(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】水用バタフライバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 47/02 20060101AFI20230116BHJP
F16K 1/22 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
F16K47/02 E
F16K1/22 R
F16K1/22 H
(21)【出願番号】P 2019041950
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2018040274
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391048049
【氏名又は名称】滋賀県
(73)【特許権者】
【識別番号】000147291
【氏名又は名称】株式会社清水合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】井上 栄一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 利徳
(72)【発明者】
【氏名】水谷 直弘
(72)【発明者】
【氏名】深尾 典久
(72)【発明者】
【氏名】今道 高志
(72)【発明者】
【氏名】山下 誠児
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一昭
(72)【発明者】
【氏名】千野 一広
(72)【発明者】
【氏名】掛川 光彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 和彦
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-121994(JP,A)
【文献】実開平03-110148(JP,U)
【文献】特開2010-090748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0042448(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19846728(DE,A1)
【文献】実公平3-53089(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0313465(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 47/00-47/16
F16K 1/00- 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の弁箱内に円板状の弁体が弁軸を介して回動自在に設けられた
水用バタフライバルブであって、前記弁体の少なくともオリフィス側又はオリフィス側とノズル側の外周から前記弁軸方向と交差する方向に沿って平行に列設状態に延伸された複数の整流板と、複数の前記整流板同士の間に
前記弁箱内の流路の水中に含まれる気泡が流下可能なスロット状流路
が列設されると共に、前記複数の整流板の外周面には、球面状部の弁座対向面が形成され、前記弁座対向面は、弁閉状態から中間開度状態までの範囲に設けられ、前記弁座対向面と前記弁座の隙間は、弁閉状態から中間開度状態まで一定とした縮流部とし、前記縮流部で増加した水中の気泡が他の気泡同士と干渉しない状態でオリフィス側の下流に設けられた前記整流板の前記スロット状流路を整流させながら流下させるようにしたことを特徴とする
水用バタフライバルブ。
【請求項2】
前記整流板は、前記弁座対向面と、この弁座対向面の頂部から前記弁軸側に向けて形成されたテーパ部とで略三角形状を呈している
請求項1項に記載の
水用バタフライバルブ。
【請求項3】
前記スロット状流路の幅は、前記弁箱内の流路中に発生する気泡の直径と同等か、或は発生する気泡の最大直径より一桁大きい程度である
請求項1又は請求項2に記載の
水用バタフライバルブ。
【請求項4】
それぞれの前記スロット状流路の幅は、略等間隔に設けられている
請求項1乃至3の何れか1項に記載の
水用バタフライバルブ。
【請求項5】
前記スロット状流路の幅は、呼び径150~400Aにおいて、5~10mmに設定された
請求項1乃至4の何れか1項に記載の
水用バタフライバルブ。
【請求項6】
前記弁座対向面は、前記弁体の閉状態から中間開度状態までの範囲に設けられ、この弁座対向面の弁翼側領域の頂部付近が平にカットされた
請求項1乃至5の何れか1項に記載の
水用バタフライバルブ。
【請求項7】
前記弁座対向面は、前記弁体の閉状態から中間開度状態までの範囲に設けられ、この弁座対向面の弁翼頂部から前記弁軸の天地側に向けて略45°方向を中心とする領域の頂部付近がそれぞれ平にカットされた
請求項1乃至6の何れか1項に記載の
水用バタフライバルブ。
【請求項8】
前記弁座対向面の先端側が流路方向に対して断面三角形状に形成されて案内面が設けられ、この案内面により流体を前記スロット状流路の方向に案内するようにした
請求項1乃至7の何れか1項に記載の
水用バタフライバルブ。
【請求項9】
前記整流板の根本付近の前記スロット状流路にアール面部が設けられた
請求項1乃至8の何れか1項に記載の
水用バタフライバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開度変化における流量特性の適正化とキャビテーション発生の抑制とを兼ね備えたバタフライバルブに関し、特に、水道用配管ラインに好適であり、流量を所定の値に保つための流量制御に使用されることを前提に、キャビテーション抑制を実現した水用バタフライバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バタフライバルブは、他の制御用バルブに比較して軽量であり、開閉に要するトルクが小さく、低価格でもあり、流量特性も良好であるなどの理由により広く用いられている。このことから、バタフライバルブは、例えば水道用配管にも、全閉又は全開で使用されるオン・オフ弁としての用途に加えて、流量制御弁として用いられることも多い。
【0003】
図20においては、バタフライバルブを流量制御弁として用いる場合のキャビテーション流れの流路解析の模式図を示している。図に示すように、低開度(流路を絞ったとき)の状態では、この絞られた部分である縮流部、すなわち弁体周縁部とボデー側に設けられた弁座面付近では流速が速くなり、これに伴って流れの圧力が低下する。流体には通常の場合、撹拌等により空気を巻き込むため、目視では確認が難しい微小な気泡核(空気および流れている流体の蒸気を含む。)が含まれ、縮流部の圧力が流体の飽和蒸気圧力まで降下すると流体が気泡核の内部に向かって蒸発し始め、目視できる程度の大きさの気泡に成長する。(気泡核は流体が蒸発する空間を提供し、蒸発を促すトリガーの役割を果たしている。)この気泡は流体とともに下流側に流れる時間によって成長する。そして、気泡は、縮流部の通過後に流速の低下による圧力回復により即座に崩壊することになる。このような蒸気泡が形成される現象はキャビテーションと呼ばれ、蒸気泡が崩壊するときには圧力変動が生じて騒音や振動が発生しやすくなり、蒸気泡の崩壊により衝撃圧が生じることで、壊食(エロージョン)による破壊の原因にもなっている。
【0004】
縮流部よりも下流側において、流路方向の弁体の前縁側、すなわちオリフィス側では弁体を超えるように縮流が発生し、一方、弁体の後縁側、すなわちノズル側では配管の管壁に沿って管の上方のオリフィス側に向けて流れが生じる。これらオリフィス側からの縮流とノズル側からの流れが弁体の下流側で干渉することとなり、この干渉によって
