10】ホーンスイッチ機構およびその周辺についての内側接触部の配設部分における断面図。
【
図11】ホーンスイッチ機構およびその周辺についての外側接触部の配設部分における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、ステアリングホイールの一実施形態について説明する。
図1(a)、
図1(b)に示すように、車両の運転席よりも前方(
図1(b)の右側)には、操舵軸であるステアリングシャフト11が配置されている。ステアリングシャフト11は、運転席側(
図1(b)の左側)ほど高い位置になるように傾斜した状態で配設されている。ステアリングシャフト11の運転席側の端部にはステアリングホイール12が一体回転可能に取り付けられている。
【0027】
なお、以下では、ステアリングシャフト11の回転軸Lに沿う方向をステアリングホイール12の「前後方向」とし、回転軸Lに直交する面に沿う方向のうち、ステアリングホイール12が起立する方向を「上下方向」とする。したがって、ステアリングホイール12の前後方向および上下方向は、車両の前後方向(水平方向)および上下方向(鉛直方向)に対して若干傾いている。
【0028】
ステアリングホイール12は、車両の進行方向の変更に際して運転者によって回転操作される部分であるホイール本体13と、同ホイール本体13に一体に取り付けられる付属機器14とからなる。
【0029】
図2に示すように、ホイール本体13は金属材料(アルミニウム合金)によって形成された芯金15を有している。この芯金15がステアリングシャフト11に一体回転可能に固定されている。芯金15には車両アース(詳しくは、車載バッテリの負極)が接続されている。
【0030】
芯金15は、前後方向に貫通する断面円形状の貫通孔16を有している。貫通孔16は、芯金15を運転席側から見た状態(
図2に示す状態)で回転軸Lの左側の位置と右側の位置と下側の位置とに1つずつ(合計3つ)設けられている。各貫通孔16は、後方側(運転席側)から前方側に向かうに連れて内径が徐々に小さくなるテーパ形状になっている。
【0031】
芯金15における各貫通孔16に対応する位置にはそれぞれクリップ17が取り付けられている。クリップ17は、弾性を有する金属(鉄合金)線によって略U字形状に形成されている。各クリップ17は、回転軸L方向(
図2の紙面と直交する方向)への移動が規制された状態で芯金15に係合している。また、クリップ17の一方の端部(固定部17A)は芯金15の前面に係止されており、クリップ17の他方の端部(係合部17B)は芯金15の前面に沿う方向に相対移動する態様で弾性変形させることが可能になっている。さらにクリップ17の係合部17Bの一部は、芯金15の貫通孔16の開口部分の前方側を通過する態様で延びている。
【0032】
上記付属機器14(
図1)は、ホーン装置を作動させるためのホーンスイッチ機構やエアバッグ装置を内蔵している。この付属機器14は、芯金15(
図2)に取り付けられたクリップ17と上記ホーンスイッチ機構との係合を通じて、ホイール本体13に取り付けられる。これらクリップ17およびホーンスイッチ機構の係合態様については後に詳述する。
【0033】
以下、付属機器14の構造について詳しく説明する。
図3および
図4に示すように、付属機器14は、後方側(運転席側)から前方側に向けて並ぶように、パット部20、エアバッグ本体30、ベースプレート40、およびインフレーター50を有している。
【0034】
パット部20は合成樹脂材料によって形成されており、外面が意匠面をなす外皮部21と、同外皮部21の前面から略四角筒状で突出する収容壁部22とを有している。パット部20の外皮部21によって付属機器14の運転席側の外面が覆われている。また、外皮部21および収容壁部22によって囲まれた部分にエアバッグ本体30が収容される。収容壁部22の前端には、複数(本実施形態では、9つ)のかしめ爪23が突設されている。各かしめ爪23は、ベースプレート40へのパット部20の取り付けに用いられる。
【0035】
エアバッグ本体30は、折り畳まれた状態のエアバッグが収容されたバッグ部31(
図4)と、同バッグ部31の前方に配置されるとともに上記バッグ部31が固定された略四角板状のリテーナ32とを有している。リテーナ32の中央にはエアバッグを膨張させるためのガスが通過する貫通孔(ガス孔33)が形成されている。またリテーナ32の四隅には、前方に向けて突出する4本の取り付けねじ34が一体に設けられている。
【0036】
