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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置、および方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/06 20120101AFI20230116BHJP
   G06Q 20/36 20120101ALI20230116BHJP
【FI】
G06Q20/06 300
G06Q20/36 310
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022082786
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522200476
【氏名又は名称】スラッシュ フィンテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸介
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0273002(US,A1)
【文献】特表2021-531600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0175506(US,A1)
【文献】流動性プール(Liquidity Pool)とは?動き方をわかりやすく解説!,Relipa,2022年04月14日,インターネット:<URL:https://relipasoft.com/blog/what-is-liquidity-pool/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
支払者によって選択された支払用の第1暗号資産を特定する手段、
前記第1暗号資産と、当該第1暗号資産とは異なり、かつ受取者によって選択された受取用の第2暗号資産とが流動性プールされている1以上の交換所のいずれかである対象交換所によって、前記支払者のウォレットに保存された前記第1暗号資産を決済額に相当する量の前記第2暗号資産に交換することと、前記対象交換所による交換によって得られた前記第2暗号資産の少なくとも一部を前記受取者のウォレットに移転することとを含むトランザクションの実行を分散型台帳システムに要求する手段、
として機能させ
前記第1暗号資産を特定する手段は、
前記支払者によって選択された候補暗号資産と前記第2暗号資産とが流動性プールされている交換所である利用可能交換所を探索し、
前記利用可能交換所が発見された場合に、前記支払者によって選択された候補暗号資産の前記第1暗号資産としての使用を許可する、
プログラム。
【請求項2】
前記第1暗号資産を特定する手段は、前記利用可能交換所が発見されなかった場合に、前記支払者によって選択された候補暗号資産の前記第1暗号資産としての使用を許可しない、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、
前記支払者から前記第1暗号資産としての使用を希望する暗号資産である所望暗号資産の指定を受け付ける手段、
前記所望暗号資産がプラットフォーム上で発行されているか否かを確認する手段、
前記所望暗号資産が前記プラットフォーム上で発行されていることが確認された場合に、前記所望暗号資産を前記支払者によって選択可能な新たな候補暗号資産として追加する手段、
としてさらに機能させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記コンピュータを、前記第1暗号資産と前記第2暗号資産とが流動性プールされている1以上の交換所のうち前記第1暗号資産から前記第2暗号資産への交換レートが最良である交換所を前記対象交換所として選択する手段、としてさらに機能させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記トランザクションの実行に伴い、前記第1暗号資産および前記第2暗号資産が流通するプラットフォームに対応するプラットフォームトークンが前記支払者のウォレットから徴収され、
前記支払者のウォレットから徴収されるプラットフォームトークンの数量は、前記プラットフォームが前記支払者に課すトランザクション手数料に応じた数量よりも大きい、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記支払者のウォレットから徴収されるプラットフォームトークンの一部が、所定の交換所によって、当該プラットフォームトークンとともに流動性プールされている所定の暗号資産であるシステムトークンと交換され、
前記所定の交換所によって交換されたシステムトークンが所定ウォレットに移転される、
請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記所定の交換所は、前記プラットフォームトークンから前記システムトークンへの交換レートに基づいて決定される、
請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記システムトークンは、前記プラットフォームトークンの種別に依存して決定される、
請求項6に記載のプログラム。
【請求項9】
前記要求する手段は、前記対象交換所によって、前記支払者のウォレットに保存された前記第1暗号資産を決済額に相当する量の前記第2暗号資産に交換することと、前記対象交換所による交換によって得られた前記第2暗号資産の一部を前記受取者のウォレットに移転することとを含むトランザクションの実行を前記分散型台帳システムに要求し
前記コンピュータを、
所定交換所によって、前記交換によって得られた前記第2暗号資産の残部を、前記第2暗号資産とともに流動性プールされているシステムトークンと交換する手段、
前記システムトークンを所定ウォレットに移転する手段、
