IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ オブ オタゴの特許一覧

特許7210032産後うつ病及び産後不安の少なくとも1つを治療する又は予防するための乳酸菌の使用
<>
  • 特許-産後うつ病及び産後不安の少なくとも1つを治療する又は予防するための乳酸菌の使用 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】産後うつ病及び産後不安の少なくとも1つを治療する又は予防するための乳酸菌の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20230116BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20230116BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230116BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230116BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230116BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K35/74 A
A61P25/24
A61P25/22
A23L33/135
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019566670
(86)(22)【出願日】2017-06-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 IB2017053263
(87)【国際公開番号】W WO2018220429
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-06-02
【微生物の受託番号】AGAL  NM97/09514
(73)【特許権者】
【識別番号】500240379
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ オタゴ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン アーサー ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ スライカーマン
(72)【発明者】
【氏名】ソーステン ビリアーズ スタンリー
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102994432(CN,A)
【文献】BMC Pregnancy and Childbirth,2016年,Vol.16:133,pp.1-14
【文献】BMC Medicine,2017年01月,Vol.15:7,pp.1-14
【文献】NeuroImage,2016年,Vol.125,pp.988-995
【文献】Behavioural Pharmacology,2014年,Vol.25, No.1,pp.71-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00 -35/768
A61P 25/00 -25/36
A23L 33/135
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト成人女性の対象における産後うつ病(PND)及び産後不安(PNA)の少なくとも1つを治療する若しくは予防する際に使用するため、又は胎児、新生児、乳児又は子供の対象におけるPND及びPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその続発症を予防する際に使用するための、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001(1997年8月18日付けAGAL委託番号NM97/09514)を含む組成物であって、
a.記予防することは、前記ヒト成人女性の対象に対する、あるいは、前記胎児、新生児、乳児又は子供の対象の母親に対する前記組成物の投与を含み、そして、
b.前記L.ラムノサスHN001が、増殖可能な形態をしている、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、生理学的に許容され得る希釈剤、補助剤、キャリヤ、又は賦形剤を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、食物であるか、又は食物を含む、請求項又はに記載の組成物。
【請求項4】
前記食物は、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、乳飲料、及び粉乳から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、薬学的に許容され得る希釈剤、補助剤、キャリヤ、又は賦形剤を含む医薬組成物である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、
a.母体調合乳又は母体サプリメント、又は
b.サプリメント、調合乳、栄養食品又は食物、
である、請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、妊娠の第1三半期の後に投与されるか、
前記組成物は、14~16週の妊娠期間の間に投与されるか、
前記組成物は、14~16週の妊娠期間から分娩まで投与されるか、あるいは
前記組成物は、14~16週の妊娠期間から分娩後6か月まで投与される、請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、プレバイオティクスを含む、請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記プレバイオティクスは、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、又はヒトミルクオリゴ糖、及びこれらの組み合わせを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の投与は、前記ヒト成人女性の対象又は前記母親において、エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)において13未満のスコア、及び/又は、前記ヒト成人女性の対象又は前記母親において、状態‐特性不安尺度6アイテムバージョン(STAI6)6アイテムスケールにおいて15未満のスコアをもたらす、請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記胎児、新生児、乳児、又は子供の対象におけるPND及びPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその続発症が、より高い割合の情動的問題、行動の問題、精神医学的診断、及び多動から選択される、請求項10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記治療は、予防的な治療であるか、
前記治療は、PND及びPNAの少なくとも1つの予想又は確立された増加したリスクを有する成人女性の対象の予防的な治療であるか、
前記治療は、妊娠しようとしている若しくは最近妊娠したばかりの成人女性の対象の予防的な治療であるか
前記成人女性の対象又は前記母親は、妊娠しているか、
前記成人女性の対象又は前記母親は、妊娠しており、かつ35歳以上であるか、
前記成人女性の対象又は前記母親は、妊娠しており、かつPND及びPNAの少なくとも1つの病歴を有するか、
前記成人女性の対象又は前記母親は、妊娠しており、35歳以上であり、かつPND及びPNAの少なくとも1つの病歴を有するか、
前記対象は、胎児の対象であり、かつ前記組成物は、前記対象の母親に投与されるか
前記対象は、新生児、乳児、又は子供の対象であり、かつ前記組成物は、前記対象の母親に投与されるか、あるいは
前記対象は、胎児、新生児、乳児又は子供の対象であり、かつ前記組成物は、妊娠期間の間に前記対象の妊娠している母親に投与される、請求項11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
ヒト成人女性の対象における産後うつ病(PND)及び産後不安(PNA)の少なくとも1つを治療する若しくは予防するため、又は胎児、新生児、乳児又は子供の対象におけるPND及びPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその続発症を予防するための組成物又は医薬の製造におけるL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001(1997年8月18日付けAGAL委託番号NM97/09514)の使用であって、
a.前記予防することは、前記ヒト成人女性の対象に対する、あるいは、前記胎児、新生児、乳児又は子供の対象の母親に対するL.ラムノサスHN001の投与を含み、そして、
b.前記L.ラムノサスHN001が、増殖可能な形態をしている、使用
【請求項14】
前記組成物又は医薬は、生理学的に許容され得る希釈剤、補助剤、キャリヤ、又は賦形剤を含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物は、食物であるか、又は食物を含む、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
前記食物は、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、乳飲料、及び粉乳から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記組成物又は医薬は、薬学的に許容され得る希釈剤、補助剤、キャリヤ、又は賦形剤を含む医薬組成物である、請求項13に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物は、
a.母体調合乳又は母体サプリメント、又は
b.サプリメント、調合乳、栄養食品又は食物、
である、請求項1317のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記組成物又は医薬は、妊娠の第1三半期の後に投与されるか、
前記組成物又は医薬は、14~16週の妊娠期間の間に投与されるか、
前記組成物又は医薬は、14~16週の妊娠期間から分娩まで投与されるか、あるいは
前記組成物又は医薬は、14~16週の妊娠期間から分娩後6か月まで投与される、
請求項1318のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記組成物又は医薬は、プレバイオティクスを含む、請求項1319のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記プレバイオティクスは、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、又はヒトミルクオリゴ糖、及びこれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記組成物の投与は、前記ヒト成人女性の対象又は前記母親において、エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)において13未満のスコア、及び/又は、前記ヒト成人女性の対象又は前記母親において、状態‐特性不安尺度6アイテムバージョン(STAI6)6アイテムスケールにおいて15未満のスコアをもたらす、請求項1321のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記胎児、新生児、乳児、又は子供の対象におけるPND及びPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその続発症が、より高い割合の情動的問題、行動の問題、精神医学的診断、及び多動から選択される、請求項1322のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記治療は、予防的な治療であるか、
前記治療は、PND及びPNAの少なくとも1つの予想又は確立された増加したリスクを有する成人女性の対象の予防的な治療であるか、
前記治療は、妊娠しようとしている若しくは最近妊娠したばかりの成人女性の対象の予防的な治療であるか
前記成人女性の対象又は前記母親は、妊娠しているか、
前記成人女性の対象又は前記母親は、妊娠しており、かつ35歳以上であるか、
前記成人女性の対象又は前記母親は、妊娠しており、かつPND及びPNAの少なくとも1つの病歴を有するか、
前記成人女性の対象又は前記母親は、妊娠しており、35歳以上であり、かつPND及びPNAの少なくとも1つの病歴を有するか、
前記対象は、胎児の対象であり、かつ前記組成物は、前記対象の母親に投与されるか
前記対象は、新生児、乳児、又は子供の対象であり、かつ前記組成物は、前記対象の母親に投与されるか、あるいは
前記対象は、胎児、新生児、乳児又は子供の対象であり、かつ前記組成物は、妊娠期間の間に前記対象の妊娠している母親に投与される、請求項1323のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産後うつ病(PND)及び産後不安(PNA)の少なくとも1つを治療する及び/又は予防するためのプロバイオティック細菌の使用、特に乳酸菌の株の使用に関する。細菌及び細菌を含む組成物を使用するための方法もまた、提供される。
【背景技術】
【0002】
妊娠中及び出産後の大うつ病は、ニュージーランドの女性の10~15%に生じ、これは他の西洋諸国と同等の割合である(1)。産後うつ病(PND)は、持続的な抑うつ状態及び毎年数例であるが、自殺による死亡にさえ関連する(2)。この障害は、生まれたばかりの乳児の世話をし、愛情を育む母親の能力並びに母親の生活の質及び日常機能に影響を与えるかもしれない(3)。そのうえ、母親の抑うつ状態は、子供の認知的な、社会情動的な、及び健康状態の結果に対して長期にわたって影響をもたらすことがある(4、5)。PNDを予防し、治療するための安全で有効な療法が、必要とされている(6)。
【0003】
ますます、免疫系、視床下部下垂体副腎系(HPA系)、並びに消化管を中枢神経系に関連づける求心性神経及び遠心性神経の巨大なネットワークを含む複数の双方向的な経路を介した脳化学及び行動に消化管中の微生物叢の健康状態を関連づける文献は、消化管微生物叢のプロバイオティックによる増強が気分的な結果を改善するかもしれないことを示唆するようになっている(7)。
