(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】マイクロ波発泡積層体、マイクロ波発泡包装体およびマイクロ波発泡包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/42 20060101AFI20230116BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
B65D65/42 A
B65D81/38 J
(21)【出願番号】P 2018222933
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川邉 和也
(72)【発明者】
【氏名】中舘 郁也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 光宏
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-099967(JP,A)
【文献】特開2017-077898(JP,A)
【文献】特開2007-063708(JP,A)
【文献】特開2018-111760(JP,A)
【文献】特開2008-247399(JP,A)
【文献】特開平10-101153(JP,A)
【文献】特表2012-500734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/182347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/42
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方に
形成した断熱層
となる塗布層と、該塗布層の反対面にシール層を備えてなるマイクロ波発泡積層体であって、
前記基材が、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、アルコール系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、透明蒸着ポリエステルフィルム、透明蒸着ポリアミドフィルム、アルミ蒸着フィルム、コーティングフィル
ムのなかから選ばれる少なくとも1つであり、
前記
塗布層が、
グラビア印刷方式およびフレキソ印刷方式のなかから選ばれる少なくとも1つの印刷方式により断熱層形成用塗工液
から形成され、最表面または中間層に有し、
かつ、前記シール層と同箇所に設けない塗布層であり、
前記断熱層形成用塗工液が、前記断熱層形成用塗工液中に熱膨張性マイクロカプセルを1~50質量%と、熱可塑性樹脂を1~25質量%と、
有機溶剤を45~95質量%とを、含むことを特徴とするマイクロ波発泡積層体。
【請求項2】
紙基材の少なくとも一方に形成した断熱層となる塗布層と、該塗布層の反対面にシール層を備えてなるマイクロ波発泡積層体であって、
前記塗布層が、グラビア印刷方式およびフレキソ印刷方式のなかから選ばれる少なくとも1つの印刷方式により断熱層形成用塗工液から形成され、最表面に有し、
かつ、前記シール層と同箇所に設けない塗布層であり、
前記断熱層形成用塗工液が、前記断熱層形成用塗工液中に熱膨張性マイクロカプセルを1~50質量%と、熱可塑性樹脂を1~25質量%と、有機溶剤を45~95質量%とを、含むことを特徴とするマイクロ波発泡積層体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、硝化綿、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂であることを特徴とする
請求項1に記載のマイクロ波発泡積層体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、硝化綿、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂であることを特徴とする
請求項2に記載のマイクロ波発泡積層体。
【請求項5】
請求項1または3に記載のマイクロ波発泡積層体を用いて作製したマイクロ波発泡包装袋であって、
前記マイクロ波発泡積層体を構成する断熱層となる塗布層が、マイクロ波による内容物の発熱による加熱処理によって形成される断熱層を形成する層であり、最表面または中間層に有し、
前記マイクロ波発泡積層体を構成するシール層が、最内面に有し、当該シール層同士が、熱処理が施され重ね合った周辺端部であり、
かつ、前記断熱層と前記重ね合ったシール層とを同箇所に設けないことを特徴とする
マイクロ波発泡包装袋。
【請求項6】
請求項2または4に記載のマイクロ波発泡積層体を用いて作製したマイクロ波発泡包装容器であって、
前記マイクロ波発泡積層体を構成する断熱層となる塗布層が、マイクロ波による内容物の発熱による加熱処理によって形成される断熱層を形成する層であり、最表面に有し、
前記マイクロ波発泡積層体を構成するシール層が、最内面に有し、当該シール層同士が、熱処理が施され重ね合った周辺端部であり、
かつ、前記断熱層と前記重ね合ったシール層とを同箇所に設けないことを特徴とするマイクロ波発泡包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波発泡積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍食品やチルド食品などを収容する包装袋において、当該包装袋にこれらの食品などが密封されたまま、電子レンジで加熱調理する場合、食品などから発生する蒸気で包装袋全体が熱くなる。このため、加熱された包装袋を手指などで保持する際に、あらかじめ包装袋に保持する箇所を表示(例えば、「ここを持つ」など)しておいたり、また保持するであろう箇所のシール部やつまみ部を広く取っておいたりしたものが利用される。しかし、こうした場合でも、表示箇所が熱くなったり、手指で保持する場所を誤り、やけどなどのおそれが生じている。また、蒸気により、包装袋の外側が濡れている場合があり、手指で保持して、開封したり、別の容器に移したりする際に滑るおそれがある。
【0003】
特許文献1には、プラスチックフィルムにより構成された注出口を有する包装袋に、印字可能な光学反射式のレーザマーカを使用して注出口に易開封加工部を形成し、注出口先端にタブを形成し、該タブに滑り止め加工を施す易開封性包装袋の製造方法によって得られる易開封性包装袋が提案されている。そして、前記タブの滑り止め加工は、エンボス加工やローレット加工などを施すことが好ましく、開示されている実施形態としてはエンボス加工により、凹凸状の滑り止め加工を施したものである。
【0004】
特許文献2には、プラスチックフィルム材料により形成され、切取り部を切取り指示線に沿って切り取ることにより注出口が形成される可撓性包装袋であって、少なくとも、前記可撓性包装袋の切取り部の摘み部分表面に滑り止め層を設けた可撓性包装袋が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1は、エンボス加工をすることによって、凹凸状の滑り止め加工を施したものであり、包装袋に印刷する絵柄などとの見当合わせが難しいことやエンボスが製袋ズレを誘発するおそれがあるとともに、加熱して使うことは想定されていないが、滑り止め加工部が熱くなり保持できないおそれがある。また、特許文献2は、切取り部の摘み部分表面に滑り止め層を設けているが、上記と同様に、加熱して使うことは想定されていないが、滑り止め層が熱くなり保持できないおそれがある。
