(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】移植装置
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
A01C11/02 303C
(21)【出願番号】P 2019109540
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】大坪 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 圭佑
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-194553(JP,A)
【文献】特開昭56-109509(JP,A)
【文献】特開2008-167745(JP,A)
【文献】特開昭62-228205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱に保持された複数のポット苗を圃場に移植する移植装置であって、
前記苗箱から前記ポット苗を取り出す苗取り出し部と、
取り出された前記ポット苗を左右方向へ輸送する横送りベルトと、
前記横送りベルトの下流側において、前記ポット苗を下方へ輸送する縦送り部と、
前記横送りベルトの下流側において、前記縦送り部に向かって下向きに前記ポット苗の根部を押し出す送り出し爪と、
前記縦送り部の下流側において、前記ポット苗を圃場へ植え付ける植え付けカップと、
を有し、
前記縦送り部は1対の縦送りベルトを有し、
前記縦送りベルトはそれぞれ、
上下に間隔を空けて配置された一対のプーリと、
一対の前記プーリの巻き付けられた環状ベルトと、
を有し、
前記縦送り部の有する2つの前記環状ベルトは、
略平行に配置され、上方から下方へと移動し、かつ、互いに間隔を空けて向かい合う一対の苗挟持面
を構成し、
一対の前記苗挟持面は、前記ポット苗の前記根部および葉部を、前記根部が前記葉部よりも下方に配置された姿勢で挟持しつつ、下方へと搬送
し、
前記苗挟持面は、
前記送り出し爪と幅方向の位置が重なり、前記根部を挟持する根部挟持部と、
前記送り出し爪と幅方向の位置が異なり、前記葉部を挟持する葉部挟持部と、
を有し、
前記葉部挟持部は、弾性力を有する突起を有する、移植装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移植装置であって、
前記苗挟持面の上下方向の長さは、前記根部の長さ以上である、移植装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移植装置であって、
前記苗挟持面の幅方向の長さは、前記根部の長さ以上である、移植装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の移植装置であって、
前記突起の硬さは、JIS K 6253-3:2012の規格に則って、タイプAデュロメータを用いて計測した値において、A 65以下である、移植装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の移植装置であって、
一対の前記苗挟持面の間隔は、前記根部の太さの60%以上80%以下である、移植装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の移植装置であって、
前記植え付けカップは、上部に開口を有し、
前記植え付けカップは、
前記縦送りベルトの下流側の端部の直下に前記開口が配置される苗受け取り位置と、
前記苗受け取り位置よりも下方に配置される植え付け位置と、
を通る軌道上を回動し、
前記苗挟持面の移動速度は、前記植え付けカップの前記苗受け取り位置の通過時における移動速度の4倍以上である、移植装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、稲や野菜などの苗を圃場に移植する移植機として、苗箱に育成されたポット苗を圃場に移植する移植機が知られている。従来のポット苗を圃場に移植する移植機については、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の移植機では、
