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特許7210539洋上風力タービンの鋼支持構造体のための陰極防食
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】洋上風力タービンの鋼支持構造体のための陰極防食
(51)【国際特許分類】
   C23F 13/02 20060101AFI20230116BHJP
   C23F 13/06 20060101ALI20230116BHJP
   C23F 13/20 20060101ALI20230116BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20230116BHJP
【FI】
C23F13/02 H
C23F13/02 A
C23F13/06
C23F13/20 A
B63B35/00 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020505425
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018070457
(87)【国際公開番号】W WO2019025316
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】17184975.5
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518399243
【氏名又は名称】オルステッド・ウィンド・パワー・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Orsted Wind Power A/S
【住所又は居所原語表記】Kraftvaerksvej 53,7000 Fredericia,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン、ビリット・ブール
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102677066(CN,A)
【文献】国際公開第2009/157816(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/00- 13/22
B63B 1/00- 85/00
B63J 1/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力タービンを支持するための支持システムであって、前記洋上風力タービンを支持するための鋼支持構造体と、前記鋼支持構造体を腐食から保護するように構成された陰極防食システムと、を備え、前記陰極防食システムが、前記鋼支持構造体に関連して配置された1つ以上の流電陽極と、前記1つ以上の流電陽極を前記鋼支持構造体に電気的に接続し、それによって前記鋼支持構造体が前記1つ以上の流電陽極から前記鋼支持構造体に流れる電子によって分極することができる、第1の電気接続と、を備え、前記第1の電気接続が、前記1つ以上の流電陽極から前記鋼支持構造体へ流れる電子の割合を変化させることができ、それによって前記鋼支持構造体の前記分極を変化させる、適応可能な電気接続であり、前記陰極防食システムが、前記第1の電気接続に動作可能に接続され、前記第1の電気接続を制御し、それによって前記鋼支持構造体の前記分極を変化させるように構成された制御ユニットをさらに備え、前記陰極防食システムが、第1の位置で前記鋼支持構造体に関連して配置された第1の基準電極と、第2の位置で前記鋼支持構造体に関連して配置された第2の基準電極とをさらに備え、前記制御ユニットが、前記第1の基準電極と前記第2の基準電極の両方にさらに動作可能に接続され、前記第1の基準電極と前記第2の基準電極の両方で測定された電気化学的電位に応じて前記第1の電気接続を制御するように構成されていることを特徴とする、支持システム。
【請求項2】
前記第1の電気接続が、複数の状態を有する少なくとも1つの電気的構成要素を備えることによって適応可能である、請求項に記載の支持システム。
【請求項3】
前記制御ユニットが、前記第1の基準電極および前記第2の基準電極の両方で測定された前記電気化学的電位に基づいて第1の関数を推定し、前記第1の関数に基づいて前記第1の電気接続を制御するように構成されている、請求項に記載の支持システム。
【請求項4】
前記制御ユニットが、電気化学的分極の空間分布に関連する補助データへのアクセスをさらに有し、前記制御ユニットが、前記補助データ、前記第1の基準電極および/または前記第2の基準電極で測定された前記電気化学的電位に応じて、前記第1の電気接続を制御するように構成されている、請求項のいずれか1項に記載の支持システム。
【請求項5】
前記陰極防食システムが、前記制御ユニットに動作可能に接続された通信ユニットをさらに備える、請求項に記載の支持システム。
【請求項6】
前記鋼支持構造体が、中空内部を囲んでいる1つ以上の壁を有し、前記1つ以上の壁が第1の開口部を有し、前記1つ以上の流電陽極が前記鋼支持構造体の外側上に配置されており、前記第1の電気接続が、第1の端部で前記1つ以上の流電陽極に電気的に接続され、前記第1の開口部を通って前記中空内部に延在する第1の電気ケーブルを備え、前記第1の電気ケーブルが、前記鋼支持構造体の前記第1の開口部から電気的に絶縁され、前記中空内部に配置された前記第1の電気接続の別の部分に電気的に接続されている、請求項に記載の支持システム。
【請求項7】
洋上風力タービンを支持するための鋼支持構造体を腐食に対して保護するための陰極防食システムであって、前記鋼支持構造体に関連して配置されている1つ以上の流電陽極と、前記1つ以上の流電陽極を前記鋼支持構造体に電気的に接続するための第1の電気接続と、を備え、これにより、前記鋼支持構造体が、前記1つ以上の流電陽極から前記鋼支持構造体に流れる電子によって分極され得、前記第1の電気接続が、前記1つ以上の流電陽極から前記鋼支持構造体に流れる電子の割合を変化させることができ、それによって前記鋼支持構造体の前記分極を変化させる、適応可能な電気接続であり、前記陰極防食システムが、前記第1の電気接続に動作可能に接続可能であり、前記第1の電気接続を制御し、それによって前記鋼支持構造体の前記分極を変化させるように構成された制御ユニットをさらに備え、前記陰極防食システムが、第1の位置で前記鋼支持構造体に関連して配置された第1の基準電極と、第2の位置で前記鋼支持構造体に関連して配置されている第2の基準電極とをさらに備え、前記制御ユニットが、前記第1の基準電極と前記第2の基準電極の両方にさらに動作可能に接続可能であり、前記第1の基準電極と前記第2の基準電極の両方で測定された電気化学的電位に応じて前記第1の電気接続を制御するように構成されている、陰極防食システム。
