IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 安井株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人愛媛大学の特許一覧

<>
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図1
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図2
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図3
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図4
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図5
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図6
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図7
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図8
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図9
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図10
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図11
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図12
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図13
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図14
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図15
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図16
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図17
  • 特許-内視鏡下手術用照射器具 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】内視鏡下手術用照射器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/30 20160101AFI20230116BHJP
【FI】
A61B90/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020556056
(86)(22)【出願日】2019-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2019043170
(87)【国際公開番号】W WO2020095862
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2018207895
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595026520
【氏名又は名称】安井株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】荒殿 剛
(72)【発明者】
【氏名】波田野 真人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 頌祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 昭洋
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰次
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/038981(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0012090(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0069278(US,A1)
【文献】米国特許第05758663(US,A)
【文献】米国特許第06554768(US,B1)
【文献】国際公開第02/009590(WO,A1)
【文献】特開平10-043205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/30
A61B 1/00
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を内蔵した把持部と、
細長棒状に形成され、基端側を前記把持部に接続させ、先端部を患者の臓器の裏側への接触部とし、前記光源からの光を導光して発光する発光部と、を備え、
前記発光部の先端部からの光を前記臓器の表側へ透過可能に構成し、
前記発光部は、
前記光源からの光を導光する導光本体部と、
前記導光本体部を通過してきた光を出射する発光本体部と、
前記導光本体部を被覆して遮光する被覆部と、を備え、
前記被覆部は、基端部に固定アタッチメントを有し、前記導光本体部に対して、前記固定アタッチメントにより前記導光本体部の基端部に着脱可能に固定されることを特徴とする内視鏡下手術用照射器具。
【請求項2】
前記発光部の先端部は、多角形の角部をR形状とした略多角形状の横断面形状を有する略角柱状の部分であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡下手術用照射器具。
【請求項3】
前記発光部は、先端部に、光を屈折させるプリズム構造を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内視鏡下手術用照射器具。
【請求項4】
前記発光部は、基端部に、先端側から基端側にかけて漸次拡径した拡径部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の内視鏡下手術用照射器具。
【請求項5】
前記発光部は、伸延方向に沿った層境界を有するように積層された層構造を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の内視鏡下手術用照射器具。
【請求項6】
前記把持部は、先端側に、前記光源の光を透過させる平坦な透光面部を有し、
前記発光部は、基端部により前記把持部の先端部を外側から覆うとともに、前記透光面部に対向する基端面を有し、前記基端面から前記透光面部を透過した光の入射を受けるように構成されていることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の内視鏡下手術用照射器具。
【請求項7】
前記導光本体部は透明樹脂素材により棒状に形成するとともに前記被覆部は前記導光本体部を挿嵌可能な筒状の部材により形成したことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の内視鏡下手術用照射器具。
【請求項8】
前記導光本体部と前記被覆部とは、それぞれ螺着可能なネジ部を備えることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の内視鏡下手術用照射器具。
【請求項9】
前記導光本体部と前記被覆部との間には、前記導光本体部と前記被覆部との隙間を封止するための封止材を介在させたことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の内視鏡下手術用照射器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下手術に用いる照射器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場では、患者の体壁に形成した大きな切開口で外部に開放露出させた臓器の病巣(以下、単に患部と称す。)を施術者の目で直接的に視認して施術を行う開腹手術や開胸手術などの一般的な外科手術に代わって、内視鏡下手術が主流となってきている。
【0003】
内視鏡下手術とは、腹壁や胸壁などの体表皮膚に設けた複数の小孔や顔面の鼻孔などの小さい体孔から、先端に光源を備えた内視鏡と専用のメス、鋏、鉗子などの手術器具を挿入して腹腔や胸腔、鼻腔などの体腔で患部臓器へアクセスし、内視鏡と接続したモニタ上で人体内部の臓器と手術器具を確認しながら手術器具を操作して施術する施術方法である。
【0004】
この内視鏡下手術は、上述の一般的な外科手術に比べて患者の回復が早いというメリットはあるものの、極限られた術野及び手術器具の可動域の下で手術器具の微妙な操作を行わなければならず、施術者に対して常に高度で熟練した技術を要求し、身体的・精神的な負担をかけていた。
【0005】
かかる施術者の負担軽減のため、術野を良好とすべく内視鏡下手術用の照射器具が種々開発されており、体孔に刺入設置する手術器具挿入用の筒状のトロカールの先端部に光源を備えて体腔で臓器表面に対して上方から複数の光を異なる出射方向で照射するもの(特許文献1参照。)や、光源を内蔵した可撓性の発光シート体を臓器裏側に配置して光を臓器表側に透過させるもの(特許文献2参照。)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-98799号公報
【文献】特開2008-99781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、臓器内の患部を切除したり摘出したり等適切に治療するためには、患部近傍に複雑に張り巡らされた血管や神経などの器官を避けて、患部と周辺組織との剥離を行わなければならない。
【0008】
