(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】貨幣入金処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/24 20190101AFI20230116BHJP
G07D 11/26 20190101ALI20230116BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/26
(21)【出願番号】P 2021553265
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041976
(87)【国際公開番号】W WO2021079502
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 徹
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特許第3922425(JP,B2)
【文献】特開平9-153168(JP,A)
【文献】特開平3-111991(JP,A)
【文献】国際公開第2010/067421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入部にセットされた貨幣を一枚ずつ搬送し金種判別して一時保留せずに金種別に収納部に収納させて入金取引単位で入金貨幣を確定する貨幣入金処理装置であって、
一の収納部が、前回までの入金取引で確定済みの貨幣と今回入金取引中の未確定の貨幣とが混在する状態で満杯となり、当該満杯となった貨幣が抜き取られた後に障害が発生した際には、当該満杯となった貨幣に含まれる前記今回入金取引中の未確定の貨幣分のデータを部分確定として計上すると共に、当該部分確定として計上した貨幣分のデータを、障害復旧処理後の再入金処理時に加算して反映する特殊制御を行う制御部、
を備えたことを特徴とする貨幣入金処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記満杯となり貨幣の抜き取りが行われた一の収納部とは別に、同一金種用の他の収納部が存在する場合に、
前記部分確定として計上する貨幣の枚数から、前記他の収納部において前回までの入金取引で確定済みの貨幣の枚数を減算した値が、0以上であることを条件として、前記特殊制御を実行することを特徴とする請求項1記載の貨幣入金処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前回までの入金取引で確定済みの貨幣の前記障害復旧処理に係る戻し計数と、前記再入金処理に係る計数とを併せて行うことを特徴とする請求項1または2記載の貨幣入金処理装置。
【請求項4】
前記部分確定として計上する前記今回入金取引中の未確定の貨幣分のデータに関連する情報を表示する第1表示部と、
前記満杯となり貨幣の抜き取りが行われた収納部の貨幣分のデータに関連する情報を表示する第2表示部と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の貨幣入金処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣入金処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一時保留部を有さず、投入された貨幣を直接スタッカに収納することで構成の簡素化および低価格化を図った紙幣入金処理機がある。紙幣入金処理機では、例えば初回取引分の入金取引が正常に処理された後、2回目取引分の入金取引の途中でジャム等の障害が発生することがある。このような場合、一時保留部がないと、各スタッカでの紙幣収納状況は、確定した初回取引分の紙幣と未確定で処理途中の2回目取引分の紙幣とが混じり合ったものとなる。これを復旧処理するには、操作者は、混じり合った紙幣をスタッカから全て取り出す。そして、操作者は、これらと、ホッパに残っている紙幣と、ジャムを起こした搬送通路上の紙幣とをまとめる。そして、これらの紙幣について、手作業により枚数を数え、確定している初回取引分の枚数分と2回目取引分の枚数分とを区分けする。
【0003】
紙幣入金処理機の中には、例えば初回取引分の入金取引が正常処理された後、2回目取引分の入金取引の途中でジャム等の障害が発生した場合でも、手作業による確定分の区分けを不要とするようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。この紙幣入金処理機では、障害復旧時に、障害発生時の入金取引に係る紙幣と、当該入金取引以前に既にスタッカに収納されて入金処理が確定している紙幣とが、ホッパに再載置される。そして、ホッパに再載置された紙幣の、当該入金取引の分と、当該入金取引以前の入金取引であって入金処理が確定されている分との総計について、金種に応じてスタッカに収納する。それと共に、この紙幣入金処理機では、当該入金取引に係る入金額等のデータと、当該入金取引以前に係る入金額等のデータとの区分けを行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一時保留部が設けられていない紙幣入金処理機では、入金処理した紙幣がスタッカにて所定の満杯枚数(例えば100枚)となる満杯状態が発生すると、スタッカから当該紙幣を抜き取らないと入金処理を継続できないようになっている。例えば、初回取引分の入金取引は正常に処理され、2回目取引分の入金取引の途中でスタッカに満杯状態が発生し、このスタッカから紙幣が抜き取られた後に、ジャム等の障害が発生したとする。すると、満杯状態となった際にスタッカから抜き取られた、初回取引分の確定している紙幣および未確定の2回目取引分の紙幣(例えば計100枚)と、障害発生時に抜き取られるスタッカ内の未確定の2回目取引分の紙幣とが混在してしまう。このため、これらの紙幣を全てホッパに再載置して戻し処理を行わざるをえなかった。
【0006】
さらには、スタッカで満杯状態となって抜き取られた紙幣は、次の工程において既に結束されている場合もある。このため、結束帯をほどいて戻し処理を行うとなるとさらに操作者の操作負荷は増すことになるが、このような場合の操作者の操作負荷までは軽減することまではできなかった。
【0007】
本発明の目的は、入金取引中に満杯となった貨幣が抜き取られた後に障害が発生しても、復旧に関する操作者の負荷を軽減することが可能となる貨幣入金処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の態様によれば、貨幣入金処理装置は、投入部にセットされた貨幣を一枚ずつ搬送し金種判別して一時保留せずに金種別に収納部に収納させて入金取引単位で入金貨幣を確定する貨幣入金処理装置である。一の収納部が、前回までの入金取引で確定済みの貨幣と今回入金取引中の未確定の貨幣とが混在する状態で満杯となり、当該満杯となった貨幣が抜き取られた後に障害が発生した際には、当該満杯となった貨幣に含まれる前記今回入金取引中の未確定の貨幣分のデータを部分確定として計上すると共に、当該部分確定として計上した貨幣分のデータを、障害復旧処理後の再入金処理時に加算して反映する特殊制御を行う制御部、を備えている。
【0009】
本発明に係る第2の態様によれば、第1の態様に係る貨幣入金処理装置は、前記制御部が、前記満杯となり貨幣の抜き取りが行われた一の収納部とは別に、同一金種用の他の収納部が存在する場合に、前記部分確定として計上する貨幣の枚数から、前記他の収納部において前回までの入金取引で確定済みの貨幣の枚数を減算した値が、0以上であることを条件として、前記特殊制御を実行してもよい。
【0010】
本発明に係る第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る貨幣入金処理装置は、前記制御部が、前回までの入金取引で確定済みの貨幣の前記障害復旧処理に係る戻し計数と、前記再入金処理に係る計数とを併せて行ってもよい。
【0011】
本発明に係る第4の態様によれば、第1乃至第3のいずれか一態様に係る貨幣入金処理装置は、前記部分確定として計上する前記今回入金取引中の未確定の貨幣分のデータに関連する情報を表示する第1表示部と、前記満杯となり貨幣の抜き取りが行われた収納部の貨幣分のデータに関連する情報を表示する第2表示部と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入金取引中に満杯となった貨幣が抜き取られた後に障害が発生しても、復旧に関する操作者の負荷を軽減することが可能となる貨幣入金処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置を示す正面図である。
