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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】工業炉
(51)【国際特許分類】
   F23J 7/00 20060101AFI20230116BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
F23C99/00 317
F23C99/00 ZAB
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021010455
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114242
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】河本 祐作
(72)【発明者】
【氏名】池田 勇
(72)【発明者】
【氏名】田口 脩平
(72)【発明者】
【氏名】仲井 和成
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05707596(US,A)
【文献】特開2018-155412(JP,A)
【文献】特開昭60-093229(JP,A)
【文献】特開2018-096680(JP,A)
【文献】特開2006-194564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 7/00
F23C 9/08 - 99/00
F23D 14/00 - 14/84
F23N 1/02 - 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させて炉内に向けて燃焼させる燃焼バーナーを備えた工業炉において、低燃焼性燃料を前記の燃焼バーナーの上流部に位置する第1供給口に供給する第1燃料供給路と、低燃焼性燃料を前記の燃焼バーナーにおける第1供給口よりも下流側に位置する第2供給口に供給する第2燃料供給路と、燃焼用空気を前記の燃焼バーナーにおける第1供給口よりも下流側で第2供給口よりも上流側に位置する第3供給口に供給する第1燃焼用空気供給路と、低燃焼性燃料を前記の第1燃焼用空気供給路に供給するミックス用燃料供給路と、燃焼用空気を前記の燃焼バーナーにおける第2供給口よりも下流側に位置する第4供給口に供給する第2燃焼用空気供給路とを設け、前記の第1燃料供給路に第1バルブを設け、前記の第2燃料供給路に第2バルブを設け、前記のミックス用燃料供給路に第3バルブを設けると共に、炉内の温度を検知する温度センサーと、この温度センサーによって検知された温度結果が出力される制御装置とを設け、前記の温度センサーによって検知された炉内の温度に基づき、前記の制御装置によって前記の第1バルブと第2バルブと第3バルブの開閉を制御するにあたり、前記の温度センサーによって検知された炉内の温度を、低温燃焼時と中温燃焼時と高温燃焼時との3段階に分け、温度センサーによって検知された炉内の温度が低温燃焼時の場合には、前記の制御装置により第1バルブと第2バルブとを閉じる一方、第3バルブを開け、前記のミックス用燃料供給路から前記の第1燃焼用空気供給路に低燃焼性燃料を供給し、低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させた状態で第3供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させると共に、前記の第2燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を前記の第4供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させるようにし、検知された炉内の温度が中温燃焼時の場合には、前記の制御装置により第1バルブと第3バルブとを閉じる一方、第2バルブを開け、前記の第1燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を第3供給口から燃焼バーナーに供給し、前記の第2燃料供給路を通して第2供給口から低燃焼性燃料を燃焼バーナーに供給すると共に、前記の第2燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を前記の第4供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させるようにし、検知された炉内の温度が高温燃焼時の場合には、前記の制御装置により第1バルブと第2バルブとを開ける一方、第3バルブを閉じ、前記の第1燃料供給路を通して低燃焼性燃料を第1供給口から燃焼バーナーに供給し、前記の第1燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を第3供給口から燃焼バーナーに供給し、前記の第2燃料供給路を通して第2供給口から低燃焼性燃料を燃焼バーナーに供給すると共に、前記の第2燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を前記の第4供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させるようにしたことを特徴とする工業炉。