【請求項8】
前記第1の電気接続が、第1の端部で前記1つ以上の流電陽極に電気的に接続され、第1の開口部を通って前記鋼支持構造体の中空内部に延在するように構成されている第1の電気ケーブルを備え、前記第1の電気ケーブルが、前記鋼支持構造体の前記第1の開口部から電気的に絶縁され、前記中空内部に配置されるように構成された前記第1の電気接続の別の部分に電気的に接続されるように構成されている、請求項に記載の陰極防食システム。
【請求項9】
洋上風力タービンを支持する鋼支持構造体を腐食に対して保護するための、請求項のいずれか1項に記載の陰極防食システムの使用。
【請求項10】
鋼支持構造体を腐食に対して保護するための方法であって、前記鋼支持構造体が洋上風力タービンを支持するよう構成されており、
・請求項のいずれか1項に記載の陰極防食システムを取得すること、
・陰極防食システムを鋼支持構造体に関連して配置すること、
・陰極防食システムの第1の電気接続を使用して、陰極防食システムの1つ以上の流電陽極を鋼支持構造体に電気的に接続すること、
・鋼支持構造体と1つ以上の基準電極との間の1つ以上の電気化学的電位を測定すること、
・陰極防食システムの第1の電気接続を適応させるために、測定された1つ以上の電気化学的電位を使用することのステップと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力タービン用の支持システムおよび陰極防食システムに関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力は電気を生産する効果的な方法であることが証明されている。しかしながら、風力タービンを支持するための安全な基礎を提供することは困難である。基礎の要求される耐用期間が典型的に25年を超えるという事実によって、そのタスクは容易ではない。
【0003】
鋼支持構造体は、洋上風力タービンを支持するために一般的に使用される。しかしながら、鋼支持構造体は多くの方法で劣化する。最も重大なものの1つは、腐食である。淡水と比較して、海水は腐食速度を増加させる。海水中の塩(電解質)は、電解質の導電率を増加させる。
【0004】
鋼支持構造体を腐食に対して保護するために、1つ以上の流電陽極を備える陰極防食がよく使用される。流電陽極は、鋼支持構造体よりも多くの電気化学的活性材料で作られる。流電陽極が構造体に接続されている時、電気回路が確立され、海水内ではイオン電流として、金属接続内では電流として流れる。それによって、陽極はそれ自体を犠牲にし、結果として流電陽極が消費される。
【0005】
保護される構造体は、より負の値に向かって分極し、それゆえに分極される。
【0006】
好気性環境での標準および規格(EN12495、DNV-RP-B401)に従った適切な保護は、電解質電位に対して構造体が、-800mV vs Ag/AgCl/海水基準電極未満の場合である。
【0007】
多くの場合、陽極は鋼支持構造体の表面の上に不均等に分布し、陽極から遠い場合と比較して陽極に近い電解質電位に対してよりネガティブな構造体がある。アルミニウム製の流電陽極に近い電解質電位に対する構造体は、約-1050mV vs Ag/AgCl/海水基準電極である。
【0008】
経時的に鋼支持構造体を保護するために、古い流電陽極が部分的または完全に消費された時に、新しい流電陽極を設置し得る。しかしながら、これは複雑で費用のかかる沖合での作業である。
【0009】
このため、保守の少ない陰極防食システムを提供するという問題を残している。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、洋上風力タービンを支持するための鋼支持構造体と、鋼支持構造体を腐食から保護するように構成された陰極防食システムとを備える洋上風力タービンを支持するための支持システムに関し、陰極防食システムが、鋼支持構造体に関連して配置された1つ以上の流電陽極と、1つ以上の流電陽極を鋼支持構造体に電気的に接続し、それによって鋼支持構造体が1つ以上の流電陽極から鋼支持構造体に流れる電子によって分極することができる、第1の電気接続と、を備え、第1の電気接続は、1つ以上の流電陽極から鋼支持構造体に流れる電子の割合を変化させることができ、それによって鋼支持構造体の分極を変化させる、適応可能な電気接続である。
【0011】
結果として、適応可能な電気接続を有することによって、分極は特定のニーズに合わせて調整することができ、それによって水に放出される陽極材料の量を下げることができる。これにより、1つ以上の流電陽極の寿命が延長し、陰極防食システムの環境への影響がさらに低くなる。
【0012】
鋼支持構造体は、基礎モノパイル、スペースフレーム構造体、例えばジャケットまたはトリポッド、コンプライアントタワー、TLP(張力脚プラットフォーム)などの洋上構造体のための重力構造物または浮体構造物、半没水体、スパープラットフォームまたはトリパイルであり得る。陰極防食システムは、鋼支持構造体を取り囲んでいる陽極ケージ内に配置された複数の流電陽極を備え得る。流電陽極は、異なる金属を使用して溶かされた合金であってもよい。流電陽極は、アルミニウムおよび/または亜鉛に基づいてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、陰極防食システムが、第1の電気接続に動作可能に接続され、第1の電気接続を制御し、それによって鋼支持構造体の分極を変化させるように構成された制御ユニットをさらに備える。
【0014】
結果として、第1の電気接続は単純な様態で制御され得る。
【0015】
制御ユニットは、1つ以上のセンサから受信したセンサ信号に応答して、または外部ソースから受信した制御信号に応答して、第1の電気接続を制御するように構成され得る。陰極防食システムは、第1の電気接続を通る電流を定期的に測定するようにさらに構成されてもよく、例えば、制御ユニットは、第1の電気接続を通る電流を定期的に測定するように構成されてもよい。制御ユニットは、電流の定期的測定値を分析することによって流電陽極から海に放出された金属の量を推定するように構成されてもよく、例えば、電流の定期的測定値を数値的に積分することによって、制御ユニットは、第1の電気接続を通して移動した総電荷を推定し得る。第1の電気接続を通して移動した総電荷は、流電陽極から海に放出された金属の量と直線関係を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の電気接続は、複数の状態を有する少なくとも1つの電気構成要素を備えることによって適応可能である。
