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特許7210018冷媒状態検知装置、冷媒状態検知方法及び温調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】冷媒状態検知装置、冷媒状態検知方法及び温調システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20230116BHJP
   F25B 39/04 20060101ALI20230116BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230116BHJP
   F25B 6/04 20060101ALI20230116BHJP
   F25B 45/00 20060101ALI20230116BHJP
   F24F 11/36 20180101ALI20230116BHJP
   F24F 11/38 20180101ALI20230116BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20230116BHJP
【FI】
F25B49/02 520H
F25B39/04 H
F25B1/00 381H
F25B6/04 Z
F25B45/00 C
F25B1/00 383
F24F11/36
F24F11/38
F24F11/49
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019089951
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020186827
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊二
(72)【発明者】
【氏名】峰原 亨明
(72)【発明者】
【氏名】深井 健太
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002639(JP,A)
【文献】特開2005-140409(JP,A)
【文献】特開2017-75761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F25B 39/04
F25B 1/00
F25B 6/04
F25B 45/00
F24F 11/36
F24F 11/38
F24F 11/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路において前記凝縮器から流出する冷媒の温度を取得するとともに、前記凝縮器で前記冷媒を冷却する冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度を取得する温度情報取得部と、
前記温度情報取得部で取得した前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、前記冷媒のリーク又は不足が生じていると判定する冷媒状態判定部と、を備える、冷媒状態検知装置。
【請求項2】
前記凝縮器は液冷式の熱交換器であり、前記冷却用流体は液体である、請求項1に記載の冷媒状態検知装置。
【請求項3】
前記凝縮器は、第1凝縮部と、前記第1凝縮部から流出する前記冷媒を凝縮する第2凝縮部と、を有し、
前記温度情報取得部は、前記第2凝縮部から流出する前記冷媒の温度と、前記第2凝縮部において前記冷媒を冷却する前記冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度と、を取得する、請求項1又は2に記載の冷媒状態検知装置。
【請求項4】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路において前記凝縮器から流出する冷媒の温度を取得するとともに、前記凝縮器で前記冷媒を冷却する冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度を取得する温度情報取得工程と、
前記温度情報取得工程で取得した前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、前記冷媒のリーク又は不足が生じていると判定する冷媒状態判定工程と、を備える、冷媒状態検知方法。
【請求項5】
前記凝縮器から流出する前記冷媒の温度を取得するとともに、前記凝縮器において前記冷媒を冷却する前記冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度を取得した場合に、取得した各温度の差が前記閾値以下となる前記冷凍回路の運転を実施可能とする所定量の前記冷媒を前記冷凍回路に充填する充填工程をさらに備え、
前記充填工程後に行う前記温度情報取得工程及び前記冷媒状態判定工程により、前記冷媒のリーク又は不足を判定する、請求項4に記載の冷媒状態検知方法。
【請求項6】