【請求項2】
請求項1に記載の工業炉において、前記の第2燃料供給路を通して第2供給口から燃焼バーナー内に供給した低燃焼性燃料を旋回させながら燃焼用空気と混合させて燃焼させることを特徴とするに工業炉。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の工業炉において、前記の第2燃焼用空気供給路を通して第4供給口から燃焼バーナー内に供給した燃焼用空気を旋回させながら低燃焼性燃料と混合させて燃焼させることを特徴とするに工業炉。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の工業炉において、前記の低燃焼性燃料がアンモニアであることを特徴とする工業炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア等の低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させて炉内に向けて燃焼させる燃焼バーナーを備えた工業炉に関するものである。特に、前記の燃焼バーナーにおいて、アンモニア等の低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させて安定して燃焼できるようにすると共に、燃焼時におけるNOxの発生を抑制するようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼用空気と燃焼部で混合させて燃焼させる燃焼装置においては、一般に、燃料として、炭化水素系燃料が使用されている。
【0003】
しかし、このように燃焼装置において炭化水素系燃料を燃焼用空気と燃焼部で混合させて燃焼させた場合、二酸化炭素などの温室効果ガスが多く発生するという問題があった。
【0004】
そして、近年においては、二酸化炭素などの温室効果ガスを削減することが要望され、燃料に炭化水素系燃料以外のものを用いることが検討されている。
【0005】
また、従来から、燃焼装置における燃料として、低燃焼性燃料のアンモニアを用いることが知られている。
【0006】
しかし、アンモニアは炭化水素系燃料に比べて燃焼性が悪くて、燃焼時に失火しやすく、失火されて燃焼されなかったアンモニアが工業炉の炉内から外部に排気されて環境に悪影響を及ぼすという問題があり、またアンモニアを十分に燃焼させるように燃焼条件を強くすると、燃焼時にNOxが発生しやすくなるという問題があった。
【0007】
そして、従来においては、燃焼性が悪い低燃焼性燃料のアンモニアを燃焼させるにあたって、特許文献1に示されるように、燃料にアンモニアを噴出させるバーナーチップの下流側にディフューザーを配置し、アンモニアを自然吸引された燃焼用空気と一緒にディフューザーの周辺を迂回させて混合させ、このように混合されたアンモニアと燃焼用空気とを、渦流状態にしてディフューザーの上側に滞留させて燃焼させ、アンモニアの燃焼性を高めるようにしたものが提案されている。
【0008】
しかし、特許文献1のように燃焼用空気を自然吸引させる場合、多くのアンモニアを燃焼させる大型の燃焼装置に用いることは困難であり、また燃焼開始当初のように温度が低い状態では失火しやすいという問題があり、さらに、前記のようにアンモニアと燃焼用空気とを渦流状態にしてディフューザーの上側に滞留させて、アンモニアを燃焼させるようにした場合、アンモニアが一気に燃焼されて燃焼時における火炎温度が高くなり、NOxの発生が多くなるという問題もあった。
【0009】
また、特許文献2においては、低燃焼性燃料のアンモニアと燃焼用空気とを予混合させて均一化させた後、このように予混合させたガスを、スワラにより旋回させて強く攪拌しながら燃焼させて、アンモニアの燃焼性を高めるようにしたものが提案されている。
【0010】
しかし、特許文献2に示されるように、アンモニアと燃焼用空気とを予混合させたガスを、スワラにより旋回させて強く攪拌しながら燃焼させるようにした場合、アンモニアが一気に燃焼されて火炎温度が高くなり、NOxの発生が多くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】実公昭50-8257号公報
【文献】特開2016-130619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、アンモニア等の低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させて炉内に向けて燃焼させる燃焼バーナーを備えた工業炉における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0013】
