(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】印刷機において刷版クランプをコントロールする方法
(51)【国際特許分類】
B41F 27/12 20060101AFI20230116BHJP
B41F 27/06 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
B41F27/12 D
B41F27/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019008539
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】10 2018 200 996.1
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521225708
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルックマシーネン インテレクチュアル プロパティー アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen Intellectual Property AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Gutenbergring 19, 69168 Wiesloch, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ルーライ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ツーバー
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-297684(JP,A)
【文献】特開2016-187888(JP,A)
【文献】特開2007-223208(JP,A)
【文献】特開2016-215647(JP,A)
【文献】特開2005-014400(JP,A)
【文献】特開2000-255033(JP,A)
【文献】特開平11-010835(JP,A)
【文献】特表2014-516847(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0255428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/12
B41F 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機(1)において刷版クランプをコントロールする方法であって、
-キャリッジ(5)は、第1のクランプ装置(11)によって刷版(6)を挟み込んで、第1の方向(I)に版胴(7)へ向けて搬送し、
-前記版胴(7)は、第2のクランプ装置(12)によって前記刷版(6)を挟み込み、
-前記キャリッジ(5)を、前記第1のクランプ装置(11)に挟み込んで保持された前記刷版(6)とともに第2の方向(II)に駆動して戻し、前記キャリッジ(5)の反応に基づき制御装置(8)により、前記刷版(6)が前記第2のクランプ装置(12)内で確実に挟み込まれているかどうか検出し、
前記キャリッジ(5)の反応を、前記制御装置(8)と接続されたセンサ(21)により検出し、
前記センサ(21)は、前記キャリッジ(5)の位置を監視する、
印刷機(1)において刷版クランプをコントロールする方法。
【請求項2】
印刷機(1)において刷版クランプをコントロールする方法であって、
-キャリッジ(5)は、第1のクランプ装置(11)によって刷版(6)を挟み込んで、第1の方向(I)に版胴(7)へ向けて搬送し、
-前記版胴(7)は、第2のクランプ装置(12)によって前記刷版(6)を挟み込み、
-前記キャリッジ(5)を、前記第1のクランプ装置(11)に挟み込んで保持された前記刷版(6)とともに第2の方向(II)に駆動して戻し、前記キャリッジ(5)の反応に基づき制御装置(8)により、前記刷版(6)が前記第2のクランプ装置(12)内で確実に挟み込まれているかどうか検出し、
前記キャリッジ(5)の反応を、前記制御装置(8)と接続されたセンサ(21)により検出し、
前記センサ(21)は、非接触式に作動するものであって、前記キャリッジ(5)へ向けられている、
印刷機(1)において刷版クランプをコントロールする方法。
【請求項3】
印刷機(1)において刷版クランプをコントロールする方法であって、
-キャリッジ(5)は、第1のクランプ装置(11)によって刷版(6)を挟み込んで、第1の方向(I)に版胴(7)へ向けて搬送し、
-前記版胴(7)は、第2のクランプ装置(12)によって前記刷版(6)を挟み込み、
-前記キャリッジ(5)を、前記第1のクランプ装置(11)に挟み込んで保持された前記刷版(6)とともに第2の方向(II)に駆動して戻し、前記キャリッジ(5)の反応に基づき制御装置(8)により、前記刷版(6)が前記第2のクランプ装置(12)内で確実に挟み込まれているかどうか検出し、
-
