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  • 特許-光パルス計測装置及びその計測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】光パルス計測装置及びその計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 11/00 20060101AFI20230116BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20230116BHJP
   G01N 29/34 20060101ALI20230116BHJP
   G01N 29/50 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
G01J11/00
G01J1/02 L
G01N29/34
G01N29/50
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018196818
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2019203874
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】107118023
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】598139748
【氏名又は名称】國立交通大學
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルオ チー ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ イ チェン
(72)【発明者】
【氏名】イエ ティエン ティエン
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-99740(JP,A)
【文献】Qin Yuan-dong et.al.,Plasma Generation in Air by Intense Laser Pulses with Various Pulse Durations,Chinese Physics Letters,1999年,Vol.16, No.8 ,P.580-582
【文献】E. MANIKANTA et.al. ,Effect of laser intensity on temporal and spectral features of laser generated acoustic shock waves: ns versus ps laser pulses,Applied Optics,2017年08月15日,Vol. 56, No. 24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-G01J 1/60
G01J 11/00
G01N 29/00-G01N 29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光源から発せられる光パルスの計測に用いられる光パルス計測方法であって、
前記光パルスが分光された後に再度測定位置に集光され、前記分光後の光パルスが前記測定位置で自己相関効果を発生させると共にガスプラズマを発生させる工程と、
前記ガスプラズマから発生する音声が収音され、プラズマ音声信号が生成される工程とを含み、前記プラズマ音声信号は測定チャートを含み、前記測定チャートは時間軸に沿って記録される前記音声の強度であり、
フィットモデルにより前記測定チャートにフィットさせる工程と、
前記フィットモデルに基づいて前記光パルスの特性が計算される工程とを含み、
前記フィットモデルは、
【数1】
を含み、αは前記測定チャートに対応させる振幅の定数であり、且つtは時間を示し、
前記f (t)関数及び前記f (t)関数は、Error functionであり、
ここでは、
【数2】
であり、k は定数であり、aはf (t)が-1から1まで上昇途中の時間点であり、
ここでは、
【数3】
であり、k は定数であり、bはf (t)が1から-1まで下降途中の時間点であり、且つ前記測定チャート中の前記ガスプラズマの音声に対応する信号は(a-k )から(b+k )の間の範囲に位置されることを特徴とする光パルス計測方法。
【請求項2】
前記フィットモデルにより前記光パルスの特性が計算される工程は、
前記フィットモデルの計測幅により前記光パルスの時間軸上における幅が計算され、前記計測幅は(b-a)である工程を更に含むことを特徴とする請求項に記載の光パルス計測方法。
【請求項3】
前記光パルスが前記測定位置で分散される場合、前記フィットモデルは、
-g(t)を更に含み、ここでは、-g(t)は前記測定チャート中の分散現象が発生する部分図形に対応することを特徴とする請求項1に記載の光パルス計測方法。