図15および
図16に示すように、ポット苗Nは、苗搬送ベルト81上を水平方向に搬送された後、挟持ローラ82によって根部が下向きとなる垂直姿勢へと回転しつつ、植付カップ83内に受け取られる。その後、植付カップ83が圃場に植付孔を空けながら植付カップ83の先端部を開くことにより、圃場に苗Nを植え付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の移植機では、苗搬送ベルト81から植付カップ83へと姿勢を変換して移送を行う際、根部押し棒84によってポット苗Nの姿勢を斜め姿勢へと変換しつつ、挟持ローラ82が茎葉部の基端部を挟持して下方へとポット苗Nを送り出す。
【0006】
このような構成は、ポット苗Nが、稲等の茎葉部が真っ直ぐに伸びる植物の苗である場合は問題ない。しかしながら、ポット苗Nが、例えば、ブロッコリーやキャベツ等の茎葉部が拡がる植物の苗である場合、挟持ローラ82によって挟持された茎葉部が傷んでしまう虞がある。
【0007】
一方で、
図17に示すように、挟持ローラ82同士の間隔を広くして根部を挟持ローラ82で挟持可能にすれば、挟持ローラ82間を通る茎葉部が傷むのを抑制できる。しかしながら、ポット苗Nが、
図17に示すように、細長い茎部N2と拡がった葉部N3とを有する場合、挟持ローラ82が挟持可能な根部N1と葉部N3とが挟持ローラ82の上下に配置され、挟持不可能な茎部N2が挟持ローラ82間に配置された状態で挟持ローラ82が空回りするという問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、移植装置において、ポット苗に生じるダメージを低減しつつ、ポット苗を適切に搬送する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、苗箱に保持された複数のポット苗を圃場に移植する移植装置であって、前記苗箱から前記ポット苗を取り出す苗取り出し部と、取り出された前記ポット苗を左右方向へ輸送する横送りベルトと、前記横送りベルトの下流側において、前記ポット苗を下方へ輸送する縦送り部と、前記横送りベルトの下流側において、前記縦送り部に向かって下向きに前記ポット苗の根部を押し出す送り出し爪と、前記縦送り部の下流側において、前記ポット苗を圃場へ植え付ける植え付けカップと、を有し、前記縦送り部は1対の縦送りベルトを有し、前記縦送りベルトはそれぞれ、上下に間隔を空けて配置された一対のプーリと、一対の前記プーリの巻き付けられた環状ベルトと、を有し、前記縦送り部の有する2つの前記環状ベルトは、略平行に配置され、上方から下方へと移動し、かつ、互いに間隔を空けて向かい合う一対の苗挟持面を構成し、一対の前記苗挟持面は、前記ポット苗の前記根部および葉部を、前記根部が前記葉部よりも下方に配置された姿勢で挟持しつつ、下方へと搬送し、前記苗挟持面は、前記送り出し爪と幅方向の位置が重なり、前記根部を挟持する根部挟持部と、前記送り出し爪と幅方向の位置が異なり、前記葉部を挟持する葉部挟持部と、を有し、前記葉部挟持部は、弾性力を有する突起を有する。
【0010】
本願の第2発明は、第1発明の移植装置であって、前記苗挟持面の上下方向の長さは、前記根部の長さ以上である。
【0011】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の移植装置であって、前記苗挟持面の幅方向の長さは、前記根部の長さ以上である。
【0013】
本願の第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれかの移植装置であって、前記突起の硬さは、JIS K 6253-3:2012の規格に則って、タイプAデュロメータを用いて計測した値において、A 65以下である。
【0014】
本願の第5発明は、第1発明ないし第4発明のいずれかの移植装置であって、一対の前記苗挟持面の間隔は、前記根部の太さの60%以上80%以下である。
【0015】
本願の第6発明は、第1発明ないし第5発明のいずれかの移植装置であって、前記植え付けカップは、上部に開口を有し、前記植え付けカップは、前記縦送りベルトの下流側の端部の直下に前記開口が配置される苗受け取り位置と、前記苗受け取り位置よりも下方に配置される植え付け位置と、を通る軌道上を回動し、前記苗挟持面の移動速度は、前記植え付けカップの前記苗受け取り位置の通過時における移動速度の4倍以上である。
