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<図1>
  • -ジオグリッド 図1
  • -ジオグリッド 図2
  • -ジオグリッド 図3a
  • -ジオグリッド 図3b
  • -ジオグリッド 図4
  • -ジオグリッド 図5
  • -ジオグリッド 図6
  • -ジオグリッド 図7
  • -ジオグリッド 図8
  • -ジオグリッド 図8A
  • -ジオグリッド 図8B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】ジオグリッド
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20230116BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20230116BHJP
   B29C 55/02 20060101ALI20230116BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20230116BHJP
   E02D 3/00 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
C08J9/00 Z CER
C08J9/00 Z CEZ
B29C55/02
B29C55/06
E02D3/00 102
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2020516402
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 GB2018052670
(87)【国際公開番号】W WO2019058113
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】1715202.6
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506260685
【氏名又は名称】テンサー・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Tensar Technologies Limited
【住所又は居所原語表記】Sett End Road, Shadsworth Business Park, Shadsworth, Blackburn, BB1 2PU, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】カーソン、 アンドリュー
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-182897(JP,A)
【文献】特開2000-043141(JP,A)
【文献】特開平07-173824(JP,A)
【文献】特開平02-099318(JP,A)
【文献】特開平11-100849(JP,A)
【文献】特公昭54-002236(JP,B2)
【文献】特表2014-530783(JP,A)
【文献】特開2004-218262(JP,A)
【文献】特開2007-331153(JP,A)
【文献】国際公開第2009/102475(WO,A1)
【文献】特開平04-216925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00- 3/115
E02D 17/00-17/20
B29C 55/00-55/30
B29D 28/00
C08J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子配向されたポリマー材料を備える一体型メッシュ構造の形態のジオグリッドであって、前記メッシュ構造は、接合部によって相互接続された複数の細長い引張要素から形成され、
前記メッシュ構造の前記分子配向は、その範囲全体にわたって均一であり、前記ジオグリッドの厚さは、0.1~3mmである、ジオグリッド。
【請求項2】
前記接合部及び前記細長い引張要素は、同じ平均厚さを有する、請求項1に記載のジオグリッド。
【請求項3】
前記ポリマー材料を引き伸ばすことによって前記細長い引張要素に対して前記接合部の厚化が起こらない、請求項1又は2に記載のジオグリッド。
【請求項4】
前記引張要素の断面の形状は、その長さに沿って均一である、請求項1~3のいずれか1項に記載のジオグリッド。
【請求項5】
前記細長い引張要素の断面の形状は、長方形である、請求項4に記載のジオグリッド。
【請求項6】
前記ポリマー材料は、単軸に配向されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のジオグリッド。
【請求項7】
(i)少なくとも55%の、ASTM D6992-03に準拠した段階的等温法クリープ試験及びBE EN ISO 13431:1999に準拠した静的クリープ試験に基づいてPD ISO/TR 20432:2007に準拠して決定されるクリープ減少係数(RFCR)を有し、及び/又は、
(ii)0.1~3mmの厚さを有し、及び/又は
(iii)少なくとも4:1の伸張比を有し、及び/又は
(iv)少なくとも30kN/mの抗張力を有し、及び/又は
(v)前記ジオグリッドは、少なくとも部分的に開口の周囲のエッジの周りの前記ジオグリッドの面上に前記ポリマー材料の一体型ビーズを有する、請求項5に記載のジオグリッド。
【請求項8】
少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%の前記クリープ減少係数(RFCR)を有し、
前記ビーズは、前記開口の端部に沿って形成され、その細長いエッジに沿ってゼロの高さに減少する、請求項7に記載のジオグリッド。
【請求項9】
(i)配向方向に互いに平行に延びる複数の前記細長い引張要素、及び
(ii)前記引張要素と一体的でありかつそれぞれが隣接するリブ構造を互いに接続するように作用する複数のコネクタ要素であって、任意の2つの引張要素を互いに接続する前記コネクタ要素は、配向方向に互いから間隔を空けて配置され、それにより、前記引張要素と共に、前記引張要素に平行に延びる細長い開口を画定するコネクタ要素
を備える、請求項6~8のいずれか1項に記載のジオグリッド。
【請求項10】
前記引張要素は、2~50mmの幅を有し、前記開口は、40~400mmの長さ及び5~100mmの幅を有し、前記コネクタ要素は、前記引張要素の長手方向に測定した場合に2~20mmの幅を有し、及び/又は
前記コネクタ要素は、複数のセットとして配置され、任意の1つのセットのコネクタが前記リブ構造に対して横方向に互いに整列され、前記複数のセットは、前記リブ構造の長手方向に互いから間隔を空けて配置される、請求項9に記載のジオグリッド。
【請求項11】
前記引張要素は、5~40mmの幅を有し、前記開口は、40~250mmの長さ及び10~80mmの幅を有し、前記コネクタ要素は、6~18mmの幅を有する、請求項10に記載のジオグリッド。
【請求項12】
(a)単軸配向の方向に略平行に延びる複数のリブ構造、及び(b)前記リブ構造に対して横方向に延びる略平行に間隔を空けて配置される複数のバー構造を備え、
前記リブ構造及び前記バー構造は、それぞれの長さに沿って間隔を開けた位置で接合部によって相互接続され、それにより、前記リブ構造は、その長さに沿って交互に接合部とリブセグメントに細分化され、前記バー構造は、その長さに沿って交互にバーセグメントと接合部に細分される、請求項5~7のいずれか1項に記載のジオグリッド。
【請求項13】
前記略平行に間隔を空けて配置される複数のバー構造は、前記リブ構造に対して垂直に延び、
前記複数のリブ構造は、2~50mmの幅を有し、開口は、40~400mmの長さ及び5~100mmの幅を有し、前記バー構造は、前記リブ構造の長手方向に測定した場合に2~20mmの幅を有する、請求項12に記載のジオグリッド。
【請求項14】
前記リブ構造は、5~40mmの幅を有し、前記開口は、40~250mmの長さ及び10~80mmの幅を有し、前記バー構造は、6~18mmの幅を有する、請求項13に記載のジオグリッド。
【請求項15】
前記ポリマー材料は、二軸配向されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のジオグリッド。
【請求項16】
二軸ジオグリッドは、少なくとも1.5:1の伸張比を有し、及び/又は前記二軸ジオグリッドは、少なくとも10kN/mの抗張力を有する、請求項15に記載のジオグリッド。
【請求項17】
(a)細長いポリマー出発シートを引き伸ばして0.1~3mmの厚さを有するジオグリッド前駆体を形成するステップであって、前記ジオグリッド前駆体は分子配向されたポリマーを含み、前記ジオグリッド前駆体は基本的に均一な厚さを有するステップと、
(b)前記ジオグリッド前駆体に開口を形成することにより前記ジオグリッド前駆体をジオグリッドに変換して、細長い引張要素を含む相互接続メッシュ画定要素から形成された一体型メッシュ構造を画定することにより前記ジオグリッドを作成するステップと
を含む、ジオグリッドを作成する方法。
【請求項18】
前記ポリマー出発シートは、2~12mmの平均厚さを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー出発シートは、4~10mmの平均厚さを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
断面で観察した場合に、前記細長い引張要素が略長方形となるように前記開口が形成される、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記長方形の断面の長辺は前記ジオグリッドの面に沿っており、
(i)前記開口は、前記引張要素が2~20mmの幅を有するように形成され、及び/又は
(ii)前記開口は、40~250mmの長さ及び5~80mmの幅を有するように形成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記引張要素の幅は、6~18mmであり、
前記開口は、50~200mmの長さ及び5~50mmの幅を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(a)における引き伸ばしは、ポリマー材料が単軸に配向されるジオグリッド前駆体を提供するように単一方向に行われる、請求項17~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(a)において、ポリマー出発シートは、少なくとも4:1の伸張比に引き伸ばされ、又は前記伸張比は、少なくとも7:1であり、又は、前記伸張比は、7:1~12:1ある、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記開口は、前記引張要素が引き伸ばし方向に平行に延びて、前記開口が細長くかつその方向に平行に延びるように形成される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記開口は、ステップ(b)で作成された前記メッシュ構造が、
互いに平行に延びる複数の細長い引張要素、及び
前記引張要素と一体的でありかつそれぞれが隣接するリブ構造を互いに接続するように作用する複数のコネクタ要素であって、任意の2つの引張要素を接続する前記コネクタ要素は、引き伸ばし方向に互いから間隔を空けて配置され、それにより、前記引張要素と共に、前記細長い開口を画定するコネクタ要素
を備えるように形成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記コネクタ要素は、複数のセットとして配置され、任意の1つのセットの前記コネクタ要素は、前記細長い引張要素に対して横方向に互いに整列され、前記セットは、前記引張要素の長手方向に互いから間隔を空けて配置され、及び/又は
