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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】導電性混合液晶組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0564 20100101AFI20230116BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230116BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230116BHJP
   G02F 1/137 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
H01M10/0564
H01B1/06 A
G02F1/13 500
G02F1/13 505
G02F1/137 500
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018231791
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2019151819
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2018034246
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506103636
【氏名又は名称】ウシオケミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】原本 雄一郎
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105241(JP,A)
【文献】特開2012-116770(JP,A)
【文献】特開2003-336069(JP,A)
【文献】特開2002-105033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0564
H01B 1/06
G02F 1/13
G02F 1/137
C09K 19/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される液晶化合物を少なくとも1種含む導電性混合液晶組成物。
【化18】

[式中、
Rは、炭素原子数5以上のアルキル基又はアルコキシ基を示す。
Bは、分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基を示す(前記分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
Aは、π電子が12個以上の共役系を含む、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい有機基を示す。
Lは、炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基を示す(前記炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
nは2を示す。
n個のR、B、A、及びLはそれぞれ同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。
Xは、Zn2+を示す。]
【請求項2】
下記一般式(1)で表され、nが1であり、XがLi、Na、及びKからなる群より選択されるイオンである液晶化合物を少なくとも1種、並びに下記一般式(1)で表され、nが2又は3であり、XがMg2+、Ca2+、Ba2+、Zn2+及びAl3+からなる群より選択されるイオンである液晶化合物を少なくとも1種含む導電性混合液晶組成物。
【化19】

[式中、
Rは、炭素原子数5以上のアルキル基又はアルコキシ基を示す。
Bは、分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基を示す(前記分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
Aは、π電子が12個以上の共役系を含む、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい有機基を示す。
Lは、炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基を示す(前記炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
nは1、2、又は3を示す。
nが2又は3のとき、n個のR、B、A、及びLはそれぞれ同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。
Xは、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Zn2+及びAl3+からなる群より選択されるイオンを示す。]
【請求項3】
一般式(1)におけるRが炭素原子数5以上12以下のアルコキシ基である、請求項1又は2に記載の導電性混合液晶組成物。
【請求項4】
一般式(1)におけるBが下記一般式(2)で表される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物。
【化20】

[式中、
R’は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、
0≦p≦6であり、
0≦q≦6であり、
*はAとの結合を示す。]
【請求項5】
イオン性液晶化合物のAが、単結合、-CH=CH-、-CH≡CH-、-N=N-、-COO-、又は-CH=N-によって連結されていてもよいベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、カルバゾール環、キナゾリン環、プリン環、インドリジン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インドール環、又はアクリジン環を表す、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物。
【請求項6】
一般式(1)におけるLが下記一般式(3)で表される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物。
【化21】

