(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】医療診断補助装置および医療診断補助プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20230116BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
G16H10/60
A61B5/00 A
(21)【出願番号】P 2020188895
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】506302561
【氏名又は名称】片山 成仁
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】片山 成仁
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-069893(JP,A)
【文献】特開2014-160482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00- 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面に診断名表示欄および所見欄を表示して、医師の診断名決定を補助する医療診断補助装置であって、
診断名および当該診断名にみられる1または2以上の臨床所見を対応づけて記憶する診断名記憶手段、
所見欄モードであれば、前記所見欄に、診断名確定に肯定的な臨床所見状態である肯定的臨床所見状態か、または、診断名確定に非肯定的な臨床所見状態かを示す非肯定的臨床所見状態の臨床所見が書き込み可能である所見欄書き込み手段、
診断名欄モードであれば、前記所見欄に書き込まれた肯定的臨床所見状態の臨床所見と同じ臨床所見を有する診断名を前記診断名記憶手段から、候補診断名として抽出するとともに、前記抽出された候補診断名について、対応づけられた1または2以上の臨床所見のうち、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態である臨床所見を確定臨床所見とし、
前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態ではない臨床所見を未確定臨床所見として、前記診断名表示欄に前記確定臨床所見および前記未確定臨床所見を区別可能に、表示する診断名欄表示制御手段、
前記所見欄モードまたは前記診断名欄モードを切り換える切り換え手段であって、前記診断名欄モードにおいて前記未確定臨床所見が選択されると、当該選択された臨床所見についての臨床所見状態を入力可能とするために、前記診断名欄モードから前記所見欄モードに切り換えるとともに、前記所見欄モードにおいて臨床所見入力が終わり、診断名欄モード切り換え命令が与えられると、前記診断名欄モードへ切り換える切り換え手段、
前記診断名欄モードにおいて、診断名確定命令が与えられると、確定した診断名をカルテ記憶手段に書き込むカルテ書き込み手段、
を備えたことを特徴とする医療診断補助装置。
【請求項2】
請求項
1の医療診断補助装置において、
前記カルテ書き込み手段は、さらに、前記所見欄の臨床所見状態を前記カルテ記憶手段に書き込むこと、
を特徴とする医療診断補助装置。
【請求項3】
請求項
1または2の医療診断補助装置において、
前記確定
した診断名は、診断名の状態が肯定または否定のいずれをも含んでいること、
を特徴とする医療診断補助装置。
【請求項4】
コンピュータの画面に診断名表示欄および所見欄を表示して、医師の診断名決定を補助する医療診断補助処理をコンピュータによって実現するためのプログラムであって、
前記コンピュータを下記手段として機能させる医療診断補助プログラム。
診断名および当該診断名にみられる1または2以上の臨床所見を対応づけて記憶する診断名記憶手段、
所見欄モードであれば、前記所見欄に、診断名確定に肯定的な臨床所見状態である肯定的臨床所見状態か、または、診断名確定に非肯定的な臨床所見状態かを示す非肯定的臨床所見状態の臨床所見が書き込み可能である所見欄書き込み手段、
診断名欄モードであれば、前記所見欄に書き込まれた肯定的臨床所見状態の臨床所見と同じ臨床所見を有する診断名を前記診断名記憶手段から、候補診断名として抽出するとともに、前記抽出された候補診断名について、対応づけられた1または2以上の臨床所見のうち、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態である臨床所見を確定臨床所見とし、
前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態ではない臨床所見を未確定臨床所見として、前記診断名表示欄に前記確定臨床所見および前記未確定臨床所見を区別可能に、表示する診断名欄表示制御手段、
前記所見欄モードまたは前記診断名欄モードを切り換える切り換え手段であって、前記診断名欄モードにおいて前記未確定臨床所見が選択されると、当該選択された臨床所見についての臨床所見状態を入力可能とするために、前記診断名欄モードから前記所見欄モードに切り換えるとともに、前記所見欄モードにおいて臨床所見入力が終わり、診断名欄モード切り換え命令が与えられると、前記診断名欄モードへ切り換える切り換え手段、
前記診断名欄モードにおいて、診断名確定命令が与えられると、前記所見欄の臨床所見状態および確定した診断名をカルテ記憶手段に書き込むカルテ書き込み手段。
【請求項5】
画面に診断名表示欄および所見欄を表示して、医師の診断名決定を補助する医療診断補助装置であって、
診断名および当該診断名にみられる1または2以上の臨床所見を対応づけて記憶する診断名記憶手段、
前記所見欄に、診断名確定に肯定的な臨床所見状態である肯定的臨床所見状態か、または、診断名確定に非肯定的な臨床所見状態かを示す非肯定的臨床所見状態の臨床所見が書き込み可能である所見欄書き込み手段、
前記所見欄に書き込まれた肯定的臨床所見状態の臨床所見と同じ臨床所見を有する診断名を前記診断名記憶手段から、候補診断名として抽出するとともに、前記抽出された候補診断名について、対応づけられた1または2以上の臨床所見のうち、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態である臨床所見を確定臨床所見とし、
前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態ではない臨床所見を未確定臨床所見として、前記診断名表示欄に前記確定臨床所見および前記未確定臨床所見を区別可能に、表示する診断名欄表示制御手段、
診断名確定命令が与えられると、
当該診断名をカルテ記憶手段に書き込むカルテ書き込み手段、
を備え
