(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】製袋機および製袋方法
(51)【国際特許分類】
B65B 57/02 20060101AFI20230116BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
B65B57/02 G
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2018170015
(22)【出願日】2018-09-11
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】506314357
【氏名又は名称】株式会社New IWASHO
(73)【特許権者】
【識別番号】000109200
【氏名又は名称】ダックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【氏名又は名称】安藤 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 慎次
(72)【発明者】
【氏名】日比野 稔
(72)【発明者】
【氏名】金子 直揮
(72)【発明者】
【氏名】氷上 好孝
(72)【発明者】
【氏名】高城 清次
(72)【発明者】
【氏名】岡本 宏巳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓太
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-100467(JP,A)
【文献】特開2002-063566(JP,A)
【文献】特開平08-198206(JP,A)
【文献】特開2001-097321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 57/02
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラでフィルムを送りつつ該フィルムから袋又は袋の連続体を製造する製袋機において、
前記フィルムの全幅に及ぶ画像を取得する撮像装置と、
前記ローラを調整する調整装置と、
前記撮像装置から前記画像が入力され、前記調整装置を制御する画像処理装置と、を備え、
前記画像処理装置が、
基準となるデザインデータに対する前記画像のずれ量を算出するずれ量算出部と、
前記調整装置に対して行った制御の制御データに関する情報、該制御の直
前の前記ずれ量に関する情報、および少なくとも前記フィルムの種類を含む製袋条件に関する情報を、制御事例の情報として蓄積し記憶する制御事例蓄積記憶部と、
前記制御事例の情報と、製袋中に算出された前記ずれ量と、その製袋時点で設定されている製袋条件と、に基づいて、前記調整装置に対して行う制御の制御データを決定する制御データ決定部と、を備え、
前記制御データ決定部が決定した前記制御データを用いて前記調整装置を制御することを特徴とする製袋機。
【請求項2】
前記ローラがニップローラであって、該ニップローラには前記フィルムに加える圧力を調整するニップローラ用調整装置が連結されており、前記調整装置に前記ニップローラ用調整装置が含まれ、
前記画像処理装置は、前記制御データ決定部が決定した前記制御データを用いて前記ニップローラ用調整装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の製袋機。
【請求項3】
前記袋の外形を規定するカッタの直前に配置されている前記ニップローラに、前記ニップローラ用調整装置が連結されていることを特徴とする請求項2に記載の製袋機。
【請求項4】
前記ローラが、一端側を支点に他端側を上下方向に揺動可能とするシーソーローラであって、該シーソーローラにはローラ軸の傾きを調整するシーソーローラ用調整装置が連結されており、前記調整装置に前記シーソーローラ用調整装置が含まれ、
前記画像処理装置は、前記制御データ決定部が決定した前記制御データを用いて前記シーソーローラ用調整装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の製袋機。
【請求項5】
前記フィルムは、互いに溶着される複数の基材フィルムを備えたものであって、
前記基材フィルム同士を溶着するシール装置よりも上流側に配置された前記シーソーローラに、前記シーソーローラ用調整装置が連結されていることを特徴とする請求項4に記載の製袋機。
【請求項6】
前記ずれ量算出部は、前記複数の基材フィルムそれぞれについて、ずれ量が算出可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の製袋機。
【請求項7】
ローラでフィルムを送りつつ該フィルムから袋又は袋の連続体を製造する製袋機を用いた製袋方法であって、
前記製袋機が、
前記フィルムの全幅に及ぶ画像を取得する撮像装置と、
前記ローラを調整する調整装置と、
記憶部を備え、前記撮像装置から前記画像が入力され、前記調整装置を制御する画像処理装置と、を備え
前記画像処理装置が、基準となるデザインデータを前記記憶部に記憶するデザインデータ記憶ステップと、
前記画像処理装置が、前記デザインデータに対する前記画像のずれ量を算出し、前記調整装置に対して行なった制御の制御データに関する情報と、該制御の直
前の前記ずれ量に関する情報と、該制御時に設定されていた少なくとも前記フィルムの種類を含む製袋条件に関する情報と、を制御事例の情報として前記記憶部に蓄積し記憶する制御事例蓄積記憶ステップと、
前記画像処理装置が、前記記憶部に記憶された前記制御事例の情報と、製袋中に算出した前記ずれ量と、その製袋時点で設定されている前記製袋条件とに基づいて、前記調整装置に対して行う制御の制御データを決定して、該制御データを用いて前記調整装置を制御する制御実行ステップと、
