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特許72105472成分(2K)クリアコートおよび視覚的外観が向上した2成分(2K)クリアコートで基材を塗装する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】2成分(2K)クリアコートおよび視覚的外観が向上した2成分(2K)クリアコートで基材を塗装する方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20230116BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20230116BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230116BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20230116BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D175/06
B05D7/24 301U
B05D3/12 Z
B05D7/24 302T
B05D5/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020507610
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2018070195
(87)【国際公開番号】W WO2019029995
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】17185449.0
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,デヴィッド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ターレイ,ケヴィン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リンジ,ロバート
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0200756(US,A1)
【文献】特開2009-034667(JP,A)
【文献】特開2004-161941(JP,A)
【文献】特開2013-017940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と;
ブロックされていない第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分と;
第2のイソシアネート樹脂とブロック剤との反応形態であるブロックイソシアネート樹脂と、を含む2成分クリアコート組成物であって、
第1の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、または第1および第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、
ならびに第1のイソシアネート樹脂および第2のイソシアネート樹脂がヒドロキシル官能性樹脂と反応して架橋コーティングを形成することができ、
ヒドロキシル官能性樹脂の含有量が、10~90質量パーセントであり;
第1のイソシアネート樹脂の含有量が、25~75質量パーセントであり;
ブロックイソシアネート樹脂の含有量が、0.1~15質量パーセントであり;
質量パーセント値は、第1および第2の成分の樹脂固形分の総質量に対してであり、
黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して4単位以上増加しており;
黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長3.0~10.0mmの構造のWd値が、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して4単位以下減少している、
2成分クリアコート組成物。
【請求項2】
ヒドロキシル官能性樹脂が、ヒドロキシル官能性アクリル樹脂およびヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の2成分クリアコート組成物。
【請求項3】
第1のイソシアネート樹脂、第2のイソシアネート樹脂、または両方が、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2 ,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、およびイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネートを含むポリイソシアネート樹脂である、請求項1または2に記載の2成分クリアコート組成物。
【請求項4】
第2のイソシアネート樹脂のブロック剤が、アルキルアルコール、エーテルアルコール、ジエチルマロネート、オキシム、アミン、好ましくはイミダゾールまたはジメチルピラゾール、アミド、およびヒドロキシルアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1からのいずれか一項に記載の2成分クリアコート組成物。
【請求項5】
黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値が、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して増加している、請求項1からのいずれか一項に記載の2成分クリアコート組成物。
【請求項6】
ベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値が、-4~6である、請求項1からのいずれか一項に記載の2成分クリアコート組成物。
【請求項7】
ベースコートで塗装された基材上で硬化した後の、架橋コーティングの20°光沢値が、80光沢単位より大きい、請求項1からのいずれか一項に記載の2成分クリアコート組成物。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の2成分クリアコート組成物で塗装基材を形成する方法であって、
基材の表面をベースコート組成物で塗装して、ベースコート層を得る工程と;
ベースコート層を少なくとも部分的に乾燥させる工程と;
2成分クリアコート組成物の第1の成分および第2の成分を有機溶剤と混合することによりクリアコート組成物を形成する2成分クリアコート組成物を製造する工程と;
クリアコート組成物をベースコート層の表面に塗布してクリアコート組成物層を形成する工程と;
ヒドロキシル官能性樹脂を、第1のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、この硬化中にブロックイソシアネート樹脂をブロック解除することにより得られる第2のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、ベースコート層上にポリウレタンクリアコートコーティング層を形成する工程と、を含み、
反応および硬化中の第2のイソシアネート樹脂の遅延反応により、ポリウレタンクリアコートコーティング層の硬化速度が低下し、ベースコート層とポリウレタンクリアコートコーティング層との間にしわが形成される、方法。
【請求項9】
クリアコート組成物中のブロックイソシアネート樹脂の含有量が、クリアコート組成物中の樹脂固形分の総質量に対して、2~10質量パーセントである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
硬化を、15~45分の期間、80~150℃の温度で実施する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ベースコートが黒色であり、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じ総モル量のイソシアネートを有して他の点では同じ方法で得られた、他の点では同じ塗装基材と比較して、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が増加しており、波長3.0~10.0mmの構造のWd値が減少しているかまたは同等である、請求項から10のいずれか一項に記載の方法によって得られた塗装基材。
【請求項12】
ベースコートが銀メタリック色であり、塗装基材では、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じ総モル量のイソシアネートを有して他の点では同じ方法と比較して、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が、4単位未満増加している、請求項から10のいずれか一項に記載の方法によって得られた塗装基材。
【請求項13】
ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と;ブロックされていない第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分と;第2のイソシアネート樹脂とブロック剤との反応形態であるブロックイソシアネート樹脂と、を含むキットであって、
第1の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、または第1および第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、ならびに第1のイソシアネート樹脂および第2のイソシアネート樹脂がヒドロキシル官能性樹脂と反応して架橋コーティングを形成することができ、
ヒドロキシル官能性樹脂の含有量が、10~90質量パーセントであり;
第1のイソシアネート樹脂の含有量が、25~75質量パーセントであり;
ブロックイソシアネート樹脂の含有量が、0.1~15質量パーセントであり;
質量パーセント値は、第1および第2の成分の樹脂固形分の総質量に対してであり、
黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して4単位以上増加しており;
黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長3.0~10.0mmの構造のWd値が、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して4単位以下減少している、
キット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシル官能性樹脂成分、架橋剤成分としてブロックされていないイソシアネート樹脂、およびこれら2つの成分の間に分布したブロックイソシアネート部分を含む2成分(2K)クリアコート組成物に関する。本開示はさらに、2成分(2K)クリアコート組成物で基材を塗装するプロセス、およびオレンジピールの低減など、塗装基材に視覚的外観の改善を提供するクリアコート組成物で塗装された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング組成物は、保護および装飾目的で、例えばプライマー、ベースコート、クリアコートなどのコーティングを形成するために利用される。コーティングは、建物に、機械に、設備に、自動車の相手先ブランド製造(OEM)および補修用コーティングとして車両に、または他のコーティング用途に使用することができる。コーティングは、下にある基材に1つまたは複数の保護層を提供することができ、また美的価値を有することもできる。
【0003】
典型的な自動車用コーティングでは、車両の金属表面に少なくとも4つの層、すなわち、e-コート、プライマー、ベースコート、およびクリアコートを塗布する。e-コートおよびプライマー層を、一般に、車両表面に塗布し、硬化させる。続いて、ベースコート配合物を溶剤と合わせて塗布し、高温プロセスで溶剤をフラッシュオフさせる。ベースコートを適切に調整した後、次にクリアコートを塗布して、車両に光沢のある仕上げを施し、腐食から保護する。最後に、塗装車両表面を高温のオーブンに通して、ベースコートおよびクリアコートを硬化させる。
【0004】
