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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20230116BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230116BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230116BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230116BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/06
C09J11/08
C09J7/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019197714
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070744
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠本 直
(72)【発明者】
【氏名】米川 雄也
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-215880(JP,A)
【文献】特開平1-261479(JP,A)
【文献】特開平10-121000(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115632(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体(A)、
水酸基価が5mgKOH/g未満であり、軟化点が80℃以上120℃未満であるテルペン樹脂(B)、
水酸基価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、軟化点が160℃未満であるテルペンフェノール樹脂(C)、および
架橋剤(D)
を含む粘着剤組成物であって、
前記テルペン樹脂(B)と前記テルペンフェノール樹脂(C)の合計量が、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して30質量部以上である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、
前記テルペン樹脂(B)を10質量部以上、前記テルペンフェノール樹脂(C)を10質量部以上含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記テルペン樹脂(B)と前記テルペンフェノール樹脂(C)の配合比が0.6≦((B)/(C))≦1.8である、請求項1または請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体(A)が、
(a1)炭素数7以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー51~99.5質量%と、
(a2)カルボキシ基を有するモノマー0.5~4質量%と
を含むモノマー成分の共重合体である請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記架橋剤(D)がイソシアネート系架橋剤である、請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤組成物より形成された粘着剤層を有する粘着シート。
【請求項7】
ポリエチレン製フラットヤーン基材層を有する請求項6に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着物性が良好であり、ポリオレフィンなどへの適用に好適な粘着剤組成物、ならびに該粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系の粘着剤層を有する粘着シートは、種々の被着体に対して用いられるが、ポリオレフィン樹脂などの低極性の被着体に対しては、充分な粘着性が得られない場合や、剥離が困難な場合があるなど、所望の粘着性が得られにくいという問題がある。
これまでに、アクリル系樹脂に低極性・高軟化点の粘着付与樹脂を添加することで、ポリオレフィンなどの低極性の被着体に対する粘着力を向上させた粘着剤組成物が得られることは、見出されている。
【0003】
たとえば、ポリオレフィンなどの低極性の被着体に対する粘着力を向上させる方法として、特許文献1には、アクリル系共重合体に対して、軟化点の異なる3種類のロジンエステル樹脂を含有する粘着付与樹脂を配合して得られる粘着剤組成物を用いることが記載されている。また、特許文献2には、特定のモノマー成分からなる(メタ)アクリル系共重合体と、軟化点が100℃以上のロジン系粘着付与樹脂とを含む粘着剤組成物が提案されている。
【0004】
しかしながら、粘着剤組成物へのロジン系樹脂などの添加量を多くすると、相溶性が悪くなり、粘着剤層の濁り、再剥離性の悪化、タックの低下等を引き起こす傾向がある。このため、低極性被着体に対する粘着性を向上させつつ、再剥離性等の性能を向上させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-102229号公報
【文献】特開2018-177902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリオレフィン等の低極性被着体に対しても高い粘着性を示すとともに、再剥離性に優れた粘着剤組成物、ならびに該組成物からなる層を有する粘着シートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、水酸基価の異なるテルペン樹脂およびテルペンフェノール樹脂を併用したアクリル系の粘着剤組成物およびそれを用いた粘着シートが、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、次の〔1〕~〔7〕に関する。
〔1〕アクリル系共重合体(A)、
水酸基価が5mgKOH/g未満であり、軟化点が80℃以上120℃未満であるテルペン樹脂(B)、
