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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】自律的に包み込む把持工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 1/24 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
B25B1/24 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020568275
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019035390
(87)【国際公開番号】W WO2019236580
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】62/682,471
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520435577
【氏名又は名称】ピー・エイチ・ディー,インク.
【氏名又は名称原語表記】PHD, Inc.
【住所又は居所原語表記】9009 Clubridge Drive, Fort Wayne, IN 46809, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マシュー アール. ウィリアムズ
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-253571(JP,A)
【文献】特開2016-54915(JP,A)
【文献】米国特許第8936289(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0252930(US,A1)
【文献】特開2004-223687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持工具であって、
グリッパ本体と、該グリッパ本体に接続され、該グリッパ本体に対して直線状にスライドする少なくとも1つのジョーとを有するグリッパと、
前記少なくとも1つのジョーに接続された少なくとも1つのスライダと、
被加工物を把持するように構成された少なくとも1つの工具部材であって、該工具部材の各々が、
前記少なくとも1つのスライダにスライド可能に取り付けられたベースと、
前記ベースに回動可能に接続された少なくとも1つの中間セグメントと、
前記少なくとも1つの中間セグメントに回動可能に接続された遠位セグメントと、
前記少なくとも1つのスライダに取り付けられた近位端および前記遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する内転用腱と、
前記少なくとも1つのジョーが前記被加工物に近づくように移動する際に、前記少なくとも1つの工具部材が前記被加工物を自律的に把持するように構成されるとともに、前記少なくとも1つのジョーが前記被加工物から離れるように移動する際に、前記少なくとも1つの工具部材が非把持位置に自律的に戻るように、前記ベースに取り付けられた近位端および前記遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する外転用腱と、
を含む、少なくとも1つの工具部材と、
を備えた把持工具。
【請求項2】
前記被加工物を把持する際に、前記ベースが、前記被加工物によって移動不能にされるように構成されており、前記少なくとも1つのスライダが、前記被加工物に向かって前記ベースに対してスライドするように構成されており、前記被加工物を把持するために、前記内転用腱にテンションが与えられ、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントを第1の方向に回転させる、請求項1記載の把持工具。
【請求項3】
前記被加工物を把持する際に、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントが前記第1の方向に回転するにつれて、前記外転用腱が伸長され、前記非把持位置では、前記外転用腱が、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントを第2の方向に回転させるように構成されている、請求項2記載の把持工具。
【請求項4】
前記ベースおよび前記少なくとも1つの中間セグメントの内部に配置された複数のプーリをさらに備え、前記プーリの各々が、前記内転用腱に接触するように構成されている、請求項1記載の把持工具。
【請求項5】
前記内転用腱が、前記ベース、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントの内部に配置されている、請求項1記載の把持工具。
【請求項6】
前記少なくとも1つのジョーが第1のジョーおよび第2のジョーを備えており、前記少なくとも1つのスライダが第1のスライダおよび第2のスライダを備えており、前記少なくとも1つの工具部材が第1の工具部材および第2の工具部材を備えている、請求項1記載の把持工具。
【請求項7】
前記第1の工具部材が第1のフィンガの形態であり、前記第2の工具部材が、共通のベースを有する一対の第2のフィンガの形態であり、前記第2のフィンガの各々が、それぞれの少なくとも1つの中間セグメント、遠位セグメント、外転用腱および内転用腱を有している、請求項6記載の把持工具。
【請求項8】
把持工具であって、
グリッパ本体と、少なくとも1つの支点開閉型ジョーとを有するグリッパと、
前記少なくとも1つの支点開閉型ジョーに回転可能に接続された少なくとも1つのロータと、
被加工物を把持するように構成された少なくとも1つの工具部材であって、該工具部材の各々が、
前記少なくとも1つのロータに回動可能に接続されたベースと、
前記ベースに回動可能に接続された少なくとも1つの中間セグメントと、
前記少なくとも1つの中間セグメントに回動可能に接続された遠位セグメントと、
前記少なくとも1つのロータに取り付けられた近位端および前記遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する内転用腱と、
前記少なくとも1つの支点開閉型ジョーが前記被加工物に向かって回転する際に、前記少なくとも1つの工具部材が前記被加工物を自律的に把持するように構成されるとともに、前記少なくとも1つの支点開閉型ジョーが前記被加工物から離れるように回転する際に、前記少なくとも1つの工具部材が非把持位置に自律的に戻るように、前記ベースに取り付けられた近位端および前記遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する外転用腱と、
を含む、少なくとも1つの工具部材と、
を備えた把持工具。
【請求項9】
前記被加工物を把持する際に、前記ベースが、前記被加工物によって移動不能にされるように構成されており、前記少なくとも1つのロータが、前記被加工物に向かって前記ベースに対して回転するように構成されており、前記被加工物を把持するために、前記内転用腱にテンションが与えられ、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントを第1の方向に回転させる、請求項8記載の把持工具。
【請求項10】
前記被加工物を把持する際に、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントが前記第1の方向に回転するにつれて、前記外転用腱が伸長され、前記非把持位置では、前記外転用腱が、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントを第2の方向に回転させるように構成されている、請求項9記載の把持工具。
【請求項11】
前記ベースおよび前記少なくとも1つの中間セグメントの内部に配置された複数のプーリをさらに備え、前記プーリの各々が、前記内転用腱に接触するように構成されている、請求項8記載の把持工具。
【請求項12】
前記内転用腱が、前記ベース、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントの内部に配置されている、請求項8記載の把持工具。
【請求項13】
前記少なくとも1つの支点開閉型ジョーが第1の支点開閉型ジョーおよび第2の支点開閉型ジョーを備えており、前記少なくとも1つのロータが第1のロータおよび第2のロータを備えており、前記少なくとも1つの工具部材が第1の工具部材および第2の工具部材を備えている、請求項8記載の把持工具。
