(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/32 20060101AFI20230116BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
H02K1/32 C
H02K9/06 B
H02K9/06 E
(21)【出願番号】P 2019034678
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰平
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 寿郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 克仁
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0096577(US,A1)
【文献】特開2017-034942(JP,A)
【文献】特開2011-211862(JP,A)
【文献】特開2019-017230(JP,A)
【文献】特開2017-060319(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109038949(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0079814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/32
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線の回りで回転自在に設けられた回転シャフトと、複数枚の鉄心片板を積層して構成され前記回転シャフトに同軸的に取り付けられた回転子鉄心と、それぞれ前記回転子鉄心を軸方向に貫通して形成され前記回転子鉄心の軸方向の一端面および軸方向の他端面に開口した複数の空隙孔と、前記空隙孔内に配置され前記回転子鉄心の軸方向に延在する複数の永久磁石と、前記回転子鉄心の一端面および他端面に重ねて配置され、それぞれ前記空隙孔の少なくとも一部に連通する複数の通風孔が設けられた一対の端板と、を具備する回転子
と、
前記回転シャフトと一体に回転可能に設けられ、前記端板の通風孔に対向する吸気口を有する冷却ファンと、
を備える回転電機。
【請求項2】
前記空隙孔の各々は、前記永久磁石が配置された磁石装填領域と、それぞれ前記永久磁石に接する第1空隙および第2空隙と、を有し、
前記端板は、前記第1空隙に連通する第1通風孔と前記第2空隙に連通する第2通風孔とを有している請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記回転子を収納しているとともに軸受を介して前記回転シャフトを支持したケースと、
前記回転子鉄心の外周に隙間を置いて配置され前記ケースに固定された環状の固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回された電機子巻線と、を有する固定子と、
を備え、
前記冷却ファンは、前記ケース内に設けられ前記中心軸線の回りで回転可能に前記回転シャフトに取り付けられている、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記冷却ファンは、それぞれ前記吸気口から排気口に向かって延在する複数枚の羽根を有し、前記複数枚の羽根は、前記回転シャフトの円周方向に互いに等間隔を置いて配置され、前記羽根の枚数は、前記回転子鉄心の磁極数、あるいは、前記磁極数の整数倍に一致している請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記冷却ファンの吸気口の外径は、前記回転子鉄心に設けられた前記空隙孔の最外径よりも大きい請求項3に記載の回転電機。
【請求項6】
前記端板に当接し、前記回転子鉄心を軸方向両側から押える一対の鉄心押えを更に備え、前記鉄心押えは、それぞれ前記端板の通風孔に連通する複数の透孔を有している請求項1から5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記回転子鉄心は、それぞれ前記回転子鉄心を軸方向に貫通して形成され前記永久磁石の近傍に位置する複数の第2空隙孔を有し、前記端板は、それぞれ前記第2空隙孔に連通する複数の第3通風孔を有している請求項1から6のいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、回転子に永久磁石が設けられた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、永久磁石の目覚しい研究開発により、高磁気エネルギー積の永久磁石が開発され、このような永久磁石を用いた永久磁石型の回転電機が電車や自動車の電動機あるいは発電機として適用されつつある。一般的にはPMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor)が主流で、永久磁石を回転子鉄心内に埋め込んだIPM(Interior Permanent Magnet Motor)形式が多い。機内の構成に永久磁石を使用していることから、回転電機は塵埃が侵入しないように密閉構造がとられる。しかし、容量の大きい回転電機、例えば、鉄道用の主電動機などの場合では、コイルや鉄心からの発熱により、機内の温度が高くなり易い。主電動機の機内は、回転子の回転により駆動側や反駆動側の空間に撹拌流れが発生し、コイル周りなどを冷却している。