【0004】
臨床前の研究は、マウスの不安の表現型を便の移植により変化させることができ、微生物叢の変化に脳化学の変化が伴うことを実証した(8)。さらに、プロバイオティックによる治療もまた、動物研究において不安様及びうつ様行動に対して良い効果を有することが示され(9、10)、媒介するメカニズムには、中枢神経系の特定の場所におけるGABA受容体の発現(9)、HPA系(10)、及び消化管管腔環境からCNSに情報を伝達する迷走神経(11)が含まれる。プロバイオティックによる治療の臨床試験は、さまざまな結果をもたらし、ヒト治験の最近のシステマティックレビューは、気分に対するプロバイオティックスの有益な効果についての証拠が、最近のナラティブ研究(narrative study)が主張しているものほど強力なものではないかもしれないと結論づけた。さらなるランダム化比較試験(RCT)が必要とされることが示唆される(12)。
【0005】
PND及び産後不安の現在の治療又は予防は、一般に、薬理学及び精神療法に基づく。しかしながら、多くの女性は、体を通って母乳の一部となるうつ病薬の安全性を評価する強力な証拠が不足していると懸念している。さらに、女性の中には、心理療法を求めることに汚名がついて回ると考える人もいる。
【0006】
抗うつ薬は、PND及び産後不安に対する第一選択の療法のうちの1つであることが多い。三環系抗うつ薬(tricyclic)及び選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)などのような従来の抗うつ薬が、よく処方される。しかしながら、PNDに対するこれらの従来の抗うつ薬の使用に関連する問題が多くある。第1に、これらの従来の抗うつ薬は、典型的に、それらを服用している約80%以下の患者においてPND状態を軽減する。第2に、成功する場合でさえ、従来の抗うつ薬は、典型的に、効果を発揮するのに8週間までかかる。第3に、母親は、三環系抗うつ薬及びSSRIに関連する典型的な副作用を経験することが予想され得る。三環系抗うつ薬の使用に関連する副作用は、口渇、鼻の乾燥、霧視、胃腸運動及び胃腸分泌の減少を含む。抗うつ剤の使用はまた、授乳している母親において眠気、短気、及び食欲不振をももたらすことがある。第4に、まれな例であるが、抗うつ薬による治療は、PND若しくは産後不安の症状の悪化又はそう病若しくは精神病の発生に至ることがある。精神療法がPND及び産後不安を治療する際に抗うつ薬と同じくらい有効になり得るが、介入は、限られた期間(たとえば10~20週間)しか、利用可能ではない傾向があり、すべての地域で利用可能でないかもしれない専門家によるサービスの提供者を必要とし、長期的な有益性は不明瞭なままである(22)。
【0007】
したがって、PND及びPNAを治療する及び/又は予防するのに有用な方法及び組成物、特に、処方薬及び/又はカウンセリングに頼らない、PND及びPNAを治療する又は予防するための方法及び組成物の必要性が残っている。PND及びPNAの予防又は寛解のための方法及び組成物もまた、望ましい。
【0008】
本発明の目的は、1つ若しくは複数のこれらの切実な要求をなんとかして実現する方向に向かうこと又は少なくとも、有用な選択肢を社会に提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様では、本発明は、対象において、産後うつ病(PND)及び産後不安(PNA)の少なくとも1つを治療する又は予防するための方法であって、その必要がある対象への、1997年8月18日付けのラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001、AGAL委託番号NM97/09514の投与を含む方法を提供する。
【0010】
一実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001は、生理学的に許容され得る希釈剤、補助剤、キャリヤ、又は賦形剤を有する組成物の形態で投与される。
【0011】
一実施形態では、HN001は、投与される唯一のプロバイオティック細菌である。
【0012】
一実施形態では、HN001は、1つ又は複数のプレバイオティクスと共に投与される。
【0013】
一実施形態では、前記生理学的に許容され得る希釈剤、補助剤、キャリヤ、又は賦形剤は、食物である。一実施形態では、食物は、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、乳飲料、又は粉乳である。
【0014】
代替的に、組成物は、医薬組成物であり、前記賦形剤又は希釈剤は、薬学的に許容され得る希釈剤、補助剤、キャリヤ、又は賦形剤である。
【0015】
別の態様では、本発明は、PND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ又は複数のリスクを治療する又は予防するための方法であって、リスクは、対象のもとに生まれた又は生まれることになっている乳児に対するものであり、その必要がある対象への、1997年8月18日付けのラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001、AGAL委託番号NM97/09514の投与を含む方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、組成物は、母体調合乳又は母体サプリメントである。
【0017】
組成物は、調合乳、たとえば母体調合乳、栄養食品、及びそれを低アレルギー性にしたものであってもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、方法は、対象に、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含む組成物を投与することを含む。好ましくは、組成物は、サプリメント、調合乳、栄養食品、又は食物である。
【0019】
ある実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001は、増殖可能な形態をしている、好ましくは増殖可能な形態をしており、かつ増殖可能な量がある。他の実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を、死滅させる、溶解する、分画する、又は弱毒化する。
【0020】
本発明は、PND若しくはPNAの少なくとも1つを治療する若しくは予防するための又はPND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症を治療する又は予防するためのL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001をさらに提供する。
【0021】
本発明は、PND若しくはPNAの少なくとも1つを治療する若しくは予防するための又はPND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症を治療する又は予防するための組成物の製造におけるL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001をさらに提供する。組成物は、たとえば食物又は医薬を含む、本明細書において記載されるものなどのような組成物であってもよい。
【0022】
本発明がまた、本発明の組成物、たとえば、対象において、PND又はPNAの少なくとも1つを治療する又は予防するための組成物の製造におけるL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の使用をも想定することが理解されよう。
【0023】
一実施形態では、組成物は、経口投与に適している。他の実施形態では、組成物は、非経口投与に適している。胎児の対象における、PND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症を予防することに関する実施形態では、組成物は、妊娠期間の間の妊娠している母親への経口投与に適している。
【0024】
様々な実施形態では、方法は、PND又はPNAの少なくとも1つのリスクが増加している対象において、PND又はPNAの少なくとも1つを治療する又は予防するための方法である。一実施形態では、方法は、PND又はPNAの少なくとも1つに以前に苦しんだことがある対象において、PND又はPNAの少なくとも1つを治療する又は予防するための方法である。
【0025】
さらなる実施形態では、対象は、1つ又は複数の産前うつ病又は不安、うつ病の個人又は家族の病歴、中程度から重度の月経前の症状、マタニティーブルー、出産に関係する心理的外傷、出産に関係する身体的外傷、以前の死産又は流産、たばこの喫煙、低い自尊心、育児又は生活ストレス、低い社会支援、不良な夫婦関係又は未婚、及び低い社会経済的地位に苦しんだことがある、経験したことがある、有する、又は有した。
【0026】
一実施形態では、方法は、PND又はPNAの少なくとも1つに以前に苦しんだことがある対象において、PND又はPNAの少なくとも1つの再発を予防するための方法であって、その必要がある対象に、有効量のHN001又はその派生物を投与することを含む方法である。
【0027】
一実施形態では、方法は、妊娠の第1三半期の後にHN001の投与を始めることを含む。一実施形態では、HN001の投与は、14~16週の妊娠期間の間に始まる。
【0028】
本発明はまた、個々に又はまとめて、本出願の明細書において言及される又は示されるパーツ、エレメント、及び特徴並びに任意の2つ又はそれ以上の前記パーツ、エレメント、又は特徴の任意の又はすべての組み合わせに基づいていると大まかに述べられてもよく、当技術分野において既知の等価物を有する特定の完全体が本明細書において記載される場合、そのような既知の等価物は、あたかも個々に示されるかのように本明細書に組み込まれると考えられる。
【0029】
本明細書において使用される用語「含むこと(comprising)」は、「少なくとも部分的になること(consisting at least in part of)」を意味する。用語「含むこと」を含む本明細書におけるそれぞれの説明を解釈する場合、その用語で始まる特徴(複数可)以外の特徴もまた存在してもよい。「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などのような関係する用語は、同じように解釈されるべきである。
【0030】
特許明細書、他の外部文書、又は他の情報源を参照した本明細書において、これは、概して、本発明の特徴について議論するための背景を提供するためのものである。特に別記しない限り、そのような外部文書への参照は、任意の管轄におけるそのような文献又はそのような情報源が先行技術となる又は当技術分野におけるありふれた一般知識の一部を形成することの許可として解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実施例の部において記載されるPIP研究において適格で、採用され、割り付けられた人数を示す図である。*女性は、妊娠合併症、母体の健康不良、早産、拒否、及び連絡をとることができなかった、を含む様々な理由で心理的な結果についての質問票を完了しなかった。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、PND又はPNAの少なくとも1つの罹病及び重症度に対する乳酸菌L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の投与の有益な効果を初めて認める。
【0033】
したがって、第1の態様では、本発明は、対象において、PND又はPNAの少なくとも1つを治療する又は予防するための方法であって、その必要がある対象への、1997年8月18日付けのラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001、AGAL委託番号NM97/09514又はその派生物の投与を含む方法を提供する。
【0034】
さらなる態様では、本発明はまた、対象において、PND及びPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症を治療する又は予防するための方法であって、その必要がある対象への、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001又はその派生物の投与を含む方法をも提供する。
【0035】
好ましい実施形態では、方法は、PND及びPNAの両方又はその関連するリスク若しくは続発症を治療する又は予防する。
【0036】
対象におけるPNDの少なくとも1つに関連する症状は、たとえば悲しみ、絶望、泣くというエピソード、低い自尊心、短気、罪悪感、困惑した感情、睡眠パターンの変化、摂食パターンの変化、慰めが効かない、疲労、むなしさ、通常楽しいと思う活動から楽しさを感じることができない、引きこもり、気力が低い又はない、不満を持ちやすい、乳児の世話が不適格だと感じる、性欲の減少、時々又は頻繁に不安になる、母親と乳児との正常なきずなを妨害する、を含むが、これらに限定されない。
【0037】
対象におけるPNAの少なくとも1つに関連する症状は、たとえば考えを支配し始める恐れ及び心配の感情、短気な感情、落ち着かない感情、緊張しているような感情、「いらいらした」感情、どきどきする心臓/強い動悸、パニック発作、再三発生する心配事、自制心を失った感情、自分が物事を正しく行っていないという感情、何か恐ろしいことが起こるだろうという感情、不眠、何か悪いことが起こらないように状況を回避することを含むが、これらに限定されない。
【0038】
胎児、新生児、乳児、子供、又は成人の対象(特に、生みの母親がPND及びPNAの少なくとも1つに苦しんでいる対象)におけるPND及びPNAの少なくとも1つに関連するリスク及び続発症は、たとえば、より高い割合の情動的問題、行動の問題、精神医学的診断(反抗挑戦性障害及び行為障害など)、並びに多動を含むが、これらに限定されない。
【0039】
投与の様々なルート及び方法が想定されるが、経口投与に適した組成物中のなどのようなL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の経口投与は、広く好まれる。当然のことながら、投与の他のルート及び方法が、ある状況において利用されてもよい又は好まれるかもしれないことが十分に理解されよう。たとえば、非経口ルートは、死滅させた又は弱毒化したL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はその派生物を含む組成物で利用されてもよい。
【0040】
用語「経口投与」は、経口、頬側、経腸、及び胃内投与を含む。
【0041】