すなわち、施術者は、臓器において患部以外の器官に干渉しない位置を確認し、同位置を患部と周辺組織との間の「剥離位置」として患部に沿うように剥離する剥離作業を行う。
【0009】
この剥離作業は、内視鏡下手術では内視鏡と接続した外部のモニタ上で「剥離位置」の確認をしながら行うこととなる。
【0010】
しかしながら、臓器の上方側に設置された内視鏡ではモニタ上の臓器が平面的な臓器表面側の画像となるために、患部が内視鏡の撮像方向とは逆側の臓器の裏側や臓器の深部にある場合には「剥離位置」が臓器自体で隠れてしまい、適切な「剥離位置」を特定することが困難となる。
【0011】
具体的には、臓器裏側で略水平方向へ掘り進むように剥離進行する際の「手術器具の先端部位置」や、臓器表側から裏側へむけて臓器にトンネルを貫通形成する際の「剥離穿孔位置」といった「剥離位置」が臓器で隠れてしまう。
【0012】
すなわち、内視鏡の撮像方向において、「内視鏡が設置された位置」と所望とする「剥離位置」との間に臓器が介在している場合には、臓器自体が「剥離位置」を覆い隠してしまい、「剥離位置」を内視鏡で撮像できずモニタ上に直接的に映し出すことができない。
【0013】
したがって、施術者は、腹腔鏡を介したモニタ上では直接的に視認できない臓器裏側で隠れた「剥離位置」をモニタの臓器表面画像をもとに経験則により頭の中で構築した想像上の「患部以外の器官に干渉しない位置」と照らし合わせ、予測しながら感覚的な剥離作業を行わなければならなかった。
【0014】
かかる問題に対し、特許文献1の照射器具は、専ら内視鏡の撮像方向からみた臓器表側を照らして術野を確保せんとするものであるが、特許文献1の照射器具によれば、臓器裏側に隠れた「剥離位置」を視認することは実質的に不可能である。
【0015】
また、特許文献2の照射器具は臓器裏面に配置して光を臓器表側に透過させて臓器内の患部や患部以外の器官の陰影を照らし出すものではあるが、患部によっては器具の臓器裏側への配置作業を困難とし、臓器裏側の「剥離位置」をスポット的にピンポイントで指し示すものではなかった。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、内視鏡下手術において、内視鏡の撮像方向で「内視鏡が設置された位置」と所望とする「剥離位置」との間に臓器が介在している場合でも、施術者の経験の多寡によらず、発光部の先端部を臓器裏側の所望とする剥離予定位置に配置し、発光部からの光を臓器の裏側から表側へ透過させることにより、臓器表側で「透過光の指し示す位置」を臓器裏側の「剥離位置」をとしてスポット的に照らし出し、臓器裏側の「剥離位置」を臓器表側でピンポイントで特定することができる内視鏡下手術に用いる照射器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る内視鏡下手術用照射器具は、(1)光源を内蔵した把持部と、細長棒状に形成され、基端側を前記把持部に接続させ、先端部を患者の臓器の裏側への接触部とし、前記光源からの光を導光して発光する発光部と、を備え、前記発光部の先端部からの光を前記臓器の表側へ透過可能に構成し、前記発光部は、前記光源からの光を導光する導光本体部と、前記導光本体部を通過してきた光を出射する発光本体部と、前記導光本体部を被覆して遮光する被覆部と、を備え、前記被覆部は、基端部に固定アタッチメントを有し、前記導光本体部に対して、前記固定アタッチメントにより前記導光本体部の基端部に着脱可能に固定されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る内視鏡下手術用照射器具では、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記発光部の先端部は、多角形の角部をR形状とした略多角形状の横断面形状を有する略角柱状の部分であること。
(3)前記発光部は、先端部に、光を屈折させるプリズム構造を有すること。
(4)前記発光部は、基端部に、先端側から基端側にかけて漸次拡径した拡径部を有すること。
(5)前記発光部は、伸延方向に沿った層境界を有するように積層された層構造を備えること。
(6)前記把持部は、先端側に、前記光源の光を透過させる平坦な透光面部を有し、前記発光部は、基端部により前記把持部の先端部を外側から覆うとともに、前記透光面部に対向する基端面を有し、前記基端面から前記透光面部を透過した光の入射を受けるように構成されていること。
(7)前記導光本体部は透明樹脂素材により棒状に形成するとともに前記被覆部は前記導光本体部を挿嵌可能な筒状の部材により形成したこと。
(8)前記導光本体部と前記被覆部とは、それぞれ螺着可能なネジ部を備えること。
(9)前記導光本体部と前記被覆部との間には、前記導光本体部と前記被覆部との隙間を封止するための封止材を介在させたこと。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る内視鏡下手術に用いる照射器具によれば、光源を内蔵した把持部と、細長棒状に形成され、基端側を前記把持部に接続させ、先端部を患者の臓器の裏側への接触部とし、前記光源からの光を導光して発光する発光部と、を備え、前記発光部の先端部からの光を前記臓器の表側へ透過可能に構成したため、腹腔や胸腔、鼻腔といった体腔の限られた極狭空間の環境下でも、操作性に優れて把持部を把持して発光部の先端部を臓器の裏側に位置づける位置づけ操作を容易に行うことができ、発光部の胴部を進行して発光部の先端部から出射される出射光を臓器内部を透過する透過光とし、同透過光を内視鏡を介したモニタ上の臓器表面画像として視認できる。
【0020】
すなわち、施術者は、内視鏡の撮像方向で「内視鏡が設置された位置」と所望とする「剥離位置」との間に臓器が介在している場合でも、臓器裏側で患部以外の器官に干渉しない剥離予定位置に対して予め照射器具の発光部の先端部を位置付けておき、臓器の裏側から表側へ透過した「透過光の指し示す位置」を患部以外の器官に干渉しない「剥離位置」としてスポット的に照らし出し、臓器表側で臓器裏側の「剥離位置」をピンポイントに特定できる効果がある。
【0021】
また、発光部からの光を臓器内に透過させることで裏側から表側に向けて患部や血管、神経などの各種組織を陰影として臓器表面に浮かびあがらせ投影することができ、術野の視認性をより確実にして患部以外の組織の無用な切除による医療事故を防止することができる効果がある。
【0022】
また、患者の体外で光源を備えて照射器具を把持操作するための把持部を、患者の体内で臓器裏面で発光する発光部を、それぞれ配置する構成としているために、発光部が発光熱を発することなく臓器の熱損傷を防止でき、体内における漏電を防止することができる効果がある。
【0023】
また、施術時において、照射器具は、把持部を介して発光部により臓器を裏面側から支持したり、臓器や切削剥離した組織片等を寄せたり、組織等を押さえたりする、手術用ヘラ、スパーテル等の手術補助器具として機能させることができる効果がある。
【0024】
また、前記発光部の先端部は、多角形の角部をR形状とした略多角形状の横断面形状を有する略角柱状の部分であることとすれば、臓器裏側の発光部による剥離予定位置特定のための探索操作中に、発光部の先端部が臓器に接触して摺動しても角部で臓器を損傷することなく、所望とする剥離予定位置に発光部の先端部を安全に位置付けできる効果がある。
【0025】
また、前記発光部の先端部は、光を屈折させるプリズム構造を有することとすれば、発光部の胴部を進行してきた光の先端部からの出射方向をプリズム構造の偏光作用や屈光作用により特定方向にすることができ、臓器裏面への光強度を増幅できる効果がある。
【0026】
また、前記発光部は、基端部に、先端側から基端側にかけて漸次拡径した拡径部を有することとすれば、発光部の基端の強度の向上を図り、臓器の重量負荷に伴う撓みなどの発光部の基端に集中する応力負荷に抗した剛性を確保することができる効果がある。
【0027】
また、前記発光部は、伸延方向に沿った層境界を有するように積層された層構造を備えることとすれば、発光部の胴部を進行する光を層境界の間の閉じ込め効果により外部へ漏れにくくして発光部内における光の伝送損失を可及的低減化することができる。すなわち、光源から発せられる光をその光強度を可及的低下させることなく発光部の先端部まで導いて、発光部の先端部を強く発光させることができる効果がある。
【0028】
また、前記把持部は、先端側に、前記光源の光を透過させる平坦な透光面部を有し、前記発光部は、基端部により前記把持部の先端部を外側から覆うとともに、前記透光面部に対向する基端面を有し、前記基端面から前記透光面部を透過した光の入射を受けるように構成すれば、収容空間に収容された光源からの光を発光部の基端から入射可能にして、把持部と発光部との接続部における光漏れによる光損失を可及的抑制することができる。
【0029】
すなわち、光源から発せられた光の発光部への入射方向を、収容空間に連通する孔を被覆する平坦面及び発光部の基端面に対して直交方向にして光散乱を可及的抑制し、発光部の伸延方向に沿う直進方向にすることができ、光強度を可及的低下させることなく把持部内の光源から発せられた光を発光部の先端部まで導くことができ、発光部の先端部を強く発光させることができる効果がある。また、発光部の基端側において把持部の光源からの光の入射面の面積を容易に確保することができ、発光部において十分な発光量を得ることが可能となる。さらには、把持部と発光部の接続部に付着する体液や薬液等の液体の接続部の隙間からの把持部内への浸入を未然に防止し、光源の光強度の低下や電気系統のショートを防止することができる効果がある。
【0030】
また、前記発光部は、前記光源からの光を導光する導光本体部と、前記導光本体部を通過してきた光を出射する発光本体部と、前記導光本体部を被覆して遮光する被覆部と、を備えることとすれば、被覆部により導光本体部を進行する光の外方への光散乱を遮蔽するとともに内方に反射して導光本体部の光伝送損失を可及的抑制することができ、発光本体部に光を集中させて発光本体部を強く発光させることができる効果がある。さらには、被覆部が導光本体部全域をその長手方向に沿って外側から補強して発光部の剛性を向上させることができる効果がある。
【0031】