【請求項14】
前記第1の工具部材が第1のフィンガの形態であり、前記第2の工具部材が、共通のベースを有する一対の第2のフィンガの形態であり、前記第2のフィンガの各々が、それぞれの少なくとも1つの中間セグメント、遠位セグメント、外転用腱および内転用腱を有している、請求項13記載の把持工具。
【請求項15】
被加工物を把持するための方法であって、
グリッパ本体と、該グリッパ本体に移動可能に接続された少なくとも1つのジョーとを有するグリッパと、前記少なくとも1つのジョーに移動可能に接続された少なくとも1つのマウントと、前記被加工物を把持するように構成された少なくとも1つの工具部材であって、前記工具部材の各々が、前記少なくとも1つのマウントに移動可能に取り付けられたベースと、前記ベースに回動可能に接続された少なくとも1つの中間セグメントと、前記少なくとも1つの中間セグメントに回動可能に接続された遠位セグメントと、前記少なくとも1つのマウントに取り付けられた近位端および前記遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する内転用腱と、前記ベースに取り付けられた近位端および前記遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する外転用腱と、を含む、少なくとも1つの工具部材と、を備えた把持工具を提供するステップと、
前記ベースを前記少なくとも1つのジョーにより、前記被加工物によって移動不能にされるように移動させた際に、前記内転用腱によって前記被加工物を把持するステップと、
前記ベースを前記少なくとも1つのジョーにより、前記被加工物から離れるように移動させた際に、前記外転用腱によって前記被加工物の把持を解除するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのジョーが、前記グリッパ本体に対して直線状にスライドし、前記少なくとも1つのマウントが、少なくとも1つのスライダの形態であり、前記ベースが、前記少なくとも1つのスライダにスライド可能に接続されている、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記被加工物を把持する前記ステップにおいて、前記ベースが、前記被加工物によって移動不能にされるように構成されており、前記少なくとも1つのスライダが、前記被加工物に向かって前記ベースに対してスライドするように構成されており、前記被加工物を把持するために、前記内転用腱にテンションが与えられ、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントを第1の方向に回転させる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記被加工物を把持する前記ステップにおいて、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントが前記第1の方向に回転するにつれて、前記外転用腱が伸長され、前記被加工物の把持を解除する前記ステップにおいて、前記外転用腱が、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントを第2の方向に回転させるように構成されている、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのジョーが、前記グリッパ本体に対して回転する少なくとも1つの支点開閉型ジョーの形態であり、前記少なくとも1つのマウントが、前記支点開閉型ジョーとともに回転する少なくとも1つのロータの形態であり、前記ベースが、前記少なくとも1つのロータに回動可能に接続されている、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記被加工物を把持する前記ステップにおいて、前記ベースが、前記被加工物によって移動不能にされるように構成されており、前記少なくとも1つのロータが、前記被加工物に向かって前記ベースに対して回転するように構成されており、前記被加工物を把持するために、前記内転用腱にテンションが与えられ、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントを第1の方向に回転させ、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントが前記第1の方向に回転するにつれて、前記外転用腱が伸長され、前記被加工物の把持を解除する前記ステップにおいて、前記外転用腱が、前記少なくとも1つの中間セグメントおよび前記遠位セグメントを第2の方向に回転させるように構成されている、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持工具に関し、より詳細には、自動的に関節動作する(self-articulating)グリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
グリッパは、一般に、原動機、たとえば電気モータまたは空気圧式ピストンにより、ともにまたは別々に移動されるジョーを備える機械装置である。工具は通常、ツールの表面と、把持される被加工物の1つまたは複数の表面との間にある程度等角での接触を提供するようにジョーに締結される。把持される被加工物に接触する位置まで、ジョーが、締結された工具を移動させると、ジョーが工具に対して力を与える。この力は、工具によって被加工物を保持するように伝達され、それにより、次いで、被加工物の位置を平行移動または回転させる場合がある。被加工物がのちに平行移動もしくは回転されるかまたは外力が被加工物に加えられた際に、被加工物と工具との間で相対移動が生じることを防止するために、工具が完全にまたは部分的に被加工物の輪郭を包み込む(encapsulate)ことが望ましいことが多い。
【0003】
当技術分野では、把持される被加工物をより良好に包み込むように、被加工物の輪郭に対応する相補的な接触表面の輪郭を有する工具を構成することが知られている。この包み込み方法では通常、工具が、単一の形状の被加工物のみを把持するかまたは共通の表面の輪郭を共有する類似に成形された一連の被加工物を把持するのに適している。通常、次に把持することになる被加工物の形状に適合しない場合には、工具を取り外すとともに交換しなければならない。このことは、休止時間の不本意な増大、およびグリッパが一部をなす製造または材料の取扱い操作の処理量の低減に繋がる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当技術分野で必要とされているものは、被加工物の形状に自動的に適合しかつ被加工物を把持する費用対効果が高いグリッパである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、幅広い形状およびサイズの被加工物を包み込むように、把持される被加工物の輪郭に適合するように自律的に調整可能である把持工具を提供する。把持工具はさらに、工具が取り付けられるグリッパジョーの動作からのみ、調整に必要な原動力を得る。このようにして力を得ることにより、工具とグリッパとの間の接続が簡略化される。なぜならば、所望とおりに動作するためには、工具が、グリッパに機械的に締結されさえすればよいからである。そのようなシンプルな取付けにより、グリッパジョーのパターンに適合するように単に工具の取付けパターンを変更すれば、商用の複数のタイプのグリッパで工具を使用することが可能となる。
【0006】
本発明の一形態は、グリッパ本体と、グリッパ本体に接続され、グリッパ本体に対して直線状にスライドする少なくとも1つのジョーとを有するグリッパと、少なくとも1つのジョーに接続された少なくとも1つのスライダと、被加工物を把持するように構成された少なくとも1つの工具部材とを備える把持工具を対象としている。工具部材の各々は、少なくとも1つのスライダにスライド可能に接続されたベースと、ベースに回動可能に接続された少なくとも1つの中間セグメントと、少なくとも1つの中間セグメントに回動可能に接続された遠位セグメントと、少なくとも1つのスライダに取り付けられた近位端および遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する内転用腱(テンドン)と、ベースに取り付けられた近位端および遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する外転用腱とを含んでいる。少なくとも1つの工具部材は、少なくとも1つのジョーが被加工物に向かって移動する際に、被加工物を自律的に把持するように構成されるとともに、少なくとも1つのジョーが被加工物から離れるように移動する際に、非把持位置に自律的に戻る。