【請求項4】
前記g(t)はガウス関数であることを特徴とする請求項に記載の光パルス計測方法。
【請求項5】
前記フィットモデルに基づいて前記光パルスの特性が計算される工程は、
前記フィットモデルの幅を利用して前記光パルスの時間軸上における幅が計算される工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の光パルス計測方法。
【請求項6】
前記光パルスが前記測定位置で分散される場合、前記フィットモデルの幅により前記光パルスの時間軸上における幅が計算される工程は、分散補正値及び前記計測幅を利用して前記光パルスの時間軸上における幅が計算される工程を更に含むことを特徴とする請求項に記載の光パルス計測方法。
【請求項7】
パルス光源から発せられる光パルスの計測に用いられる光パルス計測装置であって、
前記光パルスが計測位置で発生させる自己相関効果を利用してガスプラズマを発生させる光モジュールと、
ガスプラズマから発生する音声を収音させる収音ユニットと、
前記収音ユニットに接続される処理ユニットとを備え、
ここでは、前記収音ユニットはガスプラズマから発生する音声をプラズマ音声信号に変換させて前記処理ユニットに伝送させ、前記プラズマ音声信号は測定チャートを含み、前記測定チャートは時間軸に沿って記録される前記音声の強度であり、
前記処理ユニットはフィットモデルにより前記測定チャートにフィットさせ、且つ前記フィットモデルにより前記光パルスの特性の計算を行うことと、
前記フィットモデルは、
【数4】
を含み、αは前記測定チャートに対応させる振幅の定数であり、且つtは時間を示し、
前記f (t)関数及び前記f (t)関数は、Error functionであり、
ここでは、
【数5】
であり、k は定数であり、aはf (t)が-1から1まで上昇途中の時間点であり、
ここでは、
【数6】
であり、k は定数であり、bはf (t)が1から-1まで下降途中の時間点であり、且つ前記測定チャート中の前記ガスプラズマの音声に対応する信号は(a-k )から(b+k )の間の範囲に位置されることを特徴とする光パルス計測装置。
【請求項8】
前記処理ユニットは前記フィットモデルの計測幅を利用して前記光パルスの時間軸上における幅の計算を行い、且つ前記計測幅は(b-a)であることを特徴とする請求項に記載の光パルス計測装置。
【請求項9】
前記光パルスが前記測定位置で分散される場合、前記フィットモデルは、
-g(t)を更に含み、ここでは、-g(t)は前記測定チャート中の分散現象が発生する図形に対応することを特徴とする請求項に記載の光パルス計測装置。
【請求項10】
前記g(t)はガウス関数であることを特徴とする請求項に記載の光パルス計測装置。
【請求項11】
前記光モジュールは、
第一分光ユニットと、
第一反射ユニットと、
第二反射ユニットであって、前記第一分光ユニットにより前記光パルスが前記第一反射ユニット及び前記第二反射ユニットに分光されることと、
前記第一反射ユニット及び前記第二反射ユニットにより反射される光パルスを併合させる第二分光ユニットと、
前記第二分光ユニットからの光パルスを前記計測位置に集光させ、且つ前記計測位置でガスプラズマを発生させるフォーカスユニットとを備えることを特徴とする請求項に記載の光パルス計測装置。
【請求項12】
前記第一分光ユニット及び前記第二分光ユニットはビームスプリッターであり、前記フォーカスユニットは軸外放物面鏡であり、前記収音ユニットはマイクロフォンであることを特徴とする請求項11に記載の光パルス計測装置。
【請求項13】
遮音空間を有し、少なくとも前記計測位置及び前記収音ユニットが前記遮音空間内に位置される遮音カバーとを更に備えることを特徴とする請求項に記載の光パルス計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置または計測方法に関し、より詳しくは、フォトガスプラズマの計測装置または計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーの発展以来、高出力レーザーは重要な発展課題であった。一般的な連続波レーザー(Continuous wave laser)より、パルスレーザー(Pulsed Laser)は高エネルギーを提供しやすい。パルスレーザーの発展過程において多くの人がより短いパルス幅を追い求めるようになっており、このため、パルス幅の計測を行う自己相関計(Autocorrelator)がこの技術分野では鍵となる道具となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の自己相関計は計測時に光源の強度を落とさなければならないため、高エネルギーのレーザーパルスを計測できず、もし計測したとしても自己相関計の非線形結晶が高エネルギーのレーザーパルスによって破壊されてしまう。また、非線形結晶自体のコストも高く、自己相関計の核心部分の部材が計測時にレーザービームにより破壊されて計測を行えなくなれば更なる損害を被る。このため、高エネルギーレーザーのパルスを直接計測可能な計測装置及び方法によってレーザーパルスの幅を計測することが求められた。