ベースプレート40は金属材料(鉄合金)によって略矩形の板状に形成されている。ベースプレート40には、ホーン装置(詳しくは、車載バッテリの正極および警音器)が接続されている。ベースプレート40の縁部分には、複数(本実施形態では、9つ)のかしめ孔41が設けられている。これらかしめ孔41は、パット部20の各かしめ爪23に対応する位置に形成されている。そして、ベースプレート40のかしめ孔41にパット部20のかしめ爪23が挿通されるとともに、各かしめ爪23の先端に熱かしめが施される。この熱かしめによって、パット部20がベースプレート40に固定される。
【0037】
ベースプレート40の中央には、上記ガスが通過する貫通孔(ガス孔43)が形成されている。また、ベースプレート40の四隅には挿通孔44が形成されている。これら挿通孔44にはバッグ部31の取り付けねじ34が挿通されている。さらに、ベースプレート40は、ホーンスイッチ機構60の取り付けに用いる貫通孔(取付孔45)を有している。この取付孔45は、ベースプレート40を運転席側(後方側)から見た状態で上記ガス孔43の右側の位置と左側の位置と下側の位置とに1つずつ(合計3つ)設けられている。そして、この取付孔45に挿通された状態でホーンスイッチ機構60はベースプレート40に係止される。
【0038】
インフレーター50は、略円柱形状をなすとともに同円柱形状の中心と回転軸Lとが一致するように配置される機能部51を有している。この機能部51は、制御装置(図示略)からの信号入力によってバッグ部31内のエアバッグを膨張させるためのガスを発生する。またインフレーター50は、機能部51の外周面から突出する4つのフランジ52を有している。これらフランジ52は回転軸L周りにおいて等角度間隔で設けられている。各フランジ52は、回転軸L方向に延びる挿通孔53を有している。これら挿通孔53には、バッグ部31の取り付けねじ34が挿通されている。
【0039】
上記付属機器14の組み立ては例えば以下のように行われる。
先ずは、バッグ部31の各取り付けねじ34がベースプレート40の挿通孔44およびインフレーター50の挿通孔53に挿通される。そして、その状態で、各取り付けねじ34にナット54が螺合される。これにより、バッグ部31とインフレーター50との間にベースプレート40を挟み込んだ状態で、それらバッグ部31、インフレーター50、およびベースプレート40が一体に固定される。また、これに合わせて、3つのホーンスイッチ機構60がベースプレート40の取付孔45に挿入されて同ベースプレート40に取り付けられる。
【0040】
その後、パット部20内にバッグ部31が収容される態様で、一体に構成したバッグ部31、ベースプレート40およびインフレーター50がパット部20に嵌められるとともに、同パット部20の各かしめ爪23がベースプレート40の各かしめ孔41に挿入されて熱かしめされる。
【0041】
これにより、パット部20、バッグ部31、ベースプレート40、インフレーター50、およびホーンスイッチ機構60が一体の構造(
図3に示す構造)になる。
以下、ホーンスイッチ機構60の構造について詳しく説明する。
【0042】
図5および
図6に示すように、ホーンスイッチ機構60は、キャップ部材61、接点端子62、ピン部材63、ベース部材64、圧縮コイルスプリング65、接続部材66、および樹脂キャップ67を有している。
【0043】
キャップ部材61は有蓋円筒状をなしている。このキャップ部材61は絶縁材料である合成樹脂によって形成されている。
接点端子62は長尺状の金属(銅)板からなる。接点端子62は、キャップ部材61の内面に沿って延びる態様で同キャップ部材61の内部に配置される。接点端子62は、詳しくは、キャップ部材61の蓋部内面に沿って延びる上部62Aと、同上部62Aの両端から突出してキャップ部材61の周壁内面に沿って延びる一対の側部62Bと、それら側部62Bの端部から延びてキャップ部材61の外部に露出する露出部62Cとを有している。ホーンスイッチ機構60がベースプレート40の取付孔45に取り付けられた状態(
図3に示す状態)では、接点端子62の露出部62Cがベースプレート40の外面に押し付けられた状態で接触している。
【0044】
ピン部材63は金属材料(鉄合金)によって形成される。ピン部材63は略円柱状をなしている。ピン部材63の基端(
図6の上端)は、外径が部分的に拡大された形状のフランジ部63Aになっている。また、ピン部材63の先端部分は、先端に向かうに連れて先細のテーパ形状をなしている。さらに、ピン部材63における先端部分よりも基端側には、外径が部分的に縮径された形状の首部63Bが設けられている。