としてさらに機能させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを、分散型台帳に記録されたトランザクションの履歴に基づいて、前記第2暗号資産の少なくとも一部を前記受取者のウォレットに移転するトランザクションの確定を検知することと、前記トランザクションの確定が検知された場合に前記受取者に通知を行うこととを含む処理の実行を前記分散型台帳システムに要求する手段、としてさらに機能させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを、分散型台帳に記録されたトランザクションの履歴に基づいて、前記第2暗号資産の少なくとも一部を前記受取者のウォレットに移転するトランザクションの確定を検知することと、前記トランザクションの確定が検知された場合に前記支払者に通知を行うこととを含む処理の実行を前記分散型台帳システムに要求する手段、としてさらに機能させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項12】
支払者によって選択された支払用の第1暗号資産を特定する手段と、
前記第1暗号資産と、当該第1暗号資産とは異なり、かつ受取者によって選択された受取用の第2暗号資産とが流動性プールされている1以上の交換所のいずれかである対象交換所によって、前記支払者のウォレットに保存された前記第1暗号資産を決済額に相当する量の前記第2暗号資産に交換することと、前記対象交換所による交換によって得られた前記第2暗号資産の少なくとも一部を前記受取者のウォレットに移転することとを含むトランザクションの実行を分散型台帳システムに要求する手段と
を具備し、
前記第1暗号資産を特定する手段は、
前記支払者によって選択された候補暗号資産と前記第2暗号資産とが流動性プールされている交換所である利用可能交換所を探索し、
前記利用可能交換所が発見された場合に、前記支払者によって選択された候補暗号資産の前記第1暗号資産としての使用を許可する、
情報処理装置。
【請求項13】
コンピュータによって実行される方法であって、
支払者によって選択された支払用の第1暗号資産を特定するステップと、
前記第1暗号資産と、当該第1暗号資産とは異なり、かつ受取者によって選択された受取用の第2暗号資産とが流動性プールされている1以上の交換所のいずれかである対象交換所によって、前記支払者のウォレットに保存された前記第1暗号資産を決済額に相当する量の前記第2暗号資産に交換することと、前記対象交換所による交換によって得られた前記第2暗号資産の少なくとも一部を前記受取者のウォレットに移転することとを含むトランザクションの実行を分散型台帳システムに要求するステップと
を具備し、
前記第1暗号資産を特定するステップにおいて、前記コンピュータは
前記支払者によって選択された候補暗号資産と前記第2暗号資産とが流動性プールされている交換所である利用可能交換所を探索し、
前記利用可能交換所が発見された場合に、前記支払者によって選択された候補暗号資産の前記第1暗号資産としての使用を許可する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、情報処理装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、法定通貨とは異なる様々な決済手段が存在する。
【0003】
特許文献1には、利用者から両替対象の電子マネーの指示を受け付け、両替を依頼する両替装置を両替率に基づいて選択し、選択した両替装置にアクセスして両替を行い、徴収業者の口座へ振り込む技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-353396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、特定の国の通貨単位で流通する電子マネー、または特定の通貨単位との交換率が定められている電子マネーを対象とする(段落0004)。故に、かかる技術を、例えば暗号資産のような流動性または安全性にばらつきのある決済手段にまで単純に拡張することはできない。
【0006】
本開示の目的は、決済の自由度を高める技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様のプログラムは、コンピュータを、支払者によって選択された支払用の第1暗号資産を特定する手段、第1暗号資産と、当該第1暗号資産とは異なり、かつ受取者によって選択された受取用の第2暗号資産とが流動性プールされている1以上の交換所のいずれかである対象交換所によって、支払者のウォレットに保存された第1暗号資産を決済額に相当する量の第2暗号資産に交換することと、対象交換所による交換によって得られた第2暗号資産の少なくとも一部を受取者のウォレットに移転することとを含むトランザクションの実行を分散型台帳システムに要求する手段、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の決済システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態の支払者端末の構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態の分散型台帳システムの構成を示す図である。
図4】本実施形態の一態様の説明図である。
図5】本実施形態の一態様の説明図である。
図6】本実施形態の決済処理のフローチャートである。
図7】本実施形態の決済処理のステップS110の詳細のフローチャートである。
図8】本実施形態の決済処理において表示される画面例を示す図である。
図9】本実施形態の決済処理において表示される画面例を示す図である。
図10】本実施形態の決済処理において表示される画面例を示す図である。
図11】本実施形態の決済処理において表示される画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
以下の説明において、「暗号資産」とは、独自のブロックチェーン(ネットワーク)上で発行される暗号資産(狭義の暗号資産であり、プラットフォームトークンとも呼ばれる)に限られず、既存のブロックチェーン技術を用いて発行された独自の暗号資産(いわゆるトークン)を包含する意味で用いられる。
【0011】
(1)決済システムの構成
決済システムの構成について説明する。図1は、本実施形態の決済システムの構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、決済システム1は、支払者端末10と、分散型台帳システム30とを備える。