【0007】
本発明の別の形態は、グリッパ本体と、少なくとも1つの支点開閉型ジョー(angular jaw)とを有するグリッパと、少なくとも1つの支点開閉型ジョーに回転可能に接続された少なくとも1つのロータと、被加工物を把持するように構成された少なくとも1つの工具部材とを備える把持工具を対象としている。工具部材の各々は、少なくとも1つのロータに回動可能に接続されたベースと、ベースに回動可能に接続された少なくとも1つの中間セグメントと、少なくとも1つの中間セグメントに回動可能に接続された遠位セグメントと、少なくとも1つのロータに取り付けられた近位端および遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する内転用腱と、ベースに取り付けられた近位端および遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する外転用腱とを含んでいる。少なくとも1つの工具部材は、少なくとも1つの支点開閉型ジョーが被加工物に向かって回転する際に、被加工物を自律的に把持するように構成されるとともに、少なくとも1つの支点開閉型ジョーが被加工物から離れるように回転する際に、非把持位置に自律的に戻る。
【0008】
本発明のさらに別の形態は、被加工物を把持するための方法であって、グリッパ本体と、グリッパ本体に移動可能に接続された少なくとも1つのジョーとを有するグリッパと、少なくとも1つのジョーに移動可能に接続された少なくとも1つのマウントと、被加工物を把持するように構成された少なくとも1つの工具部材であって、工具部材の各々が、少なくとも1つのマウントに移動可能に取り付けられたベースと、ベースに回動可能に接続された少なくとも1つの中間セグメントと、少なくとも1つの中間セグメントに回動可能に接続された遠位セグメントと、少なくとも1つのマウントに取り付けられた近位端および遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する内転用腱と、ベースに取り付けられた近位端および遠位セグメントに取り付けられた遠位端を有する外転用腱とを含む少なくとも1つの工具部材とを備えた把持工具を提供するステップを含む方法を対象としている。本方法は、ベースを少なくとも1つのジョーにより、被加工物によって移動不能にされるように移動させた際に、内転用腱によって被加工物を把持するステップと、ベースを少なくとも1つのジョーにより、被加工物から離れるように移動させた際に、外転用腱によって被加工物の把持を解除するステップと、も含んでいる。
【0009】
本発明の利点は、把持工具のフィンガが、グリッパジョーの通常の操作の動作を介して自動的に関節動作し、多数の異なる形状に成形された被加工物を自律的に包み込むことである。
【0010】
本発明の別の利点は、グリッパジョーの取付けパターンに適合するように単に把持工具のフィンガの取付けパターンを変更すれば、自動的に関節動作する把持工具のフィンガを複数のタイプのグリッパジョーに容易かつ効率的に取り付けることができることである。
【0011】
添付の図面に関連して成される本発明の実施形態の以下の説明を参照することにより、本発明の上述の特徴および利点ならびに他の特徴および利点と、これらの特徴および利点を得る形態とが一層明瞭となり、また、本発明がより理解しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】左右の工具部材を有する本発明に係る把持工具の実施形態の斜視図である。
図2図1の左側の工具部材の分解図である。
図3図1の左側の工具部材の正面図である。
図4図3の4-4線に沿った左側の工具部材の断面図である。
図5図3の5-5線に沿った左側の工具部材の断面図である。
図6図3の6-6線に沿った左側の工具部材の頂部の断面図である。
図7図1の把持工具の右側の工具部材の分解図である。
図8】右側の工具部材の正面図である。
図9図8の9-9線に沿った右側の工具部材の断面図である。
図10図8の10-10線に沿った右側の工具部材の下側を示す断面図である。
図11】筒状の被加工物の例を含む出発位置にある把持工具の側面図である。
図12図11に示した被加工物を含む中間位置にある把持工具の側面図である。
図13】把持工具が、図11に示した被加工物を把持している包み込み位置にある把持工具の側面図である。
図14】包み込み位置にある左側の工具部材の正面図である。
図15図14の15-15線に沿った包み込み位置にある左側の工具部材の断面図である。
図16】包み込み位置にある右側の工具部材の正面図である。
図17図16の17-17線に沿った包み込み位置にある右側の工具部材の断面図である。
図18】本発明に係る把持工具の別の実施形態の斜視図である。
図19】本発明に係るグリッパの別の実施形態の斜視図である。
図20】本発明に係るグリッパの別の実施形態の斜視図である。
図21】本発明に係る支点開閉型ジョーの進路を有する、左右の工具部材を有する把持工具の別の実施形態の斜視図である。
図22図21に示した把持工具の左側の工具部材の分解図である。
図23図21に示した把持工具の右側の工具部材の分解図である。
図24】包み込み位置にある図21から図23に示した把持工具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
対応する参照符号は、複数の図面にわたって対応する部分を示している。本明細書において説明する複数の例証は本発明の実施形態を示しており、それらの例証は、いずれにせよ本発明の範囲を限定するものではない。
【0014】
ここで図面、より具体的には図1を参照すると、平行開閉型ジョー(parallel jaw)の進路50を有する例示的なグリッパ、たとえばPHD社によって製造されたGRHシリーズのグリッパに取り付けられた把持工具の一実施形態が示されている。左側の工具部材100は、ベース101を含む単一のグリッパ「フィンガ」で構成されている。このベース101には、一列の複数の同一の関節セグメント(articulated segment)110が取り付けられ、先端に関節遠位セグメント120が取り付けられている。スライダ102が、左側の工具部材100をグリッパ50の左側のジョー51に、ねじ山付きの締結具(図示せず、図11も参照されたい)によって取り付けている。右側の工具部材200は、2つのグリッパフィンガが取り付けられたベース201で構成されている。これら2つのグリッパフィンガは、複数の同一の関節セグメント210を備え、先端に同一の関節遠位セグメント220が取り付けられている。スライダ202は、右側の工具部材200をグリッパ50の右側のジョー52に、ねじ山付きの締結具(図示せず)によって取り付けている。本実施形態は、左右のフィンガに関して同様のフィンガ構成を示しているが、当業者には、左右のフィンガを備えた関節セグメントが、個数、全体の寸法、構成および物理的配置の点で図示のものと異なっていてもよいことが自明である。また、当然ながら、左右のフィンガは、互いに同様の構成である必要はなく、各工具部材に存在するフィンガの個数は、本発明の基本的な性質に影響することなく変更することができる。
【0015】
ここで図2から図6を参照すると、左側の工具部材100が示されている。スライダ102の側部から突き出ているリブが、ベース101に設けられた相補的なスロット内に入り込むように配置されており、それにより、ベース101がスライダに対して回転することを防止し、かつベース101が、スライダ102の長手軸線に沿う以外のすべての方向に移動することを制限している。スライダ102の前縁部の傾斜面は、グリッパ50の左側のジョー51に機械的に締結されたスライダが被加工物に向かって移動する際に、スライダの経路の外でスライダが接触し得る被加工物のあらゆる部分を持ち上げるように作用する。
【0016】
左側の工具部材100は、内転用腱104を備えていてよい。この内転用腱104は、スライダ102に接続された近位端と、遠位セグメント120に接続された遠位端とを有している。内転用腱104は、ケーブル104の形態であってよい。刻み目の付いた下側の筒状クリート103が、ケーブル104の近位端をスライダ102に機械的に締結していてよい。しかし、そのような機械式の取付けに対して付加的または代替的に、ケーブル104は、ケーブル104とスライダ102との間に塗布された適切な接着剤で取り付けられていてよい。ケーブル104は、任意の所望の材料で構成することができる。一実施形態では、ケーブル104はポリマーケーブルである。ポリマーケーブルは、従来のスチールケーブルに対し、疲労耐性および耐食性の向上、高い柔軟性、機械的な衝撃の分散の向上、ならびに低いコストという利点を提供する。
