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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/22 20060101AFI20230116BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
B62D25/22
B60R16/02 620C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018220237
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020083046
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】横山 真樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光伸
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 慶恭
(72)【発明者】
【氏名】河崎 佳
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-327222(JP,A)
【文献】特開2014-042367(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033889(WO,A1)
【文献】特開2015-182580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/22
B60R 16/02
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のボデーと、前記ボデーからスライドドアにワイヤハーネスを配索する給電装置と、前記ボデーに取り付けられるスカッフと、で構成される車両下部構造であって、
前記ボデーが、ステップパネルと、該ステップパネルよりも上方に配されたフロアパネルと、を備え、
前記給電装置が、前記ステップパネルに支持されて前記ワイヤハーネスを支持するボデープロテクタを備え、
前記スカッフが、水平方向に板状に延び、前記フロアパネルに支持される水平板部と、該水平板部の車幅方向外側端部から板状に下垂した下垂板部と、を備え、
前記水平板部と前記ステップパネルとの間に形成される空間に前記ボデープロテクタが配置され、かつ、前記下垂板部の下端と前記ステップパネルとの間に形成される隙間から前記ボデープロテクタの一部が露出し、
前記スカッフに、前記ボデープロテクタに当接する当接部が設けられ、
前記水平板部に踏み付け荷重が加えられた際、当該踏み付け荷重が前記当接部を介して前記ボデープロテクタに伝わり、
前記当接部が、前記下垂板部の車幅方向内側の面から下方かつ車幅方向内側に延びている
ことを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記給電装置が、前記ワイヤハーネスに取り付けられ、かつ、前記ボデープロテクタに揺動可能に取り付けられるボデーローターを備え、
前記ボデープロテクタに、前記ボデーローターの揺動軸が嵌まる軸受け部が設けられ、当該軸受け部とは異なる位置に前記当接部との当接面が設けられている
ことを特徴とする請求項に記載の車両下部構造。
【請求項3】
自動車のボデーと、前記ボデーからスライドドアにワイヤハーネスを配索する給電装置と、前記ボデーに取り付けられるスカッフと、で構成される車両下部構造であって、
前記ボデーが、ステップパネルと、該ステップパネルよりも上方に配されたフロアパネルと、を備え、
前記給電装置が、前記ステップパネルに支持されて前記ワイヤハーネスを支持するボデープロテクタを備え、
前記スカッフが、水平方向に板状に延び、前記フロアパネルに支持される水平板部と、該水平板部の車幅方向外側端部から板状に下垂した下垂板部と、を備え、
前記水平板部と前記ステップパネルとの間に形成される空間に前記ボデープロテクタが配置され、かつ、前記下垂板部の下端と前記ステップパネルとの間に形成される隙間から前記ボデープロテクタの一部が露出し、
前記スカッフに、前記ボデープロテクタに当接する当接部が設けられ、
前記水平板部に踏み付け荷重が加えられた際、当該踏み付け荷重が前記当接部を介して前記ボデープロテクタに伝わり、
前記給電装置が、前記ワイヤハーネスに取り付けられ、かつ、前記ボデープロテクタに揺動可能に取り付けられるボデーローターを備え、