前記充填工程後に前記冷凍回路の運転時に、前記冷凍回路は、前記凝縮器で凝縮される前記冷媒が前記凝縮器の出口を覆う状態になるように前記凝縮器で前記冷媒を冷却する、請求項4又は5に記載の冷媒状態検知方法。
【請求項7】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路と、
請求項1乃至3のいずれかに記載の冷媒状態検知装置と、を備える温調システム。
【請求項8】
前記冷凍回路は、所定量の前記冷媒を充填された場合に、前記冷媒状態検知装置が取得する前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が前記閾値以下となる運転を実施可能となるよう構成されている、請求項7に記載の温調システム。
【請求項9】
前記冷凍回路は、前記所定量の前記冷媒を充填された場合に、前記凝縮器で凝縮される前記冷媒が前記凝縮器の出口を覆う状態となるように前記凝縮器で前記冷媒を冷却することが可能となる、請求項8に記載の温調システム。
【請求項10】
前記蒸発器によって温調される流体を通流させる流体通流装置をさらに備える、請求項7乃至9のいずれかに記載の温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒状態検知装置、冷媒状態検知方法及び温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍回路で冷媒がリークし、冷媒に不足が生じた場合には、冷凍能力の低下等の問題が生じ得るため、早急に何らかの対策をとることが望ましい。
【0003】
冷媒リークを検知する技術は従来から種々提案されている。例えば特許文献1には、圧縮機吸入圧力、蒸発器圧力、圧縮機吐出圧力、凝縮器圧力、圧縮機吸入温度、蒸発器出口温度、圧縮機吐出温度、凝縮器入口温度等を検知し、これら検知した値をパラメータとして冷媒リークを検知する技術が開示されている。また特許文献2には、外部にリークされた冷媒を検知する冷媒検知装置を空気調和装置の室内機に設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-121867号公報
【文献】国際公開2017/175300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、圧力、温度等を検知するために多くのセンサが必要であり、冷媒リークの判断に使用するパラメータも多い。また特許文献2の技術は、外部に漏れた冷媒を冷媒検知装置で直接的に検知するため、冷媒検知装置から離れた位置で漏れた冷媒を検知することは困難であり、冷媒の不足を的確に検知できるとは言い難い。
【0006】
本件発明者は上述のような公知技術を鑑みて、極力簡易に冷媒のリーク又は冷媒の不足を的確に検知することを実現すべく鋭意研究を行った。そして、冷媒が不足する状況下においては、凝縮器の出口温度が、冷媒が不足していない場合の出口温度に比べて高くなることを見出した。そして、この現象は、冷媒が不足した際には凝縮器で凝縮される冷媒の凝縮量が予定又は期待される凝縮量よりも少なくなり、気体のままの高温の冷媒が凝縮器出口からその下流側の配管に混ざり易くなることで生じていることを見出した。
【0007】
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、冷凍回路における冷媒のリーク又は不足を簡易に且つ的確に検知できる冷媒状態検知装置、冷媒状態検知方法及び温調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷媒状態検知装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路において前記凝縮器から流出する冷媒の温度を取得するとともに、前記凝縮器で前記冷媒を冷却する冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度を取得する温度情報取得部と、前記温度情報取得部で取得した前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、前記冷媒のリーク又は不足が生じていると判定する冷媒状態判定部と、を備える。
【0009】
前記凝縮器は液冷式の熱交換器であり、前記冷却用流体は液体でもよい。
【0010】
前記凝縮器は、第1凝縮部と、前記第1凝縮部から流出する前記冷媒を凝縮する第2凝縮部と、を有し、前記温度情報取得部は、前記第2凝縮部から流出する前記冷媒の温度と、前記第2凝縮部において前記冷媒を冷却する前記冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度と、を取得してもよい。
【0011】
本発明に係る冷媒状態検知方法は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路において前記凝縮器から流出する冷媒の温度を取得するとともに、前記凝縮器で前記冷媒を冷却する冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度を取得する温度情報取得工程と、前記温度情報取得工程で取得した前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、前記冷媒のリーク又は不足が生じていると判定する冷媒状態判定工程と、を備える。
