IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7210240ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/672 20060101AFI20230116BHJP
   C09J 167/02 20060101ALI20230116BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
C08G63/672
C09J167/02
C09J5/06
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018216376
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2019094488
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】10-2017-0154692
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】李 東勲
(72)【発明者】
【氏名】金 舜▲き▼
(72)【発明者】
【氏名】金 炯坤
(72)【発明者】
【氏名】沈 宗基
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159650(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101240060(CN,A)
【文献】特開2009-235183(JP,A)
【文献】特開2009-221316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/672
C09J 167/00
C09J 5/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を含む酸成分と、脂肪族二価アルコールおよびポリエーテル系ポリオールを含むアルコール成分とを含み、
前記酸成分は、前記酸成分の総モル数に基づいて、50ないし85モル%の前記芳香族ジカルボン酸および15ないし50モル%の前記脂肪族ジカルボン酸を含み、
前記アルコール成分は、前記アルコール成分の総モル数に基づいて、90ないし98モル%の前記脂肪族二価アルコールおよび2ないし10モル%の前記ポリエーテル系ポリオールを含み、
前記アルコール成分は、前記アルコール成分の総モル数に基づいて、1ないし5モル%のポリエチレングリコールおよび1ないし5モル%のポリテトラメチレングリコールを含む、
ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂原料の組成物。
【請求項2】
前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジエチルテレフタレート、ジエチルイソフタレート、ジブチルテレフタレート、ジブチルイソフタレート、ナフタレンジカルボン酸、およびこれらの酸無水物からなる群より選択される少なくとも1を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂原料の組成物。
【請求項3】
前記酸成分は、前記酸成分の総モル数に基づいて、30ないし60モル%のテレフタル酸またはジメチルテレフタレートおよび15ないし50モル%のイソフタル酸またはジメチルイソフタレートを含む、請求項2に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂原料の組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ジカルボン酸は、6ないし12の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸である、請求項1に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂原料の組成物。
【請求項5】
前記脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、およびアゼライン酸からなる群より選択される少なくとも1を含む、請求項4に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂原料の組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテル系ポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、およびテトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのコポリマーからなる群より選択される少なくとも1を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂原料の組成物。
【請求項7】
前記ポリエーテル系ポリオールは、500ないし5000g/モルの数平均分子量を有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂原料の組成物。
【請求項8】
前記脂肪族二価アルコールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂原料の組成物。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のポリエステル樹脂原料の組成物を重合させることによって製造された、ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。
【請求項10】
20000ないし30000g/モルの重量平均分子量および-60ないし-30℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。
