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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】路面プロファイル測定器
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/02 20060101AFI20230116BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20230116BHJP
   E01C 23/01 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
G01C7/02
G01B21/00 T
E01C23/01
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018140776
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020016588
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】596053585
【氏名又は名称】西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502036147
【氏名又は名称】株式会社トノックス
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】竹内 英祐
(72)【発明者】
【氏名】畠見 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 正志
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-47137(JP,A)
【文献】特表2015-534055(JP,A)
【文献】特開2013-170944(JP,A)
【文献】特開2005-227249(JP,A)
【文献】特開平7-318342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G01B 21/00-21/32
G01B 11/00-11/30
E01C 23/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面までの距離を測る2つの非接触変位計と、
既知間隔だけ離れて配列された前記2つの非接触変位計の配列方向の傾斜角を測定する傾斜計と、
各非接触変位計及び前記傾斜計が搭載された車両に設けられた距離計としてのドップラ速度計と、
各非接触変位計、前記傾斜計及び前記ドップラ速度計からのデータを受ける演算処理部と、を備え、
前記車両の進行方向と前記2つの非接触変位計の配列方向とは平行であり、かつ各非接触変位計の測定点は路面プロファイルを測定する測線上を通過し、
前記演算処理部は、前記車両の走行に伴い所定のサンプリング周期毎に各非接触変位計と前記傾斜計からのデータを同期して取得するものであり、
前記2つの非接触変位計の間隔が、前記サンプリング周期間の前記車両の走行距離よりも大きく、200mm~300mmであり、
前記2つの非接触変位計の配列方向の間隔をW、前記傾斜計で測定される前記2つの非接触変位計の配列方向の水平面に対する傾斜角をα、前記2つの非接触変位計のうちの第1非接触変位計により得られる前記2つの非接触変位計の配列方向に垂直な路面A点までの距離をLf、前記2つの非接触変位計のうちの第2非接触変位計により得られる前記2つの非接触変位計の配列方向に垂直な路面B点までの距離をLgとしたとき、
前記路面A点と前記路面B点間の水平方向の距離X、前記路面A点と前記路面B点間のの水平面に垂直方向の距離Y、及び前記路面A点と前記路面B点間の傾斜角θを下記式
X=(W/cosα)-[Lf-{Lg-(Wtanα)}]sinα
Y=[Lf-{Lg-(Wtanα)}]cosα
θ=tan -1 (Y/X)
で求め、前記傾斜角θを用いて、前記車両が一定距離l進むごとに
水平方向の距離:L=lcosθ
垂直方向の高さ:h=lsinθ
を求める路面プロファイル測定器であって、
前記傾斜計のサンプリング周期は、前記非接触変位計のサンプリング周期の整数倍でかつ同期しており、
前記演算処理部は、前記非接触変位計のサンプリング周期毎のデータと、前記非接触変位計のサンプリング周期に合わせて前記傾斜計のデータを按分処理したデータとを取得し、かつ
