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特許7210443オレフィンメタセシス反応におけるルテニウム錯体の使用
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  • 特許-オレフィンメタセシス反応におけるルテニウム錯体の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】オレフィンメタセシス反応におけるルテニウム錯体の使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/30 20060101AFI20230116BHJP
   C07C 255/08 20060101ALI20230116BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230116BHJP
【FI】
C07C253/30
C07C255/08
C07B61/00 300
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019524231
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2017056992
(87)【国際公開番号】W WO2018087678
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】PL419421
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】515008667
【氏名又は名称】アペイロン シンセシス エス エイ
【氏名又は名称原語表記】APEIRON SYNTHESIS S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スコヴェルスキ,クシシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】ガウイン,ラファウ
(72)【発明者】
【氏名】チワルバ,ミハウ パヴェウ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0309433(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02947189(FR,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0088277(US,A1)
【文献】国際公開第2017/055945(WO,A1)
【文献】特表2013-527855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 6/
C07C 69/
C07C 67/
C07C 255/
C07C 253/
C07C 11/
C07C 69/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式2の化合物の使用において、
【化41】
及びXは、それぞれアニオン性配位子であり、X及びXは、相互結合して環式系を形成してもよく、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、SR’、S(O)R’、S(O)R’、N(R’)(R’’)、P(R’)(R’’)(R’’’)から選択される置換基であり、R’、R’’及びR’’’は、同じ又は異なるC-C25アルキル基、C-C12シクロアルキル基、C-C25アルコキシ基、C-C25アルケニル基、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C20アリール、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロシクリル、C-C20、ヘテロアリール、C-C20であり、又はこれらは、置換又は非置換の環式C-C10又は多環式C-C12系の形成を含んでいてもよく、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロシクリル、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換され、エステル(-COOR’)、アミド(-CONR’)、ホルミル(-CHO)、ケトン(COR’)、ヒドロキサム酸(-CON(OR’)(R’))基で置換されていてもよく、R’は、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルケニル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C20アリール、C-C24アリールオキシ、C-C24アラルキル、C-C20複素環、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、
Arは、水素原子で置換されているか、又は任意に、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20複素環式、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシ、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリール基、又はハロゲン原子で置換されているアリール基であり、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-P(O)(OR’))ホスホニウム基、(-P(O)R’(OR’))ホスフィニウム基、(-P(OR’))亜ホスホン基(phosphonous group)、(-PR’)ホスフィン基、(-NO)ニトロ基、(-NO)ニトロソ基、(-COOH)カルボキシ基、(-COOR’)エステル基、(-CHO)ホルミル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリール、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシであり、R、R、R及びRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C12アルケニル、C-C20アリール、C-C24アリールオキシ、C-C20複素環、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシ、C-C24アラルキルC-C24であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシ又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
主生成物として、少なくとも1つの非末端二重C=C結合を含む少なくとも1つの化合物が形成されるオレフィンメタセシス反応において、前記式2の化合物の存在下で少なくとも1種類のオレフィンを接触させるプロセスを含み、前記式2の化合物を0.1モル%未満の量で使用し、
前記接触させるオレフィンの1つは、アクリロニトリルである、使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用において、前記式2において、
【化42】
及びXは、ハロゲン原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)基から選択される置換基であり、R’及びR’’は、同じ又は異なるC-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルケニル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-P(O)(OR’))ホスホニウム基、(-P(O)R’(OR’))ホスフィニウム基、(-P(OR’))亜ホスホン基(phosphonous group)、(-PR’)ホスフィン基、(-NO)ニトロ基、(-NO)ニトロソ基、(-COOH)カルボキシ基、(-COOR’)エステル基、(-CHO)ホルミル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルケニル、C-C20アリール、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリール基であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよい、使用。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の使用において、前記式2において、
【化43】
及びXは、ハロゲン原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)から選択される置換基であり、R’及びR’’は、同じ又は異なるC-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-NO)ニトロ基、(-COOR’)エステル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリール、C-C24アラルキル基であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよい、使用。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の使用において、前記式2の化合物は、以下の式2aによって表され、
【化44】
前記式2aにおいて、
Xは、塩素原子又はヨウ素原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)から選択される置換基であり、R’及びR’’は、同じ又は異なるC-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-NO)ニトロ基、(-COOR’)エステル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリール、C-C24アラルキルであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
11、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、C-C25アルキル基、C-Cシクロアルキル基、C-C25アルコキシ基、C-C24ペルフルオロアリール基、C-C20ヘテロアリール基、又はC-C25アルケニル基であり、置換基R、R’、R、R’及びRは、相互結合して、置換又は非置換の環式C-C10又は多環式C-C12系を形成してもよい、使用。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の使用において、前記式2の化合物は、以下の式2aによって表され、
【化45】
前記式2aにおいて、
Xは、塩素原子又はヨウ素原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)から選択される置換基であり、R’及びR’’は、同じ又は異なるC-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-NO)ニトロ基、(-COOR’)エステル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリール、C-C24アラルキル基であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
11及びR15は、それぞれメチル、エチル又はイソプロピルであり、
12、R13、R14は、それぞれ水素原子、C-C25アルキル基である、使用。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の使用において、前記式2の化合物は、以下の式2aによって表され、
【化46】
前記式2aにおいて、
Xは、塩素原子又はヨウ素原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)から選択される置換基であり、R’は、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-NO)ニトロ基、(-COOR’)エステル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C20アリール基であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
11及びR15は、それぞれメチル又はエチルであり、
