(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】棒状化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230116BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230116BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230116BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230116BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230116BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230116BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230116BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230116BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230116BHJP
A61Q 1/06 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/25
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/44
A61K8/81
A61K8/92
A61Q1/06
(21)【出願番号】P 2018079157
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】湊 彩や香
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 利光
(72)【発明者】
【氏名】伏見 英彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 有喜子
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105951(JP,A)
【文献】特開2011-006349(JP,A)
【文献】特開2006-248918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0182157(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層と内芯を有する棒状化粧料であって、
前記外層を構成する組成物が固形油分と、液状油分と、ゲル化剤を含み、前記内芯を構成する組成物が固形油分と、液状油分と、ゲル化剤を含み、
前記ゲル化剤が、ジメチルシリル化シリカ、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドまたは(VP/エイコセン)コポリマーであり、
前記外層を構成する組成物全量に対し、前記外層に含まれる固形油分の含有量が10.5~20質量%、液状油分の含有量が71.68~84.0質量%、ゲル化剤の含有量が0.25~5質量%であり、
前記内芯を構成する組成物全量に対し、前記内芯に含まれる固形油分の含有量が7.0~14.0質量%、液状油分の含有量が77.68~89.0質量%、ゲル化剤の含有量が0.25~5質量%であり、
前記外層の硬度に対する前記内芯の硬度の比が0.1以上0.63以下で、
前記内芯の硬度が4gf以上25gf未満で、
外層の硬度が25gf以上80gf以下であり、
前記棒状化粧料の横断面積に対する前記内芯の断面積の比が0.17以上0.9以下である棒状化粧料。
【請求項2】
前記内芯または前記外層
の固形油分が、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化ヒマシ油、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシャートロプスワックス、合成ワックス、ポリエチレンワックス、ミツロウ、ラノリン、カルナバワックス、キャンデリラロウ、米ぬかロウ、ゲイロウ、イボタロウ、ホホバ油、コメヌカロウ、モンタンロウ、カポックロウ、ベイベリーロウ、セラックロウ、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、還元ラノリン、硬質ラノリン、POE(ポリオキシエチレン)ラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、パリミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリルの中から選ばれる少なくとも一種である請求項
1記載の棒状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は棒状化粧料に関し、詳細には外層と内芯からなる棒状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口紅等のスティック状化粧料において、異なる組成を有する複数相から構成される化粧料が知られている。代表例として、略円柱状の内芯と、その側面を被覆する形状の外層を具備する唇用化粧料が挙げられる。例えば、特許文献1や2には、内芯が水性化粧料で、外層が油性化粧料であるスティック状化粧料が記載されている。
【0003】
また、特許文献3には内芯に透明相と、外層に不透明相とが接触するように配置された多相成型化粧料として、例えば、透明相をリップグロスとし、不透明相を口紅とすることにより、唇に塗布し、上下の唇を擦り合わせることにより、ツヤのある唇のメーキャップが可能となる多相成型化粧料が記載されている。
【0004】
また、特許文献4には、温度変化に対する良好な貯蔵安定性を目的とした、軟質ゲルもしくは硬質ゲルまたは成形されたゲル等のゲル状スティックを外層とし、外層を構成する組成物の融点未満の融点を有する内芯からなる二重機能製品が記載されている。特許文献5には、リップスティック、リップグロスおよびリップライナーを組み合わせ、リップグロスをコアとし、外周部上の長手方向軸にこの軸に沿って延びるリップライナーを配した化粧料が開示されている。
