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特許7210237コンクリート部材の連結構造及びプレキャストコンクリート部材の連結方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】コンクリート部材の連結構造及びプレキャストコンクリート部材の連結方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230116BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20230116BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20230116BHJP
   E04B 1/04 20060101ALI20230116BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20230116BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
E04B1/58 503E
E04B1/58 504A
E04B1/61 503D
E04B1/61 502K
E04B1/21 A
E04B1/04 D
E04C5/18
E04G21/12 105E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018214446
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020084408
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】池田 真
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-235850(JP,A)
【文献】特開昭61-254734(JP,A)
【文献】特開2003-049489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/61
E04B 1/21
E04B 1/04
E04C 5/18
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のコンクリート部材を鉄筋及び鉄筋継手を介して連結する連結構造であって、
前記鉄筋継手は、
互いに離間して並設された2枚のフランジ部材と、
前記2枚のフランジ部材を連結させるウェブ部材と、を有し、
前記2枚のフランジ部材間において、前記2枚のフランジ部材と前記ウェブ部材により三面を囲まれた空間である2つの鉄筋収容部が構成され
一方の前記鉄筋収容部には一方の前記コンクリート部材から突出する1又は複数の鉄筋を収容し、
他方の前記鉄筋収容部には他方の前記コンクリート部材から突出する1又は複数の鉄筋を収容し、
前記鉄筋収容部を含む前記一対のコンクリート部材の間隙部には硬化材が充填され、前記鉄筋及び前記鉄筋継手全体を埋設していることを特徴とする、コンクリート部材の連結構造。
【請求項2】
前記2枚のフランジ部材及び前記ウェブ部材は平鋼板であり、
前記ウェブ部材は、前記2枚のフランジ部材のフランジ幅方向中央部近傍において当該フランジ部材同士を連結させるように設けられ、
断面形状が略H形形状であることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート部材の連結構造
【請求項3】
前記2枚のフランジ部材は、断面形状が略L字の形鋼であり、
前記ウェブ部材は、前記2枚のフランジ部材の屈曲部同士を連結するように設けられることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート部材の連結構造
【請求項4】
前記フランジ部材には、当該フランジ部材のフランジ幅方向端部において、前記鉄筋収容部方向に張り出す張り出し部材が設けられることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート部材の連結構造
【請求項5】
前記2つの鉄筋収容部各々には、
鉄筋収容時に、貫通穴を通じて前記鉄筋を貫通させる貫通プレートが配置されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンクリート部材の連結構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のコンクリート部材の連結構造を用いプレキャストコンクリート部材同士、又は、プレキャストコンクリート部材と他のコンクリート部材とを連結させるプレキャストコンクリート部材の連結方法であって、