【
図2】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置を正面側から見た内部の概略構成図である。
【
図3】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置および従来の紙幣入金処理装置の操作表示部の表示例を示す正面図である。
【
図4】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置および従来の紙幣入金処理装置の集積表示部の表示例を示す正面図である。
【
図5】従来の紙幣入金処理装置の操作表示部の表示例を示す正面図である。
【
図6】従来の紙幣入金処理装置の集積表示部の表示例を示す正面図である。
【
図7】従来の紙幣入金処理装置の操作表示部の表示例を示す正面図である。
【
図8】従来の紙幣入金処理装置の集積表示部の表示例を示す正面図である。
【
図9】従来の紙幣入金処理装置の操作表示部の表示例を示す正面図である。
【
図10】従来の紙幣入金処理装置の集積表示部の表示例を示す正面図である。
【
図11】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の操作表示部の表示例を示す正面図である。
【
図12】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の集積表示部の表示例を示す正面図である。
【
図13】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の操作表示部の表示例を示す正面図である。
【
図14】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の集積表示部の表示例を示す正面図である。
【
図15】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の操作表示部の表示例を示す正面図である。
【
図16】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の集積表示部の表示例を示す正面図である。
【
図17】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の操作表示部の表示例を示す正面図である。
【
図18】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の集積表示部の表示例を示す正面図である。
【
図19】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の操作表示部の表示例を示す正面図である。
【
図20】本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置の集積表示部の表示例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る貨幣入金処理装置の一実施形態としての紙幣入金処理装置を図面を参照して以下に説明する。
【0015】
図1および
図2に示すように、本実施形態の紙幣入金処理装置1は、貨幣として紙幣Sを取り扱うものである。紙幣入金処理装置1は、紙幣Sを分類処理する。紙幣入金処理装置1は、投入された紙幣Sを、計数対象である計数対象紙幣と、計数対象ではないリジェクト紙幣とに分類する。紙幣入金処理装置1は、計数対象紙幣をさらに種類別に計数して種類別に収納し、計数結果と収納先とを関連付けて表示する。以下の説明において、「前」は操作者側、「後」は操作者とは反対側、「右」は操作者から見て右側、「左」は操作者から見て左側である。
【0016】
紙幣入金処理装置1は、計数ユニット2と収納ユニット3とが組み合わせられて構成されている。計数ユニット2は、紙幣Sを一枚ずつ搬送し識別して計数する。収納ユニット3は、計数ユニット2から搬送されてきた紙幣Sを識別結果に基づいて分類収納する。紙幣入金処理装置1は、1台の計数ユニット2に対し1台のみの収納ユニット3を付設して構成することが可能である。また、紙幣入金処理装置1は、1台の計数ユニット2に対し複数台の収納ユニット3を連設して構成することも可能となっている。ここでは、1台の計数ユニット2に1台のみの収納ユニット3を組み合わせた紙幣入金処理装置1を例にとり説明する。
【0017】
計数ユニット2は、投入部11とリジェクト部13とを有している。投入部11は、計数ユニット2の右側面側の下部に設けられている。投入部11は、計数ユニット2の右側面および前面に亘って計数ユニット2外、即ち紙幣入金処理装置1外に常時開口している。リジェクト部13は、計数ユニット2の右側面側の上部に設けられている。リジェクト部13は、計数ユニット2の右側面および前面に亘って計数ユニット2外、即ち紙幣入金処理装置1外に常時開口している。
【0018】
投入部11には、複数枚の紙幣Sが長辺部を前後に沿わせ、短辺部を左右に沿わせて上下方向に集積された状態でセットされることになる。投入部11は、このようにセットされた集積状態の紙幣Sを最下のものから一枚ずつ分離し繰り出して紙幣入金処理装置1内に取り込む。投入部11から繰り出される紙幣Sは、その短辺部の延在方向に沿って移動する。
【0019】
計数ユニット2の内部には、計数ユニット内搬送構成部21と、識別部22とが設けられている。計数ユニット内搬送構成部21は、投入部11から繰り出された紙幣Sを搬送する。識別部22は、計数ユニット内搬送構成部21で搬送中の紙幣Sを金種判別を含んで識別しつつ計数する。計数ユニット内搬送構成部21で搬送される紙幣Sは、その短辺部の延在方向に沿って移動する。識別部22は、検出部23と識別本体部24とを有している。検出部23は、計数ユニット内搬送構成部21の投入部11側の端部位置に設けられている。検出部23は、投入部11が繰り出す紙幣Sの搬送状態を検出する。識別本体部24は、計数ユニット内搬送構成部21の検出部23に対し投入部11とは反対側に設けられている。識別本体部24は、紙幣Sの搬送状態以外の金種判別等の種類の識別を行う。
【0020】
計数ユニット内搬送構成部21は、左方延出部21aと、上方延出部21bと、左方延出部21cと、分岐延出部21eとを有している。左方延出部21aは、投入部11から計数ユニット2の左側面に向けて延出している。上方延出部21bは、左方延出部21aの左側面近傍の端部から上方に延出している。左方延出部21cは、上方延出部21bの上端部から計数ユニット2の左側面に向け延出して左側面に開口している。分岐延出部21eは、上方延出部21bの識別部22よりも上側から分岐し、計数ユニット2の右側面に向け延出している。分岐延出部21eは、リジェクト部13に繋がっている。計数ユニット内搬送構成部21には、鉛直方向に沿う上方延出部21bに識別本体部24が設けられている。
【0021】
収納ユニット3の内部には、収納ユニット内搬送構成部27が設けられている。収納ユニット内搬送構成部27は、計数ユニット2の左方延出部21cに接続されている。収納ユニット内搬送構成部27は、左方延出部21cから繰り出された紙幣Sを搬送する。収納ユニット内搬送構成部27で搬送される紙幣Sも、その短辺部の延在方向に沿って移動する。
【0022】
収納ユニット内搬送構成部27は、連結搬送構成部27Aと、分岐搬送構成部27Bとを有している。連結搬送構成部27Aは、収納ユニット3の右側面の上部に開口し、収納ユニット3の左側面に向け水平且つ直線状に延出して、左側面の上部に開口している。分岐搬送構成部27Bは、連結搬送構成部27Aの左側部分から下側に分岐している。連結搬送構成部27Aと分岐搬送構成部27Bとは、それぞれ独立して駆動可能となっている。なお、1台の計数ユニット2に対し収納ユニット3が複数台連設される場合は、これらを左右方向に並べて連結し、複数台の収納ユニット3の隣り合うもの同士が連結搬送構成部27Aを接続させて連結される。
【0023】
分岐搬送構成部27Bは、下方延出部27Baと、複数具体的には4つの側方延出部27Bbとを有している。下方延出部27Baは、連結搬送構成部27Aの左側部分から分岐して鉛直下方に延出している。複数の側方延出部27Bbは、1つが下方延出部27Baの下端位置から収納ユニット3の右側面に向けて延出している。複数の側方延出部27Bbは、残りの複数が下方延出部27Baの中間位置から分岐して収納ユニット3の右側面に向けて延出している。4つの側方延出部27Bbのうち、最も上側の側方延出部27Bbに、紙幣Sを集積させて収納する集積部14a(収納部)が、上から2番目の側方延出部27Bbに同様の集積部14b(収納部)が、上から3番目の側方延出部27Bbに同様の集積部14c(収納部)が、最も下側の側方延出部27Bbに同様の集積部14d(収納部)が、それぞれ接続されている。