図20の円で囲まれた領域に示すように、オリフィス側の管壁から弁体背面側に垂れ下がるように発達する、特異渦と呼ばれる渦状の気泡群が発生する。このため、弁体エッジ付近でキャビテーション気泡が発生してしまうと、縮流部(弁体)の下流側ではキャビテーション気泡が成長しやすくなり、この付近でもキャビテーションを抑制することが難しくなる。
【0005】
このように、縮流部付近、及び弁体の下流側にはキャビテーションが発生しやすいことから、バルブの使用範囲(用途)が制限されることがある。
これに対して、特に、飲料のための水道用としてバタフライバルブを用いる場合には、キャビテーション現象を確実に抑制して管内の破壊・摩耗などによる前記の悪影響を回避しつつ、その弁開度に応じて適正な流量特性を発揮させることが要求されている。
【0006】
キャビテーション現象の対策を施したバタフライバルブとしては、例えば、特許文献1のバタフライ弁が開示されている。このバタフライ弁では、円筒状の弁本体内にシートリングを介して弁体が弁棒で回転可能に軸支され、弁体の外周縁とシートリングの内周面に互いに噛合し、密着する櫛歯と櫛歯状溝とが形成されている。これら櫛歯と櫛歯状溝とにより、弁閉時の流体漏れの阻止に加えて、弁開時には整流作用を働かせてキャビテーションを抑制しようとしている。
【0007】
特許文献2のバタフライ弁においては、双曲面を有する弁体本体部の外周部に、弁体閉じ方向に突出した環状板に多数の通孔が設けられた閉じ側と、櫛歯状の複数の突起部が突出形成された開き側とが設けられている。この弁ではオリフィス側の閉じ側による整流作用で流れを分散させることで下流側の負圧の発生を抑制しつつ、キャビテーションの成長も抑えようとしている。一方、ノズル側では、流体が、環状板の各通孔を通って弁体の周縁と弁箱内周面との間に放射状にガイドされつつ、下流側に流れるようになっている。
【0008】
特許文献3では、弁体の上流側背面及び下流側前面の周縁部近傍に複数のくし歯状突起が円弧状に設けられ、これらくし歯状突起の半径方向内側が凸状の緩やかな曲面で形成されている。この緩やかな曲面の裏面は椀形に形成され、この椀形部に流路軸線と平行な整流溝が設けられている。これにより、オリフィス側では、流体が弁体の周縁部から背面側に流れ、くし歯状突起同士のくし歯間隙、ゆるやかな曲面、椀形裏面の整流溝を通って流出されることで、乱流の少ないジェット流としてキャビテーションの発生を抑えようとしている。一方、ノズル側ではゆるやかな曲面からくし歯状突起同士のくし歯間隙を通る間に流れが細分化されて、ジェット流となって下流側に流出される。このジェット流は、オリフィス側から弁体の背面に沿って流れる流体と合流して下流側に流出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実公平3-32845号公報
【文献】特開2015-129550号公報
【文献】特許第3086793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献1のバタフライ弁では、弁開時に弁体の櫛歯とシートリングの櫛歯状溝との隙間により流体を細いジェット流で流して耐キャビテーション性を向上しようとしているが、これら櫛歯と櫛歯状溝との間の縮流部付近では一時的に整流化を図ることは可能にはなるものの、弁体の下流側での整流化を図ることが困難となる。すなわち、流体が櫛歯と櫛歯状溝との間を通過する際に、激しい渦流れにより気泡が分裂・合体を繰り返して弁体下流側で成長し、オリフィス側、ノズル側からの流れが弁体下流側で干渉するために、この弁開下流側付近の特異渦によるキャビテーションを抑制することは難しい。
【0011】
これに加えて、このバタフライ弁では、櫛歯と櫛歯状溝とがテーパ状に形成され、これらの形成角度により流量特性が変化する態様であるために、弁体開度に応じて流量を所定の値に適正に保ちつつ流量制御することが難しくなる。
さらに、櫛歯状溝をゴム製シートリングの内周面に形成していることからシートリングの加工が複雑であり、その精度も要求されるという問題も有している。
【0012】
特許文献2の場合、環状板に設けた多数の通孔を通過させて整流化を図ろうとしているが、この通孔を通過した流体が弁体下流側に分散することで相互に干渉して気泡群が発生しやすくなる。このため、このバタフライ弁では、弁体と弁箱の弁座側との間の縮流部付近から弁体の下流側の広い範囲にかけて特異渦が成長しやすくなり、開度変化における流量特性の適正を図りつつ、キャビテーションを抑制することが難しい。
【0013】
特許文献3のバタフライ弁では、弁体のくし歯状突起の間の整流溝で流体を細分化し、続いて、緩やかな曲面、整流溝を通過させて弁体背面側をジェット流とすることでキャビテーションを抑えようとしている。しかし、各くし歯状突起が載頭円錐状であることから、弁閉状態から弁開動作するときには突起の略円錐部分とシートリングの弁座部分との径方向の隙間が一定ではなくなり、弁開度に応じて縮流部を一定の割合に変化させるようになっていない。このため、このバルブは適正な流量制御が必要とされる箇所での使用には適していない。
【0014】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、弁体の低開度時の縮流部付近の整流化を図りつつ、弁体のオリフィス側の下流側での気泡同士の干渉によるキャビテーション発生や成長を抑制し、かつ特異渦の発達を抑制し、もって開度変化における流量特性の適正化とキャビテーション発生の抑制とを両立させた水用バタフライバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、円筒形状の弁箱内に円板状の弁体が弁軸を介して回動自在に設けられた水用バタフライバルブであって、弁体の少なくともオリフィス側又はオリフィス側とノズル側の外周から弁軸方向と交差する方向に沿って平行に列設状態に延伸された複数の整流板と、複数の整流板同士の間に弁箱内の流路の水中に含まれる気泡が流下可能なスロット状流路が列設されると共に、複数の整流板の外周面には、球面状部の弁座対向面が形成され、この弁座対向面は、弁閉状態から中間開度状態までの範囲に設けられ、弁座対向面と弁座の隙間は、弁閉状態から中間開度状態まで一定とした縮流部とし、この縮流部で増加した水中の気泡が他の気泡同士と干渉しない状態でオリフィス側の下流に設けられた整流板のスロット状流路を整流させながら流下させるようにした水用バタフライバルブである。
【0019】
請求項2に係る発明は、整流板は、弁座対向面と、この弁座対向面の頂部から弁軸側に向けて形成されたテーパ部とで略三角形状を呈している水用バタフライバルブである。
【0020】
請求項3に係る発明は、スロット状流路の幅は、弁箱内の流路中に発生する気泡の直径と同等か、或は発生する気泡の最大直径より一桁大きい程度である水用バタフライバルブである。
【0021】
請求項4に係る発明は、それぞれのスロット状流路の幅は、略等間隔に設けられている水用バタフライバルブである。
【0022】
請求項5に係る発明は、スロット状流路の幅は、呼び径150~400Aにおいて、5~10mmに設定された水用バタフライバルブである。
【0023】
請求項6に係る発明は、弁座対向面は、弁体の閉状態から中間開度状態までの範囲に設けられ、この弁座対向面の弁翼側領域の頂部付近が平にカットされた水用バタフライバルブである。
【0024】
請求項7に係る発明は、弁座対向面は、弁体の閉状態から中間開度状態までの範囲に設けられ、この弁座対向面の弁翼頂部から弁軸の天地側に向けて略45°方向を中心とする領域の頂部付近がそれぞれ平にカットされた水用バタフライバルブである。
