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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】採油装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20230116BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20230116BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
G01N1/10 W
B09B5/00 Z
H01F27/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019092988
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020187058
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔展示会名〕 第32回鉄道電気テクニカルフォーラム 〔開催日〕 平成31年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】593125366
【氏名又は名称】新生テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】廣田 成吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優士
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-218748(JP,A)
【文献】特開2003-121312(JP,A)
【文献】特開昭52-143094(JP,A)
【文献】特開平02-190741(JP,A)
【文献】特開平05-288654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0005856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 ー 1/44
B09B 1/00 ー 5/00
H01F 27/00 ー27/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器内部が絶縁油によって充填されると共に第1不活性ガスによって封入されている電力機器の絶縁油を採油する採油装置であって、
採油した絶縁油を貯留路を介して貯留する回収容器を備えており、
絶縁油を採油する前の状態において、貯留路および回収容器の容器内部は、第2不活性ガスを充填させた後に真空引きされた状態となっている採油装置。
【請求項2】
請求項1に記載の採油装置であって、
回収容器の内部圧力を測定可能な圧力計を備える採油装置。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載の採油装置であって、
回収容器の容器内部は、電動の真空ポンプによって真空引きされる採油装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の採油装置であって、
回収容器の容器内部には、絶縁油を貯留する採油容器を備えている採油装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の採油装置であって、
回収容器は、お椀状の2つの半球体が、それぞれの開口の周縁を重ね合わせるように組み付けられて形成される厚さ均一の中空の球体である採油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採油装置に関し、詳しくは、電力機器の内部に充填された絶縁油を採油する採油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機器内部のコイルが絶縁油で充填された変圧器などの電力機器において、変圧器の温度変化によって絶縁油の体積が変化する。このため、機器内部の一部に窒素ガス(不活性ガス)を封入することで、絶縁油の体積変化を窒素ガスの圧力変化、すなわち変圧器の内部圧力変化に転化して、絶縁油の体積変化を吸収する変圧器が知られている。このような変圧器において、コイルの異常の有無や絶縁油の劣化を診断するために、機器内部の絶縁油を定期的に採油して分析することが一般に行われている。従来、その採油方法は、下記特許文献1のように、変圧器の下部に設けられた採油口を開いて、採油口に取り付けられたゴム管などを経由して流れ出る絶縁油を、缶やびんなどの容器に採油する方法が使われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭48-28295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した変圧器において、変圧器の環境状態によっては、変圧器の内部圧力が変圧器の外部圧力(大気圧)よりも低い負圧状態になる場合がある。このような負圧状態のときに、上述した従来の採油方法を用いて採油を行うと、変圧器が外部の空気を吸引して、空気が機器内部に混入する恐れがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、機器内部への空気混入を防ぎつつ、絶縁油を採油可能な採油装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴によると、採油装置は、機器内部が絶縁油によって充填されると共に第1不活性ガスによって封入されている電力機器の絶縁油を採油するものである。また、採油装置は、採油した絶縁油を貯留路を介して貯留する回収容器を備えており、絶縁油を採油する前の状態において、貯留路および回収容器の容器内部は、第2不活性ガスで充填させた後に真空引きされた状態となっている。