【0045】
ベース部材64は、絶縁材料である合成樹脂によって形成されている。ベース部材64は、基端側の部分(大径部64A)の外形が先端側の部分(小径部64B)の外形よりも大きい段付きの略筒状をなしている。ベース部材64には、基端側からピン部材63が挿入されている。ピン部材63はベース部材64に対して軸方向に相対移動可能になっている。
【0046】
本実施形態では、ベース部材64の大径部64Aの内径がピン部材63のフランジ部63Aの外径よりも大きくなっており、ベース部材64の小径部64Bの内径がピン部材63のフランジ部63Aの外径よりも小さくなっている。そして、ピン部材63のフランジ部63Aがベース部材64の大径部64A内に配置された状態であり、且つ同フランジ部63Aが大径部64Aと小径部64Bとの境界(段部64C)に突き当たった状態になっている。
【0047】
また、ベース部材64の大径部64Aには、その開口を塞ぐ態様で有蓋円筒状の前記キャップ部材61が嵌められる。そして、ベース部材64の大径部64Aにキャップ部材61が嵌められた状態では、キャップ部材61内の接点端子62とピン部材63のフランジ部63Aとが軸方向において間隔を置いた状態(非接触状態)になる。
【0048】
本実施形態では、これら接点端子62およびフランジ部63Aが、ホーン装置を作動させるための電気回路(以下、ホーン回路)の導通と非導通とを切り替える接点部に相当する。そして、本実施形態のホーンスイッチ機構60では、基本的に、キャップ部材61内の接点端子62とピン部材63のフランジ部63Aとが接触しない状態(接点部が非導通の状態)になっている。そして、運転者によってパット部20(
図4参照)が押されるなどしてキャップ部材61とピン部材63とが互いに近づく方向に相対移動すると、同ピン部材63のフランジ部63Aが接点端子62の上部62Aに突き当たって接触した状態(上記接点部が導通した状態)になる。
【0049】
図7(a)、
図7(b)、および
図7(c)に示すように、樹脂キャップ67は、環状をなすベース環状部70を有している。
また樹脂キャップ67は、ベース環状部70の内縁から前方側(
図7(b)の下方側)に突出する係止片71を有している。係止片71は、中心線C周りに等間隔で4つ設けられている。各係止片71は、ベース環状部70から中心線Cに沿って延びるアーム部72と、同アーム部72の先端において曲がって内方に向けて延びる爪部73とを有している。
【0050】
さらに樹脂キャップ67は、ベース環状部70の外縁から前方側に突出する4つの接触片74を有している。接触片74は、隣り合う係止片71に挟まれる位置にそれぞれ設けられている。本実施形態では、接触片74の外面が芯金15の貫通孔16の内面に接触する接触部分に相当し、同接触片74の外面が前方側に向かうほど先細のテーパ形状をなしている。接触片74の外面は、具体的には、先端に向かうほど中心線C側の位置になるように同中心線Cに対して傾斜して延びている。
【0051】
また樹脂キャップ67は、ベース環状部70の内縁から後方側(
図7(b)の上方側)に突出する2つのばね受け部75を有している。各ばね受け部75は、ベース環状部70の内縁の円弧状の部分が後方側に突出した断面円弧状をなしており、中心線C周りに等間隔で設けられている。ベース環状部70における後方側の部分は、上記ばね受け部75が設けられていない部分(切り欠き部76)を有している。
【0052】
樹脂キャップ67は、係止片71の爪部73がピン部材63の首部63Bに嵌る態様(
図5に示す態様)で、ピン部材63に挿通されている。樹脂キャップ67は、係止片71の爪部73とピン部材63の首部63Bとの係合を通じて、ピン部材63に引っ掛けられた状態、すなわちピン部材63から脱落しない状態になっている。樹脂キャップ67は、絶縁材料である合成樹脂によって形成されている。
【0053】
圧縮コイルスプリング65はピン部材63に挿設されている。また、圧縮コイルスプリング65の一端にはベース部材64の小径部64Bが挿入されており、他端には樹脂キャップ67のばね受け部75が挿入されている。圧縮コイルスプリング65は、圧縮状態で、樹脂キャップ67のベース環状部70とベース部材64の段部64Cとの間に介設されている。
【0054】