前記
カルテ記憶手段に書き込まれた診断名は、診断名の状態が肯定または否定のいずれをも含んでおり
前記カルテ書き込み手段は、前記肯定または否定された診断名について、対応する臨床所見も前記カルテ記憶手段に書き込むこと、
を特徴とする医療診断補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は医療診断補助装置に関し、特に、医師の負担軽減処理に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、電子カルテが普及している。また、患者の検査結果をデジタル化することで、コンピュータシステムによる医療診断も可能となる。例えば、特許文献1には、可能性がある疾患と可能性がない疾患を候補として提示する診断支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の診断支援システムは1回きりの診断候補の提示であり、現場の医師が求めているのは、このような判断をするシステムではなく、医師としての判断を的確に補助してくれ、かつ、電子カルテの記載の労力が軽減できるシステムである。
【0005】
この発明は、上記問題を解決し、現場の医師が診断するにあたって適切な補助ができる医療診断補助装置を提供することを目的とする。また、電子カルテ記載の労力を減らすことのできる医療診断補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1)本発明にかかる医療診断補助装置は、画面に診断名表示欄および所見欄を表示して、医師の診断名決定を補助する医療診断補助装置であって、診断名および当該診断名にみられる1または2以上の臨床所見を対応づけて記憶する診断名記憶手段、所見欄モードであれば、前記所見欄に、診断名確定に肯定的な臨床所見状態である肯定的臨床所見状態か、または、診断名確定に非肯定的な臨床所見状態かを示す非肯定的臨床所見状態の臨床所見が書き込み可能である所見欄書き込み手段、診断名欄モードであれば、前記所見欄に書き込まれた肯定的臨床所見状態の臨床所見と同じ臨床所見を有する診断名を前記診断名記憶手段から、候補診断名として抽出するとともに、前記抽出された候補診断名について、対応づけられた1または2以上の臨床所見のうち、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態である臨床所見を確定臨床所見とし、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態ではない臨床所見を未確定臨床所見として、前記診断名表示欄に前記確定臨床所見および前記未確定臨床所見を区別可能に、表示する診断名欄表示制御手段、前記所見欄モードまたは前記診断名欄モードを切り換える切り換え手段であって、前記診断名欄モードにおいて前記未確定臨床所見が選択されると、当該選択された臨床所見についての臨床所見状態を入力可能とするために、前記診断名欄モードから前記所見欄モードに切り換えるとともに、前記所見欄モードにおいて臨床所見入力が終わり、診断名欄モード切り換え命令が与えられると、前記診断名欄モードへ切り換える切り換え手段、前記診断名欄モードにおいて、診断名確定命令が与えられると、前記診断名欄の確定した診断名をカルテ記憶手段に書き込むカルテ書き込み手段を備えている。
【0007】
本装置を使用する医師は、前記所見欄モードと診断名欄モードを切り換えつつ、前記所見欄の入力および診断名確定をおこなう。これにより、医師に対して、必要な臨床所見の項目を見落とすことなく診断名決定が可能な医療診断補助装置を提供することができる。
【0009】
2)本発明にかかる医療診断補助装置においては、前記カルテ書き込み手段は、さらに、前記所見欄の臨床所見状態を前記カルテ記憶手段に書き込む。したがって、医師が確定した診断名、さらに、その臨床所見を簡易に記録することができる。
【0010】
3)本発明にかかる医療診断補助装置においては、前記確定した診断名は、診断名の状態が肯定または否定のいずれをも含んでいる。したがって、医師が肯定および否定した診断名を簡易に記録することができる。
【0013】
4)本発明にかかる医療診断補助プログラムは、コンピュータの画面に診断名表示欄および所見欄を表示して、医師の診断名決定を補助する医療診断補助処理をコンピュータによって実現するためのプログラムであって、前記コンピュータを下記手段として機能させる医療診断補助プログラム。1)診断名および当該診断名にみられる1または2以上の臨床所見を対応づけて記憶する診断名記憶手段、2)所見欄モードであれば、前記所見欄に、診断名確定に肯定的な臨床所見状態である肯定的臨床所見状態か、または、診断名確定に非肯定的な臨床所見状態かを示す非肯定的臨床所見状態の臨床所見が書き込み可能である所見欄書き込み手段、3)診断名欄モードであれば、前記所見欄に書き込まれた肯定的臨床所見状態の臨床所見と同じ臨床所見を有する診断名を前記診断名記憶手段から、候補診断名として抽出するとともに、前記抽出された候補診断名について、対応づけられた1または2以上の臨床所見のうち、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態である臨床所見を確定臨床所見とし、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態ではない臨床所見を未確定臨床所見として、前記診断名表示欄に前記確定臨床所見および前記未確定臨床所見を区別可能に、表示する診断名欄表示制御手段、4)前記所見欄モードまたは前記診断名欄モードを切り換える切り換え手段であって、前記診断名欄モードにおいて前記未確定臨床所見が選択されると、当該選択された臨床所見についての臨床所見状態を入力可能とするために、前記診断名欄モードから前記所見欄モードに切り換えるとともに、前記所見欄モードにおいて臨床所見入力が終わり、診断名欄モード切り換え命令が与えられると、前記診断名欄モードへ切り換える切り換え手段、5)前記診断名欄モードにおいて、診断名確定命令が与えられると、前記所見欄の臨床所見状態および確定した診断名をカルテ記憶手段に書き込むカルテ書き込み手段。
【0014】
このように、医師が本プログラムを使用して診断名を確定する場合は、前記所見欄モードと診断名欄モードを切り換えつつ、前記所見欄の入力および診断名確定をおこなう。これにより、医師に対して、必要な臨床所見の項目を見落とすことなく診断名決定が可能な医療診断補助をすることができる。また、決定した診断名に加えて、その臨床所見状態を記憶させることができる。これにより、医師の判断経過を簡易に記憶できる。
【0015】