12、R13、R14は、それぞれ水素原子、C-C25アルキル基である、使用。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の使用において、前記オレフィンメタセシス反応は、交差メタセシス(CM)反応である、使用。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の使用において、前記アクリロニトリルは、第2のオレフィンの1~6当量の量で使用される、使用。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の使用において、前記アクリロニトリルは、第2のオレフィンの1.05~2当量の量で使用される、使用。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の使用において、前記オレフィンメタセシス反応は、トルエン、ベンゼン、メシチレン、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸メチル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等の有機溶媒中又は無溶媒で行われる、使用。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の使用において、前記オレフィンメタセシス反応は、20~150℃の温度で行われる、使用。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の使用において、前記オレフィンメタセシス反応は、40~120℃の温度で行われる、使用。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の使用において、前記オレフィンメタセシス反応は、40~90℃の温度で行われる、使用。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の使用において、前記オレフィンメタセシス反応は、5分から24時間かけて行われる、使用。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の使用において、前記式2の化合物は、反応混合物に数回に分けて及び/又はポンプを用いて連続的に添加される、使用。
【請求項16】
請求項1から請求項15までのいずれか一項に記載の使用において、前記式2の化合物は、反応混合物に固体として及び/又は有機溶媒中の溶液として添加される、使用。
【請求項17】
請求項1から請求項16までのいずれか一項に記載の使用において、前記アクリロニトリルは、反応混合物に数回に分けて及び/又はポンプを用いて連続的に添加される、使用。
【請求項18】
請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載の使用において、不活性ガス又は真空を使用して、反応混合物から、エチレン、プロピレン、ブチレンからなる群から選ばれる前記オレフィンメタセシス反応のガス状副生成物が積極的に除去される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンメタセシス反応(olefin metathesis reaction)において触媒及び/又は触媒前駆体として作用するルテニウム錯体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
当分野では、内部オレフィンを得ることを可能にする多くのルテニウム錯体が知られており[R. H. Grubbs (Ed.), AG Wenzel (Ed.), D. J. O'Leary (Ed.), E. Khosravi (Ed.), Handbook of Olefin Metathesis, 2nd edition, 3 Volumes, 2015, John Wiley & Sons, Inc. 1608 pages]、それらのうち、第一、第二及び第三世代、及び2つの同じ又は異なるN-複素環カルベン配位子(N-heterocyclic carbene ligand:NHC)を含む錯体が注目される。ルテニウム錯体では、活性な14電子触媒型は、ホスフィン又はNHCである中性配位子を含む[Grubbs et al. Chem. Rev. 2010, 110, 1746-1787; Nolan et al. Chem. Commun. 2014, 50, 10355-10375]。
【化1】
【0003】
最も用途が広く効果的な錯体は、第二世代のいわゆるグラブズ触媒(Gru-II)、ホベイダ-グラブズ触媒(Hov-II)及びインデニリデン(Indium II)、すなわち、構造中に1つのNHC型配位子を含むものである。
【0004】
アクリロニトリルは、メタセシス反応においてタイプ3オレフィンであると考えられているので、アクリロニトリル(及びその誘導体)との交差メタセシス(cross-metathesis:CM)反応は、最も要求が高いオレフィンメタセシスプロセスの1つである[no homodimerisation - J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 11360-11370]。一方、アクリロニトリルと、不飽和エステル、アミド又は他のニトリルとのCMにより、かなりの付加価値を有する二官能性分子が形成される。例えば、アクリロニトリルと、C=C末端結合を含む中鎖長エステルとの又は不飽和脂肪酸エステルとのCMの生成物を使用して、ポリアミドを製造するためのアミノエステル-モノマーが得られる[Bruneau, P. H. Dixneuf et al., ChemSusChem, 2012, 5, 1410-1414, DOI:10.1002/cssc.201200086]。工業的に重要なアクリロニトリルとの交差メタセシス反応における最も有効な触媒は、Hov-II触媒であるが[S. J. Connon and S. Blechert, Chem. Int. Ed. 2003, 42, 1900-1923, DOI:10.1002/anie.200200556]、これらの錯体で得られる最大ターンオーバー数w(turn over number:TON)は、僅かに13,000であり[Monatsh. Chem., 2015, 146, 1107-1113, DOI: 10.1007 / s00706-015-1480-1]、これが、工業的使用の妨げになっている。Hov-II錯体の立体的又は電子的修飾では、アクリロニトリルによるCMを著しく改善できない。内部C=C結合の形成をもたらす反応においてルテニウムとNHCとの錯体の効率(TONとして表される)を有意に改善できないことは、当該技術分野における実質的な課題である。
【0005】
最新技術では、環状アルキルアミノカルベン配位子(cyclic alkyl amino carbene:CAAC)を含有するルテニウム錯体を使用して、エチレンとの交差メタセシス反応によって末端オレフィンを得る。初期の研究段階では、GrubbsとBertrandは、大量(1~5モル%)の触媒を使用して、標準的な閉環メタセシス(ring closing metathesis:RCM)を用いて、得られたCAACルテニウム錯体の活性を評価した[Angew. Chem., Int. Ed., 2007, 46, 7262-7265]。最新の報告では、同著者らは、ビニルエーテルとの反応速度を測定することによって、CAAC配位子を含む新しいルテニウム錯体の反応性を判定しているが、内部C=C結合を合成する試みは行われていない[US20140309433A1, Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 1919-1923]。立体的に混み合った(sterically crowded)イソプロピル置換基を主環に導入することによってCAAC配位子フレームワークを改変しようと試みた他の研究者もいる[Zhang, Shi et al, Chem. Commun., 2013, 49, 9491-9493, DOI:10.1039/C3CC45823G]。この報告の著者は、RCM反応において高ルテニウム錯体負荷を使用している。
【化2】
【0006】
また、CAAC配位子含有ルテニウム錯体は、ほとんどのNHC含有錯体と比較して有意に程度が高い非生産的メタセシス(non-productive metathesis)を示すことが知られている[J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 8534-8535, DOI:10.1021/ja1029045]。これは、内部C=C結合の合成に関して望ましくない特徴である。当分野の現在の状況に鑑みると、(経済的に有利な手法で)内部C=C結合を含む化合物を得るためにCAACルテニウム錯体を使用することは、自明ではない。
【0007】
2003年、S.Blechertらは、Gru-II錯体によって触媒されるアクリロニトリルとのCM反応に銅塩(I)を添加することの有利な効果を観察した[Eur. J. Org. Chem. 2003, 2225-2228, DOI:10.1002/ejoc.200300215]。この著者らは、銅塩(I)の添加によってCM反応の結果が有利になるのは、反応混合物からホスフィンを除去し、これを不溶性錯体に結合させた効果であると考察している。
【0008】
2011年、P. Dixneuf及びCh. Bruneau[Green Chem., 2011, 13, 2258-2271, DOI:10.1039/C1GC15377C]は、窒素を含有する原材料を製造するアクリロニトリル反応において植物油のエテノリシス生成物を利用することを試みている。同じ著者の次の論文[Green Chem., 2011, 13, 2911-2919, DOI: 10.1039 / C1GC15569E]には、植物油メタセシス生成物を利用する他の試みが記載されており、ここでは、植物油誘導体と、アクリロニトリル及びアクロレインとの種々のCM反応が行われている。
【0009】
Ch. Bruneauらは、更に、分子内に2つのニトリル部分を有する化合物を得るための別の手法を提案しており[Monatsh. Chem., 2015, 146, 1107-1113, DOI:10.1007/s00706-015-1480-1]、ここでは、市販のルテニウム錯体の存在下でアクリロニトリル及び10-ウンデセノニトリルを用いてCM反応が行われている。これまでは、アクリロニトリルとのCM反応の需要において、このプロセスを用いて、高い収率及び好ましい選択率を有し、工業規模で使用可能なルテニウム錯体は、同定されていない。
【0010】
上記に引用した論文及び発明の著者らは、基質濃度の低減(高希釈度のC<0.1Mが使用されている。)による反応収率への好ましい効果を強調している。
【0011】
従来の技術を要約すると、内部C=C結合の形成をもたらす反応における効率(TON値として表される)の低さのために、実質的な課題が存在する。特に高い工業的可能性を有し、需要がある反応は、アクリロニトリルとのCMであるが、これについて、プロセスの高い選択率を維持しながら収率を改善することを可能にする(より効率的な均一系ルテニウム触媒の形式の)代替ツールは、現時点では存在しない。
【0012】
選択されたCAAC-ルテニウム錯体の存在下のアクリロニトリルとのCM反応は、1Mの濃度であっても非常に高いTONによって特徴付けられることが観察されており、これにより、プロセスコストを大幅に削減できる。
【0013】
驚くべきことに、CAACルテニウム錯体は、≦0.1モル%、場合によっては<0.002モル%の触媒添加量で内部C=C結合の形成を促進することが観察されている。
【0014】
更に驚くべきことに、CAAC配位子構造は、アクリル酸メチル又はアクリロニトリル等の電子不足パートナー(electron deficient partner:EDP)を含むビニル誘導体とのCM反応の効率及び選択率に重大な影響を及ぼすことが見出されている。
【0015】
一般式1、1aによって表されるCAAC配位子を含むルテニウム錯体は、式1bのNHC配位子を含有する錯体よりも内部C=C内部結合を形成する効率が高いことが示されている。更に、一般式1の配位子を含有する錯体は、一般式1aのCAAC配位子を含有する類似体及び式1bのNHC含有錯体に比べて、アクリロニトリルとのCM反応において遥かに効果的かつ選択的であることが示されている。
【化3】
【0016】
また、Ar基中の置換基がEDPとのCM反応における効率及び選択率に大きく影響することも観察されている。Grubbs及びBertrandは、2つの末端オレフィンの形成をもたらすオレイン酸メチルのエテノリシス反応における2aa及び2ab錯体の優れた効率を記述している。
【化4】
【0017】
驚くべきことに、EDPとのCMの反応では、2aa錯体の効率及び選択率は、オルト位において小さい又は中程度のアルキル基(Me、Et)で置換されたAr部分を含有する錯体、例えば、2bc及び2bd錯体に比べて、有意に低いことが分かった。これにもかかわらず、四級炭素原子におけるフェニル置換基によって、2aa錯体は、2ab錯体よりも効率的かつ選択的になった。
【化5】
【0018】
NHC配位子の窒素原子において、イソプロピル基で置換されたフェニル環をオルト位に有するNHCルテニウム錯体(いわゆるSIPr配位子)は、内部C=C結合の形成において非常に良好な活性及び効率を示す。同様に、窒素原子が2,6-ジイソプロピルフェニルで置換されているベンジリデンルテニウムCAAC錯体は、エテノリシス反応において良好かつ非常に高い効率を示す。驚くべきことに、Arのオルト位にイソプロピル基を含むCAAC錯体の内部C=C結合の形成の反応における活性及び効率は、非常に低いことが観察されている。この活性は、温度が上昇すると僅かに増加する。ベンジリデンCAAC錯体については、ベンジリデンNHC錯体から知られるベンジリデン配位子環にそれぞれの官能基を導入すると活性の変化が観察される[Angew. Chem. Int. Ed., 2002, 41 (21), 4038-4040]。