【0017】
少なくとも1つの電気構成要素は、可変抵抗器および電気スイッチからなる電気構成要素のリストから選択されてもよい。第1の電気接続は、線形電圧調整器またはスイッチング電圧調整器などの電圧調整器を備えてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、陰極防食システムが、第1の位置で鋼支持構造体に関連して配置された第1の基準電極をさらに備え、制御ユニットが、第1の基準電極にさらに動作可能に接続され、第1の基準電極で測定された電気化学的電位に応じて第1の電気接続を制御するように構成される。
【0019】
結果として、鋼支持構造体の分極は効果的に制御され得る。これにより、陰極防食システムが鋼支持構造体の変化を考慮に入れることができ、例えば、鋼支持構造体の被覆の劣化がある。
【0020】
制御ユニットは、鋼支持構造体の防食電位が所定の閾値を下回るように、第1の電気接続を制御するように構成され得る。
【0021】
第1の基準電極は、Ag/AgCl/海水基準電極であってもよい。制御ユニットは、第1の基準電極で測定された電気化学的電位および第1の基準電極の空間的位置に依存して第1の電気接続を制御するように構成されてもよく、例えば、第1の基準電極が1つ以上の流電陽極の近くに位置決めされている場合、図2および図3と関連して説明されるように、鋼支持構造体の分極の空間的変動を考慮するために、所定の閾値は、第1の基準電極が1つ以上の流電陽極からさらに離れて位置決めされている場合よりも低くてもよい。所定の閾値は、鋼支持構造体の状態および/または他の基準電極で測定された電気化学的電位に基づいて定期的に更新されてもよく、例えば、較正手順において、例えば、図2および図3に示されるように、鋼支持構造体の電気化学的分極の空間分布を指定する関数を決定するために、別の基準電極が鋼支持構造体に沿って下方に移動されてもよく、所定の閾値は、鋼支持構造体のあらゆる部分が効果的に分極されるように、決定された関数に基づいて決定される。第1の基準電極は、鋼支持構造体と第1の基準電極との間の電気化学的電位を測定するように構成される。第1の基準電極は、鋼支持構造体に永久的に取り付けられてもよい。第1の基準電極は、水の電気抵抗または鋼支持構造体上の汚損/海産成長からの影響などのエラー源を回避するために、鋼支持構造体上に直接取り付けられることが好ましい。
【0022】
いくつかの実施形態では、陰極防食システムが、第2の位置で鋼支持構造体に関連して配置された第2の基準電極をさらに備え、制御ユニットは、第2の基準電極にさらに動作可能に接続され、第1の基準電極および第2の基準電極の両方で測定された電気化学的電位に応じて第1の電気接続を制御するように構成される。
【0023】
結果として、鋼支持構造体の分極の空間的変動が考慮され得る。これにより、制御ユニットが、空間的変動を考慮して、第1の電気接続をより正確に最適化することを可能にする。
【0024】
陰極防食システムは、2つを超える基準電極、例えば、少なくとも3、4または5つの基準電極、を備え得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの基準電極が水中に配置され、少なくとも1つの基準電極が海底の下に配置される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの基準電極が、鋼支持構造体の中空内部に配置される。第1の基準電極は第1の深さに配置されてもよく、第2の基準電極は第1の深さとは異なる第2の深さに配置されてもよい。制御ユニットは、第1の基準電極で測定された電気化学的電位が、第1の基準電極に対して閾値未満であり、および/または第2の基準電極で測定された電気化学的電位が、第2の基準電極に対して閾値未満であるように、第1の電気接続を制御するように構成され得る。第1の基準電極の閾値および第2の基準電極の閾値は、異なることが好ましい。第1の基準電極の閾値は、第1の基準電極の空間的位置に依存して選択され得る。第1の基準電極の閾値は、別の基準電極、例えば第2の基準電極、で実行される測定値に依存し得る。第2の基準電極の閾値は、第2の基準電極の空間的位置に依存して選択され得る。第2の基準電極の閾値は、別の基準電極、例えば第1の基準電極、で実行される測定値に依存し得る。
【0025】
第2の基準電極の閾値は、第1の基準電極で測定された電気化学的電位と第2の基準電極で測定された電気化学的電位との間の差に依存し得、例えば、第2の基準電極が、第1の基準電極よりも1つ以上の流電陽極に対してより大きな距離を置いて配置されているならば、2つの電気化学的電位間の大きな差が、図3に示すような電気化学的分極の空間分布を示している可能性があり、それに対して差がより小さければ、図2に示すような電気化学的分極の空間分布を示している可能性がある。このため、1つ以上の流電陽極から最も離れた鋼支持構造体の部分も効果的に分極され、それによって腐食から保護されることを確実にするために、差が小さい場合と比較して、2つの電気化学的電位間の差が大きい場合、第2の閾値がより低くなり得る。
【0026】
第1の基準電極は、鋼支持構造体と第1の基準電極との間の電気化学的電位を測定するように構成される。第2の基準電極は、鋼支持構造体と第2の基準電極との間の電気化学的電位を測定するように構成される。第1および第2の基準電極は、鋼支持構造体に永久的に取り付けられてもよい。第1および第2の基準電極は、水の電気抵抗または鋼支持構造体上の汚損からの影響などのエラー源を回避するために、鋼支持構造体上に直接取り付けられることが好ましい。
【0027】
いくつかの実施形態では、制御ユニットは、第1の基準電極および第2の基準電極の両方で測定された電気化学的電位に基づいて第1の関数を推定し、第1の関数に基づいて第1の電気接続を制御するように構成される。
【0028】