【0003】
回転電機の各構成部材は許容温度が定められている。中でも、永久磁石は、機内の他の機器よりも許容温度の上限が低く、許容温度を超えると性能が低下してしまう。そのため、永久磁石は、許容温度以内で使用する必要がある。しかし、永久磁石自体は回転子鉄心内に埋め込まれているため、前述の撹拌流れによる冷却が永久磁石には寄与せず、永久磁石の冷却が難しい。そこで、回転子の温度を下げるために、機内にファンを設け、回転子に設けられたロータダクトを使った循環流れによる冷却方式がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-75882号公報
【文献】特開2010-80799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転子の主要な損失発生箇所は、回転子の外表面付近であるが、回転子の外表面と固定子との間のギャップは狭く、通風量を増やしにくい。また、回転子のロータダクトは永久磁石から離間しているため、永久磁石に対して十分な冷却性能を発揮できない。そのため、回転電機の大容量化、小型化の際には冷却性能が不足することが考えられる。
そこで、この発明の実施形態の課題は、回転子の永久磁石を効率的に冷却可能な回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、回転電機は回転子と冷却ファンとを備え、前記回転子は、中心軸線の回りで回転自在に設けられた回転シャフトと、複数枚の鉄心片板を積層して構成され前記回転シャフトに同軸的に取り付けられた回転子鉄心と、それぞれ前記回転子鉄心を軸方向に貫通して形成され前記回転子鉄心の軸方向の一端面および軸方向の他端面に開口した複数の空隙孔と、前記空隙孔内に配置され前記回転子鉄心の軸方向に延在する複数の永久磁石と、前記回転子鉄心の一端面および他端面に重ねて配置され、それぞれ前記空隙孔の少なくとも一部に連通する複数の通風孔が設けられた一対の端板と、を具備している。前記冷却ファンは、前記回転シャフトと一体に回転可能に設けられ、前記端板の通風孔に対向する吸気口を有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る永久磁石型の回転電機を示す縦断面図。
【
図3】
図3は、前記回転電機の回転子を示す斜視図。
【
図4】
図4は、前記回転子の鉄心と端板を分解して示す分解斜視図。
【
図5】
図5は、前記回転電機の内扇ファンを示す斜視図。
【
図6】
図6は、前記回転子鉄心の磁石配設位置と内扇ファンの羽根の位置との関係を概略的に示す断面図。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る回転電機における回転子鉄心の磁石配設位置と内扇ファンの羽根の位置との関係を概略的に示す断面図。
【
図8】
図8は、第3の実施形態に係る回転電機における回転子鉄心の磁石配設位置と内扇ファンの羽根の位置との関係を概略的に示す断面図。
【
図9】
図9は、第4の実施形態に係る回転電機の回転子鉄心と端板とを示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照しながら、種々の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る永久磁石型の回転電機の片側半分を示す縦断面図、
図2は、前記回転電機の横断面図である。
図1に示すように、回転電機10は、例えば、インナーロータ型の回転電機として構成されている。回転電機10は、ほぼ円筒状のフレームとフレームの両端を閉塞するブラケットとを一体に有したケース12と、ケース12をほぼ同軸的に貫通して設けられた回転シャフト14とを備えている。回転シャフト14の両端部は、それぞれ軸受16a、16bを介してケース12に回転自在に支持されている。回転シャフト14は、回転電機10の中心軸線Cの回りで回転自在に支持されている。回転シャフト14の軸方向両端は、それぞれケース12から外方に突出している。回転シャフト14の一方の端部は、駆動側端部14aを構成している。
【0010】
回転電機10は、ケース12に支持された環状あるいは円筒状の固定子20と、固定子の内側に中心軸線Cの回りで回転自在に、かつ固定子20と同軸的に支持された回転子40と、を備えている。