を有することを特徴とする製袋方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製袋時に素材としてのフィルムが蛇行する不具合を効果的に防止することができる製袋機および製袋方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製袋機は、長尺の原反フィルムから繰り出された複数のフィルムを上下に重ね合わせた後、シールおよび切断などの加工を施して袋を製造する。製袋時、袋素材としてのフィルムは、ローラによって搬送されるが、搬送距離が長く、搬送途中でフィルムが幅方向に移動する蛇行が生じ易い。蛇行した状態で製造された袋にあっては、表面に印刷された図柄の位置ずれ、縁部でのシール強度の不足といった品質上の問題が生じてしまう。
【0003】
蛇行は、フィルムの偏肉によっても生じるため、製袋機が稼働している間は、常に蛇行の発生が無いか監視する必要があり、一定以上の蛇行が発生した場合には、フィルムを搬送する条件、具体的にはフィルムを搬送するローラにおける軸の傾きや、ローラがフィルムに加える圧力を調整する必要がある。
【0004】
このような調整作業は、従来、オペレータによって手動で行われていたが、手間を要する作業であるため、製袋機の稼働率を低下させる要因となっていた。またオペレータの能力によって製造される袋の品質が左右されるため、品質が安定しない問題があった。
【0005】
このような問題を解決する手段として、下記特許文献1の製袋機では、素材としてのフィルムに印刷されたマークをCCDカメラを用いて撮像し、撮像された画像データからフィルムの蛇行量を算出するようになした点、更に、蛇行量が基準値を超えた場合に制御部が対象の蛇行修正手段を移動させて、フィルムの蛇行を抑制するようになした点が開示されている。しかしながら、特許文献1の製袋機は、CCDカメラによる撮像範囲が長尺フィルムの幅方向の一端側の特定部分に限定されるため、蛇行が正しく検出されない虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情を背景とし、長尺フィルムの幅方向の広い範囲から得た画像データに基づいて蛇行を検出することができるとともに、フィルムの蛇行を自動で修正することが可能な製袋機およびこれを用いた製袋方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して本発明は、ローラでフィルムを送りつつ該フィルムから袋又は袋の連続体を製造する製袋機において、
前記フィルムの全幅に及ぶ画像を取得する撮像装置と、
前記ローラを調整する調整装置と、
前記撮像装置から前記画像が入力され、前記調整装置を制御する画像処理装置と、を備え、
前記画像処理装置が、
基準となるデザインデータに対する前記画像のずれ量を算出するずれ量算出部と、
前記調整装置に対して行った制御の制御データに関する情報、該制御の直前の前記ずれ量に関する情報、および少なくとも前記フィルムの種類を含む製袋条件に関する情報を、制御事例の情報として蓄積し記憶する制御事例蓄積記憶部と、
前記制御事例の情報と、製袋中に算出された前記ずれ量と、その製袋時点で設定されている製袋条件と、に基づいて、前記調整装置に対して行う制御の制御データを決定する制御データ決定部と、を備え、
前記制御データ決定部が決定した前記制御データを用いて前記調整装置を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明の製袋機は、撮像装置を備え、撮像装置から得た画像と、基準となるデザインデータとのずれ量を算出することでフィルムの蛇行を検出するものである。ここで本発明では、フィルムの全幅に及ぶ画像を取得する撮像装置を備えており、長尺フィルムの幅方向の広い範囲から得た画像に基づいてずれ量を算出することができ、フィルム全体における蛇行の傾向を反映させた蛇行量を算出することができる。なお、本発明におけるデザインデータとは、ずれ量算出時に基準とすることができる情報を含むデータであり、図面のデータや別途撮像された画像のデータも含まれる。
【0010】
また本発明は、調整装置に対して行った制御の制御データに関する情報、制御の直前のずれ量に関する情報、および少なくともフィルムの種類を含む製袋条件に関する情報を、制御事例の情報として蓄積し記憶する制御事例蓄積記憶部を備え、この制御事例の情報に基づいて、調整装置に対して行う制御の制御データを決定することを、他の特徴としたものである。
例えば、熟練したオペレータが行っていた調整作業の内容を、制御事例の情報として予め蓄積しておけば、熟練したオペレータが行なっていた調整作業と略同じ内容の調整作業を自動で実現することができる。
【0011】
また本発明の製袋機では、ニップローラに、フィルムに加える圧力を調整するニップローラ用調整装置を連結し、前記画像処理装置により、前記制御データ決定部が決定した前記制御データを用いて前記ニップローラ用調整装置を制御することができる。
このようにすれば、従来オペレータが蛇行修正のために行なっていたニップ圧の調整作業を自動で行うことができる。
【0012】
ここで、カッタの直前に配置されている前記ニップローラに、前記ニップローラ用調整装置を連結することができる。
このようにすれば、カッタの直前に配置されたニップローラにて、蛇行によるずれの修正が図られるため、後段に位置するカッタにおけるカット位置不良を抑制することができる。
【0013】
また本発明の製袋機では、一端側を支点に他端側を上下方向に揺動可能とするシーソーローラに、ローラ軸の傾きを調整するシーソーローラ用調整装置を連結し、前記画像処理装置により、前記制御データ決定部が決定した前記制御データを用いて前記シーソーローラ用調整装置を制御することができる。このようにすることで、従来、オペレータが蛇行修正のために行なっていたシーソーローラの傾きを調整する作業を自動で行うことができる。
【0014】