第1の関数は、鋼支持構造体の電気化学的分極の空間分布を指定し得る。電気化学的分極の空間分布は、陽極位置に対する水の深さにのみ依存すると想定される場合があり、すなわち、単一変数(陽極位置に対する深さ)を有する関数が、電気化学的分極を指定する場合がある。制御ユニットは、電気化学的分極の典型的な空間分布を指定する第1のデータへのアクセスを有してもよく、制御ユニットは、第1のデータ(第1の基準電極および第2の基準電極で測定された電気化学的電位に加えて)を使用して、第1の関数を推定する。
【0029】
いくつかの実施形態では、制御ユニットは、第1の関数が所定の閾値を下回るように第1の電気接続を制御するように構成される。
【0030】
所定の閾値は、腐食クーポン、例えば重量測定クーポンまたは電気抵抗クーポン、を使用することによって見出され得、分極に対して腐食がいつ終わるかに関する情報を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態では、制御ユニットが、電気化学的分極の空間分布に関連する補助データへのアクセスをさらに有し、制御ユニットは、補助データ、第1の基準電極および/または第2の基準電極で測定された電気化学的電位に応じて、第1の電気接続を制御するように構成される。
【0032】
補助データは、鋼支持構造体上の被覆の状態を示すものであってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、陰極防食システムは、制御ユニットに動作可能に接続された通信ユニットをさらに備える。
【0034】
通信ユニットは、陸上または船舶に位置するオペレータなどの外部ソースから制御信号を受信するように構成されてもよい。制御ユニットは、通信ユニットによって受信された制御信号に応答して第1の電気接続を制御するように構成されてもよい。通信ユニットは、無線または有線通信ユニットであってもよい。通信ユニットは、オペレータと直接通信してもよく、または支持システムに関連して配置された別の通信ユニットを介して通信してもよい。通信ユニットは、リモート受信機にデータを送信するように構成されてもよい。データは、陰極防食システムの1つ以上の基準電極で作製された測定値を示すデータを含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、制御ユニットは、エラーまたは潜在的な将来のエラーが識別された場合、通信ユニットを制御してリモート受信機にメッセージを送信するよう構成される。
【0036】
エラーの例としては、基準電極の故障、第1の電気接続の故障、1つ以上の流電陽極の部分的または完全な消費が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態では、鋼支持構造体が、中空内部を囲んでいる1つ以上の壁を有し、1つ以上の壁は第1の開口部を有し、1つ以上の流電陽極が鋼支持構造体の外側上に配置され、第1の電気接続が、第1の端部で1つ以上の流電陽極に電気的に接続され、第1の開口部を通って中空内部に延在する第1の電気ケーブルを備え、第1の電気ケーブルは、鋼支持構造体の第1の開口部から電気的に絶縁され、中空内部に配置された第1の電気接続の別の部分に電気的に接続されている。
【0038】
これにより、スイッチ、可変抵抗器、および制御ユニットなどの陰極防食システムの活性部分が鋼支持構造体の内側に配置され、それによってより良く保護されることが可能になる。これはまた、支持構造体が海底に挿入される前にシステムのより多くの要素が事前設置され得るので、調整可能な陰極防食システムを設置するのを容易にし得る。鋼支持構造体の内側に配置された陰極防食システムの部分は、鋼支持構造体の外側に配置された1つ以上の流電陽極と同じ深さに配置され得る。代替方法として、鋼支持構造体の内側に配置された陰極防食システムの部分は、水の上に配置されてもよい。
第2の態様によれば、本発明は、洋上風力タービンを支持するための鋼支持構造体を腐食に対して保護するための陰極防食システムに関し、鋼支持構造体に関連して配置されている1つ以上の流電陽極と、1つ以上の流電陽極を鋼支持構造体に電気的に接続するための第1の電気接続とを備え、これにより、鋼支持構造体は、1つ以上の流電陽極から鋼支持構造体に流れる電子によって分極され得、第1の電気接続は、1つ以上の流電陽極から鋼支持構造体に流れる電子の割合を変化させることができ、それによって鋼支持構造体の分極を変化させる、適応可能な電気接続である。
【0039】
いくつかの実施形態では、陰極防食システムが、第1の電気接続に動作可能に接続可能な制御ユニットをさらに備え、第1の電気接続を制御し、それによって鋼支持構造体の分極を変化させるように構成されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1の電気接続は、複数の状態を有する少なくとも1つの電気構成要素を備えることによって適応可能である。
【0041】
いくつかの実施形態では、陰極防食システムが、第1の位置で鋼支持構造体に関連して配置された第1の基準電極をさらに備え、制御ユニットが、第1の基準電極にさらに動作可能に接続可能であり、第1の基準電極で測定された電気化学的電位に応じて第1の電気接続を制御するように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、陰極防食システムが、第2の位置で鋼支持構造体に関連して配置されるための第2の基準電極をさらに備え、制御ユニットは、第2の基準電極にさらに動作可能に接続可能であり、第1の基準電極および第2の基準電極の両方で測定された電気化学的電位に応じて第1の電気接続を制御するように構成される。
【0043】
いくつかの実施形態では、制御ユニットが、第1の基準電極および第2の基準電極の両方で測定された電気化学的電位に基づいて第1の関数を推定し、第1の関数に基づいて第1の電気接続を制御するように構成される。
【0044】
第1の関数は、鋼支持構造体の電気化学的分極の空間分布を指定し得る。電気化学的分極の空間分布は、深さのみに依存すると想定される場合があり、すなわち、単一変数(陽極位置に対する深さ)を有する関数が、電気化学的分極を指定する場合がある。制御ユニットは、電気化学的分極の典型的な空間分布を指定する第1のデータへのアクセスを有してもよく、制御ユニットは、第1のデータを使用して、第1の関数を推定する。
【0045】
いくつかの実施形態では、制御ユニットは、第1の関数が所定の閾値を下回るように第1の電気接続を制御するように構成される。
【0046】