【0024】
よって、1台の収納ユニット3に、複数、具体的には4個の集積部14a~14dが設けられている。集積部14a~14dのうち、集積部14aが最も上側に、集積部14bが上から2番目に、集積部14cが上から3番目に、集積部14dが最も下側に配置されている。集積部14a~14dは、同様の構成であり、紙幣Sを集積させながら収納する。
【0025】
図1に示すように、集積部14a~14dは、いずれも開口部15を有している。開口部15は、収納ユニット3の前面、即ち紙幣入金処理装置1の前面に設けられている。集積部14a~14dは、それぞれの開口部15において、収納ユニット3外、即ち紙幣入金処理装置1外に常時開口している。収納ユニット3の前面、即ち紙幣入金処理装置1の前面には、集積部14a~14dと同数の集積表示部28a~28d(第2表示部)が設けられている。
【0026】
集積表示部28aは、集積部14aと高さ位置を合わせて、その左横に設けられている。集積表示部28bは、集積部14bと高さ位置を合わせて、その左横に設けられている。集積表示部28cは、集積部14cと高さ位置を合わせて、その左横に設けられている。集積表示部28dは、集積部14dと高さ位置を合わせて、その左横に設けられている。
【0027】
集積表示部28aは、集積部14aに関する情報を表示するもので、集積部14aの紙幣Sの集積枚数を表示したり、集積部14aの装置異常状態を表示したり、集積部14aの紙幣Sの抜き取りを促す表示を表示したりする。集積表示部28bは、集積部14bに関する情報を表示するもので、集積部14bの紙幣Sの集積枚数を表示したり、集積部14bの装置異常状態を表示したり、集積部14bの紙幣Sの抜き取りを促す表示を表示したりする。集積表示部28cは、集積部14cに関する情報を表示するもので、集積部14cの紙幣Sの集積枚数を表示したり、集積部14cの装置異常状態を表示したり、集積部14cの紙幣Sの抜き取りを促す表示を表示したりする。集積表示部28dは、集積部14dに関する情報を表示するもので、集積部14dの紙幣Sの集積枚数を表示したり、集積部14dの装置異常状態を表示したり、集積部14dの紙幣Sの抜き取りを促す表示を表示したりする。
【0028】
図2に示すように、互いに接続された計数ユニット内搬送構成部21と収納ユニット内搬送構成部27とが、紙幣入金処理装置1内で紙幣Sを各部に搬送する搬送部30を構成している。搬送部30は、投入部11から繰り出された紙幣Sを搬送する。識別部22は、搬送部30での搬送中に紙幣Sを識別する。搬送部30は、識別部22に対し投入部11とは反対側の部分が、識別部22の識別結果に基づいて紙幣Sを振り分ける。搬送部30は、紙幣Sを、リジェクト部13および複数の集積部14a~14dのうちの一つに択一的に振り分ける。
【0029】
紙幣入金処理装置1において、リジェクト部13および複数の集積部14a~14dは、識別部22の識別結果に基づいて紙幣Sを分類して紙幣入金処理装置1外に取り出し可能に収納する。複数の集積部14a~14dは、それぞれが、
図1に示すように紙幣入金処理装置1の前面に設けられた開口部15から、紙幣入金処理装置1の前方に紙幣Sが引き抜かれる。
【0030】
図2に示すように、リジェクト部13は、投入部11で紙幣入金処理装置1内に取り込まれた紙幣Sのうち、識別部22で計数対象紙幣以外のリジェクト紙幣と識別された紙幣Sを集積させて紙幣入金処理装置1外に取り出し可能に収納する。リジェクト部13は、計数ユニット内搬送構成部21から紙幣Sが繰り出されることになる。リジェクト部13は、このように繰り出された紙幣Sを繰り出し順、言い換えれば投入部11の取り込み順に下から上に集積させる。紙幣Sは、計数ユニット内搬送構成部21の分岐延出部21eからリジェクト部13に繰り出されると、リジェクト部13内で、長辺部を前後に沿わせ、短辺部を左右に沿わせて下から上に集積される。紙幣Sは、投入部11で上に向いていた面が、リジェクト部13でも上に向く。
【0031】
複数の集積部14a~14dは、投入部11で紙幣入金処理装置1内に取り込まれた紙幣Sのうち、識別部22で計数対象紙幣と識別されて種類別に計数された紙幣Sを種類別に集積させて紙幣入金処理装置1外に取り出し可能に収納する。複数の集積部14a~14dは、いずれも、収納ユニット内搬送構成部27から紙幣Sが繰り出されることになる。複数の集積部14a~14dは、いずれも、このように繰り出された紙幣Sを繰り出し順、言い換えれば投入部11の取り込み順に右から左の方向に集積させる。紙幣Sは、投入部11で上に向いていた面が、集積部14a~14dでは左に向く。
【0032】
図1に示すように、紙幣入金処理装置1の計数ユニット2の前面には、操作入力を受け付けると共に情報表示を行う操作表示部31が設けられている。操作表示部31は、
図3に示すように、情報表示を行う表示画面35(第1表示部)と、その周囲に設けられて操作者の操作入力を受け付ける操作部36とを有している。表示画面35は、入金処理のモードの設定や入金処理状態等の詳細を表示するようになっている。
【0033】
また、
図2に示すように、計数ユニット2の内部には、制御部32と記憶部33とが設けられている。制御部32は、計数ユニット2および計数ユニット2に連結された収納ユニット3の各部を制御する等、紙幣入金処理装置1の全体の制御を司る。記憶部33は、識別の基準となるマスタデータや識別計数結果のデータ等を記憶する。
【0034】
計数ユニット2に設けられた投入部11は、上述したように紙幣入金処理装置1の右側面側に右側方および前方に常時開口するように設けられている。投入部11は、底部40と壁部41と壁部43とを有している。底部40は、水平に対して若干左下がりに傾斜して配置されている。壁部41は、底部40の左端位置から底部40に対して垂直をなして上方に延出している。壁部43は、底部40の後端縁部から鉛直上方に延出している。底部40および壁部41は前後方向に広がっている。壁部43は前後方向に対し直交するように広がっている。底部40と壁部41と壁部43とは互いに垂直に配置されている。
【0035】
投入部11には、紙幣Sが、壁部41に一方の長辺部を、壁部43に一方の短辺部を、それぞれ当接させるようにして、底部40上に集積状態でセットされる。投入部11は、底部40の上方にビルプレス45を有している。ビルプレス45は、壁部41に沿って昇降する。ビルプレス45は、底部40上に載置された紙幣Sを底部40に向けて押圧する。
【0036】
投入部11は、蹴出ローラ51と取込ローラ52と分離ローラ53とを有している。蹴出ローラ51は、底部40上にセットされた紙幣Sのうちの最下の紙幣Sを左方の計数ユニット内搬送構成部21に向けて蹴り出す。取込ローラ52は、蹴出ローラ51で蹴り出された紙幣Sを紙幣入金処理装置1の内部に取り込んで計数ユニット内搬送構成部21に受け渡す。分離ローラ53は、取込ローラ52で取り込む紙幣Sを一枚ずつに分離する。蹴出ローラ51、取込ローラ52および分離ローラ53が、投入部11にセットされた紙幣Sを一枚ずつ分離して紙幣入金処理装置1の内部に取り込む取込部55を構成している。
【0037】
上記した識別部22の検出部23は、計数ユニット内搬送構成部21の左方延出部21aにおける投入部11の近傍位置に配置されている。検出部23は、紙幣Sの投入部11からの繰り出しの有無および紙幣Sの搬送状態を検出する。検出部23は、紙幣Sの光透過率或いは物理的厚さから重送の有無を検出する。また、検出部23は、紙幣Sの長辺部方向両側のそれぞれの検知タイミングのずれから斜行の有無を検出する。さらに検出部23は、隣り合う紙幣Sのそれぞれの検知タイミングの間隔からニアフィードの有無を検出する。検出部23で、重送、斜行およびニアフィードのいずれも無いことが検出された紙幣Sは、検出部23で正常搬送であることが検出された正常搬送の紙幣Sになる。重送、斜行およびニアフィードのいずれかが検出された紙幣Sは、検出部23で異常搬送であることが検出された異常搬送の紙幣Sになる。異常搬送の紙幣Sは、リジェクト部13に排除されるリジェクト紙幣となる。
【0038】
識別部22の識別本体部24は、正常搬送の紙幣Sの画像を検出すると共に、画像データを基準データと比較して、一致すると判定できる基準データの種類を、紙幣Sの種類と特定する。このように種類が特定された紙幣Sは、識別異常なしの紙幣Sとなる。一方、一致すると判定できる基準データがない紙幣Sは、識別異常ありの紙幣Sとなる。識別異常ありの紙幣Sは、リジェクト部13に排除されるリジェクト紙幣となる。
【0039】