[式中、
mは1以上8以下の整数であり、
*はAとの結合を示す。]
【請求項7】
一般式(1)で表され、Xが、Na、及びKからなる群より選択される少なくとも1種のイオンである液晶化合物、
一般式(1)で表され、Xが、Mg2+、Ca2+、Zn2+及びBa2+からなる群より選択される少なくとも1種のイオンである液晶化合物、並びに
一般式(1)で表され、XがAl3+である液晶化合物
のいずれかと、
一般式(1)で表され、XがLiである液晶化合物と、
を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物。
【請求項8】
一対の電極間に、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物を挟持すること、及び
前記一対の電極間に電圧を印加すること
を含む、イオンの輸送方法。
【請求項9】
二次電池の充電のための請求項8に記載のイオンの輸送方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物を含む、液晶材料。
【請求項11】
請求項10に記載の液晶材料を含むイオン輸送層。
【請求項12】
請求項8に記載のイオンの輸送方法を行う、請求項11に記載のイオン輸送層。
【請求項13】
二次電池用である、請求項10に記載の液晶材料。
【請求項14】
キャパシタの誘電体用である、請求項10に記載の液晶材料。
【請求項15】
請求項10に記載の液晶材料を含む二次電池。
【請求項16】
請求項10に記載の液晶材料を含むキャパシタ。
【請求項17】
請求項10に記載の液晶材料の二次電池の製造のための使用。
【請求項18】
請求項10に記載の液晶材料のキャパシタの製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性混合液晶組成物、それを用いたイオンの輸送方法、導電性混合液晶組成物を含む液晶材料、当該液晶材料を含むイオン輸送層、二次電池、キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、利便性の向上のため、充電時間の短縮が求められている。近年、イオン伝導性の高い有機材料が注目され、イオン伝導性の高い有機材料は、次世代のリチウムイオン二次電池用電解質として、特に注目されている。
【0003】
従来のリチウムイオン伝導性のある有機材料のリチウムイオンの輸送機構は、不規則に並んだ分子間で行われるため、リチウムイオン輸送効率に問題があり、充電時間の短縮が要望される中で、更にリチウムイオンの輸送能に優れたものが要望されている。
【0004】
本発明者は、液晶相としてスメクチック相を有する液晶化合物の液晶状態の分子配向を利用することで、プロトン輸送能、電荷輸送能及び導電性が向上することを見出し、これらの用途に適用可能な液晶化合物を提案している(例えば、特許文献1~4等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-338585号公報
【文献】特開2003-55337号公報
【文献】特開2003-144196号公報
【文献】特開2001-351786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、更に検討を進めるうち、常温において導電性を示す混合液晶組成物の分子構造設計に成功し、併せてこれを利用したイオンの輸送方法、二次電池やキャパシタへの応用を見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
従来のリチウムイオン輸送用の液晶化合物は高温(例えば220℃以上)にならないと液晶形成が開始されないため、使用温度範囲に限界があった。イオン輸送速度に悪影響を及ぼすことなく、この使用温度範囲を、特に低温側に拡張することができれば、その工業的価値は極めて高いはずである。
【0008】
従って、本発明の目的は、二次電池の電解質として用いたときに、常温において充電時間の短縮が期待できるイオンの輸送方法を提供することにある。また、本発明は新規な導電性混合液晶組成物、それを用いたイオンの輸送方法、導電性混合液晶組成物を含む液晶材料、当該液晶材料を含むイオン輸送層、二次電池、キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は以下を包含する。
[1] 下記一般式(1)で表される液晶化合物を少なくとも1種含む導電性混合液晶組成物。
【化1】

[式中、
Rは、炭素原子数5以上のアルキル基又はアルコキシ基を示す。
Bは、分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基を示す(前記分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
Aは、π電子が12個以上の共役系を含む、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい有機基を示す。
Lは、炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基を示す(前記炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
nは2を示す。
n個のR、B、A、及びLはそれぞれ同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。
Xは、Zn2+を示す。]
[2] 下記一般式(1)で表され、nが1であり、XがLi、Na、及びKからなる群より選択されるイオンである液晶化合物を少なくとも1種、並びに下記一般式(1)で表され、nが2又は3であり、XがMg2+、Ca2+、Ba2+、Zn2+及びAl3+からなる群より選択されるイオンである液晶化合物を少なくとも1種含む導電性混合液晶組成物。
【化2】

[式中、
Rは、炭素原子数5以上のアルキル基又はアルコキシ基を示す。
Bは、分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基を示す(前記分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
Aは、π電子が12個以上の共役系を含む、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい有機基を示す。
Lは、炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基を示す(前記炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
nは1、2、又は3を示す。
nが2又は3のとき、n個のR、B、A、及びLはそれぞれ同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。
Xは、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Zn2+及びAl3+からなる群より選択されるイオンを示す。]
[3] 一般式(1)におけるRが炭素原子数5以上12以下のアルコキシ基である、[1]又は[2]に記載の導電性混合液晶組成物。
[4] 一般式(1)におけるBが下記一般式(2)で表される、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物。
【化3】

