IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・リーランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティの特許一覧

特許7210534H3K27M変異を有するがんの処置のための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】H3K27M変異を有するがんの処置のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230116BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230116BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230116BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230116BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230116BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230116BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230116BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230116BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230116BHJP
【FI】
A61K35/17 Z ZNA
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K14/725
C07K16/30
C07K19/00
C12N15/11 Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020501539
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018041839
(87)【国際公開番号】W WO2019014456
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】62/531,872
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/651,406
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592116475
【氏名又は名称】ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・リーランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】モンジェ-ダイセロス,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】マジェナー,ロビー
(72)【発明者】
【氏名】マッコール,クリスタル
(72)【発明者】
【氏名】マウント,クリストファー
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/033885(WO,A1)
【文献】Journal for ImmunoTherapy of Cancer,2015年,Vol. 3, Suppl. 2, P445,pp. 1-2
【文献】Nat Med,2015年,Vol. 21, No. 6,pp. 555-559
【文献】T-Cell Therapy for Diffuse Interstitial Pontine Glioma (on line),2014年,https://web.archive.org/web/20140405135629/http://dana.org/Media/GrantsDetails.aspx?id=38777
【文献】Cancer Letters,2016年,Vol. 380, No. 1,pp. 10-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/17
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 43/00
C07K 14/725
C07K 16/30
C07K 19/00
C12N 15/11
C12N 15/13
C12N 15/62
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんの進行の処置または遅延において使用するための、ガングリオシドGD2(GD2)に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変されたT細胞を含む治療有効量の組成物であって、がんがヒストンH3 K27M(H3K27M)変異を有する、組成物。
【請求項2】
1つ以上の抗がん剤および/または1つ以上の化学療法剤をさらに含む、請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記対象がグリオーマを有する、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記対象がびまん性グリオーマを有する、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記対象が、びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)を有する対象、および、びまん性正中グリオーマを有する対象からなる群より選択される、請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変されたT細胞を含む組成物が、以下の効果の1つ以上を提供する、請求項に記載の使用のための組成物:
患者におけるH3K27M陽性がん細胞の数を減少させる、
患者における腫瘍負荷を低減および/または排除する。
【請求項7】
前記T細胞がナチュラルキラー(NK)T細胞を含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)が、14G2a、ch14.18、hu14.18K322A、m3F8、hu3F8-IgG1、hu3F8-IgG4、HM3F8、およびDMAb-20からなる群より選択される抗体の抗原結合ドメインを含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記抗原結合ドメインが、単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)が、T細胞膜貫通ドメイン、T細胞受容体シグナル伝達ドメイン、および/または少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記共刺激ドメインが、CD28、OX40/CD134、4-1BB/CD137/TNFRSF9、FcERIγ、ICOS/CD278、ILRB/CD122、IL-2RG/CD132、およびCD40の1つ以上の一部または全部を含む、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記共刺激ドメインが、4-1BBを含む、請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)が、GD2エピトープ:GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galに特異的に結合する重鎖および軽鎖可変領域を含む抗原結合ドメイン(scFv)を含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記CARが、14G2a scFvを含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照〕
本発明は、米国仮特許出願第62/651,406号(2018年4月2日出願)及び米国仮特許出願第62/531,872号(2017年7月12日出願)の優先権を主張し、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、がんの免疫療法的処置に関する。特に、本発明は、GD2特異的キメラ抗原受容体を発現するように操作された免疫細胞を含む免疫療法組成物を用いて、ヒストンH3 K27M(H3K27M)変異を有するがん(例えば、H3K27M変異を有するグリオーマ)を処置する方法に関する。本発明の組成物および方法は、臨床および研究の両方の場面、例えば、生物学、免疫学、医学、および腫瘍学の分野内での使用を見出す。
【0003】
〔背景〕
がんは、人類の生命機会損失および医療費の両方の点で最も破壊的な疾患の1つである。それはまた、未対処の臨床的必要性を提示する。がんは、典型的には、手術、化学療法、放射線療法、またはそれらの組み合わせを用いて処置される。しかし、これらの処置はしばしば、免疫系抑制、体内の正常細胞の破壊、自己免疫、異常な細胞代謝、さらには転移および二次がんの発症を含む重大な副作用を有する。
【0004】
びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)および他のヒストンH3 K27M(H3K27M)変異正中グリオーマは、極めて攻撃的でありそして普遍的に致命的な小児がんの例である。これらの腫瘍の分子的起源を特徴付けて、多くの進歩が達成されてきたが、臨床管理における改善は依然としてとらえどころがなく、DIPGの生存期間の中央値は約10ヶ月のままであった。チェックポイント阻害剤を含む免疫療法剤は、伝統的な治療で難治性の多数の成人がんにおいて実質的な臨床的利益を提供しているが、これらの薬剤はDIPGのような小児がんにおける決定的な利益をまだ実証していない。
【0005】
〔概要〕
本発明は、がんの免疫療法的処置に関する。特に、本発明は、GD2特異的キメラ抗原受容体(GD2 CAR)を発現するように操作された免疫細胞を含む免疫療法組成物を用いて、ヒストンH3 K27M(H3K27M)変異を有するがん(例えば、H3K27M変異を有するDIPG)を処置する方法に関する。
【0006】
本明細書に記載されるように、H3K27M変異がん(例えば、びまん性グリオーマ(例えば、びまん性正中グリオーマおよびびまん性内因性橋グリオーマ(DIPG))のために、免疫療法のための新たな標的およびストラテジーが同定された。特に、本発明は、びまん性グリオーマの文脈において生じる有意かつ著しく高いレベルのジシアロガングリオシドGD2発現を同定した。
【0007】
従って、1つの態様において、H3K27M変異によって特徴付けられるがんを処置する方法が提供され、この方法は、このようながんを有する個体(例えば、患者)に、GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変された有効量の免疫細胞を投与する工程を含む。特定の実施形態では、がんはグリオーマである。いくつかの実施形態では、グリオーマはびまん性内因性橋グリオーマである。他の実施形態では、がんはびまん性正中グリオーマである。しかし、本発明は、それに限定されない。実際、H3K27M変異を有する任意のがんが、本明細書中に記載される組成物および方法を用いて処置され得る。
【0008】
特定の実施形態において、GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変された免疫細胞はT細胞である。本発明は、そのように改変されたT細胞の型によって限定されない。いくつかの実施形態において、T細胞はCD3+T細胞(例えば、CD4+およびCD8+T細胞の組合せ)である。特定の実施形態において、T細胞はCD8+T細胞である。他の実施形態では、T細胞はCD4+T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞はナチュラルキラー(NK)T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はγδT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞はCD4+およびCD8+T細胞の組合せ(例えば、CD3+である)である。特定の実施形態において、T細胞は記憶T細胞(例えば、組織常在性記憶T(Trm)細胞、幹記憶TSCM細胞、または仮想記憶T細胞)である。特定の実施形態において、T細胞は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、NKT細胞、記憶T細胞、および/またはγδT細胞の組合せである。いくつかの実施形態において、改変された免疫細胞は、サイトカイン誘導キラー細胞である。
【0009】
特定の実施形態において、免疫細胞において発現されるCARは、GD2を特異的に認識する(例えば、GD2のエピトープ(例えば、GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Gal)に特異的に結合する)任意のCARである。本発明は、GD2特異的CARの型によって限定されない。実際、GD2に特異的に結合する任意のCARを使用して、免疫細胞を遺伝的に改変する(例えば、免疫細胞において発現させる)ことができる。例示的なCARには、限定するものではないが、14G2a、ch14.18、hu14.18K322A、m3F8、hu3F8-IgG1、hu3F8-IgG4、HM3F8、およびDMAb-20(これらに限定されない)などのGD2特異的抗体のGD2結合ドメインを含むCARが含まれる。特定の実施形態において、抗原結合ドメインは、GD2のエピトープを認識するかまたはそれに特異的に結合する重鎖および軽鎖可変領域を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、CARは、膜貫通ドメイン(例えば、T細胞膜貫通ドメイン(例えば、CD28膜貫通ドメイン))、および、1つ以上の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)(例えば、T細胞共受容体シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3-ゼータ鎖(CD3ζ))を含むシグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、CARは、1つ以上の共刺激ドメイン(例えば、T細胞活性化を刺激するための第二シグナルを提供するドメイン)を含む。本発明は、共刺激ドメインの型によって限定されない。実際、限定するものではないが、CD28、OX40/CD134、4-1BB/CD137/TNFRSF9、FcεRIγ、ICOS/CD278、ILRB/CD122、IL-2RG/CD132、およびCD40を含む、当技術分野で公知の任意の共刺激ドメインを使用することができる。特定の実施形態において、共刺激ドメインは4-1BBである。
【0010】
特定の実施形態において、H3K27M発現細胞によって特徴付けられるがん(例えば、H3K27M発現細胞を有するDIPG)に罹患している動物(例えば、ヒト)を、GD2特異的CARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞を含む治療有効量の免疫療法組成物に暴露することにより、そのようなH3K27M発現がん細胞または支持細胞の増殖が完全に阻害され、そして/または集団としてのそのような細胞を他の処置(例えば、がん治療薬または放射線療法の細胞死誘導活性)に対してより感受性にすることが、本発明により提供される。
【0011】
本発明は、本明細書に記載される方法および組成物が、単独療法として投与される場合(例えば、がん細胞を死滅させるため、および/またはがん細胞における細胞増殖阻害、アポトーシスおよび/または細胞周期停止を誘導するため)、または追加の薬剤、例えば、他の細胞死誘導または細胞周期破壊がん治療薬または放射線療法(例えば、がん治療薬または放射線療法単独でのみ処置された動物における細胞の対応する割合と比較して、がん細胞のより多い割合をアポトーシスプログラムの実行に感受性にするため)とともに時間的な関係で投与される場合(例えば、併用療法において)、小児脳がん、特にH3K27M発現細胞によって特徴付けられるがん型の処置のための、長年にわたるが未対処の医学的必要性を満たすことを意図する。
【0012】
従って、特定の実施形態において、本発明は、患者におけるがんの進行を処置するかまたは遅延させる方法を提供し、ここで、がんはヒストンH3 K27M(H3K27M)変異によって特徴付けられ、方法は、患者からがん細胞を含む生物学的試料を得る工程;がん細胞内のH3K27M変異の存在または非存在を決定する工程;および、がん細胞がH3K27M変異を有すると特徴付けられる場合に、GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変されたT細胞を含む組成物の治療有効量を患者に投与する工程を含む。特定の実施形態において、GD2特異的CAR T細胞を含む遺伝的に改変されたT細胞組成物の治療有効量は、このような処置後の患者におけるH3K27M陽性がん細胞の数を減少させる。特定の実施形態において、GD2特異的CAR T細胞を含む遺伝的に改変されたT細胞組成物の治療有効量は、このような処置後の患者における腫瘍負荷を低減および/または排除する。特定の実施形態において、投与は、患者が放射線療法を受ける前、受けると同時に、および/または受けた後に行われる。特定の実施形態において、方法は、1つ以上の抗がん剤および/または1つ以上の化学療法剤を患者に投与する工程をさらに含む。特定の実施形態において、GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変された治療有効量のT細胞と、抗がん剤のコースとを用いた患者の組み合わせ処置は、改変T細胞または抗がん剤/放射線単独で処置された患者と比較して、このような患者においてより大きな腫瘍応答および臨床的利益を生じる。全ての承認された抗がん剤および放射線処置のための用量が知られているので、本発明は、改変されたT細胞とのそれらの種々の組み合わせを意図する。
【0013】
特定の実施形態において、本発明は、GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変されたT細胞を含む治療有効量の組成物(例えば、免疫療法組成物)を提供する(例えば、対象におけるがんの進行を処置するかまたは遅延させるための使用のための(例えば、がんがヒストンH3 K27M(H3K27M)変異を有する))。本明細書中に記載されるように、組成物は、1つ以上の抗がん剤および/または1つ以上の化学療法剤をさらに含み得る。本発明はまた、H3K27M発現細胞(例えば、H3K27M発現細胞によって特徴付けられるDIPG)における細胞周期停止および/またはアポトーシスを誘導するための組成物の使用を提供する。本発明はまた、アポトーシスおよび/または細胞周期停止のインデューサーのような追加の薬剤、および化学療法剤での処置前の細胞周期停止の誘導を介する正常細胞の化学防御に対して細胞を感作させるための組成物の使用に関する。本発明の組成物は、H3K27M発現細胞によって特徴付けられる任意の型のがん(例えば、H3K27M発現細胞によって特徴付けられるDIPG)、およびさらに、アポトーシス細胞死の誘導に応答性の任意の細胞(例えば、がんなどの過剰増殖性疾患を含む、アポトーシスの調節不全によって特徴付けられる障害)などの障害の処置、寛解、または予防に有用である。特定の実施形態において、組成物を、H3K27M発現細胞によって特徴付けられるがん(例えば、H3K27M発現細胞によって特徴付けられるDIPG)であって、がん治療に対する耐性によってさらに特徴付けられるがん(例えば、化学耐性、放射線耐性、ホルモン耐性などであるがん細胞)を処置、寛解、または予防するために使用することができる。本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリア中でGD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変されたT細胞を含む組成物(例えば、免疫療法組成物)を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明はさらに、本明細書中に提供される記載に従って使用するための、GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変されたT細胞を含む、1つ以上の記載される組成物(例えば、免疫療法組成物)を含むキットを提供する。例えば、特定の実施形態において、本発明は、GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変されたT細胞、およびこの組成物を動物(例えば、H3K27Mがんを有すると診断された)に投与するための説明書を含む、1つ以上の記載される組成物(例えば、免疫療法組成物)を含むキットを提供する。キットは必要に応じて、他の治療薬(例えば、抗がん剤またはアポトーシス調節剤)を含み得る。いくつかの実施形態において、このキットは、GD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変されたT細胞を含む医薬、任意選択の薬学的に受容可能なキャリア、および個体におけるがんの進行を処置するかまたは遅延させるための医薬の投与のための説明書を含む添付文書を含む。
【0015】
〔図面の説明〕
