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特許7210603触覚フィードバックを使用してタッチ入力を検出し当該タッチ入力に応答するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】触覚フィードバックを使用してタッチ入力を検出し当該タッチ入力に応答するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230116BHJP
   G06F 3/045 20060101ALI20230116BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/045 D
G06F3/01 560
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020546911
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019021466
(87)【国際公開番号】W WO2019173781
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】62/640,138
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516091916
【氏名又は名称】センセル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SENSEL,INC.
【住所又は居所原語表記】321 Soquel Way,Sunnyvale,California 94085,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ,イリア,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ザラガ,ジョン,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ブローガン
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ジェームズ
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0285848(US,A1)
【文献】国際公開第2012/081182(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/186844(WO,A1)
【文献】特開2004-310518(JP,A)
【文献】特開2002-149312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0344115(US,A1)
【文献】特開平11-212725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/045
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ入力を検出して触覚フィードバックで応答するシステムであって、
・シャーシに配置され、第1の極性方向に配置された第1の磁石と、前記第1の磁石に隣接してかつ前記第1の磁石から横方向にオフセットして前記シャーシに配置され、第2の極性方向に配置された第2の磁石とを備える磁気要素と、
・基板と、
・前記基板とタッチセンサ面との間に配置され、前記タッチセンサ面上にわたって検知電極および駆動電極のペアのアレイが配置されたタッチセンサと、
・前記タッチセンサ面の下方で前記基板に結合されたインダクタであって、前記磁気要素に磁気的に結合するように構成されたインダクタと、
・前記基板を前記シャーシに結合するカプラであって、前記タッチセンサ面にほぼ平行な振動面内で柔軟性を有し、かつ前記インダクタを前記第1の極性方向に配置された前記第1の磁石及び前記第2の極性方向に配置された前記第2の磁石の上方に配置するカプラと、
・前記磁気要素と前記インダクタとの間に介装され、前記磁気要素と前記インダクタとの間の直接的な接触を防止するよう構成された低摩擦層と、
・前記インダクタに結合されたドライバと、
・コントローラとを備え、前記コントローラは、
前記検知電極および駆動電極のペアのアレイうち、前記タッチセンサ面上の第1の位置の下方にある、前記検知電極および駆動電極の第1のペア間の第1の抵抗の変化に基づいて、第1の時間に前記タッチセンサ面上の第1の位置における第1の入力の印加を検出し、
前記第1の抵抗の変化の大きさに基づいて、前記第1の入力の第1の力の大きさを解釈し、
前記第1の時間に、前記タッチセンサ面上の第1の位置および前記第1の入力の第1の力の大きさを示す第1のタッチ画像を出力し、
前記第1の入力の第1の力の大きさが最小力の閾値を超えることに応答して、第1の時間に、前記インダクタを分極するように前記ドライバをトリガして、前記第1の極性方向に配置された前記第1の磁石を引き付け、前記第2の極性で配置された前記第2の磁石を反発することにより、前記シャーシに対して前記基板を前記振動面内で振動させる、
ように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記コントローラが、
・前記第1の入力の第1の力の大きさが前記最小力の閾値およびディープ入力の閾値の大きさを超えることに応答して、第1の時間に、第1の周波数で、第1の持続時間にわたり、前記インダクタを一時的に分極するように前記ドライバをトリガし、
・前記第1の入力の第1の力の大きさが前記最小力の閾値を超え、かつ前記ディープ入力の閾値の大きさ未満に低下することに応答して、第1の時間に、前記第1の周波数よりも大きい第2の周波数で、前記第1の持続時間よりも短い第2の持続時間にわたり、前記インダクタを一時的に分極するように前記ドライバをトリガすることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記磁気要素と前記シャーシとの間に配置された磁気シールドであって、前記磁気要素および前記インダクタによって出力される磁場を減衰させるように構成された磁気シールドをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
・シャーシをさらに含み、前記シャーシが、モバイルコンピュータのコンポーネントを含み、かつトラックパッドのキャビティを規定し、
・前記磁気要素が、前記トラックパッドのキャビティの底部に配置され、
・前記インダクタが前記磁気要素上のほぼ中央に配置され、かつ前記タッチセンサ面が前記トラックパッドのキャビティに架かるように、前記カプラが、前記トラックパッドのキャビティ内に前記基板を配置することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、
前記カプラが、可撓性膜を含み、この可撓性膜が、前記タッチセンサ面の外周の周囲に配置され、前記タッチセンサと前記トラックパッドのキャビティの内壁との間に介在し、前記タッチセンサと前記トラックパッドのキャビティとの間の間隙をダストの進入からシールするように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記カプラが、前記シャーシによって規定されたキャビティを横切って前記基板を吊り下げるように構成されたエラストマーのグロメットを含み、前記振動面内で柔軟性を有し、前記インダクタの分極解消に応答して前記基板を前記キャビティ内の中心位置に戻すように構成され、
前記基板が、剛性バッキングを含み、この剛性バッキングが、前記タッチセンサ面の反対側で前記タッチセンサにわたって配置されるとともに、前記タッチセンサ面上の物体の押し下げによる撓みに対して前記タッチセンサを支持するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、
・前記タッチセンサが、前記基板上に配置された検知電極および駆動電極のペアのアレイを含み、
・前記コントローラが、前記タッチセンサの反対側で前記基板に取り付けられ、
・前記システムが、前記基板と前記シャーシの間に延在し、前記シャーシ内に配置された電源に電気的に結合されたフレキシブル回路をさらに含み、
・前記コントローラが、
-前記タッチセンサの検知電極および駆動電極のペア間の電気的値を読み取り、
-前記タッチセンサの検知電極および駆動電極のペア間の電気的値に基づいて、一連のタッチ画像を生成し、
-前記フレキシブル回路を介して、前記シャーシに配置されたプロセッサに前記一連のタッチ画像を出力し、
・前記システムが、前記タッチセンサの反対側で前記基板に取り付けられたドライバであって、前記コントローラからのトリガに応答して前記フレキシブル回路を介して前記電源から前記インダクタに電流を間欠的に供給するように構成されたドライバをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、
・前記タッチセンサが、前記基板上に配置された検知電極と駆動電極のペアのアレイを含み、
・前記コントローラが前記シャーシ内に配置され、
・前記システムが、前記基板と前記シャーシとの間に延在し、前記コントローラと、前記シャーシ内に配置された電源とに電気的に結合されたフレキシブル回路をさらに備え、
・前記コントローラが、
-前記フレキシブル回路を介して、前記タッチセンサの検知電極および駆動電極のペア間の電気的値を読み取り、
-前記タッチセンサの検知電極および駆動電極のペア間の電気的値に基づいて、一連のタッチ画像を生成し、
-前記シャーシに配置されたプロセッサに前記一連のタッチ画像を出力するように構成され、
・前記システムが、前記コントローラに近接して前記シャーシに配置されたドライバであって、前記コントローラからのトリガに応答して前記フレキシブル回路を介して前記電源から前記インダクタに電流を間欠的に供給するように構成されたドライバをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記カプラが、エラストマー要素のセットを含み、このエラストマー要素のセットが、
・前記シャーシと前記基板との間に配置され、
・前記シャーシと前記基板に結合され、
・前記インダクタの分極に応答して前記振動面内で変形し、それにより、前記磁気要素の磁場と相互作用する過渡磁場を前記インダクタにもらして、前記振動面内で前記インダクタと前記磁気要素との間の力を生み出すように構成され、
・前記インダクタの分極解消に応答して、前記シャーシに対して中心位置に前記基板を戻すように構成され、
・前記タッチセンサ面に加えられた垂直方向の力を前記シャーシに伝達するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記インダクタが、エアインダクタを規定するマルチループワイヤコイルを含み、前記タッチセンサ面に対して垂直な対称軸を規定し、前記タッチセンサの反対側で前記基板に結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記基板がリジッド回路基板を含み、前記インダクタが、前記タッチセンサの反対側で前記基板の裏面に形成された平面スパイラルコイルを含むことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記磁気要素が細長いハルバッハ配列を含み、前記インダクタが、前記振動面に対して平行な平面内に、前記磁気要素の長軸に平行な細長いトーラスの形態のコイルを含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記コントローラからのトリガに応答して前記インダクタに電流を間欠的に供給するように構成されたドライバをさらに含み、
前記コントローラが、前記タッチセンサ面上のタッチ入力の検出に応答して、前記ドライバをトリガして、第1の持続時間にわたって、第1の方向に前記インダクタを分極し、第2の持続時間にわたって、前記第1の方向と反対の第2の方向に前記インダクタを分極するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムにおいて、
・前記タッチセンサが、前記基板上に配置された検知電極および駆動電極のペアのアレイを含み、
・前記コントローラが、
-スキャンサイクル中に、前記タッチセンサの検知電極および駆動電極のペア間の電気的値を読み取り、
-スキャンサイクル中に前記インダクタの電圧の変化を検出し、
-前記タッチセンサ面上の第1の位置の下方に配置された前記タッチセンサの第1の検知電極および駆動電極のペア間の電気的値の変化に基づいて、前記タッチセンサ面上の第1の位置でタッチ入力を検出し、
-スキャンサイクル中の前記インダクタの電圧の変化を、前記タッチセンサ面に加えられたタッチ入力の力の大きさに変換し、
-スキャンサイクルについて、前記第1の位置および前記タッチ入力の力の大きさを示す第1のタッチ画像を生成し、
-前記タッチ入力の力の大きさが閾値を超えることに応答して、前記インダクタを分極して、前記シャーシに対して前記基板を前記振動面で振動させるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムにおいて、
・前記インダクタが、前記基板の第1のエッジの近傍に配置され、
・前記システムが、
-前記シャーシに堅固に結合され、かつ前記磁気要素からオフセットされた第2の磁気要素と
-前記タッチセンサ面の下方で前記基板に結合され、前記第1のエッジとは反対側の前記基板の第2のエッジの近傍に配置され、かつ前記第2の磁気要素と磁気的に結合するように構成された第2のインダクタとをさらに含み、
・前記コントローラが、
-前記基板の第1のエッジの近傍の前記タッチセンサ面上のタッチ入力の検出に応答して前記インダクタを選択的に分極して、前記シャーシに対して前記基板を前記振動面内で振動させ、
-前記基板の第2のエッジの近傍の前記タッチセンサ面上の第2のタッチ入力の検出に応答して前記第2のインダクタを選択的に分極して、前記シャーシに対して前記基板を前記振動面内で振動させるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
タッチ入力を検出して触覚フィードバックで応答するシステムであって、
・シャーシに堅固に結合されたインダクタと、
・基板と、
・前記基板とタッチセンサ面との間に配置されたタッチセンサと、
・前記タッチセンサ面の下方で前記基板に結合された磁気要素であって、前記インダクタに磁気的に結合するように構成された磁気要素であって、前記インダクタが、
前記シャーシに配置され、第1の極性方向に配置された第1の磁石と、前記第1の磁石に隣接してかつ前記第1の磁石から横方向にオフセットして前記シャーシに配置され、第2の極性方向に配置された第2の磁石とを備える、磁気要素と、
・前記基板を前記シャーシに結合するカプラであって、前記タッチセンサ面にほぼ平行な振動面内で柔軟性を有し、かつ前記インダクタを前記第1の極性方向に配置された前記第1の磁石及び前記第2の極性方向に配置された前記第2の磁石の上方に配置するカプラと、
・前記磁気要素と前記インダクタとの間に介装され、前記磁気要素と前記インダクタとの間の直接的な接触を防止するよう構成された低摩擦層と、
・前記タッチセンサ面上のタッチ入力の検出に応答して前記インダクタを間欠的に分極させ、前記シャーシに対して前記基板を前記振動面内で振動させるように構成されたコントローラとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項17】
タッチ入力を検出して触覚フィードバックで応答するシステムであって、
・シャーシに堅固に結合された磁気要素であって、前記シャーシに配置され、第1の極性方向に配置された第1の磁石と、前記第1の磁石に隣接してかつ前記第1の磁石から横方向にオフセットして前記シャーシに配置され、第2の極性方向に配置された第2の磁石とを備える磁気要素と、
・基板と、
・前記基板とタッチセンサ面との間に配置されたタッチセンサと、
・前記タッチセンサ面の下方で前記基板に結合されたインダクタであって、前記磁気要素に磁気的に結合するように構成されたインダクタと、
・前記基板を前記シャーシに結合するカプラであって、前記タッチセンサ面にほぼ平行な振動面内で柔軟性を有し、かつ前記インダクタを第1の極性方向に配置された前記第1の磁石及び前記第2の極性方向に配置された前記第2の磁石の上方に配置するカプラと、
・前記磁気要素と前記インダクタとの間に介装され、前記磁気要素と前記インダクタとの間の直接的な接触を防止するよう構成された低摩擦層と、
・インダクタに結合されたドライバと、
・前記タッチセンサ面のタッチ入力の検出に応答して、前記ドライバをトリガして前記インダクタを間欠的に分極させ、前記シャーシに対して前記基板を前記振動面内で振動させるように構成された制御プログラムとを備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してタッチセンサの分野に関し、より詳細には、タッチセンサの分野における新規かつ有用な人間コンピュータインタフェースシステムに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2018年3月8日出願の米国仮出願第62/640,138号の利益を主張するものであり、この出願は全体が引用により援用されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、システムの概略図である。
図2図2は、システムの一変形例の概略図である。
図3図3は、方法のフローチャートである。
図4図4は、方法の一変形例のフローチャートである。
図5図5Aおよび図5Bは、システムの一変形例の概略図である。
図6図6は、システムの一変形例の概略図である。
図7図7は、システムの一変形例の概略図である。
図8図8Aおよび図8Bは、方法の変形例のフローチャートである。
図9図9Aおよび図9Bは、システムの変形例の概略図である。
図10図10Aおよび図10Bは、方法の変形例の概略図である。
図11図11は、システムの一変形例の概略図である。
図12図12は、システムの一変形例の概略図である。
図13図13A図13Hは、システムの変形例の概略図である。
図14図14は、方法の一変形例の概略図である。
図15図15A図15Fは、システムの変形例の概略図である。
図16図16は、システムの一変形例の概略図である。
図17図17Aおよび図17Bは、システムの変形例の概略図である。
図18図18Aおよび図18Bは、システムの一変形例の概略図である。
図19図19は、システムの一変形例の概略図である。
図20図20Aおよび図20Bは、システムの一変形例の概略図である。
図21図21は、システムの一変形例の概略図である。
図22図22Aおよび図22Bは、システムの一変形例の概略図である。
図23図23は、システムの一変形例の概略図である。
図24図24は、システムの一変形例の概略図である。
図25図25は、システムの一変形例の概略図である。
図26図26は、システムの一変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の本発明の実施形態の説明は、本発明をそれらの実施形態に限定することを意図したものではなく、当業者が本発明を実施および使用できるようにすることを意図したものである。本明細書に記載の変形例、構成、実施例、例示的実施形態および例は任意選択的であり、それらが説明する変形例、構成、実施例、例示的実施形態および例のみに限定されるものではない。本明細書に記載の発明は、それらの変形例、構成、実施例、例示的実施形態および例のうちの何れかおよびすべての入れ替えを含むことができる。
【0005】
1.システムと方法
図1および図2に示すように、人間コンピュータインターフェースシステム(以下、「システム」と称する)は、タッチセンサ110、ハウジング160、オーディオドライバ140(以下、「スピーカ」と称する)、振動子120およびコントローラ150を含む。タッチセンサ110は、基板上にわたってパターン化された検知電極(sense electrode)および駆動電極(drive electrode)のペア116のアレイと、検知電極および駆動電極のペアと接触する状態で基板上に配置された抵抗層とを含み、この抵抗層が、基板と反対側のタッチセンサ面112を規定するとともに、タッチセンサ面112に加えられる力の大きさの変化に応じて局所的バルク抵抗の変化を示す材料を規定する。ハウジング160は、タッチセンサ110に結合され、スピーカおよび振動子120を収容する。コントローラ150は、閾値の力の大きさを超える力がタッチセンサ面112上に加えられることに応答して、クリックサイクル中に、スピーカを起動してクリック音を再生させるとともに、振動子120を起動してハウジング160を振動させるように構成され、かつ、閾値の力の大きさを超える力がタッチセンサ面112上に加えられることに応答して、コマンドを出力するように構成されている。
【0006】
システムの一変形例は、タッチセンサ面114を含むタッチセンサ110であって、タッチセンサ面114上にわたって配置された検知電極および駆動電極のペア116のアレイを有し、検知電極および駆動電極のペア116のアレイ上に延びるタッチセンサ面112を規定するタッチセンサと、タッチセンサ110に結合された振動子120であって、タッチセンサ面112と平行な面内で質量体を振動させるように構成された振動子と、シャーシ130に結合されたオーディオドライバ140と、コントローラ150とを含む。この変形例において、コントローラ150は、タッチセンサ110の第1の検知電極および駆動電極のペア間の第1の抵抗の変化に基づき、第1の時間において、タッチセンサ面112への第1の入力の印加(application)および第1の入力の第1の力の大きさを検出し;第1の力の大きさが第1の閾値の大きさを超えることに応答して、振動子120を駆動するとともに、オーディオドライバ140を起動してクリック音を出力することによって、第1のクリックサイクルを実行し;第1の検知電極と駆動電極のペア間の第2の抵抗の変化に基づき、前記第1の時間に続く第2の時間において、タッチセンサ112面からの第1の入力の後退(retraction)および第1の入力の第2の力の大きさを検出し;第2の力の大きさが、第1の閾値の大きさより小さい第2の閾値の大きさを下回ることに応答して、振動子120を駆動するとともに、オーディオドライバ140を起動してクリック音を出力することによって、第2のクリックサイクルを実行するように構成されている。
【0007】
図8Aに示すように、一変形例では、システムが、タッチセンサ面112上の入力に応答する方法S100を実行し、この方法が、ブロックS110において、第1の時間に、タッチセンサ面112上への第1の入力の印加および第1の入力の第1の力の大きさを検出するステップと、ブロックS120において、第1の力の大きさが第1の閾値の大きさを超えることに応答して、第1のクリックサイクル中にタッチセンサ面112に連結された振動子120を作動させるとともに、第1のクリックサイクル中にタッチセンサ面112近傍のオーディオドライバ140を起動してクリック音を出力するステップと、ブロックS112において、第1の時間に続く第2の時間に、タッチセンサ面112からの第1の入力の後退および第1の入力の第2の力の大きさを検出するステップと、ブロックS122において、第2の力の大きさが、第1の閾値の大きさよりも小さい第2の閾値の大きさを下回ることに応答して、第1のクリックサイクルとは異なる第2のクリックサイクル中に振動子120を作動させるとともに、第2のクリックサイクル中にオーディオドライバ140を起動してクリック音を出力するステップとを含む。
【0008】
1.1 アプリケーション
概して、システムは、(人間の)ユーザによる入力を検出し、それら入力を機械可読コマンドに変換し、それらコマンドをコンピューティングデバイスに伝達し、入力が検出されたことを示すフィードバックをユーザに与える人間コンピュータインタフェースデバイスとして機能する。具体的には、システムは、入力を検出するタッチセンサ110と、フィードバックをユーザに与えるハプティックフィードバックモジュール(例えば、スピーカおよび振動子120)と、タッチセンサ110で検出された入力に基づいて、コンピューティングデバイスにコマンドを出力するコントローラ150であって、ハプティックフィードバックモジュールを介してハプティックフィードバックをトリガするコントローラとを含み、システムは、タッチセンサ面112上の入力を検出して応答するための方法のブロックを実行することができる。
【0009】
