(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】レゾルバ部のシールド構造
(51)【国際特許分類】
H02K 5/00 20060101AFI20230116BHJP
H02K 1/00 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
H02K5/00 B
H02K1/00 B
(21)【出願番号】P 2018202647
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】平 彰介
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-160909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0070672(US,A1)
【文献】特開2014-107973(JP,A)
【文献】特開2013-124970(JP,A)
【文献】特開平09-065617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
H02K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部(2)にレゾルバ部(12)を接続したレゾルバ部のシールド構造において、前記モータ部(2)の回転軸(7)に設けられたレゾルバロータ(9)と、前記モータ部(2)のモータケース(1)内の前記回転軸(7)に設けられたモータロータ(8)と、前記レゾルバロータ(9)の外側に配設されたレゾルバステータ(11)と、前記モータ部(2)のモータケース(1)の内側に設けられ、前記回転軸(7)を軸支するための軸受(6A)を有する壁部(4)と、前記壁部(4)と前記レゾルバステータ(11)との間に設けられ、
3個の直角または弧状
に曲折された第1曲部(60
)、第2曲部(61
)及び第3曲部(62)を有する磁性体シールド(13)と、を備え、
前記モータ部(2)の前記壁部(4)と前記レゾルバステータ(11)との間に配設された前記磁性体シールド(13)により、前記モータ部(2)のモータステータ(3)からの漏れ磁束(A)による前記軸受(6A)の磁化を抑えるように構成し
、
前記磁性体シールド(13)は、最も前記回転軸(7)に近い前記第3曲部(62)の曲折により形成された内周部(70)が、前記軸受(6A)の外周部(71)に接近し、かつ、前記回転軸(7)を横断方向(M、N)に沿って見た時、前記内周部(70)と外周部(71)が互いに重合すると共に、前記第1曲部(60)及び前記第3曲部(62)の中間に位置する前記第2曲部(61)により前記レゾルバ部(12)側に形成される窪みに、前記レゾルバステータ(11)に設けられたレゾルバステータコイル(10)が位置するように構成したことを特徴とするレゾルバ部のシールド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ部のシールド構造に関し、特に、モータ部からの漏れ磁束が軸受側に伝わって、軸受が磁化されることを抑制するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバ部のシールド構造としては、例えば、図示していないが、特許文献1の
図1及び
図2に開示された構成を挙げることができる。
すなわち、ここでは、特許文献1の図示しない
図1及び
図2においては、固定子フレームの軸心に軸受を介して出力軸が設けられ、ロータが出力軸の外周に設けられている。
また、前記固定子フレームは内方へ延設されて軸受を保持している。
また、前記出力軸の端部側には、レゾルバロータが設けられていると共に、このレゾルバロータに対応するレゾルバステータは、前記固定子フレームの内端側に設けられている。
【0003】
以上の構成において、モータが稼働状態となると、固定子のステータコイルからの漏れ磁束は、エンドブラケットを介して軸受を磁化していた。
前記軸受が磁化されると、モータ側で発生した鉄粉等が軸受に付着し、傷の発生及び回転音の増大となって、軸受寿命の低下となっていた。
【0004】
また、
図3に示す従来技術は、自社製からなる参考品であるため、文献は、示すことは不可であるが、その構造を以下のように挙げることができる。
すなわち、
図3において、符号1で示されるものはモータケースであり、前記モータケース1の内壁1aには、モータ部2を構成するための、ステータコイル3aを備えた輪状のモータステータ3が設けられている。
【0005】
前記モータケース1の内壁1aには、前記モータケース1の内胴1bを塞ぐような形状の円板状の壁部4が設けられていることにより、前記モータケース1内は、モータ室5とレゾルバ室6とに分割されている。
前記壁部4の軸心に形成された軸孔4aには、軸受6Aを介して回転軸7が回転自在に設けられている。
【0006】
前記回転軸7の前記モータ室5側には、前記モータロータ8が設けられ、前記レゾルバ室6内の前記回転軸7には、レゾルバロータ9が設けられている。
従って、前記モータステータ3とモータロータ8とによってモータ部2が構成され、前記レゾルバロータ9に対応して設けられ、ステータコイル10を有するレゾルバステータ11と前記レゾルバロータ9とによってレゾルバ部12が構成されている。
【0007】
前記レゾルバ部12内における、前記壁部4と前記レゾルバステータ11及びレゾルバロータ9の間における前記レゾルバ室6内には、前記モータケース1に設けられたほぼ円板状をなす磁性体シールド13が配設されている。