支払者端末10及び分散型台帳システム30は、ネットワーク(例えば、インターネット又はイントラネット)NWを介して接続される。決済システム1は、特定の暗号資産プラットフォームに限られず、複数の暗号資産プラットフォームを利用可能である。
【0013】
支払者端末10は、情報処理装置の一例である。支払者端末10は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又は、パーソナルコンピュータである。支払者端末10のユーザは、暗号資産により支払を行う者(以下、「支払者」という)である。
【0014】
分散型台帳システム30は、分散型台帳を管理する。一例として、分散型台帳システム30は、暗号資産の移転に関する取引(トランザクション)の履歴を管理する。分散型台帳は、例えばブロックチェーンである。分散型台帳システム30は、相互に接続された複数のコンピュータ(支払者端末10、および受取者の使用する端末を含み得る)を含む。また、分散型台帳システム30には、決済システム1の各機能を実現するためのスマートコントラクトが保存されており、支払者端末10からの要求に応じて当該スマートコントラクトが実行される。
【0015】
(1-1)支払者端末の構成
支払者端末の構成について説明する。図2は、本実施形態の支払者端末の構成を示すブロック図である。
【0016】
図2に示すように、支払者端末10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14とを備える。支払者端末10は、ディスプレイ21に接続される。
【0017】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0018】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ、または決済アプリケーション)のプログラム
【0019】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0020】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、支払者端末10の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ12は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU(Central Processing Unit)
・GPU(Graphic Processing Unit)
・ASIC(Application Specific Integrated Circuit)
・FPGA(Field Programmable Array)
【0021】
入出力インタフェース13は、支払者端末10に接続される入力デバイスから情報(例えばユーザの指示)を取得し、かつ、支払者端末10に接続される出力デバイスに情報(例えば画像)を出力するように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ21、スピーカ、又は、それらの組合せである。
【0022】
通信インタフェース14は、支払者端末10と外部装置(例えば分散型台帳システム30)との間の通信を制御するように構成される。
【0023】
ディスプレイ21は、画像(静止画、または動画)を表示するように構成される。ディスプレイ21は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイである。
【0024】
(1-2)分散型台帳システムの構成
分散型台帳システムの構成について説明する。図3は、本実施形態の分散型台帳システムの構成を示す図である。
【0025】
図3に示すように、分散型台帳システム30は、複数のノードコンピュータ35-1~35-4を備える。
【0026】
ノードコンピュータ35は、ネットワーク(図1のネットワークNWを含み得る)を介して互いに接続される。本実施形態では、ネットワークは、公衆網、プライベートネットワーク、専用線、VPN(Virtual Private Network)、またはそれらの組み合わせを含み得る。ノードコンピュータ35は、ネットワークと、例えば、有線または無線により接続されている。ノードコンピュータ35は、ピア・ツー・ピア方式で互いに通信する。
【0027】
ノードコンピュータ35は、例えばブロックチェーン技術を用いて分散型台帳を管理する。
具体的には、いずれかのノードコンピュータ35は、記録すべき暗号資産のトランザクションに関するデータを取得する。ノードコンピュータ35は、取得したデータを含むブロックを作成し、ブロックチェーンに追加する。ノードコンピュータ35は、追加したブロックの情報を他のノードコンピュータ35へ送信する。他のノードコンピュータ35は、受信したブロックの正しさを検証し、検証に成功すると、ブロックチェーンに当該ブロックを追加する。ノードコンピュータ35は、例えば、連結されるブロックの数(承認数)に従ってブロックチェーンを確定する。これにより、分散型台帳システム30を構成する複数のノードコンピュータ35に亘って、同一の分散型台帳が保存されることになる。なお、保存されるデータは、適宜に暗号化される。
【0028】
分散型台帳システム30の構成は、図3に示されるものに限定されない。例えば、分散型台帳システム30は、5台以上のノードコンピュータ35を備えていてもよいし、2台または3台のノードコンピュータ35を備えていてもよい。また、分散型台帳システム30を構成するノードコンピュータ35の数は、時間とともに変動してもよい。
【0029】
ノードコンピュータ35のハードウェア構成は、支払者端末10と同一または類似であってよいので詳細な説明を省略する。一例として、ノードコンピュータ35は、プロセッサ、記憶装置、入出力インタフェース、通信インタフェース、入力デバイス、出力デバイス、またはそれらの組み合わせを備える。
【0030】
(2)実施形態の一態様
本実施形態の一態様について説明する。図4は、本実施形態の一態様の説明図である。図5は、本実施形態の一態様の説明図である。
【0031】