計数ユニット2に設けられたリジェクト部13は、底部60と壁部61と壁部63とを有している。底部60は、水平に対して若干左下がりに傾斜して配置されている。壁部61は、底部60の左端位置から底部60に略垂直をなして上方に延出している。壁部63は、底部60の後端縁部から鉛直上方に延出している。底部60および壁部61は前後方向に広がっており、壁部63は前後方向に対し直交するように広がっている。
【0040】
壁部61の上部には、羽根車65が設けられている。羽根車65は、分岐延出部21eの端末位置の近傍に設けられている。羽根車65は、分岐延出部21eで搬送されてきた紙幣Sを繰り出して底部60に集積させる。羽根車65には、多数の羽根が周方向に所定の間隔で周方向同側に延出するように設けられている。羽根車65は、底部60と対向する側が右から左に移動するように回転することになる。羽根車65の底部60と対向する側の羽根は、底部60と対向する際に固定端が左側に自由端が右側に位置するように延びている。
【0041】
羽根車65は、分岐延出部21eで搬送されてきた紙幣Sを羽根と羽根との間に挟んで共に回転し、この紙幣Sが壁部61に当接して羽根と羽根との間から抜け出すと、この紙幣Sを羽根で底部60側、即ち下方に押す。リジェクト部13には、リジェクト部13の紙幣の有無を検知する図示略の紙幣有無センサが設けられている。
【0042】
図1に示すように、収納ユニット3に設けられた複数の集積部14a~14dは、いずれも同様の構成である。集積部14a~14dは、開口部15と収納底部70と収納奥壁部73と支持ステージ82とを有している。収納底部70は、水平に対し右下がりに傾斜している。収納奥壁部73は、収納底部70の後側で広がっている。収納底部70は、その上方に向く上面が右下がりに傾斜して前後方向に広がっている。収納奥壁部73は、その前方に向く前面が鉛直方向および左右方向に広がっている。言い換えれば、収納奥壁部73は、前後方向に対し直交するように広がっている。支持ステージ82は、収納底部70の右端位置から水平に対し右上がりに延出している。支持ステージ82は、揺動可能である。
【0043】
図2に示すように、分岐搬送構成部27Bの各側方延出部27Bbの末端位置には、羽根車75が設けられている。羽根車75は、集積部14a~14dのうちの対応するものの内部に紙幣Sを繰り出す。羽根車75は、集積部14a~14dにおける収納底部70の支持ステージ82とは反対側、即ち左側に設けられている。羽根車75には、多数の羽根が周方向に所定の間隔で周方向同側に延出するように設けられている。羽根車75は、支持ステージ82と対向する側が上から下に移動するように回転することになる。羽根車75の支持ステージ82と対向する側の羽根は、支持ステージ82と対向する際に固定端が下側に自由端が上側に位置するように延びている。
【0044】
羽根車75は、分岐搬送構成部27Bの下方延出部27Baおよび4つの側方延出部27Bbのうちの対応する一つで左側から右側に搬送されてきた紙幣Sを羽根と羽根の間に挟んで紙幣Sと共に回転する。羽根車75は、この紙幣Sが収納底部70の上面に当接して羽根と羽根との間から抜け出すと、この紙幣Sを羽根で支持ステージ82側に押す。このとき、紙幣Sは、短辺部を上下に沿わせて収納底部70の上面に下端の長辺部で当接して支持されると共に、この上面にガイドされて支持ステージ82側に移動し、支持ステージ82に厚さ方向一側の面が重なって支持されることになる。次に繰り出される紙幣Sは、同様にして、短辺部を上下に沿わせて収納底部70の上面に下端の長辺部で当接して支持されると共に、この上面にガイドされて支持ステージ82側に移動し、既に支持ステージ82に支持されている紙幣Sの厚さ方向他側の面に、厚さ方向一側の面が重なって支持される。このようにして、紙幣Sが厚さ方向に順に集積されて、支持ステージ82に支持される。複数の集積部14a~14dのそれぞれにも、リジェクト部13と同様の図示略の紙幣有無センサが設けられている。
【0045】
図1に示すように、集積部14aに設けられた支持ステージ82は、集積部14aに繰り出された紙幣Sを支持することになるが、集積部14aに繰り出されて支持する紙幣Sの集積枚数が増えていくと、紙幣Sの集積枚数に応じた角度で揺動する。集積部14b~14dのそれぞれに設けられた支持ステージ82も同様である。
【0046】
図2に示すように、紙幣入金処理装置1は、投入部11に入金取引単位でセットされた紙幣Sを一枚ずつ分離して搬送し、計数対象紙幣を金種判別して一時保留せずに金種別に集積部14a~14dに収納させる。紙幣入金処理装置1は、このようにして、集積部14a~14dに収納させた入金取引単位の紙幣Sの金種別の数量を確定する。紙幣入金処理装置1は、このような入金処理を行う。
【0047】
紙幣入金処理装置1で入金処理される紙幣Sは、同じ入金取引単位を構成するものが、長辺方向を揃え短辺方向を揃えて厚さ方向に連続的に集積されて一纏めとされて、投入部11にセットされる。
【0048】
操作者が、投入部11に、第1の入金取引単位の紙幣Sをセットした後、操作表示部31の操作部36のスタート釦36aを押下する。すると、紙幣入金処理装置1は、制御部32に制御されて、投入部11が、セットされた紙幣Sを下から順に一枚ずつ紙幣入金処理装置1内に取り込む。このように取り込まれた紙幣Sを、搬送部30が搬送し、識別部22が識別する。制御部32は、識別部22が、正常搬送で識別異常なしであって計数対象の紙幣Sと識別し計数した計数対象紙幣Sを、搬送部30によって集積部14a~14dのうちの対応する一つに搬送して集積させる。他方、制御部32は、識別部22で識別されたリジェクト紙幣Sを、搬送部30でリジェクト部13に搬送し集積させる。計数対象紙幣Sは、上記したように、正常搬送であり識別異常なしであって計数対象である紙幣Sである。これに対し、リジェクト紙幣Sは、異常搬送の紙幣Sと、正常搬送であって識別異常ありの紙幣Sと、正常搬送であり識別異常なしであって計数対象以外の紙幣Sとからなる。
【0049】
そして、例えば、リジェクト紙幣Sがなく、第1の入金処理単位の全ての紙幣Sが集積部14a~14dの対応するものに搬送されて、投入部11および搬送部30の紙幣Sがなくなると、制御部32は、第1の入金処理単位の計数対象紙幣Sに対する識別部22の識別計数結果を操作表示部31の表示画面35および集積表示部28a~28dに表示させる。これを見て、操作者が確定操作を操作表示部31の操作部36に入力すると、制御部32は、第1の入金取引単位の紙幣Sの入金金額等を確定し、第1の入金処理単位の紙幣Sに対する入金処理を終了する。
【0050】
次に、操作者が、投入部11に、第2の入金取引単位の紙幣Sをセットした後、操作表示部31の操作部36のスタート釦36aを押下する。すると、制御部32は、第2の入金取引単位の紙幣Sの入金処理を、第1の入金取引単位の紙幣Sと同様に行うことになる。
【0051】
紙幣入金処理装置1においては、以上のような入金取引単位での入金処理が、複数回繰り返される。その際に、入金取引単位毎に集積部14a~14dから紙幣Sを抜き取らずに、複数の入金取引単位の入金処理を続けて行うことがある。その際に、集積部14a~14dには、複数の入金取引単位の紙幣Sが集積される。ただし、紙幣入金処理装置1では、集積部14a~14dのそれぞれ一つに対して集積可能な紙幣Sの枚数は100枚に設定されている。言い換えれば、集積部14a~14dは、いずれも100枚の紙幣Sを収納すると満杯となる設定となっている。
【0052】
ここで、入金処理における集積部14a~14dへの紙幣Sの振り分け方は、複数のモードがあり、モード設定により設定されるようになっている。
【0053】
モードが基本設定とされると、4つの集積部14a~14dには、最も上側の集積部14aに万円券が、上から2番目の集積部14bに五千円券が、上から3番目の集積部14cに二千円券が、最も下側の集積部14dに千円券が、それぞれ集積される設定となる。この場合、いずれも正常搬送であって識別異常なしの、万円券、五千円券、二千円券および千円券が計数対象紙幣Sとなる。
【0054】
また、モードが入金整理モード1に設定されている場合、4つの集積部14a~14dには、最も上側の集積部14aに表券の万円券が、上から2番目の集積部14bに裏券の万円券が、上から3番目の集積部14cに表券の千円券が、最も下側の集積部14dに裏券の千円券が、それぞれ集積される設定となる。この場合、いずれも正常搬送であって識別異常なしの、万円券および千円券が計数対象紙幣Sとなる。ここでは、便宜上、投入部11にセットされた際に、例えば、額面が漢数字で表示された面が上側に向いている紙幣Sを表券とし、額面が漢数字で表示された面が下側に向いている紙幣Sを裏券とする。これは便宜上であるので、逆に、額面が漢数字で表示された面が下側に向いている紙幣Sを表券とし、額面が漢数字で表示された面が上側に向いている紙幣Sを裏券としても良い。