【0017】
本体101に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン106によって支持されたプーリ105のセットは、ケーブル104の近位端が本体101に対するスライダ102の動作によって引っ張られた際に、ケーブル104が関節セグメント110の中心通路を通して引っ張られるように、ケーブル104の動作のルートを定めている。プーリ105はピボットピン106によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、プーリ105のサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、プーリとピンとの間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0018】
ピボットピン107は、ベース101、セグメント110、およびセグメント120に設けられた相補的な穴を通って、共通のセグメント110をベース101に取り付け、互いに取り付け、かつ遠位セグメント120に取り付け、ベース101から外向きに拡がる、ピン留めされた一列の関節セグメントを形成する。セグメント110とセグメント120とはピボットピン107によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、セグメントのサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、各セグメントのピボット穴とピン107との間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0019】
ケーブル104の上側の遠位端は、遠位セグメント120に対し、刻み目が付けられた上側の筒状クリート108で機械的に締結されていてよい。当然ながら、そのような機械的な取付けには、ケーブル104とセグメント120との間に塗布された適切な接着剤によって影響が与えられてもよい。ケーブル104は、同一の各セグメント110の中に配置されたプーリ109上を通っている。こうして、ケーブル104は、スライダ102と遠位セグメント120との間に適切に取り付けられ、セグメントのピボットピン107の一方側に配置された緊張した内転用腱104を効果的に形成する。プーリ109は、セグメント110に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン106によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、プーリ109のサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、プーリとピンとの間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0020】
左側の工具部材100は、外転用腱111を備えていてよい。外部ストリップ111が、ピボットピン107の反対側に位置する外転用腱111を効果的に形成していてよい。外部ストリップ111は、適切な弾性材料で構成されていてよい。ストリップ111の遠位端は、任意の所望の方法、たとえば熱による結合または接着剤による結合によって、遠位セグメント120に設けられた相補的な溝に取り付けられている。弾性ストリップ111の近位端は、本体101に設けられた相補的なスロット内に配置され、止めねじ112のクランプ動作または他の適切な熱による結合もしくは接着剤による結合によって本体101に取り付けられている。取り付けられた遠位端と、取り付けられた近位端との間のストリップ111の部分は、束縛されておらず、自在に伸長されるかまたは弛緩される。ストリップ111は、このストリップ111にテンションが生じるように、設置時に伸長される。このテンションは、遠位セグメント120をベース101に向けて引っ張るように作用する。この引張りにより、遠位セグメント120および共通のセグメント110内にトルクが発生する。このトルクは、各セグメントをピボットピン107に関して反時計回り(CCW)に回転させるように作用する。当業者には、ストリップ111が、弾性ストリップと同じ機能を提供するように、1つまたは複数の引張りコイルばね、または適切なばねに取り付けられた柔軟であるが伸縮不能な引張り部材によって置き換えることができることが自明である。
【0021】
共通のセグメント110の側部から突出するボス113が、本体101およびセグメント110に設けられた相補的なスロット114と係合して、ベース101にピン留めされたセグメント、およびセグメント列における連続してピン留めされた各セグメントの、前のセグメントに対するCCWの回転の角度を制限する。したがって、スロット114内のボス113の作用によって制限されることで、各セグメントは、各セグメントが直線状で、互いに垂直に整列した位置を越えてピボット107を中心としてCCWに回転できない。
【0022】
外部のトルクの影響下での任意のセグメントの時計回り(CW)の回転は、ストリップ111をさらに伸長させ、結果として、ストリップによってCWに回転されたセグメントに加えられるトルクが増大する。こうして、ストリップ111は、外転用腱として機能する。この外転用腱は、セグメント110および120に対してピボットピン107を中心としてトルクを常に加え、これらセグメントを直線状の互いに垂直に整列した状態に戻す。セグメント110の中心通路を通る内転ケーブル104の下向きの動作により、セグメント110および120にCWのトルクが加えられる。このトルクにより、これらセグメントがピボットピン107を中心としてCWに回転し、外転ストリップ111がさらに伸長する。
【0023】
セグメント110に設けられた相補的な凹部にパッド115が適切に結合されている。パッド115は所定の材料、たとえば適切なエラストマーまたはナノダイアモンドが含浸された金属基板で構成され、高い静止摩擦係数を有している。それにより、パッドと、このパッドが接触し得る、把持される被加工物の任意の表面との間に発生する摩擦力が向上する。
【0024】
寸法20は、最も近位側の共通のセグメント110をベース101に接続するピボットピン107の中心と、内転ケーブル104の中心線との間の垂直方向の距離を示している。寸法21は、残りのセグメントのそれぞれのピボットピン107と、ケーブル104の中心線との間の垂直方向の距離を示している。寸法22は、残りのセグメントのピボットピン107と、外転ストリップ111の中心線との間の垂直方向の距離を示している。内転ケーブル104のテンションによって様々なセグメントに加えられる、ピボットピン107を中心としてCWに作用するトルクは、ケーブルのテンションと、それぞれのピボットピンと内転ケーブル104の中心線との間の垂直方向の距離との積に等しい。類似して、外転ストリップ111のテンションによって様々なセグメントに加えられる、ピボットピン107を中心としてCCWに作用するトルクは、ストリップのテンションと、それぞれのピボットピンと外転ストリップの中心線との間の垂直方向の距離との積に等しい。当業者には、引っ張られている場合のケーブル104のテンションが、ケーブルの長さ全体に沿って一定であり、それぞれのピボットピン107の中心と、ケーブルの中心線との間の垂直方向の距離のみを、ケーブル104によって任意の所与のセグメントに加えられるトルクを制御するために変化させる必要があることは明らかである。また、外転ストリップ111の局所的なテンションが、その場所におけるストリップの断面積の関数であり、それにより、ストリップの局所的なテンションが、ストリップの長さに沿ってストリップ111の断面積を選択的に変化させることによって制御することができることも明らかである。したがって、任意の所与のセグメントに作用する正味トルクは、ストリップ111の局所的な断面積、セグメントのそれぞれのピボットピン107と外転ストリップ111の中心線との間の距離、およびセグメントのそれぞれのピボットピン107と内転ケーブル104の中心線との間の距離を制御することによって選択することができる。また、各セグメントに作用する外部のトルクが存在しない場合、CWの最も高い正味トルクが加えられるセグメントが、被加工物に向かって最初に回転することになり、残りの各セグメントが、CWに加えられる正味トルクが低くなる順番で連続して回転することも明らかである。