図1は、DIPGにおけるGD2過剰発現の同定を示す。図1Aは、患者由来DIPG細胞培養物中の細胞表面抗原のフローサイトメトリーに基づくスクリーニングを示す。供与された死後DIPG患者に由来する4つの独立した低継代(<12)培養物を、無血清神経球形成培養条件下で拡大し、そして284個のモノクローナル抗体のパネル(BD Lyoplate)を使用して表面抗原をプロファイリングした。ダブレットおよび死細胞を除外するためにゲートした後、標的抗原で染色された生細胞(全てのアッセイにおいて生存率>80%)の蛍光強度中央値(MFI)を、対応するアイソタイプ対照で染色された生細胞のMFIで割り、そしてLog10スケール化した(図3を参照のこと)。図1Bは、スクリーニングされた培養物間のヒット重複の評価が、全てのスクリーニングされた培養物において、アイソタイプ対照の少なくとも10倍のMFIで存在する合計36個のヒットを同定したことを示す。図1Cは、DIPGと診断された、ヒストンH3 WTの小児高悪性度グリオーマ培養物VU-DIPG10、および皮質に生じたpcGBM2のフローサイトメトリー染色が、ヒストンH3 K27M DIPGと比較して著しく低いGD2発現レベルを示すことを示す。図1Dは、腫瘍細胞を同定するための変異H3K27Mに対する抗体およびマウス抗GD2(14g2a)を利用する初代DIPG腫瘍標本の二重免疫組織化学を示し、これは、初代DIPGにおける広範な局所的GD2発現を示す(スケールバー=100ミクロン)。図1Eは、DIPGに対する有効性を評価するために使用される、GD2指向性14g2a scFv;4-1BB;CD3z CAR T細胞および対照構築物の模式図を描写する。図1Fは、DIPG細胞のGD2-CAR T細胞とのインキュベーションが、CD19-CAR T細胞の存在下での大部分の条件下での最小溶解比と比較して、低いエフェクター:標的(E:T)比で強力なDIPG細胞溶解を達成することを示す。図1Gは、GD2-CAR T細胞のDIPG培養物とのインキュベーションが、CD19-CAR T細胞による最小の産生と比較して、実質的なサイトカイン(IFN-gおよびIL-2)生成を誘導したことを示す。対照的に、GD2を発現していないH3 WT株であるVU-DIPG 10は(図1Cを参照のこと)、GD2-CAR T細胞によるサイトカイン産生を引き起こさなかった。図1Hは、GD2シンターゼのCas9媒介欠失が、DIPG培養物におけるGD2発現を排除することを示す。図1H(a)Cas9-gRNA複合体を用いてエレクトロポレーションしたSU-DIPG13細胞は、GD2表面発現を排除した。図1H(b)gRNA標的部位における約45bpの欠失後(DecompositionウェブツールによるIndelのTrackingにおいて実施した、モデル化インデルトレースと親配列との間の標準誤差の分散-共分散行列の両側T検定)。対照として、AAVS1遺伝子座を標的とするgRNAを使用した。図1H(c)は、GD2陰性株VUMC-10またはGD2-高SU-DIPG13とのインビトロでのインキュベーション後にGD2-CAR T細胞に対して行ったCell Trace Violet増殖アッセイが、GD2-CAR T細胞の抗原特異的増殖を実証したことを示す。図1Iは、非改変対照細胞または対照AAVS1遺伝子座を標的とするCas9と比較して、GD2シンターゼをノックアウトするためにCRISPR/Cas9を使用して生成されたH3K27M GD2neg株との共培養後に、GD2-CAR T細胞が実質的なレベルのIFN-γまたはIL-2を産生しないことを示す。図1Jは、ガングリオシド酵素発現の経路分析を示す。標的ガングリオシド合成経路酵素の転写を、半定量的RT-PCRによって評価した。生合成フロー図を提供する。ここで、所定の遺伝子型の各培養物にわたる主要経路酵素(太字の遺伝子)の平均発現値(2-dCt(HPRT))を示し、そして矢印の大きさをH3F3A K27M培養物における平均発現に対してスケール化している。H3F3A K27M培養物の大部分にわたって、GD2の上流のガングリオシド合成酵素の発現は、H3WT小児高悪性度グリオーマ(pHGG)培養物と比較して実質的に増加した。全ての培養物にわたって、B3GALT4発現は、上流遺伝子と比較して最小であり、このことは、GD2からGD1bへの変換の速度が潜在的に制限されていることを示す。各々のH3遺伝子型カテゴリーにおける個々の培養物についての発現値のヒートマップおよび棒グラフ表示(各々技術的二連で3つの生物学的複製物)を提供する。qPCR発現分析に利用したプライマーを実施例1、表2に示す。
【0016】
図2は、GD2標的化CAR免疫療法が、DIPG同所性異種移植片において強力かつ持続的な抗腫瘍応答を達成したことを示す。図2Aは、橋中にルシフェラーゼ発現SU-DIPG 6を異種移植し(全ての画像に対するマップ:輝度、最小=(5×10)、最大=(5×10))、そして指定された(1×10)GD2-CARまたはCD19-CAR T細胞を静脈内注入したNSGマウスの生物発光イメージングを示す。形質導入効率を、投与前に抗イディオタイプ抗体を用いたフローサイトメトリーによって評価し、それは日常的に>70%であった。処置後(DPT)14日と28日の間に、劇的かつ普遍的な抗腫瘍応答が、GD2-CAR処置マウスで観察され、一方、CD19-CAR T細胞を用いて処置したマウスでは自然退行は観察されなかった。図2Bは、フラックスの変化倍率として表される、経時的な腫瘍負荷を示す。図2Cは、SU-DIPG6 GD2-CAR対CD19-CAR T細胞処置マウスの浸潤脳幹領域内のH3K27M+腫瘍細胞密度の定量を示す。CD19-CAR T細胞処置対照のサンプリングした体積におけるマウス1匹当たり約18,596細胞と比較して、GD2-CAR T細胞処置SU-DIPG6異種移植片内では、マウス1匹当たり約36個のH3K27M+細胞の残存が、サンプリングした体積において同定された。図2Dは、変異ヒストンH3K27Mについて染色されたCD19-CARおよびGD2-CAR処置SU-DIPG6腫瘍の代表的な免疫蛍光共焦点顕微鏡観察を示す。図2e~2iは、DIPG、SU DIPG13FLの第2の患者由来同所性異種移植片モデルにおけるGD2-CAR活性を示す。図2eおよび2fは、上記のような経時的な生物発光イメージングを示す。図2gは、CD19-またはGD2-CAR T細胞を用いて処置したSU-DIPG13FL異種移植片の代表的な免疫蛍光共焦点顕微鏡観察であり、そしてH3K27M+腫瘍細胞の排除を示す。図2hは、移植領域を横切るタイル免疫蛍光画像を示す。図2Iは、SU DIPG13FLの浸潤脳幹領域内のH3K27M+腫瘍細胞密度の定量を示す。CD19-CAR T細胞処置対照のサンプリングした体積におけるマウス1匹当たり約31,953細胞と比較して、SU-DIPG13FL異種移植片において、各GD2-CAR T細胞処置マウスのサンプリングした体積中に合計約32個のH3K27M+細胞が残存していた。示すデータは、平均±SEMである。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05(生物発光イメージングデータのために適用した多重比較のためのHolm-Sidak修正を用いた独立両側スチューデントt検定による)。スケールバー=100ミクロン。
【0017】
図3は、GD2-CAR T細胞の単回静脈内投与が、ルシフェラーゼ発現患者由来DIPG異種移植片をバックグランド生物発光レベルまで排除したことを示す。図3(a)は、インビボ生物発光イメージング(図2に示す)によってモニターしたSU-DIPG6およびSU-DIPG13FL異種移植片腫瘍負荷を示す。この測定によって腫瘍排除が完全であったかどうかを評価するために、動物の側腹の腫瘍保有領域および未関与領域にわたって、全フラックスの対応関心領域(ROI)測定を行った。次いで、バックグラウンドを超える変化倍率を、バックグラウンドROIフラックスに対する腫瘍ROIフラックスの比率として計算した(SU-DIPG6 n=10 CD19-CAR、11 GD2-CAR;SU-DIPG13-FL n=13 CD19-CAR、14 GD2-CAR)。それゆえ、1の比率はバックグラウンドレベルへの腫瘍発光シグナルの排除を示し、これは、両方のモデルにおいてDPT40までに達成された(*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.0001、多重比率のためのHolm-Sidak修正を用いた両側スチューデントt検定)。図2(b)は、SU-DIPG6、SU-DIPG13FL、または追加のH3K27M+DMG培養物SU-pSCG1およびQCTB-R059のCD19-CARまたはGD2-CAR処置コホートにおいて、動物間に、インビボ生物発光イメージングによって評価した初期腫瘍負荷における統計的有意差が存在しなかったことを示す(多重比較のためのTukey修正を用いた二元配置ANOVA、n.s.=α=0.05で有意ではない)。散乱点は個々のマウスを示し、棒は平均を示し、そしてエラーバーはSEMを示す。
【0018】
図4は、DIPG異種移植片におけるGD2 CAR T細胞療法の選択圧を示す。CD19またはGD2-CAR T細胞処置SU-DIPG13FL異種移植片におけるGD2についての免疫蛍光染色は(クローン14g2a)、殺腫瘍活性の急性期の間のGD2-CAR T細胞療法の選択圧を示した。DPT14(実質腫瘍の大部分がGD2 CAR T細胞処置動物において排除された)までに、少数の残存GFP+腫瘍細胞は、GD2について同時染色されなかった。スケールバーは10ミクロンを表す。各チャートについて与えられた合計nは、各々のCAR/時点の組み合わせについて2匹の動物にわたって評価された細胞の数を示す。
【0019】
図5は、DIPG培養物が、他のGD2陽性腫瘍細胞株と比較して、均一に高レベルでGD2を発現することを示す。図5Aは、神経芽細胞腫(KCNR、CHLA136、CHLA255)、骨肉腫(143B、MG63-3)、およびユーイング肉腫(TC32、EW8)を含む、GD2標的化免疫療法について調査中の他の悪性腫瘍に由来する細胞と比較して、DIPG培養物の表面上でのGD2についてのフローサイトメトリー染色(クローン14g2a)がより強くかつより一様な発現を示したことを示す。図5Bは、DIPGおよび他のがん株についての蛍光ビーズ標準(Quantibrite、BD)を使用して得られたGD2表面発現の定量的推定を示す。
【0020】
図6は、GD2-CAR T細胞療法が、DIPG同所性異種移植片の生存を改善することを示す。図6Aは、SU DIPG-13P*(これは、移植の1ヶ月以内に致死的であるDIPGの特に攻撃性の患者由来異種移植片モデルである)におけるGD2-CAR T細胞処置同所性異種移植片の生存解析が、GD2-CAR T細胞処置動物における強固な生存向上を明らかにしたことを示す(p<0.0001 ログランク(Mantel-Cox)検定、3つの独立したコホートにわたるn=22 CD19-CARおよび23 GD2 CAR(図7を参照のこと))。CD19-CAR T細胞処置異種移植片は研究終了時までに普遍的に致死的であり、一方、治療の急性毒性を生き残った全てのGD2-CAR T細胞処置動物は、それらがGVHD様症状を示した研究終了時まで生き残った(図8を参照のこと)。図6Bは、DPT50でのSU-DIPG13P*異種移植片のヘマトキシリン-エオシン染色が、CD19-CAR T細胞処置対照における脳、および正常全体組織構造の全体にわたって観察される高浸潤性実質腫瘍のGD2-CAR T細胞による排除を実証したことを示す。図6Cは、DPT14で分析したSU-DIPG6 GD2-CAR T細胞処置異種移植片のヘマトキシリン-エオシン染色が、皮質、海馬、および脳幹において、脳室拡大であるが組織学的に正常に見えるニューロンを示したことを示す(挿入画像)。図6Dは、DPT7 SU-DIPG13FL異種移植片の蛍光顕微鏡観察が、静脈内投与されたGD2-CAR-mCherry T細胞が移植された腫瘍に浸潤していることを示したことを示す。図6Eは、SU-DIPG13FL異種移植髄質中のDPT14における浸潤GD2-CAR-mCherry T細胞の代表的な画像が、Iba1+マクロファージとの空間的関連を示したことを示す。図6Fは、切断カスパーゼ3+との共局在化によって証明される、GFP+腫瘍細胞のアポトーシスでのGD2-CAR mCherry T細胞媒介腫瘍細胞死滅の代表的な画像を示す。図6Gは、DPT7で示される、異種移植された橋における非アポトーシス性NeuN+ニューロンに近接して生じる殺腫瘍活性を示す(図10を参照のこと)。図6Hは、急性抗腫瘍活性の期間の間にSU-DIPG13FL異種移植片の実質に浸潤しているGD2-CAR-mCherry T細胞の代表的な画像を示す(図9を参照のこと)。
【0021】
図7は、SU-DIPG13P*異種移植片の3つの独立したコホートにおいて評価したGD2 CAR T細胞療法の生存利益を示す。合わせたコホートデータおよび統計解析を提示する。1/3のコホート(コホート2)において、GD2 CAR T細胞処置動物におけるいくつかの死亡が、DPT8~13から、急性に観察された。動物は以下の通りであった:コホート1 CD19-CAR、5 GD2-CAR、コホート2 CD19-CAR、10 GD2-CAR、コホート3 CD19-CAR、9 GD2-CAR。
【0022】
図8は、異種移植片対宿主病の発症が、GD2-CAR T細胞処置患者由来異種移植片モデルにおけるモニター期間を制限することを示す。ヒトT細胞のNSGマウスへの養子移入が、移植片対宿主病を生じることが示されている。図8Aは、SU-DIPG13P*異種移植片において、CD19-CAR T細胞を用いて処置されたマウスが、麻痺および異常な運動行動を含む、腫瘍進行と一致する終了時での神経学的障害の広範な徴候を示すが;しかし、脱毛などのGvHDの古典的徴候はこの時点では存在しないことを示す。この時点で、GD2-CAR T細胞を用いて処置した動物は正常に見える。図8Bは、DPT14でのCD19 CAR処置動物由来の皮膚標本のヘマトキシリン/エオシン染色が、全体的に正常に見えることを示す。図8Cは、DPT50までに、GD2-CAR処置動物が広範な脱毛を示すことを示し、そして図8Dは、皮膚標本のヘマトキシリン/エオシン染色が、GvHDの発症と一致する、真皮の広範なリンパ球浸潤および表皮過形成を示すことを示す。H&E画像のスケールバーは100umである。
【0023】
図9は、標識GD2 CAR T細胞が、抗腫瘍活性の期間の間に腫瘍部位に侵入することを示す。mCherryとC末端で融合されたCARを有するヒトT細胞を、示される時点で安楽死させたDIPG異種移植片の組織学的標本において追跡した。レンチウイルスGFP-ルシフェラーゼ構築物を用いて安定に形質導入されたDIPG13-FLを、P2 NSGマウスの橋中に移植し、そして1×10のGD2-CAR-mCherryまたはCD19-CAR-mCherry T細胞の単回静脈内投与を用いて処置した。生物発光イメージングを使用して、等価な初期腫瘍負荷を有する動物をGD2-またはCD19-CAR群に無作為化した。髄質腫瘍負荷の代表的な蛍光顕微鏡写真を示す。GD2-CAR-mCherry T細胞は、DPT7ほど早く腫瘍実質に浸潤する。この時点までに、髄膜腫瘍はGD2-CARmCherry群において排除されているが、実質腫瘍負荷は残存している。対照的に、CD19-CARmCherry T細胞は有意な腫瘍排除を達成しないが、散乱したCD19-CAR-mCherry細胞を、組織実質内で同定することができる。GD2-CAR-mCherry動物からのDPT7および14の画像を図6Hに示す;これらを、対応するCD19-CAR-mCherry画像との比較のために図9において再び示す。スケールバーは500umを表す。
【0024】
図10は、GD2-CAR T細胞処置DIPG異種移植片の切断カスパーゼ-3染色を示す。図10Aは、DPT7で安楽死させ、そしてニューロンマーカーNeuNおよびアポトーシスマーカー切断カスパーゼ3(CCasp3)について染色した、GD2-CAR T細胞の単回静脈内投与を用いて処置したDIPG13-FL異種移植片の免疫蛍光顕微鏡観察を示す。図10Bは、小脳における抗腫瘍活性の免疫蛍光顕微鏡写真を示し、これは局所的抗腫瘍活性の存在下でのインタクトな顆粒層ニューロンを示す。図10Cは、GD2-CAR T細胞処置異種移植片において同定されたCCasp3+細胞の総集団のうち、<2%がNeuNについて同時染色されることを示す。
【0025】
図11は、GD2 CAR T細胞療法が、多数の型の正中H3K27M変異小児びまん性正中グリオーマを有効に排除し、そして視床異種移植片における毒性と関連することを示す。図11Aは、H3K27M+ DMGの起源の解剖学的部位を示す。図11Bおよび11Cは、視床(QCTB-R059)および脊髄(SU-pSCG1)において生じたH3K27M変異腫瘍の患者由来培養物モデルが、フローサイトメトリーによって評価したところGD2を高度にかつ一様に発現し(図11B)、そしてインビトロでGD2またはCD19-CAR T細胞とインキュベートした場合に、IFNγおよびIL-2の抗原依存性分泌を誘導することを示す(図11C)。図11Dおよび11Eは、GFPおよびルシフェラーゼを発現するように安定に形質導入されたSU-pSCG1細胞をNSGマウスの髄質中に移植し、そして1×107のGD2-CAR T細胞またはCD19-CAR T細胞の静脈内注入を用いて処置し、そして移植された腫瘍の実質的な排除がDPT14までに観察されたことを示す。図11Fは、研究終了時にSU-pSCG1の異種移植片中に残存していたH3K27M+細胞の定量が、CD19-CAR T細胞の対照と比較して、GD2-CAR T細胞処置動物における移植腫瘍のほぼ完全な排除を明らかにしたことを示す。図11Gは、罹患領域を横切るタイル免疫蛍光画像を示す(GFP、H3K27M、およびDAPI)。図11Hおよび11Iは、H3K27M変異患者由来細胞培養物QCTB-R059を、NSGマウスの視床中に同所性に移植し、そしてSU-pSCG1について記載したようにGD2またはCD19-CAR T細胞の全身投与によって処置したことを示す。生物発光イメージングによって決定した経時的な腫瘍負荷は、DPT 14までの顕著な低減、およびDPT30における生存動物における組織学的排除を示した(図12を参照のこと)。図11Jは、視床における炎症を伴うテント小脳を介するヘルニアおよび第3脳室圧縮の危険性を示す図を提供する。図11Kは、DPT14までに観察された視床異種移植片を有するマウスにおけるGD2-CAR T細胞療法関連死を示し、これは正中腫瘍に対する免疫療法の潜在的な害を示す。示すデータは、平均±SEMである。***p<0.001、*p<0.05、多重比較のためのHolm-Sidak修正を用いた独立両側スチューデントt検定による。
【0026】
図12は、GD2 CAR-T細胞療法が、生存しているQCTB-R059視床H3K27M異種移植片において腫瘍負荷の組織学的排除を達成することを示す。CD19およびGD2-CAR T細胞処置動物からの代表的な画像は、GFP発現腫瘍細胞の排除を示す。実質的な残存腫瘍負荷の領域は同定できなかった。
【0027】
図13は、患者由来DIPG培養物においてスクリーニングした細胞表面抗原を示す。BD Lyoplateパネルからの表面マーカー発現(アイソタイプ対照に対する蛍光強度の中央値)を示す。
【0028】
〔定義〕
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、そして適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に記載されるいずれかの定義が、参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文献と矛盾する場合、以下に記載される定義が優先されるものとする。
【0029】
本明細書中で使用される用語「疾患」および「病的状態」は、本明細書中で別段の指示がない限り、互換的に使用されて、その種または群の個体の大部分に対して不都合ではない条件下で罹患個体に対して有害である、種または群(例えば、ヒト)のメンバーについて正常または平均とみなされる状態からの逸脱を示す。このような逸脱は、正常な機能の遂行を妨げるかまたは変更する、対象またはその任意の器官もしくは組織の正常な状態の任意の障害に関連する状態、徴候、および/または症状(例えば、下痢、悪心、発熱、疼痛、水疱、おでき、発疹、免疫抑制、炎症など)として現れ得る。疾患または病的状態は、微生物(例えば、病原体または他の感染因子(例えば、ウイルスまたは細菌))との接触によって引き起こされ得るか、またはそれから生じ得、環境要因(例えば、栄養不良、工業災害、および/または気候)に応答したものであり得、生物における固有のもしくは潜在的な欠損(例えば、遺伝的異常)またはこれらおよび他の要因の組み合わせに応答したものであり得る。
【0030】
用語「宿主」、「対象」または「患者」は、本発明の組成物および方法によって処置される(例えば、投与される)個体を指すように、本明細書において互換的に使用される。対象としては、限定するものではないが、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が挙げられ、そして最も好ましくはヒトが挙げられる。本発明の文脈において、用語「対象」は、一般に、本発明の1つ以上の組成物(例えば、本明細書に記載の遺伝的に改変された免疫細胞)が投与されるか、または投与されている個体を指す。
【0031】
用語「緩衝液」または「緩衝剤」は、溶液に添加されたときに、溶液をpHの変化に抵抗させる材料を指す。
【0032】
用語「還元剤」および「電子供与体」は、第2の材料に電子を供与して、第2の材料の原子のうちの1つ以上の酸化状態を低下させる材料を指す。
【0033】
用語「一価塩」は、金属(例えば、Na、K、またはLi)が溶液中で正味の1+電荷(すなわち、電子よりも1つ多い陽子)を有する任意の塩を指す。
【0034】
用語「二価塩」は、金属(例えば、Mg、Ca、またはSr)が溶液中で正味の2+電荷(すなわち、電子よりも2つ多い陽子)を有する任意の塩を指す。
【0035】
用語「キレーター」または「キレート剤」は、金属イオンへの結合に利用可能な孤立電子対を有する1つより多い原子を有する任意の材料を指す。
【0036】
用語「溶液」は、水性または非水性の混合物を指す。
【0037】
「障害」は、本発明の組成物または方法を用いた処置から利益を得る任意の状態または疾患である。これには、哺乳動物に問題の障害への素因を与える病的状態を含む、慢性および急性障害が含まれる。本明細書で処置される障害の非限定的な例は、がんなどの状態を含む。
【0038】
用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、ある程度の異常な細胞増殖性に関連する障害を指す。例えば、「過剰増殖性障害または疾患」は、細胞の過度な増殖によって引き起こされる疾患または障害である。一実施形態では、細胞増殖性障害はがんである。
【0039】
本明細書中で使用される用語「がん」および「腫瘍」は、増殖制御の喪失を示す細胞または細胞の制御されない成長もしくは増殖の組織を指す。がんおよび腫瘍細胞は、一般に、接触阻害の喪失によって特徴付けられ、侵襲性であり得、そして転移する能力を示し得る。本発明は、がんの型または処置の型(例えば、予防的および/または治療的処置)によって限定されない。実際、脳がんまたは中枢神経系の他のがん(例えば、びまん性正中グリオーマまたはびまん性内因性橋グリオーマ(DIPG、脳の底部に見出される高度に攻撃性のグリア腫瘍、例えば、Louis et al., Acta Neuropathol (2016) 131:803-820を参照のこと)、黒色腫、リンパ腫、上皮がん、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、肺がん、腎臓がん、黒色腫、腎臓がん、前立腺がん、肉腫、がん腫、および/またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、種々のがんが、本明細書中に記載される組成物および方法を用いて処置され得る。
【0040】
本明細書中で使用される「転移」は、新たな位置における類似のがん性病変の発達をともなって、がんが起源の部位から身体の他の領域に広がるかまたは移動するプロセスを指す。「転移性」または「転移する」細胞は、隣接する細胞との接着接触を喪失し、そして血流またはリンパを介して疾患の原発部位から移動して、隣接する身体構造に侵入するものである。
【0041】
本明細書中で使用される用語「抗がん剤」は、がんなどの過剰増殖性疾患の処置(例えば、哺乳類、例えば、ヒトにおける)において使用される、任意の治療剤(例えば、化学療法化合物および/または分子療法化合物)、アンチセンス療法、放射線療法、または外科的介入を指す。
【0042】