【0006】
また、特許文献3では、基材層と、滑り止め層とを備え、滑り止め層にマット剤、2液硬化型樹脂、硬化剤および滑剤を含む積層体であって、該積層体の最表面に滑り止め層を設けたスタンディングパウチが提案されている。
【0007】
しかし、特許文献3における、滑り止め層を設けた包装袋は、レトルト処理をした後に、水で濡らして、手指での保持性を確認し、レトルト処理をしても耐滑り性が低下しないことを明確にしているものであって、レトルト(加熱)処理直後に包装袋を保持できるかについては、滑り止め層も含め包装袋全体が熱くなり保持できないものであるため、評価できない。
【0008】
したがって、印刷などにより自由に断熱部が形成でき、加熱処理や電子レンジなどのマイクロ波で内容物が発熱したときに、発熱時の熱により最表面に優れた断熱性を有する包装袋が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-94532号公報
【文献】特開2005-96778号公報
【文献】特開2017-154459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、印刷などにより自由に断熱部が形成でき、加熱処理や電子レンジなどのマイクロ波で内容物が発熱したときに、発熱時の熱により最表面または中間層に優れた断熱性を有するマイクロ波発泡積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、基材の少なくとも一方に断熱層を備えてなるマイクロ波発泡積層体であって、前記基材が、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、アルコール系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、透明蒸着ポリエステルフィルム、透明蒸着ポリアミドフィルム、アルミ蒸着フィルム、コーティングフィルム、および紙のなかから選ばれる少なくとも1つであり、前記断熱層が、断熱層形成用塗工液を塗布した塗布層であり、前記断熱層形成用塗工液が、前記断熱層形成用塗工液中に熱膨張性マイクロカプセルを1~50質量%と、熱可塑性樹脂を1~25質量%と、溶剤を45~95質量%とを、含むことにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)基材の少なくとも一方に形成した断熱層となる塗布層と、該塗布層の反対面にシール層を備えてなるマイクロ波発泡積層体であって、
前記基材が、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、アルコール系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、透明蒸着ポリエステルフィルム、透明蒸着ポリアミドフィルム、アルミ蒸着フィルム、コーティングフィルムのなかから選ばれる少なくとも1つであり、
前記塗布層が、グラビア印刷方式およびフレキソ印刷方式のなかから選ばれる少なくとも1つの印刷方式により断熱層形成用塗工液から形成され、最表面または中間層に有し、
かつ、前記シール層と同箇所に設けない塗布層であり、
前記断熱層形成用塗工液が、前記断熱層形成用塗工液中に熱膨張性マイクロカプセルを1~50質量%と、熱可塑性樹脂を1~25質量%と、有機溶剤を45~95質量%とを、含むことを特徴とするマイクロ波発泡積層体、
(2)紙基材の少なくとも一方に形成した断熱層となる塗布層と、該塗布層の反対面にシール層を備えてなるマイクロ波発泡積層体であって、
前記塗布層が、グラビア印刷方式およびフレキソ印刷方式のなかから選ばれる少なくとも1つの印刷方式により断熱層形成用塗工液から形成され、最表面に有し、
かつ、前記シール層と同箇所に設けない塗布層であり、
前記断熱層形成用塗工液が、前記断熱層形成用塗工液中に熱膨張性マイクロカプセルを1~50質量%と、熱可塑性樹脂を1~25質量%と、有機溶剤を45~95質量%とを、含むことを特徴とするマイクロ波発泡積層体、
(3)前記熱可塑性樹脂が、硝化綿、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂であることを特徴とする(1)に記載のマイクロ波発泡積層体、
(4)前記熱可塑性樹脂が、硝化綿、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂であることを特徴とする(2)に記載のマイクロ波発泡積層体、
(5)(1)または(3)に記載のマイクロ波発泡積層体を用いて作製したマイクロ波発泡包装袋であって、
前記マイクロ波発泡積層体を構成する断熱層となる塗布層が、マイクロ波による内容物の発熱による加熱処理によって形成される断熱層を形成する層であり、最表面または中間層に有し、
前記マイクロ波発泡積層体を構成するシール層が、最内面に有し、当該シール層同士が、熱処理が施され重ね合った周辺端部であり、
かつ、前記断熱層と前記重ね合ったシール層とを同箇所に設けないことを特徴とするマイクロ波発泡包装袋、
(6)(2)または(4)に記載のマイクロ波発泡積層体を用いて作製したマイクロ波発泡包装容器であって、
前記マイクロ波発泡積層体を構成する断熱層となる塗布層が、マイクロ波による内容物の発熱による加熱処理によって形成される断熱層を形成する層であり、最表面に有し、
前記マイクロ波発泡積層体を構成するシール層が、最内面に有し、当該シール層同士が、熱処理が施され重ね合った周辺端部であり、
かつ、前記断熱層と前記重ね合ったシール層とを同箇所に設けないことを特徴とするマイクロ波発泡包装容器、
に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷などにより自由に断熱部が形成でき、加熱処理や電子レンジなどのマイクロ波で内容物が発熱したときに、発熱時の熱により最表面または中間層が発泡し、優れた断熱性を有するマイクロ波発泡積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、実施の形態が可能である。
【0015】
本発明のマイクロ波発泡積層体は、基材の少なくとも一方に断熱層を備えてなるマイクロ波発泡積層体であって、前記基材が、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、アルコール系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、透明蒸着ポリエステルフィルム、透明蒸着ポリアミドフィルム、アルミ蒸着フィルム、コーティングフィルム、および紙のなかから選ばれる少なくとも1つであり、前記断熱層が、断熱層形成用塗工液を塗布した塗布層であり、前記断熱層形成用塗工液が、前記断熱層形成用塗工液中に熱膨張性マイクロカプセルを1~50質量%と、熱可塑性樹脂を1~25質量%と、溶剤を45~95質量%とを、含むことが好ましい。
【0016】