前記開口は、前記引張要素が2~50mmの幅を有し、前記開口が40~400mmの長さ及び5~100mmの幅を有し、前記コネクタ要素が前記引張要素の長手方向に測定した場合に2~20mmの幅を有するように形成される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記引張要素は、5~40mmの幅を有し、前記開口は、40~250mmの長さ及び10~80mmの幅を有し、前記コネクタ要素は、6~18mmの幅を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記開口は、ステップ(b)で作成された前記メッシュ構造が、
(i)単軸配向の方向に延びる略平行な複数のリブ構造、及び前記リブ構造に対して横方向に延びる複数の間隔を空けた略平行なバー構造
を備えるように形成され、前記リブ構造及び前記バー構造は、それぞれの長さに沿って間隔を空けた位置で接合部によって相互接続され、それによって前記リブ構造は、その長さに沿って交互に接合部とリブセグメントへと細分化され、前記バー構造は、その長さに沿って交互にバーセグメントと接合部へと細分化される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記複数の間隔を空けた略平行なバー構造は、前記リブ構造に対して垂直に延び、
前記開口は、前記リブ構造が2~50mmの幅を有し、前記開口が40~400mmの長さ及び5~100mmの幅を有し、前記バー構造が前記リブ構造の長手方向に測定した場合に2~20mmの幅を有するように形成される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記リブ構造は、5~40mmの幅を有し、前記開口は、40~250mmの長さ及び10~80mmの幅を有し、前記バー構造は、6~18mmの幅を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記開口は、パンチ操作によって設けられる、請求項25~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記パンチ操作は、前記ジオグリッドの面上に及び少なくとも部分的に前記開口の周囲のエッジの周りに前記ポリマー材料の一体型ビーズを形成する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ビーズは、前記開口の端部に沿って形成され、その細長いエッジに沿ってゼロの高さに減少する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
シート出発材料は、ポリマー材料が二軸に配向されるジオグリッド前駆体を作成するために2つの互いに垂直な方向に引き伸ばされる、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
(a)0.1~3mmの厚さを有するジオグリッド前駆体を提供するステップであって、前記ジオグリッド前駆体はポリマー出発シートの形態にあり、前記ポリマー出発シートは前記シートの範囲全体にわたって均一に分子配向されたポリマー材料を含むステップと、
(b)前記ジオグリッド前駆体に開口を形成することにより前記ジオグリッド前駆体をジオグリッドに変換して、細長い引張要素を含む相互接続されたメッシュ画定要素から形成された一体型メッシュ構造を画定することにより前記ジオグリッドを生成するステップと
を含む、ジオグリッドを作成する方法。
【請求項37】
ステップ(b)で形成された前記ジオグリッドは、請求項1~16のいずれか1項に記載されたものである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
粒状材料を強化する方法であって、請求項1~16のいずれか1項に記載のジオグリッドを前記粒状材料に埋め込むことを含む、方法。
【請求項39】
請求項1~16のいずれか1項に記載のジオグリッドが埋め込まれた粒状材料の塊を含む、ジオエンジニアリング構造物。
【請求項40】
(i)前記ジオエンジニアリング構造物は、堤防基礎、線路バラスト及び/又はサブバラスト、路盤基礎、橋台、擁壁、20度以上の急勾配の斜面、スリップリペア、鋼製メッシュ面、ラップアラウンド面、段付き壁、壁と斜面、植生面、非植生面、モジュール式ブロック、コンクリートパネル、海洋ユニット及び/又は蛇籠面から成るグループから選択され、及び/又は
(ii)前記ジオグリッドは、ジオエンジニアリング構造物の及び/又はその下の、強度;安定性、層厚の減少;寿命の増加;支持力の増加;不等沈下の制御;弱い堆積物を覆う能力、及び/又は粒状材料及び/又はボイドをスパンする能力から選択される少なくとも1つの特性の、前記ジオグリッドがない構造と比較した改善を前記ジオエンジニアリング構造物に与える、請求項39に記載のジオエンジニアリング構造物。
【請求項41】
ジオエンジニアリング構造物の及び/又はその下の、強化;安定化、層厚の減少;寿命の増加;支持力の増加;不等沈下の制御;弱い堆積物を覆うこと、及び/又は粒状材料及び/又はボイドをスパンすること
から成るグループから選択される少なくとも1つの目的でジオエンジニアリング構造物を形成するための粒状材料を備えた請求項1~16のいずれかに1項に記載のジオグリッドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度及び/又は剛性の改善等のジオグリッドの特徴を改善するように分子配向されたポリマーを含むメッシュ構造の形態にあるジオグリッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ジオグリッドは、ジオエンジニアリング構造物の粒状材料(例えば、土壌又は骨材)を安定化又は強化するために使用される高抗張力メッシュ構造である。より詳細には、ジオグリッドは構造物の粒状材料に埋め込まれているため、この材料はジオグリッドの開いたメッシュに固定することができる。ジオグリッドは、例えば、ポリマーフィラメントで作られたファブリックをスティッチボンディングして、PVC又はビチューメン等の柔軟性コーティングを適用すること、又は配向されたプラスチックストランドを互いに織り若しくは編み若しくは結合することにより(例えば、機械的固定、接着又は溶接プロセスの適用によって)、多くの異なるやり方で製造され得る。
【0003】
また、ジオグリッドは、(例えば、長方形又は他の適切なグリッドパターンで)穴の配列を備えた(例えば、パンチによって)ポリマーの出発材料のプラスチックシート(ポリマー出発シート)を引き伸ばすことによって製造され得ることが知られている。ポリマー出発シートを引き伸ばすと、細長い引張要素及び接合部を含むメッシュ画定要素から成るメッシュ構造の形態にあるジオグリッドが生成され、引張要素は少なくとも部分的に接合部によって相互接続される。このようなジオグリッドは、パンチ及び引き伸ばしジオグリッドと呼ばれることがよくある。このプロセスによるジオグリッドの製造では、引き伸ばし操作によりポリマーが引き伸ばし方向に引き伸ばされて細長い引張要素の形になり、その結果、元のシート出発材料の穴が拡大して、最終的なメッシュ構造(すなわち、ジオグリッド)が生成される。引き伸ばし操作は、細長い引張要素において及び(程度は低いが)接合部において(引き伸ばし方向に)ポリマーの分子配向を提供する。配向の程度は、シート出発材料上の(すなわち、引き伸ばし前の)対応するポイント間の距離と比較したジオグリッドの表面上の2つのポイント間の距離の比である伸張比によって表されてもよい。分子配向は、(分子配向されたポリマーは、無配向のポリマーよりも引き伸ばし方向の強度及び剛性が大幅に高いので)ジオグリッドに関して必須の特性を提供する。分子配向は、ジオグリッドがその製造後にさらされる通常の温度条件下では、例えば、保管、輸送及び使用中には不可逆的である。
【0004】
開口したポリマー出発シートを引き伸ばすことにより生成されるジオグリッドは、単軸又は二軸に配向されてもよい。単軸配向(「単軸」)ジオグリッドの場合、引き伸ばしは単一方向にのみ行われているが、二軸配向(「二軸」)ジオグリッドは、シート出発材料の平面において互いに垂直の2つの引き伸ばし操作を利用することにより生成されており、こうした操作は、通常は互いに対して垂直であって、一般には連続して行われる(ただし、産業界で知られている適切な機器では同時に行われ得る)。一方向(単軸製品の場合)又は二方向(二軸製品の場合)に開口したポリマー出発シートを引き伸ばすことにより単軸及び二軸メッシュ構造を作成するためのこのような技術は、例えば、GB2035191(US 4374798及びEP0374365に相当する)に開示されている。ジオグリッドのさらなる例は、WO2004/003303及びWO2013/061049に示されている。
【0005】
単軸及び二軸ジオグリッドの製造では、開口したポリマー出発シートは、通常は細長く(かつ無配向のウェブの形態にあり)、最初に長さ方向に引き伸ばされる。単軸ジオグリッドを作成するためには、これが唯一の引き伸ばし操作である。二軸ジオグリッドの場合、ウェブも横方向に引き伸ばされる。この横方向の引き伸ばしは、通常、縦方向の引き伸ばしに続いて行われ(同時に行われてもよいが)、通常は縦方向の引き伸ばしに対して垂直である。
【0006】
従来の単軸ジオグリッドは、細長い開口を有するポリマー出発シートを長さ方向に引き伸ばすことにより生成され、(a)引き伸ばし方向に延びる複数の略平行な(及び横方向に間隔を空けた)リブ構造、及び(b)リブ構造に対して横方向に(通常は垂直に)延びる複数の略平行な(及び縦方向に間隔を空けた)バー構造を備える。リブ構造とバー構造は、それぞれの長さに沿って間隔を空けた位置で接合部によって相互接続され、それによってリブ構造は、その長さに沿って交互に接合部とリブセグメントへと細分化され(メッシュ構造の細長い分子配向された引張要素を形成する)、バー構造は、その長さに沿って交互にバーセグメントと接合部へと細分化される。
【0007】
従来の単軸ジオグリッドの作成をより詳細に検討すると、ポリマー出発シートの穴の配列は、一般に、第1の方向に延びる第1の穴の列及び第1の方向に対して横方向(及び略垂直)である第2の方向に延びる第2の穴の列から成るように構成される。単軸ジオグリッドの作成において、ポリマー出発シートは、第1の方向に平行に引き伸ばされる。これにより、隣接する第1の穴の列の間の出発シートのエリアから前述のリブ構造が形成され、隣接する第2の穴の列の間の材料のエリアからバー構造が形成される。
【0008】
従来の単軸グリッドは、応力が主に一方向にある用途で、例えば、斜面、堤防又はモジュール式ブロック、パネル、及びその他の擁壁の設計を補強する場合に、広く使用されている。このような構造では、応力は、リブ構造に沿って補強されている粒状材料からバーに伝達される。もちろん、長さに沿ったリブセグメント(すなわち、引張要素)の分子配向が、単軸ジオグリッドを応力が主に一方向にある補強用途での使用に適したものにている。
【0009】
典型的には、単軸ジオグリッドは、リブ構造の長さ方向で決定される場合、リブセグメントの中間点での伸張比が約8:1となるようにされる。また、典型的に、従来の単軸ジオグリッドのバーセグメントは、リブ構造の長さに平行な方向で測定した場合、16mm~20mmの幅を有し、実質的に無配向のポリマーから成る。より詳細には、ポリマーは、バーセグメントの長さ及び幅に沿って実質的に無配向であり、リブ構造の長さ及びバー構造の長さの両方に沿って考慮される場合、接合部でも同様である。横方向バー構造における無配向のポリマーの重量は、単軸ジオグリッドの全体重量のかなりの割合を占め得ることが理解されるであろう。したがって、ジオグリッドにおけるポリマーの最も効率的な使用がストランドに配向されていることであることを考慮すると(これにより機械的特性が向上し、重量が減少するため)、バー構造(バーセグメント及び接合部)の無配向のポリマーの相対的にかなりの量が、ジオグリッドの効率を低下させることが理解されるであろう。
