(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】付香組成物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20230116BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20230116BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230116BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20230116BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230116BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20230116BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
C11B9/00 Z
C11D3/50
A61K8/34
A61K47/10
A61K8/39
A61Q13/00 100
A61L9/01 U
(21)【出願番号】P 2019561930
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2018061836
(87)【国際公開番号】W WO2018206559
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-22
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ボスブル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング フィーバー
(72)【発明者】
【氏名】オード ドジェロ-ジュオ
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-143234(JP,A)
【文献】特開昭60-004600(JP,A)
【文献】特開2010-159370(JP,A)
【文献】特表平09-505565(JP,A)
【文献】特開2013-176564(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02307627(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00- 9/02
C11D 1/00-19/00
A61L 9/00- 9/22
A23L 5/00-29/10
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下、
- トリシクロデカンジメタノールアルコールを含む増粘剤、
- 少なくとも1つの付香成分を含む香油、
- ヘキシレングリコールを含む少なくとも1つの香料キャリヤー、
- 任意に、香料補助剤
を含む付香組成物であって、付香組成物中のトリシクロデカンジメタノールアルコールとヘキシレングリコールの質量比が、0.1~15である、前記付香組成物。
【請求項2】
前記付香組成物の全質量に対して、少なくとも5質量%のトリシクロデカンジメタノールアルコールを含む、請求項1に記載の付香組成物。
【請求項3】
前記付香組成物の全質量に対して、50質量%までの香油を含む、請求項1又は2に記載の付香組成物。
【請求項4】
前記付香組成物の全質量に対して、40質量%までのヘキシレングリコールを含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の付香組成物。
【請求項5】
前記香料キャリヤーが、さらに、ジプロピレングリコール、グリセロール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、D,L-1,2-イソプロピリデングリセロール、プロパンジオール、ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの補助溶剤を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の付香組成物。
【請求項6】
前記補助溶剤がジプロピレングリコールである、請求項5に記載の付香組成物。
【請求項7】
前記補助溶剤を、前記組成物の全質量に対して5~30質量%の量で使用する、請求項5又は6に記載の付香組成物。
【請求項8】
さらに水性相を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の付香組成物。
【請求項9】
前記水性相を、前記組成物の全質量に対して0.01質量%~1質量%の量で使用する、請求項8に記載の付香組成物。
【請求項10】
20℃で500~5000mPa.sの粘度を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の付香組成物。
【請求項11】
前記香料補助剤が、着色剤、防腐剤、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、UVフィルター、クエンチャー、シリコン油、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の付香組成物。
【請求項12】
以下、
(i)
70℃~120℃の温度でトリシクロデカンジメタノールアルコールを加熱するステップ、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物を冷却した後に香油を添加するステップ
からなるステップを含む付香組成物の製造方法であって、ヘキシレングリコールを、ステップ(i)又はステップ(ii)で添加し、付香組成物中のトリシクロデカンジメタノールアルコールとヘキシレングリコールの質量比が、0.1~15である、前記方法。
【請求項13】