【発明の効果】
【0016】
本願の第1発明から第6発明によれば、苗挟持面の上下方向の長さが、プーリの直径よりも長くなる。このため、根部が苗挟持面よりも下方まで搬送された場合であっても、葉部が苗挟持面に挟持されて、苗挟持面の移動に従ってポット苗を下方へと搬送できる。また、一対の苗挟持面が間隔を空けて配置されていることにより、葉部が傷むのを抑制しつつ、苗挟持面がポット苗の根部および葉部を挟持することができる。特に、葉部挟持部の形状により、ポット苗の茎部や葉部が細い場合であっても、茎部や葉部が傷むのを抑制しつつ、適切に保持できる。
【0017】
特に、本願の第2発明および第3発明によれば、苗挟持面が葉部をより適切に挟持できる。
【0019】
特に、本願の第4発明によれば、ポット苗の茎部や葉部が傷むのをさらに抑制できる。
【0020】
特に、本願の第5発明によれば、苗挟持面が、ポット苗の根部を破壊することなく、根部をしっかりと挟持することができる。
【0021】
特に、本願の第6発明によれば、縦送り部から植え付けカップへのポット苗の搬送を短時間で確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】一実施形態に係る苗箱およびポット苗の断面図である。
【
図8】一実施形態に係る苗搬送部の一部の側面図である。
【
図9】一実施形態に係る苗搬送部の一部の背面図である。
【
図10】一実施形態に係る苗搬送部の一部の背面図である。
【
図11】一実施形態に係る苗搬送部の一部の側面図である。
【
図12】一実施形態に係る苗搬送部の一部の側面図である。
【
図13】一実施形態に係る苗搬送部の一部の側面図である。
【
図14】一実施形態に係る苗搬送部の一部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、移植装置の進行方向を「前方向」、移植装置の進行方向と逆の方向を「後方向」とそれぞれ称する。また、前後方向および上下方向と直交する方向を左右方向と称する。なお、本願では、移植装置の使用時の姿勢に従って上下方向を定義する。
【0024】
<1.第1実施形態>
<1-1.移植装置全体の構成について>
図1は、移植装置1の側面図である。この移植装置1は、苗箱において育成された複数の野菜のポット苗を、圃場100へ移植する装置である。本実施形態の移植装置1は、いわゆる歩行型の移植装置である。この移植装置1は、搭載したエンジン111の駆動力により自走しながら、ポット苗を順次に圃場100へ移植する。作業者は、移植装置1に伴って歩行しながら、空になった苗箱の取り出し、新たな苗箱の供給、および移植装置1の操作を行う。
【0025】
図1に示すように、移植装置1は、本体部11と、車輪12と、苗箱載置台13と、移植部20とを有する。
【0026】
本体部11は、エンジン111と、エンジン111から出力される動力をPTO軸を介して移植部20へと伝達する動力伝達機構とを有する。車輪12は、本体部11、苗箱載置台13および移植部20を走行自在に支持する。車輪12は、エンジン111の出力した動力によって回転し、移植装置1を走行させる。苗箱載置台13は、移植前または移植後の苗箱を載置可能である。移植部20は、ポット苗を苗箱から取り出して圃場100へと移植する。
【0027】
<1-2.移植部の構成について>
次に、移植部20の詳細な構成について説明する。
図2は、この移植装置1で移植されるポット苗を育成するための苗箱9の上面図である。
図3は、苗箱9と、苗箱9内で育成されたポット苗Nとの断面図を概念的に示した図である。
図2および
図3に示すように、苗箱9は、表側の面から裏側に向かって窪むカップ状の苗室91を複数有する。すなわち、苗室91は、苗箱9の表側に開口を有し、苗箱9の裏側に底部を有する。複数の苗室91は、2次元的に配置される。また、苗箱9は、苗箱9の両端部に沿って配置される複数の把持孔92を有する。
【0028】
各苗室91に土を入れた後、各苗室91内に播種し、育苗することで、
図3に示すように、複数のポット苗Nが得られる。