すなわち、本発明は、前記のようにアンモニア等の低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼バーナーにより炉内に向けて燃焼させるにあたり、燃焼開始当初のように温度が低い状態でも低燃焼性燃料を安定して燃焼できるようにすると共に、低燃焼性燃料が一気に燃焼され、火炎温度が高くなってNOxの発生がするのを十分に抑制できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る工業炉においては、前記のような課題を解決するため、低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させて炉内に向けて燃焼させる燃焼バーナーを備えた工業炉において、低燃焼性燃料を前記の燃焼バーナーの上流部に位置する第1供給口に供給する第1燃料供給路と、低燃焼性燃料を燃焼バーナーにおける前記の第1供給口よりも下流側に位置する第2供給口に供給する第2燃料供給路と、燃焼用空気を前記の燃焼バーナーにおける第1供給口よりも下流側で第2供給口よりも上流側に位置する第3供給口に供給する第1燃焼用空気供給路と、低燃焼性燃料を前記の第1燃焼用空気供給路に供給するミックス用燃料供給路と、燃焼用空気を前記の燃焼バーナーにおける第2供給口よりも下流側に位置する第4供給口に供給する第2燃焼用空気供給路とを設け、前記の第1燃料供給路に第1バルブを設け、前記の第2燃料供給路に第2バルブを設け、前記のミックス用燃料供給路に第3バルブを設けると共に、炉内の温度を検知する温度センサーと、この温度センサーによって検知された温度結果が出力される制御装置とを設け、前記の温度センサーによって検知された炉内の温度に基づき、前記の制御装置により、前記の第1バルブと第2バルブと第3バルブの開閉を制御するようにした。
【0015】
そして、本発明に係る工業炉においては、前記のように温度センサーによって検知された炉内の温度に基づいて、制御装置により前記の第1バルブと第2バルブと第3バルブの開閉を制御するにあたり、前記の温度センサーによって炉内の温度を、低温燃焼時と中温燃焼時と高温燃焼時との3段階に分け、温度センサーによって検知された炉内の温度が低温燃焼時の場合には、前記の制御装置により第1バルブと第2バルブとを閉じる一方、第3バルブを開け、前記のミックス用燃料供給路を通して前記の第1燃焼用空気供給路に低燃焼性燃料を供給し、低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させた状態で第3供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させると共に、前記の第2燃焼用空気供給路から燃焼用空気を前記の第4供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させるようにし、検知された炉内の温度が中温燃焼時の場合には、前記の制御装置により第1バルブと第3バルブとを閉じる一方、第2バルブを開け、前記の第1燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を第3供給口から燃焼バーナーに供給し、前記の第2燃料供給路を通して第2供給口から低燃焼性燃料を燃焼バーナーに供給すると共に、前記の第2燃焼用空気供給路から燃焼用空気を前記の第4供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させるようにし、検知された炉内の温度が高温燃焼時の場合には、前記の制御装置により第1バルブと第2バルブとを開ける一方、第3バルブを閉じ、前記の第1燃料供給路を通して低燃焼性燃料を第1供給口から燃焼バーナーに供給し、前記の第1燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を第3供給口から燃焼バーナーに供給し、前記の第2燃料供給路を通して第2供給口から低燃焼性燃料を燃焼バーナーに供給すると共に、前記の第2燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を前記の第4供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させるようにした。
【0016】
ここで、本発明に係る工業炉のように、温度センサーによって検知された炉内の温度が低温燃焼時の場合に、前記のように制御装置により第1バルブと第2バルブとを閉じる一方、第3バルブを開けると、ミックス用燃料供給路から第1燃焼用空気供給路に低燃焼性燃料が供給されて、低燃焼性燃料が燃焼用空気と混合された状態で第3供給口から燃焼バーナーに供給されると共に、第2燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気が第4供給口から燃焼バーナーに供給され、低燃焼性燃料と燃焼用空気とが燃焼安定性の高いプレミックスの状態で燃焼されると共に、さらに第4供給口から供給された燃焼用空気と混合されて燃焼されるようになり、燃焼開始当初のように温度が低い状態でも、燃焼性の悪い低燃焼性燃料が安定して燃焼されるようになる。
【0017】