【0025】
クリート108は、内転ケーブル104の遠位端を遠位セグメント120に機械的に締結する。クリート108には、中心の円筒体108Cが備えられている。この円筒体108Cの外径には、直線状の刻み目、または摩擦を増大させる他の処理、たとえばナノダイアモンドが含浸された被覆が施されている。ボス108Aおよび108Bは、中心の円筒体108Cの側面に位置している(図2)。
【0026】
クリート108を遠位セグメント120に設置した後に、ボス108Aの表面は、セグメント120内のクリートキャビティの相補的な表面120Aに置かれる。一方、ボス108Bの表面は、同様に、相補的な表面120Bに置かれる。相補的なレリーフ120Cは、セグメント120内のクリートキャビティ120Cを形成して、クリート108の中心の円筒体108Cのいずれの部分も、セグメント120のあらゆる部分と接触することを防止する(図2および図6)。中心の円筒体108Cは、ケーブル104の表面に自在に接触する。ケーブル104は、中心の円筒体108Cの動作により、セグメント120の表面120Dに接触するように押圧される。角度26は、表面120Aおよび120Bと、セグメント120のケーブル接触表面120Dとによって形成される角度を示している。角度26は、10度~30度の範囲で狭く選択される。矢印27は、クリート108を遠位セグメント120のクリートキャビティ120Cに設置するように、クリートの中心の円筒体108Aに加えられる力を示している。ケーブル104が緊張した状態に維持される間、クリート108が凹部120Cの口内に案内されるにつれて、力27が中心の円筒体108Cの軸線の左側に加えられる。これにより、円筒体108Cの表面が、ケーブル104の表面に対してCCWに回転し、一方、表面108Aおよび108Bは、それぞれ表面120Aおよび120Bに対してスライドする。角度26が鋭角である性質により、くさびの作用が生じる。この作用により、クリート108が凹部120C内に徐々に移動するにつれて、表面120Aと表面120Bと表面120Dとの間の空間が減少する。このように空間が徐々に減少することにより、クリート108がケーブル104の表面に沿って回転するにつれて、ケーブル104が完全に表面120Dに挟まり、凹部120Cへのクリート108の進入が停止するまで、クリートの中心の円筒体108Cの表面と、セグメント120の表面120Dとの間でケーブル104が徐々に圧縮される。矢印28は、ケーブルがスライダ102の動作によって引っ張られる際のケーブル104の外部のテンションの方向を示している(図2図4、および図6)。矢印28の方向に印加されるテンションにより、表面108Aおよび108Bがそれぞれ表面120Aおよび120Bに対して回転している状態で、クリート108がCWに回転する。これにより、ケーブル104が表面120Cに対し、円筒体108Cによってさらに圧縮される。こうして、矢印28の方向でケーブル104に加えられる外部のあらゆるテンションは、ケーブル104を表面120Dに対して保持するためにクリート108によってケーブル104に加えられる挟持力を比例的に増大させるように作用する。
【0027】
当然ながら、遠位セグメント120内にケーブル104の遠位端を保持するために、クリート108によって使用される同じくさびのメカニズムは、同様に、ケーブル104の近位端をスライダ102内に保持するために、下側クリート103によって使用される。
【0028】
ここで図7から図10を参照すると、右側の工具部材200が示されている。スライダ202の側部から突き出ているリブが、ベース201に設けられた相補的なスロット内に入り込むように配置されており、それにより、ベース201がスライダに対して回転することを防止し、かつベース201が、スライダ202の長手軸線に沿う以外のすべての方向に移動することを制限している。スライダ202の前縁部の傾斜面は、グリッパ50の右側のジョー52に機械的に締結されたスライダが被加工物に向かって移動する際に、スライダの経路の外でスライダが接触し得る被加工物のあらゆる部分を持ち上げるように作用する。
【0029】
ピボットピン207は、ベース201、セグメント210、およびセグメント220に設けられた相補的な穴を通って、共通のセグメント210をベース201に取り付け、互いに取り付け、かつ遠位セグメント220に取り付け、ベース201から外向きに拡がる、ピン留めされた二列の関節セグメントを形成する。セグメント210とセグメント220とはピボットピン207によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、セグメントのサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、各セグメントのピボット穴とピン207との間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0030】
右側の工具部材200は、内転用腱204を備えていてよい。この内転用腱204は、スライダ202に接続された近位側中心部と、遠位セグメント220に接続された遠位端とを有している。内転用腱204は、ケーブル204の形態であってよい。ケーブル204の近位側中心部は、プーリ216の周りに通されている。このプーリ216は、スライダ202に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン206によって支持されている。一実施形態では、ケーブル204はポリマーケーブルである。ポリマーケーブルは、従来のスチールケーブルに対し、疲労耐性および耐食性の向上、高い柔軟性、機械的な衝撃の分散の向上、ならびに低いコストという利点を提供する。本体210に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン206によって支持されたプーリ205は、ケーブル204の近位側中心部が本体201に対するスライダ202の動作によって引っ張られた際に、ケーブル204の各端部が二列のセグメントのうちの一方の関節セグメント210の中心通路を通して引っ張られるように、ケーブル204の動作のルートを定めている。プーリ205はピボットピン206によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、プーリ205のサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、プーリとピンとの間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0031】
ケーブル204の各遠位端は、一方の列のセグメントの遠位セグメント220に対し、刻み目が付けられた筒状クリート208で機械的に締結することができる。当然ながら、そのような機械的な取付けには、ケーブル204とセグメント220との間に塗布された適切な接着剤によって影響が与えられてもよい。さらに、当然ながら、遠位セグメント120内にケーブル104の遠位端を保持するために、クリート108によって使用される同じくさびのメカニズムは、同様に、ケーブル204の各遠位端を遠位セグメント220内に保持するために、クリート208によっても使用される。
【0032】
ケーブル204は、同一の各セグメント210の中に配置されたプーリ209上を通っている。こうして、ケーブル204の各側部は、スライダ202と遠位セグメント220との間に適切に取り付けられ、セグメントのピボットピン207の一方側に配置された緊張した内転用腱を効果的に形成する。プーリ209は、セグメント210に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン206によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、プーリ209のサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、プーリとピンとの間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0033】