【0004】
本発明は、低エネルギー及び高エネルギーのレーザー光のパルスの光学的性質を計測可能な光パルス計測装置及びその計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光パルス計測方法は、パルス光源から発せられる光パルスの計測に用いられ、光パルスが分光された後に再度測定位置に集光され、分光後の光パルスが測定位置で自己相関効果を発生させると共にガスプラズマを発生させる工程と、ガスプラズマから発生する音声を収音させ、プラズマ音声信号が生成される工程と、プラズマ音声信号に基づいて光パルスの特性が計算される工程とを含む。
【0006】
一実施形態において、上述のプラズマ音声信号は測定チャートを含む。測定チャートは時間軸に沿って記録される音声の強度であり、且つ上述の方法では測定チャートに基づいて光パルスの特性が計算される。
【0007】
一実施形態において、上述の方法はフィットモデルにより測定チャートにフィットさせ、且つフィットモデルにより光パルスの特性が計算される。
【0008】
一実施形態において、上述のフィットモデルは、
【数1】
を含み、αは測定チャートに対応させる振幅の定数であり、
ここでは、
【数2】
であり、kは定数であり、
ここでは、
【数3】
であり、kは定数であり、且つ測定チャート中のガスプラズマの音声に対応する信号は(a-k)から(b+k)の間の範囲に位置される。
【0009】
一実施形態において、上述の方法では、フィットモデルの計測幅を利用して光パルスの時間軸上における幅の計算を行い、計測幅は(b-a)である。
【0010】
一実施形態において、上述のf(t)関数及びf(t)関数は、Error function、Step function、Heaviside step function、Fermi-Dirac distribution function、Maxwell-Boltzmann distribution、Boltzmann distribution、Sigmoid function、Smoothstep function、Generalized logistic function、Richards’curve、Logistic function、Logistic curve、Cumulative distribution function、percent point function、Quantile function、Survival function、またはReliability functionである。
【0011】
一実施形態において、分光後の光パルスが測定位置で分散される場合、フィットモデルは-g(t)を更に含み、ここでは、-g(t)はプラズマ音声信号図中の分散現象が発生する図形に対応する。
【0012】
一実施形態において、上述のg(t)はガウス関数である。
【0013】
一実施形態において、上述の方法では、測定チャートの幅を利用して光パルスの時間軸上における幅の計算が行われる。
【0014】
一実施形態において、分光後の光パルスが測定位置で分散される場合、フィットモデルの計測幅を利用して光パルスの時間軸上における幅の計算が行われる工程では、
分散補正値及び計測幅を利用して光パルスの時間軸上における幅の計算が行われる工程を更に含む。
【0015】
本発明に係る計測装置はパルス光源から発せられる光パルスの計測に用いられる。計測装置は、
光パルスが計測位置で発生させる自己相関効果を利用してガスプラズマを発生させる光モジュールと、
ガスプラズマから発生する音声を収音させる収音ユニットと、
収音ユニットに接続される処理ユニットとを備える。
ここでは、収音ユニットはガスプラズマから発生する音声をプラズマ音声信号に変換させて処理ユニットに伝送させる。
処理ユニットはプラズマ音声信号に基づいて光パルスの特性の計算を行う。
【0016】
一実施形態において、上述のプラズマ音声信号は測定チャートを含み、測定チャートは時間軸に沿って記録される音声の強度である。処理ユニットは測定チャートに基づいて光パルスの光学的特性の計算を行う。
【0017】
一実施形態において、上述の処理ユニットはフィットモデルにより測定チャートにフィットさせ、且つフィットモデルにより光パルスの特性の計算を行う。
【0018】
一実施形態において、上述のフィットモデルは、
【数4】
を含み、αは測定チャートに対応させる振幅の定数である。
ここでは、
【数5】
であり、kは定数であり、
ここでは、
【数6】
であり、kは定数であり、且つ測定チャート中のガスプラズマの音声に対応する信号は(a-k)から(b+k)の間の範囲に位置される。
【0019】
一実施形態において、上述の処理ユニットはフィットモデルの計測幅を利用して光パルスの時間軸上における幅の計算を行い、且つ計測幅は(b-a)である。
【0020】