【0025】
請求項8に係る発明は、弁座対向面の先端側が流路方向に対して断面三角形状に形成されて案内面が設けられ、この案内面により流体を前記スロット状流路の方向に案内するようにした水用バタフライバルブ。
【0026】
請求項9に係る発明は、整流板の根本付近のスロット状流路にアール面部が設けられた水用バタフライバルブである。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によると、弁体の低開度時の縮流部付近の整流化を図り、オリフィス側とノズル側からの流れの干渉によって発生する特異渦の発達を抑制し、弁体下流側でのキャビテーション気泡群の成長を防ぐ。これにより、弁開度の変化における流量特性の適正化とキャビテーション発生の抑制とを両立させることができる。
【0028】
また、弁体が、平行に列設状態に延伸された複数の整流板と、整流板同士の間のスロット状流路と、整流板の外周面の球面状部からなる弁座対向面とを有し、この球面状部を弁体外周に沿って形成していることにより、弁体の低開度時には、球面状部により、弁座側との隙間をごくわずかな一定量に絞り、流体をスロット状流路に案内して優れた流量特性を発揮しつつ流体を流すことができる。しかも、球面状部と弁座との間からの漏れを抑えていることで耐キャビテーション効果も発揮する。整流板の間に設けたスロット状流路により、縮流部付近の整流化を図って流速の急激な増加による圧力低下を防止し、キャビテーションを抑制した状態で弁開度に応じた所定流量を流すことができる。これらのことから、球面状部で流量特性を向上し、整流板のスロット状流路で耐キャビテーション効果を高め、弁体のオリフィス側よりも下流側における整流化を図り、オリフィス側の流れとノズル側の流れとが合流する弁体下流側に生じる剥離域での激しい流体の衝突を防止し、気泡同士の干渉を抑制可能になる。これにより、弁体下流側の気泡群の成長を防いで特異渦の発達を抑制し、もって弁開度の変化に応じた流量特性の適正化とキャビテーション発生の抑制とを両立した水用バタフライバルブを提供できる。
【0029】
さらに、弁体の閉状態からキャビテーション発生が激しくなる中間開度状態までの範囲に弁座対向面を設け、この範囲内で弁座対向面と弁座との隙間を一定に設けていることで、この中間開度の範囲内で弁箱と整流板とを接触に近い状態にしてその絞られた隙間からの流れを防ぎ、スロット状流路の方向に水を案内させることが可能になる。これにより、縮流部の通過による特異渦の発達を抑制してキャビテーション抑制に寄与し、スロット状流路により整流作用が発揮されることで流量特性も向上し、閉状態から中間開度状態の範囲までに発生しやすいキャビテーションの成長の原因となる特異渦の発生を抑制すると共に、縮流部での水中の気泡同士の干渉による気泡の崩壊を確実に防ぐことが可能となり、キャビテーションの発生を著しく低減することができる。
【0030】
請求項2に係る発明によると、整流板が略三角形状を呈していることにより、整流板同士の間の略三角形状のスロット状流路を介してバルブの口径軸芯方向の流れを整流化しつつ、その広い接触面積により水の速度を減じてキャビテーション発生の抑制効果を向上する。
【0031】
請求項3に係る発明によると、スロット状流路の幅を、弁箱内の流路中に発生する気泡の直径と同等か、或は発生する気泡の最大直径より一桁大きい程度としていることにより、弁体のオリフィス付近から発生する気泡同士の干渉によるキャビテーション成長を抑制し、かつスムーズに流して整流化を図ることができる。
【0032】
請求項4に係る発明によると、スロット状流路の幅を略等間隔に設けることができ、精度を要することなく適宜間隔で設けることも可能であることから製作も容易になる。
【0033】
請求項5に係る発明によると、弁体の周縁と弁箱の弁座との隙間に生じる気泡の直径が最大500μm程度の場合でも、スロット状流路を介して流体をスムーズに流すことができる。
【0034】
請求項6に係る発明によると、弁体の開方向への回転時には、弁座対向面における弁翼側領域の頂部付近のカット面がそれ以外の部分よりも早く弁座から離れることで、弁座対向面と弁座とが対向状態のときに発生するキャビテーションが、各整流板の頂部で一斉に生じないようにすることができる。これによって、弁体の同一開度で弁座対向面が弁座から一度に離れることを防ぎ、整流板外周面付近に発生しようとするキャビテーションを分散させて抑制することができる。また、弁体の閉方向への回転時においては、弁座対向面における弁翼側領域の頂部付近のカット面がそれ以外の部分よりも遅く弁座に近接することで、弁座対向面と弁座とが対向状態のときに発生するキャビテーションが、各整流板の頂部で一斉に生じないようにすることができる。これによって、弁体の同一開度で弁座対向面が弁座に一度に近接することを防ぎ、整流板外周面付近に発生しようとするキャビテーションを分散させて抑制することができる。
【0035】
請求項7に係る発明によると、弁体の開方向への回転時には、弁座対向面における天地側から略45°付近の領域のカット面がそれ以外の部分よりも早く弁座から離れることで、弁座対向面と弁座とが対向状態のときに発生するキャビテーションが、各整流板の頂部で一斉に生じないようにすることができる。これによって、弁体の同一開度で弁座対向面が弁座から一度に離れることを防ぎ、整流板外周面付近に発生しようとするキャビテーションを分散させて抑制することができる。又、弁体の閉方向への回転時においては、弁座対向面における天地側から略45°付近の領域のカット面がそれ以外の部分よりも遅く弁座に近接することで、弁座対向面と弁座とが対向状態のときに発生するキャビテーションが、各整流板の頂部で一斉に生じないようにすることができる。これによって、弁体の同一開度で弁座対向面が弁座に一度に近接することを防ぎ、整流板外周面付近に発生しようとするキャビテーションを分散させて抑制することができる。
【0036】
請求項8に係る発明によると、整流板の案内面によって弁座対向面と弁座との間の流体をスロット状流路の方向に案内し、各整流板の頂部と弁座の間の流速を低下させることによってキャビテーション発生を抑えることができる。
【0037】
請求項9に係る発明によると、整流板の根本付近のスロット状流路にアール面部を設けていることにより、このアール面部を通してスムーズに水が流れて微小開度時におけるキャビテーション発生を確実に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明のバタフライバルブの実施形態を示す一部切欠き側面図である。
【
図3】(a)は弁体の横断面図である。(b)は
図3(a)のA-A拡大矢視図、B-B拡大矢視図である。
【
図4】(a)は
図2の弁体の正面図である。(b)は
図2の弁体の背面図である。
【
図5】弁体の回転動作過程を示す概略断面図である。
【
図6】比較品1のバタフライバルブを示す断面図である。
【
図7】比較品2のバタフライバルブを示す断面図である。
【
図8】供試品1と比較品との流量特性の比較を示すグラフである。
【
図9】供試品1の正流れ、逆流れ時の流量特性を示すグラフである。
【
図10】供試品1、比較品の弁開度に対するキャビテーション係数を示すグラフである。
【
図11】本発明のバタフライバルブの他の実施形態を示す断面図である。
【
図14】(a)は弁体の第4実施例を示す供試品3の斜視図である。(b)は(a)の正面図である。
【
図15】(a)は
図14の弁体が40%回転した状態を示す断面図である。(b)は(a)の止水面における弁体の側面図である。
【