【0005】
上記のような多相成型化粧料は、単一の組成物(単一相)では両立が困難な複数の特性を各々の相に持たせ、それらを接合することにより両方の特性を実現したり、一方の相が他方の相の課題点を補って所望の特性を達成したりできるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-68405号公報
【文献】特開平11-269025号公報
【文献】特開2011-68600号公報
【文献】特表2013-522227号公報
【文献】特表2014-516710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
棒状化粧料の場合、形状を維持するとともに成形性を良くするために固化剤を多く配合することが製品構造上、必須である。しかし、外層に固化剤を多く配合すると、良好なうるおい感やつやが低減し、経時でのごわつきを感じる傾向にあった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、従来の棒状化粧料では実感できないような液感を有し、良好なうるおい感やつや、経時でのごわつきが殆ど感じられない感触を実現しながら、形状維持や成形性も良好な棒状化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の棒状化粧料は、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる外層と、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる内芯と、を有する棒状化粧料であって、
外層の硬度に対する内芯の硬度の比が0.63以下で、
内芯の硬度が25gf未満で、
棒状化粧料の横断面積に対する内芯の断面積の比が0.17以上である。
【0010】
内芯組成物全量に対し、内芯に含まれる固化剤の含有量は25質量%以下であることが好ましい。
【0011】
外層組成物全量に対し、外層に含まれる固化剤の含有量は4質量%以上であることが好ましい。
【0012】
内芯または外層の固化剤にはゲル化剤を含み、このゲル化剤はデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、セルロース誘導体、水素添加レシチン、イソステアリン酸アルミニウム、有機変性ベントナイト、疎水性無水シリカ、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ジブチルラウロイルグルタミド、(ビスジアルキル(C14-18)アミド(エチレンジアミン/水添ダイマージリノール酸)コポリマー、(VP/エイコセン)コポリマーの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0013】
内芯または外層の固化剤には固形油分を含み、この固形油分は、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化ヒマシ油、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシャートロプスワックス、合成ワックス、ポリエチレンワックス、ミツロウ、ラノリン、カルナバワックス、キャンデリラロウ、米ぬかロウ、ゲイロウ、イボタロウ、ホホバ油、コメヌカロウ、モンタンロウ、カポックロウ、ベイベリーロウ、セラックロウ、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、還元ラノリン、硬質ラノリン、POE(ポリオキシエチレン)ラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、パリミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリルの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の棒状化粧料は、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる外層と、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる内芯と、を有する棒状化粧料であって、外層の硬度に対する内芯の硬度の比が0.63以下で、内芯の硬度が25gf未満で、棒状化粧料の横断面積に対する内芯の断面積の比が0.17以上であるので、従来の棒状化粧料では実感できないような液感を有し、良好なうるおい感やつや、経時でのごわつきが殆ど感じられない感触を有しながら、形状維持や成形性も良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の棒状化粧料の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の棒状化粧料について詳細に説明する。
本発明の棒状化粧料は、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる外層と、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる内芯と、を有する棒状化粧料であって、外層の硬度に対する内芯の硬度の比(内芯の硬度/外層の硬度、以下、硬度比率という場合もある)が0.63以下で、内芯の硬度が25gf未満で、棒状化粧料の横断面積に対する内芯の断面積の比(内芯の断面積/棒状化粧料の横断面積、以下、面積比率という場合もある)が0.17以上である。
ここで、棒状化粧料としては棒状の化粧料であれば特に限定されるものではなく、口紅、リップクリーム、バーム、ファンデーション、コンシーラー、アイシャドー、チーク、美容液、練香水等が挙げられる。
【0017】
まず、本発明の棒状化粧料の構成を図面を用いて説明する。
図1は本発明の棒状化粧料の一態様を示す模式図であり、
図2は