前記ボデープロテクタに、前記ボデーローターの揺動軸が嵌まる軸受け部が設けられ、当該軸受け部とは異なる位置に前記当接部との当接面が設けられている
ことを特徴とする両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボデーからスライドドアにワイヤハーネスが配索される自動車における車両下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スライドドアを備えた自動車には、ボデーからスライドドアにワイヤハーネスを配索する給電装置が搭載されている(例えば特許文献1を参照。)。また、前記自動車のステップ(スライドドア乗降口の踏み段)にはスカッフが配設されており、このスカッフの一部が前記給電装置のボデープロテクタを覆っている。
【0003】
上記自動車における車両下部構造について、図6~8を用いてさらに詳細に説明する。図6は、従来の給電装置の説明図である。図7は、スカッフが図6のボデープロテクタを覆っている様子を示す図である。図8は、図6の給電装置及び図7のスカッフを備えた車両下部構造を示す断面図であり、図7中のE-E線に沿った断面図である。図6~8中の矢印Xは車両の幅方向を示し、矢印Yは車両の前後方向を示し、矢印Zは車両の上下方向を示す。
【0004】
図6に示す給電装置304は、ボデーからスライドドアに配索されるワイヤハーネス10と、ボデープロテクタ306と、ドアプロテクタ14と、を備えている。ボデープロテクタ306は、ワイヤハーネス10をボデー側で軸P1を中心に揺動可能に支持するものである。ボデープロテクタ306は、ワイヤハーネス導出口362がスライドドア側に面する向きでボデーに取り付けられる。ドアプロテクタ14は、ワイヤハーネス10をスライドドア側で軸P2を中心に揺動可能に支持するものである。また、図6には、スライドドア全閉時から全開時までのドアプロテクタ14及びワイヤハーネス10の軌跡が示されている。
【0005】
図7に示すスカッフ303は、合成樹脂で構成されており、乗員の乗降時に踏まれる踏み段部30と、ボデープロテクタ306を覆う遮蔽部335と、を一体に備えている。遮蔽部335は、水平方向に板状に延びた水平板部36と、水平板部36の車幅方向外側端部から板状に下垂した下垂板部37と、を備えている。
【0006】
図8に示す車両下部構造301は、ステップパネル21とフロアパネル24を備えたボデー2と、上記給電装置304と、上記スカッフ303と、で構成されている。ボデープロテクタ306は、ステップパネル21に支持されている。また、ボデープロテクタ306は、水平板部36とステップパネル21との間に形成される空間に配置されており、下垂板部37の下端37aとステップパネル21との間に形成される隙間からワイヤハーネス導出口362が露出している。スカッフ303は、水平板部36がフロアパネル24に支持されており、下垂板部37の下端37aがボデープロテクタ306と非接触となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-135637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した車両下部構造301において、通常、乗員の乗降時に踏まれる部分は踏み段部30(図7を参照。)である。しかし、水平板部36が踏まれる可能性もあり、その場合、スカッフ303が図8の破線で示すように変形して踏み心地が悪くなることが懸念され、改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、車両へ人が乗り降りする際、スカッフのボデープロテクタを覆った部分が踏まれた場合における踏み心地を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自動車のボデーと、前記ボデーからスライドドアにワイヤハーネスを配索する給電装置と、前記ボデーに取り付けられるスカッフと、で構成される車両下部構造であって、前記ボデーが、ステップパネルと、該ステップパネルよりも上方に配されたフロアパネルと、を備え、前記給電装置が、前記ステップパネルに支持されて前記ワイヤハーネスを支持するボデープロテクタを備え、前記スカッフが、水平方向に板状に延び、前記フロアパネルに支持される水平板部と、該水平板部の車幅方向外側端部から板状に下垂した下垂板部と、を備え、前記水平板部と前記ステップパネルとの間に形成される空間に前記ボデープロテクタが配置され、かつ、前記下垂板部の下端と前記ステップパネルとの間に形成される隙間から前記ボデープロテクタの一部が露出し、前記スカッフに、前記ボデープロテクタに当接する当接部が設けられ、前記水平板部に踏み付け荷重が加えられた際、当該踏み付け荷重が前記当接部を介して前記ボデープロテクタに伝わり、前記当接部が、前記下垂板部の車幅方向内側の面から下方かつ車幅方向内側に延びていることを特徴とする。
