IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベー・フェーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】紅茶製品の調製方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
A23F3/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020514903
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2018074343
(87)【国際公開番号】W WO2019052964
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】17190794.2
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521193094
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シピン・ズ
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-536003(JP,A)
【文献】特開2009-060826(JP,A)
【文献】特表平08-504591(JP,A)
【文献】特開昭53-024099(JP,A)
【文献】特開2003-225053(JP,A)
【文献】特表平10-503657(JP,A)
【文献】特開2002-159263(JP,A)
【文献】特開昭49-054597(JP,A)
【文献】国際公開第2004/082390(WO,A1)
【文献】特表2008-514212(JP,A)
【文献】米国特許第05427806(US,A)
【文献】国際公開第2017/008943(WO,A1)
【文献】特開2017-153375(JP,A)
【文献】特開2007-289115(JP,A)
【文献】J. AGRIC. FOOD CHEM.,2001年,49(11),5340-5347
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00- 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅茶抽出物を調製するための方法であって、紅茶葉粒子を、酸性溶液を用いて35℃未満の温度で抽出する工程を含み、前記紅茶葉粒子の少なくとも85質量%は、250μm未満の粒径を有し、前記酸性溶液は、2~3.5のpHを有する、方法。
【請求項2】
前記酸性溶液がクエン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸性溶液が、リンゴ酸及び/又はアスコルビン酸をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性溶液が、2~3のpHを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記紅茶葉粒子が、5~200μmの粒径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記温度が10℃~30℃である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
紅茶葉を粉砕して紅茶葉粒子を得る工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記紅茶葉が、前記酸性溶液の存在下で粉砕される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記紅茶葉粒子及び酸を乾燥成分として混合し、溶媒を後続の工程で加える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記紅茶葉粒子が、前記酸性溶液で20分未満抽出される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記紅茶葉粒子及び甘味料を乾燥成分として混合し、溶媒を後続の工程で加える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記紅茶抽出物が、5未満のpHを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