ここで本発明では、前記フィルムが、互いに溶着される複数の基材フィルムを備えたものであって、前記基材フィルム同士を溶着するシール装置よりも上流側に配置された前記シーソーローラに、前記シーソーローラ用調整装置を連結することができる。このようにすれば、溶着前の基材フィルムに対して蛇行の修正を行うことができる。
【0015】
このとき、前記複数の基材フィルムそれぞれについてのずれ量が算出可能となるよう前記ずれ量算出部を構成すれば、前記複数の基材フィルムそれぞれについて、蛇行修正の精度を高めることができる。
【0016】
本発明の製袋方法は、ローラでフィルムを送りつつ該フィルムから袋又は袋の連続体を製造する製袋機を用いた製袋方法であって、
前記製袋機が、
前記フィルムの全幅に及ぶ画像を取得する撮像装置と、
前記ローラを調整する調整装置と、
記憶部を備え、前記撮像装置から前記画像が入力され、前記調整装置を制御する画像処理装置と、を備え
前記画像処理装置が、基準となるデザインデータを前記記憶部に記憶するデザインデータ記憶ステップと、
前記画像処理装置が、前記デザインデータに対する前記画像のずれ量を算出し、前記調整装置に対して行なった制御の制御データに関する情報と、該制御の直前の前記ずれ量に関する情報と、該制御時に設定されていた少なくとも前記フィルムの種類を含む製袋条件に関する情報と、を制御事例の情報として前記記憶部に蓄積し記憶する制御事例蓄積記憶ステップと、
前記画像処理装置が、前記記憶部に記憶された前記制御事例の情報と、製袋中に算出した前記ずれ量と、その製袋時点で設定されている前記製袋条件とに基づいて、前記調整装置に対して行う制御の制御データを決定して、該制御データを用いて前記調整装置を制御する制御実行ステップと、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の製袋方法では、フィルムの全幅に及ぶ画像を取得する撮像装置を用いることにより、長尺フィルムの幅方向の広い範囲から得た画像に基づいて、ずれ量を算出することができ、フィルム全体における蛇行の傾向を反映させた蛇行量を算出することができる。
【0018】
また本発明の製袋方法では、調整装置に対して行った制御の制御データに関する情報、制御の直前のずれ量に関する情報、および少なくともフィルムの種類を含む製袋条件に関する情報を、制御事例の情報として蓄積し記憶する制御事例蓄積記憶部を備え、この制御事例の情報に基づいて、前記調整装置に対して行う制御の制御データを決定するため、例えば、熟練したオペレータが行っていた調整作業の内容を、制御事例の情報として制御事例蓄積記憶部に蓄積しておけば、熟練したオペレータが行なっていた調整作業と略同じ内容の調整作業を自動で実現することができる。
【0019】
ここで本発明の製袋方法では、前記画像処理装置が、前記記憶部に記憶された前記制御事例の情報と、試験的な製袋において算出した前記ずれ量と、その製袋時点で設定されている前記製袋条件とに基づいて、前記調整装置に対して行う制御の制御データを決定して、該制御データを用いて前記調整装置を制御し、該制御の後に算出したずれ量が、所定範囲内にあるか否かを検証する検証ステップを、前記制御実行ステップの前に行なうことができる。このようにすることで、制御実行ステップに先立って制御データの有効性を、検証ステップにて確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の製袋機の全体構成を示した概略側面図である。
【
図2】同実施形態の製袋機の全体構成を示した概略平面図である。
【
図3】同実施形態の製袋機のシーソーローラをその周辺部とともに示した図である。
【
図4】同実施形態の製袋機のニップローラをその周辺部とともに示した図である。
【
図5】同実施形態の製袋機の電気系統のブロック図である。
【
図6】(a)は基材フィルムF1の平面図である。(b)は基材フィルムF2の平面図である。(c)は基材フィルムF1およびF2を重ね合わせた状態の平面図である。
【
図8】
図7に続くずれ量算出部の動作説明図である。
【
図9】同実施形態の製袋機における製袋動作を示す流れ図である。
【
図11】
図9とは異なる製袋動作を示す流れ図である。
【
図13】同実施形態の製袋機の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1および
図2に示す実施形態の製袋機1は、1袋分に対応する印刷ピッチで反復印刷された印刷柄を有する長尺状のフィルムFに対し、所定数袋分(ここでは1袋分)に対応するフィルムFの長尺方向に沿った長さ毎に処理(ここでは、シール及びカット)を行うものである。製袋機1は、送り手段2、縦シール装置4、縦冷却装置5、横シール装置6、横冷却装置7、撮像装置8、カッタ10および画像処理装置12(
図2参照)を備えている。
【0022】
送り手段2は、ブレーキ及びモータを備え原反フィルムGが巻かれた原反ロールの中心に水平方向に沿って挿通されて、原反ロールから原反フィルムGを繰り出す繰出し軸21と、繰出された原反フィルムGをその幅方向が鉛直方向となるように方向転換させる斜め45°に傾斜したターンバー22と、原反フィルムGをその幅方向の中央で切断して2枚の基材フィルムF1、F2とするスリット刃23と、基材フィルムF1、F2の各々を幅方向が水平方向となるように方向転換する一対のターンバー24,24と、基材フィルムF1、F2を連続から間欠送りに変換するため、上下にそれぞれ複数設けられたダンサローラ25と、一対のシーソーローラ28,29と、一対のニップローラ30,31と、その下流側に設けられた一対のニップローラ32,33と、更にその下流側に設けられた一対のニップローラ34,35と、を備えている。送り手段2は、上述したもの以外にも、原反フィルムG、基材フィルムF1、F2、フィルムFを送るための複数のローラを有している。
【0023】
本例において、フィルムFは、基材フィルムF1、F2の重ね合わせにより形成される。原反ロールから繰り出された基材フィルムF1、F2は、シーソーローラ28,29により幅方向の位置合わせが行われ、その後、ニップローラ30,31により上下に重ね合わされ、フィルムFが形成される。