前記演算処理部は、前記車両の一定走行距離毎の、各非接触変位計と前記傾斜計のデータを求め、路面プロファイル算出処理を行うとともに、
前記非接触変位計のデータをフィルタ処理して微細な変位量を除去することを特徴とする路面プロファイル測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り心地による路面評価のための路面のプロファイル(車道縦断方向の凹凸波形、一般に車輪通過位置)を測定する路面プロファイル測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
1986年に世界銀行により、舗装路面と運転者の乗り心地を関連付けた国際ラフネス指数IRI(International Roughness Index)による評価が提唱され、乗り心地による路面評価が国際的に一般化しつつある。
【0003】
IRIは、路面のプロファイル(車道縦断方向の凹凸波形、一般に車輪通過位置)上を、車両部分をモデル化したQCモデル(クオーターカーモデル)を一定の速度で走行させたときに、車両が受ける上下方向の運動変位の累積値と走行距離の比である(比率が大きいほど乗り心地が悪い)。このIRIは、舗装の損傷有無を判断する目安など路面の管理に使われている。
【0004】
車載式でIRIを求めるものとして「STAMPER」(登録商標第5362581号)がある。これは車両のバネ上とバネ下に加速度計を取り付け、車両走行時にそれら加速度計により測定される加速度波形から、プロファイルを求めIRIを算出するものであり、車載式であるため長距離のIRIを一気に求められるメリットはあるが、原理上、低速域(30km/h以下)や加減速が加わるとプロファイルの再現性が下がり正確なIRIを求めることが出来ない(詳細は下記特許文献1参照)。
【0005】
IRIを正確にもとめるものとして手押し式の「ハンディするする」がある(下記非特許文献1)。この手押し式の「ハンディするする」は、前後二輪の測定輪と、この測定輪が路面を通過して出来た傾き角を測定する傾斜計により構成されており、測定輪の路面走行時による傾き角から高さを求めるもので路面のプロファイルが正確に再現できるので、IRIも正確に求めることが出来る。しかし手押し式のため長距離には向かない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-66040号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】舗装2007年1月号Vol.42,No.1.18-20頁「簡易な縦横断形状測定装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の手押し式路面プロファイル測定器を車載することも出来るが、前後二輪の測定輪による接触式のため、路面の損傷による穴や溝あるいはマンホールや橋梁のジョイント及び石ころなどの突起物などが存在する路面を高速走行で通過する際には、測定輪が引っかかり、測定輪が外れる恐れがあることを想定すると非常に危険である。
【0009】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、非接触による測定のため安全に路面のプロファイルを測定可能な路面プロファイル測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は路面プロファイル測定器である。この路面プロファイル測定器は、路面までの距離を測る2つの非接触変位計と、既知間隔だけ離れて配列された前記2つの非接触変位計の配列方向の傾斜角を測定する傾斜計と、各非接触変位計及び前記傾斜計が搭載された車両に設けられた距離計としてのドップラ速度計と、各非接触変位計、前記傾斜計及び前記ドップラ速度計からのデータを受ける演算処理部と、を備え、
前記車両の進行方向と前記2つの非接触変位計の配列方向とは平行であり、かつ各非接触変位計の測定点は路面プロファイルを測定する測線上を通過し、
前記演算処理部は、前記車両の走行に伴い所定のサンプリング周期毎に各非接触変位計と前記傾斜計からのデータを同期して取得するものであり、
前記2つの非接触変位計の間隔が、前記サンプリング周期間の前記車両の走行距離よりも大きく、200mm~300mmであり、