[式中、
R’は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、
0≦p≦6であり、
0≦q≦6であり、
*はAとの結合を示す。]
[5] イオン性液晶化合物のAが、単結合、-CH=CH-、-CH≡CH-、-N=N-、-COO-、又は-CH=N-によって連結されていてもよいベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、カルバゾール環、キナゾリン環、プリン環、インドリジン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インドール環、又はアクリジン環を表す、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物。
[6] 一般式(1)におけるLが下記一般式(3)で表される、[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物。
【化4】

[式中、
mは1以上8以下の整数であり、
*はAとの結合を示す。]
[7] 一般式(1)で表され、Xが、Na、及びKからなる群より選択される少なくとも1種のイオンである液晶化合物、
一般式(1)で表され、Xが、Mg2+、Ca2+、Zn2+及びBa2+からなる群より選択される少なくとも1種のイオンである液晶化合物、並びに
一般式(1)で表され、XがAl3+である液晶化合物
のいずれかと、
一般式(1)で表され、XがLiである液晶化合物と、
を含む、[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物。
[8] 一対の電極間に、[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物を挟持すること、及び
前記一対の電極間に電圧を印加すること
を含む、イオンの輸送方法。
[9] 二次電池の充電のための[8]に記載のイオンの輸送方法。
[10] [1]乃至[7]のいずれか一項に記載の導電性混合液晶組成物を含む、液晶材料。
[11] [10]に記載の液晶材料を含むイオン輸送層。
[12] [8]に記載のイオンの輸送方法を行う、[11]に記載のイオン輸送層。
[13] 二次電池用である、[10]に記載の液晶材料。
[14] キャパシタの誘電体用である、[10]に記載の液晶材料。
[15] [10]に記載の液晶材料を含む二次電池。
[16] [10]に記載の液晶材料を含むキャパシタ。
[17] [10]に記載の液晶材料の二次電池の製造のための使用。
[18] [10]に記載の液晶材料のキャパシタの製造のための使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明者は前記課題について鋭意検討を行った結果、一般式(1)におけるR-B-基として分岐を有する嵩高い基を選択することにより、各液晶分子間の距離を適当に離し、液晶形成開始温度を低下させるという着想に到達した。また、Xとして特定のイオンを選択することにより、液晶形成開始温度が低下するという驚くべき知見を得た。更に、Xとしてイオン半径が適度に異なるイオンを併用することにより、各液晶分子間の距離を適当に離し、液晶形成開始温度を低下させるという着想にも到達した。イオン半径(ポーリングによるイオン半径(pm))は、それぞれAl3+(50)、Li(60)、Mg2+(65)、Zn2+(74)、Na(95)、Ca2+(99)、K(133)、及びBa2+(135)であるので、これらを利用することが有効であろうという着想にも至った。本発明はこれらの独創的な着想に基づく分子設計により以下のような顕著な効果を奏するものである。
【0011】
本発明に係るイオンの輸送方法は、液晶相としてスメクチック相を有している導電性混合液晶組成物を用いているので、スメクチック相の液晶状態、又はスメクチック相からの降温過程の相転移で生じる固体状態でイオンの輸送部位を密な状態に重ねることができ、この分子配向を維持したままの状態で電圧を印加することにより、効率的にイオンの輸送を行うことができる。
【0012】
従って、本発明の導電性混合液晶組成物を含む液晶材料を用いると、従来より効率的にイオンの輸送を行うことができるので、二次電池の電解質として用いたときに、常温において充電時間の短縮が期待できる。また、キャパシタの誘電体として用いた場合には、薄膜化、積層が容易で、エネルギー密度を上げることができるため、高容量キャパシタの製造が可能になると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】混合液晶組成物8(実施例8)の偏光顕微鏡写真である。
図2】混合液晶組成物8(実施例8)の各温度におけるイオン輸送性能を示す図である。
図3】液晶化合物12(実施例13)の各温度におけるイオン輸送性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[導電性混合液晶組成物]
本発明は、下記一般式(1)で表される液晶化合物を少なくとも1種含む導電性混合液晶組成物に関する。
【化5】