図3に示すポット苗Nは、ブロッコリーやキャベツ等の双子葉植物の苗の特徴を有している。このため、ポット苗Nは、苗室91において土と根とにより構成される根部N1と、根部N1から延びる茎部N2と、茎部N2の先端において拡がる葉部N3とから成る。育成したポット苗Nは、苗箱9に収容されたまま苗箱9ごと移植装置1へ載置される。
【0029】
各苗室91の底には、底面孔911が設けられている。本実施形態では、底面孔911は、Y字形状をしている。なお、底面孔911は、単なる円形や四角形等の貫通孔であってもよく、Y字形状や十文字形状等の切り込みであってもよい。
【0030】
図4は、移植部20の斜視図である。
図5は、移植部20の側面図である。
図6は、移植部20の背面図である。
図4~
図6に示すように、移植部20は、苗取り出し部31と、2つの苗搬送部32と、2つの苗植え付け部33とを有する。
【0031】
苗取り出し部31は、苗箱搬送部41と、苗押し出し部42と、苗反転部43とを有する。
【0032】
苗箱搬送部41は、苗箱載置面411と、苗箱送り出し部412とを有する。苗箱載置面411は、苗箱9の搬送経路に沿って配置される。移植処理を行う場合には、ポット苗Nが育成された苗箱9を、苗箱載置面411に苗室91の底部が沿うように配置する。苗箱送り出し部412は、苗箱9の把持孔92に搬送爪(図示せず)を引っかけて送り出す。これにより、苗箱9が搬送経路に沿って搬送される。
【0033】
苗押し出し部42は、苗箱9の搬送経路の途中において、苗箱9に収容されたポット苗Nの根部N1を苗室91から押し出して、ポット苗Nを取り出す。苗押し出し部42は、略水平に並ぶ複数の押出棒421を有する。押出棒421は、苗箱9において配列された苗室91の底面孔911に挿入されることにより、搬送経路上を搬送される苗箱9内に保持されたポット苗Nの根部N1を、苗室91から押し出す。これにより、左右方向に並ぶ複数のポット苗Nが、複数の押出棒421によって同時に押し出され、苗箱9から取り出される。
【0034】
苗箱9は、搬送経路に沿って湾曲しながら搬送される。
図5に示すように、苗押し出し部42によってポット苗Nが押し出される押し出し位置付近では、苗箱9は略垂直に配置される。このとき、ポット苗Nの姿勢は、後方に根部N1、前方に葉部N3が配置された状態となっている。押出棒421が底面孔911から前方へ向かって苗室91内に挿入されることにより、ポット苗Nは、苗箱9から前方へと押し出される。
【0035】
苗反転部43は、苗押し出し部42によって苗箱9から押し出された複数のポット苗Nを受け取り、ポット苗Nの前後方向を反転させて苗搬送部32の後述する2つの横送りベルト51上に載置する。これにより、ポット苗Nは、前方に根部N1、後方に葉部N3が配置された状態で横送りベルト51上に載置される。
【0036】
本実施形態では、苗押し出し部42が苗箱9の一列分である10個のポット苗Nを同時に押し出し、苗反転部43が当該10個のポット苗Nを同時に反転して横送りベルト51上に載置する。
【0037】
2つの苗搬送部32は、左右に並んで配置される。2つの苗搬送部32は、それぞれ、横送りベルト51と、縦送り部52と有する。横送りベルト51は、ポット苗Nを左右方向に搬送する。右側の横送りベルト51は、苗反転部43から受け取ったポット苗Nを右方向へ搬送する。また、左側の横送りベルト51は、苗反転部43から受け取ったポット苗を左方向へ輸送する。縦送り部52は、横送りベルト51の下流側において、ポット苗Nを下方へと搬送し、苗植え付け部33へとポット苗Nを受け渡す。苗搬送部32の詳細な構成については、後述する。
【0038】
苗植え付け部33は、苗搬送部32から受け取ったポット苗Nを圃場100へと植え付ける。苗植え付け部33は、植え付けカップ331と、駆動力入力部332と、アーム333とを有する。
【0039】
植え付けカップ331は、縦送り部52の下流側において、内部にポット苗Nを保持し、ポット苗Nを圃場100へと植え付ける。駆動力入力部332には、本体部11から回転駆動力が入力される。駆動力入力部332は、本体部11から入力された回転駆動力をアーム333へと伝達する。アーム333の先端には、植え付けカップ331が取り付けられる。アーム333は、駆動入力部332から入力された回転駆動力によって、植え付けカップ331を、最も上方に配置された苗受け取り位置P1と、最も下方に配置された植え付け位置P2とを通る軌道上を回動させる。すなわち、植え付け位置P2は、苗受け取り位置P1よりも下方に配置される。