前記2つの非接触変位計の配列方向の間隔をW、前記傾斜計で測定される前記2つの非接触変位計の配列方向の水平面に対する傾斜角をα、前記2つの非接触変位計のうちの第1非接触変位計により得られる前記2つの非接触変位計の配列方向に垂直な路面A点までの距離をLf、前記2つの非接触変位計のうちの第2非接触変位計により得られる前記2つの非接触変位計の配列方向に垂直な路面B点までの距離をLgとしたとき、
前記路面A点と前記路面B点間の水平方向の距離X、前記路面A点と前記路面B点間のの水平面に垂直方向の距離Y、及び前記路面A点と前記路面B点間の傾斜角θを下記式
X=(W/cosα)-[Lf-{Lg-(Wtanα)}]sinα
Y=[Lf-{Lg-(Wtanα)}]cosα
θ=tan -1 (Y/X)
で求め、前記傾斜角θを用いて、前記車両が一定距離l進むごとに
水平方向の距離:L=lcosθ
垂直方向の高さ:h=lsinθ
を求める路面プロファイル測定器であって、
前記傾斜計のサンプリング周期は、前記非接触変位計のサンプリング周期の整数倍でかつ同期しており、
前記演算処理部は、前記非接触変位計のサンプリング周期毎のデータと、前記非接触変位計のサンプリング周期に合わせて前記傾斜計のデータを按分処理したデータとを取得し、かつ
前記演算処理部は、前記車両の一定走行距離毎の、各非接触変位計と前記傾斜計のデータを求め、路面プロファイル算出処理を行うとともに、
前記非接触変位計のデータをフィルタ処理して微細な変位量を除去することを特徴とする。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る路面プロファイル測定器によれば、車載式で再現性の高い路面プロファイルを非接触で測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】手押し式の「ハンディするする」の構成図。
図2】手押し式の「ハンディするする」の路面プロファイル測定原理図。
図3】本発明で用いる非接触変位計の構成図。
図4】本発明に係る路面プロファイル測定器の実施の形態であって、(A)は主要構成部品の配置を示す概略側面図、(B)は同じく底面図。
図5】本実施の形態において、車両挙動を補正して、路面の傾き角を測定可能とする原理説明図。
図6】実施の形態における信号処理系を示すシステムブロック図。
図7】100μsサンプリング時間毎の実際のデータと、傾斜角データを按分処理したデータ。
図8】距離データ毎の実際のデータ。
図9】一定距離データ毎にするために、各データを比例補間して求めたデータ。
図10】比例補間法の説明図。
図11】非接触変位計データのフィルタリング処理の説明図。
図12】計測と処理時のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
本発明の実施の形態を説明する前に従来の手押し式「ハンディするする」による路面プロファイルの測定原理を説明する。
【0020】
図1が手押し式の「ハンディするする」の構成図である。前側の測定輪(以下前輪とする)1と後側の測定輪(以下後輪とする)2の間に傾斜計(ジャイロ)3が搭載されている。つまり前記2輪の測定輪が路面を走行することで2輪間の高さの差が生じ傾斜計3が傾く、この傾斜計3からは水平に対する傾き角度θが出力される。後輪には距離計(エンコーダ)4が取り付けられている。傾斜計3及び距離計4の出力はパソコンPCにそれぞれ供給される。
【0021】
路面プロファイル測定原理は図2を用いて説明する。スタート位置の前輪の位置を前輪a(5)、後輪の位置を後輪a(6)とする。前輪a(5)と後輪a(6)の2輪間の高さの差で生じた傾き角度をθaとする。
【0022】
つづいて路面上を距離l進んだ時の、前輪の位置を前輪b(8)、後輪の位置を後輪b(9)とする。前輪b(8)と後輪b(9)の2輪間の高さの差で生じた傾き角度をθbとする。
【0023】
さらに、路面上を距離l進んだ時の、前輪の位置を前輪c(11)、後輪の位置を後輪c(12)とする。前輪c(11)と後輪c(12)の2輪間の高さの差で生じた傾き角度をθcとする。
【0024】
このように距離l進んで前輪と後輪の2輪間の高さの差で生じた傾き角θにより下式(式1),(式2)から水平方向の距離と垂直方向の高さが求められる
水平方向の距離:L=lcosθ (式1)
垂直方向の高さ:h=lsinθ (式2)
【0025】
よって、前記距離l進んだとき毎の傾き角度、θa、θb、θcを上式(式1),(式2)のθに代入することにより、水平方向の距離:La、Lb、Lc及び垂直方向の高さ:ha、hb、hcが求まる。