また、前記導光本体部は透明樹脂素材により棒状に形成するとともに前記被覆部は前記導光本体部を挿嵌可能な筒状の部材により形成すれば、導光本体部内を進行する光の外方散乱の遮蔽効果や、被覆部の導光本体部の補強効果をさらに向上することができる効果がある。また、手術後には導光本体部と被覆部とを分離して、それぞれについて洗浄処理や滅菌処理をしたり使い捨てユニット要素として交換したりすることができ、照射器具を衛生的に使用することができる効果がある。
【0032】
また、前記導光本体部と前記被覆部とは、それぞれ螺着可能なネジ部を備えることとすれば、導光本体部と被覆部との着脱作業を容易とし洗浄処理や滅菌処理、交換などの施術前後作業を行いやすくし、照射器具の衛生管理性をより向上することができる効果がある。
【0033】
また、前記導光本体部と前記被覆部との間に前記導光本体部と前記被覆部との隙間を封止するための封止材を介在させれば、術野及び手術器具の操作空間の確保をすべく体腔を拡張して膨張するために体腔に充満させた二酸化炭素等の膨張ガスが導光本体部と被覆部との隙間を通じて体腔外部へ抜け出てしまうことを防止し、内視鏡下手術を安定して円滑に行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1の実施形態に係る照射器具の構成を示す外観斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る照射器具の構成を示す縦断面図である。
図3】第1の実施形態に係る照射器具の発光部の先端部の構成を示す外観斜視図である。
図4】第1の実施形態に係る照射器具の発光部の先端部の変形例の構成を示す側面図である。
図5】第1の実施形態に係る照射器具の発光部の構成を示す縦断面図及び横断面図である。
図6】第2の実施形態に係る照射器具の構成を示す外観斜視図である。
図7】第3の実施形態に係る照射器具の構成を示す外観斜視図及び縦断面図である
図8】第3の実施形態に係る照射器具の変形例の構成を示す外観斜視図及び縦断面図である。
図9】第4の実施形態に係る照射器具の構成を示す外観斜視図である。
図10】第4の実施形態に係る照射器具の構成を示す縦断面図である。
図11】第4の実施形態に係る照射器具の構成を示す部分拡大図である。
図12】第4の実施形態に係る照射器具の構成を示す部分拡大図である。
図13】第5の実施形態に係る照射器具の構成を示す縦断面図である。
図14】第6の実施形態に係る照射器具の構成を示す縦断面図である。
図15】第7の実施形態に係る照射器具の構成を示す縦断面図である。
図16】第7の実施形態に係る照射器具の構成を示す部分拡大図である。
図17】本発明に係る照射器具の内視鏡下手術における使用態様を示す説明図である。
図18】本発明に係る照射器具の内視鏡下手術における使用態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係る内視鏡下手術用照射器具(以下、単に照射器具、本器具とも言う。)は、光源を内蔵した把持部と、細長棒状に形成され、基端側を前記把持部に接続させ、先端部を患者の臓器の裏側への接触部とし、前記光源からの光を導光して発光する発光部と、を備え、前記発光部の先端部からの光を前記臓器の表側へ透過可能に構成したことを要旨とする。
【0036】
本発明に係る照射器具が用いられる内視鏡下手術は、患者体内の患部を有した臓器にアクセスするために体壁に開けた小さい「体孔」に内視鏡と専用のメスや鉗子、鋏などの細長状の手術器具を挿入し、同手術器具を操作して行う低侵襲手術を意図する。低侵襲手術としては、例えば、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術、内視鏡下副鼻腔手術、関節内手術などが挙げられる。
【0037】
腹腔鏡手術や胸腔鏡手術では、トロカールという細筒状部材を腹壁や胸壁に設けた小孔に刺入設置し、同トロカールを介して腹腔や胸腔などの体腔へ内視鏡や手術器具の先端部分を挿入して施術を行う。また、関節内手術では、関節部分の体壁に設けた小孔に直接、内視鏡や手術器具の先端部分を挿入して施術を行う。
【0038】
本器具が挿入される患者の「体孔」とは、例えば、鼻腔に通じる鼻孔は勿論、腹腔や胸腔に通じる腹壁や胸壁に外科的に設けたトロカールの筒孔、関節部分の体壁に外科的に設けた小孔など、臓器や骨、関節等の体内器官に通ずる孔を意図する。
【0039】
ここで、本器具が用いられる内視鏡下手術の具体的な剥離術式としては、例えば、腹腔鏡手術では門脈前面トンネリング術、膵臓体部トンネリング術、脾動静脈トンネリング術といった剥離トンネリング術が挙げられる。かかる剥離トンネリング術は、臓器表側から裏側へむけて臓器にトンネルを貫通形成する際に行われる術式である。
【0040】
この剥離トンネリング術は、臓器においてトンネルを貫通するトンネル終端側とトンネル始端側の両側から、臓器深部に向かって対向する2つの穿孔を掘進形成していき、最終的に穿孔先端同士が貫通してトンネルを形成するようにおこなうものである。
【0041】
具体的には、臓器裏側をめくってモニタ上に写された臓器裏面のトンネル終端となる位置を確認し、同位置から臓器深部中途まで掘進剥離して終端側穿孔を形成する。
【0042】
次いで、終端側穿孔に綿やガーゼなどの不織布を詰め込み配置するガーゼパッキングを施すことにより臓器表側に臓器表面の一部を盛り上がらせた隆起部を形成し、同隆起部をトンネル始端の目印として始端側穿孔を形成していく。
【0043】
しかし、臓器裏側でのガーゼパッキングが甘かった場合には臓器表側の隆起部を正確な位置に形成することができなかったり、また、臓器表側に隆起部を形成できたとしても柔軟変形する臓器表面の複雑な凹凸形状や臓器表面を覆う血液により隆起部が埋もれてしまったりして、同隆起部を視認できずに臓器表側でのトンネル始端位置を正確に把握することが困難となる。
【0044】
さらに、臓器表側の隆起部から臓器裏側の終端側穿孔の先端に向かって掘進剥離していく際に、隆起部が崩れて始端側穿孔の軸線と終端側穿孔の軸線とが不用意にズレてしまったり、また、どこまで穿孔先端の剥離が進行したかを特定できなかったりして、正確なトンネルを臓器に形成できない問題があった。
【0045】
このような内視鏡下手術において、本願発明者は、高難易度の剥離トンネリング術を行う際のトンネル形成位置に相当する正確な剥離掘進方向となる「剥離穿孔位置」(「剥離位置」)を内視鏡を介してモニタ上で正確に把握すべく、鋭意努力の末、本器具を開発するに至った。
【0046】
すなわち、本発明にかかる内視鏡下手術用照射器具によれば、発光部の先端部を患者の臓器の裏側への接触部としてトンネル終端側の臓器裏側の終端位置、又は終端側穿孔先端に接触配置し、発光部の先端部からの光を臓器表側へ透過させて正確な剥離掘進方向としての「剥離穿孔位置」を臓器表側でスポット的に照らし出し、同透過光のスポット位置を目印に掘進穿孔して容易且つ正確にトンネル形成をすることができる。
【0047】
換言すれば、本器具は、内視鏡下手術において、透過光を利用したこれまでにない正確な剥離掘進方向を示す新しい剥離トンネリング術用の照射器具であるとも言える。
【0048】
以下、本発明に係る照射器具について、下記の順序に従って説明する。
(1)第1の実施形態:
(2)第2の実施形態:
(3)第3の実施形態:
(4)第4の実施形態:
(5)第5の実施形態:
(6)第6の実施形態:
(7)第7の実施形態:
(8)内視鏡下手術における照射器具の使用態様:
【0049】
(1)第1の実施形態:
本発明に係る照射器具の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る照射器具の構成を示す外観斜視図、図2は照射器具の構成を示す縦断面図、図3は発光部の先端部の構成を示す外観斜視図、図4は発光部の先端部の変形例の構成を示す側面図、図5は発光部の構成を示す縦断面図及び横断面図である。なお、以下の説明において、内視鏡の撮像方向において、内視鏡による撮像側(内視鏡のカメラレンズ設置側)を表側又は手前側と称し、内視鏡による撮像側とは反対側を裏側又は奥側と称する。
【0050】
本実施形態に係る照射器具Aは、図1(a)、図1(b)及び図2に示すように概括的には、光源12を内蔵した把持部10と、細長棒状に形成され、把持部10に基端で接続して光源12からの光を導光して発光する発光部20と、を備える。
【0051】
把持部10は、中空の細筒状の部分であって、図2に示すようにその内部を光源12及び光源12と接続した電源13を収容固定するための収容空間11としている。
【0052】
把持部10の材質や形状は、特に限定されるものではないが、軽量な樹脂素材や金属素材を採用でき、使用者が把持して良好なグリップ性を得られる外面形状とすることができる。なお、把持部10の表面には、例えば、防滑シートを付着させたり防滑加工を施したりして、グリップ性をさらに改善することもできる。
【0053】
光源12は、把持部10の先端側(発光部20の基端側)に発光面を向けて把持部10の収容空間11に固定された状態で設けられている。光源12としては、収容空間11に収容可能であれば特に限定されることはないが、軽量なものが好ましく、例えば、電源により発光するLEDランプや小型の半導体レーザー等を採用することができる。
【0054】
電源13は、収容空間11に収容可能な各種の電池を採用可能である。したがって、単三型乾電池/単四型乾電池/ボタン型電池等の形状の別、充電式/非充電式の充電可否の別、マンガン/リチウムイオン/水素等の電極材料の別、等については、特に制限されず、様々なものを採用することができる。なお、把持部10の周壁には収容空間11を開口させる開閉部を設けており、電源13や光源12を交換可能に構成している。
【0055】
また、本実施形態では光源12及び電源13を把持部10に内蔵しているが、電源13は把持部10の外部に設けることとしてもよい。電源13を把持部10の外部に設ける態様としては、一例として電源13を外部電源とし、同電源13と収容空間11に内蔵する光源12と配線を介して接続する構成とする。
【0056】
また、把持部10と発光部20とは、図1(b)及び図2に示すように接続部50において、互いに取外し可能に一体的に固定している。接続部50は、把持部10の先端と発光部20の基端とを互いに着脱可能なネジ構造51とし、把持部10に発光部20の基端をねじ込み固定可能に構成している。
