(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】ケーシングの密閉方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/20 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
B29C65/20
(21)【出願番号】P 2018233080
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】中川 敏彦
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-192542(JP,A)
【文献】特公昭51-043868(JP,B1)
【文献】特開2016-203477(JP,A)
【文献】特開平04-303625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B65D 43/00-43/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のケーシング本体に形成された開口の周壁に立設された環状の本体側リブに対して、この開口を閉塞する蓋体を溶着して上記開口を閉塞するケーシングの密閉方法において、上記蓋体の外周に沿って、上記本体側リブに対して所定の空間を挟んで対峙する蓋体側リブを設け、上記本体側リブと蓋体側リブとを溶融して相互に溶着し、その溶着した部分を上記所定の空間内に収納させ
、上記溶着した部分を上記所定の空間内に収納させた後、さらにこの溶着した部分を平板状のヒータで空間内に押し込んで溶着した部分の高さを低くしたことを特徴とするケーシングの密閉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング本体の開口に蓋体を取付、ケーシング本体に対して蓋体を開口の全周にわたって溶着することによってケーシングの内部空間を外部に対して密閉するケーシングの密閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、断面が四角形の筒状体をケーシング本体とする照明器具において、ケーシング本体の両端の開口に蓋体を嵌め込み、その蓋体をケーシング本体の開口の全周にわたって溶着させることによってケーシング本体の内部空間を外部に対して密閉するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-203477号公報(
図2、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造では、開口の周壁に本体側リブを立設すると共に、蓋体側の周縁にこの本体側リブの内側に沿うように蓋体側リブを形成し、本体側リブと蓋体側リブとを先端側から同時に加熱して溶融して相互に溶着させることによって蓋体を本体側に溶着している。そのため、溶融した本体側リブおよび蓋体側リブが溶着後に盛り上がった状態で残ってしまい、外観が損なわれるという不具合が生じる。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、本体側に蓋体を溶着した後に、本体側リブや蓋体側リブが盛りあがった状態で残らないケーシングの密閉方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
また、上記課題を解決するために本発明によるケーシングの密閉方法は、樹脂製のケーシング本体に形成された開口の周壁に立設された環状の本体側リブに対して、この開口を閉塞する蓋体を溶着して上記開口を閉塞するケーシングの密閉方法において、上記蓋体の外周に沿って、上記本体側リブに対して所定の空間を挟んで対峙する蓋体側リブを設け、上記本体側リブと蓋体側リブとを溶融して相互に溶着し、その溶着した部分を上記所定の空間内に収納させ、上記溶着した部分を上記所定の空間内に収納させた後、さらにこの溶着した部分を平板状のヒータで空間内に押し込んで溶着した部分の高さを低くしたことを特徴とする。
【0008】
上記密閉方法は、溶着した後の本体側リブおよび蓋体側リブを上記所定の区間内に収納させることによって、溶着後に両リブが盛り上がった状態で残らない。なお、ここで言う密閉とはケーシング本体の開口を蓋体で密閉すると言うことで、ケーシング本体に内圧調節用の穴などが設けられ、溶着後のケーシング本体が厳密には密閉構造になっていない場合も含む。
【0009】
また、この溶着の際に、溶着した部分が溶着後に盛り上がった形状になる場合がある。この盛り上がった部分が意匠を損なう場合には、さらに平板状のヒータを溶着した部分に押し付けて成型する。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明は、ケーシング本体の開口に蓋体を溶着した後に、溶着部分に盛り上がった状態の部分が残らないので、溶着後の外観が損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明が適用される照明器具を台所に設置した状態を示す図