また、本発明は、自動車のボデーと、前記ボデーからスライドドアにワイヤハーネスを配索する給電装置と、前記ボデーに取り付けられるスカッフと、で構成される車両下部構造であって、前記ボデーが、ステップパネルと、該ステップパネルよりも上方に配されたフロアパネルと、を備え、前記給電装置が、前記ステップパネルに支持されて前記ワイヤハーネスを支持するボデープロテクタを備え、前記スカッフが、水平方向に板状に延び、前記フロアパネルに支持される水平板部と、該水平板部の車幅方向外側端部から板状に下垂した下垂板部と、を備え、前記水平板部と前記ステップパネルとの間に形成される空間に前記ボデープロテクタが配置され、かつ、前記下垂板部の下端と前記ステップパネルとの間に形成される隙間から前記ボデープロテクタの一部が露出し、前記スカッフに、前記ボデープロテクタに当接する当接部が設けられ、前記水平板部に踏み付け荷重が加えられた際、当該踏み付け荷重が前記当接部を介して前記ボデープロテクタに伝わり、前記給電装置が、前記ワイヤハーネスに取り付けられ、かつ、前記ボデープロテクタに揺動可能に取り付けられるボデーローターを備え、前記ボデープロテクタに、前記ボデーローターの揺動軸が嵌まる軸受け部が設けられ、当該軸受け部とは異なる位置に前記当接部との当接面が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スカッフに、ボデープロテクタに当接する当接部が設けられ、水平板部に踏み付け荷重が加えられた際、当該踏み付け荷重が前記当接部を介して前記ボデープロテクタに伝わるので、踏み付け荷重によるスカッフの変形を抑制できる。よって、水平板部が踏まれた場合における踏み心地を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかる車両下部構造を構成する給電装置の説明図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる車両下部構造を構成するスカッフが図1のボデープロテクタを覆っている様子を示す図である。
図3図1のボデープロテクタの斜視図である。
図4図3のボデープロテクタがワイヤハーネスを支持している状態を示す図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる車両下部構造を示す断面図であり、図2中のA-A線に沿った断面図である。
図6】従来の給電装置の説明図である。
図7】スカッフが図6のボデープロテクタを覆っている様子を示す図である。
図8図6の給電装置及び図7のスカッフを備えた車両下部構造を示す断面図であり、図7中のE-E線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態にかかる「車両下部構造」について、図1~5を参照して説明する。図1~5に示すように、本例の車両下部構造1は、自動車のボデー2と、ボデー2からスライドドアにワイヤハーネス10を配索する給電装置4と、ボデー2に取り付けられるスカッフ3と、で構成されている。図1,2,5中の矢印Xは車両の幅方向を示し、矢印Yは車両の前後方向を示し、矢印Zは車両の上下方向を示す。また、前記スライドドアは、車両の側部に設けられ、車両の前後方向にスライドする。
【0014】
ボデー2は、図5に示すように、ステップパネル21と、該ステップパネル21よりも上方に配されたフロアパネル24と、を備えている。
【0015】
給電装置4は、図1に示すように、ボデー2からスライドドアに配索されるワイヤハーネス10と、ワイヤハーネス10に取り付けられるボデーローター5及びドアローター13と、ボデープロテクタ6と、ドアプロテクタ14と、を備えている。ボデープロテクタ6は、ボデーローター5を揺動可能に取り付けることでワイヤハーネス10をボデー2側で軸P1を中心に揺動可能に支持する。ドアプロテクタ14は、ドアローター13を揺動可能に取り付けることでワイヤハーネス10をスライドドア側で軸P2を中心に揺動可能に支持する。軸P1、軸P2は、図1のZ方向に延びている。また、図1には、スライドドア全閉時から全開時までのドアプロテクタ14及びワイヤハーネス10の軌跡が示されている。
【0016】