【0007】
そのため、第2不活性ガスが充填されることで、容器内部の空気を排出できる。そのため、容器内部の空気が、機器内部に混入することを防ぐことができる。また、真空引きによって、回収装置の内部圧力を低くすることができる。そのため、容器内部が機器内部の絶縁油を吸引することで、絶縁油を採油することができる。
【0008】
本開示の他の特徴によると、採油装置は、回収容器の内部圧力を測定可能な圧力計を備えている。
【0009】
そのため、回収容器の内部圧力を確認することができる。また、電力機器の第1不活性ガスの圧力を測定可能な圧力計と比較できる。そのため、回収容器の内部圧力が、電力機器の第1不活性ガスの圧力と比べて、高いか低いかを確認できる。
【0010】
また、本開示の他の特徴によると、回収容器の容器内部は、電動の真空ポンプによって真空引きされる。
【0011】
そのため、例えば、真空ポンプが手動である場合と比べて、容器内部の真空引きの度合いのばらつきを無くすことができる。
【0012】
また、本開示の他の特徴によると、回収容器の容器内部には、絶縁油を貯留する採油容器を備えている。
【0013】
そのため、例えば、絶縁油の一時保管に用いる一時保管容器を、採油容器として用いることができる。すると、絶縁油が採油されたあとで、一時保管のために絶縁油を移し替えるといった手間を無くすことができる。
【0014】
また、本開示の他の特徴によると、回収容器は、お椀状の2つの半球体が、それぞれの開口の周縁を重ね合わせるように組み付けられて形成される厚さ均一の中空の球体である。
【0015】
そのため、例えば、回収容器が球体でない、または、厚さ均一でない場合は、圧力に対する強度が低い部分が生じる。そのため、真空ポンプによって発生する負圧に耐えられない恐れがある。対して、回収容器が厚さ均一の球体であることで、圧力に対する強度が低い部分が生じない。そのため、真空ポンプによって発生する負圧に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る採油装置が、変圧器に接続された状態を示す概略図である。
図2図1の採油装置のシステム構成を示す図である。
図3図2の回収装置の構成を示す図である。
図4図3から、取付部材にねじ込み部材をねじ込んだ状態を示す図である。
図5図2の状態から採油を始める手順を説明する図である(負圧開放バルブを閉める)。
図6図5の次の手順を説明する図である(第2窒素ガスの充填を開始する)。
図7図6の次の手順を説明する図である(充填が終わりインジケータの玉が浮上する)。
図8図7の次の手順を説明する図である(ガス封入バルブと脱気確認バルブを閉める)。
図9図8の次の手順を説明する図である(真空ポンプを動作させて第2窒素ガスが外部に排出される)。
図10図9の次の手順を説明する図である(圧力計を確認し、回収容器の圧力が変圧器の負圧を下回った事を確認し、真空ポンプを停止させ、この時に併せて第2窒素ガスの排出も完了する)。
図11図10の次の手順を説明する図である(変圧器バルブを開いて絶縁油が採油され始める。この時に絶縁油の採油量が少なくなった場合は、回収容器の負圧が不足しているため、圧力計を確認し、真空ポンプを動作させる)。
図12図11の次の手順を説明する図である(採油が完了したら変圧器バルブを閉じる)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、図1~12を用いて説明する。この発明は、採油装置10を用いて、変圧器1に充填された絶縁油4を採油するものである。以下に、変圧器1と採油装置10とを個別に説明する。
【0018】
まず、変圧器1について説明する(図1参照)。変圧器1は、タンク2と、タンク2のタンク内部2aに収容されるコイル3と、タンク内部2aに充填される絶縁油4と、タンク内部2aに封入される第1窒素ガス5と、第1窒素ガス5の圧力を測定可能にタンク2の上部に取り付けられる第1圧力計6と、タンク内部2aの絶縁油4を排出可能にタンク2の下部に取り付けられる変圧器バルブ7と、で構成されている。第1窒素ガス5は、例えば、窒素純度が97%以上の窒素ガスであり、特許請求の範囲に記載の「第1不活性ガス」に相当する。
【0019】
次に、採油装置10について説明する(図1~4参照)。採油装置10は、変圧器バルブ7に取付可能なフランジ20と、フランジ20と繋がって絶縁油4を貯留可能な回収装置30と、で構成されている。
【0020】