この圧縮コイルスプリング65の付勢力により、樹脂キャップ67がベース部材64から離間する方向に常時付勢されている。そのため、ピン部材63の首部63Bに樹脂キャップ67の係止片71の爪部73のみが挟まった状態(
図5に示す状態)では、同爪部73の先端がピン部材63の首部63Bの内面における先端側の部分に押し付けられた状態になる。また、樹脂キャップ67を介してピン部材63(首部63B)が前方側に押圧されるため、同ピン部材63がベース部材64に対して前方側(先端側)に常時付勢された状態になる。
【0055】
図8(a)、
図8(b)、および
図8(c)に示すように、接続部材66は導電性を有する材料(本実施形態では、銅)によって板状に形成されている。接続部材66は、円環状のベース部66Aを有している。このベース部66Aはピン部材63(
図6参照)が挿通されており、圧縮コイルスプリング65の先端と樹脂キャップ67のベース環状部70との間に挟持されている。
【0056】
また接続部材66はベース部66Aの外縁から前方側(
図8(c)の下方側)に突出する2つの外側接触部66Bを有している。これら外側接触部66Bは、中心線C周りにおいて等間隔で設けられている。各外側接触部66Bは、先端が基端よりも中心線Cに近い位置になる形状であって、基端から先端にかけて外方(中心線Cから離間する方向)に向けて凸状で湾曲した形状をなしている。各外側接触部66Bは、樹脂キャップ67(
図5参照)の接触片74の外面に沿って延びる態様で配置される。
【0057】
さらに接続部材66はベース部66Aの内縁から前方側に突出する2つの内側接触部66Cを有している。これら内側接触部66Cは、中心線C周りにおいて等間隔で設けられている。各内側接触部66Cは、先端に向かうほど中心線Cに近い位置になる形状であって、先端に向かうほど2つの内側接触部66Cの間隔が狭くなる形状をなしている。そして、各内側接触部66Cは、樹脂キャップ67(
図6参照)の切り欠き部76を通過する態様で同樹脂キャップ67の内面(ベース環状部70の内面)まで延びるとともに同内面に沿って延びている。
【0058】
本実施形態のホーンスイッチ機構60では、その組み立てに際して、
図9(a)および
図9(b)に示すように、樹脂キャップ67に接続部材66を仮固定することが可能になっている。
【0059】
この仮固定では先ず、樹脂キャップ67および接続部材66を後方側から見た状態における樹脂キャップ67の切り欠き部76の位置と接続部材66の内側接触部66Cの位置とを一致させるとともに、同状態における樹脂キャップ67の接触片74の位置と接続部材66の外側接触部66Bの位置とを一致させる。
【0060】
その後、一対の外側接触部66Bを互いの間隔を広げるように弾性変形させつつ、接続部材66のベース部66Aが樹脂キャップ67のベース環状部70に当接する位置まで、同接続部材66を樹脂キャップ67側に移動させる。
【0061】
これにより、接続部材66の内側接触部66Cが樹脂キャップ67の切り欠き部76を通過して同樹脂キャップ67の内面に沿って延びる状態になり、接続部材66の外側接触部66Bが弾性変形状態から復元して樹脂キャップ67の接触片74の外面に沿って延びる状態になる。
【0062】
このようにして接続部材66を樹脂キャップ67に仮止めすることにより、先端に向かうほど間隔が狭くなる一対の接触片74の外面を、同じく先端に向かうほど間隔が狭くなる一対の外側接触部66Bによって挟み込んだ状態になる。この状態では、樹脂キャップ67から脱落する方向への接続部材66の移動が、樹脂キャップ67の外面と接続部材66の外側接触部66Bの内面との接触を通じて規制されるようになる。このようにして、脱落し難い状態で接続部材66を樹脂キャップ67に支持させることができる。これにより、ホーンスイッチ機構60の組み立てを容易に行うことができる。
【0063】
ホーンスイッチ機構60の組み立ては、以下のように行われる。
図5および
図6に示すように、先ず、ピン部材63の先端をベース部材64の大径部64A側から挿入することによって同ピン部材63がベース部材64に挿通される。次に、キャップ部材61に接点端子62が取り付けられるとともに、同キャップ部材61がベース部材64の大径部64Aに嵌められる。
【0064】
その後、圧縮コイルスプリング65と仮止め状態の樹脂キャップ67および接続部材66とが、同圧縮コイルスプリング65、仮止め状態の樹脂キャップ67および接続部材66の順に、ピン部材63の先端から同ピン部材63に挿入される。
【0065】