一実施形態において、上述のf(t)関数及びf(t)関数は、Error function、Step function、Heaviside step function、Fermi-Dirac distribution function、Maxwell-Boltzmann distribution、Boltzmann distribution、Sigmoid function、Smoothstep function、Generalized logistic function、Richards’curve、Logistic function、Logistic curve、Cumulative distribution function、percent point function、Quantile function、Survival function、またはReliability functionである。
【0021】
一実施形態において、分光後の光パルスが測定位置で分散される場合、フィットモデルは、
-g(t)を更に含み、ここでは、-g(t)はプラズマ音声信号図中の分散現象が発生する図形に対応する。
【0022】
一実施形態において、上述のg(t)はガウス関数である。
【0023】
一実施形態において、上述の光モジュールは、
第一分光ユニットと、
第一反射ユニットと
第二反射ユニットであって、第一分光ユニットにより光パルスが第一反射ユニット及び第二反射ユニットに分光されることと、
第一反射ユニット及び第二反射ユニットにより反射される光パルスを併合させる第二分光ユニットと、
第二分光ユニットからの光パルスを計測位置に集光させ、且つ計測位置でガスプラズマを発生させるフォーカスユニットとを備える。
【0024】
一実施形態において、上述の第一分光ユニット及び第二分光ユニットはビームスプリッターであり、フォーカスユニットは軸外放物面鏡であり、収音ユニットはマイクロフォンである。
【0025】
一実施形態において、上述の計測装置は、遮音空間を有し、少なくとも計測位置及び収音ユニットが遮音空間内に位置される遮音カバーを更に備える。
【発明の効果】
【0026】
上述のように、本発明に係る計測装置及び計測方法は、ガスプラズマを発生させることにより光パルスの特性の分析を行う。この方法では非線形結晶や他の計測媒体が不要であるため、コストを節約でき、部材が破壊される危険性も回避される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の測定位置の実施形態を示す概略図である。
図2A】プラズマ音声信号の実施形態を示す概略図である。
図2B】プラズマ音声信号の実施形態を示す概略図である。
図3A】測定チャートのフィットモデルの実施形態を示す概略図である。
図3B】測定チャートのフィットモデルの実施形態を示す概略図である。
図4】従来の非線形結晶の計測結果及び計測方法の計測結果の比較実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0028】
本発明に係る計測方法及び計測装置はパルス光源に応用可能であり、パルス光源から発せられるパルス光の計測を行うことにより光パルスの光学的特性を取得させる。パルス光源は好ましくはレーザーパルス光源であり、例えば、フェムト秒(Femtosecond、10-15 sec)のレーザー、自己モード同期(Self mode-locking)により発生する短パルスレーザー、またはチャープパルス増幅(Chirped pulse amplification、CPA)により発生する高出力パルスレーザーである。
【0029】
上述のパルスレーザーの出力は1013から1016W/cmに達し、レーザーパルスのエネルギー密度が伝達媒体中の材料の破壊閾値(Threshold)より大きい場合、材料が融解して蒸発する。例えば、空気の破壊エネルギー閾値は約4×1013W/cmであり、上述のレーザーパルスが集光された後にこのような出力によりガスプラズマを発生させる。
【0030】
以下、本発明の実施形態に関わる計測装置を参照しながら本発明に関わる計測方法を説明する。本発明の実施形態に係る計測装置はパルス光源50から発せられる光パルスLの計測を行い、計測装置100は光モジュール110と、収音ユニット120と、処理ユニット130とを備える(図1参照)。
【0031】
光モジュール110により光パルスLが受光されて計測位置Pに集光され、且つ計測位置Pで自己相関効果が発生すると共にガスプラズマが発生する。本発明は光モジュール110の詳細な部材構成に限られず、本分野で通常知識を有する技術者ならば適切な部材で置換させることで光モジュール110に同じ効果を発揮させることができ、ガスプラズマを発生させるガスの種類も限定されない。以下では空気を例に説明する。以下に例を挙げて本実施形態に係る計測装置100について具体的に説明する。本実施形態に係る光モジュール110は、第一分光ユニット111と、第一反射ユニット112と、第二反射ユニット113とを備え、第一分光ユニット111により光パルスLがL及びLに分光されると共に第一反射ユニット112及び第二反射ユニット113にそれぞれ伝送される。第一分光ユニット111は例えばビームスプリッター(Beam splitter)であり、ビームの一部分が透過させると共に一部分が反射されることにより光パルスLが異なる2つの方向に伝達される光パルスL、Lとなる。