【0024】
基材フィルムF1、F2すなわちフィルムFは、軟質であり、ここではプラスチックとするが、素材は問わず、金属製や紙製であってもよいし、それらの複合材であってもよい。
【0025】
ダンサローラ25は、連続から間欠送りに変換した際の基材フィルムF1およびF2の弛みを防止するもので、固定ローラ26の搬送方向前後位置において、水平にかつ上下移動自在に取付られている。原反フィルムGから引き出された基材フィルムF1およびF2は、それぞれダンサローラ25、固定ローラ26、ダンサローラ25の順に掛け回され、間欠送り動作にあわせてダンサローラ25が上下動することで、基材フィルムF1およびF2の張力を略一定に保つことができる。
【0026】
ダンサローラ25の下流側に位置する一対のシーソーローラ28,29は、
図3に示すように上下方向に隙間をあけた状態で近接配置されている。上側に位置する上シーソーローラ28は基材フィルムF1と接し、下側に位置する下シーソーローラ29は基材フィルムF2と接している。
【0027】
上シーソーローラ28は、図中左側に位置する一端側がピン40にて支持され、ピン40を支点に他端側を上下方向に揺動可能とされている。そして上シーソーローラ28の他端側は、連結部材41を介して上モータ43の出力軸44と連結されている。なお50は、モータ43を支持するために製袋機1の架台14から延出させたブラケットである。モータ43の出力軸44は、雄ネジ部が形成され、連結部材41に形成された雌ねじ孔42にねじ結合されている。このため上モータ43の出力軸44を正逆回転させると、ねじ送りの作用により連結部材41とともに上シーソーローラ28の他端側が、上下方向に移動する。
【0028】
このように構成された上シーソーローラ28では、例えば、上モータ43の出力軸44を回転させてローラ軸28aを図中右上方向に傾けることで、上シーソーローラ28に接する基材フィルムF1を図中左方向に移動させることができる。すなわち本例では、上シーソーローラ28の他端側に連結された上モータ43が、ローラ軸28aの傾きを調整するシーソーローラ用調整装置を構成する。
【0029】
また、下側に配置された下シーソーローラ29においても、図中左側に位置する一端側がピン45にて支持され、ピン45を支点に他端側を上下方向に揺動可能とされている。そして下シーソーローラ29の他端側は、連結部材46を介して下モータ48の出力軸49と連結されている。なお51は、下モータ48を支持するために製袋機1の架台14から延出させたブラケットである。
【0030】
下モータ48の出力軸49は、雄ネジ部が形成され、連結部材46に形成された雌ねじ孔47にねじ結合されている。このため下モータ48の出力軸49を正逆回転させると、ねじ送りの作用により連結部材46とともに下シーソーローラ29の他端側が上下方向に移動する。すなわち、下シーソーローラ29の他端側に連結された下モータ48が、ローラ軸29aの傾きを調整するシーソーローラ用調整装置を構成する。
なお、上モータ43および下モータ48はステッピングモータで構成され、内部にはエンコーダ等で構成され、出力軸44,49の位置を検出する位置検出センサ43a、48aがそれぞれ設けられている。
【0031】
ニップローラ30,31は、基材フィルムF1、F2に圧力をかけて重ね合わせるとともに、重ね合わせた基材フィルムF1、F2すなわちフィルムFを、間欠的に所定の長さずつ移送する。下側に位置する下ニップローラ31には、ローラを回転駆動させるためのサーボモータ(図示省略)が連結されており、上側に位置する上ニップローラ30は、下ニップローラ31の回転に従動して回転する。
【0032】
ニップローラ30,31よりも搬送方向の下流側に設けられたニップローラ32,33、およびニップローラ32,33よりも更に搬送方向の下流側に設けられたニップローラ34,35においても、ニップローラ30,31と同様、フィルムFに圧力をかけるとともに、フィルムFを間欠的に所定の長さずつ移送する。
【0033】
これら搬送方向異なる位置に設けられたニップローラは、同期して間欠駆動してフィルムFを搬送する。間欠移送される1回分の長さ(すなわち、停止してから次に停止するまでに送られる長さ)を送り量といい、送り量は、製造する袋の1袋分の長さの整数倍であり、本実施形態では、1袋分の長さとされている。送り量は、サーボモータに対する数値制御(回転数、回転角度の制御)で設定可能である。すなわち、フィルムFは送り手段2により間欠的に停止しながら移送され、横シール装置6、及び、カッタ10は、フィルムFが間欠停止したとき、シールを行う位置、及び、切断(カット)を行う位置に袋の境界部が位置するように、配置される。
【0034】
図4は、ニップローラ30,31をその周辺部とともに示した図である。同図において、54,58はエアシリンダで、それぞれのロッド55,59の突出方向が下向きになるようにブラケット53に取り付けられている。エアシリンダ54の、下向きに延び出したロッド55は、上ニップローラ30の一端部を回転自在に保持している保持部材56の上面と当接し、保持部材56を介して上ニップローラ30を下向きに押圧する。また、エアシリンダ58の、下向きに延び出したロッド59は、上ニップローラ30の他端部を回転自在に保持している保持部材60の上面と当接し、保持部材60を介して上ニップローラ30を下向きに押圧する。
【0035】
エアシリンダ54,58は、それぞれ電空変換器54b,58bを介してエア源63に接続されている。電空変換器54b,58bにより、エアシリンダ54,88に供給するエア圧を適宜制御することで、ニップローラ30,31におけるフィルムFに加える圧力が調整される。このように構成されたニップローラ30,31では、例えば、エアシリンダ58に供給されるエア圧を高めると、フィルムFに加える圧力が図中右側で高くなり、フィルムFを図中右方向に移動させることができる。すなわち、上ニップローラ30の両端に連結されたエアシリンダ54,58が、フィルムFに加える圧力を調整するニップローラ用調整装置を構成する。