【0055】
また、モードが入金整理モード2に設定されている場合、4つの集積部14a~14dには、最も上側の集積部14aに万円券の正券が、上から2番目の集積部14bに万円券の損券が、上から3番目の集積部14cに千円券の正券が、最も下側の集積部14dに千円券の損券が、それぞれ集積される設定となる。この場合、いずれも正常搬送であって識別異常なしの、万円券および千円券が計数対象紙幣Sとなる。
【0056】
なお、ここでは、特に条件を付けて説明しない限りは、入金処理のモード設定は基本設定であるものとして説明する。
【0057】
本実施形態の紙幣入金処理装置1の制御内容を説明する前に、まず、従来の制御内容を参考のため説明する。
【0058】
投入部11に、第1回目の入金処理単位の紙幣Sがセットされて、操作表示部31の操作部36のスタート釦36aが押下される。すると、制御部32は、上述したように、第1回目の入金処理単位の紙幣Sについての入金取引を行うことになる。第1回目の入金取引の結果、例えば、万円券が99枚入金計数された後、操作表示部31の操作部36の完了釦36bが操作されて、取引が確定し、第2回目の入金取引を待機する状態になると、制御部32は、操作表示部31の表示画面35および集積表示部28a~28dの表示を、
図3および
図4に示す表示とする。つまり、制御部32は、
図4に示すように、最も上側の集積部14aには万円券が99枚存在することを、集積部14aに対応する集積表示部28aに表示させる。また、制御部32は、
図3に示すように、現状は待機状態で入金計数データは0であることを表示画面35に表示させる。
【0059】
この状態で、投入部11に、第2回目の入金処理単位の紙幣Sがセットされて、操作部36のスタート釦36aが押下されると、制御部32は、第2回目の入金取引として、第2回目の入金処理単位の紙幣Sについての入金取引を行う。例えば、第2回目の入金処理単位が万円券10枚で構成されているとすると、第2回目の入金取引では、まず投入部11にセットされている第2回目の入金処理単位の紙幣Sのうちの万円券1枚が、最も上側の集積部14aに搬送される。すると、この集積部14aが100枚の紙幣Sで満杯となるため、制御部32は、取込部55および搬送部30を停止させると共に、集積部14aが満杯状態となったため集積部14aの紙幣Sを抜き取らないと残りの投入部11の紙幣Sの入金計数が続行できない旨を、集積表示部28aおよび表示画面35によって操作者にガイドする。
【0060】
次に、操作者が当該ガイドに導かれて最も上側の集積部14aの100枚の紙幣Sを全て抜き取ると、制御部32は、投入部11の残りの紙幣Sの入金計数を再開する。この入金処理の再開後に、例えば搬送ジャム等の障害が紙幣入金処理装置1で発生すると、制御部32は、取込部55および搬送部30を停止させると共に、操作表示部31の表示画面35に障害復旧をガイドする「障害復旧ガイド」を表示させる。すると、操作者は、この「障害復旧ガイド」にしたがって、搬送部30に滞留したジャム紙幣を除去すると共に、紙幣入金処理装置1の図示略のリセット釦を押下する。すると、制御部32は、紙幣入金処理装置1にリセット動作を行わせる。このリセット動作が終了し、投入部11、搬送部30および全ての集積部14a~14dに残留する全ての紙幣Sが除去されたことを検知すると、制御部32は、障害復旧処理が完了したと判定する。
【0061】
続いて、制御部32は、操作表示部31の表示画面35に、当該障害が発生する前の第1回目の入金取引が確定した状態に紙幣入金処理装置1を戻すことをガイドする「戻し処理操作ガイド」を表示させる。具体的には、最も上側の集積部14aを満杯状態とすることで集積部14aから抜き取った100枚の紙幣Sと、障害復旧処理の中で投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した全ての紙幣Sとを、投入部11に再投入してスタート釦36aを押下する旨を、ガイドする。その際の表示画面35の表示状態は、
図5および
図6に示すようになる。ここで、表示画面35に表示された、万円券が-99枚であることを示す「10000:-99枚」の表示は、万円券99枚を紙幣入金処理装置1内へ戻す戻し処理が必要なことをガイドするものである。
【0062】
そして、操作者が、「戻し処理操作ガイド」にしたがって、満杯解消のため抜き取った100枚の紙幣Sと、投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した9枚の紙幣Sとを、投入部11にセットして、スタート釦36aを押下操作すると、制御部32は、取込部55および搬送部30の駆動を再開する。すると、投入部11の紙幣Sは、1枚ずつ繰り出されて万円券と識別された紙幣Sが最も上側の集積部14aに集積されていき、第1回目の入金取引が確定した状態、つまりは集積部14aに万円券と識別された紙幣Sが99枚集積された状態に戻る。すると、制御部32は、取込部55および搬送部30を停止させると共に、以前の第1回目の入金取引が確定した状態への「戻し処理」が完了したと判定し、その旨を表示画面35および集積表示部28a~28dに表示させる(
図7および
図8参照)。
【0063】
そして、続いて、計数釦36cが押下されると、制御部32は、上記した第2回目の取引を再実行することになる。そして、上記と同様に、投入部11に投入された万円券1枚が最も上側の集積部14aに搬送され集積されて、この集積部14aが100枚の紙幣Sで満杯となる。すると、制御部32は、取込部55および搬送部30を停止させる。操作者がガイドにしたがって最も上側の集積部14aの100枚の紙幣Sを全て抜き取ると、制御部32は、投入部11の残りの紙幣Sの入金計数を再開する。その後、搬送ジャム等の障害が紙幣入金処理装置1で発生せずに正常に第2回目の入金処理が完了した状態になると、制御部32は、表示画面35および集積表示部28a~28dに
図9および
図10に示すような表示を表示させる。つまり、制御部32は、
図9に示すように、第2回目の入金取引での入金計数結果が、万円券10枚の合計10万円であることを表示画面35に表示させ、
図10に示すように、最も上側の集積部14aに万円券9枚が集積されている状態にあることを集積表示部28aに表示させる。そして、この状態で、操作者により完了釦36bが押されると、制御部32は、第2回目の入金取引を確定させて完了することになる。
【0064】
以上の制御では、集積部14aの満杯解消のため100枚の紙幣Sが抜き取られた後に、搬送ジャム等の障害が紙幣入金処理装置1で発生すると、障害復旧処理を行った後に、障害発生前に満杯解消のため抜き取った100枚の紙幣Sも含めて紙幣Sを投入部11に再投入して再計数する。よって、操作者は、投入部11に再投入する紙幣Sに障害発生前に抜き取った100枚を含める分が手間となる。このため、操作者の操作負荷を軽減することができるとは言えなかった。
【0065】
これに対し、実施形態の紙幣入金処理装置1は、基本設定モードにおいて、以下の制御を行う。
【0066】
実施形態の紙幣入金処理装置1においては、上記と同様、投入部11に、第1回目の入金処理単位の紙幣Sがセットされて、操作部36のスタート釦36aが押下される。すると、制御部32は、上述したように、第1回目の入金処理単位の紙幣Sについての入金取引を行うことになる。第1回目の入金取引の結果、例えば、万円券99枚が入金計数された後、操作部36の完了釦36bが操作されて、取引が確定し、第2回目の入金取引を待機する状態になると、制御部32は、集積表示部28a~28dおよび表示画面35の表示を、
図3および
図4に示す表示とする。つまり、制御部32は、
図4に示すように、最も上側の集積部14aには万円券99枚が存在することを、集積部14aに対応する集積表示部28aに表示させる。また、制御部32は、
図3に示すように、現状は待機状態で入金計数データは0であることを表示画面35に表示させる。
【0067】
この状態で、投入部11に、第2回目の入金処理単位の紙幣Sがセットされて、操作部36のスタート釦36aが押下されると、制御部32は、第2回目の入金取引として、第2回目の入金処理単位の紙幣Sについての入金取引を行う。例えば、上記と同様、第2回目の入金処理単位の紙幣Sが万円券10枚で構成されているとすると、第2回目の入金取引では、まず投入部11にセットされている第2回目の入金処理単位の紙幣Sの万円券1枚が、最も上側の集積部14aに搬送される。すると、この集積部14aが100枚の紙幣Sで満杯となるため、制御部32は、取込部55および搬送部30を停止させると共に、集積部14aが満杯状態となったため集積部14aの紙幣Sを抜き取って満杯を解消しないと残りの投入部11の紙幣Sの入金計数が続行できない旨を、集積表示部28aおよび表示画面35によって操作者にガイドする。