工具部材200の二列のセグメントの各々が、把持される被加工物の輪郭に互いに個別に接触するとともに適合することができることが望ましい。そのように個別に適合することは、工具と被加工物との間の接触点の数を最大化することにより、複数の非対称な輪郭を有する被加工物を把持する際の助けになる。任意のセグメント列の関節動作は、その列が、把持される被加工物の輪郭に完全に適合した際に終了し、それに応じて、完全に適合したセグメント列に取り付けられたケーブル204の端部の動作を停止し、静止した状態にする。その後、図10の矢印17によって示すように、プーリ216を越えて横方向に移動するケーブル204の能力により、ケーブルの長さを実質的に自由端から固定端にシフトさせることができ、ケーブル204の自由端を、本体201に対して移動するスライダ202の動作によって引っ張り続けることができる。両方のセグメント列が被加工物に完全に適合すると、プーリ216を越えて横方向に移動するケーブル204の能力により、ケーブル204の2つの端部間のテンションを均一にする方法がさらに提供される。
【0034】
適切な弾性材料によって構成されたストリップ211は、ピボットピン207の反対側に位置する外転用腱を効果的に形成している。ストリップ211の遠位端は、適切な手段、たとえば熱による結合または接着剤による結合によって、遠位セグメント220に設けられた相補的な溝に取り付けられている。弾性ストリップ211の近位端は、本体201に設けられた相補的なスロット内に配置され、止めねじ212のクランプ動作または他の適切な熱による結合もしくは接着剤による結合によって本体201に取り付けられている。取り付けられた遠位端と、取り付けられた近位端との間のストリップ211の部分は、束縛されておらず、自在に伸長されるかまたは弛緩される。ストリップ211は、このストリップにテンションが生じるように、設置時に伸長される。このテンションは、遠位セグメント220をベース201に向けて引っ張るように作用する。この引張りにより、遠位セグメント220および共通のセグメント210内にトルクが発生する。このトルクは、各セグメントをピボットピン207に関してCWに回転させるように作用する(図9)。当業者には、ストリップ211が、弾性ストリップと同じ機能を提供するように、1つまたは複数の引張りコイルばね、または適切なばねに取り付けられた柔軟であるが伸縮不能な引張り部材によって置き換えることができることが自明である。当然ながら、部材200の向きは、図9と比べた場合に図7では逆向きになっている。
【0035】
共通のセグメント210の側部から突出するボス213が、本体201およびセグメント210に設けられた相補的なスロット214と係合して、ベース201にピン留めされたセグメント、およびセグメント列における連続してピン留めされた各セグメントの、前のセグメントに対するCWの回転の角度を制限する。したがって、スロット214内のボス213の作用によって制限されることで、各セグメントは、各セグメントが直線状で、互いに垂直に整列した位置を越えてピボット207を中心としてCWに回転できない。
【0036】
外部のトルクの影響下での任意のセグメントのCCWの回転は、ストリップ211をさらに伸長させ、結果として、ストリップによってCCWに回転されたセグメントに加えられるトルクが増大する。こうして、ストリップ211は、外転用腱として機能する。この外転用腱は、セグメント210および220に対してピボットピン207を中心としてトルクを常に加え、これらセグメントを直線状の互いに垂直に整列した状態に戻す。セグメント210の中心通路を通る内転ケーブル204の下向きの動作により、セグメント210および220にCCWのトルクが加えられる。このようにトルクを加えることにより、これらセグメントがピボットピン207を中心としてCCWに回転し、外転ストリップ211がさらに伸長する。
【0037】
セグメント210に設けられた相補的な凹部にパッド215が適切に結合されている。パッド215は所定の材料、たとえば適切なエラストマーまたはナノダイアモンドが含浸された金属基板で構成され、高い静止摩擦係数を有している。それにより、パッドと、このパッドが接触し得る、把持される被加工物の任意の表面との間に発生する摩擦力が向上する。
【0038】
寸法23は、最も近位側の共通のセグメント210をベース201に接続するピボットピン107の中心と、内転ケーブル204の中心線との間の垂直方向の距離を示している。寸法24は、残りのセグメントのそれぞれのピボットピン207と、ケーブル204の中心線との間の垂直方向の距離を示している。寸法25は、残りのピボットピン207と、外転ストリップ211の中心線との間の垂直方向の距離を示している。部材100と類似して、対応する外転ストリップ211の断面積と、ピボットピン207とストリップ211の中心線および外転ケーブル204の中心線との間の垂直方向の距離とを、各セグメント列の回転の順番を制御するように同様に選択することができる。
【0039】
ここで図11から図13を参照すると、把持工具が一例の被加工物30と係合する際の把持工具の連続的な動作が示されている。図11では、左側のジョー51と右側のジョー52とがそれぞれ、左側の工具部材100と右側の工具部材200とを、筒状の被加工物30に近づくように、矢印12の方向と矢印13の方向とに移動させる。この動作の間、左側の工具部材100を備えたセグメントと、右側の工具部材200を備えた各セグメントとはそれぞれ、伸長した弾性ストリップ111と弾性ストリップ211とのテンションにより、垂直に整列した直線状の状態に保持されている。すべてのセグメントが垂直方向に整列されている限り、ケーブル104および204は緊張したままである。これにより、スライダ102とベース101との間およびスライダ202とベース201との間のあらゆる相対移動が防止される。なぜならば、スライダとベースとの間の相対移動が、ピボットピン107を中心としたセグメントのCWの回転またはピボットピン207を中心としたセグメントのCCWの回転を必要とするからである(図4および図9も参照されたい)。したがって、ベース101および201は、それぞれ矢印14および矢印15によって示すように、それぞれのスライダ102および202と関連して移動する。
【0040】
図12は、被加工物30と最初に接触する瞬間の工具部材100および200を示している。セグメント110のパッド115が被加工物30に接触すると、ピボットピン107によってともにピン留めされたセグメント110および遠位セグメント120によって形成されたフィンガが、静止した状態にされる。ベース101も、ピボットピン107によって確立された、ベース101へのピン留めされた接続を通して作用する、セグメント110の作用によって静止した状態にされる。しかし、スライダ102は、矢印12によって示すように、スライダ102が締結されたジョー51の影響下で移動自在なままである。類似して、セグメント210のパッド215が被加工物30に接触すると、セグメント210、遠位セグメント220およびピボットピン207によって形成されたフィンガが、被加工物30と接触することによって静止した状態にされる。ベース201も、ピボットピン207によって確立された、ベース201へのピン留めされた接続を通して作用する、セグメント210の作用によって静止した状態にされる。一方、スライダ202は、矢印13によって示すように、ジョー52の影響下で移動自在なままである。
【0041】
ここで図11から図17を集合的に参照すると、被加工物30を把持している工具部材100および200が示されている。ベース101が、被加工物30に対して作用する、セグメント110、セグメント120およびピン107を含むセグメント列によって静止した状態にされると、スライダ102は、グリッパジョー51の作用の下で、静止したベース101に対して移動し続ける。そのような相対動作により、プーリ105の周りに通された内転ケーブル104が、セグメント110の中心通路を通って下方に引っ張られる。ケーブル104の下向きの動作により、セグメント110および120にCWのトルクが加えられる。このようにトルクを加えることにより、これらセグメントがピボットピン107を中心として矢印16の方向でCWに回転し、外転ストリップ111が伸長するとともに、セグメント110に結合されたパッド115および遠位セグメント120に結合されたストリップ111が、被加工物30の表面に等角で接触する。
【0042】
ベース201が、被加工物30に接触している、セグメント210、セグメント220およびピン207を含むいずれかのセグメント列によって静止した状態にされると、スライダ202は、グリッパジョー52の作用の下で、静止したベース201に対して移動し続ける。そのような相対動作により、プーリ205の周りに通された内転ケーブル204が、セグメント210の中心通路を通って下方に引っ張られる。ケーブル204の下向きの動作により、セグメント210および220にCCWのトルクが加えられる。このようにトルクを加えることにより、これらセグメントがピボットピン207を中心として矢印17の方向でCCWに回転し、外転ストリップ211が伸長するとともに、セグメント210に結合されたパッド215および遠位セグメント220に結合されたストリップ211が、被加工物30の表面に等角で接触する。