フランジ20は、変圧器バルブ7の出口7aに取り付けられる採油口21と、回収装置30からの逆流を防止する逆止弁22と、ガス封入バルブ23と、で構成されている。このとき、採油口21は、第1接続部24を介して逆止弁22の入口22aと、ガス封入バルブ23の出口23bと、に繋がっている(図2参照)。ガス封入バルブ23は、その入口23aが外部の窒素ガス缶70と繋がるように大気開放されている。なお、窒素ガス缶70を用いて、第2窒素ガス71が採油装置10に封入できるようになっている。第2窒素ガス71は、例えば、窒素純度が95%以上の窒素ガスであり、特許請求の範囲に記載の「第2不活性ガス」に相当する。フランジ20は、このように構成されている。
【0021】
回収装置30は、中空の球体である回収容器31と、回収容器31に取り付けられる蓋32と、逆止弁22の出口22bから回収容器31の容器内部31aまで延びるホース33と、採油された絶縁油4を貯留する採油容器34と、容器内部31aの気体を外部に排出可能な真空ポンプ35と、容器内部31aに採油容器34を設けるための第1スペーサ36と、容器内部31aに真空ポンプ35を設けるための第2スペーサ37と、回収容器31の内部圧力を測定可能な第2圧力計38と、負圧開放バルブ39と、脱気確認バルブ40と、第2窒素ガス71の封入を検知可能なインジケータ41と、回収容器31を嵌め込み可能なケース42と、で構成されている(図2~4参照)。回収容器31の第1出口31bは、第2接続部26を介して第2圧力計38と、負圧開放バルブ39の入口39aと、脱気確認バルブ40の入口40aと、に繋がっている(図2参照)。このとき、採油口21からホース33の出口33aまでが、絶縁油4が貯留されるときに流れる流路25であり、特許請求の範囲に記載の「貯留路」に相当する。また、第2圧力計38が、特許請求の範囲に記載の「圧力計」に相当する。
【0022】
回収容器31は、お椀状の2つの半球体である上半球体50と下半球体51と、を組み付けて構成されている(図3参照)。上半球体50と下半球体51とは、アクリル樹脂等の剛性を有する合成樹脂材による一体成形品であり、真空ポンプ35によって発生する負圧に耐えうるように、例えば、数mmの厚さを備えており、さらに射出成形によって、より負圧に耐えうるように厚さが均一になっている。また、上半球体50と下半球体51とは、その開口の周縁にフランジ52、53を備えており、フランジ52、53には、貫通孔54、55が等角度間隔に8つ形成されている。上半球体50の球面には、蓋32を取付可能な取付穴59が形成されている。上半球体50と下半球体51とを組み付けるときには、フランジ52、53を上下に重ね合わせるようにして、貫通孔54、55を介して、複数のネジ56とナット57とを用いて組み付ける。このとき、フランジ52、53の間に、リング状の一液型RTVゴムであるガスシーラー58が挟み込まれることで、ガスシーラー58によってフランジ52、53の間が隙詰めされて、外部の空気が容器内部31aに混入することを防ぐことができるようになっている。
【0023】
蓋32は、取付穴59に取り付けられる取付部材60と、取付部材60にねじ込められるねじ込み部材61と、で構成されている。取付部材60は、一端にフランジ63を有する円筒62であり、フランジ63が上になるように、円筒62を取付穴59に嵌め込んで取り付けられる(図3参照)。円筒62の内面62aには、めねじが形成されている。また、ねじ込み部材61は、一端が円板65によって塞がれた円筒64である。円筒64の外面64aには、円筒62の内面62aと螺合可能におねじが形成されている。取付部材60にねじ込み部材61をねじ込むときには、取付穴59に取り付けた取付部材60の上方からねじ込み部材61の他端を近づけるようにして、取付部材60の内面62aと、ねじ込み部材61の外面64aと、を螺合させる(図3参照)。そして、フランジ63と円板65とが重なり合うようにして係止される(図4参照)。このとき、円板65の中心には、外部と円筒64の内部空間とを連通するような貫通孔66が形成されている。このため、上述したホース33が、取付部材60にねじ込み部材61がねじ込められた状態でも、外部から貫通孔66を通って容器内部31aまで延びることができるようになっている。
【0024】
採油容器34は、容器内部31aに設けられて、採油された絶縁油4を貯留可能に、例えば、びんのような形状になっている。また、採油容器34は、例えば、絶縁油4の一時保管を行うときに用いられる一時保管容器である。採油容器34の容積は、例えば、絶縁油4の一時保管に必要な500mlを上回るように設定されている。
【0025】
真空ポンプ35は、容器内部31aに設けられて、吸気口35aから排気口35bに向かって気体を排出可能になっている。吸気口35aは容器内部31aと繋がり、排気口35bは第3接続部43を介して回収容器31の第2出口31cと繋がっている(図2参照)。なお、回収容器31の第2出口31cは、外部に繋がって大気開放されている。第3接続部43には、逆止弁44が設けられており、外部の空気が容器内部31aに逆流しないようになっている。
【0026】
第1スペーサ36は、外径が回収容器31の直径よりも小さい円板であり、容器内部31aにおける上下方向の下方部分に設けられる(図3~4参照)。採油容器34は、容器内部31aに設けられるときに、第1スペーサ36上に設置される。