【0036】
なお、上ニップローラ30よりも下流側に位置する上ニップローラ32および34においても上ニップローラ30と同様の構成である。
図2に示すように、上ニップローラ32の両端には、それぞれニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ64,65が連結され、上ニップローラ34の両端には、それぞれニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ68,69が連結されている。これらエアシリンダ64,65,68,69は、それぞれ電空変換器64b,65b,68b,69bを介してエア源63に接続されている。
【0037】
縦シール装置4はフィルムFのヒートシールを行うものであり、上縦シールバー70と下縦シールバー71とを備えている。上縦シールバー70と下縦シールバー71は、搬送方向に長尺状をなして、互いに対向して配置され、それぞれヒータにより加熱されるように構成されている。上縦シールバー70は図示を省略する昇降部材に取り付けられ、その昇降部材が図示しない駆動機構によって昇降することにより、昇降(上下動)可能とされている。上縦シールバー70が最下降位置まで下降したとき、下縦シールバー71との間にフィルムFを挟んで、フィルムFを構成する基材フィルムF1、F2を互いにヒートシール(熱溶着)する。
【0038】
縦冷却装置5は、フィルムFの縦シール装置4によって熱溶着された部分(以下、「シール部」という。)における過度の溶着を防止するとともに外観を良好とするために、シール部を冷却するものであり、フィルムFの搬送方向における縦シール装置4の下流側に設けられている。縦冷却装置5は、長尺状の上冷却バー72と下冷却バー73とを備え、上冷却バー72と下冷却バー73は、互いに対向して配置されている。上冷却バー72は、内部に冷却水通路が形成され、図示しない昇降部材に取り付けられ、その昇降部材が図示しない駆動機構によって昇降することにより、昇降可能とされて、最下降位置まで下降したとき、下冷却バー73との間にフィルムFを挟んで冷却する。
【0039】
横シール装置6はフィルムFのヒートシールを行うものであり、上横シールバー74と下横シールバー75とを備えている。上横シールバー74と下横シールバー75は、長尺状をなして、その長手方向にフィルムFの幅方向に沿わせて、互いに対向して配置され、それぞれヒータにより加熱されるように構成されている。上横シールバー74は図示を省略する昇降部材に取り付けられ、その昇降部材が図示しない駆動機構によって昇降することにより、昇降(上下動)可能とされている。上横シールバー74が最下降位置まで下降したとき、下横シールバー75との間にフィルムFを挟んで、フィルムFを構成する基材フィルムF1、F2を互いにヒートシール(熱溶着)する。
【0040】
横冷却装置7は、フィルムFの横シール装置6によって熱溶着されたシール部を冷却するものであり、横シール装置6の下流側に設けられている。横冷却装置7は、長尺状の上冷却バー76と下冷却バー77とを備え、上冷却バー76と下冷却バー77は、その長手方向をフィルムFの幅方向に沿わせて、互いに対向して配置されている。上冷却バー76は、内部に冷却水通路が形成され、図示しない昇降部材に取り付けられ、その昇降部材が図示しない駆動機構によって昇降することにより、昇降可能とされて、最下降位置まで下降したとき、下冷却バー77との間にフィルムFを挟んで冷却する。
【0041】
撮像装置8は、搬送されるフィルムFの上側に配置されたラインセンサ9からなる。ラインセンサ9が、横冷却装置7とニップローラ34,35との間の位置にて、搬送方向と直交するフィルムFの幅方向を長手方向として設けられ、ラインセンサ9ではフィルムFの表面の全幅に及ぶ画像が取得される。ラインセンサ9は可視光を受光して撮像する撮像素子(例えばCCD素子)が複数個、直列状に並んで設けられたものであり、撮像領域は細い線状(ライン状)をなしている。本例では、照明光源として、透過用光源19をフィルムFを挟んでラインセンサ9と反対側に設けており、フィルムFの上面に印刷された印刷柄およびフィルムFの下面に印刷された印刷柄をラインセンサ9で撮像可能とされている。ラインセンサ9は通過するフィルムFを高速で撮像しながら、順次取得した画像データを画像処理装置12に出力する。
【0042】
なお、撮像装置8の構成はこれに限定されるものではなく、フィルムFの上側と下側とにそれぞれラインセンサを配置して、上側のラインセンサにてフィルムFの上面に印刷された印刷柄を撮像し、下側のラインセンサにてフィルムFの下面に印刷された印刷柄を撮像するように構成することも可能である。
【0043】
カッタ10は、互いに対向する長尺状の上下の切断刃11a、11bを備え、上の切断刃11aが図示しない昇降部材に取り付けられ、その昇降部材が図示しない駆動機構によって昇降することにより、昇降可能に構成されている。フィルムFが間欠停止したとき、昇降手段によりカッタの上の切断刃11aが下降して切断を行う。これにより袋が切り離される。
【0044】
画像処理装置12は、ラインセンサ9が接続され、ラインセンサ9が出力した画像データを受信して、蛇行量に相当するずれ量を算出するとともに、蛇行修正のための制御データを決定する。
【0045】
画像処理装置12は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)等を備えるコンピュータで、
図5に示すように、ずれ量算出部80と、制御事例蓄積記憶部81と、制御データ決定部82とを備え、また、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置からなる記憶部83を備えている。記憶部83には、各種の制御プログラムのほか、後述する袋のデザインデータや制御事例の情報等が記憶される。ずれ量算出部80、制御事例蓄積記憶部81、制御データ決定部82は、CPUなどのプロセッサとすることができる。この場合、ROM等に記憶された制御プログラムをCPUなどのプロセッサが実行することにより実現される。