[式中、
Rは、炭素原子数5以上のアルキル基又はアルコキシ基を示す。
Bは、分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基を示す(前記分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
Aは、π電子が12個以上の共役系を含む、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい有機基を示す。
Lは、炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基を示す(前記炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
nは2を示す。
n個のR、B、A、及びLはそれぞれ同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。
Xは、Zn2+を示す。]
【0015】
本発明はまた、下記一般式(1)で表され、nが1であり、XがLi、Na、及びKからなる群より選択されるイオンである液晶化合物を少なくとも1種、並びに下記一般式(1)で表され、nが2又は3であり、XがMg2+、Ca2+、Ba2+、Zn2+及びAl3+からなる群より選択されるイオンである液晶化合物を少なくとも1種含む導電性混合液晶組成物に関する。
【0016】
【化6】

[式中、
Rは、炭素原子数5以上のアルキル基又はアルコキシ基を示す。
Bは、分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基を示す(前記分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
Aは、π電子が12個以上の共役系を含む、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい有機基を示す。
Lは、炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基を示す(前記炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
nは1、2、又は3を示す。
nが2又は3のとき、n個のR、B、A、及びLはそれぞれ同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。
Xは、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Zn2+及びAl3+からなる群より選択されるイオンを示す。]
【0017】
なお、記載を簡潔にするため、本願明細書において「導電性混合液晶組成物」という用語は、一般式(1)で表される液晶化合物が一種のみで、厳密には混合液晶組成物と言えない場合をも包含するものとして用いられている。
【0018】
好ましくは、
一般式(1)で表され、Xが、Na、及びKからなる群より選択される少なくとも1種のイオンである液晶化合物、
一般式(1)で表され、Xが、Mg2+、Ca2+、Zn2+及びBa2+からなる群より選択される少なくとも1種のイオンである液晶化合物、並びに
一般式(1)で表され、XがAl3+である液晶化合物
のいずれかと、
一般式(1)で表され、XがLiである液晶化合物と、
を含む、導電性混合液晶組成物である。
【0019】
一般式(1)において、Rは、炭素原子数5以上のアルキル基又はアルコキシ基であり、好ましくは炭素原子数5以上12以下のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素原子数5以上8以下のアルコキシ基であり、最も好ましくはn-ペントキシ基、n-ヘキトキシ基、n-ヘプトキシ基、又はn-オクトキシ基である。
【0020】
一般式(1)において、Bは、分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基を示す(前記分岐を有する炭素原子数6以上のアルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。好ましくは、Bは、下記一般式(2)で表される基である。
【化7】

[式中、
R’は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、
0≦p≦6であり、
0≦q≦6であり、
*はAとの結合を示す。]
【0021】
一般式(2)において、R’は、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であり、より好ましくはメチル基、又はエチル基である。
【0022】
一般式(2)において、好ましくは0≦p≦4であり、より好ましくは0≦p≦2であり、最も好ましくはp=2である。
一般式(2)において、好ましくは0≦q≦4であり、より好ましくは0≦q≦2であり、最も好ましくはq=2である。
【0023】
一般式(1)において、Aは、π電子が12個以上の共役系を含む、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい有機基を示す。
Aは、好ましくは、単結合、-CH=CH-、-CH≡CH-、-N=N-、-COO-、又は-CH=N-によって連結されていてもよいベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、カルバゾール環、キナゾリン環、プリン環、インドリジン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インドール環、又はアクリジン環を表す。
【0024】
より好ましくは、Aは、下記一般式(1a)~(1d)
【化8】

(式中、tは1又は2の整数を示す。)から選ばれる基であり、最も好ましくは、Aは(1a)で表される基である。
【0025】
一般式(1)において、Lは、炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基を示す(前記炭素原子数3以上の直鎖アルキレン基は、酸素原子又は硫黄原子を介してAと結合してもよい)。
【0026】
好ましくは、Lは、下記一般式(3)で表される基である。
【化9】