トリシクロデカンジメタノールアルコールを、90℃~120℃の温度で加熱する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項において定義される付香組成物、又は請求項12又は13において定義された方法により得られる付香組成物を含む消費者製品。
【請求項15】
トリシクロデカンジメタノールアルコール及び香油を含む付香組成物中での、該組成物の結晶化を妨げるためのヘキシレングリコールの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付香組成物の分野に関する。より詳述すれば、本発明は、香油、トリシクロデカンジメタノールアルコールを含む増粘剤(viscosifying aget)、及びヘキシレングリコールを含む香料キャリヤーを含む安定な付香組成物を記載している。
【0002】
前記組成物の結晶化を妨げるためにトリシクロデカンジメタノールアルコールを含む付香組成物中でヘキシレングリコールを使用することが、本発明の目的でもある。
【0003】
背景技術
トリシクロデカンジメタノールアルコール(TCDアルコールDMとしても公知である)は、粘性のある着香組成物のために使用される非常に粘性のある添加剤である。
【0004】
TCDアルコールDMは、室温での貯蔵に対して結晶化するか又はゲル化さえする傾向があることが知られている。
【0005】
したがって、香油を含む消費者製品中で導入される場合に、トリシクロデカンジメタノールアルコールを加熱して透明でより流動的にする必要がある。
【0006】
しかしながら、貯蔵に対して、再結晶化は、最終の消費者製品において生じ、貯蔵状態に対して最終製品の貯蔵寿命の予測を困難にする。
【0007】
いくつかの非常に粘性のある油状物(「Mukhallat(ムハラット)」と呼ばれる)が市販されている。これらの組成物は、TCDアルコールDM、香料及びジプロピレングリコールを含む。しかしながら、それらは経時的に結晶化し、付香組成物の魅力を低下させ、いくつかの場合には使用さえできなくなることが観察されている。
【0008】
したがって、貯蔵に対して安定である粘性のある着香組成物を提供する必要がある。
【0009】
我々の知る限り、付香組成物中のTCDアルコールDMの結晶化の防止を扱う先行技術はない。
【0010】
本発明の組成物は、TCDアルコールDMに加えて特定の添加剤を含み、経時的に組成物の結晶化を防止するため、この問題を解決する。
【0011】
発明の要旨
本発明の第一の目的は、
- トリシクロデカンジメタノールアルコールを含む増粘剤、
- 少なくとも1つの付香成分を含む香油、
- ヘキシレングリコールを含む少なくとも1つの香料キャリヤー、
- 任意に、付香補助剤
を含む付香組成物であり、その際、付香組成物中のトリシクロデカンジメタノールアルコールとヘキシレングリコールの質量比は、0.1~15である。
【0012】
本発明の第二の目的は、前記で定義した組成物の製造方法である。
【0013】
第三の目的は、前記で定義した組成物を含む消費者製品である。
【0014】
最終的に、本発明の最後の目的は、トリシクロデカンジメタノールアルコールと少なくとも1つの付香成分を含む香油とを含む付香組成物中でヘキシレングリコールを使用して、経時的に該組成物の結晶化を妨げることである。
【0015】
発明の詳細な説明
特に明記されない限り、パーセンテージ(%)は、組成物の質量百分率を示すことを意味する。
【0016】
付香組成物
本発明は、トリシクロデカンジメタノールアルコールと香油とを含む組成物の結晶化を、該組成物中に添加剤としてヘキシレングリコールを使用することによって妨げる方法を定義している。
【0017】
したがって、本発明の第一の目的は、
- トリシクロデカンジメタノールアルコールを含む増粘剤、
- 少なくとも1つの付香成分を含む香油、
- ヘキシレングリコールを含む少なくとも1つの香料キャリヤー、
- 任意に、付香補助剤
を含む付香組成物であり、その際、付香組成物中のトリシクロデカンジメタノールアルコールとヘキシレングリコールの質量比は、0.1~15である。
【0018】
本発明の組成物は、単相組成物である。言い換えれば、二相組成物、例えばエマルションは、この定義に含まれない。
【0019】
本発明の組成物は、室温(RT)で透明である。
【0020】
「室温」に関しては、20~25℃の温度であることを理解すべきである。
【0021】
透明という用語は、着色剤又は蛍光剤を含まない溶液が、脱塩水に対する基準として1cmの光路長で100%の可視光(500~800nm)の透過率の値を有することを意味する。
【0022】
しかしながら、本発明による組成物は、透明でありながら着色剤を含むことができることを理解すべきである。
【0023】
典型的に、本発明の組成物は、10NTU未満、好ましくは5NTU未満、より好ましくは0.01~5NTUの濁度を有する。
【0024】
前記組成物は、好ましくは20℃で500mPa.s超、より好ましくは20℃で500~5000mPa.s、より好ましくは20℃で2000~5000mPa.sの粘度を有する。
【0025】
粘度は、21秒-1の剪断速度でTA Instruments V5.4.0のレオメーターAR-2000モデルを使用することにより測定できる。
【0026】
香油
本発明に従って、香油は、少なくとも1つの付香成分を含む。
【0027】
「香油」(又は「香料」もしくは「フレグランス」)に関して、ここでは、約20℃で液体である成分又は組成物を意味する。前記実施形態のいずれか1つに従って、前記香油は、付香成分のみ又は付香組成物の形での付香成分の混合物であってよい。「付香成分」としては、ここでは、においを付与又は調整する主な目的のために使用される化合物を意味する。言い換えれば、付香成分であると考えられるべきかかる成分は、ポジティブ又は好ましい方法で組成物のにおいを少なくとも付与又は改質することができ、単に1つのにおいを有するだけでないと当業者によって認識される必要がある。本発明の目的のために、香油は、共に付香成分の送達を改善する、高める又は改質する物質を有する付香成分、例えば香料前駆体の組み合わせ物、及びにおいを改質又は付与する以上の追加の利点、例えば長続きすること、ブルーミング、悪臭中和、抗菌効果、微生物の安定性、昆虫防除を付与する組み合わせ物も含む。