用語「非経口投与」は、局所(任意の真皮、表皮、又は粘膜表面への投与を含む)、皮下、静脈内、腹腔内、及び筋肉内投与を含むが、これらに限定されない。
【0042】
「対象」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは哺乳動物である伴侶動物又はヒトである。好ましい伴侶動物は、ネコ、イヌ、及びウマを含む。一実施形態では、ヒトは、成人、好ましくは女性の成人、より好ましくは妊娠している女性の成人である。
【0043】
さらなる実施形態では、対象は、生まれた時に自分の子供を母乳で育てるつもりである。さらなる実施形態では、対象は、現在、自分の子供を母乳で育てている。
【0044】
一実施形態では、まだ生まれていない又は生まれた子供の父親は、喘息、花粉症、及び湿疹の少なくとも1つの病歴を有する。さらなる実施形態では、喘息、花粉症、及び湿疹の少なくとも1つは、投薬を必要とした。
【0045】
用語「治療する」及びその派生語は、できるだけ広範な意味合いで解釈されるべきである。この用語は、対象が、完全に回復するまで治療されることを暗示するように理解されるべきでない。したがって、「治療する」は、大まかに、特定の状態の症状の少なくとも1つの発症又は重症度の寛解及び/又は予防を含む。
【0046】
一実施形態では、PNDの治療又は予防は、産後うつ病のリスクを判断するために広く使用されるEdinburgh Postnatal Depression Scale(EPDS)スクリーニング質問票において、13未満、好ましくは12未満、より好ましくは11未満、より好ましくは10未満、より好ましくは9未満、より好ましくは8未満、より好ましくは7未満、より好ましくは6未満、より好ましくは5未満、より好ましくは4未満、より好ましくは3未満、より好ましくは2未満、より好ましくは1未満のスコアをもたらす(14)。
【0047】
さらなる実施形態では、PNDの治療又は予防は、不安のリスクを判断するために広く使用される、6項目の評価基準によりスクリーニング質問票として検証されるState Trait Anxiety Inventory 6 item version(STAI6)において、15未満、好ましくは14未満、より好ましくは13未満、より好ましくは12未満、より好ましくは11未満、より好ましくは10未満、より好ましくは9未満、より好ましくは8未満、より好ましくは7未満、より好ましくは6未満、より好ましくは5未満、より好ましくは4未満、より好ましくは3未満、より好ましくは2未満、より好ましくは1未満のスコアをもたらす(15)。
【0048】
State Trait Anxiety Inventory 6 item version(STAI6):STAI6は、より長いState Trait Anxiety Inventoryをベースとする不安スクリーニング質問票として検証される短い6項目の評価基準である(15)。スコア>15のカットオフを、臨床的に有意なレベルの不安の指標として使用した。
【0049】
治療は、たとえば、PND若しくはPNAの少なくとも1つのリスクの増加が予想される若しくは確立されている対象及び/又は妊娠しようとしている若しくは最近妊娠したばかりの対象などのような対象の予防的な治療又は胎児の対象の母親に組成物を投与することによる、本発明の組成物の間接的な投与による、胎児の対象における、PND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症の予防的な治療などのような予防的な治療を含むことが十分に理解されよう。
【0050】
別の実施例では、PND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症の予防的な治療は、対象の、母乳で育てている母親に組成物を投与することによる、本発明の組成物の間接的な投与による、新生児、乳児、又は子供の対象のためのものである。
【0051】
治療は、たとえば、PND及びPNAの少なくとも1つ又はPND及びPNAの少なくとも1つの1つ若しくは複数の症状又はそれに関連するリスクの治療などのような治療上の処置を含み、たとえば、対象の母親に組成物を投与することによる、本発明の組成物の間接的な投与による、新生児、乳児、又は子供の治療を含むことがさらに理解されるであろう。
【0052】
したがって、本発明は、妊娠している対象において、PND及びPNAの少なくとも1つを治療する又は予防するための方法であって、妊娠している対象への、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含む組成物の投与を含む方法を提供する。
【0053】
ある実施形態では、妊娠している対象は、35歳以上である。
【0054】
ある実施形態では、妊娠している対象は、PND及びPNAの少なくとも1つの病歴を有する。
【0055】
ある実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含む組成物は、14~16週の妊娠期間に分娩まで投与される。
【0056】
ある実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含む組成物は、14~16週の妊娠期間から分娩後6か月まで投与される。
【0057】
したがって、本発明は、胎児の対象における、PND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症を予防するための方法であって、対象の母親への、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含む組成物の投与を含む方法を提供する。
【0058】
新生児、乳児、又は子供の対象における、PND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症を治療する又は予防するための方法であって、対象の母親に、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含む組成物を投与することを含む方法もまた、提供される。
【0059】
L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001からなる又はそれから本質的になる組成物を投与することを含む、乳児又は子供の対象において、PND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症を治療するための方法もまた、想定される。
【0060】
ある実施形態では、乳児又は子供は、乳児又は子供の母親におけるPND又はPNAの少なくとも1つの前の罹病により、PND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症のリスクがあると考えられる。
【0061】
1 ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001
出願人のPCT国際出願PCT/NZ98/00122において記載されるように(国際公開第99/10476号パンフレットとして公開され、その全体が本明細書に組み込まれる)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001の冷凍乾燥培養物は、1997年8月18日にAustralian Government Analytical Laboratories (AGAL)、The New South Wales Regional Laboratory、1 Suakin Street、Pymble、NSW 2073、Australiaに委託され、委託番号NM97/09514が与えられた。ブダペスト条約によって認められたこの保管所は、今はもうAGALと呼ばれておらず、代わりに、National Measurement Institute of Australia(NMIA)と呼ばれている。L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001のゲノム配列は、受入番号:NZ_ABWJ00000000の下でGenebankで入手可能である。
【0062】
1.1 形態学的な特性
L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の形態学的な特性は、下記に記載される。
【0063】
鎖状の、端が角張った、短い~中程度の桿菌であり、MRSブロス中で成長させた場合、一般に0.7×1.1×2.0~4.0μmになる。
【0064】
グラム陽性、非移動性、非芽胞形成、カタラーゼ陰性条件的嫌気性桿菌で、最適な成長温度は37±1℃であり、最適なpHは6.0~6.5である。これらは、条件的ヘテロ発酵型細菌であり、グルコースからガスは産生されない。
【0065】
1.2 発酵の特性
API 50 CH糖発酵キットは、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の炭水化物発酵パターンを決定するために使用し、5757177のスコアがもたらされた(22の重要な糖のスコアに基づく-PCT/NZ98/00122を参照されたい)。
【0066】
1.3 さらなる特徴づけ
L.ラムノサス(L.rhamnosus)株HN001は、ヒト腸上皮細胞に付着するその能力を含むPCT/NZ98/00122において開示される機能的な特質によって並びに食細胞の機能における、抗体応答における、ナチュラルキラー細胞の活性における、及び食事の摂取によって又はインビトロモデル系において誘起されるリンパ球増殖における改善によって、さらに特徴づけられてもよい。L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の特徴を確認するために使用することができる、当業者に知られており、利用可能である種々様々の方法があり、例示的な方法は、DNAフィンガープリント法、ゲノム解析、シークエンシング、並びに関係のあるゲノム技術及びプロテオミクス技術を含むことが十分に理解されよう。
【0067】
本明細書において記載されるように、本発明のある実施形態は、生きているL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を利用する。他の実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の派生物が、利用される。
【0068】
本明細書において使用されるように、細菌に関して使用される場合の用語「派生物」及びその文法的な等価物は(L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001などのような細菌の特定の株に関しての使用を含む)、細菌の突然変異体及びホモログ又は細菌に由来する突然変異体及びホモログ、これらに限定されないが、熱により死滅させた、溶解した、分画した、圧力により死滅させた、照射した、及びUV又は光線により処理した細菌などのような、死滅させた又は弱毒化した細菌、並びに細菌細胞壁組成物、細菌細胞溶解物、凍結乾燥細菌、細菌由来のプロバイオティック因子、及びその他同種のものを含むが、これらに限定されない、細菌に由来する材料を想定し、派生物は、プロバイオティック活性を保持する。これらに限定されないが、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の1つ若しくは複数の突然変異体又は1つ若しくは複数のプロバイオティック因子などのようなそのような派生物及び特に、対象への投与に適した派生物(たとえば組成物において)を産生するための方法は、当技術分野においてよく知られている。
【0069】
上記に記載されるものなどのような、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を同定するのに適した方法は、同様に、たとえば、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の突然変異体若しくはホモログ又はたとえば、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001由来のプロバイオティック因子を含む、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の派生物を同定するのに適していることが十分に理解されよう。
【0070】
用語「プロバイオティック因子」は、細菌DNAモチーフ、表面タンパク質、小さな有機酸、多糖、若しくはリポタイコ酸及びペプチドグリカンなどのような細胞壁構成成分又はその任意の2つ若しくはそれ以上の混合物を含むが、これらに限定されない、プロバイオティック活性の媒介を担う細菌分子を指す。上記に言及されるように、これらの分子は、明確には同定されていないが、またあらゆる理論によって束縛されることを望むものではないが、プロバイオティック生物が存在すれば、そのような分子は、存在するであろう。
【0071】
用語「プロバイオティック活性」は、ある微生物が免疫系を刺激する能力を指す。プロバイオティック微生物の活性のタイプ及びレベルの測定は、当業者らに知られており、たとえばMercenier et al.(2004)、Leyer et al.(2004)、又はCummings et al.(2004)を参照されたい。たとえば、プロバイオティック活性は、PBMCサイトカイン分泌アッセイによって判断されてもよい。
【0072】
プロバイオティック活性の保持への言及は、プロバイオティック微生物の突然変異体若しくはホモログ又は弱毒化された若しくは死滅させたプロバイオティック微生物などのようなプロバイオティック微生物の派生物が、有用なプロバイオティック活性をまだ有していること又はプロバイオティック微生物若しくはその派生物を含む組成物が、有用なプロバイオティック活性の維持を支持することができることを意味することが意図される。プロバイオティック活性の媒介を担う細菌分子は明確には同定されていないが、可能性のある候補として提案される分子は、細菌DNAモチーフ、表面タンパク質、小さな有機酸、多糖、並びにリポタイコ酸及びペプチドグリカンなどのような細胞壁構成成分を含む。これらが宿主免疫系の構成成分と相互作用して、免疫調節性の効果をもたらすことが仮定された。好ましくは、保持される活性は、未処理(すなわち生きている又は非弱毒化)コントロールの活性の少なくとも約35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、又は100%であり、有効範囲は、これらの値のいずれかの間で選択されてもよい(たとえば約35~約100%、約50~約100%、約60~約100%、約70~約100%、約80~約100%、及び約90~約100%)。
【0073】
