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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】梯子車
(51)【国際特許分類】
   A62C 27/00 20060101AFI20230116BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20230116BHJP
   E06C 5/08 20060101ALI20230116BHJP
   F15B 1/027 20060101ALI20230116BHJP
   F15B 20/00 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
A62C27/00 506
B66F11/04
E06C5/08
F15B1/027
F15B20/00 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019070257
(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2020168119
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000230445
【氏名又は名称】日本リフト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502036147
【氏名又は名称】株式会社トノックス
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠彦
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209234(JP,A)
【文献】特開2004-060664(JP,A)
【文献】特開2009-156350(JP,A)
【文献】特開2003-310779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00-99/00
B66F 9/00-11/04
E06C 1/00- 9/14
F15B 1/00- 7/10,20/00-21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に末端が起伏自在に枢着された主梯子と、
前記主梯子に沿って摺動自在に取り付けられ、前記主梯子の先端側に突出可能な副梯子と、
前記副梯子の先端部に枢着された補助ステップと、
前記主梯子を前記車体に対し起伏させるチルトシリンダと、
前記副梯子を前記主梯子から突出する方向に駆動するスライド駆動シリンダと、
前記補助ステップを回動させる回動駆動シリンダと、
作動油供給源となるパワーユニットと、
前記パワーユニットからの作動油を選択的に前記チルトシリンダ、前記スライド駆動シリンダ、前記回動駆動シリンダの何れかに供給する油圧回路と、を備え、
前記主梯子、前記副梯子及び前記補助ステップの組が複数あり、
各組に対応して前記チルトシリンダ、前記スライド駆動シリンダ、前記回動駆動シリンダ、前記パワーユニット、及び前記油圧回路がそれぞれ設けられ、
油圧回路には所定の蓄圧で作動油を蓄えるアキュムレータがそれぞれ接続され、前記アキュムレータからの作動油を選択的に前記チルトシリンダ、前記スライド駆動シリンダ、前記回動駆動シリンダの何れかに供給可能であるとともに、
前記パワーユニットの作動油吐出側にて各油圧回路を相互に接続する開閉弁を有し、何れかの組のパワーユニットが動作不能になったときに、他の組のパワーユニット又はアキュムレータから作動油を前記開閉弁を通して供給する、梯子車。
【請求項2】
前記パワーユニットからの作動油及び前記アキュムレータに蓄えられた作動油の一方又は両方を前記油圧回路に供給する、請求項1に記載の梯子車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に梯子を装備した梯子車に係り、とくに航空機や低層建造物等への人員の送り込み、救護あるいは待避等に適した梯子車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から伸縮する梯子を有する梯子車は消火活動、救護等に用いられている。この種の梯子車としては下記特許文献1、及び本出願人提案の下記特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-310779号公報