【請求項11】
80ないし150℃の融解温度(Tm)を有する、請求項に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂を、241mm×25mm×20μm(幅×長さ×厚さ)のサイズでポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングし、コーティング層を室温で2週間放置した後に測定したときに、0.7ないし2.0kgf/cmの接着性を有する、請求項に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。
【請求項13】
前記コーティング層は、下記の式1:
[式1]
接着性の変化率=
{(2週間後の接着性-初期接着性)/初期接着性}×100
によって計算される、-10ないし20%の接着性の変化率を有する、請求項12に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物およびそれから製造されたポリエステル樹脂に関する。前記ポリエステル樹脂は、種々の基材への接着性に優れ、高い結晶化速度を有し、耐熱性に優れ、ならびに耐加水分解性、柔軟性および加工性にも優れている。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、室温で固体の熱可塑性樹脂である。その100%固体は、それを溶媒に溶解させるまたは分散させることなく、それを加熱することによって、溶融して液体状態になる。ホットメルト接着剤は最初、DuPontによって1960年代にエチレン-酢酸ビニル(EVA)樹脂に基づいて開発された。その長所たとえばプロセスオートメーションによる高い生産性、環境に優しい特徴、広い応用性、および再接着可能性のおかげで、ホットメルト接着剤は、従来の溶媒系接着剤に代わる好評な代用品になっている。加えて、いったんホットメルト接着剤を溶融状態で被着体の表面に塗布すると、その後、それは熱を被着体およびその周囲に放熱させることによって冷却して固化する。
従来のホットメルト接着剤は、用いるベース樹脂に基づいて、エチレン-酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、スチレンブロックコポリマー系、ポリアミド系、ポリエステル系、ウレタン系(リアクティブホットメルト)接着剤を含む。ベース樹脂は、ホットメルト接着剤の最も重要な物理的性質である接着性および凝着力に大きく影響する。上記のうち、ポリエステル系ホットメルト接着剤は通常、結晶性ポリマーであるポリブチレンテレフタレート(PBT)を含む。これは、耐熱性に優れ、高い結晶化速度を有し、初期接着性に優れている。しかし、PBTからなるホットメルト接着剤は、冷却過程の間に被着体の表面で体積収縮が起こり、接着剤の脱着をもたらすという欠点を有する。
【0003】
一方、ポリオレフィン樹脂およびポリカーボネート樹脂を混合する方法(韓国公開特許第2014-0111061号公報を参照のこと)またはポリオレフィン樹脂およびエポキシ樹脂を混合する方法が、上述したようなPBTを含むホットメルト接着剤の欠点を解決するために提案されている。しかし、上述した2種以上の樹脂を混合する方法は、樹脂の重合工程に加えて、混合工程を要するため、製造コストが増加するという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第2014-0111061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、種々の基材への接着性に優れ、樹脂の混合工程を必要とせず、高い結晶化速度を有し、耐熱性に優れ、ならびに耐加水分解性、柔軟性、および加工性に優れた、ホットメルト用ポリエステル樹脂を提供することをめざしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、芳香族ジカルボン酸および脂肪族酸を含む酸成分と、脂肪族二価アルコールおよびポリエーテル系ポリオールを含むアルコール成分とを含み、
前記酸成分は、前記酸成分の総モル数に基づいて、50ないし85モル%の前記芳香族ジカルボン酸および15ないし50モル%の前記脂肪族酸を含み、
前記アルコール成分は、前記アルコール成分の総モル数に基づいて、90ないし98モル%の前記脂肪族二価アルコールおよび2ないし10モル%の前記ポリエーテル系ポリオールを含む、
ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記ポリエステル樹脂組成物を重合させることによって調製されたホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂は、プレート基材への接着性、柔軟性、および加工性に優れている。したがって、これを種々の分野に応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、芳香族ジカルボン酸および脂肪族酸を含む酸成分と、脂肪族二価アルコールおよびポリエーテル系ポリオールを含むアルコール成分とを含み、
前記酸成分は、前記酸成分の総モルに基づいて、50ないし85モル%の前記芳香族ジカルボン酸および15ないし50モル%の前記脂肪族酸を含み、
前記アルコール成分は、前記アルコール成分の総モルに基づいて、90ないし98モル%の前記脂肪族二価アルコールおよび2ないし10モル%の前記ポリエーテル系ポリオールを含む、
ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0010】
芳香族ジカルボン酸