当技術分野においてよく知られている従来の固体基質発酵技術及び液体発酵技術を使用すると、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001は、本明細書において想定されるような使用を可能にするのに十分な量で成長させることができる。たとえば、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001は、たとえば国際公開第99/10476号パンフレットにおいて記載されるような条件下で、栄養薄膜又は液中培養成長技術を使用し、調合のために大量に産生することができる。手短に言えば、成長は、生物の成長に十分な任意の温度で好気性条件下で達成される。たとえば、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001については、30~40℃の温度範囲、好ましくは37℃が、好ましい。成長培地のpHは、弱酸性であり、好ましくは約6.0~6.5である。インキュベーション時間は、分離物が定常期に達するのに十分な時間である。
【0074】
L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001細胞は、当技術分野においてよく知られている方法によって、たとえば、従来のろ過若しくは沈降法(たとえば遠心分離法)によって回収されてもよい又はサイクロンシステムを使用して乾燥した状態で回収されてもよい。L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001細胞は、すぐに使用する又は標準的な技術を使用して必要とされる時間、保存することができる、好ましくは、-20℃~6℃、好ましくは-4℃で冷凍乾燥する又は冷却することができる。
【0075】
2 組成物
本明細書において有用な組成物は、食物、飲料、食品添加物、飲料添加物、健康補助食品、栄養製品、医療食品、経腸若しくは非経口栄養製品、食事代替品、美容食品、栄養機能食品、又は医薬品として調合されてもよい。適切な調合物は、その能力及び本明細書の教示を考慮して、当業者によって調製されてもよい。
【0076】
一実施形態では、本明細書において有用な組成物は、細菌又は細菌派生物を保持することができる任意の食用の消費者製品を含む。適した食用の消費者製品の例は、粉末、液体、チョコレート、ゼリー状のもの、アイスクリーム、再構成果実製品、棒状のスナック、棒状の食物、棒状のミューズリー、スプレッド、ソース、ディップを含む菓子製品、ヨーグルト及びチーズを含む酪農製品、乳製品ベースの及び乳製品ベースではない飲料(乳飲料及びヨーグルト飲料など)、粉乳を含む飲料、乳製品ベースの及び乳製品ベースではないスポーツサプリメントを含むスポーツサプリメント、プロテインスプリンクルなどのような食品添加物、毎日のサプリメント錠剤、離乳食、及びヨーグルトを含む栄養補助製品、並びに粉末又は液体の形態をした、母体調合乳などのような調合乳を含み、そのような組成物を低アレルギー性にしたものを含む。この実施形態の範囲内で、本明細書において有用な好ましい組成物は、粉末又は液体の形態をした母体調合乳であってもよい。本明細書において有用な適した栄養補強食品組成物は、類似する形態で提供されてもよい。
【0077】
粉末又は液体の形態をした母体調合乳などのような調合乳の例は、以下のものを含む。以下の調合物は、暗示に過ぎず、そのような製品を調合するための知られている原理に従って変更がなされてもよいことが理解されるべきである。たとえば、乳製品を含まない、タンパク質の供給源は、列挙される乳製品タンパク質が補足されてもよい。同様に、これらの製品を低アレルギー性にしたものが、提供されてもよく、タンパク質供給源は、完全に又は部分的に加水分解されている。そのような加水分解産物は、当技術分野において知られている。本明細書において有用な母体調合乳の一例は、
30~60%のラクトース
15~35%の植物油
0~40%の脱脂粉乳
WPC又はWPIなどのような0~40%の乳漿蛋白、好ましくは80%のWPC(WPC80)
0.001~50%のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001
を含む(w/w)。
【0078】
本明細書において有用な母体調合乳の別の例は、
40~60%のラクトース
20~30%の植物油
10~15%の脱脂粉乳
6~8%の乳漿蛋白、好ましくはWPC80
0.001~10%のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001
を含む(w/w)。
【0079】
本明細書における母体調合乳の別の例は、
40~60%のラクトース
20~30%の植物油
10~15%の脱脂粉乳
6~8%の乳漿蛋白、好ましくはWPC80
0.001~5%のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001
を含む(w/w)。
【0080】
本明細書において有用な母体調合乳の別の例は、
40~60%のラクトース
20~30%の植物油
10~15%の脱脂粉乳
6~8%の乳漿蛋白、好ましくはWPC80
0.001~2%のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001
を含む(w/w)。
【0081】
これらの調合乳のいずれも、0.1~4%w/w、好ましくは2~4%w/wの1つ又は複数のビタミンプレミックス、ミネラルプレミックス、レシチン、1つ若しくは複数の酸化防止剤、1つ若しくは複数の安定剤、又は1つ若しくは複数のヌクレオチド又はその任意の2つ若しくはそれ以上の組み合わせを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、これらの調製粉乳は、2700~3000kJ/Lの間を提供するように調合されてもよい。
【0082】
乳製品ベースの飲料(乳飲料及びヨーグルト飲料など)などのような本発明の食用の消費者製品の例は、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はその派生物に加えて、タンパク質供給源(乳製品タンパク質供給源など)、脂質供給源、炭水化物供給源を典型的に含むであろう、またそれからなってもよい。当業者らによく知られている香料、着色料、及び他の添加物、キャリヤ、又は賦形剤もまた、含まれていてもよい。
【0083】
本発明において使用するのに適用可能な食用の消費者製品のさらなる例は、PCT国際出願PCT/AU2007/000265(国際公開第2007/098564号パンフレットとして公開される)及びPCT国際出願PCT/AU2007/001698(国際公開第2008/055296号パンフレットとして公開される)において記載されるUnistraw(商標)送達システム(Unistraw International Limited、Australia)であり、それぞれその全体が本明細書に組み込まれる。L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001及びその派生物は、任意選択で1つ又は複数のさらなるプロバイオティック因子又はプロバイオティック剤と一緒に、そのような送達システムにおいて使用するための基質(たとえば水溶性のビーズ)上にコーティングされてもよいことが当業者らによって十分に理解されよう。
【0084】
代替の実施形態では、本明細書において有用な組成物は、経口又は非経口(局所、皮下、筋肉内、及び静脈内)投与を含むが、これらに限定されない、任意の選ばれたルートによる対象への投与を可能にするように調合されてもよい。
【0085】
たとえば、本発明による使用のための栄養補強食品組成物は、健康補助食品(たとえばカプセル、ミニバッグ(mini-bag)、若しくは錠剤)又は食品(たとえばミルク、ジュース、ソフトドリンク、ハーブティーバッグ、若しくは菓子)とすることができる。組成物はまた、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、又はアミノ酸などのような他の栄養素を含むこともできる。組成物は、錠剤、ハード若しくはソフトカプセル、水性若しくは油懸濁剤、又はシロップなどのような経口使用に適した形態を取ることができる又は水性プロピレングリコール溶液若しくは緩衝水溶液などのような非経口使用に適した形態を取ることができる。栄養補強食品組成物における活性成分の量は、対象の特定の必要性に大いに依存する。量はまた、当業者らによって認識されるように、投与ルート及び他のプロバイオティック因子又はプロバイオティック剤の可能性のある同時の使用にも依存して変動する。
【0086】
ある実施形態では、本発明の組成物は、所望のカロリーの内容物を有するように、たとえば、所望のエネルギー量又は毎日の推奨エネルギー摂取量のうちの所望のパーセンテージを送達するように、調合されてもよいことが、十分に理解されよう。たとえば、食用の消費者製品は、1回のサーブ当たり約200~約2000kJ又は1回のサーブ当たり約500kJ~約2000kJ又は1回のサーブ当たり約1000~約2000kJを提供するように調合されてもよい。
【0087】
したがって、本発明による有用な医薬組成物は、意図される投与ルート及び標準的な薬務を考慮して選択される適切な薬学的に許容され得るキャリヤ(賦形剤、希釈剤、助剤、及びその組み合わせを含む)と共に調合されてもよい。たとえば、本発明による有用な組成物は、粉末、液体、錠剤、若しくはカプセルとして経口的に又は軟膏、クリーム、若しくはローションとして局所的に投与することができる。適した調合物は、乳化剤、酸化防止剤、調味料、又は着色剤を含む、必要に応じたさらなる薬剤を含有してもよく、即時、遅延、調整、持続、パルス、又は制御放出に適していてもよい。
【0088】
用語「薬学的に許容され得るキャリヤ」は、賦形剤、希釈剤、又は助剤を含むが、これらに限定されないキャリヤを指すことが意図され、薬学的に許容され得るキャリヤは、組成物の活性を低下させず、かつ本明細書において有用な化合物又は組成物の有効量を送達するのに十分な用量で投与された場合に毒性ではない、本明細書において記載される組成物の構成成分として対象に投与することができる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、並びに等張剤及び吸収遅延剤又はその組み合わせを含む。調合物は、経口的に、経鼻的に、又は非経口的に(局所的に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、及び静脈内に、を含む)投与することができる。
【0089】
ある実施形態では、本発明の組成物(たとえば、本発明の栄養補強食品組成物又は医薬組成物などは、カプセルとして提供されてもよい。カプセルは、ゼラチン又はセルロースなどのような、任意の標準的な薬学的に許容され得る材料を含有することができる。錠剤は、固体のキャリヤ及び潤滑剤と活性成分の混合物を圧縮することによって、従来の手順に従って調合することができる。固体のキャリヤの例は、デンプン及び糖ベントナイトを含む。活性成分はまた、バインダー、たとえばラクトース又はマンニトール、従来の増量剤、及び成形剤を含有するハードシェル錠剤又はカプセルの形態で投与することもできる。医薬組成物はまた、非経口ルートを介して投与することもできる。非経口投薬形態の例は、水溶液、活性薬剤の等張食塩水若しくは5%グルコース、又は他のよく知られている薬学的に許容され得る賦形剤を含む。シクロデキストリン又は当業者らによく知られている他の可溶剤は、治療剤の送達のための賦形剤として利用することができる。
【0090】
ある実施形態では、本発明の組成物は、生きているL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含む。そのような組成物を産生するための方法は、当技術分野においてよく知られており、そのような1つの方法は、実施例において本明細書において例証される。
【0091】
他の実施形態では、本発明の組成物は、1つ又は複数のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の派生物を含む。さらにまた、そのような組成物を産生する方法は、当技術分野においてよく知られており、標準的な微生物学的及び薬学的手法を利用してもよい。
【0092】
様々な添加物又はキャリヤは、たとえば、細菌生存率を改善する若しくは保つために又はL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又は1つ若しくは複数のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001派生物の治療上の効能を増加させるために、そのような組成物中に含まれていてもよいことが十分に理解されよう。たとえば、界面活性剤、湿潤剤、保湿剤、固着剤、分散剤、安定剤、浸透剤、並びに細菌細胞生長力、成長、複製、及び残存力を改善するためのいわゆるストレス性添加物(stressing additive)(塩化カリウム、グリセロール、塩化ナトリウム、及びグルコースなど)並びにマルトデキストリンなどのような凍結防止剤などのような添加物が、含まれてもよい。添加物はまた、長期保存において微生物生存率を維持するのを助ける組成物、たとえば未精製のトウモロコシ油又は油及びワックスの混合物を外側に、水、アルギン酸ナトリウム、及び細菌を内側に含有する「逆」エマルションを含んでいてもよい。
【0093】
ある実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001は、増殖可能な形態をしており、かつ増殖可能な量がある。
【0094】
組成物は、たとえばスクロース、フルクトース、グルコース、又はデキストロースを含む二糖などのような炭水化物供給源を含んでいてもよい。好ましくは、炭水化物供給源は、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001によって好気的に又は嫌気的に利用することができるものである。
【0095】
そのような実施形態では、組成物は、好ましくは、約2週間超、好ましくは約1か月、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月超、より好ましくは約6か月超、最も好ましくは少なくとも約2年~約3年以上の期間の間、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の増殖能力を支持することができる。
【0096】
ある実施形態では、PND若しくはPNAの少なくとも1つ又はPND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症を治療する又は予防するための組成物は、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含むプロバイオティック並びにプレバイオティクス、たとえばフラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ヒトミルクオリゴ糖、及びその組み合わせを含む。