【文献】特開2017-209234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スライド動作で伸縮する複数段の梯子の先端側に補助ステップを設ける構造の梯子車がある。この場合、複数段の梯子を車体上辺に対し起伏させるチルトシリンダ、複数段の梯子をスライド動作で伸縮させるためのスライド駆動シリンダ、及び補助ステップを水平に展開したり格納したりするための回動駆動シリンダを、パワーユニットで駆動する構成としているが、最近、緊急事態において、それらのシリンダを迅速に駆動したいときや、パワーユニットの故障による動作不能対策が要望されるようになってきている。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、梯子車に設けられた油圧シリンダの動作の迅速化や、パワーユニットの動作不能対策が可能な梯子車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は梯子車である。この梯子車は、車体に末端が起伏自在に枢着された主梯子と、
前記主梯子に沿って摺動自在に取り付けられ、前記主梯子の先端側に突出可能な副梯子と、
前記副梯子の先端部に枢着された補助ステップと、
前記主梯子を前記車体に対し起伏させるチルトシリンダと、
前記副梯子を前記主梯子から突出する方向に駆動するスライド駆動シリンダと、
前記補助ステップを回動させる回動駆動シリンダと、
作動油供給源となるパワーユニットと、
前記パワーユニットからの作動油を選択的に前記チルトシリンダ、前記スライド駆動シリンダ、前記回動駆動シリンダの何れかに供給する油圧回路と、を備え、
前記主梯子、前記副梯子及び前記補助ステップの組が複数あり、
各組に対応して前記チルトシリンダ、前記スライド駆動シリンダ、前記回動駆動シリンダ、前記パワーユニット、及び前記油圧回路がそれぞれ設けられ、
油圧回路には所定の蓄圧で作動油を蓄えるアキュムレータがそれぞれ接続され、前記アキュムレータからの作動油を選択的に前記チルトシリンダ、前記スライド駆動シリンダ、前記回動駆動シリンダの何れかに供給可能であるとともに、
前記パワーユニットの作動油吐出側にて各油圧回路を相互に接続する開閉弁を有し、何れかの組のパワーユニットが動作不能になったときに、他の組のパワーユニット又はアキュムレータから作動油を前記開閉弁を通して供給することを特徴とする。
【0007】
前記パワーユニットからの作動油及び前記アキュムレータに蓄えられた作動油の一方又は両方を前記油圧回路に供給するとよい。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る梯子車によれば、パワーユニットからの作動油を複数の油圧シリンダの何れかに選択的に送出する油圧回路に、アキュムレータを付加することで、各油圧シリンダの動作の迅速化や、パワーユニットの作動不能時の各油圧シリンダの駆動が可能であり、ひいては信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る梯子車の実施の形態であって、梯子不使用時の状態を実線Jで示し、梯子使用時の状態を実線Kで示す側面図。
図2】実施の形態において、補助ステップの展開状態を示す平面図。
図3】実施の形態において、補助ステップ及びこれを回動させる回動駆動機構を示す拡大側面図。
図4】同拡大平面図。
図5】実施の形態における各油圧シリンダを作動させるための油圧回路図。
図6】実施の形態における各油圧シリンダの動作を指示するためのリモコンスイッチの一例を示す正面図。
図7】実施の形態に示した梯子車の使用手順であって、(A)は補助ステップの水平展開動作、(B)は補助ステップの展開後の状態、(C)は全手摺りを立てた状態、(D)は主梯子のチルト(上昇)動作、(E)は副梯子のスライド伸長動作、及び(F)は補助ステップの任意位置までの展開動作をそれぞれ示す説明図。
図8】実施の形態に示した梯子車を走行可能とする格納手順であって、(A)は補助ステップの平行位置までの回動動作、(B)は副梯子のスライド縮動動作、(C)は主梯子を水平に下降させる動作、(D)は主梯子の水平格納状態、(E)は全手摺りを倒した状態、(F)は補助ステップの回動、格納動作、及び(G)は主梯子、副梯子、及び補助ステップが格納された走行可能状態をそれぞれ示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1乃至図4において、車両1は直方体枠状の車体フレーム2を有し、車体フレーム2の上辺部2aに一対(複数)の主梯子3の末端部がピン4で起伏自在に枢着され(回転自在に取り付けられ)ている。車体フレーム2の上辺部2aの高さは運転席のあるキャビン5よりも高くなっている。主梯子3と車体フレーム2下部間にはチルトシリンダ6がそれぞれ設けられている。すなわち、チルトシリンダ6の本体部6aはピン7で車体フレーム2下部に枢着され、チルトシリンダ6のピストンロッド6bの先端部は主梯子3にピン8で枢着されている。チルトシリンダ6は主梯子3が上辺部2aと平行な図1実線Jの状態から所定角度で起き上がった状態に主梯子3を駆動するものであり、チルトシリンダ6の縮動時は主梯子3と上辺部2aとが平行になり、伸長時には主梯子3はピン4を支点として回動し、図1実線Kのように上辺部2aに対し所定角度αで起き上がる。車体フレーム2には車体フレーム2の下部と上辺部2aとの間の昇降のために階段9が固定されている。