前記プレキャストコンクリート部材及び他のコンクリート部材を、連結させるための鉄筋を突出させた状態で製造し、
前記プレキャストコンクリート部材及び他のコンクリート部材を連結すべき所定の位置に配置し、
前記鉄筋が前記鉄筋収容部に収容されるように鉄筋連結用継手を配置し、
前記鉄筋収容部、及び、前記プレキャストコンクリート部材同士間、又は、プレキャストコンクリート部材と他のコンクリート部材との間の間隙部に硬化材を充填することを特徴とする、プレキャストコンクリート部材の連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプレキャストコンクリート部材同士や、プレキャストコンクリート部材と他のコンクリート部材とを連結させるために用いられる鉄筋連結用継手、当該鉄筋連結用継手を用いて構成される鉄筋連結用継手構造、及び当該鉄筋連結用継手を用いるプレキャストコンクリート部材の連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の都市において、ビルなどの構造物や、各種地下構造物等を建築する場合に、工場などで予め製作されたコンクリート製の部材を現場に搬入し、部材同士を組み合わせる方法や既設部材に組み付けるといった方法で柱や梁を構成するといった技術が知られている。このような予め製作されたコンクリート製の部材は「プレキャストコンクリート部材」や「プレキャスト部材」と呼称される。このプレキャスト部材は、例えばプレキャスト部材と他の部材を連結させるための鉄筋を突出させた構成で製作される。
【0003】
プレキャストコンクリート部材を用いた工法の一例として、例えば特許文献1には、プレキャスト部材と既設部材との間の接合において、施工誤差や製造誤差に影響されることなく、連結を行うことができる接合構造が開示されている。また、例えば特許文献2には、プレキャスト部材と他のコンクリート部材との間隔を小さくすると共に、施工の手間を低減させるような接合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-65417号公報
【文献】特開2017-190629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術は、プレキャスト部材と既設部材との間の接合に関する技術であり、部材接合端部において凹部を形成し、当該凹部内部の箱体に各部材の鉄筋(主筋)端部を対向した状態で配置し、その状態で接着剤を介在させることで連結を行っている。また、上記特許文献2に記載の技術は、プレキャスト部材と他のコンクリート部材との間の接合に関する技術であり、接合部に筒状部材を設け、当該筒状部材の内部に各部材の鉄筋(主筋)端部を対向した状態で配置し、その状態で充填材を充填させることで連結を行っている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、凹部を形成し、箱体の内部に1対の鉄筋先端部を収容する構成を採っており、また、上記特許文献2では、筒状部材を設け、当該筒状内部に1対の鉄筋先端部を収容する構成を採っているため、施工の煩雑化が懸念され、更なる効率化の余地がある。特に、上記特許文献1、2の技術では、対向する1本ずつ(1対)の鉄筋(主筋)同士を接合させる構成としており、例えば、複数対の鉄筋を互いに対向した状態で接合させる際の施工効率化等には言及がされていない。現代の構造物においてプレキャスト部材を用いて部材の組み付け等を行う場合、プレキャスト部材に複数対の鉄筋が取り付けられている構成が多々あり、部材間でそれら複数対の鉄筋同士を対向させて接合させる際に接合部の安定化や、施工の更なる効率化が求められている。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、プレキャストコンクリート部材の鉄筋同士を効率的に接合させることが可能であり、特に、対向する複数対の鉄筋の先端部同士を効率的にまとめて接合することが可能なコンクリート部材の連結構造及びプレキャストコンクリート部材の連結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、一対のコンクリート部材を鉄筋及び鉄筋継手を介して連結する連結構造であって、前記鉄筋継手は、互いに離間して並設された2枚のフランジ部材と、前記2枚のフランジ部材を連結させるウェブ部材と、を有し、前記2枚のフランジ部材間において、前記2枚のフランジ部材と前記ウェブ部材により三面を囲まれた空間である2つの鉄筋収容部が構成され、一方の前記鉄筋収容部には一方の前記コンクリート部材から突出する1又は複数の鉄筋を収容し、他方の前記鉄筋収容部には他方の前記コンクリート部材から突出する1又は複数の鉄筋を収容し、前記鉄筋収容部を含む前記一対のコンクリート部材の間隙部には硬化材が充填され、前記鉄筋及び前記鉄筋継手全体を埋設していることを特徴とする、コンクリート部材の連結構造が提供される。