[式中、
mは1以上8以下の整数であり、
*はAとの結合を示す。]
mは、より好ましくは1以上5以下の整数であり、最も好ましくは1以上3以下の整数である。
【0027】
一般式(1)において、nは1、2、又は3を示す。
nが2又は3のとき、n個のR、B、A、及びLはそれぞれ同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。
【0028】
[導電性混合液晶組成物の調製]
一般式(1)で表される各種液晶化合物の合成は、後述する合成例に準じて行うことができる。
例えば、下記一般式(3)
【化10】

(式中、R、B、A及びLは前記と同義である。)で表される有機酸化合物を水溶性有機溶媒に溶解した溶液(A液)に、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛又はアルミニウムの水酸化物の水溶液(B液)を添加して反応を行うことにより、工業的に有利に製造することができる。
【0029】
一般式(3)で表わされる有機酸化合物を溶解する水溶性有機溶媒としては、用いる有機酸化合物の種類等により異なるが、多くの場合は、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トリオキサン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の1種又は2種以上で用いることができる。
【0030】
A液中の前記一般式(3)で表わされる有機酸化合物の濃度は、該有機酸化合物が溶解できる濃度範囲であれば特に制限されるものではなく、また、用いる有機酸化合物と水溶性有機溶媒の種類にもよるが、通常0.001~1モル/L、好ましくは0.05~0.5モル/Lである。
【0031】
前記リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛又はアルミニウムの水酸化物の水溶液は、1種又は2種以上のこれらの水酸化物を水に溶解した水溶液とすることができる。これらの水酸化物水溶液中の濃度は、これらの水酸化物が溶解できる濃度範囲であれば特に制限はないが、通常0.05~0.6モル/L、好ましくは0.1~0.5モル/L、より好ましくは0.2~0.4モル/Lである。
【0032】
これらの水酸化物を複数、任意の割合で水に溶解した水溶液とし、これを有機酸化合物と反応させることにより、陽イオン種の異なる複数種の液晶化合物の混合物(混合液晶組成物)を容易に調製することができる。
【0033】
水酸化物水溶液の添加速度は特に制限はないが、反応温度が0~80℃、好ましくは5~30℃の範囲となるように適宜添加速度を調整しながら行うことが好ましい。
【0034】
所定量の水酸化物水溶液を添加後、必要により熟成反応を行った後、常法により溶媒を除去し、必要により洗浄等の精製を行って、目的とする前記一般式(1)で表わされる液晶化合物を得ることができる。複数種の水酸化物を任意の割合で水に溶解した水溶液を有機酸化合物と反応させた場合には、直ちに混合液晶組成物を得ることができる。
【0035】
[導電性混合液晶組成物の用途]
本発明に係る導電性混合液晶組成物は、特定のR、B、A、LとXとを有する液晶化合物の混合物であることから、液晶性を示す温度範囲を拡大し、液晶形成温度を低下させることができる。
【0036】
本発明はイオンの輸送方法にも関し、導電性混合液晶組成物を用い、常温での液晶状態で電圧を印加することによりイオンの輸送を行うものである。より具体的には、本発明に係るイオンの輸送方法は、一対の電極間に、上記した導電性混合液晶組成物を常温での液晶状態で挟持すること、及び前記一対の電極間に電圧を印加することを含む。
【0037】
好ましくは上記イオンの輸送方法は、常温での二次電池の充電のためのイオンの輸送方法である。
本発明によれば、一般式(1)におけるR、B、A、Lとして特定の基を選択し、かつ、Xとして特定のイオンを選択するか、イオン半径が適度に異なるイオンを併用することにより、従来よりも低い液晶形成開始温度を実現することができる。同時に、イオン性液晶化合物中のメソゲン部分が重なり合うことによって、イオンを輸送する役割を担う官能基であるAが空間的に規則正しい位置を占めるため、高いイオン輸送速度を達成することができる。この結果、本発明に係る導電性混合液晶組成物を応用した二次電池では急速充電が常温で可能となるという有利な効果が得られる。
【0038】
本発明は導電性混合液晶組成物を含む液晶材料にも関する。本発明に係る導電性混合液晶組成物は、常温で導電性を示し、イオン輸送材料として二次電池の電解質として応用が期待できる液晶材料である。
【0039】
本発明に係る液晶材料に含めることのできる他の成分としては、液晶温度範囲を広げることを目的として、本発明の効果を損なわない範囲の添加量で本発明に係る導電性混合液晶組成物に含まれる液晶化合物以外の液晶化合物を併用して含有させることができる。
