(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】反応分離分析システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230116BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20230116BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230116BHJP
G01N 27/447 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/68
G01N21/64 F
G01N27/447
(21)【出願番号】P 2020077230
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】519367935
【氏名又は名称】ピコテクバイオ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520146525
【氏名又は名称】Zigen.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 佳則
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛嗣
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530243(JP,A)
【文献】特開2018-174861(JP,A)
【文献】国際公開第2018/218053(WO,A1)
【文献】特開2004-191247(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159084(WO,A1)
【文献】特開2014-021052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応分離容器、及び、前記反応分離容器を用いてサンプルの遺伝子増幅処理と分離分析を行なうための反応分離分析装置を備えた反応分離分析システムであって、
前記反応分離容器は、
サンプルのPCRを行なうための反応空間を内部に有する反応部、及び、
前記反応部の下端において内部空間が前記反応部
の前記反応空間と流体連通する
ように設けられた円筒状の分離部
、を備え、
前記反応部の前記反応空間に遺伝子増幅試薬が保持され、前記分離部の前記内部空間に電気泳動媒体が配置され、前記電気泳動媒体の
上端に導通する
第1の端子が前記分離部の
上端部の外面に設けられ
、前記電気泳動媒体の下端に導通する第2の端子が前記分離部の下端に設けられており、
前記反応分離分析装置は、
前記反応分離容器の前記反応部の温度を昇降させるための遺伝子増幅部と、
上方が開口し前記反応分離容器の前記分離部を収容するための容器設置用孔をもち、前記容器設置用孔に収容された前記反応分離容器の
前記分離部の前記
第1の端子
及び前記第2の端子にそれぞれ電気的に接触して前記電気泳動媒体の両端に電圧を印加するための
第1の電極
及び第2の電極が前記容器設置用孔の内部に設けられている分析部と、
前記反応分離容器を保持する容器保持部をもち、前記反応分離容器を前記遺伝子増幅部及び前記分析部へ搬送する搬送装置と、を備えて
おり、
前記分析部の前記第1の電極は弾力性又は弾性を有する部材で構成されて前記容器設置用孔の内側面から内側方向へ突出し、前記分析部の前記第2の電極は前記容器設置用孔の底面に設けられており、それによって、前記反応分離容器の前記分離部の前記下端が前記容器設置用孔の前記底面に接するまで前記反応分離容器の前記分離部が前記容器設置用孔に収容されたときに前記反応分離容器の前記第1の端子及び前記第2の端子に対して前記第1の電極及び前記第2の電極が確実に電気的に接触するようになっている、反応分離分析システム。
【請求項2】
前記搬送装置は円周軌道を描くように前記容器保持部を移動させるものであり、
前記遺伝子増幅部及び前記分析部は同一円周上に配置されている、請求項1に記載の反応分離分析システム。
【請求項3】
前記分析部の前記電極は円環形状である、請求項1又は2に記載の反応分離分析システム。
【請求項4】
前記反応分離容器の前記分離部は、蛍光色素により標識化されたサンプル成分からの蛍光を透過させる材質からなる筒状部材の内部に前記電気泳動媒体が保持されて構成されており、
前記分析部は、前記反応分離容器の前記分離部へ励起光を照射する励起光源、及び、サンプル成分からの蛍光の強度を検出するための検出素子を備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載の反応分離分析システム。
【請求項5】
前記遺伝子増幅部は前記反応部の温度を調節するための複数の温調部を備え、複数の前記温調部は互いに異なる位置に設けられ、かつ、前記反応部を互いに異なる温度に調節するものであり、