水酸基価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、軟化点が160℃未満であるテルペンフェノール樹脂(C)、および
架橋剤(D)
を含む粘着剤組成物であって、
前記テルペン樹脂(B)と前記テルペンフェノール樹脂(C)の合計量が、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して30質量部以上である粘着剤組成物。
【0009】
〔2〕前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、
前記テルペン樹脂(B)を10質量部以上、前記テルペンフェノール樹脂(C)を10質量部以上含む、前記〔1〕の粘着剤組成物。
【0010】
〔3〕前記テルペン樹脂(B)と前記テルペンフェノール樹脂(C)の配合比が0.6≦((B)/(C))≦1.8である、前記〔1〕または〔2〕の粘着剤組成物。
〔4〕前記アクリル系共重合体(A)が、
(a1)炭素数7以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー51~99.5質量%と、
(a2)カルボキシ基を有するモノマー0.5~4質量%と
を含むモノマー成分の共重合体である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかの粘着剤組成物。
【0011】
〔5〕前記架橋剤(D)がイソシアネート系架橋剤である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかの粘着剤組成物。
〔6〕前記〔1〕~〔5〕のいずれかの粘着剤組成物より形成された粘着剤層を有する粘着シート。
〔7〕ポリエチレン製フラットヤーン基材層を有する前記〔6〕に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリオレフィン等の低極性被着体に対しても高い粘着性を示し、再剥離性に優れ、剥離した際に糊残りが生じにくい、粘着剤組成物ならびに該組成物からなる層を有する粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルを総称する意味で用いる。例えば、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸またはメタクリル酸を意味する。また、本発明において、数値範囲を表すA~Bは、特に断りのない限り、A以上B以下を意味する。
【0014】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)、テルペン樹脂(B)、テルペンフェノール樹脂(C)および架橋剤(D)を含む。
【0015】
アクリル系共重合体(A)
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)を含有する。
本発明に係るアクリル系共重合体(A)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー成分の少なくとも一部として用いた共重合体を特に制限なく用いることができる。
【0016】
・アクリル系共重合体(A)のモノマー成分
本発明に係るアクリル系共重合体(A)を形成するモノマー成分として用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(CH2=CR1-COOR2;R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数が1以上のアルキル基である)が挙げられ、好ましくはアルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)が、より好ましくはアルキル基の炭素数が7~10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられる。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0018】
これらのうちでは、アルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)である、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。さらに、アルキル基の炭素数が7~10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0019】
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
アクリル系共重合体(A)を形成するモノマー成分100質量%中において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの全使用量は、通常70質量%以上、好ましくは75~99質量%、より好ましくは80~99質量%の範囲である。
【0020】
本発明に係るアクリル系共重合体(A)は、好ましくは、モノマー成分として、カルボキシ基を有するモノマー(a2)を含む。
【0021】
カルボキシ基を有するモノマー(a2)は、分子内にカルボキシル基を有するモノマーである。カルボキシ基を有するモノマー(a2)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、5-カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また本明細書において、カルボキシ基を有するモノマーには、2つのカルボキシル基が脱水縮合してなる酸無水物基を含有するモノマーも含まれ、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物が挙げられる。
【0022】
カルボキシ基を有するモノマー(a2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種のモノマーを用いることが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸から選択される少なくとも1種のモノマーを用いることがより好ましい。これらのモノマーは工業的に入手し易いため好ましい。