【0040】
本発明に係る導電性混合液晶組成物に含まれる液晶化合物以外の液晶化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、特開2017-105874号公報に開示されている液晶化合物が挙げられる。
【0041】
本発明に係る液晶材料には、更に、他の電解質、有機溶媒等を含有させることができる。
【0042】
本発明に係る液晶材料は、液晶相としてスメクチック相を有しているので、スメクチック相の液晶状態、又はスメクチック相からの降温過程の相転移で生じる固体状態でイオンの輸送部位を密な状態に重ねることができ、この分子配向を維持したままの状態で、二次電池の電解質としてそのまま用いることにより、効率的にイオンの輸送を行うことが期待できる。
【0043】
また、本発明に係る液晶材料は、溶媒中のイオン性液晶化合物の濃度を調整し、リオトロピック液晶状態として、このリオトロピック液晶状態で二次電池の電解質として用いることにより、効率的にイオンの輸送を行うことが期待できる。
【0044】
これは、本発明に係るイオン性液晶化合物の混合物をリオトロピック液晶状態で分子鎖の配向をラメラ相配向に制御し、このラメラ相配向において、イオン性液晶化合物のイオン輸送部位が電荷の安定化作用で重なってくるので、規則的に該イオン性液晶化合物が一軸方向に配向し、この液晶状態で電圧を印加することにより、極めて効率よくイオンの輸送を行うことができる。
【0045】
前記リオトロピック液晶状態で使用する溶媒としては、二次電池の分野で使われる電解液を用いることができ、該電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、スルホラン等の高誘電率溶媒;1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の低粘度溶媒およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0046】
従って、本発明に係る液晶材料は、効率的にイオンの輸送を行うことができるので、二次電池の電解質として用いたときに、常温において充電時間の短縮が期待できる。
【0047】
また、本発明に係る液晶材料の形態は特に制限されないが、例えば二次電池の電解質として用いる場合は、正極及び負極の間にリチウムイオン輸送層として介在させればよい。
【0048】
本発明に係る液晶材料は、スメクチック相からの降温過程の相転移で生じる固体状態で二次電池の電解質として用いる場合は、固体状態の界面に対して、液晶材料を塗布しておくことにより、固体界面でのイオンの移動をスムーズに行うことができる。
【0049】
このようなイオン輸送層は、上記したような機構によりイオンの輸送を行うことができ、二次電池の電解質用、キャパシタの誘電体用として極めて有用である。
【0050】
本発明に係る液晶材料を二次電池やキャパシタの製造のための使用すること、本発明に係る液晶材料を電解質に含む二次電池、本発明に係る液晶材料を誘電体に含むキャパシタもまた本発明の範囲に包含されるものである。
【実施例
【0051】
以下、本発明を例により、詳細に説明するが本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0052】
<合成例1 化合物2の合成>
【化11】
【0053】
500ml三角フラスコ中で4,4’-ビフェノール11.2g(0.060mol)をDMF50mlに溶解させた。これに炭酸カリウム8.3g(0.060mol)を加え、窒素雰囲気下、室温(25℃)で24時間撹拌した。撹拌後、臭化アルキル(アルキル=n-C15-)16.8g(0.06mol)をゆっくりと加え、80℃、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。
反応終了後、反応液を冷却し、ジエチルエーテル300mlを加えた。その後、10%塩酸300mlを加えて抽出し、蒸留水100mlで洗浄した。水層をジエチルエーテルで再抽出し、洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加え、一晩脱水させた。
無水硫酸ナトリウムを吸引ろ過により取り除き、ジエチルエーテルを減圧除去した。
n-ヘキサン60mlを加え、50分間超音波洗浄を行い、冷凍庫にて一日冷却し、ろ過により不溶解部を得た。
これらトルエンを100ml加え、超音波洗浄を行い、ろ過により溶解部を得た。トルエンを減圧除去し、目的化合物を得た。
収量:3.7g
理論収量:23.1g
収率:16%
形状:白色固体
分子量:384.6
目的化合物のNMRデータ及びIRデータを下表に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