図1のI-I線断面図である。本発明の棒状化粧料1は、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる外層2と、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる内芯3と、を有し、外層2の硬度に対する内芯3の硬度の比が0.63以下で、内芯3の硬度が25gf未満で、棒状化粧料1の横断面積に対する内芯3の断面積の比が0.17以上である。なお、
図1では、棒状化粧料を充填した筒体(図示せず)を内部に収容し、筒体内の化粧料を、押棒を介して軸方向上方に押し出す繰出容器4を使用したものを示している。
【0018】
外層2は内芯3を完全に包み込んでいてもよいし、棒状化粧料1の先端部分において、内芯3が露出していてもよい。また、
図1および
図2では、外層および内芯の横断面がともに円形の場合を示しているが、外層および内芯の横断面は異なる形状であってよく、また円形に限らず、例えば、外層の横断面が楕円形、涙型、多角形状等であってもよいし、内芯の横断面が、特徴のある形状、例えば、ひし形、星形、ハート形、唇形等であってもよい。
【0019】
外層2の硬度に対する内芯3の硬度の比が0.63以下であることにより、棒状化粧料の形状維持や成形性を良好なものとすることができる。外層2の硬度に対する内芯3の硬度の比は0.58以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましい。外層2の硬度に対する内芯3の硬度の比の下限値は折れや安定性の観点から0.1以上がより好ましく、0.13以上がさらに好ましい。
【0020】
内芯3の硬度を25gf未満とすることで、棒状化粧料では実感できないような液感を有し、良好なうるおい感やつや、経時でのごわつきが殆ど感じられない感触を有するものとすることができる。内芯3の硬度は20gf以下であることが好ましく、15gf以下であることがさらに好ましい。内芯3の硬度の下限値は折れや安定性の観点から4gf以上であることが好ましく、7gf以上であることがさらに好ましい。
【0021】
外層の硬度は、内芯3の硬度を25gf未満で、外層2の硬度に対する内芯3の硬度の比が0.63以下に調整できればよく、25~100gfの範囲であることが好ましく、25~80gfの範囲であることが好ましい。
【0022】
ここで、硬度は試料にレオメーターのアダプターを浸入させた時の進入硬度であり、測定温度25℃で、1mmφのアダプターを30mm/minのスピードで上方から試料中に10mm進入させたときの応力のピーク値(単位はgf)である。
【0023】
棒状化粧料の横断面積は、
図1に示すように、棒状化粧料の軸方向(
図1における縦方向)に対する垂直断面の面積である。断面積を測定するための切断位置は、棒状化粧料の径が一定の径となっている位置から下の15~20mm下の間、例えば、
図1に示すように棒状化粧料が先端部分に向かって次第に細くなっていたり、あるいは繰出容器の軸方向に対して斜めにカットされていたり、いくつかのカット面を配しているような特定の形状となっていたりする場合には、それらの形状を構成していない位置(
図1の位置P)から下の15~20mmの間で切断する。断面積は15~20mmの間で5か所測定した平均値とする。
【0024】
なお、
図1や
図2では、棒状化粧料の横断面が円形の場合を示しているが、棒状化粧料の外層が楕円形、涙型、多角形状等であって、内芯が特定のある形状(例えば、星形、ハート形、唇形等)の場合も同様の位置および方法で測定する。
【0025】
棒状化粧料の横断面積に対する内芯の断面積の比が0.17以上であることで、良好なうるおい感やつや、経時でのごわつきが殆ど感じられない感触を有しながら、形状維持や成形性も良好なものとすることができる。棒状化粧料の横断面積に対する内芯の断面積の比は0.25以上であることがより好ましく、内芯を太くして内心に油分等を多く配合することができ、上記効果をより向上させることができるという観点から、0.5以上であることがさらに好ましい。成形性の観点からすると、棒状化粧料の横断面積に対する内芯の断面積の比の上限値は0.9以下であることが好ましく、0.85以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明の棒状化粧料は、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる外層と、少なくとも1つの固化剤を含む組成物からなる内芯とを有する。内芯に含まれる固化剤よりも外層に含まれる固化剤を多く配合することが好ましく、そのように配合することにより、形状の維持および成形性の確保を向上させることができる。
固化剤としては、ゲル化剤や固形油分が挙げられる。
【0027】
ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、セルロース誘導体、水素添加レシチン、イソステアリン酸アルミニウム、有機変性ベントナイト、疎水性無水シリカ(ジメチルシリル化シリカ)、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ジブチルラウロイルグルタミド、(ビスジアルキル(C14-18)アミド(エチレンジアミン/水添ダイマージリノール酸)コポリマー、(VP/エイコセン)コポリマーの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
これらのゲル化剤は単独でも、また適宜組み合わせて用いてもよい。
【0028】
固形油分としては、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化ヒマシ油、パラフィンワックス(直鎖炭化水素)、マイクロクリスタリンワックス(分岐飽和炭化水素)、セレシンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシャートロプスワックス、合成ワックス、ポリエチレンワックス、ミツロウ、ラノリン、カルナバワックス、キャンデリラロウ、米ぬかロウ(ライスワックス)、ゲイロウ、イボタロウ、ホホバ油、コメヌカロウ、モンタンロウ、カポックロウ、ベイベリーロウ、セラックロウ、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、還元ラノリン、硬質ラノリン、POE(ポリオキシエチレン)ラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、パリミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリルの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