茶抽出物から紅茶葉粒子を分離する追加のその後の工程を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅茶製品の製造方法、特に紅茶抽出物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶は、2000年以上にわたって飲料として消費されてきており、水を除いて、人間が消費する最も人気のある飲料である。茶は非常に爽やかであり、熱くしても冷たくしても提供することができ、長年にわたって市販されてきた。
【0003】
アイスティーなどのパッケージ化されたそのまま飲める(RTD)茶飲料は、消費者に人気がある(例えば、炭酸清涼飲料の代替として)。これらの飲料は、通常、茶抽出物から作られている。残念ながら、そのような飲料は、貯蔵直後にヘイズ(曇り)及び/又は沈殿物を発生することが多く、そのためそれらの外観はあまり魅力的ではなくなる。RTD飲料におけるヘイズの形成は、製品の外観に影響を与え、その飲料が損なわれているような印象を与えるだけでなく、味及び色の両方の喪失を促進する。
【0004】
フルーツの風味を有するRTD飲料の場合、望ましい風味バランスを有する調製物を調製するには酸性化が必要である。酸性化は、RTD茶飲料の微生物学的安定性の改良に有利でもあり得る。残念ながら、そのような酸性化飲料からの固形物の沈殿は特に顕著であり、1週間という短期間から6~12週間という長期間までの保管期間の後に発生し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、良好な官能特性を有し、ヘイズ形成及び/又は沈殿の欠点に悩まされない、茶ポリフェノール類を含む飲料製品の提供が依然として必要とされていると認識している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、紅茶抽出物を調製するための方法に関し、この方法は、紅茶葉粒子を、酸性溶液を用いて35℃未満の温度で抽出する工程を含み、ここで、紅茶葉粒子は、250μm未満の粒径を有する。
【0007】
本発明は、低温で紅茶葉を抽出する方法(「コールドブリュー法」と呼ばれることもある)に関する。理論に拘束されるつもりはないが、抽出に比較的低い温度を使用すると、特に本物の茶の味と香りのある抽出物を提供するという観点から、紅茶抽出物の官能特性が向上すると考えられる。また、この方法は、抽出溶媒が比較的高い温度(典型的には約90℃)に加熱される従来の方法よりも必要なエネルギーが少ないことも想定される。
【0008】
そのような低温で必要な抽出効率を達成するために、茶葉の粒子が250μm未満の粒径を有するように、茶葉の粒径を制御する。
【0009】
驚くべきことに、酸性溶液で葉茶を抽出すると、中性条件下で葉茶を抽出し、その後酸性化する方法よりも、ヘイズの少ない茶抽出物が生成することが分かった。この効果は、小さな粒径を有する紅茶葉でより顕著になる。
【0010】
紅茶抽出物を使用して、すぐに飲める(RTD)飲料を調製することができる。このようなRTD飲料は典型的には酸性化されているため、本方法は、最終製品に通常存在しないいかなる成分の追加も必要としない。したがって、そのような抽出物に基づく最終製品に常に存在する上述した成分に加えて、いかなる追加の成分を必要とすることなしに、ヘイズの少ない茶抽出物を達成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、紅茶葉粒子を、酸性条件下、低温で抽出して、紅茶抽出物を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、紅茶抽出物を調製するための方法であって、酸性溶液を用いて35℃未満の温度で紅茶葉茶粒子を抽出する工程を含み、この紅茶葉粒子は、250μm未満の粒径を有する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「茶葉」という用語は、浸出されていない(すなわち、溶媒抽出工程にかけられていない)形態の、カメリアシネンシス(Camellia sinensis)のsinensis種及び/又はカメリアシネンシスのassamica種からの、葉及び/又は茎の材料を指す。いわゆる「紅茶葉」は、実質的に発酵させた茶葉を指す。例えば、紅茶葉は、植物であるカメリアシネンシスの葉を収穫する工程、枯凋工程、浸軟工程、酵素酸化(発酵)工程、焼成工程、及び選別工程によって、日常的に得られる。紅茶葉は、茶のオークションで簡単に購入できる。
【0013】
本プロセスで使用される紅茶葉粒子は、250μm未満、好ましくは200μm未満、より好ましくは150μm未満、最も好ましくは100μm未満の粒径(すなわち、最長直径)を有する。粒径範囲の下限に特に制限はないが、紅茶葉粒子は、好ましくは5μmを超える、より好ましくは10μmを超える、さらにより好ましくは20μmを超える粒径を有する。
【0014】