5)本発明にかかる医療診断補助装置は、画面に診断名表示欄および所見欄を表示して、医師の診断名決定を補助する医療診断補助装置であって、診断名および当該診断名にみられる1または2以上の臨床所見を対応づけて記憶する診断名記憶手段、前記所見欄に、診断名確定に肯定的な臨床所見状態である肯定的臨床所見状態か、または、診断名確定に非肯定的な臨床所見状態かを示す非肯定的臨床所見状態の臨床所見が書き込み可能である所見欄書き込み手段、前記所見欄に書き込まれた肯定的臨床所見状態の臨床所見と同じ臨床所見を有する診断名を前記診断名記憶手段から、候補診断名として抽出するとともに、前記抽出された候補診断名について、対応づけられた1または2以上の臨床所見のうち、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態である臨床所見を確定臨床所見とし、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態ではない臨床所見を未確定臨床所見として、前記診断名表示欄に前記確定臨床所見および前記未確定臨床所見を区別可能に、表示する診断名欄表示制御手段、診断名確定命令が与えられると、当該診断名をカルテ記憶手段に書き込むカルテ書き込み手段、を備え、前記カルテ記憶手段に書き込まれた診断名は、診断名の状態が肯定または否定のいずれをも含んでおり、前記カルテ書き込み手段は、前記肯定または否定された診断名について、対応する臨床所見も前記カルテ記憶手段に書き込む。これにより、前記カルテ記憶手段に、肯定された診断名以外の診断名について、その根拠となる臨床所見が記憶される。
【0016】
本明細書において、「所見欄モード」とは、所見欄に検査所見または臨床所見が書き込み可能であるモードをいい、実施形態においては、
図5ステップS3~ステップS7の処理、ステップS17~ステップS21の処理が該当する。また、「診断名欄モード」とは、診断名表示欄に前記確定臨床所見および前記未確定臨床所見を区別可能に表示されているモードをいい、実施形態では、
図5ステップS12、ステップS13、ステップS15、ステップS25~ステップS28の処理が該当する。
【0017】
また、「切り換え手段」による切り換えとは、所見欄モードと診断名欄モードとの切り換えをいい、実施形態では、所見欄モードから診断名欄モードへの切り換えは、ステップS9、およびステップS23でYESの場合の処理が該当する。また、診断名欄モードから所見欄モードへの切り換えは、ステップS15にてYESの場合の処理が該当する。すなわち、実施形態においては、所見欄モードから診断名欄モードへの切り換えは、使用者である医師の「次へ進む」という意思入力が該当し、診断名欄モードから所見欄モードへの切り換えは、未入力の臨床所見または検査所見のクリックで自動的におこなわれる。
【0018】
また、モードの切り換えとは、前記所見欄と診断名表示欄、それ自体の表示を切り換えることはもちろん、前記所見欄と診断名表示欄、それ自体は表示したまま、入力モードのみも切り換えも含む概念である。
【0019】
「確定診断名」とは、状態が肯定または否定のいずれの診断名である。実施形態においては、
図12Bの溶連菌感染症、手足口病、インフルエンザ、・・・麻疹、COVID-19が該当する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】医療診断補助装置1の機能ブロック図である。
【
図2】医療診断補助装置1をCPUで実現した場合のハードウェア構成である。
【
図3】テンプレート記憶部26tのテンプレートデータを示す図である。
【
図4】診断データ記憶部26Sのデータの一例を示す図である。
【
図9】カルテ記事画面および診断名欄の表示例である。
【
図10】所見欄およびカルテ記事画面の表示例である。
【
図12】カルテ記事画面および診断名欄の表示例である。
【
図13】カルテ記事画面および再診の際の診断名欄の表示例である。
【
図14】ツリー構造の治療法テーブルのデータ構造の一例である。
【
図17】禁忌表示および治療法詳細決定の画面の表示例である。
【
図18】問診票データ画面およびカルテ記事画面の表示例である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・・ 医療診断補助装置
23・・・CPU
27・・・メモリ
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.機能ブロック図
図1に、本発明にかかる医療診断補助装置1の機能ブロック図を示す。医療診断補助装置1は、画面に診断名表示欄および所見欄を表示して、医師の診断名決定を補助する医療診断補助装置であって、診断名記憶手段3、所見欄書き込み手段5、診断名欄表示制御手段7、切り換え手段11、カルテ記憶手段13、およびカルテ書き込み手段14を備えている。
【0023】
診断名記憶手段3は、診断名および当該診断名にみられる1または2以上の臨床所見を対応づけて記憶する。
【0024】
所見欄書き込み手段5は、所見欄モードであれば、前記所見欄に、診断名確定に肯定的な臨床所見状態である肯定的臨床所見状態か、または、診断名確定に非肯定的な臨床所見状態かを示す非肯定的臨床所見状態の臨床所見が書き込み可能であり、かかる臨床所見が書き込まれると、これを所見欄記憶手段15に記憶する。
【0025】
診断名欄表示制御手段7は、診断名欄モードであれば、前記所見欄に書き込まれた肯定的臨床所見状態の臨床所見と同じ臨床所見を有する診断名を診断名記憶手段3から、候補診断名として抽出するとともに、前記抽出された候補診断名について、対応づけられた1または2以上の臨床所見のうち、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態である臨床所見を確定臨床所見とし、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態ではない臨床所見を未確定臨床所見として、前記診断名表示欄に前記確定臨床所見および前記未確定臨床所見を区別可能に、表示する。診断名欄表示制御手段7は、また、診断名欄に表示された診断名について、診断名の状態、対応する臨床所見の状態などを、診断名記憶手段17に記憶する。
【0026】
切り換え手段11は、前記所見欄モードまたは前記診断名欄モードを切り換える切り換え手段であって、前記診断名欄モードにおいて前記未確定臨床所見が選択されると、当該選択された臨床所見についての臨床所見状態を入力可能とするために、前記診断名欄モードから前記所見欄モードに切り換えるとともに、前記所見欄モードにおいて臨床所見入力が終わり、診断名欄モード切り換え命令が与えられると、前記診断名欄モードへ切り換える。
【0027】
カルテ書き込み手段14は、前記診断名欄モードにおいて、診断名確定命令が与えられると、確定した診断名をカルテ記憶手段13に書き込む。これにより、カルテ記憶手段13には患者毎に、確定した診断名が記憶される。