前記搬送装置を制御する制御部は、前記反応分離容器を複数の前記温調部のそれぞれへ予め設定された順序で搬送する遺伝子増幅処理を実行し、前記遺伝子増幅処理が終了した後で、前記反応分離容器を前記分析部へ搬送するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の反応分離分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中の遺伝子増幅処理及び遺伝子増幅処理後の分離分析を簡易迅速に実行することができる反応分離分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サンプル中の遺伝子を増幅させるためにPCRがよく用いられ、PCRを行なうための容器も提案されている(特許文献1参照。)。特許文献1で提案されているPCR容器は、容器本体と蓋体からなり、蓋体に設けられた凹部にサンプルが保持され、容器本体の内部に試薬が固定されており、蓋体が容器本体に装着されたときにサンプルが試薬に接するようになっている。試薬は、PCR前は固定状であり、PCRの際の加熱によって溶融する封止手段によって封止されている。PCRが開始されると、封止手段が溶融してサンプルと試薬が混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PCRなどの遺伝子増幅処理で遺伝子を増幅すると、目的とする遺伝子配列以外の遺伝子配列についても増幅される場合が多くある。そのような場合、遺伝子増幅処理後の遺伝子の定量を行なうと、目的とする遺伝子配列以外の遺伝子配列も一緒に定量されてしまうため、増幅後の目的遺伝子の量を正確に定量することができない。したがって、サンプルの遺伝子増幅処理後に目的の遺伝子生成物とそれ以外の非特異的に増幅された遺伝子とを分離することが望ましい。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、サンプルの遺伝子増幅処理及び遺伝子増幅処理後のサンプルの分離分析を簡易迅速に行なうことができるシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る反応分離分析システムは、サンプルの遺伝子増幅処理、例えばPCRを行なうための反応空間を内部に有する反応部、及び、内部空間が前記反応部と流体連通する分離部を備え、前記反応部の前記反応空間に遺伝子増幅試薬が保持され、前記分離部の前記内部空間に電気泳動媒体が配置され、前記電気泳動媒体の両端に導通する端子が前記分離部の外面に設けられている反応分離容器と、前記反応分離容器を用いてサンプルの遺伝子増幅処理及び分離分析を行なうための反応分離分析装置と、を備えている。前記反応分離分析装置は、前記反応分離容器の前記反応部の温度を昇降させるための遺伝子増幅部と、所定位置に配置された前記反応分離容器の前記端子に接触して前記電気泳動媒体の両端に電圧を印加するための電極を有する分析部と、前記反応分離容器を保持する容器保持部をもち、前記反応分離容器を前記遺伝子増幅部及び前記分析部へ搬送する搬送装置と、を備えている。
【0007】
前記搬送装置は円周軌道を描くように前記容器保持部を移動させるものであってよい。その場合、前記遺伝子増幅部及び前記分析部は同一円周上に配置される。
【0008】
また、前記分析部の前記電極は円環形状であってよい。そうすれば、前記反応分離容器の前記端子に対する電気的接触が容易になる。
【0009】
また、前記反応分離容器の前記分離部は、蛍光色素により標識化されたサンプル成分からの蛍光を透過させる材質からなる筒状部材の内部に前記電気泳動媒体が保持されて構成されており、前記分析部は、前記反応分離容器の前記分離部へ励起光を照射する励起光源、及び、サンプル成分からの蛍光の強度を検出するための検出素子を備えていてもよい。そうすれば、分析部は、電気泳動によるサンプルの分離だけでなく分離されたサンプル成分の検出も行なうことができる。
【0010】
また、前記遺伝子増幅部は前記反応部の温度を調節するための複数の温調部を備えることができる。その場合、複数の前記温調部は互いに異なる位置に設けられ、かつ、前記反応部を互いに異なる温度に調節するものであり、前記搬送装置を制御する制御部は、前記反応分離容器を複数の前記温調部のそれぞれへ予め設定された順序で搬送する遺伝子増幅処理を実行し、前記遺伝子増幅処理が終了した後で、前記反応分離容器を前記分析部へ搬送するように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る反応分離分析システムでは、反応分離容器内においてサンプルの遺伝子増幅処理及び遺伝子増幅処理後のサンプルの分離分析を簡易迅速に行なうことができる。
【0012】
また、遺伝子増幅処理を行なった後で分離分析を行なうための構成を備えることで、一度の遺伝子増幅処理により複数種類の生物に特有の遺伝子を増幅した場合にも、増幅されたそれぞれの遺伝子を定量することが可能となる。従来では、複数種類の微生物の存在量を確認するためには、微生物の数だけ遺伝子増幅処理と分析を行なう必要があった。対照的に、本発明の技術を用いれば、サンプル中における複数種類の微生物の存在量を確認したいような場合に、それらの微生物に特有の遺伝子を一度の遺伝子増幅処理で増幅し、それらを一度の分離分析処理で定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】蓋部を容器本体から取り外した状態の反応分離容器を示す断面図である。