粒径が指定されている場合、葉茶出発材料の少なくとも85質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、さらにより好ましくは少なくとも95質量%、最も好ましくは少なくとも99%質量がその粒径を有する。特定の粒径を有する粒子の質量百分率は、(例えば、ふるいにかけることによって)粒径に従って複数の画分に分類し、次いでそれらの画分を秤量することによって決定することができる。粒径を決定する場合、茶葉粒子は乾燥した形態であり、含水率は30質量%未満(典型的には1~10質量%)である。
【0015】
茶葉には、通常の製造方法の結果として、さまざまな粒径を有する材料が含まれている。実際に、茶葉は、典型的には、オークションで販売される前に、さまざまなグレード(例えば、ホールリーフ、ブロークン、ファニング、及びダスト)に分類される。お茶を選別する1つの方法は、粒径によるものである。例えば、茶葉を、様々な等級が保持され、収集される、一連の振動スクリーンに通すことができる。これにより、250μm未満の粒径を有する茶葉粒子を分離することができる。例えば、60メッシュ(250μm)のタイラーメッシュサイズのスクリーンを通過した粒子は、適切な粒径になる。
【0016】
(上述したように)ふるいにかけることによって市販の紅茶葉から紅茶葉粒子を得ることが可能であるが、茶葉のごく一部のみが適切なサイズであるため、これはあまり効率的ではない。したがって、本方法は、好ましくは、適切な粒径を有する茶葉の割合を増加させるために、紅茶を粉砕(grind)して紅茶葉粒子を得る工程を含む。例えば、茶葉を、インパクトミル、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、コーンミル、ロールミル、ストーンミルなどを使用して粉砕することができる。この粉砕茶葉を、任意選択で、特定の粒径を有する画分に選別するために、上述した一連の振動スクリーンに通すこともできる。
【0017】
理論に拘束されることは望まないが、250μmを超える粒径の茶葉粒子は、より小さい茶葉粒子と比較して小さい表面積の体積に対する比を有するため、抽出効率に悪影響を与えると考えられる。粒子径が250μmを超える茶葉粒子は、粉砕工程及び/又はふるい工程の後で簡単に除去されるため、このサイズの粒子が少量しか存在しないことを確実にすることができる。好ましくは、250μmを超える粒径を有する茶葉粒子の量は、15質量%未満、より好ましくは10質量%未満、さらにより好ましくは5質量%未満、最も好ましくは1%未満である。
【0018】
紅茶葉粒子を、酸性溶液で抽出する。酸性溶液によって紅茶葉粒子を抽出すると、ヘイズの低い紅茶抽出物がもたらされる。茶抽出物に同量の酸を加えること(すなわち、抽出後に酸性化すること)では同じ効果が得られないことに留意すべきである。確かに、抽出後に酸性化すると、茶抽出物のヘイズのレベルが実際に高められる。
【0019】
酸性溶液は、好ましくは、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸などの有機酸を含む。酸性溶液は、これらの有機酸の2つ以上の混合物を含み得る。典型的には、酸性溶液中の酸の濃度は、0.01~2質量%、より好ましくは0.05~1.5質量%、さらにより好ましくは0.1~1質量%である。酸性溶液のpH範囲は重要ではない。しかし、それは一般に、2~3.5の範囲であり、好ましくは2~3である。特に明記しない限り、pHは20℃で測定される。
【0020】
本方法で得られる紅茶抽出物は、抽出溶媒とは異なるpHを持ち得る。理論に拘束されるつもりはないが、抽出固形物は緩衝効果を有し、したがって、抽出物のpHは、典型的には、抽出溶媒のpHよりも高いと考えられる。好ましくは、紅茶抽出物は、5未満、より好ましくは2.5~4.5、さらにより好ましくは2.5~4の(20℃での)pHを有する。
【0021】
紅茶抽出物は、すぐ飲める(RTD)飲料を配合するために使用することができ、したがって、酸性溶液は食用酸を含むことが好ましい。酸性溶液は、クエン酸を含むことが好ましい。クエン酸は、RTD飲料の酸味料として一般的に使用されているためである。紅茶抽出物からの特にバランスの取れた風味を有するRTD飲料の配合を可能にするために、酸性溶液は、好ましくはクエン酸を含み、さらにリンゴ酸及び/又はアスコルビン酸を含む。
【0022】
紅茶葉粒子を、35℃未満の温度で抽出する。理論に拘束されることは望まないが、抽出に比較的低い温度を使用すると、特に本物の茶の味と香りのある抽出物を提供するという観点から、抽出により紅茶抽出物の官能特性が向上すると考えられる。本方法は、抽出溶媒が比較的高い温度(通常は約90℃)に加熱される従来の方法よりも必要なエネルギーが少ないことも想定される。抽出温度は、好ましくは10℃~30℃、より好ましくは15℃~25℃である。