「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために、必要な投与量および期間で、有効な量を指す。
【0043】
本明細書中で使用される用語「治療有効量」は、障害の1つ以上の症状の寛解をもたらすか、または障害の進行を防止するか、または障害の退行を引き起こすのに十分な治療剤の量を指す。例えば、がんの処置に関して、一実施形態において、治療有効量は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%、腫瘍成長の速度を低下させる(例えば、患者における腫瘍負荷を低減および/または排除する(例えば、患者におけるH3K27M陽性がん細胞の数を減少させる))、腫瘍体積を減少させる、転移の数を減少させる、腫瘍進行を低下させる、または生存期間を増加させる治療剤の量を指す。
【0044】
本明細書中で使用される用語「感作する」および「感作」は、第1の薬剤の投与を通じて、第2の薬剤の生物学的効果(例えば、細胞分裂、細胞増殖、増殖、浸潤、血管新生、壊死、またはアポトーシスを含むがこれらに限定されない細胞機能の態様の促進または遅延)に対して、動物または動物内の細胞を、より感受性、またはより応答性にすることを指す。標的細胞に対する第1の薬剤の感作効果を、第1の薬剤の投与有りまたは無しでの、第2の薬剤の投与に際して観察される、意図される生物学的効果(例えば、細胞増殖、増殖、浸潤、血管新生、またはアポトーシスを含むがこれらに限定されない細胞機能の態様の促進または遅延)の差異として測定することができる。感作された細胞の応答は、第1の薬剤の非存在下での応答に対して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、または少なくとも約500%増加し得る。
【0045】
本明細書中で使用される用語「精製」または「精製する」は、試料または組成物からの混入物または所望されない化合物の除去を指す。本明細書中で使用される用語「実質的に精製」は、試料または組成物からの約70~90%、最大で100%の混入物または所望されない化合物の除去を指す。
【0046】
本明細書中で使用される用語「投与」および「投与する」は、対象に本発明の組成物を与える行為を指す。人体への投与の例示的な経路としては、眼(点眼)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、口腔粘膜(頬側)、耳、直腸を介する、注射による(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、腫瘍内など)、局所的などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書中で使用される用語「共投与」および「共投与する」は、少なくとも2つの薬剤(例えば、遺伝的に改変された免疫細胞および1つ以上の他の薬剤(例えば、抗がん剤))または治療の対象への投与を指す。いくつかの実施形態において、2つ以上の薬剤または治療の共投与は同時である。他の実施形態では、第1の薬剤/治療は、第2の薬剤/治療の前に投与される。いくつかの実施形態において、共投与は、同じまたは異なった投与経路を介することができる。当業者は、使用される種々の薬剤または治療の製剤および/または投与経路が変動し得ることを理解する。共投与のための適切な投薬量は、当業者によって容易に決定され得る。いくつかの実施形態において、薬剤または治療が共投与される場合、それぞれの薬剤または治療は、それらの単独での投与に適切な投薬量よりも低い投薬量で投与される。したがって、薬剤または治療の共投与が潜在的に有害な(例えば、毒性の)薬剤の要求される投薬量を低下させる実施形態において、および/または2つ以上の薬剤の共投与が他の薬剤の共投与を介する薬剤のうちの1つの有益な効果に対する対象の感作をもたらす場合に、共投与が特に所望される。
【0048】
本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能」または「薬理学的に受容可能」は、対象に投与された場合に有害な反応(例えば、毒性、アレルギー性または他の免疫学的反応)を実質的に生じない組成物を指す。
【0049】
本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、リン酸緩衝食塩水、水、および種々の型の湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、ラウリル硫酸ナトリウム、等張および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、バレイショデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、ポリエチレングリコールなどを含むが、これらに限定されない、任意の標準的な薬学的キャリアを指す。組成物はまた、安定剤および防腐剤を含むことができる。担体、安定剤およびアジュバントの例は記載されており、そして当該分野で知られている(例えば、Martin,Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publ. Co., Easton,Pa (1975)(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。
【0050】
本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能な塩」は、標的対象において生理学的に許容される本発明の組成物の任意の塩(例えば、酸または塩基との反応によって得られる)を指す。本発明の組成物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から誘導され得る。酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。シュウ酸のような他の酸は、それ自体は薬学的に受容可能ではないが、本発明の組成物およびその薬学的に受容可能な酸付加塩の取得において中間体として有用な塩の調製において用いられ得る。塩基の例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NW4+(式中、WはC1~4アルキルである)の化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタノ酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサノ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル化物、ウンデカン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。塩の他の例としては、Na+、NH4+、およびNW4+(ここで、WはC1~4アルキル基である)などの適切な陽イオンと調合された本発明の化合物の陰イオンが挙げられる。治療的使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に受容可能であることが意図される。しかし、薬学的に受容可能でない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に受容可能な化合物の調製または精製における使用を見出し得る。
【0052】
治療的使用のために、本発明の組成物の塩は、薬学的に受容可能であることが意図される。しかし、薬学的に受容可能でない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に受容可能な組成物の調製または精製における使用を見出し得る。
【0053】
本明細書中で使用される用語「疾患の危険性がある」は、特定の疾患を経験する素因がある対象を指す。この素因は、遺伝性(例えば、遺伝性障害のような疾患を経験する特定の遺伝的傾向)であり得、または他の要因(例えば、環境条件、環境中に存在する有害化合物への曝露など)に起因し得る。従って、本発明が任意の特定の危険性に限定されることを意図するものではなく(例えば、対象は、単に他人に曝露され、そして他人と相互作用することによって、「疾患の危険性」があり得る)、また、本発明が任意の特定の疾患(例えば、がん)に限定されることを意図するものでもない。
【0054】
本明細書中で使用される用語「キット」は、材料を送達するための任意の送達システムを指す。免疫療法剤の文脈において、このような送達システムは、免疫原性薬物および/または支持材料(例えば、材料の使用のための説明書面など)をある位置から別の位置に貯蔵、輸送、または送達することを可能にするシステムを含む。例えば、キットは、関連する免疫療法剤(例えば、遺伝的に改変された免疫細胞および/または支持材料)を含む1つ以上の封入物(例えば、箱)を含む。本明細書中で使用される用語「分離キット」は、各々がキット全体の構成要素の小部分を含む2つ以上の別個の容器を含む送達システムを指す。容器は、意図される受領者に、一緒にまたは別々に送達されてもよい。例えば、第1の容器が、特定の使用のための免疫療法組成物を含む組成物を含み得、一方、第2の容器が、第2の薬剤(例えば、化学療法剤)を含む。実際、各々がキット全体の構成要素の小部分を含む2つ以上の別個の容器を含む任意の送達システムは、用語「分離キット」に含まれる。対照的に、「複合キット」は、単一の容器中(例えば、所望の構成要素の各々を収容する単一の箱中)の、特定の使用に必要とされる免疫原性物質の構成要素の全てを含む送達システムを指す。用語「キット」は、分離キットおよび複合キットの両方を含む。
【0055】
本明細書中で使用される用語「免疫グロブリン」または「抗体」は、特定の抗原に結合するタンパク質を指す。免疫グロブリンとしては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに以下のクラスのFabフラグメントおよびF(ab’)2フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない:IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、および分泌免疫グロブリン(sIg)。免疫グロブリンは、一般に、2つの同一の重鎖および2つの軽鎖を含む。しかし、用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、単鎖抗体および2鎖抗体も包含する。
【0056】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインを「VH」と称してもよい。軽鎖の可変ドメインを「VL」と称してもよい。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の部分であり、そして抗原結合部位を含んでいる。
【0057】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHおよびVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、例えば、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York, 1994), pp.269-315を参照のこと。
【0058】
本明細書中で使用される用語「抗原結合タンパク質」は、特定の抗原に結合するタンパク質を指す。「抗原結合タンパク質」としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、およびヒト化抗体を含む免疫グロブリン;Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、およびFab発現ライブラリー;ならびに単鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書中で使用される用語「エピトープ」は、特定の免疫グロブリンと接触する抗原の部分を指す。
【0060】
用語「特異的結合」または「特異的に結合」は、抗体(またはその部分(例えば、scFv))とタンパク質またはペプチドとの相互作用に関して使用される場合、その相互作用が、タンパク質上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味する;換言すれば、抗体(またはその部分(例えば、scFv))は、一般にタンパク質ではなく特定のタンパク質構造を認識し、そしてそれに結合している。例えば、抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、抗体および標識「A」を含む反応物におけるエピトープA(または遊離の、非標識A)を含むタンパク質の存在は、抗体に結合する標識Aの量を減少させる。
【0061】
本明細書中で使用される用語「非特異的結合」および「バックグラウンド結合」は、抗体とタンパク質またはペプチドとの相互作用に関して使用される場合、特定の構造の存在に依存しない相互作用を指す(すなわち、抗体は、エピトープのような特定の構造ではなく、一般にタンパク質に結合している)。
【0062】
本明細書中で使用される用語「がんを有する疑いがある対象」は、がんを暗示する1つ以上の症状(例えば、注目すべき腫物または塊)を示すか、またはがんについてスクリーニングされている(例えば、日常的身体的の間に)対象を指す。がんを有する疑いがある対象は、がんを発症する1つ以上の危険因子も有し得る。がんを有する疑いがある対象は、一般に、がんについて試験されていない。しかし、「がんを有する疑いがある対象」は、予備的な診断(例えば、塊を示すCTスキャン)を受けたが、確認検査(例えば、生検および/または組織学)が行われていないか、またはがんの型および/またはステージが知られていない個体を包含する。この用語は、がんを以前に有した人(例えば、鎮静にある個体)をさらに含む。「がんを有する疑いがある対象」は、時にはがんと診断され、そして時にはがんを有しないことが見出される。
【0063】
本明細書中で使用される用語「がんと診断された対象」は、検査され、そしてがん性細胞を有することが見出された対象を指す。がんは、生検、X線、血液検査などを含むがこれらに限定されない、任意の適切な方法を使用して診断され得る。
【0064】
本明細書中で使用される用語「手術後腫瘍組織」は、対象から(例えば、手術中に)取り出されたがん性組織(例えば、器官組織)を指す。
【0065】
本明細書中で使用される用語「がんの危険性がある対象」は、特定のがんの発症について1つ以上の危険因子を有する対象を指す。危険因子としては、性別、年齢、遺伝的素因、環境曝露、およびがんの以前の事象、既存の非がん疾患、および生活様式が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書中で使用される用語「対象におけるがんの特徴付け」は、対象におけるがん試料の1つ以上の性質(限定するものではないが、良性、前がん性またはがん性組織の存在およびがんのステージを含む)の同定を指す。
【0067】
本明細書中で使用される用語「対象における組織の特徴付け」は、組織試料の1つ以上の性質(例えば、限定するものではないが、がん性組織の存在、がん性になる可能性がある前がん性組織の存在、および転移する可能性があるがん性組織の存在を含む)の同定を指す。
【0068】
本明細書中で使用される用語「がんのステージ」は、がんの進行のレベルの定性的または定量的評価を指す。がんのステージを決定するために使用される基準としては、腫瘍の大きさ、腫瘍が身体の他の部分に広がっているかどうか、およびがんが広がっている場所(例えば、身体の同じ器官もしくは領域内、または別の器官へ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書中で使用される用語「初代腫瘍細胞」は、哺乳動物における腫瘍から単離され、そしてインビトロで長く培養されていないがん細胞を指す。
【0070】
本明細書中で使用される用語「処置」、「治療的使用」、または「医薬的使用」は、疾患状態または症状を直すか、そうでなければ、疾患もしくは他の所望されない症状の進行を、それが何であれいかにしても、防止、妨害、遅延、または逆転する、本発明の組成物および方法の任意のそして全ての使用を指す。例えば、用語「がんの処置」または「腫瘍の処置」または本明細書中の文法的等価物は、既存のがんまたは腫瘍の抑制、退行、または部分的もしくは完全な消失を意味する。この定義は、既存のがんまたは腫瘍の大きさ、攻撃性、または成長速度の任意の減少を含むように意味される。
【0071】
本明細書中で使用される用語(がんと比較して)「改善された治療結果」および「増強された治療有効性」は、がん細胞もしくは固形腫瘍の成長の遅滞もしくは減少、またはがん細胞の総数もしくは総腫瘍負荷の低減を指す。「改善された治療結果」または「増強された治療有効性」は、確立された腫瘍の逆転、平均余命の増加、または生活の質の向上を含む、任意の臨床的に許容される基準に従った個体の状態の改善が存在することを意味する。
【0072】
本明細書中で使用される用語「遺伝子移入システム」は、核酸配列を含む組成物を細胞または組織に送達する任意の手段を指す。例えば、遺伝子移入システムとしては、ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、および他の核酸ベースの送達システム)、裸の核酸のマイクロインジェクション、ポリマーベースの送達システム(例えば、リポソームベースおよび金属粒子ベースのシステム)、微粒子銃注入などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される用語「ウイルス遺伝子移入システム」は、所望の細胞または組織への試料の送達を容易にするためのウイルス性要素(例えば、インタクトなウイルス、改変ウイルス、および核酸またはタンパク質などのウイルス成分)を含む遺伝子移入システムを指す。本発明の組成物および方法において有用なウイルス遺伝子移入システムの非限定的な例は、レンチウイルスおよびレトロウイルス遺伝子移入システムである。
【0073】
本明細書中で使用される用語「部位特異的組換え標的配列」は、組換え因子のための認識配列および組換えが起こる位置を提供する核酸配列を指す。
【0074】
本明細書中で使用される用語「核酸分子」は、DNAまたはRNAを含むがこれらに限定されない、任意の核酸含有分子を指す。この用語は、4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシ-アミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルケオシン、5’-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、および2,6-ジアミノプリンを含むが、これらに限定されない、DNAおよびRNAの任意の公知の塩基アナログを含む配列を包含する。
【0075】
用語「遺伝子」は、ポリペプチド、前駆体、またはRNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を指す。ポリペプチドは、完全長遺伝子産物またはその断片の、所望の活性または機能的性質(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性等)が保持される限り、完全長コード配列によって、またはコード配列の任意の部分によってコードされ得る。この用語は、構造遺伝子のコード領域、および、遺伝子が全長mRNAの長さに対応するようにいずれもの末端の約1kb以上の距離の5’および3’末端の両方のコード領域に隣接して位置する配列も包含する。コード領域の5’側に位置し、そしてmRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と称される。コード領域の3’側または下流に位置し、そしてmRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と称される。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNAおよびゲノム両方の形態を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と称される非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントである;イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含み得る。イントロンは、核または一次転写物から除去または「スプライスアウト」される;それゆえ、イントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写物には存在しない。mRNAは、翻訳(例えば、タンパク質合成)中の新生ポリペプチド中のアミノ酸の配列または順序を特定する。
【0076】
本明細書中で使用される用語「異種遺伝子」は、その天然環境にない遺伝子を指す。例えば、異種遺伝子は、他方の種に導入された一方の種由来の遺伝子を含む。異種遺伝子は、何らかの方法で変更されている(例えば、変異された、多コピーで加えられた、非天然調節配列に連結されたなど)生物にとって天然の遺伝子も含む。異種遺伝子は、異種遺伝子配列が、典型的には染色体中の遺伝子配列に天然には関連して見いだされないか、または天然には見出されない染色体の部分に関連しているDNA配列(例えば、遺伝子が通常には発現されていない遺伝子座において発現される遺伝子)に連結されている点で、内因性遺伝子と区別される。
【0077】
本明細書中で使用される用語「遺伝子発現」は、遺伝子中にコードされる遺伝情報を、遺伝子の「転写」を介して(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素作用を介して)RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、またはsnRNA)に、そしてタンパク質をコードする遺伝子については、mRNAの「翻訳」を介してタンパク質に、変換するプロセスを指す。遺伝子発現はプロセスの多くの段階で調節され得る。「アップレギュレーション」または「活性化」は、遺伝子発現産物(すなわち、RNAまたはタンパク質)の産生を増加させる調節を指し、一方、「ダウンレギュレーション」または「抑制」は、産生を低下させる調節を指す。アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに関与する分子(例えば、転写因子)はしばしば、それぞれ「アクチベーター」および「リプレッサー」と称される。
【0078】
イントロンを含むことに加えて、遺伝子のゲノム形態は、RNA転写物上に存在する配列の5’および3’末端の両方に位置する配列も含み得る。これらの配列は、「フランキング」配列または領域といわれる(これらのフランキング配列は、mRNA転写物上に存在する非翻訳配列の5’または3’側に位置する)。5’フランキング領域は、遺伝子の転写を制御するかまたはそれに影響を与えるプロモーターおよびエンハンサーのような調節配列を含み得る。3’フランキング領域は、転写の終結、転写後切断およびポリアデニル化を指示する配列を含み得る。
【0079】