【0068】
次に、操作者が当該ガイドにしたがって最も上側の集積部14aの100枚の紙幣Sを全て抜き取ると、制御部32は、投入部11の残りの紙幣Sの入金計数を再開する。この入金処理の再開後に、例えば搬送ジャム等の障害が紙幣入金処理装置1で発生すると、制御部32は、取込部55および搬送部30を停止させると共に、表示画面35に障害復旧をガイドする「障害復旧ガイド」を表示させる。すると、操作者は、この「障害復旧ガイド」にしたがって、搬送部30に滞留したジャム紙幣を除去すると共に、紙幣入金処理装置1の図示略のリセット釦を押下する。すると、制御部32は、紙幣入金処理装置1にリセット動作を行わせる。このリセット動作が終了し、投入部11、搬送部30および全ての集積部14a~14dに残留する全ての紙幣Sが除去されると、制御部32は、障害復旧処理が完了したと判定する。
【0069】
続いて、制御部32は、表示画面35に、その後の継続処理に係る操作をガイド表示させる。具体的には、障害復旧処理の中で、投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した全ての紙幣Sを投入部11に再投入してスタート釦36aを押下する旨を、ガイドする。このとき、最も上側の集積部14aから満杯解消のため抜き取った100枚の紙幣Sについては、再投入を指示するガイドを行わない。これにより、操作者は、最も上側の集積部14aから満杯解消のため抜き取った100枚の紙幣Sについては、投入部11に再投入しないことになる。操作者は、障害復旧処理の中で、投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した9枚の紙幣Sのみを投入部11に再投入する。その際に、制御部32は、表示画面35および集積表示部28a~28dの表示状態を
図11および
図12に示す表示とする。即ち、制御部32は、
図12に示すように、4つの集積部14a~14dには物理的に万円券が1枚も存在しないことを、それぞれに対応する集積表示部28a~28dに表示させる。また、制御部32は、
図11に示すように、現状は待機状態であって入金計数データは論理上のデータとして万円券1枚を紙幣入金処理装置1の内部でバックアップしていることを表示画面35に表示させる。このバックアップしている万円券1枚のデータは、第2回目の入金取引で万円券1枚が集積部14aに搬送され集積されて集積部14aが100枚の紙幣Sで満杯となり、その結果、集積部14aから抜き取られた100枚の紙幣Sの中の万円券1枚が第2回目の入金取引のものであることを示している。つまり、この万円券1枚の紙幣Sは、搬送ジャム等の障害が発生する前に計数データとして確定して抜き取られた万円券1枚の紙幣Sとみなせるので、その後に継続入金する際の論理上のデータとみなして反映させることができるのである。
【0070】
なお、本実施形態においては、このように入金計数途中で集積部14a~14dのいずれか一つが100枚の紙幣Sで満杯となり、その結果、抜き取られた100枚の紙幣Sの中の、当該入金計数で搬送ジャム等の障害が発生する前に計数データとして確定した枚数データ(上記説明での万円券1枚)のことを「部分確定」した枚数データと呼ぶこととする。よって、
図11に示すように表示画面35に表示させている、バックアップしている万円券1枚のデータは、部分確定として計上する今回入金取引中の未確定の紙幣分のデータに関連する情報である。
【0071】
表示画面35および集積表示部28a~28dが
図11および
図12に示す状態にあるとき、操作者が、表示画面35でガイドされた内容にしたがって、投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した9枚の紙幣Sを投入部11にセットして、スタート釦36aを押下操作する。すると、制御部32の制御により、投入部11の紙幣Sは1枚ずつ繰り出されて万円券と識別された紙幣Sが最も上側の集積部14aに集積されていき、部分確定した万円券1枚のデータに1枚ずつ加算されて表示画面35の入金計数データが更新されていく。
【0072】
そして、投入部11に再セットされた、障害復旧処理の中で除去した全ての紙幣S、つまり万円券9枚が全て万円券と識別されて集積部14aに集積されて入金計数動作が終了すると、制御部32は、表示画面35および集積表示部28a~28dを、
図13および
図14に示す表示状態とする。つまり、制御部32は、
図14に示すように、集積部14aには万円券が9枚存在することを集積表示部28aに表示させる。言い換えれば、集積表示部28aは、満杯となり紙幣Sの抜き取りが行われた集積部14aの、抜き取り後の紙幣分のデータに関連する情報を表示する。また、制御部32は、
図13に示すように、現状は入金計数データが、部分確定した万円券1枚に再投入されて計数した万円券9枚を加えた、万円券10枚であることを表示画面35に表示させる。そして、この状態で、操作者により完了釦36bが押されると、制御部32は、第2回目の入金取引の内容を、入金計数データが万円券10枚として確定させて完了することになる。
【0073】
第2回目の入金取引の完了後、制御部32は、図示は略すが、集積部14aには万円券9枚が存在することを集積表示部28aに表示させると共に、現状は待機状態で入金計数データは0であることを表示画面35に表示させる。
【0074】
以上のように、前回までの入金取引で確定済みの紙幣Sと今回入金取引中の未確定の紙幣Sとが混在する状態で集積部14aが満杯となり、このように満杯となった紙幣Sが抜き取られた後に障害が発生した際に制御部32が行う制御が、特殊制御となる。特殊制御は、この満杯となった紙幣Sに含まれる今回入金取引中の未確定の紙幣分のデータを部分確定として計上すると共に、この部分確定として計上した紙幣分のデータを、障害復旧処理後の再入金処理時に加算して反映する制御である。
【0075】
以上のようにして、障害が発生した後の入金継続処理の際には、上記した従来の制御のように、紙幣Sが100枚となって満杯となった集積部14aから抜き取った100枚の紙幣Sも含めて投入部11に再投入して計数する必要がなくなる。このため、操作者の操作負荷が軽減できるようになる効果を奏する。さらに、入金計数途中で集積部14a~14dのいずれかが100枚の紙幣Sで満杯となることで抜き取った100枚の紙幣Sの中の当該入金計数で確定して抜き取った枚数データを「部分確定」として取り扱うことが可能となる。そして、集積表示部28a~28dおよび表示画面35の表示を見ても通常時とは異なる特殊な制御を行ったことが一目瞭然となる。
【0076】
実施形態の紙幣入金処理装置1は、入金整理モード1において、以下の制御を行う。
【0077】
入金整理モード1は、上述したように、集積部14aに表券の万円券を、集積部14bに裏券の万円券を、集積部14cに表券の千円券を、集積部14dに裏券の千円券を、それぞれ集積させる設定である。つまり、入金整理モード1は、万円券と千円券とを、表券ずつおよび裏券ずつに分けて集積を行う。即ち、入金整理モード1は、紙幣Sの表裏の整理を行いながら入金計数を行うモードである。
【0078】
上記と同様、投入部11に、第1回目の入金処理単位の紙幣Sがセットされて、操作部36のスタート釦36aが押下される。すると、制御部32は、上述したように、第1回目の入金処理単位の紙幣Sについての入金取引を行うことになる。第1回目の入金取引の結果、例えば、表券の万円券が70枚、裏券の万円券が20枚の合計90枚の万円券が入金計数された後、操作部36の完了釦36bが操作されて、取引が確定し、第2回目の入金取引を待機する状態になると、制御部32は、表示画面35および集積表示部28a~28dの表示を、
図15および
図16に示す表示とする。つまり、制御部32は、
図16に示すように最も上側の集積部14aには万円券の表券の紙幣Sが70枚存在することを、これに対応する集積表示部28aに表示させる。また、制御部32は、上から2番目の集積部14bには万円券の裏券の紙幣Sが20枚存在することを、これに対応する集積表示部28bに表示させる。さらに、制御部32は、
図15に示すように、現状は待機状態で入金計数データは0であることを表示画面35に表示させる。
【0079】