これらの固形油分は単独でも、また適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
内芯組成物全量に対し、内芯に含まれる固化剤の含有量は25質量%以下であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましい。内芯に含まれる固化剤の含有量が25質量%以下であることで、内芯の硬度を25gf未満に調整しやすくなり、棒状化粧料における良好なうるおい感やつや、経時でのごわつきが殆ど感じられない感触とった使用感をより良好なものとすることができる。
内芯に含まれる固化剤の全てが固形油分であってもよく、その場合の含有量は、内芯組成物全量に対し0.1~25質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
外層組成物全量に対し、外層に含まれる固化剤の含有量は4質量%以上であることが好ましく、4~25質量%であることがより好ましく、4~20質量%であることがさらに好ましい。外層に含まれる固化剤の含有量が4質量%以上であることで、外層の硬度に対する内芯の硬度の比を0.63以下に調整しやすくなり、棒状化粧料の形状維持や成形性をより良好なものとすることができる。
外層に含まれる固化剤の全てが固形油分であってもよく、その場合の含有量は、外層組成物全量に対し4~25質量%であることが好ましく、4~20質量%であることがより好ましく、4~15質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
棒状化粧料には液状油分を含んでいてもよい。液状油分としては、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、月見草油等の液状油脂、ホホバ油、液状ラノリン等の液状ロウ類、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、揮発性炭化水素等の液状炭化水素、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸オクチル等の液状脂肪酸モノエステル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ2-エチルヘキシル等の液状二塩基酸ジエステル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等の液状グリコールエステル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル等の液状グリセリンエステル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル等の液状ポリグリセリンエステル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、ジオクタン酸ペンタエリトリット等の液状ペンタエリトリットエステル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等の液状トリメチロールプロパンエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等の液状リンゴ酸エステル等の液状エステル類、イソステアリン酸、オレイン酸等の液状高級脂肪酸、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール等の液状高級アルコール、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の液状鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の液状環状シリコーン、アミノ変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の液状変性ポリシロキサン等の液状シリコーン油、パーフロロポリエーテル等の液状フッ素化合物等が挙げられる。
これらの液状油分は単独でも、また適宜組み合わせて用いてもよい。
【0032】
内芯に含まれる液状油分の含有量は、つや感と経時のうるおい感の観点から、75~99.9質量%であることが好ましく、80~99.9質量%であることがより好ましく、75~99.9質量%であることがさらに好ましい。外層に含まれる液状油分の含有量は、折れや安定性の観点から、75~96質量%であることが好ましく、80~96質量%であることがより好ましく、85~96質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
棒状化粧料には、色材を配合することができる。色材としては、例えば、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン、酸化鉄処理雲母チタン、ガラスフレーク、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス、赤色228号、赤色226号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色202号、赤色204号等が挙げられる。色材は、1種または2種以上を任意に選択して配合することができる。なお、色材は疎水化等の処理をした処理物として配合することも可能である。
【0034】
色材は、棒状化粧料の全量中3~60質量%含有されることが好ましい。さらに好ましくは15~50質量%である。
【0035】
棒状化粧料には、他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。例えば、タルク、マイカ、セリサイト、合成マイカ、焼成マイカ、焼成セリサイト、ラウロイルリジン等の体質顔料、シリカ、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の球状粉末、界面活性剤、保湿剤、多価アルコール、増粘剤、高分子、低級アルコール、紫外線吸収剤、ビタミン類、美白剤、酸化防止剤、防腐剤、清涼剤、香料、水等を挙げることができる。