【0097】
別の実施形態では、対象において、PND若しくはPNAの少なくとも1つ又はPND又はPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその1つ若しくは複数の続発症を治療する及び予防するための方法は、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001並びにプレバイオティクス、たとえばフラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ヒトミルクオリゴ糖、及びその組み合わせを含む組成物の有効量を個人に投与することを含む。ある実施形態では、経口組成物は、摂取された場合に対象の胃腸管において集団を確立するのに十分な量のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の投与を可能にするように調合される。確立された集団は、一時的な又は永続的な集団であってもよい。
【0098】
理論的には、1コロニー形成単位(cfu)が、対象においてL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の集団を確立するのに十分であるべきであるが、実際の状況では、最小限の単位が、そうするために必要とされる。そのため、プロバイオティック細菌の生存可能な活発な集団を頼りにする治療上のメカニズムのために、対象に投与された単位の数が、治療上の効能に影響を与えるであろう。
【0099】
実施例において本明細書において示されるように、出願人らは、1日当たり6×10cfu L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の投薬速度が、ヒト対象の胃腸管において集団を確立するのに十分である(が、必要でなくてもよい)ことを決定した。したがって、一実施例では、投与のために調合される組成物は、1日当たり少なくとも約6×10cfu L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を提供するのに十分であろう。
【0100】
対象の胃腸管におけるL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001などのような腸管内菌叢の集団の存在を決定するための方法は、当技術分野においてよく知られており、そのような方法の例は、本明細書において提供される。ある実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の集団の存在は、たとえば、対象から得られた1つ又は複数のサンプルを分析し、前記サンプルにおけるL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の存在又は量を決定することによって、直接決定することができる。他の実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の集団の存在は、たとえば、PND及びPNAの少なくとも1つの症状における低下又は対象から得られたサンプルにおける他の腸管内菌叢の数の減少を観察することによって、間接的に決定することができる。そのような方法の組み合わせもまた、想定される。
【0101】
本発明による有用な組成物の効能は、インビトロ及びインビボの両方で評価することができる。たとえば、下記の実施例を参照されたい。手短に言えば、組成物は、PND及びPNAの少なくとも1つを予防する又は治療するその能力について試験することができる。インビボにおける研究については、組成物は、動物モデル(たとえばマウス)に給餌する若しくは注射する又はヒト対象(妊婦を含む)に投与することができ、PND及びPNA並びに関連する状態の少なくとも1つの罹病及び重症度に対するその効果が、次いで、判断される。結果に基づいて、適切な投薬範囲及び投与ルートを決定することができる。
【0102】
適切な用量を計算する方法は、組成物中の活性薬剤の性質に依存してもよい。たとえば、組成物が、生きているL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含む場合、用量は、存在する生きている細菌の数に関して計算されてもよい。たとえば、ここで記載されるように、本実施例において、用量は、1日当たりに投与されることになっているコロニー形成単位(cfu)の数に関して確立されてもよい。組成物が1つ又は複数のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001派生物を含む実施例では、用量は、存在するL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001派生物の量又は濃度に関して計算されてもよい。たとえば、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001細胞溶解物を含む組成物については、用量は、組成物中に存在するL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001細胞溶解物の濃度に関して計算されてもよい。
【0103】
一般的な例として、1日当たり体重1kg当たり約1×10cfu~約1×1012cfuのL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001、好ましくは約1×10cfu~約1×1011cfu/kg/日、約1×10cfu~約1×1010cfu/kg/日、約1×10cfu~約1×10cfu/kg/日、約1×10cfu~約1×10cfu/kg/日、約1×10cfu~約5×10cfu/kg/日、又は約1×10cfu~約1×10cfu/kg/日の投与が、想定される。好ましくは、1日当たり体重1kg当たり約5×10cfu~約5×10cfuのL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001、好ましくは約5×10cfu~約4×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約3×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約2×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約1×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約9×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約8×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約7×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約6×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約5×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約4×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約3×10cfu/kg/日、約5×10cfu~約2×10cfu/kg/日、又は約5×10cfu~約1×10cfu/kg/日の投与が、想定される。
【0104】
ある実施形態では、定期的な用量は、対象の体重又は他の特徴によって変動させる必要はない。そのような実施例では、1日当たり約1×10cfu~約1×1013cfuのL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001、好ましくは約1×10cfu~約1×1012cfu/日、約1×10cfu~約1×1011cfu/日、約1×10cfu~約1×1010cfu/日、約1×10cfu~約1×10cfu/日、約1×10cfu~約1×10cfu/日、約1×10cfu~約5×10cfu/日、又は約1×10cfu~約1×10cfu/日の投与が、想定される。好ましくは、1日当たり体重1kg当たり約5×10cfu~約5×1010cfuのL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001、好ましくは約5×10cfu~約4×1010cfu/日、約5×10cfu~約3×1010cfu/日、約5×10cfu~約2×1010cfu/日、約5×10cfu~約1×1010cfu/日、約5×10cfu~約9×10cfu/日、約5×10cfu~約8×10cfu/日、約5×10cfu~約7×10cfu/日、約5×10cfu~約6×10cfu/日、約5×10cfu~約5×10cfu/日、約5×10cfu~約4×10cfu/日、約5×10cfu~約3×10cfu/日、約5×10cfu~約2×10cfu/日、又は約5×10cfu~約1×10cfu/日の投与が、想定される。
【0105】
たとえば、実施例において本明細書において示されるように、冷凍乾燥L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の効果的な用量は、1日当たり6×10cfuであることが決定された。
【0106】
組成物は、好ましくは、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はその1つ若しくは複数の派生物の効果的な用量の投与を可能にするように調合されることが、十分に理解されよう。投与される組成物の用量、投与の期間、及び一般的な投与プログラムは、対象の症状の重症度、治療されることになる障害のタイプ、選ばれる投与のモード、並びに対象の年齢、性別、及び/又は全身の健康状態のような変動要素に依存して、対象間で異なっていてもよい。さらに、上記に記載されるように、適切な用量は、組成物中の活性薬剤の性質及び調合の方法に依存してもよい。たとえば、組成物が、生きているL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を含む場合、用量は、存在する生きている細菌の数に関して計算されてもよい。たとえば、実施例において本明細書において記載されるように、用量は、1日当たりに投与されることになっているコロニー形成単位(cfu)の数に関して確立されてもよい。組成物が1つ又は複数のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001派生物を含む実施例では、用量は、1日当たり投与されることになっているL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001派生物の量又は濃度に関して計算されてもよい。たとえば、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001細胞溶解物を含む組成物については、用量は、組成物中に存在するL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001細胞溶解物の濃度に関して計算されてもよい。
【0107】
好ましい組成物は、好都合な形態及び量で効果的な用量を提供するように調合されることが十分に理解されるであろう。これらに限定されないが、定期的な用量を、対象の体重又は他の特徴によって変動させる必要がない実施形態などのようなある実施形態では、組成物は、単位投薬のために調合されてもよい。投与は、必要に応じて、1日1回の用量又は多くの個別の分割用量の投与を含んでいてもよいことが理解されるべきである。たとえば、実施例において本明細書において示されるように、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の効果的な用量は、経口投与のためのカプセルの中に調合されてもよい。
【0108】
しかしながら、一般的な例として、本発明者らは、1日当たり体重1kg当たり約1mg~約1000mgの本明細書において有用な組成物、好ましくは1日当たり1kg当たり約50~約500mg、代替的に約150~約410mg/kg/日、又は約110~約310mg/kg/日の投与を想定する。一実施形態では、本発明者らは、体重1kg当たり約0.05mg~約250mgの本明細書において有用な組成物の投与を想定する。
【0109】
調製粉乳、フォローアップ調合乳、又は乳児用調合乳の例が、本明細書において示される。これらなどの組成物は、組成物中に存在するL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の濃度が、容易に測定可能な量の組成物を使用して効果的な用量を調製することができるようなものとなるように、調合されてもよい。たとえば、たとえば組成物が調製粉乳である実施形態などのようなある実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001は、たとえば計量スプーン又は調製粉乳と共によく提供される類似物などで、投与のための調合乳を調製する場合に親又は介護者によって容易に測定することができる調合乳の量で、効果的な用量を供給するのに十分な濃度で提供される。そのような組成物において使用するためのL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001の例示的な非限定的な濃度は、1グラム当たり約5×10cfuの調合乳~1グラム当たり約10cfuの調合乳又は1グラム当たり約10cfuの調合乳~1グラム当たり約10cfuの調合乳を含む。
【0110】