【0040】
植え付けカップ331は、上部が開口となっている。苗受け取り位置P1において、植え付けカップ331の上部の開口は、縦送り部52の後述する縦送りベルト520の下流側の端部の直下に配置される。これにより、植え付けカップ331は、苗受け取り位置P1において、縦送り部52によって搬送されたポット苗Nを受け取り、保持する。なお、植え付けカップ331は、苗受け取り位置P1において、上部の開口から下方に向かってすぼむ円錐状の形状をしている。
【0041】
その後、植え付けカップ331は、植え付け位置P2へと移動し、植え付けカップ331の先端が圃場100へと刺さるとともに、植え付けカップ331の先端が開く。このとき、植え付けカップ331の先端が刺さることによって、圃場100にポット苗Nを植え付けるための凹部が形成される。そして、植え付けカップ331の先端が開くことによって、ポット苗Nが開いた先端から下方へと落下する。
【0042】
先端が開いた状態のまま、植え付けカップ331が上方へと退避すると、圃場100に形成された凹部内にポット苗Nの根部N1が配置された状態で、ポット苗Nが植え付けカップ331から離脱する。これにより、ポット苗Nが圃場100へと植え付けられる。
【0043】
<1-3.苗搬送部の構成について>
続いて、苗搬送部32の詳細な構成について、
図7~
図10を参照しつつ説明する。
図7は、2つの苗搬送部32の一部を示した斜視図である。
図8は、左側の苗搬送部32の一部を示した側面図である。
図8において、縦送り部52の左側の縦送りベルト520、第1案内板53および第2案内板54は表示が省略されている。
図9および
図10は、左側の苗搬送部32の一部を示した背面図である。なお、
図8中、搬送されるポット苗Nの位置が模式的に示されている。また、
図9および
図10中、搬送されるポット苗Nの根部N1の位置が模式的に示されている。
【0044】
2つの苗搬送部32は、それぞれ、上述した横送りベルト51および縦送り部52に加えて、第1案内板53と、第2案内板54と、送り出し爪55と、支点板56とを有する。
【0045】
横送りベルト51は、ポット苗Nを左右方向へ輸送するベルトコンベアである。右側の横送りベルト51は、苗反転部43から受け取ったポット苗Nを右方向へ輸送する。また、左側の横送りベルト51は、苗反転部43から受け取ったポット苗を左方向へ輸送する。
図7中、2つの横送りベルト51の搬送方向が実線矢印で示されている。
【0046】
本実施形態では、左右2つの横送りベルト51の上に、苗反転部43から運ばれた10個のポット苗Nが載置される。すなわち、各横送りベルト51には、5個のポット苗Nが載置される。そして、各横送りベルト51は、そのポット苗Nを縦送り部52に向かって左右方向へ輸送する。
【0047】
また、横送りベルト51には、
図7および
図8に示すように、複数の苗間突起511が設けられている。本実施形態では、前後方向に間隔を空けて配置される4つの苗間突起511により1組の苗分離部512が構成される。横送りベルト51には、複数の苗分離部512が搬送方向である左右方向に間隔を空けて配置される。苗反転部43から運ばれたポット苗Nはそれぞれ、2組の苗分離部512の間に配置される。これにより、隣合うポット苗N間に苗分離部512が配置され、隣合うポット苗N同士が干渉するのが抑制される。
【0048】
複数の苗間突起511は、横送りベルト51の前端部付近に設けられる。ここで、横送りベルト51のうち、苗間突起511が配置される前後方向の領域を「根部配置領域510」と称する。ポット苗Nの根部N1は、横送りベルト51のうちの根部配置領域510に載置される。一方、ポット苗Nの葉部N3は、横送りベルト51のうちの根部配置領域510よりも後方に載置される。
【0049】
縦送り部52は、横送りベルト51の下流側において、ポット苗Nを下方へ輸送する。縦送り部52はポット苗Nを1つずつ下方へ輸送する。縦送り部52はそれぞれ、左右に間隔を空けて配置された一対の縦送りベルト520を有する。
【0050】