前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジエチルテレフタレート、ジエチルイソフタレート、ジブチルテレフタレート、ジブチルイソフタレート、ナフタレンジカルボン酸、およびこれらの酸無水物からなる群より選択される少なくとも1を含む。具体的には、前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、およびナフタレンジカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。より具体的には、前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレート、およびイソフタル酸またはジメチルイソフタレートを含んでいてもよい。
【0011】
前記樹脂組成物がテレフタル酸またはジメチルテレフタレートを含んでいれば、結果として製造されるポリエステル樹脂の融点が適切に制御され、その耐薬品性が改善される。前記樹脂組成物がイソフタル酸またはジメチルイソフタレートを含んでいれば、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートおよび1,4-ブタンジオールから形成されるポリブチレンテレフタレート構造が破壊され、それによって、接着時に被着体の表面で生じる体積収縮を低減させる。
【0012】
前記酸成分は、前記酸成分の総モル数に基づいて、50ないし85モル%、または60ないし85モル%の前記芳香族ジカルボン酸を含んでいてもよい。具体的には、前記酸成分は、前記酸成分の総モル数に基づいて、30ないし60モル%のテレフタル酸またはジメチルテレフタレートおよび15ないし50モル%のイソフタル酸またはジメチルイソフタレートを含んでいてもよい。より具体的には、前記酸成分は、前記酸成分の総モル数に基づいて、35ないし60モル%のジメチルテレフタレートおよび15ないし45モル%のイソフタル酸を含んでいてもよい。前記芳香族ジカルボン酸が上記含有量の範囲内で含まれていれば、耐熱性が低下して接着剤の固化時間が長くなったり、高い融点のために被着体の種類が限定されたりする問題を防ぐことができる。
【0013】
脂肪族酸
前記樹脂組成物が脂肪族酸を含んでいれば、結果として製造されるポリエステル樹脂の結晶化速度が過剰に低下してガラス転移温度を低下させる効果を生じるという問題を防ぐことができる。
【0014】
前記脂肪族酸は、6ないし12の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸であってもよい。具体的には、前記脂肪族酸は、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、およびドデカン酸からなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。より具体的には、前記脂肪族酸は、アジピン酸、セバシン酸、およびアゼライン酸からなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。さらにより具体的には、前記脂肪族酸は、アジピン酸またはセバシン酸を含んでいてもよい。
【0015】
前記酸成分は、前記酸成分の総モル数に基づいて、15ないし45モル%、または15ないし40モル%の前記脂肪族酸を含んでいてもよい。
【0016】
具体的には、前記酸成分は、15ないし50モル%のアジピン酸、セバシン酸、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0017】
脂肪族二価アルコール
前記脂肪族二価アルコールは芳香族ジカルボン酸と反応してポリエステル樹脂の基本的な結晶構造を形成する。
【0018】
前記脂肪族二価アルコールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。具体的には、前記脂肪族二価アルコールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。より具体的には、前記脂肪族二価アルコールは、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。さらにより具体的には、前記脂肪族二価アルコールは、エチレングリコールおよび1,4-ブタンジオールからなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。
【0019】
前記アルコール成分は、前記アルコール成分の総モル数に基づいて、90ないし98モル%、または93ないし97モル%の前記脂肪族二価アルコールを含んでいてもよい。前記脂肪族二価アルコールが上記モル量の範囲内で含まれていれば、前記脂肪族二価アルコールの使用量に関連して得られる効果が適切になり、したがって節約になり、これは耐熱性を改善する効果を生じる。
【0020】
ポリエーテル系ポリオール
前記ポリエーテル系ポリオールは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族酸と脂肪族二価アルコールとから重合されたポリエステルとブロックコポリマーを形成し、それによって、接着時に被着体の表面で生じる体積収縮を防ぐ。また、前記ポリエーテル系ポリオールは、結果として生じるポリエステル樹脂にエーテル官能基を導入して極性を付与し、これは被着体との相互作用を増大させることによって、その接着性を増進する。さらに、前記ポリエーテル系ポリオールは、結果として生じるポリエステル樹脂中のソフトセグメントとして役立ち、それによって樹脂のガラス転移温度を低下させ、その柔軟性を増大させる。
【0021】
前記ポリエーテル系ポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、およびテトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのコポリマーからなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。具体的には、前記ポリエーテル系ポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。より具体的には、前記ポリエーテル系ポリオールは、ポリエチレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールを含んでいてもよい。