【0036】
本発明の棒状化粧料は上記成分を配合して公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、内芯を棒状の型によりあらかじめ塞いでおいたモールドに、外層を構成する組成物の構成成分を加熱して溶融し、これを流し込み、冷却固化させた後、内芯の型を抜き取り、その空隙部分に内芯を形成する組成物の構成成分を加熱して溶融し、これを流し込み、冷却固化する方法が挙げられる。内芯に挿入する棒状の型の太さを替えることにより、内芯と外層の構成割合を調整することができる。
【実施例】
【0037】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものでない。配合量は特に断りがない限り質量%である。
【0038】
表1に記載した各成分を混合、加熱溶融して均一にして組成物1~10を調製した。調製したそれぞれの組成物を深さ50mmの専用容器に流し込み、一晩放置し、25℃恒温槽に2時間以上放置したものを試料として、(株)レオテック製の「レオメーター NRM-2002J」にて、3回測定してその平均値を求めた。
硬度の測定結果と各処方を表1に示した。
【0039】
【0040】
(実施例1)
内芯を棒状の型(径5mm)で塞いだモールド(径12mm)に、表1に示した組成物3の各成分(配合量合計100質量%)を混合、加熱溶融して均一としたものを充填し、冷却固化させた。次いで内芯の棒状の型を抜き取り、その空隙部分に、表1に示した組成物5の各成分(配合量合計100質量%)を混合、加熱溶融して均一としたものを流し込んで冷却した。得られた二重構造の棒状化粧料(スティック状口紅)をモールドから取り出し、容器に収納した。
【0041】
(実施例2~9、比較例1~5)
実施例1と同様にして、表1の組成物を用いて、表2に示した外層および内芯からなる実施例2~9、比較例1~5の棒状化粧料を製造した。なお、面積比率0.5の実施例2、3、8、9、比較例3および4は径8.5mmの棒状の型を、面積比率0.6の実施例4、5は径9.3mmの棒状の型を、面積比率0.17の比較例1および2は径5mmの棒状の型を、面積比率0.1の比較例5は径4mmの棒状の型を、面積比率0.85の実施例7は径11mmの棒状の型を、面積比率0.9の実施例6は径11.5mmの棒状の型を用いた。
【0042】
(評価方法)
(うるおい感)
上記製造した棒状化粧料を唇に塗布したときのうるおい感を女性パネル10名により評価した。評価は、試料を唇に塗布したときのうるおい感について下記採点基準に基づいて3段階官能評価(スコア)とした。そのスコア平均値により、下記評価基準で判定した。
(スコア)
3点:うるおい感をとても感じる
2点:うるおい感を感じる
1点:うるおい感をあまり感じない
(評価基準)
A:スコア平均値2.5点以上3点未満
B:スコア平均値1.5点以上2.5点未満
C:スコア平均値1点以上1.5点未満
【0043】
(つや)
上記製造した棒状化粧料を唇に塗布したときのつやを女性パネル10名により評価した。評価は、試料を唇に塗布したときのつやについて下記採点基準に基づいて3段階官能評価(スコア)とした。そのスコア平均値により、下記評価基準で判定した。
(スコア)
3点:つやがとてもある
2点:つやがある
1点:つやが少ない
(評価基準)
A:スコア平均値2.5点以上3点未満
B:スコア平均値1.5点以上2.5点未満
C:スコア平均値1点以上1.5点未満
【0044】
(とろける感)
上記製造した棒状化粧料を唇に塗布したときのとろける感を女性パネル10名により評価した。評価は、試料を唇に塗布したときのとろける感について下記採点基準に基づいて3段階官能評価(スコア)とした。そのスコア平均値により、下記評価基準で判定した。 (スコア)
3点:塗りごこちがジェルのようなとろける感じがとてもする
2点:塗りごこちがジェルのようなとろける感じがする
1点:塗りごこちがジェルのようなとろける感じがあまりしない
(評価基準)
A:スコア平均値2.5点以上3点未満
B:スコア平均値1.5点以上2.5点未満
C:スコア平均値1点以上1.5点未満
【0045】
(折れ)
上記製造した棒状化粧料を女性パネル10名に一日に一度以上の使用を義務づけて、2週間連用した後の棒状化粧料の折れの状況を確認した。
A:折れの発生人数0人
B:折れの発生人数1~2人
C:折れ発生人数3人以上
処方と評価結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
表2に示すように、本発明の棒状化粧料は、良好なうるおい感やつや、とろける感を有し、経時でのごわつきが殆ど感じられない感触を実現しながら、折れの発生がなく、形状維持や成形性も良好であった。
【0048】
一方、外層の硬度に対する内芯の硬度の比が0.63で、棒状化粧料の横断面積に対する内芯の断面積の比が0.17であっても、内芯の硬度が25gfの比較例1では、うるおい感、とろける感がなく、感触が悪いものとなった。内芯の硬度が25gfの場合には、棒状化粧料の横断面積に対する内芯の断面積の比を0.5に増やしても、比較例4に示すようにうるおい感、とろける感がなく、感触を向上させることはできなかった。
【0049】
また、内芯の硬度を20gfとしても、外層の硬度に対する内芯の硬度の比が0.63よりも大きくなると、比較例2に示すようにうるおい感、とろける感がなく、感触を向上させることはできなかった。また、内芯の硬度を10gfとしても、棒状化粧料の横断面積に対する内芯の断面積の比が0.17未満であると、比較例5に示すようにうるおい感、とろける感がなく、感触を向上させることはできなかった。さらに、外層の硬度に対する内芯の硬度の比が0.63よりも大きくなると、比較例3に示すように、感触を向上させることはできても、折れやすくなり、形状維持や成形性に劣った。
【0050】
本発明の棒状化粧料の処方例を表5に示す。なお、表3には外層処方を、表4には内芯処方をそれぞれ示し、表5にその組合せと面積比を示している。
【0051】
【0052】
【0053】
【符号の説明】
【0054】
1 棒状化粧料
2 外層
3 内芯
4 繰出容器