自動車の塗装仕上げには、2つの主な要件がある、すなわち、下にある表面を保護し、製品全体を強化することである。構造物の全体的な外観および視認性は、構造物のサイズ、観察距離、および写像性(image forming quality)に依存する。自動車用塗料のうねりは、波長が約0.1~30mmの範囲にある。サイズが異なる構造物の表面は、視覚的に異なって見える。これらの現象は多くの場合、視覚的に評価され、ピール(peel)の程度や質感などの主観的な用語が説明として使用される。相手先ブランド製造業者(OEM)およびそれらの塗料サプライヤーは、視覚的外観を改善するための配合物を継続的に求めている。大きめの波長のピールの視認性が増加することを、業界ではオレンジピールと呼ぶ。オレンジピールは、光沢表面では明るい領域と暗い領域のうねりのパターンとして見ることができる。構造要素の傾斜に応じて、光は種々の方向に反射する。観察者の目の方向に光を反射する要素のみが明るい領域として知覚される。表面のこの長波長の不均一性(または構造)は、1メートル以上の長い視距離でも目視できるため、消費者にとって好ましくないことが知られている。一方、短波長構造は、0.5メートルを超える長めの視距離では、それほど困難ではないとしても、簡単には目視できない。短波長構造の増加は、実際には、長波長の不均一性の結果である反射の鋭さをマスキングするのに役立ち得ることが示されている。したがって、例えば垂直面上で長波長構造が増加するにつれて、短波長構造も増加することが望ましい。具体的には、ウェーブスキャン装置で測定される長波(LW)対短波(SW)の比率が改善することが有利であると考えられる。この比率は、バランスとも呼ばれる。
【0005】
さらに、2成分(2K)ポリイソシアネートクリアコートは、低レベルの短波長構造を有することが長い間観察されてきた。これは従来に望ましいと見なされており、「ウェットルック」と呼ばれている。しかし、この短波長構造の欠如によって、長波長構造の知覚量が増加することが現在知られている。これは特に黒などの色に当てはまる。より速く蒸発する溶剤の選択や垂れ抵抗性(sag resistance)のためのコロイド材料の追加など、クリアコートの構造を増大させる一般的な方法は、長波構造と短波構造の両方に影響を及ぼすことが示されている。したがって、黒色ベースコート上の多層系2成分ポリイソシアネートクリアコートでは、長波構造を大幅に増加させることなく短波構造を増加させることが望ましい。
【0006】
銀などの色では、顔料サイズが大きめであると、ベースコートとクリアコートの複合膜に不規則性が生じ、短波構造が増加する。したがって、黒色ベースコートでは短波構造が少なすぎる同じクリアコートは、銀メタリック色ベースコート上では短波構造が指定範囲内にある場合がある。すべての色の上に同じクリアコートを使用するのが一般的な慣行であるため、銀色ベースコート上では短波構造が大幅に増加することによって、この色では短波が多くなりすぎる。したがって、銀メタリック色ベースコート上で短波構造にほとんど~全く影響を与えずに、黒色ベースコート上で短波構造が増加したクリアコートを有することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、これらの所望の、しかし一見すると相反する両方の性質を有するクリアコート組成物を提供する。この組成物は、第1に、黒色ベースコート上で長波構造を大幅に増加させることなく、短波構造を増加させるのに好適であり、第2に、銀メタリック色ベースコート上で短波構造を大幅に増加させることなく、黒色ベースコート上で短波構造を増加させるのに好適である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の観点から、本開示の一態様は、ヒドロキシル官能性樹脂成分、架橋剤成分としてブロックされていないイソシアネート樹脂、およびこれら2つの成分の間に分布したブロックイソシアネート部分を含む2成分(2K)クリアコート組成物を提供することである。架橋反応および硬化中に、第2のイソシアネートの遅延放出によって、硬化速度が理想的に遅くなり、より視覚的に望ましい表面質感(すなわち、バランス値の改善、長波値の減少または不変、短波値の増加)を形成させることができる。追加の態様によれば、本開示はさらに、2成分(2K)クリアコート組成物で基材を塗装するプロセス、およびオレンジピールの低減など視覚的外観が改善され、バランス値を有するクリアコート組成物で塗装された基材に関する。
【0009】
第1の実施形態によれば、本開示は、ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と;ブロックされていない第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分と;第2のイソシアネート樹脂とブロック剤の反応形態であるブロックイソシアネート樹脂と、を含む2成分クリアコート組成物であって、第1の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、または第1および第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、ならびに第1のイソシアネート樹脂および第2のイソシアネート樹脂がヒドロキシル官能性樹脂と反応して架橋コーティングを形成することができる、2成分クリアコート組成物に関する。
【0010】
第1の実施形態の一態様では、ヒドロキシル官能性樹脂の含有量は、10~90質量パーセントであり;第1のイソシアネート樹脂の含有量は25~75質量パーセントであり;ブロックイソシアネート樹脂の含有量は、0.1~15質量パーセントであり、質量パーセント値は、第1および第2の成分の樹脂固形分の総質量に対してであり、黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値は、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して4単位以上増加し;黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長3.0~10.0mmの構造のWd値は、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して4単位以下減少する。種々の実施形態にわたって固形分のパーセントに従う説明は、ASTM D2369によって決定される。
【0011】
第1の実施形態のさらなる態様では、ヒドロキシル官能性樹脂は、ヒドロキシル官能性アクリル樹脂およびヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂のうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
第1の実施形態のさらなる態様では、第1のイソシアネート樹脂、第2のイソシアネート樹脂、または両方は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、およびイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネートを含むポリイソシアネート樹脂である。
【0013】
第1の実施形態のさらなる態様では、第2のイソシアネート樹脂のブロック剤は、アルキルアルコール、エーテルアルコール、ジエチルマロネート、オキシム、アミン、好ましくはイミダゾールまたはジメチルピラゾール、アミド、およびヒドロキシルアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0014】
第1の実施形態のさらなる態様では、黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値は、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して増加する。
【0015】
第1の実施形態のさらなる態様では、ベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値は、-4~6である。
【0016】
第1の実施形態のさらなる態様では、ベースコートで塗装された基材上で硬化した後の、架橋コーティングの20°光沢値は、80光沢単位より大きい。
【0017】
第2の実施形態では、第1の実施形態およびそのすべての態様に従って、2成分クリアコート組成物により塗装基材を形成する方法が提供される。この方法は、基材の表面をベースコート組成物で塗装して、ベースコート層を得る工程と;ベースコート層を少なくとも部分的に乾燥させる工程と;2成分クリアコート組成物の第1および第2の成分を有機溶剤と混合することにより2成分クリアコート組成物を製造し、それによりクリアコート組成物を形成する工程と;クリアコート組成物をベースコート層の表面に塗布して、クリアコート組成物層を形成する工程と;
ヒドロキシル官能性樹脂を、第1のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、この硬化中にブロックイソシアネート樹脂をブロック解除することにより得られる第2のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、ベースコート層上にポリウレタンクリアコートコーティング層を形成する工程と、を含み、反応および硬化中の第2のイソシアネート樹脂の遅延反応により、ポリウレタンクリアコートコーティング層の硬化速度が低下し、ベースコート層とポリウレタンクリアコートコーティング層との間にしわが形成される。
【0018】
第2の実施形態の一態様では、クリアコート組成物中のブロックイソシアネート樹脂の含有量は、クリアコート組成物中の樹脂固形分の総質量に対して、2~10質量パーセントである。
【0019】
第2の実施形態のさらなる態様では、硬化を、15~45分の期間、80~150℃の温度で実施する。
【0020】
第3の実施形態では、第2の実施形態およびそのすべての態様による方法によって得られた塗装基材が提供される。この実施形態によれば、ベースコートは黒色であり、波長0.3~1.0mmの構造の増加したWb値および波長3.0~10.0mmの構造の減少したまたは同等のWd値が得られる。Wb値およびWd値を、ウェーブスキャン装置によって測定し、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じ総モル量のイソシアネートを有して他の点では同じ方法で得られた、他の点では同じ塗装基材と比較した。
【0021】
第4の実施形態では、第2の実施形態およびそのすべての態様による方法によって得られた塗装基材が提供される。この実施形態によれば、ベースコートは銀メタリック色であり、この塗装基材では、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じ総モル量のイソシアネートを有して他の点では同じ方法と比較して、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が、4単位未満増加している。
【0022】
第5の実施形態は、ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と;ブロックされていない第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分と;第2のイソシアネート樹脂とブロック剤の反応形態であるブロックイソシアネート樹脂と、を含むキットであって、第1の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、または第1および第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、ならびに第1のイソシアネート樹脂および第2のイソシアネート樹脂がヒドロキシル官能性樹脂と反応して架橋コーティングを形成することができる、キットを提供する。
【0023】
第5の実施形態の一態様では、ヒドロキシル官能性樹脂の含有量は、10~90質量パーセントであり;第1のイソシアネート樹脂の含有量は25~75質量パーセントであり;ブロックイソシアネート樹脂の含有量は、0.1~15質量パーセントであり、質量パーセント値は、第1および第2の成分の樹脂固形分の総質量に対してであり、黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値は、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して、4単位以上増加し;黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長3.0~10.0mmの構造のWd値は、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して4単位以下減少する。
【0024】