【0032】
光モジュール110は第二分光ユニット114を更に備え、且つ第一反射ユニット112及び第二反射ユニット113は例えばリトロリフレクター(Retroreflector)である。第一反射ユニット112により2回反射されることにより光パルスLが第二分光ユニット114に伝達され、第二反射ユニット113により2回反射されることにより光パルスLも第二分光ユニット114に伝達される。光パルスL及び光パルスLは第一反射ユニット112及び第二反射ユニット113により各々反射された後に第二分光ユニット114に伝達され、第二分光ユニット114は例えば第一分光ユニット111に類似するビームスプリッターであり、その方向は互いに反対であるが、第二分光ユニット114は光パルスL及び光パルスLを透過及び反射させて同じ光路に伝達させ、同時に分散の補償を完成させる。
【0033】
光モジュール110のフォーカスユニット115は第二分光ユニット114からの光パルスL、Lを受光させると共にこれら光パルスL、Lを計測位置Pに集光させるために用いられる。フォーカスユニット115は例えば軸外放物面鏡であり、好ましくは金めっき軸外放物面鏡であり、凹面によりこれら光パルスL、Lを反射させて集光させる。
【0034】
上述したように、本実施形態は空気を例にし、パルスレーザーが集光された後、パルスエネルギー密度が空気の破壊エネルギー閾値を超えれば空気がガスプラズマを発生させる。大出力パルスレーザーと材料とが相互作用する際に材料の表面に超音速パルスが発生する。前記音波を発生させるメカニズムは、電気歪(Electrostriction)と、熱膨張(Thermal expansion)と、蒸発(Vaporization)と、光学破壊(Optical breakdown)とを含む。レーザーパルスが材料を融解させると共に蒸発させて高温、高圧のプラズマを発生させる。発生するプラズマの温度及び圧力は非常に高く、プラズマが高速膨張し、プラズマが持続的に爆発して強烈に環境中の空気を圧縮させ、衝撃波を発生させて超音速で伝播させた後、高速で減衰して一般的な音波となる。
【0035】
本実施形態に係る計測装置100の収音ユニット120により計測位置Pから発生するガスプラズマの音波が収音されると共にプラズマ音声信号Sに変換される。収音ユニット120は例えばマイクロフォンであり、好ましくは周波数が5kHzの良好な音声の周波数応答を有するマイクロフォンである。例えば、本実施形態に係る収音ユニット120と計測位置Pとの間の距離dは約15ミリメートルであり、収音ユニット120がガスプラズマから発生する音声を収音した際に収音ユニット120が収音可能な音量範囲に維持されるが、本発明はこれに限られない。他の実施形態では、本分野で通常知識を有する者ならばマイクロフォンの違いに基づいて適切な計測距離に調整させることでプラズマ音声信号を取得可能である。
【0036】
本実施形態に係る計測装置100は処理ユニット130を更に備える。処理ユニット130は例えばパソコンやノートパソコンの中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)であるが、本発明はこれに限られない。処理ユニット130は収音ユニット120に接続されると共にガスプラズマの音声に対応するプラズマ音声信号Sを受信させる。
【0037】
更に詳しくは、本発明に係る計測装置100は別途信号処理素子を組み合わせて良好なプラズマ音声信号Sを提供してもよい。例えば、計測装置100がボックスカー121(Boxcar)及びロックインアンプ122(Lock-in amplifier)を更に備える。収音ユニット120により収音された音声はボックスカー121を経て絶対値が取得された後、ロックインアンプ122に伝送されることにより上述のプラズマ音声信号Sが取得される。但し、本発明はこれに限られず、本分野で通常知識を有する技術者ならば他の同等の効果を有する部材により類似する標本化効果を達成させることが可能である。
【0038】
本実施形態に係る処理ユニット130はプラズマ音声信号Sに基づいて光パルスLの光学的特性の計算を行う。換言すれば、本実施形態に係る計測装置100は別途非線形結晶を使用して光パルスの時間軸上における長さ等の光学的特性を計測する必要がなく、全体的な製造コストが更に減少する。また、計測装置100は光パルス強度が高すぎるために非線形結晶が破壊されることによる材料の損耗及びこれにより計測不能となる事態を回避させる。
【0039】