図4に示すように、支払者P11は、受取者R12に対する支払を行う場合に、既存の決済手段の代わりに決済システム1を利用することができる。ただし、決済システム1は、支払(つまり、債権債務関係の解消)に限られず、送金(つまり、一方向の価値の移転)に利用することも可能である。ここでは、一例として、支払者P11は、受取者R12に対して商品またはサービスの対価のような何らかの代金を支払うとする。受取者R12は、決済システム1に対して受取用の暗号資産(以下、「受取用暗号資産」という)としてAコインを予め選択しており、代金をAコインで換算した支払数量はX1である。受取用暗号資産として選択可能な暗号資産は、典型的にはステーブルコインなどの流動性の高い暗号資産に限られてよい。
【0032】
支払者端末10は、支払者P11の指示に応じて、当該支払者P11のウォレットW13(Web3ウォレット)に保存されている暗号資産の情報をディスプレイ21に表示する。
【0033】
ここで、支払者P11は、Aコインとは異なる暗号資産による支払を選択することができる。つまり、支払者P11は、Aコインを全く保有していない場合、またはAコインの残高が支払数量X1に満たない場合であっても、受取者R12に対する支払を行うことができる。具体的には、支払者P11は、ディスプレイ21に表示された情報から支払に用いる暗号資産(以下、「支払用暗号資産」という)を選択する。支払者端末10は、支払者P11の指示に応じて、支払用暗号資産を特定する。以下の説明では、Bコインが支払用暗号資産として特定されたとする。ただし、支払用暗号資産は、流動性が確認されたものに限って使用が認められる。後述するように、支払者端末10は、支払者P11によって選択された暗号資産の流動性を確認するために、必要に応じて分散型台帳システム30にスマートコントラクトの実行を要求してもよい。
【0034】
支払者端末10は、特定された支払用暗号資産(つまり、Bコイン)と、受取用暗号資産(つまり、Aコイン)とが流動性プールされている1以上の交換所のうちのいずれか1つのDEX(Decentralized Exchanges) D14を選択する。ここで、交換所とは、例えばDEXであり、スマートコントラクトによって暗号資産の交換を実現する。
【0035】
支払者端末10は、選択したDEX D14によって、Y1単位のBコインをX1単位のAコインへ交換し、さらに当該交換によって得られるX1単位のAコインを受取者R12のウォレットW15へ移転するよう、分散型台帳システム30に要求する。分散型台帳システム30は、要求に応じたトランザクションを実行する。これにより、ウォレットW13からはY1単位のBコインが差し引かれ、ウォレットW15には受取者R12が要求した代金に等しいX1単位のAコインが加算される。
【0036】
このように、本実施形態の決済システム1によれば、支払者P11は自らの希望する支払用暗号資産(Bコイン)で支払を行うことができ、受取者R12は自らの希望する受取用暗号資産(Aコイン)で代金を回収することができる。つまり、決済の自由度を高めることができる。また、本実施形態の決済システム1によれば、流動性が確認された暗号資産のみが支払用暗号資産として選択可能となるので、関係者(例えば、受取者)が流動性リスクを被ることなく支払者P11の決済手段の選択の幅を広げることができる
【0037】
なお、支払者端末10が分散型台帳システム30に支払(つまり、支払用暗号資産の交換および受取用暗号資産の移転)のトランザクションを要求する場合に、支払者P11はウォレットW13からトランザクション手数料(いわゆる「ガス代」)をさらに支払う必要がある。トランザクション手数料は、一般的に、プラットフォーム指定の暗号資産(以下、「プラットフォームトークン」という)で支払われる。プラットフォームとは、例えばイーサリアムなどの、支払用暗号資産および受取用暗号資産が発行されるブロックチェーン(ネットワーク)を意味している。支払用暗号資産または受取用暗号資産は、プラットフォームトークンであってもよい。
【0038】
図5に示すように、本実施形態では、ウォレットW13から支払われるプラットフォームトークンの一部が、ガス代としてプラットフォームに徴収される。他方、プラットフォームトークンの残部は、所定のDEX D17によって、所定の暗号資産(以下、「システムトークン」という)に交換され、さらに当該交換により得られたシステムトークンが所定ウォレットW18に移転される。これにより、DEX D17の流動性プールにおいて、プラットフォームトークンの貯蔵量が増え、システムトークンの貯蔵量が減るので、システムトークンの価値を高めることができる。
【0039】
システムトークンは、例えば、決済システム1の設立者によって発行される暗号資産であり、ガバナンストークンとして、またはステーキング報酬を得るために利用することができる。所定ウォレットW18は、例えば、決済システム1の設立者のウォレットに相当する。
【0040】
(3)決済処理
本実施形態の決済処理について説明する。図6は、本実施形態の決済処理のフローチャートである。図7は、本実施形態の決済処理のステップS110の詳細のフローチャートである。図8は、本実施形態の決済処理において表示される画面例を示す図である。図9は、本実施形態の決済処理において表示される画面例を示す図である。図10は、本実施形態の決済処理において表示される画面例を示す図である。図11は、本実施形態の決済処理において表示される画面例を示す図である。
【0041】
図6の決済処理は、例えば支払者端末10上で、所定のアプリケーションが起動されたことに応じて、または所定のSaaS(Software as a Service)へのアクセスが生じたことに応じて、開始する。
【0042】
図6に示すように、支払者端末10は、支払用暗号資産の特定(S110)を実行する。
具体的には、支払者端末10は、ユーザ(つまり支払者)からの指示に応じて、支払用暗号資産を特定する。まず、ユーザは、支払者端末10を操作して、自らのウォレットにログインする。これにより、支払者端末10は、ユーザのウォレットの情報を参照可能となる。
【0043】