これらのカルボキシ基を有するモノマー(a2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
カルボキシ基を有するモノマー(a2)の使用量は、アクリル系共重合体(A)を形成するモノマー成分100質量%中、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~4質量%、さらに好ましくは1~4質量%である。カルボキシ基を有するモノマーの使用量が前記上限値以下であると、後述する架橋剤(D)による架橋を行った場合に架橋密度が高くなりすぎず、応力緩和特性に優れる粘着剤組成物が得られる。また、カルボキシ基を有するモノマーの使用量が前記下限値以上であると、架橋構造が有効に形成され、常温において適切な強度を有する粘着剤層が得られる。
【0024】
本発明に係るアクリル系共重合体(A)を形成するモノマー成分は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびカルボキシ基を有するモノマー(a2)以外の、その他の(メタ)アクリル系のモノマー成分を含有してもよい。
【0025】
その他の(メタ)アクリル系のモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー以外の極性基含有モノマーが挙げられ、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー以外の酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素系複素環含有モノマー、シアノ基含有モノマーが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、たとえば、後述する架橋剤(D)を用いた場合に架橋剤(D)が有する架橋性官能基と反応することが可能な極性基(架橋性官能基)を有するモノマーを用いることができる。
【0026】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでのヒドロキシアルキル基の炭素数は、通常2~8、好ましくは2~6である。
【0027】
水酸基含有モノマーに含まれる当該水酸基は、架橋剤(D)との架橋性官能基として機能する場合がある。モノマー成分が水酸基含有モノマーを含む場合には、架橋構造が有効に形成され、常温において適切な強度を有する粘着剤層が得られるため好ましい。水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分100質量%中、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0~10質量%、さらに好ましくは0.05~7質量%である。水酸基含有モノマーの使用量が前記上限値以下であると、アクリル系共重合体(A)と架橋剤(D)とにより形成される架橋密度が高くなりすぎず、応力緩和特性に優れる粘着剤層が得られる。
【0028】
カルボキシ基含有モノマー以外の酸基含有モノマーの酸基としては、例えば、リン酸基、硫酸基が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、側鎖にリン酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーが挙げられ、硫酸基含有モノマーとしては、側鎖に硫酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
【0029】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。窒素系複素環含有モノマーとしては、例えば、ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタムが挙げられる。シアノ基含有モノマーとしては、例えば、シアノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
このような極性基含有モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0030】
また、本発明に係るアクリル系共重合体(A)を形成するモノマー成分は、アクリル系共重合体(A)の物性を損なわない範囲で、例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートなどの、その他の(メタ)アクリル酸エステルを含むことができる。
【0031】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
さらに、本発明に係るアクリル系共重合体(A)は、その物性を損なわない範囲で、モノマー成分中に、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレン等のアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨウ化スチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニルなどの、(メタ)アクリル系以外の共重合性モノマーを含んでもよい。このような(メタ)アクリル系以外の共重合性モノマーの使用量は、モノマー成分100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0035】
本発明に係るアクリル系共重合体(A)は、ポリオレフィン等への粘着性向上の観点から、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、極性基を有するモノマーとを含むモノマー成分の共重合体であり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシ基を有するモノマー(a2)とを含むモノマー成分の共重合体であり、さらに好ましくは、アルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)と、カルボキシ基を有するモノマー(a2)とを含むモノマー成分の共重合体である。