また、温度センサーによって検知された炉内の温度が中温燃焼時の場合に、前記のように制御装置により第1バルブと第3バルブとを閉じる一方、第2バルブを開けると、第1燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気だけが第3供給口から燃焼バーナーに供給されると共に、第2燃料供給路を通して低燃焼性燃料が第2供給口から燃焼バーナーに供給され、第3供給口から供給された燃焼用空気と第2供給口から供給された低燃焼性燃料とが混合されて低燃焼性燃料の一部が燃焼され、さらに第2燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気が第4供給口から燃焼バーナーに供給され、前記の燃焼によって燃焼されなかった残りの低燃焼性燃料が第4供給口から供給された燃焼用空気と混合されて燃焼されるようになり、第2供給口から燃焼バーナーに供給された低燃焼性燃料が二段階で燃焼されて、燃焼時における火炎温度が高くなるのが防止され、NOxが発生するのが抑制される。
【0018】
また、温度センサーによって検知された炉内の温度が高温燃焼時の場合に、前記のように制御装置により第1バルブと第2バルブとを開ける一方、第3バルブを閉じると、第1燃料供給路を通して第1供給口から低燃焼性燃料が燃焼バーナーに供給されると共に、第1燃焼用空気供給路を通して第3供給口から燃焼用空気だけが燃焼バーナーに供給され、前記の低燃焼性燃料がこの燃焼用空気と混合されて燃焼され、さらに第2燃料供給路を通して第2供給口から低燃焼性燃料が燃焼バーナーに供給されると共に、第2燃焼用空気供給路を通して第4供給口から燃焼用空気が燃焼バーナーに供給され、前記の低燃焼性燃料がこの燃焼用空気と混合されて燃焼されるようになり、第1供給口から供給された低燃焼性燃料と第2供給口から供給された低燃焼性燃料とが二段階で燃焼され、燃焼バーナーに供給する低燃焼性燃料の量を多くしても、燃焼時における火炎温度が高くなるのが防止されてNOxが発生するのが抑制される。
【0019】
また、本発明に係る工業炉においては、前記の第2燃料供給路を通して第2供給口から燃焼バーナー内に供給した低燃焼性燃料を旋回させながら燃焼用空気と混合させて燃焼させることが好ましい。このようにすると、第1燃焼用空気供給路を通して第3供給口から供給された燃焼用空気と、第2供給口から燃焼バーナー内に供給された低燃焼性燃料とが、燃焼バーナー内で十分に混合攪拌されて、分散された状態で燃焼されるようになり、燃料の偏りがなくなり、燃えにくい低燃焼性燃料でも安定して燃焼されるようになる。
【0020】
また、本発明に係る工業炉においては、前記の第2燃焼用空気供給路を通して第4供給口から燃焼バーナー内に供給した燃焼用空気を旋回させながら低燃焼性燃料と混合させて燃焼させることが好ましい。このようにすると、前記の第1供給口や第2供給口等から供給された低燃焼性燃料を、第3供給口から供給された燃焼用空気と混合させて燃焼させた際に、燃焼されずに残った低燃焼性燃料が前記の第4供給口から燃焼バーナー内に旋回されながら供給された燃焼用空気と混合攪拌されて分散された状態で確実に燃焼されるようになると共に、二段階の燃焼によって火炎温度が高くなるのが防止されて、NOxが発生するのが抑制される。
【0021】
ここで、本発明に係る工業炉において、前記の低燃焼性燃料としては、例えばアンモニアを用いることができる。そして、このように低燃焼性燃料にアンモニアを用いた場合、前記の低温燃焼時の炉内の温度は常温~600°C程度であり、前記の中温燃焼時の炉内の温度は600°C~1000°C程度であり、前記の高温燃焼時の炉内の温度は1000°C以上である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る工業炉においては、前記のように温度センサーによって検知された炉内の温度に基づいて、制御装置により前記の第1バルブと第2バルブと第3バルブの開閉を制御するにあたり、前記の温度センサーによって検知された炉内の温度を、低温燃焼時と中温燃焼時と高温燃焼時との3段階に分け、温度センサーによって検知された炉内の温度が低温燃焼時の場合には、前記の制御装置により第1バルブと第2バルブとを閉じる一方、第3バルブを開けて前記のミックス用燃料供給路から前記の第1燃焼用空気供給路に低燃焼性燃料を供給し、低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させた状態で第3供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させると共に、前記の第2燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を前記の第4供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させるようにし、検知された温度が中温燃焼時の場合には、前記の制御装置により第1バルブと第3バルブとを閉じる一方、第2バルブを開け、前記の第1燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を第3供給口から燃焼バーナーに供給し、前記の第2燃料供給