前記基材は、熱処理に対する耐性を有するものであればよく、食品用に用いられるものがより好ましい。例えばポリエステルフィルムとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など、ポリオレフィンフィルムとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートなど、ポリスチレンフィルム、アルコール系フィルムとしてはエチレン-ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなど、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルムとしてはPETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けたもの、アルミ蒸着フィルムとしてはPETフィルムまたはポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどにアルミニウムを蒸着させたもの、各種コーティングフィルムとしてはポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートしたもの、さらに異樹脂と共に共押出した共押出フィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、単独または2種類以上を積層していてもよい。また、紙基材も好ましく使用できる。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。また、断熱層の形成面には密着性を向上させるため、フィルム表面にコロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。
【0017】
フィルム基材の厚さは、特に限定されるものではないが、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、1~1000μmが好ましく、3~100μmがより好ましい。紙基材の坪量は、30~600g/m2の範囲が好ましく、100~500g/m2の範囲がより好ましく、150~400g/m2の範囲がさらに好ましい。紙基材の坪量が小さすぎると、耐熱性や強度が不足することがあり、坪量が大きすぎると、加工適性が悪くなるおそれがある。紙基材の厚みは、通常50μm~2mmの範囲であり、100μm~1.5mmの範囲が好ましく、150~800μmの範囲がより好ましく、200~600μmの範囲がさらに好ましい。
【0018】
前記基材の少なくとも一方に備える断熱層は、発泡して断熱層を形成するものである。また、発泡した断熱層はノンスリップ性も示す。このことは、断熱の効果だけではなく、最表面に断熱層を有する場合、手指での保持が容易になるという効果もある。
【0019】
前記発泡は、加熱処理によって行なわれる。加熱処理は、マイクロ波による内容物の発熱による加熱や温湯などにより行なわれる。なかでもマイクロ波による内容物の発熱による加熱がより好ましい。製袋時などのヒートシール処理による熱処理で、発泡しては困る場合、ヒートシール部と同箇所には設けないことが好ましい。
【0020】
前記断熱層は、断熱層形成用塗工液を塗布した塗布層からなることが好ましい。
【0021】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、前記断熱層形成用塗工液中に1~50質量%含むことが好ましく、5~30質量%含むことがより好ましい。1質量%より少ないと、断熱効果が低下し、50質量%を超えると、基材密着性が劣る。
【0022】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、塩化ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂を基材としたマイクロカプセルに、イソブタン、ブタン、イソペンタン、n-ペンタンなどの脂肪族炭化水素を内包したものであり、加熱により内包した脂肪族炭化水素が気化してマイクロカプセルを膨張するものである。マイクロカプセルの粒径は3~20μmであり、発泡倍率は4~10倍である。
【0023】
前記熱可塑性樹脂は、前記断熱層形成用塗工液中に1~25質量%含むことが好ましく、5~20質量%含むことがより好ましい。1質量%より少ないと、基材密着性が劣り、25質量%を超えると、インキの流動性が悪く、インキ製造適性が劣る。
【0024】
前記熱可塑性樹脂は、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂、アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、非晶ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、ポリ乳酸などが好ましい。なかでも、硝化綿、セルロースアセチルプロピオネート、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョンなどがより好ましい。これらの樹脂は、単独または2種類以上であってもよい。
市販品としては、LG-FK Rメジウム、TPHメジウム、VESTAメジウム、LRC-NTメジウム、KCNTメジウム、SYNA-Sメジウム、LAMREKメジウム(以上、東京インキ(株)製)などを用いることができ、なかでも、LG-FK Rメジウムがより好ましい。
【0025】
前記溶剤は、前記断熱層形成用塗工液中に45~95質量%含むことが好ましく、50~90質量%含むことがより好ましい。45質量%より少ないと、インキの流動性が悪く、インキ製造適性が劣り、95質量%を超えると、インキ膜厚が局部的に不均一になり、印刷面上に、不定形の濃淡(泳ぎ現象)が生じるおそれがある。
【0026】
前記溶剤は、前記熱膨張性マイクロカプセルと前記熱可塑性樹脂とを該溶剤中に分散させるものである。前記溶剤は、有機溶剤型の溶剤を用いることができる。例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどがより好ましい。これらは、単独または2種類以上混合して用いることができる。
【0027】
前記断熱層形成用塗工液には、デザイン性、用途、色相などの要求物性や、塗工液の安定性、印刷適性の向上を目的として、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、溶剤などを含有することもできる。公知慣用のものであれば如何なるものも、その発泡性、塗工液としての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0028】
前記色材としては、顔料または染料あるいはその混合物を含有することができる。
顔料としては、例えば、酸化チタン、弁柄、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、マイカ、タルク、パール、アルミニウム、カーボンブラックなどの無機顔料、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、ジオキサジン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系などの有機顔料、その他各種蛍光顔料、金属粉顔料、体質顔料などが挙げられる。これらの顔料は、単独または2種類以上組み合わせて使用してもよい。染料としては、溶剤に溶解または分散するものが好ましく、単独または2種類以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、耐久性の観点から、顔料を用いることが好ましい。