【0057】
具体的には、ネジ構造51は、把持部10の先端面10aをなす先端面部の略中央部に発光部20の基端を差込み可能に形成した発光部挿入孔10bの内周に形成した雌ネジ部51aと、同雌ネジ部51aに対応するように発光部20の基端外周に形成した雄ネジ部51bと、で構成している。
【0058】
なお、発光部挿入孔10bは、把持部10の収容空間11と外部とを連通し、発光部20を把持部10に固定する固定孔として機能するとともに、収容空間11に収納した光源12からの光を発光部20に向けて射出する出射光導孔として機能する。
【0059】
このような構成により、把持部10と発光部20の締結を解除して、新しい発光部20や、後述する特殊な先端部形状を有する発光部等の他の発光部と交換可能としている。
【0060】
また、収容空間11と接続部50との間には、接続部50の外部から収容空間11への体液や薬液等の液体の浸入を防止するための透明な隔壁構造又は封止構造を設けている。
【0061】
透明な隔壁構造は、図2に示すように把持部10の発光部挿入孔10bと収容空間11との境界に透明なガラス板や樹脂板等の透明板体11aを、その板面を発光部20の基端面に面対向するように配置して構成している。また、収容空間11と接続部50との間の封止構造は、把持部10の先端と発光部20の基端との間に挟持されるOリング等の封止材を介設することにより、互いの間の隙間を水密状に封止閉塞するようにしている。
【0062】
発光部20は、細長棒状(直柱状)に形成しており、把持部10に対して細い部分であり、把持部10に基端で接続して把持部10に内蔵した光源12からの光を導光して発光する。発光部20は、直線状に形成され、その先端部を患者の臓器の裏側への接触部とする。
【0063】
発光部20の外径は、内視鏡下手術の種類によって異なるが、患者の腹壁や胸壁等の体壁に患部へアクセス可能に形成した手術器具の挿入用の体孔に挿入可能な径(例えば、腹部や胸部に刺入固定する筒状のトロカールであればその内径)、すなわち体孔の径よりも小さくしている。なお、一般的なトロカールの内径は、2.0mm~12.0mmである。
【0064】
すなわち、本実施形態では、発光部20の外径は、2.0mm~12.0mmにしている。具体的には、発光部20の外径は、内視鏡下副鼻腔手術や関節内手術の体孔であれば2.0mm~3.5mm、腹腔鏡手術及び胸腔鏡手術であれば3.5mm~12.0mmである。
【0065】
また、発光部20の長さは、発光部20の外径と同様に内視鏡下手術の種類によって異なるが、体孔内に照射器具Aを挿入した場合に、把持部10を患者の体外で把持してその先端で接続した発光部20の先端部を体腔内の患部の存在する臓器の裏側に配置操作可能な長さにしている。
【0066】
本実施形態では、発光部20の長さは、180mm~400mmにしている。具体的には、発光部20の長さは、内視鏡下副鼻腔手術用や関節内手術用であれば180mm~250mm、腹腔鏡手術用や胸腔鏡手術用であれば250mm~400mmである。
【0067】
また、発光部20は、透明素材にて棒状に形成しており、光源12からの光を導光可能としている。発光部20を形成する透明素材としては、部材強度確保の観点から剛性を備えつつ可撓性が可及的抑制された素材を選択することが好ましく、例えばガラス、硬質樹脂、セラミックを採用することができる。
【0068】
透明素材として硬質透明樹脂を採用すれば、コスト面、及び加工面で有利であり、照射器具Aを軽量化することができ、操作性を向上させつつ一定の剛性を確保できる。このような硬質透明樹脂としては、例えば、レジン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ABS、アクリル、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、ポリアセタール等を採用することができる。
【0069】
発光部20の形状は、直線の細長棒状に形成されていれば特に限定されることはなく、例えば角柱棒状や、円柱状、基端から先端に向かって漸次細くなる先細り形状としてもよい。
【0070】
本実施形態の発光部20の形状は、表面に角の無い滑面とした、長尺の円柱状にしている。具体的には発光部20は、横断面形状が略円形となるように形成しており、径方向外方からの応力を分散させて部材強度を保持可能としている。なお、発光部20には、基端から先端にかけて補強用の突条を延設することも一案である。
【0071】
また、発光部20の表面は、撥水加工・撥油加工を施すこととしても良い。撥水加工・撥油加工は、発光部20全体に施してもよいが、臓器に接触して体液等が特に付着しやすい部位である発光部20の先端部、すなわち後述する発光本体部40に限定的に施しても構わない。撥水加工・撥油加工としては、例えば、フッ素樹脂加工、シリコーン樹脂加工を採用することができる。
【0072】
発光部20の表面の撥水加工・撥油加工により、発光部20に手術中に液体が付着しにくくなり、発光部20における光照射特性の低下を可及的抑制でき、また、薬液耐性を向上させて発光部20の劣化を可及的防止できる効果がある。
【0073】
このような発光部20は、具体的には、図1(a)及び図2に示すように光源12からの光を導光する導光本体部30と、先端で導光本体部30を通過してきた光を出射する発光本体部40と、で構成している。
【0074】
導光本体部30は、発光部20の基部及び胴部に相当する部分であり、把持部10内部の光源から出射された光を発光本体部40まで導くとともに通過する光の一部を漏れ光として周囲に放射する部分である。
【0075】
すなわち、導光本体部30は、漏れ光にて体腔内で臓器の上方側で発光する体腔内照明部として機能するとともに発光本体部40を把持部10から一定距離に支持する支持部として機能する。
【0076】
特に、導光本体部30から外部へ放出される漏れ光は、光源12から出射された光と比べて光強度が低く、体腔内における臓器表面での照り返しが抑制されてモニタ上におけるハレーション現象を可及的抑制している。
【0077】
発光本体部40は、臓器裏側との接触部、すなわち発光部20の先端部に相当する部分であり、導光本体部30の内部を進行してきた光が集約されて導光本体部30よりも強く発光する部分である。
【0078】
すなわち、発光本体部40は、臓器裏側で所望とする手術器具の先端位置や剥離穿孔位置といった剥離予定位置に配置されて臓器と接触し、発光本体部40から出射された光を臓器裏側から表側へ透過させた透過光とし、臓器表側で透過光が指し示す位置を臓器裏側の剥離位置としてスポット的に照らし出し、臓器表側で剥離位置を特定可能とする剥離位置特定部として機能する。
【0079】
換言すれば、発光本体部40は、臓器と接触した状態で発光本体部40から出射した光が臓器内を裏側から表側へ通るように透過可能としつつ、透過光を臓器表側で視認可能とする光強度で発光する。
【0080】
このような発光本体部40の光強度は、一例として照度(lx)で示すと、臓器裏面と発光本体部40とが当接した状態、すなわち発光本体部40と臓器裏面との間が0mm距離状態で、少なくとも10,000lx以上である。
【0081】
発光本体部40の光強度を10,000lx未満とすると光強度が低すぎて、臓器裏側の剥離位置を臓器表側に透過光としてスポット的に照らし出すことができない。したがって、照射器具A1において上述のような光強度を有するように、発光部20を形成し、同時に光源12や電源13の選択を行う。
【0082】
また、発光部20の先端部、すなわち発光本体部40の角部41は、図3に示すように滑面のR状に形成しており、臓器と発光本体部40が接触した際に臓器が角部で損傷することを可及的防止している。本実施形態では、発光本体部40は、多角形の角部をR形状とした略多角形状の横断面形状を有する略角柱状の部分である。
【0083】
発光本体部40は、4つの側面及び先端面(傾斜テーパー面43)を有する四角柱状の部分となっており、隣り合う側面同士の稜線部となる角部41、及び各側面と先端面の稜線部となる角部41が、断面視で円弧状をなすR形状部となっている。
【0084】
具体的には、発光本体部40は、基端側から先端側にかけて徐々に円柱面から四角柱に近付くように緩やかに横断面形状を変化させた形状を有する。なお、四角柱状の発光本体部40の先端部の4つの頂部は、その頂部をなす各稜線部のR形状を滑かに連続させた半球面状の曲面部44となっている。
【0085】
また、発光部20は、先端部に、光を屈折させるプリズム構造42を有している。具体的には、プリズム構造42は、発光本体部40を略角柱状に形成するとともに、その先端面を発光部20の軸方向に対して一定方向に傾斜する傾斜テーパー面43に形成して構成している。
【0086】
このような構成により、発光本体部40からの出射光の出射方向を傾斜テーパー面43で屈折させて特定方向にすることができる。したがって、施術者は、把持部10を介して発光部20を軸周りに回転して傾斜テーパー面の向きを臓器裏面側(手前側)に向けたり奥側に向けたりすることにより、出射光の入射方向をコントロールすることができる。また、発光本体部40における集光率を向上させて出射光の光強度を増大することができる。
【0087】
なお、図4(a)に示すように、発光本体部40aの形状は、導光本体部30と同じ大きさ、同じ形状の円柱状又は角柱状とし、その先端面を発光部20の軸方向に直交する方向に沿う平坦面42aに形成しても、発光本体部40aから出射される出射光について臓器裏面から表面に透過可能な光強度を十分に得ることは可能である。
【0088】
この発光本体部の形状は、発光部の機能や用途によって様々な形状に形成することができる。例えば、図4(b)に示す発光本体部40bは、半球状にして先端面を半球面42bに形成している。また、図4(c)に示す発光本体部40cは、導光本体部30よりも外方膨出した略球状にして球面42cを形成している。これにより、発光本体部40b、40cから光を可及的広範囲に拡散出射する光拡散機能を有した発光部を構成することができる。
【0089】