一実施例において、システムは、コンピューティングデバイスに接続されたときに、閾値力(または圧力)の大きさを超えるタッチセンサ面112上のタッチ入力に応答して、クリックイベントをコンピューティングデバイスに伝達するハンドヘルドコンピュータポインティングデバイス(または「マウス」)を規定することができる。この実施例では、システムは、そのようなタッチ入力に応答して、聴覚的および振動的(以下「ハプティック」と称する)フィードバックをユーザに発して、押下または解放されるときの機械的スナップボタンの聴覚および触覚応答を模倣することができる。具体的には、システムは、タッチセンサ面112に印加された入力が第1の閾値力(または圧力)の大きさを超えたときに、振動子120を作動させるとともに、オーディオドライバ140を起動してクリック音を出力し、それにより機械的ボタンが押下されるときの触覚感覚および可聴音を再現することができ、その後、タッチセンサ面112上の同入力が持ち上げられて第1の閾値の大きさより小さい第2の閾値未満となったときに、振動子120を作動させるとともに、オーディオドライバ140を起動して(より低い周波数の)クリック音を出力し、それにより、押下された機械的ボタンが解放されるときの触覚感覚および可聴音を再現することができる。このため、システム自体は、外部の動く部品または表面(例えば、ボタン)を有していない実質的に固定されたエキソ構造を規定するにもかかわらず、当該システムは、ボタンが押下および解放された触感をユーザに提供することができる。さらに、この実施例では、システムは、動きセンサ170(例えば、光学的または機械的動きセンサ170)を含むことができ、コントローラ150は、動きセンサ170により検出された隣接面に対するシステムの動きに基づいて、カーソルの移動ベクトルまたは他のコマンドを出力することができる。
【0010】
上記実施例において、システムは、システムが面上に置かれる向きまたはユーザの手に保持される向きに基づいて、リモートコントローラ150またはゲームパッドとして機能するように、再構成可能であってもよい。特に、システムは、その長さおよび幅の全部または一部にわたるタッチセンサ面112を規定することができ、コントローラ150は、システムの現在の機能に基づいて、異なるコマンド、ジェスチャおよび他の出力タイプをタッチセンサ面112の別個のサブ領域にマッピングすることができる。さらに、システムは、様々な構成におけるタッチセンサ面112の様々なサブ領域上の入力に応じて、ハプティック(例えば、可聴および触覚)フィードバックを選択的に出力することができ、それにより、機械的変更をデバイスに加えることなく、単一デバイスで機械的スナップボタンの複数の組合せおよび配置構成を模倣することができる。
【0011】
本明細書では、システムは、ユーザ入力を検出し、ユーザ入力に応答してユーザにハプティックフィードバックを提供し、それらユーザ入力に基づいて、接続されたコンピューティングデバイスにコマンドを出力するスタンドアロンの人間コンピュータインタフェースコンポーネントとして説明されている。しかしながら、システムは、以下に説明するようにコンピューティングデバイスに統合されるものであってもよく、あるいは他の方法で1または複数のコンピューティングデバイスと連動するものであってもよい。
【0012】
1.2 タッチセンサ
図1および図2に示すように、タッチセンサ110は、基板(例えば、ガラス繊維PCB)にわたってパターン化された検知電極および駆動電極のペア116のアレイと、検知電極および駆動電極のペア(または「センサ素子」)と接触するように基板上に配置され、上のカバー層に加えられる力の変化に応じて局所的なバルク抵抗および/または局所的な接触抵抗の変化を示す力感知材料を規定する力感知層とを含む。米国特許出願第14/499,001号に記載されているように、抵抗性タッチセンサ110は、基板にわたってパターン化された、互いに組み合わされた駆動電極と検知電極のグリッドを含むことができる。力感知層は、基板にわたって、各検知電極および駆動電極のペア間のギャップに跨り、それにより、局所的な力がカバー層に加えられたときに、その加えられた力の大きさに、隣接する駆動電極および検知電極のペア間の抵抗が比例(例えば、直線的に比例、反比例、二次的に比例など)して変化するようになっている。以下に述べるように、コントローラ150は、タッチセンサ110内の各駆動電極および検知電極のペア間の抵抗値を読み取ることができ、それらの抵抗値を、カバー層に印加される1または複数の別個の力入力の位置および大きさに変換することができる。
【0013】
一実施例では、システムは、硬質PCB(例えば、ガラス繊維PCB)の形態のような硬質基板またはタッチセンサ面114上のPCB(例えば、アルミニウムバッキングプレート)を含み、駆動電極および検知電極の横列および縦列が、基板の上面にわたってパターン化されて、センサ素子のアレイを形成する。力感知層は、センサ素子のアレイの上に取り付けられ、その外周の周りに基板が接続されている。
【0014】
1.3 コントローラ
概して、コントローラ150は、ブロックS110、S112において、タッチセンサ110を駆動し、スキャンサイクル中に駆動電極と検知電極との間の抵抗値を読み取り、タッチセンサ110からの抵抗データをタッチセンサ110上の力入力の位置および大きさに変換するように機能する。また、コントローラ150は、2以上のスキャンサイクルにわたって検知された力の位置および/または大きさをジェスチャ(図10Bに示す)、カーソルの移動ベクトル(図10Aに示す)または他のコマンドに変換して、そのようなコマンドを、有線接続または無線接続などを介して接続されたコンピューティングデバイスに出力するように機能することもできる。例えば、コントローラ150は、システム内のメモリに記憶された予めプログラムされたコマンド機能にアクセスすることができ、そのようなコマンド機能には、接続されたコンピューティングデバイスにより読み取り可能なマウスおよびキーボードの値の組合せが含まれ、それにより、後述するように、例えば、仮想カーソルを移動させ、テキスト文書をスクロールし、ウィンドウを拡大し、あるいはウィンドウ内で2Dまたは3Dの仮想グラフィックリソースを平行移動および回転させることができる。
【0015】
一実施例では、コントローラ150は、米国特許出願第14/499,001号に記載されているように、アレイカラムドライバ(ACD)、カラムスイッチングレジスタ(CSR)、カラム駆動源(CDS)、アレイローセンサ(ARS)、ロースイッチングレジスタ(RSR)およびアナログ・デジタル変換器(ADC)を含む。この実施例では、タッチセンサ110は、可変インピーダンスアレイ(VIA)を含むことができ、この可変インピーダンスアレイが、ACDに結合された相互接続されたインピーダンスカラム(IIC)と、ARSに結合された相互接続されたインピーダンスロー(IIR)とを規定する。抵抗スキャン期間中、ACDはCSRを介してIICを選択して、IICをCDSで電気的に駆動することができ、VIAは、駆動されるIICから、ARSにより検知されたIICに電流を伝達することができ、ARSは、タッチセンサ110内のIIRを選択して、RSRを介してIIRの状態を電気的に検知することができ、コントローラ150は、ARSからの検知した電流/電圧信号を付け加えて、単一のサンプリング期間中の抵抗スキャン期間において、タッチセンサ110上の個別の力入力の近接、接触、圧力および/または空間位置の実質的に正確な検出を達成することができる。
【0016】
例えば、タッチセンサ110の駆動電極の横列を直列に接続することができ、同様に、抵抗性タッチセンサ110の検知電極の縦列を直列に接続することができる。サンプリング期間中、コントローラ150は、ブロックS110において、他のすべての横列の駆動電極をフローティングさせる間に、第1の横列の駆動電極を基準電圧に駆動し、他のすべての縦列の検知電極をフローティングさせる間に、第1の縦列の検知電極の電圧を検知し、他のすべての縦列の検知電極をフローティングさせる間に、第2の縦列の検知電極の電圧を検知し、・・・他のすべての縦列の検知電極をフローティングさせる間に、最後の縦列の検知電極の電圧を検知し、他のすべての横列の駆動電極をフローティングさせる間に、第2の横列の駆動電極を基準電圧に駆動し、他のすべての縦列の検知電極をフローティングさせる間に、第1の縦列の検知電極の電圧を検知し、他のすべての縦列の検知電極をフローティングさせる間に、第2の縦列の検知電極の電圧を検知し、・・・他のすべての縦列の検知電極をフローティングさせる間に、最後の縦列の検知電極の電圧を検知し、・・・最後に、他のすべての横列の駆動電極をフローティングさせる間に、最後の横列の駆動電極を基準電圧に駆動し、他のすべての縦列の検知電極をフローティングさせる間に、第1の縦列の検知電極の電圧を検知し、他のすべての縦列の検知電極をフローティングさせる間に、第2の縦列の検知電極の電圧を検知し、・・・他のすべての縦列の検知電極をフローティングさせる間に、最後の縦列の検知電極の電圧を検知することができる。このため、コントローラ150は、ブロックS110において、抵抗性タッチセンサ110の横列の駆動電極を順次駆動することができ、抵抗性タッチセンサ110の縦列の検知電極から抵抗値(例えば、電圧)を順次読み取ることができる。
【0017】
このため、コントローラ150は、ブロックS110において、サンプリング期間中に駆動電極および検知電極のペア(または「センサ素子」)をスキャンすることができる。その後、コントローラ150は、ブロックS130において、1つのサンプリング期間中にタッチセンサ110から読み取った抵抗値を、タッチセンサ面112に加えられる力(または圧力)の位置および大きさを示す単一のタッチ画像にマージすることができる。コントローラ150は、ブロックS130において、(例えば、ブロブ検出を実行してタッチ画像を処理することにより)タッチセンサ面112上の個別の入力領域を特定し、入力領域にわたって加えられる全体の力に基づいて、入力領域上の圧力の大きさを計算し、個別の入力領域に対応する入力タイプ(例えば、指、スタイラス、手のひらなど)を特定し、個別の入力領域を様々なコモンに関連付け、かつ/または、圧力の大きさ、入力タイプ、コマンドなどを用いて、タッチ画像の個別の入力領域を分類することもできる。コントローラ150は、このプロセスを繰り返して、システムの動作中の各サンプリング期間中に(分類された)タッチ画像を生成することができる。
【0018】
1.4 ハプティックフィードバックモジュール
システムは、ハプティックフィードバックモジュールを含み、それには、図1および図3に示すように、ハウジング160内に配置された振動子120およびスピーカが含まれる。通常は、閾値力(または閾値圧力)を超えるタッチセンサ面112上のタッチ入力に応答して、コントローラ150は、ブロックS120において、振動子120を起動して振動信号を出力すると同時に、スピーカを起動して可聴信号を出力し、機械的なスナップボタンの操作の感触および音をそれぞれ模擬することができる(以下「クリックサイクル」と称する)。
【0019】
振動子120は、振動線形アクチュエータ上の質量体、回転アクチュエータ上の偏心質量体、振動ダイアフラムまたは他の任意の適切なタイプの振動アクチュエータ上の質量体を含むことができる。振動子120は、共振周波数(例えば、自然周波数)を呈することができ、コントローラ150は、クリックサイクル中にアクチュエータがこの共振周波数で振動するように起動することができる。例えば、システムに最初に電源が投入されると、コントローラ150は、テストルーチンを実行することができ、それには、振動子120を低周波数から高周波数にランピングすること、低周波数と高周波数との間の共振周波数を検出すること、並びに、この共振周波数を現在の使用セッション中の振動子120の動作周波数として記憶することが含まれる。振動子120は、ハウジング160の底面とタッチセンサ110との間のハウジング160内に配置することができる。例えば、タッチセンサ110は、PCBの第1の面にわたってパターン化された検知電極および駆動電極のペア116のアレイを含むことができ、振動子120は、PCBの反対側の面の中心近傍に配設することができる。
【0020】
ハプティックフィードバックモジュールは、複数の振動子を含むこともでき、例えば、タッチセンサ面112の各半分または各象限の下にそれぞれ1つずつ振動子を配置することができる。この実施例では、コントローラ150が、クリックサイクル中にセット内のすべての振動子を作動させることができる。代替的には、コントローラ150は、現在のスキャンサイクルと最後のスキャンサイクルとの間でタッチ面で検出された最新のタッチ入力の重心に最も近い単一の振動子120など、クリックサイクル中に振動子の1つまたはサブセットを選択的に作動させることができる。しかしながら、ハプティックフィードバックモジュールは、他の任意の構成の他の任意の数の振動子を含むことができ、クリックサイクル中に他の1または複数の振動子を作動させることができる。
【0021】
ハプティックフィードバックモジュールは、クリックサイクル中に「クリック」音を置き換えるように構成されたスピーカ(またはブザーまたは他のオーディオドライバ)も含む。また、一実施例では、ハウジング160は、スピーカグリル、例えば、タッチセンサ面112とは反対側のハウジング160の底面の領域にわたる開口領域または穿孔の形態であるスピーカグリルであって、スピーカにより出力される音をハウジング160の外部に伝達するためのスピーカグリルと、図5Aおよび図5Bに示すように、隣接面によりスピーカから出力される音の減衰を制限するために、スピーカグリルとシステムを配置する平坦面との間のオフセット(例えば、0.085インチの)ギャップを維持するように機能する底面上のパッド162(または「脚部」)のセットとを含む。特に、このシステムは、タッチセンサ110、振動子120、オーディオドライバ140およびコントローラ150を含むハウジング160であって、オーディオドライバ140に隣接しかつタッチセンサ面112とは反対側を向くスピーカグリルを規定するハウジングと、1または複数のパッドとを含むことができ、各パッドが、タッチセンサ面112とは反対側にハウジング160から延び、テーブル面に沿ってスライドするように構成されたベアリング面を規定し、かつ目標ギャップ距離だけテーブル面の上方にスピーカグリルをオフセットするように構成されている。このため、システムを実質的に平坦な面に置くと、スピーカとスピーカグリルが協働して、ハウジング160の底面と隣接する面との間で反射される音を出力することができ、この音は、ハウジング160から横方向および縦方向に外側に分散することができ、その結果、ユーザは、システムに対する自身の向きに実質的に関係なく、この音を聴覚的に知覚することができる。代替的には、ハウジング160は、その側部にある、タッチセンサ面112に隣接する上面を横断する、あるいはその他の位置または向きで横断する、1または複数のスピーカグリルを規定することができる。さらに代替的には、ハプティックフィードバックモジュールはスピーカキャビティを含むことができ、このスピーカキャビティは、スピーカが駆動されてシステムから「クリック」音を出力するときに、スピーカとともに振動する。
【0022】
1.5 ハプティクス
閾値力(または圧力)の大きさを超えるタッチセンサ面112上のタッチ入力に応答して、コントローラ150は、図3に示すように、「クリックサイクル」において振動子120およびオーディオドライバ140の両方を実質的に同時に駆動して、機械的なスナップボタンの操作を触覚的かつ聴覚的に模倣する。例えば、そのようなタッチ入力に応答して、コントローラ150は、スピーカにより「クリック」音バイトを同時に再生しながら、モータドライバを起動して、目標クリック持続時間(例えば、250ミリ秒)振動子120を方形波で駆動することができる。クリックサイクルの間、コントローラ150は、クリックサイクル中に特定のハプティック応答を達成するために、例えば、+/-50ミリ秒、振動ルーチンに対するクリック音バイトの再生を遅延させるか、またはリードすることもできる。
【0023】
さらに、クリックサイクルの間、コントローラ150は、ブロックS112において、振動子120がピーク出力パワーまたはピーク振動振幅に到達する時間に対応する「オンセット時間」だけ、クリックサイクルの音および振動成分を同じイベントに対応するものとして人間が知覚することができる最大時間(例えば、数ミリ秒)の範囲内において、スピーカにより出力される音を遅らせることができる。例えば、10ミリ秒のオンセット時間によって特徴付けられる振動子120の場合、コントローラ150は、クリックサイクル中に振動子120を起動した後、5-10ミリ秒だけ、スピーカによる音の出力を遅延させることができる。このため、ブロックS110において、コントローラ150が第1の時間にタッチセンサ面112上の第1の閾値力(または圧力)の大きさを超える力の印加を検出したときに、コントローラ150は、ブロックS120において、第1の時間の直後の第2の時間(例えば、第1の時間の50ミリ秒以内、かつタッチセンサ面112への第1の入力の印加中)に、振動子120の作動を開始し、振動子120が最小振動振幅に達する振動子120のオンセット時間に相当する遅延時間(例えば、10ミリ秒)だけ第2時間よりも後の第3時間に、オーディオドライバ140の作動を開始することができる。
【0024】
上述したように、コントローラ150は、ブロックS120において、1または複数のプリセットパラメータを満たすか又は超えるタッチセンサ面112上のタッチ入力に応答してクリックサイクルを実行することができる。例えば、コントローラ150は、機械的マウスボタン(または後述する機械的トラックパッドボタンまたはスナップドーム)を押すのに必要な共通の力または圧力に対応する閾値力または圧力を超えるタッチセンサ面112上のタッチ入力の検出に応答して、クリックサイクルを開始することができる。このため、コントローラ150は、タッチセンサ面112上の検出されたタッチ入力の圧力を、予め設定された固定の力または圧力閾値と比較して、入力を識別し、または明らかにすることができる。
【0025】
代替的には、コントローラ150は、システムに接続されたコンピューティングデバイス上で実行されるグラフィカルユーザインターフェースを介して設定される、例えば、(より低い圧力閾値に対応する)より高い入力感度に対するユーザの好みまたは(より高い圧力閾値に対応する)より低い入力感度に対するユーザの好みに基づいて、ユーザがカスタマイズした圧力閾値を実施することができる。別の実施例では、コントローラ150は、後述するように、例えばシステムの現在のモードまたは向きに基づいて、タッチセンサ面112を2以上のアクティブ領域および/または非アクティブ領域に分割することができ、コントローラ150は、タッチセンサ面112の非アクティブ領域上の入力を捨てることができ、タッチセンサ面112のアクティブ領域内に十分な大きさのタッチ入力が検出されたときにクリックサイクルを開始することができる。
【0026】
この実施例では、コントローラ150は、タッチセンサ面112の個別の領域に固有の閾値力(または圧力)の大きさを付加的または代替的に割り当てて、その割り当てた閾値の大きさを超えるタッチセンサ面112の様々な領域上の力(または圧力)の印加に応答して、共通のハプティックフィードバックモジュールによるクリックサイクルを選択的に実行することができる。例えば、コントローラ150は、タッチセンサ面112の左クリック領域に第1の閾値の大きさを割り当てるとともに、タッチセンサ面112上の異常な右クリックを拒絶するために、タッチセンサ面112の右クリック領域に、第1の閾値の大きさよりも大きい第2の閾値の大きさを割り当てることができる。また、この実施例では、コントローラ150は、タッチセンサ面112上の異常なスクロール入力を拒絶するために、第1の閾値の大きさよりも大きい第3の閾値の大きさをタッチセンサ面112の中央スクロール領域に割り当てるが、スクロールイベントを持続させるために、第1の閾値の大きさよりも小さい第4の閾値の大きさに中央スクロール領域をリンクすることができる。
【0027】
1.6 標準クリックおよびディープクリック
一変形例では、コントローラ150は、図8Bおよび図10Cに示すように、第1の力の大きさを超えるが第2の力閾値未満のままである力の印加(以下「標準クリック入力」と称する)に応答して、ブロックS110およびS120において「標準的なクリックサイクル」を実行し、第2の力閾値を超える力の印加(以下「ディープクリック入力」と称する)に応答して、ブロックS114およびS124において「ディープクリックサイクル」を実行する。この変形例では、ディープクリックサイクル中、コントローラ150は、ディープクリック入力が検出および処理されたことを触覚的にユーザに示すために、振動子120を長時間(例えば、750ミリ秒)にわたって駆動することができる。また、コントローラ150は、ディープクリックサイクル中に、スピーカを非アクティブにしたり、あるいはスピーカを長時間にわたって駆動することもできる。一実施例では、コントローラ150は、標準クリック入力に応答して、左クリックマウス制御機能(または後述するように、左クリックトラックパッド制御機能)を出力することができ、ディープクリック入力に応答して、右クリックマウス制御機能を出力することができる。このため、システムは、タッチセンサ面112上の異なる力の大きさの入力を検出し、入力のタイプをその大きさに基づいて入力に割り当て、入力の割り当てたタイプに基づいて振動子120およびスピーカにより異なるハプティックフィードバックを提供し、入力の割り当てたタイプに基づいて異なる制御機能を出力することができる。
【0028】
一実施例では、コントローラ150は、ブロックS110において、タッチセンサ面112下方の第1の検知電極および駆動電極のペア間の第1の抵抗の変化に基づき、第1の時間において、タッチセンサ面112への第1の入力の印加および第1の入力の第1の力の大きさを検出し、ブロックS120において、第1の力の大きさが第1の閾値の大きさと第2の閾値の大きさとの間であることに応答して、第1の持続時間(例えば、標準クリックサイクル)にわたって第1のクリックサイクルを実行し、第1の入力を第1の入力タイプとして分類する。また、この実施例では、コントローラ150は、ブロックS114において、タッチセンサ面112下方の第2の検知電極および駆動電極のペア間の第2の抵抗の変化に基づき、第2の時間において、タッチセンサ面112への第2の入力の印加および第2の入力の第2の力の大きさを検出し、ブロックS124において、第2の力の大きさが第2の閾値の大きさを上回ることに応答して、第1の持続時間を超える第2の持続時間(例えば、ディープクリックサイクル)にわたって第2のクリックサイクルを実行し、第2の入力を第1の入力タイプとは異なる第2の入力タイプとして分類する。
【0029】
別の実施例では、コントローラ150は、タッチセンサ面112上のディープクリック入力に応答して、入力モード間の遷移または切り替えを行うことができ、例えば、コントローラ150が相対位置変更コマンドを出力してカーソルを移動させる第1のモードと、コントローラ150が(例えば、デスクトップ上の)ビューウィンドウ内のカーソルの位置を規定する絶対位置コマンドを出力する第2のモードとの間で遷移または切り替えを行うことができる。
【0030】
コントローラ150は、同様に、タッチセンサ面112上で検出される入力の力の大きさが増加するに連れて、3回、4回またはそれ以上のクリックサイクルを実行するなど、複数レベルのクリックサイクルを実施することができる。また、コントローラ150は、複数の予め設定された力の大きさの範囲のうちの1つに含まれる力のタッチセンサ面112上への印加に応じて、様々なコマンドを出力することもできる。例えば、システムがモバイルコンピューティングデバイスに組み込まれている後述する変形例におけるように、タッチセンサ面112の領域上の入力が削除キーに対応する場合に、タッチセンサ面112上に加えられる力の大きさがより高い別の力の範囲に入るのに応じて、コントローラ150は、コマンドを出力して、一つの記号を削除し、一つの単語を削除し、一つの文章を削除し、あるいは段落全体を削除することができる。
【0031】
コントローラ150は、タッチセンサ面112に同時にまたは間断なく印加される複数の個別の入力に応じて、それらのハプティック効果を実現することができる。例えば、ユーザが複数の指をタッチセンサ面112に接触させると、コントローラ150は、重複する複数のクリックサイクル内で、タッチセンサ面112上の各指の検出に応答して、それら指の各々により加えられる力の大きさが共通の閾値の大きさを超える(またはタッチセンサ面112の対応する領域に割り当てられた閾値の大きさを超える)時間に基づいて、クリックサイクルを起動することができる。コントローラ150は、タッチセンサ面112と接触している各指について、ユーザの各指による様々な力(または圧力)の大きさの遷移に応じて、「ダウン」クリックサイクル、「アップ」クリックサイクル、「ディープ」クリックサイクル、複数レベルのクリックサイクルなどを含む、前述した方法および技術を実施することができる。