【0023】
抽出工程の継続時間については特に限定はない。しかし、比較的短い抽出時間が好ましい。例えば、紅茶葉粒子を、好ましくは20分未満、より好ましくは10分未満の間、酸性溶液で抽出する。当業者であれば、葉茶粒子から茶固形物の抽出を可能にするために、特定の最小抽出時間が必要とされることを理解するであろう。したがって、抽出の持続時間は、好ましくは少なくとも1分、より好ましくは少なくとも2分である。
【0024】
本方法は、茶抽出物から紅茶葉粒子を分離する追加の後続の工程を含むことが好ましい。これは、茶抽出物をフィルターに通すことによって達成することができる。フィルターは、紅茶葉粒子を除去するために適切な孔径を有する。例えば、0.45μmのPESフィルターを使用することができる。抽出中、紅茶葉粒子は膨潤する傾向があるため、フィルターの孔径は、本方法の出発材料として使用される最も小さい茶葉粒子ほど小さくする必要はない。
【0025】
酸性溶液は、追加の成分を含み得る。例えば、酸性溶液は、甘味料、香味料、保存料などの一般的なRTD飲料成分を含み得る。あるいは、これらの成分を、抽出後に紅茶抽出物に添加してもよい。
【0026】
紅茶葉粒子を酸性溶液で抽出する必要があるが、酸性溶液と紅茶葉粒子を別々に準備する必要はない。例えば、紅茶葉粒子及び酸を乾燥成分として混合し、続いて溶媒(通常は水)を添加することが想定される。このことは、乾燥成分の混合物を1つの場所で作成し、次に抽出工程が実行される第2の場所に輸送することができるため、有利である。紅茶葉は、乾燥成分として紅茶葉及び酸を混合してから混合物を粉砕すること、又は酸性溶液の存在下で紅茶葉を粉砕すること(例えば、紅茶葉の湿式粉砕)のいずれかによって、酸の存在下で粉砕することもできる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、「から本質的になる」及び「からなる」という用語を包含する。「含む」という用語が使用されている場合、リストされている工程又は選択肢は排他的なものである必要はない。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」又は「an」及びその対応する定冠詞「the」は、別段の指定がない限り、少なくとも1つ、又は1つ以上を意味する。
【0028】
特に指定のない限り、「xからyまで」という形式で表される数値範囲には、xとyが含まれるものと理解される。何らかの値又は量の範囲を指定する場合、任意の特定の上限の値又は量を任意の特定の下限の値又は量と組み合わせることができる。実施例及び比較例を除いて、又は他に明示的に示された場合を除いて、すべての数は「約」という語によって修飾されていると理解されるべきである。本明細書に含まれるすべての百分率及び比率は、特に明記しない限り質量で計算する。
【0029】
上述した個々の節で言及した本発明の様々な特徴は、必要に応じて、必要な変更を加えて他の節に適用される。したがって、ある節で特定された特徴は、必要に応じて他の節で特定された特徴と組み合わせることができる。節の見出しは、便宜のためにのみ加えられており、決して開示を制限することを意図したものではない。
【0030】
以下の実施例は、本発明を例示することが意図されており、本発明をそれらの実施例自体に限定することは意図されていない。
【実施例
【0031】
例1
紅茶葉は、標準のPF1グレードの材料であった。これは、摘採、枯凋、浸軟、発酵、乾燥、サイズ選別を含むケニアの工場での通常の茶加工によって得られた。
【0032】
a)粉砕
160UPZインパクトミル(Hosokawa Micro UK)を使用して、標準のPF1グレードの材料を比較的広いサイズ分布の微粒子に粉砕した。この機械を6000rpmで作動させ、供給速度を60kg/時とした。次に、粉砕した粒子を、ATS600分級機(Allgaier GmbH)を使用して次の以下の様々な狭いサイズの画分にふるいにかけた。
・26μm未満、
・26~53μm(画分1)、
・150~250μm(画分2)、及び
・250μmより大。
【0033】
b)抽出条件
10gの適切な茶葉試料(PF1グレード、画分1又は画分2)を、300gの溶媒中、20℃で5分間抽出した。葉茶試料の抽出に使用した溶媒は、水又はクエン酸水溶液のいずれかであった。4つの異なる濃度のクエン酸溶液を使用した:0.08%(300gの水中0.24g);0.17%(300gの水中0.5g); 0.67%(300gの水中2g);1%(300gの水中3g)。表1に、これらの抽出条件をまとめる。抽出が完了した後、0.45μmPESフィルター(ナルゲン(登録商標))を使用して、抽出液から抽出された茶粒子を除去した。