【
図3】ケーシングに蓋体を溶着する第1の工程を示す図
【
図4】ケーシングに蓋体を溶着する第2の工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、1は本発明による照明器具で有り、台所の吊り戸棚Lの下面に取り付けられている。この照明器具1は下面及び手前側面が透明で、残りの2面が不透明な樹脂で形成された筒状体のケーシング本体(以下、本体という)2と、その本体2の両端面に溶着された1対の蓋体3とで構成されている。なお、この本体2は押出成形で形成されており、外周面21は光沢のある化粧処置が施されている。
【0013】
図2に示すように、本体2の端部に、化粧処理が施されている外周面21に対して一段設けた内側に溶着用の本体側リブ22を設けた。また、蓋体3にはこの溶着用の本体側リブ22と対峙して溶着される蓋体側リブ31を設けると共に、この蓋体側リブ31を本体2にセットした状態で本体側リブと蓋体側リブ31との間に所定の区間32が形成されるようにした。
【0014】
なお、本体2とは別体として押出成形で形成した筒状のスリーブ6を本体2内に挿入した。本実施の形態では本体2の両端に開口が形成されているので、このスリーブ6の長さは本体2の長さに対して蓋体3の厚みの2倍の寸法分だけ短く形成されている。蓋体3をケーシングの開口に嵌め込むと、スリーブ6の端面61に蓋体3が当接して、蓋体3は所定の位置で位置決めされることになる。本図に示す4は回路基板で有り、片面に複数個のLED41が所定の間隔で実装されている。
【0015】
図3を参照して、5は上下方向に移動することのできるジグである。このジグ5は強度を確保するため金属で形成されている。そして、このジグ5の下面には、絶縁体71を介して溶着用のヒータ7が取り付けられている。このヒータ7は本体2の端部形状に合わせて平面視した状態で矩形状に形成されており、対向する2ヶ所に通電用のコード72,73が接続されており、両コード72,73を介して通電されることによって、ヒータ7自体が発熱する。したがって、ヒータ7が発熱した状態でジグ5を下降させれば、本体2の本体側リブ22と蓋体3の蓋体側リブ31とが互いに溶融して溶着される。
【0016】
本図(b)に示すように、本体側リブ22と蓋体側リブ31との溶着部Mは溶着された後に、更に下降するヒータ7によって互いに内側に曲げられ、空間32内に押し込まれるようにした。
【0017】
図3に示したように、溶着後は本体側リブ22および蓋体側リブ31は空間32内に押し込まれた状態である。このままでも、溶着部Mが外観上目立たないが、更に溶着部Mを目立たなくするために、
図4に示すように、フラットなヒータ8を用いて盛り上がっている溶着部Mを更に空間32が消失するまで押し込んで、外周面21に対してほぼ直角の形状に整形するようにしてもよい。なお、本図において81は絶縁体であり、82,83は通電用のコードである。
【0018】
上記
図3および
図4では各々ヒータ7およびヒータ8を用いたが、両者は断面形状が相違するものの基本的な構造は同じである。ヒータ8を例にとり、その構造を説明する。
図5を参照して、上述のように、ヒータ8は平面視した状態で矩形状に形成されている。そして、その断面は、通電によって発熱する金属製のヒータ本体84と、その下面に熱伝導率が極めて高いダイヤモンド粒子を電着した電着層85を設け、更にその電着層85の表面を、フッ素樹脂からなるコーティング層86でコーティングした。
【0019】
このように構成することにより、コード82,83を介して通電するとヒータ本体84が発熱するが、その発熱により生じた熱エネルギは、ダイヤモンド粒子を通って下面に流れる。そして、その熱エネルギによって上記本体側リブ22および蓋体側リブ31を溶融するが、溶融した樹脂がヒータ8側に粘着しないように、フッ素樹脂からなるコーティング層86を設けている。
【0020】
そして、このようにヒータ本体84を薄い板状にすることによって熱容量を低減させ、通電を停止すると、直ちに冷却されるようにした。従って、上述のように、ヒータ8(あるいはヒータ7)に通電しながら本体側リブ22や蓋体側リブ31を加熱し整形した後、通電を停止すると直ちに溶着部Mが冷却され硬化するようにした。なおその際に、空気を吹きかけるなどして冷却速度を速めてもよい。
【0021】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0022】
1 照明器具
2 ケーシング
3 蓋体
5 ジグ
7 ヒータ
8 ヒータ
9 ケーシング
21 外周面
22 本体側リブ
31 蓋体側リブ
32 空間
M 溶着部