【0032】
1.7 ヒステリシス
図8Aに示す一変形例では、コントローラ150は、ブロックS110、S120、S112およびS122において、タッチセンサ面112上の単一の力入力の印加および後退中に複数のクリックサイクルを起動するヒステリシスを実行する。特に、この変形例では、コントローラ150は、タッチセンサ面112に力が加えられたとき、並びに、タッチセンサ面112から力が解放されたときに、振動子120およびスピーカを選択的に作動させることにより、機械的なボタンが押下されるときと、その後解放されるときの感触と音を触覚的および聴覚的に再現する。コントローラ150は、タッチセンサ面112への力の印加が第1の閾値の大きさに達したときに「バウンシング」を防ぐために、入力がタッチセンサ面112から解放されるまで、この入力に対して、機械式ボタンの押下を示唆する単一の「ダウン」クリックサイクルを実行することができる。しかしながら、コントローラ150は、同じ入力によって加えられる力が第2のより低い閾値の大きさまで減少する際に、押下された機械的ボタンの解放を示唆する「アップ」クリックサイクルを実行することもできる。このため、コントローラ150は、タッチセンサ面112上の入力に対するハプティック応答における「バウンシング」を防止して、タッチセンサ面112に加えられた力が検知されている(すなわち、第1の閾値の大きさに達している)ことをハプティック応答を介してユーザに示すとともに、ユーザの選択がクリアされてタッチセンサ面112に加えられた力が検知されている(すなわち、加えられた力が低下して第2の閾値の大きさを下回る)ことを追加的ハプティック応答を介してユーザに示すために、ヒステリシス技術を実行することができる。
【0033】
例えば、コントローラ150は、ブロックS110およびS120において、数グラムを超える力の大きさのタッチセンサ面112上の入力の印加を検出することに応答して、「ダウン」クリックサイクルを起動することができ、ブロックS112およびS122において、入力がタッチセンサ面112から解放されて、この入力からのタッチセンサ面112に加えられる力が60グラム未満に低下したときに、「アップ」クリックサイクル(例えば、ダウンクリックサイクルより短く、高い周波数の変形例)を起動することができる。この実施例では、コントローラ150は、「アップ」クリックサイクルの場合よりも振動子120が大きな振幅および/または周波数で駆動されて、スピーカが低い周波数の音を出力する「ダウン」クリックサイクルを実行することができる。このため、コントローラ150は、移行力を超える力の印加を必要とする機械的ボタンの押下を触覚的および聴覚的に再現する「ダウン」クリックサイクルを実行することができ、また、コントローラ150は、機械的ボタンに加えられた力が低下して移行力を大幅に下回るときにのみ元の位置に戻る機械的ボタンの解放を触覚的かつ聴覚的に再現する「アップ」クリックサイクルを実行することができる。さらに、機械的ボタンと機械的ボタンを押す指との間の接触は、押下された機械的ボタンの戻る音と速度の両方を抑えることから、物理的ボタンが解放されるときよりも速くて低ピッチの「スナップダウン」感触および音を与えることができる。このため、コントローラ150は、「ダウン」クリックサイクルを実行することにより、押下されたときの機械的ボタンの感触および音を模倣することができ、コントローラ150は、一定期間にわたってタッチセンサ面112と接触する物体によって加えられる力の変化に応じて、「アップ」クリックサイクルを実行することにより、押下された機械的ボタンが解放されるときの感触および音を模倣することができる。
【0034】
1.8 ハウジング
ハウジング160は、図1および図2に示すように、コントローラ150、振動子120、スピーカおよびタッチセンサ110の検知電極および駆動電極などのシステムの構成要素を収容および支持するように機能する。前述したように、ハウジング160は、システムが起立して置かれる平面上でハウジング160の底面を支持するように機能する脚部160のセット(または「パッド」)を規定することができる。この実施例では、各脚部は、システムを隣接面から機械的に分離するように機能する圧縮性材料または他の振動減衰材料を含むことができ、それによりクリックサイクル中にガタガタ鳴るのを低減し、システムの振動を実質的に抑制する。
【0035】
さらに、周辺ヒューマンインターフェースデバイス(または「マウス」)を規定するシステムの場合、各脚部は、先端が滑らかで、剛性でかつ/または比較的低摩擦の材料(例えば、テフロンフィルム、ナイロンブッシュ)であり、その結果、平坦面上に起立状態で置かれたときに、システムが相対的に最小限の抵抗で平坦面上を滑らかに動くことが可能となっている。例えば、前述した実施例では、ハウジング160は、直線で特徴付けられる射出成形された不透明ポリマー構造体を規定することができ、構造体の矩形底面の各角部に1つずつの独立気泡発泡体のインサートを含むことができる。しかしながら、ハウジング160は、他の任意の形態を規定することができ、他の任意の材料から形成することができる。
【0036】
周辺ヒューマンインターフェースデバイスを規定するシステムの場合、ハウジング160は、タッチセンサ面112と反対側のその底面に、LEDまたはレーザベースの光学的動きセンサ170または機械的動きセンサ170などの1または複数の動きセンサを支持することもできる。コントローラ150は、動作全体にわたって(または、後述するように「マウスモード」にあるとき)、動きセンサ170をサンプリングして、隣接面上のシステムの相対移動を追跡することができる。また、システムは、カーソルベクトルにおけるそのような相対的な動きまたは他のコマンドをほぼリアルタイムで変換し、このカーソルベクトルまたは他のコマンドを、接続されたコンピューティングデバイスに送信することもできる。
【0037】
l.9 マウスジェスチャ
システムは、ブロックS130において、タッチ面で検出された入力を、タッチ面上の入力の初期位置、最終位置、速度、力(または圧力)の大きさなどに基づいて、様々なコマンドのうちの1つに変換することができる。例えば、コントローラ150は、タッチ面上の入力を、右クリック、左クリック、中央クリック、スクロールおよびズームなどの様々なマウスコマンドの1つとして解釈することができる。
【0038】
システムがマウスモードで動作する一実施例では、コントローラ150は、タッチ面の領域を右クリック、左クリックおよび中央クリックのコマンドと選択的に関連付ける。例えば、図3に示すように、ユーザがシステムの上に手のひらを置き、システム前端の近傍のタッチセンサ面112に接触する状態で1本の指(例えば人差し指)を置くと、コントローラ150は、タッチセンサ110と連動して、タッチセンサ面112の前半部上のこの単一のタッチ入力を検出することができ、この入力を左クリックコマンドに割り当てることができ、かつ、この入力の大きさがタッチセンサ面112のこの領域に割り当てられた閾値力の大きさを超えることに応答して、クリックサイクルを開始し、左クリックコマンドを出力することができる。しかしながら、ユーザがタッチセンサ面112の前半部に2本の指(例えば、人差し指と中指)を置くと、コントローラ150は、タッチセンサ110と連動して両方のタッチ入力を検出し、タッチセンサ面112の前半部の最も左のタッチ入力を左クリックコマンドに関連づけ、タッチセンサ面112の前半部の最も右のタッチ入力を右クリックコマンドに関連づけ、それらタッチ入力の力の大きさが共通の力の大きさの閾値またはタッチセンサ面112のそれらの領域に割り当てられた固有の力の大きさの閾値を超えることに応答して、左クリックコマンドおよび右クリックコマンドを選択的に出力することができる。さらに、ユーザがタッチセンサ面112上に3本の指(例えば、人差し指、中指および薬指)を載せた場合、コントローラ150は、タッチセンサ110と連動して3つのタッチ入力をすべて検出し、タッチセンサ面112の前半部の最も左のタッチ入力を左クリックコマンドに関連づけ、横方向において最も左のタッチ入力と最も右のタッチ入力との間のタッチセンサ面112の前半部のタッチ入力を中央クリックまたはスクロールコマンドと関連付け、タッチセンサ面112の前半部の最も右のタッチ入力を右クリックコマンドに関連づけ、それらタッチ入力の力の大きさがタッチセンサ面112のそれらの領域に割り当てられた力の大きさの閾値を超えることに応答して、左クリックコマンド、中央クリックまたはスクロールコマンドおよび右クリックコマンドを選択的に出力することができる。このため、コントローラ150は、例えばタッチセンサ面112上の他のタッチ入力の数および位置に基づいて、タッチセンサ面112上のタッチ入力を様々なコマンドタイプに動的に関連付けることができる。代替的には、コントローラ150は、例えば、タッチセンサ面112の第1(I)象限に右クリックコマンドを割り当て、タッチセンサ面112の第2(II)象限に左クリックコマンドを割り当てることにより、固定コマンドをタッチセンサ面112のサブ領域に割り当てることができる。
【0039】
別の実施例では、コントローラ150は、図4および図9Aに示すように、スクロールコマンドで、タッチセンサ面112上で検出されたタッチ入力を解釈する。この実施例では、コントローラ150は、第1の時間に、タッチセンサ110と連動して、タッチセンサ面112の第1の位置で、ユーザの指またはスタイラス先端などからのタッチ入力を検出し;第2の時間に、タッチセンサ110と連動して、タッチセンサ面112上の第2の位置へのタッチ入力の移行を検出し;閾値距離を超える第1の位置と第2の位置との間の距離に基づいて、タッチ入力をスクロール入力として識別し;第1の位置から第2の位置へのベクトルの方向に基づいてスクロール入力の方向(例えば、左、右、上、下)を判定し;それに応じてスクロールコマンドを開始する。(この実施例では、コントローラ150は、タッチ入力が第1の位置でタッチセンサ面112上の閾値力または圧力の大きさを超えることに応答して、第1の位置のタッチ入力を意図的な入力として確認することもできる。)その後、ユーザが、指またはスタイラスを、タッチセンサ面112との接触を維持したまま、タッチセンサ面112に沿って移動させると、コントローラ150は、第1(または第2)の位置から横断する距離に対応するスクロール距離またはスクロール速度を含むスクロールコマンドを出力することができる。しかしながら、スクロールコマンドがこうして開始されると、コントローラ150は、タッチ入力の力の大きさに対応するスクロール距離またはスクロール速度を含むスクロールコマンドを追加的または代替的に出力することができる。例えば、スクロールの方向を含むスクロールコマンドが開始されると、コントローラ150は、タッチ入力の力の大きさに比例するスクロール速度コマンド(最大スクロール速度まで)を出力することができる。このため、コントローラ150は、タッチセンサ面112の領域にわたるタッチ入力のトラバースに基づいてスクロールコマンドを開始することができ、その後、ユーザがタッチセンサ面112を押下する力の大きさに基づいて、スクロールコマンドを修正することができ、それにより、図4に示すように、スクロールコマンドが開始されると、接続されたコンピューティングデバイス上で見られる文書または他のリソースを操作するときに、ユーザがタッチセンサ面112を押下する強さを変更することにより、ユーザがスクロール速度を調整することが可能になる。コントローラ150は、タッチセンサ110をサンプリングし続けることができ、タッチセンサ面112からタッチ入力が除かれると(例えば、タッチ入力の力または圧力の大きさが低い閾値を下回ると)、スクロールコマンドを終了することができる。
【0040】
別の実施例では、ユーザがタッチセンサ面112上で人差し指を押し下げて揺する(例えば、縦に揺らす)と、コントローラ150は、タッチセンサ110と連動して、第1の時間に、ほぼ卵形のタッチ領域によって特徴付けられる対応するタッチ入力を検出し;第1の時間において卵形のタッチ領域内の最大の力を識別し;卵形のタッチ領域の位置および卵形のタッチ領域内の最大の力の位置を第1の時間から第2の時間まで追跡することができる。この実施例では、第1の時間から第2の時間まで、卵形のタッチ領域の重心位置、向きまたは周囲の幾何学形状などが閾値未満で変化し、かつ、卵形のタッチ領域内の最大の力の位置が閾値距離より大きく変化する場合に、コントローラ150は、このタッチ入力をスクロールコマンドと解釈することができ、第1の時間における最大の力の位置から第2の時間における最大の力の位置までのベクトルの方向に対応する方向を含むスクロールコマンドを開始することができる。こうしてスクロールコマンドが開始されると、コントローラ150は、卵形タッチ領域における力の大きさの合計に基づいて、または卵形タッチ領域内の最大の力の大きさに基づいて、スクロールコマンドのスクロール速度またはスクロール距離を調整することができる。
【0041】
別の実施例では、コントローラ150は、ズームコマンドを用いてタッチセンサ面112上で検出されたタッチ入力を解釈する。この実施例では、コントローラ150は、第1の時間に、タッチセンサ110と連動して、タッチセンサ面112上の第1の位置および第2の位置におけるユーザの親指および人差し指などからの第1のタッチ入力および第2のタッチ入力をそれぞれ検出し;第2の時間に、タッチセンサ110と連動して、タッチセンサ面112上における第1のタッチ入力の第3の位置への移行および第2のタッチ入力の第4の位置への移行を検出し;第1の位置と第2の位置間の第1の長さと、第3の位置と第4の位置間の第2の長さとの差が閾値距離または比率よりも大きく異なることに基づいて、タッチ入力をズーム入力と識別し;第1の距離が第2の距離を超えるか否かに基づいて、ズーム入力の方向(例えば、ズームイン、ズームアウト)を判定し(例えば、第1の距離が第2の距離を超える場合にはズームイン、第2の距離が第1の距離を超える場合にはズームアウト);それに応じてズームコマンドを開始する。(この実施例では、コントローラ150は、第1および第2の位置におけるタッチ入力の一方または両方がタッチセンサ面112上の閾値力または圧力の大きさを超えることに応答して、第1および第2の位置におけるタッチ入力を意図的な入力として確認することもできる。)その後、ユーザが、タッチセンサ面112と接触を断つことなく、指を互いに引き寄せるか、または指を引き離すと、コントローラ150は、第1(または第2)の長さからのユーザの指間の距離の変化に対応する、ズーム方向、ズーム距離および/またはズーム速度を含むズームコマンドを出力することができる。しかしながら、こうしてズームコマンドが開始されると、コントローラ150は、タッチ入力の力の大きさに対応するズーム距離またはズーム速度を含むズームコマンドを追加的または代替的に出力することができる。例えば、ズーム方向を含むズームコマンドが開始されると、コントローラ150は、タッチセンサ面112上のタッチ入力の一方または両方の力の大きさに比例するズーム速度コマンド(最大ズーム速度まで)を出力することができる。このため、コントローラ150は、タッチセンサ面112の領域にわたる2つのタッチ入力のトラバースに基づいてズームコマンドを開始することができ、その後、ユーザがタッチセンサ面112を押下する力の大きさに基づいて、ズームコマンドを修正することができ、それにより、図8Bに示すように、ズームコマンドが開始されると、接続されたコンピューティングデバイス上で見られる文書または他のリソースを操作するときに、ユーザがタッチセンサ面112を押下する強さを変更することにより、ユーザがズーム速度を調整することが可能になる。コントローラ150は、タッチセンサ110をサンプリングし続けることができ、タッチセンサ面112からタッチ入力が除かれると、ズームコマンドを終了することができる。
【0042】
また、コントローラ150は、タッチセンサ面112上の入力に基づいて、カーソルベクトルを規定し、それらのカーソルベクトルを、接続されたコンピューティングデバイスに出力することができる。例えば、タッチセンサ面112の前縁に沿ったタッチセンサ面112の押下に応答して、コントローラ150は、出力カーソルベクトルを垂直軸にロックすることができる。同様に、タッチセンサ面112の左縁または右縁に沿ったタッチセンサ面112の押下に応答して、コントローラ150は、出力カーソルベクトルを水平軸にロックすることができる。また、コントローラ150は、タッチセンサ面112の右前コーナおよび左前コーナにおける押下に応答して、45°ベクトルおよび135°ベクトルに沿って出力カーソルベクトルをそれぞれロックすることもできる。
【0043】
さらに、コントローラ150は、タッチセンサ面112の選択領域におけるカーソル制御を選択的にアクティブ化および非アクティブ化することができる。例えば、コントローラ150は、タッチセンサ面112の前半部上のタッチ入力を選択(例えば、「クリック」)、スクロールおよびズームコマンドとして解釈することができるが、この領域内のカーソルベクトル制御を非アクティブ化して、タッチセンサ面112の前半部をタッチすることにより、ユーザが仮想オブジェクトを選択し、仮想メニューにアクセスし、仮想リソースをスクロールし、あるいは接続されたコンピューティングデバイス上の仮想リソースにズームインまたはズームアウトすることを可能にする。しかしながら、この実施例では、コントローラ150は、タッチセンサ面112の後半部におけるカーソルベクトル制御をアクティブ化することができ、その結果、隣接する面に対してシステムを動かし、かつ、タッチセンサ面112の後半部を横切るように指、スタイラスまたは他の器具を引くことによって、ユーザが、接続されたコンピューティングデバイス上のグラフィカルユーザインターフェース内のカーソルの位置を制御することが可能になる。この実施例では、コントローラ150は、複合カーソルベクトルを生成するために、隣接面に対するシステムの動きに第1のスケール(例えば、1:1、または相対的に高い位置感度)を適用することができ、タッチセンサ面112の後半部のタッチ入力位置の変化に第2のスケール(例えば、1:5、または相対的に低い位置感度)を適用することができる。このため、コントローラ150は、システムを隣接面に対して相対的に移動させることによって、ユーザがグラフィカルユーザインターフェース内の相対的に大きな仮想距離にわたってカーソルを迅速に移動させることが可能となり、また、コントローラ150は、タッチセンサ面112の後端にわたって指、スタイラスまたは他の器具を引くことによって、ユーザが相対的に高度なカーソル位置制御を行うことも可能になる。
【0044】
しかしながら、コントローラ150は、ブロックS130において、他の任意の静的または動的スケジュールに従ってタッチセンサ面112の領域を分割することができ、それらの領域を他の任意のコマンドまたは機能と関連付けることができる。
【0045】
1.10 コンテキストを意識したジェスチャ
一変形例では、システムは、図9Aおよび図9Bに示すように、マウスモード、リモートコントローラ150モードおよびゲームパッドモードなど、2以上のモードで選択的に動作する。一実施例では、動きセンサ170が、隣接面、例えばハウジング160の底面から単位時間当たりの閾値距離以上に深度が変化しない表面を検出した場合に、システムは、マウスモードで動作し、上述した方法および技術を実行する。この実施例では、隣接面が存在しないこと、または単位時間当たりの閾値距離以上に隣接面の近接性の変化を動きセンサ170が検出した場合に、システムは、マウスモードを終了して、リモートコントローラ150モードまたはゲームコントローラ150モードの何れかに入る準備を行うこともできる。
【0046】
また、システムは、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計または他の運動センサを含むこともでき、動きセンサの出力に基づいて選択モードに入ることができる。例えば、システムが直立姿勢にあること(または、(0°,0°)のピッチおよびロールの向きから+/-10°ピッチおよびロールなど、直立姿勢の範囲にあること)を動きセンサの出力が示す場合に、システムは、マウスモードに入って留まることができる。しかしながら、システムが縦向きに保持されている場合(かつ動きセンサ170が隣接面または信頼できる面を検出しない場合)、システムはリモートコントローラ150モードに入ることができる。同様に、システムが横向きに保持されている場合(かつ動きセンサ170が隣接面または信頼できる面を検出しない場合)、システムはゲームパッドモードに入ることができる。
【0047】
さらに、動きセンサ170が隣接面または信頼できる表面を検出した場合、システムは、タッチセンサ面112上のタッチ入力の位置に基づいて、リモートコントローラ150モードおよびゲームパッドモードに選択的に入ることができる。例えば、システムがマウスモードから移行したら、システムは、タッチセンサ面112上で単一のタッチ入力(例えば、親指)が検出された場合に、リモートコントローラ150モードに入ることができ、タッチセンサ面112上で2つのタッチ入力(例えば、2本の親指)が検出された場合に、ゲームパッドモードに入ることができる。しかしながら、システムは、システム内の他の任意の機械的、光学的、音響的または他のセンサの出力に基づいて、2以上のモードに選択的に入り、かつそれらモードから出ることができる。その後、コントローラ150は、上述した方法および技術を実行して、システムの現在の動作モードに基づいて、タッチセンサ面112上の入力をコマンドまたは他の機能(例えば、システム上に予め規定およびロードされたコマンド)に変換することができる。
【0048】
代替的には、システムは、タッチセンサ面112上で検出された1または複数のタッチ入力に基づいてモード間で遷移することができる。例えば、システムは、タッチセンサ面112の前部領域上で2つの(上述した)ディープクリック入力を検出することに応答して、マウスモードに入ることができ;タッチセンサ面112の横方向および縦方向の中心近傍で1つのディープクリック入力を検出することに応答して、リモートコントローラ150モードに入ることができ;タッチセンサ面112の前部領域の1つのディープクリック入力と、タッチセンサ面112の後部領域の1つのディープクリック入力とを実質的に同時に検出することに応答して、ゲームパッドモードに入ることができる。
【0049】
ゲームコントローラ150モードの一実施例では、コントローラ150は、タッチセンサ面112上の入力の位置および力の大きさを結合して、ジョイスティックベクトルにすることができる。例えば、ゲームパッドモードでは、コントローラ150は、タッチセンサ面112のサブ領域(例えば、円形のサブ領域)をジョイスティック領域として指定することができる。このジョイスティック領域内の入力の検出に応答して、コントローラ150は、タッチ入力領域の重心を計算し(またはタッチ入力領域内に入力された最大力点を特定し);ジョイスティック領域の中心を中心とする座標系内のタッチ入力領域重心(または入力された最大力点)の角度オフセットを計算し;この角度オフセットによって規定される方向と、タッチ入力の最大力、平均力または合計力の大きさに対応する大きさとを含むジョイスティックベクトルを生成することができる。この実施例では、コントローラ150は、ジョイスティック領域の中心(例えば、座標系の原点)からタッチ入力の重心(または最大力点)までの距離に基づいて、ジョイスティックベクトルの大きさを拡大縮小することもできる。このため、コントローラは、ゲームパッドモードにおいて、タッチ入力の位置とタッチ入力の力(または圧力)の大きさの両方をジョイスティックベクトルにマージし、その後、例えば、ウィンドウ内のカーソル位置や、コンピューティングデバイス上のゲームインターフェース内の第1の人の観察位置を制御するために、このジョイスティックベクトルを、接続されたコンピューティングデバイスに出力することができる。
【0050】
1.11 可動スタイラス面
一変形例では、システムは、隣接面に対するシステムの位置の変化と、タッチセンサ面112上のタッチ入力の位置の変化の両方に基づいてカーソルベクトル(またはカーソル位置コマンドなど)を出力する。この変形例では、システムは、ハウジング160の底面において横方向および/または縦方向にオフセットする2(またはそれより多く)の動きセンサを含むことができ、コントローラ150は、動作全体にわたって各動きセンサ170をサンプリングし、それら動きセンサの出力に基づいて動作中のシステムの横方向(例えば、X軸)位置、縦方向(例えば、Y軸)位置およびヨー(例えば、Z軸を中心とする円弧位置)の変化を追跡することができる。さらに、動作全体にわたって、コントローラ150は、タッチセンサ110をサンプリングし、例えば指またはスタイラスなどによる、タッチセンサ面112を横切る連続的なタッチ入力を追跡することができる。その後、コントローラ150は、連続する2つのサンプリング期間の間のタッチ入力の位置の変化を、動きセンサの出力を比較することによって決定される、同じサンプリング期間の間のハウジング160の位置の変化に射影して、2つのサンプリング期間の間の隣接面に対するタッチ入力の位置のグローバル変化を判定し、このグローバル位置変化をカーソルベクトル(またはカーソル位置コマンドなど)として、接続されたコンピューティングデバイスに出力することができる。