また、図4(d)に示す発光本体部40dは、外周を側面視でスプライン曲線状に形成している。すなわち、発光部20の先端部を発光部20の長尺方向について凹部42dと凸部42eとを交互に形成したコルゲート状とすることにより、光の出射方向を集光方向に向けたり拡散方向に向けたりして複雑にすることも一案である。
【0090】
さらには、発光本体部40を扁平状に形成したり、スプーン皿状に形成することにより、照射器具Aを手術用ヘラ、スパーテルなどの手術補助器具としての機能を確実に持たせることもできる。
【0091】
また、発光部20は、図5(a)に示すように縦断面視で伸延方向に沿った層境界23を有するように積層された層構造21を備えている。
【0092】
層構造21は、図5(b)に示すように横断面視で同心円状であり、同一軸心で軸中心から径方向外方にかけて順番に積層配置した複数の光透過層22により、隣接する光透過層22の間に層境界23を形成して構成している。
【0093】
光透過層22は、発光部20の軸中心となる棒状の軸中心層22aと、同軸中心層を中心に同一軸心上で径方向外方にかけて積層配置され、略相似形に形成した複数の外層22bと、で構成している。
【0094】
この層構造21は、発光部20の横断面において、複数の層境界23が所定間隔を隔てて同心円配置される構成であればよく、例えば、扁平板状の光透過層22を複数積層することにより構成することとしてもよい。
【0095】
層構造21を備えた発光部20の製造方法としては、発光部20を3Dプリンタを用いて積層したり、インサート成型によって形成することが挙げられる。また、層構造21は、発光部20において、導光本体部30又は発光本体部40に限定的に形成することとしてもよい。
【0096】
このような構成により、層境界23同士の間の光透過層22を進行する光について、層境界23により導光本体部30の長尺方向に直行する方向(径方向外方)へ漏れ出ることを防止することができる。かかる作用は、外層22bをなす物質の屈折率が軸中心層22aをなす物質の屈折率よりも低いことにより効果的に得ることができる。
【0097】
特に本実施形態の層構造21では、光透過層22のうち軸中心層22aを進行する光が、径方向外側の複数の層境界23により発光部20内に効果的に閉じ込められる。このため、発光部20は、軸中心層22aを通過する光の光強度を可及的保持したままで光伝送を行い、発光本体部40をより強く発光させることができる。
【0098】
(2)第2の実施形態:
次に、第2の実施形態に係る照射器具について説明する。図6は本実施形態に係る照射器具の外観斜視図である。なお、以下において上述した照射器具A1と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0099】
本実施形態に係る照射器具A2において、発光部20は、光源からの光を導光する導光本体部30と、先端で導光本体部30を通過してきた光を出射する発光本体部40と、導光本体部30を被覆して遮光する被覆部70と、で構成している。
【0100】
換言すれば、発光本体部40は、図6(a)に示すように導光本体部30を被覆部70により被覆した状態における発光部20の先端の露出した部分である。
【0101】
被覆部70は、導光本体部30を進行する光について導光本体部30の外方へ漏れ出ようとする光を遮蔽して内方へ反射し光伝送損失を可及的抑制する遮光反射部として機能するとともに、施術操作時に発光部20へ負荷される応力に抗した剛性を発光部20に付与して発光部20の直柱形状の保つことを可能とする補強支柱部として機能する。
【0102】
被覆部70は、遮光性を備える素材であれば特に限定されることはなく、例えば導光本体部30外周に遮光性の塗料を塗布したり、色付き樹脂を溶着したり、筒状の色付きガラスを外嵌固定することとしてもよい。
【0103】
また、発光部20は透明樹脂素材により棒状に形成するとともに被覆部70は導光本体部30を挿嵌可能な筒状の部材により形成している。
【0104】
被覆部70は、硬質素材により導光本体部30に外装可能な直線筒状(ストロー状)に形成している。かかる被覆部70により発光部20を被覆することで発光部20の部材強度が曲げ強度で100N以上となり、施術操作時の発光部20への応力負荷による撓みを防止して発光部20の直柱形状を保持可能とする剛性を発光部20に具備させることができる。
【0105】
なお、被覆部70の外径は、第1の実施形態と同様に、内視鏡下手術の種類によって異なるが、患者の腹壁や胸壁等の体壁に患部へアクセス可能に形成した手術器具の挿入用の体孔に挿入可能な径(例えば、腹部や胸部に刺入固定する筒状のトロカールであればその内径)、すなわち体孔の径よりも小さくしている。すなわち、本実施形態では、発光部20に被覆部70を外嵌した状態の最大外径が2.0mm~12.0mmとなるようにしている。
【0106】
これにより把持部10離れた位置にある発光本体部40の臓器に対する位置付け操作の操作性を向上させることができると共に体腔内で導光本体部30が不用意に損傷してその破片等が散在する事故を未然に防止することができる。
【0107】
このような被覆部70を形成する硬質素材は、鋼製素材又は硬質樹脂素材などの軽量且つ剛性を備えた素材を選択することが好ましい。鋼製素材としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼を採用することができる。硬質樹脂素材として、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニルサルホン樹脂(PPSU)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリサルホン樹脂(PSU)、フッ素樹脂、繊維強化プラスチックを採用することができる。なお、本実施形態に係る被覆部70は鋼製筒体である。
【0108】
被覆部70に鋼製素材を採用した場合には、内周面に鏡面加工を施すことにより導光の反射効果をより堅実とする。
【0109】
また、鋼製素材により形成した被覆部70の表面には、電気メスと接触した際のアークやスパークによる発光部20の破損や被覆部70を通じた体腔内で臓器への漏電を防止するための絶縁手段を設ける。すなわち、被覆部70の表面は、絶縁材料にて絶縁手段を有するように構成する。
【0110】
絶縁手段の方法としては、例えば、絶縁材料を吹き付けたり、蒸着又は溶着したり、ゴムチューブやシリコーンチューブなどの絶縁材料で形成した筒体を被覆部70に外嵌して収縮圧着したりする方法を採用することができる。
【0111】
また、絶縁手段を設ける領域は、被覆部70の表面全域であってもよいし、所定の部分的領域であってもよい。例えば、電気メスとの接触機会が比較的多い被覆部70の先端部表面に絶縁手段を設けることも一案である。
【0112】
また、絶縁手段に使用する絶縁材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂、架橋ポリエチレンやエポキシ樹脂、塩化ビニル、合成ゴム、ポリエステル、エラストマー、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ナイロンなど、合成や天然の繊維などの有機繊維質材料、セラミック、ガラスなどの無機固体絶縁材料を採用することができる。
【0113】
また、導光本体部30と被覆部70とは、図6(b)に示すようにそれぞれ螺着可能なネジ部を備えてネジ構造52を構成している。具体的には、導光本体部30と被覆部70とのネジ構造52はそれぞれの基端側の部分に設けられており、導光本体部30の基端側の胴部外周に形成した雄ネジ部52aと、雄ネジ部52aに螺合するように被覆部70の基端側内周に形成した雌ネジ部71aと、で構成している。
【0114】
このような導光本体部30と被覆部70のネジ構造52は、導光本体部30と被覆部70とが手術中に不用意に外れない締結力となるように、引張強度(N)で100N以上を保持可能に構成している。
【0115】
また、導光本体部30と被覆部70との間には、導光本体部30と被覆部70との隙間を封止するための封止材80を介在している。具体的には、導光本体部30の最基端の雄ネジ部51bと基端側の胴部外周の雄ネジ部52aとの間に形成した溝に封止材80の一例としてOリング81を嵌着している。
【0116】
このような構成により、封止材80がシール機能を果たして内視鏡下手術時に体腔に充満した二酸化炭素等の膨張ガスが導光本体部30と被覆部70との隙間を通じて体腔外部へ抜け出てしまうことを防止可能にしている。
【0117】
(3)第3の実施形態:
次に、第3の実施形態に係る照射器具について説明する。図7は本実施形態に係る照射器具の構成を示す外観斜視図及び縦断面図、図8は本実施形態に係る照射器具の変形例の構成を示す外観斜視図及び縦断面図である。
【0118】
本実施形態に係る照射器具A3において、発光部20は、図7(a)及び図7(b)に示すように、基端部に、先端側から基端側にかけて漸次拡径した拡径部60を有し、同拡径部60を介して把持部10に接続するように構成している。
【0119】
発光部20の基部、すなわち導光本体部30の基部は、図7(a)に示すように発光部20の基部側胴部から基端にかけて漸次拡径する錐台状の拡径部60として肉太に形成している。
【0120】
また、拡径部60の始端と導光本体部30の基部側胴部との境界外周面61は、隅部を排した滑らかな湾曲面に形成しており、隅部へ集中する負荷応力を発光部20の基部全域へ可及的拡散すること可能としている。
【0121】
拡径部60の基端面62の外径は、被覆部70aを外嵌固定した場合において、被覆部70aの最基端の外径が把持部10の先端面10aの外径以上となるように形成している。図7(a)及び図7(b)に示す例においては、基端面62の外径と先端面10aの外径は略同一であり、把持部10の外周面と拡径部60の外周面とは段差なく連続した面一状の面を形成している。
【0122】
被覆部70aは、図7(a)に示すように導光本体部30の外形に沿った略漏斗状に形成している。具体的には、被覆部70aは、図7(b)に示すように導光本体部30の胴部を覆う直筒状の筒状被覆部71と、筒状被覆部71の基端で筒軸方向外方に向けて漸次拡径し、拡径部60を覆う擂鉢状の拡径被覆部72と、を有している。