【0019】
本発明のルテニウム錯体の他の利点は、アクリロニトリルと内部オレフィンとの反応における優れた選択率である。非対称内部オレフィン(例えば、オレイン酸メチル(MO))とアクリロニトリルとの反応では、アクリロニトリルとの2つのCM生成物、エチレンとの2つのCM生成物、及び2つのMOホモメタセシス生成物の形成が観察される。MOホモメタシス生成物は、末端オレフィンに比べて工業的用途が少ないので、最も望ましくない副生成物であり、これらがプロセスに再導入されると、かなりの割合のトランス異性体を有する内部オレフィンの反応性が低下するため、望ましくない。本発明の錯体によれば、MOとアクリロニトリルとの反応において、ホモメタセシス生成物の形成の量が数倍低減される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、本出願は、次式2の化合物の使用に関し、
【化6】
ここで、
及びXは、それぞれアニオン性配位子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、SR’、S(O)R’、S(O)R’N(R’)(R’’)、P(R’)(R’’)(R’’’)から選択される置換基であり、R’、R’’及びR’’’は、同じ又は異なるC-C25アルキル基、C-C12シクロアルキル基、C-C25アルコキシ基、C-C25アルケニル基、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C20アリール、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロシクリル、C-C20、ヘテロアリール、C-C20であり、又はこれらは、置換又は非置換の環式C-C10又は多環式C-C12系の形成を含んでいてもよく、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロシクリル、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換され、エステル(-COOR’)、アミド(-CONR’)、ホルミル(-CHO)、ケトン(COR’)、ヒドロキサム酸(-CON(OR’)(R’))基で置換されていてもよく、R’は、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルケニル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C20アリール、C-C24アリールオキシ、C-C24アラルキル、C-C20複素環、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、
Arは、水素原子で置換されているか、又は任意に、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20複素環式、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシ、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリール基、又はハロゲン原子で置換されているアリール基であり、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-SONR’)スルホンアミド基、(-P(O)(OR’))ホスホニウム基、(-P(O)R’(OR’))ホスフィニウム基、(-P(OR’))亜ホスホン基(phosphonous group)、(-PR’)ホスフィン基、(-NO)ニトロ基、(-NO)ニトロソ基、(-COOH)カルボキシ基、(-COOR’)エステル基、(-CHO)ホルミル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリール、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシであり、R、R、R及びRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C12アルケニル、C-C20アリール、C-C24アリールオキシ、C-C20複素環、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシ、C-C24アラルキルC-C24であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリール、C-C20ヘテロアリールオキシ又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
主生成物として、少なくとも1つの非末端二重C=C結合を含む少なくとも1つの化合物が形成されるオレフィンメタセシス反応において、式2の化合物の存在下で少なくとも1種類のオレフィンを接触させるプロセスを含む。
【0021】
好ましくは、前記化合物は、式2によって表され、
【化7】
及びXは、ハロゲン原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)基から選択される置換基であり、R’及びR’’は、同じ又は異なるC-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルケニル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-SONR’)スルホンアミド基、(-P(O)(OR’))ホスホニウム基、(-P(O)R’(OR’))ホスフィニウム基、(-P(OR’))ホスホン基(phosphonous group)、(-PR’)ホスフィン基、(-NO)ニトロ基、(-NO)ニトロソ基、(-COOH)カルボキシ基、(-COOR’)エステル基、(-CHO)ホルミル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12アルケニル、C-C20アリール、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリール基であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよい。
【0022】
好ましくは、前記化合物は、式2によって表され、
【化8】
及びXは、ハロゲン原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)基から選択される置換基であり、R’は、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-SONR’)スルホンアミド基、(-NO)ニトロ基、(-COOR’)エステル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリール、C-C24アラルキル基であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよい。
【0023】
好ましくは、前記化合物は、式2によって表され、
【化9】
Xは、塩素原子又はヨウ素原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)基から選択される置換基であり、R’は、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-SONR’)スルホンアミド基、(-NO)ニトロ基、(-COOR’)エステル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OR’)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリール、C-C24アラルキルであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
11、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、C-C25アルキル基、C-Cシクロアルキル基、C-C25アルコキシ基、C-C24ペルフルオロアリール基、C-C20ヘテロアリール基、又はC-C25アルケニル基であり、置換基R、R’、R、R’及びRは、相互結合して、置換又は非置換の環式C-C10又は多環式C-C12系を形成してもよい。
【0024】
好ましくは、前記化合物は、式2によって表され、
【化10】
Xは、塩素原子又はヨウ素原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)から選択される置換基であり、R’は、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-SONR’)スルホンアミド基、(-NO)ニトロ基、(-COOR’)エステル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アミノ基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリール、C-C24アラルキル基であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
11及びR15は、それぞれメチル、エチル又はイソプロピルであり、
12、R13、R14は、それぞれ水素原子、C-C25アルキル基である。
【0025】
好ましくは、前記化合物は、式2によって表され、
【化11】
Xは、塩素原子又はヨウ素原子であり、
Gは、ハロゲン原子又はOR’、N(R’)(R’’)から選択される置換基であり、R’は、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C20アリールであり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシによって任意に置換されており、
、R、R、Rは、それぞれ水素原子、(-S(O)R’)スルホキシド基、(-SONR’)スルホンアミド基、(-NO)ニトロ基、(-COOR’)エステル基、(-COR’)ケトン基、-NC(O)R’基、アンモニウム基、(-OMe)アルコキシ基であり、R’基は、C-Cアルキル、C-Cペルフルオロアルキル、C-C24アリール、C-C24アラルキル、C-C24ペルフルオロアリールであり、
、R、R及びRは、それぞれ水素原子又はC-C25アルキル、C-C20アリール基であり、これらは、少なくとも1つのC-C12アルキル、C-C12ペルフルオロアルキル、C-C12アルコキシ、C-C24アリールオキシ、C-C20ヘテロアリールオキシ、又はハロゲン原子によって任意に置換されており、RとR及び/又はRとRは、相互結合して環式系を形成してもよく、
11及びR15は、それぞれメチル又はエチルであり、
12、R13、R14は、それぞれ水素原子、C-C25アルキル基である。
【0026】
好ましくは、前記相互接触するオレフィンは、少なくとも1つのニトリル部分を含む。
【0027】
好ましくは、前記相互接触するオレフィンの1つは、アクリロニトリルである。
【0028】
好ましくは、前記交差メタセシス(CM)反応には、少なくとも1つのニトリル部分を含有するオレフィンが使用される。
【0029】
好ましくは、アクリロニトリルは、第2のオレフィンの1~6当量の量で使用される。
【0030】
好ましくは、アクリロニトリルは、第2のオレフィンの1.05~2当量の量で使用される。
【0031】
好ましくは、前記反応は、トルエン、ベンゼン、メシチレン、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸メチル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等の有機溶媒中又は無溶媒で行われる。
【0032】
好ましくは、前記反応は、20~150℃の温度で行われる。
【0033】
好ましくは、前記反応は、40~120℃の温度で行われる。
【0034】
好ましくは、前記反応は、40~90℃の温度で行われる。
【0035】
好ましくは、前記反応は、5分から24時間かけて行われる。
【0036】
好ましくは、化合物2は、0.1モル%未満の量で使用される。
【0037】
好ましくは、化合物2は、前記反応混合物に数回に分けて及び/又はポンプを用いて連続的に添加される。
【0038】
好ましくは、化合物2は、前記反応混合物に固体として及び/又は有機溶媒中の溶液として添加される。
【0039】
好ましくは、前記反応混合物にアクリロニトリルが数回に分けて及び/又はポンプを用いて連続的に添加される。
【0040】
好ましくは、不活性ガス又は真空を使用して、前記反応混合物から、前記反応のガス状副生成物(エチレン、プロピレン、ブチレン)が積極的に除去される。
【0041】
添付の図面を参照して、好ましい実施形態によって、本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に基づいて使用されるオレフィンメタセシス触媒前駆体及び/又は触媒の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
<<用語>>