画像処理装置12は、製袋機1の全体を制御する制御部(図示省略)の一部として構成することも可能である。
【0046】
図5に示すように、画像処理装置12には、ラインセンサ9のほか、オペレータが指示を入力する入力操作部85、シーソーローラ用調整装置としての上モータ43および下モータ48の出力軸の位置を検出する位置検出センサ43aおよび48a、ニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ54,58、64、65、68および69のエア圧を検出する圧力検出センサ54a,58a,64a,65a,68aおよび69aがそれぞれ接続され、
図5に矢印で示すように、各センサからは画像処理装置12に信号が入力される。
【0047】
画像処理装置12にはまた、シーソーローラ用調整装置としての上モータ43および下モータ48、ニップローラ用調整装置としての各エアシリンダにエアを供給する電空変換器54b,58b,64b,65b,68bおよび69bが接続され、
図5に矢印で示すように、各モータや電空変換器には画像処理装置12から制御データとしての信号が出力される。
【0048】
次に、画像処理装置12のずれ量算出部80によるずれ量算出動作について説明する。
ここでは、フィルムFに印刷された印刷柄の一部を用いて、蛇行量に相当するずれ量を算出する。
図6(a)に示すようにフィルムFを構成する基材フィルムF1には、袋分に対応する印刷ピッチでマーク90,91を含む印刷柄が反復印刷されている。また、
図6(b)に示すようにフィルムFを構成する基材フィルムF2には、袋分に対応する印刷ピッチでマーク92,93を含む印刷柄が反復印刷されている。
図6(c)は、これら基材フィルムF1とF2を、ずれなく上下に重ね合わせた状態を示している。
【0049】
ずれ量を算出するためには、
図7(a)に示す基準となるデザインデータを記憶部83に記憶させる。基準となるデザインデータは、袋の外形およびずれ量算出に用いるマークの情報を含むものである。
次に、
図7(b)に示すように、基材フィルムF1に印刷された2つのマーク90,91にそれぞれ代表点90a、91aを設定するとともに、線分90a91aの中点を基準点P1とする。
また同様に、
図7(c)に示すように、基材フィルムF2に印刷された2つマーク92,93にそれぞれ代表点92a、93aを設定するとともに、線分92a93aの中点を基準点P2とする。
【0050】
製袋が開始され、送り手段2により送られたフィルムFの袋画像がラインセンサ9により撮影され、その画像データが順次画像処理装置12に送られると、ずれ量算出部80は、得られた画像95(
図8(a)参照)内で、マーク90,91と最も相関の高いデータ配列を有するマーク相当領域90′,91′を求めて、それぞれの代表点の座標に相当する代表相当点90a′,91a′を求め、さらに線分90a′91a′の中点を基準相当点P1′として求める(
図8(b)参照)。このようにして得られた基準相当点P1′を基準点P1と比較した際のx方向(搬送方向)のずれ量をΔx、またy方向(搬送方向と直交する方向)のずれ量をΔyとして求める。また線分90a′91a′と線分90a91aのなす角度をΔθとして求める。このようにして算出された幅方向のずれ量Δyを、基材フィルムF1の蛇行量S1として算出する。
【0051】
また同様に、ずれ量算出部80は、得られた画像95(
図8(a)参照)内で、マーク92,93と最も相関の高いデータ配列を有するマーク相当領域92′,93′を求めて、それぞれの代表点の座標に相当する代表相当点92a′,93a′を求め、さらに線分92a′93a′の中点を基準相当点P2′として求める(
図8(c)参照)。このようにして得られた基準相当点P2′を基準点P2と比較した際のx方向(搬送方向)のずれ量をΔx、またy方向(搬送方向と直交する方向)のずれ量をΔyとして求める。また線分92a′93a′と線分92a93aのなす角度をΔθとして求める。このようにして算出された幅方向のずれ量Δyを、基材フィルムF2の蛇行量S2として算出する(このようなずれ量の算出方法は、例えば特開2002-63566号公報等に記載されている)。
【0052】
なお、フィルムFが無地の場合には、上記のようなマーク画像に代えて基材フィルムの幅方向の端を検出してずれ量(蛇行量)を算出することも可能である。
【0053】
次に、制御事例蓄積記憶部81について説明する。制御事例蓄積記憶部81は、各調整装置に対して行った制御の制御データに関する情報、制御の直前及び/又は直後のずれ量に関する情報、および少なくともフィルムの種類を含む製袋条件に関する情報を、制御事例の情報として記憶部83に蓄積し記憶する。ここで、制御データに関する情報とは、シーソーローラ用調整装置としての上モータ43および下モータ48の出力軸の位置情報や、ニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ54,58、64、65、68および69のエア圧の情報であり、
図5に示す各種センサにより検出される情報である。ずれ量に関する情報とは、上記ずれ量算出部80で算出されたずれ量(蛇行量)S1、S2である。製袋条件に関する情報とは、
図5で示す入力操作部85を用いてオペレータにより入力された情報である。フィルムの種類(品種)のほか、フィルムの幅や厚み等の情報を含めて構成することも可能である。この制御事例蓄積記憶部81では、これらの情報からなる組データを、制御事例の情報として記憶部83に蓄積し記憶する。
【0054】
次に、制御データ決定部82について説明する。製袋機1が蛇行修正を自動で行う際、制御データ決定部82は、記憶部83に蓄積された制御事例の情報と、製袋中に算出されたずれ量(蛇行量)S1、S2と、その製袋時点で設定されている製袋条件と、に基づいて、各調整装置に対して行う制御の制御データを決定する。