【0028】
いずれにしても網羅的とはならないであろう香油中に存在する付香成分の性質及びタイプは、ここでより詳細な記載を保証するものではなく、当業者は、一般の知識に基づいて、及び意図された使用又は適用及び所望された感覚刺激性効果に従って、それらを選択することができる。一般的な用語で、これらの付香成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素又は硫黄の複素環化合物及び精油と多様な化学品種に属し、かつ該付香補助成分は、天然又は合成由来のものであってよい。これらの補助成分の多くは、いずれにしても、参考文献、例えばS. ArctanderによるPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA、又はその最新版において、又は同様の種類の他の著作において、並びに香料の分野における豊富な特許文献において挙げられている。前記成分は、制御された方法で種々のタイプの付香化合物を放出することが公知の化合物であってもよい。
【0029】
付香成分は、香料産業において現在使用している溶剤中で溶解されてよい。かかる溶剤の例は、グリコール/ジオール(例えばジプロピレングリコール)、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、ベンジルベンゾエート、イソプロピルミリステート、アバリンである。
【0030】
特定の実施形態に従って、付香組成物はエタノールを有さない。
【0031】
該付香成分は、調整された方法で種々のタイプの付香成分を放出するため、すなわち化学的反応による高分子量の前駆体の化学結合の開裂に公知の化合物と混合されてよいことも理解されるべきである。かかる化学的な放出分子は、一般に「プロフレグランス(profragrance)」又は「香料放出システム」として設定され、かつそれらは、一般に、におい物質がそれらのより重い前駆体の形ではなくそれ自体を使用する場合に生じうる嗅覚効果と比較して、特定のにおい物質の時間内での放出及び経時的なそれらの嗅覚への影響を延長するためにフレグランス中で使用される。
【0032】
一実施形態に従って、香油は、アルデヒド、アルコール、エステル、ケトン、エーテル及びそれらの混合物からなる群において選択される少なくとも1つの香料原料を含む。特定の実施形態に従って、香油は、第1表における成分において選択される少なくとも1つの香料原料を含む。
【0033】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
*出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
**出所:Givaudan SA、Vernier、Suisse
***出所:International Flavors & Fragrances、USA。
【0034】
一実施形態に従って、前記組成物は、組成物の全質量に対して50質量%までの香油を含む。
【0035】
前記組成物は、組成物の全質量に対して、好ましくは3質量%~50質量%、より好ましくは10質量%~30質量%、さらにより好ましくは15質量%~20質量%の香油を含む。
【0036】
特定の実施形態に従って、香油は、機能性食品、化粧品、昆虫防除剤及び殺生剤活性からなる群から選択される他の成分と混合される。
【0037】
特定の実施形態に従って、油相は香油からなる。
【0038】
増粘剤
本発明に従って、付香組成物は、トリシクロデカンジメタノールアルコールを含む増粘剤を含む。
【0039】
一実施形態に従って、増粘剤は、トリシクロデカンジメタノールアルコールからなる。
【0040】
一実施形態に従って、前記組成物は、組成物の全質量に対して、少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%、より好ましくは少なくとも50質量%のトリシクロデカンジメタノールアルコールを含む。
【0041】
前記組成物は、組成物の全質量に対して、好ましくは5質量%~70質量%、好ましくは20質量%~70質量%、さらにより好ましくは50質量%~60質量%のトリシクロデカンジメタノールアルコールを含む。
【0042】
トリシクロデカンジメタノールアルコール(TCDアルコールDM)は、OXEA,GmbHから市販されている。
【0043】
香料キャリヤー
本発明の付香組成物は、香油を可溶化するために及び付香組成物の粘度を調整するために香料キャリヤーを含む。
【0044】
ヘキシレングリコールが、付香組成物中で組み込まれる場合に、TCDアルコールDMの再結晶化を著しく阻止する及び/又は妨げることができたことが見出されている。
【0045】
したがって、本発明は、香料キャリヤーが、ヘキシレングリコール(2-メチルペンタン-2,4-ジオール)を含むことにより特徴付けられる。
【0046】
一実施形態に従って、前記組成物は、付香組成物の全質量に対して、40質量%までのヘキシレングリコールを含む。
【0047】
前記組成物は、組成物の全質量に対して、好ましくは4質量%~40質量%、より好ましくは10質量%~25質量%のヘキシレングリコールを含む。
【0048】
本発明に従って、トリシクロデカンジメタノールアルコールとヘキシレングリコールの質量比は、0.1~15、好ましくは0.5~10、より好ましくは0.5~5である。
【0049】
他の実施形態に従って、香料キャリヤーは、さらに、好ましくは、ジプロピレングリコール、グリセロール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、D,L-1,2-イソプロピリデングリセロールプロパンジオール、ブタンジオール及びそれらの混合物からなる群から選択される補助溶剤を含む。
【0050】
特定の実施形態に従って、補助溶剤はジプロピレングリコールである。
【0051】
一実施形態に従って、補助溶剤は、付香組成物の全質量に対して、0~30質量%、好ましくは5~30質量%の量で使用される。
【0052】
任意の水性相