本明細書で使用する用語は、以下の意味を有する。本明細書において定義されていない用語は、本開示の内容及び特許出願の説明の文脈の最良の知識に照らして当業者によって与えられ理解される意味を有する。本明細書において、以下の周知の化学用語は、特段の指定がない限り、以下に定義されるような意味を有する。
【0044】
用語「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」は、F、Cl、Br、Iから選択される元素を指す。
【0045】
用語「カルベン」は、2の価数を有し、2つの不対(三重項状態)又は対(一重項状態)原子価電子を有する中性の炭素原子を含む粒子を指す。用語「カルベン」は、また、炭素原子がホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、窒素、リン、硫黄、セレン、テルル等の他の化学元素で置換されているカルベン類似体も含む。
【0046】
用語「アルキル」は、示された数の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素置換基を指す。アルキル置換基の例には、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、-n-ヘキシル、-n-ヘプチル、-n-オクチル、n-ノニル、及び-n-デシルが含まれる。代表的な分岐-(C-C10)アルキルとしては、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、-ネオペンチル、-1-メチルブチル、-2-メチルブチル、-3-メチルブチル、-1,1-ジメチルプロピル、-1,2-ジメチルプロピル、-1-メチルペンチル、-2-メチルペンチル、-3-メチルペンチル、-4-メチルペンチル、-1-エチルブチル、-2-エチルブチル、-3-エチルブチル、-1,1-ジメチルブチル、-1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、-2,2-ジメチルブチル、-2,3-ジメチルブチル、-3,3-ジメチルブチル、-1-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、-3-メチルヘキシル、-4-メチルヘキシル、-5-メチルヘキシル、-1,2-ジメチルペンチル、-1,3-ジメチルペンチル、-1,2-ジメチルヘキシル、-1,3-ジメチルヘキシル、-3,3-ジメチルヘキシル、1,2-ジメチルヘプチル、-1,3-ジメチルヘプチル、-3,3-ジメチルヘプチル等が含まれる。
【0047】
用語「アルコキシ」は、酸素原子によって結合された、上で定義したアルキル置換基を指す。
【0048】
用語「ペルフルオロアルキル」は、全ての水素原子が同じ又は異なるハロゲン原子で置換された、上で定義したアルキル基を指す。
【0049】
用語「シクロアルキル」は、示された数の炭素原子を有する飽和単環式又は多環式炭化水素置換基を指す。シクロアルキル置換基の例には、-シクロプロピル、-シクロブチル、-シクロペンチル、-シクロヘキシル、-シクロヘプチル、-シクロオクチル、-シクロノニル、-シクロデシル等が含まれる。
【0050】
用語「アルケニル」は、示された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの二重炭素-炭素結合を含む飽和の直鎖状又は分枝状の非環式炭化水素置換基を指す。アルケニル置換基の例には、-ビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニル、-1-ヘキセニル、-2-ヘキセニル、-3-ヘキセニル、-1-ヘプテニル、-2-ヘプテニル、-3-ヘプテニル、-1-オクテニル、-2-オクテニル、-3-オクテニル、-1-ノネニル、-2-ノネニル、-3-ノネニル、-1-デセニル、-2-デセニル、-3-デセニル等が含まれる。
【0051】
用語「シクロアルケニル」は、示された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの二重炭素-炭素結合を含む飽和の単環式又は多環式炭化水素置換基を指す。シクロアルケニル置換基の例には、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル、シクロオクタテトラエニル、シクロノネニル、シクロペンタジエニル、シクロデセニル、シクロデカジエニル等が含まれる。
【0052】
用語「アルキニル」は、示された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの三重炭素-炭素結合を含む飽和の直鎖状又は分岐状の非環式炭化水素置換基を指す。アルキニル置換基の例には、アセチレニル、プロピニル、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニル、-3-メチル-1-ブチニル、4-ペンチニル、-1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、-5-ヘキシニル等が含まれる。
【0053】
用語「シクロアルキニル」は、示された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの三重炭素-炭素結合を含む飽和の単環式又は多環式炭化水素置換基を指す。シクロアルキニル置換基の例には、シクロヘキセニル、-シクロヘプチニル、-シクロオクチニル等が含まれる。
【0054】
用語「アリール」は、示された数の炭素原子を有する芳香族単環式又は多環式炭化水素置換基を指す。アリール置換基の例には、フェニル、-トリル、-キシリル、-ナフチル、-2,4,6-トリメチルフェニル、-2-フルオロフェニル、-4-フルオロフェニル、-2,4,6-トリフルオロフェニル、-2,6-ジフルオロフェニル、-4-ニトロフェニル等が含まれる。
【0055】
用語「アラルキル」は、上で定義した少なくとも1つのアリールで置換された上で定義したアルキル置換基を指す。アラルキル置換基の例には、ベンジル、-ジフェニルメチル、-トリフェニルメチル等が含まれる。
【0056】
用語「ヘテロアリール」は、示された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素原子がO、N及びS原子から選択されるヘテロ原子によって置換されている芳香族単環式又は多環式炭化水素置換基を指す。ヘテロアリール置換基の例には、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、トリアジニル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チエニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、アザインドリル、キノリル、イソキノリル、カルバゾリル等が含まれる。
【0057】
用語「複素環」は、示された数の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素原子がO、N及びS原子から選択されるヘテロ原子によって置換されている飽和又は部分的に不飽和の、単環式又は多環式炭化水素置換基を指す。複素環置換基の例には、フリル、チオフェニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、トリアジニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ヒダントイニル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、クロモニル、クマリニル、インドリル、インドリジニル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、β-カルボリニル等が含まれる。
【0058】
用語「中性配位子」は、金属中心(ルテニウム原子)と配位できる非荷電置換基を指す。このような配位子の例としては、アミン、ホスフィン及びこれらの酸化物、アルキル及びアリールホスファイト及びホスフェート、アルシン及びこれらの酸化物、エーテル、アルキル及びアリールスルフィド、配位された炭化水素、アルキル及びアリールハライド等が含まれうる。
【0059】
用語「アニオン性配位子」は、金属中心の電荷を部分的に又は完全に補償できる電荷で金属中心(ルテニウム原子)と配位できる置換基を指す。このような配位子の例には、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、シアン化物、シアネート及びチオシアネートアニオン、カルボン酸アニオン、アルコールアニオン、フェノールアニオン、チオール及びチオフェノールアニオン、非局在化電荷炭化水素アニオン(例えば、シクロペンタジエン)、(有機)硫酸及び(有機)リン酸アニオン及びこれらのエステル(例えば、アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸アニオン、アルキルリン酸及びアリールリン酸アニオン、硫酸アルキル及びアリールエステルアニオン、リン酸アルキル及びアリールエステルアニオン、アルキルリン酸及びアリールリン酸アルキル及びアリールエステルアニオン)等が含まれうる。オプションとして、アニオン性配位子は、相互結合したL、L及びL基、例えば、カテコールアニオン、アセチルアセトンアニオン、サリチルアルデヒドアニオン等を有していてもよい。アニオン性配位子(X、X)及び中性配位子(L、L、L)は、相互結合して、二座配位子(X-X)、三座配位子(X-X-L)、四座配位子(X-X-L-L)、二座配位子(X-L)、三座配位子(X-L-L)、四座配位子(X-L-L-L)、二座配位子(L-L)、三座配位子(L-L-L)等の多座配位子を形成してもよい。このような配位子の例には、カテコールアニオン、アセチルアセトンアニオン及びサリチルアルデヒドアニオンが含まれる。
【0060】
用語「ヘテロ原子」は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子等を含む群から選択される原子を指す。
【0061】
用語「塩素化溶媒」は、その構造が、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素の少なくとも1つ、好ましくは、2つ以上の原子を含む溶媒を指す。このような溶媒の例には、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン(四塩化炭素)、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ペルフルオロベンゼン、ペルフルオロトルエン、フレオン等が含まれる。
【0062】
用語「有機非極性溶媒」は、双極子モーメントが存在しないか又は非常に低いことを特徴とする溶媒を指す。このような溶媒の例には、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が含まれる。
【0063】
用語「有機極性溶媒」は、双極子モーメントが実質的にゼロより大きいことを特徴とする溶媒を指す。このような溶媒の例には、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)及びその誘導体、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、アルコール(MeOH、EtOH又はi-PrOH)等が含まれる。
【0064】
用語「GC」は、ガスクロマトグラフィー(gas chromatography)を指す。
【0065】
用語「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography)を指し、「HPLC」溶媒と呼ばれる溶媒は、HPLC分析に十分な純度を有する溶媒を指す。
【0066】
用語「NMR」は、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance)を指す。
【0067】
用語「NHC」は、N-複素環カルベン(N-heterocyclic carbene)を指す。
【0068】
用語「CAAC」は、環状アルキルアミノカルベン(cyclic alkyl amino carbene)配位子を指す。
【0069】
用語「DEDAM」は、ジアリルマロン酸ジエチル(diethyl diallylmalonate)を指す。
【0070】
用語「触媒前駆体」という用語は、ルテニウム錯体に関して、16電子化合物を指し、これは、1つの配位子の解離又は分子の再編成のステップの後に、それ自体が、触媒サイクルにおいて活性である14電子オレフィンメタセシス触媒に変換される。
【0071】
<<発明の実施形態>>
以下の実施例は、本発明を説明する目的及びその個々の側面を明確にする目的のためのみに提供され、これら制限する意図はなく、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の全範囲と同等であるとは解釈されない。以下の実施例では、特段の指示がない限り、当分野で使用されている標準的な材料及び方法を使用し、特定の試薬及び方法については、製造業者の推奨に従った。
【0072】