本明細書中で使用される用語「コードする核酸分子」、「コードするDNA配列」、および「コードするDNA」は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序によってポリペプチド(タンパク質)の鎖に沿ったアミノ酸の順序が決定される。DNA配列は、従って、アミノ酸配列をコードする。
【0080】
本明細書中で使用される用語「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」および「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」は、遺伝子のコード領域を含む核酸配列、換言すれば、遺伝子産物をコードする核酸配列を意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNAの形態で存在し得る。DNAの形で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖(すなわちセンス鎖)であっても二本鎖であってもよい。転写の適切な開始および/または1次RNA転写物の正しいプロセシングが必要とされている場合、エンハンサー/プロモーター、スプライスジャンクション、ポリアデニル化シグナルなどの適切な調節領域を遺伝子のコード領域の直ぐ近くに配置することもできる。あるいは、本発明の発現ベクターにおいて利用されるコード領域は、内因性エンハンサー/プロモーター、スプライスジャンクション、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、または内因性および外因性の調節領域の両方の組合せを含み得る。
【0081】
本明細書で使用される用語「作動可能な組み合わせで」、「作動可能な順序で」、および「作動可能に連結された」は、所定の遺伝子の転写および/または所望のタンパク質分子の合成を指示することができる核酸分子が産生されるような様式での核酸配列の連結を指す。このタームはまた、機能性タンパク質が産生されるような様式でのアミノ酸配列の連結をいう。
【0082】
用語「単離された」は、「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」におけるように、核酸に関して使用される場合、その天然の供給源において通常関連する少なくとも1つの構成成分または混入物から同定および分離される核酸配列を指す。単離された核酸は、天然に見出られるものとは異なる形態または整定性で存在する。対照的に、DNAおよびRNAのような核酸のような単離されていない核酸は、それらが天然に存在する状態で見つかる。例えば、所定のDNA配列(例えば、遺伝子)は、宿主細胞の染色体上で、隣接する遺伝子の近傍に見つかり、RNA配列(例えば、特定のタンパク質をコードする特異的なmRNA配列)は、細胞内で、多数のタンパク質をコードする多数の他のmRNAとの混合物として見つけられる。しかしながら、所定のタンパク質をコードする単離された核酸は、例えば、細胞内に、通常所定のタンパク質を発現している核酸を含み、この核酸は、天然細胞の染色体位置とは異なる染色体位置にあるか、または天然に見出されるものとは異なる核酸配列に隣接している。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖形成で存在し得る。タンパク質の発現のために、単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが利用される場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、最低でもセンス鎖またはコード鎖(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖であってもよい)を含むが、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含有し得る(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは二本鎖であってもよい)。
【0083】
本明細書中で使用される用語「精製された」または「精製する」は、試料からの成分(例えば、混入物)の除去を指す。例えば、抗体は、混入している非免疫グロブリンタンパク質を除去することによって精製される;また、抗体は、標的分子に結合しない免疫グロブリンを除去することによっても精製される。非免疫グロブリンタンパク質の除去および/または標的分子に結合しない免疫グロブリンの除去によって、試料中の標的反応性免疫グロブリンの割合が増加する。別の例では、組換えポリペプチドを細菌宿主細胞中で発現させ、宿主細胞タンパク質を取り除いてポリペプチドを精製し、それによって組換えポリペプチドの割合を試料中で増加させる。
【0084】
「アミノ酸配列」および用語「ポリペプチド」または「タンパク質」などは、アミノ酸配列を、上述のタンパク質分子に関連する完全な天然アミノ酸配列に限定することを意味しない。
【0085】
本明細書中で使用される用語「天然のタンパク質」は、タンパク質がベクター配列によってコードされるアミノ酸残基を含まないことを指す。すなわち、天然のタンパク質は、天然に存在するようなタンパク質中に見出されるアミノ酸のみを含む。天然タンパクは、組換えの手段によって産生されてもよく、または天然に存在する供給源から単離されてもよい。
【0086】
本明細書中で使用される用語「部分」は、タンパク質に言及する場合(「所定のタンパク質の一部」などように)、そのタンパク質の断片を指す。断片の大きさは、4アミノ酸残基からアミノ酸配列全体から1アミノ酸だけ小さい大きさの範囲であってもよい。
【0087】
本明細書中で使用される用語「ベクター」は、核酸分子であって、その核酸分子が連結しているのとは別の核酸を輸送可能な核酸分子を指すことが意図される。ベクターの一例は「プラスミド」であり、これはさらなるDNAセグメントが連結され得る環状二本鎖DNAを指す。別のタイプのベクターはファージベクターである。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントが、ウイルスゲノムに連結され得る。特定のベクターはそれらが導入される宿主細胞において自律的複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)。レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターが使用され得る(例えば、CAR構築物をコードするDNAを細胞(例えば、T細胞)に導入するため)。他のベクター(非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動的に連結された遺伝子の発現を方向付け得る。このようなベクターは、ここでは「組換え表現ベクター」、すなわち単に「発現ベクター」を指す。一般的には組換えDNA技術において用いられる発現ベクターは、プラスミドの形をとることが多い。プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」とは、互換的に使用され得る。本発明の組成物および方法において有効なベクターには、レンチウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターが含まれるが、この例に限定されない。レンチウイルスベクターとしてはヒト、サル、およびネコ免疫不全ウイルス(それぞれ、HIV、SIV、およびFIV)ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本明細書中で使用される用語「発現ベクター」は、組換えDNA分子を意味し、ここで、組換えDNA分子は、所望のコード配列、および特定の宿主生物内において作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切な核酸配列を含む。原核生物における発現に必要な核酸配列には、通常、プロモーター、オペレーター(任意)およびリボソーム結合部位が含まれ、しばしば他の配列も共に含まれる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終止およびポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0089】
本明細書中に使用される用語「トランスフェクション」は、外来DNAの真核細胞への導入を指す。トランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈、DEAE-デキストラン法によるトランスフェクション、ポリブレン法によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、およびバイオリスティック法を含む、当該分野で公知の種々の手段によって行われ得る。
【0090】
用語「安定なトランスフェクション」または「安定にトランスフェクトされた」は、トランスフェクトされた細胞のゲノムへの外来DNAの導入および組み込みを指す。「安定なトランスフェクタント」という用語は、ゲノムDNAに安定して組み込まれた外来DNAを有する細胞を指す。「一過性トランスフェクション」又は「一過性にトランスフェクトされた」とは、外来DNAがトランスフェクトされた細胞のゲノムに外来DNAが組み込まれない細胞中への外来DNAの導入をいう。外来DNAはトランスフェクトされた細胞の核内に(例えば数日間)残存する。この間、外来DNAは、染色体における内因性遺伝子の発現を支配する調節制御に供される。用語「一過性トランスフェクタント」は、外来DNAを取り込んだがこのDNAを組み込まなかった細胞を指す。
【0091】
本明細書中で使用される用語「選択マーカー」は、そうでなければ必須栄養素を欠いている培地において増殖する能力を付与する酵素活性をコードする遺伝子の使用を指す。さらに、選択マーカーは、選択マーカーが発現された細胞に、抗生物質または薬物に対する耐性を付与し得る。選択マーカーは、「優性」であり得る。優性選択マーカーは、任意の真核細胞株において検出され得る酵素活性をコードする。優性選択マーカーの例としては、哺乳動物細胞において薬物G418に対する耐性を付与する細菌アミノグリコシド-3’-ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo遺伝子とも呼ばれる)、抗生物質ハイグロマイシンに対する耐性を付与する細菌ハイグロマイシンGホスホトランスフェラーゼ(hyg)遺伝子、およびミコフェノール酸の存在下での増殖能を付与する細菌キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子とも呼ばれる)が挙げられる。他の選択マーカーは、関連する酵素活性を欠いている細胞株と一緒でなければ使用できないという点で優性ではない。非優性選択マーカーの例には、tk陰性(tk)細胞株と併用されるチミジンキナーゼ(tk)遺伝子、CAD欠損細胞と併用されるCAD遺伝子、およびhprt陰性(hprt)細胞株と併用される哺乳動物ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)遺伝子がある。哺乳動物細胞系における選択マーカーの使用の概説は、Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1989) pp.16.9-16.15に開示されている。
【0092】
本明細書で使用される用語「インビトロ」は、人工的な環境、および人工的な環境下で起こるプロセスまたは反応を指す。インビトロの環境は、試験管および細胞培養を含むことができるが、これらに限定されない。用語「インビボ」は、自然環境(例えば、動物または細胞)および自然環境下で起こるプロセスまたは反応を指す。
【0093】
本明細書に用いられる場合、用語「細胞培養」とは、細胞の任意のインビトロ培養を指す。この用語には、連続細胞株(例えば、不死表現型を有する)、初代細胞培養物、形質転換細胞株、有限細胞株(例えば、非形質転換細胞)、およびインビトロで維持される任意の他の細胞集団が含まれる。
【0094】
本明細書において使用される用語「試料」は、その最も広範な意味で使用される。1つの意味では、それは任意の供給源から得られた標本または培養物、ならびに生物学的試料および環境試料を含むことを意味する。生物学的試料は、動物(ヒトを含む)から採取され得、液体、固体、組織、気体を包含している。生物学的試料は、血漿、血清などのような血液産物を含む。しかしながら、このような例は、本発明に適用可能な試料の種類を限定するものと解されるべきではない。
【0095】
〔実施形態の詳細な説明〕
ヒストンH3は、真核細胞におけるクロマチンの構造に関与する5つの主要なヒストンタンパク質の1つである。H3は、主要な球状ドメインと長いN末端部を特徴とし、「数珠玉構造」のヌクレオソームの構造に関与する。ヒストンH3のN末端部は球状ヌクレオソームコアから突出し、細胞内プロセスに影響を及ぼすいくつかの異なる種類のエピジェネティック修飾を受け得る。これらの修飾には、メチル基またはアセチル基のリジンおよびアルギニンアミノ酸への共有結合、およびセリンまたはトレオニンのリン酸化が含まれる。ヒストン変異H3.3は、典型的には活性クロマチンに富む。
【0096】
ヒストンH3 K27M(H3K27M)変異を伴う腫瘍は致死性が高い。これらは主に小児に発生し、中正中脳腫瘍または脊髄腫瘍として存在する。過去30年間にわたる数十の臨床試験が行われたにもかかわらず、標準的な治療は放射線療法に限定され、患者の大多数は診断から18ヶ月以内に疾患により死亡する。したがって、現在利用可能なH3K27M腫瘍のための治療は不十分である。放射線療法を除いて、他の抗腫瘍療法は、これらの疾患において有益性が実証されていない。
【0097】
例えば、びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)および他のヒストンH3 K27M(H3K27M)変異正中グリオーマは、極めて攻撃的でありそして普遍的に致命的である。これらの腫瘍の分子起源を特徴付けて、多くの進歩が達成されてきたが、臨床管理における改善は依然としてとらええどころが無く、DIPGの生存期間の中央値は約10ヶ月のままであった。チェックポイント阻害剤を含む免疫療法剤は、伝統的な治療で難治性の多数の成人がんにおいて実質的な利益をもたらした。一方、これらの薬剤は、散発性小児がんにおいては決定的な利益はまだ実証されていない。これは、おそらく、これらの疾患における非同義の体細胞突然変異の不足に起因する(例えば、Majzner et al., Cancer Cell, 2017. 31(4): p. 476-485.を参照のこと)。キメラ抗原受容体発現(CAR発現)T細胞の養子細胞移入が、B細胞悪性腫瘍および中枢神経系(CNS)悪性腫瘍において活性を実証した。
【0098】
歴史的に、小児グリオーマと、組織学的に外観が類似する成人グリオーマとで挙動が異なることは既知であったにもかかわらず、小児びまん性グリオーマは、成人の対応物と共にグループ分けされていた。小児びまん性グリオーマにおける明確で根底的な遺伝的異常に関する情報によって、組織学的に類似した成人の対応物から、いくつかの実体を区別することが可能になり始めている。主に小児に発生する狭義での腫瘍群は、ヒストンH3遺伝子H3F3AにおけるK27M変異、またはこれより一般的ではないが、関連するHIST1H3B遺伝子におけるK27M変異、びまん性増殖パターン、および正中位置(例えば、視床、脳幹、および脊髄)によって特徴付けられる。この新たに定義された実体は、びまん性正中グリオーマ、H3K27M変異体と呼ばれ、これまでびまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)と呼ばれていた腫瘍を含む。
【0099】
GD2は、神経芽細胞腫を含むいくつかの小児および成人がんにおいて高度に発現するジシアロガングリオシドである。GD2は胎児発達中に広範囲で発現するが、正常な出生後の組織の間では、その発現は、骨前駆細胞、脳、末梢神経および皮膚メラニン細胞上での低レベルの発現に限られる。GD2は、腫瘍細胞上での表面発現が高く、正常組織上での発現が低いため、免疫療法モノクローナル抗体の開発の標的とされてきた。これらの有望な臨床結果に由来する抗GD2抗体療法は、神経芽細胞腫のための多くの最前線プロトコールに取り入れられる。GD2ベースのモノクローナル抗体(mAb)治療は、mAbがCNSに効率的に輸送されないため、H3K27M腫瘍患者に有益である可能性は低い。
【0100】
DIPGおよび他のヒストンH3 K27M(H3K27M)変異がん(例えば、正中グリオーマ)における免疫療法のための新たな標的およびストラテジーを同定するため、本発明の実施形態の開発中に実験が実施された。患者由来DIPG培養物中の細胞表面抗原を、潜在的な免疫療法の標的についてスクリーニングした(例えば、実施例1および2を参照のこと)。独立した患者由来培養物間での有意な重複によって、DIPG患者間で保存された表面マーカーの中核群を同定した(例えば、実施例2ならびに図1Aおよび1Bを参照のこと)。これらの共通の標的から、スクリーニングされた患者由来のDIPG培養物の各々において有意に高レベルで共通に発現している標的として、ジシアロガングリオシドGD2を同定した。さらなる実験により、試験した全てのH3K27Mグリオーマ、ならびにより一般的でないHIST1H3B K27M変異を有するものにおいて、有意かつ著しく高いレベルのGD2発現が起こることが確認された。一方、野生型ヒストンH3を保有する小児高悪性度グリオーマ(pHGG)は有意に低いGD2発現を示した(例えば、実施例1および2ならびに図1Cを参照)。
【0101】
H3K27M変異から生じる転写攪乱がGD2発現の増加と関連しているかどうかを決定するために、さらなる実験を行った。患者由来DIPGおよびpHGG培養物のパネルにおけるガングリオシド合成酵素の発現は、H3K27M変異を有する培養物における上流ガングリオシド合成酵素の一貫してより高い発現を同定した(例えば、実施例2および図1Jを参照)。従って一実施形態において、本発明は、H3 WT pHGGと比較して、H3K27M変異腫瘍においてガングリオシド合成経路を構成する遺伝子がアップレギュレーションされていることで、GD2過剰発現が生じることを提供する。
【0102】
さらに、浸潤悪性細胞およびGD2を同定するためのH3K27Mについての初代ヒトDIPG組織の二重免疫染色によって、天然腫瘍の文脈におけるGD2の局所発現が同定された(例えば、実施例2および図1Dを参照)。従って、一実施形態において、本発明は、H3K27M腫瘍(例えば、GD2)の治療的介入のための未知の標的を同定することを提供する。
【0103】
GD2標的免疫療法は、現在、神経芽細胞腫、骨肉腫および黒色腫を含むいくつかの疾患において、臨床および前臨床研究中である(例えば、Thomas et al., PLoS One, 2016. 11(3): p. e0152196、Long et al., Nature Medicine, 2015. 21(6): p. 581-590、Long et al., Cancer Immunology Research, 2016. 4(10): p. 869-880、Yu et al., N Engl J Med, 2010. 363(14): p. 1324-34、Perez Horta et al., Immunotherapy, 2016. 8(9): p. 1097-117、Heczey et al, Molecular Therapy)。効率的に血液脳関門を越えないmAbsとは異なり、活性化CAR T細胞は、養子移入後に効率的にCNSに浸潤する。
【0104】
GD2が標的とする操作された免疫細胞の能力を、H3K27M腫瘍に対する潜在的な治療的介入として評価および特徴付けるために、さらなる実験を本発明の実施形態の開発中に行った(例えば、実施例3~5を参照)。ヒトGD2を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を作製し、試験した。患者由来DIPG培養物を曝露時に、MockまたはCD19指向性CAR T細胞と比較して、GD2依存性の細胞死滅およびサイトカイン分泌が、観察された(例えば、実施例3を参照)。さらに、患者由来DIPG同所性異種移植片中の、養子細胞移入によって送達されたGD2指向性CAR T細胞を使用すると強力な抗腫瘍有効性が観察された(例えば、実施例4を参照)。
【0105】
CAR T細胞療法は、様々なタイプの正中H3K27M変異小児びまん性正中グリオーマを効果的に排除した(例えば、実施例5を参照)。グリオーマの排除は、視床異種移植片における毒性と関連していた。
【0106】
1つの態様において、本発明は、GD2を標的とするCARを発現するように操作された免疫細胞を使用して、H3K27M正(H3K27M+)がん/腫瘍を処置するための新規な方法を提供する。種々の態様において、H3K27Mがん/腫瘍を処置する方法が提供され、この方法はこのようながんまたは腫瘍を有する患者に、GD2を標的とするCARを発現するように操作された有効量の免疫細胞を投与する工程を包含する。特定の実施形態では、H3K27MがんはDIPGである。別の実施形態では、H3K27Mがんはびまん性正中グリオーマである。
【0107】
特定の実施形態において、H3K27Mがん/腫瘍の表面上の有意に上昇したレベルのGD2の存在は、GD2指向性CAR T細胞によるH3K27Mがん/腫瘍の有効な治療(例えば、死滅および/または進行の抑制)をもたらす。例えば、H3K27Mがん/腫瘍におけるGD2 CARの有効性は、H3K27M変異DIPGにおける標的抗原の均一な高発現によって広く出現し(図1Cを参照)、これはGD2+神経芽細胞腫および肉腫細胞株に存在するものよりも一貫して高かった。メカニズムを理解することは本発明を実施するために必要ではなく、本発明はいかなる特定のメカニズムにも限定されないが、H3K27Mがん/腫瘍における標的GD2抗原の均一な高発現は、GD2に特異的なCAR T細胞を用いたH3K27Mがん/腫瘍の治療の有効性に関連する。
【0108】
特定の実施形態において、本発明は、免疫細胞の増殖および/または腫瘍死滅を誘導することを目的として、GD2を認識(例えば、H3K27Mグリオーマの表面上において)する受容体を発現し、かつ免疫細胞を活性化するシグナルを伝達するように操作された免疫細胞(例えば、T細胞(例えば、CD3+T細胞))を使用することによって、H3K27M腫瘍を処置する(例えば、増殖を阻害する、および/または死滅させる)方法を提供する。受容体の非限定的な例は、GD2を認識するmAbに由来するscFvおよび膜貫通ドメイン、ならびに1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを組み込むキメラ抗原受容体(CAR)である。CARは、操作された細胞の長期間の生存を可能にする要素だけでなく、GD2抗原と出会った後に操作された細胞の増殖を容易にする他のシグナル伝達要素を組み込むように、さらに操作され得る。本発明はさらに、遺伝的に改変された細胞を含む組成物(例えば、中枢神経系におけるH3K27M腫瘍に到達するのに十分な量で産生および投与される免疫療法組成物)を提供する。
【0109】