ワイヤハーネス10は、電線束11(図4に示す)と、電線束11を覆ったコルゲートチューブ12(図4に示す)と、電線束11とコルゲートチューブ12の間に介在する湾曲規制部材と、を備えている。ボデーローター5及びドアローター13は、コルゲートチューブ12の外周に取り付けられる。
【0017】
ボデープロテクタ6は、図3,4に示すように、上下に二分割された分割体7,8が組み付けられて構成されている。これら分割体7,8は、合成樹脂で構成されている。ボデープロテクタ6は、導入口61から導出口62に至るワイヤハーネス配索路を有している。すなわち、ワイヤハーネス10は、導入口61からボデープロテクタ6内に挿入され、導出口62からボデープロテクタ6外に導出されてスライドドア側に配索される。
【0018】
導出口62の近傍には、ボデーローター5の揺動軸が嵌まる軸受け部83及び軸受け穴73が設けられている。軸受け部83は、ボデープロテクタ6の上面から上方に突出している。軸受け穴73は、軸受け部83の直下に設けられ、下方に凹に形成されている。また、導出口62の下方には、車幅方向外側に延びるとともに下方に向かって延びた延設片75が設けられている。
【0019】
また、ボデープロテクタ6には、スカッフ3が当接する当接面84が設けられている。当接面84は、ボデープロテクタ6の上面から上方に突出した突出部の一部として形成されている。また、当接面84は、軸受け部83とは異なる位置に設けられている。
【0020】
ボデープロテクタ6は、導出口62がスライドドア側に面する向きでステップパネル21に取り付けられる。詳細には、図5に示すように、ボデープロテクタ6の下面に設けられた係合部69が、ステップパネル21の被係合部22に係合することでステップパネル21に取り付けられる。
【0021】
スカッフ3は、合成樹脂で構成されており、図2に示すように、乗員の乗降時に踏まれる踏み段部30と、ボデープロテクタ6を覆う遮蔽部35と、を一体に備えている。
【0022】
踏み段部30は、ステップパネル21上に重ねられる下段水平部31と、フロアパネル24上に重ねられる上段水平部33と、下段水平部31と上段水平部33とを繋いだ垂直壁32と、を備えている。
【0023】
遮蔽部35は、上段水平部33と面一に連なり、水平方向に板状に延びた水平板部36と、水平板部36の車幅方向外側端部から板状に下垂した下垂板部37と、フロアパネル24に当接する第1当接部38と、ボデープロテクタ6の当接面84に当接する第2当接部39(請求項の「当接部」に相当する。)と、を備えている。図5に示すように、第1当接部38は、水平板部36の下面から下方に延びている。また、第2当接部39は、下垂板部37の車幅方向内側の面から下方かつ車幅方向内側に延びている。
【0024】
上述したボデープロテクタ6は、図2,5に示すように、水平板部36とステップパネル21との間に形成される空間に配置されており、下垂板部37の下端37aとステップパネル21との間に形成される隙間から導出口62及び延設片75が露出している。また、下垂板部37の下端37aはボデープロテクタ6と非接触となっている。
【0025】
上述した車両下部構造1において、通常、乗員の乗降時に踏まれる部分は踏み段部30であるが、水平板部36が踏まれる可能性もあった。図8の車両下部構造301においては、水平板部36が踏まれるとスカッフ303が変形してしまうことは上述したとおりである。この点について、本例の車両下部構造1においては、水平板部36が踏まれると、踏み付け荷重が第1当接部38を介してフロアパネル24に伝わると同時に、踏み付け荷重が第2当接部39を介してボデープロテクタ6にも伝わるので、踏み付け荷重によるスカッフ3の変形を抑制できる。よって、水平板部36が踏まれた場合における踏み心地を改善することができる。
【0026】
また、水平板部36とステップパネル21との間に形成される空間の下半部には、ワイヤハーネス10が(バッテリ側からボデープロテクタ6の導入口61に向かって)配索される。本例では、第2当接部39がワイヤハーネス10に干渉するのを避けるため、第2当接部39をステップパネル21に直接当接させずに、ボデープロテクタ6の当接面84に当接する構成としている。
【0027】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0028】
1 車両下部構造
2 ボデー
3 スカッフ
4 給電装置
6 ボデープロテクタ
10 ワイヤハーネス
21 ステップパネル
24 フロアパネル
36 水平板部
37 下垂板部
39 第2当接部(当接部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8