より詳しくは、本実施形態に係る計測装置100は、計測装置100を設置させるための遮音空間Aを有する遮音カバー140を更に備える。これにより、外界の雑音が収音ユニット120に影響を与えることがなくなる。他の実施形態では、上述の遮音カバーは上述の収音ユニット120及び計測位置Sを収容させるための遮音容器でもよく、収音ユニット120がガスプラズマから発生する音声を明確に収音可能になる。
【0040】
以下、更に詳細な例を挙げて本発明に係る計測装置及びその計測方法について説明する。しかしながら、本発明に係る計測装置は以下の計測方式に制限されず、本分野で通常知識を有する者ならば需要に応じて上述のプラズマ音声信号Sを利用して必要な光パルスに関する各種特性を計測することが可能である。
【0041】
図1に示されるように、本実施形態に係るプラズマ音声信号Sは測定チャート201を含み、測定チャート201はガスプラズマの時間軸に沿った音声強度に対応する。上述の収音ユニット120により収音された音声により、計測装置100が取得させたプラズマ音声信号Sが含まれる測定チャート201は光パルスLの光学的特性の計測に用いられ、測定チャート201はプラズマ音声信号中のガスプラズマの音声に対応する信号である。例えば、測定チャート201の時間軸上における幅Wを計測することにより、処理ユニット130は光パルスLの時間的長さを取得させ、これにより光パルスLの計測が完成する。
【0042】
本実施形態に係るプラズマ音信号Sは測定チャート201にフィットさせることによりパルス光Lの光学的特性が計算される。図1に示されるように、処理ユニット120が測定チャート201に対してフィットモデルでフィットさせ、フィットモデルは例えばガウス関数(Gauss function)であり、処理ユニット120はガウス関数に基づいて計測幅Wの計算を行う。この計測幅Wは例えばフィットモデルの半値幅であり、即ち、測定チャート201の両側であり、各々の最小値から最大値までの平均点の時間軸上における幅Wである。この計測幅Wを計測時間値に換算させ、且つ測定チャート120がパルス光Lが発生させる空気パルスの時間的長さに対応することにより、処理ユニット120がこの計測時間値に基づいてパルス光Lの時間的長さに換算させる。
【0043】
つまり、上述のフィットモデルにより、本実施形態に係る計測装置100がパルス光Lの光学的特性の計測を有効的に行い、同時に例えば非線形結晶の材料の消耗も回避させる。
【0044】
しかしながら、本発明に係る計測装置及びその計測方法は上述のフィットモデルに限定されず、以下では更に例を挙げて他の実施形態における計測方法がどのようにフィットモデルを利用して光パルスの光学的特性の計測を行うかについて説明する。
【0045】
図2A及び図2Bを参照し、図2Aは本発明の他の実施形態におけるプラズマ音声信号を示す概略図であり、図2Bは本発明の他の実施形態におけるプラズマ音声信号を示す概略図である。横軸は時間を示し、縦軸は音声強度に対応する電圧値を示す。以下の実施形態の説明を明確にするため、以下の実施形態で参照する測定チャートはフィットモデルで直接示し、図3A図2Aに対応するフィットモデル図であり、図3B図2Bに対応するフィットモデル図であるが、本発明に係る計測方法及び計測装置を限定させるものではない。
【0046】
図3Aを参照し、本発明の他の実施形態におけるプラズマ音声信号を示す測定チャートであり、フィットモデルによりフィットさせ、且つフィットモデルは例えば
【数7】
であり、
ここでは、αは前記測定チャートに対応させる振幅の定数であり、
ここでは、
【数8】
であり、kは定数であり、
ここでは、
【数9】
であり、kは定数である。
また、測定チャート中の前記ガスプラズマの音声に対応する信号は(a-k)から(b+k)の間の範囲に位置される。具体的には、プラズマ音声信号の測定チャートは(a-k)の位置から上昇を始め、測定チャートの上昇部分はf(t)によりフィットさせる。また、プラズマ音声信号の測定チャートは(b+k)の位置で終結し、終結前の測定チャートの下降部分はf(t)によりフィットさせる。αは測定チャートの最大振幅に対応することにより上述の
【数10】
を測定チャートに完全フィットさせるために用いられ、これにより光パルスの光学的特性をフィットモデルにより計測可能になる。
【0047】
例えば、フィットモデルの計測幅は(b-a)であり、即ち、フィットモデル中のf(t)が半分まで上昇した時間点とf(t)が半分まで下降した時間点の間の距離である。この計測幅(b-a)によりこの測定チャートに対応する光パルスの時間的長さが計算される。
【0048】