本明細書に記載の組成物および方法は、体細胞においてヒストンH3(H3)遺伝子H3F3Aのリジン27(例えば、Lys27MetまたはK27M(H3K27M))に変異を有する任意のがん/腫瘍の治療における使用を見出す。本発明の組成物および方法で治療することができるH3K27M変異を有するがんの例として、びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)および/またはびまん性正中グリオーマが含まれるが、これに限定されない。
【0110】
<GD2特異的キメラ抗原受容体(CAR)の構築および発現>
キメラ抗原受容体(CAR)はヒンジ/スペーサーペプチドに連結された細胞外抗原結合ドメイン(例えば、抗体由来の一本鎖可変フラグメント(scFv))、膜貫通ドメイン、および、さらに細胞内シグナル伝達に関するドメイン(例えば、T細胞受容体の細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン)を含む組換え受容体構築物である。CARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞(例えば、T細胞)は、エフェクター細胞の機能性(例えば、T細胞の細胞傷害性および/または記憶機能)を有する抗体(例えば、これらはMHC/HLAの制限を受けているものではない)に特異性を示す。
【0111】
本発明は、免疫細胞において発現されるGD2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)(例えば、本発明の方法において使用されるCAR構築物)に限定されない。一実施形態では、CARは、GD2に特異的に結合する免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)(例えば、一本鎖可変フラグメント(scFv))の可変領域の融合タンパク質を含む。さらなる実施形態において、免疫グロブリンは、GD2エピトープGalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galに特異的に結合する。当業者にとって、scFvがリンカーペプチド(例えば、約10~約25アミノ酸)に連結された免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質であることは既知である。本発明は、リンカーのタイプによって限定されない。いくつかの実施形態において、リンカーはグリシンリッチである(例えば、柔軟性のために)。いくつかの実施形態において、リンカーは、セリンおよび/またはトレオニン(例えば、溶解性のため)を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、グリシンリッチである部分と、セリンおよび/またはトレオニンを含む部分とを含む。
【0112】
GD2に特異を有して結合する任意の抗体/免疫グロブリンを、(例えば、本発明の治療方法で使用される)免疫細胞における発現のためのCARの構築に用いることができる(例えば、VH領域およびVL領域を用いて融合タンパク質を構築する、scFv)。このような抗体/免疫グロブリンの例には、14G2a、ch14.18、hu14.18K322A、m3F8、hu3F8-IgG1、hu3F8-IgG4、HMD3F8、UNITUXIN、DMAb-20またはGD2に特異的に結合する任意のその他の抗体(例えば、当技術分野において既知あるは開示されているか、またはまだ特定されていない)を含むが、これに限定されない。一実施形態では、CARは、14g2a scFvを含む。GD2 CARは、親和性を増強し、および/またはトニックシグナルを減少させるために生成された抗GD2抗体のscFv(例えば、14g2a scFv)内に改変体を組み込んでいる受容体を含み得る。GD2 CARは可変長のヒンジ領域(例えば、scFvとシグナル伝達ドメインとの間)および/または可変膜貫通ドメインを組み込み得る。本発明は、使用される膜貫通ドメインによって限定されない。実際、任意の膜貫通ドメインを使用することができ、例えば、CD3-ゼータ鎖(CD3ζ)、CD28、OX40/CD134、4-1BB/CD137/TNFRSF9、FceRIg、ICOS/CD278、ILRB/CD122、IL-2RG/CD132またはCD40の膜貫通ドメインの全部または一部を使用することができる。
【0113】
本発明のCAR構築物は、細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、ナイーブT細胞受容体複合体のCD3ゼータおよび/または他のシグナル伝達ドメイン(例えば、MyD88シグナル伝達ドメイン))を含み得る。この細胞内シグナル伝達ドメインは、リガンドの細胞内シグナルへの結合を引き起こす(例えば、免疫細胞(例えば、Tリンパ球)を活性化する(例えば、部分的に))。共刺激シグナルが存在しないと、受容体-リガンド結合はしばしば、免疫細胞(例えば、T細胞)の完全な活性化および増殖には不十分である。従って、CAR構築物は、1つ以上の共刺激ドメイン(例えば、完全な免疫細胞(例えば、T細胞)活性化を刺激する第二シグナルを提供する)を含み得る。一実施形態において、共刺激ドメインは、CAR免疫T細胞のサイトカイン産生を増加させるために使用される。別の実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)の複製を促進する共刺激ドメインが使用される。さらに別の実施形態では、CAR免疫細胞(例えば、T細胞)の枯渇を防止する共刺激ドメインが使用される。別の実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)の抗腫瘍活性を増加させる共刺激ドメインが使用される。なおさらなる実施形態において、CAR免疫細胞(例えば、T細胞)の生存を強化する共刺激ドメインが使用される(例えば、患者への注入後)。例示的な共刺激ドメインには以下の共刺激分子の全部または一部が含まれるが、これらに限定されない。すなわちこのような共刺激分子は、B7-1/CD80、CD28、B7-2/CD86、CTLA-4、B7-H1/PD-L1、ICOS/CD278、ILRB/CD122、IL-2RG/CD132、B7-H2、PD-1、B7-H3、PD-L2、B7-H4、PDCD6、BTLA、4-1BB/TNFRSF9/CD137、FceRIg、CD40リガンド/TNFSF5、4-1BBリガンド/TNFSF9、GITR/TNFRSF18、BAFF/BLyS/TNFSF13B、GITRリガンド/TNFSF18、BAFF R/TNFRSF13C、HVEM/TNFRSF14、CD27/TNFRSF7、LIGHT/TNFSF14、CD27リガンド/TNFSF7、OX40/TNFRSF4、CD30/TNFRSF8、OX40リガンド/TNFSF4、CD30リガンド/TNFSF8、TACl/TNFRSF13B、CD40/TNFRSF5、2B4/CD244/SLAMF4、CD84/SLAMF5、BLAME/SLAMF8、CD229/SLAMF3、CD2 CRACC/SLAMF7、CD2F-10/SLAMF9、NTB-A/SLAMF6、CD48/SLAMF2、SLAM/CD150、CD58/LFA-3、CD2、Ikaros、CD53、インテグリンα4/CD49d、CD82/Kai-1、インテグリンα4β1、CD90/Thy1、インテグリンα4β7/LPAM-1、CD96、LAG-3、CD160、LMIR1/CD300A、CRTAM、TCL1A、DAP12、TIM-1/KIM-1/HAVCR、デクチン1/CLEC7A、TIM-4、DPPIV/CD26、TSLP、EphB6、TSLP RおよびHLA-DRである。一実施形態において、本発明の方法において使用される免疫細胞で発現するCAR構築物は、CD28エンドドメイン、4-1BBエンドドメイン、および/またはOX40エンドドメインを含む。特定の実施形態において、本発明のGD2に特異的なCAR構築物は、抗体のscFvを含み、該抗体は、GD2(例えば、14g2a)、膜貫通ドメイン(例えば、CD8の)、T細胞受容体細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータ)、および少なくとも1つの共刺激ドメイン(例えば、4-1BB)に特異的に結合する。
【0114】
本発明は、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞の種類によって限定されない。例示的な免疫細胞としては、T細胞、NK細胞、ガンマデルタT細胞などのエフェクター細胞、記憶T細胞、マクロファージ、およびサイトカイン誘導キラー細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、免疫細胞は、CD4+および/またはCD8+T細胞(例えば、CD3+)である。
【0115】
本発明は、免疫細胞においてCARを遺伝的に発現させる手段によって限定されない。実際、当技術分野で知られている、および/または本明細書に記載されている任意の手段を使用することができる。免疫細胞を遺伝的に操作する方法の非限定的な例としては、レトロウイルスまたはレンチウイルス媒介遺伝子組み込み、遺伝子組み込み用のトランスポザーゼを用いたシステムでの遺伝子組み込み、CRISPR/Cas9媒介遺伝子組み込み、RNAまたはアデノ随伴ウイルスのような非組み込みベクター、あるいは本明細書中に記載される他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。操作された免疫細胞産物は、選択されていないT細胞または他の免疫細胞を含み得るか、あるいはよりよい増殖または生存能力のために選択されたT細胞サブセットを組み込み得る。毒性を減少させるために、GD2標的化シグナル伝達分子を発現するように操作された細胞の死滅を可能にする要素の組み込みが含まれ得る。毒性を減少させ、および/または有効性を強化するために、操作された細胞におけるタンパク質発現の調節を可能にする素子の組み込みが含まれ得る。
【0116】
<治療方法、組成物、および併用療法>
特定の実施形態において、本発明はまた、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された有効量の免疫細胞(例えば、GD2 CAR T細胞)を個体に投与する工程を包含する、個体におけるがんの進行を処置または遅延するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、処置は、処置の停止後に個体において持続的な反応を生じる。本明細書に記載の方法は、がんの治療のために腫瘍免疫原性を増加させるなど、増強された免疫原性が所望される状態を治療する際に使用することができる。GD2に特異的なCAR(例えば、GD2 CAR T細胞)を発現するように遺伝的に改変された有効量の免疫細胞を個体に投与することを含む、がんを有する個体における免疫機能を増強する方法もまた、本明細書中に提供される。当技術分野で公知のまたは本明細書に記載のGD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された任意の免疫細胞(例えば、任意のT細胞(例えば、CD3+T細胞))を、これらの方法において使用することができる。いくつかの実施形態において、個体はヒトである。
【0117】
いくつかの実施形態において、個体は1つ以上の他の形態の抗がん処置(例えば、化学療法、免疫療法など)に対して耐性である(例えば、耐性があることが実証されている)がんを有する。一部の実施形態では、耐性には、がんの再発または難治性がんの再発が含まれる。再発とは、治療後に元の部位または新たな部位にがんが再発することを指し得る。一部の実施形態では、耐性には、化学療法による治療中のがんの進行が含まれる。いくつかの実施形態において、耐性には、化学療法剤による伝統的またはこれまでの治療に応答しないがんが含まれる。がんは治療開始時に耐性を示すこともあれば、治療中に耐性を示すこともある。一部の実施形態では、がんは早期または後期に発生する。
【0118】
特定の実施形態において、本発明は、H3K27M発現細胞(例えば、H3K27M発現細胞によって特徴付けられるDIPG)によって特徴付けられるがん/腫瘍に罹患している動物(例えば、ヒト)を、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞(例えば、GD2発現している腫瘍を標的化および死滅させる)を含む免疫療法組成物の治療有効量に暴露することによって、そのようなH3K27M発現がん細胞の増殖を完全に阻害し、および/または個体群のような細胞をがん治療薬または放射線療法(例えば、その細胞死誘導活性のための)に対してより感受性を高めることを提供する。本発明の免疫療法組成物および免疫療法は、H3K27M発現細胞(例えば、H3K27M発現細胞によって特徴付けられるDIPG)によって特徴付けられる任意の種類のがんなどの障害への処置、寛解、または予防のために使用され得る。
【0119】
特定の実施形態において、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞を含む免疫療法組成物は、H3K27M発現細胞によって特徴付けられるがん(例えば、H3K27M発現細胞によって特徴付けられるDIPG)を処置、寛解、または予防するために使用される。このがんはさらに、1つ以上の従来のがん治療に対する耐性によって特徴付けられる(例えば、化学耐性、放射線耐性、ホルモン耐性などを有するがん細胞)。特定の実施形態において、がんはDIPGである。他の実施形態では、がんはびまん性正中グリオーマである。本明細書中に記載されるように、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された任意の免疫細胞が、本発明の免疫療法組成物および免疫療法において使用され得る。
【0120】
本発明の免疫療法組成物(例えば、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞を含む)および方法は、腫瘍細胞に対する細胞傷害活性を誘導するために、および/または、細胞の生存および機能(例えば、改変された免疫細胞の生存および機能)を促進するために使用され得る。例えば、本発明の免疫療法組成物および免疫療法は、インターロイキン-2(IL-2)を誘導してT細胞の生存を促進するために;Fasリガンド(FasL)および/または腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を誘導するために(例えば、腫瘍細胞アポトーシスを誘導するために);および/またはインターフェロン(IFN)-ガンマを誘導するために(例えば、先天性免疫反応(例えば、がんに対する)を活性化するために)使用され得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、細胞周期停止および/またはアポトーシスを誘導するために使用される。また、本発明の組成物および方法は、単独、またはさらなるアポトーシス誘導シグナルに応じて、細胞周期停止および/またはアポトーシス誘導を増強するために使用される。いくつかの実施形態において、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞は、細胞周期停止および/またはアポトーシスの誘発のためにH3K27M発現がん細胞を感作し、このような誘発刺激に対して通常耐性である細胞が含まれる。他の実施形態では、アポトーシスの誘発によって処置、寛解、または予防することができるH3K27M発現がん細胞の存在によって特徴付けられる任意の障害(例えば、H3K27Mがん細胞の存在を特徴とするDIPGおよび/またはびまん性正中グリオーマ)においてアポトーシスを誘発するために、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞が使用される。
【0121】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、動物(例えば、ヒトおよびコンパニオンアニマルを含むが、これに限定されない哺乳動物患者)における疾患細胞、組織、器官、または病的状態および/または疾患状態を処置するために使用される。この点に関して、H3K27M細胞の存在によって特徴付けられる種々の疾患および病理は、本発明の方法および組成物を使用する治療又は予防で扱いやすい。一部の実施形態では、治療されるがん細胞は転移性である。他の実施形態において、処置されるがん細胞は、抗がん剤に対して耐性が有る。他の実施形態では、障害がH3K27M変異の存在を特徴とする細胞を有する任意の障害である。
【0122】
本発明におけるいくつかの実施形態は、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された有効量の免疫細胞を投与するための方法、および少なくとも1つの付加的な治療剤(化学療法抗腫瘍剤、アポトーシス調節剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、および抗炎症剤を含むが、これらに限定されない)、および/または治療技術(例えば、外科的処置、および/または放射線療法)を提供する。特定の実施形態において、付加的な治療剤は抗がん剤である。例えば、本発明の免疫療法組成物および免疫療法を使用すると有意な腫瘍の排除が達成されたが、GD2発現が陰性の腫瘍細胞が少数残存していること(例えば、免疫蛍光染色による)から、次のようなことが示された。すなわち、いくつかの実施形態において、本発明の免疫療法T細胞組成物に加え、本明細書中に記載の任意の1つ以上のがん治療を使用いるマルチモーダル療法または組合せ療法は、抗原逃避を低減および/または回避のために、本発明の免疫療法T細胞組成物と共に有効であり得ることが示された(実施例、図4を参照)。
【0123】
本発明の方法において用いられるため、またはそれと組合せて使用するために適した、多数の抗がん剤が意図される。実際、本発明は以下のような多数の抗がん剤の投与を意図するが、これらに限定されない:アポトーシスを誘導する薬剤;ポリヌクレオチド(例えば、アンチセンス、リボザイム、siRNA);ポリペプチド(例えば、酵素および抗体);バイオミメティクス;アルカロイド;抗腫瘍剤;抗代謝物質;ホルモン;白金化合物;モノクローナルまたはポリクローナル抗体(例えば、抗がん剤、毒素、ディフェンシンと結合した抗体)、毒素;放射性核種;生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロン(例えば、IFN-α)およびインターロイキン(例えば、IL-2));養子免疫療法因子;造血成長因子;腫瘍細胞分化を誘導する薬剤(例えば、オールトランスレチノイン酸);遺伝子療法試薬(例えば、アンチセンス療法試薬およびヌクレオチド);腫瘍ワクチン;血管新生阻害剤;プロテオソーム阻害剤:NF-КBモジュレーター;抗CDK化合物;HDAC阻害剤など。開示された化合物との共投与に適した多数の他の化学療法化合物および抗がん療法の例は、当業者に公知である。
【0124】
特定の実施形態において、抗がん剤は、アポトーシスを誘導または促す薬剤を含む。アポトーシスを誘導する薬剤としては放射線(例えば、X線、ガンマ線、UV);腫瘍壊死因子(TNF)関連因子(例えば、TNFファミリー受容体タンパク質、TNFファミリーリガンド、TRAIL、TRAIL-R1またはTRAIL-R2に対する抗体);キナーゼ阻害剤(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)キナーゼ阻害剤、血管成長因子受容体(VGFR)キナーゼ阻害剤、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)キナーゼ阻害剤、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)キナーゼ阻害剤、およびBcr-Ablキナーゼ阻害剤(例えば、グリベック(登録商標));アンチセンス分子;抗体(例えば、ハーセプチン(登録商標)、リツキサン(登録商標)、ゼバリン(登録商標)およびアバスチン(登録商標));抗エストロゲン剤(例えば、ラロキシフェン、タモキシフェン);抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド、ビカルタミド、フィナステリド、アミノグルテタミド、ケトコナゾール、およびコルチコステロイド);シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)阻害剤(例えば、セレコキシブ、メロキシカム、NS-398、および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID));抗炎症剤(例えば、ブタゾリン、デカドロン(登録商標)、デルタソン(登録商標)、デキサメタゾン、デキサメタゾンインテンソール、デキソン(登録商標)、ヘキサドロール(登録商標)、ヒドロキシクロロキン、メチコルテン(登録商標)、オラデキソン(登録商標)、オラソン、オキシフェナゾン、PEDIAPRED(登録商標)、フェニルブタゾン、プラケニル(登録商標)、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレロン(登録商標)、およびタンデアリル);ならびにがん化学療法薬(例えば、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標))、CPT-11、フルダラビン(フルダラ(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)、デキサメタゾン、ミトキサントロン、マイロターグ、VP-16、カルボプラチン、オキサリプラチン、5-FU、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、ゲフィチニブ、ベバシズマブ、タキソテール(登録商標)またはタキソール(登録商標));細胞シグナル伝達分子;セラミドおよびサイトカイン;スタウロスポリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
さらに他の実施形態では、本発明の組成物および方法は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、および天然産物(例えば、ハーブおよび他の植物および/または動物由来化合物)から選択される少なくとも1つの抗過増殖剤または抗腫瘍剤と一緒に使用される。
【0126】
本組成物および方法での使用に適したアルキル化剤には、1)窒素マスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン);およびクロラムブシル);2)エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルアミンおよびチオテパ);3)アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン);4)ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU);ロムスチン(CCNU);セムスチン(メチル-CCNU);およびストレプトゾチン(ストレプトゾトシン));ならびに5)トリアゼン(例えば、ダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミド-アゾレカルボキサミド)が含まれるが、これに限定されない。