路を通して第2供給口から低燃焼性燃料を燃焼バーナーに供給すると共に、前記の第2燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を前記の第4供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させるようにし、検知された温度が高温燃焼時の場合には、前記の制御装置により第1バルブと第2バルブとを開ける一方、第3バルブを閉じ、前記の第1燃料供給路を通して低燃焼性燃料を第1供給口から燃焼バーナーに供給し、前記の第1燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を第3供給口から燃焼バーナーに供給し、前記の第2燃料供給路を通して第2供給口から低燃焼性燃料を燃焼バーナーに供給すると共に、前記の第2燃焼用空気供給路を通して燃焼用空気を前記の第4供給口から燃焼バーナーに供給して燃焼させるようにした。
【0023】
この結果、本発明に係る工業炉においては、燃焼開始当初のように温度が低い状態でも低燃焼性燃料を安定して燃焼できるようになると共に、従来のように低燃焼性燃料がまとめて一気に燃焼されて火炎温度が高くなるのが防止され、特に、低燃焼性燃料にアンモニアを用いた場合に、NOxの発生がするのを十分に抑制できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る工業炉の構造を示した概略断面説明図である。
図2】同実施形態に係る工業炉において、燃焼バーナーにより低燃焼性燃料を燃焼用空気と混合させて炉内に向けて燃焼させる状態を示し、(A)は温度センサーによって検知された炉内の温度が低温燃焼時の場合に、制御装置により燃焼バーナーにおける低燃焼性燃料の燃焼を制御する状態を示した概略断面説明図、(B)は温度センサーによって検知された炉内の温度が中温燃焼時の場合に、制御装置により燃焼バーナーにおける低燃焼性燃料の燃焼を制御する状態を示した概略断面説明図、(C)は温度センサーによって検知された炉内の温度が高温燃焼時の場合に、制御装置により燃焼バーナーにおける低燃焼性燃料の燃焼を制御する状態を示した概略断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る工業炉を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明における工業炉は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0026】
この実施形態における工業炉においては、図1及び図2(A)~(C)に示すように、低燃焼性燃料にアンモニアNHを用い、このアンモニアNHと燃焼用空気Airとを燃焼バーナー10に供給し、この燃焼バーナー10において、アンモニアNHと燃焼用空気Airとを混合させて炉1内に向けて燃焼させるようにしている。
【0027】
ここで、この実施形態の工業炉においては、低燃焼性燃料のアンモニアNHを前記の燃焼バーナー10の上流部に位置する第1供給口11に供給する第1燃料供給路21と、アンモニアNHを燃焼バーナー10における前記の第1供給口11よりも下流側に位置する第2供給口12に供給する第2燃料供給路22と、燃焼用空気Airを燃焼バーナー10における前記の第1供給口11よりも下流側で第2供給口12よりも上流側に位置する第3供給口13に供給する第1燃焼用空気供給路31と、アンモニアNHを前記の第1燃焼用空気供給路31に供給するミックス用燃料供給路23と、燃焼用空気Airを燃焼バーナーにおける前記の第2供給口12よりも下流側に位置する第4供給口14に供給する第2燃焼用空気供給路32とを設けると共に、前記の第1燃料供給路21に第1バルブ21aを設け、前記の第2燃料供給路22に第2バルブ22aを設け、前記のミックス用燃料供給路23に第3バルブ23aを設けている。
【0028】
また、この実施形態においては、前記の第1燃焼用空気供給路31と第2燃焼用空気供給路32とに対して、1つのブロワー30から燃焼用空気Airを供給するようにしている。なお、図示していないが、前記の第1燃焼用空気供給路31と第2燃焼用空気供給路32とに、それぞれ別のブロワーから燃焼用空気Airを供給するようにしてもよい。
【0029】
また、この実施形態の工業炉においては、炉1内の温度を検知する温度センサー41を設け、この温度センサー41によって検知された炉1内の温度を制御装置40に出力し、このように出力された炉1内の温度結果に基づいて、制御装置40により前記の第1バルブ21aと第2バルブ22aと第3バルブ23aの開閉を制御するようにしている。
【0030】
そして、この実施形態の工業炉においては、前記の制御装置40により、温度センサー41によって検知された炉1内の温度を低温燃焼時と中温燃焼時と高温燃焼時との3段階に分けて制御するようにしており、前記のように低燃焼性燃料にアンモニアNHを用いているため、温度センサー41によって検知された炉1内の温度が、例えば、常温~600°C程度である場合には低温燃焼時として、炉1内の温度が600°C~1000°C程度である場合には中温燃焼時として、炉1内の温度が1000°C以上である場合には高温燃焼時として制御するようにしている。