【0008】
前記磁性体シールド13は、全体形状が円板状をなし、フランジ部14を残して中央部15が前記フランジ部14よりも盛り上がると共に、内方に向けて突出する突出部16が形成されている。
前記突出部16の軸心位置には、貫通孔17が形成されており、この貫通孔17には、前記レゾルバロータ9を保持するための回転軸7が貫通している。
【0009】
従って、
図3の従来構成において、前記モータ部2のステータコイル3aに電流を印加すると、モータ部2が回転し、前記レゾルバ部12によって、モータ部2の回転を検出することができるように構成されている。
前述の状態で、前記モータ部2のステータコイル3aからの漏れ磁束Aは、
図3のモータステータ3から磁性体シールド13のフランジ部14及び突出部16及び軸受6Aを経て前記モータロータ8に戻るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のレゾルバ部のシールド構造(特許文献1)は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、近年の小型レゾルバを一体に設けたモータレゾルバは、小型であるが故に、モータ側で発生した磁束は、磁性体シールドの先端が直線状に軸受上の近傍に位置しているため、軸受自体を磁化しやすく、止むを得ず、軸受の損傷、寿命の早期化等となっていた。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、モータ部からの漏れ磁束が軸受側に伝わって起る軸受の磁化を抑制することができるレゾルバ部のシールド構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるレゾルバ部のシールド構造は、モータ部にレゾルバ部を接続したレゾルバ部のシールド構造において、前記モータ部の回転軸に設けられたレゾルバロータと、前記モータ部のモータケース内の前記回転軸に設けられたモータロータと、前記レゾルバロータの外側に配設されたレゾルバステータと、前記モータ部のモータケースの内側に設けられ、前記回転軸を軸支するための軸受を有する壁部と、前記壁部と前記レゾルバステータとの間に設けられ、3個の直角または弧状に曲折された第1曲部、第2曲部及び第3曲部を有する磁性体シールドと、を備え、前記モータ部の前記壁部と前記レゾルバステータとの間に配設された前記磁性体シールドにより、前記モータ部のモータステータからの漏れ磁束による前記軸受の磁化を抑えるようにした構成であり、また、前記磁性体シールドは、最も前記回転軸に近い内周部が、前記軸受の外周部に接近し、かつ、前記回転軸の横断方向に沿って見た時、前記内周部と外周部とが互いに重合すると共に、前記第1曲部及び前記第3曲部の中間に位置する前記第2曲部により前記レゾルバ部側に形成される窪みに、前記レゾルバステータに設けられたレゾルバステータコイルが位置するようにしている構成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるレゾルバ部のシールド構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、モータ部にレゾルバ部を接続したレゾルバ部のシールド構造において、前記モータ部の回転軸に設けられたレゾルバロータと、前記モータ部のモータケース内の前記回転軸に設けられたモータロータと、前記レゾルバロータの外側に配設されたレゾルバステータと、前記モータ部のモータケースの内側に設けられ、前記回転軸を軸支するための軸受を有する壁部と、前記壁部と前記レゾルバステータとの間に設けられ、少なくとも3個の段部又は3個の弧状の曲部を有する磁性体シールドと、を備え、前記モータ部の前記壁部と前記レゾルバステータとの間に配設された前記磁性体シールドにより、前記モータ部のモータステータからの漏れ磁束による前記軸受の磁化を抑えるように構成したことにより、磁性体シールドの3個の段部又は曲部がレゾルバのステータの内側に会い、軸受の近傍にその先端が位置しているため、モータからの漏れ磁束による軸受の磁化を抑えることができる。
前記磁性体シールド板は、最も前記回転軸に近い内周部が、前記軸受の外周部に接近し、かつ、前記回転軸の横断方向に沿って見た時、前記内周部と外周部とが互いに重合していることにより、漏れ磁束が軸受を避けて通るため、軸受の磁性化を抑えることができ、軸受の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるレゾルバ部のシールド構造を示す要部の断面図である。
【
図2】
図1の磁性体シールドの他の実施の形態を示す構成図である。
【
図3】
図1の従来の実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によるレゾルバ部のシールド構造は、モータ部からの漏れ磁束が軸受側に伝わって起る軸受の磁化を抑制することである。
【実施例】
【0017】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバ部のシールド構造について説明する。
尚、前述の従来構成と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
すなわち、
図1において、符号1で示されるものはモータケースであり、前記モータケース1の内壁1aには、モータ部2を構成するための、ステータコイル3aを備えた輪状のモータステータ3が設けられている。
【0018】