一実施形態では、本明細書において有用な組成物は、少なくとも約0.1、0.2、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、99.5、99.8、又は99.9重量%のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はその派生物を含み、から本質的になり、又はからなり、有効範囲は、これらの前述の値のいずれかの間で選択されてもよい(たとえば約0.1~約50%、約0.2~約50%、約0.5~約50%、約1~約50%、約5~約50%、約10~約50%、約15~約50%、約20~約50%、約25~約50%、約30~約50%、約35~約50%、約40~約50%、約45~約50%、約0.1~約60%、約0.2~約60%、約0.5~約60%、約1~約60%、約5~約60%、約10~約60%、約15~約60%、約20~約60%、約25~約60%、約30~約60%、約35~約60%、約40~約60%、約45~約60%、約0.1~約70%、約0.2~約70%、約0.5~約70%、約1~約70%、約5~約70%、約10~約70%、約15~約70%、約20~約70%、約25~約70%、約30~約70%、約35~約70%、約40~約70%、約45~約70%、約0.1~約80%、約0.2~約80%、約0.5~約80%、約1~約80%、約5~約80%、約10~約80%、約15~約80%、約20~約80%、約25~約80%、約30~約80%、約35~約80%、約40~約80%、約45~約80%、約0.1~約90%、約0.2~約90%、約0.5~約90%、約1~約90%、約5~約90%、約10~約90%、約15~約90%、約20~約90%、約25~約90%、約30~約90%、約35~約90%、約40~約90%、約45~約90%、約0.1~約99%、約0.2~約99%、約0.5~約99%、約1~約99%、約5~約99%、約10~約99%、約15~約99%、約20~約99%、約25~約99%、約30~約99%、約35~約99%、約40~約99%、及び約45~約99%)。
【0111】
一実施形態では、本明細書において有用な組成物は、少なくとも約0.001、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19グラムのL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はその派生物を含み、から本質的になり、又はからなり、有効範囲は、これらの前述の値のいずれかの間で選択されてもよい(たとえば約0.01~約1グラム、約0.01~約10グラム、約0.01~約19グラム、約0.1~約1グラム、約0.1~約10グラム、約0.1~約19グラム、約1~約5グラム、約1~約10グラム、約1~約19グラム、約5~約10グラム、及び約5~約19グラム)。
【0112】
一実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はその派生物を含む本明細書において有用な組成物は、そのうえ、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99、又は99.9重量%の新鮮な全乳又はミルク派生物を含み、有効範囲は、これらの前述の値のいずれかの間で選択されてもよい(たとえば約0.1~約50%、約0.2~約50%、約0.5~約50%、約1~約50%、約5~約50%、約10~約50%、約15~約50%、約20~約50%、約25~約50%、約30~約50%、約35~約50%、約40~約50%、及び約45~約50%)。ミルク派生物は、好ましくは、還元、粉末状、又は新鮮なスキムミルク、還元又は再構成全粉乳又は脱脂粉乳、スキムミルク濃縮物、スキムミルク残余分(retentate)、濃縮乳、限外ろ過されたミルク残余分、乳タンパク質濃縮物(MPC)、乳タンパク質分離物(MPI)、カルシウムを排除した乳タンパク質濃縮物(MPC)、低脂肪乳、低脂肪乳タンパク質濃縮物(MPC)、カゼイン、カゼイネート、乳脂肪、クリーム、バター、ギー、無水乳脂肪(AMF)、バターミルク、バターセラム、ベータセラム、硬い乳脂肪画分、軟かい乳脂肪画分、スフィンゴ脂質画分、乳脂肪球皮膜画分、乳脂肪球皮膜脂質画分、リン脂質画分、複合脂質画分、初乳、初乳画分、初乳タンパク質濃縮物(CPC)、初乳ホエー、初乳由来の免疫グロブリン画分、ホエー(スイートホエー、乳酸ホエー、鉱酸ホエー、又は再構成ホエー粉末を含む)、乳漿蛋白分離物(WPI)、乳漿蛋白濃縮物(WPC)、任意のミルク又は初乳処理ストリームに由来する組成物、任意のミルク又は初乳処理ストリームの限外ろ過又は精密濾過によって得られる残余分又は浸透液に由来する組成物、任意のミルク又は初乳処理ストリームのクロマトグラフ(イオン及びゲル透過クロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない)分離によって得られるブレークスルー又は吸着画分に由来する組成物、多段分画、微分結晶化、溶媒分画、超臨界分画、臨界点近くでの分画、蒸留、遠心分画、又はモディファイヤー(たとえばセッケン若しくは乳化剤)による分画によって調製される抽出物を含む、これらのミルク派生物のいずれかの抽出物、これらの派生物のいずれかの加水分解産物、加水分解産物の画分、並びに加水分解された及び/又は加水分解されていない画分の組み合わせを含む、任意の2つ又はそれ以上のこれらの派生物の任意の組み合わせから選択される。これらの派生物の供給源は、ミルク又は初乳又はその組み合わせであってもよいことが理解されるべきである。
【0113】
投与のために調合される組成物中のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又は1つ若しくは複数のその派生物の濃度は、たとえば配送又は保存のために調合される組成物中の濃度未満であってもよく、保存及び投与に適した組成物への続く調合のために調合される組成物の濃度は、投与のための前記組成物が、治療的に効果的な用量で投与することができるように、さらに十分に濃縮されるのを可能にするのに適切でなければならないことは明らかであろう。
【0114】
本明細書において有用な組成物は、単独で又は1つ若しくは複数の他の治療剤と組み合わせて使用されてもよい。治療剤は、食物、飲料、食品添加物、飲料添加物、食物構成成分、飲料構成成分、健康補助食品、栄養製品、医療食品、栄養機能食品、医薬、又は医薬品であってもよい。治療剤は、プロバイオティック剤又はプロバイオティック因子であってもよく、好ましくは、PND及びPNAの少なくとも1つ又はPND及びPNAの少なくとも1つの1つ若しくは複数の症状又はPND及びPNAの少なくとも1つに関連する1つ若しくは複数のリスク又はその続発症を治療する、予防する、又は減弱するのに有効である。
【0115】
別の治療剤と組み合わせて使用される場合、本明細書において有用な組成物及び別の治療剤の投与は、同時又は連続であってもよい。同時の投与は、構成成分をすべて含む単一の投薬形態の投与又は別々の投薬形態の実質的に同時の投与を含む。連続の投与は、好ましくは、本明細書において有用な組成物及び他の治療剤が提供される期間が重複するような異なるスケジュールによる投与を含む。
【0116】
本明細書において有用な組成物を別々に、同時に、又は連続して投与することができる適した薬剤は、1つ又は複数のプロバイオティック剤、1つ又は複数のプレバイオティクス剤、1つ又は複数のリン脂質、1つ又は複数のガングリオシド、当技術分野において知られている他の適した薬剤、及びその組み合わせを含む。有用なプレバイオティクスは、ガラクトオリゴ糖(GOS)、短鎖GOS、長鎖GOS、フラクトオリゴ糖(FOS)、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)、短鎖FOS、長鎖FOS、イヌリン、ガラクタン、フルクタン、ラクツロース、及びその任意の2つ又はそれ以上の任意の混合物を含む。いくつかのプレバイオティクスは、参照によって本明細書に組み込まれるBoehm G and Moro G(Structural and Functional Aspects of Prebiotics Used in Infant Nutrition,J.Nutr.(2008)138(9):1818S-1828S)によって概説される。他の有用な薬剤は、完全に又は部分的に不溶性の又は消化しにくい食物繊維などのような食物繊維を含んでいてもよい。したがって、一実施形態では、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001又はその派生物は、1つ若しくは複数のプロバイオティックス、1つ若しくは複数のプレバイオティクス、食物繊維の1つ若しくは複数の供給源、1つ若しくは複数のガラクトオリゴ糖、1つ若しくは複数の短鎖ガラクトオリゴ糖、1つ若しくは複数の長鎖ガラクトオリゴ糖、1つ若しくは複数のフラクトオリゴ糖、1つ若しくは複数の短鎖ガラクトオリゴ糖、1つ若しくは複数の長鎖ガラクトオリゴ糖、1つ若しくは複数のヒトミルクオリゴ糖、イヌリン、1つ若しくは複数のガラクタン、1つ若しくは複数のフルクタン、ラクツロース、又はその任意の2つ若しくはそれ以上の任意の混合物から選択される1つ又は複数の薬剤と別々に、同時に、又は連続して投与されてもよい。
【0117】
一実施形態では、本明細書において有用な組成物は、乳漿蛋白、乳漿蛋白画分(酸性若しくは塩基性乳漿蛋白画分又はその組み合わせを含む)、グリコマクロペプチド、ラクトフェリン、鉄-ラクトフェリン、機能的ラクトフェリン変異体、機能的ラクトフェリン断片、ビタミンD、若しくはカルシウム又はその組み合わせなどのようなミルク構成成分を含む又はそれと同時に若しくは連続して投与される。有用なミルク構成成分含有組成物は、食物、飲料、食品添加物、飲料添加物、健康補助食品、栄養製品、医療食品、又は栄養補強食品などのような組成物を含む。これらの構成成分が豊富なミルク画分もまた、用いられてもよい。有用なラクトフェリン、断片、及び組成物は、全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第03/082921号パンフレット及び国際公開第2007/043900号パンフレットにおいて記載される。
【0118】
上記に列挙されるさらなる治療剤(食物ベースの薬剤及び医薬品の薬剤の両方)はまた、それらが、本明細書において有用な組成物と別々に、同時に、又は連続して投与される本発明による方法において用いられてもよいことが理解されるべきである。
【0119】
一実施形態では、本明細書において有用な組成物は、薬学的に許容され得るキャリヤをさらに含む。別の実施形態では、組成物は、食物、飲料、食品添加物、飲料添加物、健康補助食品、栄養製品、医療食品、経腸栄養製品、非経口栄養製品、食事代替品、美容食品、栄養機能食品、医薬、又は医薬品である又はとして調合される。一実施形態では、組成物は、錠剤、カプレット、丸剤、ハード若しくはソフトカプセル、又はロゼンジの形態をしている。一実施形態では、組成物は、カシェ剤、粉末、分配可能な(dispensable)粉末、顆粒剤、懸濁剤、エリキシル剤、液体の形態又はたとえば水、ミルク、若しくはフルーツジュースを含む、食物若しくは飲料に追加することができる任意の他の形態をしている。一実施形態では、組成物は、保存の間の又は投与の後の組成物の分解を予防する又は低下させる1つ又は複数の構成要素(酸化防止剤など)をさらに含む。これらの組成物は、熱により死滅させた、圧力により死滅させた、溶解した、UV若しくは光線により処理した、照射した、分画した、又はそうでなければ死滅させた若しくは弱毒化した細菌を含む細菌又は細菌派生物を保持することができる任意の食用の消費者製品を含んでいてもよい。適した食用の消費者製品の例は、水性の製品、焼いた食べ物、チョコレート、ゼリー状のもの、アイスクリーム、再構成果実製品、棒状のスナック、棒状の食物、棒状のミューズリー、スプレッド、ソース、ディップを含む菓子製品、ヨーグルト及びチーズを含む酪農製品、乳製品ベースの及び乳製品ベースではない飲料、ミルク、粉乳を含む飲料、乳製品ベースの及び乳製品ベースではないスポーツサプリメントを含むスポーツサプリメント、フルーツジュース、プロテインスプリンクルなどのような食品添加物、毎日のサプリメント錠剤、離乳食、及びヨーグルトを含む栄養補助製品、並びに粉末又は液体の形態をした調製粉乳、フォローアップ調合乳、又は乳児用調合乳などのような調合乳を含む。本明細書において有用な適した栄養補強食品組成物は、類似する形態で提供されてもよい。
【0120】
本発明の様々な組成物は、特定の対象群への投与のために調合されてもよいことが十分に理解されよう。たとえば、妊娠している母親に投与するのに(たとえば、胎児の対象への又は母乳育ちの新生児、乳児、若しくは子供の対象への間接的な投与に)適した組成物の調合は、対象に直接投与されることになる組成物の調合と異なっていてもよい。予防的に投与されることになる組成物の調合は、PND及びPNAの少なくとも1つ又はPND及びPNAの少なくとも1つの1つ若しくは複数の症状が存在するようになると投与するために調合される組成物の調合と異なっていてもよいこともまた、理解されるべきである。
【0121】
一実施形態では、予防的な使用のための組成物は、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)GG、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(たとえばラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(LAVRI-A1)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(たとえばラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATCC 55730)、又はビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteria lactis)(たとえばビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteria lactis)株HN019若しくはビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteria lactis)株BB12)又はその任意の2つ若しくはそれ以上の組み合わせなどのようなプロバイオティック剤をさらに含んでいてもよい又はL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001は、それと組み合わせて使用されてもよい。
【0122】
一実施形態では、予防的な投与、特に予防的な間接的投与のための組成物は、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)GG、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(たとえばラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(LAVRI-A1)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(たとえばラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATCC55730)、又はビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteria lactis)(たとえばビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteria lactis)株HN019若しくはビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteria lactis)株BB12)又はその任意の2つ若しくはそれ以上の組み合わせなどのようなプロバイオティック剤をさらに含んでいてもよい又はL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001は、それと組み合わせて使用されてもよい。