【0015】
各主梯子3には、それぞれ副梯子10が摺動自在に平行に設けられている。主梯子3と副梯子10との間にはスライド駆動シリンダ11が設けられている。すなわち、スライド駆動シリンダ11の本体部11aはピンで主梯子3に枢着され、スライド駆動シリンダ11のピストンロッド11bの先端部はピンで副梯子10の後端に枢着されている。副梯子10は、主梯子3に設けられたローラ(図示せず)で主梯子3の内側を円滑に摺動するように支持され、スライド駆動シリンダ11の縮動時には副梯子10は主梯子3の内側に格納されて突出せず、スライド駆動シリンダ11の伸長時には図1の実線Kのように主梯子3の先端側に突出(延在)する。なお、主梯子3及び副梯子10の車両1の側面側に沿った位置には、それぞれ手摺り3a,10aが起伏自在に設けられている。
【0016】
図3及び図4に示すように、各副梯子10の先端部には、補助ステップ20が回動自在に連結されている。すなわち、副梯子10の先端部(先端面)にブラケット21が固着され、一方補助ステップ20の後端部に取付部材としての取付小アーム22が固着され、ブラケット21及び取付小アーム22は両者を貫通する連結ピン23で連結されている。連結ピン23は、取付小アーム22に対しては固着され、ブラケット21に対しては回転自在であり、補助ステップ20と一体に回転する枢軸である。なお、補助ステップ20の車両1の側面側に沿った位置には、図1に示したように、それぞれ手摺り20aが起伏自在に設けられている。
【0017】
回動駆動機構30は、補助ステップ20と一体に回転する連結ピン23に固着された回転駆動用スプロケット31と、副梯子10に設けられた従動スプロケット32,33,34間に張架されたチェーン35と、チェーン35を移動させる回動駆動シリンダ36とを有している。回動駆動シリンダ36は副梯子10の下側に設けられている。回動駆動シリンダ36において、駆動ロッドとなるはピストンロッド36aが本体36bを貫通し、本体36bの両側に突出している。そして、チェーン35の一端がピストンロッド36aの一方の端部に長さ調整金具37を介して接続され、チェーン35の他端がピストンロッド36aの他方の端部に接続されている。長さ調整金具37は、チェーン35の弛みを無くし、最適なチェーン35の張り具合になるように調整可能なものである。
【0018】
補助ステップ20は、回動駆動機構30における回動駆動シリンダ36のピストンロッド(駆動ロッド)36aの移動に伴い、図3仮想線Uのように裏返し状態で副梯子10上に重なる姿勢(車両走行時の姿勢)から図3実線Vのように補助ステップ20が水平状態に展開した姿勢、さらには図1実線Kのように主梯子3が傾斜しても補助ステップ20を水平にできる範囲を含むように回動駆動される。このとき、回転駆動用スプロケット31の回転量はピストンロッド36aの移動量に正比例するから、補助ステップ20の展開動作を極めて円滑に実行できる。
【0019】
なお、補助ステップ20の先端部には、必要に応じて先端梯子40を手動で装着可能である。また、主梯子3の取付基部付近に板状の弾よけ部材48が起伏自在に設けられている。
【0020】
実施の形態においては、主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20の組は車両1の左側(助手席側)と右側(運転席側)にそれぞれ1組ずつ設けられている。そして、各組に対応してチルトシリンダ6、スライド駆動シリンダ11、及び一対の回動駆動シリンダ36がそれぞれ設けられていて、左右の主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20の組が独立して動けるようになっている。チルトシリンダ6、スライド駆動シリンダ11及び回動駆動シリンダ36は複動油圧シリンダである。
【0021】
図5に示すように、左側の組のチルトシリンダ6、スライド駆動シリンダ11及び回動駆動シリンダ36を駆動するために左側油圧装置50Aが設けられる。左側油圧装置50Aは、作動油供給源となる左側パワーユニット51Aと、左側パワーユニット51Aからの作動油を選択的にチルトシリンダ6、スライド駆動シリンダ11、回動駆動シリンダ36の何れかに供給する左側油圧回路60Aと、左側アキュムレータ70Aとを有する。左側アキュムレータ70Aは、左側油圧回路60Aの作動油入側ポートPに接続されて(左側パワーユニット51AのポンプP1の作動油吐出側に接続されて)、所定の蓄圧で作動油を蓄えるものである。
【0022】