一方、f(t)は例えば誤差関数(error function)であり、即ち、ガウス関数の積分関数であり、f(t)は他の反対の誤差関数である。本実施形態に係るフィットモデルは誤差関数により測定チャートの図形にフィットさせ、これによりプラズマ音声信号が計測される。しかしながら、本発明は上述の関数の種類に制限されず、上述の測定チャートの形にフィットさせる関数として、Step function、Heaviside step function、Fermi-Dirac distribution function、Maxwell-Boltzmann distribution、Boltzmann distribution、Sigmoid function、Smoothstep function、Generalized logistic function、Richards’curve、Logistic function、Logistic curve、Cumulative distribution function、percent point function、Quantile function、Survival function、またはReliability functionを含む。
【0049】
図3Bは本発明の他の実施形態におけるプラズマ音声信号を示す測定チャートであり、他のフィットモデルにより更にフィットさせ、且つこのフィットモデルは光パルスが分散される場合の測定チャートに応用可能である。ここで述べる分散とは、例えば、光パルスが伝達媒体が発生させるパルス幅により変化することであり、例えば、
【数11】
で示す。ここでは、toutは媒体を経た後のパルス幅であり、tinは媒体に進入する前のパルス幅であり、gは伝達媒体の厚さを考慮した群遅延分散(Group Delay Dispersion)であり、βは修正に用られる比率係数(Coefficient of proportion、後述する)である。図3Bに示されるフィットモデルは例えばgが2454fsの場合に光パルスが発生させるガスプラズマの測定チャートのフィットモデルである。
【0050】
図3Bを参照し、光パルスが分散される場合、上述の計測装置100では、計測位置Sに発生するガスプラズマが発生させるプラズマ音声信号の測定チャート中には陥没する図形が生成される。このため、本実施形態ではフィットモデルを利用して上述の測定チャートにフィットさせる。フィットモデルは、
【数12】
を含み、ここでは、-g(t)は前記プラズマ音声信号図中の分散現象により発生する図形に対応する。即ち、上述の陥没部分に対応する。これにより、ガスプラズマのプラズマ音声信号が発生させる測定チャートの形に完全にフィットさせる。g(t)は例えばガウス関数であり、陥没する図形に対応するが、但し、本発明は関数の種類が制限されない。
【0051】
また、上述のフィットモデルは測定チャートの両側に対してf(t)、f(t)を使用してフィットさせる。このため、同様に2つの関数の間の時間差により幅が計測され、光パルスのパルスの時間的長さが更に算出される。特に説明する必要なのは、ここで述べる関数f(t)、f(t)は上述の誤差関数等と同じ種類のフィット関数を指し、異なる測定チャートにフィットさせる場合、異なる数値を使用して修正を行い、上述の図3Aの内容で用いられるf(t)、f(t)と完全に同じになるわけではない。
【0052】
図4は従来の非線形結晶を利用して計測されたパルス幅S(図中の円データ点に対応する)及び本発明の実施形態に係る計測装置に用いられる計測方法を利用して計測されたパルス幅S(図中の三角データ点に対応する)の異なる分散状況(即ち、分散補正係数、上述の関連分散係数gに対応する)における数値を示し、第一幅の縦座標は本発明の実施形態に係る計測装置に用いられる計測方法によって計測された数値に対応し、第二幅の縦座標は従来の非線形結晶によって計測されたパルス幅の数値に対応する。図3から分かるように、本発明の実施形態に係る計測装置により計測されたパルス幅は全て従来の非線形結晶により計測されたパルス幅に線形対応し、よって本発明に係る計測装置及びこれを使用する計測方法は光パルスの幅を有効的に計測可能であり、更に異なる分散状況に応じて修正を加えることも可能である。換言すれば、図3の計測結果によって、各分散状況において対応する分散補正値を算出可能である。例えば、
【数13】
の比率係数βを1.84に修正し、パルス幅Sをパルス幅Sに修正する。計測装置が上述の例えば図2Bに示されるフィットモデルにより測定チャートの形にフィットさせると共に幅を計測させた後、分散補正値及び比率係数の修正により計測された幅の値の補正を行うことでより正確になる。
【0053】
総合すると、本発明に係る計測装置は光パルスが空気中に発生させるガスプラズマにより光パルスの特性を直接計測させる。このため、計測装置に高価な非線形結晶が不要になり、全体的な製造コストが低下する。また、本発明に係る計測方法により、非線形結晶がなくても光パルスの光学的特性を計測可能になる。
【符号の説明】
【0054】
d 距離
L光パルス
光パルス
光パルス
P 計測位置
S プラズマ音声信号
W 幅
50 パルス光源
100 計測装置
110 光モジュール
111 第一分光ユニット
112 第一反射ユニット
113 第二反射ユニット
114 第二分光ユニット
115 フォーカスユニット
120 収音ユニット
121 ボックスカー
122 ロックインアンプ
130 処理ユニット
140 遮音カバー
201 測定チャート
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4