支払用暗号資産の特定(S110)の第1例として、支払者端末10は、支払用暗号資産として即時に選択可能な1以上の候補(以下、「候補暗号資産」という)の情報を提示し、ユーザからの当該候補のいずれかの選択を受け付ける。候補暗号資産は、例えば知名度が高い暗号資産(つまり、ユーザが保有している可能性の高い暗号資産)である。支払者端末10は、ユーザが選択した候補暗号資産の流動性を検証する。すなわち、支払者端末10は、流動性の検証対象となる暗号資産(以下、「対象暗号資産」という)と受取用暗号資産とが流動性プールされているDEX(以下、「利用可能交換所」という)を探索する。支払者端末10は、1以上の利用可能交換所が発見された場合に、対象暗号資産の流動性が確認されたこととする。つまり、支払者端末10は、候補暗号資産を支払用暗号資産として使用することを許可する。さらに、支払者端末10は、発見された利用可能交換所のいずれかを、例えば候補暗号資産から受取用暗号資産への交換レートに基づいて対象交換所として選択する。支払者端末10は、ユーザが支払用暗号資産の選択を確定する前に、当該支払用暗号資産を選択した場合の支払数量を決済額と対象交換所の交換レートとに基づいて算出し、算出結果に関する情報をユーザに提示してもよい。
【0044】
支払用暗号資産の特定(S110)の第2例として、支払者端末10は、ユーザから支払用暗号資産としての使用を希望する暗号資産(所望暗号資産)の指定を受け付ける。支払者端末10は、指定された所望暗号資産の流動性を検証する。すなわち、支払者端末10は、利用可能交換所を探索する。支払者端末10は、1以上の利用可能交換所が発見された場合に、所望暗号資産の流動性が確認されたこととする。つまり、支払者端末10は、所望暗号資産を支払用暗号資産として使用することを許可する。さらに、支払者端末10は、発見された利用可能交換所のいずれかを、例えば所望暗号資産から受取用暗号資産への交換レートに基づいて対象交換所として選択する。支払者端末10は、ユーザが支払用暗号資産の選択を確定する前に、当該支払用暗号資産を選択した場合の支払数量を、対象交換所の交換レートと、受取用暗号資産で換算した決済額とに基づいて算出し、算出結果に関する情報をユーザに提示してもよい。
【0045】
支払用暗号資産の特定(S110)の第3例は、上記第1例および第2例を組み合わせである。一例として、支払者端末10は、図7に示す処理を実行する。
図7に示すように、支払者端末10は、候補暗号資産の提示(S1100)を実行する。
具体的には、支払者端末10は、候補暗号資産の情報を含む画面をディスプレイ21に表示する。一例として、支払者端末10は、図8の画面をディスプレイ21に表示する。
【0046】
図8の画面は、オブジェクトJ20、J21a~J21c、J22、およびJ23を含む。
オブジェクトJ20は、決済額の情報を表示する。決済額の情報は、例えば決済額を受取用暗号資産で換算した結果の情報を含むことができる。
【0047】
オブジェクトJ21a~J21cは、候補暗号資産の情報を表示する。候補暗号資産の情報は、少なくとも以下の1つを含むことができる。
・候補暗号資産を特定可能な情報(例えば、候補暗号資産の名称、トークンシンボル、コントラクトアドレス)
・支払者のウォレットにおける候補暗号資産の残高に関する情報
【0048】
オブジェクトJ22は、候補暗号資産とは異なる暗号資産を支払用暗号資産として指定するための指示を受け付ける。
オブジェクトJ23は、暗号資産とは異なる決済手段を選択するための指示を受け付ける。
【0049】
ステップS1100において提示された候補暗号資産のいずれかが選択されると、支払者端末10は、流動性の検証(S1101)を実行する。
具体的には、支払者端末10は、選択された候補暗号資産の流動性を検証する。
【0050】
例えば図8の画面において、支払者がオブジェクトJ21a~J21cのいずれかを選択すると、支払者端末10は、選択されたオブジェクトに対応する候補暗号資産(対象暗号資産)と、受取用暗号資産とが流動性プールされているDEXを分散型台帳システム30から探索する。1以上の利用可能交換所が発見されれば、支払者端末10は対象暗号資産が流動性ありと判定し、当該対象暗号資産を支払用暗号資産として使用することを許可する。他方、1つの利用可能交換所も発見されなければ、支払者端末10は対象暗号資産が流動性なしと判定し、当該対象暗号資産を支払用暗号資産として使用することを拒否する。或いは、支払者端末10は、発見された利用可能交換所の数が閾値以上であるか否かにより、対象暗号資産が流動性ありかなしかを判定してもよい。
【0051】
ステップS1101において対象暗号資産が流動性なしと判定した場合に、支払者端末10は対象暗号資産の支払用暗号資産としての使用を許可せず、候補暗号資産の選択または新たな所望暗号資産の指定を待機する。一例として、支払者端末10は、図10に示すようにオブジェクトJ40をディスプレイ21に表示(ポップアップ)する。オブジェクトJ40は、支払者によって選択された候補暗号資産が支払用暗号資産として使用できないことを伝える情報を表示する。オブジェクトJ40の表示後、支払者端末10はディスプレイ21の画面を例えば図8の画面へ復帰させ得る。
【0052】
ステップS1101において対象暗号資産が流動性ありと判定した場合に、支払者端末10はDEXの選択(S1102)を実行する。
具体的には、支払者端末10は、ステップS1101において特定した利用可能交換所のいずれかを対象交換所として選択する。一例として、支払者端末10は、最良の利用可能交換所を対象交換所として選択する。ここで、最良の利用可能交換所とは、決済に必要な数量(つまり支払数量)の受取用暗号資産との交換に要求される支払用暗号資産の数量が最も少ないDEXであってよい。また、交換レートに加えて、トランザクションの要求に伴って支払う必要のあるプラットフォームトークン(手数料)の多寡をさらに考慮して最良の利用可能交換所が選択されてもよい。
【0053】
ステップS1102の後に、候補暗号資産の選択が確定されると、支払者端末10は選択中の候補暗号資産を支払用暗号資産として特定し、図7の処理を終了する。候補暗号資産の選択は、対象交換所の選択後に自動的に確定されてもよいし、ユーザに最終確認を行ってもよい。最終確認を求める画面には、例えば以下の情報が含まれてもよい。
・候補暗号資産を特定可能な情報(例えば、候補暗号資産の名称、トークンシンボル、コントラクトアドレス)