【0028】
また、カルテ書き込み手段14は、切り換え手段11が、所見欄モードから診断名欄モードに切り換えると、所見欄記憶手段15に記憶された臨床所見状態をカルテ記憶手段13に追記する。
【0029】
また、医療診断補助装置1は、複数の肯定的臨床所見が与えられた場合に罹患している診断名およびその確からしさを決定する診断名スコア決定規則を記憶する診断名スコア決定規則記憶手段4を有しており、診断名欄表示制御手段7は、前記診断名スコア決定規則および前記診断名との確定臨床所見に基づいて、前記抽出した臨床所見のスコア順に前記診断名表示欄に表示する。
【0030】
また、診断名欄表示制御手段7は、前記診断名欄モードでは、前記候補診断名について、診断名状態が肯定・否定を書き込み可能であり、カルテ書き込み手段14は、前記否定された診断名とともに、前記肯定または否定された診断名について、対応する臨床所見もカルテ記憶手段13に書き込む。
【0031】
2.ハードウェア構成
図1に示す医療診断補助装置1のハードウェア構成について、
図2を用いて説明する。同図は、医療診断補助装置1を、CPUを用いて構成したハードウェア構成の一例である。
【0032】
医療診断補助装置1は、CPU23、メモリ27、ハードディスク26、モニタ30、光学式ドライブ25、入力デバイス28、通信ボード31、およびバスライン29を備えている。CPU23は、ハードディスク26に記憶された各プログラムにしたがいバスライン29を介して、各部を制御する。
【0033】
ハードディスク26は、オペレーティングシステムプログラム26o(以下OSと略す)、メインプログラム26p、自然言語分析データ記憶部26b、臨床所見関係記憶部26r、カルテデータ記憶部26k、テンプレート記憶部26t、スコア演算記憶部26d、診断データ記憶部26sを有する。
【0034】
メインプログラム26pの処理は、後述する。
【0035】
自然言語分析データ記憶部26bは、患者が医師に話した主訴を自然言語解析するとともに、医師が確認すべき臨床所見の候補とするための、辞書データが記憶されている。臨床所見関係記憶部26rは、候補としての臨床所見について、関連する可能性のある候補を記憶する。例えば、臨床所見「発熱」について、「鼻汁」「咳」が関連する臨床所見候補として記憶されている。カルテデータ記憶部26kは患者別に入力されたカルテデータが記憶される。テンプレート記憶部26tは、診断補助画面の所見欄、診断名欄、カルテ記事画面を表示するためのテンプレートが記憶されている。本実施形態においては、
図3A~
図3Cに示すテンプレートを採用した。
図3Aはカルテ記事画面を表示するためのカルテ記事画面テンプレートである。カルテ記事画面の右欄には、患者が話した「主訴」について、医師が入力した文章が記載される。正規化されない自然言語のままの記載が可能である。
【0036】
また、当該主訴に合致する臨床所見候補がその下に表示される。
図3Bは、診断補助画面の所見欄を表示するための所見欄テンプレートである。所見欄テンプレートは、「分類」、「臨床所見」、「状態」、「詳細情報(数値、程度)」、および「コメント」が表示される。「分類」には、現在の症状であることを示す「現在症」「検査」または「治療」が入力される。「臨床所見」には、医師が聴き取りまたは、患者の状態から判断した臨床所見が記載される。「状態」には、「候補」「肯定」「否定」「治癒」などが記載される。候補としては、初期段階であり、検討した結果、当該臨床見解を肯定する場合は、詳細情報に数値(たとえば、発熱であれば38.2度など)、程度「+」、「++」、「+++」または「-」「--」「---」などが記載される。
【0037】
図3Cは、診断補助画面の診断名欄を表示するための診断名欄テンプレートである。診断名欄テンプレートは、項目として、「診断名」、「状態」、「検査所見」、「対応する臨床所見」、および「コメント」が記載される。なお、
図3B、
図3Cの行は、入力が増えると、その分、追加される。診断名欄テンプレートの各項目には、後述する診断データ記憶部26sからデータ読みだされて、表示される。
【0038】
診断データ記憶部26sには、
図4に示すように、各診断名について、検査所見および候補の臨床所見の対応データが記憶されている。これにより、医師による診断を補助することができる。たとえば、診断名「溶連菌感染症」の場合には、検査所見としては「溶連菌検査」が必要であり、臨床所見としては、「喉痛」、「発熱」、「発疹」、「下痢」、「嘔吐」、「イチゴ舌」が見受けられることを表している。
【0039】
スコア演算記憶部26dには、各診断名に対応する臨床所見について、以下のようなスコアが記憶されている。
【0040】
・診断名「インフルエンザ」-臨床所見「発熱」(5p),「咳」(3p),「喉痛」(3p)
・診断名「風邪」-臨床所見「鼻水」(4p),「喉痛」(4p),「発熱」(2p)
ここで、各臨床所見のスコアは、診断名によって異なる。たとえば、「発熱」は、診断名「インフルエンザ」の場合は、「5p」、診断名「風邪」の場合は「2p」、・・・のような具合である。
【0041】
本実施形態においては、オペレーティングシステムプログラム(OS)26oとして、LINUX(登録商標または商標)を採用したが、これに限定されるものではない。
【0042】
なお、上記各プログラムは、光学式ドライブ25を介して、プログラムが記憶されたCD-ROM25aから読み出されてハードディスク26にインストールされたものである。なお、CD-ROM以外に、フレキシブルディスク(FD)、ICカード等のプログラムをコンピュータ可読の記録媒体から、ハードディスクにインストールさせるようにしてもよい。さらに、通信回線を用いてダウンロードするようにしてもよい。
【0043】
本実施形態においては、プログラムをCD-ROMからハードディスク26にインストールさせることにより、CD-ROMに記憶させたプログラムを間接的にコンピュータに実行させるようにしている。しかし、これに限定されることなく、CD-ROMに記憶させたプログラムを光学式ドライブ25から直接的に実行するようにしてもよい。なお、コンピュータによって、実行可能なプログラムとしては、そのままインストールするだけで直接実行可能なものはもちろん、一旦他の形態等に変換が必要なもの(例えば、データ圧縮されているものを、解凍する等)、さらには、他のモジュール部分と組合して実行可能なものも含む。
【0044】
3.フローチャート
プログラム26pの処理について
図5を用いて説明する。以下では、患者が「昨日から熱が出て、咳もある気がする。頭痛もするんですよ。」と医師に説明した場合について説明する。
【0045】