前記モータケース1の内壁1aには、前記モータケース1の内胴1bを二分するような形状の円板状の壁部4が設けられていることにより、前記モータケース1内は、モータ室5とレゾルバ室6とに分割されている。
前記壁部4の軸心に形成された軸孔4aには、軸受6Aを介して回転軸7が回転自在に設けられている。
【0019】
前記回転軸7の前記モータ室5側には、前記モータロータ8が設けられ、前記レゾルバ室6内の前記回転軸7には、レゾルバロータ9が設けられている。
従って、前記モータステータ3とモータロータ8とによってモータ部2が構成されている。前記レゾルバロータ9に対応して設けられ、ステータコイル10を有するレゾルバステータ11と前記レゾルバロータ9によってレゾルバ部12が構成されている。
【0020】
前記レゾルバ部12内における、前記壁部4と前記レゾルバステータ11及びレゾルバロータ9の間における前記レゾルバ室6内には、前記モータケース1に設けられた円板状をなす磁性体シールド13が配設されていると共に、この磁性体シールド13の段部50~52又は曲部60~62によって磁束Aを遮蔽する作用を有している。
【0021】
前記磁性体シールド13は、全体形状が円板状をなし、フランジ部14を残して中央部15が前記フランジ部14よりも盛り上がって形成された突出部16が形成されている。
前記突出部16の軸心位置には、貫通孔17が形成されており、この貫通孔17には、前記レゾルバロータ9を保持するための回転軸7が貫通している。
【0022】
従って、
図1の本発明構成において、前記モータ部2のステータコイル3aに電流を印加すると、モータ部2が回転し、前記レゾルバ部12によって、モータ部2の回転を検出することができるように構成されている。
【0023】
前記磁性体シールド13は、従来構成と同様に、断面形状で見て少なくとも3ヶ所の段部50、51、52が形成されているが、この構成では、従来と同様に、モータステータ3のステータコイル3aの漏れ磁束Aが前記軸受6Aに伝わることは、明白であるので、本発明においては、次の通り、前記磁性体シールド13の形状を工夫し、軸受6Aへの漏れ磁束の伝達を極力抑えることによって、軸受6Aの寿命の長命化を計っている。
【0024】
すなわち、前述の磁性体シールド13は、プレス成形によって磁性材料がプレスされ、少なくとも、第1段部50、第2段部51及び第3段部52を有すると共に、前記第3段部52に連続して内周部70が前記軸受6Aの近傍に形成されている。
【0025】
前記軸受6Aは、外輪6Aaが前記壁4の貫通孔17に接し、その内輪6Abが前記回転軸7の外周面7Cに接していることにより、前記回転軸7は前記軸受6Aを介して、回転自在に設けられている。
また、前記磁性体シールド13の軸方向Aに沿って延設された内周部70、前記外周部71、軸受6A及び前記壁部4の軸孔4aを横断する横断方向M、Nから見ると、互いに重合している。
【0026】
前述の状態で、モータ部2を駆動させると、前記モータ部2のモータロータ8が回転開始となり、同時に、前記レゾルバロータ9も回転する。
この時、前記磁性体シールド13の前記貫通孔17の内周部70が前述の従来の軸受6Aの位置よりも離間し、前記軸受6Aと前記内周部70と前記壁部4の一部とが、前記回転軸7を横断方向(M、N)に沿って見た時に互いに重合していることにより、前記ステータコイル3aから漏れ出た漏れ磁束Aは、前記壁部4を貫通した後に前記磁性体シールド13に伝達する。
【0027】
次に、前記漏れ磁束Aは、前記磁性体シールド13の軸心Pに向けて伝達される途中で軸受6Aにはあまり伝達されることなく、軸受6Aを避けて前記モータ部2の前記モータロータ8に伝達されるため、
図3における従来例における漏れ磁束Aの伝達経路を大幅にずれ、前記軸受6Aにはわずかしか伝達されず、軸受6Aの磁化を抑制することができ、前述の従来のような磁化による軸受6Aの寿命をより一層長寿命化することができる。
【0028】
また、
図2は、
図1の磁性体シールド13の他の実施の形態を示す概略図であり、
図1の構成のように、各段部50、51及び52のように直角に曲折されているのではなく、弧状又は円弧状に近い形状で、
図1の第1、第2、及び第3段部50、51及び52の代りに、第1曲部60、第2曲部61及び第3曲部62として曲折されている。
また、前記磁性体シールド13の先端は、
図1の内周部70に相当する同一の内周部70として名称及び番号を付加している。
尚、
図2の実施の形態及び
図1の実施の形態においても、前記磁性体シールド13は、プレス成形であるため、製作のコストはほぼ同一で、漏れ磁束Aの軸受6Aへの到達は抑制されている。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によるレゾルバ部のシールド構造は、モータ部からの漏れ磁束が軸受側に伝わって、軸受が磁化されることを抑制することができるため、軸受の長寿命化を計ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 モータケース
2 モータ部
3 モータステータ
3a ステータコイル
4 壁部
4a 軸孔
5 モータ室
6 レゾルバ室
6A 軸受
6Aa 外輪
6Ab 内輪
7 回転軸
7C 外周面
8 モータロータ
9 レゾルバロータ
10 ステータコイル
11 レゾルバステータ
12 レゾルバ部
13 磁性体シールド
16 突出部
17 貫通孔
50、51、52 第1~第3段部
60、61、62 第1~第3弧状の曲部
70 内周部
71 外周部
80 壁部孔
A 漏れ磁束
A 軸方向
M、N 横断方向
P 軸心