図1および
図2に示すように、固定子20は、円筒状の固定子鉄心22と固定子鉄心22に巻き付けられた電機子巻線23とを備えている。固定子鉄心22は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板(鉄心片板)を多数枚、同芯状に積層して構成されている。固定子鉄心22はケース12に固定され、中心軸線Cと同軸的に位置している。固定子鉄心22の内周部には、複数のスロット24が形成されている。複数のスロット24は、円周方向に等間隔を置いて並んでいる。複数のスロット24を形成することにより、固定子鉄心22の内周部は、回転子40に面する多数の固定子ティース26を構成している。複数のスロット24に電機子巻線23が埋め込まれ、固定子ティース26に巻き付けられている。電機子巻線23のコイルエンド23a、23bは、固定子鉄心22の積層方向(軸方向)の両端面から軸方向に張り出している。
【0011】
回転子40は、上述した回転シャフト14と、回転シャフト14の軸方向ほぼ中央部に固定された円筒形状の回転子鉄心42と、回転子鉄心42内に埋め込まれた複数の永久磁石50と、を有している。回転子40は、固定子20の内側に僅かな隙間を置いて同軸的に配置されている。すなわち、回転子鉄心42の外周面は、僅かな隙間(エアギャップ)をおいて、固定子鉄心22の内周面に対向している。回転子鉄心42は中心軸線Cと同軸的に形成された内孔45を有している。回転シャフト14は内孔45に挿通および嵌合され、回転子鉄心42と同軸的に延在している。
回転子40は、更に、回転子鉄心42の軸方向両端面に重ねて設けられた一対の端板60を有している。端板60については、後述する。回転子鉄心42は、回転シャフト14に固定された一対の鉄心押さえ46により軸方向両端面から挟まれ、所定位置に保持されている。回転子鉄心42および鉄心押さえ46には、両者を軸方向に貫通する通風ダクト47が複数個形成されている。複数の通風ダクト47は、中心軸線Cの回りで、円周方向に一定の間隔を置いて設けられている。
【0012】
本実施形態において、回転電機10は、回転シャフト14に固定された内扇ファン(第1冷却ファン)70および外扇ファン(第2冷却ファン)72を備えている。内扇ファン70は、ケース12の内部で、回転子鉄心42に対して、反駆動側に配置されている。ここでは、内扇ファン70は、反駆動側の鉄心押え46に固定されている。外扇ファン72は、ケース12の外側で、回転シャフト14の反駆動側端に取付けられている。
回転電機10は、ケース12の反駆動側の端面および外扇ファン72を覆う外カバー74と、外カバー74からケース12の外周面に沿って、軸方向に延出した複数の通風ダクト76と、を一体に有している。外カバー74の中央部に複数の吸気口77が形成されている。複数の通風ダクト76は、ケース12の外周面において、外カバー74から固定子鉄心22の駆動側の端を越える位置まで軸方向に延在している。通風ダクト76の延出端は開口し、排気口76bを形成している。
外扇ファン72は、回転シャフト14と一体に回転する。外扇ファン72が回転することにより、吸気口77から外カバー74内に外気が吸気され、吸気された外気は、外扇ファン72により円周方向外方に送られ、通風ダクト76に流入する。更に、外気は、通風ダクト76内を流れた後、排気口76bから外部に排気される。
【0013】
各通風ダクト76内のほぼ中央部に、内気通風ダクト78が設けられている。この内気通風ダクトは、ケース12の外周面に沿って軸方向に延びている。内気通風ダクト78の一端は、ケース12に形成された図示しない第1通気口を介してケース12の内部空間、すなわち、回転子鉄心42の反駆動側に位置する内部空間に連通している。内気通風ダクト78の他端は、ケース12に形成された図示しない第2通気口を介してケース12の内部空間、すなわち、回転子鉄心42の駆動側に位置する内部空間に連通している。後述すように、内扇ファン70が回転すると、ケース12内の内気が内気通風ダクト78を通してケース12内に循環される。
【0014】
図3は、回転電機の回転子を示す斜視図、
図4は、回転子鉄心と端板とを分解して示す分解斜視図である。
図3および
図4に示すように、回転子鉄心42は、例えば、厚さ0.5mm程度の円盤状の電磁鋼板(鉄心片板)を多数枚、同芯状に積層した積層体で構成されている。回転子鉄心42を押えるための端板60は、回転子鉄心42と同一径を有する厚さ2mm程度の円盤板を複数枚積層して構成されている。端板60は、回転子鉄心42の軸方向両端面に重ねて設けられている。
図2および
図4に示すように、回転子鉄心42には、複数の磁石埋め込み孔(空隙孔、フラックスバリア)44が設けられている。各磁石埋め込み孔44は、回転子鉄心42を軸方向に貫通して形成され、回転子鉄心42の軸方向の一端面および軸方向の他端面に開口している。本実施形態において、回転子鉄心42は、6磁極を有し、各磁極に2つの磁石埋め込み孔44が形成されている。