【0051】
この一変形例では、システムが表面を上にして机のような平坦面上に置かれた状態において、右手にスタイラスを保持するユーザは、右の手のひらをタッチセンサ面112の後半部に置くことができ、その後、タッチセンサ面112の前半分の上にスタイラスの先端を引き出すことができる。コントローラ150は、例えばHzの速度でタッチセンサ110を系統的にサンプリングすることができ、パターンマッチング、エッジ検出、物体認識またはその他の技術を使用して、タッチセンサ110で読み取られた各「フレーム」において、ユーザの手のひらおよびスタイラスの先端を識別することができる。その後、コントローラ150は、入力としてユーザの手のひらを拒絶し、その代わりに、タッチセンサ面112の前半分上のスタイラスの位置の変化に基づいてカーソルベクトルを出力することができる。しかながら、ユーザがタッチセンサ面112を横切ってスタイラスを引き続けると、ユーザは、下の机に対してシステムを動かす可能性もある。このため、コントローラ150は、動きセンサの出力に基づいて、机に対するシステムのそのような動きを追跡し;机に対するスタイラス先端のグローバル位置変化を計算するために、実質的に同一の期間(例えば、サンプリング期間の間に8ミリ秒の継続時間)にわたって生じるタッチセンサ面112上のスタイラス先端の位置の変化と、上記のようにして検出したシステムの位置の変化とをマージし;それに応じてカーソルベクトル(または他のカーソル移動コマンド)を出力することができる。このため、システムは、片手でより大きな(例えば、約24平方インチの机の)領域上でタッチセンサを移動させながらも、相対的に小さい(例えば、幅1.8インチ、長さ3.6インチの)タッチセンサ面112上でユーザが描くことを可能にする。特に、システムは、スタイラスのグローバル位置変化を計算するために、システムに対するスタイラス先端のミクロの位置変化と、机に対するシステムのマクロ位置変化とをマージすることができ、それにより、ユーザは、相対的に小さなタッチセンサ面112を介して、接続されたコンピューティングデバイス上で実行されるアプリケーション内の相対的に大きな仮想領域内でユーザが描くことを可能にする。例えば、システムは、幅約1.8インチのタッチセンサ面112上の8インチ幅の文字列の手書き線を、接続されたコンピューティングデバイスにユーザが入力すること、または幅1.8インチ、長さ3.6インチのタッチセンサ面112を介して仮想スケッチウィンドウ内に約12平方インチのスケッチのラインをユーザが入力することを可能にすることができる。
【0052】
1.12 カバー層
一変形例では、システムは、タッチセンサ面112上に配置されたカバー層を含む。この変形例では、カバー層は、(平面)タッチセンサ110上に曲線状および/または変形可能な(例えば、「柔らかい」低デュロメータ)制御面を規定することができ、制御面上の入力をタッチセンサ面112に機械的に伝達することができる。
【0053】
一実施例では、カバー層は、テキスタイル(例えば、織物、皮革)の第1の面を向き、かつ反対側がタッチセンサ110上に取り付けられた、均一な厚さ(例えば、0.025インチ)および均一なデュロメータ(例えば、ショア25)の発泡体パッドを含む。この実施例では、タッチセンサ110が、相対的に硬い構造体(例えば、ショア80以上)を規定することができ、カバー層は、タッチセンサ110上に相対的に柔軟な(例えば、変形可能な、柔軟な、弾力性のある、圧縮性の)層を規定することができる。テキスタイルは、発泡体パッドによってタッチセンサ面112上にオフセットされた制御面を規定することができ、発泡体パッド(およびテキスタイル)は、ユーザが指で制御面を押下したときに指とタッチセンサ面112との間で圧縮することができる。タッチセンサ110は、タッチセンサ面112に加えられる力の大きさの範囲を検出するように構成されているため、タッチセンサ110は、そのような入力を検出することができる。また、発泡体パッドは、制御面からタッチセンサ面112へと、より大きな接触領域にわたってユーザの指の印加力を分散させることができるが、コントローラ150は、タッチセンサ110上の個別のセンサピクセルで計算された入力された力を合計して、制御面に加えられる合力を計算することができる。コントローラ150は、加えられた力の変化を検知した、個別のセンサピクセルの隣接クラスタの重心を計算して、入力の力中心を判定することもできる。
【0054】
前述した実施例では、カバー層の制御層は、エンボス領域、デボス領域、デカールなどを含むこともでき、それによりタッチセンサ110のアクティブ領域、タッチセンサ110の非アクティブ領域、制御面のそのような領域上の入力に応答してシステムにより出力される機能の触覚インジケータを規定することができる。
【0055】
別の実施例では、カバー層は厚さの変化するパッドを含み、このパッドは、テキスタイルの第1の面を向き、反対側がタッチセンサ110上に取り付けられている。一実施例では、パッドは、均一デュロメータの発泡体構造を含み、タッチセンサ110の後端に近い厚い部分からタッチセンサ110の前端に近い薄い部分に向かってテーパが付けられたくさび形の輪郭を規定する。この実施例では、パッドの厚さが変化するため、パッドは、制御面の後端付近に加えられた力を、制御面の前端付近に加えられる力より広い領域で、タッチセンサ110へと伝達することができ、よって、システムは、制御面の後端よりも前端に近い制御面に加えられるタッチ入力に対してより大きな感度を呈することができる。別の実施例では、パッドは、同様に、(例えば、図5Bに示すように)タッチセンサ110の後端に近い厚い部分からタッチセンサ110の前端に近い薄い部分に向かってテーパが付けられたくさび形の輪郭を規定する発泡体構造または他の圧縮可能な構造を含む。しかしながら、この実施例では、発泡体構造は、その後端から前端まで増加するデュロメータを示すことができ、それにより、システムが制御面の各位置のタッチ入力に対して実質的に均一な感度を示すように、パッドの厚さの変化を相殺することができる。
【0056】
しかしながら、カバー層は、タッチセンサ面112上に他の任意の均一な厚さまたは可変厚さを規定することができる。例えば、カバー層は、(平面)タッチセンサ面112上にドーム状または半球状の輪郭を規定することができる。また、カバー層は、他の任意のテキスタイルまたは他の材料に向けることもできる。その後、システムは、上述した方法および技術を実行して、カバー層によってタッチセンサ面112上に変換された制御面上の入力を検出し、それらの入力に従って制御機能を出力することができる。
【0057】
1.13 マウスオーバーレイ
一変形例では、システムは、図5A図5B図6および図7に示すように、スタンドアロンのタッチセンサ110を規定し、システムの異なる動作モードに対応する2以上の異なるオーバレイと物理的にインタフェースをとる。この変形例では、システムおよびオーバーレイが、人間コンピュータインタフェース「キット」を規定することができる。
【0058】
一実施例では、キットがマウスオーバーレイ164を含み、このマウスオーバーレイが、システムを一時的に受け入れるように構成されるとともに、上述したように、平面状、ドーム状、半球状または波形輪郭の制御面などの制御面をタッチセンサ面112上に規定する。例えば、マウスオーバーレイ164は、図5Aおよび図5Bに示すように、その後端に近い第1の厚さから、その前端に向かって第2のより薄い厚さに先細になり、ユーザの人差し指および中指がマウスオーバーレイ164の前端に延びる状態でユーザの手のひらの内部で受けるようにサイズ設定された曲線状輪郭を規定することができる。この実施例では、マウスオーバーレイ164は、エンボス加工、デボス加工、または様々なテクスチャまたは表面プロファイル(例えば、左クリック領域、右クリック領域およびスクロールホイール領域の周りのデボス加工された外周部)の制御面を規定することができ、それにより、マウスオーバーレイ164に関連する様々なコマンドに対応する様々な入力領域を触覚的に示すことができる。
【0059】
マウスオーバーレイ164は、図5Bに示すように、システムと一時的に(すなわち、取り外し可能に)係合するように構成されたキャビティをさらに規定することができる。例えば、マウスオーバーレイ164は、制御面と反対側のキャビティと、システムがキャビティ内に「スナップ留め」されたときにシステムをキャビティ内に保持するように構成されたキャビティ外周の周りの保持リングまたはアンダーカットとを規定することができる。代替的には、マウスオーバーレイ164は、キャビティに隣接する1または複数の磁石(または鉄要素)を含むことができ、それら磁石(または鉄要素)が、ハウジング160内に配置された鉄要素(または磁石)に磁気的に結合して、キャビティ内にシステムを保持するように構成されている。しかしながら、マウスオーバーレイ164は、マウスオーバーレイ164の上または中にシステムを一時的に保持するように構成された任意の機構または特徴を含むことができる。
【0060】
さらに、マウスオーバーレイ164は、キャビティの下方に垂直方向にオフセットされた一体的滑り脚部を含むことができる。マウスオーバレイ164およびシステムが組み立てられた状態で、一体的滑り脚部は、システム底部の動きセンサ170と、アセンブリが配置および操作される面との間のギャップを設定および維持することができる。上述したように、各一体的滑り脚部は、先端が滑らかで剛性かつ/または相対的に低摩擦の材料とされて、アセンブリが比較的小さな抵抗で隣接する平坦面を滑らかに動くことを可能にする。また、各一体的滑り脚部は、上述したように、アセンブリを隣接する平坦面から機械的に分離するように構成された圧縮可能な(例えば、発泡体)構造も含むことができる。
【0061】
このため、この実施例では、オーバーレイ164は、三次元の人工工学的マウス形態を規定することができ;タッチセンサ面112上に一時的に取り付けるように構成することができ;オーバーレイ164の表面に加えられた力をタッチセンサ面112へと下方に伝達するように構成された弾性材料を含むことができる。
【0062】
別の実施例では、キットは、図7に示すように、リモートコントローラ150オーバーレイ164を含む。このリモートコントローラオーバーレイは、ユーザの親指がリモートコントローラオーバーレイの前端に向かって制御面上に延びる状態において、縦方向の向きでユーザの手のひらの中で握るようにサイズ設定された直線的または曲線的なプロファイルを規定することができる。また、リモートコントローラオーバーレイは、例えば音量アップおよび音量ダウン領域、左、右、上、下のスクロール領域、一時停止/再生領域および/または選択領域などの様々な入力タイプに対応する領域のためのインジケータで、エンボス加工、デボス加工または他の触覚的または視覚的に標識される制御面を規定することもできる。マウスオーバーレイ164と同様に、リモートコントローラオーバレイは、システムを一時的に受け入れるように構成されたキャビティをさらに規定することができる。代替的には、リモートコントローラオーバーレイは、タッチセンサ面112上に貼付するように構成されたフィルムを含むことができる。例えば、リモートコントローラオーバーレイは、対応するコマンドタイプを示す、エンボス加工、デボス加工および/またはインクラベル付けされた領域を有するシリコーンフィルムと、シリコーンフィルムをシステムのタッチセンサ面112に一時的に接着するように構成された接着性バッキングとを含むことができる。
【0063】
キットは、ゲームパッドオーバーレイをさらに含むことができ、このゲームパッドオーバーレイは、同様に、図6に示すように、ユーザの親指がゲームパッドオーバーレイの左側または右側に向かって制御面上に延びた状態において、横向きでユーザの両手の間で把持するようにサイズ設定された平面または曲線的なプロファイルを規定する。ゲームパッドオーバレイは、左右のアナログジョイスティック、Dパッド、フェイスボタンのセット、左右の肩ボタンのセット、選択/戻るボタン、選択/進むボタン、メニューボタンおよび/またはホームボタンなど、様々なコマンドに対応する領域のための触覚または視覚インジケータを含む、エンボス加工、デボス加工等された制御面を規定することができる。マウスオーバーレイおよびリモートコントローラオーバーレイと同様に、ゲームパッドオーバレイは、システムを一時的に受け入れて保持するように構成されたキャビティを規定することができる。代替的には、ゲームパッドオーバーレイは、上述したように、タッチセンサ面112上に一時的に貼付されるように構成されたフィルムを規定することができる。
【0064】
また、コントローラ150は、一時的に取り付けられたオーバーレイを識別し、識別したオーバーレイのタイプに基づいて、制御面からタッチセンサ面112に伝達される入力に応答して、その出力を再構成することもできる。例えば、システムは、磁場(例えば、ホール効果)センサのセットを含むことができ、そのセットの各オーバーレイは、システムがオーバーレイ内に取り付けられたときに磁場センサを向く磁石の固有の配置を含むことができ、システムは、磁場センサの出力に基づいて、システムが取り付けられたオーバーレイを識別し、システム内のローカルメモリに記憶された対応する出力構成を読み出し、その後、制御面上の入力に応答して、その出力構成に従い信号を出力することができる。他の実施例では、各オーバーレイは、オーバーレイタイプで符号化された集積回路を含むことができ、システムは、有線接続または無線通信プロトコルを介して、接続されたオーバーレイからオーバーレイタイプをダウンロードし、オーバーレイタイプに対応する出力構成を選択し、それに応じて、システムがオーバーレイから取り外されるまで信号を出力することができる。同様に、各オーバーレイは、完全なタッチセンサ出力構成で符号化された集積回路を含むことができ、システムは、有線または無線通信プロトコルを介して、接続されたオーバーレイからその完全な出力構成をダウンロードし、それに応じて、システムがオーバーレイから取り外されるまで、その出力構成を実行することができる。
【0065】
キット内のシステムおよびオーバーレイは、システムおよびオーバレイを単一の向きで組み立てることを許容する方向的特徴を規定することもできる。例えば、システムは、その後端の左コーナにノッチを有する押出矩形形状を規定することができ、オーバーレイは、後端の左コーナに対応するノッチを有する押出矩形キャビティを規定することができ、それにより、システムを一方向のみからキャビティ内に取り付けること可能となっている。このため、コントローラは、システムに対するオーバレイのこの既知の向きに基づいて、オーバレイの制御面上の入力を解釈することができる。代替的には、システムは、(例えば、オーバーレイに一体化された磁石からの磁場の検出に基づいて)オーバーレイに対するシステムの向きを検出する1または複数のセンサ(例えば、ホール効果センサ)を含むことができ、コントローラは、システムに対するオーバーレイのこの検出した向きに基づいて、タッチセンサ面112のコマンド領域レイアウトを設定することができる。
【0066】
2.一体化されたトラックパッド
図11に示すように、人間コンピュータインターフェースのためのシステムの一変形例は、タッチセンサ110、カプラ132、振動子120、スピーカ(すなわち、オーディオドライバ140)およびコントローラ150を含む。タッチセンサ110は、基板と、基板上にパターン化された検知電極および駆動電極のペア116のアレイと、基板の上方に配置されて、基板の反対側にタッチセンサ面112を規定する抵抗層であって、タッチセンサ面112に加えられる力の大きさの変化に応じて局所的バルク抵抗の変化を示す材料を含む抵抗層とを含む。カプラ132は、基板をコンピューティングデバイスのシャーシ130に取り付けるとともに、基板の広い平面に平行な振動面内での基板の動きを許容するように構成されている。振動子120は、クリックサイクル中に振動面内で基板を振動させるように構成されている。スピーカは、クリックサイクル中にクリック音を再生するように構成されている。コントローラ150は、タッチ面上に閾値力の大きさを超える力が加えられたことに応答して、クリックサイクル中にスピーカを起動してクリックを再生するとともに、振動子120を起動してハウジング160を振動させ、さらに、タッチ面上に閾値力の大きさを超える力が加えられたことに応答して、コマンドを出力する。
【0067】
コンピュータシステムとユーザをインタフェースするシステムの同様の変形例は、タッチセンサ面114を含むタッチセンサ110であって、タッチセンサ面114上に配置された検知電極および駆動電極のペア116のアレイを含み、検知電極および駆動電極のペア116上に延在するタッチセンサ面112を規定するタッチセンサと、タッチセンサ110に結合され、タッチセンサ面112に平行な面内で質量体を振動させるように構成された振動子120と、シャーシ130と、タッチセンサ110とシャーシ130との間に設けられ、振動子120の作動時にタッチセンサ面112と平行なシャーシ130に対するタッチセンサ110の変位を吸収するように構成されたカプラ132と、シャーシ130に結合されたオーディオドライバ140と、コントローラ150とを含む。この変形例では、コントローラ150は、タッチセンサ110の第1の検知電極および駆動電極のペア間の第1の抵抗の変化に基づき、第1の時間において、タッチセンサ面112への第1の入力の印加および第1の入力の第1の力の大きさを検出し;第1の力の大きさが第1の閾値の大きさを超えることに応答して、振動子120、シャーシ130内のタッチセンサ110を駆動し、オーディオドライバ140を起動してクリック音を出力することによって、第1のクリックサイクルを実行し;ほぼ第1の時間に、タッチセンサ面112上の第1の入力の第1の位置および第1の力の大きさを示す第1のタッチ画像を出力する。
【0068】
2.1 アプリケーション
この変形例では、通常、システムは、(人間の)ユーザによる入力を検出し、それら入力を機械可読コマンドに変換し、それらコマンドをコンピューティングデバイスに伝達し、入力が検出されたことを示すフィードバックをユーザに与える人間コンピュータインタフェースデバイスを規定するための要素を含み、上述した方法および技術を実行する。具体的には、システムは、入力を検出するタッチセンサ110と、フィードバックをユーザに与えるハプティックフィードバックモジュール(例えば、スピーカおよび振動子120)と、タッチセンサ110で検出された入力に基づいて、接続されたコンピューティングデバイスにコマンドを出力するコントローラ150であって、ハプティックフィードバックモジュールを介してハプティックフィードバックをトリガするコントローラとを含む。
【0069】
システムは、図12図15A図15B図15C図15Dおよび図15Fに示すように、コンピューティングデバイスに統合されて、一体化されたトラックパッドおよび/または一体化されたキーボードにまたがるような、タッチセンサ面112を規定することができる。システムは、閾値最小印加力または圧力を超える指またはスタイラスによる印加など、タッチセンサ面112上の入力を検出し、そのような入力に応答して、聴覚的および振動的(以下「ハプティック」と称する)フィードバックをユーザに発して、押下および解放されるときの機械的スナップボタンの聴覚的および触覚的な応答を模倣することができる。このため、システムは、垂直方向に拘束されたタッチセンサ面112を規定するが、機械的ボタンが押下および解放されたという印象をユーザに提供することができる。システムは、ラップトップコンピュータなどのコンピューティングデバイスに組み込まれた場合、タッチセンサ面112で検出された入力に基づいて、キーストローク、カーソルベクトルおよび/またはスクロールコマンドなどを出力することができ、コンピューティングデバイスは、システムから受信したそのようなコマンドに基づいて、処理を実行すること、あるいは一体化されたディスプレイ上に与えられるグラフィックユーザインターフェースをアップデートすることができる。代替的には、システムは、周辺機器キーボードまたは一体化されたトラックパッドを有する周辺機器キーボードなどの周辺装置に統合することができる。
【0070】
本明細書では、システムは、ユーザ入力を検出し、ユーザ入力に応答してユーザにハプティックフィードバックを提供し、それらユーザ入力に基づいて、統合されたコンピューティングデバイス内の別の処理ユニットまたはコントローラ150にコマンドを出力する統合された人間コンピュータインタフェースコンポーネントとして説明されている。しかしながら、システムは、コンピューティングデバイスに対して接続および切断されるスタンドアロンデバイスまたは周辺装置を代わりに規定することができ、接続されたときに、タッチセンサ面112上で検出された入力に基づいてコンピューティングデバイスにコマンドを出力することができる。例えば、システムは、リモートコントローラ150、ゲームコントローラ150、固定電話、スマートフォンまたはウェアラブル装置などを規定することができる。
【0071】
2.2 統合
この変形例では、システムは(例えば、コンピューティングデバイスに一時的に接続するように構成された周辺インターフェースデバイスを規定するのではなく)コンピューティングデバイスに統合される。一実施例では、システムは、ラップトップコンピュータのキーボードに隣接する一体化されたトラックパッドとして機能することができる。この実施例では、タッチセンサ面112および振動子120は、クリックサイクル中にタッチセンサ面112を通る振動の伝達を実質的に維持するために、コンピューティングデバイスの構造から機械的に分離されている。例えば、振動子120、検知電極および駆動電極を含み、タッチセンサ110を支持するハウジング160は、ハウジング160を吊り下げる圧縮可能な発泡体パッドによって、その頂面、底面および/または側面をコンピューティングデバイスの筐体から分離することができる。別の実施例では、ハウジング160は、流体で満たされたダンパによってコンピューティングデバイスの筐体に結合することができる。したがって、この実施例では、シャーシ130は、モバイルコンピューティングデバイスのハウジング160を含み、レセプタクル134を規定することができ、カプラ132は、レセプタクル134内でタッチセンサ110を位置決めすることができる。この実施例では、システムは、ハウジング160内に配置され、よってコンピューティングデバイスの構造から機械的に分離された、上述のオーディオドライバ140を含むことができる。コンピューティングデバイスは、主スピーカ(または主スピーカのセット)を含むことができるとともに、副スピーカを含むシステムを含むことができ、副スピーカは、主スピーカとは独立に、クリックサイクル中にクリック音を再生して、作動された機械的スナップボタンの音を模倣する。代替的には、この実施例では、システムは、スピーカを除くことができ、コントローラ150は、コンピューティングデバイスに組み込まれた1または複数の主スピーカを介してクリック音を再生することができる。
【0072】
2.3 タッチセンサ+コントローラ
この変形例では、タッチセンサ110およびコントローラ150は、タッチセンサ110の検知電極と駆動電極のペア間の抵抗の変化などに基づいて、タッチセンサ面112上の入力および入力の大きさを検出するための要素を含み、上述したものと同様の機能を実行することができる。
【0073】
さらに、コントローラ150は、タッチセンサ110の基板上に配置されて、完全に収容されたタッチセンサ110を形成することができ、このタッチセンサは、接続されたコンピューティングデバイスから電力を受け取り、タッチセンサ面112上の入力を検出し、検出した入力に応答して機械的な振動および音などの形態のハプティックフィードバックを出力し、タッチセンサ面112上で検出した入力に対応するコマンドを出力する。代替的には、コントローラ150のすべてまたは一部が基板から離れていてもよく、例えば、接続されたコンピューティングデバイス内に配置され、かつ/またはコンピューティングデバイス内の他のコントローラとともに1または複数のプロセッサと物理的に同一の広がりを有するようにしていもよい。
【0074】
2.4 ハプティックフィードバックモジュール