この状態で、投入部11に、第2回目の入金処理単位の紙幣Sがセットされて、操作部36のスタート釦36aが押下されると、制御部32は、第2回目の入金取引として、第2回目の入金処理単位の紙幣Sについての入金取引を行う。例えば、第2回目の入金処理単位の紙幣Sが全て表券の万円券50枚で構成されているとすると、第2回目の入金取引では、まず、投入部11にセットされている第2回目の入金処理単位の紙幣Sの表券の万円券30枚が、最も上側の集積部14aに搬送される。すると、この集積部14aが100枚の紙幣Sで満杯となるため、制御部32は、取込部55および搬送部30を停止させると共に、集積部14aが満杯状態となったため集積部14aの紙幣Sを抜き取らないと残りの投入部11の紙幣Sの入金計数が続行できない旨を、集積表示部28aおよび表示画面35によって操作者にガイドする。
【0080】
次に、操作者が当該ガイドにしたがって最も上側の集積部14aの100枚の紙幣Sを全て抜き取ると、制御部32は、投入部11の残りの紙幣Sの入金計数を再開する。この入金処理の再開後に、例えば搬送ジャム等の障害が紙幣入金処理装置1で発生すると、制御部32は、取込部55および搬送部30を停止させると共に、表示画面35に障害復旧をガイドする「障害復旧ガイド」を表示させる。すると、操作者は、この「障害復旧ガイド」にしたがって、搬送部30に滞留したジャム紙幣を除去すると共に、紙幣入金処理装置1の図示略のリセット釦を押下する。すると、制御部32は、紙幣入金処理装置1にリセット動作を行わせる。このリセット動作が終了し、投入部11、搬送部30および全ての集積部14a~14dに残留する全ての紙幣Sが除去されると、制御部32は、障害復旧処理が完了したと判定する。
【0081】
続いて、制御部32は、表示画面35に、その後の継続処理に係る操作をガイド表示させる。具体的には、障害復旧処理の中で、投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した全ての紙幣Sを投入部11に再投入してスタート釦36aを押下する旨を、ガイドする。このとき、最も上側の集積部14aから満杯解消のため抜き取った100枚の紙幣Sについては、再投入を指示するガイドを行わない。これにより、操作者は、最も上側の集積部14aから満杯解消のため抜き取った100枚の紙幣Sについては、投入部11に再投入しないことになる。そして、操作者は、障害復旧処理の中で、投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した40枚の紙幣Sのみを投入部11に再投入する。その際に、制御部32は、表示画面35の表示状態を
図17および
図18に示す表示とする。即ち、制御部32は、
図18に示すように、4つの集積部14a~14dには物理的に紙幣Sが1枚も存在しないことを、それぞれに対応する集積表示部28a~28dに表示させる。また、制御部32は、
図17に示すように、現状は待機状態であって入金計数データは論理上のデータとして万円券10枚を紙幣入金処理装置1の内部でバックアップしていることを表示画面35に表示させる。
【0082】
ここで、第2回目の入金取引で万円券30枚が集積部14aに搬送され集積されて集積部14aが100枚の紙幣Sで満杯となり、その結果、集積部14aから抜き取られた100枚の紙幣Sの中の「部分確定」した万円券30枚をXとする。また、その後障害が発生して障害復旧処理の中で抜き取った第1回目の入金取引で確定済みの集積部14bの万円券20枚をYとする。バックアップしている万円券10枚のデータは、X-Yの演算結果である。このように、表示画面35に表示させている、バックアップしている万円券10枚のデータは、部分確定として計上する今回入金取引中の未確定の紙幣分のデータXに関連する情報である。
【0083】
この状態で、操作者が、表示画面35でガイドされた内容にしたがって、投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した40枚の紙幣Sを投入部11にセットして、スタート釦36aを押下操作する。すると、制御部32の制御により、投入部11の紙幣Sは1枚ずつ繰り出されて表券の万円券と識別された紙幣Sが最も上側の集積部14aに集積されていき、また裏券の万円券と識別された紙幣が集積部14bに集積されていき、集積の都度、バックアップしている万円券のデータ10枚に1枚ずつ加算されて表示画面35の入金計数データが更新されていく。
【0084】
そして、投入部11に再セットされた障害復旧処理の中で除去した全ての紙幣S、つまり表券の万円券20枚が全て表券の万円券と識別されて集積部14aに集積され、裏券の万円券20枚が全て裏券の万円券と識別されて集積部14bに集積されて入金計数動作が終了すると、制御部32は、表示画面35および集積表示部28a~28dの表示を、
図19および
図20に示す状態とする。つまり、制御部32は、
図20に示すように、集積部14aには表券の万円券が20枚存在することを集積表示部28aに表示させる。言い換えれば、集積表示部28aは、満杯となり紙幣Sの抜き取りが行われた集積部14aの、その後の紙幣分のデータに関連する情報を表示する。また、制御部32は、集積部14bには裏券の万円券が20枚存在することを集積表示部28bに表示させる。さらに、制御部32は、
図19に示すように、現状は入金計数データが、バックアップしている万円券のデータ10枚に、投入部11に再投入されて継続入金計数した万円券40枚を加えた、万円券50枚であることを表示画面35に表示させる。投入部11に再投入されて継続入金計数した万円券40枚は、第2回目の入金取引開始時に投入部11に投入された50枚から、満杯となって取り出された100枚に含まれる30枚を減算して得られる、第2回目で投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した20枚に、第1回目で集積部14bに収納されていた20枚を加算したものである。
【0085】
そして、この状態で、操作者により完了釦36bが押されると、制御部32は、第2回目の入金取引の内容を、入金計数データが万円券50枚として確定させて完了することになる。第2回目の入金取引の完了後、制御部32は、図示は略すが、集積部14aには表券の万円券が20枚存在することを集積表示部28aに表示させる。また、制御部32は、集積部14bには裏券の万円券が20枚存在することを集積表示部28bに表示させる。さらに、制御部32は、現状は待機状態で入金計数データは0であることを表示画面35に表示させる。
【0086】
ここで、上記したX-Yの演算の意義を説明する。Xは、障害が発生する前に集積部14aが満杯状態となったために集積部14aから抜き取った際の紙幣Sのうちの「部分確定」した紙幣Sの枚数である。他方、Yは、障害が発生した後の障害復旧処理のために抜き取った際の紙幣Sの本来は「戻し計数」を行うべき枚数である。そして、X-Yは、これらの差分を演算して、「戻し計数」を行うべき枚数を0とできるか否か、つまり戻し計数を行うべき枚数の相殺が可能か否かを判定するものである。
【0087】
X-Y≧0の演算式が成立する場合は、「戻し計数」を行うべき枚数を0とできる。即ち、X-Y≧0の演算式が成立する場合は、戻し計数を行う必要が無くなり、X-Yの差分の枚数を論理上のデータとして紙幣入金処理装置1の内部でバックアップして、上記にて説明した通りの処理が可能となる。
【0088】
逆に、X-Y≧0の演算式が成立せず、X-Y<0となる場合は、「戻し計数」を行うべき枚数を0とできず、「戻し計数」が必要となってしまう。このため、X-Y<0となる場合は、上記した従来の制御による処理と同様の処理とならざるをえない。よって、X-Y≧0の演算式が成立する場合に限定して、上記にて説明した通りの戻し処理が不要となる処理が可能となる。例えば、上記例で言えば、第2回目の入金取引で投入部11に投入された万円券50枚に対し、X=30、Y=40である場合、障害復旧処理のために抜き取られる紙幣Sの数が、50-30+40=60となり、第2回目の入金取引で投入部11に投入される万円券50枚を越えてしまう。このようなケースを避ける。
【0089】
以上のように、制御部32は、集積部14a~14dのうち、満杯となり紙幣Sの抜き取りが行われた一つである、例えば集積部14aとは別に、同一金種用の他の集積部14bが存在する場合に、部分確定として計上する紙幣Sの枚数Xから、他の集積部14bにおいて前回までの入金取引で確定済みの紙幣Sの枚数Yを減算した値が、0以上であることを条件として、上記した特殊制御を実行する。なお、集積部14a~14dのうち、満杯となり紙幣Sの抜き取りが行われた一つとは別に、同一金種用の他の集積部が複数存在する場合には、部分確定として計上する紙幣の枚数Xから、他の集積部において前回までの入金取引で確定済みの紙幣Sの枚数の和Yを減算した値が、0以上であることを条件として、上記した特殊制御を実行する。
【0090】