【0026】
ここで距離l進んだとき毎とあるが、図1の後輪に取り付けられている距離計(エンコーダ)4から距離l進むごとに信号(パルス)が出力され、この信号に同期して傾斜計3の傾き角度を取り込む事で前記式を実現して路面プロファイルを求める原理となっている。
【0027】
次に、本発明に係る路面プロファイル測定器の実施の形態で使われている非接触変位計について図3(A),(B),(C)を用いて説明する。
【0028】
非接触変位計は、レーザ変位計と呼ばれており、半導体レーザ14と投光レンズ15と受光レンズ16及び受光素子17とを備えている。
【0029】
半導体レーザ14から出射されたレーザ光は、投光レンズ15を通過して細く絞られ対象物18に照射される。
【0030】
対象物18で反射されたレーザ光の一部が、受光レンズ16を通過して受光素子17上に最も細く絞られるように受光素子17に到達する。その到達点は、図3(A)のように対象物が基準距離の場合、受光素子17のa点に、また図3(B)のように対象物18の距離が近づいた場合は受光素子17のb点に、さらに図3(C)のように対象物18の距離が遠ざかったときは、受光素子17のc点に到達する。つまり、レーザ変位計からの対象物18までの距離変化に応じて受光素子17のレーザ反射光の到達点が変わる。受光素子17は、ラインセンサのようなもので、光が照射された位置を電気信号に変えて出力する。
【0031】
このような原理でレーザ変位計は、対象物18までの距離が測定できるようになっている。
【0032】
本発明に係る路面プロファイル測定器の実施の形態を図4から図12を用いて説明する。
【0033】
図4は路面プロファイル測定器における非接触変位計等の主要構成部品配置であって、(A)は概略側断面図、(B)は路面から見たベースプレートの底面図である。前側非接触変位計21と後側非接触変位計22をある間隔離して(ここでは、「ハンディするする」の測定輪間隔の250mmとしている。)、2台の非接触変位計21と22が1列に並ぶようベースプレート20に取り付いている。
【0034】
2台の変位計21と22の列方向の傾き角を測定するための傾斜計(ジャイロ)23がベースプレート20に取り付いている。2台の変位計21と22の列方向が車両の進行方向に対して平行になるように、ベースプレート20が車両CRに固定されている。各非接触変位計21,22の測定点は路面プロファイルを測定する測線上を通過する。車両の進行方向の距離と同期化処理するために、距離計24(非接触式のドップラ速度計24a)が取り付けられている。
【0035】
路面ABの傾斜角は「ハンディするする」では前輪と後輪の2輪間の高さの差で生じた傾き角を直接測定するものであるが、本発明の実施の形態では前側非接触変位計21によるA点までの距離Lfと後側非接触変位計によるB点までの距離Lg及び2台の非接触変位計間隔である250mmから次式(式3)で傾き角度θが求まる。
θ=tan-1{(Lf-Lg)/250} (式3)
【0036】
2台の非接触変位計21と22が取り付けられているベースプレート20が常に水平であれば前記式3のみで「ハンディするする」と同じように、路面プロファイルが測定できるが、ベースプレート20は車両に固定されているため、走行路面の凹凸により車両CRに拳動が発生するため、ベースプレート20は水平とは限らない。
【0037】
そこで、ベースプレート20に取り付けられている傾斜計23により、ベースプレート20の進行方向(2台の非接触式変位形の列方向)の傾斜角αを測定し補正を行う。
【0038】
図5に、車両CRの拳動によるベースプレート20に傾きが生じても路面AB点の傾き角を測定できることを説明する。
【0039】
前側非接触変位計21と後側非接触変位計22は、間隔W離れており、取り付け面は水平面に対して角度αだけ傾いている。前側非接触変位計21から路面Aまでの距離をLfとし、後側非接触変位計22から路面Bまでの距離をLgとする。距離Lf,Lgはベースプレート20に垂直な方向に測定した距離である。
【0040】
路面A、Bの傾き角θとしたとき、傾き角θを求めるためには、XとYが求まれば次式(式4)から傾き角θが求まる。
θ=tan-1(Y/X} (式4)
さらにXとYは、次式(式5)と(式6)からW、α、Lf、Lgが分かれば求めることができる。
X=(W/cosα)-[Lf-{Lg-(Wtanα)}]sinα (式5)