前記刷版(6)が前記第2のクランプ装置(12)内で確実に挟み込まれていることが検出された場合、前記第1のクランプ装置(11)が開き、その後で前記キャリッジ(5)が前記第2の方向(II)に走行して戻る、
印刷機(1)において刷版クランプをコントロールする方法。
【請求項4】
前記刷版(6)は、非導電性であるプラスチックを含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記刷版(6)は、印刷または塗装に用いられるフレキソ印刷用刷版である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機において刷版クランプをコントロールする方法であって、キャリッジは、第1のクランプ装置によって刷版を挟み込んで、第1の方向に版胴へ向けて搬送し、版胴の第2のクランプ装置によって刷版を挟み込む、方法に関する。
【0002】
独国特許出願公開第102016206223号明細書(DE 10 2016 206 223 A1)において、刷版交換装置が記載されており、この刷版交換装置では、搬送キャリッジが、刷版を搬送方向に版胴へ向けて搬送し、その際、組み込まれた保持装置を用いて把持する。保持装置は、クランプスタンプに第1のクランプ面を有し、かつ第2のクランプ面を有するクランプ装置である。搬送キャリッジは、刷版の前縁を版胴のクランプ装置内へ摺動させる。刷版は、スポット塗装に用いられるフレキソ印刷用刷版である。
【0003】
欧州特許出願公開第0555782号明細書(EP 0 555 782 A1)には、刷版ユニットをコントロールする装置が記載されている。この装置では、刷版の導電性の前縁が、スイッチとして用いられ、レジスタピンが電極として用いられる。電極は、刷版が電極に当接すると、刷版の前縁により短絡接続される。
【0004】
後者の従来技術における装置は、前縁が導電性である刷版にしか適していないことが不都合である。装置は、たとえば前者の従来技術のフレキソ印刷用刷版などの非電導性の刷版には適していない。
【0005】
本発明の根底を成す課題は、非導電性の刷版にも適した、印刷機において刷版クランプをコントロールする方法を提供することである。
【0006】
この課題は、印刷機において刷版クランプをコントロールする方法であって、キャリッジは、第1のクランプ装置によって刷版を挟み込んで、刷版を第1の方向に版胴へ向けて搬送し、版胴は、第2のクランプ装置によって刷版を挟み込み、キャリッジを、第1のクランプ装置に挟み込んで保持された刷版とともに第2の方向に駆動して戻し、キャリッジの反応に基づき、制御装置により、刷版が第2のクランプ装置内で確実に挟み込まれているかどうか検出する、印刷機において刷版クランプをコントロールする方法により解決される。
【0007】
本発明に係る方法の利点は、方法が導電性の刷版だけではなく非導電性の刷版にも適していることにある。
【0008】
様々な改良形態が実現可能である。
【0009】
刷版は、非導電性のプラスチックを含んでよい。
【0010】
刷版は、印刷または塗装に用いられるフレキソ印刷用刷版であってよい。
【0011】
キャリッジの反応を、制御装置と接続されたセンサにより検出することができる。
【0012】
センサは、キャリッジの位置を監視することができる。
【0013】
センサは、非接触式に作動するものであって、キャリッジへ向けられてよい。
【0014】
好適な改良形態は、以下の実施の形態の説明および付属の図面からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】刷版交換装置を備える印刷機の全体図である。
【
図2】刷版交換装置により行われる一連の方法ステップを示す。
【
図3】刷版交換装置により行われる一連の方法ステップを示す。
【
図4】刷版交換装置により行われる一連の方法ステップを示す。
【0016】
図1には、シートのオフセット印刷に用いられる印刷機1が描画されている。印刷機1は、自動化されている刷版交換装置3を有する塗工部2を備える。
【0017】
刷版交換装置3は、鉛直の供給用縦穴4を有する。さらに、刷版交換装置3は、キャリッジ5を有し、キャリッジ5は、刷版6を供給用縦穴4から版胴7へ向けて搬送する。
【0018】
刷版6は、非導電性材料、たとえばプラスチックを有する。刷版6は、スポット塗装に用いられるフレキソ印刷用刷版である。
【0019】
キャリッジ5は、モータMにより駆動される。モータMは、電子的な制御装置8、たとえば電子計算機により制御される。
【0020】
図2において、キャリッジ5が第1のクランプ装置11を有し、版胴7が第2のクランプ装置12を有することが看取可能である。各々のクランプ装置11,12は、刷版6を保持するための2つのクランプジョーを有する。
【0021】
第1のセンサ21と第2のセンサ22とを有する監視装置が、キャリッジ5の下方に配置されている。第1のセンサ21は、キャリッジ5の前端の存在を検出し、第2のセンサ22は、後端の存在を検出する。第1のセンサ21は、非接触式の、たとえば光学式に作動するセンサである。第1のセンサ21は、終端位置センサとして機能する。第2のセンサ22は、第1のセンサ21と同一の構造を有してよい。