【0031】
ここで、この実施形態の工業炉において、前記の温度センサー41によって検知された炉1内の温度が常温~600°C程度の低温燃焼時の場合には、前記の制御装置40により、図2(A)に示すように、前記の第1バルブ21aと第2バルブ22aとを閉じる一方、第3バルブ23aを開けて、前記のミックス用燃料供給路23からアンモニアNHを第1燃焼用空気供給路31に供給し、アンモニアNHを燃焼用空気Airと混合させた状態で前記の第3供給口13から燃焼バーナー10に供給して燃焼させると共に、前記の第2燃焼用空気供給路32を通して燃焼用空気Airを前記の第4供給口14から燃焼バーナー10に旋回させながら供給して燃焼させるようにする。このようにすると、燃焼開始当初のように炉1内の温度が低い状態であっても、燃焼性の悪い低燃焼性燃料のアンモニアNHが燃焼用空気Airにプレミックスされた状態で安定して燃焼されるようになると共に、第4供給口14から旋回されるようにして供給された燃焼用空気Airと十分に混合されて燃焼されるようになる。
【0032】
また、前記の温度センサー41によって検知された炉1内の温度が600°C~1000°C程度の中温燃焼時の場合には、前記の制御装置40により、図2(B)に示すように、前記の第1バルブ21aと第3バルブ23aとを閉じる一方、第2バルブ22aを開けて、前記の第1燃焼用空気供給路31を通して第3供給口13から燃焼用空気Airだけを燃焼バーナー10に供給すると共に、前記の第2燃料供給路22を通して前記の第3供給口13の下流側に位置する第2供給口12からアンモニアNHを燃焼バーナー10に旋回させながら供給し、第3供給口13から供給された燃焼用空気Airと混合させてアンモニアNHの一部を燃焼させ、さらに第2燃焼用空気供給路32を通して燃焼用空気Airを前記の第4供給口14から燃焼バーナー10に旋回させながら供給し、前記の第3供給口13から供給された燃焼用空気Airによって燃焼されなかった残りのアンモニアNHを前記の燃焼用空気と混合させて燃焼させるようにする。このようにすると、第2供給口12から燃焼バーナー10に旋回されながら供給されたアンモニアNHが、第3供給口13から供給された燃焼用空気Airと第4供給口14からから供給された燃焼用空気Airと旋回されながら混合されて二段階で燃焼されるようになり、燃焼時における火炎温度が高くなるのが防止されてNOxが発生するのが抑制される。
【0033】
また、前記の温度センサー41によって検知された炉1内の温度が1000°C以上の高温燃焼時の場合には、前記の制御装置40により、図2(C)に示すように、前記の第1バルブ21aと第2バルブ22aとを開ける一方、第3バルブ23aを閉じ、前記の第1燃料供給路21を通して第1供給口11からアンモニアNHを燃焼バーナー10に供給すると共に、第1燃焼用空気供給路31を通して第3供給口13から燃焼用空気Airだけを燃焼バーナー10に供給し、第1供給口11から供給されたアンモニアNHと第3供給口13から供給された燃焼用空気Airとを混合させて燃焼させ、さらに、前記の第2燃料供給路22を通して前記の第3供給口13の下流側に位置する第2供給口12からアンモニアNHを燃焼バーナー10に旋回させながら供給すると共に、さらに前記の第2燃焼用空気供給路32を通して燃焼用空気Airを、前記の第2供給口12よりも下流側に位置する第4供給口14から燃焼バーナー10に旋回させながら供給し、この燃焼用空気Airと前記の第2供給口12から旋回させながら供給されたアンモニアNHとを混合させて燃焼させるようにする。このようにすると、燃焼バーナー10に、第1供給口11から供給されたアンモニアNHが、第3供給口13から供給された燃焼用空気Airと混合されて燃焼され、また第2供給口12から旋回されながら供給されたアンモニアNHが、第4供給口14から旋回されながら供給された燃焼用空気Airと混合されて燃焼されて、二段階で燃焼されるようになり、燃焼バーナー10に供給するアンモニアNHの量が多くしても、燃焼時における火炎温度が高くなるのが防止されてNOxが発生するのが抑制される。
【0034】
なお、燃焼用空気AirやアンモニアNHを旋回させる方法としては、図示していないが、例えば、燃焼用空気AirやアンモニアNHを噴射させる噴射口に旋回羽根を設けたり、燃焼用空気AirやアンモニアNHを円周に対して接線方向から噴射させるなど、どのような方法であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 :炉
10 :燃焼バーナー
11 :第1供給口
12 :第2供給口
13 :第3供給口
14 :第4供給口
21 :第1燃料供給路
21a :第1バルブ
22 :第2燃料供給路
22a :第2バルブ
23 :ミックス用燃料供給路
23a :第3バルブ
30 :ブロワー
31 :第1燃焼用空気供給路
32 :第2燃焼用空気供給路
40 :制御装置
41 :温度センサー
Air :燃焼用空気
NH :アンモニア(低燃焼性燃料)
図1
図2