【0123】
また、拡径部60の基端側には、把持部10と発光部20との接続部50が形成されている。拡径部60は、図7(b)に示すように、その基端面62を把持部10の先端面10aに面対向するように形成している。すなわち、基端面62と先端面10aは、拡径部60と把持部10の合わせ面となっている。
【0124】
拡径部60の基端面62の中央部には、導光本体部30の軸心と同一軸上で、把持部10の発光部挿入孔10bに挿入接続する接続基部63が外方に向けて突出している。なお、接続基部63の外周には、発光部挿入孔10bの雌ネジ部51aに螺合する雄ネジ部51bを形成している。
【0125】
このような構成により、臓器裏面における発光部20の先端部の配置操作時において、臓器重量や操作時の撓みなど、接続部50において発光部20の基端に集中する負荷応力に抗した剛性を確保し、発光部20の基端の強度の向上が図られている。
【0126】
なお、拡径部60aは、変形例として図8(a)及び図8(b)に示すように、把持部10の先端を覆うように形成することとしてもよい。具体的には、拡径部60aは、基端面62の周縁部から把持部10の先端部を外側から覆うように筒軸方向の基端側に向かって筒状被覆部64を伸延形成している。本実施形態では、筒状被覆部64は、把持部10の先端部を、先端面10aをなす先端面部の厚さと略同じ範囲で被覆している。
【0127】
また、被覆部70bは、拡径部60aの筒状被覆部64を外側から覆うように、拡径被覆部72から筒軸方向の基端側に向かって筒状被覆部73を伸延形成している。本実施形態では、筒状被覆部73は、筒状被覆部64の外周面を覆う周面被覆部73aと、筒状被覆部64の開口側の端面を覆う端面被覆部73bとを有し、筒状被覆部64を全面的に被覆している。
【0128】
なお、導光本体部30と被覆部70aとのネジ構造52は拡径部60aの筒状被覆部64と被覆部70aの筒状被覆部73との間に構成することとしてもよく、また、把持部10と発光部20とのネジ構造51は、把持部10の先端と拡径部60aの筒状被覆部64との間に構成することもできる。
【0129】
このような構成により、把持部10と発光部20との接続部50における遮光効果を確実とし、接続部50から発せられる強力な光による施術者への身体的負担をなくしている。
【0130】
(4)第4の実施形態:
次に、第4の実施形態に係る照射器具について説明する。図9は本実施形態に係る照射器具の構成を示す外観斜視図、図10は本実施形態に係る照射器具の構成を示す縦断面図、図11及び図12は本実施形態に係る照射器具の構成を示す部分拡大図である。
【0131】
本実施形態に係る照射器具A4において、把持部100は、図9及び図10に示すように、その大部分をなす部材として、内部を電源102や光源103を収容するための収容空間104としたた筒体101を有する。
【0132】
把持部100は、先端部を光源103からの光を出射する光出射部105とし、中央部を人手により把持するための把持本体部106とし、後端部を光源のオン/オフ操作を行うためのスイッチ部107として構成している。
【0133】
把持本体部106は、筒体101の中央部で筒軸方向について先端側及び後端側の両側から中央にかけて漸次縮径した略細長鼓状に形成している。なお、把持部100の長手方向について、収容空間104のうち把持本体部106における空間部分は電源102を収納するための空間としている。
【0134】
スイッチ部107は、収容空間104を開口させる筒体101の後端開口を閉塞する蓋体108と、蓋体108の所定位置に設けられ、収容空間104に収容した電源102に接続可能なスイッチ109とを備えている。
【0135】
蓋体108は、有底筒状であって筒体101の後端部と螺合可能に構成している。具体的には、蓋体108と筒体101の後端部とは、蓋体108の内周に形成した雌ネジ部108aと、筒体101の後端部の外周に形成した雄ネジ部101aとにより、螺合嵌着可能に構成しており、蓋体108は筒体101の後端部を螺挿させている。
【0136】
スイッチ109は、押圧操作部109bの操作により、収容空間104に収容された電源102から光源103への給電のオン/オフを切り替え可能に構成している。
【0137】
具体的には、スイッチ109は、蓋体108内に設けられ、蓋体108の後端面108bの中央部で蓋体108の内方に設けたバネ109aの付勢により蓋体108の後端面108b中央部から外方に出没自在に押圧操作部109bを設けて構成している。
【0138】
なお、スイッチ109を用いて行う操作は給電のオン/オフに限られるものではなく、オン時の電源供給量の調整操作、すなわち光源からの光量の調整操作を可能にしてもよい。
【0139】
光出射部105は、筒体101の先端部を一体的に覆うキャップ体110と、筒体101の先端部における収容空間104に内蔵した光源103と、を備えている。
【0140】
光源103は、把持部100の筒体101の先端部の収容空間104において回路基板103aの前方位置に所定の支持部材により固定された状態で設けられている。光源103は、収容空間104内において筒体101の中心軸上に配置されている。
【0141】
筒体101の先端には収容空間104を開口させる連通孔101cを設けており、この連通孔101cを水密状に封止するようにキャップ体110を設けている。
【0142】
キャップ体110の連通孔101cを覆う部分は透明な平坦面111aで構成している。すなわち、把持部100の先端面は、収容空間104の内部を透視可能な平坦面111aに形成している。
【0143】
このように、把持部100は、先端側に、光源103の光を透過させる平坦な透光面部111を有する。透光面部111をなす平坦面111aは、例えば、ガラス板、セラミックス板、ポリカーボネート板、アクリル板等により形成されている。
【0144】
また、光源103の先端と連通孔101cの間には集光用の集光反射板103bを設けている。集光反射板103bは、光源103の先端近傍から連通孔101cに向かって漸次拡径する擂鉢状とし、擂鉢の内周面を鏡面に形成している。
【0145】
集光反射板103bは、先端側を拡径側とした略円錐面をなす回転体形状を有する部材であり、前後の端面に凹部を有することで中心軸部103cを軸方向について肉薄部分としている。
【0146】
また、集光反射板103bは、先端側(拡径側)にフランジ部103dを有し、このフランジ部103dを、筒体101の先端部とキャップ体110との間に挟持させ、固定された状態で設けられている。
【0147】
発光部200は、図10図11及び図12に示すようにその基端で把持部100の先端を外側から覆うように構成している。すなわち、発光部200の基端は、把持部100の先端の光出射部105を外側から覆うように先端方向に凹んだ連結凹部210を形成している。
【0148】
具体的には、連結凹部210は、図11に示すように発光部200の拡径部600の基端で発光部200の径方向外方に向けて突出形成した鍔部211と、同鍔部211の周縁から基端方向に向かって筒状に伸延した筒部212と、で構成している。すなわち、連結凹部210は、先端側を拡径部600により閉塞させるとともに基端側(把持部100側)を開口させた筒状の部分となっている。
【0149】
また、把持部100と発光部200とのネジ構造510は、連結凹部210の内周(筒部212の内周)に形成した雌ネジ部210aと、把持部100の先端外周(筒体101の先端外周)に形成した連結凹部210の雌ネジ部210aに螺合対応する雄ネジ部101bとで構成している。
【0150】
雄ネジ部101bは、後述のとおり筒体101において段差面としての前端面112aをなす縮径部のうち、キャップ体110により覆われた先端側の部分の後側の部分に、キャップ体110よりも径方向外側に突出するように拡径部分として形成されている。
【0151】
また、発光部200の連結凹部210の内底面は発光部200の基端面200aをなし、図12に示すように同基端面200aは把持部100の透光面部111をなす平坦面111aと面対向するように構成している。本実施形態では、基端面200aと平坦面111aはわずかな隙間を隔てて対向している。ただし、基端面200aと平坦面111aは互いに接触していてもよい。
【0152】
このように、発光部200は、基端部により把持部100の先端部を外側から覆うとともに、平坦面111により形成された透光面部に対向する基端面200aを有し、基端面200aから透光面部を透過した光の入射を受けるように構成されている。
【0153】
このような構成により、把持部100と発光部200とは接続部500で互いに螺合して締結して収容空間104に収容された光源103からの光を発光部200の基端から入射可能とし、把持部100と発光部200との接続部500における光漏れの光損失の抑制している。
【0154】
さらには、接続部500に付着する体液や薬液等の液体の接続部500の隙間からの把持部100の収容空間104への浸入を未然に防止し、光源103の光強度の低下や電気系統のショートを防止可能としている。
【0155】
また、接続部500において、発光部200の基端、すなわち連結凹部210の外面には、把持部100と発光部200を締結方向又は締緩方向に回転させる際の滑り止め構造が設けられている。
【0156】
滑り止め構造は、図9に示すように発光部200の基端は径方向断面を略八角形に形成するとともに基端外周面を八角面にして構成している。このような構成により、発光部200の基端に締結方向又は締緩方向への力を加える際の把持容易性が向上する。
【0157】
また、接続部500には、把持部100と発光部200の締結方向への螺合回転量が一定量以上に進行しないように規制する回転量規制手段を設けている。
【0158】
回転量規制手段は、図10及び図11に示すように把持部100の筒体101において把持本体部106と光出射部105との境に形成した係合段部112にて構成している。係合段部112における前端面112aは、筒軸方向に直交するように形成している。
【0159】