10-ウンデセン酸エチル(EU)、1-デセン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、オレイン酸メチル(MO)及びステアリン酸メチルは、市販の化合物である。EU及びMOを減圧下で蒸留し、活性アルミナ上に貯蔵した。1-デセン、アクリロニトリル及びアクリル酸メチルを4Åモレキュラーシーブを用いて乾燥し、アルゴン雰囲気下で脱酸素した。全ての反応は、アルゴン雰囲気下で行った。トルエンをクエン酸、水で洗浄し、4Åモレキュラーシーブを使用して乾燥し、アルゴン雰囲気下で脱酸素した。
【0073】
ジーエルサイエンス社(GL Sciences)のInertCap(登録商標)5MS/NPキャピラリーカラムを備えたパーキンエルマー社(PerkinElmer)のClarus680GCを使用して、ガスクロマトグラフィーによって反応混合物の組成を試験した。
【0074】
反応混合物の個々の成分は、保持時間を、市販の標準品又はNMRにより構造が確認された反応混合物から単離された標準品と比較することによって同定した。
【0075】
混合物の個々の成分についてのFID検出器応答係数を計算に使用した(実施例1の判定方法)。クロマトグラムの各成分のピーク下面積は、算出された応答係数を使用して、混合物中のパーセンテージに変換した。
【0076】
<<実施例1>>
<アクリル酸メチルと10-ウンデセン酸エチル(S1)とのCM反応>
70℃のアルゴン雰囲気下で、S1(0.637g、3mmol、1当量)、アクリル酸メチル(1.08ml、12mmol、4当量)及びステアリン酸メチル(内部標準)のトルエン溶液(11ml)に、20分間隔で4回に分けて、触媒前駆体(0.365mg、0.02mol%、200ppm)のトルエン溶液(50μl)を添加した。混合物を2時間撹拌した。サンプルを採取し、3滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化12】
【0077】
【表1a】
【0078】
反応混合物の個々の成分に対するFID検出器の応答係数を判定するために、S1基質、所望の生成物P1、及び副生成物D1の混合物を含有する2つのアリコートを調製した。得られた混合物をトルエンで10mlの体積に希釈し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。各成分についてのピーク下面積PP(5回の注入の平均)を、その純度を考慮してアリコート中の成分の重量で除算し、Rf成分の絶対応答係数を求めた。S1基質係数をR=1と仮定して、他の成分に対する相対Rf係数を判定した。計算のために、2つのアリコートについての平均Rfを判定した。
【0079】
【表1b】
【0080】
更なる計算において、算出された応答係数を用いて、クロマトグラム中の各成分のピーク下面積を混合物中の百分率に変換した。
【0081】
反応の選択率(S)は、次式から求めた。
【数1】
ここで、nは、モル数である。
【0082】
反応の転化率(C)は、次式から求めた。
【数2】
ここで、
PPS1 及びPPS1は、反応の開始時及び終了時における基質のピーク下面積である。
PPIS 及びPPISは、反応開始時及び終了時の内部標準(ステアリン酸メチル)のピーク下面積である。
【0083】
<<実施例2>>
<昇温下でのアクリル酸メチルとS1とのCM反応>
実施例1に記載した方法に従って100℃で反応を実施した。
【化13】
【0084】
【表2】
【0085】
<<実施例3>>
<アクリロニトリルとS1とのCM反応>
70℃のアルゴン雰囲気下で、S1(0.335g、1,58mmol、1当量)、アクリロニトリル(0.207ml、3.16mmol、2モル当量)及びステアリン酸メチル(内部標準)のトルエン溶液(15.5ml)に、5分間隔で4回に分けて、触媒前駆体(0.03mol%、300ppm)のトルエン溶液(4×50μl)を添加した。混合物を2時間撹拌した。サンプルを採取し、3滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化14】
【0086】
【表3】
【0087】
<<実施例4>>
<昇温下でのアクリロニトリルとS1とのCM反応>
実施例3に記載した方法に従って100℃で反応を実施した。
【化15】
【0088】
【表4】
【0089】
<<実施例5>>
<アクリロニトリルとS1とのCM反応-S1濃度の影響>
70℃のアルゴン雰囲気下で、S1(0.335g、1.58mmol、1モル当量)、アクリロニトリル(0.207ml、3,16mmol、2モル当量)及びステアリン酸メチル(内部標準)の適量のトルエン溶液に、触媒前駆体(0.03mol%、300ppm)のトルエン溶液(50μl)を一度に添加した。混合物を2時間撹拌した。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化16】
【0090】
【表5】
【0091】
<<実施例6>>
<アクリロニトリルとS1とのCM反応-アクリロニトリル体積の影響>
70℃のアルゴン雰囲気下で、S1(0.335g、1.58mmol、1モル当量)、アクリロニトリル(1、1又は2又は4モル当量)及びステアリン酸メチル(内部標準)の溶液(C S1 0.25 M)に、触媒前駆体(0.0075モル%、75ppm)のトルエン溶液(50μl)を一度に添加した。混合物を2時間撹拌した。サンプルを採取し、3滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化17】
【0092】
【表6】
【0093】
<<実施例7>>
<アクリロニトリルとS1とのCM反応-本発明の錯体と標準nG錯体とのS1濃度の効果の比較>
70℃のアルゴン雰囲気下で、S1(1.606g、7.56mmol、1モル当量)、アクリロニトリル(0.991ml、15.13mmol、2モル当量)及びステアリン酸メチル(内部標準)のトルエン溶液(C S1 0.1又は0.25M)に、触媒前駆体のトルエン溶液を添加した。0.015モル%のルテニウム錯体で触媒された反応では、触媒前駆体溶液を5分間隔で4回に分けて添加した。0.0075モル%のルテニウム錯体で触媒された反応では、シリンジを用いて触媒前駆体溶液を1時間かけて滴加した。0.0025モル%のルテニウム錯体で触媒された反応では、シリンジポンプを用いて触媒前駆体溶液を1時間かけて滴下した。全反応時間は、何れの場合も2時間とした。サンプルを採取し、3滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化18】
【0094】
【表7】
【0095】
<<実施例8>>
<アクリロニトリルとS1とのCM反応-触媒の種類と量及びアクリロニトリルの添加方法の影響>
70℃のアルゴン雰囲気下で、S1(1.606g、7.56mmol、1モル当量)、アクリロニトリル(0.495ml、1モル当量)及びステアリン酸メチル(内部標準)のトルエン溶液(23.8ml)に、触媒前駆体(0.0025モル%、25ppm)のトルエン溶液(3ml)及びアクリロニトリル(1モル当量)のトルエン溶液(3ml溶液容量)を、シリンジポンプを用いて1時間かけて滴下した。反応混合物にアルゴンを穏やかに吹き込み、放出されたエチレンを積極的に除去した。全反応時間は、何れの場合も2時間とした。サンプルを採取し、3滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化19】
【0096】
【表8】
【0097】
<<実施例9>>
<アクリロニトリルとS1とのCM反応-温度の影響>
アルゴン雰囲気下で、S1(1.606g、7.56mmol、1モル当量)、アクリロニトリル(0.495ml、7.56mmol、1モル当量)及びステアリン酸メチル(内部標準)のトルエン溶液(C S1 0.25M)に、触媒前駆体及びアクリロニトリル(1モル当量)のトルエン溶液(1ml)を1時間かけて滴下した。0.002モル%の触媒前駆体を使用した反応混合物にアルゴンを穏やかに吹き込み、エチレンを積極的に除去した。全反応時間は、何れの場合も2時間とした。サンプルを採取し、3滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化20】
【0098】
【表9】
【0099】
<<実施例10>>
<アクリル酸メチルと10-ウンデセン酸エチル(S1)とのCM反応>
S2(1.506g、5.08mmol、1モル当量)及びアクリロニトリル(0.666ml、10.16mmol、2モル当量)のトルエン溶液(12ml、C0S1、0.4M)に触媒前駆体(0.0125mol、125ppm)のトルエン溶液(6ml)及びアクリロニトリル(2.5モル当量)のトルエン溶液(6ml)を2.5時間かけて滴下した。反応混合物にアルゴンを穏やかに吹き込み、放出されたエチレンを積極的に除去した。反応開始から3.5時間後、サンプルを採取し、これに3滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化21】
【0100】
【表10】
【0101】
<<実施例11>>
<1-デセン(P6)とアクリロニトリルとのCM反応>
70℃の1-デセン(2.109g、15.04mmol)、アクリロニトリル(0.985ml、15.04mmol、1モル当量)及びステアリン酸メチル(内部標準)のトルエン溶液(29ml、C 1-デセン0.5M)に、シリンジを用いて、2bd錯体(0.0075モル%、75ppm)のトルエン溶液(1ml)及び(第2のシリンジを用いて)アクリロニトリル(1モル当量)を1時間かけて添加した。混合物を同じ温度で更に1時間撹拌した。サンプルを採取し、3滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化22】
【0102】
【表11】
【0103】
<<実施例12>>
<ジアリルマロン酸ジエチル(S3)のRCM反応>
29℃のS3(0.240g、1.0mmol)のトルエン溶液(10ml)に、触媒前駆体(0.1モル%)のトルエン溶液(50μl)を一度に添加した。必要な間隔で、反応混合物の試料を採取し、数滴のエチルビニルエーテルを添加し、触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化23】
【0104】
【表12】
【0105】
<<実施例13>>
<基質S1のD1へのホモメタセシス反応>
S1(3.0g、14.13mmol)とステアリン酸メチル(内部標準)との混合物をアルゴン雰囲気下の丸底フラスコ中に静置した。混合物を60℃に加熱した後、触媒前駆体のトルエン溶液を15分間隔で添加した(2+2+1+1+1+1ppm、合計8ppm)。混合物を2時間撹拌した。サンプルを採取し、数滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化24】
【0106】
【表13】
【0107】
<<実施例14>>
<錯体2bcを調製するための反応>
【化25】
アルゴン雰囲気下で、CAAC c前駆体(2.10g、5.34mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(48ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、5.34ml、5.34mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(2.37g、2.67mmol、1モル当量)を添加した。2分後、混合物を60℃に冷却した。ベンジリデン配位子b(0.709g、3.20mmol、1.2モル当量)及びCuCl(0.925g、9.35mmol、3.5モル当量)を添加した。混合物を60℃で5分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣をイソプロパノールで洗浄し、高減圧下で乾燥し、緑色の結晶性固体、触媒前駆体2bc(0.455g、25%)を得た。A:B異性体=2.2:1の混合物
【0108】
非常に複雑なH NMRスペクトルのために、特徴的なベンジリデンプロトンの化学シフトのみを示す。A異性体:一重項17.73ppm;B異性体:一重項16.16ppm(C)。
【0109】
HRMS:C3238NaClRu[M+Na]のESIの計算値:693.1201;実測値:693.1179
元素分析:C3238ClRuの計算値:
C57.31;H5.71;N4.18;Cl10.57;実測値:C57.43;H5.72;N4.14;Cl10.42:
【0110】
<<実施例15>>
<錯体2beを調製するための反応>
【化26】
アルゴン雰囲気下で、CAAC e前駆体(1.66g、5.0mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(20ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、5.0ml、5.0mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(2.22g、2.5mmol、1モル当量)を添加した。2分後、ベンジリデン配位子b(0.664g、3.0mmol、1.2モル当量)及びCuCl(0.866g、8.75mmol、3.5モル当量)を添加した。混合物を80℃で30分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣を塩化メチレンに溶解し、過剰のイソプロパノールを添加した。塩化メチレンを減圧下で緩やかに除去し、生じた結晶を濾別し、最小量のイソプロパノール中で洗浄した。これを高減圧下で乾燥して緑色の結晶性固体、触媒前駆体2be(0.215g、14%)を得た。