例えば、記憶部83に蓄積された制御事例の中から、製袋中に算出されたずれ量S1、S2およびその製袋時点で設定されている製袋条件が一致または近似する組データを抽出して、その組データ中に記載されている制御データに関する情報と一致するように、各調整装置に対して行う制御の制御データを決定することができる。
【0055】
次に、製袋機1における製袋動作について説明する。本例の製袋機1では、制御事例の情報を蓄積し、この制御事例の情報を利用して蛇行修正を自動で行うことができる。
具体的には、
図9に示すように、まず使用するフィルムの種類を含む製袋条件を入力し(ステップS201)、ずれ量(蛇行量)算出の際、基準となるデザインデータを記憶部83に記憶させる(ステップS202)。製袋が開始されると、フィルムFがラインセンサ9を通過した際、フィルムFが上面側から撮像され、得られた袋毎の画像データが画像処理装置12に出力される(ステップS203)。画像処理装置12のずれ量算出部80では袋毎の画像データについてずれ量S1、S2が算出される(ステップS204)。
【0056】
ここで、オペレータが目視等で、ずれ有りと判断し、シーソーローラ用調整装置としての上モータ43および下モータ48の出力軸の位置やニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ54,58、64、65、68および69のエア圧を、手動で調整(制御)する(ステップS205)。すると制御事例蓄積記憶部81は、算出したずれ量S1、S2と、オペレータが行なった制御のデータと、製袋条件と、を制御事例の情報として記憶部83に記憶する(ステップS206)。
【0057】
これらステップS203~ステップS206までを、所定の時間もしくはフィルム処理長さに亘って繰り返し実行する(ステップS207)。このような手順で制御事例を順次、蓄積することで、熟練したオペレータが手動で行なっていた蛇行修正のための調整作業の内容を制御事例として蓄積することができる。
【0058】
なお、制御事例の情報を蓄積するための動作は、
図11のように行うことも可能である。
図11の例では、袋毎の画像データからずれ量S1、S2が算出され(ステップS204)、ずれの有無が判断される(ステップS220)。ずれの有無は、連続して算出された袋毎のずれ量S1もしくはS2が、所定の閾値を超えたか否かで判断することができる。ステップS220において、ずれ有と判断された場合は、シーソーローラ用調整装置としての上モータ43および下モータ48の出力軸の位置もしくはニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ54,58、64、65、68および69のエア圧を、オペレータが手動で調整(制御)する(ステップS221)。
【0059】
以降、ステップS203~ステップS221を、ずれ無と判断されるまで繰り返し実行し、ずれ無と判断された時点で、制御事例蓄積記憶部81は、そのときの上モータ43および下モータ48の出力軸の位置およびニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ54,58、64、65、68および69のエア圧の情報と、一連の制御が行われる直前のずれ量S1、S2と、製袋条件と、を制御事例の情報として記憶部83に記憶する(ステップS222)。
【0060】
これらステップS203~ステップS222までを、所定の時間もしくはフィルム処理長さに亘って繰り返し実行する(ステップS223)。このような手順で制御事例を順次、蓄積することも可能である。
【0061】
図10は、続いて実施される蛇行修正を自動で行う製袋動作についての流れ図である。ここでは、ステップS213で、ずれ有と判断された場合、
図9のステップ206で蓄積し記憶した制御事例の情報を利用することで蛇行修正を自動で行う。具体的には、ステップS214において、画像処理装置12の制御データ決定部82が、その製袋時点で設定されている製袋条件、および、ステップS212で算出したずれ量S1、S2に一致もしくは近似する制御事例の情報を選択し、その制御事例の情報に記載されているシーソーローラ用調整装置としての上モータ43および下モータ48の出力軸の位置およびニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ54,58、64、65、68および69のエア圧の情報が、各調整装置に対して行う制御の制御データとして決定され(ステップS214)、この制御データを用いて各調整装置が制御される(ステップS215)。以上、ステップS211~S215までを製袋終了まで繰り返すことで、フィルムの蛇行修正を自動で行うことが可能となる。
【0062】
以上のように本実施形態の製袋機1は、フィルムの全幅に及ぶ画像を取得する撮像装置8を備えており、長尺フィルムの幅方向の広い範囲から得た画像に基づいてずれ量を算出することができ、フィルム全体における蛇行の傾向を反映させた蛇行量を算出することができる。
【0063】
また本実施形態の製袋機1は、調整装置に対して行った制御の制御データに関する情報、制御の直前及び/又は直後のずれ量に関する情報、および少なくともフィルムの種類を含む製袋条件に関する情報を、制御事例の情報として蓄積し記憶する制御事例蓄積記憶部81を備え、制御事例の情報に基づいて、調整装置に対して行う制御の制御データを決定する。このため、例えば、熟練したオペレータが行っていた調整作業の内容を、制御事例の情報として予め蓄積しておけば、熟練したオペレータが行なっていた調整作業と略同じ内容の調整作業を自動で実現することができる。
【0064】
また本実施形態の製袋機1では、上ニップローラ30,32,34に、ニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ54,58、64、65、68および69を連結し、画像処理装置12により、制御データ決定部82が決定した制御データを用いてニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ54,58、64、65、68および69を制御するため、従来、オペレータが蛇行修正のために行なっていたニップ圧の調整作業を自動で行うことができる。