【0036】
アクリル系共重合体(A)を形成するモノマー成分が、アルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)と、カルボキシ基を有するモノマー(a2)とを含む場合、モノマー成分は、アルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)を好ましくは51~99.5質量%、より好ましくは75~99質量%、さらに好ましくは80~99質量%含み、カルボキシ基を有するモノマー(a2)を好ましくは0.5~4質量%、より好ましくは1~4質量%、さらに好ましくは1.2~4質量%含む。
【0037】
・アクリル系共重合体(A)の製造条件
本発明に係るアクリル系共重合体(A)は、上述したモノマー成分を重合あるいは共重合して得られるものであればよく、その製造条件を特に限定するものではないが、例えば、溶液重合法により製造することができる。具体的には、反応容器内に重合溶媒およびモノマー成分、必要に応じて連鎖移動剤を仕込み、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、重合開始剤を添加し、反応開始温度を通常40~100℃、好ましくは50~80℃に設定し、通常50~90℃、好ましくは70~90℃の温度に反応系を維持して、4~20時間反応させる。また、上記重合反応中に、重合開始剤、連鎖移動剤、モノマー成分、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。
【0038】
重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類が挙げられる。これらの重合溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0039】
連鎖移動剤としては、例えば、ノルマルドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマーが挙げられる。連鎖移動剤を用いることにより、製造される共重合体(A)の分子量を制御することができる。これらの連鎖移動剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0040】
連鎖移動剤は、アクリル系共重合体(A)を形成するモノマー成分100質量部に対して、通常0.1質量部以下、好ましくは0.01~0.09質量部の範囲内の量で使用することができる。
【0041】
重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤が挙げられる。具体的には、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物が挙げられる。これらの中でも、アゾ化合物が好ましい。アゾ化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2'-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)が挙げられる。これらの重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0042】
重合開始剤は、本発明に係るアクリル系共重合体(A)を形成するモノマー成分100質量部に対して、通常0.01~5質量部、好ましくは0.1~3質量部の範囲内の量で使用される。
【0043】
・アクリル系共重合体(A)の特性
本発明に係るアクリル系共重合体(A)は、上述したモノマー成分を共重合して得られるが、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。これらの中では、ランダム共重合体が好ましい。本発明に係るアクリル系共重合体(A)は、好ましくは、(a1)炭素数7以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー51~99.5質量%と、(a2)カルボキシ基を有するモノマー0.1~4質量%とを含むモノマー成分の共重合体である。
【0044】
アクリル系共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、ポリスチレン換算値で、好ましくは20万~150万、より好ましくは25万~130万、さらに好ましくは35万~120万である。また、アクリル系共重合体(A)のGPC法により測定される分子量分布(Mw/Mn)は、通常2~15であり、好ましくは2~14、より好ましくは2~12である。
【0045】
本発明の粘着剤組成物において、アクリル系共重合体(A)の含有量は、特に限定されるものではないが、当該組成物中の有機溶媒を除く固形分100質量%中、通常30~77質量%、好ましくは40~75質量%、より好ましくは50~75質量%、特に好ましくは55~75質量%である。アクリル系共重合体(A)の含有量が前記範囲にあると、低極性被着体用の粘着剤としての性能のバランスがとれ、粘着特性に優れる。
【0046】
テルペン樹脂(B)
本発明の粘着剤組成物は、テルペン樹脂(B)を含有する。本発明で用いられるテルペン樹脂(B)は、水酸基価が5mgKOH/g未満であり、軟化点が80℃以上120℃未満である。前記テルペン樹脂(B)の水酸基価は、好ましくは0~1mgKOH/g、より好ましくは0~0.5mgKOH/gであり、軟化点は、好ましくは80~115℃、より好ましくは80~100℃である。
【0047】
このようなテルペン樹脂(B)としては、たとえば、YSレジン PX-1150(軟化点115℃、水酸基価5mgKOH/g未満、ヤスハラケミカル株式会社製)、YSレジン PX-1000(軟化点100℃、水酸基価5mgKOH/g未満、ヤスハラケミカル株式会社製)、YSレジン PX-800(軟化点80℃、水酸基価5mgKOH/g未満、ヤスハラケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0048】