前述の段落は一般的な導入として提供されたものであり、以下の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。さらなる利点とともに記載された実施形態は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の説明内で、引用された参考文献、特許、出願、刊行物、および著者資格、共同著者資格に基づくかまたは譲受人組織のメンバーに帰属する論文はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。数値の限定または範囲が記載されている場合、端点が含まれる。数値の限定または範囲内のすべての値および部分範囲は、明示的に記述されているかのように明確に含まれる。本明細書で使用する場合、単語「a」および「an」などは「1つまたは複数」の意味を有する。「からなる群から選択される(selected)」、「から選択される(chosen)」などの句には、指定された材料の混合物が含まれる。「含む(contain(s))」などの用語は、特に明記しない限り、「少なくとも含む(including)」を意味する開放型用語である。他のすべての用語は、当業者によって理解される従来の意味に従って解釈される。
【0026】
第1の実施形態によれば、本開示は、ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と;ブロックされていない第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分と;第2のイソシアネート樹脂とブロック剤の反応形態であるブロックイソシアネート樹脂と、を含む2成分クリアコート組成物であって、第1の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、または第1および第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、ならびに第1のイソシアネート樹脂および第2のイソシアネート樹脂がヒドロキシル官能性樹脂と反応して架橋コーティングを形成することができる、2成分クリアコート組成物に関する。
【0027】
イソシアネート基は、反応性水素を含む化合物と反応し得る。イソシアネートとアルコール(すなわち、ヒドロキシル官能基)の反応により、ウレタンが生成される。ポリマー材料を製造するために、反応パートナーは分子ごとに少なくとも2つの官能基を必要とする。両方の反応パートナーが二官能性の場合、直鎖状ポリマーが形成される。3次元ネットワークでは、反応パートナーのうちの少なくとも一方が3つ以上の反応基を有する必要がある。好ましい実施形態では、2成分クリアコート組成物を、2つの別個の成分として顧客またはユーザーに提供し、塗布の直前に混合してもよい。
【0028】
本開示の2成分クリアコート組成物は、ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分を含む。本開示の2成分コーティング組成物の第1の成分のヒドロキシル官能性樹脂は、架橋剤または第1のイソシアネート樹脂の官能基と反応するヒドロキシル官能性を有する任意のポリマーであり得る。
【0029】
好ましい実施形態では、ヒドロキシル官能性樹脂は、ヒドロキシル官能性アクリル樹脂またはヒドロキシル官能性ポリエステルであり、好ましくは、ヒドロキシル官能性樹脂は、ヒドロキシル官能基を有するアクリルポリマーおよびヒドロキシル官能基を有するポリエステルポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの部材である。より好ましい実施形態では、ヒドロキシル官能性樹脂は、ヒドロキシル官能基を有するアクリルポリマーである。例示的な市販のヒドロキシル官能性樹脂としては、商品名JONCRYL(登録商標)で販売されているものが挙げられる。
【0030】
ある種の実施形態では、ヒドロキシル官能基に加えて、ヒドロキシル官能性樹脂は、架橋剤、第1のイソシアネート樹脂、第2の成分の官能基と反応するという条件で、さらなる反応性官能基を含んでもよい。ある種の実施形態では、ヒドロキシル官能性樹脂は、アミン官能基、カルボン酸官能基、カルバミン酸官能基、およびエポキシ官能基からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる官能基を含む。
【0031】
2成分クリアコート組成物の第1成分に存在するヒドロキシル官能性樹脂は、一般に、任意のガラス転移温度(Tg)を有し、これは、架橋剤、第1のイソシアネート樹脂、第2成分のガラス転移温度、および当量質量のヒドロキシル官能性樹脂のガラス転移温度と組み合わさって、所望の硬度を有する硬化フィルムの形成をもたらす。好ましい実施形態では、ヒドロキシル官能性樹脂は、-20℃~100℃、好ましくは0℃~75℃、好ましくは10℃~50℃のガラス転移温度を有する。
【0032】
コポリマーのTg値は、Fox方程式を使用して、その中に含まれるコモノマーのホモポリマーのTg値から計算される。ホモポリマーのTg値は、the Polymer Handbook、Third Edition、J. Brandup, I.H. Immergut、Chapter VI、215~225頁から得られる。Fox方程式は、以下のように各コモノマーの質量分率と、対応するホモポリマーのTgに基づいている。
【0033】
【数1】
=モノマーiの質量分率
Tg=モノマーiのホモポリマーTg[K°]
【0034】
ある種の実施形態では、2成分コーティング組成物の第1の成分中に存在するヒドロキシル官能性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された、非分岐鎖ポリスチレン標準に対する数平均分子量(Mn)が500~30,000、または600~20,000、または750~10,000であってもよい。ヒドロキシル官能性樹脂は、ヒドロキシル当量比(すなわち、OH当量当たりのヒドロキシル官能性樹脂のグラム)が、OH当量当たり100~3000、好ましくは200~1500、好ましくは250~800、好ましくは300~700グラムのヒドロキシル官能性樹脂であってもよい。注意:GPCメソッドについては、以下の実験セクションでより詳細に説明する。
【0035】
好ましい実施形態では、例示的な好適なヒドロキシル官能性アクリル樹脂またはヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂は、80~150℃、好ましくは85~145℃、好ましくは90~140℃、好ましくは95~135℃、好ましくは100~130℃、好ましくは110~130℃の所望の硬化温度での反応性に十分なヒドロキシル含有量を有する。好ましい実施形態では、ヒドロキシル官能性アクリル樹脂は、15~565mgKOH/g、好ましくは35~280mgKOH/g、好ましくは70~225mgKOH/gのヒドロキシル価を有し得る。ある種の実施形態では、ヒドロキシル価は、200mgKOH/g未満、例えば185mgKOH/g未満、または175mgKOH/g未満などであり得る。好ましい実施形態では、ヒドロキシル官能性アクリル樹脂は、1分子当たり平均少なくとも2つの活性水素基を有する。
【0036】
好ましい実施形態では、ヒドロキシル官能性樹脂は、2成分コーティング組成物中に、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して10~90質量パーセントの範囲の量で、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、好ましくは30~80質量パーセント、好ましくは35~70質量パーセント、好ましくは45~65質量パーセントの量で、存在する。
【0037】
本開示の2成分クリアコート組成物は、第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分を含む。第1のイソシアネート樹脂は、ヒドロキシル官能性樹脂のヒドロキシル基と反応してウレタン結合(-NH-CO-O-)を形成し、したがって架橋ウレタンコーティングを形成する遊離NCO基を有する。
【0038】
ある種の実施形態では、第1のイソシアネート樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された、非分岐鎖ポリスチレン標準に対する数平均分子量(Mn)が100~20,000、好ましくは150~10,000、好ましくは200~5,000であってもよい。第1のイソシアネート樹脂は、50~1000、好ましくは100~500、好ましくは150~250のNCO当量質量(すなわち、NCOの当量当たりの架橋剤のグラム)を有し得る。
【0039】
本明細書で使用する場合、第1のイソシアネート樹脂は、本開示の2成分コーティング組成物のヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分のヒドロキシル官能性樹脂を架橋するのに好適な任意の有機イソシアネートであり得る。イソシアネート、好ましくは、多官能性イソシアネートは、構造が芳香族、脂肪族、脂環式、または多環式であってもよい。3~36個、好ましくは4~16個、好ましくは6~15個、好ましくは8~約12個の炭素原子を含むイソシアネートが好ましい。
【0040】
第1のイソシアネート樹脂として好適な例示的なジイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3-ジメチルエチレンジイソシアネート、1-メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルイレンジイソシアネート、2,6-トルイレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素化キシレンジイソシアネート(HXDI)、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート(DDDI)、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノボルナンジイソシアネート(NDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート(DBDI)、4,4-ジフェニレンジイソシアネート(例えば、4,4’-メチレンビスジフェニルジイソシアネート)、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(m-テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはTMXDI)、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルエーテル、および2,3-ビス(8-イソシアナトオクチル)-4-オクチル-5-ヘキシルシクロヘキサン、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
これらのうち、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびm-テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)が好ましい。好ましい実施形態では、第1のイソシアネート樹脂、第2のイソシアネート樹脂、または両方は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、およびイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネートを含む。
【0042】
ある種の実施形態では、ジイソシアネートよりも高いイソシアネート官能性の多官能性イソシアネートを使用し得ることが等しく想定される。ジイソシアネートよりも高いイソシアネート官能性の多官能性イソシアネートとしては、TDI系ポリイソシアネート、MDI系ポリイソシアネート、HDI系ポリイソシアネート、IPDI系ポリイソシアネート、トリス(4-イソシアナトフェニル)メタン、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキシルビウレット)、ビス(2,5-ジイソシアナト-4-メチルフェニル)メタン、1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキシル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(すなわち、ヘキサメチレンジイソシアネート環状三量体)、1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキシル)、および高分子ポリイソシアネート、例えばジイソシアナトトルエンの二量体および三量体など、が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、第2の成分の、架橋剤として使用される第1のイソシアネート樹脂は、さらに、例えば、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを含むがこれらに限定されないポリオールから誘導されるプレポリマーの形態であってもよい。