【0034】
【表1】
【0035】
さらに、水での抽出後に得られた抽出液を、抽出溶媒に使用した濃度と同じ4つの濃度のクエン酸を使用して酸性化した試料を準備した。表2に、これらの抽出後の酸性化条件をまとめた。
【0036】
【表2】
【0037】
c)抽出液の分析
抽出液に対していくつかの測定を行った。ヘイズは、濁度計(2100P濁度計、HACH)を使用して測定し、pHは、滴定装置(DL28滴定装置、Mettler Toledo)を使用して測定した。Brixは屈折計(RFM 340+屈折計、Bellingham+Stanley)を使用して測定した。
【0038】
抽出液中の茶固形物の濃度を、以下の式:
茶固形物濃度(%) = 0.76×Brix茶固形物
を用いて、抽出液のBrix値(Brix茶固形物)から計算した。
【0039】
クエン酸を含む抽出液の場合、Brix値を、抽出前に測定し(Brix溶媒)、抽出後に再度測定した(Brix液体)。これらの試料については、Brix茶固形物を、以下の式:
Brix茶固形物 = Brix液体-Brix溶媒
によって計算した。
【0040】
抽出収率は、以下の式:
収量(%) = 茶固形物濃度(%)×30
を用いて計算した。
【0041】
表3に、試料1a~1e、2a~2e、及び3a~3eの抽出液(すなわち、水又はクエン酸の水溶液で抽出した試料)の茶固形物濃度と抽出収率に関する実験データをまとめた。これらのデータは、粒径が小さいほど抽出収率が高いこと、及び、水によって、クエン酸水溶液よりも高い抽出収率が、所与の粒径についてもたらされることを示している。
【0042】
【表3】
【0043】
色は、CIE 1976 L色空間の座標を使用して表すことができる。CIE L色空間は、3次の形状を構成する。L軸は上から下に伸びる。Lの最大値は(完全な反射拡散板を表す)100であり、Lの最小値は(黒を表す)0である。a軸及びb軸には特定の数値的制限はない。a軸は緑(-a)から赤(+a)にまで、b軸は青(-b)から黄色(+b)にまで広がっている。
【0044】
抽出液の(CIE L色空間を使用して表される)色は、分光光度計(CM-5分光光度計、Konica Minolta)を使用して、統合ISO/CIE標準(ISO 11664-4:2008(CE );CIE S 014-4/E:2007)に準拠して測定した。
【0045】
表4に、試料の浸出液の(CIE L色空間を使用して測定した)色、並びに、ヘイズ、pH、及びBrix液体に関するデータをまとめた。
【0046】
【表4】
【0047】
抽出液の色を検討する場合、L値が重要である。L値が低いほど、液の色が濃いことを示す(また、L値が高いほど、液の色が明るいことを示す)。a値も重要である。a値が高いほど、液の色が赤いことを示す。表4のデータは、抽出後に酸性化すると、酸性化水溶液での抽出後に得られる色よりも濃くて赤い液体の色がもたらされることを示している。しかし、抽出後に酸性化すると、より高いレベルのヘイズがもたらされ、これは、消費者に関する限り、望ましくない特性である。この効果は低pHで、-とりわけ、粒径が小さい葉茶の画分で-より顕著になる。酸性化は、RTD茶飲料の微生物学的安定性の向上、及び、(特にフルーツの風味を有するRTD茶飲料のための)望ましい風味バランスを有する調製物の調製、の両方に関して有利であるため、このことには問題がある。
【0048】
対照的に、クエン酸の水溶液により葉茶を抽出すると、ヘイズのレベルが大幅に低下した抽出液がもたらされることが分かった。特に低レベルのヘイズは、低pHの抽出溶媒に関連していた。
【0049】
標準のPF1グレードの材料から得られた抽出液は、(酸性化が抽出の前又は後に行われたかどうかに関わらず)ヘイズのレベルが低かった。しかし、(暗さと赤みの両方の点で)残念な色-とりわけ、酸性水溶液を使用して抽出が行われた場合に-を有していた。予期せぬことに、画分1又は2から得られた抽出液(つまり、粒径が縮小されたリーフティー)が、標準のPF1グレードの材料から得られたものよりもはるかに許容可能な色を有していることが分かった。しかし、画分1又は2の画分を酸性水溶液で抽出して得られた抽出液のみが、適切に低いレベルのヘイズを有していた。
【0050】
これらの液の特性は比較的高い抽出収率を伴っているため、これらの小さい粒径の画分から許容可能な色特性及び低レベルのヘイズを有する抽出液を製造することは、特に有利である(表3を参照)。
【0051】
このように、比較的小さい粒径(すなわち、250μm未満の粒径)を有する紅茶葉粒子を酸性溶液で抽出する方法は、高い抽出収率を有し、低pHでも、良好な色及び低いヘイズを有する抽出液をもたらすことが示された。