本発明の粘着剤組成物中において、テルペン樹脂(B)の配合量は、テルペン樹脂(B)とテルペンフェノール樹脂(C)との合計量が、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して30質量部以上、好ましくは30~80質量部となる量であればよく、特に限定されるものではないが、テルペン樹脂(B)の配合量が、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して通常0.1質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは10~40質量部である。
【0049】
テルペンフェノール樹脂(C)
本発明の粘着剤組成物は、テルペンフェノール樹脂(C)を含有する。本発明で用いられるテルペンフェノール樹脂(C)は、水酸基価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、軟化点が160℃未満である。前記テルペンフェノール樹脂(C)の水酸基価は、好ましくは50~120mgKOH/gであり、軟化点は、好ましくは100~150℃である。
【0050】
このようなテルペンフェノール樹脂(C)としては、たとえば、YSポリスター T145(軟化点145℃、水酸基価50~60mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、YSポリスター T130(軟化点130℃、水酸基価50~60mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、YSポリスター T115(軟化点115℃、水酸基価50~60mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、YSポリスター T100(軟化点100℃、水酸基価50~60mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、YSポリスター G150(軟化点150℃、水酸基価110~120mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、YSポリスター G125(軟化点125℃、水酸基価110~120mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
本発明の粘着剤組成物中において、テルペンフェノール樹脂(C)の配合量は、テルペン樹脂(B)とテルペンフェノール樹脂(C)との合計量が、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して30質量部以上、好ましくは30~80質量部となる量であればよく、特に限定されるものではないが、テルペンフェノール樹脂(C)の配合量が、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して通常0.1質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは10~40質量部である。
【0052】
本発明の粘着剤組成物において、テルペン樹脂(B)とテルペンフェノール樹脂(C)の配合比(質量比)は、好ましくは0.6≦((B)/(C))≦1.8であり、より好ましくは0.6≦((B)/(C))≦1.7であり、さらに好ましくは0.6≦((B)/(C))≦1.6である。
【0053】
本発明の粘着剤組成物は、テルペン樹脂(B)とテルペンフェノール樹脂(C)とを上記のような量で含有することで、得られる粘着剤層が、ポリオレフィンなどの低極性の被着体に対しても優れた粘着性を示し、再剥離性にも優れ、剥離した際の糊残りが抑制されたものとなる。
【0054】
架橋剤(D)
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(D)を含有する。
架橋剤(D)としては、特に限定は無いが、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート化合物等を用いることができる。架橋剤としては1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0055】
エポキシ系架橋剤としては、(1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリジル-m-キシリレンジアミン、N,N,N',N'-テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアネート、m-N,N-ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N-ジグリシジルアニリン、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0056】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーおよびこれらイソシアネートモノマーにトリメチロールプロパンなどと付加反応させたイソシアネート化合物、ビュレット型イソシアネート化合物、さらにはイソシアネートモノマーにポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
金属キレート化合物としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0058】
架橋剤(D)としては、イソシアネート系架橋剤が、架橋性に優れるため好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤が反応することにより、三次元架橋構造を形成することが可能であり、高い粘着力かつ凝集力を発現することが可能である。
【0059】
本発明の粘着剤組成物中において、架橋剤(D)の配合量は、特に限定されるものではないが、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部の範囲である。
【0060】
その他の成分