【0123】
本明細書において使用される用語「予防的な」及び文法的な等価物は、PND及びPNAの少なくとも1つ又はPND及びPNAの少なくとも1つの症状が明らかになる前の治療、使用、投与、及びその他同種のものを想定することが理解されよう。
【0124】
PND及びPNAの少なくとも1つ又はPND及びPNAの少なくとも1つ若しくは複数の症状を有する対象の治療において使用するための実施形態では、組成物は、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)GG、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(たとえばラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(LAVRI-A1)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(たとえばラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATCC55730)、又はビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteria lactis)(たとえばビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteria lactis)株HN019若しくはビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteria lactis)株BB12)又はその任意の2つ若しくはそれ以上の組み合わせなどのようなプロバイオティック剤をさらに含んでいてもよい又はL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001は、それと組み合わせて使用されてもよい。
【0125】
本明細書において使用されるように、用語「治療上の」及び文法的な等価物は、PND及びPNAの少なくとも1つ又はその症状が存在する治療、使用、又は投与を想定する。
【0126】
本明細書において開示される一連の数への言及(たとえば1~10)は、その範囲内のすべての有理数(たとえば1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)並びにさらに、その範囲内の有理数の任意の範囲(たとえば2~8、1.5~5.5、及び3.1~4.7)への言及を組み込み、そのため、本明細書において明確に開示されるすべての範囲のすべての部分範囲が、これによって明確に開示されることが意図される。これらは、特に意図されることの例に過ぎず、挙げられる最も低い値~最も高い値の間の数値のすべての可能性のある組み合わせは、同様に、本出願において明確に述べられていると見なされる。
【0127】
3 産後うつ病(PND)
産後抑鬱(PPD)とも呼ばれる産後うつ病(PND)は、出産後に母親(及び父親)に影響を与え得る臨床的鬱病の一種である。多くの女性は、分娩後、定型的な軽度の症状を経験するが、症状が重度で、かつ2週間にわたって続いた場合、産後うつ病が疑われるべきである。
【0128】
発症及び継続期間
PNDは、通常、分娩後2週間~1か月の間に始まり、数か月又はさらには1年間続くかもしれない。
【0129】
症状
母親におけるPNDの症状は、悲しみ、絶望、泣くというエピソード、低い自尊心、短気、罪悪感、困惑した感情、睡眠パターンの変化、摂食パターンの変化、慰めが効かない、疲労、むなしさ、通常楽しいと思う活動から楽しさを感じることができない、引きこもり、気力が低い又はない、不満を持ちやすい、乳児の世話が不適格だと感じる、性欲の減少、時々又は頻繁に不安になる、母親と乳児との正常なきずなを妨害する、を含んでいてもよい。
【0130】
乳児に対する有害な結果
PNDはまた、子供にとって有害な結果に至ることもある。子供は、母親と乳児との正常なきずなの妨害を被るかもしれない。PNDにより、母親は育児を継続することができなくなるかもしれない。PNDを有する母親の子供は、より高い割合の情動的問題、行動の問題、精神医学的診断(反抗挑戦性障害及び行為障害など)、並びに多動を有することがわかった。
【0131】
原因
PNDの原因は、十分に理解されていない。ホルモンの変化、遺伝的性質、及び重大なライフイベントが、可能性として考えられる原因になるとして仮説が立てられた。証拠により、ホルモンの変化が役割を果たすかもしれないことが示唆される。研究されたホルモンは、エストロゲン、プロゲステロン、甲状腺ホルモン、テストステロン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、及びコルチゾールを含む。
【0132】
リスク因子
PNDのリスクを増加させることが示唆された因子は、産前うつ病又は不安、うつ病の個人又は家族の病歴、中程度から重度の月経前の症状、マタニティーブルー、出産に関係する心理的外傷、出産に関係する身体的外傷、以前の死産又は流産、母乳栄養ではなく人工栄養、たばこの喫煙、低い自尊心、育児又は生活ストレス、低い社会支援、不良な夫婦関係又は未婚、低い社会経済的地位、乳児の気質についての問題、及び疝痛を含む。
【0133】
4 産後不安(PNA)
産後不安及び産後うつ病を同時に経験することもまた、非常によくあることである。実際、50%以内の症例では、これらの2つの状態が同時に生じる。
【0134】
発症及び継続期間
PNDと同様に、PNAは、通常、分娩後2週間~1か月の間に始まり、数か月又はさらには1年間続くかもしれない。
【0135】
産後不安の母親の症状は、考えを支配し始める恐れ及び心配の感情、短気な感情、落ち着かない感情、緊張しているような感情、「いらいらした」感情、どきどきする心臓/強い動悸、パニック発作、再三発生する心配事、自制心を失った感情、自分が物事を正しく行っていないという感情、何か恐ろしいことが起こるだろうという感情、不眠、何か悪いことが起こらないように状況を回避することを含む。
【0136】
産後不安は、全般性不安障害(GAD)、強迫性障害(OCD)、パニック障害、社会恐怖、特定の恐怖、及び外傷後ストレス障害(PTSD)-たとえば外傷性の分娩に関連するものを包含することができる。
【0137】
本発明の様々な態様は、ここで、以下の実施例への参照によって非限定的に例証される。
【実施例
【0138】
本研究の目的は、分娩後の期間における母親のうつ病及び不安の症状に対する、妊娠中に及び分娩後に与えられるラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001の効果を評価することであった。
【0139】
材料及び方法
NZのオークランド及びウェリントンの妊婦は、医療従事者及び妊娠パックの中に入れた研究情報を介して研究に採用された。女性が16週未満の妊娠期間である、英語を話す、母乳で育てるつもりである場合並びに女性又は生まれていない子供の生物学上の父親のいずれかが喘息、花粉症、又は湿疹の病歴を有し、投薬を必要とした場合、女性は適格であると見なされた。年齢が16歳未満である、研究期間の間に研究センター外へ引っ越す予定である、免疫学的な障害若しくは投薬、心弁膜疾患の病歴を有した、体外受精を必要とした、重大な胎児異常を有した、プロバイオティック飲料又はサプリメントを使用していた、別の無作為化比較試験(RCT)に参加している、臨床上の介護者についての通知を拒絶した、牛乳アレルギー用のアドレナリンを保持していた、移植又はHIVの病歴を有した、少なくとも3か月間、継続的な抗生物質治療を使用したことがあった、スクリーニング~登録の間に流産した、又はその他、適さないと考えられた場合、女性は、研究から除外された。適格である女性は、14~16週の妊娠期間に研究に登録され、妊娠期間は、最初の第1三半期検査に基づき、これが利用可能でなかった場合、最終月経の日に基づいた。
【0140】
研究設計
参加している女性は、HN001(6×10コロニー形成単位(cfu))又はプラセボ(コーン由来マルトデキストリン、プロバイオティックと外観及び匂いが同一)のいずれかを含有するカプセルを受け、登録から妊娠の全体にわたって、母乳で育てる場合は出産の6か月後までずっと、毎日服用するように無作為化した。HN001粉末は、以前に記載されるように、無菌発酵、濃縮、及び凍結乾燥を使用して、Fonterra Co-operative Group Ltdによって製造された(8)。プラセボ粉末、コーン由来マルトデキストリンは、Grain Processing Corp.Oregon、USAによって製造された。女性は、冷蔵庫にカプセルを保管するようにかつ熱い食物又は飲み物を摂取した10分以内にそれらを服用しないように指示された。
【0141】
Fonterraは、4℃でカプセルのサンプルを保持し、ある期間にわたって内容物の生存率を確かめるために毎月試験した。現場から送り返された未使用カプセルの中から選んだカプセルの内容物の生存率を3か月に1回試験した。生存率における損失は、0.1log未満、計数方法の不確かさの限界の範囲内であった。
【0142】
カプセルの無作為化は、研究調査者にも参加者にも接触していないFonterraの統計専門家によって実行された。無作為化は、研究センターによって層別化され、コンピュータで生成した無作為化スケジュール及び1:1の割り付け比に従って20のブロックで実行された。研究スタッフは、参加者をスクリーニングし、登録して、次に空いている連番の付いたカプセル容器を適格である参加者に提供した。研究者、研究所スタッフ、及び参加者はみな、研究の割り付けについて盲検化された。
【0143】
収集したベースライン情報は、年齢、民族、出産経歴、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の既往歴、ボディマス指数(BMI)(体重(kg)/身長(m))、ウエスト周囲、妊娠の間であるが、登録前の抗生物質の使用、及び参加者又は1親等の親族における2型糖尿病を含んだ。20週を超える以前に妊娠したことがある女性から、発明者らは、GDMの既往歴及び以前の乳児の出生時体重を収集した。
【0144】
データ収集
母親は、ベースライン(14~16週の妊娠期間)時にインタビューを受け、母親の特徴及び人口統計に関する情報を収集した。子供が6月齢及び12月齢であった場合、子供が1~2月齢であった時のことを思い出しながら母親の心理的な健康についての質問票を完了させるために、母親は訪問されたり、招かれたりした。質問票を使用していた時に子供が12月齢を超えていた場合、母親に質問票が郵送された又はセキュアリンクを介してそれをオンラインで完了するように依頼された。母親及び研究者は、研究のすべての経過観察段階で参加者の治療の割り当てについて盲検のままであった。
【0145】
結果
Edinburgh Postnatal Depression Scale(EPDS):EPDSは、母親の気分を判断するために広く使用される10項目のスクリーニング質問票である(14)。分析のために、>12の基準のカットオフを、産後うつ病のリスクがより高い母親を同定するために使用した。
【0146】
State Trait Anxiety Inventory 6 item version(STAI6):STAI6は、より長いState Trait Anxiety Inventoryをベースとする不安スクリーニング質問票として検証される短い6項目の評価基準である(15)。スコア>15のカットオフを、臨床的に有意なレベルの不安の指標として使用した。
【0147】
EPDS及びSTAI6の両方について、子供が1~2月齢だった時のことを思い出すように母親に求めるように過去時制を使用するように、また母親がその時にどのように感じていたかに基づいて質問を完了するように質問を変更した。
【0148】
乳児疝痛:乳児疝痛は、出産~6月齢の間のいつであろうと、子供が疝痛を有したという理由で医療従事者と連絡をとったかどうか母親に尋ねた6か月のインタビューで判断した。
【0149】
サンプルサイズ及び統計分析
各群における200のサンプルサイズ及び13%の脱落率で、研究は、79%の検出力を有し、5%の有意水準でEPDSにおける26%の低下を検出した。
【0150】
統計分析は、連続変数については一般化線形モデル及びカテゴリー変数についてはロジスティック回帰分析を使用し、SAS9.4で行った。プロバイオティック補充と質問票が完了した、出産からの時間について調整した産後うつ病スコアと不安スコアと乳児疝痛との間の関係についての多変量解析。
【0151】
倫理
研究は、New Zealand Multiregional Ethics Committee(MEC/11/09/77)から倫理的な承認を得た。
【0152】
結果
応答者
図1は、PIP研究において適格で、採用され、割り付けられた人数を示す。423人の無作為化された女性のうち、382人(90.3%)が、心理的な結果の測定を完了した。この研究における382人の参加者のうち、11人は、6か月の乳児訪問時に質問票を完了し、112人は、12か月の乳児訪問時に質問票を完了し、残りの259人は、2.1歳の子供年齢中央値(IQR1.8~2.4)でオンラインで測定を完了した。応答した女性の合計195人は、プロバイオティック群におり、187人は、プラセボ群にいた。
【0153】
うつ病スコア及び不安スコアは、分娩後1~2か月~質問票の完了時の間の間隔の増加と共に、増加する傾向があった(うつ病スコアは1年当たり0.85ずつ増加した、p=0.065;不安スコアは1年当たり0.66ずつ増加した、p=0.060)。乳児疝痛は、より高いうつ病(多変量p<0.0001)スコア及び不安(多変量p<0.0001)スコアに有意に関連したが、プロバイオティック補充群(p=0.456)には有意には関連しなかった。
【0154】
プロバイオティック治療及び心理的な結果
表1は、プロバイオティック治療群及びプラセボ群におけるうつ病スコア及び不安スコアの平均値及び標準偏差を示す。プロバイオティック治療群における母親は、プラセボ群におけるスコアよりも、有意に低いうつ病スコア(p=0.035)及び不安スコア(p=0.014)を報告した。乳児疝痛及び質問票を完了した、出産からの時間について調節した後、プロバイオティック補充は、うつ病スコア(p=0.037)及び不安(p=0.014)スコアの低下に有意に関連したままであった。
【0155】
【表1】
【0156】