【0043】
好ましい実施形態では、ブロックイソシアネート樹脂は、2成分クリアコート組成物中に、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して25~75質量パーセントの範囲の量で、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、好ましくは35~65質量パーセント、より好ましくは45~55質量パーセントの範囲の量で、存在する。
【0044】
好ましい実施形態では、第1のイソシアネート樹脂は実質的にブロックされておらず、90%超のNCO基がブロックされておらず、ヒドロキシル官能基と反応することがあり、好ましくは95%超、好ましくは99%超、または99.5%超のNCO基はブロックされておらず、ヒドロキシル官能基と反応することがあるということを意味する。ある種の実施形態では、第1のイソシアネート樹脂は、ブロックNCO基を完全に欠いていてもよい。
【0045】
本開示の2成分クリアコート組成物は、ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と、第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分とを含み、第1の成分および第2の成分の少なくとも一方は、第2のイソシアネート樹脂とブロック剤との反応形態であるブロックイソシアネート樹脂をさらに含む。室温では、これらのブロックイソシアネートは、感知できる速度ではヒドロキシル基と反応しない。高温では、ブロックイソシアネートがブロック剤を遊離させ(つまりブロックを解除し)、イソシアネート官能基がヒドロキシル官能基と反応し得る。
【0046】
本開示の2成分クリアコート組成物に含まれる第2のイソシアネート樹脂は、第1のイソシアネート樹脂について上述したものと同じである。ある種の実施形態では、第1のイソシアネート樹脂と第2のイソシアネート樹脂は同じであってもよい。ある種の実施形態では、第1のイソシアネート樹脂と第2のイソシアネート樹脂は異なっていてもよい。好ましい実施形態では、第1のイソシアネート樹脂、第2のイソシアネート樹脂、または両方は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、およびイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネートを含む。
【0047】
ある種の実施形態では、ブロックイソシアネート樹脂は実質的にブロックされており、90%超のNCO基、好ましくは95%超、好ましくは99%超、または99.5%超のNCO基がブロックされていることを意味する。ある種の実施形態では、ブロックイソシアネート樹脂は、遊離NCO基を完全に欠いていてもよい。
【0048】
この明細書全体にわたって、ブロックされていないイソシアネート樹脂という用語は、イソシアネート反応性官能基との反応に利用可能なイソシアネート基を有する樹脂を表す。この反応性を「生きた」という用語で示し、ブロックされていない、と生きた、とを交換可能に使用してイソシアネート樹脂を表すことができる。
【0049】
ある種の実施形態では、ブロックイソシアネート樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された、非分岐鎖ポリスチレン標準に対する数平均分子量(Mn)が150~30,000、好ましくは200~20,000、好ましくは250~10,000であってもよい。ブロックイソシアネートは、50~1000、好ましくは100~500、好ましくは150~250のNCO当量質量(すなわち、NCOの当量当たりの架橋剤のグラム)を有し得る。
【0050】
ブロック剤は、個別にまたは組み合わせて使用してもよい。ある種の実施形態では、ブロック剤は、活性水素を有する任意の化合物であり得る。好ましい実施形態では、ブロック剤は、アルキルアルコール、エーテルアルコール、オキシム、アミン、アミド、およびヒドロキシルアミンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0051】
例示的な好適なアルキルアルコールブロック剤としては、アルキル基中に1~20個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式または芳香族アルキルモノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、2-エチルヘキサノール、3,3,5-トリメチルヘキサン-1-オール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、フェノール、ピリジノール、チオフェノール、クレゾール、フェニルカルビノールなど、およびメチルフェニルカルビノール、が挙げられるが、これらに限定されない。グリセロールやトリメチロールプロパンなどの多官能性アルコールも、ブロック剤として使用することができる。
【0052】
例示的な好適なエーテルアルコールブロック剤としては、1~10個の炭素原子のアルキル基を有する、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、またはジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
例示的な好適なオキシムブロック剤としては、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、メチルn-アミルケトンオキシム、メチル2-エチルヘキシルケトンオキシム、シクロブタノンオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、3-ペンタノンオキシム、2,4-ジメチル-3-ペンタノンオキシム(すなわち、ジイソプロピルケトンオキシム)、ジイソブチルケトンオキシム、ジ-2-エチルヘキシルケトンオキシム、アセトンオキシム、ホルムオキシム、アセトアルドキシム、プロピオンアルデヒドオキシム、ブチルアルデヒドオキシム、グリオキサールモノオキシム、およびジアセチルモノオキシム、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
例示的な好適なアミンブロック剤としては、ジブチルアミンおよびジイソプロピルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な好適なアミドブロック剤としては、カプロラクタム、メチルアセトアミド、スクシンイミド、およびアセトアニリドが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な好適なヒドロキシルアミンブロック剤は、エタノールアミンである。
【0055】
好ましい実施形態では、ブロック剤は、イミダゾール、ジメチルピラゾール、およびジエチルマロネートからなる群から選択される少なくとも1種である。より好ましい実施形態では、ブロックイソシアネート樹脂は、第2のイソシアネート樹脂(HDI)とブロック剤ジメチルピラゾールとの反応形態であり、例えば商品名Desmodur(登録商標)で、好ましくは、商品名Desmodur PL-350で販売されている、ジメチルピラゾールブロックヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。
【0056】
好ましい実施形態では、ブロックイソシアネート樹脂は、2成分クリアコート組成物中に、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して0.1~15質量パーセントの範囲の量で、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、好ましくは0.5~12質量%、好ましくは1~11質量%、好ましくは2~10質量%、好ましくは3~9質量%、好ましくは4~8質量%、好ましくは5~7質量%の量で、存在する。重要なことに、ブロックイソシアネート樹脂は、ブロックイソシアネート樹脂の総和が記載された範囲内にあるという条件で、第1の成分と第2の成分のどちらかに、またはその両方に存在してもよい。有利には、好ましい実施形態では、2成分クリアコート組成物中のブロックイソシアネートの総質量に対して、80質量%超のブロックイソシアネート樹脂が第1の成分中に存在し、2成分クリアコート組成物中のブロックイソシアネートの総質量に対して、好ましくは82質量%超、好ましくは84質量%超、好ましくは86質量%超、好ましくは88質量%超、好ましくは90質量%超、好ましくは95質量%超のブロックイソシアネート樹脂が、第1の成分中に存在する。
【0057】
好ましい実施形態では、その実施形態のいずれかにおける本開示の2成分クリアコート組成物は、溶剤系組成物であり、当業者に従来知られている溶剤のいずれかを含んでもよい。例示的な好適な溶剤としては、芳香族溶剤、例えばトルエン、キシレン、ナフサ、および石油留分など;脂肪族溶剤、例えばヘプタン、オクタン、およびヘキサンなど;エステル溶剤、例えば酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、プロピオン酸エチル、イソブチレンイソブチレート、エチレングリコールジアセテート、および2-エトキシエチルアセテートなど;ケトン溶剤、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、およびメチルイソブチルケトンなど;低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノールなど;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなど;グリコールエーテルエステル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、3-メトキシn-ブチルアセテートなど;ラクタム、例えばN-メチルピロリドン(NMP)など;およびその混合物、が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、溶剤は、VOC規制適用外溶剤、例えば、クロロブロモメタン、1-ブロモプロパン、C12-18n-アルカン、t-ブチルアセテート、ペルクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、p-クロロベンゾトリフルオリド、アセトン、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、ジメトキシメタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-ブタン、2-(ジフルオロメトキシメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン、2-(エトキシジフルオロメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、およびそれらの混合物、であってもよい。好ましい実施形態では、溶剤系2成分クリアコート組成物の溶剤は、低級アルコール(すなわちブタノール)およびエステル(すなわち酢酸t-ブチル)からなる群から選択される少なくとも1種である。有利には、溶剤系2成分クリアコート組成物の含水量は1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満であり、最も好ましくは、溶剤系2成分クリアコート組成物は水を含まない。
【0058】
ある種の実施形態では、その実施形態のいずれかにおける本開示の2成分クリアコート組成物は、溶剤系2成分クリアコート組成物の総組合せ質量に対して、少なくとも20質量パーセントの総組合せ樹脂固形分を有し、溶剤系2成分クリアコート組成物の総組合せ質量に対して、好ましくは少なくとも25質量パーセント、より好ましくは少なくとも30質量パーセント、より好ましくは少なくとも35質量パーセントの総組合せ樹脂固形分を有する。ある種の実施形態では、その実施形態のいずれかにおける本開示の2成分クリアコート組成物は、溶剤系2成分クリアコート組成物の総組合せ質量に対して、85質量パーセント以下の総組合せ樹脂固形分を有し、溶剤系2成分クリアコート組成物の総組合せ質量に対して、好ましくは80質量%以下、好ましくは75質量%以下、好ましくは70質量%以下、好ましくは65質量%以下、好ましくは60質量%以下の総組合せ樹脂固形分を有する。ある種の実施形態では、その実施形態のいずれかにおける本開示の溶剤系2成分クリアコート組成物の総希釈剤(すなわち溶剤/有機溶剤)含有量は、溶剤系2成分クリアコート組成物の総質量に対して、少なくとも5質量パーセント~最大80質量パーセント、好ましくは少なくとも10質量パーセント~最大70質量パーセント、より好ましくは少なくとも15質量パーセント~最大50質量パーセントの範囲にある。