【0043】
ここで図15および図17を参照すると、工具部材100,200が、作動した包み込み位置(encapsulating position)で示されている。小さい黒色の矢印は、動作の方向と、ケーブル104,204がセグメント110,210のそれぞれの中心通路を通して引っ張られた際に内転ケーブル104,204を動かす力となる対応するテンションの方向との両方を示している。
【0044】
実施形態の一形態では、ストリップ111の断面積は、ストリップの長さに沿って一定に維持され、垂直方向の距離22は、すべてのセグメントに関して一定に維持されている。一方、ベース101にピン留めされた最も近位のセグメント110に関する垂直方向の距離20の値は、残りのセグメントに関する距離21の値よりも大きいように選択される。ストリップ211の断面積は、ストリップ111の断面積に適合するように選択される。また、垂直方向の距離23,24,25に関する値は、それぞれ、距離20,21,22に関して選択された値に適合するように選択される。
【0045】
この形態は、最も近位のセグメント110および210によって把持された被加工物に加えられる力を増大させるが、残りのセグメントによって被加工物に加えられる力を低減させる。セグメント列の近位端へ力の分布を集中させることにより、把持の間にフィンガ列によってスライダ102および202の周りに形成されるモーメントを低減させる利点が提供され、ベースとスライダとの間の反力と、この反力から生じる摩擦損失とが低減される。この摩擦損失は、グリッパの効率を低減させる。
【0046】
実施形態の別の形態では、ストリップ111および211の断面積が、各ストリップの近位端から遠位端へ徐々に低減され、垂直方向の距離22および25はすべてのセグメントに関して等しく維持されている。最も近位のセグメントに関する垂直方向の距離20および23の値は、残りのセグメントに関する距離21および24の値に等しくされている。
【0047】
この形態により、セグメント列が被加工物に接触した際に初めて、遠位セグメント120および220が回転し、それぞれのセグメント列の残りは、最も遠位のセグメントから最も近位のセグメントへ連続して回転する。遠位から近位への漸次的なこのような回転により、接触した被加工物をグリッパに向けて徐々に押圧する利点が提供され、それにより、把持された被加工物が、可能な限りグリッパの近くで静止する。
【0048】
また、最も近位のセグメントに関する垂直方向の距離20および23の値を、残りのセグメントに関する距離21および24の値よりも小さいように選択することによって、遠位のセグメントから近位のセグメントへの漸次的な同様の回転を達成することができることも明らかとなる。ここで、距離21および24の局所的な値は、それぞれのセグメント列の各々で近位端から遠位端に向かって徐々に増大している。この内転ケーブルに対するピボットピンの間隔が近位から遠位へと徐々に増大することは、独立して実施することができるか、または外転ストリップ111および211の断面積が近位から遠位へと先細りにされることに関連して実施することができる。
【0049】
ここで図18を参照すると、把持工具の別の実施形態が示されている。この実施形態では、グリッパ50上の工具部材100と工具部材200とが並置されている。この形態は、グリッパジョー51(図示せず)および52を閉じるよりむしろ開く際に把持を提供する。そのような把持形態は、被加工物が中空、たとえばパイプ、フープまたはトーラスであり、内側の開口から把持する必要がある場合に望ましい。
【0050】
本発明の別の実施形態では、磁石がスライダ102および202に追加され、磁石検知スイッチがベース101および201に追加され、各スイッチがそれぞれのスライダのそれぞれのベースに対する位置を検出することを可能にしている。それぞれの各スライダとベースとの間の相対動作を検出することにより、各工具部材と、把持される被加工物との間の接触の開始を電気的に通信する所望の手段が提供される。これにより、グリッパジョー51,52が被加工物に向かって迅速に移動するが、次いで減速させて、より正確な把持、および/または被加工物との接触が検出されるまで把持力を制限すること、および/または操作上の考慮事項を向上させるために、所望の位置にあることが確認されることを許容するようにすることが可能になる。
【0051】
ここで図19および図20を参照すると、左側の工具部材300と右側の工具部材400とを含む本発明の別の実施形態が示されている。セグメント列は、代表的な人間の指または親指の数、サイズ、形状および物理的プロポーションに類似するように選択されている。右側の工具部材300は、ただ1つのセグメント列を備えており、一方、左側の工具部材400は、2つまたはそれ以上のセグメント列を備えている。工具部材300のセグメント列は、人間の指に類似するように近位セグメント330、中間セグメント340および遠位セグメント350を備えるように選択することもできるし、または人間の親指に類似するように近位セグメント330および遠位セグメント350のみを備えるように選択することもできる。工具部材400の各セグメント列は、人間の指に類似するように近位セグメント430、中間セグメント440および遠位セグメント450を備えている。
【0052】
ここで図21から図24を参照すると、支点開閉型ジョーの進路70を有する例示的なグリッパ、たとえばPHD社によって製造されたGRBシリーズのグリッパに取り付けられるように構成された本発明の別の実施形態が示されている。左側の工具部材500は通常、ベース501を有する単一のフィンガを備えている。このベース501には、一列の複数の同一の関節セグメント510が取り付けられ、先端に関節遠位セグメント520が取り付けられている。ロータ502が、左側の工具部材500をグリッパ70の左側のジョー71に、ねじ山付きの締結具73(図21には図示せず)によって取り付けている。右側の工具部材600は通常、2つのフィンガが取り付けられたベース601を備えている。この2つのフィンガは、複数の同一の関節セグメント610を有し、先端に同一の関節遠位セグメント620が取り付けられている。ロータ602は、右側の工具部材600をグリッパ70の右側のジョー72に、ねじ山付きの締結具73(図21には2つのうちの一方のみが示されている)によって取り付けている。本実施形態は、左右のフィンガに関して同様のフィンガ構成を示しているが、当業者には、左右のフィンガを備えた関節セグメントが、個数、全体の寸法、構成および物理的配置の点で図示のものと異なっていてもよいことが自明である。また、当然ながら、左右のフィンガは、互いに同様の構成である必要はなく、各工具部材に存在するフィンガの個数は、本発明の基本的な性質に影響することなく変更することができる。
【0053】
ここで図22を参照すると、左側の工具部材500が示されている。ピン517が、ベース501に設けられた相補的な穴を通り、ロータ502に設けられた相補的な穴内に圧入されており、それにより、ロータ502に対してベース501が移動することを防止しつつ、ロータ502がベース501に対して回転することを可能にしている。ロータ502に設けられた相補的な皿穴により、ロータがねじ山付きの締結具73(図22には図示せず)によってグリッパ70の左側のジョー71に機械的に締結されることが可能となる。
【0054】
左側の工具部材500は、内転用腱504を備えていてよい。この内転用腱504は、ロータ502に接続された近位端と、遠位セグメント520に接続された遠位端とを有している。内転用腱504は、ケーブル504の形態であってよい。筒状クリート518が、ケーブル504をクリートプレート519に押し付けることにより、ケーブル504の近位端をロータ502に機械的に締結する。クリートプレート519の垂直な側部は、ロータ502に設けられた相補的なスロット内に配置されている。クリート518の筒状端部は、ロータ502に設けられた角度が付いた相補的なスロット内に適切に保持されている。こうして、ケーブル502は、プレート519に対するクリート518の動作により、摩擦によって保持された状態に維持される。当然ながら、そのような機械的な取付けには、ケーブルとロータとの間に塗布された適切な接着剤によって影響が与えられてもよい。一実施形態では、ケーブル504はポリマーケーブルである。ポリマーケーブルは、従来のスチールケーブルに対し、疲労耐性および耐食性の向上、高い柔軟性、機械的な衝撃の分散の向上、ならびに低いコストという利点を提供する。本体501に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン521によって支持されたプーリ505は、ケーブル504の近位端が本体501に対するロータ502の回転によって引っ張られた際に、ケーブル504が関節セグメント510の中心通路を通して引っ張られるように、ケーブル504の動作のルートを定めている。プーリ505はピボットピン506によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、プーリ505のサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、プーリとピンとの間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0055】