【0127】
いくつかの実施形態では、本組成物および方法での使用に適した代謝拮抗物質には、1)葉酸類似体(例えば、メトトレキサート(アメトプテリン));2)ピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル(5-フルオロウラシル;5-FU)、フロックスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FudR)、およびシタラビン(シトシンアラビノシド));ならびに3)プリン類似体(例えば、メルカプトプリン(6-メルカプトプリン;6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン;TG)、およびペントスタチン(2’-デオキシコホルミシン))が含まれるが、これに限定されない。
【0128】
なおさらなる実施形態において、本発明の組成物および方法における使用に適した化学療法剤には、1)ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン(VBL)、ビンクリスチン);2)エピポドフィルロトキシン(例えば、エトポシドおよびテニポシド);3)抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(マイトラマイシン)、およびマイトマイシン(マイトマイシンC));4)酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ);5)生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロン-アルファ);6)白金配位複合体(例えば、シスプラチン(cis-DDP)およびカルボプラチン);7)アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン);8)置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素);9)メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン(N-メチルヒドラジン;MIH));10)副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p’-DDD)およびアミノグルテチミド;11)アドレノコルチコステロイド(例えば、プレドニゾン);12)プロゲスチン(例えば、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メドロキシプロゲステロンアセテート、およびメゲストロールアセテート);13)エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール);14)抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン);15)アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン);16)抗アンドロゲン(例えば、フルタミド);および17)ゴナドトロピン放出ホルモン類似体(例えば、ロイプロリド)が含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
がん治療の流れにおいて日常的に使用される任意の腫瘍溶解剤もまた、本発明の組成物および方法において使用され得る。例として、米国食品医薬品局は、米国での使用が承認された腫瘍溶解剤の処方を継続している。米国F.D.A.に対応する国際的な機関は、同様の承認を継続している。
【0130】
抗がん剤はさらに、抗がん活性を有することが同定された化合物を含む。例としては3-AP、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート、17AAG、852A、ABI-007、ABR-217620、ABT-751、ADI-PEG20、AE-941、AG-013736、AGRO100、アラノシン、AMG706、抗体G250、アンチネオプラストン、AP23573、アパジクオン、APC8015、アチプリモド、ATN-161、アトラセンタン、アザシチジン、BB-10901、BCX-1777、ベバシズマブ、BG00001、ビカルタミド、BMS247550、ボルテゾミブ、ブリオスタチン-1、ブセレリン、カルシトリオール、CCI-779、CDB-2914、セフィキシム、セツキシマブ、CG0070、シレンジタイド、クロファラビン、コンブレタスタチンA4リン酸塩、CP-675、206、CP-724、714、CpG7909、クルクミン、デシタビン、DENSPM、ドキセルカルシフェロール、E7070、E7389、エクセインシジン743、エファプロキシラル、エフロルニチン、EKB-569、エンザウリン、エルロチニブ、エクシスリンド、フェンレチニド、フラボピリドール、フルダラビン、フルタミド、フォテムスチン、FR901228、G17DT、ガリキシマブ、ゲフィチニブ、ゲニステイン、グルホスファミド、GTI-2040、ヒストリン、HKI-272、ホモハリングトニン、HSPPC-96、hu14.18インターロイキン-2融合タンパク、HuMax-CD4、イロプロスト、イミキモド、インフリキシマブ、インターロイキン12、IPI-504、イロフルベン、イキサベピロン、ラパチミブ、レナリドシド、レスタウルチニブ、ロイプロリド、LMB-9イムノトキシン、ロナファルニブ、ルニリシキマブ、マホスファミド、MB07133、MDX-010、MLN2704、モノクローナル抗体3F8、モノクローナル抗体J591、モテキサフィン、MS-275、MVA-MUC1-IL2、ニルタミド、ニトロカンプトテシン、ノラトレキセドジヒドロクロリド、ノルバデックス、NS-9,O6-ベンジルグアニン、オブリメルセンナトリウム、ONYX-015、オレゴマブ、OSI-774、パニツムマブ、パラプラチン、PD-0325901、ペメトレキセド、PHY906、ピオグリタゾン、ピルフェニドン、ピキサントロン、PS-341、PSC833、PXD101、ピラゾラクリジン、R115777、RAD001、ランピルナーゼ、レベカマイシン類似体、rhuアンギオスタチンタンパク質、rhuMab2C4、ロシグリタゾン、ルビテカン、S-1、S-8184、サトラプラチン、SB-、15992、SGN-0010、SGN-40、ソラフェニブ、SR31747A、ST1571、SU011248、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、スラミン、タラボスタット、タランペニル、タリキダ、テムシロリムス、TGFa-PE38免疫毒素、サリドマイド、チマルファシン、チピファルニブ、チラパザミン、TLK286、トラベクテジン、トリメトレキサートグルクロネート、TroVax、UCN-1、バルプロ酸、ビンフルニン、VNP40101M、ボロシキシマブ、ボリノスタット、VX-680、ZD1839、ZD6474、ジレウトン、およびゾスキダートリヒドロクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
抗がん剤および他の治療剤のより詳細な説明については、当業者が任意の取扱説明書を参照すればよく、例えば、Physician's Desk Reference and to Goodman and Gilman's “Pharmaceutical Basis of Therapeutics” tenth edition, Eds. Hardman et al., 2002を挙げることができるが、これに限らない。
【0132】
本発明は(例えば、放射線療法の前、間、または後に)、本発明の組成物を投与する方法、および放射線療法を伴う本発明の方法を提供する。本発明は、動物に送られるために使用される治療用量の放射線の種類、量、または送達、ならびに投与システムによって限定されない。例として、動物は、光子放射線療法、粒子ビーム放射線療法、他の種類の放射線療法、およびそれらの組み合わせを受けてもよい。いくつかの実施形態では、線形加速器を使用して放射線が動物体に当てられる。さらに他の実施形態では、ガンマナイフを使用して放射線が当てられる。
【0133】
放射線源は、動物の外部または内部であり得る。外部放射線療法は最も一般的であり、例えば線形加速器を使用し、高エネルギー放射線のビームを、皮膚を通して腫瘍部位に直射することを含む。放射線ビームは腫瘍部位において局所的であるが、正常で健康な組織の被曝を避けることはほとんど不可能である。しかしながら、外部放射線は、通常、動物に十分に許容される。内部放射線療法は、腫瘍部位またはその近くの体内に、ビーズ、ワイヤ、ペレット、カプセル、粒子などの放射線放出源を移植することを含み、がん細胞を特異的に標的化する送達システムを使用すること(例えば、がん細胞結合リガンドに付着した粒子を使用する)を含む。このような移植物は、治療後に除去され得るか、または体内に不活性のまま残り得る。内部放射線療法のタイプには、近接放射線療法、間質照射、腔内照射、放射線免疫療法などが含まれるが、これらに限定されない。
【0134】
動物は任意に、放射線増感剤(例えば、メトロニダゾール、ミソニダゾール、動脈内Budr、静脈内ヨードデオキシウリジン(IudR)、ニトロイミダゾール、5-置換4ニトロイミダゾール、2H-イソインドリン、[[(2-ブロモエチル)-アミノ]-メチル]-ニトロ-1H-イミダゾール-1-エタノール、ニトロアニリン誘導体、DNA親和性低酸素選択的細胞毒素、ハロゲン化DNAリガンド、1,2,4ベンゾトリアジン酸化物、2-ニトロイミダゾール誘導体、フッ素含有ニトロアゾール誘導体、ベンズアミド、ニコチンアミド、アクリジンインターカレーター、5-チオレトラゾール誘導体、3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール、4,5-ジニトロイミダゾール誘導体、ヒドロキシル化テキサフリン、シスプラチン、ミトマイシン、チリパザミン、ニトロソウレア、メルカプトプリン、メトトレキサート、フルオロウラシル、ブレオマイシン、ビンクリスチン、カルボプラチン、エピルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンデシン、エトポシド、パクリタキセル、熱(温熱療法)など)、放射線防護剤(例えば、システアミン、アミノアルキル二水素ホスホロチオエート、アミホスチン(WR2721)、IL-1、IL-6など)を投与されてもよい。放射線増感剤は、腫瘍細胞の死滅を増強する。ラジオプロテクタは、放射線による有害な影響から健全な組織を保護する。
【0135】
放射線量が、動物にとって許容不可能な悪い副作用を伴うことなく許容される限り、任意のタイプの放射線を動物に投与することができる。適切なタイプ放射線療法には、例として、電離(電磁気)放射線療法(例えば、X線またはガンマ線)または粒子ビーム放射線療法(例えば、高線形エネルギ放射線)が含まれる。電離放射線は、粒子または光子を含む放射線であって、電離が生じる、すなわち、電子の獲得または喪失を生じるのに充分なエネルギーを有する放射線と定義される(例えば、米国特許第5,770,581号に記載されているように)。放射線の効果は、臨床医によって少なくとも部分的に制御することができる。一実施形態では、標的細胞を最もよく被曝させるために放射線量は分割され、毒性が減少される。
【0136】
一実施形態では、動物体に投与される放射の総線量は約0.1グレイ(Gy)~約100Gyである。別の実施形態では、約10Gy~約65Gy(例えば、約15Gy、20Gy、25Gy、30Gy、35Gy、40Gy、45Gy、50Gy、55Gy、または60Gy)が、治療過程にわたって投与される。ある実施形態では、放射線量の全量を1日程で投与することができるが、理想的には分割され、数日にわたって投与される。望ましくは、放射線療法は、少なくとも約3日間、例えば、少なくとも5、7、10、14、17、21、25、28、32、35、38、42、46、52、または56日間(約1~8週間)にわたって投与される。したがって、1日の放射線量は、約1~5Gy(例えば、約1Gy、1.5Gy、1.8Gy、2Gy、2.5Gy、2.8Gy、3Gy、3.2Gy、3.5Gy、3.8Gy、4Gy、4.2Gy、または4.5Gy)、または1~2Gy(例えば、1.5~2Gy)である。1日当たりの放射線量は、標的細胞の破壊を誘導するのに十分な量であるべきである。一実施形態において、ある時間にわたって延長される場合、照射は毎日投与されず、それによって、動物が休息でき、治療の効果が現れる。例えば、照射は、治療の各週について、5日間連続して投与され、2日間は投与されず、それにより1週間あたり2日間の休息できることが好ましい。しかし、放射線は、動物の応答性および任意の潜在的な副作用に応じて、1日/週、2日/週、3日/週、4日/週、5日/週、6日/週、または7日/週全てで投与することができる。放射線療法は、治療期間中の任意の時点で開始することができる。一実施形態において、照射は、1週目または2週目に開始され、そして治療時間の残りの期間にわたって投与される。例えば、照射は、例えば固形腫瘍を治療するための6週間の治療期間の、1~6週目または2~6週目で投与される。あるいは、5週間の治療期間の、1~5週目または2~5週目に放射線が投与される。しかしながら、これらの例示的な放射線療法投与スケジュールは、本発明を限定することを意図するものではない。
【0137】
本発明において、抗菌治療剤もまた、治療剤として使用され得る。微生物の機能を、消滅させる、阻害する、またはこれ以外の減弱することができる任意の剤、加えて、そのような活性をもつように期待される任意の剤が用いられうる。抗菌剤は、限定されるわけではないが、天然および合成抗生物質、抗体、阻害性タンパク質(例えば、デフェンシン)、アンチセンス核酸、膜破壊性剤などを含み、単独でまたは組み合わせて用いられる。限定されるわけではないが、実際、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などを含む抗生物質の任意の型が用いられ得る。
【0138】
いくつかの実施形態の本発明において、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞(例えば、T細胞(例えば、CD8および/またはCD4T細胞))ならびに1つ以上の治療剤または抗がん剤は、以下の条件のうちの1つ以上の下で動物に投与される:異なる周期で、異なる持続時間で、異なる濃度で、異なる投与経路によってなど。いくつかの実施形態において、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞(例えば、T細胞(例えば、CD8および/またはCD4T細胞))は、治療剤または抗がん剤の前に、例えば、治療剤または抗がん剤の投与の0.5、1、2、3、4、5、10、12、18時間前またはそれ以上前、1、2、3、4、5、6日前またはそれ以上前、あるいは1、2、3、4、5、6週間前またはそれ以上前に投与される。いくつかの実施形態において、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞(例えば、T細胞(例えば、CD8および/またはCD4T細胞))は、治療剤または抗がん剤の投与後、例えば、抗がん剤の投与後0.5、1、2、3、4、5、10、12、18時間後またはそれ以上後、1、2、3、4、5、6日後またはそれ以上後、あるいは1、2、3、4、5、6週間後またはそれ以上後に投与される。いくつかの実施形態において、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞(例えば、T細胞(例えば、CD8および/またはCD4T細胞))ならびに治療剤または抗がん剤は同時に投与されるが、異なるスケジュール、例えば、改変された免疫細胞は毎日投与され、一方、治療剤または抗がん剤は週に1回、2週に1回、3週に1回、4週に1回、またはそれ以上で投与される。他の実施形態では、改変された免疫細胞が週に1回投与され、一方、治療剤または抗がん剤は毎日、週に1回、2週に1回、3週に1回、4週に1回、またはそれ以上投与される。
【0139】
本発明の範囲内に含まれる組成物は、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞(例えば、T細胞(例えば、CD8および/またはCD4T細胞))がその意図される目的を達成するために有効な量で含まれている、全ての組成物を含む。個々の必要性は変化するが、各成分の治療有効量の最適範囲を決定することは、当技術分野の技術の範囲内である。1つの非限定的な例において、GD2に特異的なCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞(例えば、T細胞(例えば、CD8および/またはCD4T細胞))を、哺乳動物、例えば、ヒトに投与して、(例えば、がんを治療するための)1日当たり1000~1010の改変された免疫細胞を提供することができる。別の実施形態では、1000~1010の改変された免疫細胞を投与して、がんを処置、寛解、または予防する(例えば、がんの転移、再発および/または進行を予防する)。単位用量は、1日1回またはそれ以上(例えば、1、2、3、4、5、6日間、またはそれ以上の日または週の間)の、1回以上の投与で投与されてもよい。
【0140】
改変された免疫細胞は、適切な薬学的に受容可能な担体を含む薬学的調製物の一部として、薬学的に使用され得る調製物へ投与され得る。この担体は、改変された細胞のプロセシングおよび/または投与を容易にする賦形剤および補助剤を含む担体である。改変された免疫細胞および/またはそれを含有する薬学的調製物またはそれと同時に使用される他の治療は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、腹腔内、くも膜下、または脳室内に投与され得る。病気の予防または治療のために、治療有効量の改変された免疫細胞および/またはそれを含有する薬学的調製物を投与することができる。適切な投薬量は、治療される疾患のタイプ、改変された免疫細胞のタイプ、疾患の重篤度および経過、個体の臨床状態、個体の臨床履歴および治療に対する反応、ならびに主治医の判断に基づいて決定され得る。
【0141】
本明細書中に記載される方法のいずれかの有効性(例えば、本明細書中に記載される1つ以上の化学療法剤と組み合わせて、CAR標的化GD2を単独で発現するように操作された免疫細胞での治療)は、臨床モデルまたは前臨床モデルのような、当該分野で公知の種々のモデルにおいて試験され得る。適切な前臨床モデルを本明細書に例示する。H3K27M変異がん/腫瘍の他のモデルを使用してもよい。任意の例示的なモデルについて、腫瘍を発生させた後、マウスを、処置または対照処置を受ける処置群に無作為にふりわける。腫瘍のサイズ(例えば、腫瘍体積)は、処置の過程の間に測定され、そして全体の生存率もまたモニターされる。
【0142】
いくつかの実施形態において、試料は、GD2を標的とするCARを発現するように操作された免疫細胞での治療(例えば、単独でまたは、本明細書に記載の他の治療と組み合わせて)の前に得られる。いくつかの実施形態において、試料は、組織試料(例えば、ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)、保管された、生のまたは凍結された)である。いくつかの実施形態では、試料は全血である。いくつかの実施形態において、全血は、免疫細胞、循環腫瘍細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、H3K27M変異の存在は、腫瘍または腫瘍試料において評価される。本明細書中で使用される場合、腫瘍または腫瘍試料は、腫瘍細胞によって占有される腫瘍領域の一部または全部を包含し得る。いくつかの実施形態において、腫瘍または腫瘍試料は、腫瘍関連腫瘍内細胞および/または腫瘍関連間質(例えば、隣接腫瘍周囲線維形成性間質)によって占有される腫瘍領域をさらに包含し得る。腫瘍関連腫瘍内細胞および/または腫瘍関連間質は、主な腫瘍塊に直接隣接および/または隣接する免疫浸潤領域を含み得る。
【0144】
バイオマーカー(例えば、H3K27M)の存在および/または発現レベル/量は、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片、および/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない当該分野で公知の任意の適切な基準に基づいて、定性的および/または定量的に決定され得る。特定の実施形態において、第1の試料中のバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、第2の試料中の存在または非存在および/または発現レベル/量と比較して、増加または上昇する。特定の実施形態において、第1の試料中のバイオマーカーの存在または非存在および/または発現レベル/量は、第2の試料中の存在および/または発現レベル/量と比較して、減少または低減する。特定の実施形態において、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在または非存在および/または発現レベル/量を決定するためのさらなる開示は、本明細書中に記載される。
【0145】
試料中の種々のバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、数々の方法論によって分析され得、その多くは免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、マスアレイ、プロテオミクス、血液の定量に基づく分析(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、定量的リアルタイムPCR(「qRT-PCR」)を含むポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、および他の増幅型検出方法(例えば、分岐DNA、SISBA、TMAなど)、RNA-Seq、FISH、ミクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリングおよび/または遺伝子発現の連続分析(「SAGE」)、そして、タンパク質、遺伝子および/または組織アレイ分析によって行うことができる多種多様なアッセイのいずれか1つを含むが、これらに限定されない。遺伝子および遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコールは、例えば、Ausubel et al., eds., 1995, Current Protocols In Molecular Biology, Units 2 (Northern Blotting), 4 (Southern Blotting), 15 (Immunoblotting) and 18 (PCR Analysis)に記載されている。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能な多重イムノアッセイもまた使用され得る。
【0146】