【0015】
中心軸線Cおよび周方向の磁極中心を通って放射方向に延びる軸を磁極中心軸(d軸)とした場合、各d軸の周方向両側に磁石埋め込み孔(以下、埋め込み孔と称する場合がある)44が設けられている。埋め込み孔44は、ほぼ矩形の断面形状を有し、それぞれd軸に対して傾斜している。回転子鉄心42の横断面において、2つの埋め込み孔44は、例えば、ほぼV字状に並んで配置されている。すなわち、埋め込み孔44の内周側の端はそれぞれd軸に隣接し、僅かな隙間をおいて互いに対向している。埋め込み孔44の外周側の端は、回転子鉄心42の円周方向にd軸から離間し、回転子鉄心42の外周面の近傍に位置している。
【0016】
各埋め込み孔44に永久磁石50が収納、配置されている。永久磁石50は、矩形状の横断面形状を有している。永久磁石50は、回転子鉄心42の軸方向一端面から他端面まで延在している。回転子鉄心42の横断面において、各磁極に設けられた2つの永久磁石50は、それぞれd軸に対して傾斜している。各埋め込み孔44は、永久磁石50が配置された矩形状の磁石装填領域と、永久磁石50の長手方向の両側に延出する内周側空隙(第1空隙)44aおよび外周側空隙(第2空隙)44bと、を有している。永久磁石50に接する内周側空隙44aおよび外周側空隙44bは、それぞれ回転子鉄心42の軸方向に延在し、回転子鉄心42の軸方向両端面に開口している。
【0017】
図3および
図4に示すように、各端板60には、回転子鉄心42の内周側空隙44aおよび外周側空隙44b(フラックスバリア)と対応する位置に、内周側空隙44aおよび外周側空隙44bと同一形状の通風孔62a、62bが形成されている。本実施形態では、端板60は、全ての内周側空隙44aおよび全ての外周側空隙44bに対応する複数の通風孔62a、62bを有している。端板60は、回転子鉄心42の端面に重ねて固定され、各通風孔62a、62bは内周側空隙44aおよび外周側空隙44bに対向し、内周側空隙44aおよび外周側空隙44bに連通している。これにより、通風孔62a、62bを通して、内周側空隙44aおよび外周側空隙44bに通風可能となっている。
【0018】
本実施形態において、各端板60は、回転子鉄心42の通風ダクト47を塞いでいるが、通風バランスによっては、端板60に通風ダクト47に連通する通風孔を設ける構成としてもよい。また、端板60に、全ての内周側空隙44aおよび外周側空隙44bに対応する同形状の通風孔を設ける必要はなく、内周側空隙44aに連通する通風孔62aのみ、あるいは、外周側空隙44bに連通する通風孔62bのみを設ける構成としてもよい。
通風孔62a、62bは、内周側空隙44aおよび外周側空隙44bと同一の形状である必要はなく、内周側空隙44a又は外周側空隙44bよりも大きな寸法の通風孔、あるいは、内周側空隙44a又は外周側空隙44bよりも小さい寸法の通風孔としてもよい。通風孔62a、62bは、内周側空隙44a、外周側空隙44bの全開口に連通していなくてもよく、内周側空隙44a、外周側空隙44bの少なくとも一部に連通していればよい。
【0019】
図1に示したように、回転子鉄心42の軸方向両端に鉄心押え46が設けられ、それぞれ端板60に当接している。鉄心押え46の外形が端板60の通風孔62a、62bと重なる位置まである場合には、鉄心押え46にも内周側空隙44a、外周側空隙44bと同形状の鉄心押え孔66a、66bを設ける。通風させる内周側空隙44a、外周側空隙44bに鉄心押え46の外形が重なっていない場合には、鉄心押え46に通風孔を設ける必要はない。
【0020】
図5は内扇ファンを示す斜視図、
図6は、内扇ファンの羽根と回転子鉄心のフラックスバリアとの配置関係を概略的に示す側面図である。
図1および
図5に示すように、内扇ファン70は、遠心型のファンとして構成され、回転により半径方向に風を発生させる。内扇ファン70は、扇形状の本体70aと、本体70aの外周面に隙間を置いて対向配置された環状の外周フレーム70bと、本体70aと外周フレーム70bとの間に設けられた複数枚の羽根80と、を一体に有している。一例では、羽根80は、6枚設けられ、中心軸線Cを中心とする円周方向に互いに等間隔を置いて配置されている。各羽根80は、中心軸線Cに対し、径方向あるいは放射方向に延在している。
【0021】
本体70aの外周端部と外周フレーム70bの外周端部との間にファンの排気口82が規定されている。排気口82は、径方向外方に向いて開口している。排気口82は、コイルエンド23bの端部付近に位置し、かつ、内扇ファン70からの風がコイルエンド23bと衝突しにくい位置とするのがよい。