すなわち、回転量規制手段としての係合段部112は、図12に示すように発光部200と把持部100の先端とを螺合連結して一体化させた場合に、発光部200の連結凹部210の開口端面である基端縁面210bと把持部100の係合段部112の前端面112aとが互いに対面当接するように構成している。
【0160】
このような構成により、接続部500において、発光部200の把持部100に対する螺合回転量が一定量に達した場合には、発光部200の連結凹部210の基端縁面210bと把持部100の係合段部112の前端面112aとが互いに当接係合して、それ以上の締結方向への螺合回転進行を規制可能としている。
【0161】
発光部200は、図9及び図10に示すように、光源103からの光を導光する導光本体部300と、導光本体部300を通過してきた光を出射する発光本体部400と、導光本体部300を被覆して遮光する被覆部700と、により構成している。
【0162】
被覆部700の基部と導光本体部300の基部とは、発光部200の長手方向に沿って互いに対面して当接係合する係合面を有している。具体的には、図11及び図12に示すように導光本体部300の最基端に形成した連結凹部210における鍔部211の前端面211aと、被覆部700の基端面700aと、を互いに面対向して当接可能な係合面に形成している。
【0163】
このような構成により、導光本体部300に被覆部700を外嵌固定した場合には、被覆部700の基部と導光本体部300の基部とが互いに係合し、発光部200に負荷されて被覆部700の基端に集中する応力に抗して被覆部700を導光本体部300の基部上に支持可能としている。
【0164】
被覆部700において、筒状被覆部71は直筒状の筒状体710で構成するとともに、拡径被覆部72は略擂鉢筒状に形成した固定アタッチメント720で構成している。すなわち、被覆部700は、拡径被覆部72としての固定アタッチメント720と、固定アタッチメント720の先端で一体的に連設した筒状被覆部71としての筒状体710と、で構成している。
【0165】
筒状体710は、その基端を固定アタッチメント720の先端内方に内嵌されて固定アタッチメント720と溶着されて一体的に連結している。なお、本実施形態に係る被覆部700、すなわち筒状体710と固定アタッチメント720の素材は鋼製素材である。
【0166】
固定アタッチメント720は、図11に示すように、先端側から基端側にかけて徐々に拡径して円錐台状をなすとともに開口端面を基端面700aとする基端側拡径部721と、基端側拡径部721の先端側に設けられ、先端側の開口部に筒状体710の基端部を受け入れる先端側筒状部722とを有する。
【0167】
また、導光本体部300と被覆部700とは、ネジ構造520を介して互いに一体的に連結する。具体的には、固定アタッチメント720の内周に形成した雌ネジ部720aと、導光本体部300の基端側胴部の外周に形成され、固定アタッチメント720の雌ネジ部720aと螺合する雄ネジ部520aとによりネジ構造520を構成している。すなわち、雌ネジ部720aは、固定アタッチメント720において先端側筒状部722の内周に形成されている。
【0168】
また、導光本体部300と被覆部700との間には、図10図11及び図12に示すようにネジ構造520の後方位置で、導光本体部300と被覆部700との隙間を封止するためのOリング等の封止材800を介在配設している。
【0169】
封止材800は、固定アタッチメント720の先端側筒状部722の基部の内周面と、拡径部600の先端側の円筒部の外周面との間に介装されている。
【0170】
このような構成により、被覆部700において、筒状被覆部71を構成する筒状体710を肉薄にして発光部200をトロカール内を通過可能な外径とし、発光部200の胴部を通じて臓器重量や操作時の撓みなどの応力が最も負荷伝達される拡径被覆部72を構成する固定アタッチメント720を肉厚にして発光部20の強度を向上することができる。
【0171】
(5)第5の実施形態:
次に第5の実施形態に係る照射器具について説明する。図13は本実施形態に係る照射器具の構成を示す縦断面図である。
【0172】
本実施形態に係る照射器具A5は、第4の実施形態に係る照射器具A4と略同じ構成を備えているが、接続部500aの構成を異にする。すなわち、発光部200と把持部100との接続部500aは、互いを連結する筒状の連結ソケット530で構成している。
【0173】
連結ソケット530は、第4に実施形態に係る照射器具A4の連結凹部210に相当するが、連結凹部210が発光部200の基端で発光部200と一体的に形成されているのに対し、発光部200と分離可能な別体に形成している。
【0174】
連結ソケット530は、図1に示すように連結凹部210の筒部212に対応する筒部532と、筒部212の先端周縁から径方向内方に向けて突出形成した先端側面部531とで構成している。先端側面部531の内側孔は発光部200を挿入するための発光部挿入孔533としている。
【0175】
また、連結ソケット530と把持部100とのネジ構造510において、連結ソケット530の基端側内周には、把持部100の先端外周に形成した雄ネジ部101bと螺合対応する雌ネジ部530aを形成している。すなわち、鍔係合部240の後側の面が、発光部200の基端面200aとなる。
【0176】
発光部200の最基端には、発光部挿入孔533の内径よりも拡径するとともに軸方向にやや肉厚にした略円柱状の鍔係合部240を形成している。
【0177】
すなわち、連結ソケット530後方から発光部挿入孔533に発光部200を挿入すると、連結ソケット530の内方で発光部200基端の鍔係合部240の前端面が連結ソケット530の先端側面部531の後端面に面接触して係合する。
【0178】
また、連結ソケット530の発光部挿入孔533から先端方向に突出した導光本体部300に被覆部700を螺合連結すると、連結ソケット530の先端側面部531の前端面に被覆部700の基端面700aが面接触して係合する。
【0179】
すなわち、被覆部700の基端と発光部200の鍔係合部240との間には連結ソケット530の先端側面部531が位置し、導光本体部300に対して被覆部700を締結方向に螺合回転していくと、連結ソケット530の先端側面部531は前方位置の被覆部700の基端と後方位置の発光部200の鍔係合部240とに挟圧される。
【0180】
このように、連結ソケット530は、先端側面部531を発光部200の基部と被覆部700との間で挟持緊締することにより発光部200と一体化するとともに取り外し可能に構成している。
【0181】
したがって、連結ソケット530から発光部200を取り外し、他の先端形状や素材にて形成した発光部に取り替えることができる。
【0182】
また発光部200と一体化した連結ソケット530を、把持部100の先端でネジ構造510を介して把持部100と一体的に固定した場合には、発光部200の鍔係合部240は軸方向に肉厚形成しているために、把持部100先端の平坦面111aと発光部200の基端面200aとの間の距離を可及的近接させる。
【0183】
すなわち、把持部100の先端において平坦面111aから発せられたばかりの光を、平坦面111aに可及的近接した発光部200の基端面200aに対し直交方向で即座に入射して、連結ソケット530内部での光散乱による光強度の低下を可及的防止することができる。
【0184】
(6)第6の実施形態:
次に第6の実施形態に係る照射器具について説明する。図14は本実施形態に係る照射器具の構成を示す縦断面図である。
【0185】
本実施形態に係る照射器具A6は、第4の実施形態に係る照射器具A4と略同じ構成を備えているが、発光部の構成を異にする。発光部250は、筒体251で構成され、筒体251の基端側に挿嵌して接続する導光本体部350と、筒体251の先端周壁に窓状に形成した発光本体部450と、筒体251の内部で導光本体部350と発光本体部450との間に形成した光通過空間252と、により構成している。
【0186】
すなわち、発光部250は、被覆部750を長尺有底状の筒体251で構成するとともに導光本体部350は筒体251よりも短尺に構成し、筒体251の有底側を発光部250の先端側に配置するとともに同筒体251の有底側の周壁に設けた窓部253を発光本体部450とし、筒体251の内部空間のうち導光本体部350と発光本体部450との間の空間を導光本体部350から出射された光りを先端方向に通過させる光通過空間252として構成している。
【0187】
導光本体部350の長さは筒体251の基部に挿嵌された部分で被覆部750を一体支持できる長さであればよく、被覆部750の長尺方向の長さの半分以下となるように形成している。
【0188】
筒体251は、上述した硬質素材で中空直柱状に形成され、その先端面を閉塞するとともに基端側に導光本体部350を挿嵌するための開口を形成している。
【0189】
光通過空間252は、被覆部750を構成する筒体251の筒内の大部分を占める空間であり、筒体251の長さよりも短く形成した導光本体部350を筒体251に挿嵌した状態で導光本体部350の先端面と筒内周壁とで囲まれた空間である。
【0190】
窓部253は、筒体251の先端周壁の一部で光通過空間252を開口させた部分である。窓部253には筒体251の光通過空間252への体液等の侵入を防止する透明板体254が水密状に嵌め込まれている。なお、筒体251の先端内部には、窓部253に向かって光を反射させる反射部を設けることとしても良い。
【0191】
このような構成により、照射器具の軽量化を図ることができ、しかも製造コストを低減化できる。
【0192】
(7)第7の実施形態:
次に第7の実施形態に係る照射器具について説明する。図15は本実施形態に係る照射器具の構成を示す縦断面図、図16は本実施形態に係る照射器具の構成を示す部分拡大図である。
【0193】
本実施形態に係る照射器具A7は、第4の実施形態に係る照射器具A4と略同じ構成を備えているが、被覆部700を外側から全体的に覆い、絶縁部900を備えている点で構成を異にする。すなわち、照射器具A7は、鋼製素材で形成した被覆部700を第2の実施形態で述べた絶縁手段により外側から全体的に覆う絶縁部900を形成している。
【0194】