【0111】
H NMR(CDCl,500MHz):σ=16.12(s,1H),8.48(dd,J=9.1;2.7Hz,1H),7.75(d,J=2.8Hz,1H),7.20(s,2H),7.08(d,J=9.1Hz,1H),5.25(septet,J=6.1Hz,1H),2.54(s,3H),2.21(s,2H),2.19(s,6H),2.05(s,6H),1.74(d,J=6.2Hz,6H),1.43(s,6H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=292.6,264.1,156.7,144.2,143.3,139.7,138.5,137.9,131.2,125.7,118.6,113.7,79.6,78.1,56.5,52.4,29.7,29.3,22.3,21.2,20.9
HRMS:C2736NaClRu [M+Na]のESIの計算値:631.1044;実測値:631.1028
元素分析:C2736ClRuの計算値:
C53.29;H5.96;N4.60;Cl11.65;実測値:C53.21;H5.93;N4.53;Cl11.61:
【0112】
<<実施例16>>
<錯体2bdを調製するための反応>
【化27】
アルゴン雰囲気下で、CAAC d前駆体(2.44g、6.0mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(24ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、6.0ml、6.0mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(2.66g、3.0mmol、1モル当量)を添加した。2分後、ベンジリデン配位子b(1.33g、6.0mmol、2.0モル当量)を添加した。混合物を105℃で30分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチル-シクロヘキサン5:95の混合物で洗浄し、次いで塩化メチレン中に溶解し、過剰のイソプロパノールを添加した。塩化メチレンを減圧下で緩やかに除去し、生じた結晶を濾別し、最小量のイソプロパノール中で洗浄した。これを高減圧下で乾燥して緑色の結晶性固体、触媒前駆体2bd(0.495g、24%)を得た。
【0113】
H NMR(C,500MHz):σ=[17.73(s),16.37(s),1H],8.27(br.s,1H),7.89(dd,J=9.1;2.7Hz,1H),7.78(br.s,1H),7.48(br.s,1H),7.36-7.16(m,6H),6.03(d,J=9.1Hz,1H),4.43-4.33(m,1H),2.95-1.80(m,8H),1.50-0.60(m,19H)
13C NMR(C,125MHz):σ=292.2,262.4,157.0,144.0,143.4,139.1,130.0,129.7,127.9,127.6,125.5,118.2,113.4,78.4,77.3,63.7,49.2,31.1,27.9,27.6,26.3,25.9,24.9,22.5,15.5,14.9
HRMS:C3340ClRu[M-Cl]のESIの計算値:649.1771;実測値:649.1746
元素分析:C3340ClRuの計算値:
C57.89;H5.89;N4.09;Cl10.36;実測値:C57.98;H5.99;N4.08;Cl10.44:
【0114】
<<実施例17>>
<錯体2bfを調製するための反応>
【化28】
アルゴン雰囲気下で、CAAC f前駆体(3,45g、10.0mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(40ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、10.0ml、10.0mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(4.43g、5.0mmol、1モル当量)を添加した。2分後、混合物を60℃に冷却した。ベンジリデン配位子b(1.33g、6.0mmol、1.2モル当量)及びCuCl(1.73g、17.5mmol、3.5モル当量)を添加した。混合物を60℃で5分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣をイソプロパノールで洗浄し、高減圧下で乾燥し、緑色の結晶性固体、触媒前駆体2bf(1.57g、50%)を得た。
【0115】
H NMR(CDCl,500MHz):σ=16.29(s,1H),8.46(dd,J=9.1;2.7Hz,1H),7.72(d,J=2.8Hz,1H),7.20(s,2H),7.08(d,J=8.7Hz,1H),5.26(septet,J=6.1Hz,1H),2.61(s,3H),-2.49(s,2H),2.21(s,6H),2.07(s,6H),1.77(d,J=6.2Hz,6H),1.33(s,6H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=290.4,263.8,165.6,157.1,143.7,143.4,138.8,129.9,127.7,125.7,118.3,113.7,79.4,78.2,56.5,52.3,29.9,28.9,25.3,22.4,14.9
HRMS:C2839Ru[M-2Cl+H]のESIの計算値:553.2006;実測値:553.2004
元素分析: C2838ClRuの計算値:
C54.02;H6.15;N4.50;Cl11.39;実測値:C54.18;H6.09;N4.42;Cl11.20
【0116】
<<実施例18>>
<錯体2adを調製するための反応>
【化29】
アルゴン雰囲気下で、CAAC d前駆体(0.407g、1.0mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素トルエン(4ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、1.0ml、1.0mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(0.443g、0.5mmol、1モル当量)を添加した。2分後、ベンジリデン配位子b(0.176g、1.0mmol、2.0モル当量)を添加した。混合物を105℃で30分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を塩化メチレンに溶解し、過剰のイソプロパノールを添加した。塩化メチレンを減圧下で緩やかに除去し、生じた結晶を濾別し、最小量のイソプロパノール中で洗浄した。これを高減圧下で乾燥させて緑色の結晶性固体、2ad触媒前駆体(0.151g、47%)を得た。A:B異性体=1:3の混合物
【0117】
H NMR(C,500MHz):σ=[17.89(s,0,25H,A異性体),16.52(s,0.75H,B異性体),1H],8.55-7.70(m,2H),7.60-7.18(m,6H),7.12-7.07(m,1H),6.98-6.84(m,1H),6.68-6.43(m,1H),6.38(d,J=8.3Hz,1H),4.60-4.45(m,1H),3.10-2.00(m,8H),2.00-1.14(m,9H),1.07(s,5H),0.99(s,3H),0.85(br.s,2H)
13C NMR(C,125MHz):σ=296.9,296.6,265.0,153.4,150.9,146.3,144.9,144.5,144.3,143.7,139.7,130.9,130.1,129.7,129.5,128.0,127.7,127.3,124.0,122.2,113.8,78.0,75.8,75.1,64.2,63.8,58.3,49.3,31.2,30.3,29.8,28.1,27.5,26.4,25.9,25.0,22.7,22.6,16.3,15.7,15.0
HRMS:C3341NClORu[M-Cl]のESIの計算値:604.1920;実測値:604.1917
元素分析:C3341NClORuの計算値:
C61.96;H6.46;N2.19;Cl11.08;実測値:C61.93;H6.59;N2.14;Cl11.23
【0118】
<<実施例19>>
<錯体2afを調製するための反応>
【化30】
アルゴン雰囲気下で、CAAC f前駆体(1.73g、5.0mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(20ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、5.0ml、5.0mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(2.22g、2.5mmol、1モル当量)を添加した。2分後、混合物を60℃に冷却した。ベンジリデン配位子a(0.529g、3.0mmol、1.2モル当量)及びCuCl(0.866g、8.75mmol、3.5モル当量)を添加した。混合物を60℃で5分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣をイソプロパノールで洗浄し、高減圧下で乾燥し、緑色の結晶性固体、触媒前駆体2af(0.584g、40%)を得た。
【0119】
H NMR(C,500MHz):σ=16.41(s,1H),7.33(dd,J=9.1;2.7Hz,1H),7.01(d,J=1.6Hz,1H),6.64(s,2H),7.08(d,J=9.1Hz,1H),4.67(septet,J=6.1Hz,1H),2.87(s,3H),2.45(s,2H),2.23(s,6H),1.77(s,6H),1.70(d,J=6.1Hz,6H),0.97(s,6H)
【0120】
<<実施例20>>
<錯体2bgを調整するための反応>
【化31】
アルゴン雰囲気下で、CAAC g前駆体(0.348g、0.8mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(3.2ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、0.8ml、0.8mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のニトロ-I錯体(0.258g、0.4mmol、1モル当量)を添加した。混合物を80℃で15分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣を塩化メチレンに溶解し、過剰のイソプロパノールを添加した。塩化メチレンを真空下で乾燥し、得られた結晶を最小量のイソプロパノールで洗浄した後、高減圧下で乾燥して緑色の結晶性固体、触媒前駆体2bg(0.037g、13%)を得た。
【0121】
H NMR(CDCl,500MHz):σ=16.49(s,1H),8.40(dd,J=9,1;2.7Hz,1H),8.24-8.20(m,2H),7.74(t,J=7.8Hz,1H),7.59-7.49(m5H),7.40-7.35(m,1H),7.00(d,J=9.1Hz,1H),5.05(septet,J=6.1Hz,1H),3.15(d,J=12.9Hz,1H),3.04(septet,J=6.6Hz,1H),2.93(septet,J=6.5Hz,1H),2.38(d,J=12.8Hz,1H),2.33(s,3H),1.57(d,J=6.1Hz,3H),1.53(s,3H),1.43-1.40(m,6H),1.36(d,J=6.6Hz,3H),1.27(d,J=6.6Hz,3H),0.80(d,J=6.5Hz,3H),0.48(d,J=6.4Hz,3H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=291.8,291.4,262.2,157.4,148.8,148.5,143.2(2C),142.9,137.0,130.5,129.8,129.6,128.0,126.8,126.6,125.9,118.6,113.9,78.7,77.9,63.6,48.6,33.0,29.4,29.0,28.8,28.1,27.5,26.5,24.7,24.6,22.7,22.6
HRMS:C3544NaClRu[M+Na]のESIの計算値:735.1670;実測値:735.1639
元素分析:C12ClRuの計算値:
C60.47;H6.68;N3.71;Cl9.39;実測値:C60.20;H6.52;N3.77;Cl9.48:
【0122】
<<実施例21>>
<錯体2bhを調製するための反応>
【化32】