【0010】
WO2013/061049は、開口したポリマー出発シートを引き伸ばすことにより作成される単軸ジオグリッドの開発に関する。WO2013/061049に従って作成された単軸ジオグリッドにおいて、リブセグメントの配向は、(より低い程度ではあるが)接合部にわたって延びている。開示された実施形態において、(引き伸ばし方向で測定された)リブセグメントの中間点での伸張比は約9:1であり、(同じく引き伸ばし方向で測定された)接合部の中間点での伸張比は約5:1~6:1である。したがって、リブ構造は、その長さに沿ってかなりの程度の配向を有している(ここで配向は、リブセグメントの長さの中間点で最大であり、接合部の中間点で最小である)。WO2013/061049に従って作成された単軸ジオグリッドは、前の段落で検討された単軸ジオグリッドにたいして改善されているが、それにも関わらず(示されているように)接合部の中間点における配向は、(その長さ方向で考慮した場合)リブセグメントの中間点におけるそれよりも依然として低い。さらに、(WO2013/061049に従って製造されたものを含む)上記の全ての単軸ジオグリッドは、リブセグメントよりも相対的に厚い(接合部間の)バーセグメントを有している。バーセグメントを形成する元のポリマー出発シートの領域は、引き伸ばされていないままであり(又は少なくとも実質的にそうであり)、そのため効果的に元の出発シートと同じ厚さを有する。したがって、バーセグメントは、無配向のポリマーがジオグリッドの強度の改善に大きく寄与しないために不利である無配向のポリマーを組み込んでおり、これは、ポリマーの一部が所望のジオグリッド特性を向上させないために非効率的である。単軸ジオグリッドの場合、このような望ましい特性には、短期抗張力と、製品の長期「クリープ」性能(又は持続荷重下での寿命)を提供するために利用可能な短期抗張力の割合とが含まれる。クリープ性能は、BS EN ISO 13431/1999に準拠した静的クリープ試験及びASTM D6992/03に準拠した段階的等温法クリープ試験に基づいて、PD ISO TR 20432/2007に従って決定され得るクリープ減少係数(RFCR)によって表されてもよい。クリープ性能の確立は、土壌補強を目的としたジオグリッドの長期強度を決定する上で特に有用な要因である。
【0011】
一体型メッシュ構造の形態にある先行技術の単軸ジオグリッドは、約50%のクリープ減少係数を有している。このパフォーマンスの改善が望まれている。
【0012】
さらに、単軸ジオグリッドにおいて、相対的に厚いバーセグメントは、シートの「積み重ね」(すなわち、同じ(又は異なる)強度の単軸ジオグリッドの複数の層を使用して強度オプションを増加させること)の妨げになる。さらに、厚いバーセグメントは、単軸ジオグリッドのロールへの巻き付けの妨げになる。
【0013】
厚くなった接合部の存在は、開口したポリマー出発シートを引き伸ばすことによって生成される一体型メッシュ構造の形態にある二軸ジオグリッドの特徴でもある。
【0014】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を除去又は軽減することである。
【発明の概要】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、分子配向ポリマー材料を含む、好ましくは基本的にそれから成る、より好ましくはそれから成る一体型メッシュ構造の形態にあるジオグリッドが提供され、このメッシュ構造は、細長い引張要素を含む相互接続メッシュ画定要素から形成され、このメッシュ構造のポリマー材料の分子配向は、その範囲全体にわたり均一である。
【0016】
選択的に、メッシュ構造はプラスチックである。プラスチック材料は柔軟性があり、加熱及び/又は引き伸ばし及び/又は(共)押し出し等の機械的プロセスによってエネルギーが供給されると、形成、変形又は成形が可能である。本発明のジオグリッドを形成するために使用されるポリマー材料は、少なくともジオグリッドの製造プロセス中に可塑性特性を示すことが好ましい。
【0017】
本明細書で使用される「均一」及び/又は「均一に」(例えば、均一に分子配向された及び/又は均一な厚さに関して)は、本明細書で定量的に定義される実質的な均一を含み、(例えば、MD伸張比によって測定される配向の及び/又はmmでのメッシュの厚さの)所望の値又は平均値の100%であることが好ましい。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、ジオグリッドの製造方法が提供され、この方法は、(a)少なくとも第1の方向にポリマー出発材料を含む、好ましくは基本的にそれを含む、より好ましくはそれから成る細長いシートを引き伸ばして、その範囲全体にわたって均一に分子配向された高ポリマー材料を有するシートの形態にあるジオグリッド前駆体を形成するステップと、(b)ジオグリッド前駆体に開口を形成することによりジオグリッド前駆体をジオグリッドに変換して、細長い引張要素を含む相互接続メッシュ画定要素から形成された一体型メッシュ構造を画定するステップであって、ジオグリッドのポリマー材料の分子配向はその範囲全体にわたって均一であるステップとを含む。
【0019】
ジオグリッド内のポリマー材料の分子配向(均一な分子配向等)は、当技術分野で周知の多くの技術によって決定されてもよい。当業者であれば、ポリマー材料内の分子配向は、アモルファスポリマーが配向の方向に引き伸ばされるときのポリマー鎖の配列であるか及び/又は半結晶性又は結晶性ポリマーが配向の方向に引き伸ばされるときのポリマー結晶領域及び/又はポリマー鎖の配列のために、ポリマー材料の配列の増加から生じる材料の固有の本質的な性質であることを理解するであろう。したがって、任意の方向で測定され、しかしながら(例えば、延伸又は伸張比によって)定義されたポリマー材料の配向度は、それが材料のみから派生可能な材料の固有の測定可能な特性であるため、ポリマー材料が作られたプロセスの知識を必要としない。ポリマーの配向を測定するための適切な技術には、限定されないが、X線回折、フーリエ変換赤外(FT-IR)分光法による減衰全反射(ATR)、複屈折、ソニックモジュール、偏光蛍光、ブロードラインNMR、UV及び赤外線二色性、偏光分光法、及び/又は収縮復帰のいずれかが含まれる。XRD及び/又は収縮復帰は、ジオグリッドが他の用途のために作成された多くのポリマーフィルムよりも厚く、ジオグリッドがカーボンブラック等のUV吸収剤を分散させていることが多いため、通常は一部の放射線に対して不透明であることを考慮すると、ジオグリッド内のポリマーの分子配向を決定するのに特に適している。本発明のジオグリッドのポリマー配向を決定するための特に好ましい実際的な試験の非限定的な例は、本明細書に記載される収縮復帰試験である。これにより、真値の2%以内の合理的に正確なポリマーの配向度を得るために迅速で簡単なチェックを行うことが可能になり、これはジオグリッドに関してはほとんどの状況で十分である。当業者であれば、より高い精度が望まれる場合、多くの既知の試験の中の別のものを評価しかつ選択するであろう。
【0020】
サンプルに存在する分子配向の程度を決定するための収縮復帰試験は、次のように有益に実行されてもよい。配向ポリマーのサンプルを十分に長い時間、十分に高い温度で加熱して、ポリマー鎖(及び/又はポリマーが結晶性又は半結晶性の場合はポリマー結晶ドメイン)がアモルファスであってどの方向にも配向されていない完全な緩和状態に戻す。したがって、加熱後、サンプルは配向前の状態に収縮(又は復帰)しているため、復帰前後のサンプルの比率が延伸比を提供する。加熱温度は、試験する特定のポリマー又はポリマー混合物に依存するが、通常はその融点に近くなる(例えば、10℃以内、好ましくは5℃以内)。この試験における加熱の持続時間は、好ましくは、収縮がそれ以上観測されなくなるまでである。この試験の具体例が図8に示されており、例5で説明される。
【0021】
本発明は、本発明のジオグリッドがその範囲全体にわたって均一に分子配向されるという点で、従来の一体型ポリマージオグリッドからの発展である。対照的に、従来の一体型ポリマージオグリッドは、ポリマーの分子配向がジオグリッド全体にわたって変化するものである(例えば、接合部と引張要素との間で異なり、さらに引張要素に沿って接合部を横断して変化する)。本発明のジオグリッド全体にわたるポリマーの均一な分子配向は、ポリマーが使用される効率を大幅に改善し、従来のジオグリッドと比較して改善された特性(特に、抗張力及び耐クリープ性)を有するジオグリッドをもたらす。本発明のジオグリッドの均一な分子配向は、例えば、ジオグリッドを画定するために前駆体をパンチすることにより、(均一に分子配向したポリマーを有する)ジオグリッド前駆体からジオグリッドを形成することにより得ることができる。ジオグリッド前駆体自体は、分子配向を付与しかつジオグリッド前駆体を形成するために、少なくとも一方向にポリマー出発シートを引き伸ばすことにより得られる。
【0022】
本発明の第1の態様によるジオグリッドは、ポリマー出発シート自体が基本的に均一な厚さを有するという事実に起因して基本的に均一な厚さを有し得るという点でさらなる利点があり、開口が形成されているジオグリッド前駆体(引き伸ばしにより生成される)も同様であり得る。ジオグリッドのコンテキストにおける「基本的に均一な厚さ」とは、ジオグリッドの1つ以上のエッジに沿って厚くなった部分(通常、ジオグリッドが生成されるプロセスからもたらされ、理想的には、商業的に許容可能な製品とするために切り取られる)を除けば、ジオグリッドは、(a)選択的な表面形状によって引き起こされる任意の局所的な変化、及び/又は(b)開口を導入するプロセスから生じる開口周辺の小さな歪み(例えば、以下で説明する「圧力マーク」)を除いて、その面積の残りの部分にわたって均一な厚さ(又は本明細書で定義されている実質的に均一な厚さ)を有することを意味している。
【0023】
ジオグリッドの1つ以上のエッジにおいて厚くなる任意のエッジがジオグリッドの縦方向に伸び、(そのような厚くなった任意の領域の)幅は、ジオグリッドの全幅の5%未満になる可能性が高い。上記のように、厚くなったエッジは最終製品から除去されてもよい。
【0024】
ジオグリッド前駆体の「基本的に均一な厚さ」とは、(b)がジオグリッド前駆体の特徴ではない場合を除き、ジオグリッドの場合と同じことを意味する。シート出発材料の文脈における「基本的に均一な厚さ」とは、選択的な表面形状によって生じる局所的な変化を除いて、シートが均一な厚さを有することを意味する。
【0025】
したがって、ジオグリッドのメッシュ画定要素は、基本的に同じ厚さを有してもよい。したがって、製品の強度に大きく寄与しない無配向のポリマー(又は引張要素よりもやや少なく配向されたポリマー)を含むジオグリッドの厚くなった領域は実質的に存在せず、好ましくは、全く存在しない。さらに、ジオグリッドの基本的に平坦な性質は、ジオグリッドのシートの取り扱い、特にその「積み重ね」(上記参照)を容易にすることに関して大きな利点がある。また、ジオグリッドの比較的均一な厚さは、グリッドの横方向での結合によって幅の変化をもたらすことも可能にする。さらに、構造内で使用されるコネクタ、フェーシング、又はその他の補助コンポーネントの周りにジオグリッドをより容易に巻き付ける機能がある。最後に、比較的均一な厚さにより、直径の小さなジオグリッドのロールの作成が容易になり、輸送効率が向上する。
【0026】
これは本発明の第3の態様をもたらし、それによれば、メッシュ構造における接合部によって相互接続された細長い引張要素を備える一体型の分子配向されたプラスチックメッシュ構造の形態でジオグリッドが提供され、ここで接合部及び細長い引張要素は、同じ平均厚さを有している。
【0027】