図16】(a)は
図14の弁体が15%回転したときのオリフィス側の拡大断面図である。(b)は
図14の弁体が15%回転したときのノズル側の拡大断面図である。
【
図17】弁体の第5実施例を示す供試品4の正面図である。
【
図18】(a)は
図17の弁体が40%回転した状態を示す断面図である。(b)は(a)の止水面における弁体の側面図である。
【
図19】供試品と比較品とのキャビテーション特性の比較を示すグラフである。
【
図20】キャビテーション流れの流路解析を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明におけるバタフライバルブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明のバタフライバルブの実施形態を示し、
図2~
図4においては、バタフライバルブに用いられる弁体の第1実施例を示している。
【0040】
本発明のバタフライバルブは、弁箱(ボデー)1、弁体2、弁軸3を有し、弁箱1内に弁軸3を介して弁体2が回動自在に設けられる。このバルブの面間は、「日本水道協会 JWWA B138 水道用バタフライ弁」の規定寸法に準じて設定される。
【0041】
図1に示した弁箱1は、ダクタイル鋳鉄などの金属材料により円筒形状に形成され、その内周面には、環状のシール用弁座4が流路5の方向に所定幅で一体に形成されている。弁箱1内の弁座4よりも下流側には、略球面状に広がるように凹状球面部6が形成され、この凹状球面部6に弁体2の外周の一部が(後述する球面状部からなる弁座対向面22)が対向し、これにより、弁体2のノズル側(下流側)の流路が一定の開口面積に保たれている。図示しないが、弁座4の表面は硬質クロムめっき等のめっきが施され、弁箱1の内外面は、エポキシ樹脂粉体塗装などの塗装が施されている。
【0042】
図2~
図4において、弁体2は、弁本体10、シールリング11、弁座押え12を有し、弁軸3と弁箱内弁座4が偏心した一重偏心型(単偏心型)に構成される。弁本体10、弁座押え12は、SCS13などのステンレス材料により、例えばロストワックス鋳造で略円板状に形成される。これらがシールリング11を挟んだ状態で一体化されることで弁体2が構成され、弁本体10が下流側、弁座押え12が上流側に配置された状態で、弁体2が弁箱1内に取り付けられる。
【0043】
弁本体10は略円板状に設けられ、この弁本体10の下流側の上下部には弁軸固定用の円筒部13が形成される。円筒部13内には弁軸3が挿入され、この状態で弁体2が弁箱1内に取付けられる。
【0044】
図2、
図3、
図4(a)において、弁本体10のオリフィス側の背面側(下流側)には、複数の整流板20が弁本体10と一体に形成され、この整流板20は、弁本体10のオリフィス側外周から弁軸3方向と交差する方向、本実施形態では流路5方向に沿って平行に列設状態に延伸されるように形成される。複数の整流板20を設けることで、各整流板20同士の間には、スロット状流路21が略等間隔に設けられる。
【0045】
弁開時には、スロット状流路21を介して流体が流れ、このスロット状流路21によって流体がバルブの流路5方向に整流化されつつ気泡と気泡との干渉が防がれる。これにより、後述するように弁体2の下流側に発生する特異渦の発生が抑えられ、キャビテーションの発生が抑制される。
【0046】
整流板20の外周面には、弁本体10の外周に沿うように弁座対向面22が形成され、この弁座対向面22は球面状部からなっている。球面状部22の中心は、弁軸3固定用の円筒部13の軸心Pと同軸となっている。球面状部22の外径は、弁箱1内の弁座4内径よりもやや小径になるように形成され、これにより、弁箱1への弁体2の取付後には、球面状部22と弁座4との間に隙間G(
図1および
図5(b))が設けられ、この隙間Gにより弁体2回転時の弁座4との接触が防がれる。
【0047】
弁体2を回転したときには、球面状部(弁座対向面)22が弁座4に対向した状態で近接する。この弁座対向面22は弁座4の形状に近い形状に設けられている。
【0048】
図3(a)に示すように、球面状部22は、弁体2の閉状態から中間開度状態までの範囲に設けられ、本実施形態では、弁体2の閉状態から弁開度40°の中間開度状態までの範囲となる角度θにより設けられる。これにより、整流板20が流路方向にその長さが大きくなるように形成され、この弁開度の範囲内では球面状部22と弁座4との隙間Gが一定となる。球面状部22は、任意の中間開度の弁開度となる角度θにより設けることができ、バルブのサイズ展開を考慮した場合、弁開度30°~45°の中間開度状態となる角度θで球面状部22を設け、その外周を弁座4に対向させるようにするとよい。
【0049】
球面状部22の中間開度側の終点である頂部にはアール状に面取りされたアール部23が形成され、このアール部23から弁軸3側に向けて直線状のテーパ面24が形成されて、整流板20の高さの軌跡が、球面状部22とテーパ面24とによる略三角形状を呈している。テーパ面24の弁軸3側の端部25は円筒部13の側方まで延設され、テーパ面24の長さが弁軸3付近から弁箱1内の管頂部付近までとなるように各整流板20が形成される。
【0050】
図3(b)においては、
図3(a)におけるA-A拡大矢視図、B-B拡大矢視図を示している。図に示すように、球面状部22、テーパ面24の角部には、それぞれアール面32が形成されている。
【0051】
図2~
図4において、整流板20は適宜の枚数、間隔により形成可能であり、この整流板20を予め所定間隔に設定することで、スロット状流路21の幅Wが設定される。
幅Wは、弁箱1内の流路5中に発生する気泡の直径と同等か、或は発生する気泡の最大直径より一桁大きい程度に設定されている。本実施形態では、バタフライバルブの呼び径が150~400Aにおいて、5~10mm程度に設定される。具体的には、例えば、φ150mmのサイズのバルブでは5mm程度、φ300mmのサイズのバルブでは8mm程度とすればよい。幅Wを任意の大きさに設定することで、整流板20間の開口面積を変えることも可能になっている。
【0052】
スロット状流路21により弁体2と弁座4との間に形成される開口流路Sの面積は、幅Wが一定で弁開度に比例するように設定されている。そのため、弁開度に応じて弁座4の下流側で得られる流量が所定の値に保たれるようになっている。
【0053】
整流板20は円筒部13の流路側頂部付近まで延設し、円筒部13と一体に成形することも可能ではあるが、この場合、弁軸3に干渉したり、偏心型の弁本体10の弁軸3の天地部分で弁箱1と干渉しないようにする必要がある。このことから、整流板20の高さは、本実施形態のように円筒部13の高さよりも低くすることが望ましい。整流板20をできるだけ大きく設ける際には、端部25を円筒部13との境界付近まで近づけるほうがよい。
【0054】
図3に示すように、弁本体10における整流板20の形成面との反対の外径面には段部状の環状溝部26が形成され、この環状溝部26には、シールリング11の一部が嵌合状態で装着可能になっている。弁本体10における環状溝部26の内径側にはめねじ27が所定間隔に設けられ、このめねじ27には、六角穴付きボルトからなるボルト部材28が螺合可能に設けられる。本例では、めねじ27は同一ピッチ円で10箇所に形成される。
めねじ27よりもさらに内径側には肉盗み部29が形成され、この肉盗み部29により弁体2全体の軽量化が図られる。
【0055】
シールリング11はゴム材料により環状に形成され、弁本体10の環状溝部26に嵌合可能な内径側の断面矩形状の装着部30と、この装着部30の外径側には弁座4に当接シール可能な突起状の弁座部31とを有している。弁座部31は弁体2の全閉状態時に弁座4に密着し、流路5を止水できるように設けられる。