この変形例では、システムは、上述したように、振動子120およびスピーカを含む。例えば、振動子120は、振動線形アクチュエータに接続された質量体を含むことができ、このアクチュエータは、作動時に質量体を単一の作動軸に沿って振動させる。この実施例では、振動子120の作動軸をシステムの振動面と平行にして、振動子120を基板に結合させることができ、カプラ132は、振動子120の作動軸と実質的に平行な移動の1角度(one degree)を除いて基板を拘束することができる。別の実施例では、振動子120は、回転アクチュエータに結合された偏心質量を含み、このアクチュエータが、作動時に回転軸を中心に偏心質量を回転させる。この実施例では、振動子120の回転軸をシステムの振動面に対して垂直にして、振動子120を基板に結合させることができ、カプラ132は、振動子120の回転軸に対して垂直な移動の2角度を除いて、基板を拘束することができる。代替的には、振動子120は、振動ダイヤフラムまたは他の任意の適切なタイプの振動アクチュエータ上の質量体を含むことができる。また、振動子120は、圧電アクチュエータ、ソレノイド、静電モータ、ボイスコイル、または質量体を振動させるように構成された他の任意の形態またはタイプのアクチュエータを含むことができる。
【0075】
上述したように、システムは、クリックサイクル中に「クリック」音を出力するように構成されたスピーカ(またはブザーまたは他のオーディオドライバ140)も含む。この変形例では、スピーカを基板上に配置して、クリックサイクル中に基板とともに移動させることができる。この実施例では、抵抗層は、スピーカ上のスピーカグリルを規定する1または複数の穿孔を含むことができ、スピーカは、穿孔を介してユーザに音を出力することができる。代替的には、抵抗層の外周が、コンピューティングデバイスと抵抗層との間にギャップを形成するために、基板と抵抗層を収容するコンピューティングデバイスのレセプタクル134内でオフセットされるようにしてもよく、スピーカは、このギャップを介してユーザに伝達される音を出力することができる。例えば、スピーカは、タッチセンサ面112の反対側の基板上に配置することができ、タッチセンサ面112は、スピーカにより出力される音を通過させるように構成されたギャップを形成するために、レセプタクル134の1または複数の縁部からインセットされるトラックパッド面を規定することができる。
【0076】
代替的には、スピーカを基板から離して配置することができる。例えば、スピーカは、コンピューティングデバイスのシャーシ130内に配置された別個のスピーカ(例えば、主スピーカ)を規定することができる。それらの実施例において、コンピューティングデバイスは、主スピーカ(または主スピーカのセット)を含むことができ、コンピューティングデバイスに統合されたシステムは、副スピーカを含むことができ、副スピーカは、主スピーカとは独立に、クリックサイクル中にクリック音を再生して、作動された機械的スナップボタンの音を模倣する。代替的には、スピーカは、コンピューティングデバイスの主スピーカと物理的に同一の広がりを持つことができ、主スピーカは、「クリック」音と、録音されたライブオーディオ(例えば、音楽、コンピューティングデバイスで再生されるビデオのオーディオトラック、ビデオまたはボイスコール中の生の音声)を実質的に同時に出力することができる。
【0077】
さらに、コンピューティングデバイス内のオーディオシステムがユーザによってミュートされると、コンピューティングデバイスは、タッチセンサ面112上の入力に応答して、「クリック」音を除き、コンピューティングデバイスからのすべてのオーディオ出力をミュートすることができる。同様に、コンピューティングデバイスは、コンピューティングデバイスによって実行され、コンピューティングデバイス上で設定される様々な他の機能にもかかわらず、タッチセンサ面112上の入力の実質的に均一な「感触」を維持するために、コンピューティングデバイスで設定されたオーディオレベルに関係無く、スピーカを起動して一定のデシベルレベル(または「音の大きさ」)で「クリック」音を出力することができる。このため、スピーカがコンピューティングデバイスに組み込まれて(例えば、タッチセンサ110から離れてシャーシ130に取り付けられて)モバイルコンピューティングデバイスにおいて主スピーカを規定するこの実施例では、コントローラ150は、モバイルコンピューティングデバイスのグローバル音量設定とは無関係に、オーディオドライバ140を起動して固定の予め設定された音量でクリック音を出力するように構成されている。
【0078】
2.5 カプラ
カプラ132は、基板をコンピューティングデバイスのシャーシ130に取り付けるとともに、基板の広い平面に平行な振動面内での基板の動きを許容するように構成されている。一般に、カプラ132は、コンピューティングデバイス(例えば、ラップトップコンピュータ)のシャーシ130に対して基板を拘束するが、基板、振動子120および抵抗層がクリックサイクル中に、タッチセンサ面112に対して実質的に平行な平面内で振動することを許容する。
【0079】
Z軸に対して垂直で振動面に対して平行なシステムのX軸に沿って振動子120が直線的に質量体を振動させる一実施例では、カプラ132は、何れかの軸周りの回転およびシステムのY軸およびZ軸の両方に沿った移動を含む5自由度で、基板を(ほぼ)拘束することができ、カプラ132は、クリックサイクル中に振動子120が作動されるときに、基板が(実質的に)システムのX軸に沿ってのみ移動することを許容することができる。振動子120が回転アクチュエータの出力軸に結合された偏心質量体を含み、回転アクチュエータの出力軸がタッチセンサ面112に対して垂直である(すなわち、システムのZ軸に平行である)別の実施例においては、カプラ132は、何れかの軸周りの回転およびシステムのZ軸に沿った移動を含む4自由度で、基板を(ほぼ)拘束することができ、カプラ132は、クリックサイクル中に振動子120が作動されるときに、基板がシステムのX軸およびY軸に沿って(すなわち、タッチセンサ面112に平行な面において)移動することを許容することができる。
【0080】
一実施例では、コンピューティングデバイスのシャーシ130は、システムを受け入れるように構成されたレセプタクル134(例えば、キャビティ)を規定し、カプラ132は、レセプタクル134内の基板および抵抗層を位置決めするように機能する。また、コンピューティングデバイスのシャーシ130は、レセプタクル134の上および中に延在してキャビティの周りにアンダーカットを形成するオーバーハングも規定することができ、カプラ132は、例えば、1または複数の機械的ファスナー、グロメットまたは接着剤などを介して、オーバーハングの下側に基板を取り付けることができる。
【0081】
一変形例では、タッチセンサ110がタッチセンサ面114を含み、このタッチセンサ面が、基板の裏面にわたって延在し、タッチセンサ面112に加えられる下向きの力などによる振動面からの偏向に対して、基板を支持するように機能する。この変形例では、タッチセンサ面114は、ガラス繊維プレート、金属(例えば、アルミニウム)プレート、繊維充填ポリマープレートまたは他の任意の材料からなるプレートを含むことができ、機械的ファスナまたはグロメットなどにより基板に結合すること又は取り付けることができ、タッチセンサ面114は、コンピューティングデバイスのシャーシ130に結合または固定して、レセプタクル134内に基板および抵抗層を取り付けることができる。
【0082】
代替的には、典型的な荷重がタッチセンサ面112に加えられたときに、振動面からの実質的な変形に抵抗するのに十分な剛性を基板が有するように、基板を剛性材料から形成し、かつ/または厚さとすることができる。例えば、基板は、厚さ3mmのガラス繊維または炭素繊維のPCBを含むことができる。追加的または代替的には、基板は、基板の剛性を改善するために、1または複数の鋼、銅またはアルミニウムのリブを含むことができ、それらが、基板の裏面にはんだ付けまたはリベット止めされて、基板の長さおよび/または幅にわたっている。このため、基板は、ある材料および形状からなるものであってもよく、かつ/または、基板および抵抗層アセンブリに実質的な質量を追加することなく振動面における基板の剛性を増加させる追加的な補強要素を含むことができ、それにより、剛性基板による振動の吸収の減少によるシステムの応答性を改善することができるとともに、クリックサイクル中の振動子120の1ストローク当たりの基板および抵抗層アセンブリの変位を増加させることができる。
【0083】
2.5.1 グロメット
一実施例では、カプラ132は、弾性グロメット(例えば、「振動減衰スナップイン非ネジ式スペーサ」)を介して、コンピューティングデバイスのレセプタクル134に基板(またはタッチセンサ面114)を取り付ける。図13D図13E図17Aおよび図17Bに示す一実施例では、カプラ132は、2つのネック部を含む1つの円筒形グロメットを含み、グロメットの上側ネック部が基板の対応するボアと係合した状態で、グロメットが基板の各コーナでボアに挿入されている。この実施例では、各グロメットについて、カプラ132は、金属またはガラス繊維のタブなどの剛性タブも含み、この剛性タグが、グロメットの下側ネック部と係合する第1のボアと、第1のボアから横方向にオフセットした第2のボアであって、ネジ、ナットまたはリベットなどのファスナを介してコンピューティングデバイスのシャーシ130に取り付けられるように構成された第2のボアとを含む。この実施例では、剛性タブが、例えば基板の周囲を取り囲む剛性フレームを形成するように、あるいは基板の裏面にまたがる剛性プレートの形態に連結されるものであってもよい。この実施例では、各グロメットは、上側ネック部と下側ネック部との間の拡大部分を含み、その拡大部分が、タブの上方(または剛性フレームの上方、剛性プレートの上方)で基板を垂直方向にオフセットさせるとともに、基板を垂直方向に支持しながら基板がタブ(または剛性フレーム、剛性プレート)に対して横方向に移動することを許容する。この実施例では、各グロメットは、シリコーン、ゴムまたは他の任意の可撓性または弾性材料から形成することができ、さらに、クリックサイクル中の振動子120の振動に起因するグロメットの横方向の撓みを許容するが、タッチセンサ面112上に人間の片手または両手が置かれているとき、および/またはタッチセンサ面112にわたって両手がキーストローク(例えば、「タイプ」)を入力しているときなど、典型的な荷重におけるグロメットの圧縮を制限するのに十分なデュロメータによって特徴付けることができる。
【0084】
図13Fに示す別の実施例では、カプラ132は、単一のネック部を含む円筒形グロメットを含み、このグロメットが基板の各コーナのボアに一つずつ挿入されている。この実施例では、カプラ132は、グロメットごとに1つの剛性タブまたは基板にまたがる剛性フレームまたは剛性プレートも含む。タブ、フレームまたはプレートは、コンピューティングデバイスのシャーシ130に対して垂直方向にグロメットを拘束するために、基板の背部に取り付けられている。クリックサイクル中、グロメットは、振動子120が作動されるときに、曲がりまたは屈曲して、基板が振動面内を移動することを可能にする。コンピューティングデバイスのシャーシ130および/またはタブ、フレームまたはプレートは、グロメット凹部も含むことができ、このグロメット凹部は、グロメットの端部を受け入れて、グロメットをコンピューティングデバイスのレセプタクル134内で横方向および縦方向に位置決めするように構成されている。各グロメット凹部は、円筒状グロメットには大き過ぎる円筒状凹部を規定することができ、それによりグロメットが横方向および縦方向の両方に移動することを可能にして、クリックサイクル中に基板が振動面内で横方向および縦方向の両方に移動することを可能にする。同様に、各グロメット凹部は、グロメットがグロメット凹部内で横方向にのみ(または縦方向にのみ)移動することを可能にする細長い(または「菱形」)凹部を規定することができ、それにより、クリックサイクル中に基板が振動面内で横方向(または縦方向)に移動するのを可能にすることができる。
【0085】
この実施例では、グロメットは中実の可撓性本体を規定することができる。代替的には、グロメットは、剛性または弾性本体と、本体の内側(または外側)に配置された屈曲部とを含むことができる。この実施例では、グロメットは、基板(またはタッチセンサ面114)をコンピューティングデバイスのシャーシ130に結合させることができ、屈曲部は、本体に対して相対的に移動して、それによりシャーシ130に対して基板が横方向および/または縦方向にシフトすることを可能にするように構成されている。代替的には、システムは、より大きな圧縮およびコンプライアンスを許容する1または複数の流体で満たされかつ/またはリブ付きのグロメットを含むことができる。例えば、グロメットは、振動面からの撓みよりも振動面内におけるより大きな撓みを許容する内部半径方向リブのセットを含むことができる。
【0086】
このため、この実施例では、振動子120は、タッチセンサ110のタッチセンサ面114(例えば、タッチセンサ110の中心付近)に結合させることができるとともに、タッチセンサ面112に平行でかつタッチセンサ110の縁部に平行なベクトルに沿って質量体を振動させるように構成された線形アクチュエータを含むことができ、カプラ132は、モバイルコンピューティングデバイスのシャーシ130から延びてタッチセンサ面114内の取付ボアを通り抜けるグロメットであって、シャーシ130に対してタッチセンサ面114を垂直方向に拘束するように構成されるとともに、タッチセンサ面112と平行な方向に弾性を示すグロメットを含むことができる。しかしながら、この実施例では、カプラ132は、他の任意の構成の他の任意の数のグロメットを含むことができる。例えば、カプラ132は、三角形構成の3つのグロメットと;基板またはタッチセンサ面114の各コーナに1個ずつ設けられた四角形構成の4つのグロメットと;基板(またはタッチセンサ面114)の各コーナに1個ずつ設けられたグロメットおよび基板の各長辺(またはタッチセンサ面114の各長辺)の中心に1個ずつ設けられたグロメットを含む6つのグロメットとを含むことができる。このため、システムは、限定された数のファスナまたは接着剤でコンピューティングデバイスのレセプタクル134に取り付けることができる完全な人間コンピュータインタフェースサブシステムを規定することができる。
【0087】
2.5.2 アイソレータ
図13Aに示す別の実施例では、カプラ132は、基板の裏面側(またはタッチセンサ面114の裏面側)およびコンピューティングデバイスのレセプタクル134内の表面に接合された弾性アイソレータを含む。一実施例では、カプラ132は、一方の側でタッチセンサ面114の裏面に結合され、かつコンピューティングデバイスのレセプタクル134の底部に結合された(例えば4つの)シリコーンボタンのセットを含む。この実施例では、タッチセンサ面112に力が加えられたときにシリコーンボタンを圧縮状態とすることができ、このため、シリコーンボタンは、タッチセンサ面112に力が加えられるときに圧縮に実質的に抵抗するのに十分な弾性率および幾何学的形状を規定することができるが、クリックサイクル中に振動面において基板が平行移動することを可能にする。代替的には、この実施例では、カプラ132は弾性アイソレータを含むことができ、この弾性アイソレータが、基板の上面(またはタッチセンサ面114の上面)に接合されるとともに、コンピューティングデバイスのレセプタクル134内に延びるコンピューティングデバイスのCサイド(C-side)の上面の下側に接合され、弾性アイソレータは、レセプタクル134内で基板を吊り下げることができる。
【0088】
2.5.3 バネクリップ
図13Cに示す別の実施例では、カプラ132は、基板(またはタッチセンサ面114)をコンピューティングデバイスのシャーシ130に結合するバネクリップのセットを含む。一実施例では、カプラ132は(例えば、4つ)のバネ鋼のバネクリップのセットを含み、それぞれが実質的に水平な2つのタブの間に介装された実質的に垂直なセクションを規定して、ZセクションまたはCセクションを形成する。この実施例では、各バネタブの上側タブがコンピューティングデバイスのシャーシ130に固定され(例えば、リベット留めされ)、各バネタブの下側タブが同様に、基板の1つのコーナに固定され、バネクリップのセットのすべての中央セクションの広い面が平行に配置される。この実施例では、バネクリップに張力をかけることができ、バネクリップがシャーシ130から基板を吊り下げることができるが、基板を振動面内の単一軸に沿って動くのを許容することができる。
【0089】
2.5.4 発泡体ラップ
図13Gに示す別の実施例では、カプラ132は、基板の一縁部に沿って基板の上面から基板の底面に巻き付けられた第1の発泡体部分と、基板の反対側の縁部に沿って基板の上面から基板の底面に巻き付けられた第2の発泡体部分と、コンピューティングデバイスのシャーシ130に対して固定され、発泡体部分をシャーシ130に対して拘束するクランプのセットとを含む。例えば、各発泡体部分は、独立気泡シリコーン発泡体を含むことができ、基板の上面および底面の両方で基板(またはシリコーンバッキング)に接着することができる。代替的には、基板は、発泡体部分から引き離すことができ(例えば、接着されておらず)、クリックサイクル中に発泡体部分に対して平行移動することができる。各クランプはクリップを含むことができ、このクリップが、リベット、ネジまたは他の機械的ファスナを用いて、コンピューティングデバイスのシャーシ130に固定して、基板の縁部の周りに巻き付けられた隣接する発泡体部分を、コンピューティングデバイスのシャーシ130に対して圧縮するように構成されている。さらに、この実施例では、レセプタクル134によって基板が過度に拘束されずに、クリックサイクル中に基板が振動面内を移動することができるように、コンピューティングデバイスのレセプタクル134の長さおよび/または幅を大きくすることができる。
【0090】
2.5.5 ベアリング
図13Bに示すさらに別の実施例では、カプラ132は、ベアリングのセットを介して基板(またはタッチセンサ面114)をコンピューティングデバイスのシャーシ130に取り付ける。一実施例では、コンピューティングデバイスのレセプタクル134は、複数のベアリング受けを含むことができ、基板は、各ベアリング受けと垂直方向に整列され、かつタッチセンサ面112とは反対側の基板の裏面側に配置される1つのベアリング面を含むことができ、カプラ132はボールベアリングを含むことができ、ボールベアリングは各ベアリング受けに1個ずつ配置され、基板の裏面側の対応するベアリング面で基板を垂直方向に支持するように構成されている。
【0091】
別の実施例では、コンピューティングデバイスのレセプタクル134は、基板の裏面に沿って間隔を置いて配置された3×8グリッドアレイに配置された24個のベアリング受けを規定し、カプラ132は各ベアリング受けに1個ずつ配置されたボールベアリングを含む。この実施例では、ベアリングは、(典型的な大きさの)荷重がタッチセンサ面112に加えられたときに基板の局所的な撓みを制限するために、隣接するベアリング間の限られた最大スパンで基板(またはタッチセンサ面114)を支持することができる。このため、カプラ132は、基板を垂直方向に支持するスラストベアリングとして機能する複数のベアリングを含むことができる。しかしながら、この実施例では、コンピューティングデバイスは、他の任意の方法で配置された他の任意の数のベアリングを含むことができる。
【0092】
この実施例では、各ベアリング受けは、平行移動においてボールベアリングを拘束する半球形のカップを規定することができ、基板は、鋼またはポリマーの平坦なベアリング面を含むことができ、このベアリング面は、基板の裏面(またはタッチセンサ面114の裏面)にはんだ付けされ、接着され、または取り付けられ、図13Hに示すように、接触点で隣接するボールベアリングと係合するように構成されている。代替的には、基板(またはタッチセンサ面114)に取り付けられた各ベアリング面は、線形トラック(例えば、V溝)を規定することができ、ベアリング面のセットのすべての線形トラックは、図13Bに示すように、平行となっていて、クリックサイクル中に線形トラックに平行な単一方向に振動平面内で基板が平行移動することができる(またはその逆となっている)。また、ベアリング受けおよびベアリング面は、単一の軸に沿って平行移動するように基板を拘束する同様の平行な線形トラックを規定することもでき、あるいはベアリング受けおよびベアリング面は、振動プレート内の2つの軸に沿って基板が平行移動することを可能にする、同様であるが、垂直方向の線形トラックを規定することができる。さらに、各ベアリング受けには、湿潤または乾式潤滑剤(例えば、グラファイト)を充填することができる。
【0093】
この実施例では、カプラ132は、代替的に、1つまたは2つの軸のみに沿って平行移動するように基板を同様に拘束する1または複数の線形ベアリングまたは線形スライドを含むことができる。
【0094】
さらに、カプラ132は、基板(またはタッチセンサ面114)に追加の支持を提供するために、上述した実施例の何れかを備えた1または複数のベアリングを組み込むことができる。例えば、基板がレセプタクル134内に配置されて、基板(またはタッチセンサ面114)の厚さおよび剛性(例えば、弾性率)に対して大きな幅および/または大きな長さにわたる場合、コンピューティングデバイスのレセプタクル134は、1または複数のベアリング受けを含むことができ、基板は、抵抗層とは反対側の基板の裏側にあるコンピューティングデバイスのレセプタクル134内の各ベアリング受けと整列されたベアリング面をそれぞれ含むことができ、カプラ132は、シャーシ130からの基板の四隅の各々を吊り下げる4つのバネクリップと、各ベアリング受けに1個ずつ配置されて、基板の裏面の対応するベアリング面で基板を垂直方向に支えるように構成されたボールベアリングとを含むことができる。
【0095】
2.5.6 屈曲部
図13Hに示す別の実施例では、カプラ132は屈曲部を規定し、この屈曲部が、基板(またはタッチセンサ面114)に結合されるか、または組み込まれている。例えば、基板の外周に沿った部分を、例えばルータ加工により取り除いて、基板の中心部分から延びる蛇行したビームまたはブストロフェディック(boustrophedic)なビームのセットを形成することができる。この実施例では、基板をシャーシ130に結合するが、コンピューティングデバイスに対して振動面内で基板を横方向および/または横方向に平行移動させるために、各ビームの遠位端をコンピューティングデバイスのシャーシ130にリベットまたはネジ付きファスナなどで固定することができる。この実施例では、カプラ132は、上述したように、タッチセンサ面112に力が加えられたときに、内向きの撓みに対して基板の中心部分を垂直方向に支持するための1または複数のベアリングも含むことができる。
【0096】
2.6 振動子の変形例
図16に示す一変形例では、振動子120は、基板(またはタッチセンサ面114)に取り付けられた磁気コイルと、コンピューティングデバイスのシャーシ130に結合された磁気(または鉄)要素とを含むか、またはその反対に取り付けられた磁気コイルおよび磁気要素を含む。例えば、磁気要素は、システムおよびコンピュータシステムの合計高さを低減するために、コンピューティングデバイスのシャーシ130の凹部内に埋め込むことができる。代替的には、振動子120は、ブロックS120において、コンピューティングデバイスのシャーシ130の凹部内に配置された磁気コイルと、基板に固定(例えば、リベット留め、接着、はんだ付け)された磁気要素とを含むことができる。クリックサイクル中、コントローラ150は、磁気コイルを交流で駆動して、ボイスコイルと同様に磁気要素に磁気的に結合する振動磁界を磁気コイルに出力させ、それにより振動面において基板をシャーシ130に対して相対的に振動させる。この変形例では、基板(またはタッチセンサ面114)は、上述したようにシャーシ130から吊り下げられている。
【0097】
代替的には、システムは、図17Aに示すように、基板(またはタッチセンサ面114)とコンピューティングデバイスのシャーシ130との間に配置され、かつ振動面内で横方向(または縦方向)に基板を振動させるように構成された、圧電アクチュエータ、ソレノイド、静電モータ、ボイスコイル、スピーカまたは他の任意のタイプのアクチュエータを含むことができる。
【0098】
2.7 タッチセンサ面の接合部