本発明の第4の態様によれば、ジオグリッドを作成する方法が提供され、この方法は、(a)少なくとも第1の方向にポリマー材料を含む、好ましくは基本的にそれを含む、より好ましくはそれから成る細長い出発シートを引き伸ばして、均一な厚さを有するシートの形態にあるジオグリッド前駆体を形成するステップと、(b)ジオグリッド前駆体に開口を形成することにより、ジオグリッド前駆体をジオグリッドに変換して、メッシュ構造における接合部によって相互接続された細長い引張要素を含む一体型メッシュ構造を画定するステップであって、これにより、接合部及び細長い引張要素は均一な厚さを有するステップとを含む。
【0028】
本発明の好ましいジオグリッドは、本発明の第1及び第3の態様によるものであり、すなわち、ジオグリッドは、その範囲全体にわたって均一に分子配向されたポリマーを有し、引張要素と同じ平均厚さを有する接合部によって接続された細長い引張要素を含む。
【0029】
代替的に表現されかつ第5の態様として提供される本発明は、ポリマー材料を含む、好ましくはそれを基本的に含む、より好ましくはそれから成る一体型メッシュ構造の形態にあるジオグリッドを提供し、メッシュ構造はメッシュ構造における接合部により相互接続された細長い引張要素を含み、メッシュ材料が、ジオグリッドが生成された引き伸ばしプロセスによって接合部が実質的に厚くならない、好ましくは、全く厚くならない。
【0030】
本発明によるジオグリッドは、単軸ジオグリッドであってもよく、少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも70%のASTM D6992-03に準拠した段階的等温法クリープ試験及びBE EN ISO 13431:1999に準拠した静的クリープ試験に基づくPD ISO/TR 20432:2007に準拠して決定されるクリープ減少係数(RFCR)を有してもよい。
【0031】
これは本発明の第6の態様をもたらし、それによれば、単軸配向される分子配向されたポリマー材料を備える、好ましくは基本的に含む、より好ましくはそれから成る一体型メッシュ構造の形態にあるジオグリッドが提供され、ジオグリッドは、少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも70%のASTM D6992-03に準拠した段階的等温法クリープ試験及びBE EN ISO 13431:1999に準拠した静的クリープ試験に基づくPD ISO/TR 20432:2007に準拠して決定されるクリープ減少係数(RFCR)を有する。
【0032】
好ましくは、ジオグリッドが製造されるジオグリッド前駆体は細長く、細長いポリマー出発シートをシートの長さ方向に引き伸ばすことにより作成される(これにより、第1の方向は、シートの長さに沿っており、相応にジオグリッド前駆体の長さに沿っている)。このような出発シートの長さ方向の引き伸ばしは、行われる唯一の引き伸ばし操作であってもよく、又は異なる方向の複数の引き伸ばし操作の1つであってもよい。したがって、本発明は、単軸及び二軸に配向された両方のジオグリッドに適用可能である。
【0033】
ポリマー材料は、本明細書に記載の用途で使用するジオグリッドに所望の特性(例えば、強度及び/又は剛性)を提供するために十分高い分子量を有する1つ以上のポリマーを含む、好ましくは基本的にそれを含む、より好ましくはそれからなる材料を有益に示しているが、好ましくは、本明細書に記載されるように配向されるために、加えられる熱、圧力、及び/又は機械的加工によって処理されることが可能なように十分な可塑性を有する。ポリマー出発シート(したがって、ジオグリッド前駆体要素)には様々なポリマー材料が使用されてもよく、本明細書ではポリマーが可塑性、好ましくは熱可塑性であり得る適切なポリマーの非限定的な例が説明されている。
【0034】
本発明のメッシュの調製における使用に適したポリマーの非限定的な例は、ポリオレフィン[例えば、ポリプロピレン及び/又はポリエチレン]ポリウレタン、ポリビニルハライド[例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、]、ポリエステル[例えば、ポリエチレンテレフタレート-PET]、ポリアミド[例えば、ナイロン]、及び/又は非炭化水素ポリマー)である。さらにより好ましいポリマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)であり、HDPEが最も好ましいポリマーである。
【0035】
便宜上、ポリオレフィンシート出発材料は、1つ以上のポリオレフィン[例えば、選択的に、1つ以上の層で、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンホモポリマー(例えば、高密度ポリエチレン-HDPE)及び/又は(複数の)ポリプロピレン/ポリエチレンコポリマー]を含んでもよい。シートにおける構成ポリマー及び/又は層は、配向され、ブローされ、収縮され、引き伸ばされ、キャストされ、押し出しされ、共押し出しされ、及び/又はこれらの任意の適切な混合物及び/又は組み合わせを含んでもよい。シートは、必要に応じて、シートに適切な添加剤を使用することにより、選択的に、電子ビーム(EB)又はUV架橋等の任意の適切な手段によって架橋されてもよい。
【0036】
ポリマー出発シートを作成するために使用される樹脂等のポリマーは、一般にペレット形態で市販されており、タンブラ、ミキサ及び/又はブレンダを含む市販の機器を使用して、当技術分野で知られている周知の方法で溶融ブレンドされ又は機械的に混合されてもよい。ポリマーは、加工助剤及び/又は着色剤等の周知の添加剤と共に、他の追加のポリマー又はそれらとブレンドされた樹脂を有してもよい。ポリオレフィンシートを作成する方法は周知であり、スリットダイを通してシートを押し出す技術を含む。
【0037】
例えば、ポリマーシートを製造するために、ポリマー及び添加剤は押出機に導入され、そこでポリマーは加熱により溶融可塑化され、次いでシートに形成するために押出ダイに移される。押出及びダイ温度は、一般に、処理される特定のポリマーに依存し、適切な温度範囲は、一般に、当技術分野で既知であるか、又はポリマー製造業者が入手できる技術告示において提供される。処理温度は、選択された処理パラメータによって異なり得る。
【0038】
ポリマー出発シートは、その(複数の)構成ポリマーに応じて適切な温度で引き伸ばされることにより配向されてもよい。得られる配向シートは、大幅に改善された張力及び剛性特性を示し得る。配向は、シートが一方向にのみ引き伸ばされる場合は単軸に沿っていてもよく、シートがシートの平面で互いに垂直な2つの方向のそれぞれに引き伸ばされる場合は二軸であってもよい。二軸配向されたシートは、平衡化又は不平衡化されてもよく、不平衡シートは、好ましい方向に、通常は横方向により高い配向度を有する。従来、長手方向(LD)は、シートが機械を通過する方向であり(機械方向又はMDとしても知られている)、横方向(TD)はMDに垂直である。好ましい二軸シートは、MD及びTDの両方に配向される。
【0039】
元のポリマー出発シートは、例えば、2~12mm、より好ましくは4~10mm、さらにより好ましくは4~9mmの厚さを有してもよい。ポリマー出発シートに特に適した厚さは、約6mmである。
【0040】
シートの配向は、任意の適切な技術によって達成され得る。例えば、平坦なシートは、テンターによって、又は延伸ロールとテンターの組み合わせによって、互いに垂直な2つの方向のそれぞれに同時に又は連続的に引き伸ばすことによって配向されてもよい。シートが引き伸ばされる程度は、シートが意図される最終的な用途にある程度依存するが、満足できる張力及び他の特性は、シートが本明細書に記載されている比率で引き伸ばされるときに、一般に発現する。ポリマー出発シートを引き伸ばしてジオグリッド前駆体(これは続いてジオグリッドを形成するために開口される)を形成する場合、伸張比は、例えば、一実施形態では少なくとも4:1であり、別の実施形態では少なくとも5:1であり、さらなる実施形態では、少なくとも7:1であってもよい。一般に、伸縮比は12:1を超えないであろう。しかしながら、伸縮比は、多くの要因、例えば、使用されるポリマーのタイプ、ポリマー出発シートの初期厚さ、及び単軸配向又は二軸配向のジオグリッドが作成されるかどうかに依存する。純粋に非限定的な例として、ポリマー出発シートがHDPEを含む場合、最大伸張比は一般に約10:1であろう。対照的に、ポリマーがPETである場合、伸張比は一般に最大で約4:1になる。
【0041】
引き伸ばした後で、ポリマー出発シートは、適切な温度で、収縮を抑制し又はさらに一定の寸法に維持しながら、ヒートセットされてもよい。最適なヒートセット温度は、単純な実験で容易に確立され得る。便宜上、シートは、約100℃~約160℃の範囲の温度でヒートセットされてもよい。ヒートセットは、従来の技術によって、例えば、テンターシステム、1つ以上の加熱ローラ及び/又は制約された熱処理の1つ以上によって影響を受け得る。
【0042】
本明細書で言及される伸張比は、伸張力を解放した後(及び任意のアニーリングが実行された後)の低温で測定されるものであり、伸張比はジオグリッドの表面で測定される。本明細書でより詳細に説明するように、伸張比は、本発明の配向されたポリマー出発シート及び/又は配向されたポリマーメッシュの固有の特性であり、配向プロセスの条件に関係なくシート又はメッシュのみから決定できることが理解される。
【0043】
本発明によるジオグリッドは、単軸又は二軸に配向されてもよい。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、細長い引張要素は、その深さ(ジオグリッドの厚さによって表される)よりも大きい幅(ジオグリッドの主要面を横切って測定される)を有するという点で「リボン状」であり、幅と深さの両方が長さよりも大幅に短い。引張要素の断面は、その長さに沿って均一であることが好ましい。細長い引張要素は、その長さに沿って均一な長方形の断面を有することが特に好ましい。
【0045】
本発明の実施形態では、細長い引張要素は、その幅(ジオグリッドの主要面を横切って測定される)がその深さ(ジオグリッドの厚さによって表される)と実質的に同じである細い糸又は繊維ではないという点で「フィラメント」ではない。実施形態では、細長い引張要素は、その長さに沿った均一な楕円形又は円形の断面を有していない。
【0046】
本発明は、特に、第1の方向の引き伸ばしがジオグリッド前駆体の作成中に適用される唯一の引き伸ばしである単軸ジオグリッドに及びその作成に適用可能である。本発明に従って作成された単軸ジオグリッドは、好ましくは、(a)細長い引張要素を提供し、かつ第1の方向(すなわち、ポリマー出発シートがジオグリッド前駆体要素を製造するために引き伸ばされた方向)に延びる複数の略平行なリブ構造、及び(b)それぞれが隣接するリブ構造を互いに接続するように機能する(リブ構造と一体化した)複数のコネクタ要素とを備え、任意の2つの隣接するリブ構造を接続するコネクタ要素は、リブ構造の方向に互いから長手方向に間隔を空けて配置される。
【0047】
本発明の第1の態様によれば、このようなジオグリッドは、その範囲全体にわたって均一に分子配向され得る。さらに、コネクタは、任意の1つのセットのコネクタが(リブ構造に対して横方向に)互いに整列される複数のセットとして配置されてもよく、このセットは、リブ構造の長手方向に互いから間隔を空けて配置される。
【0048】
本発明の第3の態様による好ましいジオグリッドは、(a)第1の方向(すなわち、ポリマー出発シートがジオグリッド前駆体要素を生成するために引き伸ばされた方向)に延びる複数の略平行なリブ構造、及び(b)リブ構造に対して横方向に(好ましくは、垂直に)延びる複数の間隔を空けた略平行なバー構造を備え、このリブ構造及びこのバー構造は、それぞれの長さに沿って間隔を空けた位置で接合部によって相互接続され、それによってリブ構造は、その長さに沿って交互に接合部とリブセグメントへと細分化され、バー構造は、その長さに沿って交互にバーセグメントと接合部へと細分化される。