【0009】
前記2枚のフランジ部材及び前記ウェブ部材は平鋼板であり、前記ウェブ部材は、前記2枚のフランジ部材のフランジ幅方向中央部近傍において当該フランジ部材同士を連結させるように設けられ、断面形状が略H形形状であっても良い。
【0010】
前記2枚のフランジ部材は、断面形状が略L字の形鋼であり、前記ウェブ部材は、前記2枚のフランジ部材の屈曲部同士を連結するように設けられても良い。
【0011】
前記フランジ部材には、当該フランジ部材のフランジ幅方向端部において、前記鉄筋収容部方向に張り出す張り出し部材が設けられても良い。
【0013】
前記2つの鉄筋収容部各々には、鉄筋収容時に、貫通穴を通じて前記鉄筋を貫通させる貫通プレートが配置されても良い。
【0014】
また、本発明によれば、上記記載のコンクリート部材の連結構造を用いプレキャストコンクリート部材同士、又は、プレキャストコンクリート部材と他のコンクリート部材とを連結させるプレキャストコンクリート部材の連結方法であって、前記プレキャストコンクリート部材及び他のコンクリート部材を、連結させるための鉄筋を突出させた状態で製造し、前記プレキャストコンクリート部材及び他のコンクリート部材を連結すべき所定の位置に配置し、前記鉄筋が前記鉄筋収容部に収容されるように鉄筋連結用継手を配置し、前記鉄筋収容部、及び、前記プレキャストコンクリート部材同士間、又は、プレキャストコンクリート部材と他のコンクリート部材との間の間隙部に硬化材を充填することを特徴とする、プレキャストコンクリート部材の連結方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プレキャストコンクリート部材の鉄筋同士を効率的に接合させることが可能であり、特に、対向する複数対の鉄筋の先端部同士を効率的にまとめて接合することが可能なコンクリート部材の連結構造及びプレキャストコンクリート部材の連結方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施の形態に係る鉄筋連結用継手構造の概略説明図である。
図2】第1実施の形態に係る鉄筋連結用継手構造の概略断面図である。
図3】第1実施の形態に係る鉄筋連結用継手構造の概略断面図である。
図4】第2実施形態に係る鉄筋連結用継手構造の概略断面図である。
図5】第3実施形態に係る鉄筋連結用継手構造の概略断面図である。
図6】貫通プレートの概略図である。
図7】本発明の変形例に係る鉄筋連結用継手構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0018】
(本発明の第1実施形態に係る鉄筋連結用継手構造)
図1は本発明の第1実施形態に係る鉄筋連結用継手構造1の概略説明図である。図1では、簡略化のためプレキャストコンクリート部材は図示せず、プレキャストコンクリート部材から突出する複数の鉄筋が対向している状態を、当該鉄筋の先端部に注視して図示している。また、対向する複数対の鉄筋の数の一例として、3本の鉄筋が各々その先端部同士を突き合わせた状態を図示している。
【0019】
図1に示すように、鉄筋連結用継手構造1においては、互いに対向する複数対の鉄筋、即ち、一方の鉄筋3と他方の鉄筋4が、当該鉄筋3、4の先端部3a、4a同士を突き合わせた状態で配置される。先端部3aと4aは所定の間隔でもって離間しており、一方の鉄筋3と他方の鉄筋4との間には鉄筋連結用継手(以下、単に継手部材とも呼称)10が配置される。
【0020】
継手部材10は、断面が略H形形状である長尺部材であり、互いに平行に離間して並設された2枚の平鋼板であるフランジ部材12(12a、12b)と、それらフランジ部材12a、12bを連結する平鋼板であるウェブ部材15からなる。ウェブ部材15は、例えば2枚のフランジ部材12a、12bのフランジ幅方向中央部近傍において互いを連結するように設けられている。これにより、2枚のフランジ部材12a、12b間の空間は、ウェブ部材15によって分断され、略溝型形状の断面を有する2つの空間に仕切られている。この2枚のフランジ部材12a、12bとウェブ部材15により三面を囲まれた略溝型断面の空間(溝状空間)には、図示のように鉄筋3、4の先端部3a、4aを収容することができ、当該空間は一対の鉄筋収容部20a、20b(20)として機能する。
【0021】
また、図2は鉄筋連結用継手構造1の概略断面図であり、プレキャスト部材から鉄筋が突出している構成での継手構造を示す概略図である。また、図3は鉄筋連結用継手構造1の概略断面図であり、プレキャスト部材に凹部が形成され、当該凹部内において鉄筋が突出している構成での継手構造を示す概略図である。
なお、図示のようなプレキャスト部材は、連結を施工するための鉄筋を予め部材外部に突出させた状態で製造されるのが一般的である。