同様に、右側の組のチルトシリンダ6、スライド駆動シリンダ11及び回動駆動シリンダ36を駆動するために右側油圧装置50Bが設けられる。右側油圧装置50Bは、作動油供給源となる右側パワーユニット51Bと、右側パワーユニット51Bからの作動油を選択的にチルトシリンダ6、スライド駆動シリンダ11、回動駆動シリンダ36の何れかに供給する右側油圧回路60Bと、右側アキュムレータ70Bとを有する。右側アキュムレータ70Bは、右側油圧回路60Bの作動油入側ポートPに接続されて(右側パワーユニット51BのポンプP2の作動油吐出側に接続されて)、所定の蓄圧で作動油を蓄えるものである。
【0023】
左側パワーユニット51AはメインスイッチS1を介して車両1のバッテリに接続されるモータM1と、これにより回転駆動されるポンプP1と、右側パワーユニット51Bと共通の油タンク90とを有する。ポンプP1はモータM1の通電時にモータM1で回転駆動されて作動油を左側油圧回路60Aの作動油入側ポートPに吐出する。
【0024】
同様に、右側パワーユニット51BはメインスイッチS2を介して車両1のバッテリに接続されるモータM2と、これにより回転駆動されるポンプP2とを有する。ポンプP2はモータM2の通電時にモータM2で回転駆動されて作動油を右側油圧回路60Bの作動油入側ポートPに吐出する。なお、各油圧回路60A,60Bの作動油戻しポートTは共通の油タンク90に作動油を戻す配管が接続されている。
【0025】
左側油圧回路60Aは、左側パワーユニット51Aからの作動油を選択的に左側のチルトシリンダ6、スライド駆動シリンダ10、回動駆動シリンダ36の何れかに供給する機能を有する。すなわち、左側油圧回路60Aは、左側の主梯子3を回動させるチルトシリンダ6の上下駆動の切り換えのための電磁切換弁81と、左側の副梯子10を摺動させるスライド駆動シリンダ11の伸縮の切り換えのための電磁切換弁82と、左側の補助ステップ20の回動方向の切り換えのための電磁切換弁83とを有する。左側アキュムレータ70Aは、逆止弁と電磁弁72Aの並列接続と、手動開閉弁73A(通常は開状態)とを介して左側油圧回路60Aの作動油入側ポートPに接続されている。左側アキュムレータ70Aへの作動油供給配管には圧力スイッチS2Aが設けられており、左側アキュムレータ70Aの作動油の蓄圧を検知して、蓄圧が所定値に到達したらモータM1への通電を停止する。
【0026】
同様に、右側油圧回路60Bは、右側パワーユニット51Bからの作動油を選択的に右側のチルトシリンダ6、スライド駆動シリンダ10、回動駆動シリンダ36の何れかに供給する機能を有する。すなわち、右側油圧回路60Bは、右側の主梯子3を回動させるチルトシリンダ6の上下駆動の切り換えのための電磁切換弁81と、右側の副梯子10を摺動させるスライド駆動シリンダ11の伸縮の切り換えのための電磁切換弁82と、右側の補助ステップ20の回動方向の切り換えのための電磁切換弁83とを有する。右側アキュムレータ70Bは、逆止弁と電磁弁72Bの並列接続と、手動開閉弁73B(通常は開状態)とを介して右側油圧回路60Bの作動油入側ポートPに接続されている。右側アキュムレータ70Bへの作動油供給配管には圧力スイッチS2Bが設けられており、右側アキュムレータ70Bの作動油の蓄圧を検知して、蓄圧が所定値に到達したらモータM2への通電を停止する。電磁切換弁81~83は非励磁状態では停止(遮断)状態となり、直前の状態を保持する。電磁弁72A,72Bは非励磁状態では遮断状態となり、左側及び右側油圧回路60A,60Bに作動油を供給しない(逆止弁を介してポンプからの作動油の供給を受けることは可能)。
【0027】
左側油圧回路60Aと右側油圧回路60Bとは手動開閉弁75で接続されている。手動開閉弁75は通常は閉状態であるが、左側油圧装置50Aと右側油圧装置50Bの何れか一方が動作不能となったときに、手動開閉弁75を開いて他方の装置で駆動できるようにしている。
【0028】
図6はコード付きリモコンスイッチ100(コードの図示省略)の押しボタン配置の一例であり、左側(助手席側)には上から順に、左側油圧装置50Aの電源ランプL1、補助ステップ20の展開指示のための補上ボタンB1L、補助ステップ20の格納指示のための補下ボタンB2L、副梯子10の伸長指示のための伸ボタンB3L、副梯子10の縮動指示のための縮ボタンB4L、主橋子3の上昇指示のための主上ボタンB5L、主橋子3の下降指示のための主下ボタンB6Lが配置されている。同様に、右側(運転席側)には上から順に、右側油圧装置50Bの電源ランプL2、補助ステップ20の展開指示のための補上ボタンB1R、補助ステップ20の格納指示のための補下ボタンB2R、副梯子10の伸長指示のための伸ボタンB3R、副梯子10の縮動指示のための縮ボタンB4R、主橋子3の上昇指示のための主上ボタンB5R、主橋子3の下降指示のための主下ボタンB6Rが配置されている。図1に示すように、車体フレーム2には左側及び右側油圧装置50A,50Bのコントローラ55が設置されており、コード付きリモコンスイッチ100をコントローラ55に接続するためのメタルコンセント56が車両1の前後に配置されている。コード付きリモコンスイッチ100はメタルコンセント56に接続した状態で使用する。なお、アキュムレータ70A,70Bは車体フレーム2内の階段9の裏側に設置されている。