【0056】
図2、
図3、
図4(b)において、弁座押え12は、その円形部分が弁本体10と略同径に形成され、この弁座押え12のノズル側の流路の表面側(上流側)には、複数の整流板40が弁本体側と同じ枚数、間隔で弁軸3方向と交差する方向(流路方向)に沿って平行に列設状態に延伸されて一体に形成される。整流板40の弁座押え12表面方向の長さは、弁体2の直径の略50%程度に形成される。整流板40の外周面には、整流板20と同様に球面状部22、アール部23、テーパ面24が形成され、これら球面状部22とテーパ面24とにより、整流板40の高さの軌跡が略三角形状に設けられる。
【0057】
この場合、弁軸3が弁閉状態から40°回転した際に、整流板20、40の各アール部23が弁座4の位置に配置されるように、整流板20のアール部23並びに端部25、整流板40のアール部23並びにその弁軸方向の端部41が略同一線上に配置される。整流板40側の端部41は、前述したように弁体2の直径の略50%の位置まで延設される。
【0058】
整流板40同士の間には、弁本体10(オリフィス側)と同様にスロット状流路42が幅Wで形成され、このスロット状流路42によりバルブの流路方向に流体を整流化しつつ、弁開度に応じてノズル側に形成される開口流路Sの流量を確保して所定の流量特性が得られる。
【0059】
弁座押え12の弁本体10の環状溝部26と対向する位置には環状段部43が形成され、この環状段部43にシールリング11の装着部30が係合可能になっている。環状段部43の内径側におけるめねじ27との対向位置には、ボルト部材28挿入用の貫通孔44が形成されている。この貫通孔44の形成位置に対応して、整流板40にはボルト部材28の挿入のための切欠き部45が設けられる。
【0060】
弁本体10と弁座押え12とは、環状溝部26、環状段部43の間にシールリング11が装着されてこのシールリング11を挟んだ状態で、ボルト部材28のめねじ27への螺合により固定されて一体化され、これにより弁体2が設けられる。ボルト部材28の締付け後には、弁座部31の先端側が弁本体10、弁座押え12の外径よりも外周側に突出した状態となる。
【0061】
弁体2の円筒部13、13には弁軸3が挿入され、弁軸3に形成されたテーパ孔46に、円筒部13の上から外ねじ47付きのテーパピン48が挿入される。外ねじ47にナット49が締め付けることで、テーパピン48とナット49とにより弁軸3が円筒部13に固定される。
【0062】
本実施形態のバタフライバルブは、弁体2における弁軸3のない弁体表面を上流側とする流れを「正方向」とし、弁軸3を回転軸芯として弁開作動時に上流側に回動する側を前述の「オリフィス側」、下流側に回動する側を前述の「ノズル側」とするものとする。
【0063】
なお、前述した整流板は、少なくとも弁本体10のオリフィス側の背面側に形成されていればよいが、本実施形態のように、オリフィス側の背面と弁座押え12のノズル側の表面側の双方に整流板20、40がそれぞれ設けられていてもよい。
本例では、
図1のバルブに対して右側から流体が流れるようになっているが、この流れが逆であってもよい。その場合、弁体2のオリフィス側、ノズル側も逆になり、前述の場合と同様の機能を発揮可能となる。
【0064】
各整流板20、40は、オリフィス側、ノズル側の何れにおいても、略三角形状のみならず半円状や略四角状の任意の形状に形成することもできる。
【0065】
弁座対向面22は、弁体2の回転時に弁座4に対向した状態で近接させるようにすれば、球面状部以外の形状に設けることもでき、例えば、弁座対向面22を構成する部分を直線状や多角形状に設けるようにしてもよい。これらの場合、整流板20、40が必要以上に大きいと流体抵抗が不必要に増大するため、弁体2の中間開度から全開までの開口流路Sの面積を確保し、確実に弁開度に応じて所定流量を得られるように整流板20、40の寸法や形状、枚数や間隔を適宜設定する必要がある。
【0066】
各整流板20、40は、弁軸3と交差する方向であれば、流路5方向に限らず流路5から任意の角度を設けて形成することもできる。
【0067】
スロット状流路21、42は、製造公差も考慮した上で略等間隔であればよく、多少の誤差が生じていてもよい。スロット状流路21、42の幅Wは、不等間隔に設けられていてもよく、この場合、整流板20、40の間隔を変えることで任意の大きさの幅Wに設定できる。例えば、
図1において、弁体2の中央側(弁体2の弁翼付近)のスロット状流路21、42の間隔を狭くし、上下側(弁体2の天地付近)の間隔を広げるようにすれば、弁体2の低開度時の機能性を高めることができ、弁本体10、弁座押え12の製作も容易となる。スロット状流路21、42を不等間隔に設ける場合には、例えば、幅Wが、弁体2の中央付近で約5mm、上下付近で約10mm程度になるように設定するとよい。
【0068】
弁軸3固定用の円筒部13は、弁本体10の上流側に設けられていてもよく、この場合、オリフィス側の整流板の表面方向の長さを弁体直径の略50%程度に設け、流体との接触面積を大きくできる。
【0069】
図3(a)において、肉盗み部29は弁本体10側に限らず、弁座押え12側、或は弁本体10と弁座押え12の双方に形成されていてもよく、これらの間に中空部を形成して弁体2全体の軽量化を図るものであれば、その態様にこだわることはない。また、肉盗み部29を設けないようにしてもよい。
【0070】
次いで、上述した実施形態の
図1のバタフライバルブについて、右から流した場合の弁開度に応じた流体の流れとその作用を説明する。
図5は弁体2を回転動作するときの過程の概略断面図を示している。流体は図において右側から左側に流れる。
図5(a)においては、弁体2の弁開度0°の状態(全閉状態)を示しており、この場合、シールリング11の弁座部31が弁座4に密着し、流路5がシールされた状態にある。
【0071】
図5(b)は、
図5(a)の状態から弁軸3を左回転して弁体2を弁開度10°に設けた状態を示している。このときには、オリフィス側、すなわち図の下部側において、弁体2の外周である弁座部31と弁座4との間にわずかな隙間Gが生じ、この隙間Gから流体が左方向に流れ出す。隙間Gを通過した流体は、スロット状流路21を通過して流路方向に整流化される。
【0072】
ノズル側(
図5(b)の上部側)においても、弁座部31と弁座4との間にわずかな隙間Gが生じ、この隙間Gを介して流体が流れ出す。この流れは弁体2の外周と弁箱の内周との間の流路である凹状球面部6に導かれる。
【0073】
図5(c)は、弁開度20°まで弁体2を回転した状態を示している。この場合、オリフィス側において、整流板20で囲まれたスロット状流路21と弁座4との開口流路Sを中心に流体が流れる。流体が流れる際には、整流板20により流路方向に整流化され、気泡と気泡との干渉が防がれてキャビテーションの発生が抑制される。
さらに、流体が整流板20の側面に接触しながら流れることで側面との摩擦による摩擦損失が生じ、この摩擦損失により流速が減じられてキャビテーション発生がより一層抑えられる。
【0074】
弁体2のノズル側においても、整流板40で囲まれたスロット状流路42と、弁座4との開口流路Sを中心に流体が流下する。この流れは、弁体2の外周と弁箱1の内周との間の流路に導かれることで、所定の流量が維持された状態となる。
【0075】
図5(d)は、弁開度40°の状態を示している。この場合、オリフィス側では、開口流路Sからキャビテーションの発生が抑制された状態で流体が流下する状態が継続される。特に、流体がスロット状流路21を通過することにより、弁開動作時からこの弁開度40°までの範囲内で、所定の流量、例えばイコールパーセント特性(弁開度の増分と、容量係数(Cv値)の増加比率とが等しくなる特性)が得られる。