【0049】
本発明の第1及び第3の態様の特徴を組み込んだこのような単軸ジオグリッドの構造において、(伸張方向で考えた場合)配向がリブセグメントの中心で最大になり、隣接するこのような中心間で減少し、最小が接合部の中心にある従来の単軸ジオグリッドのように、(第1の方向で考えた場合)ポリマーの配向が、リブ構造の長さに沿って変化しないという利点がある。ジオグリッドの全ての領域が同じ程度に引き伸ばされているため、ジオグリッドが基本的に均一な厚さを有するというさらなる利点がある。したがって、ジオグリッドの強度に大きく関与しない無配向のポリマーを含む厚いバーセグメントが存在しない。さらに、ジオグリッドの基本的に平坦な性質は、ジオグリッドのシートの取り扱い、特に、特性及び寸法柔軟性の増加のためにその垂直及び横方向のジオグリッドの組み合わせを容易にすることに関してかなりの利点である。
【0050】
複数のリブ構造は、それらが一般に平坦であり、長さが幅及び深さよりかなり大きいという意味で「リボン状」であってもよい。このような単軸ジオグリッドの好ましい構造では、リブ構造は不定長さを有し、2~50mm(好ましくは、2~20mm)の幅を有する。単軸ジオグリッドにおける開口は、例えば、40~400mm(好ましくは、50~200mm)の長さ、及び5~100mm(好ましくは、5~50mm)の幅を有してもよい。コネクタ要素は、(リブ構造の長手方向に測定して)2~20mmの幅を有してもよい。
【0051】
本発明の任意のジオグリッドにおける細長い引張要素の幅は、有益に、2~50mmであり、一実施形態においてより好ましくは、5~40mmであり、最も好ましくは、10~20mmであり、又は別の実施形態では選択的に、2~20mmであってもよい。
【0052】
本発明の任意のジオグリッドにおけるコネクタ要素の幅は、好ましくは、2~20mmであり、より好ましくは、6~18mmであり、最も好ましくは、10~15mmであってもよい。
【0053】
本発明の任意のジオグリッドにおける細長い引張要素及び/又はコネクタ要素の深さ(厚さ)は、便宜上、0.1~3mmであり、より好ましくは、0.2~2.5mmであり、さらにより好ましくは、0.2~2mmであり、最も好ましくは、0.4~2mmであってもよい。
【0054】
本発明の任意のジオグリッドにおける開口の長さは、有益に、40~300mmであり、より好ましくは、40~250mmであり、最も好ましくは、50~200mmであってもよい。
【0055】
本発明の任意のジオグリッドにおける開口の幅は、有利には、5~80mmであり、一実施形態においてより好ましくは、10~80mmであり、さらにより好ましくは、20~75mmであり、最も好ましくは25~20mmであり、又は別の実施形態では選択的に、5~50mmであってもよい。
【0056】
いくつかの好ましい実施形態では、開口の長さは開口の幅よりも大きい。
【0057】
通常、本発明による一軸ジオグリッドは、0.1~3mm、より好ましくは、0.2~2.5mm、さらにより好ましくは、0.2~2.2mm、最も好ましくは、0.4~2mmの平均厚さを有する。
【0058】
単軸ジオグリッドの(第1の方向の)伸張比と、それに対応してリブ構造及びコネクタ要素の両方の(第1の方向の)伸張比は、例えば、少なくとも4:1であり、好ましくは、少なくとも5:1であり、より好ましくは、少なくとも7:1であってもよい。一般に、伸張比は、12:1を超えず、より好ましくは10:1を超えない。したがって、ジオグリッドは、(第1の方向で)4:1~12:1、好ましくは、5:1~10:1、より好ましくは、7:1~10:1の伸張比を有してもよい。しかしながら、特定のジオグリッドに対して達成可能な伸長比は、使用される特定のポリマーに依存するため、こうした比率は非限定的であり、単なる例示であることが理解される。
【0059】
単軸ジオグリッドは、例えば、少なくとも30kN/mの引張強度を有してもよい。本書に記載されているジオグリッドの抗張力は、BS EN ISO 10319:2015に準拠して決定され、この試験では、ジオシンセティックの抗張力を、試験片が破断するまで引き伸ばされる試験中に観察された単位幅あたりの最大力として定義し、kN/mの単位で表される。利便性及び簡潔のために、ジオグリッドの抗張力はkNの単位で示されてもよく、この場合、抗張力の値は、ISO 10319:2015で試験された幅1mのジオグリッドについて得られた値に対応すると想定される。
【0060】
一般に、単軸ジオグリッドの抗張力は、少なくとも30 kN/mである。抗張力の変化は、様々なやり方で、例えば、ジオグリッドの厚さ、それが製造されるポリマー、又はリブの引張要素の横方向の間隔及び/又は幅、又は前駆体の伸張比の変化により達成され得る。
【0061】
本発明のジオグリッドの選択的な利点は、有益に、高い強度効率、すなわち、(例えば、重さで測定される)所与の量の材料についての強度であり、一般に、ジオグリッドは、同じ重さの無配向のポリマーシート(又はウェブ)と比較して強度が高い。したがって、同じポリマーから作られたジオグリッドと同じ外寸の連続ポリマーウェブ(このウェブははるかに多くの材料を含み得る)がジオグリッドよりも高い抗張力を有する可能性がある。それにもかかわらず、例えば、ジオグリッドの開口が使用中に土壌粒子と連結するという実用的な機能を有しているため、連続シートは、本明細書に記載された使用には、実用的ではなく、非常に高価であり、非効率的であろう。
【0062】
単軸ジオグリッドは特定の好ましい実施形態を表しているが、本発明はこのような(単軸)ジオグリッドに限定されない。ポリマー出発シートの伸張操作を2つの横方向に行うことも可能である。こうした方向は互いに直交していてもよい。二軸に引き伸ばされたポリマー出発シート(すなわち、ジオグリッド前駆体)から形成されるジオグリッドは、分子配向されたポリマーの細長い引張要素の複数のセットを含むように形成され、各セットの要素は、互いに異なる方向に延び、かつ引張要素と同じ厚さを有する接合部において相互接続される。結果として得られる二軸配向されたジオグリッドは、例えば、分子配向されたポリマーの引張要素の第1及び第2のセットを含んでもよく、第1及び第2のセットの要素は、互いに直交して延びる。したがって、このような構造は、ジオグリッド前駆体に正方形又は長方形の開口を形成して、2つの垂直方向に延びるリブ構造(引張要素)を提供することによって作成され得る。しかしながら、開口が正方形であることは必須ではなく、例えば、三角形又は六角形などの他の構成も可能である。開口は、例えば、WO2004/00303に開示されたものに基づく構造を有し、(i)第1の方向に対して鋭角で延びる実質的に直線的に配向された第1のセットのストランド、(ii)第1の方向に対して鋭角で伸びる実質的に直線的に配向された第2のセットのストランドであって、第1の方向に対して直角の第2の方向で考えた場合に、2つのセットの交互の(角度のある)ストランドは、実質的に等しい対頂角によって第1の方向に角度付けられるもの、(iii)前記第2の方向に延びるさらに実質的に直線的に配向されたストランド、及び(iv)各々が角度を付けて配向されたストランドの4つとさらに配向されたストランドの2つを相互接続する接合部を備えるジオグリッドを画定するように、ジオグリッド前駆体において形成されてもよい。
【0063】
しかしながら、本発明は、WO2004/00303に開示されている全てのジオグリッド構造に適用可能であり、その主題は参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
ジオグリッド前駆体要素を形成するための二軸伸張操作において、2つの横方向(例えば、垂直)方向の引き伸ばしは、等しいか又は異なっていてもよい。いずれかの方向の伸張比は、1.5:1以上であってもよく、好ましくは、3:1~6:1である。
【0065】
本発明に従って作成された二軸配向されたジオグリッドは、一方向に10kN/mの最小抗張力、及びシート出発材料が引き伸ばされた他の方向には同じか又はそれ以上の最小抗張力を有してもよい。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、ジオグリッドの開口は、ジオグリッドの面における開口の周りに少なくとも部分的に延び、かつその面から垂直に(又は少なくとも略垂直に)突出する薄い一体型ビーズと関連付けられる。このようなビーズは、(例えば、接合部又はコネクタにわたる)複数の細長い引張要素間のジオグリッドの領域の破砕(例えば、引き裂き)を防止するのに有益である。ビーズは、分子配向の方向に平行に伸びる細長い開口を備えた単軸ジオグリッドの場合に特に有益である。この場合、ビーズは、開口の反対端の周りに設けられてもよいが、それらの細長い側部に沿う実質的な範囲にまで設けられなくてもよい。ビーズは、開口の端部において最大高さを有してもよく、それら(ビーズ)が細長い側部に伸びる範囲で、側面に沿って距離を伸ばす前に、高さがゼロになるまで薄く(feather)されてもよい。典型的には、ビーズは、0.15~0.30mmの高さ及び0(すなわち、ビーズなし)~2.0mmまで、好ましくは、0.01~2.0mmの幅を有する。
【0067】
典型的には、ビーズは、ジオグリッドの1つの面にのみ設けられる。
【0068】
ビーズは、後でさらに詳しく説明するように、いわゆる「圧力マーク」として形成されてもよい。圧力マークの寸法、特に、深さは、その上にマークが作られる要素と比較して小さく、すなわち、マーク寸法は、その上にマークが形成されるジオグリッド要素の対応するそれぞれの寸法の低いパーセンテージ、好ましくは、10%以下、好ましくは、≦8%、より好ましくは、≦5%を形成することが理解される。比較され得る対応する寸法は、マーク幅対要素幅、マーク長さ対要素長さ、マーク深さ対要素厚さ、及び/又はジオグリッドの平面で見た要素の面積対マーク表面積を含んでもよい。例えば、圧力マークのパーセンテージ平面の表面積は、リブ/接合部の平面の表面積に比べて小さいため、ジオグリッドを備える他の要素の厚さと比較して圧力マークの厚さが大きくても、ジオグリッドの平均の厚さに大きな影響がない。これは、例えば、図3Aで確認できる。
【0069】
ジオグリッドを製造するための本発明の方法において、ポリマー出発シートは、ジオグリッド前駆体を製造するために、少なくとも1つの方向に伸張操作される。一般に、ポリマー出発シートは、無配向のポリマーである。シートが引き伸ばされると、分子配向されたポリマーのジオグリッド前駆体となる。ポリマー配向は、ジオグリッドがその製造後にさらされる通常の温度条件下では、例えば、保管、輸送及び使用中には、不可逆的となる。典型的には、ポリマー出発シートは、4~9mmの範囲の厚さを有するであろう(ただし、この範囲外の値は除外されていない)。与えられる引き伸ばしの程度は、ポリマー出発シートが作られるポリマーのタイプによって決定されてもよい。好ましくは、ポリマーは、伸張比が任意の方向に少なくとも4:1であり、より好ましくは、少なくとも5:1であり、さらにより好ましくは、少なくとも7:1であり、例えば、10:1~12:1の範囲で利用され得るようなタイプ(例えばHDPE)のものである。単軸ジオグリッドを製造する場合、引き伸ばしは1方向に、通常はポリマー出発シートの長さ方向にのみ行われる。代替的に、二軸ジオグリッドの場合、ポリマー出発シートは、2つの横方向に伸ばされてもよい。
【0070】
理想的には最終的なジオグリッドの唯一の開口は、後の開口形成ステップで作成されるものであるため、ポリマー出発シートを準備するために使用されるポリマー材料は、伸張操作中に「開かれる(open out)」原因となる開口が材料にない(又は有意にない)ものであるべきであり、これについては、以下で詳しく説明する。
【0071】