【0012】
本発明に係る冷媒状態検知方法は、前記凝縮器から流出する前記冷媒の温度を取得するとともに、前記凝縮器において前記冷媒を冷却する前記冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度を取得した場合に、取得した各温度の差が前記閾値以下となる前記冷凍回路の運転を実施可能とする所定量の前記冷媒を前記冷凍回路に充填する充填工程をさらに備え、前記充填工程後に行う前記温度情報取得工程及び前記冷媒状態判定工程により、前記冷媒のリーク又は不足を判定してもよい。
【0013】
前記充填工程後に前記冷凍回路の運転時に、前記冷凍回路は、前記凝縮器で凝縮される前記冷媒が前記凝縮器の出口を覆う状態になるように前記凝縮器で前記冷媒を冷却してもよい。
【0014】
本発明に係る温調システムは、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路と、前記の冷媒状態検知装置と、を備える。
【0015】
前記冷凍回路は、所定量の前記冷媒を充填された場合に、前記冷媒状態検知装置が取得する前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が前記閾値以下となる運転を実施可能となるよう構成されてもよい。
【0016】
前記冷凍回路は、前記所定量の前記冷媒を充填された場合に、前記凝縮器で凝縮される前記冷媒が前記凝縮器の出口を覆う状態となるように前記凝縮器で前記冷媒を冷却することが可能となっていてもよい。
【0017】
本発明に係る温調システムは、前記蒸発器によって温調される流体を通流させる流体通流装置をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷凍回路における冷媒のリーク又は不足を簡易に且つ的確に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る温調システムの概略構成を示す図である。
図2A図1に示す温調システムの冷凍回路に設けられる凝縮器の概略的な断面図である。
図2B図1に示す温調システムの冷凍回路に設けられる凝縮器の概略的な断面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る温調システムの概略構成を示す図である。
図4】本発明の第3の実施の形態に係る温調システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施の形態について説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る温調システム1の概略構成を示す図である。本実施の形態に係る温調システム1は、冷凍回路10と、第1冷却用流体通流装置21と、第2冷却用流体通流装置22と、温調対象流体通流装置30と、コントローラ40と、を備えている。
【0022】
冷凍回路10は、圧縮機11、凝縮器12、レシーバタンク13、膨張弁14及び蒸発器15を有する。圧縮機11、凝縮器12、レシーバタンク13、膨張弁14及び蒸発器15は冷媒をこの順で循環させるように配管部材により接続されている。
【0023】
圧縮機11は、蒸発器15から流出した低温且つ低圧の気体の状態の冷媒を圧縮し高温且つ高圧の気体の状態にして、凝縮器12に供給する。凝縮器12は、圧縮機11で圧縮された冷媒を冷却用流体によって冷却して凝縮し、所定の冷却温度の高圧の液体の状態にする。
【0024】
本実施の形態では凝縮器12が、第1凝縮部121と、第1凝縮部121から流出する冷媒を凝縮する第2凝縮部122と、を有している。第1凝縮部121を通過する冷媒は、第1冷却用流体通流装置21が第1凝縮部121に供給する第1冷却用流体によって冷却される。第2凝縮部122を通過する冷媒は、第2冷却用流体通流装置22が第2凝縮部122に供給する第2冷却用流体によって冷却される。
【0025】
第1凝縮部121及び第2凝縮部122はそれぞれ液冷式の熱交換器、具体的にはプレート式熱交換器で構成される。ただし、第1凝縮部121及び第2凝縮部122は空冷式の熱交換器で構成されてもよい。
【0026】
レシーバタンク13は、凝縮器12で凝縮され液体となった冷媒を受け入れて貯留し、レシーバタンク13に貯留された冷媒は膨張弁14側に流れる。膨張弁14は、レシーバタンク13から供給された冷媒を膨張させることにより減圧させて、低温且つ低圧の液体状態又は気液混合状態にして、蒸発器15に供給する。蒸発器15は、本実施の形態において、供給された冷媒と温調対象流体通流装置30が通流させる温調対象流体とを熱交換させるようになっている。温調対象流体と熱交換した冷媒は、低温且つ低圧の気体の状態となって蒸発器15から流出して再び圧縮機11で圧縮される。
【0027】