特定の実施形態に従って、前記組成物は、組成物の全質量に対して、好ましくは0.01~1質量%の量で水性相を含む。
【0053】
任意の香料補助剤
本発明の組成物は、さらに香料補助剤を含んでよい。
【0054】
「香料補助剤」に関しては、ここで、追加の付加効果、例えば色、特定の耐光性、化学安定性等を付与することができる成分を意味する。付香ベースにおいて慣用的に使用される補助剤の性質及びタイプの詳細な説明は網羅的なものにはなりえないが、しかし該成分が当業者に周知であることを挙げるべきである。
【0055】
制限のない例として、着色剤、防腐剤、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、UVフィルター、クエンチャー、シリコン油、及びそれらの混合物を挙げられる。
【0056】
かかる任意の香料補助剤は、5%(w/w)以下、又はさらに2%(w/w)以下であり、ここでパーセンテージは、組成物の全質量に対する。
【0057】
特定の実施形態に従って、付香組成物は、
- 3%~50%、より好ましくは10%~30%、さらにより好ましくは15%~20%の香油、
- 5質量%~70質量%、好ましくは20質量%~70質量%、さらにより好ましくは50質量%~60質量%のトリシクロデカンジメタノールアルコール、
- 4質量%~40質量%、より好ましくは10質量%~25質量%のヘキシレングリコール、
- 0~30質量%、好ましくは5~30質量%の補助溶剤、及び
- 0~5質量%、好ましくは0~2質量%の香料補助剤
を含むか、好ましくはそれらからなる。
【0058】
付香組成物の製造方法
本発明の他の目的は、
(i)好ましくは70℃~120℃の温度でトリシクロデカンジメタノールアルコールを加熱するステップ、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物を冷却した後に香油を添加するステップ
からなるステップを含む付香組成物の製造方法であり、
その際ヘキシレングリコールを、ステップ(i)又はステップ(ii)で添加し、
付香組成物中のトリシクロデカンジメタノールアルコールとヘキシレングリコールの質量比は、0.1~15である。
【0059】
特定の実施形態に従って、トリシクロデカンジメタノールアルコールを高温で加熱した場合に結晶化の妨害が特に著しいことが見出されているため、トリシクロデカンジメタノールアルコールを、90℃~120℃、好ましくは100℃~120℃で加熱する。
【0060】
一実施形態に従って、ステップii)において、混合物を20~40℃の温度で冷却する。
【0061】
水及び/又は補助溶剤が組成物中に存在する場合に、それらを、加熱温度及びそれらの沸点に従ってステップ(i)で又はステップ(ii)で添加する。
【0062】
付香組成物について前記した全ての技術的特徴は、前記で定義した方法にも適用される。
【0063】
本発明の他の目的は、前記で定義した方法により得られる付香組成物である。
【0064】
本発明の他の目的は、前記で定義した組成物を含む消費者製品、好ましくはファインフレグランス製品又はエアフレッシュナー製品の形での消費者製品である。
【0065】
ファインフレグランス製品は、好ましくは、香料濃縮物、香水、抽出物、ムハラット(mukhallat)、バラ油(attar)の形である。
【0066】
本発明の他の目的は、トリシクロデカンジメタノールアルコール及び香油を含む付香組成物中でのヘキシレングリコールの使用により、トリシクロデカンジメタノールアルコールの結晶化を妨げることである。
【0067】
本発明の他の目的は、トリシクロデカンジメタノールアルコール及び香油を含む付香組成物中で、該組成物にヘキシレングリコールを添加することによって結晶化を妨げるための方法である。
【0068】
本発明を、実施例によりさらに説明する。請求される本発明は、これらの実施例により何ら制限されるものではないことを理解する。
【0069】
実施例
試料調製物:全ての以下の実施例において、トリシクロデカンジメタノールアルコール(TCDアルコールDM)、ヘキシレングリコール、及び任意に補助溶剤及び/又は水を、スパチュラを使用して一緒に混合する。そして、水浴を使用して、その混合物を、磁気撹拌下で密閉したバイアル中で70℃(又は90℃)まで加熱する。その試料を、1時間70℃(又は90℃)で撹拌させ、TCDアルコールDMの「目に見える」可溶化を完了させる。そしてその混合物を室温まで冷却させ、そしてフレグランスを添加し、スパチュラで混合する。
【0070】
安定性の性能:以下の全ての実施例において、結晶化に対する安定性を時間の関数として視覚的に評価した。結晶化の開始は、一般に試料の濁った側面をもたらし、試料の底部で小さな結晶の顕著な沈殿及び堆積を生じる。
【0071】
香油:次の香油を実施例において使用した(第1-a表~第1-d表を参照されたい)。
【0072】
【表2-1】
1) メチルジヒドロジャスモネート、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
2) ペンタデカノリド、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) ペンタデカノリド、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
4) (-)-(8R)-8,12-エポキシ-13,14,15,16-テトラノルラブダン、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
5) (1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
6) 3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、Firmenich SA、Geneva、Switzerland。
【0073】
【表2-2】
1) 1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、International Flavors & Fragrances、USA