ポリマー出発シートを引き伸ばしてジオグリッド前駆体を生成することは、従来の方法で行われてもよい。したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、ポリマー出発シートは、第1に上流で第2に下流のローラのセットのニップを(材料を軟化させるために必要に応じて加熱した後で)通過させられるウェブの形態にあり、下流のローラは上流のローラよりも速い周速で回転する。周速の違いによって、ジオグリッドの前駆体要素に与えられる伸張比が定義される。幅の拘束は、ポリマー出発シートがローラ間で引き伸ばされている間に適用され得るが、必須ではない(幅の拘束がない場合、ジオグリッド前駆体要素の周縁領域がある程度厚くなる可能性があるが、こうした領域はトリミング可能である)。製造されるジオグリッドが単軸ジオグリッドである場合、この伸張操作は、ジオグリッド前駆体の作成に用いられる唯一の伸張操作であり得る。しかしながら、作成されるジオグリッドが二軸ジオグリッドである場合、二軸ジオグリッドの作成においてよく理解されるように、続いて横方向に引き伸ばされ得る。あるいは、横方向の引き伸ばしは、長手方向の引き伸ばしの前に又はそれと同時に行われてもよい。このようにして、テンターで伸張操作を行うことが可能である。
【0072】
必要に応じて、ジオグリッド前駆体又はジオグリッド前駆体に開口部を形成することにより生成されたジオグリッドは、ジオグリッド又は前駆体の主要面の一方又は両方に表面形状形成、例えば、隆起、溝、突起及び/又は刻み目を設ける処理が施されてもよい。理論的には、形状処理はいつでも実行され得るが、ジオグリッド又はジオグリッド前駆体を引き伸ばしてポリマーを配向させた後で行うことが強く推奨される。このような表面形成は、使用時に埋め込まれる粒状材料内でのジオグリッドの摩擦保持を向上させるという点で潜在的に有益である(例えば、土壌と相互作用する場合のジオグリッドの摩擦係数を高める)。
【0073】
本発明のジオグリッドを生成するために、(上記のように生成された)ジオグリッド前駆体には、最終的なジオグリッド構造を生成するために開口形成ステップが行われる。単軸ジオグリッドを生成するには、開口は細長く、理想的にはジオグリッド内の分子配向に平行に、すなわち、シート前駆体が引き伸ばされた(単一の)方向に平行に延びる必要がある。開口は、例えば、40~400mm(好ましくは、50~200mm)の長さ、及び5~100mm(好ましくは、5~50mm、より好ましくは、2~10mm)の幅を有してもよく、一般に幅の値は長さの値よりも小さいことが理解されるであろう。開口の深さは、ジオグリッド前駆体の厚さによって決まり、0.1~3mmになってもよい。開口の対向する長手方向のエッジは、例えば、0.1~10mm、好ましくは、0.1~3mmの間隔を空けられてもよい。
【0074】
(最終的なジオグリッドメッシュ構造を形成するための)ジオグリッド前駆体における開口の形成は、適宜の技術によって行われてもよい。使用され得るこのような技術の非限定的な例は、以下のように、雄パンチ/雌ダイツールを備えた従来の往復パンチプレス、回転する雄パンチ/雌ダイローラを備えた回転パンチ、プレーンローラに対するダイローラの回転「キス」切断、穴又は穴の端の周りの領域の超音波切断、穴又は穴の端の周りの領域のレーザ切断、機械方向の引張要素間の横方向バーの局部領域の赤外線加熱、ウォータージェット切断である。
【0075】
好ましくは、開口部はパンチによって形成され、特に、その理由は、これにより少なくとも部分的に開口の周りに延びかつジオグリッドの表面に対して少なくとも略垂直に突出して、(例えば、引き裂きによる)破砕を防ぐように作用する上述の一体型ビーズを(「圧力マーク」として)容易に形成できるからである。「圧力マーク」としてのビーズの形成は、ポリマーの分子配向の方向に対して横方向に(好ましくは、垂直に)延びる(狭い)終端を有する細長い開口を備えた単軸配向されたジオグリッドの製造の場合に特に好都合である。この場合、形成された「圧力マーク」は、開口の終端エッジの周り(ポリマーの配向のためにジオグリッドが最も裂けやすい場所である)に広がり、開口の細長い側部に沿ってごく短い距離で高さがゼロになるように薄くされる。
【0076】
圧力マークの形成はシートのパンチにおいてよく理解されている現象であるが、圧力マークは、通常、ポリマーメッシュ構造における引き裂き抵抗の抑制には関連していない。パンチされるシートには第1面と第2面があり、パンチツールが第1面から入ってシートを通過することを検討する。圧力マークは、少なくとも部分的に開口のエッジの周囲で材料の2番目の側から突出するビーズ(すなわち、圧力マーク)を形成するために、パンチされた開口のエッジでの(グリッドを形成する)シートの材料の局所的な変形である。配向されたポリマー材料のパンチにおいて、圧力マークは、開口のエッジがポリマーの配向に垂直である場合に最も顕著(すなわち、最大の高さ)であり、開口のエッジがポリマーの配向に平行である場合にあまり顕著ではない(存在しない場合がある)。
【0077】
従来のパンチ技術によれば、シートの第1の側にストリッパプレートがあり、第2の側にダイプレートがあり、それより各パンチツールがストリッパプレートにおけるそれぞれの開口を通過して、シートを通過し、次いでダイプレートにおいて整列した開口に入ることができるように、それぞれの開口が整列している。
【0078】
運動の1サイクルで、パンチツールはストリッパプレートを通過し、シートに開口をパンチし、ダイプレートにおける開口を通過し(パンチされた材料はシートの第2の側で除去される)、シートを通って戻って、次いでストリッピングプレートに入り、これにより次の運動のサイクルが始まる前にツールに付着している材料が除去される。圧力マークは、ストリッパプレートとシートの第1の側との間に小さなクリアランス(例えば、2~5mm)がある場合により容易に形成される。パンチがシートに入ると、前述のクリアランスにより材料の垂直変位が可能になり、圧力マークが形成される。しかしながら、ストリッパプレートは、パンチが引き抜かれるときに、ダイプレートに対してシートをクランプするという主要な目的も満たしている。
【0079】
ジオグリッドを形成するための本発明の方法は、連続的プロセスとして行われてもよく、ジオグリッド前駆体を形成するためにポリマー出発シートが上流の「引き伸ばしステーション」で(例えば、記載されたやり方で)引き伸ばされ、その後連続的にジオグリッドを形成するために開口がジオグリッド前駆体に形成される下流の「開口形成ステーション」に送られる。このようなプロセスは、(例えば、ポリマー材料の顆粒から)ポリマー出発シートを生成するための上流の「シート形成」ステーションを含んでもよく、その後連続的に、ポリマー出発シートは「引き伸ばしステーション」に送られる。しかしながら、ジオグリッドの製造が連続的なやり方以外で行われる可能性を排除するものではない。したがって、例えば、ジオグリッド前駆体要素が、ある製造サイトで生成され、(ジオグリッドを形成するために)別のサイトで開口されてもよい。
【0080】
本発明のジオグリッドを使用して、ジオエンジニアリング構造物、例えば、斜面、堤防、モジュール式ブロック又はパネル擁壁、又は任意の他の適切な地盤構造のために、粒状材料を安定化又は補強することができる。しかしながら、単軸ジオグリッドを特に参照すると、従来の単軸ジオグリッドは、無配向の太い横方向バーを有しており、これは、従来の単軸ジオグリッドをコンクリートブロックのような建設物に取り付けるために使用されるコネクタと係合し得る。本発明による単軸ジオグリッドの場合、無配向ポリマーの厚い横棒はなく、ジオグリッドがコネクタの周りに巻き付けられる「キャプスタンラップ」接続を介して、又は単にブロック若しくは構造の他の表面要素間の摩擦力によって、又はオーバーラップジョイントの場合には粒状材料からの追加圧力によって、必要な接続を行うことができる。
【0081】
前の段落で使用された「粒状材料」という用語には、土壌、骨材、岩、石、砂利、砂、土、粘土、アスファルト若しくはセメント等の結合剤で保持される骨材、コンクリート、又は地盤工学若しくは建物に使用される任意の他の粒状若しくは粘着性材料が含まれる。これは「充填材料」と呼ばれることがある。
【0082】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の本発明のジオグリッド(好ましくは、強化及び/又は安定化された、(例えば、それにより機械的に安定化された、より好ましくは、それにより強化されたもの)を含むジオエンジニアリング構造物を広く提供し、このようなジオエンジニアリング構造物の非限定的なリストは、堤防基礎、線路バラスト及び/又はサブバラスト、路盤基礎、橋台、擁壁、急勾配(≧20度)の斜面、スリップリペア、スチールメッシュ面、ラップアラウンド面、段付き壁、壁及び傾斜、植生面、非植生面、モジュール式ブロック、パネル擁壁、マリンユニット、及び/又は蛇籠面から成るグループから選択される。
【0083】
本発明のさらに他の態様は、粒状材料及び/又はジオエンジニアリング構造物の及び/又はその下の、強化、安定化(選択的に機械的に安定化)、層の厚さの減少、寿命の増加、支持力の増加、不等沈下の制御、弱い堆積物を覆うこと、及び/又はボイドをスパンすることから成るグループから選択される少なくとも1つの目的のために、(本明細書に選択的に記載された)ジオエンジニアリング構造物を形成するために粒状材料を用いて本明細書に記載の本発明のジオグリッドの使用を広く提供する。
【0084】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し、かつ同じ意味を与えられるべきである。
【0085】
本明細書で言及される一体型メッシュ構造は、基本的にモノリシックであり、言い換えれば、単一ユニットの材料から成ることが理解されるべきである。メッシュ構造が相互接続するメッシュ画定要素から形成されると説明されている場合、「相互接続」という用語は、これらの要素が、構造の他の要素から区別可能ではあるが、同じモノリシックユニットの一部として全てが物理的に接続されていることを意味している。「相互接続」という用語は、要素が(例えば、機械的固定、接着又は溶接によって)互いに結合された個別のユニットであることを意味すると解釈されるべきではない。
【0086】
誤解を避けるために、本明細書で言及される一体型メッシュ構造は、(例えば、機械的固定、接着又は溶接プロセスの適用によって)互いに取り付けられる複数の分離可能な要素から成るものではない。また、本明細書で言及される一体型メッシュ構造は、(例えば、機械的固定、接着又は溶接プロセスの適用によって)様々なポイントでそれ自体に取り付けられた単一の要素から成るものでもない。
【0087】
文脈が明確にそうでないことを示さない限り、本明細書で使用される場合、本明細書の用語の複数形は、単数形を含むと解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
【0088】
本明細書で使用される「~を備え」、「~を備える」又は「~から成る」という用語は、それに続くリストが網羅的ではなく、任意の他の追加の適切な項目、例えば、必要に応じて、1つ以上のさらなる特徴、コンポーネント、成分、及び/又は置換基を含んでも含まなくてもよく、したがって、特定されたコンポーネントを含むが、それ以外の存在を除外するものではないことを意味していると理解されるであろう。「~から基本的に成り」又は「~から基本的に成る」という用語は、特定されたコンポーネントを含むが、不純物として存在する材料、コンポーネントの製造に使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、及び本発明の技術的効果を達成する以外の目的で追加されたコンポーネントを除く他のコンポーネントを除外することを意味する。典型的には、基本的に一連のコンポーネントから成る組成物は、100%である組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、より典型的には、5重量%未満、さらにより典型的には1重量%未満の非特定コンポーネントを含んでもよい。