【
図2】蓋部を容器本体に装着した状態の反応分離容器を示す断面図である。
【
図3】同反応分離容器の遺伝子増幅処理時の内部状態を示す断面図である。
【
図4】同反応分離容器の分離部における電気泳動分離の概念図である。
【
図5】同反応分離容器の分離部において分離した遺伝子バンドの定量の概念図である。
【
図6】同反応分離容器においてサンプルを反応部から分離部へ電気的に導入するための構成の一例を示す概念図である。
【
図7】反応分離容器の分離部において分離された遺伝子バンドの画像である。
【
図8】反応分離分析システムの一実施例を示す概略構成図である。
【
図9】反応分離分析装置の搬送装置の機能を説明するための図である。
【
図10】反応分離容器を第1温調部に設置した状態を示す図である。
【
図11】反応分離容器を第2温調部に設置した状態を示す図である。
【
図12】反応分離容器を分析部に設置した状態を示す図である。
【
図13】反応分離分析装置の各部の配置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る反応分離分析システムの実施形態について説明する。
【0015】
反応分離分析システムを構成する反応分離容器の一例を
図1に示す。
【0016】
反応分離容器1は、容器本体2及び蓋部4によって構成されている。容器本体2は、上方から順に、試薬収容部6、反応部8及び分離部10を備えている。容器本体2の試薬収容部6は上端に開口12を有する円筒状の容器である。試薬収容部6の内部に、サンプルを反応させるための試薬14が配置されている。試薬収容部6の底部には、下方へいくほど内径が小さくなる漏斗状部分が設けられており、その漏斗状部分の下方に円筒状の反応部8が設けられている。試薬収容部6と反応部8は、例えばポリプロピレンなどの樹脂によって一体的に形成されている。試薬収容部6内に収容されている試薬14はPCR試薬(遺伝子増幅試薬)である。試薬14は、遺伝子増幅処理であるPCR前はパラフィンなどによって固体状となっており、PCR時に加熱されることで液状となる。加熱によって液状となった試薬14は反応部8へ移行し、反応部8内でPCRによるサンプル中の遺伝子の増幅が行われる。
【0017】
分離部10は、反応部8の下端に連結された円筒状の筒状部材16の内側に分離媒体18が配置されたものである。すなわち、分離部10は、反応部8と流体連通する内部空間内に分離媒体18が配置されたものである。筒状部材16の内径は2mm程度、長さは10mm程度である。この実施例において、分離媒体18は電気泳動用ゲルである。電気泳動用ゲルとしては、アガロースなどの水和性ゲル、ポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマー、架橋された水溶性ポリマーなどであり、検出対象となる成分に応じて選択して使用することができる。筒状部材16の両端部には、電気泳動用ゲル18の両端に電気泳動用の電圧を印加するための電極20及び22が設けられている。電気泳動用ゲル18には、サンプル中の遺伝子を標識化するための色素が混合されており、電気泳動用ゲル18中でサンプルを電気泳動することによって、サンプル中の遺伝子が標識化されながら分離される。
【0018】
筒状部材16は、サンプル中の遺伝子を標識化する色素を励起するための励起光及び励起した色素からの蛍光を透過させる材質によって形成されている。筒状部材16の材質は例えばガラスであり、電気泳動用ゲル18がガラス製の筒状部材16の内壁と架橋されることによって筒状部材16の内側に固定されている。
【0019】
分離部10の筒状部材16は、連結部材24によって容器本体2の反応部8に連結されている。連結部材24は、容器本体2の反応部8の外周面及び筒状部材16の外周面をともに保持することによって筒状部材16を反応部8に連結させる筒状の部材である。連結部材24には、筒状部材16の電極20と電気的接触をとるための端子26が設けられている。また、連結部材24には、分離部18内の色素に対する励起光及び色素からの蛍光を通過させるための窓部28が設けられている。
【0020】
蓋部4は、
図2に示されているように、試薬収容部6の上部を覆うように容器本体2に装着されて試薬収容部6の開口12を封止するものである。蓋部4の下部に下方へ延びる突起30が設けられている。蓋部4の突起30の下端には、サンプルを保持するための凹部32が設けられており、蓋部4が容器本体2に装着されたときに凹部32に保持されたサンプルが試薬収容部6内の試薬14に接触するようになっている。
【0021】
また、図では省略されているが、試薬収容部6の外周面上部にネジが設けられており、容器本体2に装着されたときに試薬収容部6の外周面を覆う外周部34の内側に試薬収容部6の外周面のネジと螺合するネジが設けられている。