本体70aの外周面と外周フレーム70bの内周端部との間にファンの吸気口84が規定されている。鉄心押え46が端板60全体を覆っている場合、内扇ファン70の吸気口84は、鉄心押え46に隣接する位置に配置される。鉄心押え46の外径が小さく、端板60が内扇ファン70付近に露出している場合には、内扇ファン70の吸気口84は、端板60に近接して配置される。近接させる距離は狭い方がよく、数mm~10mm程度が望ましい。吸気口84の外径は、端板60の通風孔62a、62bの位置や鉄心押え46の通風孔の位置よりも大きく形成されている。すなわち、吸気口84の外径は、回転子鉄心42に設けられた空隙孔(フラックスバリア)の最外径よりも大きく形成されている。内扇ファン70は、通風孔62a、62bや鉄心押えの通風孔と1つのダクトを形成するような形状および設置とすることが望ましい。
【0022】
回転電機を鉄道用主電動機として用いる場合、内扇ファン70は羽根80が径方向に設置されたラジアルファンとして構成される。また、回転電機を回転方向が一方向に限られる発電機等として用いる場合、内扇ファン70はターボファンなど効率のよい羽根形状を選択することができる。羽根80の枚数は自由に選択できるが、磁石埋め込み孔(フラックスバリア)44の周方向配置周期数、つまり、V字型に設けられた永久磁石50の周方向パターン数(磁極数)、例えば、6磁極、と合わせるのがよい。
図6に示すように、本実施形態では、内扇ファン70は6枚の羽根80を有し、これらの羽根80は、磁極の円周方向配置と一致するように、円周方向に互いに等間隔離間して配置されている。各羽根80は、各磁極の磁極中心軸(d軸)と一致する位置に設けられている。
本実施形態において、内扇ファン70は、ケース12内の反駆動側の空間に設けられているが、これに限らず、ケース12内の駆動側の空間に設けても良い、すなわち、回転シャフト14の駆動側の端部に設置してもよい。また、内扇ファン70は鉄心押え46の端部に取付けられているが、これに限らず、取り付け部分は回転シャフト14と一体的に回転する場所であれば任意に選択可能である。
【0023】
以上のように構成された回転電機10の動作、作用効果について説明する。
回転電機10の運転稼動時、回転子40の回転や内扇ファン70、図示しない回転体の突起形状などによって、ケース12の駆動側の空間と反駆動側の空間との間で圧力差が発生する。その際、駆動側の空間と反駆動側の空間とを回転子鉄心42のフラックスバリア(内周側空隙44a、外周側空隙44b)内に風が流れ、ギャップ部などを通過してフレーム内部を循環する流れが発生する。この場合、フラックスバリア内を通過する風によって永久磁石50が冷却される。通常、永久磁石中央部付近の温度が最も高くなり易いが、フラックスバリア通風構造によって、中央付近の永久磁石を直接冷却することができる。このような通風構造は、端板60に通風孔62a、62bを設けるだけの簡易な変更で達成可能となる。
【0024】
回転電機10の運転稼働時には、回転子40の回転シャフト14と共に内扇ファン70および外扇ファン72が回転し、遠心力により、遠心方向に風が発生する。内扇ファン70の吸気口84側は負圧となり、近接して設置された鉄心押え46の通風孔および端板60の通風孔62a、62bから風を吸引する。これにより、回転子40の内周側空隙44aおよび外周側空隙44bを通して吸引された内気が内扇ファン70により遠心方向に送風され、内気通風ダクト78を通過して、ケース12の駆動側空間へ流入する。その後、駆動側空間の内気は、端板60の通風孔62a、62b、鉄心押さえ46の通風孔、回転子鉄心42の内周側空隙44a、外周側空隙44bを主に通過して内扇ファン70へ吸引される流れとなる。
【0025】
一方、外扇ファン72が回転することにより、吸気口77から外気が外カバー74内に吸気され、外扇ファン72により遠心方向に送られる。外気は複数の通風ダクト76を通過して排気口76bから外部に放出される。このようにケース12の外面に沿って外気を流通させることにより、ケース12および回転電機10全体を外気により冷却することができる。更に、前述した内気通風ダクト78は、外気の通風ダクト76に隣接して設けられていることから、内気通風ダクト78を通る内気と通風ダクト76を流れる外気との間で熱交換が行われ、すなわち、内気が冷却される。これにより、冷却された内気をケース12内に送ることができる。
【0026】
このように、内扇ファン70によって回転電機10内で空気を循環させることにより、回転子40のフラックスバリア(内周側空隙44a、外周側空隙44b)を高速で風が軸方向に流れる。風がフラックスバリアを通過する際に永久磁石50表面での流速が増し、熱伝達率が向上する。そのため、フラックスバリアを通過する風あるいは内気により、永久磁石50を直接的に効率良く冷却することが可能となる。従って、永久磁石50の長手方向の中央部の温度上昇を抑制することができる。
この際、内扇ファン70の羽根80の枚数と、フラックスバリアの周方向周期数とを合わせおくと、各フラックスバリアを通過する風量が一定となり、回転子の局部的な温度上昇(ローカルヒート)を抑制することができる。また、内扇ファン70の吸気口84の外径を端板60の通風孔62a、62bの設置位置の外径よりも大きくすることで、フラックスバリアを通過する風量を増すことが可能となる。