【0089】
「~から成り」又は「~から成る」という用語は、他のコンポーネントを除いて特定されたコンポーネントを含むことを意味する。
【0090】
適切な場合はいつでも、「~を含む」、「~を含み」又は「~から成る」という用語は、「~から基本的に成り」、「~から基本的に成る」、「~から成る」又は「~から成り」という追加の意味を含むと解釈されてもよい。
【0091】
本明細書における本発明の検討において、反対に述べられていない限り、1つ以上の値が他方よりも好ましいことの指示と結合したパラメータの許可範囲の上限及び下限の代替値の開示は、前記代替値のより好ましいものとあまり好ましくないものとの間にある前記パラメータの各中間値が、それ自体が前記あまり好ましくない値よりも及びあまり好ましくない値及び前記中間値のそれぞれよりも好ましいという暗示として解釈されるべきである。
【0092】
本明細書で与えられたパラメータの全ての上限及び/又は下限について、境界値は各パラメータの値に含まれる。また、本発明の様々な実施形態において本明細書に記載されたパラメータの好ましい及び/又は中間の最小及び最大境界値のすべての組み合わせが、このような値の組み合わせが本明細書で具体的に開示されているかどうかにかかわらず、本発明の他の様々な実施形態及び/又は設定に関する各パラメータの代替範囲を定義するために使用され得ることも理解されるであろう。
【0093】
本明細書でパーセンテージとして表された量の合計は、(丸め誤差を考慮して)100%を超えることができないことを理解されるであろう。例えば、本発明の組成物(又はその一部)が含む全てのコンポーネントの合計は、組成物(又はその同じ部分)の重量(又は他の)パーセンテージとして表した場合、丸め誤差を考慮して合計100%になる。しかしながら、コンポーネントのリストが網羅的でない場合、このようなコンポーネントのそれぞれのパーセンテージの合計は100%未満になり、本明細書に明示されていない可能性がある追加のコンポーネントの追加量に関する所定のパーセンテージを許容し得る。
【0094】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、その多くの量又は割合を意味する量又は実体を指し得る。それが使用される文脈に関連している場合、「実質的に」は、(説明の文脈で言及するどのような量又は実体に関しても)関連する全体の少なくとも95%、特に、少なくとも96%、より詳細には、少なくとも97%、さらにより詳細には、少なくとも98%、最も詳細には、少なくとも99%、例えば、約100%の割合を量的に含むことを意味すると理解され得る。類推的に、「実質的に含まない」という用語は、それが示す量又は実体が関連する全体の10%未満、好ましくは、8%未満、より好ましくは、5%未満、詳細には、4%未満、より詳細には、3%未満、さらにより詳細には、2%未満、最も詳細には、1%未満、例えば、約0%を含むことを同様に示し得る。
【0095】
明確のために1つ以上の別個の実施形態の文脈で記載され得る本発明の所定の特徴は、本明細書に記載される又はされていない(複数の)他の実施形態と組み合わせて提供されてもよいことが理解されるであろう。逆に、簡潔のために単一の実施形態の文脈で組み合わせて記載されている本発明の様々な特徴は、本明細書に記載される又は記載されていない(複数の)さらに他の実施形態で別々又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。本発明の1つ以上の態様及び/又は実施形態の文脈で記載された(複数の)特徴は、このような特徴が好ましい及び/又は類似の技術として記載されているかどうかにかかわらず、本発明の(複数の)他の態様及び/又は実施形態にも適用される。
【0096】
実施形態は、特定の例を参照して説明の中で開示されているが、本発明は、それらの実施形態及び/又は例に限定されないことが認識されるであろう。したがって、本明細書に記載の本発明の最も広い範囲と本明細書に記載の実施形態及び/又は例のそれぞれとの間の全ての中間的な一般化は、本発明を含むものと見なされる。本発明の任意の他の実施形態に適用され得る本発明の任意の実施形態に記載されている任意の特徴の組み合わせ及び/又は混合物は、類推又はそれ以外であるかにかかわらず、本発明を含んでいる。
【0097】
使用される材料及び詳細は、本発明によって開示及び教示される方法及び/又は組成物から逸脱することなく、記載からわずかに異なるか又は修正され得ることが理解されるであろう。
【0098】
本発明の他の多くの変形及び/又は実施形態が当業者には明らかであり、そのような変形は本発明の広い範囲内で考慮される。様々な修正が当業者に明らかになり、本発明の実施から得られてもよく、そのような変形は、変形が請求項の文言的意味の外にあっても適用可能な現地法の下で許可されるように、本発明の広い保護範囲内で考慮される。本願に記載の任意の実施形態、例示及び/又は好ましい特徴から、そのような変形がそのような保護の範囲から除外されるという推論はなされるべきではない。
【0099】
本発明のさらなる態様及びその好ましい特徴が本明細書の請求項に与えられており、これは、このような請求項が本明細書の記載の一部に直接対応するかどうかにかかわらず、本発明の開示の不可欠な部分を形成している。
【0100】
本発明は、本明細書に記載される以下の非限定的な例及び添付の図面も参照して、単なる例としてさらに記載される。
【0101】
本明細書で参照される図では、参照番号のいくつかは以下の要素を指す。1は一般にジオグリッドを示す。2はリブ構造を示す。3はバー構造を示す。4は細長い開口を示す。5は接合部を示す。6はリブセグメント又はストランドを示す。7はバーセグメントを示す。10は圧力マークを示す。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1図1は、本発明による単軸ジオグリッドの一部を示している。図1では、所定の寸法がラベルで示されており、「c」は細長い開口の長さを示し、「d」はバー構造の幅を示し、「e」はリブ構造の幅を示している。図1に示す特定のジオグリッドの場合、cは210mmであり、dは16mm、eは9.5mmである。
図2図2は、図1に示すジオグリッドの裏面の一部を拡大して概略示している。
図3a図3aは、図2の線A-Aにおける断面図である。
図3b図3bは、図2の線B-Bにおける断面図である。
図4図4は、例1で作成されたジオグリッドのサンプルの写真であり、スケールために定規の隣に示されている。
図5図5は、例1に従って作成されたジオグリッド及び従来の単軸ジオグリッドの比較強度の両方に関する抗張力(y軸)対引張ひずみ(x軸)のグラフである。図5では、本発明のジオグリッドの短期抗張力特性(11とラベル付けされたグラフの一番上の線)と従来のHDPE単軸強化ジオグリッド(13とラベル付けされたグラフの一番下の線として示される)を比較している。
図6図6は、本発明によるジオグリッド及び従来の単軸ジオグリッドのクリープデータを示しており、両方とも荷重60%かつ20℃で試験された。図6では、一般的に15でラベル付けされかつ菱形で示されるデータ(の一番上の線)は、TensarからRE560という商品名で市販されている従来の単軸ジオグリッドから生成されたデータであり、ジオグリッドは図6のラベル19で示された時間に破断した。一般的に17でラベル付けされかつ三角形で示されるデータの一番下の線は、本発明によるサンプルから生成されたデータであり、ジオグリッドは図6のラベル21で示された試験の期間後にもまだ存続していた。
図7図7は、(縦座標でのlog10(時間)対横座標でのlog10(荷重)としてプロットされた)クリープデータのプロットであり、先行技術のジオグリッド(従来のHDPE単軸強化ジオグリッド)であって、ラベル23で概略示されかつ図7において左側に破線でプロットされたデータと、本発明によるジオグリッドであって、ラベル25で概略示されかつ図7の右側に実線でプロットされたものとのクリープ性能を比較している。本発明のクリープデータであるデータセット25では、十字は、10時間後の最大抗張力(UTS)の72%又はlog10(荷重)=1.86を示す。従来のHDPE単軸ジオグリッドのクリープデータであるデータセット23では、十字は、10時間後のUTSの47.5%又はlog10(荷重)=1.68を示す。
図8図8は、延伸比、すなわち、その要素の分子配向度を決定するために使用される復帰試験の前後の本発明のジオグリッドのリブ要素の写真である。図8の写真は、写真で見られかつ本明細書で参照される寸法が明示されるように、図8A(復帰前の長いリブ要素)と図8B(復帰後の短いリブ要素)とに再描画されている。写真(図8)では試験前のリブ要素の側部エッジのスカラップが見て取れるが、明確のために対応する図面(図8A)では省略されている。図8に示すリブ要素の寸法は、配向された要素の事前試験(図8Aに示す)において、「f」(リブ出発長さ)、「g」(リブ出発幅)、及び「h」(バー出発幅)とラベル付けされている。そして、試験後の復帰要素(図8Bに示す)において、「i」(リブ最終長さ)、「j」(リブ最終幅)、「k」(バー最終幅)とラベル付けされている。図8の写真に示されている特定のリブ要素の場合、事前試験(図8A)において、fは108mmであり、gは14mmであり、hは6mmである。そして、事後試験(図8B)において、iは11mmであり、jは15mmであり、kは0.6mmである。しかしながら、「f」から「k」までの寸法の異なる値も、本発明によるジオグリッドの他のリブ要素の復帰試験で得られ得ることが理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0103】
図1は、単一方向MD(MDは「機械方向(machine direction)」の略語である)に材料を分子配向するように、図1の矢印で示される単一方向にプラスチックシート出発材料を引き伸ばし、それに続いて引き伸ばされた材料に細長い開口を形成することにより作成された本発明による単軸配向ジオグリッド1の一部を示す。ジオグリッド1は、機械方向MDに略平行に延びるリブ構造2を備える。リブ構造2は、互いに横方向に間隔を空けられ、横方向(TD)に延びるバー構造3によって一定の間隔で接続され、それによって曲がり角を有する長手方向に延びる複数の細長い開口4がジオグリッドに画定される。図1にさらに示されるように、リブ構造2及びバー構造3は、ジオグリッド1の接合領域5で交わる。各リブ構造2は、バーグリッド構造3と同様に、ジオグリッド1全体にわたって連続している。したがって、接合部5は、同時にリブ構造2とバー構造3の両方の一部であると見なされる。図1に示されるように、各リブ構造2は、リブセグメント又はストランド6と接合部5の交互配置から成り、各バー構造3は、接合部5とバーセグメント7の交互配置から成る。
【0104】
代替的に表現すると、図1に示されるジオグリッド1は、バーセグメント7が隣接するリブ構造間の「コネクタ」として機能しているリブ構造2を含むと見なされてもよい。
【0105】
ジオグリッド1について留意すべき点がいくつかある。第1に、ジオグリッドは略均一な厚さを有する。不均一性からの逸脱は、(ジオグリッドが生成される)ウェブ材料が長さ方向の引き伸ばし中に幅方向に拘束されない場合に生じる可能性が高く、その場合、引き伸ばされたウェブの周辺エッジ領域は中央領域よりもわずかに厚くてもよい(こうした周辺エッジは市販製品からは除去されてもよい)。また、開口の部分の周りに厚さの局所的な不均一性があり得る。第2に、MD方向の配向度はジオグリッド全体で同じである。
【0106】