【0022】
図2に示す構成では、一対の(図中上下の)プレキャスト部材30(30a、30b)が所定の位置に配置され、その端部から突出した鉄筋3、4において、その先端部3a、4aが鉄筋収容部20a、20bに収容されるように継手部材10が配置される。プレキャスト部材30aと30bを組み付ける場合には、鉄筋収容部20a、20bの内部空間及びその周囲に図示のように硬化材Bが充填される。硬化材Bの充填時は、例えば型枠32(図中破線部)を一時的に配置し、閉じた空間を作製し、当該型枠32の内部空間内に硬化材Bを注入させることで行われる。なお、硬化材Bは、経時的に硬化する流動性の材料であれば良く、例えば、グラウト、セメント、モルタルなどが挙げられる。
【0023】
図3に示す構成では、一対の(図中上下の)凹部を有するプレキャスト部材40(40a、40b)が所定の位置に配置され、対向した状態の凹部内において鉄筋3、4が互いに対向して突出している。プレキャスト部材40a、40bの凹部を対向させることで、部材間の間隙部として、凹部による空間Uが構成され、この空間Uにおいて鉄筋3、4の先端部3a、4aが鉄筋収容部20a、20bに収容されるように継手部材10が配置される。プレキャスト部材40aと40bを組み付ける場合には、鉄筋収容部20a、20b、及び、空間U内に図示のように硬化材Bが充填される。
【0024】
図1~3を参照して説明した鉄筋連結用継手構造1によれば、継手部材10に長尺部材を用い、鉄筋収容部20a、20bに2つのプレキャスト部材から突出する鉄筋3、4をそれぞれ収容した状態で接合を行うことで、効率的な接合が実現される。特に、図1に示すように複数対の鉄筋3、4をまとめて鉄筋収容部20a、20bに収容させ、そこに硬化材Bを充填するといった構成を採ることで、1つの継手部材10で複数対の鉄筋3、4をまとめて接合させることができ、接合の安定化や施工の効率化が実現される。
【0025】
(本発明の第2実施形態に係る鉄筋連結用継手構造)
図4は本発明の第2実施形態に係る鉄筋連結用継手構造1aの概略断面図であり、プレキャスト部材に凹部が形成され、当該凹部内において鉄筋が突出している構成での継手構造を示す概略図である。なお、図4では、上記第1実施形態で説明した鉄筋連結用継手構造1と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。
【0026】
図4に示すように、鉄筋連結用継手構造1aにおいては、2枚のフランジ部材12a、12bのそれぞれにおいて、フランジ幅方向両端部に鉄筋収容部20a、20b方向(断面視で略H形の内側方向)に張り出す張り出し部材50が設けられている。この張り出し部材50を備えた構成によれば、上記第1実施形態で説明した作用効果に加え、硬化材Bの硬化後、プレキャスト部材40a、40bに対し外力、例えば鉄筋3、4を離間させるような力がかかった場合に、当該力に対する張り出し部材50による反力が働くため、プレキャスト部材40aと40bの連結がより強固となる。
【0027】
(本発明の第3実施形態に係る鉄筋連結用継手構造)
図5は本発明の第3実施形態に係る鉄筋連結用継手構造1bの概略断面図であり、プレキャスト部材に凹部が形成され、当該凹部内において鉄筋が突出している構成での継手構造を示す概略図である。なお、図5では、上記第1実施形態で説明した鉄筋連結用継手構造1と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。
【0028】
図5に示すように、鉄筋連結用継手構造1bにおいては、鉄筋収容部20a、20bの内部において、継手部材10長手方向に延伸する板状の部材が配置されている。この部材には、鉄筋3、4を貫通させるための貫通穴が設けられており、ここでは貫通プレート60と呼称する。図6は貫通プレート60の概略図である。図6に示すように、貫通プレート60には、鉄筋3、4を貫通させるための貫通穴65が1又は複数箇所(図6では3箇所)に設けられている。
【0029】
貫通プレート60に設けられる貫通穴65の数や配置は任意であるが、施工するプレキャスト部材40に取り付けられた鉄筋3、4の本数や位置構成に基づき設計することが望ましい。また、図5に示すように、鉄筋3、4の端部には、鉄筋本体より径の大きな傘部(抜け止め部)62が形成されている場合がある。このような構成では、貫通プレート60の貫通穴65の径は傘部62の径より大きく設計されることが好ましい。
【0030】