縦送りベルト520は、一対のプーリ61,62と、環状ベルト63とを有する。一対のプーリ61,62は、回転駆動力が入力される駆動プーリ61と、駆動プーリ61の下方に配置される従動プーリ62とからなる。なお、駆動プーリ61と従動プーリ62とは、上下の位置が逆であってもよい。
【0051】
2つの環状ベルト63のうち、略平行に配置され、かつ、左右方向に対向する部分が、一対の苗挟持面60としての役割を果たす。苗挟持面60は、互いに左右方向に間隔を空けて配置される。駆動プーリ61は、苗挟持面60が上方から下方へと移動する方向に回転する。具体的には、縦送り部52の右側の縦送りベルト520が有する駆動プーリ61は、後方から見て反時計回りに回転する。一方、左側の縦送りベルト520が有する駆動プーリ61は、後方から見て時計回りに回転する。なお、
図9中に、各駆動プーリ61の回転方向を破線矢印で示している。これにより、間隔を空けて左右方向に向かい合う一対の苗挟持面60は、その間にポット苗Nを挟持しながら上方から下方へと輸送することができる。
【0052】
一対の苗挟持面60の間隔、すなわち、苗挟持面60同士の左右方向の間隔は、ポット苗Nの根部N1の太さの60%以上80%以下であることが好ましい。一対の苗挟持面60の間隔をこの範囲とすることにより、苗挟持面60が、根部N1を破壊することなく、根部N1をしっかりと挟持することができる。
【0053】
図7に示すように、第1案内板53および第2案内板54は、横送りベルト51の根部配置領域510と前後方向の位置が重なる。また、送り出し爪55の移動範囲も、根部配置領域510と前後方向の位置が重なる。すなわち、第1案内板53、第2案内板54および送り出し爪55は、ポット苗Nの根部N1に対して作用する。
【0054】
図7および
図9に示すように、第1案内板53は、横送りベルト51の下流側に配置される。
図9に示すように、第1案内板53は、無負荷状態において、下方に向かうにつれて左右方向の位置が横送りベルト51へと近づくように配置されている。すなわち、左側の苗搬送部32においては、第1案内板53は、下方に向かうにつれて右側へ向かうように傾斜して配置される。このため、横送りベルト51の下流側端部まで搬送されたポット苗Nの根部N1は、一時的に、第1案内板53と第2案内板54とに挟まれた待機位置P3に配置される。
【0055】
一方、第1案内板53は、上部が回動可能に固定される。これにより、外部から負荷がかかると、第1案内板53は、
図9中に二点鎖線矢印で示したように、下端部が横送りベルト51から離れる方向に回動可能である。この第1案内板53によって、ポット苗Nが横送りベルト51の下流側端部において、横送りベルト51の搬送方向に飛び出すのが抑制される。すなわち、
図9に示す左側の苗搬送部32においては、ポット苗Nの根部N1が左方向へとずれるのが抑制される。また、右側の苗搬送部32においては、ポット苗Nの根部N1が右方向へとずれるのが抑制される。したがって、ポット苗Nが縦送り部52の苗挟持面60間に向かわずに誤った方向へと向かうのが抑制される。
【0056】
第2案内板54は、横送りベルト51の下流側の端部付近から下方へ向けて略垂直に延びる。これにより、
図9に示す左側の苗搬送部32においては、ポット苗Nの根部N1が右方向へとずれるのが抑制される。また、右側の苗搬送部32においては、ポット苗Nの根部N1が左方向へとずれるのが抑制される。したがって、ポット苗Nが縦送り部52の苗挟持面60間に向かわずに誤った方向へと向かうのが抑制される。
【0057】
送り出し爪55は、ポット苗Nを、横送りベルト51の下流側端部から縦送り部52の一対の苗挟持面60間へと押し込む。具体的には、
図9に示すように、無負荷状態の第1案内板53と第2案内板54との間の待機位置P3に保持されたポット苗Nの根部N1を、下方へと押し込む。
図10には、送り出し爪55がポット苗Nの根部N1を下方へと押し込む様子が示されている。
【0058】
図10に示すように、送り出し爪55は、ポット苗Nの根部N1を一対の苗挟持面60間へと押し込む。この際、第1案内板53は、送り出し爪55の動きによって負荷がかかり、横送りベルト51から離れる方向へと回動する。これにより、ポット苗Nが下方へと送り出される。
【0059】
図11~