一実施例では、抵抗層は、基板の外周を越えて延び、コンピュータデバイスのシャーシ130の外面と接触する。例えば、コンピューティングデバイスのCサイドにわたって連続的な表面を形成するために、抵抗層は、基板の外周から、基板とコンピューティングデバイスのレセプタクル134との間の接合部を越えて、コンピューティングデバイスのシャーシ130の上面の外周まで延びるようにしてもよい。この実施例では、抵抗層が基板とコンピューティングデバイスのレセプタクル134との間の接合部に及ぶ場合に、クリックサイクル中に基板の振動を減衰させ、かつ/またはクリックサイクル中の振動面内での基板の平行移動に対する機械的抵抗を制限するために、抵抗層は、薄い領域または「ネック」を規定することもできる。
【0099】
別の実施例では、抵抗層は基板の外周まで延びるが、基板の外周を(実質的に)越えることはない。この実施例では、システムは、基板の外縁部とコンピューティングデバイスのレセプタクル134の内壁との間に配置された軟質シール(例えば、成形シリコーンリング)をさらに含むことができ、それによりシステムとコンピューティングデバイスのレセプタクル134との間に埃、湿気および/または他のゴミが侵入するのを防止することができる。代替的には、抵抗層の外周に成形された隆起部または蛇腹部などのような形態のシールを抵抗層と一体化することができ、基板とコンピューティングデバイスのレセプタクル134との間の接合部を橋渡ししてシールするのに十分な短い距離だけ、基板の外周を越えて抵抗層を延ばすことができる。
【0100】
しかしながら、システムは、基板とコンピューティングデバイスのレセプタクル134との間の接合部を閉鎖またはシールするための他の任意の要素または特徴を含むことができる。
【0101】
2.8 トラックパッド+キーボード
コンピューティングデバイスがラップトップコンピュータを規定する一変形例では、図12図15A図15B図15C図15Dおよび図15Fに示すように、コンピューティングデバイスは、そのCサイドの実質的に全幅および全長にわたるレセプタクル134を含み、システムが、トラックパッド領域およびキーボード領域の両方を規定することができる。この変形例では、コントローラ150は、クリックサイクルを起動し、クリックコマンド、カーソルベクトルまたはスクロールコマンドなどを出力することによって、トラックパッド領域上の入力に応答する前述した方法および技術を実行することができる。この変形例では、コントローラ150は、キーボードの個別のキー領域(例えば、26個のアルファベットキー領域、10個の数字キー領域および様々な句読点および制御キー)を指定することもでき、キーボードの対応する個別のキー領域上で検出された入力に応答して、クリックサイクルを起動してキーストロークコマンドを出力することができる。
【0102】
一実施例では、タッチセンサ面112は、キーボード領域およびトラックパッド領域にわたって連続面を規定し、システムは、タッチセンサ面112にわたってスクリーン印刷された白インクのような、タッチセンサ面112のキーボード領域における個別のキー領域に印刷または貼付されるキー指定子(例えば、英数字キャラクタ、句読点キャラクタ)を含む。この実施例では、システムは、そのようなインクで指定された個別のキー領域および/またはトラックパッド領域のための境界も含むことができる。システムは、追加的または代替的に、タッチセンサ面112にわたってエンボス加工またはデボス加工されたキー指定子および/または領域指定子を含み、それによりユーザが、タッチセンサ面112の様々な領域を触覚的に区別することを可能にする。さらに代替的には、システムは、タッチセンサ面112のキーボード領域上に取り付けられ、かつ視覚的にまたは機械的に区別された個別のキー領域を含むキーボードオーバーレイ164を含むことができ、それにより、キーボード領域内の様々な個別の入力領域にリンクされたコマンドまたは入力を規定することができる。この実施例では、キーボードオーバーレイ164は、タッチセンサ面112のキーボード領域に一時的に(すなわち取り外し可能に)取り付けることができ、それにより例えば、ユーザがQWERTYキーボードレイアウトを規定する第1のキーボードオーバーレイ164を、AZERTYキーボードレイアウトを規定する第2のキーボードオーバーレイ164と交換することを可能にすることができる。この実施例では、タッチセンサ面112のキーボード領域上に配置されたオーバーレイ164の個別のキー領域を押し下げることにより、抵抗層を局所的に圧縮することができ、それにより駆動電極および検出電極上の抵抗層のバルク抵抗および/または接触抵抗を変更することができ、また、コントローラ150は、そのような抵抗層のバルク抵抗および/または接触抵抗の変化を入力として検知し、入力の位置に基づいて特定のキーストロークをその入力に関連付け、コンピューティングデバイス内の処理ユニットにそのキーストロークを出力し、クリックサイクルを起動することができる。
【0103】
この変形例では、コンピューティングデバイスのCサイドの近端部とキーボード領域との間にトラックパッド領域を介在させることができ、ユーザがキーボードをタイプするときにトラックパッド上に手のひらを置くことができるように、トラックパッド領域がキーボード領域の幅のかなりの部分に沿って広がるものであってもよい。動作中、コントローラ150は、ユーザがキーボード領域上でタイプしているときに、カーソル移動ではなく、キーストロークを検知するために、トラックパッド上の入力を手のひらと特徴付けて、そのような入力を拒絶し、キーボード領域上の入力を選択することができる。例えば、コントローラ150は、パターンマッチングまたはテンプレートマッチング技術を実行して、タッチセンサ面112のトラックパッド領域上で検出された1または複数の入力領域を、1または2の手のひらと一致させることができ、コントローラ150はそれらの入力を拒絶することができる。この実施例では、コントローラ150は、タッチセンサ面112のキーボード領域上の1入力または一連の入力(例えば、「キーストローク」)の検出に応答して、置いている手のひらに対応するものとして入力領域の特定を確認することができ(例えば、入力領域と分類された手のひらテンプレートとの間のマッチングを確認することができ)、その反対を行うこともできる。また、システムは、トラックパッド領域上の入力領域をキャプチャし、それらの入力領域を新しいテンプレート画像として記憶し、トラックパッド領域上の入力領域の検出の閾値時間(例えば、3秒)以内に続くキーボード領域上のキーストロークの検出に基づいて、それらの新しいテンプレート画像を、置いている手のひらを示すものとして、または置いている手のひらを示すものではないとして、分類することもできる。しかしながら、コントローラ150は、手のひらを排除する他の任意の方法または技術を実行することができ、手のひらの排除モデルを自動的に教育するための他の任意の方法または技術を実行することができる。
【0104】
さらに、システムは、タッチ面のトラックパッド領域内で検出された入力を、タッチ面上の入力の初期位置、最終位置、速度、力(または圧力)の大きさなどに基づいて、様々なコマンドの1つとして変換することができる。例えば、コントローラ150は、上述した方法および技術に基づいて、クリック、ディープクリックスクロール、ズームおよびカーソル移動のコマンドのうちの1つとしてタッチ面上の入力を解釈することができる。この実施例では、コントローラ150は、トラックパッド領域内のクリック入力を規定する第1の押下閾値の大きさまでの第1の力がトラックパッド領域に加えられ、その後にトラックパッド領域から第1の力が解放された(すなわち、第1の押下閾値の大きさより小さい第1の解放閾値の大きさ未満となった)場合に、選択(または「左クリック」)入力として解釈することができる。その後、コントローラ150は、選択(または「左クリック」)コマンドを出力し、それに応じて、タッチセンサ面112のトラックパッド領域の下にある第1の振動子120などを介して、「ダウン」クリックサイクルを実行し、次に「アップ」クリックサイクルを実行することができる。
【0105】
同様に、コントローラ150は、トラックパッド領域内の「ディープ」(または「右クリック」)クリック入力を規定する第2の押下閾値の大きさまでの第2の力がトラックパッド領域に加えられ、その後にトラックパッド領域から第2の力が解放された(すなわち、第1の解放閾値の大きさ未満となった)場合に、「ディープクリック」入力として解釈することができる。その後、コントローラ150は、ディープクリック(または「右クリック」)コマンドを出力し、それに応じて、第1の振動子120を介して「ディープダウン」クリックサイクルを実行し、次に「アップ」クリックサイクルを実行することができる。
【0106】
さらに、コントローラ150は、キーボード領域内のクリック入力を規定する(例えば、第1の押下閾値の大きさよりも小さい)第3の押下閾値の大きさまでのキーボード領域に加えられる第3の力を、タッチセンサ面112上の第3の力の位置に割り当てられたキャラクタのキーストロークとして解釈することができ、その後、コントローラ150は、このキーストロークを出力し、タッチセンサ面112のキーボード領域の下にある第2の振動子122を介して、単一の「ダウン」クリックサイクルを実行することができる。コントローラ150は、キーボード領域からの第3の力の解放が検出されるまで(すなわち、第2の押下閾値の大きさより小さい第2の解放閾値の大きさ未満となるまで)、キーストロークを繰り返し出力し、その後、それに応じて「アップ」クリックサイクルを実行することができる。
【0107】
また、コントローラ150は、2つの異なるタッチ入力、すなわち、タッチセンサ面112上で互いに向かって移動するタッチ入力または互いに離れるように移動するタッチ入力を、ズームアウト入力またはズームイン入力としてそれぞれ解釈することもできる。さらに、コントローラ150は、タッチセンサ面112に沿って移動する入力の速度および方向に基づいて、カーソルベクトルを生成し、それらのカーソルベクトルをコンピューティングデバイス内の処理ユニットまたは他のコントローラ150にほぼリアルタイムで出力することができる。
【0108】
しかしながら、コントローラ150は、タッチセンサ面112上の他の任意の形態またはタイプの他の任意の入力を検出し、それら入力に他の任意の方法で応答することができる。
【0109】
2.9 マルチ振動子
前述した実施例では、システムは、複数のスピーカおよび複数の振動子を含むことができ、トラックパッド領域およびキーボード領域の両方の入力に応答してスピーカおよび振動子でクリックサイクルを選択的に起動することができる。クリックサイクル中にコントローラ150がモータドライバを起動して、250ミリ秒の目標クリック持続時間だけ振動子120を駆動する一実施例では、システムは、1分間に480キーストローク(すなわち、8Hzのキーストローク入力速度)までの人間のキーストローク速度をサポートするために、タッチセンサ面112の反対側で基板に接続された3つの振動子を含むことができる。この実施例では、振動子120は、基板の中心付近のような基板の裏側の狭いクラスタ内に配置することができ、コントローラ150は、キーボード領域の次の入力に応答して、一次振動子120を起動してクリックサイクルを実行することを行わないようにすることができる。しかしながら、タッチセンサ面112上の次の入力が検出されたときに一次コントローラ150がクリックサイクルを完了している場合、または次の入力を受け取って閾値休止時間(例えば、数ミリ秒)未満で一次振動子120がクリックサイクルを完了した場合には、コントローラ150は、この次の入力に応答して、二次振動子120を起動してクリックサイクルを実行することができる。この実施例では、コントローラ150は、次の入力を受けたときに一次および二次振動子がクリックサイクルを完了している場合、次の入力に応答して、同様の方法を実行し、三次振動子120を起動してクリックサイクルを実行する。代替的には、コントローラ150は、タッチセンサ面112上で入力が検出されると、第1の振動子120、第2の振動子122および第3の振動子120を順次作動させることができる。さらに代替的には、この実施例では、振動子を基板の裏面全体にわたって分散配置させることができ、例えば、基板の裏面の3つの等幅の縦列領域の各々に1つずつの振動子120を配置させることができ、コントローラ150は、入力の検出に応答して、タッチセンサ面112上で検出された入力に最も近く現在静止中で休止時間外にある振動子120を選択的に起動して、クリックサイクルを実行することができる。
【0110】
コントローラ150は、タッチセンサ面112上で検出された入力に応答して、同様の方法および技術を実行して、システム内またはコンピューティングデバイス内の1または複数のスピーカを起動してクリックサイクルを実行することができる。例えば、システムは、基板に結合された(例えば、取り付けられた)1または複数の別個のスピーカを含むことができる。代替的には、コントローラ150は、タッチセンサ面112上で検出された入力に応答して、コンピューティングデバイスに組み込まれた1または複数のスピーカ(例えば、1または複数のオーディオモニタ)または基板から離れた別のスピーカまたはオーディオドライブを起動してクリックサイクルを実行することができる。
【0111】
別の実施例では、システムは、タッチセンサ面112の第1の領域の下に配置された第1の振動子120と、タッチセンサ面112の第2の領域の下に配置された第2の振動子122とを含み、第2の領域が、タッチセンサ面112の第1の領域に隣接し、第1の領域とは異なる。この実施例では、コントローラ150は、第1の領域に割り当てられた第1の閾値の大きさを超えるタッチセンサ面112上の第1の力の検出に応答して第1の振動子120を選択的に作動させ、第2の領域に割り当てられた第2の閾値の大きさを超えるタッチセンサ面112上の第2の力の検出に応答して第2の振動子122を選択的に作動させ、第1および第2の閾値は同一であるか、または固有であり、例えば、ユーザによって手動で設定されるか、または第1および第2の領域に割り当てられた固有のコマンドに基づいてコントローラ150によって自動的に設定される。この実施例では、コントローラ150は、第1および第2の領域の両方のそのような入力に応答して、単一のスピーカを起動してクリック音を出力することもできる。代替的には、システムは、タッチセンサ面112の第1の領域に隣接する第1のスピーカと、タッチセンサ面112の第2の領域に隣接する第2のスピーカとを含むことができ、コントローラ150は、そのような入力がタッチセンサ面112の左右の領域でそれぞれ検出されたときに、第1および第2のスピーカを選択的に起動してクリック音を再生することができる。この実施例では、コントローラ150は、タッチセンサ面112の左右の領域に加えられた検出された力が、それら領域に割り当てられた共通または固有の後退閾値よりも低くなったときに、「アップ」クリックサイクル中に前述したヒステリシス法を実行して左右の振動子を選択的に作動させることもできる。
【0112】
しかしながら、コントローラ150は、他の任意の方法または技術を実行して、トラックパッドおよびキーボード領域上の入力を検出し、それに応答することができる。さらに、システムは、前述した方法または技術を実行して、タッチセンサ面112に対して実質的に垂直な方向(すなわち、上述した振動面から外れる方向)に基板を振動させることができる。
【0113】
2.10 追加検知
一変形例では、システムは、シャーシ130および/または基板に結合された、容量性センサ、光学センサ、磁気変位センサ、歪みゲージ、FSRまたは他の任意のセンサを含み、タッチセンサ面112に加えられる力に応じた振動(例えば、X-Y)面における基板の変位を検出するように構成されている。その後、コントローラ150は、タッチセンサ面112に加えられる力またはそのような面内変位に基づいてコマンドを出力することができる。
【0114】
同様に、システムは、図13Bに示すように、シャーシ130および/または基板に結合されるとともに振動面からの(すなわち、Z軸に沿った)基板の絶対変位を検出するように構成された、容量性センサ、光学センサ、磁気変位センサ、歪みゲージ、FSRまたは他の任意のセンサを含むことができる。この変形例では、コントローラ150は、カプラ132の既知のばね定数に基づいて、求めた基板の絶対変位を、タッチセンサ面112に加えられる絶対的な力の大きさに変換することができる。その後、コントローラ150は、この絶対的な力の大きさと、タッチセンサ面112と接触している物体の相対的な力の大きさとを比較して、タッチセンサ面112と接触している各物体の絶対的な力の大きさをいつでも計算することができる。その後、コントローラ150は、それに応じて、タッチセンサ面112上の1または複数のタッチ入力に対するコマンドを出力することができる。
【0115】
しかしながら、このシステムは、他の任意のタイプのコンピューティングデバイスに他の任意の方法で組み込むことができる。
【0116】
3.直接振動
図18Aおよび図18Bに示すように、システム100の一変形例は、シャーシ130、タッチセンサ110、振動子、カプラ132およびコントローラ150を含む。タッチセンサ110は、剛性バッキングと、剛性バッキング上に配置された検知電極および駆動電極のペア116のアレイとを含む。さらに、タッチセンサ110は、検知電極および駆動電極のペア116のアレイ上に延びるタッチセンサ面112を規定する。振動子は、シャーシ130に取り付けられ、第1の極性を規定する第1の磁石と、第1の磁石に隣接しかつ第1の磁石から横方向にオフセットしてシャーシ130に取り付けられ、第1の極性とは異なる第2の極性を規定する第2の磁石と、タッチセンサ面112の反対側でタッチセンサ110に結合されたコイルであって、第1の磁石および第2の磁石に対向し、タッチセンサ面112に平行な平面内でタッチセンサ110を振動させるために、第1の磁石および第2の磁石に磁気的に選択的に結合する振動磁場を出力するように構成されたコイルとを含む。上述したように、システム100はコントローラ150も含むことができ、このコントローラが、タッチセンサ110の第1の検知電極と駆動電極のペア116間の第1の抵抗の変化に基づいて、第1の時間に、タッチセンサ面112への第1の入力の印加および第1の入力の第1の力の大きさを検出し;第1の力の大きさが第1の閾値の大きさを超えることに応答して、コイルを流れる交流電流を駆動して、第1の磁石を間欠的に引き付けて反発させる一方で、第2の磁石を反発させて引き付ける振動磁場を誘導することによって、第1のクリックサイクルを実行し;ほぼ第1の時間に、タッチセンサ面112上の第1の位置および第1の入力の第1の力の大きさを示す第1のタッチ画像を出力するように構成されている。
【0117】
この変形例では、システム100が、同様に、シャーシ130に堅固に結合された磁気要素126と、基板114と、基板114とタッチセンサ面112との間に介装されたタッチセンサ110と、タッチセンサ面112の下方で基板114に結合され、磁気要素126に磁気的に結合するように構成されたインダクタ124と、基板114をシャーシ130に結合するカプラ132であって、タッチセンサ面112とほぼ平行な振動面内で柔軟性を有し(例えば、可撓性を有し、弾性を有し、変形可能であり)、インダクタ124を磁気要素126のほぼ上方に配置するように構成されたカプラと、タッチセンサ面112上のタッチ入力の検出に応答してインダクタ124を間欠的に分極し、シャーシ130に対して基板114を振動面内で振動させるように構成されたコントローラ150とを備える。
【0118】
同様に、図26に示すように、システム100は、シャーシ130に堅固に結合された磁気要素126と、基板114と、基板114とタッチセンサ面112との間に介装されたタッチセンサ110と、タッチセンサ面112の下方で基板114に結合され、磁気要素126に磁気的に結合するように構成されたインダクタ124と、基板114をシャーシ130に結合するカプラ132であって、タッチセンサ面112とほぼ平行な振動面内で柔軟性を有し、インダクタ124を磁気要素126のほぼ上方に配置するように構成されたカプラと、インダクタ124に結合されたドライバ152と、タッチセンサ面112上のタッチ入力の検出に応答して、ドライバ152をトリガしてインダクタ124を間欠的に分極させ、シャーシ130に対して基板114を振動面内で振動させるように構成された制御プログラム154とを備える。
【0119】
代替的に、この変形例では、システム100は、シャーシ130に堅固に結合されたインダクタ124と、基板114と、基板114とタッチセンサ面112との間に介在するタッチセンサ110と、タッチセンサ面112の下方で基板114に結合され、インダクタ124に磁気的に結合するように構成された磁気要素126と、基板114をシャーシ130に結合するカプラ132であって、タッチセンサ面112とほぼ平行な振動面内で柔軟性を有し、インダクタ124を磁気要素126のほぼ上方に配置するように構成されたカプラと、タッチセンサ面112上のタッチ入力の検出に応答してインダクタ124を間欠的に分極し、シャーシ130に対して基板114を振動面内で振動させるように構成されたコントローラ150とを備える。
【0120】
3.1 アプリケーション
この変形例では、システム100は、シャーシ130内に配置された磁気要素126と、磁気要素126に隣接してタッチセンサ110に結合されたインダクタ124(例えば、エアインダクタ124を形成する銅線のマルチループコイル)とを含み;(例えば、タッチセンサ面112上の入力に応答して)インダクタを流れる電流を駆動して、インダクタ124を介して磁場を誘導し、振動面に平行な磁気要素126とインダクタ124との間の力の変化を生じさせ、シャーシ130内でタッチセンサ110を動かすことにより、タッチセンサ面112に平行な振動面において、シャーシ130内でタッチセンサ110を直接振動させる。特に、(シャーシ130内に配置された)磁気要素126および(タッチセンサ110に結合された)インダクタ124は、ユーザにリアルタイムの触覚フィードバックを提供するために、例えばタッチセンサ面112上の指、スタイラスまたは他のタッチ入力に応答して、インダクタ124に電流が供給されたときに、協働して、シャーシ130に対して相対的にタッチセンサ110を移動させる「振動子」を規定する(または「振動子」として機能する)ことができる。
【0121】
インダクタ124は、タッチセンサ110に直接結合されるとともに(例えば、タッチセンサ110およびタッチセンサ面112を支持する基板114を介して)、磁気要素126がインダクタ124の近傍でシャーシ130に直接結合されているため、インダクタ124および磁気要素126は、別個の質量体を振動させた後に運動量の保存によりタッチセンサ110を振動させるのではなく、直接タッチセンサ110をシャーシ130内で動かすように協働することが可能である。このため、インダクタ124および磁気要素126は、協働して、システム100の質量を低減し、回転質量体のための複雑さおよび追加のパッケージングを減らすことによってシステム100の全体の高さを低くすることができ、タッチセンサ110をより直接的に振動させ、より短い時間でタッチセンサ110のピーク変位および/または速度運動を達成することができ、よって、ユーザにとってより本物の「クリック」感を実現することができる。
【0122】
例えば、コントローラ150は、ブロックS120において、機械式ナップボタンの作動感触を模倣する振動信号を出力するように振動子120をトリガすることができる。図24に示すように、システム100は、インダクタ124を流れる交流電流を駆動して、インダクタを磁気要素126に磁気的に結合し、それによりタッチセンサ110を振動面内で動かすことで、シャーシ130内でタッチセンサ110を振動させることができる。より具体的には、コントローラ150(またはドライバ152)によって分極されると、インダクタ124は、方向(または極性)が間欠的に変化する磁場を出力することができ、それにより、図19に示すように、タッチセンサ面112に平行な振動面内で、かつタッチセンサ面112に平行な振動軸に沿って、シャーシ130に結合された磁気要素126の極を間欠的に引き付け、かつ反発することができる。
【0123】
磁気要素126は、シャーシ130内に堅固に配置することができる。例えば、磁気要素126は、隣接する磁石とは異なる極性でそれぞれ配置された磁石の配列を含むことができる。この例では、磁気要素126が、第1の方向の第1の磁場を出力し、インダクタ124が第1の方向に分極されたときにインダクタ124を引き付け、逆もまた同様である第1の磁石と、第2の方向の第2の磁場を出力し、インダクタ124が第2の方向に分極されたときにインダクタ124を反発し、逆もまた同様である第2の磁石とを含むことができる。このため、コントローラ150が、タッチセンサ110によって検出された入力に応答してクリックサイクルの開始時にインダクタ124を第1の方向に分極すると、インダクタ124によって生成された磁場は、第1の磁石を引き付け、第2の磁石を反発することができ、それによりタッチセンサ110を第1の磁石に向かってシフトさせることができる。その後、コントローラ150が、この同じクリックサイクル中にインダクタ124を反対の第2の方向に分極すると、インダクタ124によって生成された反対の磁場は、第2の磁石を引き付け、第1の磁石を反発することができ、それによりタッチセンサ110を第2の磁石の方に戻すようにシフトさせて、タッチセンサ110をシャーシ130内で振動させることができる。