【0022】
前記樹脂組成物がポリエチレングルコールを含んでいれば、単位分子量あたりのエーテル官能基の数を増加させ、それによって樹脂の接着性が改善される。また、前記樹脂組成物がポリテトラメチレングルコールを含んでいれば、結果として製造される樹脂の耐水性が改善される。
【0023】
前記ポリエーテル系ポリオールは、500ないし5000g/モルの数平均分子量を有していてもよい。具体的には、前記ポリエーテル系ポリオールは、650ないし3000g/モルまたは1000ないし2000g/モルの数平均分子量を有していてもよい。前記ポリエーテル系ポリオールの数平均分子量が上記の範囲内であれば、柔軟性、機械的性質、および接着性のような樹脂の物理的性質が目的の物理的性質を満足しないという問題を防ぐことができる。
【0024】
前記アルコール成分は、前記アルコール成分の総モル数に基づいて、2ないし10モル%または3ないし7モル%の前記ポリエーテル系ポリオールを含んでいてもよい。具体的には、前記アルコール成分は、前記アルコール成分の総モル数に基づいて、1ないし5モル%、または1ないし3.5モル%のポリエチレングリコール、および1ないし5モル%、または2ないし4モル%のポリテトラメチレングリコールを含んでいてもよい。
【0025】
前記樹脂組成物は、前記芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸またはジメチルテレフタレートおよびイソフタル酸またはジメチルイソフタレート、前記脂肪族酸としてアジピン酸またはセバシン酸、前記脂肪族二価アルコールとして1,4-ブタンジオール、ならびに前記ポリエーテル系ポリオールとしてポリエチレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールを含んでいてもよい。
【0026】
具体的には、前記樹脂組成物は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレート、イソフタル酸またはジメチルイソフタレート、アジピン酸、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールを含んでいてもよい。また、前記樹脂組成物は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレート、イソフタル酸またはジメチルイソフタレート、セバシン酸、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールを含んでいてもよい。
【0027】
また、前記樹脂組成物はさらに、エチレングリコールを含んでいてもよい。すなわち、前記樹脂組成物は、前記脂肪族二価アルコールとして1,4-ブタンジオールおよびエチレングリコールを含んでいてもよい。具体的には、前記樹脂組成物は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレート、イソフタル酸またはジメチルイソフタレート、アジピン酸、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールを含んでいてもよい。また、前記樹脂組成物は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレート、イソフタル酸またはジメチルイソフタレート、セバシン酸、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールを含んでいてもよい。
【0028】
添加剤
前記樹脂組成物はさらに、反応触媒および安定化剤からなる群より選択される少なくとも1の添加剤を含んでいてもよい。
【0029】
前記樹脂組成物は、チタン系、ゲルマニウム系、および亜鉛系触媒からなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。
【0030】
前記樹脂組成物は、リン酸、亜リン酸、およびこれらの塩またはエステル化合物からなる群より選択される少なくとも1を含んでいてもよい。
【0031】
ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂
本発明は、上述したように、前記ポリエステル樹脂組成物を重合させることによって調製されたホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂を提供する。
【0032】
前記ポリエステル樹脂は、20000ないし300000g/モルの数平均分子量を有していてもよい。具体的には、前記ポリエステル樹脂は、40000ないし200000g/モルまたは60000ないし1200000g/モルの数平均分子量を有していてもよい。
【0033】
また、前記ポリエステル樹脂は、10000ないし100000g/モルの数平均分子量を有していてもよい。具体的には、前記ポリエステル樹脂は、10000ないし80000g/モルまたは10000ないし40000g/モルの数平均分子量を有していてもよい。
【0034】
前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量または数平均分子量が上記の範囲内であれば、前記樹脂の耐水性および耐薬品性が低下する、および被着体のぬれ性が低下するという問題を防ぐことができる。
【0035】
前記ポリエステル樹脂は、0℃以下のガラス転移温度(Tg)を有していてもよい。具体的には、前記ポリエステル樹脂は、-60ないし-20℃または-60ないし-30℃のガラス転移温度(Tg)を有していてもよい。前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が上記の範囲内であれば、前記樹脂の柔軟性および加工性が改善される。