アルゴン雰囲気下で、CAAC h前駆体(1.87g、5.0mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(20ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、5.0ml、5.0mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(2.22g、2.5mmol、1モル当量)を添加した。2分後、ベンジリデン配位子b(0.664g、3.0mmol、1.2モル当量)及びCuCl(0.866g、8.75mmol、3.5モル当量)を添加した。混合物を80℃で15分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣を塩化メチレンに溶解し、過剰のイソプロパノールを添加した。塩化メチレンを真空乾燥し、得られた結晶を最少量のイソプロパノールで洗浄し、高減圧下で乾燥させて緑色の結晶性固体、触媒前駆体2bh(0.490g、30%)を得た。
【0123】
H NMR(CDCl,500MHz):σ=16.31(s,1H),8.42(dd,J=9.1;2.7Hz,1H),7.73(d,J=2.7Hz,1H),7.52(s,2H),7.09(d,J=9.1Hz,1H),5.27(septet,J=6.2Hz,1H),2.96(s,3H),2.20(s,2H),2.09(s,6H),1.79(s,6H),1.28(d,J=6.7Hz,6H),0.66(s,6H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=288.0,287.7,264.8,157.5,148.7,143.3,142.7,(2C),136.7,130.4,126.5,125.7,118.3,113.8,79.1,78.3,56.7,51.9,30.2,29.5,29.0,27.8,25.7,24.6,22.4
HRMS:C3042ClRu[M-Cl]のESIの計算値:615.1927;実測値:615.1918
元素分析:C3042ClRuの計算値:
C55.38;H6.51;N4.31;Cl10.90;実測値:C55.15;H6.45;N4.15;Cl10.86:
【0124】
<<実施例22>>
<錯体2baを調製するための反応>
【化33】
アルゴン雰囲気下で、CAAC a前駆体(0.815g、2.0mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素トルエン(8ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、2.0ml、2.0mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(0.887g、1.0mmol、1モル当量)を添加した。2分後、ベンジリデン配位子b(0.266g、1.2mmol、1.2モル当量)及びCuCl(0.346g、3.50mmol、3.5モル当量)を添加した。混合物を80℃で15分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル-シクロヘキサン混合物(5:95)で洗浄した。これを塩化メチレンに溶解し、過剰のメタノールを添加した。塩化メチレンを真空乾燥し、得られた結晶を最少量のメタノールで洗浄した後、高減圧下で乾燥させて緑色の結晶性固体、触媒前駆体2ba(0.235g、34%)を得た。
異性体の混合物
【0125】
H NMR(C,500MHz):σ=[16.29(br.s),16.25(s),1H],8.35-8.15(m,2H),7.87(dd,J=9.1;2.8Hz,1H),7.77(dd,J=19.6;2.7Hz,1H),7.52(t,J=7.9Hz,1H),7.45(t,J=7.6Hz,1H),7.35-7.20(m,2H),7.08-6.88(m,2H),5.98(d,J=9.1Hz,1H),4.35(ddt,J=15.9;12.3;6.1Hz,1H),3.09(septet,J=6.9Hz,1H),2.88-2.67(m,1H),2.52-2.28(m,5H),2.22(s,2H),1.93-1.86(m,1H),1.48-1.33(m,3H),1.32-1.20(m,4H),1.19-0.97(m,10H)
13C NMR(C,125MHz):σ=292.6,291.6,262.9,157.0,149.5,149.3,144.0,143.6,143.3,142.3,138.9,138.8(2C),138.6,132.8,132.7,132.0,130.7,130.5(2C),130.1(2C),129.9,129.6(2C),129.3,129.0,128.9,128.0,127.9,126.9,126.4,125.7,125.5,118.6,118.4,113.5,78.4,78.3,77.4,77.3,64.2,64.0,63.5,49.9,49.1,31.8,31.4,29.3,28.8,28.6,28.4,27.5,27.4,27.3,26.2,25.9,24.5,23.1,22.5,22.3,21.9
LRMS:C3340ClRu[M-Cl]のESIの計算値:649.18;実測値:649.18
元素分析:0.5のイソプロパノール粒子との溶媒和物[M+0.5C0]CCl3.5Ruの計算値:
C57.98;H6.21;N3.92;Cl9.92;実測値:C58.08;H6.04;N3.89;Cl10.12:
【0126】
<<実施例23>>
<錯体2bbを調製するための反応>
【化34】
アルゴン雰囲気下で、CAAC b前駆体(1.73g、5.0mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(20ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、5.0ml、5.0mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(2.22g、2.5mmol、1モル当量)を添加した。2分後、混合物を60℃に冷却した。ベンジリデン配位子b(0.664g、3.0mmol、1.2モル当量)及びCuCl(0.866g、8.75mmol、3.5モル当量)を添加した。混合物を60℃で5分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣をイソプロパノールで洗浄し、高減圧下で乾燥させて緑色の結晶性固体、触媒前駆体2bb(0.663g、42%)を得た。
【0127】
H NMR(CDCl,500MHz):σ=16.19(s,1H),8.45(dd,J=9.1;2.7Hz,1H),7.70(d,J=2.7Hz,1H),7.65(t,J=7.7Hz,1H),7.55(dd,J=8.0;1.5Hz,1H),7.35(ddd,J=7.5;1.6;0.7Hz,1H),7.08(d,J=8.9Hz,1H),5.26(sept,J=6.2Hz,1H),2.97(sept,J=6.7Hz,1H),2.26-2.19(m,5H),2.13(s,3H),2.03(s,3H),1.77(dd,J=16.1;6.1Hz,6H),1.43(s,3H),1.38(s,3H),1.30(d,J=6.6Hz,3H),0.68(d,J=6.5Hz,3H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=290,2,264.6,157.2,149.1,143.5,143.4,138.5,138.4,130.4,130.0,126.5,125.8,118.4,113.7,79.4,78.2,56.6,52.3,29.9,29.7,29.6,29.1,28.9,26.3,24.3,22.4,22.3,21.8
HRMS:C2838ClNRu[M-Cl]のESIの計算値:587.1613;実測値:587.1636
元素分析:C2838ClRuの計算値:
C54.02;H6.15;N4.50;Cl11.39;実測値:C54.19;H6.18;N4.37;Cl11.21:
【0128】
<<実施例24>>
<錯体2abを調製するための反応>
【化35】
アルゴン雰囲気下で、CAAC b前駆体(1.73g、5.0mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(20ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、5.0ml、5.0mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(2.22g、2.5mmol、1モル当量)を添加した。2分後、混合物を60℃に冷却した。ベンジリデン配位子a(0.529g、3.0mmol、1.2モル当量)及びCuCl(0.866g、8.75mmol、3.5モル当量)を添加した。混合物を60℃で5分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、そして残渣をイソプロパノールで洗浄し、高減圧下で乾燥し、緑色の結晶性固体、2ab触媒前駆体(0.688g、47%)を得た。
【0129】
H NMR(CDCl,500MHz):σ=16.20(s,1H),7.60-7.53(m,2H),7.50-7.47(m,1H),7.29(ddd,J=7.4;1.7;0.8Hz,1H),6.97(d,J=8.3Hz,1H),6.92-6.85(m,2H),5.16(sept,J=6.1Hz,1H),2.98(sept,J=6.6Hz,1H),2.24(s,3H),2.23-2.16(m,2H),2.13(s,3H),2.02(s,3H),1.75(d,J=6.1Hz,3H),1.71(d,J=6.1Hz,3H),1.40(s,3H),1.36(s,3H),1.28(d,J=6.7Hz,3H),0.67(d,J=6.5Hz,3H)
【0130】
<<実施例25>>
<錯体2cbを調製するための反応>
【化36】
アルゴン雰囲気下で、CAAC b前駆体(1,56g、4.51mmol、2モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(18ml)を添加した。混合物を60℃に加熱し、LiHMDSのトルエン溶液(1M、4.51ml、4.51mmol、2モル当量)を添加した。1分後、固体のM10錯体(2.00g、2.26mmol、1モル当量)を添加した。2分後、ベンジリデン配位子c(0.558g、2.71mmol、1.2モル当量)及びCuCl(0.781g、7.89mmol、3.5モル当量)を添加した。混合物を60℃で5分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:トルエン)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣をイソプロパノールで洗浄し、高減圧下で乾燥させて緑色の結晶性固体、触媒前駆体2cb(0.741g、54%)を得た。
【0131】
H NMR(C,500MHz):σ=16.24(s,1H),7.21-7.17(m,2H),7.00-6.95(m,1H),6.83(dd,J=8.9;3.0Hz,1H),6.65(d,J=3.0Hz,1H),6.38(dd,J=9.6;1.0Hz,1H),4.67(septet,J=6.1Hz,1H),3.35(s,1H),3.14(septet,J=6.6Hz,1H),2.28(d,J=3.6Hz,6H),2.20(s,3H),1.83-1.71(m,8H),1.13(d,J=6.7Hz,3H),1.03(s,3H),0.94(s,3H),0.91(d,J=6.5Hz,3H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=292.3,268.5,155.5,149.7,147.7,144.8,139.2,139.1,130.1,129.4,128.9,127.9,126.3,115.5,113.8,109.0,78.1,75.2,56.8,55.9,52.1,29.9,29.8,29.7,29.0,28.8,26.9,25.9,24.5,22.5(2C),22.1
HRMS:C2941NOClRu[M-Cl]のESIの計算値:572.1869;実測値:572.1870
元素分析:C2941NClRuの計算値:
C57.32;H6.80;N2.31;Cl11.67;実測値:C57.10;H6.71;N2.36;Cl11.62
【0132】
<<実施例26>>
<錯体nG-diEtを調製するための反応>
【化37】
アルゴン雰囲気下で、NHC diEt前駆体(5.00g、11.84mmol、1.18モル当量)に乾燥脱酸素化トルエン(93ml)を添加した。混合物を80℃に加熱し、カリウムtert-アミレートのトルエン溶液(1.7M、5.0ml、5.0mmol、1.15モル当量)を添加した。10分後、固体のM10錯体(8.90g、10.03mmol、1モル当量)を添加した。10分後、混合物を50℃に冷却した。ベンジリデン配位子b(2.66g、12.04mmol、1.2モル当量)及びCuCl(2.48g、25.08mmol、2.5モル当量)を添加した。混合物を50℃で20分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル-シクロヘキサン1:9)によって単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣を塩化メチレンに溶解し、過剰のメタノールを添加した。塩化メチレンを減圧下で緩やかに除去し、生じた結晶を濾別し、最小量のメタノールで洗浄した。これを高減圧下で乾燥させて緑色の結晶性固体、触媒前駆体nG-diEt(2.20g、31%)を得た。