【0029】
図7で梯子車が停車した後、航空機や低層建造物等の対象物に向けて主梯子3,副梯子10及び補助ステップ20を駆動する場合の手順について説明する。リモコンスイッチ100を操作可能とするために、図1のコントローラ55の配電盤を操作して左側及び右側油圧装置50A,50Bの電源をオンにし、リモコンスイッチ100の電源ランプL1,L2を点灯させる(通常左右の油圧装置を作動可能とする)。これにより、左右のパワーユニット51A,51BのメインスイッチS1,S2がオンとなって左右のアキュムレータ70A,70Bに所定の蓄圧となるように作動油が蓄えられる。
【0030】
ここでは、説明を簡略化するために図6の左側の押ボタン群を操作して、左側の主梯子3,副梯子10及び補助ステップ20を駆動する場合で説明する。まず、補上ボタンB1Lを押して図5の左側油圧回路60Aの電磁切換弁83のソレノイド83bを励磁すると、電磁切換弁83が開となり、電磁切換弁83の一方の経路を通してシリンダ接続ポートB3から作動油が送出され、回動駆動シリンダ36のピストンロッド36aが移動して図7(A)のように補助ステップ20を水平位置まで展開し(水平位置で補上ボタンB1Lを離す)、図7(B)の状態にする。図7(B)の状態から全手摺り3a,10a,20aを立てた図7(C)の状態とする。
【0031】
次に、図6の主上ボタンB5Lを押して、電磁切換弁81のソレノイド81bを励磁すると、電磁切換弁81が開となり、電磁切換弁81の一方の経路を通してシリンダ接続ポートB1から作動油が送出され、チルトシリンダ6が伸長して、図7(D)のように主梯子3の先端を上昇させる(所望上昇位置で主上ボタンB5Lを離す)。
【0032】
その後、伸ボタンB3Lを押して、電磁切換弁82のソレノイド82bを励磁すると、電磁切換弁82が開となり、電磁切換弁82の一方の経路を通してシリンダ接続ポートB2から作動油が送出され、スライド駆動シリンダ11が伸長することで、図7(E)のように副梯子10を所定長伸ばす(所望長で伸ボタンB3Lを離す)。さらに、補上ボタンB1Lを押して図7(F)のように補助ステップ20の姿勢を例えば略水平に展開する。
【0033】
これにより、階段9、主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20(さらに必要な場合には先端梯子40)の経路で航空機や建造物に人員を送り込んだり、救護等のために逆の経路で人員を避難させたりすることが可能である。
【0034】
車両1を走行可能とするための主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20の格納手順を図8で説明する。まず、補下ボタンB2Lを押して図5の左側油圧回路60Aの電磁切換弁83のソレノイド83aを励磁すると、電磁切換弁83が開となり、電磁切換弁83の他方の経路を通してシリンダ接続ポートA3から作動油が送出され、回動駆動シリンダ36のピストンロッド36aが逆向きに移動して図8(A)のように補助ステップ20を副梯子10と平行な位置にし(平行位置で補下ボタンB2Lを離す)、図8(B)の状態にする。
【0035】
次に、縮ボタンB4Lを押して、電磁切換弁82のソレノイド82aを励磁すると、電磁切換弁82が開となり、電磁切換弁82の他方の経路を通してシリンダ接続ポートA2から作動油が送出され、スライド駆動シリンダ11が縮動することで、図8(C)のように副梯子10の突出量が最小限となった主梯子3と重なる位置まで格納する。
【0036】
さらに、図8(C)の副梯子10の格納状態から、図6の主下ボタンB6Lを押して、電磁切換弁81のソレノイド81aを励磁すると、電磁切換弁81が開となり、電磁切換弁81の他方の経路を通してシリンダ接続ポートA1から作動油が送出され、チルトシリンダ6が縮動して、図8(D)のように主梯子10は車体フレーム2の上辺部2aと平行になって格納される。
【0037】
図8(D)の状態から全手摺り3a,10a,20aを倒して図8(E)の状態とする。その後、補下ボタンB2Lを押して補助ステップ20を主梯子3に重なった状態にして格納し、図8(G)の車両1が走行可能な状態とする(必要に応じて車止め等を外す)。
【0038】
なお、図6の右側の押ボタン群を操作することで、右側の主梯子3,副梯子10及び補助ステップ20を同様に駆動することができる。
【0039】
図7及び図8における主梯子3,副梯子10及び補助ステップ20の駆動速度は、アキュムレータ70A,70Bの蓄圧を利用しない場合は、左右の油圧装置50A,50BのポンプP1,P2の単位時間当たりの作動油吐出量に比例する。そこで、リモコンスイッチ100の押ボタンの押し操作に連動させて、つまり各電磁切換弁81~83が開状態となるのと同時に電磁弁72A又は72Bを開くことで、アキュムレータ70A又は70Bからも作動油を左右の油圧回路60A又は60Bに供給することで、主梯子3,副梯子10及び補助ステップ20の駆動速度を上げて、梯子3,副梯子10及び補助ステップ20の対象物への展開、及びそれらの格納を迅速に行うことが可能である。