【0022】
キャリッジ5は、供給用縦穴4内で刷版6をその前縁付近で把持する。その後で、キャリッジ5は、第1のクランプ装置11に保持された刷版6とともに、搬送経路に沿って鉛直の位置から描画された水平の位置へ走行する。版胴7は、第2のクランプ装置12がキャリッジへ向いた回動位置にある。第2のクランプ装置12は、開かれている。
【0023】
図3には、後続の方法ステップが描画されている。キャリッジ5は、把持された刷版6とともに、第1の方向Iに、キャリッジ5が第1のセンサ21に到達したことを第1のセンサ21が制御装置8にシグナリングするまで走行する。第1のセンサ21の起動は、図面においてセンサ21のハッチングによりシンボライズされている。第1の方向Iは、版胴7へ向けられている。第1のセンサ21に到達すると、刷版6の前縁は、第2のクランプ装置12内に位置し、次いで、第2のクランプ装置12は閉じられる。
【0024】
第2のクランプ装置12が刷版6を正しく把持したかどうか検査するために、キャリッジ5は、モータMにより、第2の方向IIへと変位される、または変位が試みられる。第2の方向IIへと変位されるまたは変位が試みられる間、クランプ装置11,12は閉じられている。
【0025】
第2の方向IIは、第1の方向Iとは逆方向である。方向I,IIでの両方の変位は、線形であり、同一のガイド、たとえばレール対に沿って行われる。キャリッジ5は、変位に際して水平に走行するまたは摺動する。この説明において鉛直および水平とは、実質的に鉛直または実質的に水平と解される。
【0026】
第2のクランプ装置12が、第2の方向IIでのキャリッジ5の変位の試みに際して、適正に閉じられていて、刷版6が第2のクランプ装置12のクランプジョーの間の適正な位置にあるとき、第2のクランプ装置12は、刷版6を介してキャリッジ5を拘束し、これによりキャリッジ5は、第2の方向2に動くことができない。キャリッジ5が第1のセンサ21の視界から外れないので、制御装置8は、第2のクランプ装置12が固く閉じられていて、刷版6を把持したことにより、第2のクランプ装置12が正しく作動することを知る。
【0027】
その際、第1のクランプ装置11の機能エラーを排除することができる。というのも、機械的な手段、たとえばばねにより、第1のクランプ装置11が固く閉じられていて、刷版6が第1のクランプ装置11において滑動できないことが保証されているからである。第1のクランプ装置11とは異なり、第2のクランプ装置12の機能エラーは、構造に基づき、それほど容易には機械的な手段だけでは排除することができない。
【0028】
第2の方向IIでのキャリッジ5の変位に際して、第2のクランプ装置12が適正に閉じられていない、または刷版6が第2のクランプ装置12内の適正な位置にないとき、キャリッジ5は、第2の方向IIに動くことが可能であり、これによりキャリッジ5は、第1のセンサ21の視界から外れ、第1のセンサ21は、このことを制御装置8にシグナリングする。
【0029】
これは、たとえば刷版6の前縁が、第2の方向IIにキャリッジ5が動くときに第2のクランプ装置12のクランプジョーの間で滑動するまたはそれどころかクランプジョーから滑落する場合である。機能エラーの別の例によれば、刷版6の前縁が、第1の方向Iに移動する際に全く第2のクランプ装置12の中へ導入されておらず、第2のクランプ装置12が、「空の状態」で閉じられている。
【0030】
第2の方向IIでのキャリッジ5の移動が行われていることを、制御装置8が第1のセンサ21からシグナリングされると、制御装置8は、これを第2のクランプ装置12の機能エラーと解釈する。制御装置8は、自動の刷版クランプ用のプログラム進行を中断し、視覚的にまたは音響学的にユーザに機能エラーが発生していることを通知する。
【0031】
記載された、版胴7における刷版6の正確なまたは不正確なクランプを確認する「引張り試験」は、約1秒かかる。
【0032】
図4には、第2のクランプ装置12が適正に機能する場合に
図3に描画された方法ステップの後で行われる後続の方法ステップが描画されている。まず第1のクランプ装置11が開き、その後でキャリッジ5が第2の方向IIにその後方の終端位置にまで走行して戻り、これが第2のセンサ22により認識され、制御装置8にシグナリングされる。
【0033】
キャリッジ5が走行して戻る際に、第1のクランプ装置11は開いたままで、第1のクランプ装置11内を通って刷版6が滑動する。キャリッジ5の戻し走行と同時にまたはその後で、版胴7は、矢印で示された方向に回動し、その際、第2のクランプ装置12は、中に刷版6が挟み込まれた状態で依然として閉じられている。これにより、刷版6は、版胴7の回動により、刷版交換装置3およびそのキャリッジ5から外へ引き抜かれ、版胴7上に被せ付けられる。版胴7に対する刷版6の巻き上げは、押圧ドラム23により支援される。
【符号の説明】
【0034】
1 印刷機
2 塗工部
3 刷版交換装置
4 供給用縦穴
5 キャリッジ
6 刷版
7 版胴
8 制御装置
11 第1のクランプ装置
12 第2のクランプ装置
21 第1のセンサ
22 第2のセンサ
23 押圧ドラム
M モータ
I 第1の方向
II 第2の方向