・支払者のウォレットにおける候補暗号資産の残高(例えば、支払前残高、支払後残高、またはそれらの組み合わせ)に関する情報
・候補暗号資産を支払用暗号資産として選択した場合の支払数量に関する情報
・候補暗号資産を支払用暗号資産として選択した場合に支払が可能か(つまり、残高が支払数量よりも大きいか)に関する情報
・候補暗号資産と受取用暗号資産との交換レート(時系列変化を示すチャートを含み得る)に関する情報
なお、候補暗号資産を支払用暗号資産として選択した場合の支払数量は、例えば支払者端末10が対象交換所における候補暗号資産と支払用暗号資産との交換レートと、受取用暗号資産で換算された決済額とに基づいて算出可能である。
【0054】
他方、ユーザは、ステップS1100において提示された候補暗号資産のいずれも選択せずに他の暗号資産(所望暗号資産)を指定することができる。一例として、図8の画面において、支払者がオブジェクトJ22を選択すると、支払者端末10は例えば図9に示すようにオブジェクトJ30をディスプレイ21に表示(ポップアップ)する。
オブジェクトJ30は、オブジェクトJ31、J32、およびJ33を含む。
オブジェクトJ31は、所望暗号資産のコントラクトアドレスの入力フィールドに相当する。
オブジェクトJ32は、所望暗号資産の指定を中止するための操作を受け付ける。
オブジェクトJ33は、オブジェクトJ31の入力内容(つまり、所望暗号資産のコントラクトアドレス)を確定するための操作を受け付ける。
支払者が、オブジェクトJ31にコントラクトアドレスを入力し、オブジェクトJ33を選択すると、支払者端末10はオブジェクトJ31に入力されたコントラクトアドレスに対応する所望暗号資産の指定を受理する。
【0055】
所望暗号資産の指定を受理すると、支払者端末10は、プラットフォーム上で当該所望暗号資産が発行されているか否かを確認する。
プラットフォーム上で所望暗号資産が発行されていることが確認できなかった場合に、支払者端末10は当該所望暗号資産の支払用暗号資産としての使用を許可しない。
【0056】
他方、プラットフォーム上で所望暗号資産が発行されていることが確認された場合に、支払者端末10は、候補暗号資産の追加(S1103)を実行する。
具体的には、支払者端末10は、指定された所望暗号資産を新たな候補暗号資産として追加する。
その後、支払者端末10は、候補暗号資産の提示(S1100)を再実行する。ここでは、支払者端末10は、新たな候補暗号資産の情報を含む画面をディスプレイ21に表示する。一例として、支払者端末10は、図11の画面をディスプレイ21に表示する。
【0057】
図11の画面は、オブジェクトJ20、J21a~J21c、J22、J23、およびJ24を含む。オブジェクトJ20、J21a~J21c、J22、およびJ23は、図8と同様である。
【0058】
オブジェクトJ24は、新たな候補暗号資産の情報を表示する。新たな候補暗号資産の情報は、少なくとも以下の1つを含むことができる。
・新たな候補暗号資産を特定可能な情報(例えば、候補暗号資産の名称、トークンシンボル、コントラクトアドレス)
・支払者のウォレットにおける新たな候補暗号資産の残高に関する情報
【0059】
図6のステップS110の後に、支払者端末10は、支払(S111)を実行する。
具体的には、支払者端末10は、ステップS110において選択した対象交換所によって支払者のウォレットに保存された支払用暗号資産を決済額に相当する量の受取用暗号資産に交換することと、当該交換によって得られた受取用暗号資産を受取者のウォレットに移転することとを含むトランザクションを分散型台帳システム30に要求する。
【0060】
ここで、ステップS111におけるトランザクションの実行に伴い、分散型台帳システム30のコンピュータよって実行されるスマートコントラクトによって、プラットフォームトークンが支払者のウォレットから徴収される。徴収されるプラットフォームトークンの数量は、支払用暗号資産および受取用暗号資産が発行されるプラットフォームが当該トランザクションの実行のために支払者に課すトランザクション手数料よりも大きく定められる。また、徴収されたプラットフォームトークンの一部が、所定の交換所によって、当該プラットフォームトークンとともに流動性プールされているシステムトークンと交換され、かつ当該交換により得られたシステムトークンが所定ウォレットに移転される。
【0061】
ここで、プラットフォームトークンの一部とは、徴収されたプラットフォームトークンからトランザクション手数料を控除した結果の少なくとも一部である。
【0062】
所定の交換所は、プラットフォームトークンから所定の暗号資産への交換レートに基づいての種別に依存して決定される。一例として、プラットフォームトークンからシステムトークンへの交換レートが最良(つまり、プラットフォームと引き換えに獲得可能なシステムトークンの数量が最大)の交換所が所定の交換所として選択される。
【0063】
また、システムトークンは、プラットフォームトークンの種別に依存して決定される。換言すれば、支払用暗号資産および受取用暗号資産が同一のプラットフォームで発行される限り、両暗号資産の組み合わせに関わらずシステムトークンは共通である。
【0064】
ステップS111の後に、支払者端末10は、通知(S112)を実行する。
具体的には、支払者端末10は、通知のためのスマートコントラクトの実行を分散型台帳システム30に要求する。このスマートコントラクトを実行するコンピュータは、分散型台帳システム30によって管理される分散型台帳に記録されたトランザクションの履歴を参照する。このコンピュータは、ステップS111において要求したトランザクションが確定されたことを検知し、指定された宛先に対する通知を行う。これにより、トランザクションの完了が検知され、受取者(正確には、受取者の使用する端末(以下、「受取者端末」))に通知が行われる。さらに、トランザクションの完了は、支払者(正確には支払者端末10)に通知されてもよい。トランザクションの完了は、例えば以下の少なくとも1つの形式で通知することができる。
・アプリケーションのプッシュ通知
・SNS(Social Networking Service)メッセージ
・電子メール
・SMS(Short Service Message)メッセージ