以上のことから、本実施形態によれば、回転子の永久磁石を効率的に冷却可能な回転電機が得られる。
【0027】
次に、この発明の他の実施形態に係る回転電機について説明する。以下に述べる他の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分および同一の構成部材には、第1の実施形態と同一の参照符号を付してその省略あるいは簡略化し、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る回転電機の内扇ファンの羽根と回転子鉄心のフラックスバリアとの配置関係を概略的に示す側面図である。
内扇ファン70の羽根80の枚数は、6枚に限らず、磁石埋め込み孔(フラックスバリア)44の周方向配置周期数、つまり、永久磁石50の周方向パターン数(磁極数)、の整数倍に設定してもよい。
図7に示すように、第2の実施形態によれば、磁極数の2倍である12枚の羽根80が設けられている。羽根80は、それぞれ中心軸線Cに対して放射方向に延在しているとともに、中心軸線Cを中心とする円周方向に互いに等間隔を置いて配置されている。12枚の内、6枚の羽根80は、それぞれd軸と対向する位置に配置されている。
このように12枚の羽根80を有する内扇ファンを用いた場合でも、回転子鉄心42の各フラックスバリアを通過する風量が一定となり、回転子40の局部的な温度上昇(ローカルヒート)を抑制することができる。
【0028】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係る回転電機の内扇ファンの羽根と回転子鉄心のフラックスバリアとの配置関係を概略的に示す側面図である。
図示のように、第3の実施形態によれば、内扇ファン70は、磁極数の3倍である18枚の羽根80を有している。羽根80は、それぞれ中心軸線Cに対して放射方向に延在しているとともに、中心軸線Cを中心とする円周方向に互いに等間隔を置いて配置されている。18枚の内、6枚の羽根80は、それぞれd軸と対向する位置に配置されている。
このように18枚の羽根80を用いた場合でも、回転子鉄心42の各フラックスバリアを通過する風量が一定となり、回転子40の局部的な温度上昇(ローカルヒート)を抑制することができる。
【0029】
(第4の実施形態)
前述した実施形態では、回転子鉄心のフラックスバリアは、永久磁石に接触する磁石埋め込み孔で構成されているが、フラックスバリアは、永久磁石に接触しない箇所に設けられてもよい。フラックスバリアは、例えば、回転子鉄心を通過する磁束の弱い個所や空間として設けた場合に回転電機の性能が向上する箇所に設けることが可能である。
図9は、第4の実施形態に係る回転電機の回転子鉄心および端板を示す分解斜視図である。本実施形態によれば、回転子鉄心42は、磁石埋め込み孔44からなるフラックスバリアに加えて、永久磁石50とは接触しない箇所に設けられたフラックスバリアを有している。一例では、フラックスバリアは、回転子鉄心42の各磁極において、一対の永久磁石50の間でd軸上に形成された空隙孔88を有している。空隙孔88は、回転子鉄心42を軸方向に貫通して延在し、回転子鉄心42の軸方向の両端面に開口している。
【0030】
各端板60には、通風孔62a、62bに加えて、それぞれ空隙孔88に対向する複数の通風孔62cが設けられている。図示しない鉄心押えが端板60を覆う場合は、鉄心押えにも、空隙孔88に対向する通風孔を設ける。
このように構成された回転子鉄心42および端板60を有する回転電機によれば、運転稼動時、回転子鉄心42のフラックスバリア(内周側空隙44a、外周側空隙44b)に加えて、空隙孔88に風が通風するようになり、回転子鉄心42の温度上昇を低減することができる。従って、本実施形態によれば、回転子鉄心全体の温度を低減することで、永久磁石の温度をより低減することが可能となる。
【0031】
なお、この発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、回転子の磁極数、寸法、形状等は、前述した実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。フラックスバリアを構成する磁石埋め込み孔の断面形状および空隙孔の断面形状は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形状を選択可能である。
【符号の説明】
【0032】
10…回転電機、12…フレーム(ケース)、14…回転シャフト、20…固定子、
22…固定子鉄心、23電機子巻線、40…回転子、42…回転子鉄心、
44…磁石埋め込み孔(フラックスバリア)、44a…内周側空隙、44b…外周側空隙、50…永久磁石、60…端板、62a、62b、62c…通風孔、70…内扇ファン、72…外扇ファン、80…羽根、88…空隙孔