このとき樹脂キャップ67の係止片71の爪部73がピン部材63の首部63Bに嵌まった状態になるため、樹脂キャップ67がピン部材63から脱落しない状態になる。しかも、圧縮コイルスプリング65が、圧縮状態で、ベース部材64と樹脂キャップ67との間に介設されるようになる。さらには、この圧縮コイルスプリング65の先端と樹脂キャップ67のベース環状部70との間に接続部材66のベース部66Aが挟持されるようになる。これにより、接続部材66をホーンスイッチ機構60にしっかり支持させることができる。
【0066】
図10に示すように、ホーンスイッチ機構60では、接続部材66の内側接触部66Cの内面とピン部材63の外面とが接触している。本実施形態では、こうした内側接触部66Cとピン部材63との接触部分が、ホーン装置を作動させるための電気回路(ホーン回路)の一部をなしている。そして、これら内側接触部66Cおよびピン部材63の接触部分を介して、ピン部材63と接続部材66とが導通するようになる。
【0067】
本実施形態では、各内側接触部66C(
図8参照)が、先端に向かうほど中心線Cに近い位置になる形状であって、先端に向かうほど2つの内側接触部66Cの間隔が狭くなる形状をなしている。そのため、一対の内側接触部66Cを押し開くように弾性変形させた状態で、それら内側接触部66Cの間にピン部材63が配置されるようになる。したがって、内側接触部66Cの内面とピン部材63の外面とが確実に接触(導通)するようになる。
【0068】
本実施形態では、付属機器14のホイール本体13への取り付けが、同付属機器14に一体のホーンスイッチ機構60をホイール本体13の芯金15(詳しくは、クリップ17)に係止するといったように行われる。
【0069】
この取り付けでは、具体的には、ホーンスイッチ機構60のピン部材63の先端を芯金15の貫通孔16内に押し込むようにして同ピン部材63が貫通孔16に挿入される。
ピン部材63の先端部分は先細のテーパ形状になっているため、ピン部材63の貫通孔16への挿入に伴って、クリップ17の係合部17B(
図2参照)がピン部材63の先端部分によって押し退けられる態様で弾性変形するようになる。そして、ピン部材63の先端部分は、芯金15の貫通孔16を通過して、同芯金15の前方側において突出(露出)した状態になる。
【0070】
一方、樹脂キャップ67は、ピン部材63を芯金15の貫通孔16に挿入する過程において同貫通孔16に嵌った状態(具体的には、樹脂キャップ67の接触片47の外面が芯金15の貫通孔16の内面に突き当たった状態)になるとともに、その状態で留まるようになる。
【0071】
そのため、それ以後においては、圧縮コイルスプリング65の付勢力に抗して樹脂キャップ67をベース部材64に近づく方向に相対移動させつつ、ピン部材63が貫通孔16に挿入されるようになる。この樹脂キャップ67の相対移動によって、ピン部材63の首部63Bの先端側の内側面と樹脂キャップ67の先端との間に間隙が生じるようになる。そして、上記間隙が大きくなると、クリップ17の係合部17Bが弾性変形状態から復元して同間隙に嵌るようになる。これにより、芯金15に係止されたクリップ17がピン部材63の首部63Bに係合した状態(
図10に示す状態)になる。
【0072】
本実施形態では、芯金15に係止された状態のクリップ17とピン部材63の首部63Bとの係合を通じて、ホーンスイッチ機構60の前後方向への移動が規制される。本実施形態では、3つのホーンスイッチ機構60の全てが、このようにして芯金15に係止される。これにより、付属機器14がホイール本体13に取り付けられている。
【0073】
なお、付属機器14の取り付けが完了して挿入方向(前方側)へのホーンスイッチ機構60の押圧が止められた状態では、圧縮コイルスプリング65の付勢力は、ピン部材63の首部63Bの先端側の内側面と樹脂キャップ67の先端との間隔を小さくするように作用する。このときピン部材63の首部63Bの内側面と樹脂キャップ67の先端との間にクリップ17の係合部17Bが挟持されるため、クリップ17とピン部材63の首部63Bとの係合が好適に維持されるようになる。
【0074】
図11に示すように、ホーンスイッチ機構60が芯金15に係止された状態では、接続部材66の外側接触部66Bの外面と芯金15の貫通孔16の内面とが接触している。本実施形態では、こうした外側接触部66Bと芯金15との接触部分が、前記ホーン回路の一部をなしている。そして、これら外側接触部66Bおよび芯金15の接触部分を介して、接続部材66と芯金15とが導通するようになる。
【0075】