・所定のアプリケーションまたはSaaSにログイン後に閲覧可能な情報(例えばメッセージ)
【0065】
支払者端末10は、通知(S112)の完了を以て図6の決済処理を終了する。ただし、通知(S112)はオプションであり、省略されてもよい。
【0066】
(4)小括
以上説明したように、本実施形態の支払者端末10は、支払者によって選択された支払用暗号資産を特定する。そして、支払者端末10は、支払用暗号資産と受取用暗号資産とが流動性プールされている交換所(対象交換所)によって当該支払者のウォレットに保存された支払用暗号資産を決済額に相当する量の受取用暗号資産に交換することと、当該交換によって得られた受取用暗号資産を受取者のウォレットに移転することとを含むトランザクションの実行を分散型台帳システム30に要求する。これにより、支払者は自らの希望する支払用暗号資産で支払を行うことができ、受取者は自らの希望する受取用暗号資産で代金を回収することができる。つまり、決済の自由度を高めることができる。また、流動性が確認された暗号資産のみが支払用暗号資産として使用されるので、関係者が流動性リスクを被ることなく支払者の決済手段の選択の幅を広げることができる。
【0067】
支払者端末10は、支払者によって選択された候補暗号資産と受取用暗号資産とが流動性プールされている利用可能交換所を探索し、当該利用可能交換所が発見された場合に当該候補暗号資産の支払用暗号資産としての使用を許可してもよい。これにより、流動性リスクが確認された候補暗号資産のみが支払用暗号資産として使用されることを担保できる。また、支払者端末10は、利用可能交換所が発見されなかった場合に、支払者によって選択された候補暗号資産の支払用暗号資産としての使用を許可しなくてもよい。これにより、流動性リスクが確認されていない候補暗号資産が支払用暗号資産として使用されることを防止できる。また、支払者端末10は、支払者から支払用暗号資産としての使用を希望する所望暗号資産の指定を受け付け、当該所望暗号資産がプラットフォーム上で発行されているか否かを確認し、発行が確認された場合に当該所望暗号資産を新たな候補暗号資産として追加してもよい。これにより、支払者の決済手段の選択の幅を広げることができる。
【0068】
支払者端末10は、支払用暗号資産と受取用暗号資産とが流動性プールされている1以上の交換所のうち、支払用暗号資産から受取用暗号資産への交換レートが最良である交換所を対象交換所として選択してもよい。これにより、決済に必要な支払用暗号資産の数量(つまり、支払者の負担)を最小化することができる。
【0069】
トランザクションの実行に伴い、分散型台帳システム30(スマートコントラクトを実行するコンピュータ)は、支払用暗号資産および受取用暗号資産が流通するプラットフォームに対応するプラットフォームトークンを支払者のウォレットから徴収してもよく、当該プラットフォームトークンの数量は、プラットフォームが支払者に課すトランザクション手数料に応じた数量よりも大きくなるように定められてよい。これにより、支払者から徴収したプラットフォームトークンの一部を原資として、例えば決済システム1のシステム利用料を回収することができる。また、分散型台帳システム30(スマートコントラクトを実行するコンピュータ)は、支払者のウォレットから徴収したプラットフォームトークンの一部を、所定の交換所によって、当該プラットフォームトークンとともに流動性プールされているシステムトークンと交換し、当該交換により得られたシステムトークンを所定ウォレットに移転してもよい。これにより、例えば決済システム1のシステム利用料をシステムトークンで回収することができる。また、分散型台帳システム30(スマートコントラクトを実行するコンピュータ)は、プラットフォームトークンからシステムトークンへの交換レートに基づいて所定の交換所を決定してもよい。これにより、システム利用料の回収効率を高めることができる。分散型台帳システム30(スマートコントラクトを実行するコンピュータ)は、プラットフォームトークンの種別に依存してシステムトークンを決定してもよい。これにより、システムトークンを流動性プールから効率的に回収し、当該システムトークンの価値を高めることができる。
【0070】
支払者端末10は、分散型台帳に記録されたトランザクションの履歴に基づいて、受取用暗号資産を受取者のウォレットに移転するトランザクションの確定を検知することと、当該トランザクションの確定が検知された場合に受取者に通知を行うこととを含む処理(スマートコントラクト)の実行を分散型台帳システム30に要求してもよい。これにより、受取者は、自らのウォレットの情報を能動的に確認せずとも、代金の回収が完了したことを認知することができる。
【0071】
支払者端末10は、分散型台帳に記録されたトランザクションの履歴に基づいて、受取用暗号資産を受取者のウォレットに移転するトランザクションの確定を検知することと、当該トランザクションの確定が検知された場合に支払者に通知を行うこととを含む処理(スマートコントラクト)の実行を分散型台帳システム30に要求してもよい。これにより、支払者は、自らのウォレットの情報を能動的に確認せずとも、代金の支払が完了したことを認知することができる。
【0072】
(5)変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0073】
(5-1)変形例1
変形例1について説明する。変形例1は、暗号資産の交換を行わない例である。本実施形態では、支払用暗号資産と受取用暗号資産とが異なる例を前提に説明した。しかしながら、支払用暗号資産と受取用暗号資産とが一致する場合には決済処理の一部を変形可能である。
【0074】
変形例1の決済処理は、本実施形態の決済処理と同様の開始条件の成立に応じて開始する。
図6に示すように、支払者端末10は、支払用暗号資産の特定(S110)を実行する。ここで、受取用暗号資産と同一の支払用暗号資産が特定されたとする。この場合に、支払者端末10は、交換所に関する処理(例えば、対象交換所を選択する処理、または利用可能交換所を探索する処理)を省略可能である。
【0075】
ステップS110の後に、支払者端末10は、支払(S111)を実行する。