【0076】
弁体2のノズル側においても、スロット状流路42と弁座4との開口流路Sからの流体の流下が継続される。特に、流体がスロット状流路42を通過し、その後に弁体2の外周と弁箱1の内周との間の広がった流路である凹状球面部6に導かれることで上述したように所定流量が維持される。
【0077】
本実施形態では、弁座4が所定幅に設けられていることから、弁開度が40°から弁開度45°付近まで上記の状態が継続され、キャビテーションの抑制機能が確実に発揮される。
【0078】
図5(e)は、弁開度60°の状態を示している。弁開度45°付近を超えると、オリフィス側においては、整流板20が弁座4との対向状態から離れ、弁体2と弁箱1との間が大きく開いた状態となる。このため、流路が拡大して流量を増大させながら所定流量を確保することが可能となる。
【0079】
ノズル側においては、整流板40が弁座4との対向状態から離れるが、引き続きこの整流板40が凹状球面部6に対向しているため、流体がスロット状流路42を中心に流れて所定の流量が維持される。
【0080】
図5(f)は、弁開度90°、すなわちバルブの全開状態を示している。この場合、ノズル側において、整流板20が凹状球面部6との対向状態から離れることで弁体2と弁箱1との間が大きく開き、オリフィス側の開口状態とともに最大の流量が得られるようになる。
【0081】
以上のことから、本発明のバタフライバルブは、弁体2のオリフィス側とノズル側の複数の略三角形状の整流板20、40、これら整流板20、40同士の間に設けられるスロット状流路21、42、整流板20、40外周面の球面状部からなる弁座対向面22を設けていることにより、弁開度0°よりも大きく弁開度45°付近までの低開度から中間開度の弁開度の状態では、流体がスロット状流路21、42に沿って流路5の方向に流れ、それ以上の弁開度では大流量が確保される。
【0082】
低開度から中間開度の状態では、弁体2と弁座4との間に一定面積に設けた開口流路Sを介して弁開度の増加とともにリニア状に流量を増加させつつ所定流量を確保し、弁体2と弁座4付近との間の整流化を図ることが可能となる。この場合、オリフィス側にテーパ面24の長さが弁軸3付近から弁箱1の管頂部付近までとなる整流板20、ノズル側にその長さを弁体直径の略50%程度に設けた整流板40を有していることで、オリフィス側、ノズル側の双方で低開度時の縮流部の流路全体に渡って整流化でき、キャビテーション成長の原因となる特異渦の発生を抑制し、かつ縮流が最も激しくなる流路5の管頂部付近の流れの乱れも確実に防止する。
【0083】
整流板20、40を流路方向にも長く形成していることで、スロット状流路21、42による気泡の干渉防止機能が向上する。整流板20、40を流路5方向に平行に形成していることで、流体がスロット状流路21、42を通過するときの流体抵抗を抑え、気泡同士の干渉を極力抑える。
【0084】
整流板20、40にアール部23、球面状部22、テーパ面24の角部にそれぞれアール面32を設けていることにより、これらアール部23、アール面32に沿うように流体が流れることで、流れがスムーズになる。
【0085】
この場合、弁開度を絞った微小開度の縮流部において、特に、整流板20によりオリフィス側における気泡同士の干渉による成長を防いでキャビテーションを抑制可能になる。
その結果、弁体2の下流側の剥離域では、オリフィス側とノズル側からの流れの激しい衝突を防止して特異渦の発達を防止できる。このように弁体2通過時の圧力損失を減少して剥離域における圧力低下を小さくし、気泡群の発達を防止することで、弁体5の下流域のキャビテーションの発生を確実に抑制でき、騒音や振動も小さくできる。
【0086】
図1のバルブに対して上記と逆の左から右に流体が流れる際には、弁座押え12の整流板40がオリフィス側となる。この場合にも、上記と同様に整流板20、40のスロット状流路21、42により整流化でき、特に、オリフィス側の整流板40で気泡の成長を防ぎ、耐キャビテーション効果を発揮する。これにより、弁体2の下流側の特異渦の発達を防いでキャビテーションの発生を抑えつつ、優れた流量特性を維持しつつ流体を流すことができる。
【0087】
スロット状流路21、42の幅Wを、呼び径150Aで5mm程度、300Aで8mm程度に設けていることで、弁体2の前縁付近に発生する気泡の最大直径が500μm程度となる場合でも、この気泡をこのスロット状流路21、42を介して気泡同士の干渉を防ぎつつ滞りなく流すことができる。そのため、気泡群の繰り返しの分裂・合体による成長を抑えることが可能となる。
【0088】
これらのように、流れの圧力が下がる箇所である、弁体2と弁座4との間付近の縮流部、及び弁体2後縁側と弁箱1内管壁との間の縮流発生付近の気泡の干渉を抑制し、弁開度を絞った場合にもキャビテーションを抑制した状態で、その流量を所定の値に保ちつつ微小流量に制御でき、流量特性の適正化を図ることが可能となる。
【0089】
次に、本発明の前述した実施形態のバタフライバルブによる供試品と、その他の構造のバタフライバルブの流量特性を比較する。
図6、
図7においては、本発明のバタフライバルブとの比較用のバタフライバルブをそれぞれ示している。
【0090】
図6に示したバルブ(比較品1)50は、整流板を有しない単偏心型のバタフライバルブであり、弁箱部51、略平板状に形成されたジスク52、ステム53を有している。ジスク52の上流側にはステム53固定用の筒体部54が形成され、この筒体部54によりジスク52がステム53を介して回転可能に取付けられている。
【0091】
一方、
図7に示したバルブ60(比較品2)は、流体の整流化を図るための平板状の整流プレート61を有する単偏心型のバルブであり、この整流プレート61に加えて、弁箱部62、略円板状のジスク63、ステム64を有している。ジスク63の下流側にはステム64固定用の筒体部65が形成され、この筒体部65によりジスク63がステム64を介して回転可能に取付けられる。整流プレート61には整流用の複数の連通孔66、切欠き溝67が形成され、これらによりジスク63の下流側で流体が整流化されるようになっている。
上記比較品1、比較品2は、本発明のバタフライバルブの供試品1と同じ呼び径の大きさで設けられる。
【0092】
図8において、前記供試品1、比較品1、比較品2の0°から90°までの弁開度に対するCv値の変化、すなわち流量特性の比較を示している。
このグラフより、供試品1は、10°~80°程度までの弁開度の領域において、比較品1、比較品2に比較して弁開度に対するCv値が低くなる傾向にあり、弁開度の増加に伴うCv値の増加も少ない。弁開度に対してCv値の変化が小さいと、流量変化に対して弁開度の変化量が大きくなるため流量制御が容易となる。このことから、供試品1は、10°~80°までの流量制御性が向上し、特に、10°~40°の低開度において、比較品1、比較品2に比べて流量制御性を改善しつつリニア状に流体を流し、キャビテーションを抑制できることが確認された。これに加えて、供試品1は、低開度以降の弁開度において、弁開度の拡大に対するCv値の増加がより大きいリニア状となることで流量を増加できることが確認された。
【0093】
これらのことから、本発明のバタフライバルブである供試品1は、低開度領域では流量を絞りつつ整流化することで、流量特性の適正化とキャビテーション発生の抑制とを両立でき、低開度領域以降の弁開度では、弁開度の増大に伴って流量を増加させて所定流量を確保できるといえる。
【0094】