【0040】
アキュムレータ70A,70Bには、図7(A)~図8(G)に至る動作を一往復としたとき、少なくとも1.5往復の動作が可能なように作動油が蓄えられている。従って、左側及び右側油圧装置50A,50Bのパワーユニット51A,51Bが故障等で動作不能となったとき、アキュムレータ70A,70Bから作動油を油圧装置50A,50Bに供給することで、主梯子3,副梯子10及び補助ステップ20の図7及び図8の動作を行うことが可能である。
【0041】
また、左側油圧回路60Aと右側油圧回路60Bとは手動開閉弁75(常時閉)で接続されているから、手動開閉弁75を手動操作で開くことで、左側油圧装置50Aと右側油圧装置50Bの何れか一方のパワーユニット51A又は51Bが動作不能となったときに、正常に動作するパワーユニットで両方の油圧装置50A,50Bを駆動できる。
【0042】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0043】
(1) 主梯子3を車体フレーム2に対し起伏させるチルトシリンダ6と、副梯子10を主梯子3から突出する方向に駆動するスライド駆動シリンダ11と、副梯子10の先端部に連結された補助ステップ20を回動させる回動駆動シリンダ36とを有する構成において、油圧装置50A,50Bにアキュムレータ70A,70Bを設けたので(油圧回路にアキュムレータを付加したので)、パワーユニット51A,51Bからの作動油の油圧回路への供給に加えてアキュムレータ70A,70Bからの作動油を油圧回路に供給することで、主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20の動作の迅速化を図ることが可能である。
【0044】
(2) 油圧装置50A,50Bのパワーユニット51A,51Bが故障で動作不能となったとき、アキュムレータ70A,70Bに蓄えられた作動油でチルトシリンダ6、スライド駆動シリンダ11及び回動駆動シリンダ36を作動させて、主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20に所要の動作を行わせることができる。
【0045】
(3) 左側の主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20の組に対して、左側油圧装置50Aが,右側の主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20の組に対して、右側油圧装置50Bが設けられており、油圧装置50A,50Bのパワーユニット51A,51Bのうち、何れか一方のパワーユニットが動作不能となったとき、左側油圧回路60Aと右側油圧回路60Bとを接続する手動開閉弁75を開くことで、正常に動作するパワーユニットで左右の油圧装置50A,50Bに作動油を供給可能である。従って、主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20に必要な動作を行わせることができる。例えば、車両走行可能な状態に戻すことができる。
【0046】
(4) 2系統の油圧装置50A,50B及びアキュムレータ70A,70Bを設けたことで、パワーユニットが動作不能になっても、主梯子3、副梯子10及び補助ステップ20の駆動が可能になり、動作の信頼性の向上を図ることができる。
【0047】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0048】
上記実施の形態において、主梯子3及び副梯子10は、それぞれ連続したスロープをなす構造であっても、足場が等間隔で配列された構造を持つものであってもよい。
【0049】
油圧装置50A,50Bに含まれる油圧回路は所要の目的を達成可能であれば、適宜変更可能である。また、油圧装置50A,50Bをコード付きリモコンスイッチ100で操作する場合を例示したが、コードレス・リモコンスイッチを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 車両
2 車体フレーム
3 主梯子
5 キャビン
6 チルトシリンダ
10 副梯子
11 スライド駆動シリンダ
20 補助ステップ
30 回動駆動機構
31 回動駆動用スプロケット
35 チェーン
36 回動駆動シリンダ
40 先端梯子
50A,50B 油圧装置
51A,51B パワーユニット
60A,60B 油圧回路
70A,70B アキュムレータ
100 コード付きリモコンスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8