【0036】
また、前記ポリエステル樹脂は、80ないし150℃の融解温度(Tm)を有していてもよい。具体的には、前記ポリエステル樹脂は、90ないし130℃または95ないし120℃の融解温度(Tm)を有していてもよい。前記ポリエステル樹脂の融解温度が上記の範囲内であれば、前記接着剤を溶融させるのに長時間がかかる、および被着体の種類が限定されるという問題を防ぐことができる。
【0037】
前記ポリエステル樹脂は、これを241mm×25mm×20μm(幅×長さ×厚さ)のサイズでポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングし、コーティング層を室温で2週間放置した後に測定したときに、0.7ないし2.0kgf/cmの接着性を有していてもよい。具体的には、コーティング層を室温で2週間放置した後に測定したときに、接着性は0.9ないし1.8kgf/cmまたは1.0ないし1.7kgf/cmであってもよい。
【0038】
前記コーティング層は、下記の式1によって計算される、-10ないし20%の接着性の変化率を有していてもよい。具体的には、前記コーティング層は、下記の式1によって計算される、-9.5ないし20%、-9.5ないし18%、または-9.5ないし15%の接着性の変化率を有していてもよい。
【0039】
[式1]
接着性の変化率=
{(2週間後の接着性-初期接着性)/初期接着性}×100。
【0040】
前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、金属プレート、および紙からなる群より選択される少なくとも1の基材上で接着剤として用いられる。
【実施例
【0041】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。しかし、これらの実施例は例証の目的のためにのみ提供され、本発明はこれらに限定されない。
【0042】
実施例1:樹脂組成物の調製
スターラーをもち、高真空を適用することができる、5kgのポリエステルを重合するための装置に、100重量部のジメチルテレフタレート(DMT)、43重量部のイソフタル酸、38重量部のアジピン酸、122重量部の1,4-ブタンジオール、10重量部のエチレングリコール、40重量部のポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1000g/モル)、および40重量部のポリエチレングリコール(数平均分子量:1000g/モル)を仕込んだ。これに、縮合重合触媒として0.2重量部のテトラブトキシチタンを加えた。
【0043】
その後、温度を室温から220℃まで徐々に上昇させることによって、エステル化反応を行った。この場合、副生物としてのメタノールおよび水を理論的な流量で排出したときに、真空を徐々に適用して、反応器内部の圧力が1トールになるようにし、一方でオリゴマー状態にある反応物が散乱しないように保持し、温度を250℃に維持しながら反応を2時間行い、それによってポリエステル樹脂を調製した。こうして得られたポリエステル樹脂は、35℃でキャノン-ウベローデ型粘度計を用いて測定したときに1.0dl/gの固有粘度(IV)、および-30℃のガラス転移温度(Tg)、および示差走査熱量計を用いて測定したときに96℃の融解温度(Tm)を有していた。
【0044】
実施例2および3ならびに比較例1ないし4
酸成分およびアルコール成分の種類および含有量を下記の表1に示したように変化させた以外は、実施例1におけるのと同じ方法でポリエステル樹脂を調製した。
【0045】
試験例:物理的性質の評価
実施例1ないし3および比較例1ないし4のポリエステルを各々、下記の方法によって、それらの物理的性質について評価した。
【0046】
(1)ガラス転移温度(Tg)および融解温度(Tm)
これらを、示差走査熱量計を用いて測定した。
【0047】
(2)固有粘度(IV)
これを、35℃で、キャノン-ウベローデ型粘度計を用い、オルト-クロロフェノール溶媒で測定した。
【0048】
(3)数平均分子量および重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(WATERSの製品GPC 150-CV)を用いた。実施例1ないし3および比較例1ないし4のポリエステルを各々、テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ポリスチレン標準(日本国昭和電工からのShodex SM-105')を参照して、数平均分子量および重量平均分子量を測定した。
【0049】
(4)耐水性
このように調製したポリエステル樹脂10gを融点まで加熱して溶融させた後、これを水中で結晶化させた。初期の樹脂の重量および結晶化後の樹脂の重量を測定した。その後、下記の式2によって重量増加率を計算した。重量増加率が0.7%未満であった場合、これを◎と評価した。重量増加率が0.7ないし1%であった場合、これを〇と評価した。重量増加率が1%を超えた場合、これを×と評価した。
【0050】
[式2]
重量増加率=
{(結晶化後の樹脂の重量-初期の樹脂の重量)/初期の樹脂の重量}×100。
【0051】
(5)接着性
ポリエステル樹脂をジクロロメタン(DCM)に20%(w/v)の量で溶解した後、これを241mm×25mm×20μm(幅×長さ×厚さ)のサイズで、188μmの厚さを有するポリエチレンテレフタレートフィルム上にロールコーティングしてコーティング層を形成した。その後、これを熱風炉中、100℃で1分間乾燥した後、150℃でドライラミネータによりラミネートして、シートを調製した。次に、万能引張試験機を用いて初期接着性を測定した。その後、シートを室温で2週間放置した後、上述したのと同じ方法で接着性を測定した。初期接着性および2週間後の接着性を用い、下記の式1によって接着性の変化率を計算した。