<合成例2 化合物4の合成>
【化12】
【0057】
100ml三角フラスコに、合成例1で得た化合物2を3.7g(0.0095mol)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(DBU)を5.8g(0.038mol)、3-ブロモプロパンスルホン酸ナトリウムを8.5g(0.038mol)を加え、DMF60ml中に溶解させ、窒素雰囲気下、60℃で48時間攪拌した。
反応終了後、溶媒をエバポレーターで除去し、ジエチルエーテル100mlを加え、超音波洗浄を行い、ろ過により不溶解部を得た。この操作を2回行った。得られた不溶解部に蒸留水と塩酸をそれぞれ10ml加え、1日放置し、ろ過により不溶解部を得た。得られた不溶解部にTHFを100ml加え、30分間撹拌した。撹拌後、ろ過によってろ液を得た。
エバポレーターによって溶媒を減圧除去し、固体を得た。
得られた固体をジオキサン200mlに溶解させ、ろ過によりろ液を得た。
エバポレーターによって溶媒を減圧除去し、目的化合物を得た。
収量:3.4g
理論収量:4.8g
収率:71%
形状:黒灰色固体(少し粘性あり)
分子量:506.7
目的化合物のNMRデータ及びIRデータを下表に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
<合成例3 混合液晶組成物5の合成>
【化13】
【0061】
100ml三角フラスコに化合物を0.1916g(0.0004mol)加え、ジオキサン50mlに溶解させた。
これに、水酸化リチウム一水和物を0.0038g(0.00009mol)、水酸化ナトリウムを0.0034g(0.000085mol)、水酸化カリウムを0.0062g(0.00011mol)、水酸化アルミニウムを0.004g(0.00051mol)、蒸留水10mlに溶解させた水溶液を加え、24時間撹拌した。
撹拌後、500ml三角フラスコに移し替え、エバポレーターによって溶媒を減圧除去した。
ジエチルエーテル100mlを加え、良く振って洗浄した。ろ過を行い、沈殿物を得た。この操作を2回繰返し、目的とする混合液晶組成物を得た。本組成物は実施例7として評価した。
収量:0.130g
理論収量:0.2g
収率:63%
形状:白色粉末固体
分子量:529.7
【0062】
合成例4 混合液晶組成物7の合成
【化14】
【0063】
100ml三角フラスコに、合成例2に準じて得た化合物6を0.305g加え、ジオキサン50mlに溶解させた。
これに撹拌子を入れて撹拌しながら、100mlビーカー中で水酸化リチウム一水和物を0.0082g(0.000192mol)、水酸化ナトリウムを0.0078g(0.000196mol)、水酸化アルミニウムを0.0052g(0.0000663mol)、蒸留水10mlに溶解させた水溶液を少しずつ添加し、約3時間撹拌した。
その後、溶媒を減圧除去し、ジエチルエーテル20mlを加えた。スパチュラを用いてフラスコ内壁の付着物を掻き落とした後、蓋をしてフラスコを軽く振り混ぜた。その後、吸引ろ過を行い、目的とする混合液晶組成物を得た。本組成物は実施例9として評価した。
収量:0.326g
理論収量:0.190g
収率:58.3%
形状:褐色粉末
【0064】
<合成例5 混合液晶組成物8の合成>
【化15】
【0065】
100ml三角フラスコに、合成例2に準じて得た化合物6を0.302g加え、ジオキサン50mlに溶解させた。
これに撹拌子を入れて撹拌しながら、100mlビーカー中で水酸化リチウム一水和物を0.0122g(0.000291mol)、水酸化アルミニウムを0.00750g(0.0000962mol)、蒸留水10mlに溶解させた水溶液を少しずつ添加し、約3時間撹拌した。
その後、溶媒を減圧除去し、ジエチルエーテル20mlを加えた。スパチュラを用いてフラスコ内壁の付着物を掻き落とした後、蓋をしてフラスコを軽く振り混ぜた。その後、吸引ろ過を行い、目的とする混合液晶組成物を得た。本組成物は実施例8として評価した。
収量:0.315g
理論収量:0.076g
収率:24.1%
形状:褐色粉末
【0066】
<合成例6 液晶化合物12の合成>
【化16】
【0067】
100ml三角フラスコに化合物11を0.247g(0.0005mol)加え、ジオキサン50mlに溶解させた。
これに、水酸化亜鉛を0.025g(0.00025mol)、蒸留水10mlに溶解させた水溶液を加え、24時間撹拌した。
撹拌後、エバポレーターによって溶媒を減圧除去し、目的とする液晶化合物12を得た。本化合物は実施例13として評価した。
収量:0.212g
理論収量:0.247g
収率:85.8%
形状:黄色固体
分子量:492.5
【0068】
<合成例7 液晶組成物15+16の合成>
【化17】