本発明の粘着剤組成物は、その目的を損なわない範囲で、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、前記アクリル系共重合体(A)、前記テルペン樹脂(B)および前記テルペンフェノール樹脂(C)以外のポリマー、ならびに各種添加剤等を挙げることができる。添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、微粒子、色素等が挙げられる。本発明の粘着剤組成物が、前記(A)~(D)以外の成分を含む場合には、粘着剤組成物の固形分100質量%中、(A)~(D)以外の成分の含有量(固形分量)を、例えば0.03~30質量%、好ましくは0.05~25質量%、より好ましくは0.08~20質量%とすることができる。
【0061】
本発明の粘着剤組成物は、上記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶媒を含有してもよい。
有機溶媒としては、例えば、アクリル系共重合体(A)の製造条件の説明で記載した重合溶媒が挙げられる。有機溶媒は、粘着剤組成物の調製時に添加したものであってもよく、また、アクリル系共重合体(A)および重合溶媒を含むポリマー溶液を原料として用いることにより粘着剤組成物中に含まれてもよい。
本発明の粘着剤組成物において、有機溶媒の含有量は、所望の粘度等により適宜調整することができ、特に限定されるものではないが、通常0~90質量%、好ましくは10~80質量%程度である。
【0062】
<粘着剤組成物の製造方法>
本発明の粘着剤組成物は、上述した(A)~(D)等の各成分を、撹拌装置等を用いて公知の方法で混合することにより得られる。すなわち、本発明の粘着剤組成物は、組成物を構成する各成分を一括または順次混合・攪拌することにより得られる。攪拌時間は特に制限はないが、作業性および生産性の面から室温にて10~120分程度であればよい。
【0063】
<粘着剤層>
本発明に係る粘着剤層は、上述した本発明の粘着剤組成物から形成される。粘着剤層は、例えば、上述の粘着剤組成物中の架橋反応を進めることにより、具体的にはアクリル系共重合体(A)を架橋剤(D)で架橋することにより得られる。
【0064】
粘着剤層の形成条件は、例えば以下のとおりである。本発明の粘着剤組成物を基材もしくは剥離シートの剥離処理面上に塗布し、溶媒の種類によっても異なるが、通常50~150℃、好ましくは60~100℃で、通常1~10分間、好ましくは2~7分間乾燥して溶媒を除去し、塗膜を形成する。乾燥塗膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、通常5~125μm、好ましくは10~100μmである。
【0065】
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法により、所定の厚さになるように塗布・乾燥する方法を用いることができる。
【0066】
粘着剤層は、例えば、本発明の粘着剤組成物を基材もしくは剥離シートの剥離処理面上に塗布し、上記条件等で塗膜を形成し、形成された塗膜上に剥離シートを貼付した後、通常3日以上、好ましくは7~10日間、通常5~60℃、好ましくは15~40℃、通常5~70%RH、好ましくは5~50%RHの環境下で養生することにより得ることができる。本発明では、粘着剤層を設ける基材として、ポリエチレンフラットヤーン基材を用いることが特に好ましい。上記のような熟成条件で架橋を行うと、効率よく架橋体(ネットワークポリマー)の形成が可能である。
【0067】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、上述した本発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。本発明の粘着シートは、前記粘着剤組成物より作製された粘着剤層のみからなる粘着シートであってもよく、基材層と、粘着剤層とを有する積層体である粘着シートであってもよい。本発明の粘着シートは、ポリエチレンフラットヤーン基材を有することが特に好ましい。
【0068】
粘着剤層の厚さとしては、粘着シートの用途等に応じて適宜設定すればよく、特に制限は無いが、通常は5~125μmであり、好ましくは10~100μmである。
【0069】
本発明の粘着シートが前記粘着剤組成物より作製された粘着剤層のみからなる粘着シートである場合には、例えば、前記粘着剤組成物を、剥離処理された基材上に塗布し、必要に応じて、さらに該塗布面上に剥離処理された基材を配置することにより、粘着剤層を形成することにより得られる。該粘着剤層のみからなる粘着シートは、保管時、移動時等は、剥離処理された基材と共に、保管、移動等されるが、使用時には、剥離処理された基材が剥がされ、粘着剤層のみからなる粘着シートとして使用される。
【0070】
本発明の粘着シートが、基材層と、粘着剤層とを有する積層体である場合には、例えば、前記粘着剤組成物を、基材上に塗布し、必要に応じて、さらに該塗布面上に剥離処理された基材を配置することにより、基材上に粘着剤層を形成することにより得られる。該粘着剤層は、使用時には、剥離処理された基材が剥がされ、基材層および粘着剤層からなる粘着シートとして使用される。
【0071】
また、別の例としては、基材層の両側に粘着剤層を設け、さらにその両側に剥離処理された基材を配置することにより、粘着シートを得てもよい。
本発明の粘着シートが基材層を有する場合、基材層を構成する基材は、フィルム状、シート状、布状、不織布状等であることが好ましい。
【0072】
前記基材としては、特に限定は無いが、プラスチック、ガラス、織布、不織布、紙、金属箔等が挙げられる。プラスチックとしては、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。本発明では、基材として、ポリエチレン製フラットヤーン基材を用いることが特に好ましい。
【0073】
本発明の粘着シートは、上述した粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有することにより、ポリオレフィンなどの低極性被着体への粘着性、再剥離性、保持力に優れ、剥離した際の糊残りも抑制される。
【0074】
本発明の粘着シートの用途としては、特に制限は無いが、ポリオレフィンなどの低極性の被着体へ好適に適用することができ、たとえば、ポリエチレン製のフィルムや袋状物等に対して好適に用いることができる。
【実施例
【0075】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0076】