【0124】
また、コントローラ150(またはドライバ152および制御プログラム154)は、人間の指がタッチセンサ110の振動を機械的な「クリック」として知覚するように調整された目標振動周波数(例えば、Hz~200Hz)で、クリックサイクル中に、インダクタ124の極性を振動させることもできる。さらに、インダクタ124、タッチセンサ110、基板114、タッチセンサ面112等(以下、「タッチセンサアセンブリと称する」は、共振周波数を示すことができ、よってタッチセンサアセンブリの運動の急速な開始と、その後のタッチセンサアセンブリからのエネルギーの急速な消散とをもたらし(これは、タッチセンサ面112に触れるユーザに明確な「クリック」感覚を与えることができ)、コントローラ150は、タッチセンサアセンブリの共振周波数とは異なる周波数でインダクタ124を分極させることができる。
【0125】
3.2 シャーシ
上述したように、システム100は、トラックパッドまたはトラックパッドとキーボードの組合せ面を形成するために、ラップトップコンピュータなどのコンピューティングデバイスのシャーシ130に取り付けるか、または統合することができる。同様に、システム100は、周辺機器のトラックパッドのような周辺機器のシャーシ130に取り付けるか、または統合することができる。さらに、システム100は、モバイルコンピューティングデバイスのシャーシ130に取り付けるか、または統合することができる。例えば、ディスプレイは、タッチセンサアセンブリの上方に配置することができ;インダクタ124は、ディスプレイの反対側でタッチセンサアセンブリに結合することができ;タッチセンサアセンブリおよびディスプレイは、カプラ132を介してスマートフォンの後部ハウジング(「シャーシ130」)の上に配置および結合することができ;磁気要素126は、後部ハウジングに堅固に結合することができ;インダクタ124および磁気要素126は、スマートフォンとインターフェイスするユーザに触覚フィードバックを提供するために、協働して、ディスプレイおよびタッチセンサ110を後部ハウジングに対して相対的に振動させることができる。
【0126】
このため、シャーシ130は、実質的に剛性の質量体を規定することができ、タッチセンサアセンブリは、シャーシ130の上方に配置するか、シャーシ130によって規定されるキャビティ134(例えば、トラックパッドのキャビティ134)内に配置するか、または他の任意の方法でシャーシ130に結合することができる。
【0127】
3.3 タッチセンサ
上述したように、タッチセンサ110は、基板114上に配置された検知電極および駆動電極のペア116のアレイと、検知電極および駆動電極のペア116のアレイ上に配置され、タッチセンサ面112を規定する感圧層とを含むことができる。この実施形態では、コントローラ150は、タッチセンサ面112の第1の位置の下方にある(検知電極および駆動電極のペア116のアレイのうちの)第1の検知電極と駆動電極のペア116間の抵抗の変化に基づいて、タッチセンサ面112上の第1の位置での入力の印加を検出し、第1の検知電極および駆動電極のペア116間の第1の抵抗の変化の大きさに基づいて、第1の入力の力の大きさを解釈することができる。
【0128】
代替的には、タッチセンサ110は、基板114上に配置された検知電極および駆動電極のペア116のアレイと、検知電極および駆動電極のペア116のアレイ上に配置され、タッチセンサ面112を規定する触覚層とを含むことができ、コントローラ150は、相互静電容量手法を実行して、それら検知電極および駆動電極のペア116間の静電容量値を読み取り、それら静電容量値に基づいてタッチセンサ面112上の入力を解釈することができる。
【0129】
しかしながら、タッチセンサ110は、タッチセンサ面112の下方に2次元の検知領域を規定する抵抗性、容量性、光学的または他のタイプのタッチセンサ110を含むことができる。
【0130】
3.4 基板
タッチセンサ110は、基板114の上に配置されている(または、基板と物理的に隣接している)。このため、基板114は、タッチセンサ110を支持するように、かつ/またはタッチセンサ110とシャーシ130との間の境界面を形成するように機能することができる。
【0131】
タッチセンサアセンブリがシャーシ130に吊り下げられている後述する一実施形態では、基板114は、アルミニウム、鋼または繊維複合板などの剛性バッキングを含む。この実施形態では、タッチセンサ110が、基板114の外面上に結合され、インダクタ124は、インダクタ124がシャーシ130に配置された磁気要素126のすぐ上に位置するように、基板114の内面上に結合されるか、または他の方法で組み立てられている。
【0132】
同様の実施形態では、基板114が、剛性(例えば、ガラス繊維)回路基板を含み、タッチセンサ110の検知電極および駆動電極のペア116が、基板114の最外層(または複数の最外層)上に直接作製される。この実施形態では、インダクタ124が、表面実装パッケージ内に収容され、基板114の内側(すなわち、シャーシ130側)の面の表面実装パッドに直接はんだ付けすることができる。代替的には、インダクタ124は、基板114の最内層に直接作製された単層平面スパイラルコイル、または基板114の最内層のセットに直接作製された多層平面スパイラルコイルを含むことができる。
【0133】
前述した実施形態では、基板114が、指またはスタイラスなどによってタッチセンサ面112が基板114に向かって押し下げられたときに、基板114の撓み(例えば、曲げ)に抵抗するように構成されたリブまたはフランジのセットをさらに含むことができる。例えば、アルミニウムまたは鋼板を含む基板114は、タッチセンサ110の1または複数のエッジに沿ったフランジを含むように形成され、かつタッチセンサ110の外周から挿入されたビードを含むように形成されるものであってもよい。基板114がリジッド回路基板を含む別の実施形態では、基板114は、基板114の内面上に規定された表面実装パッドに直接はんだ付けされた金属(例えば、鋼)リブをさらに含むことができる。
【0134】
代替的には、基板114は、フレキシブル回路基板を含むことができ、タッチセンサ110の検知電極および駆動電極のペア116は、フレキシブル回路基板の1または複数の層上に作製することができる。この実施形態では、後述するように、シャーシ130が、(低摩擦コーティングを含むような)平坦支持面を規定することができ、それにより基板114は、平坦支持面上に載ってスライドすることができ、平坦支持面は、(例えば、指またはスタイラスによって)タッチセンサ面112に力が加えられたときに、内側への変形に対して基板114およびタッチセンサ110を垂直に支持することができる。
【0135】
しかしながら、基板114は、他の任意の形態を規定することができ、タッチセンサ110およびインダクタ124を支持するための他の任意の材料または特徴を含むことができる。
【0136】
3.5 インダクタ
このため、インダクタ124は、タッチセンサ110の反対側など、タッチセンサ面112の下方で基板114に結合される。図19に示す一実施形態では、インダクタ124が分極されたときに、タッチセンサアセンブリが下方の磁気要素126の周りで振動する偏心質量体を形成するように、インダクタ124の中心をタッチセンサ110の質量の中心からオフセットすることもできる。
【0137】
一実施形態では、インダクタ124がマルチループ導電性(例えば、銅)ワイヤコイルを含み、エアインダクタ124を規定するとともに、タッチセンサ面112に垂直な対称軸を規定する。例えば、コイルは、円形トーラスを形成することができ、コイルが駆動されていないときに、コイルの対称軸が下方の磁気要素126のほぼ中心に置かれるように、タッチセンサ110の反対側で基板114の内面に(例えば、接着剤を用いて、ポッティング材料を用いて)結合することができる。別の例では、磁気要素126が、細長い線形のハルバッハ配列の形態等で配置された永久磁石の細長い配列を含む。この例では、インダクタ124が、振動面と平行な平面内に、磁気要素126の長軸に沿って細長いトーラスの形態のコイルを含むことができ、インダクタ124が駆動されていないときに、インダクタ124の長軸および短軸が磁気要素126の長軸および短軸とほぼ一致するように、インダクタ124を磁気要素126の上方で基板114に接着、はんだ付け、または他の方法で結合することができる。
【0138】
別の例では、基板114が回路基板を含み、その内面にわたって表面実装パッドのセットを規定する。この例では、インダクタ124が、基板114上のそれら表面実装パッドにはんだ付けされた表面実装パッケージ内に含まれる。代替的には、(インダクタ124を形成する)コイルの端部を、基板114上のそれら表面実装パッドにはんだ付けすることができる。また、コイルは、エポキシまたはポッティング材料に埋め込むか、またはカプセル化することができる。
【0139】
別の実施形態では、インダクタ124が、巻型、カラーおよび導電性ワイヤの巻線(例えば、コイル状のアルミニウムワイヤまたは銅ワイヤ)を含むボイスコイルを含む。この実施形態では、インダクタ124が、基板114にはんだ付けされ、基板114の内面よりも下方に(例えば、1ミリメートルだけ)延在することができる。
【0140】
代替的には、インダクタ124は、タッチセンサ面112の反対側の基板114上に直接(例えば、PCB加工技術に従って)作製することができる。例えば、図22Aおよび図22Bに示すように、インダクタ124の第1のセグメント(例えば、第1のスパイラルコイル)は、基板114の第1の層(例えば、薄いガラス繊維)上に作製されるか、他の方法で結合され;インダクタ124の第2のセグメントは、第1の層上に配置された基板114の第2の層上に作製されるか、他の方法で結合され;インダクタ124の第3のセグメントは、第2の層上に配置された基板114の第3の層上に作製されるか、他の方法で結合され;インダクタ124のそれらのセグメントは、図22Bに示すように、基板114のそれらの層を通過するビアで結合される。
【0141】
しかしながら、インダクタ124は、他の任意の形態であってもよく、他の任意の方法で基板114に結合または作製することができる。
【0142】
3.6 磁気要素
通常、磁気要素126は、シャーシ130に堅固に結合され、タッチセンサ面112上の入力に応答してコントローラ150により(例えば、ドライバ152を介して)インダクタ124が分極されたときに、インダクタ124に磁気的に結合(インダクタを引き付け、かつ/または反発)するように機能する。
【0143】
図21に示す一実施形態では、磁気要素126が、シャーシ130に取り付けられ、第1の極性(例えば、N極)がインダクタ124を向くように配置された第1の磁石(例えば、磁気双極子永久磁石)と、第1の磁石に隣接してかつ第1の磁石から横方向にオフセットしてシャーシ130に取り付けられ、第2の極性(例えば、S極)がインダクタ124を向くように配置された第2の磁石とを含む。この実施形態において、第1の磁石および第2の磁石は、インダクタ124が第1の方向に流れる電流で分極されているときに、インダクタ124がそれら磁石の一方を引き付け、他方の磁石を反発するように(その逆もまた同様である)(それにより、タッチセンサアセンブリを振動面内で動かすように)、互いに隣接してシャーシ130に結合、固定、接着または他の方法で堅固に結合することができる。この実施形態では、第1の磁石および第2の磁石は、タッチセンサ110の質量中心と交差する主軸に沿ってシャーシ130内に配置することができ、インダクタ124は、同様に、主軸と平行に、かつインダクタ124の長軸が第1の磁石および第2の磁石の上に配置されるように、基板114上に配置することができる。
【0144】
図23に示す別の実施形態では、磁気要素126が、ハルバッハ配列を含み;インダクタ124に隣接して(例えば、インダクタに沿って延びて)シャーシ130に結合され;それら磁石によって出力される磁場を増大させて、それにより、インダクタ124が分極されたときに磁気要素126とインダクタ124との間の磁気結合を増大させるように構成された配列の磁石のセットを含む。
【0145】
この実施形態では、磁気要素126が、振動面に平行に延びる列に配置された5つの磁石を含むことができる。このセットの各磁石は、隣接する磁石とは異なる極性を示すことができる。例えば、磁気要素126の第1の磁石は、そのN極をシャーシ130の左側に向けて配置することができ、磁気要素126の第2の磁石は、そのN極をシャーシ130の上側エッジに向けて配置することができ、磁気要素126の第3の磁石は、そのN極をシャーシ130の右側に向けて配置することができ、磁気要素126の第4の磁石は、そのN極をシャーシ130の下側エッジに向けて配置することができ、磁気要素126の第5の磁石は、そのN極を再びシャーシ130の左側に向けて配置することができる。この例では、第2および第4の磁石によって出力される磁場が、第1、第3および第5の磁気要素126によって出力される磁場を集束させ、それにより、インダクタ124が分極されたときの、磁気要素126とインダクタ124との間の磁気結合を改善することができる。
【0146】
しかしながら、磁気要素126は、他の任意の方法で配置された他のタイプの磁石を含むことができる。
【0147】
3.6.1 磁気シールド
図24に示す一変形例では、システム100が、磁気要素126とシャーシ130との間に挿入され、磁気要素126およびインダクタ124によって出力される磁場を減衰させるように構成された磁気シールド138をさらに含む。例えば、システム100は、磁気要素126の直下に配置されるか、または磁気要素126およびタッチセンサアセンブリを収容する(シャーシ130によって規定される)キャビティ134のフロアの下に配置された薄い導電性プレート(例えば、ステンレス鋼シム)を含むことができる。このため、磁気シールド138は、シャーシ130内に延在する磁場を減衰させるように機能することができ、それにより、インダクタ124の分極に起因するタッチセンサ110の周囲の磁場の変化から下方のシャーシ130に配置された電子機器を保護することができる。
【0148】
3.7 ドライバ
図26に示す一変形例では、システム100が、コントローラ150からのトリガに応答してインダクタ124に電流を間欠的に供給するように構成されたドライバ152をさらに含む。一実施形態では、ドライバ152は、インダクタ124の各端部に電気的に結合されたデュアルHブリッジを含み、このデュアルHブリッジは、コントローラ150からの制御信号または指令に基づいて、インダクタ124を電源に選択的に結合し、インダクタ124に正の電位を印加することで、電流がインダクタ124を通って第1の方向に流れるようにし、それによりインダクタ124を第1の方向に分極する一方で、インダクタ124に負の電位を印加することで、電流がインダクタ124を通って第2の方向に流れるようにし、それによりインダクタ124を第2の方向に分極するように構成されている。このため、この実施形態では、コントローラ150は、タッチセンサ面112上のタッチ入力の検出に応答して、ドライバ152をトリガして、(クリックサイクル中に、振動面内でタッチセンサアセンブリを振動させるべく)第1の持続時間にわたりインダクタ124を第1の方向に分極するとともに、第2の持続時間にわたりインダクタ124を第1の方向とは反対の第2の方向に分極することができる。
【0149】
別の実施形態では、ドライバ152は、インダクタ124を単一方向に選択的に電源に結合して、インダクタ124を単一方向にのみ分極するように構成されている。例えば、ドライバ152は、パワートランジスタを含むことができ、コントローラ150は、ドライバ152を選択的に作動および作動停止して、インダクタ124を間欠的に分極させ、それにより、インダクタ124を間欠的に磁気要素126に磁気的に結合させて、シャーシ130に対してタッチセンサアセンブリを相対的に振動させることができる。
【0150】
しかしながら、システム100は、インダクタ124に選択的に電流を供給するために、ドライバ152または他の任意のタイプのコンポーネントを含むことができる。
【0151】
3.8 コントローラ
上述したように、コントローラ150は、タッチセンサ110をスキャンし、タッチセンサ110から読み取った電気的値(その変化)をタッチセンサ面112上の入力の位置として解釈し、その後、上述したように、タッチセンサ面112上のタッチ入力を検出することに応答して、クリックサイクル中にインダクタ124を選択的に分極することができる。
【0152】
3.8.1 タッチ検出とクリックサイクルの起動
タッチセンサ110が、タッチセンサ面112にわたるタッチ入力の位置および力(または圧力)を示す値を出力する感圧タッチセンサ110を含む上述した実施形態では、コントローラ150は、タッチセンサ110の検知電極および駆動電極のペア116間の電気的値(例えば、電気抵抗)を読み取り、検知電極および駆動電極のペア116のアレイのうち、タッチセンサ面112上の第1の位置の下方における第1の検知電極および駆動電極のペア116間の第1の抵抗の変化に基づいて、タッチセンサ面112上の第1の位置における第1の入力の印加を検出し、第1の抵抗の変化の大きさに基づいて、第1の入力の第1の力の大きさを解釈することができる。コントローラ150は、第1の入力の第1の力の大きさが最小力の閾値を超えることに応答して、直ちにドライバ152をトリガして、(例えば、ほぼ第1の時間に)インダクタ124を過渡的に(すなわち、一時的に)分極させ、ほぼ第1の時間(例えば、タッチセンサ面112上の第1のタッチを検出してから50ミリ秒以内)に、タッチセンサ面112上の第1の位置および第1の入力の第1の力の大きさを示す第1のタッチ画像を出力することができる。
【0153】
この実施形態では、コントローラ150が、タッチセンサ面112上の異なる大きさの入力に対して異なる応答をすることもできる。例えば、タッチセンサ面112上のタッチ入力の力の大きさが最小力の閾値と(最小力の閾値よりも大きい)ディープ力の閾値の大きさの両方を超えることに応答して、コントローラ150は、ドライバ152をトリガして、第1の持続時間(例えば、150ミリ秒)にわたり第1の周波数(例えば、20Hz)でインダクタ124を一時的に分極させることができる。しかしながら、タッチセンサ面112上のタッチ入力の力の大きさが最小力の閾値を超えるが、ディープ力の閾値の大きさを超えないことに応答して、コントローラ150は、ドライバ152をトリガして、第1の持続時間よりも短い第2の持続時間(例えば、50ミリ秒)にわたり、かつ/または第1の周波数よりも大きい第2の周波数(例えば、50Hz)で、インダクタ124を一時的に分極させることができる。
【0154】
システム100は、静電容量式タッチセンサ110を規定するタッチセンサ110の検知電極および駆動電極のペア間の静電容量の変化に基づいて、または他の任意のタイプのタッチセンサ110の出力に基づいて、タッチセンサ面112上のタッチ入力を検出して応答するための同様の方法および手法を実行することができる。
【0155】
3.8.2 クリックサイクル特性
クリックサイクル中、コントローラ150は、図24に示すように、ドライバ152をトリガして、インダクタ124を単一方向に分極させることができる。例えば、コントローラ150は、ドライバ152をトリガして、(例えば、10Hzの駆動信号で50ミリ秒の持続時間の第1のピークにわたって)方形または正弦波の形の単一パルスでインダクタ124に電力を出力することができ、それによりインダクタ124内に磁場を誘発して、インダクタ124を磁気要素126に磁気的に結合し、タッチセンサアセンブリが、(カプラ132に対して)タッチセンサアセンブリを振動面に平行な単一の方向にシフトさせることができる。このパルスの終了時に、インダクタ124の磁場は減衰することができ、それによりインダクタ124を磁気要素126から分離し、その後、カプラ132は、タッチセンサアセンブリをその公称位置に戻して、クリックサイクルを完了することができる。
【0156】
図18Aおよび図21に示す別の実施形態では、コントローラ150は、ドライバ152をトリガして、インダクタ124を互いに反対の2方向に分極させる。例えば、クリックサイクル中、コントローラ150は、ドライバ152(例えば、デュアルHブリッジ)をトリガして、2パルスの方形または正弦波の形で(例えば、50Hzの駆動信号で50ミリ秒の持続時間の第1のピークと第2のピークにわたって)インダクタ124に電力を出力することができ、それにより、インダクタ124に第1の方向の第1の磁場を誘導して、インダクタ124を磁気要素126に磁気的に結合し、このクリックサイクルのほぼ前半にわたって、タッチセンサアセンブリを(カプラ132に対して)振動面に平行な第1の方向にシフトさせ、その後、インダクタ124に反対の方向の第2の磁場を誘導して、インダクタ124を磁気要素126に磁気的に結合し、このクリックサイクルのほぼ後半にわたって、タッチセンサアセンブリを(カプラ132に対して)反対の方向にシフトさせる。この第2のパルスが終了すると、インダクタ124の磁場は減衰することができ、それによりインダクタ124を磁気要素126から分離し、その後、カプラ132は、タッチセンサアセンブリをその公称位置に戻して、クリックサイクルを完了することができる。
【0157】
3.8.3 駆動周波数
以下に説明するように、タッチセンサアセンブリは、共振(例えば、自然)周波数を示し得る。コントローラ150は、ドライバ152をトリガして、クリックサイクル中に、この共振周波数でインダクタ124に交流信号を出力することができる。例えば、システム100に最初に電源投入されと、コントローラ150は、テストルーチンを実行することができ、それには、インダクタ124に印加される電圧を低周波交流電圧から高周波交流電圧に発振させること、低周波と高周波との間の共振周波数を検出すること、並びに、この共振周波数をデバイスの後続のセッション中のシステム100の動作周波数として記憶することが含まれる。
【0158】
一実施形態では、タッチセンサアセンブリの質量およびカプラ132の弾性は、機械的な「クリック」またはキーボードのキーストロークの周波数に近い特定の共振周波数を示すように調整される。この実施形態では、コントローラ150は、ドライバ152をトリガして、クリックサイクル中に、この特定の共振周波数の交流信号でインダクタ124を駆動することができる。
【0159】
代替的には、上述したように、コントローラ150は、クリックサイクル中に、共振周波数とは異なる目標周波数の交流信号でインダクタ124を駆動するようにドライバ152をトリガすることができる。この実施形態では、ドライバ152は、目標周波数で発振する交流電流を出力することができ、このように分極されると、インダクタ124は、目標周波数で発振する磁場を出力することができる。上述したように、インダクタ124は、磁気要素126と磁気的に結合することができ、磁気要素126を選択的に引き付けおよび反発し、それにより振動面内において、シャーシ130に対して相対的にタッチセンサ110を振動させることができる。コントローラ150およびドライバ152は、クリックサイクルの持続時間にわたってタッチセンサアセンブリを振動させるために、インダクタ124の極性を交互に変え続けることができる。クリックサイクルが終了すると、コントローラ150は、ドライバ152をトリガして、インダクタ124を電源から切り離し、それによりタッチセンサアセンブリの振動を停止させることができる。
【0160】
しかしながら、コントローラ150およびドライバ152は、協働して、クリックサイクル中に、シャーシ130に対して相対的にタッチセンサアセンブリをシフトまたは振動させるために、インダクタ124の極性を1回、2回、または他の任意の数のインスタンスにわたって「律動」させることができる。
【0161】
3.8.4 タッチセンサスキャンの一時停止
さらに、クリックサイクル中にコントローラ150またはドライバ152によって分極されたときにインダクタ124によって発生する磁場は、タッチセンサ110にノイズをもたらす可能性がある。このため、コントローラ150は、クリックサイクル中(および例えばクリックサイクル後の10ミリ秒など、クリックサイクル後のある時間であって、その時点では、インダクタ124内の磁場が、タッチセンサ110に最大ノイズよりも小さいノイズを生成するのに十分に減衰しているであろう時間)に、タッチセンサ110から読み取ったデータを体系的に破棄することができる。