所定の閾値は、分極に対して腐食がいつ終わるかに関する情報を提供する腐食クーポンを使用することによって見出され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、制御ユニットは、電気化学的分極の空間分布に関連する補助データへのアクセスをさらに有してもよく、制御ユニットは、補助データ、第1の基準電極および/または第2の基準電極で測定された電気化学的電位に応じて、第1の電気接続を制御するように構成される。
【0048】
補助データは、鋼支持構造体の被覆の状態を示してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、陰極防食システムは、制御ユニットに動作可能に接続された通信ユニットをさらに備える。
【0050】
通信ユニットは、陸上または船舶に位置するオペレータなどの外部ソースから制御信号を受信するように構成されてもよい。制御ユニットは、通信ユニットによって受信された制御信号に応答して第1の電気接続を制御するように構成されてもよい。通信ユニットは、無線または有線通信ユニットであってもよい。通信ユニットは、オペレータと直接通信してもよく、または支持システムに関連して配置された別の通信ユニットを介して通信してもよい。通信ユニットは、リモート受信機にデータを送信するように構成されてもよい。データは、陰極防食システムの1つ以上の基準電極で作製された測定値を示すデータを含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、制御ユニットは、エラーまたは潜在的な将来のエラーが識別された場合、通信ユニットを制御してリモート受信機にメッセージを送信するよう構成される。
【0052】
エラーの例としては、基準電極の故障、第1の電気接続の故障、1つ以上の流電陽極の部分的または完全な消費が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の電気接続が、第1の端部で1つ以上の流電陽極に電気的に接続され、第1の開口部を通って鋼支持構造体の中空内部に延在するように構成されている第1の電気ケーブルを備え、第1の電気ケーブルは、鋼支持構造体の第1の開口部から電気的に絶縁され、中空内部に配置されるように構成された第1の電気接続の別の部分に電気的に接続されるように構成される。
【0054】
第3の態様によれば、本発明は、洋上風力タービンを支持する鋼支持構造体を腐食に対して保護するための、本発明の第2の態様に関連して開示された陰極防食システムの使用に関する。
【0055】
第4の態様によれば、本発明は、鋼支持構造体を腐食に対して保護するための方法に関し、鋼支持構造体は洋上風力タービンを支持するよう構成されており、本方法は、
・本発明の第2の態様および/または図4に関連して開示された陰極防食システムを取得すること、
・陰極防食システムを鋼支持構造体に関連して配置すること、
・陰極防食システムの第1の電気接続を使用して、陰極防食システムの1つ以上の流電陽極を鋼支持構造体に電気的に接続すること、
・鋼支持構造体と1つ以上の基準電極との間の1つ以上の電気化学的電位を測定すること、
・陰極防食システムの第1の電気接続を適応させるために、測定された1つ以上の電気化学的電位を使用することのステップと、を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、例えば洋上風力タービンファームにおいて、好ましくは互いに近接して配置された、複数の鋼支持構造体は、本発明の第2の態様および/または図4に関連して開示された陰極防食システムが適合され、本方法は、
・第1の鋼支持構造体と1つ以上の基準電極との間の1つ以上の電気化学的電位を測定すること、
・第1の鋼支持構造体に適合された陰極防食システムの第1の電気接続を適応させるために、測定された1つ以上の電気化学的電位を使用すること、
・陰極防食システムの第1の電気接続を第2の鋼支持構造体に適応させるために、同じ測定された1つ以上の電気化学的電位を使用することのステップと、をさらに含む。
【0057】
結果として、第2の鋼支持構造体(および潜在的に追加の鋼支持構造体、例えば、少なくとも3、5、または10台の追加の鋼支持構造体)の陰極防食システムを制御するために第1の鋼支持構造体上で実行された測定値を使用することによって、効果的な陰極防食が、単純かつ効果的な様態で洋上風力ファーム全体に提供され得る。
【0058】
第5の態様によれば、本発明は、洋上風力タービンを支持するための鋼支持構造体を腐食に対して保護するための陰極防食システムに関し、鋼支持構造体に関連して配置されている1つ以上の流電陽極と、1つ以上の流電陽極を鋼支持構造体に電気的に接続するための第1の電気接続とを備え、これにより、鋼支持構造体は、1つ以上の流電陽極から鋼支持構造体に流れる電子によって分極され得、陰極防食システムは、第1の電気接続を通る電流を定期的に測定し、電流の前記測定値を使用して1つ以上の流電陽極から海に放出される金属の量を推定するように構成された制御ユニットをさらに備える。
【0059】
いくつかの実施形態では、制御ユニットは、1つ以上の流電陽極内に残された金属の量を推定するようにさらに構成される。
【0060】
第6の態様によれば、本発明は、鋼支持構造体を腐食に対して保護するための方法に関し、鋼支持構造体は、洋上風力タービンを支持するよう構成されており、本方法は、
・本発明の第5の態様に関連して開示された陰極防食システムを取得すること、
・陰極防食システムを鋼支持構造体に関連して配置すること、
・陰極防食システムの第1の電気接続を使用して、陰極防食システムの1つ以上の流電陽極を鋼支持構造体に電気的に接続すること、
・第1の電気接続を通る電流を定期的に測定すること、
・第1の電気接続を通る電流の前記測定値を処理することによって、1つ以上の流電陽極から海に放出される金属の量を推定することのステップと、を含む。
【0061】
本発明の異なる態様は、上記および以下で説明するように異なる方法で実施することができ、各々が、上述の態様の少なくとも1つに関連して説明した1つ以上の利益および利点をもたらし、各々が、上述の、および/または従属請求項に開示された態様の少なくとも1つに関連して記載された好ましい実施形態に対応する1つ以上の好ましい実施形態を有する。さらに、本明細書に記載の態様の1つに関連して説明した実施形態は、他の態様にも等しく適用され得ることが理解されよう。
【0062】