医師は、かかる主訴を聞いて、たとえば、「昨日から熱が出て、咳もある気がする。頭痛あり」と入力する。
【0046】
CPU23は、かかる入力があると、所見欄モードとし、かかる主訴を自然言語分析データ記憶部26bの辞書データを用いて、自然言語解析するとともに、医師が確認すべき臨床所見の候補を決定して、診療補助画面の所見欄にこれらを表示する(ステップS3)。この場合、所見欄には、
図6Aに示すように、候補の臨床所見が表示される。
【0047】
なお、上記主訴からは、「発熱」、「咳」および「頭痛」の3つの臨床所見が候補として決定され、臨床所見関係記憶部26rの対応からこれらの臨床所見と関係づけられている「鼻汁」「喉痛」および「倦怠感」が候補として表示される。
【0048】
医師は、かかる候補を参照して、患者に確認して、各臨床所見の状態またはコメントを入力する。
【0049】
たとえば、医師が患者に対して、所見欄に表示された臨床所見を見て、検査・診察・聞き取りを行ったところ、検温「38.2度」、咳は「+」であった。また、「頭痛」は、数日前に頭をぶつけたとのことだが、関連性が不明確なので、状態「保留」とする。また、サジェストされた臨床所見「鼻汁」は医師が診察したところ、「+」である。ただし、患者に確認したところ、アレルギー性鼻炎であるとのとこなので、コメント欄に「アレルギー性鼻炎」と入力する。また、臨床所見「喉痛」は「+」と確認したので、そのように入力する。
【0050】
CPU23は、所見欄の「状態」または「コメント」について入力があるか否か判断しており(ステップS5)、いずれかの入力があれば、これを所見欄に追記する(ステップS7)。上記の場合であれば、
図6Bに示すように、各臨床所見について、状態、詳細情報、コメントが入力される。
【0051】
CPU23は、カルテデータ記憶部26kに臨床所見の詳細を追記し、カルテ記事画面にこれを表示する(ステップS8)。
【0052】
図7に、カルテ記事画面の記載例を示す。このように、各候補臨床所見について、状態、詳細情報、コメントが追記される。この場合、検査が必要な臨床所見はなかったので、検査結果は無しである。
【0053】
医師は、表示された候補臨床所見について、状態、詳細情報、コメントの入力が完了すると、画面上に表示されているボタン「診断名一覧に進む」(図示せず)をクリックする。
【0054】
CPU23は、かかるボタンがクリックされるか否か判断しており(
図5ステップS9)、かかるクリックがあると、診断名モードとする(ステップS12)。これにより、モニタに表示していた所見欄の表示が、診断名欄に切り換えられる。
【0055】
CPU23は、所見欄の各臨床所見の状態および詳細情報から、候補診断名のスコアを演算し、スコア順に候補診断名を表示する(ステップS13)。
【0056】
本実施形態においては、以下のようにして、候補診断名のスコアを決定するようにした。まず、所見欄に抽出された各臨床所見について、診断データ記憶部26sを参照して、当該臨床所見が、対応する臨床所見として記憶されている診断名を全て抽出する。つぎに、スコア演算記憶部26dから、診断名毎に、その臨床所見のポイントを読みだす。これを繰り返して、診断名毎にポイントを加算して総計を求める。これがその診断名のスコアとなる。
【0057】
なお、本実施形態においては、スコア演算は各ポイントを加算する場合について説明したが、特定の否定的臨床所見がある場合、スコアを低くするようにしてもよい。また、特定の関係のある臨床所見がある場合、ポイントに係数を乗算するようにしてもよい。
【0058】
かかる表示は、テンプレート記憶部26tのテンプレートを用いて、必要なデータを診断データ記憶部26sから読みだせばよい。診断名欄の例を
図8Aに示す。本実施形態においては、各診断名について、対応する臨床所見の状態「肯定」、「否定」、「保留」が認識できるように色分け表示をするようにした。
【0059】
この診断補助装置は、判明している臨床所見からすると、診断名「風邪」→「インフルエンザ」→「気管支炎」の順に罹患している可能性が高いと、示しているが、全ての臨床所見が検討済みであるわけではない。医師は、かかる表記を参照して、たとえば、一番可能性の高い診断名「風邪」の臨床所見「下痢」については、対応する臨床所見の状態が「肯定」か「否定」が入力されていないので、かかる臨床所見「下痢」についての聞き取りをおこなうために、表示部51をクリックする。
【0060】
CPU23は、未入力の臨床所見がクリックされるか否か判断しており(ステップS15)、かかるクリックがおこなわれると、所見欄モードとし(ステップS17)、所見欄に臨床所見「下痢」の行を追加する(ステップS18)。
【0061】
医師が聞き取りをおこなったところ、患者から「下痢はずいぶん前から続いているので、特に言わなかったが、かなり下痢している」との回答があったため、医師は、程度「++」を入力する。これにより、所見欄に追記される(
図8B参照)。
【0062】
CPU23は、かかる入力があるか否か判断しており(
図5ステップS19)、入力があると、これをカルテデータ記憶部に記憶するとともに、カルテ記事画面に追記する(ステップS21)。カルテ記事画面の表示例を
図9Aに示す。
【0063】
医師は、一旦、画面に表示されているボタン「診断名一覧に進む」(図示せず)をクリックする。
【0064】
CPU23は、かかるボタンがクリックされるか否か判断しており(ステップS23)、クリックがあると、診断名欄モードとし(ステップS12)、新たに入力された臨床所見を踏まえて、スコア演算をおこない、表示を診断名欄に切り換えるとともに、スコア順に候補診断名を表示する(ステップS13)。
【0065】
臨床所見「下痢」を追加した場合の診断名欄の例を
図9Bに示す。この場合、診断名「風邪」→「溶連菌感染症」→「インフルエンザ」→・・・の順に罹患している可能性が高いと、診断名欄の順位が変更されて表示される。
【0066】
医師は、新たに追加された診断名「溶連菌感染症」の臨床所見「発疹」については、対応する臨床所見の状態が「肯定」か「否定」が入力されていないので、かかる臨床所見「発疹」についての聞き取りをおこなうために、表示部53をクリックする。
【0067】
CPU23は、未入力の臨床所見がクリックされるか否か判断しており(ステップS15)、かかるクリックがおこなわれると、所見欄モードとする(ステップS17)。これによりモニタに表示していた診断名欄の表示が、所見欄に切り換えられる。
【0068】
CPU23は、所見欄に臨床所見「発疹」の行を追加する(ステップS18)。
【0069】
医師が確認したところ、発疹を発見したため、医師は、程度「+」を入力する。これにより、所見欄に追記される(
図10A参照)。
【0070】
CPU23は、かかる入力があるか否か判断しており(