絶縁部900は、図15及び図16に示すように、被覆部700の筒状体710の外周を覆う絶縁筒部910と、絶縁基部920の基端側で被覆部700の固定アタッチメント720の外周と導光本体部300の基部、すなわち連結凹部210の筒部212の外周とを一体的に覆う絶縁基部920と、を備える。
【0195】
絶縁筒部910は、一定厚みを有し、筒状体710の外周に沿う筒状に形成しており、鋼製素材の筒状体710に電気メスが不用意に触れた際に絶縁してアーク放電やスパークを防止することを可能としている。
【0196】
絶縁筒部910の素材は、絶縁材料であれば特に限定されることはないが、耐摩耗性・耐高温性・難燃性・耐化学腐食性に優れたものを採用することにより、絶縁筒部910の物理的強度を向上させつつ、オートクレーブ処理等の熱滅菌時の熱変性や消毒液等の腐食変性を防止可能とする。このような絶縁筒部910の素材としては、半硬質製樹脂、例えばポリフッ化ビニリデン樹脂を採用することが好ましい。
【0197】
特に本実施形態の絶縁筒部910は、固定アタッチメント720と一体の筒状体710の外周部分に外嵌した熱収縮チューブを熱収縮することにより、チューブの樹脂素材を筒状体710の外周に熱圧着させて筒状体710に一体化させて一定厚みを有した層状に形成している。
【0198】
この絶縁筒部910を形成するための熱収縮チューブは、熱収縮前内径が筒状体710の外径よりも大きく、熱収縮後内径が筒状体710の外径よりも小さいものであればよい。
【0199】
本実施形態では被覆部700は外径を4.0mm~5.0mmとし、絶縁筒部910を形成する熱収縮チューブは収縮前内径を5.0mm~7.0mmとし収縮後内径を2.0mm~5.0mmとしたものを採用している。
【0200】
このような熱収縮チューブの熱収縮により筒状体710の外周に圧着形成した絶縁筒部910の肉厚は、0.2mm~0.6mmである。
【0201】
絶縁基部920は、図15及び図16に示すように先端側開口920aから基端側開口920bにかけて漸次拡径する略擂鉢筒状であって、絶縁筒部910とは別体のカバー体に構成している。
【0202】
絶縁基部920は、被覆部700を導光本体部300に装着固定した状態で被覆部700の基部と導光本体部300の基部を覆うように、被覆部700の基部と導光本体部300の基部に嵌着可能に構成している。
【0203】
また、絶縁基部920は、先端側開口920aの内径を係合フランジ921aにより絶縁筒部910又は筒状体710の外径以下に形成するとともに、基端側開口920bの内径を導光本体部300基部、すなわち連結凹部210の筒部212の外径以下に形成している。
【0204】
かかる絶縁基部920は、略前半部に相当し、被覆部700基部の固定アタッチメント720全体を外側から被覆する絶縁本体部921と、略後半部に相当し、絶縁本体部921の後方側で拡径して伸延して連結凹部210の筒部212の前端外周部分を外側から被覆する基部連結部922と、により構成している。
【0205】
図15及び図16に示すように、絶縁本体部921は、固定アタッチメント720の外形に沿うように略擂鉢筒状に形成している。また、絶縁本体部921の後方側で伸延する基部連結部922は、連結凹部210の筒部212の外形に沿うように略円筒状に形成している。
【0206】
絶縁基部920の先端側開口920aの内周縁、すなわち絶縁本体部921の先端開口の内周縁には、固定アタッチメント720の先端面(先端側筒状部722の先端面)に当接対応する係合フランジ921aが径方向内方に向けて突出形成されている。
【0207】
絶縁基部920の素材は、絶縁筒部910と同様に絶縁筒部910の素材は、絶縁材料であれば特に限定されることはなく、耐摩耗性・耐高温性・難燃性・耐化学腐食性に優れたものを採用することができる。
【0208】
本実施形態の絶縁基部920は、絶縁性且つ弾力性に富むシリコーン樹脂製である。絶縁基部920は、絶縁性且つ弾力性を有するシリコーン樹脂にて、被覆部700の基部と連結凹部210の筒部212(導光本体部300基部)の外形よりやや小さい相似形となるように形成する。
【0209】
これにより、被覆部700の基部と発光部200の基部に絶縁基部920を嵌着した際には、絶縁基部920が、シリコーン樹脂の弾性収縮力により被覆部700や発光部200の基部表面に圧着して同表面を確実に被覆する。
【0210】
なお、絶縁基部920を絶縁性を有する硬質樹脂製とする場合には、基部連結部922の内周面と、これに対応する導光本体部300の基部面、すなわち連結凹部210の筒部212の外周面に互いに連結可能な雌雄ネジ構造などの連結部を構成することとしてもよい。
【0211】
このような構成の絶縁基部920は、絶縁筒部910により絶縁被覆され、導光本体部300に固定アタッチメント720を介して装着固定した筒状体710を挿通して導光本体部300基部位置まで移動し、固定アタッチメント720と連結凹部210の筒部212の略前半部を覆うようにして、固定アタッチメント720と筒部212の略前半部に外嵌される。
【0212】
この絶縁基部920の外嵌作業の際に、絶縁本体部921の先端側開口920aに形成した係合フランジ921aが嵌着時に固定アタッチメント720の先端面(先端側筒状部722の先端面)に当接係合して同先端面を被覆するストッパー機能を果たすとともに、基部連結部922が内側でネジ構造520を介して互いに一体的に連結した導光本体部300と被覆部700とを外側からも一体的に連結固定するコネクト機能を果たす。
【0213】
換言すれば、絶縁基部920は、基部連結部922と一体の絶縁本体部921の係合フランジ921aにより固定アタッチメント720先端面に係合させて、固定アタッチメント720を基端側に引き寄せつつ、絶縁本体部921を導光本体部300基部の連結凹部210の外周に圧着し、導光本体部300と被覆部700とを連結固定するとともに被覆することができる。
【0214】
(8)内視鏡下手術における照射装置の使用態様:
上述にように構成した照射器具Aは、内視鏡下手術において以下のように使用する。図17及び図18は、内視鏡下手術における照射器具Aの使用状態を示す説明図である。
【0215】
なお、本使用態様では、照射器具Aを用いる内視鏡下手術として腹腔鏡手術を例に説明するが、腹腔鏡手術以外の胸腔鏡手術、内視鏡下副鼻腔手術、及び関節内手術であっても同様の作用、効果を得ることができるのは勿論である。
【0216】
患者Pの腹壁には図17に示すように腹腔に通じる複数の小孔に筒状のトロカールTを刺入固定し、腹腔には二酸化炭素ガスを充満させて臓器と腹壁との間に空間を形成している。
【0217】
かかる複数のトロカールTを介して、図17及び図18に示すように腹腔内にはそれぞれ、外部モニタMと接続した内視鏡E(腹腔鏡)、メス、鋏、鉗子などの手術器具I、及び本発明に係る照射器具Aを挿入して配置する。
【0218】
なお、トロカールTの筒内には、トロカールT内に内視鏡Eや手術器具I、照射器具Aを挿入した際に、腹腔に充満した二酸化炭素ガスが腹腔外へ流出することを防止する逆止弁構造が設けられている。
【0219】
施術者は、内視鏡Eと接続した外部モニタM上で施術対象とする患部を有した臓器を確認し、照射器具Aの把持部10を把持操作して、臓器裏側で患部以外の器官に干渉しない剥離予定位置に発光本体部40を位置づける。
【0220】
なお、臓器裏側で患部以外の器官に干渉しない剥離予定位置は、手術器具I及び照射器具Aを両手で把持操作して臓器をめくり上げるなどして確認することもできる。
【0221】
具体的には、臓器裏側で略水平方向へ掘り進むように剥離進行する際の手術器具Iの先端部位置を特定したい場合には、剥離位置としての臓器裏側の手術器具Iの先端部に照射器具Aの発光本体部40を接触させ且つ追従させるように照射器具Aの位置付け操作を行う。
【0222】
また、臓器の表側から奥側に向かって臓器にトンネルを形成するごとく掘り進むように剥離掘進する際の剥離穿孔位置を特定する場合には、剥離位置として臓器裏側の穿孔の終位置に発光本体部40を配置するように照射器具Aの位置付け操作を行う。
【0223】
このような臓器裏側での照射器具Aの配置状態において、スイッチ109をオン操作することで、発光本体部40からは、上述のように把持部10に内蔵した光源12から導光本体部30を通過してきた光が強い光強度で出射される。
【0224】
かかる出射光は臓器内を裏面側から表面側へ通過して透過光となる。この臓器表面に現出した透過光の指し示すスポット位置は、臓器裏側の手術器具の先端部位置や剥離穿孔位置を示している。
【0225】
すなわち、施術者は、照射器具Aをあたかも光ポインターの如く臓器裏側で発光部20の先端部の配置操作をして、内視鏡Eを介して外部モニタMの臓器表面画像における発光本体部40による透過光を視認し、同透過光による光スポットの位置を目印に臓器裏側の手術器具の先端部位置や剥離穿孔位置を特定することができる。
【0226】
また、把持部10を介して臓器裏側で発光部20の発光本体部40を臓器裏面に接触して摺動させつつ照射位置を動かすことにより臓器内部の各種組織の位置を陰影として確認することもできる。
【0227】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る照射器具によれば腹腔や胸腔、鼻腔といった体腔の限られた極狭空間の環境下でも操作性に優れて把持部を把持して発光部の先端部を臓器の裏側に位置づける位置づけ操作を容易に行うことができ、発光部の胴部を進行して発光部の先端部から出射される出射光を臓器内部を透過する透過光とし、同透過光を腹腔鏡を介したモニタ上の臓器表面画像で視認できる。
【0228】
すなわち、施術者は、臓器裏側で患部以外の器官に干渉しない剥離予定位置に照射器具の発光部の先端部を位置付けておき、臓器の裏側から表側へ透過した「透過光の指し示す位置」を患部以外の器官に干渉しない「剥離位置」としてスポット的に照らし出し、臓器表側で臓器裏側の「剥離位置」をピンポイントで特定できる効果がある。
【符号の説明】
【0229】
A 照射器具
T トロカール
E 内視鏡
P 患者
10 把持部
20 発光部
30 導光本体部
40 発光本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18