第1冷却用流体通流装置21は、第1凝縮部121に第1冷却用流体を供給し、第2冷却用流体通流装置22は、第2凝縮部122に第2冷却用流体を供給する。上述したように本実施の形態では、第1凝縮部121及び第2凝縮部122が液冷式の熱交換器で構成されるため、第1冷却用流体及び第2冷却用流体として液体が用いられる。
【0028】
液体である第1冷却用流体及び第2冷却用流体は水でもよいし、その他の流体でもよい。第1凝縮部121及び第2凝縮部122が空冷式の熱交換器で構成される場合には、第1冷却用流体及び第2冷却用流体は空気でもよい。
【0029】
本実施の形態では、第2冷却用流体通流装置22がポンプ22Aを有し、ポンプ22Aの駆動力を制御することで、第2凝縮部122に供給される第2冷却用流体の流量を調整できる。これにより、第2凝縮部122における冷媒の冷却量を調整できる。
【0030】
温調対象流体通流装置30は、上述したように蒸発器15で冷媒と熱交換を行う温調対象流体を通流させる。温調対象流体通流装置30が通流させる温調対象流体は気体であってもよいし、液体であってもよい。
【0031】
温調対象流体は気体である場合、温調対象流体通流装置30はファン等で構成され得る。また温調対象流体は液体である場合、温調対象流体通流装置30は、液体の流路や液体を通流させるためのポンプ等で構成され得る。
【0032】
また冷凍回路10には、第2凝縮部122から流出する冷媒の温度を検知する冷媒温度センサ16と、第2凝縮部122から流出する冷媒の圧力を検知する冷媒圧力センサ17とが設けられている。詳しくは、冷媒温度センサ16は、第2凝縮部122から流出しレシーバタンク13に流入する前の冷媒の温度を検知する。言い換えると、冷媒温度センサ16は、第2凝縮部122の出口に接続された配管部材の内部の温度を検知する。冷媒圧力センサ17は第2凝縮部122から流出しレシーバタンク13に流入する前の冷媒の圧力を検知する。言い換えると、冷媒圧力センサ17は、第2凝縮部122の出口に接続された配管部材の内部の温度を検知する。
【0033】
また第2冷却用流体通流装置22には、冷却用流体温度センサ22Bが設けられている。冷却用流体温度センサ22Bは、第2凝縮部122において冷媒を冷却する前の第2冷却用流体の温度を検知する。言い換えると、冷却用流体温度センサ22Bは、第2冷却用流体通流装置22において第2冷却用流体を通流させる配管部材における第2凝縮部122の上流側の部分の内部の温度を検知する。
【0034】
またコントローラ40は、冷凍回路10の各部、第2冷却用流体通流装置22のポンプ22A等の動作を制御可能であるとともに、上述した各種センサ16,17,22Bからの情報を取得することが可能となっている。コントローラ40は、例えばCPU,ROM,RAM等を備えるコンピュータで構成され、記憶されたプログラムに従って上記各部の動作を制御してもよい。
【0035】
コントローラ40は、温度情報取得部41と、冷媒状態判定部42と、動作制御部43と、出力部44とを有する。
【0036】
温度情報取得部41は、凝縮器12の第2凝縮部122から流出する冷媒の温度を冷媒温度センサ16から取得するとともに、第2凝縮部122で冷媒を冷却する前の第2冷却用流体の温度を冷却用流体温度センサ22Bから取得する。
【0037】
冷媒状態判定部42は、温度情報取得部41で取得した冷媒の温度と第2冷却用流体の温度との差が、予め記録された閾値を越えた場合に、冷媒のリーク又は不足が生じていると判定する。ここで、温度情報取得部41及び冷媒状態判定部42は冷媒状態検知装置40Aを構成している。
【0038】
動作制御部43は、冷凍回路10の各部、第2冷却用流体通流装置22のポンプ22A等の動作を制御するようになっている。
【0039】
出力部44は、冷媒状態判定部42が冷媒のリーク又は不足が生じていると判定し場合に、図示しない表示装置上に警告を表示するようになっている。
【0040】
以下、本実施の形態における冷媒状態検知装置40Aによる冷媒のリーク又は不足の判定の流れを説明する。
【0041】
まずは、第2凝縮部122の構造と、冷凍回路10の運転中の第2凝縮部122の内部の状態を説明する。図2A及び図2Bは、プレート式熱交換器で構成された第2凝縮部122の概略的な断面図である。図2Aに示すように、第2凝縮部122は、隣り合うプレート部材122Aの間に上記冷媒又は第2冷却用流体を通流させるための流路が形成されるように積層された複数のプレート部材122Aを有し、複数のプレート部材122Aは、その積層方向に冷媒用の流路122Bと第2冷却用流体用の流路122Cとを交互に並べて形成している。
【0042】
複数のプレート部材122Aの積層方向の一方側の端に位置するプレート部材122Aには、冷媒入口部122Dと冷媒出口部122Eとが接続されており、白塗りされた矢印に示すように、冷媒は冷媒入口部122Dから冷媒用の流路122Bに流れ、冷媒出口部122Eから流出する。冷媒入口部122Dと冷媒出口部122Eとは積層方向に直交する方向で互いに離れて配置されており、本実施の形態では、上下方向で、冷媒入口部122Dが冷媒出口部122Eよりも上側に位置するように第2凝縮部122が配置されている。なお、冷媒入口部122Dは、第1凝縮部121と第2凝縮部122とを接続する配管部材の一部であってもよいし、この配管部材とは別の部材でもよい。同様に、冷媒出口部122Eは、第2凝縮部122とレシーバタンク13とを接続する管部材の一部であってもよいし、この配管部材とは別の部材でもよい。