図5ステップS19)、入力があると、これをカルテデータ記憶部に追記するとともに、カルテ記事画面に表示する(ステップS21)。カルテ記事画面の表示例を
図10Bに示す。
【0071】
医師は、一旦、画面に表示されているボタン「診断名一覧に進む」(図示せず)をクリックする。
【0072】
CPU23は、かかるボタンがクリックされるか否か判断しており(ステップS23)、クリックがあると、診断名欄モードとする(ステップS12)。これにより表示が診断名欄に切り換えられる。
【0073】
CPU23は、新たに入力された臨床所見を踏まえて、スコア演算をおこない、スコア順に候補診断名を表示する(ステップS13)。臨床所見「発疹」を追加した場合の診断名欄の例を
図11Aに示す。
【0074】
この場合、診断名「溶連菌感染症」→「手足口病」→「インフルエンザ」・・・の順に罹患している可能性が高いと、診断名欄の順位が変更されて表示される。
【0075】
医師は、かかる表記を参照して、一番可能性の高い診断名「溶連菌感染症」の検査所見「溶連菌検査」について、検査が行われていないので、かかる検査所見「溶連菌検査」をおこなうために、表示部55(
図11A参照)をクリックする。
【0076】
これにより、所見欄モードに切り替わり、当該検査所見「溶連菌検査」の行が追加される。検査の結果、大きな反応が見られたので、医師は、所見欄に「++」を追加する。これにより、所見欄にこのデータが追記される(
図11B参照)。
【0077】
CPU23は、かかる入力があるか否か判断しており(
図5ステップS19)、入力があると、これをカルテデータ記憶部に記憶するとともに、カルテ記事画面に追記する(ステップS21)。カルテ記事画面の表示例を
図12Aに示す。
【0078】
医師は、一旦、画面に表示されているボタン「診断名一覧に進む」(図示せず)をクリックする。これによりCPU23は、診断名欄モードとし(
図5ステップS12)、スコア演算をし、診断名欄がスコア順に表示される(ステップS13)。
【0079】
ここで医師は、診断名「溶連菌感染症」であると判断し、診断名「溶連菌感染症」の状態を「候補」から「肯定」に変更する。
【0080】
CPU23は、未入力の臨床所見がクリックされない場合には、診断の「状態」が変更される否かを判断しているので(
図5ステップS25)、かかる「状態」が変更されると、診断名欄に「状態」を追記する(ステップS27)。
【0081】
これにより、診断名欄にこのデータが追記される(
図12B参照)。
【0082】
医師は、肯定する診断名が決まったので、他の診断名について「状態」を変更すべきと判断して、診断名「手足口病」、「インフルエンザ」、「COVID-19」を「棄却」とする。また、診断名「麻疹」は発疹形状が異なるので、「否定」とし、コメントに「発疹形状相違」と記入する。
【0083】
なお、本実施形態においては、状態「否定」は、否定所見が明確にあったという場合、たとえば、検査で陰性などとなった場合とし、「棄却」は、否定所見があったわけではないが、別の病名が確定したからこれは違うだろう、という場合とした。ただ、両者とも程度が異なるだけなので、いずれかに統一してもよい。
【0084】
必要な状態が変更されると、医師はボタン「処方・治療に進む」(図示せず)をクリックする。
【0085】
CPU23は、かかるクリックがあるか否か判断しており(ステップS29)、かかるクリックがあると、データをカルテ記事画面に記載する。カルテ記事画面の例を
図13Aに示す。これにより、診断名欄にこのデータが追記される(
図13B参照)。
【0086】
このように、当初の患者の主訴から、所見欄を表示し、第1段階の臨床所見について医師が入力すると、診断名欄に画面が切り替わって、候補診断名がスコア順に表示される。医師が、所見欄を参照して、不足している臨床所見・検査所見について聴き取りなどをして入力すると、診断名欄に候補診断名がスコア順に表示される。医師は、かかる表示を見て、追加で臨床所見または検査所見を確認するべきかを判断すると、当該臨床所見または検査所見をクリックすると、所見欄モードとなる。
【0087】
このように、所見欄と診断名欄を行きつ戻りつしながら、診断名を絞り込んでいくことによって、より確度の高い診断名を決定することができる。
【0088】
また、本実施形態においては、検討したが否定した診断名については、その根拠をカルテに記載することができる。したがって、決定した診断名だけでなく、検討したが最終的には否定または棄却した診断名がカルテに記載される。
【0089】
また、本実施形態においては、診断名欄にスコア順に診断名を表示する際に、スコアは低くても危険度の高い診断名については、これを要注意診断名として表示するようにしている。これにより、医師に要注意診断名であることをアラートできるとともに、これを否定した根拠をカルテに記載することができる。
【0090】
これで一旦、治療薬を処方され、再診でやってきた場合について説明する。
【0091】
患者の主訴は「喉の痛みはなくなった。発疹も消えて、下痢もしていない。しかし咳がひどくなっている、頭痛なし」であった。また、熱を測ると体温38.6度であった。医師は、患者から話を聞きながら、臨床所見を確認し、表示された診断名について臨床所見を追加していく。
【0092】
なお、溶連菌感染症の主な症状である喉痛は治った場合は、「所見」の消込処理(状態を「治癒」とする)。この場合、かかる臨床所見の文字を薄く表示するようしてもよい。
【0093】
また、以前からある臨床所見については、「状態」や「詳細情報」を上書きする。
【0094】
また、本実施形態においては、検査所見は引き継がないようにした。これは、タイミングによって変化する可能性が高いからである。
【0095】
なお、医師は、決定した診断名に基づいて、治療法および処方を、カルテ記事画面の「治療法欄」に記入する。かかる情報もカルテデータ記憶部に記憶される。かかる処理は従来の電子カルテシステムと同様である。
【0096】
4. 第2実施形態
病名決定後の治療法・処方の決定についても、上記実施形態と同様に、複数の表示欄を行きつ戻りつしながら、具体的治療法を絞り込んでいくことによって、より効果的で安全な治療を行うことができる。また、診断名の追加修正に気づくことができる。
【0097】
以下では、
図14に示すようなツリー構造の治療法データがハードディスク26(
図2参照)に記憶されており、医師が、診断名「溶連菌感染症」を決定した後、具体的治療法として「SG配合顆粒」を決定する場合について、
図15を用いて説明する。
【0098】
CPU23は、
図14の治療法データを読み出す(
図15ステップS41)。CPU23は、具体的治療法である薬名を読み出してスコア順に表示する(ステップS43)。この場合、種別「解熱鎮痛剤」として、「ロキソニン」(スコア158)、「ボルタレン」(スコア112)および「SG配合顆粒」(スコア125)がスコア順に表示される(