【0059】
好ましい実施形態では、ヒドロキシル官能性樹脂および任意にブロックイソシアネート樹脂を含む第1の成分、第1のイソシアネート樹脂および任意にブロックイソシアネート樹脂を含む第2の成分、または両方は、溶剤系であり、前述のように、当業者に従来知られている溶剤のいずれかを含んでもよい。ある種の実施形態では、ヒドロキシル官能性樹脂および任意にブロックイソシアネートを含む第1の成分は、溶剤系の第1の成分の総組合せ質量に対して、少なくとも20質量パーセントの組合せ樹脂固形分を有し、溶剤系の第1の成分の総組合せ質量に対して、好ましくは少なくとも25質量パーセント、より好ましくは少なくとも30質量パーセント、より好ましくは少なくとも35質量パーセント、好ましくは少なくとも40質量パーセント、好ましくは少なくとも45質量パーセントの組合せ樹脂固形分を有する。ある種の実施形態では、第1のイソシアネート樹脂および任意にブロックイソシアネートを含む第2の成分は、溶剤系の第1の成分の総組合せ質量に対して、少なくとも20質量パーセントの組合せ樹脂固形分を有し、溶剤系の第2の成分の総組合せ質量に対して、好ましくは少なくとも25質量パーセント、より好ましくは少なくとも30質量パーセント、より好ましくは少なくとも35質量パーセント、好ましくは少なくとも40質量パーセント、好ましくは少なくとも45質量パーセントの組合せ樹脂固形分を有する。
【0060】
ある種の実施形態では、その実施形態のいずれかにおける本開示の2成分クリアコート組成物は、触媒、好ましくは、ヒドロキシル官能性樹脂と第1のイソシアネート樹脂および第2のイソシアネート樹脂の形態の架橋剤との反応を促進する金属触媒をさらに任意に含むことが同様に想定される。例示的な金属触媒は、当業者らに周知であり、脂肪族カルボン酸ビスマス、例えば、エチルヘキサン酸ビスマス、次サリチル酸ビスマス(実験式CBiを有する)、ヘキサン酸ビスマス、エチルヘキサン酸ビスマスまたはジメチロール-プロピオネート、シュウ酸ビスマス、アジピン酸ビスマス、乳酸ビスマス、酒石酸ビスマス、サリチル酸ビスマス、グリコール酸ビスマス、コハク酸ビスマス、ギ酸ビスマス、酢酸ビスマス、アクリル酸ビスマス、メタクリル酸ビスマス、プロピオン酸ビスマス、酪酸ビスマス、オクタン酸ビスマス、デカン酸ビスマス、ステアリン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、エイコン酸ビスマス、安息香酸ビスマス、リンゴ酸ビスマス、マレイン酸ビスマス、フタル酸ビスマス、クエン酸ビスマス、グルコン酸ビスマスなど;アセチルアセトン酸ビスマス;ビス-(トリオルガノスズ)オキシド、例えば、ビス(トリメチルスズ)オキシド、ビス(トリエチルスズ)オキシド、ビス(トリプロピルスズ)オキシド、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ビス(トリアミルスズ)オキシド、ビス(トリヘキシルスズ)オキシド、ビス(トリヘプチルスズ)オキシド、ビス(トリオクチルスズ)オキシド、ビス(トリ-2-エチルヘキシルスズ)オキシド、ビス(トリフェリヒルスズ)オキシド、ビス(トリオルガノスズ)スルフィド、(トリオルガノスズ)(ジオルガノスズ)オキシド、スルホキシド、およびスルホン、ビス(トリオルガノスズ)ジカルボキシレート、例えば、ビス(トリブチルスズ)アジペートおよびマレエートなど;ビス(トリオルガノスズ)ジメルカプチド、トリオルガノスズ塩、例えば、トリオクチルスズオクタノエート、トリブチルスズホスフェートなど;(トリオルガノスズ)(オルガノスズ)オキシド;トリアルキルアルキルオキシスズオキシド、例えば、トリメチルメトキシスズオキシド、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジラウレートなど;トリオクチルスズオキシド、トリブチルスズオキシド、ジアルキルスズ化合物、例えば、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズジステアレート、ジプロピルスズジオクトエート、およびジオクチルスズオキシドなど;モノアルキルスズ化合物、例えば、モノブチルスズトリオクタノエート、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズトリベンゾエート、モノブチルスズトリオクチレート、モノブチルスズトリラウレート、モノブチルスズトリミリステート、モノメチルスズトリホルメート、モノメチルスズトリアセテート、モノメチルスズトリオクチレート、モノオクチルスズトリアセテート、モノオクチルスズトリオクチレート、モノオクチルスズトリラウレート;モノラウリルスズトリアセテート、モノラウリルスズトリオクチレート、およびモノラウリルスズトリラウレート;オクタノン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、亜鉛タレート、カルボキシレート基中に約8~14個の炭素を有するカルボン酸亜鉛、酢酸亜鉛;カルボン酸リチウム塩、例えば、酢酸リチウム、2-エチルヘキサン酸リチウム、ナフテン酸リチウム、酪酸リチウム、イソ酪酸リチウム、オクタン酸リチウム、ネオデカン酸リチウム、オレイン酸リチウム、リチウムベルサテート、リチウムタレート、シュウ酸リチウム、アジピン酸リチウム、ステアリン酸リチウム;水酸化リチウム;ジルコニウムアルコレート、例えば、メタノレート、エタノレート、プロパノレート、イソプロパノレート、ブタノレート、tert-ブタノレート、イソブタノレート、ペンタノレート、ネオペンタノレート、ヘキサノレートおよびオクタノレートなど;ジルコニウムカルボン酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ブタン酸塩、イソブタン酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、オクタン酸塩、2-エチルヘキサン酸塩、ノナン酸塩、デカン酸塩、ネオデカン酸塩、ウンデカン酸塩、ドデカン酸塩、乳酸塩、オレイン酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、およびフェニル酢酸塩など;1,3-ジケトン酸ジルコニウム、例えば、アセチルアセトネート(2,4-ペンタンジオネート)、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオネート(ジベンゾイルメタネート)、1-フェニル-1,3-ブタンジオネートおよび2-アセチルシクロヘキサノエートなど;ジルコニウムオキシネート;ジルコニウム1,3-ケトエステレート、例えば、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、エチル-2-メチルアセトアセテート、エチル-2-エチルアセトアセテート、エチル-2-ヘキシルアセトアセテート、エチル-2-フェニル-アセトアセテート、プロピルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、ブチルアセトアセテート、tert-ブチルアセトアセテート、エチル-3-オキソ-バレレート、エチル-3-オキソ-ヘキサノエート、および2-オキソ-シクロヘキサンカルボン酸エチルエステレートなど;ジルコニウム1,3-ケトアミデート、例えば、N,N-ジエチル-3-オキソ-ブタンアミデート、N,N-ジブチル-3-オキソ-ブタンアミデート、N,N-ビス-(2-エチルヘキシル)-3-オキソ-ブタンアミデート、N,N-ビス-(2-メトキシエチル)-3-オキソ-ブタンアミデート、N,N-ジブチル-3-オキソ-ヘプタンアミデート、N,N-ビス-(2-メトキシエチル)-3-オキソ-ヘプタンアミデート、N,N-ビス-(2-エチルヘキシル)-2-オキソ-シクロペンタンカルボキシアミデート、N,N-ジブチル-3-オキソ-3-フェニルプロパンアミデート、N,N-ビス-(2-メトキシエチル)-3-オキソ-3-フェニルプロパンアミデートなど;および前述の金属触媒の組合せ、から選択される有機金属化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
好ましい実施形態では、触媒は金属触媒であり、より好ましくは、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズジステアレート、ジプロピルスズジオクトエート、およびジオクチルスズオキシドからなる群から選択されるジアルキルスズ化合物であり、ジブチルスズジラウレートが非常に好ましい触媒である。
【0062】
ある種の実施形態では、金属触媒は、存在する場合、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して0.001~10質量パーセントであってもよく、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、好ましくは0.01~8質量パーセント、好ましくは0.05~7.5質量パーセント、好ましくは0.1~6.0質量パーセント、好ましくは1.0~5.0質量パーセントであってもよい。ある種の実施形態では、金属触媒は、存在する場合、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、5.0質量パーセント未満を占めることができ、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、好ましくは2.5質量パーセント未満、好ましくは2.0質量パーセント未満、好ましくは1.0質量パーセント未満、好ましくは0.5質量パーセント未満、好ましくは0.1質量パーセント未満、好ましくは0.01質量パーセント未満を占めることができる。
【0063】
ある種の実施形態では、その実施形態のいずれかにおける本開示の2成分クリアコート組成物は、1種または複数の追加の添加剤をさらに任意に含むことが同様に想定される。例示的な好適な添加剤としては、界面活性剤、安定剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、分散剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、接着促進剤などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、これらの添加剤は、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して0.1~5質量パーセントを占めることができ、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、好ましくは0.5~4質量パーセント、好ましくは0.5~2.5質量パーセントを占めることができる。ある種の実施形態では、これらの添加剤は、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、2.5質量パーセント未満を占めることができ、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、好ましくは2.0質量パーセント未満、好ましくは1.0質量パーセント未満、好ましくは0.5質量パーセント未満、好ましくは0.25質量パーセント未満、好ましくは0.1質量パーセント未満を占めることができる。
【0064】
好ましい実施形態では、本開示の2成分クリアコート組成物は半透明であることが意図され、1質量パーセント未満の着色剤を含む。しかし、当業者によって認識されるように、体質顔料として知られるある種の顔料は、溶剤系クリアコートに色を与えず、そのような顔料を、溶剤系2成分クリアコート組成物の5質量パーセント未満、好ましくは2~4パーセントの量で含めてもよい。
【0065】