【0065】
ここで本実施形態では、カッタ10の直前に配置されている上ニップローラ34に、ニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ68および69が連結されているため、カッタ10の直前に配置されたニップローラ34,35にて、蛇行によるずれの修正が図られ、後段に位置するカッタ10におけるカット位置不良を抑制することができる。
【0066】
また本実施形態の製袋機1では、一端側を支点に他端側を上下方向に揺動可能とする一対のシーソーローラ28,29に、シーソーローラ用調整装置としての上モータ43,下モータ48を連結し、画像処理装置12により、制御データ決定部82が決定した制御データを用いてシーソーローラ用調整装置としての上モータ43,下モータ48を制御するため、従来、オペレータが蛇行修正のために行なっていたローラ軸の傾きを調整する作業を自動で行うことができる。
【0067】
ここで本実施形態の製袋機1では、基材フィルムF1、F2同士を溶着するシール装置4よりも上流側に配置されたシーソーローラ28,29に、シーソーローラ用調整装置43,48が連結されているため、溶着前の基材フィルムF1、F2に対して蛇行の修正を行うことができる。
【0068】
このとき、2つの基材フィルムF1、F2それぞれについてのずれ量が算出可能となるようにずれ量算出部80が構成されているため、基材フィルムF1、F2それぞれに対する蛇行修正の精度を高めることができる。
【0069】
<その他の変形例・適用例>
(1)製袋機1において、制御事例の情報として蓄積する内容は適宜変更可能である。例えば、
図12に示す制御事例蓄積動作のように、各調整装置における設定を徐々に変化させ(ステップS303)、制御の直後のずれ量S1、S2を算出する(ステップS304)。このようにして得られた各調整装置における設定値を「制御データに関する情報」とし、制御の直後のずれ量S1、S2を、「ずれ量に関する情報」とし、これらの情報を製袋条件に関する情報とともに制御事例の情報として蓄積することも可能である(ステップS307)。このようにして得られた制御事例の情報からは、各調整装置における設定値の変動がフィルムのずれ量S1、S2に及ぼす影響の大きさを学習することができる。
【0070】
(2)製袋機1の制御データ決定部82において、制御データを決定するためのルールは適宜変更可能である。上記実施形態では製袋中に算出したずれ量S1、S2と一致もしくは近似するずれ量を有する制御事例の情報を選択しているが、制御事例の情報を学習データとしたニューラルネットワークを構築して、製袋中に算出したずれ量S1、S2およびフィルムの種類を含む製袋条件から、調整装置に対して行う制御の制御データを出力させるようにすることも可能である。
【0071】
(3)上記実施形態では、ラインセンサ9を下流側のニップローラ34,35の直前に1箇所に設けているが、ラインセンサを搬送方向異なる位置に複数設けることも可能である。
図13は、ラインセンサ9に加えて、上流側のニップローラ30,31の近傍にラインセンサ9Bを設けた例である。この例では、上流側に位置するシーソーローラ用調整装置としての上モータ43,下モータ48およびニップローラ用調整装置としてのエアシリンダ54,58に対する制御データを、ラインセンサ9Bで得られた画像より算出されたずれ量に基づいて決定することができ、蛇行修正の精度をより高めることができる。
【0072】
(4)製袋機1では、新たに制御事例の情報を蓄積し記憶した後は、蛇行修正を自動で行う製袋動作に先立って、画像処理装置12が、記憶部83に記憶された制御事例の情報と、試験的な製袋において算出したずれ量と、その製袋時点で設定されている製袋条件とに基づいて、各調整装置に対して行う制御の制御データを決定して、制御データを用いてこれら調整装置を制御し、該制御の後に算出したずれ量が、所定範囲内にあるか否かを検証する検証ステップを、行なうことができる。このようにすることで、蛇行修正を自動で行う製袋動作に先立って制御データの有効性を、検証ステップにて確認することができる。
【0073】
(5)製袋機1は、シールと冷却とカットという3つの処理を順次行うものであったが、これら3つの処理を全て行う製袋機でなくても、本発明は適用可能である。例えば、カッタを備えず、シールと冷却とを行ったフィルムを個別の袋に切断せずに(すなわち袋の連続体として)そのまま巻き取り、他の機械により個別の袋に切断する製袋機や、逆に、シール装置や冷却装置を備えず、既にシールされたフィルムの切断のみ行う製袋機にも、本発明は適用可能である。また、製袋機を、パンチ(孔開け)装置を備えるものとしたりしてもよく、冷却装置を備えないものとしてもよい。
【0074】
(6)上記実施形態では、フィルムFを2枚の基材フィルムF1、F2が重ね合わされたものとしたが、ガセットを構成する基材フィルムを折り畳んで基材フィルムF1、F2の間に挟む等、3枚以上の基材フィルムを重ね合わせてフィルムFを構成してもよいし、複数の原反ロールから繰出された基材フィルムを重ね合わせてフィルムFを構成してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 製袋機
8 撮像装置
9,9B ラインセンサ
10 カッタ
12 画像処理装置
28,29 シーソーローラ
43 上モータ(シーソーローラ用調整装置)
48 下モータ(シーソーローラ用調整装置)
30,31,32,33,34,35 ニップローラ
54,58,64,65,68,69 エアシリンダ(ニップローラ用調整装置)
80 ずれ量算出部
81 制御事例蓄積記憶部
82 制御データ決定部
83 記憶部
F フィルム
F1,F2 基材フィルム