本実施形態では、芯金15の貫通孔16の内面と樹脂キャップ67の接触片74の外面とが共に、前方側(
図11の下方側)に向かうほど先細のテーパ形状になっている。そして、ホイール本体13にホーンスイッチ機構60が取り付けられると、圧縮コイルスプリング65の付勢力によって樹脂キャップ67の接触片74の外面が芯金15の貫通孔16の内面に押し付けられた状態になる。これにより、芯金15の貫通孔16の内面と樹脂キャップ67の接触片74の外面との接触面圧が高くなっている。本実施形態では、そうした接触面圧が高くなる部分(詳しくは、接触片74の外面と貫通孔16の内面との間)に、接続部材66の外側接触部66Bが配設されている。そのため、外側接触部66Bと貫通孔16の内面との接触面圧を容易に高くすることができる。
【0076】
また外側接触部66Bは、その先端が基端よりも中心線Cに近い位置になる形状であって、基端から先端にかけて外方(中心線Cから離間する方向)に向けて凸状で湾曲した形状になっている。そのため、外側接触部66Bの延設方向における中間部分が芯金15の貫通孔16の内面に押し付けられた状態になる。これにより、上記中間部分が中心線C側に移動する態様で外側接触部66Bを弾性変形させた状態で、同中間部分を貫通孔16の内面に当接させることができる。この状態では、外側接触部66Bの弾性力を利用して同外側接触部66Bの中間部分が貫通孔16の内面に押し付けられるようになるため、外側接触部66Bの中間部分と貫通孔16の内面との接触圧力を高い状態で維持することができる。しかも、外側接触部66Bの先端側の部分が中心線C側に向かう方向に傾斜して延びているため、ホーンスイッチ機構60を芯金15の貫通孔16に挿入する際に、同外側接触部66Bの先端が芯金15の貫通孔16の内面や周縁に突き当たることが抑えられる。そのため、ホーンスイッチ機構60の芯金15への取り付けを容易に行うことができるようになる。
【0077】
図12に、前記ホーン回路を概略的に示す。
図12に示すように、ホーン回路では、ホーン装置18がベースプレート40に接続されており、このベースプレート40にホーンスイッチ機構60の接点部(接点端子62、ピン部材63)が接続されている。その一方で、車両アース19は芯金15に接続されている。そして、本実施形態のホーン回路では、ホーンスイッチ機構60の接点部(詳しくは、ピン部材63)と芯金15とを常時接続する経路(回路)が、接続部材66によって構成された第1接続経路とクリップ17によって構成された第2接続経路とからなる並列回路になっている。
【0078】
ここで、本実施形態のステアリングホイール12では、付属機器14の取り付けのために、芯金15に係止されたクリップ17の係合部17Bがホーンスイッチ機構60のピン部材63の首部63Bに嵌った構造になっている。そのため、ピン部材63の首部63Bにクリップ17の係合部17Bを嵌める際に、ピン部材63とクリップ17との接触面(詳しくは、ピン部材63の首部63Bの内面、およびクリップ17の外面)が擦られることによって、同接触面の接触状態にばらつきが生じるおそれがある。こうしたことから、ピン部材63と芯金15とを常時接続する経路として、仮にクリップ17からなる第2接続経路のみを設けるようにすると、これがピン部材63と芯金15との間の導通性能の向上を阻む一因になってしまう。
【0079】
この点、本実施形態のステアリングホイール12には、ピン部材63と芯金15とを常時接続する経路として、クリップ17からなる第2接続経路に加えて、接続部材66からなる第1接続経路が設けられている。そのため、ホーン装置18を作動させる際に、第1接続経路および第2接続経路のそれぞれによってピン部材63と芯金15とを導通させることができる。これにより、ピン部材63と芯金15とを接続する経路の信頼性が高くなるため、ホーンスイッチ機構60と芯金15との間の導通性能を向上させることができる。
【0080】
また、そうした第1接続経路としては、クリップ17を含まない経路が設定されている。そのため、ピン部材63の首部63Bとクリップ17の係合部17Bとの係合部分、すなわち接触状態にばらつきが生じるおそれがある部分を含まない経路を、それらピン部材63および芯金15を導通させる経路として設定することができる。これにより、ホーンスイッチ機構60と芯金15との間の導通性能の向上を図ることができる。
【0081】