ここで、X-Y<0となった場合、本実施形態においても、従来と同様に「戻し計数」を行う制御となる。このように「戻し計数」が必要となる場合、従来の制御では、障害復旧処理が完了した後に、まず「戻し処理操作」がガイドされて、一旦「戻し処理操作」が完了した後に、続いてスタート釦36aが押下操作されることで第2回目の取引を再実行することになる。
【0091】
本実施形態の紙幣入金処理装置1では、この処理を一部変えて、「戻し処理操作」と「第2回目の入金取引」とを纏めて1つの処理として行う。即ち、障害復旧処理が完了した後に、操作者が、集積部14aから満杯解消のため抜き取った100枚の紙幣Sと、障害復旧処理の中で、投入部11、搬送部30および集積部14a~14dから除去した全ての紙幣Sとを投入部11に再投入してスタート釦36aを押下する。すると、制御部32は、取込部55および搬送部30を制御して、投入部11の紙幣を1枚ずつ繰り出し、表券の万円券と識別された紙幣Sを集積部14aに、裏券の万円券と識別された紙幣Sを集積部14bに、それぞれ集積させて行く。そして、上記したように、表券の万円券と識別された紙幣Sが集積部14aに70枚集積され、裏券の万円券と識別された紙幣Sが集積部14bに20枚集積された状態となっても、制御部32は、計数動作を一旦停止せず、そのまま入金計数動作を継続する。言い換えれば、表券の万円券と識別された紙幣Sが集積部14aに70枚集積され、裏券の万円券と識別された紙幣Sが集積部14bに20枚集積された状態となった後の、計数釦36cの押下操作を不要とする。そして、集積部14aが100枚で満杯となると、制御部32は、取込部55および搬送部30を一旦停止させ、集積部14aの紙幣Sが全て抜き取られると、投入部11の残りの紙幣Sの入金計数を再開させる。このようにして、正常に入金計数が完了すると、制御部32は、表示画面35および集積表示部28a~28dに、第2回目の入金取引での入金計数結果が万円券50枚の合計50万円であって、集積部14aには表券の万円券20枚が、集積部14bには裏券の万円券20枚が、それぞれ集積されていることを表示させ、表示画面35に、完了釦36bを押せば、第2回目の取引を確定させて完了できることを表示させる。このように、制御部32は、前回までの入金取引で確定済みの紙幣の障害復旧処理に係る戻し計数と、再入金処理に係る計数とを併せて行う。
【0092】
なお、上記した基本設定モードでの制御についても付言しておくと、この制御では、万円券、五千円券、二千円券および千円券の各金種が集積される集積部は各々1ヶ所しか存在しない。つまり、万円券について言えば、万円券用の集積部14aが満杯となり、この集積部14aの紙幣Sを抜き取って「部分確定」の枚数が発生することはあっても、集積部14a以外の集積部14b~14dには万円券が集積されることはない。このため、「戻し計数」を行うべき万円券の枚数は0以外が発生することはあり得ない。従って、X-Y<0となることもあり得ない。そして、必ずX-Y≧0の演算式が成立する。このため、基本設定モードでの制御では、上記にて説明した通りの、戻し処理が不要となる処理が可能となる。
【0093】
本実施形態の紙幣入金処理装置1によれば、制御部32は、基本設定モードにおいて、集積部14a~14dのうちの一つである、例えば集積部14aが、前回までの入金取引で確定済みの紙幣Sと今回入金取引中の未確定の紙幣Sとが混在する状態で満杯となり、このように満杯となった紙幣Sが抜き取られた後に障害が発生した際には、この満杯となった紙幣Sに含まれる今回入金取引中の未確定の紙幣分のデータを部分確定として計上すると共に、この部分確定として計上した紙幣分のデータを、障害復旧処理後の再入金処理時に加算して反映する特殊制御を行う。よって、入金取引中に満杯となった紙幣が抜き取られた後に障害が発生しても、入金取引中に満杯となって抜き取った紙幣も含めて投入部11に再投入して計数する必要がなくなる。したがって、復旧に関する操作者の負荷を軽減することが可能となる。
【0094】
また、制御部32は、入金整理モード1において、集積部14a~14dのうち、満杯となり紙幣Sの抜き取りが行われた一つである、例えば集積部14aとは別に、同一金種用の他の集積部14bが存在する場合に、部分確定として計上する紙幣Sの枚数Xから、他の集積部14bにおいて前回までの入金取引で確定済みの紙幣Sの枚数Yを減算した値が、0以上であることを条件として、上記した特殊制御を実行する。よって、集積部14a~14dに、満杯解消のため紙幣Sの抜き取りが必要になった金種と同金種用のものが存在し、その各々に前回の取引で確定済みの紙幣Sがあった場合でも、特定の条件が成立すれば、特殊制御が働くようになる。
【0095】
また、制御部32は、前回までの入金取引で確定済みの紙幣Sの障害復旧処理に係る戻し計数と、再入金処理に係る計数とを併せて行う。よって、戻し処理と再入金取引を一連の処理として併せて実施できるので、時間短縮が図れて、操作者の操作負荷をさらに軽減できる。
【0096】
また、部分確定として計上する今回入金取引中の未確定の紙幣分のデータに関連する情報を表示する表示画面35と、満杯となり紙幣Sの抜き取りが行われた集積部14a~14dの紙幣分のデータに関連する情報を表示する集積表示部28a~28dと、を備える。よって、操作者は、障害復旧処理後に、紙幣入金処理装置1側が内部的に行った部分確定やデータの相殺処理を意識することなく、表示画面35と集積表示部28a~28dで表示される情報にガイドされて、普通に継続入金処理を行うことができるようになる。
【0097】
なお、本実施形態の紙幣入金処理装置1は、便宜上、4つの集積部14a~14dを有する構成として説明したが、集積部の数はこれに限らない。集積部の数は、例えば2つの構成でも3つの構成でも8つの構成であっても良い。また、集積部14a~14dの一つを満杯とする紙幣Sの枚数は100枚として説明したが、これに限らず予め設定された所定の枚数であれば、例えば50枚や200枚のように何枚であっても良い。また、バックアップしているデータが存在する場合は、その旨分かるように表示画面35に「バックアップ」の文言そのものを表示させても良いし、入金計数データを点滅させることによって報知するようにしても良い。さらに、当該バックアップしたデータを記憶部33に記憶するようにしても良い。記憶部33に記憶できる仕組みとすれば、例え、障害復旧処理途中で紙幣入金処理装置1の電源がオフおよびオンされたとしてもバックアップデータは0にクリアされずに記憶部33に記憶されてバックアップされている。このため、電源オン状態に戻った後に継続して処理が可能になる。
【0098】
また、本実施形態の紙幣入金処理装置1では、第2回目の入金取引中に万円券の集積部14aが満杯になってこの集積部14aの紙幣Sを抜き取るケースを説明した。むろん、これに限らず、万円券以外の別の金種の集積部14b~14dが満杯になったケースでも同様に適用される。
【0099】
また、本実施形態の紙幣入金処理装置1では、第2回目の入金取引中に万円券の集積部14aが満杯になってこの集積部14aの紙幣Sを抜き取った後に、ジャム等の障害が発生し、障害復旧処理終了後に再入金処理を行うケースでの説明とした。しかしながら、例えば、障害復旧処理終了後に再入金処理を行わずに、第2回目の入金取引そのものをキャンセルするケースも考えられる。そのケースの場合には、図示略の「キャンセル」釦を押下することによって、キャンセルが可能とする。ただし、この場合には「部分確定」を行った特殊制御そのものもキャンセルされることになる。このため、その後の処理としては必ず「戻し処理」を行う必要がある。よって、上記した従来の制御と同様の制御による処理が実行されるべく表示画面35でのガイドが働くことになる。
【0100】
<変形例1>
以上は、紙幣のみを入金する紙幣入金処理装置1を例にとり説明した。しかしながら、これに限らず、取り扱う媒体が紙幣とは異なる硬貨であって、硬貨のみを入金する硬貨入金処理装置にも同様に適用可能である。例えば、一時保留部を有さない硬貨入金処理装置であって、硬貨投入部に投入した硬貨を一枚ずつ繰り出し搬送して金種判別し、その結果に基づいて硬貨を一時保留部を介さずに、所定枚数で満杯が発生する収納部(収納箱や大袋)に収納させる形態の硬貨入金処理装置にも適用可能である。このような硬貨入金処理装置に適用しても同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
上記した貨幣入金処理装置によれば、入金取引中に満杯となった貨幣が抜き取られた後に障害が発生しても、復旧に関する操作者の負荷を軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0102】
1 紙幣入金処理装置(貨幣入金処理装置)
11 投入部
14a~14d 集積部(収納部)
28a~28d 集積表示部(第2表示部)
35 表示画面(第1表示部)
32 制御部
S 紙幣(貨幣)