本発明の上記および/または追加の物体、特徴および利点は、添付図面を参照して、本発明の実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明によってさらに解明される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の実施形態による、支持システム100上に配置された洋上風力タービンの概略図を示す。
図2】深さの関数として、鋼支持構造体の電気化学的分極のグラフの例を示す。
図3】深さの関数として、鋼支持構造体の電気化学的分極のグラフの例を示す。
図4】本発明の実施形態による、洋上風力タービンを支持するための鋼支持構造体を腐食に対して保護するための陰極防食システムの概略図を示す。
図5】本発明の実施形態による、鋼支持構造体を腐食に対して保護するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下の説明では、本発明の実施方法を例示によって示す添付図面を参照する。
【0065】
図1は、本発明の実施形態による、支持システム100上に配置された洋上風力タービン181の概略図を示す。図1は、中央断面を示す。支持システムは、鋼支持構造体180および鋼支持構造体を腐食から保護するように構成された陰極防食システム101~105を備える。風力タービン181は、水平軸風力タービンである。風力タービン181は、タワー182、ナセル183、および3つの動翼185に接続されたロータハブ184を備える。動翼/ロータハブアセンブリは、発電機187を駆動するシャフト188に接続されている。発電機187は、電気ケーブル190を介してグリッドに提供される電気エネルギーを生成する。鋼支持構造体180は、部分的に水170中に沈められ、部分的に海底160中に埋め込まれる。鋼支持構造体は連絡管189を備える。鋼支持構造体は、中空内部120を囲んでいる環状壁121を有する。電気ケーブル190は、案内装置171、例えばjチューブ、を使用して、外部水110から鋼支持構造体180の中空内部120内に案内され得る。鋼支持構造体180は、この実施形態では、モノパイル構造である。陰極防食システム101~105は、鋼支持構造体180に関連して配置された複数の流電陽極101と、複数の流電陽極101を鋼支持構造体180に電気的に接続している第1の電気接続102とを備え、これにより、鋼支持構造体は、複数の流電陽極101から鋼支持構造体180に流れる電子によって分極することができる。複数の流電陽極101は、鋼支持構造体180から電気的に絶縁された陽極ケージ105内に配置される。第1の電気接続102は、複数の流電陽極101から鋼支持構造体へ流れる電子の割合を変化させ、それによって鋼支持構造体180の分極を変化させることができる適応可能な電気接続である。第1の電気接続102は、複数の流電陽極101を鋼支持構造体180に接続している可変抵抗器を備えることによって適応可能であってもよい。
【0066】
陰極防食システムは、第1の電気接続102に動作可能に接続され、第1の電気接続102を制御し、それによって鋼支持構造体108の分極を変化させるように構成された制御ユニット107をさらに備える。例として、制御ユニット107は、第1の電気接続102の可変抵抗器の抵抗を制御するように構成されてもよく、それによって、鋼支持構造体の分極は変化され得、例えば、可変抵抗器の抵抗を増加させることによって分極が低下され得、可変抵抗器の抵抗を減少させることによって分極が増加され得る。
【0067】
代替的に/追加的に、制御ユニット107は、複数の流電陽極101を鋼支持構造体180に電気的に接続している電気スイッチを制御するように構成されてもよく、例えば、制御ユニットは、電気スイッチを制御して、開状態と閉状態との間で定期的に切り替えるように構成されてもよく、制御ユニットは、分極を増加させるためにより大きい割合の時間を閉じた状態にし、分極を減少させるためにより少ない割合の時間を閉じた状態にするように電気スイッチを制御するように構成されてもよい。電気スイッチは、スイッチング電圧調整器の一部であってもよい。
【0068】
陰極防食システムは、さらに、第1の位置で鋼支持構造体180に関連して配置された第1の基準電極103および第2の位置で鋼支持構造体180に関連して配置された第2の基準電極104を備え、制御ユニット107は、さらに第1の基準電極103および第2の基準電極104に動作可能に接続され、第1の基準電極103および第2の基準電極104の両方で測定された電気化学的電位に応じて第1の電気接続102を制御するように構成される。これにより、鋼支持構造体の分極がより効果的かつ正確に制御されることが可能になる。これにより、陰極防食システムが鋼支持構造体の変化、例えば、鋼支持構造体の被覆の劣化を考慮に入れることがさらに可能になり得る。この実施形態では、陰極防食システムは、さらに、海底の下に配置され、制御ユニット107に動作可能に接続された第3の基準電極114、鋼支持構造体180の内側で海底の下に配置され、制御ユニット107に動作可能に接続された第4の基準電極115、および鋼支持構造体180の内側に配置され、制御ユニット107に動作可能に接続された第5の電極116を備える。
【0069】
この実施形態では、鋼支持構造体の環状壁121は第1の開口部を有する。第1の電気接続102は、第1の端部で複数の流電陽極101に電気的に接続され、第1の開口部を通って中空内部120内に延在する第1の電気ケーブル102´を備え、第1の電気ケーブル102´は、鋼支持構造体の第1の開口部から電気的に絶縁され、中空内部120内に配置された第1の電気接続102の別の部分に電気的に接続される。結果として、スイッチ、可変抵抗器、および制御ユニットなどの陰極防食システムの活性部分は、鋼支持構造体の内側に配置されることができ、それによって保護とアクセスの両方が向上する。点線のボックス117は、第1の電気接続102の活性部分の代替的な位置を示し、すなわち、第1の電気接続102の活性部分は、流電陽極101とほぼ同じ深さに位置付けされ得、これにより、鋼支持構造体180の内側に配置される電気ケーブルをより少なくしてシステムを設置することができる。
【0070】
制御ユニット107は、第1の基準電極103および第2の基準電極104の両方で測定された電気化学的電位に基づいて第1の関数を推定し、第1の関数に基づいて第1の電気接続102を制御するように構成され得る。
【0071】
第1の関数は、鋼支持構造体の電気化学的分極の空間分布を指定し得る。電気化学的分極の空間分布は、深さに依存するのみと想定される場合があり、すなわち、単一変数(深さ)を有する関数が、電気化学的分極を指定する場合がある。