車両の振動や運転者によるパット部20の押し込み操作などに起因して、ピン部材63と芯金15との接続部分に、同ピン部材63の軸方向においてピン部材63と芯金15とを相対移動させる力が作用する場合がある。そして、この力によって、第2接続経路の一部をなす接続部材66の外側接触部66Bと芯金15の貫通孔16の内面との接触部分(以下、第2接触部分)の面圧が変動したり、第1接続経路の一部をなすクリップ17と芯金15の前面との接触部分(以下、第1接触部分)の面圧が変動したりするおそれがある。
【0082】
本実施形態のホーンスイッチ機構60では、圧縮コイルスプリング65の付勢力が、ピン部材63の首部63Bの先端側の内側面と樹脂キャップ67の先端との間隔を小さくするように作用している。そのため、付属機器14がホイール本体13に取り付けられた状態(
図11に示す状態)では、上記圧縮コイルスプリング65の付勢力が、ピン部材63の首部63Bに係合した状態のクリップ17を芯金15の前面に押し付けるように作用するとともに、樹脂キャップ67および接続部材66を芯金15の貫通孔16の内面に押し付けるように作用する。したがって、この状態におけるステアリングホイール12は、クリップ17と樹脂キャップ67との間に芯金15が挟み込まれた構造になる。
【0083】
そのため、前記力としてピン部材63を芯金15の貫通孔16から引き抜く力が作用するときには、第2接続経路の一部をなす第2接触部分(外側接触部66B外面および貫通孔16内面)の面圧が低くなるものの、第1接続経路の一部をなす第1接触部分(クリップ17および芯金15の前面)の面圧が高くなる。このときには、面圧の高い第1接続経路の第1接触部分を通じて、ホーンスイッチ機構60と芯金15との間での適正な導通が得られるようになる。
【0084】
一方、前記力としてピン部材63を芯金15の貫通孔16に押し込む力が作用するときには、第1接続経路の一部をなす第1接触部分の面圧が低くなるものの、第2接続経路の一部をなす第2接触部分の面圧が高くなる。したがって、このときには面圧の高い第2接続経路の第2接触部分を通じて、ホーンスイッチ機構60と芯金15との間での適正な導通が得られるようになる。
【0085】
このように本実施形態のステアリングホイール12では、ピン部材63の軸方向において同ピン部材63と芯金15とを相対移動させるような力が作用する場合であっても、第1接続経路の一部をなす第1接触部分の面圧、および第2接続経路の一部をなす第2接触部分の面圧の一方が高い状態のままで維持されるようになる。これにより、第1接続経路および第2接続経路のいずれかの導通性能が高いままで維持されるため、ホーンスイッチ機構60と芯金15との間の導通性能を高いままで維持することができる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)ホーン回路の一部をなす態様でピン部材63と芯金15とを常時接続する接続経路を複数設けるようにした。これにより、ホーンスイッチ機構60と芯金15との間の導通性能を向上させることができる。
【0087】
(2)ピン部材63と芯金15とを常時接続する2つの接続経路の一方(第1接続経路)として、クリップ17を含まない経路が設定されている。そのため、ピン部材63の首部63Bとクリップ17の係合部17Bとの係合部分、すなわち接触状態にばらつきが生じるおそれがある部分を含まない経路を、それらピン部材63および芯金15を導通させる経路として設定することができる。したがって、ホーンスイッチ機構60と芯金15との間の導通性能の向上を図ることができる。
【0088】
(3)ステアリングホイール12が、クリップ17と樹脂キャップ67との間に芯金15が挟み込まれる構造になっている。これにより、第1接続経路および第2接続経路のいずれかの導通性能を高いままで維持することができるため、ホーンスイッチ機構60と芯金15との間の導通性能を高いままで維持することができる。
【0089】
(4)芯金15の貫通孔16の内面と樹脂キャップ67の接触片74の外面とを共に、前方側に向かうほど先細のテーパ形状にした。これにより、接触面圧が高くなる部分に接続部材66の外側接触部66Bを配置することができるため、外側接触部66Bと貫通孔16の内面との接触面圧を容易に高くすることができる。
【0090】
(5)樹脂キャップ67および接続部材66は、先端に向かうほど間隔が狭くなる一対の接触片74の外面を、同じく先端に向かうほど間隔が狭くなる一対の外側接触部66Bによって挟み込んだ状態になる構造になっている。これにより、脱落し難い状態で接続部材66を樹脂キャップ67に支持させることができるため、ホーンスイッチ機構60の組み立てを容易に行うことができる。