【0029】
前記断熱層は、グラビア印刷方式およびフレキソ印刷方式のなかから選ばれる少なくとも1つによる塗布層であることが好ましい。なかでも、グラビア印刷方式による塗布層であることがより好ましい。
【0030】
前記断熱層は、必ずしも基材全面に設ける必要はなく、断熱部を付与したい部分だけに設けてあってもよい。基材の少なくとも一方であっても、両方であってもよい。また、前記断熱層は、袋状の形態にする場合、該層が最表面または中間層になるようにすることが好ましい。さらに、前記断熱層は、発泡して断熱部を形成するものであり、前記発泡は、加熱処理によって行なわれる。加熱処理は、マイクロ波による内容物の発熱による加熱や温湯などにより行なわれる。なかでもマイクロ波による内容物の発熱による加熱がより好ましい。最表面に断熱層を有する場合、断熱の効果だけではなく、手指での保持が容易になるという効果もある。製袋時などのヒートシール処理による熱処理で、発泡しては困る場合、ヒートシール部と同箇所には設けないことが好ましい。
【0031】
前記断熱層の膜厚は、0.1~10μmとなるように設けることが好ましく、0.5~8μmとなることがより好ましい。0.1μmより小さいと十分な断熱が得られない。10μmより大きいと断熱層を有する塗工物の耐ブロッキング性が低下する。
【0032】
本発明のマイクロ波発泡積層体は、少なくとも一方に形成した断熱層の反対面にシール層を備えることが好ましい。該シール層はヒートシールなどにより基材を接着する層として利用することができる。
【0033】
前記シール層は、シール性を有する樹脂を含む層であることが好ましく、使用できる樹脂としては、LDPE、LLDPE、HDPE、メタロセンポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンをマレイン酸やフマル酸などで変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独または2種類以上を使用してもよい。
【0034】
これらの樹脂を含むフィルムまたはこれらの積層体などをドライラミネート法やウェットラミネート法、ノンソルベントラミネート法、熱ラミネート法などによって形成したり、押出ラミネート加工による樹脂コーティングやヒートシール剤による塗工また、ホットメルト接着剤などを介する貼り合せによって形成してもよい。また、必ずしも全面にある必要はなく、シールする部分だけであってもよい。
【0035】
前記フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの混合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂などのポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。
【0036】
前記押出ラミネート加工による樹脂コーティングやホットメルト接着剤に使用できる樹脂としては、LDPE、LLDPE、HDPEなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンをマレイン酸やフマル酸などで変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの樹脂は、単独または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
前記シール層の厚みは、特に限定されないが、シール性、コスト、生産性の観点から、フィルムでは2~200μm、押出ラミネート加工による樹脂コーティングでは1~100μm、ヒートシール剤の塗工では0.1~10μm、ホットメルト接着剤の塗工では1~50μmが好ましい。
【0038】
本発明のマイクロ波発泡積層体は、接着層を設けてもよい。例えば、基材と別の基材の間や、基材とシール層の間に設けることができる。接着層は、接着性や粘着性を有する接着剤や粘着剤(ワックス、ホットメルトも含む)により、2層を貼り合わせるために形成される層である。接着層の樹脂としては、前記したシール性を有する樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、イソシアネート樹脂、キレートなどが挙げられる。また、市販の接着剤を用いることができる。さらに、主剤と硬化剤が混合した一液型、あるいは主剤と硬化剤が別の二液型の接着剤であってもよい。二液型の接着剤の場合、適宜主剤と硬化剤の混合割合を調整、混合して使用する。
【0039】
本発明のマイクロ波発泡積層体は、他の層を設けてもよい。例えば、OPPフィルム、ONYフィルム、PETフィルム、EVOHフィルム、PVAフィルム、セロハンフィルム、バリアナイロンフィルム、延伸ポリエチレンフィルム、(変性)ポリアクリル酸コートフィルム、PVAコートフィルムや、アルミニウム酸化物、珪素酸化物などの無機酸化物を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材に蒸着した透明蒸着フィルム、OPPやONY、PET、セロハンなどのベースフィルムにPVDC(ポリ塩化ビニリデン)をコーティングした透明バリアフィルム(Kコート)、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂をOPPフィルムやNYフィルムで挟み込むように積層したバリアフィルムなどが挙げられ、これらのフィルムを前記滑り止め層の他方面に設けることが好ましい。
【0040】
本発明のマイクロ波発泡積層体は、任意の層間に印刷インキ層を設けてもよい。印刷インキ層は、通常のグラビアインキが使用でき、フィルム基材に応じて、適宜選択できる。印刷適性や汎用性の観点から、ウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂などのグラビアインキが好ましく、これらの樹脂が単独または2種類以上組み合わせたグラビアインキであってもよい。また、2色以上のグラビアインキを使用する場合は、同じ樹脂系のインキである必要はなく、別の樹脂系のインキも適宜使用できる。
【0041】
市販品としては、LG-NT、TPH、VESTA、LRC-NT、KCNT、SYNA-S、LAMREK、LG-FK(以上、いずれも東京インキ(株)製)などを用いることができる。
【0042】
本発明のマイクロ波発泡積層体は、基材と断熱層の間にアンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層は、透明でもよいし、色材を含有するアンカーコート剤を使用して形成できるため、さまざまなカラーバリエーションやカラーデザインが得られる。
【0043】