図14は、左側の苗搬送部32の一部を示した側面図である。
図11~
図14において、縦送り部52の左側の縦送りベルト520、第1案内板53および第2案内板54は表示が省略されている。
図8および
図11~
図14は、送り出し爪55がポット苗Nを下方へと送り出す様子を順に示している。
図11~
図14に示すように、送り出し爪55の移動領域は、横送りベルト51の根部配置領域510と前後方向の位置が重なる。これにより、送り出し爪55は、ポット苗Nのうち、根部N1のみに接触し、茎部N2には接触しにくい。
【0060】
図8~
図14に示すように、環状ベルト63はそれぞれ、前方に配置される根部挟持部631と、後方に配置される葉部挟持部632とを有する。根部挟持部631の表面は平らであるのに対して、葉部挟持部632は、表面に複数の突起630を有する。根部挟持部631は、送り出し爪55と幅方向(前後方向)の位置が重なる。一方、葉部挟持部632は、送り出し爪55と幅方向(前後方向)の位置が異なる。
【0061】
複数の突起630は、弾性力を有する。このため、一対の苗挟持面60の葉部挟持部632によって挟持されるポット苗Nの茎部N2や葉部N3が細い場合であっても、茎部N2や葉部N3が傷むのを抑制しつつ、適切に保持できる。葉部挟持部632に突起630の硬さは、JIS K 6253-3:2012の規格に則って、タイプAデュロメータを用いて計測した値において、A 65以下であることが好ましい。このような硬さにすれば、茎部N2や葉部N3が傷むのをさらに抑制できる。
【0062】
支点板56は、ポット苗Nの姿勢を、横送りベルト51上の搬送姿勢である水平姿勢から、根部N1が葉部N3よりも下方に配置される斜め姿勢へと転換するための支点となる。
図11に示すように、支点板56は、縦送り部52よりも後方に配置された第1支点561と、第1支点561よりも前方かつ下方に配置された第2支点562とを有する。
【0063】
支点板56は、横送りベルト51の下流側において、前後方向に延びる板状の部材である。支点板56は、平板が第1支点561および第2支点562において曲げられた形状をしている。支点板56は、第1支点561から後方へ向かって水平に延びる水平部563と、第1支点561から第2支点562の間を繋ぐ支点連結部564とを有する。
【0064】
横送りベルト51の下流側端部から待機位置P3へと落下すると、
図11に示すように、まず、ポット苗Nの葉部N3が支点板56の水平部563に接触する。その後、送り出し爪55によって根部N1が下方へと押されると、
図12に示すように、茎部N2または葉部N3と第1支点561との接触点を支点として、ポット苗Nが、葉部N3に対して根部N1が若干下方へと配置された姿勢へと転換される。
【0065】
続いて、さらに根部N1が下方へと押されると、
図13に示すように、茎部N2または葉部N3と第2支点562との接触点を支点として、ポット苗Nの姿勢が、さらに葉部N3に対して根部N1が下方へと配置される斜め姿勢へと転換される。その後、
図14に示すように、ポット苗Nは、当該斜め姿勢を保ったまま、縦送り部52によって下方へと搬送される。
【0066】
本実施形態では、ポット苗Nの姿勢を転換するための第1支点561および第2支点562が、板状の部材である支点板56によって構成されたが、本発明はこれに限られない。各支点561,562の周囲に配置された水平部563や支点連結部564は無くてもよい。すなわち、各支点561,562は、円筒状の部材や、移植装置1内の他の部材から突出する突起等によって各支点561,562のみが構成されてもよい。また、本実施形態では、ポット苗Nの姿勢を転換するための支点が2つであったが、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0067】
この縦送り部52では、2つの縦送りベルト520が、一対の苗挟持面60によってポット苗Nを挟持する。一対の苗挟持面60は、略平行に配置され、かつ、互いに間隔を空けて向かい合う。このような構成により、苗挟持面60がポット苗Nの根部N1を適切に挟持しつつ、搬送できる。また、同時に、葉部N3が傷むのを抑制しつつ、苗挟持面60が葉部N3を挟持することができる。
【0068】