【0022】
この反応分離容器1を用いたPCR(遺伝子増幅処理)を行なう際は、先端の凹部32にサンプルを保持した蓋部4を容器本体2に装着した状態(
図2の状態)で、試薬収容部6の下部及び反応部8を所定温度に加熱する。そうすると、
図3に示されているように、サンプルと試薬収容部6の試薬14とが混合された状態で反応部8へ移動する。この状態で反応部8の温度を順に変化させていくことにより、サンプル中の遺伝子が増幅される。PCRが終了した後、反応部8のサンプル及び試薬を一定時間冷却する。この間に、反応部8内のサンプルが重力によって分離部10の分離媒体18の上端部に移動する。
【0023】
サンプルが分離媒体18の上端部にまで移動した後、サンプルの電気泳動による分離を実行することができる。電気泳動は、
図4に示されているように、電極20及び22の間に所定の電圧を一定時間印加することにより行なう。これにより、サンプル中の成分(遺伝子)が分離部18の長手方向に分離される。分離媒体18にはサンプル中の成分を標識化するための色素が混合されているため、電気泳動により各成分が分離と同時に標識化される。
【0024】
図5に示されているように、サンプルの電気泳動が終了した後、分離部18に対して励起光を照射し、各成分を標識化している色素から発せられる蛍光の強度を検出することで、PCR後のサンプル中の各成分量を同時に測定することができる。
【0025】
図7は、反応分離容器1の分離部10において分離された遺伝子バンドの画像である。
図7から明らかなように、反応分離容器1の反応部8においてPCRにより増幅された遺伝子は、分離部10において電気泳動により複数の遺伝子バンドに分離され、各遺伝子の量が蛍光の強度として表れている。この画像では、標的遺伝子がそれぞれに分離されているだけでなく、標的遺伝子と分離された非特異遺伝子も検出されている。このように、反応分離容器を用いてPCR及び電気泳動を実行すれば、各標的遺伝子を個別に定量できるだけでなく、非特定遺伝子による定量誤差を除くことができる。このように、反応分離容器1を用いることによって、複数種類の標的微生物の遺伝子を一度の遺伝子増幅処理によって同時に増幅し、増幅された複数種類の遺伝子を分離して同時に定量することができる。
【0026】
なお、上記の例では、反応部8の下方に分離部10を配置し、PCR後のサンプルを重力によって分離部10へ移動させる形態について説明したが、反応部8と分離部10との間に電圧を印加するための電極を設けて、反応部8から分離部10へのサンプルの移行を電気的に行なうこともできる。
【0027】
図6は反応部8から分離部10へのサンプルの移行を電気的に行なうための構成を備えた1つの実施例を示したものである。
【0028】
図6の例では、
図1の例の構成に加えて、反応部8の上部に電極21を設け、電極21に対して外部から電気的接触をとることができるように連結部材24に端子27を設けている。この構成では、分離部10の下端の電極22と反応部8の電極21との間に電圧を印加し、分離部10の上端部の電極20を接地することで、反応部8内のサンプルが分離媒体18の上端へ電気的に導入され、さらに分離部10においてサンプルの電気泳動による分離が行われる。
【0029】
また、分離部10の筒状部材16は試薬収容部6及び反応部8と一体的に形成されたものであってもよい。その場合、連結部材24は不要である。
【0030】
図8は、反応分離分析システムの一実施例を示す概略構成図である。
【0031】
この実施例の反応分離分析システムは、上述の反応分離容器1及び反応分離分析装置100によって構成されている。反応分離分析装置100は、搬送機構102、遺伝子増幅部104、分析部106及び制御部107を備えている。
【0032】
搬送機構102は、反応分離容器1を保持するための容器保持部108、及び、容器委保持部108を移動させる移動機構110を備えている。搬送機構102は、反応分離容器1の外周面を保持させた容器保持部108を水平方向及び鉛直方向へ移動させることにより、反応分離容器1を遺伝子増幅部104及び分析部106へ搬送する(
図9参照)。
【0033】
遺伝子増幅部104は、第1温調部112及び第2温調部114を備えている。第1温調部112及び第2温調部114のそれぞれは、熱伝導率の良好な金属性(例えばアルミニウム)の環状部材である。第1温調部112にはヒータ116及び温度センサ118が取り付けられており、予め設定された第1の温度に制御される。第2温調部114にはヒータ120及び温度センサ122が取り付けられており、予め設定された第2の温度に制御される。第1の温度と第2の温度は互いに異なる温度である。なお、この実施例では、遺伝子増幅部104は、温調部112及び114のほかにさらなる温調部を備えることもできる。
【0034】