本発明のマイクロ波発泡包装体は、マイクロ波発泡積層体を用いて作製することができる。一実施形態としては、少なくとも一方にシール層を有するマイクロ波発泡積層体をシール層が最内面、かつ断熱層が最表面になるように、重ね合わせて、該重ね合わせたマイクロ波発泡積層体の周辺端部を袋状や容器状になるように熱処理を施すことにより、断熱層を有する包装体を作製することができる。なお、断熱層は該包装体の一部に備えるものであっても、全体に備えるものであってもよいが、シール層と同箇所となる部分には形成しないことがより好ましい。また、一実施形態としては、断熱層を中間層に有し、一方にシール層を有するマイクロ波発泡積層体をシール層が最内面になるように、重ね合わせて、該重ね合わせたマイクロ波発泡積層体の周辺端部を袋状になるように熱処理を施すことによっても、包装体を作製することができる。
【0044】
前記熱処理は、ヒートシール処理が好ましい。これらは一般的に行なわれる条件でよいが、断熱層が発泡しない条件で行なうことが好ましい。ヒートシール処理では、190℃で、1秒の加熱などにより行なわれる。紙基材の場合、200℃で、2秒の加熱などにより行なわれる。ヒートシール処理は、特に限定されるものではなく、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シールおよび超音波シールなどの公知の方法を用いることができる。
【0045】
本発明のマイクロ波発泡包装体の製造方法は、基材を準備する工程と、前記基材上の少なくとも一方に断熱層を塗布する工程と、前記基材上の断熱層が最表面または中間層になるように少なくとも一方に開口部を備える袋状または容器状に成形する工程と、前記開口部から内容物を収容する工程と、前記開口部を封止する工程と、加熱処理することにより前記内容物の温度が80~100℃に維持されることで前記断熱層を発泡させて断熱部を形成する工程とを、含むことが好ましい。さらに、前記基材が、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、アルコール系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、透明蒸着ポリエステルフィルム、透明蒸着ポリアミドフィルム、アルミ蒸着フィルム、コーティングフィルム、および紙のなかから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0046】
前記基材を準備する工程は、好ましくは熱処理に対する耐性を有する基材で、より好ましくは食品用に用いられる基材を準備すればよいが、機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものを準備することが好ましい。また、紙基材も好ましく使用できる。また、断熱層の形成面には密着性を向上させるため、フィルム表面にコロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものを選択して準備することが好ましい。
【0047】
前記基材上の少なくとも一方に断熱層を塗布する工程は、断熱層形成用塗工液を公知の印刷工程または塗布、噴霧、浸漬などの工程により基材に塗布して、断熱層とする。印刷工程としてはシルクスクリーン印刷工程、グラビア印刷工程、オフセット印刷工程、フレキソ印刷工程、ローラーコーター工程、刷毛塗り工程、スプレー工程、ナイフジェットコーター工程などの印刷工程が挙げられる。なかでも、品質および生産性の高さからグラビア印刷工程およびフレキソ印刷工程から選ばれる少なくとも1つが好ましく用いられ、グラビア印刷工程による印刷工程がより好ましく、特に多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷工程であることがさらに好ましい。
【0048】
前記印刷工程により、基材の全面に断熱層を形成することもできるが、容易に部分的に断熱層を形成することもでき、低コスト化も実現できることに加え、例えば持ち手部分として明確に表したい箇所だけに設計し、他の部分とはっきり区別することが容易となる。また、シール層と同箇所となる部分には形成しないことがより好ましい。
【0049】
また、前記基材上の少なくとも一方に断熱層を塗布する工程のほかに、シール層、印刷インキ層、アンカーコート層、接着層および他の層を形成する工程を含んでもよい。
【0050】
前記シール層を形成する工程は、公知のシーラントフィルムの貼り合わせ、押出ラミネート加工による樹脂コーティングなどによる形成工程が挙げられる。また、ヒートシール剤などを用いた公知の印刷または塗布、噴霧、浸漬などの工程が好ましく、特に塗布工程がより好ましい。また、多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷工程による塗布工程が好ましい。このことにより、前述の断熱層とともにインラインで、1パスでシール層も形成することができる。また、塗布するシール層は2層以上であってもよく、それぞれが同一のシール層であってもよいが、組成の異なるシール層であってもいずれでもよい。このことにより、シール層を多層または組成の異なるシール層とすることができるため、ヒートシール強度のコントロールも容易になり、低コストで行なうことができる。
【0051】
前記印刷インキ層を形成する工程も、公知の印刷または塗布、噴霧、浸漬などの工程が好ましく、特に塗布工程がより好ましい。また、多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷工程による塗布工程が好ましい。このことにより、断熱層の反対面や基材と断熱層の間、あるいは基材とシール層の間など自由に印刷インキ層を設けることもできる。
【0052】
前記アンカーコート層を形成する工程も、公知の印刷または塗布、噴霧、浸漬などの工程が好ましく、特に塗布工程がより好ましい。また、多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷工程による塗布工程が好ましい。このことにより、断熱層の反対面や基材と断熱層の間、あるいは基材とシール層の間など自由にアンカーコート層を設けることもできる。
【0053】
前記基材上の断熱層が最表面または中間層になるように少なくとも一方に開口部を備える袋状に成形する工程は、包装体として、二方シール、三方シール、四方シール、ピローシール、スタンディングパウチ、封筒貼り、ガゼット、溶断シール、チューブ、キャラメル包装、オーバーホールド、フィンシール、まんじゅう包装、ひねり、ロケットなどの周知の形態の包装袋を形成できる工程であればよい。また、同容器状に成形する工程は、包装体として、トレイ、カップ、皿、ボトル、テトラパック、ゲーブルトップ、ブリック、カートン缶などの液体紙容器の周知の形態の包装容器を形成できる工程であればよい。
【0054】
前記開口部から内容物を収容する工程は、開口している少なくとも一方から、内容物を収容できればよく、人の手を介して収容してもよいが、自動装置などの機械を用いて収容してもよい。これらの工程は、内容物の種類、形態や大きさ、数量、収容する包装袋、設備、環境などによって、適宜選択すればよい。
【0055】
前記開口部を封止する工程は、ヒートシールによる熱処理によって行なわれる封止工程が好ましい。また、前記開口部に蓋などの嵌合などによって行なわれる封止工程でもよい。
【0056】
前記ヒートシールによる熱処理は一般的に行なわれる条件でよく、190℃で、1秒の加熱などにより行なわれる。紙基材の場合、200℃で、2秒の加熱などにより行なわれる。ヒートシールは、特に限定されるものではなく、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シールおよび超音波シールなどの公知の方法を用いることができる。