この縦送り部52では、縦送りベルト520の構造上、苗挟持面60の上下方向の長さH(
図8参照)がプーリ61,62の直径よりも長くなる。このため、
図14に示すように、根部N1が苗挟持面60よりも下方まで搬送された場合であっても、葉部N3が苗挟持面60に挟持されるため、苗挟持面60の移動に従ってポット苗Nを下方へと搬送できる。したがって、
図17の例のように、ポット苗Nの根部N1や葉部N3が挟持されずに縦送り部52が空回りするのが抑制される。したがって、ポット苗Nを確実に下方へと搬送することができる。
【0069】
苗挟持面60の上下方向の長さHは、ポット苗Nの根部N1の長さ以上であることが好ましい。苗挟持面60が搬送方向に十分長いことにより、根部N1が苗挟持面60の下流側まで搬送された後であっても、茎部N2だけでなく葉部N3が一対の苗挟持面60間に配置される。これにより、葉部N3が苗挟持面60によって適切に挟持され、ポット苗Nを引き続き下方へと搬送することができる。
【0070】
なお、苗挟持面60の上下方向の長さHは、ポット苗Nの根部N1の長さの1.5倍以上であることがより好ましい。このようにすれば、ポット苗Nが縦向き姿勢となった状態であり、かつ、茎部N2の長さが根部N1と同程度あった場合でも、根部N1が苗挟持面60の下流側まで搬送された後に苗挟持面60が葉部N3を十分適切に挟持することができる。
【0071】
苗挟持面60の幅方向の長さW(
図8参照)、すなわち、苗挟持面60の前後方向の長さは、ポット苗Nの根部N1の長さ以上であることが好ましい。苗挟持面60が幅方向に十分長いことにより、葉部N3が一対の苗挟持面60間により確実に配置される。
【0072】
なお、苗挟持面60の幅方向の長さWは、ポット苗Nの根部N1の2倍以上であることがより好ましい。このようにすれば、ポット苗Nの姿勢転換が不十分でポット苗Nが水平姿勢に近い姿勢であった場合でも、苗挟持面60間に葉部N3が配置されやすい。
【0073】
また、本実施形態では、苗挟持面60の上方から下方への移動速度は、植え付けカップ331の苗受け取り位置P1の通過時における移動速度の4倍以上である。すなわち、縦送り部52から植え付けカップ331へと受け渡されるポット苗Nの上方から下方への移動速度は、植え付けカップ331の苗受け取り位置P1における移動速度よりも十分に大きい。これにより、縦送り部52から植え付けカップ331へのポット苗Nの搬送を、短時間で確実に行うことができる。
【0074】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0075】
上記の実施形態の移植装置は、ブロッコリー等の双子葉植物の苗を対象とした移植装置であったが、本発明はこれに限られない。本発明の移植装置は、双子葉植物以外の植物の苗を圃場に移植する移植装置であってもよい。本発明の移植装置は、例えば、長ネギなどの単子葉類の野菜にも用いることができる。
【0076】
また、上記の実施形態の移植装置は、左右2条分のポット苗を同時に移植できる、いわゆる2条植の移植装置であったが、本発明の移植装置は、2条植には限られない。例えば、1条植、4条植、6条植、および8条植の移植装置に、本発明を適用してもよい。
【0077】
また、上記の実施形態の移植装置に使用した苗箱は、横10列、縦22列に苗室が並ぶものであったが、本発明に使用する苗箱の苗室の数は、これに限られない。
【0078】
また、上記の実施形態の移植装置は、歩行型の移植装置であったが、本発明はこれに限られない。本発明の移植装置は、トラクターによって牽引されるものであってもよい。その場合、トラクターのエンジンからPTO軸を介して移植部に、回転駆動力を入力してもよい。
【0079】
また、移植装置の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 移植装置
9 苗箱
31 苗取り出し部
32 苗搬送部
33 植え付け部
51 横送りベルト
52 縦送り部
55 送り出し爪
60 苗挟持面
61,62 プーリ
63 環状ベルト
100 圃場
331 植え付けカップ
520 縦送りベルト
630 突起
631 根部挟持部
632 葉部挟持部
N ポット苗
N1 根部
N2 茎部
N3 葉部
P1 苗受け取り位置
P2 植え付け位置