このような、図5に示す貫通プレート60を備えた構成の鉄筋連結用継手構造1bの施工工程としては、空間Uにおいて予め鉄筋3、4が貫通穴65を通った状態で貫通プレート60を配置しておき、その状態で継手部材10を空間Uに長尺方向でもって挿入し、挿入完了後に硬化材Bを充填させるといった工程が好ましい。このように構成される鉄筋連結用継手構造1bによれば、上記第1実施形態で説明した作用効果に加え、硬化材Bの硬化後、プレキャスト部材40a、40bに対し外力、例えば鉄筋3、4を離間させるような力がかかった場合に、当該力に対する貫通プレート60による反力が働くため、プレキャスト部材40aと40bの連結がより強固となる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0032】
(本発明の変形例)
上記実施の形態では、継手部材10はフランジ部材12とウェブ部材15からなり、その断面形状は略H形形状であるとの説明をしたが、継手部材10の形状はこれに限られるものではない。例えば、2枚のフランジ部材の断面形状は略L字形状でも良い。以下、本発明の変形例について図面を参照して説明する。
【0033】
図7は、本発明の変形例に係る鉄筋連結用継手構造1cの概略断面図であり、プレキャスト部材から鉄筋が突出している構成での継手構造を示す概略図である。図7では、上記第1実施形態で説明した鉄筋連結用継手構造1と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。
【0034】
図7に示すように、鉄筋連結用継手構造1cは、互いに平行に離間して並設された2枚の略L字型の形鋼であるフランジ部材70(70a、70b)と、それらフランジ部材70a、70bを連結する平鋼板であるウェブ部材15からなる。ウェブ部材15は断面が略L字型のフランジ部材70の屈曲部同士を連結するように設けられている。これにより、2枚のフランジ部材70a、70b間の空間は、ウェブ部材15によって分断され、2つの空間に仕切られる。この2枚のフランジ部材70a、70bとウェブ部材15により三面を囲まれた空間には、図示のように鉄筋3、4の先端部3a、4aを収容することができ、当該空間は一対の鉄筋収容部20a、20b(20)として機能する。
【0035】
このように構成される鉄筋連結用継手構造1cによれば、フランジ部材70(70a、70b)として断面形状が略L字型の形鋼を用いている。そのため、上記実施形態で説明した作用効果に加え、例えばプレキャスト部材30(30a、30b)を連結させる際に2つのプレキャスト部材30(30a、30b)の鉄筋3、4が直交するような位置関係でもって接合を行うことが可能となる。即ち、ビルなどの構造物を建築する際には、構造物の隅角部や曲線部等を構築するのに、2つのプレキャスト部材30(30a、30b)を連結させる必要があり、本変形例のような鉄筋連結用継手構造1cを用いた鉄筋同士の接合技術が有用である。
【0036】
なお、本変形例では、フランジ部材70(70a、70b)の断面形状が略L字型である場合を図示したが、フランジ部材断面形状は、鉄筋を接合させる際の構成に応じて好適に設計すれば良く、例えば断面形状が曲線形状であるようなフランジ部材や、略L字型であってもその屈曲角度が90°でないようなフランジ部材も考えられる。
【0037】
また、上記実施の形態や変形例に説明した構成に加え、フランジ部材内壁に凹凸部を設けるといった構成も考えられる。即ち、硬化材Bを硬化させ、当該硬化材Bを介在させて鉄筋3、4同士を連結させた状態において、鉄筋3、4に対し当該鉄筋3、4を離間させるような力がかかる場合や、当該鉄筋3、4同士を押し付けるような力がかかる場合に、鉄筋3、4にかかった力を、凹凸部などを介して継手部材10に効率的に伝達させることができるため、連結がより強固なものとなる。
【0038】
なお、上記実施の形態や変形例では、鉄筋を備えたプレキャストコンクリート部材(プレキャスト部材)同士を組み付ける(連結・接合させる)場合を図示して説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られるものではない。即ち、本発明は、プレキャスト部材と現場打コンクリート部材といった他の部材とを組み付ける場合にも当然有効であり、各部材から突出する鉄筋同士を効率的に連結・接合させるのに有効な技術である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、コンクリート部材の連結構造及びプレキャストコンクリート部材の連結方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1、1a~1c…鉄筋連結用継手構造
3、4…鉄筋
10…継手部材
12…フランジ部材
15…ウェブ部材
20…鉄筋収容部
30…プレキャスト部材
32…型枠
40…(凹部を有する)プレキャスト部材
50…張り出し部材
60…貫通プレート
62…傘部材
65…貫通穴
70…(L字型の)フランジ部材
B…硬化材
U…空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7