以下において、各種物性は以下のようにして測定あるいは評価した。
粘着力
実施例等で得られた粘着シートの試験片(25mm幅)のPETセパレーターを剥がし、23℃、50%RH条件下で露出した粘着剤層面を被着体に貼り付け、2kgのローラーを用いて3往復圧着した。被着体としては、SUS板(研磨ステンレス板)またはポリエチレン製シートを用いた。これを、23℃、50%RHの測定環境下で貼付から20分間保持した後に、被着体から粘着シートを同一測定環境下(23℃/50%RH)にて、剥離角度180°の条件で、引張速度300mm/minで剥離し、粘着力を評価した。評価基準は以下の通りとした。
(1)被着体がSUSの場合
〇:15N以上
△:15N未満10N以上
×:10N未満
(2)被着体がポリエチレンの場合
〇:10N以上
△:10N未満5N以上
×:5N未満
【0077】
再剥離性
実施例等で得られた粘着シートの試験片(25mm×60mm)を用い、PETセパレーターを剥がして露出した粘着剤層面を、被着体であるポリエチレン製シートに、23℃、50%RH条件下で貼り付け、2kgのローラーを用いて3往復圧着した。これを40℃で2日間静置した後、23℃、50%RH条件下に取り出し、1時間後に粘着シートを剥離角度180°、引張速度3m/minで剥離した。剥離後の被着体表面の糊残りを目視で確認して評価した。評価基準は次の通りとした。
〇:剥離後の被着体上の、汚染や糊残りが、貼り付けた粘着シート面積の10%未満である。
△:剥離後の被着体上の、汚染や糊残りが、貼り付けた粘着シート面積の10%以上50%未満に見られる。
×:剥離後の被着体上の、汚染や糊残りが、貼り付けた粘着シート面積の50%以上に見られる。
【0078】
[製造例1](アクリル系共重合体1の製造)
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)98.0部およびアクリル酸(AA)2.0部を導入し、溶媒として酢酸エチルを150部導入した。
【0079】
次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、重合開始剤として2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.1部添加し、70℃で7時間反応を行った。反応終了後、反応液を酢酸エチルで希釈し、アクリル系共重合体1を含む固形分濃度20質量%のポリマー溶液を調製した。アクリル系共重合体1の重量平均分子量(Mw)は70万であった。
【0080】
[実施例1](粘着剤組成物1および粘着シートの製造)
製造例1で得たアクリル系共重合体1のポリマー溶液(固形分濃度20質量%)、テルペン樹脂としてYSレジン PX-1000(軟化点100℃、水酸基価5mgKOH/g未満、ヤスハラケミカル株式会社製)、テルペンフェノール樹脂としてYSポリスター G150(軟化点150℃、水酸基価110~120mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、およびポリイソシアネート系架橋剤(コロネートL、東ソー株式会社製)を、それぞれ表1に示す固形分比となる配合で混合して、粘着剤組成物を得た。
【0081】
得られた粘着剤組成物を、ポリエチレンフラットヤーン基材上に、乾燥後の膜厚が40μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した。これをポリエチレンテレフタレート(PET)製セパレーターでラミネートし、40℃で3日間熟成させて、粘着シートを得た。
得られた粘着シートを用い、上述した方法で、粘着力および再剥離性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0082】
[実施例2~10、比較例1~10]
テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ならびに架橋剤の種類および配合量を表1に示す通りとしたことの他は、実施例1と同様にして粘着剤組成物および粘着シートを製造し、粘着力および再剥離性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0083】
表1,2中においてテルペン樹脂として記載の、「PX-800」はYSレジン PX-800(軟化点80℃、水酸基価5mgKOH/g未満、ヤスハラケミカル株式会社製)、「PX-1250」はYSレジン PX-1250(軟化点125℃、水酸基価5mgKOH/g未満、ヤスハラケミカル株式会社製)、「PX-300N」はYSレジン PX-300N(軟化点30℃、5mgKOH/g未満、ヤスハラケミカル株式会社製)である。
【0084】
また表1,2中においてテルペンフェノール樹脂として記載の、「G-125」はYSポリスター G125(軟化点125℃、水酸基価110~120mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、「T-130」はYSポリスター T130(軟化点130℃、水酸基価50~60mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、「T-100」はYSポリスター T100(軟化点100℃、水酸基価50~60mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、「N-125」はYSポリスター N-125(軟化点125℃、水酸基価140~150mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、「T-160」はYSポリスター T160(軟化点160℃、水酸基価50~60mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)である。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の粘着剤組成物は、粘着シートの粘着剤層を形成する用途に好適であり、本発明の粘着シートは、各種被着体を対象とした粘着シート、特にポリオレフィン等の低極性被着体を対象とした粘着シートとして好適に使用できる。