【0162】
代替的には、コントローラ150は、クリックサイクル中(およびその少し後)にタッチセンサ110のスキャンを無効にすることができる。例えば、コントローラ150は、一連のスキャンサイクル中にタッチセンサ110の検知電極と駆動電極のペア116間の電気的値を読み取り、タッチセンサ110の検知電極と駆動電極のペア116間の電気的値に基づいて一連のスキャンサイクルの一連のタッチ画像を生成し、一連のスキャンサイクルのうちの最後のタッチ画像に格納された値に基づいてタッチセンサ面112上のタッチ入力を検出することができる。その後、コントローラ150は、タッチセンサ面112上のタッチ入力の検出に応答して、ドライバ152をトリガして、最後のスキャンサイクルに続くクリックサイクル中にインダクタ124を一時的に分極させ、クリックサイクル中に次のスキャンサイクルを遅延させ、その後、クリックサイクルの終了に応答して次のスキャンサイクルを開始することができる。
【0163】
さらに、この実施形態では、タッチセンサ面112上の新しいタッチ入力を検出し、それに応じてクリックサイクルを実行する前に、コントローラ150は、このタッチ入力を示すタッチ画像を生成し、このタッチ画像を保存し、上述したようにクリックサイクルを開始し、このタッチ画像をプロセッサまたは他の接続されたデバイスに出力し、その後、クリックサイクルが完了してインダクタ124内の磁場が十分に減衰するまで、この同じ保存したタッチ画像を一貫した指定のサンプリングレート(例えば、30Hz、50Hz)で出力することを継続することができる。その後、プロセスは、タッチセンサ110のサンプリングを再開し、タッチセンサ110から読み取ったデータに基づいて新たなタッチ画像を生成し、それらのタッチ画像を指定のサンプリングレートでプロセッサまたは他のデバイスに出力することができる。
【0164】
3.8.5 力の大きさのためのインダクタ
一変形例では、コントローラ150は、(クリックサイクル外に)インダクタ124を流れる電流および/またはインダクタ124の電圧変化を監視し、この電流または電圧変化と、カプラ132の既知の弾性(または剛性など)とに基づいて、タッチセンサ面112に印加された力を推定する。その後、コントローラ150は、上述したように、この力が最小力の閾値を超えた場合に、クリックサイクルを選択的に実行することができる。追加的または代替的には、コントローラ150は、この力の推定値を同時のタッチ画像にラベル付けまたは統合して、この力を強調したタッチ画像をプロセッサまたは他の接続されたデバイスに提供することができる。
【0165】
一例では、コントローラ150は、スキャンサイクル中にタッチセンサ110の検知電極と駆動電極のペア116間の電気的値を読み取り、スキャンサイクル中にインダクタ124の電圧をサンプリングし、定期的な間隔(例えば、30Hz、50Hzの範囲)で、これらの処理を繰り返す。この例では、コントローラ150は、その後、現在のスキャンサイクル中に(タッチセンサ110において、タッチセンサ面112上の第1の位置の下方に配置された)第1の検知電極と駆動電極のペア116間の電気的値の変化に基づいて、タッチセンサ面112上の第1の位置でのタッチ入力を検出することができ、次いで、このスキャンサイクル中のインダクタ124の電圧の変化を、タッチセンサ面112に印加されたタッチ入力の力の大きさに変換することができる。特に、コントローラ150は、インダクタ124の電圧の変化をタッチセンサアセンブリの垂直方向の変位に変換し、その後、この垂直方向の変位を、カプラ132の保存された(力と変位をリンクする)バネモデルに基づいて、このスキャンサイクル中にタッチセンサ面112に加えられた力に変換することができる。その後、コントローラ150は、スキャンサイクルの(第1の位置およびタッチ入力の力の大きさを示す)タッチ画像を生成し、(インダクタ124の電圧の変化に起因する)タッチ入力の力の大きさが閾値の大きさを超えることに応答して、ドライバ152をトリガして、インダクタ124を分極させ、それによりシャーシ130に対して基板114を振動面内で振動させることができる。
【0166】
この例では、コントローラ150は、(クリックサイクル外に)インダクタ124の電圧を時間で積分して、インダクタ124の電圧の積分が閾値電圧時間値を超えた場合に、クリックサイクルをトリガするのに十分な力の入力のタッチセンサ面112への印加を検出し、インダクタ124の電圧の積分が閾値電圧時間値未満(または、ヒステリシス手法を実行するために、より低い閾値入力・後退電圧時間値未満)に低下した場合に、タッチセンサ面112からの入力の後退を検出することができる。さらに、システム100は、上述したものと同様の方法および手法を実行して、インダクタ124の現在の電圧時間値を、現在のスキャンサイクル中のタッチセンサ面112上の入力の力の大きさに変換し、このスキャンサイクルのタッチ画像にこの力の大きさでラベル付けし、(システム100によって実行されるクリックサイクル外に)後続の各スキャンサイクルのために、このプロセスを繰り返すことができる。
【0167】
さらに、システム100が複数のインダクタ124と磁気要素126のペアを含む以下に説明する実施形態では、コントローラ150は、同様の方法および手法を実行して、各インダクタ124と磁気要素126のペア間のタッチセンサアセンブリの垂直変位を推定し、これらの垂直変位を各インダクタ124と磁気要素126のペア上に加えられる力に変換し、インダクタ124と磁気要素126のペア上に加えられるそれらの導出された力に基づいて、タッチセンサ面112上に加えられる力を補間することができる。その後、コントローラ150は、タッチセンサ面112上の推定力でタッチ画像内で示される個々の入力にラベル付けすることによって、それらの補間された力を、タッチセンサ110から読み取られたデータに基づいて生成された同時のタッチ画像とマージすることができる。
【0168】
3.9 構成
概して、タッチセンサ110、基板114、磁気要素126、コントローラ150、ドライバ152、カプラ等は、様々な形態で配置することができる。
【0169】
3.9.1 トラックパッドキャビティ内の吊り下げ基板
図17A図17B図18A図18Bおよび図20Aに示す一形態では、システム100が、シャーシ130に統合され、このシャーシが、モバイルコンピュータ(例えば、ラップトップコンピュータの「Bサイド」)のコンポーネントを規定し、機械式キーを含むキーボードに隣接するようなトラックパッドキャビティ134を含む。この構成において、磁気要素126は、トラックパッドキャビティ134の底部に配置され、カプラ132は、インダクタ124が磁気要素126上のほぼ中央に位置するように、基板114をトラックパッドキャビティ134に対して位置決めする。よって、タッチセンサ面112は、トラックパッドキャビティ134に架けることができる。
【0170】
この構成では、基板114が、タッチセンサ面112の反対側でタッチセンサ110にわたって配置された剛性バッキングを形成することができ、タッチセンサ面112上の物体(例えば、指、スタイラス)の押し下げによる撓みに対してタッチセンサ110を支持することができる。一例では、カプラ132が、シャーシ130によってこのように規定されたトラックパッドキャビティ134にわたって基板114を吊り下げるように構成されたエラストマーグロメットのセットを含む。各グロメットは、このようにして、振動面内で柔軟性を有することができ、インダクタ124の分極解消に応答して、基板114をトラックパッドキャビティ134内の中心位置に戻すことができる。例えば、カプラ132は、基板114の四隅の近傍に配置された4つのエラストマー(例えば、ゴム、発泡体)グロメットのセットを含むことができ、それらは協働して、トラックパッドキャビティ134にわたって基板114およびタッチセンサ110を吊り下げる。このため、この構成では、カプラ132は シャーシ130と基板114との間に介装され;シャーシ130および基板114に結合または固定され;インダクタ124の分極に応答して振動面内で変形し、それにより磁気要素126の磁場と相互作用する過渡磁場をインダクタ124で生成して振動面内でインダクタ124と磁気要素126との間の力を生み出すように構成され;インダクタ124の分極解消に応答して、シャーシ130に対して基板114を中心位置に戻すように構成され;タッチセンサ面112に印加された垂直方向の力をシャーシ130に伝達するように構成されている。
【0171】
このため、この構成では、カプラ132は、インダクタ124と磁気要素126との間のギャップを設定し、それを(ほぼ)維持するように機能することができる。
【0172】
3.9.2 スライド面
図20Bに示す別の構成では、基板114は、トラックパッドキャビティ134の底部の支持面上に載って、その上をスライドする。そのような支持面には、例えば、連続的な平坦な支持面;不連続な平坦な支持面(例えば、基板114と支持面との間のスティクションを低減するための逃げ溝を有する平坦面);またはトラックパッドキャビティ134の底部の上方にオフセットされ、底部全体に分散配置されたブッシュ(例えば、ポリマーパッド)またはベアリング(例えば、鋼のボールベアリング)のセットが含まれる。
【0173】
一例では、トラックパッドキャビティ134が、振動面と平行な平坦ベース面を規定し、磁気要素126が、平坦ベース面の下方でトラックパッドキャビティ134の底部に保持され、基板114がフレキシブル回路基板を含み、このフレキシブル回路基板が、平坦ベース面の上方に接触して配置されるとともに、振動面と平行な平坦ベース面の上をスライドするように構成され、かつタッチセンサ面112に加えられた垂直方向の力をシャーシ130に伝達するように構成されている。この例では、シャーシ130が、このように基板114を介してタッチセンサ110を堅固に支持することができる。
【0174】
この構成では、磁気要素126は、トラックパッドキャビティ134の底部に埋め込むことができ、システム100は、キャビティ134の底部上に配置されて、磁気要素とインダクタ124との間に介装された低摩擦層136をさらに含むことができ、インダクタ124は、図20Aおよび図20Bに示すように、内面が低摩擦層136の上を滑らかに動くことができるように、基板114の内面に埋め込むことができる(または、基板114の内面が、他の方法で平面を規定することができる)。特に、低摩擦層136は、磁石要素とインダクタ124との間の直接的な接触を防止するとともに、キャビティ134の底部上を振動面と平行に基板114(より全体的にはタッチセンサアセンブリ)が滑らかに動くのを容易にするように構成されている。例えば、低摩擦層136は、磁気要素126とインダクタ124との間に配置されたポリテトラフルオロエチレン(または「PTFE」)フィルムを含むことができる。代替的には、低摩擦層136は、図20Bに示すように、基板114の内面にわたって、インダクタ124の上に配置することができる。
【0175】
さらに、この構成では、カプラ132は、クリックサイクル中のインダクタ124の分極解消に応答してキャビティ134内でフレキシブル回路基板を中心に置くように構成されたバネ要素を含むことができる。別の例では、カプラ132は、基板114のフレキシブル回路基板上に形成されるか、または物理的に同一の広がりを有するフレクシャ(flexure)を含むことができ、このフレクシャが、シャーシ130上に延在して保持されるとともに、クリックサイクルの終了時に磁気要素126に対してタッチセンサアセンブリを再び中央に置くように機能する。さらに別の例では、この構成(および前述した構成)において、カプラ132が、タッチセンサ面112の外周の周りに配置された可撓性膜(例えば、シール)を含むことができ、この可撓性膜が、タッチセンサ110とトラックパッドキャビティ134の内壁との間に介在し、湿気および/またはダストの進入などからタッチセンサ110とトラックパッドキャビティ134との間の間隙をシールするように構成されている。
【0176】
3.9.3 基板に取り付けられたコントローラ
前述した構成では、コントローラ150およびドライバ152が、(基板114の内面上で)タッチセンサ110の反対側などで基板114に取り付けられ、システム100がフレキシブル回路をさらに含み、このフレキシブル回路が、基板114とシャーシ130との間に延在し、シャーシ130内に配置された電源に電気的に結合される。このため、この構成では、コントローラ150は、タッチセンサ110内の検知電極と駆動電極のペア116間の電気的値を読み取るか、隣接するタッチセンサ110を直接サンプリングし、タッチセンサ110の検知電極と駆動電極のペア116間のそれらの電気的値に基づいて一連のタッチ画像を生成し、その後、この一連のタッチ画像を、フレキシブル回路を介してシャーシ130内に配置されたプロセッサに出力することができる。さらに、ドライバ152は、隣接するコントローラ150からのトリガに応答して、電源からフレキシブル回路を介してインダクタ124に間欠的に電流を供給することができる。このため、この構成では、タッチセンサアセンブリが、基板114、タッチセンサ110(タッチセンサ面112)、コントローラ150、ドライバ152、インダクタ124およびフレキシブル回路を内蔵型ユニットに含むことができる。その後、この内蔵型ユニットは、シャーシ130内のキャビティ134の上に設置することができ、フレキシブル回路は、キャビティ134内の電源ポートおよびデータポートに接続することができ、それにより、このデバイスへのシステム100の組立を完了することができる。
【0177】
この実施形態では、フレキシブル回路は、カプラ132としても機能して、キャビティ134内の振動面におけるタッチセンサアセンブリの動きに反対の力を加えて、クリックサイクルの終了時にキャビティ134内でタッチセンサアセンブリを再び中央に置くことができる。
【0178】
3.9.4 シャーシに取り付けられたコントローラ
代替的には、上述した構成において、コントローラ150およびドライバ152は、シャーシ130内に配置することができ、システム100はフレキシブル回路をさらに含むことができ、このフレキシブル回路が、基板114とシャーシ130との間に延在し、シャーシ130内に配置されたコントローラ150、ドライバ152および/または電源に電気的に結合される。この構成では、コントローラ150は、フレキシブル回路を介してタッチセンサ110内の検知電極と駆動電極のペア116間の電気的値を読み取り、タッチセンサ110の検知電極と駆動電極のペア116間の電気的値に基づいて一連のタッチ画像を生成し、その後、この一連のタッチ画像を、シャーシ130内に配置されたプロセッサ、例えばシャーシ130に取り付けられたマザーボード上でコントローラ150に隣接して配置されたプロセッサに直接出力することができる。この構成において、ドライバ152は、コントローラ150からのトリガに応答して、フレキシブル回路を介して、電源からインダクタ124に電流を間欠的に供給することができる。
【0179】
3.9.5 反転インダクタと磁気要素
さらなる別の構成では、インダクタ124がキャビティ134に堅固に結合され、磁気要素126が基板114に結合される(例えば、接着される、埋め込まれる、固定される)。例えば、この構成では、インダクタ124が、シャーシ130内に配置されたマザーボードまたは他の回路基板にはんだ付けされ、タッチセンサアセンブリ(磁気要素126を含む)は、磁気要素126がインダクタ124上のほぼ中央に置かれた状態で、マザーボードまたは他の回路基板の上に配置することができる。
【0180】
3.10 複数の振動子
この変形例では、システム100は、複数のインダクタと磁気要素のペアを含むことができる。図25に示す一実施例では、システム100が、基板114の第1のエッジの近傍に配置された第1のインダクタ124と、第1のインダクタ124の下方でシャーシ130内に配置され、よって基板114の第1のエッジの近傍に配置された第1の磁気要素126とを含む。この例では、システム100がさらに、シャーシ130に堅固に結合され、第1の磁気要素126からオフセットされた第2の磁気要素127と、タッチセンサ面112の下方で基板114に結合された第2のインダクタであって、基板114の第1のエッジの反対の第2のエッジの近傍に配置され、第2の磁気要素127に磁気的に結合するように構成された第2のインダクタ125とを含むことができる。さらに、この例では、コントローラ150は、基板114の第1のエッジの近傍におけるタッチセンサ面112上のタッチ入力の検出に応答して、第1のインダクタ124を選択的に分極して、基板114の第1のエッジの近傍で知覚されるピークエネルギーで、シャーシ130に対して基板114を振動面内で振動させることができるとともに、基板114の第2のエッジの近傍におけるタッチセンサ面112上の第2のタッチ入力の検出に応答して、第2のインダクタ125を選択的に分極して、基板114の第2のエッジの近傍で知覚されるピークエネルギーで、シャーシ130に対して基板114を振動面内で振動させることができる。
【0181】
同様の実施形態では、システム100は、(上述した)第1の振動子と、第1のインダクタ-磁気要素のペアと協働してタッチセンサ110を振動させる第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアとを含むことができる。この変形例では、第1のインダクタ-磁気要素のペアが、図25に示すように、タッチセンサ110の質量中心の右側に第1の距離だけオフセットされて基板114に取り付けられたコイルを含むことができる。第1のインダクタ-磁気要素のペアは、インダクタ124の下方に一列に整列した磁石のアレイも含むことができる。磁石のアレイは、第1のインダクタ-磁気要素のペアのインダクタ124と協働して、第1のインダクタ-磁気要素のペアの振動軸を規定することができる。第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアは、図25に示すように、タッチセンサ110の質量中心の左側に第2の距離だけオフセットされて基板114に取り付けられたコイルを含むことができる。第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアは、一列に整列した磁石のアレイも含むことができる。磁石のアレイは、第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアのインダクタ124と協働して、第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアの振動軸を規定することができる。
【0182】
一実施形態では、第1のインダクタ-磁気要素のペアの磁石のアレイは、第1のインダクタ-磁気要素のペアの振動軸が第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアの振動軸と平行になるように、第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアの磁石のアレイと平行な列に配置することができる。この実施形態では、第1のインダクタ-磁気要素のペアのインダクタ124は、第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアのインダクタ124と質量中心との間の第2の距離に等しい第1の距離だけ、タッチセンサ110の質量中心からオフセットして基板114に取り付けることができる。このため、第1のインダクタ-磁気要素のペアのインダクタ124と第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアのインダクタ124との間の中間点を質量中心と同軸にすることができる。したがって、第1のインダクタ-磁気要素のペアおよび第2のインダクタ-第2の磁気要素のペアは、協働して、第1の磁石の振動軸と第2の磁石の振動軸とに平行に延び、かつタッチセンサ110の質量中心を通る全体的な振動軸に沿ってタッチセンサ110を振動させることができる。
【0183】
コントローラ150は、第1のインダクタ-磁気要素のペア(以下、「第1の振動子」と称する)を駆動してタッチセンサ110を第1の周波数で振動させ、第2のインダクタ-第2の磁気要素のペア(以下、「第2の振動子」と称する)を駆動して、第1の振動子の振動と同位相で同様の周波数で振動させることができる。このため、第1および第2の振動子は、協働して、タッチセンサ110を全体の振動軸に沿って直線的に振動させることができる。しかしながら、コントローラ150は、追加的または代替的には、第1の振動子を駆動してタッチセンサ110を第1の周波数で振動させ、第2の振動子を駆動して、第1の周波数とは異なる第2の周波数で、かつ/または第1の振動子の振動とは位相をずらして振動させることができる。このため、第1および第2の振動子は、協働して(タッチセンサ面112と平行な平面内で)質量中心の周りでタッチセンサ110を回転させることができる。
【0184】
追加的または代替的には、コントローラ150は、第1の振動子または第2の振動子の何れかを選択的に駆動して、特定の時間に振動させることができる。コントローラ150は、第1の振動子を選択的に(かつ排他的に)駆動して、第1の振動子に隣接するタッチセンサ110のセクション上のクリックの感覚を模倣することができる。コントローラ150は、代替的には、第2の振動子を駆動して、第1の振動子に隣接するタッチセンサ110のセクション上の振動を最小限に抑えながら、第2の振動子に隣接するタッチセンサ110のセクション上のクリックの感覚を模倣することができる。例えば、コントローラ150は、第2の振動子が非アクティブのままである間に、第1の振動子を選択的に駆動して、タッチセンサ110の右側のクリック(または「右」クリック)の感覚を模倣するように、クリックサイクルを実行することができる。
【0185】
しかしながら、コントローラ150は、特定の振動波形に従って振動するように第1の振動子を駆動することもできる。同時に、コントローラ150は、第1の振動子の特定の振動波形と位相がずれた(例えば、180度位相がずれた)振動波形に従って振動するように第2の振動子を駆動することができる。例えば、第2の振動子は、特定の振動波形の振幅よりも小さい振幅の振動波形を出力することができる。また、この例では、第2の振動子の振動波形は、第1の振動子の特定の振動波形と180度位相がずれていてもよい。このため、第2の振動子は、第1の振動子によって出力される特定の振動波形を打ち消す(または振幅を小さくする)ように構成することができる。
【0186】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、コンピュータ可読命令を格納するコンピュータ可読媒体を受け入れるように構成されたマシンとして少なくとも部分的に具現化および/または実行することができる。命令は、アプリケーション、アプレット、ホスト、サーバ、ネットワーク、ウェブサイト、通信サービス、通信インタフェース、ユーザコンピュータまたはモバイルデバイス、リストバンド、スマートフォンのハードウェア/ファームウェア/ソフトウェア要素またはそれらの任意の適切な組合せと統合されたコンピュータ実行可能コンポーネントにより実行することができる。実施形態の他のシステムおよび方法は、コンピュータ可読命令を格納するコンピュータ可読媒体を受け入れるように構成されたマシンとして少なくとも部分的に具現化および/または実行することができる。命令は、上述したタイプの装置およびネットワークと統合されたコンピュータ実行可能コンポーネントにより統合されたコンピュータ実行可能コンポーネントによって実行することができる。コンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EEPROM、光学デバイス(CDまたはDVD)、ハードドライブ、フロッピードライブまたは任意の適切なデバイスなど、任意の適切なコンピュータ可読媒体に格納することができる。コンピュータ実行可能コンポーネントはプロセッサであってもよいが、任意の適切な専用ハードウェアデバイスが(代替的にまたは追加的に)命令を実行することができる。
【0187】
当業者であれば、上述した詳細な説明および図面および特許請求の範囲から認識するように、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態に修正および変更を加えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21
図22A
図22B
図23
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図26