図16参照)。
【0099】
なお
図16においては、後述する項目「状態」が追加されている。スコアについては表示するようにしてもよい。
【0100】
CPU23は、所見データおよび問診表に記載された病歴を参照して、該当する禁忌情報があればそれを色分け表示する(ステップS45)。
【0101】
本実施形態においては、禁忌情報として、「所見禁忌」、「現病歴禁忌」、「既往歴禁忌」、「アレルギー性禁忌」、「その他の禁忌」を採用し、それぞれを分けて表示するようにしたが それに限定されない。なお、「所見禁忌」は、
図12Aの所見データに合致するものがあるかを判断すればよい。また、「疾患禁忌」、「アレルギー性禁忌」、「その他の禁忌」については、後述するように、問診項目として入力された問診票データから判断すればよい。
【0102】
なお、溶連菌感染症には薬物療法しかない。したがって、本実施形態においては、それ以外の治療法は選択できないように、選択できない領域については色を変えて区別できるようにしている。また、かかる選択不可領域については、そもそも表示しなくてもよい。
【0103】
医師は、かかる一覧から具体的治療法としていずれかの薬を選択する。その際、一番スコアの高い「ロキソニン」の禁忌情報をみると、現病歴禁忌として「消化性潰瘍」が設定されている。一方、
図16には、現病歴禁忌「消化性潰瘍」は色分け表示されていないが、医師は、モレがある可能性を考慮して、かかる禁忌情報の適否を決定するため、
図17Aの領域71をクリックする。なお、
図17A,B,Cにおいては、
図16のうち、説明に必要な部分のみを表示している。
【0104】
CPU23は、決定ボタンが押されたかを判断する(
図15ステップS51)。この場合、決定ボタンが押されていないため、CPU23は、選択された領域が「状態」か否か判断する(ステップS53)。この場合、選択された領域は「状態」ではないため、CPU23は、選択された領域が「所見禁忌」か否か判断する(ステップS57)。この場合、選択された領域は現病歴禁忌であり、所見禁忌ではない。したがって、CPU23は問診票(
図18A参照)を表示する(ステップS67)。かかる問診票は、問診票データとして記憶しておき、読み出すようにすればよい。
【0105】
この問診票には現病歴としては何も記載されていないが、医師は、念のため、患者に現病歴または既往歴を尋ねる。ここで、患者が「現在、胃潰瘍がある」と回答すると、医師は、現病歴「胃潰瘍」と入力する。
【0106】
CPU23は、かかる入力があるか否か判断しており(ステップS69)、かかる入力があると問診票データに追記する(ステップS71)。また、CPU23は、色分け表示される禁忌表示欄を追加する(ステップS73)。この場合、追加された現病歴「胃潰瘍」は「消化性潰瘍」の一種であるので、領域71、72(
図17A参照)が色分け表示される。
【0107】
上記「胃潰瘍」が「消化性潰瘍」の一種であるかについては、「消化性潰瘍」には、「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」・・・があると所属関係を記憶させておき、これを読み出して判断すればよい。
【0108】
なお、ステップS73にて、問診票データまたは所見欄に追加したデータが禁忌に該当しない場合もある。この場合は、当然、禁忌表示は追加されない。
【0109】
医師は、当該患者には疾患禁忌があるので、薬名「ロキソニン」は処方できないと判断し、領域73(
図17A参照)をクリックする。
【0110】
CPU23は、決定ボタンが押されたかを判断する(
図15ステップS51)。この場合、決定ボタンが押されていないため、CPU23は、選択された領域が「状態」か否か判断する(ステップS53)。この場合、選択された領域は「状態」であるため、プルダウンメニューを表示し選択に応じて表示を変更する(ステップS54)。本実施形態においては、「候補」、「不採用」、「採用」のいずれかから選択させるようにした。この場合、医師は「不採用」を選択する。これにより、領域73は「不採用」に切り替えられる。領域73が「不採用」となり、かつ、禁忌表示がなされた状態を
図17Bに示す。
【0111】
つぎに、医師は、表示された薬一覧のうち、「SG配合顆粒」を候補として、検討する。また、各種の禁忌も該当しないので、この薬に決定するために、領域77(
図17B参照)をクリックする。
【0112】
CPU23は、決定ボタンが押されたかを判断する(
図15ステップS51)。この場合、決定ボタンが押されていないため、CPU23は、選択された領域が「状態」か否か判断する(ステップS53)。この場合、選択された領域は「状態」であるので、CPU23は、プルダウンメニューを表示する(ステップS54)。医師は当該薬の状態を「採用」に切り替える。これにより、領域77は「採用」とされる。
【0113】
【0114】
医師は、具体的治療法としてこの薬の処方として十分と判断すると、画面に表示された決定ボタン(図示せず)をクリックする。
【0115】
CPU23は、決定ボタンが押されたかを判断している(
図15ステップS51)。したがって、決定ボタンが押されると、CPU23は、「採用」となっている具体的治療法があるか否か判断する(ステップS52)。この場合、薬名「SG配合顆粒」が「採用」であるので、当該薬を具体的治療法として決定する(ステップS85)。CPU23は、かかるデータを追記したカルテ記事画面を表示するとともに(
図18C参照)、カルテデータ記憶部に記憶する(ステップS87)。
【0116】
なお、ステップS57にて、クリックされた領域が所見禁忌である場合、CPU23は所見欄を表示し(ステップS58)する。医師は追加の入力があれば所見欄に追加する。CPU23は、かかる入力があるか否か判断しており(ステップS59)、かかる入力があると所見欄に追記する(ステップS61)。また、CPU23は、禁忌表示欄を色分け表示し(ステップS73)、ステップS51以下の処理を行う。
【0117】
また、ステップS59にて、入力がなく、戻るボタン(図示せず)がクリックされるとステップS51に戻る。ステップS69においても同様である。
【0118】
なお、具体的治療法として複数の薬を併用する場合には、ステップS53にて、状態を複数の薬の状態を「採用」と変更すればよい。
【0119】
また、溶連菌感染症には薬物療法しかないので、上記のように、薬物療法から選択しているが、医師は薬物療法に手術療法など他の治療法を併用することもできる。この場合、ステップS53にて、決定した具体的治療法の状態を「採用」に変更すればよい。
【0120】