【0091】
(6)接続部材66の外側接触部66Bは、その先端が基端よりも中心線Cに近い位置になる形状であって、基端から先端にかけて外方に向けて凸状で湾曲した形状になっている。そのため、外側接触部66Bの延設方向における中間部分と貫通孔16の内面との接触圧力を高い状態で維持することができる。しかも、ホーンスイッチ機構60を芯金15の貫通孔16に挿入する際に、同外側接触部66Bの先端が芯金15の貫通孔16の内面や周縁に突き当たることが抑えられるため、ホーンスイッチ機構60の芯金15への取り付けを容易に行うことができる。
【0092】
(7)圧縮コイルスプリング65の先端と樹脂キャップ67のベース環状部70との間に接続部材66のベース部66Aが挟持されている。そのため、接続部材66をホーンスイッチ機構60にしっかり支持させることができる。
【0093】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・接続部材66を、銅以外の金属材料(例えば鉄合金)によって形成したり、金属材料以外の導電性を有する材料(例えば、導電性樹脂)によって形成したりしてもよい。
【0094】
・接続部材66の外側接触部66Bの形状は、同接続部材66が芯金15の貫通孔16の内面に適正な接触圧で接触するのであれば、任意に変更することができる。
・接続部材66の形状は、任意に変更可能である。要は、ピン部材63の外面に接触する内側接触部と、貫通孔16の内面に接触する外側接触部と、それら内側接触部および前記外側接触部を一体に接続するベース部とを有していればよい。例えばベース部66AをC字状にしたり、内側接触部66Cを基端から先端にかけて内方(中心線Cに近づく方向)に向けて凸状になるように湾曲した形状にしたりすることができる。また、内側接触部、外側接触部、およびベース部が略コの字状に延びるように、長尺状の金属板によって一体形成するようにしてもよい。その他、接続部材を、圧縮コイルスプリング65と樹脂キャップ67のベース環状部70との間にベース部66Aが挟持される構造にすることに限らず、樹脂キャップ67の先端側から嵌める構造にすること等も可能である。
【0095】
・芯金15の貫通孔16の内面形状や樹脂キャップ67の接触片74の外面形状としては、先端に向かうほど先細のテーパ形状を採用することに限らず、任意の形状を採用することができる。例えば芯金15の貫通孔16を同一の断面(断面円状や、断面矩形状)で延びる形状にしたり、樹脂キャップ67の各接触片74を、外面が中心線Cと略平行に延びる形状にしたりすることができる。
【0096】
・接続部材66によって構成される第1接続経路やクリップ17によって構成される第2接続経路以外の経路を、ピン部材63と芯金15とを常時接続する接続経路として採用しても良い。例えば、樹脂キャップを導電性樹脂材料によって形成して、同樹脂キャップを介してピン部材63と芯金15とを接続するようにしてもよい。
【0097】
・ピン部材63と芯金15とを常時接続する接続経路を3つ以上設けるようにしてもよい。
・上記実施形態のステアリングホイールは、ホーン回路の導通と非導通とを切り替える接点部がホーンスイッチ機構以外の部分に設けられたステアリングホイールにも適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
11…ステアリングシャフト、12…ステアリングホイール、13…ホイール本体、14…付属機器、15…芯金、16…貫通孔、17…クリップ、17A…固定部、17B…係合部、18…ホーン装置、19…車両アース、20…パット部、21…外皮部、22…収容壁部、23…かしめ爪、30…エアバッグ本体、31…バッグ部、32…リテーナ、33…ガス孔、34…取り付けねじ、40…ベースプレート、41…かしめ孔、43…ガス孔、44…挿通孔、45…取付孔、50…インフレーター、51…機能部、52…フランジ、53…挿通孔、54…ナット、60…ホーンスイッチ機構、61…キャップ部材、62…接点端子、62A…上部、62B…側部、62C…露出部、63…ピン部材、63A…フランジ部、63B…首部、64…ベース部材、64A…大径部、64B…小径部、64C…段部、65…圧縮コイルスプリング、66…接続部材、66A…ベース部、66B…外側接触部、66C…内側接触部、67…樹脂キャップ、70…ベース環状部、71…係止片、72…アーム部、73…爪部、74…接触片、75…ばね受け部、76…切り欠き部。