第2の態様によれば、本開示は、塗装基材を形成する方法であって、i)基材の表面をベースコート組成物で塗装して、ベースコート層を得る工程と、ii)ベースコート層を少なくとも部分的に乾燥させる工程と、iii)iiia)ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と、iiib)第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分と、iiic)有機溶媒とを混合することによって2成分クリアコート組成物を製造する工程であって、第1の成分および第2の成分の少なくとも一方が、第2のイソシアネート樹脂とブロック剤との反応形態であるブロックイソシアネート樹脂をさらに含み、これによりクリアコート組成物を形成する工程と、iv)クリアコート組成物をベースコート層の表面に塗布してクリアコート組成物層を形成する工程と、v)ヒドロキシル官能性樹脂を、第1のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、この硬化中にブロックイソシアネート樹脂をブロック解除することにより得られる第2のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、ポリウレタンクリアコートコーティング層を形成し、これにより塗装基材を形成する工程であって、塗装基材が、基材とポリウレタンクリアコートコーティング層との間にベースコート層を含む、工程と、を含み、反応および硬化中の第2のイソシアネート樹脂の遅延放出により、ポリウレタンクリアコートコーティング層の硬化速度が低下し、ベースコート層とポリウレタンクリアコートコーティング層との間にしわが形成される、方法に関する。
【0066】
本明細書で使用する場合、基材とは、何かの下にあるか、またはその上で何らかのプロセスが発生する物質または層を指す。好適な基材としては、木材、ガラス繊維、金属、ガラス、布、炭素繊維、およびポリマー基材が挙げられるが、これらに限定されない。塗装され得る例示的な好適な金属基材としては、鉄を含む金属、例えば鉄、鋼、およびそれらの合金など、非鉄金属、例えば、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびそれらの合金など、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。塗装され得る例示的な好適なポリマー基材としては、熱可塑性材料、例えば、熱可塑性ポリオレフィン(すなわち、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、EPDMゴム、アクリル系ポリマー、ビニルポリマー、コポリマーなどおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されず、熱可塑性ポリオレフィンが好ましい。
【0067】
好ましい実施形態では、基材は、ポリマー基材、好ましくは、モーター車両、例えば自動車、トラック、およびトラクターなどで見出されるポリマー基材であり、その実施形態のいずれかにおける本開示の2成分クリアコート組成物は、このような自動車用ポリマー基材の塗装に特に有用である。その実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載された2成分クリアコート組成物を、成形品もしくは部品または形成品もしくは部品、玩具、スポーツ用品、電子機器用のケースまたはカバー、および小型器具にも塗布し得ることが同様に想定される。さらに、これらの部品は任意の形状を有することができるが、好ましくは、自動車車体部品、例えば、車体(フレーム)、フード、ドア、フェンダー、バンパー、および/または自動車車両用のトリムなどの形態にある。
【0068】
本開示に関して、ベースコート組成物は特に限定するものと見なされない。本開示に関して、ベースコートは、固体塗料、メタリック塗料、および/または真珠光沢塗料であってもよく、さらに、1成分(1K)または2成分(2K)配合物であってもよく、溶剤系または水系のいずれかであってもよい。ある種の実施形態では、ベースコートは、例えば、カルボン酸またはスルホン酸などの酸基と反応するメラミンホルムアルデヒド架橋剤を含んでもよい。加えて、ベースコート組成物は、本明細書に記載の触媒(すなわち、強酸触媒、有機アミン)および添加剤をさらに含んでもよい。
【0069】
好ましい実施形態では、ベースコート組成物は、少なくとも1種の顔料または着色剤を含むか、またはそれで着色されていてもよい。例示的な好適な顔料または着色剤としては、金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化鉄、二酸化チタン、および酸化鉛など;カーボンブラック;雲母系エフェクト顔料を含む雲母;金属顔料、例えば、アルミニウムフレーク、青銅フレーク、ニッケルフレーク、スズフレーク、銀フレーク、および銅フレークなど;および有機顔料、例えば、銅フタロシアニンブルーのようなフタロシアニン、ペリレンレッドおよびマルーン、キナクリドンマゼンタおよびジオキサジンカルバゾールバイオレットなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
ある種の実施形態では顔料および着色剤は、ベースコート組成物中の組合せ固形分の総質量に対して、最大50質量パーセントを占めることができ、ベースコート組成物中の組合せ固形分の総質量に対して、好ましくは最大40質量パーセント、好ましくは最大30質量パーセントを占めることができ、ベースコート組成物中の組合せ固形分の総質量に対して、たった10質量パーセント、好ましくはたった5質量パーセント、好ましくはたった1質量パーセント、好ましくはたった0.1質量パーセントであってもよい。ベースコート組成物の総質量に関して、顔料または着色剤の含有量は、ベースコート組成物の総質量に対して、5~90質量パーセント、好ましくは10~70質量パーセント、好ましくは15~50質量パーセントの範囲であり得る。
【0071】
この方法の一工程では、基材の表面を組成物で塗装してベースコート層を得て、ベースコート層を少なくとも部分的に乾燥させる。ベースコート組成物を塗布した後、水または溶剤を、加熱または空気乾燥によってベースコート層から部分的または完全に追い出してもよく、例えば、水または溶剤の一部を、1~10分間、好ましくは2~8分間、好ましくは4~6分間続けられ、温度は30~90℃、好ましくは40~80℃、好ましくは50~70℃、好ましくは55~65℃、または約60℃である大気フラッシュおよび/または強制フラッシュにより、部分的に除去してもよい。
【0072】
この方法の一工程では、ヒドロキシル官能性樹脂を、第1のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、この硬化中にブロックイソシアネート樹脂をブロック解除することにより得られる第2のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、ポリウレタンクリアコートコーティング層を形成し、これにより塗装基材を形成する。好ましい実施形態では、硬化を、80~150℃の温度で、好ましくは90~145℃、好ましくは100~140℃、好ましくは110~135℃、好ましくは120~130℃の温度で、15~45分間、好ましくは18~40分間、好ましくは20~35分間、好ましくは22~30分間、または約25分間、実施する。
【0073】
理論に限定されることを望むものではないが、第1のイソシアネート樹脂とヒドロキシル官能性樹脂は、接触すると反応し始め、硬化中に反応(すなわち、架橋)を続け、この時点で、ブロック剤が解離した第2のイソシアネート樹脂とヒドロキシル官能性樹脂が反応(すなわち、架橋)し始める。反応および硬化中の第2のイソシアネート樹脂の遅延放出により、ポリウレタンクリアコートコーティング層の硬化速度が低下し、ベースコート層とポリウレタンクリアコートコーティング層との間に「しわ」が形成される。「しわ」とは、完全に塗装された基材の表面形態および質感における変化を指し、好ましくは、表面形態と質感のこれらの変化は、増加した量の短波構造(すなわち、Wb)、かつ減少したかまたは同等の量の長波構造(すなわちWd)をもたらす。したがって、しわは、視覚的外観の改善と、短波構造対長波構造の比率におけるバランスを提供する。
【0074】
好ましい実施形態では、ベースコート組成物および2成分クリアコート組成物のそれぞれを基材に塗布して、5~90μm、好ましくは7.5~75μm、好ましくは10~60μm、好ましくは12.5~55μm、好ましくは15~50μmの乾燥膜厚さを提供する。例えば、ベースコート層の乾燥膜厚は5~35μm、好ましくは10~30μm、より好ましくは約20μmであってもよく、2成分クリアコート組成物から形成されたポリウレタンクリアコートコーティング層の乾燥膜厚は、10~70μm、好ましくは25~50μm、より好ましくは約45μmであってもよい。
【0075】
本明細書で使用する場合、「オレンジピール」または「オレンジピール効果」とは、塗装面および鋳造面上で発生し得る、ある特定の種類の仕上げを指す。質感は、オレンジの肌の表面に似ている。滑らかな表面(つまり、車体)上に噴霧された光沢塗料も、乾燥して滑らかな表面になるはずである。しかし、種々の要因により、乾燥してオレンジピールの質感に似た凹凸のある表面になる可能性がある。オレンジピール現象は、使用する材料を変更することで最小限に抑え、かつ/または防ぐことができる。
【0076】
例えば、ウェーブスキャン装置などの、オレンジピールの測定に使用される機器は、例えばByk Wavescan装置などのように、視覚認識をシミュレートする。ヒトの目と同様に、この機器はうねりの明/暗パターンを光学的にスキャンする。他のオレンジピール測定器に類似したウェーブスキャン装置は、レーザー点光源を使用して60°の角度で試験体を照射し、検出器を使用して反対側の同角度で反射光強度を測定する。機器は表面にわたって転がり、画定された距離にわたって表面の光学プロファイルを一点ずつ測定する。機器は、構造を、そのサイズに応じて分析する。ヒトの目の解像度を種々の距離でシミュレートするために、測定信号は、数学的フィルター機能を使用して複数のレンジに分割される。このように、Waは、波長0.1~0.3mmの構造に対応し、Wbは、波長0.3~1.0mmの構造に対応し、Wcは、波長1.0~3.0mmの構造に対応し、Wdは、波長3.0~10.0の構造に対応し、Weは波長10~30mmの構造に対応し、SW(「短い」)は波長0.3~1.2mmの構造に対応し、LW(「長い」)は波長1.2~12mmの構造に対応する。0.1mmより小さい構造も視覚に影響を与えるため、ウェーブスキャン装置測定機器は、CCDカメラを使用して、これらの微細構造に起因する散乱光を測定することができる。このパラメーターは「くもり(dullness)」と呼ばれる。くもり、Wa、Wb、Wc、Wd、およびWeの値は、「構造スペクトル」を形成する。これにより、オレンジピールおよび、材料またはアプリケーションパラメータであるその影響要因の詳細な分析が可能になる。構造スペクトルならびにLWおよびSWの詳細情報は、特定のスケール、および例えばASTM E430で説明されている、写像鮮明性(DOI)と相関する基礎を形成する。
【0077】
本開示に関して、ベースコートで塗装された基材または本明細書に記載の方法により得られた塗装基材上の硬化後の2成分クリアコート架橋コーティングは、5~45、好ましくは10~40、好ましくは15~35、好ましくは20~30のWb値を有する。本開示に関して、ベースコートで塗装された基材または本明細書に記載の方法により得られた塗装基材上の硬化後の2成分クリアコート架橋コーティングは、1~40、好ましくは5~30、好ましくは10~25、好ましくは15~20のWd値を有する。好ましい実施形態では、ベースコートで塗装された基材または本明細書に記載の方法により得られた塗装基材上の硬化後の2成分クリアコート架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値は、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが他の点では同じ2成分クリアコート組成物、方法または塗装基材と比較して、好ましくは2~20単位、好ましくは4~15単位、好ましくは6~10単位増加する。好ましい実施形態では、ベースコートで塗装された基材または本明細書に記載の方法により得られた塗装基材上の硬化後の2成分クリアコート架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長3.0~10.0mmの構造のWd値は、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが他の点では同じ2成分クリアコート組成物、方法または塗装基材と比較して、減少するかまたは同等であり、減少する場合、好ましくは1~10単位、好ましくは2~6単位、好ましくは3~5単位減少する。
【0078】
本明細書で使用する場合、バランス、構造バランス、バランス数、またはバランス値は、小さな波と大きな波の比であり、視覚相関試験において見出される「バランスのとれた」構造スペクトル曲線に基づいて評価される。ブロックイソシアネートの量を増加させることにより、バランスを負(長波Wd支配的)から正(短波Wb支配的)にシフトすることができる。バランスのとれた外観を生み出すために、有利な濃度を特定することができる。式(I)はWd値とWb値との間の関係を提供し、式(II)はこの関係を使用してバランス値(B)を計算する手段を提供する。