2) (-)-(8R)-8,12-エポキシ-13,14,15,16-テトラノルラブダン、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) 3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
4) 1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4-インデノン、International Flavors & Fragrances、USA
5) ペンタデカノリド、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
6) ペンタデカノリド、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
7) 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、International Flavors & Fragrances。
【0074】
【表2-3】
【表2-4】
1) 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、International Flavors & Fragrances、USA
2) (+-)-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) ペンタデカノリド、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
4) (1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
5) 1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、International Flavors & Fragrances、USA
6) Givaudan SA
7) 5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、GIVAUDAN SA。
【0075】
【表2-5】
1) (-)-(8R)-8,12-エポキシ-13,14,15,16-テトラノルラブダン、Firmenich SA、Geneva、Switzerland
2) (+-)-2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセテート
3) 1-(3,5,5,6,8,8-ヘキサメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフタレニル)エタノン。
【0076】
実施例1
付香組成物の製造及び安定性の性能の評価
【表3】
1) TCDアルコールDM、出所:Oxea
2) 出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) 出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
4) 第1-a表を参照されたい。
【0077】
第2表において挙げた全ての組成物は、室温で試料を放置してそれらの変化を観察する前に、透明であると視覚的に評価された。
【0078】
DiPGを含む比較組成物Xは、室温で約14日後に沈殿し始めた(わずかに濁った状態)ように見えた。46日後に顕著な沈殿を観察した。
【0079】
対照的に、組成物A(DiPGをヘキシレングリコールに置き換えた場合)は、35日後;すなわち、比較組成物Xが沈殿したかなり後にのみに沈殿し始める(わずかに濁る状態)。58日後に顕著な沈殿が生じた。
【0080】
組成物Bにおいて、ヘキシレングリコールの一部を水に置き換えた。試料は、85日間(すなわち約3ヶ月)透明であった。
【0081】
上記の結果は、付香組成物中のヘキシレングリコールの存在が、貯蔵時の前記組成物中のTCDアルコールDMの再結晶化を著しく妨げることを強調している。
【0082】
【表4】
1) TCDアルコールDM、出所:Oxea
2) 出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) 出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
4) 出所:Acros Organics
5) 第1-a表を参照されたい。
【0083】
比較組成物Yにおいて、TCDアルコールDMを、補助溶剤としてDiPGも使用して、グリセロールで部分的に置き換えた。その場合、室温で約30日後に結晶化が生じる。比較として、DiPGの代わりにヘキシレングリコールを含む本発明による組成物は、室温で約52日後に非常にわずかな沈殿を示す。
【0084】
実施例2
異なるフレグランスを使用した本発明による付香組成物の製造
付香組成物を、異なるフレグランスを使用して製造した。
【0085】
【表5】
1) TCDアルコールDM、出所:Oxea
2) 出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) 第1-b表を参照されたい。
4) 第1-c表を参照されたい。
5) 第1-d表を参照されたい。
【0086】
本発明による組成物D~Fは、室温で少なくとも28日間安定であった。これらの結果は、本発明による付香組成物が、広いlogP範囲をカバーするフレグランスで製造できることを強調している。
【0087】
実施例3
付香組成物の製造及び安定性の性能の評価
【表6】
1) TCDアルコールDM、出所:Oxea
2) 出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) 出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
4) 第1-c表を参照されたい。
【0088】
比較組成物Zについて室温で5ヶ月保存した後に結晶化が生じる一方で、組成物G及びHは、室温で8ヶ月保存した後でさえも再結晶化を示さない。