【0027】
第2スペーサ37は、外径が回収容器31の直径と略同じで、中心に貫通孔37aを有するリング状の円板であり、容器内部31aにおける上下方向の中央部分に設けられる(図3参照)。真空ポンプ35は、容器内部31aに設けられるときに、第2スペーサ37上に設置される。また、採油容器34は、容器内部31aに設けられるときに、貫通孔37aを貫通する。このため、採油容器34は、第2スペーサ37によって、中央部分を支えられて、傾きや転倒を防止できる構成になっている(図3~4参照)。
【0028】
負圧開放バルブ39は、その出口39bが外部に繋がって大気開放されている。脱気確認バルブ40は、その出口40bが、第4接続部45を介してインジケータ41の入口41aに繋がっている。インジケータ41は、その出口41bが、外部に繋がって大気開放されている。また、インジケータ41は、第2窒素ガス71によって浮上する玉67を備えている。このため、インジケータ41は、玉67によって、第2窒素ガス71の封入を検知できるようになっている。
【0029】
ケース42は、硬質低発泡塩化ビニル樹脂等の剛性を有する合成樹脂材による成形品であり、回収容器31の4分の1程度を嵌め込み可能な湾曲状の切欠68を備えている。ケース42は、回収容器31を切欠68に嵌め込んだ状態で、回収容器31を組み付ける複数のネジ56の一部によって、ケース42の上面69が共締めされることで、回収容器31と組み付けられる(図3~4参照)。また、ケース42は、第2圧力計38と、負圧開放バルブ39と、脱気確認バルブ40と、インジケータ41と、を一体的に収容可能になっている。回収装置30はこのように構成されている。
【0030】
続いて、変圧器1のタンク内部2aに充填された絶縁油4を採油する方法を説明する。この採油方法は、変圧器1の第1窒素ガス5の圧力がタンク2の外部圧力(大気圧)を上回る場合の手順と、変圧器1の第1窒素ガス5の圧力がタンク2の外部圧力(大気圧)を下回る場合の手順と、が存在する。このため、はじめに、変圧器1の第1圧力計6を用いて、変圧器1の第1窒素ガス5の圧力が、タンク2の外部圧力(大気圧)を上回るか、または下回るかを確認する必要がある。これは、第1窒素ガス5の圧力が、季節の変化等によるタンク2の温度変化で生じる絶縁油4の体積変化に伴って、タンク2の外部圧力(大気圧)を上回る場合と下回る場合とがあるためである。以下に、それぞれの場合の手順について説明する。
【0031】
まず、第1窒素ガス5の圧力が、タンク2の外部圧力(大気圧)を上回る場合について説明する。このとき、タンク内部2aと外部とが直接繋がっても、タンク内部2aに外部の空気が吸引されることはない。そのため、変圧器バルブ7の出口7aが外部と繋がって大気開放された状態で、変圧器バルブ7を開くことで、タンク内部2aに空気が混入することなく、絶縁油4を採油することができる他、採油装置10をゴム栓等ではなく、クランプ等を使用することで確実な採油が可能となる。
【0032】
次に、第1窒素ガス5の圧力が、タンク2の外部圧力(大気圧)を下回る場合について説明する。このとき、タンク内部2aと外部とが直接繋がると、外部の空気がタンク内部2aに吸引されてしまう。そのため、上述した採油装置10を用いて、タンク内部2aに充填された絶縁油4を採油する。以下に、この採油装置10を用いた絶縁油4の採油手順について説明する(図2、5~12参照)。
【0033】
はじめに、図2に示す状態、すなわち閉じた状態にある変圧器バルブ7の出口7aに、フランジ20の採油口21を取り付けた状態から、負圧開放バルブ39を閉じる作業を行う(図5参照)。
【0034】
次に、ガス封入バルブ23の入口23aに、窒素ガス缶70を繋げて、採油装置10に第2窒素ガス71を封入する作業を行う(図6参照)。すると、第2窒素ガス71は、ガス封入バルブ23および流路25を通って回収容器31の容器内部31aに充填され始める。このとき、回収容器31の容器内部31aに元々存在する空気80は、回収容器31の第1出口31bから脱気確認バルブ40およびインジケータ41を通って、外部へと排出される。
【0035】
さらに、第2窒素ガス71は、回収容器31の容器内部31aに完全に充填されたあとで、回収容器31の第1出口31bから脱気確認バルブ40を通ってインジケータ41の中にも充填される。インジケータ41の中に第2窒素ガス71が完全に充填されると、第2窒素ガス71によって玉67が浮上する(図7参照)。このように、採油装置10は、回収容器31の容器内部31aに第2窒素ガス71が完全に充填されたことを、インジケータ41によって検知できる構成になっている。
【0036】
次に、第2窒素ガス71の封入を止めて、ガス封入バルブ23と脱気確認バルブ40とを閉じる作業を行う(図8参照)。これにより、採油装置10は外部からの空気混入を防ぐことができる構成となる。
【0037】