Y=[Lf-{Lg-(Wtanα)}]cosα (式6)
よって、本発明の実施の形態では、2台の非接触変位計21,22によるLfとLg及び傾斜計23によるベースプレート進行方向の傾斜角αが測定でき、Wは取付間隔であるのでA、Bの傾斜角θが求まる。
【0041】
そこで、車両CRに搭載された距離計24により車両CRが一定距離l進むごとに、Lf、Lg、W、及びαからθを求めることで、下式(式7)(式8)によりプロファイルが求まる。
水平方向の距離:L=lcosθ (式7)
垂直方向の高さ:h=lsinθ (式8)
【0042】
図6は、実施の形態において、前側非接触変位計21、後側非接触変位計22、傾斜計23及び距離計24(ここではドップラ速度計24aを用いた場合を例示する)からの検出信号を処理する構成を示すブロック図である。この図において、前側非接触変位計21の検出信号は、コントローラ33を介してA/D変換ユニット41のCH1に入力される。後側非接触変位計22の検出信号は、コントローラ35を介してA/D変換ユニット41のCH2に入力される。コントローラ33,35の出力は、非接触変位計21,22から路面までのそれぞれの距離に対し、基準距離±250mmの範囲で±5V出力される。距離計24は、コントローラ37を介してA/D変換ユニット41のCH3に入力される。コントローラ37の出力は、距離計24と対路面との速度が0~100km/hの範囲で0~+4V出力される。
【0043】
パルス発生回路38内には、1PPS発生回路39と100μsクロック発生回路40があり、1PPS発生回路39は、1秒毎に1パルス発生し、100μsクロックパルス発生回路40から出力された100μsクロックパルスとは、時間的に同期がとれている。100μsクロックパルス発生回路40で生成された100μsクロックパルスは、A/D変換ユニット41のTrにサンプリングクロック用として入力される。
【0044】
以上から、前側非接触変位計21、後側非接触変位計22、及び距離計24の検出信号は、A/D変換ユニット41内部で、100μsのサンプリングクロックで同じタイミングでA/D変換される。A/D変換されたデータは、A/D変換ユニット41内のバッファに一時蓄えられ、USBの通信ポートを介して演算処理部としてのPC(パーソナルコンピュータ)42に入力される。傾斜計23は、デジタル出力であり、100Hzの更新レートでデータが、シリアル信号でPC42のCOMポートに入力される。傾斜計23には、1PPSのINPUT部があり、パルス発生回路38の1PPS発生回路39から1PPS信号を入力することにより、これに同期して100Hz毎のデータは、1PPS間を100Hz毎データで更新することになる(1データあたり10ms毎)。
【0045】
以上から、A/D変換ユニット41に入力されるデータは、100μs毎(0.1ms毎)であり、傾斜計23からのデータは、100Hz毎(10ms毎)と更新時間の違いはあるが時間的には、同期がとれていることになる。
【0046】
図7は、A/D変換ユニット41と傾斜計(ジャイロ)43からPC42に入力された実際のデータである。
図7の1列目は、100μs毎(0.1ms毎)のサンプリング時間(44)
2列目は、前側非接触変位計のデータ(45)
3列目は、後側非接触変位計のデータ(46)
4列目は、計測速度のデータ (47)である。
前側非接触変位計21のデータ(45)、後側非接触変位計22のデータ(46)及び距離計(ドップラ速度計)24からの計測速度のデータ(47)は、A/D変換ユニット41で、100μs毎にサンプリングされたデータであるため100μs毎データが更新されていることがわかる。
【0047】
5列目は、傾斜計23からの傾斜角データ(48)である。傾斜角データ(48)は、100Hz(10ms)毎のデータであるため、10ms毎にデータが更新されていることがわかる。なお、先に述べたが、時間的な同期がとれているため、傾斜角データ(48)は、A/D変換データ{データ(45),(46),(47)}の100個飛びに更新されている。この傾斜角データを100μs毎(0.1ms毎)のデータにするためには、10ms毎のデータを使って按分処理を行なう。
【0048】
6列目は、5列目の10ms毎の傾斜計データ(48)を按分処理して、100μs毎(0.1ms毎)に変換したデータ(按分処理した傾斜角)(49)である。
【0049】
つづいて、図7のデータは、100μs毎の時間データ毎となっているため、距離データ毎にする必要がある。