【0052】
[式1]
接着性の変化率=
{(2週間後の接着性-初期接着性)/初期接着性}×100。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示したように、実施例1ないし3のポリエステル樹脂から調製したコーティング層は、耐水性および長期接着性に優れていた。
【0055】
対照的に、ポリテトラメチレングリコールを含まない比較例1およびポリテトラメチレングリコールを含まない比較例3のものは、耐水性に劣っていた。また、脂肪族酸およびポリエチレングリコールを含まない比較例2およびポリテトラメチレングリコールおよびポリエチレングリコールを含まない比較例4のものは、長期接着性に劣っていた。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 芳香族ジカルボン酸および脂肪族酸を含む酸成分と、脂肪族二価アルコールおよびポリエーテル系ポリオールを含むアルコール成分とを含み、
前記酸成分は、前記酸成分の総モル数に基づいて、50ないし85モル%の前記芳香族ジカルボン酸および15ないし50モル%の前記脂肪族酸を含み、
前記アルコール成分は、前記アルコール成分の総モル数に基づいて、90ないし98モル%の前記脂肪族二価アルコールおよび2ないし10モル%の前記ポリエーテル系ポリオールを含む、
ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物。
[2] 前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジエチルテレフタレート、ジエチルイソフタレート、ジブチルテレフタレート、ジブチルイソフタレート、ナフタレンジカルボン酸、およびこれらの酸無水物からなる群より選択される少なくとも1を含む、[1]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物。
[3] 前記酸成分は、前記酸成分の総モル数に基づいて、30ないし60モル%のテレフタル酸またはジメチルテレフタレートおよび15ないし50モル%のイソフタル酸またはジメチルイソフタレートを含む、[2]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物。
[4] 前記脂肪族酸は、6ないし12の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸である、[1]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物。
[5] 前記脂肪族酸は、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、およびドデカン酸からなる群より選択される少なくとも1を含む、[4]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物。
[6] 前記ポリエーテル系ポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、およびテトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのコポリマーからなる群より選択される少なくとも1を含む、[1]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物。
[7] 前記アルコール成分は、前記アルコール成分の総モル数に基づいて、1ないし5モル%のポリエチレングリコールおよび1ないし5モル%のポリテトラメチレングリコールを含む、[6]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物。
[8] 前記ポリエーテル系ポリオールは、500ないし5000g/モルの数平均分子量を有する、[1]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物。
[9] 前記脂肪族二価アルコールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1を含む、[1]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂組成物。
[10] [1]ないし[9]のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物を重合させることによって製造された、ホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。
[11] 20000ないし30000g/モルの重量平均分子量および-60ないし-30℃のガラス転移温度(Tg)を有する、[10]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。
[12] 80ないし150℃の融解温度(Tm)を有する、[10]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。
[13] 前記ポリエステル樹脂を、241mm×25mm×20μm(幅×長さ×厚さ)のサイズでポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーティングし、コーティング層を室温で2週間放置した後に測定したときに、0.7ないし2.0kgf/cmの接着性を有する、[10]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。
[14] 前記コーティング層は、下記の式1:
[式1]
接着性の変化率=
{(2週間後の接着性-初期接着性)/初期接着性}×100
によって計算される、-10ないし20%の接着性の変化率を有する、[13]に記載のホットメルト接着剤用ポリエステル樹脂。