そして、真空ポンプ35を動作させて、回収容器31の容器内部31aに充填された第2窒素ガス71を、外部へと排出させる作業を行う。(図9参照)。すると、回収容器31の内部圧力が低下して、容器内部31aに負圧が生じる。このとき、容器内部31aには、真空ポンプ35によって、大気圧(=約100kPa)に対して、約-60kPaの負圧が生じる。なお、第1窒素ガス5は、最も圧力が低い状態で、大気圧(=約100kPa)に対して、約-40kPaの負圧を生じる。このため、真空ポンプ35によって、第1窒素ガス5の圧力よりも、回収容器31の内部圧力を低くすることができる。第1圧力計6と第2圧力計38とを比較して、回収容器31の内部圧力が、第1窒素ガス5の圧力よりも低くなったら、真空ポンプ35を停止させる作業を行う(図10参照)。
【0038】
次に、変圧器バルブ7を開く作業を行う(図11参照)。すると、タンク内部2aの絶縁油4が、より圧力が低い容器内部31aに吸引されることで、流路25を流れて、回収容器31の採油容器34に貯留される。最後に、必要量の絶縁油4が貯留されたら、変圧器バルブ7を閉じる作業を行う(図12参照)。このようにして、採油装置10を用いて、タンク内部2aに充填された絶縁油4を採油することができる。
【0039】
本発明の実施形態に係る採油装置10は、上述したように構成されている。この構成によれば、採油装置10は、タンク内部2aが絶縁油4によって充填されると共に第1窒素ガス5によって封入されている変圧器1の絶縁油4を採油するものである。また、採油装置10は、採油した絶縁油4を流路25を介して貯留する回収容器31を備えており、絶縁油4を採油する前の状態において、流路25および回収容器31の容器内部31aは、第2窒素ガス71で充填させた後に真空引きされた状態となっている。そのため、第2窒素ガス71が充填されることで、容器内部31aの空気80を排出できる。そのため、容器内部31aの空気80が、タンク内部2aに混入することを防ぐことができる。また、真空引きによって、回収装置30の内部圧力を低くすることができる。そのため、容器内部31aがタンク内部2aの絶縁油4を吸引することで、絶縁油4を採油することができる。
【0040】
また、この構成によれば、回収容器31の内部圧力を測定可能な第2圧力計38を備えている。そのため、回収容器31の内部圧力を確認することができる。また、変圧器1の第1圧力計6と比較できる。そのため、回収容器31の内部圧力が、変圧器1の第1窒素ガス5の圧力と比べて、高いか低いかを確認できる。
【0041】
また、この構成によれば、回収容器31の容器内部31aは、電動の真空ポンプ35によって真空引きされる。そのため、例えば、真空ポンプ35が手動である場合と比べて、容器内部31aの真空引きの度合いのばらつきを無くすことができる。
【0042】
また、この構成によれば、回収容器31の容器内部31aには、絶縁油4を貯留する採油容器34を備えている。そのため、例えば、絶縁油4の一時保管に用いる一時保管容器を、採油容器34として用いることができる。すると、絶縁油4が採油されたあとで、一時保管のために絶縁油4を移し替えるといった手間を無くすことができる。
【0043】
また、この構成によれば、回収容器31は、お椀状の2つの半球体である上半球体50と下半球体51とが、それぞれの開口の周縁のフランジ52、53を重ね合わせるように組み付けられて形成される厚さ均一の中空の球体である。そのため、例えば、回収容器31が球体でない、または、厚さ均一でない場合は、圧力に対する強度が低い部分が生じる。そのため、真空ポンプ35によって発生する負圧に耐えられない恐れがある。対して、回収容器31が厚さ均一の球体であることで、圧力に対する強度が低い部分が生じない。そのため、真空ポンプ35によって発生する負圧に耐えることができる。回収容器31の容器内部31aが真空引きされたとき、外部圧力が回収容器31の表面に対して均等にかかる。そのため、回収容器31は、真空ポンプ35によって発生する負圧に耐えることができる。
【0044】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【0045】
本実施形態では、「電力機器」の例として、「変圧器1」を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「シリコン整流器」や「直列リアクトル」等であっても構わない。また、「第1不活性ガス」の例として、「第1窒素ガス5」を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「アルゴン」等であっても構わない。また、「第2不活性ガス」の例として、「第2窒素ガス71」を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「アルゴン」等であっても構わない。また、「第1不活性ガス」と「第2不活性ガス」とは、異なるガスであるとして説明した。しかし、これに限定されるものでなく、同一のものであっても構わない。
【符号の説明】
【0046】
1 変圧器(電力機器)
2a タンク内部(機器内部)
4 絶縁油
5 第1窒素ガス(第1不活性ガス)
10 採油装置
25 流路(貯留路)
31 回収容器
31a 容器内部
34 採油容器
35 真空ポンプ
38 第2圧力計(圧力計)
50 上半球体
51 下半球体
71 第2窒素ガス(第2不活性ガス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12