表2は、カットオフポイントを上回るうつ病スコア又は不安スコアを報告したプロバイオティック治療群及びプラセボ群における女性の数を示す。カットオフポイントを上回るうつ病スコアを報告する女性の数は、プロバイオティック治療群とプラセボ群との間で有意には異ならなかった(単変量p=0.086、多変量p=0.106)。しかしながら、プロバイオティック治療群における女性は、プラセボ群よりも、カットオフポイントを上回る不安スコアを有する可能性が有意に低く(p=0.001)、この関連は、乳児疝痛及び質問票完了時の出産からの時間について調節した後も統計的に有意なままであった(p=0.002)。
【0157】
【表2】
【0158】
考察
本研究は、プラセボを与えられた女性よりも、妊娠の間に及びその後にプロバイオティックHN001を補足した女性において分娩後のうつ病及び不安の症状の有病率が有意に低いことを実証した。さらに、スクリーニングの結果、臨床的に有意なレベルの不安を報告した女性の数は、プロバイオティック群において有意に低かった。発明者らの知る限り、これは、PND及び不安について評価したプロバイオティックスの初めての二重盲検RCTである。そのうえ、発明者らのサンプルサイズは、気分及び行動に対するプロバイオティックスについての多くの以前に報告されたRCTよりも実質的に大きかった。プロバイオティック臨床試験のシステマティックレビューにおいて、概説される研究のサンプルサイズの中央値は60であった(12)。
【0159】
プロバイオティックスを補足した女性は、産後不安及びうつ病の症状がより少ないという発見は、様々な集団における気分に対するプロバイオティックスの効果についての以前の2つの臨床研究と一致している。3つのプロバイオティックスの組み合わせ又はプラセボにより治療した大うつ病性障害を有する40人のRCTもまた、治療群において、Beck Depression Inventory(BDI)で、うつ病の症状における有意な低下を見出した(16)。ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)又はプラセボを受けるように無作為化された39人の慢性疲労患者のサンプルにおける不安症状における低下もまた報告されたが、同じ研究は、治療群においてBDIでうつ病の症状の低下を見出さなかった(17)。すべての研究が、気分の結果に対するプロバイオティック治療の有意なポジティブな効果を実証するとは限らなかった(12)。統合失調症を有する人(18)、喫煙者(19)、及び過敏性腸症候群の患者(20)、使用されるプロバイオティック株の種類、小さなサンプルサイズ、並びに気分についてのさまざまな測定法を含む研究集団の多様性は、これらの研究の何らかのメタ分析を行うのを不可能ではないにしても、困難にする。
【0160】
発明者らの研究では、乳児疝痛は、より高いうつ病スコア及び不安スコアに関連した。プロバイオティック補充が、乳児疝痛を低下させることによって母親の気分にとって益になるということが文献において示唆された。ある研究は、乳児の直接的なプロバイオティック補充が、乳児疝痛を低下させ、これが、さらには、母親のうつ病の割合が低いことに関連したことを報告した(21)。発明者らの研究における乳児は、子宮内で又は母乳を介して、いくらかのプロバイオティックに間接的に暴露された可能性があるが、乳児は、プロバイオティックを直接投与されず、さらに、発明者らは、乳児疝痛が、プロバイオティック群とプラセボ群との間で異ならないことを発見し、多変量解析は、乳児疝痛が存在しないこと及びプロバイオティック補充が、より低い産後うつ病スコア及び不安スコアに独立して関連したことを示した。
【0161】
本研究における分娩後1~2か月のうつ病及び不安の有病率は、通常報告される10~15%よりも高かった。これは、質問票を遡及的に完了した発明者らの研究における母親によるものかもしれない。もしかすると、母親が、分娩の1~2か月後にどのように感じたかを回想する時に、母親は、新生児の世話がどれほど疲れることかを実感するのかもしれない。初期の時点でPNDの有病率を調査する研究では、女性は、疲れ果てることを予想しているので、うつ病又は不安であると自身を採点する可能性が低いかもしれない。
【0162】
結論として、本研究は、妊娠中及び分娩後のL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001によるプロバイオティック補充が、分娩後のPND及び不安の症状の有病率を低下させるという証拠を提供する。すべてのプロバイオティック株が、健康状態に対して同じ効果を有するとは限らず、L.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を使用して見出された結果が、他のプロバイオティック株について一般化することはできない可能性がある。他の研究によって反復された場合、このプロバイオティックは、分娩後のうつ病及び不安の予防又は治療に有用であるかもしれない。
【0163】
結論
プロバイオティックL.ラムノサス(L.rhamnosus)HN001を受けたこのコホートにおける母親は、分娩後の期間において有意に低いうつ病スコア及び不安スコアを有した。
【0164】
産業上の利用可能性
本発明は、特に、PND及びPNAの少なくとも1つの治療又は予防におけるプロバイオティック細菌、特にラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001又はその派生物の使用に関する。細菌及び細菌を含む組成物を使用するための方法もまた、提供される。
【0165】
参考文献
1.Abbott MW,Williams MM(2006):Postnatal depressive symptoms among Pacific mothers in Auckland:prevalence and risk factors.Aust N Z J Psychiatry 40:230-8.
2.PMMRC(2014):Eighth annual report of the Perinatal and Maternal Mortality Review Committee:Reporting mortality 2012.Wellington:Health Quality & Safety Commission.
3.Da Costa D,Dritsa M,Rippen N,Lowensteyn ,& Khalife S(2006):Health-related quality of life in postpartum depressed women.Arch Women’s MentHealth 9:95-102.
4.Tronick E,Reck C(2009):Infants of depressed mothers.Harvard Rev Psychiatry 17:147-56.
5.Grace SL,Evindar A,& Stewart DE(2003):The effect of postpartum depression on child cognitive development and behavior:a review and critical analysis of the literature.Arch Women’s MentHalth 6:263-274.
6.Battle CL,Salisbury AL,Schofield CA,Ortiz-Hernandez S(2013):Perinatal antidepressant use:understanding women’s preferences and concerns J Psychiatr Pract 19:443-53.
7.Dinan TG,Cryan JF(2016):Mood by microbes:towards clinical translation.Genome Med 6:36-38.
8.Collins SM,Kassam Z,Bercik P(2013):The adoptive transfer of behavioral phenotype via the intestinal microbiota:experimental evidence and clinical implications.Curr Opin Microbiol 16:240-5.
9.Bravo JA,Forsythe P,Chew MV,Escaravage E,SavignacHM,Dinan TG,et al.(2011):Ingestion of Lactobacillus strain regulates emotional behaviour and central GABA receptor expression in a mouse via the vagus nerve.PNAS 108:16050-16059.
10.Desbonnet L,Garrett L,Clarke G,Kiely B,Cryan JF,Dinan TG(2010):Effect of the probiotic Bifidobacterium Infantis in the maternal separation model of depression.Neuroscience 170:1179-1188.
11.Carabotti M,Scirocco A,Maselli MA,Severi C(2015):The gut-brain axis:interactions between enteric microbiota,central and enteric nervous systems.Ann Gastroenterol 28:203-209.
12.Romijn AR,& Rucklidge,JJ(2015):Systematic review of evidence to support the theory of psychobiotics.Nutr Rev 73:675-693.
13.Barthow C,Wickens K,Stanley T,Mitchell EA,Maude R,Abels P,et al.(2016):The Probiotics in Pregnancy Study(PIP Study):rationale and design of a double-blind randomised controlled trial to improve maternal health during pregnancy and prevent infant eczema and allergy.BMC Pregnancy Childbirth 16:133.
14.Cox JL,Holden J M & Sagovsky R(1987):Detection of postnatal depression.Development of the 10-item Edinburgh Postnatal Depression Scale.Br J Psychiatry 150:782 -786.
15.Marteau TM,BekkerH(1992):The development of a six-item short-form of the state scale of the Spielberger State-Trait Anxiety Inventory(STAI).Br J Clin Psychol 31:301-6.
16.Akkasheh G,Kashani-Poor Z,Tajabadi-Ebrahimi M,Jafari P,AkbariH,Taghizadeh M,et al.(2016):Clinical and metabolic response to probiotic administration in patients with major depressive disorder:A randomized,double-blind,placebo-controlled trial.Nutrition 32:315-320.
17.Rao AV,Bested AC,Beaulne TM,Katzman MA,Iorio C,Beradi JM,et al.(2009):A randomized,double-blind,placebo-controlled pilot study of a probiotic in emotional symptoms of chronic fatigue syndrome.Gut Pathog.1:1-6.
18.Dickerson FB,Stallings C,Origoni A,Katsafanas E,Savage CL,Schweinfurth LA,et al.(2014):Effects of probiotic supplementation on schizophrenia symptoms and association with gastrointestinal functioning:A randomised,placebo-controlled trial.Prim Care Companion CNS Disord 16.pii:PCC.13m01579.
19.Reale M,Boscolo P,Bellante V,Tarantelli C,Di Nicola M,Forcella L,et al.(2012):Daily intake of Lactobacillus casei Shirota increases natural killer cell activity in smokers.Br J Nutr 108:308-314.
20.Dapoigny M,Piche T,Ducrote P,Lundard B,Cardot J,Bernalier-Donadille A(2012):Efficacy and safety profile of LCR35 complete freeze-dried culture in irritable bowel syndrome:a randomized double-blind study.World J Gastroenterol 18:2067-2075.
21.Mi G,Zhao L,Qiao D,Kang W,Tang M,& Xu J(2015):Effectiveness of Lactobacillus reuteri in infantile colic and colicky induced maternal depression:A prospective single blind randomized trial.Antonie van Leeuwenhoek 107:154-155.
22.Craig M,andHoward,L(2009)Postnatal depression,BMJ Clin Evid,Published online 2009 Jan 26.
図1