図9においては、供試品1に正方向の流れ(正流れ)、又は正方向とは逆方向の流れ(逆流れ)が生じるときの0°から90°までの弁開度に対するCv値の変化を示している。図に示すように、供試品1に対して逆方向に流体を流した場合にも、
図8のグラフとほぼ同等の結果が得られた。このことから、流れ方向を限定することなくバルブを使用でき、正流れ或は逆流れの何れの流れ方向であっても、優れた流量特性と耐キャビテーション性とを両立できることが確認された。
【0095】
図10においては、比較品1、供試品1の各バルブの中間開度でキャビテーションが発生したときに、その発生をキャビテーション係数として測定したグラフを示す。供試品1と比較品1とで同じ弁開度におけるキャビテーション係数を比較したところ、比較品1に比べて供試品1が大幅に低くなり、例えば、弁開度10°では、比較品1の約1.15に対して供試品1の正流れで約0.5となり、弁開度40°では、比較品1の約2.5に対して供試品1の正流れで約0.9となった。キャビテーション係数は低いほど耐キャビテーション効果があることから、供試品1のほうが比較品1に比べてキャビテーションの抑制効果が高いことが確認された。
【0096】
さらに、この場合にも、上記と同様に流れ方向が変わったとしても(正方向、逆方向の何れの場合にも)弁開度に対するキャビテーション係数が大きく変わることはなく、比較品1に比べて供試品1のほうが低くなった。このことから、何れの流れ方向であっても供試品1が優れたキャビテーション抑制機能を発揮できるといえる。
【0097】
図11においては、本発明のバタフライバルブの他の実施形態を示している。なお、以降において、前述した説明と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
このバタフライバルブは、弁箱70、弁体71、弁軸3、シールリング73を有し、弁軸3と弁箱70内に形成される弁座74とが偏心されていない中心型のバルブとして構成される。この場合にも、前述の偏心型のバタフライバルブと同様に、ノズル側とオリフィス側のそれぞれに整流板75が平行で列設状態に延伸され、これら複数の整流板75同士の間にスロット状流路76、整流板75の外周面に球面状部からなる弁座対向面77が形成され、これにより前記と同様の機能を発揮する。
【0098】
このように、偏心型の弁体のみならず、中心型の弁体71にも本発明における構造を適用でき、この場合、整流板75がオリフィス側とノズル側で同形状となり、弁体71が弁軸3を中心とした点対称の形状となる。図においては、弁体71が弁座74に対して弁開方向に40°回転した状態を示している。
【0099】
図12においては、弁体の第2実施例を示したものである。この弁体80においては、そのオリフィス側の片面の全面に渡って弁軸方向と交差する方向(本例では流路方向)に整流板81が平行に列設され、この整流板81の間にスロット状流路82が形成される。このように、整流板81の長さを弁体直径の50%を越えるように形成したり、或は、図示しないが、弁体直径の50%よりも短い長さに設けることもできる。整流板は、弁体全体の重量を考慮しつつ任意の長さや厚さ、形状に設けて所定の整流機能を発揮できる。
図に示すように、オリフィス側に大型の整流板81を設けたときには、流れの干渉をより効果的に抑えることでキャビテーションの抑制機能が向上する。
【0100】
図13においては、弁体の第3実施例を示している。この弁体90では、オリフィス、ノズル側の両面に整流板81を設け、各整流板81の間にスロット状流路82を形成したものである。このように、
図12と同じ態様の整流板81やスロット状流路82を、ノズル側に設けることもできる。さらに、図示しないが、整流板81とは異なる形状の整流板をノズル側に設けたり、その枚数や間隔をオリフィス側とは異なる状態に配置し、これによりスロット状流路の幅を変えることも可能である。
【0101】
図14、
図15においては、弁体の第4実施例を示している。この弁体100においても、前述の弁体と同様に弁座対向面(球状面部)101が閉状態から中間開度状態までの範囲に設けられる。そして、この弁体100では、弁座対向面101の弁翼側領域Rの頂部付近が平にカットされたカット面102が形成され、このカット面102は、弁翼側頂部付近の任意の範囲の整流板20、40に対して、弁体100の平面方向と略平行に形成されている。
【0102】
弁体100を閉状態から弁開方向に回転させたときには、カット面102がそれ以外の部分よりも早く弁座4から離れるようになっている。この場合、
図15(b)に二点鎖線で示した真円からなる止水面Cに比較して、カット面102を設けた部分が中心側にある。このため、
図15(a)の弁開度30%付近から弁開度40%を中心としてカット面102と弁座4とが対向状態から離れたときにこれらの間に流路が生じ、続いて、カット面102よりもシールリング11側の弁座対向面101が弁座4から離れることで開口面積が変化するようになっている。
【0103】
図14(a)、
図14(b)に示すように、弁座対向面101の先端側には、流路方向に対して断面三角形状に形成された案内面105が設けられ、この案内面105により整流板20、40の深さ側に比べて頂部側のスロット状流路21、42が広くなっている。本例における案内面105は、各整流板20、40の流路方向と直交する弁翼頂部側の面と弁軸3天地側の面とのうち、弁翼頂部側の面が適宜の角度で切り欠かれた断面三角形状を成している。なお、案内面105は、弁軸3天地側の面に設けてもよい。
【0104】
このような案内面105を設けていることにより、弁体100の先端部が弁座対向面101付近にあるときに、案内面105により弁座対向面101と弁座4との間の流体がスロット状流路21、42の方向に案内される。本例においては、
図15(a)における角度θが40°の整流板20、40の弁座対向面101の先端側に案内面105が設けられていることで、弁開度40%~45%付近になったときにこの案内面105が弁座4に対向するようになっている。
【0105】
図14、
図16に示すように、整流板20、40の根本付近のスロット状流路21、42には、アール面部110が形成される。アール面部110は、例えば3~5mm程度のアール寸法によって形成され、弁開度15%付近になったときに弁座4に対向するようになっている。
【0106】
本例の弁体100を弁閉状態から回転し、
図16に示す弁開度15%付近の状態になったときには、
図16(a)のオリフィス側、
図16(b)のノズル側のそれぞれにおいて、アール面部110が弁座4に対向し、このアール面部110を通して流体が矢印に示すようにスムーズに流れる。このように整流板20、40の根本付近のスロット状流路21、42のエッジ部位を無くしてアール面部110を設けていることで、スロット状流路21、42が弁座4に対向するときに急激な流速の上昇を抑制し、微小開度時におけるキャビテーションの発生を防いでいる。
【0107】
続いて、弁体100を回転し、
図15(a)における弁開度が30%~45%付近となったときには、カット面102がシールリング11側の弁座対向面101よりも早く弁座4から離れる。これにより、弁座対向面101と弁座4とが対向状態のときに発生するキャビテーションが、各整流板20、40の頂部で一斉に生じないようになっている。すなわち、弁体100の同一開度で弁座対向面101が弁座4から同時に離れることを防止し、整流板20、40の外周面付近に発生しようとするキャビテーションを分散させて抑制することができる。
【0108】
弁体100の弁座対向面101の先端部が弁座4付近(弁開度が40%~45%付近)にあるときには、案内面105が弁座4に対向した状態になる。