【0072】
図2は、深さの関数として、鋼支持構造体の電気化学的分極のグラフ201の例を示し、軸202は電気化学的電位を指定し、軸203は深さを指定する。分極は、基準電極、例えば、Ag/AgCl/海水基準電極、に対して測定され得る。分極は概して、陰極防食システムへの距離が増加すると低下する(電気化学的電位が負になりにくいことを意味する)。ライン205は、特定の流電陽極で達成可能な最大電気化学的電位を示し、ライン204は、標準と規格に従って鋼支持構造体を保護するために必要な電気化学的電位を示す、例えば、流電陽極がアルミニウム製の場合、ライン205は、-1050mVの電気化学的電位に対応し、ライン204は-800mVの電気化学的電位に対応する。グラフ206は、本発明の実施形態による陰極防食システムの第1の電気接続が電気化学的電位を低下させるよう適応された後の、深さの関数としての鋼支持構造体の電気化学的電位の例を示す。第1の電気接続は、関数がライン204によって与えられる閾値を下回ることを保証するように構成された制御ユニットによって制御され得る、例えば、深さの範囲に対して-800mV未満。
【0073】
図3は、深さの関数として、鋼支持構造体の電気化学的電位のグラフ301の例を示し、軸302は電気化学的電位を指定し、軸303は深さを指定する。この例では、鋼支持構造体はそれによってグラフの形態が変化する被覆を有さない。このため、本発明の実施形態では、被覆の状態を指定する補助データが、第1の電気接続を制御するために使用されてもよい。
【0074】
制御ユニットは、電気化学的分極の典型的な空間分布を指定する第1のデータへのアクセスを有してもよく、制御ユニットは、第1のデータを使用して、第1の関数を推定する。
【0075】
図4は、本発明の実施形態による、洋上風力タービンを支持するための鋼支持構造体を腐食に対して保護するための陰極防食システム400の概略図を示す。陰極防食システム400は、鋼支持構造体と関連して配置されている1つ以上の流電陽極401および1つ以上の流電陽極401を鋼支持構造体に電気的に接続するための第1の電気接続402を備える。これにより、鋼支持構造体が、1つ以上の流電陽極401から鋼支持構造体へ流れる電流によって分極されることが可能となる。第1の電気接続402は、1つ以上の流電陽極401から鋼支持構造体へ流れる電流の割合を変化させ、それによって鋼支持構造体の分極を変化させることができる適応可能な電気接続である。この実施形態では、流電陽極401は、第1の電気接続402に電気的に接続された陽極ケージ405内に配置されている。陰極防食システムは、第1の電気回路に動作可能に接続され、第1の電気接続402を制御するように構成され、それによって鋼支持構造体の分極を変化させる制御ユニット407をさらに備え得る。陰極防食システムは、第1および第2の位置で鋼支持構造体に関連して配置されている第1の基準電極403および第2の基準電極404をさらに備えてもよく、第1の基準電極403および第2の基準電極404の両方で測定された電気化学的電位に応答して、制御ユニット407はさらに、第1の基準電極403および第2の基準電極404に動作可能に接続され、第1の電気接続402を制御するように構成される。陰極防食システム400は、制御ユニット407に動作可能に接続された通信ユニット408をさらに備えてもよい。制御ユニット407は、陰極防食システム400のエラーまたは潜在的な将来のエラーが識別された場合、通信ユニット408を制御してリモート受信機にメッセージを送信するように構成されてもよい。通信ユニット408は、陸上または船舶上に位置するオペレータなどの外部ソースから制御信号を受信するように構成されてもよい。制御ユニット407は、通信ユニット408によって受信された制御信号に応答して、第1の電気接続402を制御するように構成されてもよい。通信ユニット408は、無線または有線通信ユニットであってもよい。通信ユニット408は、リモート受信機にデータを送信するように構成されてもよい。データは、陰極防食システムの1つ以上の基準電極で作製された測定値を示すデータを含み得る。
【0076】
図5は、本発明の実施形態による、鋼支持構造体を腐食に対して保護するための方法500のフローチャートを示す。第1のステップ501において、例えば図4に関連して開示された、陰極防食システムが取得される。次のステップ502では、陰極防食システムが、鋼支持構造体に関連して配置される。次いで、ステップ503において、陰極防食システムの第1の電気接続を使用して、陰極防食システムの1つ以上の流電陽極が鋼支持構造体に電気的に接続される。次にステップ504において、鋼支持構造体と1つ以上の基準電極との間の1つ以上の電気化学的電位が測定され、最後にステップ505において、例えば、鋼支持構造体の分極が、鋼支持構造体を腐食に対して保護するのに十分であるのと同時に、水中への陽極材料の不必要な放出を制限するように、測定された1つ以上の電気化学的電位を使用して、第1の電気接続が適応される。
【0077】
いくつかの実施形態を、詳細に説明し、かつ示してきたが、本発明はそれらに限定されず、以下の特許請求の範囲で定義される主題の範囲内で他の方法で具体化されてもよい。特に、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され、かつ構造的および機能的な変更を行い得ることが理解されよう。
【0078】
いくつかの手段を列挙する装置特許請求の範囲では、これらの手段のいくつかは、1つのおよび同一アイテムのハードウェアによって具体化され得る。特定の手段が、相互に異なる従属請求項において列挙されている、または異なる実施形態に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に使用できないことを示していない。