別の方法では、抗体-バイオマーカー複合体が形成されるのに十分な条件下で、バイオマーカーに特異的な抗体と試料を接触させてから、前記複合体を検出することができる。バイオマーカーの存在は、多くの方法で検出することができ、例えば、ウェスタンブロット法およびELISA法などの、血漿または血清を含む多種多様な組織および試料をアッセイするための方法によって検出することができる。そのような分析法式を用いた広範囲の免疫アッセイ技術が利用可能である(例えば、米国特許4,016,043、4,424,279および4,018,653を参照)。これらには、非競合タイプのシングルサイトおよび2-サイトアッセイの両方または「サンドイッチ」アッセイ、ならびに従来の競合結合アッセイが含まれる。これらのアッセイはまた、標的バイオマーカーへの標識抗体の直接結合を含む。
【0147】
組織または細胞試料において選択されたバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量はまた、機能または活性に基づくアッセイによって試験され得る。例えば、バイオマーカーが酵素である場合、組織または細胞試料中の所定の酵素活性の存在を決定または検出するために、当該分野で公知のアッセイを行い得る。
【0148】
特定の実施形態において、試料は、アッセイされるバイオマーカーの量の差異と使用される試料の質の変動性との両方、およびアッセイを行う間の変動性について正規化される。このような正規化は、周知のハウスキーピング遺伝子を含む特定の正規化バイオマーカーの発現を検出し、組み込むことによって達成され得る。あるいは、正規化は、全てのアッセイされた遺伝子シグナルの平均値または中央値あるいはその大きなサブセットに基づいて行うことができる(グローバル正規化アプローチ)。測定された対象腫瘍mRNAまたはタンパク質の正規化量を、遺伝子ごとに、参照セットで見られる量と比較する。対象当たりの試験された腫瘍当たりのmRNAまたはタンパク質それぞれの正規化された発現レベルは、参照セットにおいて測定された発現レベルに対する割合として表すことができる。分析される特定の対象試料において測定される存在および/または発現レベル/量は、この範囲内の数パーセンタイルに入り、これは、当該分野で周知の方法によって決定され得る。
【0149】
一実施形態では、試料は臨床試料である。別の実施形態では、試料は診断検査に使用される。いくつかの実施形態において、試料は、原発性または転移性腫瘍から得られる。組織の生検は、腫瘍組織の代表的な断片を得るためにしばしば使用される。あるいは、関心のあるがん細胞を含んでいることが知られているまたは考えられる組織または液体を形成することで、間接的にがん細胞を得ることもできる。遺伝子または遺伝子産物は、がんまたは腫瘍組織から、あるいは尿、痰、血清または血漿のような他の身体試料から検出され得る。上記で議論された、がん性試料中の標的遺伝子または遺伝子産物の検出のための技術と同じ技術が、他の身体試料に適用され得る。がん細胞はがん病変から剥離し、そのような身体試料中に出現することがある。このような身体試料をスクリーニングすることにより、これらのがんについて簡単な早期診断をすることができる。さらに、治療の進行は、標的遺伝子(バイオマーカー)または遺伝子産物についてこのような身体試料を試験することによって、より容易にモニターされ得る。
【0150】
特定の実施形態では参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体から得られる単一試料または複数組み合わされた試料であり、試験試料が得られる時とは異なった1以上の時点で得られる試料である。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られる時よりも早い時点において、同じ対象または個体から得られる。がんの初期診断の間に参照試料が得られ、がんが転移性になった場合に試験試料を後から得る場合、このような参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、有用であり得る。
【0151】
特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない1つ以上の健康な個体から得られる複数組み合わされた試料である。特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではなく、かつ疾病または障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体から得られる複数組み合わされた試料である。特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常組織からプールされたRNA試料、または対象または個体ではない1つ以上の個体からプールされた血漿または血清試料である。特定の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではなく、かつ疾病または障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体から得られる、腫瘍組織からプールされたRNA試料あるいは血漿または血清試料である。
【0152】
いくつかの実施形態において、試料は、個体由来の組織試料である。いくつかの実施形態において、組織試料は腫瘍組織試料(例えば、生検組織)である。いくつかの実施形態では、組織試料はCNS組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は脳組織(例えば、グリア組織)である。
【0153】
腫瘍試料は、当該分野で公知の任意の方法によって対象から得ることができ、この方法には生検、内視鏡検査、または外科的処置が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、凍結、固定(例えば、ホルマリンまたは類似の固定剤を使用することによる)、および/またはパラフィンワックス中に包埋することなどの方法によって調製され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍試料を切片化することができる。いくつかの実施形態において、生の腫瘍試料(すなわち、上記の方法によって調製されていないもの)が使用され得る。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、mRNAおよび/またはタンパク質の完全性を保存するために、水溶液中でインキュベートすることによって調製することができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、治療に対する応答性は、生存期間の拡張(全生存期間および無増悪生存期間を含む)、客観的奏効(完全奏効または部分奏効を含む)の結果、またはがんの徴候または症状の改善、のうちの任意の1つまたは複数を指すことができる。いくつかの実施形態では、応答性は、がん患者における腫瘍の状態(すなわち応答、安定化、または進行)を決定するために公表された一連のRECISTガイドラインに規定される1つ以上の因子の改善を指すことができる。これらのガイドラインのより詳細な議論については、Eisenhauer et al., Eur J Cancer 2009;45: 228-47、Topalian et al., N Engl J Med 2012;366:2443-54、Wolchok et al., Clin Can Res 2009;15:7412-20、およびTherasse, P., et al. J. Natl. Cancer Inst. 92:205-16 (2000) を参照。応答性の対象は、例えば、RECIST基準に基づく1つ以上の因子に従って、がんが改善を示す対象をいうことができる。非応答性対象とは、例えば、RECIST基準に基づく1つ以上の因子に従って、がんが改善を示さない対象をいうことができる。
【0155】
従来の応答基準は、免疫療法剤の抗腫瘍活性を特徴付けるのに十分ではない場合がある。これは応答の遅延を生じ得、応答の遅延に先行して、初期の明らかな放射線学的な進行(新たな病変の出現を含む)が起こり得る。そのため、新たな病変の出現の可能性を考慮し、その後の評価で放射線学的な進行を確認できるように改変された応答基準が開発されている。したがって、いくつかの実施形態において、応答性は、免疫関連応答基準2(irRC)に従った1つ以上の因子の改善を指し得る。例えば、Wolchok et al., Clin Can Res 2009; 15:7412-20を参照。いくつかの実施形態では、定義された腫瘍負荷へ新たな病変が追加され、追跡されている(例えば、その後の評価における放射線学的な進行のため)。一部の実施形態では、非標的病変の存在は、完全奏効の評価に含まれ、放射線学的な進行の評価には含まれない。いくつかの実施形態において、放射線学的な進行は、測定可能な疾病に基づいてのみ決定されてもよく、および/または最初に文書化された日から4週間を超える連続評価によって確認されてもよい。
【0156】
本発明の改変された免疫細胞(例えば、CAR T細胞)を利用する治療は、多数の型の正中H3K27M変異小児びまん性正中グリオーマを効果的に排除した。しかし、いくつかの例において、腫瘍/がんの減少および/または排除を導く免疫応答の強さは、その後の膨潤不耐性の神経解剖学的位置における、神経炎症と関連し得る(例えば、Richman et al., Cancer Immunol. Res. (2018) 6(1); 17/11/27オンライン公開を参照)。例として、小脳テント切痕のすぐ上に位置する視床は、浮腫にとって不安定な位置であり、特に腫瘍によってすでに拡張されている場合、この位置での膨潤は、第3脳室圧縮、頭蓋内圧亢進、および致死的なテントヘルニアによって水頭症を引き起こし得る。
【0157】
従って、いくつかの実施形態において、臨床結果を成功させるために、浮腫の臨床的モニタリングおよび/または神経系の管理は、本発明の免疫療法組成物および免疫療法と共に利用される。本発明は、使用されるモニタリングのタイプまたは管理のタイプによって限定されない。実際、頭蓋の炎症および/または腫脹をモニタリングするための任意の手段を使用することができる。同様に、頭蓋の炎症および/または腫脹を管理するための任意の手段を使用することができる。1つの非限定的な例では、頻繁な神経学的底視鏡検査および/または神経画像化を伴って入院患者をモニタリングする間に、水頭症および/または頭蓋内圧上昇の徴候のモニタリングが行われる。いくつかの実施形態では、水頭症を軽減するための脳室内シャント設置、または減圧のための開頭術などの神経外科的介入が、殺腫瘍性神経炎症を介して患者をサポートするために利用される。
【0158】
本明細書は、当業者が実施することを可能にするのに充分であると考えられる。本明細書に示され、説明されたものに加えて、本発明の様々な改変が前述の説明から当業者に明らかになり、特許請求の範囲内に入る。本明細書に引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0159】
〔実施例〕
以下の実施例は、本発明の化合物、組成物、および方法を例示するものであり、限定するものではない。臨床治療において通常遭遇し、そして当業者に明らかである種々の条件およびパラメーターの他の適切な改変および適応は、本発明の精神および範囲内である。
【0160】
<実施例1>
材料及び方法
DIPG/DMG培養物。患者由来グリオーマ細胞培養物を、以前に記載されるように生成した(例えば、Lin and Monje、J Vis Exp,2017(121)を参照のこと)。簡潔には、ショ糖遠心分離によるミエリンおよびデブリの分離の前に、死後腫瘍組織を機械的および酵素的に(Liberase DH、Roche)解離させた。神経球生成培養物を、B27(ThermoFisher)、EGF、FGF、PDGF-AA、PDGF-BB(Shenandoah Biotechnology)、およびヘパリン(StemCell Technologies)を補充した無血清培地中で維持した。全ての培養物を、STRフィンガープリンティング(以下の表1を参照のこと)によって検証およびモニターし、そして以前の6ヶ月以内にマイコプラズマフリーであることを確証した(MycoAlert Plus、Lonza)。
【0161】
【表1】
【0162】
表1.細胞株STRフィンガープリンティング
SU-DIPG6およびSU-DIPG13は既に参照されており、そしてそれぞれSU-DIPG-VIおよびSU-DIPG-XIIIと同一である。
【0163】
細胞表面スクリーニング。DIPG細胞培養物上に存在する細胞表面マーカーを、ヒト細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のパネルを使用してスクリーニングした(Lyoplate、BD Biosciences)。無血清、神経球形成状態で剖検で収集した腫瘍組織から拡大した低継代(<12)のDIPG培養物を96ウェルプレートに分配し、そして100万細胞当たり1μgのヤギIgGでブロックして、その後アッセイにおいて使用する二次抗体の非特異的結合を減少させた。次いで、細胞を、製造業者の説明書に従って、中間洗浄工程を伴って、連続的に一次抗体および二次抗体とともにインキュベートした。次いで、死細胞をLive/Dead violet染色(ThermoFisher)を用いて標識し、そして洗浄後、細胞を1% PFA中で10分間室温で固定した。翌日、染色された細胞をフローサイトメトリーによって分析した。ダブレットおよび死細胞をゲートによって除外し、そしてパネル上の各標的に対する抗体標識の蛍光強度の中央値を、対応するアイソタイプ対照に対する蛍光強度の中央値(MFI)に対して正規化した。
【0164】
免疫組織化学および光学顕微鏡観察。初代DIPG患者腫瘍試料を、到着時に4%パラホルムアルデヒド/PBS中で一晩固定し、次いで、組織試料が沈降するまで(2~3日)、30%スクロースに移した。次いで、組織をクリオモルドに移し、そしてOCT(TissueTek)に包埋した。10ミクロンの凍結切片をクリオスタット(Leica)上で生成し、そして透過処理(0.3% Triton X-100、TBS)およびブロッキング(5%ウマ血清、Vector Laboratories)の前に、内因性ペルオキシダーゼ活性を中和した(Bloxall、Vector Laboratories)。H3K27M (Abcam ab190631、1:1000、1時間、室温)およびGD2(14g2a、BD、1:500、1時間、室温)について、連続的な二重免疫組織化学を実施した。H3K27Mは、ポリマーベースのペルオキシダーゼ二次(ImmPRESS VR抗ウサギIgG、Vector Laboratories、30分、室温)およびDAB基質(BD、45秒、室温)を用いて発色させた。これらの条件下で、H3K27M+細胞を、Sanger配列決定によってH3F3AおよびHISTH1B3変異の両方を有することが確認された複数の組織において、日常的に同定することができた。TBS中でDAB基質の発色をクエンチし、そして14g2a一次抗体で染色した後、ポリマーベースのアルカリホスファターゼ二次(ImmPRESS AP抗マウスIgG、Vector Laboratories、30分、室温)および青色アルカリホスファターゼ基質(Vector Blue AP基質キット、Vector Laboratories、150秒、室温)を使用してGD2シグナルを発色させた。AP発色をTBS中でクエンチし、そして試料をマウントおよびイメージングした(Zeiss AxioObserver)。ヘマトキシリン-エオシン染色のために、マウスをトリブロモエタノールの腹腔内注射によって深く麻酔し、そして冷PBSを経心的に潅流し、脳を取り出し、そして4%パラホルムアルデヒド/PBS中で一晩固定した。次いで、脳を70%エタノールに移し、続いてパラフィンに包埋し、切片化し、そしてヘマトキシリン/エオシンで染色した。次いで、H&E組織学を分析した。
【0165】
免疫蛍光および共焦点顕微鏡観察。マウスをトリブロモエタノール(Avertin)で深く麻酔した後、冷PBSで経心的に潅流した。次いで、脳および他の目的の組織を取り出し、そして4% PFA/PBS中で一晩固定した後、30%スクロースに移し、そして沈降させた(2~3日)。次いで、連続的な40ミクロンの冠状切片を凍結ミクロトームで切断し、そして組織凍結保護溶液(グリセロール、エチレングリコール、リン酸緩衝液)中に浮遊させた後、-20℃で貯蔵した。次いで、連続切片を4℃で一晩染色した。使用した一次抗体は以下のとおりであった:ウサギ抗H3K27M(Abcam、1:1000)、ウサギ抗切断カスパーゼ-3(Cell Signaling Technology、9661、1:250)、マウス抗NeuN(Millipore、MAB377、1:500)、およびウサギIba1(Wako、019-19741、1:500)。ロバにおいて惹起され、そしてAlexaFluor 594または647と結合した二次抗体を4℃で一晩使用して、一次標識を検出した(Jackson ImmunoResearch、1:500)。マウントした試料を共焦点顕微鏡観察(Zeiss LSM710)によってイメージングし、そして腫瘍領域を通して獲得されたZ積層を最大強度投影(ImageJ)によって平坦化した。腫瘍細胞密度を定量するために、獲得された顕微鏡写真における浸潤腫瘍の境界内の細胞を計数し、そして腫瘍面積に対して正規化し(ImageJ)、そして全ての細胞の合計を、1:12シリーズで各動物について3~4個の切片にわたって調査した総面積に対して正規化した。
【0166】
RT-qPCR。培養物を、標準的な増殖条件下で3連でプレーティングし、そして24時間後にトリゾール中に収集した。DNAse処理後、抽出したRNAを逆転写し(Maxima first strand、ThermoFisher)、そしてqPCR反応のための鋳型として利用した(Maxima SYBR green、ThermoFisher)。利用したプライマーを以下の表2に列挙する。
【0167】
【表2】
【0168】
表2.RT-PCRに使用したプライマー
鋳型なしおよびRT対照は有意に増幅しなかった。
【0169】
CAR構築、レトロウイルスベクター産生およびT細胞形質導入。GD2.BBzおよびCD19.BBz CARレトロウイルスベクターを構築した(例えば、Lynn et al., Blood, 2015, 125 (22):p.3466-76を参照のこと)。GD2.BBzおよびCD19.BBz CARをコードするレトロウィルス上清を、293GP細胞株の一過性トランスフェクションを介して産生した(例えば、Haso et al, Blood, 2013. 121(7): p. 1165-74を参照のこと)。簡潔には、293GP細胞を、CARおよびRD114エンベロープタンパク質をコードするプラスミドを用いて、Lipofectamine 2000(Life Technologies)を介して、ポリ-d-リジンコートしたプレート上でトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後および72時間後に上清を回収した。単離したヒトT細胞を、3日間40IU/mlのIL-2とともに3:1のビーズ:細胞比で抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies)を用いて活性化した。次いで、活性化T細胞を、3日目および4日目にRetronectin(Takara)コートプレートを使用してレトロウイルス形質導入し(例えば、Long et al., Nat Med, 2015. 21(6): p.581-90を参照のこと)、そして300IU/ml IL-2中で培養した。抗CD3/CD28ビーズを5日目に除去した。培地およびIL-2を2~3日毎に交換した。形質導入効率を、GD2.BBz CARについては1A7抗イディオタイプ抗体(例えば、Sen et al., J Immunother, 1998. 21(1): p. 75-83を参照のこと)を用い、そしてCD19.BBz CARについてはFMC63抗イディオタイプ抗体136.20.1(例えば、Jena et al., PLoS One, 2013. 8(3): p.e57838を参照のこと)、またはProtein L(Pierce)を用いてフローサイトメトリーによってチェックした。
【0170】
インビトロサイトカイン生成および細胞死滅。標準的なルシフェラーゼベースのアッセイを行って、CAR T細胞の細胞溶解能を評価した(例えば、Lynn et al., Blood, 2015. 125(22): p.3466-76を参照のこと)。ホタルルシフェラーゼ発現標的腫瘍細胞(1ウェル当たり10,000個)を、10:1~1:1の範囲のエフェクター対標的(E:T)比で、24時間CAR T細胞と共インキュベートした。STEADY-GLO Luciferase Assay System(Promega)を使用して、残存する標的からの残留ルシフェラーゼ活性を測定し、そして溶解を以下のように計算した:%溶解=100-[[(T細胞処理ウェルからの平均シグナル)/(未処理標的ウェルからの平均シグナル)]×100]。
【0171】
インビトロでのCAR T細胞によるサイトカイン産生を、CAR+T細胞の、標的腫瘍細胞との1:1比(各々100,000細胞)での共インキュベーションによって評価し、CAR+T細胞カウントは、抗イディオタイプ染色およびフローサイトメトリーによって評価される形質導入効率を組み込んだ。対照CD19-4-1BBz CAR T細胞のために使用したT細胞の総数を、GD2-4-1BBz CAR T細胞のために使用した数と一致させて、T細胞の総数が群間で一定のままであることを確実にした。24時間後、上清を収集し、そしてIL-2およびIFN-γについてELISAによってサイトカインレベルを測定した(BioLegend)。
【0172】
T細胞増殖。培養15日目のGD2-CAR T細胞を、製造業者のプロトコールに従ってCell Trace Violet(ThermoFisher)を用いて標識した。標識GD2-CAR T細胞を、腫瘍なし、VUMC-DIPG10(GD2陰性、H3K27M陰性)またはSU-DIPG13(GD2陽性、H3K27M陽性)のいずれかとともにインキュベートした。5日間のインキュベーションの後、細胞を収集し、そして増殖についてフローサイトメトリーによって分析した。分析を、抗687イディオタイプ染色によって同定されるCAR+T細胞のみに対して行った。
【0173】