【0079】
【数2】
【0080】
本開示に関して、ベースコートで塗装された基材または本明細書に記載の方法により得られた塗装基材上の硬化後の2成分クリアコート架橋コーティングは、-4~6、好ましくは-2~5の、好ましくは-1~4の、好ましくは0~2の、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値を有する。本開示に関して、ベースコートで塗装された基材または本明細書に記載の方法により得られた塗装基材上の硬化後の2成分クリアコート架橋コーティングは、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが他の点では同じ2成分クリアコート組成物、方法または塗装基材と比較して、好ましくは0.2~10単位、好ましくは0.5~8単位、好ましくは1~6単位、好ましくは2~4単位増加した、ウェーブスキャン装置で測定した増加バランス値を有する。
【0081】
本明細書で使用する場合、表面の正反射光沢を、光沢計によって測定することができる。光沢は、一定の強度と角度で光線を表面に投影し、反対側の同角度で反射光の量を測定することにより決定される。光沢測定には、利用可能な多くの異なる形状があり、形状それぞれが測定される表面のタイプに依存している。種々のタイプの材料で使用される異なるタイプの光沢計の使用方法および仕様を定義する、多くの国際技術標準を利用することができる。
【0082】
光沢計は、正確な照明と視野条件を定義することにより測定の一貫性を確保して、光沢強度を測定する定量化可能な方法を提供する。照明源と観測入射角の両方の構成により、全反射角の狭い範囲で測定することができる。光沢計の測定結果は、定義された屈折率を持つ黒色ガラス標準からの反射光の量に関連している。光沢標準の比率と比較した標本の反射光対入射光の比率を、光沢単位(GU)として記録する。
【0083】
測定角度とは、入射光と垂線との間の角度を指す。3つの測定角度(20°、60°、および85°)が指定されており、工業用塗装用途の大部分を包含している。角度は、予想される光沢範囲に基づいて選択され、測定精度を高める。中光沢は10~70GUの60°値、低光沢は<10GUの60°値を指し、試験セットアップを85°に変更する必要がある。高光沢は>70GUの60°値を指し、試験セットアップを20°に変更する必要がある。
【0084】
本開示に関して、ベースコートで塗装された基材または本明細書に記載の方法により得られた塗装基材上の硬化後の2成分クリアコート架橋コーティングは、80光沢単位超、好ましくは82光沢単位超、好ましくは84光沢単位超、好ましくは86光沢単位超、好ましくは88光沢単位超、好ましくは90光沢単位超、好ましくは95光沢単位超の、20°光沢値を有する。
【0085】
したがって、これまでに説明したように、特定の実施形態は以下のとおりである、すなわち、
実施形態1:ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と;ブロックされていない第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分と;第2のイソシアネート樹脂とブロック剤との反応形態であるブロックイソシアネート樹脂と、を含む2成分クリアコート組成物であって、
第1の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、または第1および第2の成分がブロックイソシアネート樹脂を含み、ならびに第1のイソシアネート樹脂および第2のイソシアネート樹脂がヒドロキシル官能性樹脂と反応して架橋コーティングを形成することができる、2成分クリアコート組成物。
【0086】
実施形態2:クリアコート組成物が、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、10~90質量パーセントのヒドロキシル官能性樹脂;25~75質量%の第1のイソシアネート樹脂;および0.1~15質量%のブロックイソシアネート樹脂を含む、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0087】
実施形態3:ヒドロキシル官能性樹脂が、ヒドロキシル官能性アクリル樹脂またはヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂である、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0088】
実施形態4:第1のイソシアネート樹脂、第2のイソシアネート樹脂、または両方が、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、およびイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネートを含むポリイソシアネート樹脂である、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0089】
実施形態5:ブロック剤が、アルキルアルコール、エーテルアルコール、オキシム、アミン、アミド、およびヒドロキシルアミンからなる群から選択される少なくとも1種である、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0090】
実施形態6:ブロック剤が、イミダゾール、ジメチルピラゾール、およびジエチルマロネートからなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0091】
実施形態7:2成分クリアコート組成物中のブロックイソシアネートの総質量に対して、80質量%超のブロックイソシアネート樹脂が、第1の成分中に存在している、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0092】
実施形態8:第1のイソシアネート樹脂と第2のイソシアネート樹脂が同じである、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0093】
実施形態9:第1のイソシアネート樹脂と第2のイソシアネート樹脂が異なっている、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0094】
実施形態10:コーティング組成物が、組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、2~10質量%のブロックイソシアネート樹脂を含む、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0095】
実施形態11:黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値は、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して、4単位以上増加しており;黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長3.0~10.0mmの構造のWd値は、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して4単位以下減少している、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0096】
実施形態12:黒色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値が、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して増加している、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0097】
実施形態13:ベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値が、-4~6である、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0098】
実施形態14:ベースコートで塗装された基材上で硬化した後の、架橋コーティングの20°光沢値が、80光沢単位より大きい、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0099】
実施形態15:銀メタリック色のベースコートで塗装された基材上で硬化した後の架橋コーティングの、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが他の点では同じ2成分クリアコート組成物と比較して4単位以下増加している、実施形態1の2成分クリアコート組成物。
【0100】
実施形態16:塗装基材を形成する方法であって、基材の表面をベースコート組成物で塗装して、ベースコート層を得る工程と;ベースコート層を少なくとも部分的に乾燥させる工程と;ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と、ブロックされていない第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分と、有機溶媒とを混合することによって、2成分クリアコート組成物を製造する工程であって、第1の成分および第2の成分の少なくとも一方が、第2のイソシアネート樹脂とブロック剤との反応形態であるブロックイソシアネート樹脂をさらに含み、これによりクリアコート組成物を形成する工程と;クリアコート組成物をベースコート層の表面に塗布してクリアコート組成物層を形成する工程と;ヒドロキシル官能性樹脂を、第1のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、この硬化中にブロックイソシアネート樹脂をブロック解除することにより得られる第2のイソシアネート樹脂と反応させ、硬化させて、ポリウレタンクリアコートコーティング層を形成し、これにより塗装基材を形成する工程と、を含み、塗装基材が、基材とポリウレタンクリアコートコーティング層との間にベースコート層を含み、反応および硬化中の第2のイソシアネート樹脂の遅延反応により、ポリウレタンクリアコートコーティング層の硬化速度が低下し、ベースコート層とポリウレタンクリアコートコーティング層との間にしわが形成され、塗装基材の、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が増加する、方法。
【0101】
実施形態17:クリアコート組成物が、クリアコート組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、10~90質量パーセントのヒドロキシル官能性樹脂;25~75質量%の第1のイソシアネート樹脂;および0.1~15質量%のブロックイソシアネート樹脂を含む、実施形態16の方法。
【0102】
実施形態18:ヒドロキシル官能性樹脂が、ヒドロキシル官能性アクリル樹脂またはヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂である、実施形態16の方法。
【0103】
実施形態19:第1のイソシアネート樹脂、第2のイソシアネート樹脂、または両方が、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、およびイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネートを含むポリイソシアネート樹脂である、実施形態16の方法。
【0104】
実施形態20:ブロック剤が、アルキルアルコール、エーテルアルコール、オキシム、アミン、アミド、およびヒドロキシルアミンからなる群から選択される少なくとも1種である、実施形態16の方法。
【0105】
実施形態21:ブロック剤が、イミダゾール、ジメチルピラゾール、およびジエチルマロネートからなる群から選択される少なくとも1種である、実施形態16の方法。
【0106】
実施形態22:クリアコート組成物が、クリアコート組成物中の組合せ樹脂固形分の総質量に対して、2~10質量%のブロックイソシアネート樹脂を含む、実施形態16の方法。
【0107】
実施形態23:クリアコート組成物中のブロックイソシアネートの総質量に対して、80質量%超のブロックイソシアネート樹脂が、第1の成分中に存在する、実施形態16の方法。
【0108】