【0079】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises/comprising)」という用語は、記述された特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を指定するために取られるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはその群の存在または付加を除外しないことを強調すべきである。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 洋上風力タービンを支持するための支持システムであって、前記洋上風力タービンを支持するための鋼支持構造体と、前記鋼支持構造体を腐食から保護するように構成された陰極防食システムと、を備え、前記陰極防食システムが、前記鋼支持構造体に関連して配置された1つ以上の流電陽極と、前記1つ以上の流電陽極を前記鋼支持構造体に電気的に接続し、それによって前記鋼支持構造体が前記1つ以上の流電陽極から前記鋼支持構造体に流れる電子によって分極することができる、第1の電気接続と、を備え、前記第1の電気接続が、前記1つ以上の流電陽極から前記鋼支持構造体へ流れる電子の割合を変化させることができ、それによって前記鋼支持構造体の前記分極を変化させる、適応可能な電気接続であることを特徴とする、支持システム。
[2] 前記陰極防食システムが、前記第1の電気接続に動作可能に接続され、前記第1の電気接続を制御し、それによって前記鋼支持構造体の前記分極を変化させるように構成された制御ユニットをさらに備える、[1]に記載の支持システム。
[3] 前記第1の電気接続が、複数の状態を有する少なくとも1つの電気的構成要素を備えることによって適応可能である、[1]または[2]に記載の支持システム。
[4] 前記陰極防食システムが、第1の位置で前記鋼支持構造体に関連して配置された第1の基準電極をさらに備え、前記制御ユニットが、前記第1の基準電極にさらに動作可能に接続され、前記第1の基準電極で測定された電気化学的電位に応じて前記第1の電気接続を制御するように構成されている、[2]~[3]のいずれか1項に記載の支持システム。
[5] 前記陰極防食システムが、第2の位置で前記鋼支持構造体に関連して配置された第2の基準電極をさらに備え、前記制御ユニットが、前記第2の基準電極にさらに動作可能に接続され、前記第1の基準電極および前記第2の基準電極の両方で測定された前記電気化学的電位に応じて前記第1の電気接続を制御するように構成されている、[4]に記載の支持システム。
[6] 前記制御ユニットが、前記第1の基準電極および前記第2の基準電極の両方で測定された前記電気化学的電位に基づいて第1の関数を推定し、前記第1の関数に基づいて前記第1の電気接続を制御するように構成されている、[5]に記載の支持システム。
[7] 前記制御ユニットが、電気化学的分極の空間分布に関連する補助データへのアクセスをさらに有し、前記制御ユニットが、前記補助データ、前記第1の基準電極および/または前記第2の基準電極で測定された前記電気化学的電位に応じて、前記第1の電気接続を制御するように構成されている、[4]~[6]のいずれか1項に記載の支持システム。
[8] 前記陰極防食システムが、前記制御ユニットに動作可能に接続された通信ユニットをさらに備える、[1]~[7]のいずれか1項に記載の支持システム。
[9] 前記鋼支持構造体が、中空内部を囲んでいる1つ以上の壁を有し、前記1つ以上の壁が第1の開口部を有し、前記1つ以上の流電陽極が前記鋼支持構造体の外側上に配置されており、前記第1の電気接続が、第1の端部で前記1つ以上の流電陽極に電気的に接続され、前記第1の開口部を通って前記中空内部に延在する第1の電気ケーブルを備え、前記第1の電気ケーブルが、前記鋼支持構造体の前記第1の開口部から電気的に絶縁され、前記中空内部に配置された前記第1の電気接続の別の部分に電気的に接続されている、[1]~[8]のいずれか1項に記載の支持システム。
[10] 洋上風力タービンを支持するための鋼支持構造体を腐食に対して保護するための陰極防食システムであって、前記鋼支持構造体に関連して配置されている1つ以上の流電陽極と、前記1つ以上の流電陽極を前記鋼支持構造体に電気的に接続するための第1の電気接続と、を備え、これにより、前記鋼支持構造体が、前記1つ以上の流電陽極から前記鋼支持構造体に流れる電子によって分極され得、前記第1の電気接続が、前記1つ以上の流電陽極から前記鋼支持構造体に流れる電子の割合を変化させることができ、それによって前記鋼支持構造体の前記分極を変化させる、適応可能な電気接続である、陰極防食システム。
[11] 前記陰極防食システムが、前記第1の電気接続に動作可能に接続可能であり、前記第1の電気接続を制御し、それによって前記鋼支持構造体の前記分極を変化させるように構成された制御ユニットをさらに備える、[10]に記載の陰極防食システム。
[12] 前記陰極防食システムが、第1の位置で前記鋼支持構造体に関連して配置された第1の基準電極をさらに備え、前記制御ユニットが、前記第1の基準電極にさらに動作可能に接続可能であり、前記第1の基準電極で測定された電気化学的電位に応じて前記第1の電気接続を制御するように構成されている、[11]に記載の陰極防食システム。
[13] 前記陰極防食システムが、第2の位置で前記鋼支持構造体に関連して配置されている第2の基準電極をさらに備え、前記制御ユニットが、前記第2の基準電極にさらに動作可能に接続可能であり、前記第1の基準電極および前記第2の基準電極の両方で測定された前記電気化学的電位に応じて前記第1の電気接続を制御するように構成されている、[12]に記載の陰極防食システム。
[14] 前記第1の電気接続が、第1の端部で前記1つ以上の流電陽極に電気的に接続され、第1の開口部を通って前記鋼支持構造体の中空内部に延在するように構成されている第1の電気ケーブルを備え、前記第1の電気ケーブルが、前記鋼支持構造体の前記第1の開口部から電気的に絶縁され、前記中空内部に配置されるように構成された前記第1の電気接続の別の部分に電気的に接続されるように構成されている、[10]~[13]のいずれか1項に記載の陰極防食システム。
[15] 洋上風力タービンを支持する鋼支持構造体を腐食に対して保護するための、[10]~[14]のいずれか1項に記載の陰極防食システムの使用。
[16] 鋼支持構造体を腐食に対して保護するための方法であって、前記鋼支持構造体が洋上風力タービンを支持するよう構成されており、
・[10]~[14]のいずれか1項に記載の陰極防食システムを取得すること、
・陰極防食システムを鋼支持構造体に関連して配置すること、
・陰極防食システムの第1の電気接続を使用して、陰極防食システムの1つ以上の流電陽極を鋼支持構造体に電気的に接続すること、
・鋼支持構造体と1つ以上の基準電極との間の1つ以上の電気化学的電位を測定すること、
・陰極防食システムの第1の電気接続を適応させるために、測定された1つ以上の電気化学的電位を使用することのステップと、を含む。
図1
図2
図3
図4
図5