【0050】
図7の4列目は計測速度データ(47)であるため、これにサンプリング時間の100μsを掛けることで、その間の進んだ距離が求まる。このようにして進んだ距離毎に並べ換えたデータが図8である。
【0051】
図8の1列目は、図7の計測速度データをサンプリング時間の100μsを掛けて
求めた進んだ距離(50)
2列目は、前側非接触変位データ(51)
3列目は、後側非接触変位データ(52)
4列目は、按分処理した傾斜データ(53)である。
【0052】
図8のデータは距離毎のデータであるが、一定の距離毎になっていないため、さらに一定の距離(5mm毎)にしたものが図9である。一定距離毎(5mm毎)にする方法としては図10のような比例補間法による(式9)により求めた。
【0053】
例えば、距離10mmの前側非接触変位計のデータを求める場合図8の距離データ(50)の10mmの前後のデータをX、Xに代入する。ここでは、Xが9.974444、Xが10.68639となる。つづいて、後側非接触変位計の距離10mm前後のデータをY、Yに代入する。ここでは、Yが-45.27、Yが-45.22となる。Xは10mmであり(式9)からYが距離10mmのデータとなる。このようにして各データを5mm毎に求めたものが図9である。
【0054】
ここで前側非接触変位計データと後側非接触変位計データは、レーザ変位計による小スポット(スポット径1~2mm)のレーザを路面に照射して変位を求めたものであり、アスファルト路面の骨材の凹凸のような細かい形状変化も検出してしまい、路面のプロファイルとしては、そこまで細かい形状を必要としない。そこで図9の5mm毎の非接触変位計データをフィルタ処理する。フィルタ処理は、図11のような移動平均や円を転がした軌跡をとるようなフィルタ等を使う。
【0055】
このようにして一定の距離(5mm)毎のデータに対する2台の非接触変位計データ及び傾斜角データが求められるので前記(式5),(式6)に代入し、さらに(式4)から一定距離毎の路面の傾き角が求められ、(式7),(式8)から水平方向の距離と垂直方向の高さが求まることにより路面プロファイルが算出できる。
【0056】
ここまでの処理をフロー図にまとめたものが図12である。プロファイル処理は、計測時にリアルタイム処理する必要はなく、計測後に計算処理すれば良いので、ここでは、計測時はデータの取得と処理時はプロファイル計算処理で分けた。つまり、計測時は、取得データをPC42の記憶装置(HDD等)に格納しておく。処理時はPC42の記憶装置からデータを呼び出しPC42において路面プロファイル算出処理を行う。
【0057】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0058】
(1) 路面までの距離を非接触変位計21,22で計測するため、安全に路面のプロファイルを測定できる。
【0059】
(2) 車両に搭載して高速で路面プロファイルを再現性良く計測可能である。
【0060】
(3) 2つの非接触変位計21,22の間隔が、サンプリング周期間の車両CRの走行距離よりも大きく、200mm~300mmであるため(例えば250mm)、精度の良い路面プロファイル測定が可能である。
【0061】
(4) 非接触変位計21,22のデータをフィルタ処理して微細な変位量を除去することが可能であり、アスファルト路面の骨材の凹凸のような細かい形状変化に起因する変化を除去可能である。
【0062】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0063】
実施の形態において、非接触変位計21,22のデータのフィルタ処理は、図12のように、路面プロファイル算出処理の直前にソフトウエアで行ってもよいし、図6のA/D変換ユニット41に非接触変位計21,22のデータを供給する段階でハードウエア(例えばローパスフィルタの挿入等)で行ってもよい。
【符号の説明】
【0064】
20 ベースプレート
21.22 非接触変位計
23 傾斜計
24 距離計
33,35,37 コントローラ
38 パルス発生回路
41 A/D変換ユニット
42 PC(パーソナルコンピュータ)
図1
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図3
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図12