【0133】
H NMR(CDCl,500MHz):σ=16.32(s,1H),8.41(dd,J=9.1;2.7Hz,1H),7.76(d,J=2.8Hz,1H),7.58-7.50(m,2H),7.38-7.32(m,4H),6.92(d,J=9.1Hz,1H),4.96(septet,J=6.1Hz,1H),4.22(s,4H),3.05-2.90(br.s,4H),2.84(dq,J=15.1;7.5Hz,4H),1.28-1.22(m,18H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=287.0,209.0,161.0,157.0,145.3,144.9,143.7,141.6,137.5,132.5,132.4(2C),130.1,129.9,129.1,129.0,128.2,127.3,127.1,126.8,125.6,125.1,124.7,123.4,117.1,113.4,113.0,78.4,72.4,25.5,22.3,21.6,15.2
HRMS:C3341ClRu[M-Cl]のESIの計算値:664.1880;実測値:664.1876
元素分析:C3341ClRuの計算値:
C56.65;H5.91;N6.01;Cl10.13;実測値:C56.47;H5.76;N5.84;Cl10.04:
【0134】
<<実施例27>>
<錯体2adを調製するための反応>
【化38】
アルゴン雰囲気下で錯体3(2.00g、2.0mmol、1モル当量)に、乾燥脱酸素トルエン(20ml)及びベンジリデン配位子d(0.568g、3.0mmol、1.5モル当量)を添加した。混合物を80℃で20分間撹拌し、室温に冷却した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン->酢酸エチル/シクロヘキサン2:8)で単離した。緑色のフラクションを採取して、濃縮乾固した。残渣を塩化メチレンに溶解し、過剰のメタノールを添加した。塩化メチレンを減圧下で緩やかに除去した。得られた沈殿物を濾別し、冷メタノールで洗浄して緑色の結晶性固体、触媒前駆体2dd(0.750g、56%)を得た。
【0135】
H NMR(CDCl,500MHz):σ=16.97(s,1H),8.40(dd,J=8.3;1.4Hz,2H),7.67-7.57(m,4H),7.50-7.46(m,1H),7.46-7.38(m,3H),7.17-7.12(m,1H),6.71(dd,J=7.7;1.6Hz,1H),4.30(ddd,J=12.3;11.3;2.0Hz,1H),3.89(ddt,J=12.1;2.8;1.4Hz,1H),3.68(dd,J=11.2;2.1Hz,1H),3.52-3.45(m,1H),3.45-3.39(m,1H),3.23(dd,J=11.2;2.1Hz,1H),3.16(d,J=12.5Hz,1H),2.92(td,J=11.2;3.1Hz,1H),2.85-2.75(m,2H),2.72-2.58(m,2H),2.49(dq,J=14.9;7.4Hz,1H),2.33(d,J=12.5Hz,1H),2.30(s,3H),1.52(s,3H),1.40(s,3H),1.08(t,J=7.4Hz,3H),0.75(t,J=7.4Hz,3H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=307.0,263.6,153.4,149.2,146.1,143.9,143.6,139.1,130.4,130.1,129.5,129.4,128.1,127.9,127.6,127.1,124.9,123.0,79.0,67.3,67.2,65.0,56.1,55.7,46.8,31.6,29.4,27.4,26.2,24.5,15.3,14.5
HRMS:C3442ONaClRu[M+Na]のESIの計算値:689.1615;実測値:689.1595
元素分析:C3442OClRuの計算値:
C61.25;H6.35;N4.20;Cl10.64;実測値:C61.12;H6.37;N4.21;Cl10.80
【0136】
<<実施例28>>
<錯体2edの調製のための反応>
【化39】
アルゴン雰囲気下で、錯体3(1.00g、1.0mmol、1モル当量)の乾燥脱酸素ジオキサン懸濁液(10ml)に、ベンジリデン配位子e(0.488g、2.0mmol、2モル当量)を添加した。混合物を80℃で30分間撹拌し、室温に冷却した。これを濾別し、ジオキサンで洗浄した。緑色の結晶性固体、触媒前駆体2ed(0.585g、83%)を得た。
【0137】
H NMR(CDCl,500MHz):σ=17.40(s,1H),8.26-8.21(m,2H),7.58-7.52(m,2H),7.44-7.39(m,2H),7.36-7.33(m,1H),7.26(td,J=7.5;1.6Hz,1H),7.18(td,J=7.4;1.0Hz,1H),7.07(t,J=7.7Hz,1H),6.80(dd,J=7.6;1.6Hz,1H),6.33(d,J=7.7Hz,1H),3.26(dq,J=15.1;7.4Hz,1H),2.97(d,J=13.4Hz,1H),2.66(s,3H),2.57(dq,J=15.0;7.3Hz,1H),2.38(d,J=13.4Hz,1H),2.02(dq,J=14.7;7.3Hz,1H),1.62(dq,J=15.0;7.5Hz,1H),1.51(s,3H),1.42(t,J=7.4Hz,3H),1.26(s,3H),0.90(t,J=7.4Hz,3H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=282.9,282.8,267.5,158.3,145.5,142.7,141.3,136.9,134.4,131.7,131.2,129.5,129.3,128.8,127.1,126.7,126.1,102.2,80.3,62.4,50.2,30.8,30.2,29.0,25.8,25.6,15.2,14.1
HRMS:C3034NClRuI[M-Cl]のESIの計算値:672.0468;実測値:672.0455
元素分析:C3034NClIRuの計算値:
C50.93;H4.84;N1.98;Cl10.02;I17.94;実測値:C51.01;H4.98;N2.03;Cl10.01;I17.71
【0138】
<<実施例19>>
<ジアリルマロン酸ジエチル(S3)のRCM反応>
29℃又は40℃又は80℃のS3(0.240g、1.0mmol)のトルエン溶液(10ml)に、触媒前駆体(0.1モル%)のトルエン溶液(50μl)を一度に添加した。必要な間隔で、反応混合物の試料を採取し、数滴のエチルビニルエーテルを添加して触媒を失活させた。試料をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【化40】
【0139】
【表14】
【0140】
メタセシス生成物分析データ
P1:
主異性体,E:H NMR(CDCl,500MHz):σ=6.95(dt,J=15.7;7.0Hz,1H),5.83-5.77(dt,J=15.6;1.6Hz,1H)5.80(dt,J=15.6;1.6Hz,1H),4.10(q,J=7.2Hz,2H),3.71(s,3H),2.26(t,J=7.5Hz,2H),2.17(qd,J=7.1;1.6Hz,2H),1.64-1.54(m,2H),1.47-1.38(m,2H),1.33-1.25(m,8H),1.23(t,J=7.1Hz,3H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=173.8,167.1,149.7,120.8,60.1,51.3,34.3,32.1,29.1,29.1,29.0,29.0,27.9,24.9,14.1)
【0141】
P2:
主異性体,Z:H NMR(CDCl,500MHz):σ=6.46(s,1H),8.48(dd,J=10.9;7.7Hz,1H),5.29(d,J=2.8Hz,1H),7.20(s,2H),4.10(d,J=7.1Hz,1H),2.40(septet,J=1.4Hz,1H),2.26(s,3H),1.64(s,2H),1.49(s,6H),1.35(s,6H),1.23(d,J=7.1Hz,6H),1.43(s,6H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=173,8,156.0(E),155.1(Z),117.5(E),116.0(Z),99.6(E),99.4(Z),60.1(2C,E+Z),34.3(Z),34.2(E),33.2(E),31.8(Z),29.0(6C,E+Z),28.9(Z),28.8(E),28.1(Z),27.5(E),24.9(Z),24.8(E),14.2
【0142】
P3:
主異性体,Z:H NMR(CDCl,500MHz):σ=6.46(dt,J=10.9;7.7Hz,1H),5.29(dt,J=10.9;1.3Hz,1H),3.65(s,3H),2.40(dq,J=7.6;1.3Hz,2H),2.29(t,J=7.5Hz,2H),1.64-1.54(m,2H),1.50-1.39(m,2H),1.36-1.26(m,6H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=174.12(Z),174.08(E),156.0(E),155.0(Z),117.5(E),116.0(Z),99.6(E),99.5(Z),51.39(E),51.37(Z),33.95(Z),33.92(E),33.2(E)31.7(Z),28.87(Z),28.85(E),28.83(Z+E),28.72(Z),28.68(E),28.1(Z),27.5(E),24.77(Z),24.75(E)
【0143】
P4:
主異性体,Z:H NMR(CDCl,500MHz):σ=6.47(dt,J=10.9;7.7Hz,1H),5.29(dt,J=11.0;1.4Hz,1H),2.41(qd,J=7.5;1.4Hz,2H),1.50-1.38(m,2H),1.37-1.21(m,10H),0.87(t,J=7.0Hz,3H)
13C NMR(126MHz,CDCl):σ=156.1(E),155.2(Z),117.5(E),116.0(Z),99.6(E),99.4(Z),33.3(Z),31.8(E),31.7.29.2(2C,Z+E),29.1(2C,Z+E),29.0(Z),28.9(E),28.2(Z),27.6(E),22.6.14.0
【0144】
P5:
H NMR(CDCl,500MHz):σ=5.79(ddt,J=17.0;10.2;6.7Hz,1H),4.98(dq,J=17.1;1.7Hz,1H),4.92(ddd,J=11.4;2.3;1.2Hz,1H),3.66(s,3H),2.29(t,J=7.5Hz,2H),2.06-1.99(m,2H),1.66-1.56(m,2H),1.40-1.24(m,8H)
13C NMR(CDCl,125MHz):174.3.139.1.114.2.51.4.34.1.33.7.29,1.28,9,28,8,24.9
【0145】
D1:
H NMR(CDCl,600MHz):σ=5.41-5.30(m,2H),4.14-4.08(m,4H),2.30-2.24(m,4H),2.02-1.90(m,4H),1.64-1.56(m,4H),1.35-1.21(m,26H)
13C NMR(CDCl,150MHz):σ=173.8,130.3.60.1.34.4.32.5.29.6.29.3.29.2.29.1.29.0.24.9,14.2
【0146】
D2:
H NMR(CDCl,500MHz):σ=5.36(ddd,J=5.3;3.7;1.6Hz,2H,E),5.32(ddd,J=5.7;4.3;1.1Hz,2H,Z),3.65(s,6H),2.29(t,J=7.5Hz,4H),2.03-1.90(m,4H),1.68-1.56(m,4H),1.35-1.23(m,16H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=174.25(E),174.24(Z),130.3(E),129.8(Z),51.4.34.1.32.5.29.6(Z),29.5(E),29.12(Z),29.08(E),29.07(E),29.05(Z),28.9,27.1(Z),24.9(E)
【0147】
D3:
H NMR(CDCl,500MHz):σ=5.39(ddd,J=5.3;3.7;1.6Hz,2H,E),5.35(ddd,J=5.7;4.4;1.1Hz,2H,Z),2.06-1.91(m,4H),1.38-1.18(m,24H),0.88(t,J=6,9Hz,6H)
13C NMR(CDCl,125MHz):σ=130.4(E),129.9(Z),32.6,31.9,29.8(Z),29.7(E),29.53(Z),29.51(E),29.3.29.2(E),27.2(Z),22.7,14.1
【0148】
本出願に至るプロジェクトは、協定書No635405号に基づき、欧州連合の「ホライズン2020研究及び革新プログラム(Horizon 2020 research and innovation programme)」から資金を受けている。
図1