具体的には、支払者端末10は、支払者のウォレットに保存された支払用暗号資産(変形例1では、受取用暗号資産に等しい)を決済額に相当する量の暗号資産を受取者のウォレットに移転するトランザクションを分散型台帳システム30に要求する。
【0076】
本実施形態で説明したように、分散型台帳システム30のコンピュータによって実行されるスマートコントラクトにより、ステップS111におけるトランザクションの実行に伴い、プラットフォームトークンが支払者のウォレットから徴収される。徴収されるプラットフォームトークンの数量は、支払用暗号資産および受取用暗号資産が発行されるプラットフォームが当該トランザクションの実行のために支払者に課すトランザクション手数料よりも大きく定められる。また、徴収されたプラットフォームトークンの一部が、所定の交換所によって、当該プラットフォームトークンとともに流動性プールされているシステムトークンと交換され、かつ当該交換により得られたシステムトークンが所定ウォレットに移転される。
【0077】
ステップS111の後に、支払者端末10は図6と同様に、通知(S112)を実行する。
支払者端末10は、通知(S112)の完了を以て図6の決済処理を終了する。ただし、通知(S112)はオプションであり、省略されてもよい。
【0078】
(6)その他の変形例
記憶装置11は、ネットワークNWを介して、支払者端末10と接続されてもよい。ディスプレイ21は、支払者端末10と一体化されてもよい。
【0079】
上記説明では、各処理において各ステップを特定の順序で実行する例を示したが、各ステップの実行順序は、依存関係がない限りは説明した例に制限されない。また、上記の各処理の各ステップは、支払者端末10及び分散型台帳システム30に含まれるコンピュータの何れでも実行可能である。また、外部装置(例えば図示しないサーバ)が、上記の決済処理の一部を分担してもよい。
【0080】
上記説明では、トランザクション手数料よりも多くのプラットフォームトークンを支払者から徴収し、当該プラットフォームトークンの一部をシステムトークンに交換してから所定ウォレットに移転する例を示した。これにより、例えば決済システム1の設立者がシステム利用料をシステムトークンで徴収することができる。しかしながら、システム利用料を徴収方法は本例に限られない。
【0081】
第1例として、スマートコントラクトを実行するコンピュータは、徴収したプラットフォームトークンの一部をそのまま(つまり、他の暗号資産に交換することなく)所定ウォレットに移転する。
【0082】
第2例として、スマートコントラクトを実行するコンピュータは、支払用暗号資産の交換によって得られた受取用暗号資産の一部を受取者のウォレットに移転し、当該受取用暗号資産の残部を、所定交換所によって、当該受取用暗号資産とともに流動性プールされているシステムトークンに交換し、当該交換によって得られたシステムトークンを所定ウォレットに移転する。
【0083】
第3例として、スマートコントラクトを実行するコンピュータは、支払用暗号資産の交換によって得られた受取用暗号資産の一部を受取者のウォレットに移転し、当該受取用暗号資産の残部を所定ウォレットに移転する。
【0084】
第4例として、支払用暗号資産と受取用暗号資産とが一致する場合に、スマートコントラクトを実行するコンピュータは、支払者のウォレットから支払われた受取用暗号資産の一部を受取者のウォレットに移転し、当該受取用暗号資産の残部を、所定交換所によって、当該受取用暗号資産とともに流動性プールされているシステムトークンに交換し、当該交換によって得られたシステムトークンを所定ウォレットに移転する。
【0085】
第5例として、支払用暗号資産と受取用暗号資産とが一致する場合に、スマートコントラクトを実行するコンピュータは、支払者のウォレットから支払われた受取用暗号資産の一部を受取者のウォレットに移転し、当該受取用暗号資産の残部を所定ウォレットに移転する。
【0086】
上記第2~第5例によれば、支払者は、システム利用料をプラットフォームトークンではなく支払用暗号資産によって支払うことができる。ただし、上記第2例~第5例において、受取者に移転される受取用暗号資産が目減りしないように、支払用暗号資産の支払数量が決定され得る。つまり、システム利用料の原資は全て、支払者から回収されるように定められてよい。
【0087】
また、決済システム1の設立者が徴収するシステム利用料は、決済額に所定の比率を乗じることで計算されてよい。この比率は、可変であってもよく、一例として、システムトークンのステーキングプールの稼働率が高くなるほど当該比率が低下するように定められ得る。
【0088】
上記説明では、受取者が決済額を指定する例を示した。しかしながら、例えば投げ銭、寄付などの送金を行う場合に、支払者が任意の決済額を指定してもよい。また、この場合に、支払者は、受取用暗号資産をさらに指定してもよい。
【0089】
上記説明では、特定のプラットフォームで発行されている候補暗号資産の情報を提示することを前提とした。しかしながら、支払者によるプラットフォームの切り替え指示に応じて、支払者端末10は指示されたプラットフォームで発行されている候補暗号資産の情報を提示してもよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 :決済システム
10 :支払者端末
11 :記憶装置
12 :プロセッサ
13 :入出力インタフェース
14 :通信インタフェース
21 :ディスプレイ
30 :分散型台帳システム
35 :ノードコンピュータ
【要約】
【課題】決済の自由度を高める。
【解決手段】本開示の一態様のプログラムは、コンピュータを、支払者によって選択された支払用の第1暗号資産を特定する手段、第1暗号資産と、当該第1暗号資産とは異なり、かつ受取者によって選択された受取用の第2暗号資産とが流動性プールされている1以上の交換所のいずれかである対象交換所によって、支払者のウォレットに保存された第1暗号資産を決済額に相当する量の第2暗号資産に交換することと、対象交換所による交換によって得られた第2暗号資産の少なくとも一部を受取者のウォレットに移転することとを含むトランザクションの実行を分散型台帳システムに要求する手段、として機能させる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11