実施形態24:ベースコートが黒色であり、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ方法と比較して、塗装基材では、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が増加しており、波長3.0~10.0mmの構造のWd値が減少しているかまたは同等である、実施形態16の方法。
【0109】
実施形態25:ベースコートが黒色であり、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ方法と比較して、塗装基材では、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値が増加している、実施形態16の方法。
【0110】
実施形態26:塗装基材が、-4~6の、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値を有する、実施形態16の方法。
【0111】
実施形態27:塗装基材が、80光沢単位より大きい20°光沢値を有する、実施形態16の方法。
【0112】
実施形態28:硬化を、15~45分の期間、80~150℃の温度で実施する、実施形態16の方法。
【0113】
実施形態29:ベースコートが銀メタリック色であり、この塗装基材では、ブロックイソシアネートを欠いているが他の点では同じ方法と比較して、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が、4単位未満増加している、実施形態16の方法。
【0114】
実施形態30:実施形態16の方法により得られた塗装基材。
【0115】
実施形態31:ベースコートが黒色であり、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ方法により得られた、他の点では同じ塗装基材と比較して、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が増加しており、波長3.0~10.0mmの構造のWd値が減少しているかまたは同等である、実施形態30の塗装基材。
【0116】
実施形態32:ベースコートが黒色であり、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが同じモル量の総イソシアネートを有して他の点では同じ方法により得られた、他の点では同じ塗装基材と比較して、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値が増加している、実施形態30の塗装基材。
【0117】
実施形態33:-4~6の、ウェーブスキャン装置で測定したバランス値を有する、実施形態30の塗装基材。
【0118】
実施形態34:80光沢単位より大きい20°光沢値を有する、実施形態30の塗装基材。
【0119】
実施形態35:ベースコートが銀メタリック色であり、ブロックイソシアネート樹脂を欠いているが他の点では同じ方法により得られた、他の点では同じ塗装基材と比較して、ウェーブスキャン装置で測定した波長0.3~1.0mmの構造のWb値が、4単位未満増加している、実施形態30の塗装基材。
【0120】
実施形態36:ヒドロキシル官能性樹脂を含む第1の成分と;第1のイソシアネート樹脂である架橋剤を含む第2の成分と;第2のイソシアネート樹脂とブロック剤との反応形態を含むブロックイソシアネート樹脂と、を含むキットであって、ブロックイソシアネート樹脂が、第1の成分、第2の成分、またはその両方に存在しており、第1のイソシアネート樹脂、第2のイソシアネート樹脂、またはその両方がヒドロキシル官能性樹脂と反応して架橋コーティングを形成することができる、キット。
【0121】
以下の実施例は、本開示の2成分クリアコート組成物を製造し、かつ特徴付けるためのプロトコルをさらに説明することを意図している。さらに、これらは、これらの材料の特性の評価と、塗装基材上のそれらの性能、特に視覚的外観の評価を説明することを意図している。これらの実施例は、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0122】
試験方法
ポリマー分子量の決定
GPCによってポリマーの分子量を決定するには、完全に溶解したポリマー試料の分子を多孔性カラム固定相で分画する。溶離溶媒として、0.1mol/lのテトラヒドロフラン(THF)中の酢酸溶液を使用する。固定相は、WatersのStyragel HR5、HR4、HR3、およびHR2カラムの組合せである。5ミリグラムの試料を1.5mLの溶離溶媒に加え、0.5μmフィルターに通して濾過する。濾過後、100μlのポリマー試料溶液を、1.0ml/分の流速でカラムに注入する。溶離溶媒中に形成されるポリマーコイルのサイズに応じて分離が起こる。小さな分子はカラム材料の細孔に拡散する頻度がより高いため、大きめの分子よりも遅れる。したがって、大きめの分子は小さな分子よりも早く溶出される。ポリマー試料の分子量分布、平均MおよびM、および多分散性M/Mを、Polymer Standards Serviceから入手可能な、さまざまな分子量の一連の非分岐鎖ポリスチレン標準を含むEasyValidバリデーションキットを用いて生成された検量線を利用して、クロマトグラフィーソフトウェアを使用して計算する。
【実施例
【0123】
[実施例1]
塗装基材の製造
8インチ×20インチのアルミニウム製試験パネルを、基材として使用した。試験パネルは、パネルに0.5~0.8mLのBASF水系ベースコートを使用して、2度塗りで塗布した。ベースコートには、黒色のベースコート(BASF E211KU015)および銀メタリック色のベースコート(BASF E211AW628A)が含まれる。ベースコートで塗装した後、パネルは5分間の大気フラッシュおよび150°F(65.56℃)で6分間の加熱フラッシュを受ける。続いて、1.2~2.6mLの溶剤系2成分クリアコートウェッジを、パネルに2度塗りして塗布した。塗装後、パネルは、10分間の大気フラッシュを受け、温度285°F(140.56℃)で20分間の焼付けを受ける。以下の例では、垂直方向で塗装され、フラッシュされ、焼付けされた垂直パネルを取り上げているが、水平パネルを水平方向で塗装し、フラッシュし、焼付けすることも同様に想定される。
【0124】
表1は、製造した溶剤系2成分クリアコート組成物の一般的な組成についてまとめている。
【0125】
【表1】
【0126】
2成分クリアコート組成物は一般に、成分Aおよび成分Bを含む。以下の例は、成分Aにおけるブロックイソシアネートを取り上げているが、ブロックイソシアネートが、成分A、成分B、またはその両方に存在する場合があることも同様に想定される。成分Aは、一般に、約36℃のガラス転移温度、5500の分子量、185のOH価、65%の固形分、295の等量質量のアクリル酸コポリマー(樹脂1および樹脂2)、ならびに400の分子量、365のOH価、100%の固形分、および154の当量質量を有するポリエステルポリオール、を含む。ポリエステルポリオールは、油性反応性希釈剤またはポリエステル樹脂として機能し得る。成分Aは、アクリル酸コポリマー中の疎水性ヒュームドシリカ分散体、液体UV吸収剤(Tinuvin(登録商標)384、UVA)、レベリング剤(ポリシロキサン)、液体ヒンダードアミン光安定剤(Tinuvin(登録商標)123、HALS)、溶剤(プロピレングリコールメチルエーテル)、ブロックイソシアネート量(Desmodur(登録商標)PL350、Desmodur(登録商標)PL340、Desmodur(登録商標)BL3475、Duranate(登録商標)MFK-60B、およびそれらの混合物)を含み、成分Aを、自動車OEM 2K クリアにブレンドした。イソシアネートのブロックバージョンは、A成分、B成分、またはその両方に加えることができる。成分Bは、一般に、生きた/ブロックされていないポリイソシアネートのブレンド(Desmodur(登録商標)Z4470SNおよびDesmodur(登録商標)N3990)を含む。
【0127】
表2は、Desmodur(登録商標)PL350 ジメチルピラゾール(DMP)ブロックヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を、2.5%、5.0%、および10%で配合した2成分クリアコートの組成についてまとめている。
【0128】
【表2】
【0129】
表3は、Desmodur(登録商標)PL340 ジメチルピラゾール(DMP)ブロックヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)を、2.5%、5.0%、および10%で配合した2成分クリアコートの組成についてまとめている。
【0130】
【表3】
【0131】
表4は、Desmodur(登録商標)BL3475 ジエチルマロネート(diethylmaolonate)(DEM)ブロックヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)を2.5%、5.0%、および10%で配合した2成分クリアコートの組成についてまとめている。
【0132】
【表4】
【0133】
表5は、Duranate(登録商標)MFK60B ジエチルマロネート(diethylmaolonate)(DEM)ブロックヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を1.0%、2.5%、5.0%で配合した2成分クリアコートの組成についてまとめている。
【0134】
【表5】
【0135】
表6は、Desmodur(登録商標)BL3475とDuranate(登録商標)MFK60Bのブレンド ジエチルマロネート(diethylmaolonate)(DEM)ブロックヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)を1.0%、2.5%、5.0%、および10%で配合した2成分クリアコートの組成についてまとめている。
【0136】
【表6】
【0137】
[実施例2]
塗装基材の視覚的外観分析
焼付け後、Wavescan Dualレーザー屈折外観装置を使用してパネルの外観を評価した。バランス数は、式(I)および式(II)の方程式によって計算した。式(I)はWd値とWb値との間の関係を提供し、式(II)はこの関係を使用してバランス値(B)を計算する手段を提供する。
【0138】
【数3】
【0139】
本開示は、クリアコート層の硬化速度を使用して、カラー層(ベースコート)とクリアコート層との間に微細なしわを得た。この効果は、一般的に「オレンジピール」と呼ばれる、大きめの波長のピールの視認性を低下させる。OEM製造業者は、塗料サプライヤーを継続的に後押しして外観を改善している。具体的には、Byk ウェーブスキャン装置で測定される長波(LW)対短波(SW)の比率の改善を探求している。この比率は、バランスとも呼ばれる。少量のブロックイソシアネート(固定ビヒクルの10%以下)を、生きた2Kクリアコートにブレンドすることにより、バランスの改善された硬化コーティングが実現する。ブロックイソシアネートの量を増加させることにより、バランスを負(長波支配的)から正(短波支配的)にシフトすることができる。バランスのとれた外観を生み出すために、有利な濃度を特定することができる。表7は、黒色ベースコート(BASF E211KU015)上の2.2mLクリアコート垂直膜における様々な濃度のブロックイソシアネート(PL350、PL340、BL3475、およびMF-K60B)の効果についてまとめている。
【0140】
【表7】
【0141】
表8は、黒色ベースコート(BASF E211KU015)および銀メタリック色ベースコート(BASF E211AW628A)上の2.2mLクリアコート垂直膜における様々な濃度のブレンドブロックイソシアネート(BL3475およびMFK60B)の効果についてまとめている。
【0142】
【表8】
【0143】
示されるように、本開示の2成分クリアコート組成物は、長波構造(Wd)を著しく増加させることなく、黒色ベースコート上の短波構造(Wb)を増加させるのに好適である(表7)。加えて、本開示の2成分クリアコート組成物は、銀メタリック色ベースコート上の短波構造を著しく増加させることなく、黒色ベースコート上の短波構造を増加させるのに好適である(表8)。
【0144】
したがって、前述の考察は、本開示の単なる例示的な実施形態を開示しかつ説明している。当業者によって理解されるように、本開示は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。したがって、本発明の開示は例示を意図したものであり、本開示の範囲および他の特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書の教示の容易に認識可能な変形を含む本開示は、部分的に前述の特許請求の範囲を定義して、発明の主題が開放されないようにする。