分析部106は、容器設置部126、電圧印加部134、励起光源136及びカメラ138を備えている。容器設置部126は上方が開口した容器設置用孔128を有する絶縁性の部材である。容器設置部126の容器設置用孔128は反応分離容器1の分離部10を収容するためのものであり、容器設置用孔128の内側面に電極130が設けられ、容器設置用孔128の底面に電極132が設けられている。電圧印加部132は電極130及び132の間に所定の電圧を印加するための電気回路である。容器設置部126の側面には、励起光源136からの励起光を通過させるための窓部140、及び、容器設置用孔128に収容された反応分離容器1の分離部10からの蛍光を通過させるための窓部142が設けられている。カメラ138は、窓部142を介して分離部10からの蛍光を検出するように設けられている。
【0035】
制御部107は、CPU(中央演算装置)が所定のプログラムを実行することによって実現されるものであって、搬送装置102、遺伝子増幅部104及び分析部106を制御して、反応分離容器1内に入れられたサンプルの遺伝子増幅処理及び電気泳動処理を実行するように構成されている。
【0036】
サンプルの遺伝子増幅処理及び電気泳動処理が実行される際の動作について説明する。
【0037】
搬送装置102の容器保持部108への反応分離容器1の設置は、ユーザが容易保持部108の穴へ反応分離容器1を上方から嵌め込むことによって行われる。容器保持部1への反応分離容器1の設置が完了し、ユーザが処理の開始をシステムに対して入力すると、
図10及び
図11に示されているように、反応分離容器1を搬送装置102によって搬送して、遺伝子増幅部104の第1温調部112、第2温調部114のそれぞれに予め設定された順序で設置する。反応分離容器1が第1温調部112に設置されると、反応分離容器1の反応部8(
図1等参照)が第1の温度に調節される。反応分離容器1が第2温調部114に設置されると、反応分離容器1の反応部8が第2の温度に調節される。反応分離容器1を第1温調部112に設置する動作と第2温調部に設置する動作は予め設定された回数だけ繰り返され、それによって反応分離容器1の反応部8内でサンプル中の特定遺伝子が増幅される。
【0038】
遺伝子増幅部104での遺伝子増幅処理が終了した後、反応分離容器1を分析部106に設置する。分析部106へ反応分離容器1を設置する際は、
図12に示されているように、反応分離容器1を分析部106の容器設置部126の容器設置用孔128に下端から挿入し、反応分離容器1の下端の端子22を容器設置用孔128の底面に設けられている電極132に接触させる。このとき、容器設置部126内の電極130が反応分離容器1の端子26と接触する。反応分離容器1が容器設置部126に設置されたときに、電極130が反応分離容器1の端子26に確実に接触するように、電極130は容器設置用孔128の内面から内側方向へ突出している。電極130は、弾力性を有するエラストマーなどの導電性材質によって構成されていてもよいし、板バネなどの弾性部材によって容器設置用孔128の中心軸方向へ付勢されていてもよい。
【0039】
反応分離容器1を分析部106に設置した後、電圧印加部134によって反応分離容器1の分離部10内の電気泳動媒体18の両端に所定電圧を印加し、分離部10内においてサンプルの電気泳動を行なう。電気泳動を開始してから予め設定された時間が経過した後、電圧印加を解除し、励起光源136から分離部10に向かって励起光を照射し、カメラ138によってサンプル中の各成分を標識化している色素から発せられる蛍光の強度を検出する。
【0040】
上記実施例における反応分離分析装置100の分析部106は、電極130及び132に加えて、
図6を用いて説明した反応分離容器1の端子27に対して電気的接触をとるための端子を備えていてもよい。そうすれば、
図6に示した反応分離容器を用いることができ、遺伝子増幅処理後のサンプルを電気的に電気泳動媒体18へ導入することが可能となる。
【0041】
反応分離分析システム100の各部の配置の一例を
図13に示す。
【0042】
この例において、搬送装置102の移動機構110は回転可能な鉛直軸110であり、容器保持部108は鉛直軸110に取り付けられて鉛直軸110の回転に伴って水平面内において円周軌道を描くように移動する。また、容器保持部108の上下動は、鉛直軸110自体が鉛直方向へ移動することによって、又は、容器保持部108が鉛直軸10に沿って移動することにより実現される。第1温調部112、第2温調部114及び容器設置部126は、容器保持部108の円周軌道上にくるように同一円周上に設けられている。
【符号の説明】
【0043】
1 反応分離容器
2 容器本体
4 蓋部
6 試薬収容部
8 反応部
10 分離部
12 開口
14 試薬
16 筒状部材
18 分離媒体
20,21,22 電極
24 連結部材
26,27 端子
28 窓部
30 突起
32 凹部
34 外周部
100 反応分離分析装置
102 搬送装置
104 遺伝子増幅部
106 分析部
107 制御部
108 容器保持部
110 移動機構
112 第1温調部
114 第2温調部
116,120 ヒータ
118,122 温度センサ
126 容器設置部
128 容器設置用孔
130,132 電極
134 電圧印加部
136 励起光源
138 カメラ