【0057】
前記加熱処理することにより前記内容物の温度が80~100℃に維持されることで前記断熱層を発泡させて断熱部を形成する工程は、収容されている内容物を加熱することにより、温度が80~100℃で一定時間維持されることで、断熱層を構成する熱膨張性マイクロカプセルが発泡することにより断熱部が形成される。かかる温度および時間は、熱膨張性マイクロカプセルが発泡するのに十分であることが好ましく、例えば80℃で3分や100℃で2分などの条件であることがより好ましい。
【0058】
前記断熱層形成用塗工液の製造方法は、熱膨張性マイクロカプセル、熱可塑性樹脂、溶剤、その他の無機化合物、各種添加剤などを含有した混合液を均一に分散する分散工程により公知の方法で製造できる。分散工程は、ディゾルバー、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、ペイントシェーカー、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、パールミル、超音波ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ニーダー、ホモミキサーなどの各種撹拌機または分散機などを使用する工程である。分散工程は、これらの装置は単独または2種類以上組み合せて使用する工程であってもよい。ビーズミルを使用する際の分散工程は特に制限されないが、パス方式でも循環式でもよく、パス方式は複数回分散体を通す複数パス方式でもよい。分散体における平均粒子径は、ビーズミルのビーズ分離機構、ビーズ種、ビーズ粒径、ビーズ充填率、撹拌羽根の形状および枚数、回転速度、分散体の粘度、吐出量、プレミックス時間などによって適宜調整できる。当該塗工液に気泡や粗大粒子が含まれる場合、印刷適性や印刷物品質を低下させるため、公知のろ過機や遠心分離機などを用いて、除去工程を設けてもよい。
【0059】
断熱層形成用塗工液の粘度は、印刷に支障のない範囲であれば、特に制限はない。塗工液の製造適性、取扱いなどを考慮すれば、25℃において10~1,000mPa・sであることが好ましい。前記粘度は、ブルックフィールド型粘度計などの市販の粘度計を用いて測定した値である。
【0060】
断熱層形成用塗工液は、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、25℃において10~40秒であることが好ましい。
【0061】
前記希釈溶剤は、前記塗工液の粘度や濃度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、前記溶剤が挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、PU533溶剤、PU515溶剤、SL9164溶剤、SL9170溶剤(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0062】
印刷時に、必要に応じて、前記塗工液に、硬化剤を添加することもできる。この場合、印刷物の耐熱性、耐水性、密着性などが向上するため、ボイルやレトルト加熱などの条件下でも耐性のある積層体が得られる。硬化剤としては、例えばトリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルジイソシアネート、ペンタン-1,5-ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン三量体、イソシアヌレート体、ビュレット体、アロファネート体などの変性体などのポリイソシアネート系硬化剤が挙げられ、これらを単独または2種類以上混合して使用することができる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は質量部を、%は質量%を表す。
【0064】
[断熱層形成用塗工液の作製]
(製造例1)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)50部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)40部、酢酸n-プロピル5部、メチルエチルケトン5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液1(略称:塗工液1)を作製した。
【0065】
(製造例2)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)58部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)2部、酢酸n-プロピル15部、メチルエチルケトン15部、イソプロピルアルコール10部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液2(略称:塗工液2)を作製した。
【0066】
(製造例3)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)5部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)25部、酢酸n-プロピル25部、メチルエチルケトン25部、イソプロピルアルコール20部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液3(略称:塗工液3)を作製した。
【0067】
(製造例4)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)20部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)30部、酢酸n-プロピル20部、メチルエチルケトン15部、イソプロピルアルコール15部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液4(略称:塗工液4)を作製した。
【0068】
(製造例5)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)60部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)25部、酢酸n-プロピル5部、メチルエチルケトン5部、イソプロピルアルコール5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液5(略称:塗工液5)を作製した。
【0069】
(製造例6)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)15部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)5部、酢酸n-プロピル30部、メチルエチルケトン25部、イソプロピルアルコール25部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液6(略称:塗工液6)を作製した。
【0070】