したがって、図1の単軸ジオグリッド1は、接合部が厚くなっているのではなく均一に「平坦」であるという点で、従来の単軸ジオグリッドとは異なることが理解されるであろう。さらに、MD方向の配向は、リブ構造2の長さに沿って、及びジオグリッド全体にわたって均一である。したがって、従来の単軸ジオグリッドとは対照的に、リブ構造に沿って(MD方向に進んで)配向は変化しない。さらに、これに関連して、無配向のポリマーがジオグリッドの強度にあまり貢献せず、従来の単軸ジオグリッドの厚くなった接合部及びバーセグメントにカプセル化されるという従来の単軸ジオグリッドの欠点を本発明のジオグリッドは回避する。
【0107】
次に、図2を参照すると、図1に示されたタイプのジオグリッド1の裏面の一部が大幅に拡大して概略示されており、図3aを参照すると、図2の線A-Aの断面図が示されている。図2には、引張要素を提供するリブ構造2、隣接するリブ構造2に対して横方向に延びる(及び接続する)コネクタ要素7、及び細長い開口4が示されている。図2に示されたジオグリッドは、ジオグリッド1の片側の開口4の端部領域に沿って圧力マーク10が形成されるような条件下でパンチ操作により作成されたものである。図2、3a及び3bから理解されるように、圧力マーク10は、実際には、ジオグリッド1を形成するポリマーのビーズであり、ポリマーはそれが設けられている表面から突出している。圧力マーク10は、リブ構造2に対して横方向の範囲に沿って最大の高さを有し、リブ構造のエッジに沿ってごく短い範囲の後でゼロの高さに達するように開口4の角を回るにつれて高さが減少する。特に、図3bを参照。
【0108】
圧力マーク10は、開口の端部に補強を提供し、そのためコネクタ7(バーセグメント)が一端から他端まで引き裂かれることを防ぐ。
【0109】
図2、3a及び3bには示されていないが、圧力マーク10は、ジオグリッドの同じ側において開口の各端部に設けられることが理解されるであろう。
【0110】
[例1(図1、2、3a、3b、及び4)]
この例では、本発明の方法を使用して、不定長、幅1515mm、及び公称厚さ6.35mm(断面積は約9620mmとなる)を有する高密度ポリエチレン(HDPE)の押し出しされた初期無配向のシートからジオグリッドを作成した。
【0111】
(第1のステップ)
プロセスの第1のステップでは、無配向のHDPEのシートは、約105℃の温度に加熱され、次に、冷却前に約10:1の公称延伸比で(長さ方向LD又はMDに)延伸された。延伸ステップの間、幅に対する制約はウェブに適用されなかった。次に、配向されたウェブのサンプルが切断され、プロセスの第2ステップ(以下を参照)でさらに処理された。
【0112】
配向されたウェブの幅は1249mmであり(1515mmの開始幅と比較した減少は、延伸プロセス中の幅の制約がなかったためである)、配向されたウェブは、中央におけるよりも外側の周辺領域(各エッジの約50mm内側)においてやや厚くなったことに留意されたい。
【0113】
配向されたウェブの平均厚さは0.76mmと決定され、断面積は約949mmとなった。これは出発材料における約9620mmの断面積に匹敵し、したがって、約10:1の予想延伸比が確認された。
【0114】
(第2のステップ)
プロセスの第2のステップでは、最初のステップで得られた配向されたHDPEのシートのサンプルに穴が開けられ、図1に示されたジオグリッド1が生成された。開口4の長さは約210mm、幅は約9.5mmであった。横方向コネクタ7は、約16mmの幅(すなわち、MD方向に垂直なその寸法)を有していた。
【0115】
穿孔は、25.4mmの長さを有する並列に一致したパンチ及びダイを備えた穿孔ステーションにサンプルを(長さ方向LD又はMDに)供給することによって行われた。パンチは曲がった端を有しており、中間点の幅が両端よりも狭くなった腰部を形成している。ジオグリッドを作成するために、パンチステーションは、単一のストロークの後に連続13の14.6mmのインデックスストロークが続き、その後に41.28mmのより大きな単一のインデックスが続いて横方向バーを形成するようにプログラムされた。パンチツールは、その端部の幅の中間の狭い幅のわずかな腰部を形成する開口を形成した(パンチは対応する腰部形状を有している)。
【0116】
図4は、この方法によって得られたジオグリッドの写真であり、開口4の側部エッジがわずかにスカラップ状の形状を有することを示している。これは、シートが穿孔ステーションをMDに通過して細長い開口4を形成する際に、連続したインデックスストロークで腰部形状のパンチ及びシートの(MDでの)相対位置の重複のためである。
【0117】
[例2(図5)]
壁又は斜面等における土壌補強用途を目的とした単軸ジオグリッドの場合、ジオグリッドの材料の2つの特性が特に有益である。第1は短期抗張力であり、第2は製品の長期「クリープ」性能に利用可能な短期抗張力のパーセンテージである。
【0118】
この例は、例1に従って生成されたジオグリッドから切断されたリブセグメントの短期張力試験を示しており、その結果をTensar International LtdからRE560の名称で市販されている従来の単軸ジオグリッドで得られた結果と比較している。例1に従って生成されたジオグリッドからISO10319に準拠して張力試験片が切り出された。張力試験は、Instronから入手可能な試験機でISO10319に準拠して実行され、顎部は、ISO10319規格に準拠して試料ゲージ長の20%の割合で相対的に引き離された。結果を以下の表に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
比較の目的で、図5は、同じポリマー(HDPE)から生成され、かつTensarが作成する単軸ジオグリッドのうち、抗張力の点で例1の製品に最も一致するTensarによって作成された単軸ジオグリッドから切断された同じ長さのリブセグメントに関して得られたものによる上記の張力試験の結果の複合プロットを示す。6.35mmのシートが10:1に配向されると、それによって生じたパンチ形状は、4.05mmのシートから作成された従来の単軸製品と同様の強度を有していた。
【0121】
図5は、先行技術のRE560製品(下側の破線13)の母集団平均データの集合と比較して、本発明(上側の実線11)に従って作成されたジオグリッドから切り取った試験片の張力結果の複合プロットを示している。
【0122】
図5のデータは、試験された2つの材料の短期抗張力の材料効率(潜在的な材料効率の利点)が、短期抗張力を単位面積あたりの質量で割ることによって計算できることを示している。
【0123】
本発明=(85.4/0.50)=171(kN/m)/(kg/m
RE560=(94.0)/0.62=152(kN/m)/(kg/m
したがって、同等の強度の従来の単軸製品に対する本発明のジオグリッドの短期張力効率の向上は、ポリマーの重量に基づいて約12.5%である。
【0124】
さらに、図5は、本発明の製品の張力曲線がはるかに「硬い」ことを明確に示しており、同じパーセンテージのひずみにおいて、抗張力は、本発明のジオグリッド(プロット11)の場合、従来の同等の強度の単軸(プロット13)の場合よりもよりも20%~30%高くなっている。最大荷重でのひずみも大幅なパーセンテージで低下しているが、最大抗張力は10%以内であり、すなわち、従来の同等の単軸製品の94.0kN/mと比較して、本発明の製品の場合は85.4kN/mである。
【0125】
[例3(図6)]
この例は、従来の同等強度の単軸製品のものと比較して、例1に従って作成されたジオグリッドのクリープ特性を示している。
【0126】
例1に従って作成されたジオグリッドのサンプルは、短期抗張力の60%に対応する荷重を使用して、20CでBS EN ISO 13431:1999に準拠して静的クリープ試験を受けた。比較のために、従来の同等の強度の単軸ジオグリッド(RE560)の例が、その短期抗張力の60%に対応する荷重及び同じ20°Cの温度にさらされた。その結果は、ひずみ(y軸)対時間(x軸)のプロットである図6に示されており、上側のプロット(菱形15)は先行技術のジオグリッドRE560によって生成されたデータであり、下側のプロット(三角形17)は例1のジオグリッドによって生成されたデータである。
【0127】
図6の2つのデータプロット(15、17)の比較は、本発明に従って作成されたジオグリッド(データ17)が従来の構造のジオグリッドRE560(データ15)よりはるかに低いひずみを示すことを実証している。これは主に、従来のジオグリッド構造のバー内に固定された無配向のポリマーの貯蔵によるものである。また、従来のジオグリッドは約90時間で破裂したが(データム19)、本発明に従って作成されたジオグリッドは、約11000時間でまだ存続しており、2対数周期を超える増加(データム21)が見て取れる。
【0128】
[例4(図7)]
BS EN ISO 13431:1999に準拠して実行された従来の静的クリープ荷重は、PD ISO/TR 20432:2007に準拠してクリープ減少係数RFcrを確立するように、TTS(Time Temperature Superposition)クリーププログラムの一部を形成した。RFcrを確立するプロセスの一部として、前述のTTSクリーププログラムに加えて、クリープ試験の段階的等温法クリープ試験(Stepped Isothermal Method;SIM)プログラムもASTM D6992-03に準拠して実行された。
【0129】
図7は、従来のHDPE単軸補強ジオグリッド(破線23)と比較して、本発明に従って作成されたジオグリッド(実線25)について得られた複合SIM/TTSクリープ回帰プロットを示す。本発明に従って作成されたジオグリッドは、20°Cにおいて10時間で72%のRFcrを有するが、従来の単軸ジオグリッドは20°Cにおいて10時間で47.5%のRFcrを有する。
【0130】
図7のデータは、短期抗張力にクリープ減少係数を乗じると、従来のHDPEジオグリッドと比較して本発明のクリープ抵抗が大きいため、試験した2つの材料の潜在的な長期材料効率の利益がさらに大きくなることを示している。
【0131】
本発明=(85.4*72%)/0.50)=123(kN/m)/(kg/m
RE560=(94.0*47.5%)/0.62)=72(kN/m)/(kg/m
したがって、同等の強度の従来の単軸製品に対する本発明のジオグリッドの長期クリープ制限張力効率の向上は、ポリマーの重量に基づいて約60%である。
【0132】
[例5(図8、8A及び8B)]
分子配向の収縮復帰試験
図8は、本発明のジオグリッドからの引張要素(リブ及びバー)の単一の試験を示す写真であり、この要素は、配向されたHDPEから作られる(図8の右側の大きな要素、図8Aとしても描かれている)。要素を150℃で60分間保持して要素が収縮するようにポリマーを復帰させ、復帰した要素は図8の左側に示されている(図8Bとしても描かれている)。機械方向(MD)における要素のリブ部分の出発長さは108mm(図8Aで「f」とラベルされた寸法)であり、試験終了時の長さ(仕上げ長さ)は11mm(図8Bで「i」とラベルされている)であり、これは9.8:1の延伸比である。製造中のリブの実際の延伸比は10:1であったので、この試験の精度は2%以内である。横方向(TD)のリブの出発幅は14mmであったが(図8Aで「g」とラベルされている)、仕上げ幅は15mmであり(図8Bで「j」とラベルされている)、これは0.93:1の拡張である。これによって、このリブのポリマーがTDで実質的に無配向であることが確認される。同じ要素のバー部分の寸法も、マイクロメーターを使用して測定すると、MD方向に6mmの初期幅(図8Aで「h」とラベルされている)と0.6mmの仕上げ幅(図8Bで「k」とラベルされている)と測定され、これは10:1の延伸比である。これにより、要素のバー部分が要素のリブ部分とMDで同じ配向を有していたことが確認される。バーの出発厚さは0.8mmであり、復帰後の仕上げ厚さは6.5mmであった。これは、ポリマーを配向するために引き伸ばされる前のポリマーシートの公称厚さ6.35mmに近く、MDでの延伸比も確認される。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図8A
図8B