図14(b)に示すように、案内面105は弁軸3天地側から略45°の範囲の領域Tに設けられ、その先端側の弁翼頂部側に向かう面が断面三角形状であることから、この案内面105により弁座対向面101と弁座4との間の流体をスロット状流路21、42の方向に案内し、各整流板20、40の頂部と弁座4の間の流速を低下させてキャビテーション発生を抑えることができる。このように、弁翼頂部側に比較して弁開時に隙間が小さくなる弁軸3天地側から略45°の範囲に案内面105を設けることで、この付近の流体を流れやすくして流速の上昇を抑えている。
【0109】
上述のことから、弁体100を用いたバタフライバルブの場合には、特に、スロット状流路21、42と弁座4との間に流路が生じる弁開度15%付近、及び弁座対向面が弁座から離れる弁開度40%付近のキャビテーション抑制機能を向上させることができる。
【0110】
上記の弁体100では、オリフィス側とノズル側との双方の弁座対向面101にカット面102、案内面105、アール面部110がそれぞれ設けられているが、オリフィス側のみにこれらが設けられていてもよい。さらに、弁座対向面101に対して、カット面102、案内面105のうち、何れか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0111】
図17、
図18においては、弁体の第5実施例を示している。この弁体120では、その弁座対向面(球状面部)121の弁翼頂部から弁軸3の天地側に向けて略45°方向を中心とする領域T1において、弁座対向面121の頂部付近がそれぞれ平にカットされたカット面122が形成されている。
【0112】
弁体120を閉状態から弁開方向に回転させたときには、カット面122がそれ以外の部分よりも早く弁座4から離れるようになっている。この場合、
図18(b)に二点鎖線で示した真円からなる止水面Cに比較してカット面122を設けた部分が中心側にあることで、
図18(a)の弁開度30%付近から弁開度40%を中心としてカット面122と弁座4とが対向状態から離れてこれらの間に流路が生じ、続いて、カット面122よりも弁翼頂部側の弁座対向面121が弁座4から離れることで開口面積が変化するようになっている。
【0113】
図17、
図18(a)に示すように、整流板20、40の根本付近のスロット状流路21、42には、弁体100の場合と同様に3~5mm程度のアール面部110が形成され、このアール面部110が弁開度15%付近で弁座4に対向するようになっている。
【0114】
本例の弁体120の弁開操作時において、弁開度15%付近の状態では、弁体100の場合と同様に、アール面部110によってキャビテーション発生を抑制できる。
【0115】
弁開度30%~40%付近の状態においては、カット面122が弁翼頂部側の弁座対向面121よりも早く弁座4から離れる。これにより、カット面122と弁座4との間に流路が形成され、弁座対向面121と弁座4とが対向状態のときに発生するキャビテーションが、各整流板20、40の頂部で一斉に生じないようにすることができる。すなわち、弁体120の同一開度で弁座対向面121が弁座4から同時に離れることを防止し、整流板20、40の外周面付近に発生しようとするキャビテーションを分散させて抑制できる。
【0116】
これらのことから、弁体120を用いた場合にも、スロット状流路21、42と弁座4との間に流路が生じる弁開度15%付近、及び弁座対向面121が弁座4から離れる弁開度40%付近のキャビテーション抑制機能を向上できる。
【0117】
また、弁体の閉方向への回転時においては、弁座対向面における弁翼側領域の頂部付近のカット面がそれ以外の部分よりも遅く弁座に近接することで、弁座対向面と弁座とが対向状態のときに発生するキャビテーションが、各整流板の頂部で一斉に生じないようにすることができる。これによって、弁体の同一開度で弁座対向面が弁座に一度に近接することを防ぎ、整流板外周面付近に発生しようとするキャビテーションを分散させて抑制することができる。
【0118】
この弁体120では、オリフィス側とノズル側との双方の弁座対向面121にカット面122が設けられているが、このカット面122はオリフィス側のみに設けられていてもよい。
さらに、図示しないが、前記弁体100と同様に、案内面を設けたり、弁座対向面の弁翼側領域付近に平なカット面を設けるようにしてもよい。
【0119】
次いで、上述した弁体100、120の形状を有する供試品と、比較品とのキャビテーション特性を比較する。
図19のグラフにおいては、供試品と比較品とのキャビテーション特性をそれぞれ表し、弁開度に対するキャビテーション係数を示している。
【0120】
前述したカット面102、案内面105、アール面部110、カット面122のうち、供試品2は、カット面102、アール面部110を形成した弁体を装着したバルブであり、供試品3は、カット面102、案内面105、アール面部110を形成した弁体を装着したバルブであり、供試品4は、カット面122、アール面部110を形成した弁体を装着したバルブである。
一方、比較品3は、カット面102、案内面105、カット面122の何れも形成していない弁体を設けた比較用のバルブである。供試品2~4、比較品3について、カット面102、案内面105、アール面部110、カット面122の有無以外は同一形状とし、同一口径のバルブの弁開度に対するキャビテーション係数を測定した。
【0121】
図19において、比較品3の場合には、弁開度15%付近、40%付近のキャビテーション係数がその他の弁開度に比較してそれぞれ大きくなり、弁開度の増加に対してキャビテーション係数が一定の割合で増加する特性になっていない。すなわち、弁開度15%付近、40%付近では、その他の開度に比較してキャビテーションが発生しやすくなる。
【0122】
これに比較して、供試品2のカット面102、アール面部110を設けた場合、及び供試品4のカット面122、アール面部110を設けた場合には、それぞれアール面部110によって弁開度15%付近のキャビテーション係数の増加は抑えられている。弁開度40%付近においては、供試品2、供試品4の双方で比較品3に比べてキャビテーション係数の増加割合は低くなってはいるものの、その他の開度に比べてキャビテーション係数の増加を抑えているとは言い難い。
【0123】
供試品3のように、カット面102と共に案内面105を設けた場合には、弁開度40%付近のキャビテーション係数の増加を抑えることができ、一方、アール面部110を設けていることで、弁開度15%付近のキャビテーション係数の増加も抑えている。
【0124】
これらのことから、弁体に対して、カット面102、案内面105、アール面部110、カット面122をそれぞれ設けた場合には、キャビテーション発生を抑制できることが確認された。特に、供試品3のようにカット面102及び案内面105、アール面部110を設けた場合には、弁開度15%付近及び40%付近のキャビテーション係数の増加を抑制し、弁開度の増加に対してキャビテーション係数が略リニア状に増加する特性にできるため、特定の弁開度でキャビテーションが発生しにくく、より安定したキャビテーション特性を発揮する弁体が得られる。
【0125】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0126】
1 弁箱(ボデー)
2、100、120 弁体
3 弁軸
4 弁座
5 流路
20、40 整流板
21、42 スロット状流路
22、101、121 球面状部(弁座対向面)
23 頂部
24 テーパ部
102 カット面
105 案内面
110 アール面部
122 カット面
G 隙間
R 弁翼側領域
W 幅