0.0002molの化合物13と0.0002molの化合物14とを50mlのジオキサンに溶解させ、溶液Aとした。0.0002molの水酸化亜鉛を10mlの蒸留水に溶解させ、溶液Bとした。溶液Bを溶液Aに加え、24時間撹拌した。
撹拌後、エバポレーターによって溶媒を完全に減圧除去し、目的とする液晶組成物1516を得た。本組成物は実施例15として評価した。
収量:0.10g
収率:44%
【0069】
<イオン輸送の評価>
上記合成例に準じて下記表1に示す種々の混合液晶組成物を調製し、イオン輸送性能を評価した。
ITO電極を備えたセル(電極面積:0.16cm、電極間距離:70μm、ギャップ:50μm EHC社製)に試料20mgを圧入した。
次いで、10Vの電圧を印加し、除々に加温し、各温度毎の電流値を測定した。常温(30℃)における電流値を下記表1に併せて示す。
【0070】
【表5】
【0071】
混合液晶組成物8(実施例8)の偏光顕微鏡写真を図1に示す。120℃においてはもちろんのこと、常温(30℃)においても液晶を形成していることがわかる。
混合液晶組成物8(実施例8)の各温度におけるイオン輸送性能を図2に示した。従来の液晶化合物と比較して、イオン輸送性能のピークが低温側にシフトし、その結果、常温での導電性が実現されていることがわかる。
【0072】
液晶化合物12(実施例13)の各温度におけるイオン輸送性能を図3に示した。従来の液晶化合物と比較して、イオン輸送性能のピークが低温側にシフトし、その結果、常温での導電性が実現されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
従って、本発明のイオン性液晶化合物又はその混合物を含む液晶材料を用いると、従来より低温であっても効率的にイオンの輸送を行うことができるので、二次電池の電解質として用いたときには、充電時間の短縮が期待できる。また、キャパシタの誘電体として用いた場合には、薄膜化、積層が容易で、エネルギー密度を上げることができるため、高容量キャパシタの製造が可能になる。
図1
図2
図3