【0043】
一方、図示省略するが、積層方向の一方側の端に位置するプレート部材122Aには、第2冷却用流体入口部及び第2冷却用流体出口部も接続されており、ハッチングを付けた矢印に示すように、第2冷却用流体は第2冷却用流体入口部から第2冷却用流体用の流路122Cに流れ、第2冷却用流体出口部から流出する。
【0044】
第2冷却用流体入口部及び第2冷却用流体出口部も積層方向に直交する方向で互いに離れて配置されているが、第2冷却用流体入口部は、積層方向に直交する方向で冷媒出口部122Eと同じ側に設けられ、第2冷却用流体出口部は、積層方向に直交する方向で冷媒入口部122Dと同じ側に設けられる。したがって、本実施の形態では、上下方向で、第2冷却用流体出口部が第2冷却用流体入口部よりも上側に位置する。なお、第2冷却用流体入口部が積層方向に直交する方向で冷媒入口部122Dと同じ側に設けられもよく、第2冷却用流体出口部が積層方向に直交する方向で冷媒出口部122Eと同じ側に設けられてもよい。
【0045】
ところで、図2Aに示した符号LMは、第2冷却用流体によって凝縮されて第2凝縮部122の底側に溜まった液体状態の冷媒を示す。図2Aにおいては、液体の冷媒LMの液面高さが冷媒出口部122Eの上端を越えており、液体の冷媒LMが冷媒出口部122Eを覆う状態になっている。
【0046】
本実施の形態では、コントローラ40の動作制御部43が冷媒圧力センサ17からの冷媒の圧力値に応じて第2冷却用流体通流装置22のポンプ22Aを制御することで、液体の冷媒LMが冷媒出口部122Eを覆う状態を形成する。
【0047】
詳しくは、第2冷却用流体通流装置22の冷却量が小さく冷媒が十分に凝縮されない場合には、第2凝縮部122の底側に溜まる冷媒LMの液面高さが冷媒出口部122Eの上端を越えず、冷媒出口部122Eに気体の状態の冷媒が進入することがある。この際、冷媒圧力センサ17が検知する冷媒の圧力値は、冷媒出口部122Eが液体の冷媒で満たされる場合に比べて大きくなる。したがって、例えば、冷媒出口部122Eが液体の冷媒で満たされる場合に冷媒圧力センサ17が検知する圧力値を閾値と定めた上で、冷媒圧力センサ17からの冷媒の圧力値に応じて第2冷却用流体通流装置22のポンプ22Aを制御することで、液体の冷媒LMが冷媒出口部122Eを覆う状態を形成することができる。
【0048】
上述のように液体の冷媒LMが冷媒出口部122Eを覆う状態であるときには、冷媒温度センサ16が検知する冷媒の温度と、冷却用流体温度センサ22Bが検知する第2冷却用流体の冷媒冷却前の温度との差は小さい値となり、理想的には同じ温度となる。このように冷媒温度センサ16が検知する冷媒の温度と冷却用流体温度センサ22Bが検知する第2冷却用流体の温度との差が小さい値となるときには、液体の冷媒LMが冷媒出口部122Eを覆う状態となる正常な運転が行われ且つ冷凍回路10に適正な所定量の冷媒が充填されている状態になっていると言える。このような所定量の冷媒は、冷凍回路10のサイズや要求される冷凍能力を考慮し、計算や検証を通して定めることができる。
【0049】
一方で、上述のように液体の冷媒LMが冷媒出口部122Eを覆う状態となるような第2冷却用流体通流装置22の冷却量の制御を実施しているにもかかわらず、図2Bに示すように、第2凝縮部122の底側に溜まる冷媒LMの液面高さが冷媒出口部122Eの上端を越えない場合には、冷媒リーク等により冷凍回路10中の冷媒が不足している状態と見做すことができる。この場合、冷媒出口部122Eに気体の状態の冷媒が進入し、冷媒温度センサ16が検知する冷媒の温度が、冷媒出口部122Eが液体の冷媒で満たされる場合に比べて大きくなる。その結果、冷媒温度センサ16が検知する冷媒の温度と冷却用流体温度センサ22Bが検知する第2冷却用流体の温度との差が大きい値となる。
【0050】
本件発明者は、上述のように冷凍回路10から冷媒がリーク又は不足した場合には、冷媒温度センサ16が検知する冷媒の温度と冷却用流体温度センサ22Bが検知する第2冷却用流体の温度との差が大きくなることを見出し、この差が予め記録された閾値を越えた場合に冷媒のリーク又は不足が生じていると判定する冷媒状態検知装置40Aを採用するに至った。
【0051】
本件発明者は鋭意研究を通して、上記冷媒リーク又は不足の判定のための閾値は2℃以上であることが好ましく、2℃以上6℃以下がより好ましく、2℃以上4℃以下がさらに好ましいことを知見した。このような範囲に上記閾値を設定することで、冷媒リーク又は不足の判定精度が向上する。
【0052】