(製造例7)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)10部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)60部、酢酸n-プロピル10部、メチルエチルケトン10部、イソプロピルアルコール10部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液7(略称:塗工液7)を作製した。
【0071】
(製造例8)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)70部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)0.5部、酢酸n-プロピル15部、メチルエチルケトン10部、イソプロピルアルコール4.5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液8(略称:塗工液8)を作製した。
【0072】
(製造例9)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)1.5部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)50部、酢酸n-プロピル20部、メチルエチルケトン18.5部、イソプロピルアルコール10部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液9(略称:塗工液9)を作製した。
【0073】
(製造例10)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)99部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)1部を仕込み、ディスパーにて撹拌したが、粘度が非常に高く、均一に分散することが困難であったため、作製を中止した。
【0074】
(製造例11)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)50部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)50部を仕込み、ディスパーにて撹拌したが、粘度が非常に高く、均一に分散することが困難であったため、作製を中止した。
【0075】
(製造例12)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)8.5部、熱膨張性マイクロカプセル(マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製)2部、酢酸n-プロピル35部、メチルエチルケトン30部、イソプロピルアルコール24.5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液10(略称:塗工液10)を作製した。
【0076】
(製造例13)
ウレタン系メジウム(LG-FK Rメジウム、固形分30%、東京インキ(株)製)45部、シリカ1(ACEMATT HK440、二次粒子径14.5μm、エボニック社製)30部、酢酸n-プロピル10部、メチルエチルケトン10部、イソプロピルアルコール5部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液11(略称:塗工液11)を作製した。
【0077】
(製造例14)
塩酢ビ系メジウム(LAMREKメジウム、固形分20%、東京インキ(株)製)40部、シリカ2(WACKER HDK18、二次粒子径0.2μm、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)5部、イソシアネート化合物(LG硬化剤A、東京インキ(株)製)5部、ワックス(添加剤EH、東京インキ(株)製)5部、酢酸プロピル30部、酢酸エチル20部を仕込み、ディスパーにて撹拌して、均一に分散し、断熱層形成用塗工液12(略称:塗工液12)を作製した。
【0078】
[マイクロ波発泡積層体の作製]
(実施例1)
5色機グラビア印刷機を用いて、12μmの両面コロナ処理PETフィルム(FE2002、フタムラ化学(株)製、略称PET)に、第一ユニットで、LG-FK630R白C(略称:白インキ、東京インキ(株)製)、反転し、第二および第三ユニットで、PU515溶剤(東京インキ(株)製)にて粘度を16秒(25℃、ザーンカップ#3)に調整した塗工液1を2度刷り印刷した。次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、7μmのアルミニウム箔(1N30、東洋アルミニウム(株)製、略称:AL)のマット処理面をドライラミネート法(略称:DL)により塗工液1を印刷した面の反対面に積層し、さらにアルミニウム箔の鏡面にナイロンフィルム(エンブレムONMB-RT、ユニチカ(株)製、略称NY)をドライラミネート法により積層した。ナイロンフィルムの面に100μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(ZK99S、東レフィルム加工(株)製、略称:CPP)をドライラミネート法により積層して、45℃にて、5日間エージングして、積層体1を得た。塗工液1および白インキの塗工量は、それぞれ3.1g/m2、1.3g/m2であった。この積層体1の構成は、「塗工液1/塗工液1/PET/白インキ/DL/AL/DL/NY/DL/CPP」となった。
【0079】
(実施例2~6および比較例1~6)
実施例1の塗工液1を表1および表2のように塗工液2~12に変更し、実施例1と同様の積層体2~12を得た。塗工液2~12の塗工量、および白インキの塗工量は、表1および表2に示した。
【0080】
(実施例7)
5色機グラビア印刷機を用いて、12μmのPETフィルム(ES5200、東洋紡(株)製、略称PET)に、第一ユニットおよび第二ユニットで、PU515溶剤(東京インキ(株)製)にて粘度を16秒(25℃、ザーンカップ#3)に調整した塗工液1を2度刷り印刷した。次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、厚さ60μmのリニア低密度ポリエチレンフィルム(TUX HC、三井化学東セロ(株)製、略称LLDPE)をドライラミネート法により積層して、45℃にて、5日間エージングして、積層体13を得た。塗工液1の塗工量は、2.9g/m2であった。この積層体13の構成は、「PET/塗工液1/塗工液1/DL/LLDPE」となった。
【0081】
(実施例8)
5色機グラビア印刷機を用いて、15μmの両面コロナ処理ナイロンフィルム(エンブレムONBC-15、ユニチカ(株)製、略称:NY15)に、第一ユニットで、LG-FK630R白C(略称:白インキ、東京インキ(株)製)、反転し、第二および第三ユニットで、PU515溶剤(東京インキ(株)製)にて粘度を16秒(25℃、ザーンカップ#3)に調整した塗工液1を2度刷り印刷した。次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、100μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(ZK99S、東レフィルム加工(株)製、略称:CPP)をドライラミネート法(略称:DL)により積層して、45℃にて、5日間エージングして、積層体14を得た。塗工液1および白インキの塗工量は、それぞれ3.1g/m2、1.3g/m2であった。この積層体14の構成は、「塗工液1/塗工液1/NY15/白インキ/DL/CPP」となった。