同所性異種移植片の生成および処置。同所性DIPG異種移植片を生成した(例えば、Grasso et al., Nat Med, 2015. 21(6): p.555-9を参照のこと)。全てのインビボ実験は、Stanford University Institutional Care and Use Committeeによって承認され、施設ガイドラインに従って実施された。動物を、12時間明/暗サイクルで、食物および水への自由なアクセスで、施設ガイドラインに従って飼育した。簡潔には、CMVプロモーターによって駆動されるeGFPおよびホタルルシフェラーゼを発現するレンチウイルスを用いて事前に形質導入された患者由来DIPG細胞培養物を、定位注入器(Stoelting)によって、冷麻酔した新生(P0-2)NSGマウス(Jax)の橋(座標ラムダAP-3mm、DV-3mm)中に注入した。イソフルラン麻酔したP35 NSGマウスの髄質中への、CAGプロモーターによって駆動されるeGFPおよびホタルルシフェラーゼを発現するレンチウイルスを用いて形質導入したSU-pSCG1の定位注入によって、同所性小児脊髄グリオーマ異種移植片を生成した(座標ラムダML+0.7mm、AP-3.5mm、DV-4.5mm、600k細胞)。同所性視床グリオーマ異種移植片を、CMVプロモーターによって駆動されるeGFPおよびホタルルシフェラーゼを発現するレンチウイルスを用いて形質導入したQCTB-R059の、イソフルラン麻酔したP35 NSGマウスの視床中への定位注入によって生成した(座標ブレグマML+0.8mm、AP1mm、DV-3.5mm、600k細胞)。次いで、腫瘍を60日間発達させた。処置前に、腫瘍負荷をインビボ発光イメージング(IVIS Spectrum、PerkinElmer)によって評価し、そして含まれるソフトウェア(Living Image、Perkin Elmer)によって、動物の頭部を中心とする標準円形ROIを通した輝度として全フラックスを計算した。対になったバックグラウンド領域を、バックグラウンドを超えた有意な発光が検出されなかった動物の側腹にわたって、円形ROIを使用して定量した。動物を腫瘍負荷によって順位付けし、そしてGD2またはCD19-CAR処置群に連続的に分配して、等価な初期腫瘍負荷の集団が治療の各群を受けるようにした。この方法で評価した初期負荷は、処置群および移植した細胞株にわたって等価であった(図3を参照のこと)。SU-DIPG13P*細胞を、イソフルラン麻酔したP35 NSGマウスの橋中に注射し(座標ラムダML+1mm、AP-0.8mm、DV-5mm、600k細胞)、そしてT細胞投与前14日間発達させた。200マイクロリットルのPBS中で1×10個の形質導入細胞を送達するように調整した濃度のCAR T細胞(フローサイトメトリーを用いたイディオタイプ染色によって評価、ルーチンに>60%)を、次いで動物の尾静脈中への静脈注射によって投与した。形質導入効率がGD2-CARとCD19-CARとの間で変動した場合、CD19-CAR細胞の濃度を、GD2CAR注入に存在するヒトT細胞の総投与量に一致するように調整した。腫瘍負荷を、インビボ発光イメージングによって長期にモニターした。GD2-CAR応答の性質に起因して、初期コホートにおける盲検化は有効でないとみなされ、その後実施されなかった。全ての画像を、最小フラックス強度を5×10、最大を5×10として示すようにスケール化し、次いで、個々の動物の画像を、図に表示するためにコホート内で処置動物と同様に配列した。処置50日後の試験終了時を、初期コホートにおいて決定した。ここで、安楽死の罹患基準を誘発するGD2-CAR群とCD19-CAR群の両方における実質的な脱毛、活動低下、および体重減少があった。
【0174】
GD2シンターゼのCRISPR/Cas9媒介欠失。SU-DIPG13細胞におけるGD2シンターゼ(B4GALNT1)の欠失を、記載されるように、Cas9:sgRNAリボ核タンパク質複合体を用いたDIPG13のエレクトロポレーションによって達成した(Hendel et al., Nat Biotechnol 33, 985-989 (2015)を参照のこと)。簡潔には、B4GALNT1のエキソン1を標的とするガイドRNA(CGUCCCGGGGUGCUCGCGUAC(配列番号15)およびCCGGCUACCUCUUCUGCGCCGU(配列番号16)、Synthego)を、Cas9ヌクレアーゼと共にインキュベートして、リボ核タンパク質複合体を形成させ、そしてAmaxa 4-D nucleofector(SE Buffer、プログラムDS-112)を用いてエレクトロポレーションした。並行して、AAVS1遺伝子座46を標的とする対照gRNA(GGGGCCACUAGGGACAGGAGAU(配列番号17))を、同一のパラメーターを使用して、リボ核タンパク質複合体としてCas9ヌクレアーゼとともにエレクトロポレーションした。B4GALNT1標的gRNAを用いてエレクトロポレーションしたGD2陰性細胞を、FACSソーティングによって単離し、そして欠失をSanger配列決定およびTIDE分析によって確認した(Nucleic Acids Res 42, e168 (2014)を参照のこと)。
【0175】
統計および再現性。統計的検定は、特に指定がない限り、Prism(GraphPad)ソフトウェアを使用して行った。ガウス分布をShapiro-Wilk正規性検定によって確認した。パラメーターデータについては、対ごとの差異をさらに調べるために、独立両側スチューデントt検定およびTukeyの事後検定を用いた一元配置ANOVAを使用した。生存分析のために、ログランク(Mantel-Cox)検定を使用した。有意差を示すために、P<0.05のレベルを使用した。対照マウスにおける異種移植片成長の分散に基づいて、処置群あたり少なくとも3匹のマウスを使用して、0.05の有意水準で20%の効果量を検出するために80%の検定力を与えた。全ての動物実験について、使用した独立したマウスの数を図に示すか、または図面の簡単な説明に列挙する。使用した5つの患者由来異種移植片モデルの各々について、少なくとも2つの独立したコホートを試験した(すなわち、細胞の独立したバッチを用いた異なる日のマウスの独立した同腹仔)。サイトカインおよびインビトロ細胞死滅実験について、n=3、そして実験を2回繰り返した。
【0176】
<実施例2>
ヒストンH3 K27M(H3K27M)変異びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)におけるジシアロガングリオシドGD2の過剰発現の同定
DIPGにおける免疫療法(例えば、CAR T細胞療法)のための潜在的な標的を同定するために、細胞表面抗原(図13を参照のこと)を、患者由来DIPG培養物においてスクリーニングした(図1Aを参照のこと)。独立した患者由来培養物間の有意な重複(図1Bを参照のこと)は、DIPG患者にわたる表面マーカーの中核群の保存を示した。これらの共通の標的から、ジシアロガングリオシドGD2が、スクリーニングされた4つの患者由来DIPG培養物の各々において高レベルで共通に発現されると同定された。フローサイトメトリーによるヒット検証により、H3F3A K27M変異およびより一般的でないHIST1H3B K27M変異を有するものの両方を含む、試験した全てのH3K27M DIPG培養物における一様かつ著しく高いレベルのGD2発現が確認された(図1C、Wu et al., Nature Genetics, 2012. 44(3): p. 251-253;Khuong-Quang et al., Acta Neuropathol, 2012. 124(3): p. 439-47;およびSchwartzentruber et al., Nature, 2012. 482(7384): p.226-31を参照のこと)。興味深いことに、GD2発現は、DIPGと診断された症例を含む、ヒストンH3 WT小児高悪性度グリオーマ(pHGG)において、はるかに低いことが同定された(図1Cを参照のこと)。
【0177】
H3K27M変異から生じる転写攪乱が、GD2発現の増加に関連するかどうかを評価するために、ガングリオシド合成酵素の遺伝子発現を、患者由来DIPGおよびpHGG培養物のパネルにおいてプロファイリングし、そしてH3K27M変異を有する培養物において上流ガングリオシド合成酵素の一貫してより高い発現が見出された(図1Jを参照のこと)。浸潤悪性細胞およびGD2を同定するためのH3K27Mについての初代ヒトDIPG組織の二重免疫染色は、天然腫瘍の文脈においてGD2の局所発現を確認した(図1Dを参照のこと)。
【0178】
<実施例3>
GD2-CAR T細胞を用いたDIPG細胞のGD2依存性細胞死滅
ヒトGD2標的化CAR T細胞を、14g2a scFvおよび4-1BBz共刺激ドメインを用いて生成した(図1EおよびLong et al., Nature Medicine, 2015. 21(6): p.581-590を参照のこと)。有意なGD2依存性細胞死滅(図1Fを参照のこと)およびサイトカイン生成(図1Gを参照のこと)が、4-1BBz(CD19-CAR)を組み込んだ対照CD19-CAR T細胞と比較して、患者由来DIPG培養物への曝露に際して観察された。注目すべきことに、GD2指向性CAR T細胞は、H3WT、GD2陰性VU-DIPG10患者由来DIPG培養物に曝露されたときに、有意なサイトカインを産生せず、細胞死滅を誘導しなかった。それによって、H3K27M DIPGに対するGD2-CARの治療的特異性が実証された。
【0179】
GD2-CAR T細胞の標的特異性をさらに確認するために、患者由来DIPG細胞におけるGD2シンターゼ(B4GALNT1)のCRISPR-Cas9媒介欠失を使用して、GD2ノックアウトDIPG細胞を生成した(図1H(a)、1H(b)および1H(c)を参照のこと)。GD2抗原発現の喪失は、AAVS1遺伝子座を標的とする対照ガイド配列を用いてエレクトロポレーションしたDIPG細胞または未処理と比較して、GD2-CAR T細胞によるサイトカイン産生を排除した(図1Iを参照のこと)。これらのデータは、H3K27M+グリオーマ細胞に対するGD2-CAR T細胞の特異的反応性を示す。
【0180】
<実施例4>
DIPGに対するGD2指向性CAR T細胞のインビボ有効性
DIPGに対するGD2指向性CAR T細胞のインビボ有効性を評価するために、死後の患者組織に由来するDIPG培養物の同所性マウス異種移植片を調製し、次いで、腫瘍負荷の長期モニタリングを可能にするためにルシフェラーゼ発現構築物を用いて形質導入した。異種移植片モデルは、DIPGのびまん性浸潤組織学を忠実に再現する(例えば、Monje et al. Proc Natl Acad Sci USA 108, 4453-4458 (2011);およびQin et al., Cell 170, 845-859 e819 (2017)を参照のこと)。マウスを、橋異種移植片の確立後7~8週間の単回静脈内注射による1×107個のGD2-CARまたはCD19-CAR T細胞を受ける前に、初期腫瘍負荷によって等価の処置群および対照群に分配した。処置後40日(DPT)以内に、SU-DIPG6異種移植片を有するマウスの2つの独立したGD2-CAR T細胞処置コホートにわたって、腫瘍負荷の顕著な低減が観察された(図2AおよびGrasso et al., Nat Med 21, 555-559 (2015)を参照のこと)。同様の結果が、第2の患者由来異種移植片モデル、SU-DIPG13FL30において観察された(図2eを参照のこと)。全てのGD2-CAR処置動物が、生物発光イメージングによって完全な腫瘍排除を示した(図3を参照のこと)。対照的に、CD19-CAR T細胞対照群におけるマウスは、有意な腫瘍退行を示さなかった。50DPTで脳を採取し、そして変異ヒストンH3K27M(全ての移植腫瘍細胞に中存在する)についての免疫染色は、GD2-CAR処置腫瘍が大部分根絶されたことを明らかにした(図2C、D、G、H、Iを参照のこと)。
【0181】
処置後に残存する少数のH3K27M+腫瘍細胞は、免疫染色によってGD2について陰性であった(図4を参照のこと)。このデータは、GD2-CAR T細胞の効力がH3K27M変異DIPGにおける標的抗原の高発現によって駆動されたことを証明し、これはGD2+神経芽細胞腫および肉腫細胞株上に存在するものよりも一貫して高いことが観察された(図5を参照のこと)。
【0182】
大部分の患者由来同所性DIPG異種移植片モデルは、致死性のために何ヶ月も必要とし、これは、ヒトT細胞での処置後の異種移植片対宿主病(GVHD)の発達に起因する生存利益をモニターする能力を制限している(Ali et al., PLoS One 7, e44219 (2012)を参照のこと)。それゆえ、SU-DIPG-13P*を使用した。なぜなら、それは、組織学的に密な成長パターンを示すモデルであり(Nagaraja et al., Cancer Cell 31, 635-652 e636 (2017)を参照のこと)、そして1ヶ月以内に一貫して致死的であるからである。生存の実質的な改善が、CD19-CAR処置対照と比較して、GD2-CAR処置動物において観察された(図6Aを参照のこと)。しかし、3つの独立したコホートのうちの1つにおいて、致死毒性がいくつかのGD2-CAR T細胞処置動物において生じ、一方、他のコホートにおける全てのGD2-CAR T細胞処置動物は終了時まで生存した(図7を参照のこと)。グリオーマ排除の初期を生き残ったGD2-CAR処置動物は、終了時基準を一定不変に誘発したCAR投与の4+週間後のGVHD症状の開始まで、未処置免疫不全マウスと区別できない視覚的に健康な状態に戻った(図8を参照のこと)。終了時GD2-CAR処置動物の脳の組織学的分析は、この高負荷腫瘍の排除を明らかにし、周囲の神経組織は全体的に正常であるように見えた(図6Bを参照のこと)。
【0183】
これらのDIPG異種移植片モデルにおける処置関連毒性の病因をより良く理解するために、処置したSU-DIPG6異種移植片を有するマウスの脳を、DPT14で急性に試験した(図3c)。GD2-CAR処置は、脳実質、髄膜および脳室を含む広範囲の炎症性浸潤を伴い、これは脳幹において最も顕著であった。水頭症と一致して、脳室拡大が観察された。組織学的に正常に見えるニューロンが、GD2-CAR T細胞処置動物の橋、海馬、および皮質全体に存在することが観察され、このモデルにおいてニューロン細胞死滅または他の組織破壊の証拠はなかった(図6Cを参照のこと)。従って、神経病理学的評価は、上記の毒性が、GD2-CAR T細胞のオンターゲット、オフ腫瘍毒性ではなく、腫瘍排除間隔の間の第4脳室圧縮に起因する脳幹炎症および水頭症から生じたことを示した。
【0184】
実質および腫瘍中へのCAR T細胞浸潤を可視化するために、GD2-4-1BBz-mCherryおよびCD19-4-1BBz-mCherry融合構築物を生成した(図6Dを参照のこと)。DPT7までに、GD2-CAR T細胞は処置動物の軟髄膜全体に広範囲に分布し、軟髄膜腫瘍は大部分が根絶され、そして脳実質内にmCherry+細胞はほとんど存在しなかった(図6Hおよび図9を参照のこと)。DPT14までに、mCherry+GD2-CAR T細胞は実質全体に広く浸潤しており、そしてIba1+マクロファージの多数の病巣(図6Eを参照のこと)が広範なアポトーシス性切断カスパーゼ3+細胞と共に、異種移植部位に存在した(図6Fを参照のこと)。注目すべきことに、非常に少数の切断カスパーゼ3+アポトーシス性細胞が、NeuN二重免疫染色によって同定されるニューロンであった(4匹のマウスにわたって同定された10個の全アポトーシス性ニューロン)(図6Gおよび図10を参照のこと)。DPT21までに、mCherry+GD2-CAR T細胞はCNS全体に存在したままであった;一方、実質に浸潤したCD19-CAR T細胞はほとんどなかった(図9を参照のこと)。このことは、静脈内投与されたGD2-CAR T細胞が髄膜リンパ系を通って進入し(Louveau et al., Nature 523, 337-341 (2015)を参照のこと)、次いでその後、脳実質に浸潤することを示した。腫瘍排除および脳室拡大の消散が処置動物において時間的に一致するとすれば、データはまた、オンターゲット、オフ腫瘍細胞死滅ではなく、抗原特異的抗腫瘍活性が、水頭症を生じる活発な殺腫瘍活性の間の神経炎症および浮腫を生じさせる可能性を示す。
【0185】
<実施例5>
CAR T細胞療法は複数の型の正中H3K27M変異小児びまん性正中グリオーマを有効に排除するが、視床異種移植片における毒性と関連する
近年のWHO基準は、H3K27M変異を発現するびまん性正中グリオーマ(DMG)のより大きな分類内にDIPGを置いている(図11A、およびLouis et al., Acta Neuropathol 131, 803-820 (2016)を参照のこと)。小児H3K27M視床(QCTB-R059、切除由来)および脊髄(SU-pSCG1、死後由来)DMGの患者由来培養物において、GD2はまた、高度かつ一様に発現しており(図11Bを参照のこと)、そしてGD2-CAR T細胞によるIFNγおよびIL-2産生を誘発する(図11Cを参照のこと)。疾患の神経解剖学的部位がCAR T細胞療法の成績に影響し得るかどうかを決定するために、そしてこれらのH3K27M DMGにおけるインビボのGD2-CAR T細胞の有効性を探索するために、脊髄(SUpSCG1)および視床(QCTB-R059)グリオーマの患者由来同所性異種移植片モデルを生成した。脊髄中への注入によって誘導される麻痺を回避するために髄質中に移植した場合、広範囲のSUpSCG1成長がCNS全体にわたって観察された(図11Dを参照のこと)。GD2-CAR T細胞の全身投与は、脊髄グリオーマ異種移植片モデルにおいて強力かつ持続的な腫瘍排除を達成した。これを、長期生物発光イメージング(図11Dおよび11Eを参照のこと)および終了時組織学の両方によって評価した。ここで、動物あたり約16個の残存H3K27M+細胞が、3匹のGD2-CAR T細胞処置動物のサンプリングした体積にわたって残存していた(図11Fおよび11Gを参照のこと)。このコホートからのマウスは腫瘍排除期に死亡しなかった。
【0186】
H3K27M視床グリオーマにおける有効性を評価するために、QCTB-R059細胞を視床に同所的に移植した(図11Hを参照のこと)。上記のDIPGおよび脊髄腫瘍について観察されたのと同様のタイムスケールで、このモデルにおいて腫瘍排除が観察された(図11H、11Iおよび図12を参照のこと)。しかし、最大治療効果の期間中に、GD2-CAR T細胞処置動物において実質的な毒性が生じ(図11Kを参照のこと)。結果は、チェックポイント阻害剤を用いた免疫療法後に十分に記載されている「偽増悪」を連想させ(Wolchok et al., Clin Cancer Res 15, 7412-7420 (2009)を参照のこと)、そして膨潤不耐性の神経解剖学的位置における強固な免疫療法応答およびその後の神経炎症の潜在的欠点を強調する。
【0187】
上記の明細書において言及された全ての刊行物および特許は、本明細書中に参考として援用される。ここに記載した本発明の方法およびシステムに本発明の範囲および精神から逸脱することなく各種の改変および変更を加えることは当業者に明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、特許請求の範囲に記載されている本発明はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、関連分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された様式の種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0188】
図1A図1Aは、患者由来DIPG細胞培養物中の細胞表面抗原のフローサイトメトリーに基づくスクリーニングを示す。
図1B図1Bは、スクリーニングされた培養物間のヒット重複の評価が、全てのスクリーニングされた培養物において、アイソタイプ対照の少なくとも10倍のMFIで存在する合計36個のヒットを同定したことを示す。
図1C図1Cは、DIPGと診断された、ヒストンH3 WTの小児高悪性度グリオーマ培養物VU-DIPG10、および皮質に生じたpcGBM2のフローサイトメトリー染色が、ヒストンH3 K27M DIPGと比較して著しく低いGD2発現レベルを示すことを示す。
図1D図1Dは、腫瘍細胞を同定するための変異H3K27Mに対する抗体およびマウス抗GD2(14g2a)を利用する初代DIPG腫瘍標本の二重免疫組織化学を示し、これは、初代DIPGにおける広範な局所的GD2発現を示す(スケールバー=100ミクロン)。
図1E図1Eは、DIPGに対する有効性を評価するために使用される、GD2指向性14g2a scFv;4-1BB;CD3z CAR T細胞および対照構築物の模式図を描写する。
図1F図1Fは、DIPG細胞のGD2-CAR T細胞とのインキュベーションが、CD19-CAR T細胞の存在下での大部分の条件下での最小溶解比と比較して、低いエフェクター:標的(E:T)比で強力なDIPG細胞溶解を達成することを示す。
図1G図1Gは、GD2-CAR T細胞のDIPG培養物とのインキュベーションが、CD19-CAR T細胞による最小の産生と比較して、実質的なサイトカイン(IFN-gおよびIL-2)生成を誘導したことを示す。
図1H図1Hは、GD2シンターゼのCas9媒介欠失が、DIPG培養物におけるGD2発現を排除することを示す。
図1I図1Iは、非改変対照細胞または対照AAVS1遺伝子座を標的とするCas9と比較して、GD2シンターゼをノックアウトするためにCRISPR/Cas9を使用して生成されたH3K27M GD2neg株との共培養後に、GD2-CAR T細胞が実質的なレベルのIFN-γまたはIL-2を産生しないことを示す。
図1J図1Jは、ガングリオシド酵素発現の経路分析を示す。
図2-1】図2は、GD2標的化CAR免疫療法が、DIPG同所性異種移植片において強力かつ持続的な抗腫瘍応答を達成したことを示す。
図2-2】図2の続きである。
図2-3】図2の続きである。
図3図3は、GD2-CAR T細胞の単回静脈内投与が、ルシフェラーゼ発現患者由来DIPG異種移植片をバックグランド生物発光レベルまで排除したことを示す。
図4図4は、DIPG異種移植片におけるGD2 CAR T細胞療法の選択圧を示す。
図5A図5Aは、神経芽細胞腫(KCNR、CHLA136、CHLA255)、骨肉腫(143B、MG63-3)、およびユーイング肉腫(TC32、EW8)を含む、GD2標的化免疫療法について調査中の他の悪性腫瘍に由来する細胞と比較して、DIPG培養物の表面上でのGD2についてのフローサイトメトリー染色(クローン14g2a)がより強くかつより一様な発現を示したことを示す。
図5B図5Bは、DIPGおよび他のがん株についての蛍光ビーズ標準(Quantibrite、BD)を使用して得られたGD2表面発現の定量的推定を示す。
図6図6は、GD2-CAR T細胞療法が、DIPG同所性異種移植片の生存を改善することを示す。
図7図7は、SU-DIPG13P*異種移植片の3つの独立したコホートにおいて評価したGD2 CAR T細胞療法の生存利益を示す。
図8図8は、異種移植片対宿主病の発症が、GD2-CAR T細胞処置患者由来異種移植片モデルにおけるモニター期間を制限することを示す。
図9図9は、標識GD2 CAR T細胞が、抗腫瘍活性の期間の間に腫瘍部位に侵入することを示す。
図10図10は、GD2-CAR T細胞処置DIPG異種移植片の切断カスパーゼ-3染色を示す。
図11図11は、GD2 CAR T細胞療法が、多数の型の正中H3K27M変異小児びまん性正中グリオーマを有効に排除し、そして視床異種移植片における毒性と関連することを示す。
図12図12は、GD2 CAR-T細胞療法が、生存しているQCTB-R059視床H3K27M異種移植片において腫瘍負荷の組織学的排除を達成することを示す。
図13図13は、患者由来DIPG培養物においてスクリーニングした細胞表面抗原を示す。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図13-5】
図13-6】
【配列表】
0007210534000001.app