上記冷媒リーク又は不足の判定においては、冷媒温度センサ16が検知する冷媒の温度と冷却用流体温度センサ22Bが検知する第2冷却用流体の温度との差の移動平均値を算出し、この移動平均値を上記閾値と比較してもよい。移動平均値は、3秒以上の検知期間における3点以上の検知点における、冷媒温度センサ16が検知する冷媒の温度と冷却用流体温度センサ22Bが検知する第2冷却用流体の温度との差を用いて計算してもよい。移動平均値を利用した場合には、センサにおけるノイズの影響を抑えることで判定精度を向上できる。
【0053】
以上に説明したように本実施の形態では冷凍回路10に冷媒状態検知装置40Aが設けられる。そして、冷媒状態検知装置40Aは、第2凝縮部122から流出する冷媒の温度を取得するとともに、第2凝縮部122で冷媒を冷却する第2冷却用流体の冷媒冷却前の温度を取得する温度情報取得部41と、温度情報取得部41で取得した冷媒の温度と第2冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、冷媒のリーク又は不足が生じていると判定する冷媒状態判定部42と、を備える。
【0054】
このような冷媒状態検知装置40Aでは、冷媒のリーク又は不足の判定に用いるパラメータの数が抑制される。また、判定のパラメータとして温度を用いることで、冷媒のリーク又は不足の判定精度を向上できる。すなわち、冷凍回路10内における冷媒の温度を検知する場合においては、圧力を検知する場合に比較して急激な変動やノイズの検知が抑制される。
【0055】
よって、本実施の形態によれば、冷凍回路10における冷媒のリーク又は不足を簡易に且つ的確に検知できる。
【0056】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係る温調システム2について図3を参照しつつ説明する。以下の説明では、第1の実施の形態に対する相違点のみを説明する。
【0057】
図3に示すように、本実施の形態では、凝縮器12が一つの液冷式の熱交換器で構成される。凝縮器12には冷却用流体通流装置20が通流させる冷却用流体が供給される。冷却用流体通流装置20は、冷却用流体の流量を調整するポンプ22Aと、冷却用流体温度センサ22Bとを有する。冷却用流体温度センサ22Bは、冷却用流体が凝縮器12において冷媒を冷却する前の冷却用流体の温度を検知する。
【0058】
冷媒状態検知装置40Aでは、温度情報取得部41が、凝縮器12から流出する冷媒の温度を冷媒温度センサ16から取得するとともに、凝縮器12で冷媒を冷却する前の冷却用流体の温度を冷却用流体温度センサ22Bから取得する。冷媒状態判定部42は、温度情報取得部41で取得した冷媒の温度と冷却用流体の温度との差が、予め記録された閾値を越えた場合に、冷媒のリーク又は不足が生じていると判定する。
【0059】
本実施の形態においても、極めて簡易な構成で的確に冷媒のリーク又は不足を検知できる。
【0060】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係る温調システム3について図4を参照しつつ説明する。以下の説明では、第1及び第2の実施の形態に対する相違点のみを説明する。
【0061】
本実施の形態では、凝縮器12が一つの空冷式の熱交換器で構成される。凝縮器12には、ファンを有する空冷装置24がファンの駆動によって通流させる気体である冷却用流体が供給される。冷却用流体は空気でもよい。空冷装置24に設けられる冷却用流体温度センサ22Bは、凝縮器12に供給される冷却用流体の温度を検知する。
【0062】
冷媒状態検知装置40Aでは、温度情報取得部41が、凝縮器12から流出する冷媒の温度を冷媒温度センサ16から取得するとともに、凝縮器12で冷媒を冷却する前の気体である冷却用流体の温度を冷却用流体温度センサ22Bから取得する。冷媒状態判定部42は、温度情報取得部41で取得した冷媒の温度と冷却用流体の温度との差が、予め記録された閾値を越えた場合に、冷媒のリーク又は不足が生じていると判定する。
【0063】
本実施の形態においても、極めて簡易な構成で的確に冷媒のリーク又は不足を検知できる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態には各種の変更を加えることができる。例えば、上述の各実施の形態では、冷凍回路10にレシーバタンク13が設けられるが、冷凍回路10にレシーバタンク13が設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1, 2,3…温調システム
10…冷凍回路
11…圧縮機
12…凝縮器
121…第1凝縮部
122…第2凝縮部
122A…プレート部材
122B,122C…流路
122D…冷媒入口部
122E…冷媒出口部
13…レシーバタンク
14…膨張弁
15…蒸発器
16…冷媒温度センサ
17…冷媒圧力センサ
20…冷却用流体通流装置
21…第1冷却用流体通流装置
22…第2冷却用流体通流装置
22A…ポンプ
22B…冷却用流体温度センサ
24…空冷装置
30…温調対象流体通流装置
40…コントローラ
40A…冷媒状態検知装置
41…温度情報取得部
42…冷媒状態判定部
図1
図2A
図2B
図3
図4