この場合、薬物療法と同様に、ツリー構造を記憶しておくことで、階層的に具体的治療法を記憶させておけばよい。禁忌があるのであれば、併せて表示するようにすればよい。
【0121】
このように、治療法の決定処理についても、治療法表示モードと、所見欄表示モードと問診票表示モードとを行きつ戻りつしながら、薬を絞り込んでいくことができる。また、禁忌項目があった場合、当該薬が不採用とした理由をカルテデータに追記することができる。
【0122】
また、がんなど、他の病気においては薬物療法に限らず、手術療法および/または放射線療法、さらにリハビリ療法などが選択されることもある。内容により、禁忌だけでなくインフォームドコンセントの必要性についても注意喚起が表示するようにしてもよい。
【0123】
また、本実施形態においては、ツリー構造をまとめて表示するようにしたが、1段ずつ階層的に表示するようにしてもよく、また、複数階層をまとめて表示するようにしてもよい。たとえば、
図16の状態で、具体的治療法の上位層(治療法または種別)が選択された場合、その下位層だけを表示するようにしてもよい。上位層を表示させるには、たとえば全体表示ボタンなどを設けるようにすればよい。また、上位の種別選択画面に戻れるボタンを画面上表示するようにしてもよい。
【0124】
治療法データは、リレーショナルデータベースの形式で記憶してもよい。
【0125】
5. 他の実施形態
医療診断補助装置1を以下の発明として把握することも可能である。
【0126】
画面に診断名表示欄および所見欄を表示して、医師の診断名決定を補助する医療診断補助装置であって、
診断名および当該診断名にみられる1または2以上の臨床所見を対応づけて記憶する診断名記憶手段、
前記所見欄に、診断名確定に肯定的な臨床所見状態である肯定的臨床所見状態か、または、診断名確定に非肯定的な臨床所見状態かを示す非肯定的臨床所見状態の臨床所見が書き込み可能である所見欄書き込み手段、
前記所見欄に書き込まれた肯定的臨床所見状態の臨床所見と同じ臨床所見を有する診断名を前記診断名記憶手段から、候補診断名として抽出するとともに、前記抽出された候補診断名について、対応づけられた1または2以上の臨床所見のうち、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態である臨床所見を確定臨床所見とし、前記肯定的臨床所見状態および非肯定的臨床所見状態ではない臨床所見を未確定臨床所見として、前記診断名表示欄に前記確定臨床所見および前記未確定臨床所見を区別可能に、表示する診断名欄表示制御手段、
診断名確定命令が与えられると、前記確定した診断名をカルテ記憶手段に書き込むカルテ書き込み手段、
を備え
前記確定した診断名は、診断名の状態が肯定または否定のいずれをも含んでおり
前記カルテ書き込み手段は、前記肯定または否定された診断名について、対応する臨床所見も前記カルテ記憶手段に書き込むこと、
を特徴とする医療診断補助装置。
【0127】
これにより、前記カルテ記憶手段に、肯定された診断名以外の診断名について、その根拠となる臨床所見が記憶される。
【0128】
本実施形態においては、一旦状態を書き換えた診断名は、ランクから外れてもランク外に表示し続けるようにした。これにより、ある診断名については考察した、という事実が表記される。また、状態を書き換えた診断名はカルテ記憶部に記憶される。さらに、状態を「否定」または「棄却」にした場合には、状態変化しなくともコメントを書いている等があれば、これもカルテにより記憶される。
【0129】
本実施形態においては、診断名については3つ程度を表示するようにしたが、表示数についてはこれに限定されない。また、1の診断名に対応する臨床所見についても、もっと多くを記憶させてもよい。
【0130】
本実施形態においては、カルテ記事画面は所見欄モード、診断名モードのいずれの場合もこれを表示するようにしたが、常時表示する必要はない。
【0131】
なお、本実施形態においては、正規化された単語だけをカルテ記憶部に記憶するようにした。仮に、それ以外の自然言語文で記述しておいた方がよいと医師が判断した場合には、カルテ記憶部のコメント記述欄(図示せず)に、記載するようにすればよい。常時表示しておけばその場合に参照できるという効果がある。ただ、必要に応じて呼び出して表示できるようにしてもよい。
【0132】
なお、医師による主訴入力は、正規化された用語でなされる場合もある。たとえば、患者が「昨日から熱が出て、咳もある気がする。頭痛もするんですよ。」と自然言語で話した場合に、そのまま入力するのではなく、「昨日から熱が出て、咳もあり。頭痛あり」と入力するような場合である。このように、主訴入力の制約を設けないことで、主訴入力が医師にとって容易となる。特に、精神科では、患者によっては、妄想の内容をとうとうと語る場合もあるので、すべてを正規化して入力することが困難であることがあるので有益である。
【0133】
本実施形態においては、所見欄と診断名欄を順次切り換え表示する場合について説明したが、いずれも表示したままで、カーソル位置が、所見欄と診断名欄に切り換わるように、制御してもよい。
【0134】
本実施形態においては、臨床所見だけからスコアを演算するようにしたが、検査所見の入力結果をさらに、踏まえてスコア演算をするようにしてもよい。この場合、 スコア演算記憶部26dに検査所見に関する個別スコアを記憶するようにすればよい。
【0135】
本実施形態においては、所見欄については、所見欄モードから診断名欄モード移行時に、診断名欄については、診断名欄モード終了時にカルテ記事画面に記憶するようにしたが、書き込みのタイミングはこれに限定されず、たとえば、診断名欄モード終了時に一括で記憶するようにしてもよい。
【0136】
本実施形態においては、確定した診断名として、診断名欄の状態が肯定または否定の診断名を全て記憶するようにしたが、その一部を選択して記憶するようにしてもよい。たとえば、上位からいくつか、また、さらに、高危険度の診断名である。また、初期段階では上位に表示されていたが、診断が進むにつれて下位に位置するようになった診断名(たとえば、
図8の「風邪」、「気管支炎」など)、さらに、高危険度の診断名のうち、診断が進むにつれて下位に位置するようになった診断名などを選択すればよい。
【0137】
本実施形態においては、診断データ記憶部26sとスコア演算記憶部名26dを別々に記憶するようにしたが、診断データ記憶部26s内に、診断名毎に対応する臨床所見についてポイントを記憶するようにしてもよい。
【0138】
上記実施形態においては、
図1に示す機能を実現するために、CPUを用い、ソフトウェアによってこれを実現している。しかし、その一部若しくはすべてを、ロジック回路等のハードウェアによって実現してもよい。
【0139】
なお、上記プログラムの一部の処理をオペレーティングシステム(OS)にさせるようにしてもよい。