【0082】
(実施例9)
5色機グラビア印刷機を用いて、20μmの両面コロナ処理二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OP U-2、三井化学東セロ(株)製、略称:OPP)に、第一ユニットで、LG-FK630R白C(略称:白インキ、東京インキ(株)製)、反転し、第二および第三ユニットで、PU515溶剤(東京インキ(株)製)にて粘度を16秒(25℃、ザーンカップ#3)に調整した塗工液1を2度刷り印刷した。次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(CP GLC、三井化学東セロ(株)製、略称:CPP25)をドライラミネート法(略称:DL)により積層して、45℃にて、35日間エージングして、積層体15を得た。塗工液1および白インキの塗工量は、それぞれ3g/m2、1.3g/m2であった。この積層体15の構成は、「塗工液1/塗工液1/OPP/白インキ/DL/CPP25」となった。
【0083】
(実施例10)
5色機グラビア印刷機を用いて、坪量230g/m2のポリエチレンコートカップ原紙(日本製紙(株)製、略称:カップ原紙)に、第一ユニットでアンカーコート剤(UL-3、東京インキ(株)製、略称:アンカー剤)、第二および第三ユニットでPU515溶剤(東京インキ(株)製)にて粘度を16秒(25℃、ザーンカップ#3)に調整した塗工液1を2度刷り印刷して、巻き取り、積層体16を得た。塗工液1の塗工量は、3.4g/m2であった。この積層体16の構成は、「塗工液1/塗工液1/アンカー剤/カップ原紙」となった。
【0084】
(実施例11)
実施例1で行なった2度刷り印刷を1度刷り印刷に変更し、積層体17を得た。塗工液1および白インキの塗工量は、それぞれ0.5g/m2、1.1g/m2であった。この積層体17の構成は、「塗工液1/PET/白インキ/DL/AL/DL/NY/DL/CPP」となった。
【0085】
(比較例7)
実施例1の第一ユニットで、白インキのみ印刷し、積層体18を得た。白インキの塗工量は、1.3g/m2であった。この積層体18の構成は、「PET/白インキ/DL/AL/DL/NY/DL/CPP」となった。
【0086】
各積層体について、印刷適性(泳ぎの評価)、基材密着性を評価し、表1および表2にそれぞれ示した。
【0087】
<印刷適性(泳ぎの評価)>
作製したマイクロ波発泡積層体の断熱層形成用塗工液の印刷面の状態を目視にて観察し、評価した。印刷面に不定形の濃淡が生じないものが、印刷適性が良好(泳ぎ現象が発生しない)と判断した。印刷面の濃淡が、◎:まったくない、○:わずかにみられる、△:ややみられる(実用上問題ない)、×:はっきりみられる、の4段階で評価した。
【0088】
<基材密着性>
作製したマイクロ波発泡積層体の印刷面に粘着テープ(セロハンテープ、28mm、ニチバン(株)製)を貼り付けて、親指で5回強く擦った後、粘着テープをゆっくり引き剥がして、途中から急速に引き剥がしたときの、印刷面の粘着テープへの取られ具合を目視にて観察し、評価した。粘着テープへの取られ具合の少ないものが、基材密着性が良好と判断した。粘着テープへの取られ具合が、◎:まったくない、○:わずかに取られる(剥離面積として面積あたり0以上10%未満)、△:少し取られる(剥離面積として面積あたり10%以上20%未満、実用上問題ない)、×:ほとんどが取られる(剥離面積として面積あたり20%以上)、の4段階で評価した。
【0089】
次のように包装袋または包装容器を作製し、断熱性を評価し、表1および表2にそれぞれ示した。
【0090】
<断熱性>
積層体1のシール層が最内面になるように重ね合わせ、190℃、1秒の条件にて、ヒートシールにより接着し、開口部を備える袋状のパウチを得、このパウチに、内容物として、水を充填し、開口部を190℃、1秒の条件にて、ヒートシールにより封止した。該パウチ1を電子レンジ(品番:NE-TY156、Panasonic(株)製、高周波出力:500W、丸皿直径:270mm)に入れて、2分間加熱した。このとき、マイクロ波により内容物(水)が発熱することにより、断熱層を構成する熱膨張性マイクロカプセルが発泡し、包装袋1を作製した。なお、シール部には、塗工液は塗布しておらず、発泡しなかった。
内容物(水)の発熱により熱くなった包装袋1について、断熱層を手指で持ち、1分間保持できるものを断熱性が良好と判断した。5人の実験者について、断熱層が、○:5人全員1分間保持できる、△:3人が1分間保持できる(実用上問題ない)、×:5人全員熱くて1分間保持できない、の3段階で評価した。
【0091】
積層体2~15および17~18についても、同様にして、包装袋2~17を作製した。同様に、断熱性の評価を行なった。
【0092】
積層体16について、ポリエチレンコート面が最内面になるように重ね合わせ、200℃、2秒の条件にて、ヒートシールにより接着し、カップ状包装容器とした。このカップ状包装容器に、内容物として水を注ぎ入れ、電子レンジ(品番:NE-TY156、Panasonic(株)製、高周波出力:500W、丸皿直径:270mm)に入れて、2分間加熱した。このとき、マイクロ波により内容物(水)が発熱することにより、断熱層を構成する熱膨張性マイクロカプセルが発泡し、包装容器1を作製した。なお、シール部には、塗工液は塗布しておらず、発泡しなかった。
内容物(水)の発熱により熱くなった包装容器1について、断熱層を手指で持ち、1分間保持できるものを断熱性が良好と判断した。5人の実験者について、断熱層が、○:5人全員1分間保持できる、△:3人が1分間保持できる(実用上問題ない)、×:5人全員熱くて1分間保持できない、の3段階で評価した。
【0093】
(比較例8)
積層体16で用いたポリエチレンコートカップ原紙のポリエチレンコート面が最内面になるように重ね合わせ、200℃、2秒の条件にて、ヒートシールにより接着し、カップ状包装容器とした。このカップ状包装容器に、内容物として水を注ぎ入れ、電子レンジ(品番:NE-TY156、Panasonic(株)製、高周波出力:500W、丸皿直径:270mm)に入れて、2分間加熱し、包装容器2を作製し、積層体16と同様に断熱性の評価を行なった。
【0094】
【0095】
【0096】
表1および表2の結果より、実施例1~11の積層体は、印刷適性および基材密着性が良好であった。また、本発明のマイクロ波発泡包装袋および包装容器は、優れた断熱性能を発揮することが明確である。比較例1は、熱膨張性マイクロカプセルが多く、断熱効果はあるものの、印刷適性が若干劣り、基材密着性が劣る。比較例2は、印刷適性、基材密着性は良好であるが、断熱効果はまったくない。比較例3は、断熱効果はあるものの、印刷適性が若干劣り、基材密着性が劣る。比較例4は、印刷適性が劣り、濃度ムラが発生し、断熱効果もやや劣る。引用文献2に類似の比較例5および引用文献3に類似の比較例6のマイクロ波発泡積層体を用いて作製した包装袋は、断熱性能が弱く、熱くて手指で保持できない。また、塗工液を塗工しないものは、まったく断熱効果はない。なお、製造例10および11の塗工液は、粘度が非常に高くなり、均一な分散が困難であった。