ピボットピン507は、ベース501、セグメント510、およびセグメント520に設けられた相補的な穴を通って、共通のセグメント510をベース501に取り付け、互いに取り付け、かつ遠位セグメント520に取り付け、ベース501から外向きに拡がる、ピン留めされた一列の関節セグメントを形成する。セグメント510とセグメント520とはピボットピン507によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、セグメントのサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、各セグメントのピボット穴とピン507との間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0056】
ケーブル504の遠位端は、遠位セグメント520に対し、刻み目が付けられた筒状クリート508で機械的に締結されている。しかし、当然ながら、そのような機械的な取付けには、ケーブルとセグメントとの間に塗布された適切な接着剤によって影響が与えられてもよい。ケーブル504は、同一の各セグメント510の中に配置されたプーリ509上を通っている。こうして、ケーブル504は、ロータ502と遠位セグメント520との間に適切に取り付けられ、セグメントのピボットピン507の一方側に配置された緊張した内転用腱を効果的に形成する。プーリ509は、セグメント510に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン506によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、プーリ509のサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、プーリとピンとの間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0057】
適切な弾性材料によって構成されたストリップ511は、ピボットピン507の反対側に位置する外転用腱を効果的に形成している。ストリップ511の遠位端は、適切な手段、たとえば熱による結合または接着剤による結合によって、遠位セグメント520に設けられた相補的な溝に取り付けられている。弾性ストリップ511の近位端は、本体501に設けられた相補的なスロット内に配置され、止めねじ512のクランプ動作または他の適切な熱による結合もしくは接着剤による結合によって本体501に取り付けられている。取り付けられた遠位端と、取り付けられた近位端との間のストリップ511の部分は、束縛されておらず、自在に伸長されるかまたは弛緩される。ストリップ511は、このストリップにテンションが生じるように、設置時に伸長される。このテンションは、遠位セグメント520をベース501に向けて引っ張るように作用する。この引張りにより、遠位セグメント520および共通のセグメント510内にトルクが発生する。このトルクは、各セグメントをピボットピン507に関して反時計回り(CCW)に回転させるように作用する。当然ながら、ストリップ511が、弾性ストリップと同じ機能を提供するように、1つまたは複数の引張りコイルばね、または適切なばねに取り付けられた柔軟であるが伸縮不能な引張材によって置き換えることができる。
【0058】
共通のセグメント510の側部から突出するボス513が、本体501およびセグメント510に設けられた相補的なスロット514と係合して、ベース501にピン留めされたセグメント、およびセグメント列における連続してピン留めされた各セグメントの、前のセグメントに対するCCWの回転の角度を制限する。したがって、スロット514内のボス513の作用によって制限されることで、各セグメントは、各セグメントが直線状で、互いに垂直に整列した位置を越えてピボット507を中心としてCCWに回転できない。
【0059】
外部のトルクの影響下での任意のセグメントの時計回り(CW)の回転は、ストリップ511をさらに伸長させ、結果として、ストリップによってCWに回転されたセグメントに加えられるトルクが増大する。こうして、ストリップ511は、外転用腱として機能する。この外転用腱は、セグメント510および520に対してピボットピン507を中心としてトルクを常に加え、これらセグメントを直線状の互いに垂直に整列した状態に戻す。セグメント510の中心通路を通る内転ケーブル504の下向きの動作により、セグメント510および520にCWのトルクが加えられる。このようにトルクを加えることにより、これらセグメントがピボットピン507を中心としてCWに回転し、外転ストリップ511がさらに伸長する。
【0060】
セグメント510に設けられた相補的な凹部にパッド515が適切に結合されている。ベース501に設けられた相補的な凹部にパッド522が適切に結合されている。パッド515および522は所定の材料、たとえば適切なエラストマーまたはナノダイアモンドが含浸された金属基板で構成され、高い静止摩擦係数を有している。それにより、パッドと、このパッドが接触し得る、把持される被加工物の任意の表面との間に発生する摩擦力が向上する。
【0061】
ケーブル104の遠位端をセグメント120に機械的に締結するクリート108に類似して、クリート508は、ケーブル504の遠位端をセグメント520に締結する。当然ながら、遠位セグメント120内にケーブル104の遠位端を保持するために、クリート108によって使用される同じくさびの動作は、同様に、ケーブル504の近位端をロータ502内に保持するために、クリート518によって使用される。
【0062】
ここで図23を参照すると、右側の工具部材600が示されている。ピン617が、ベース601に設けられた相補的な穴を通り、ロータ602に設けられた相補的な穴内に圧入されており、それにより、ロータ602に対してベース601が移動することを防止しつつ、ロータがベースに対して回転することを可能にしている。ロータ602に設けられた相補的な皿穴により、ロータがねじ山付きの締結具73(図23には図示せず)によってグリッパ70の右側のジョー72に機械的に締結されることが可能となる。
【0063】
ピボットピン607は、ベース601、セグメント610、およびセグメント620に設けられた相補的な穴を通って、共通のセグメント610をベース601に取り付け、互いに取り付け、かつ遠位セグメント620に取り付け、ベース601から外向きに拡がる、ピン留めされた二列の関節セグメントを形成する。セグメント610とセグメント620とはピボットピン607によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、セグメントのサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、各セグメントのピボット穴とピン607との間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0064】
右側の工具部材600は、内転用腱604を備えていてよい。この内転用腱604は、ロータ602に接続された近位端と、遠位セグメント620に接続された遠位端とを有している。内転用腱604は、ケーブル604の形態であってよい。ケーブル604の近位側中心部は、プーリ616の周りに通されている。このプーリ616は、ロータ602に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン606によって支持されている。一実施形態では、ケーブル604はポリマーケーブルである。ポリマーケーブルは、従来のスチールケーブルに対し、疲労耐性および耐食性の向上、高い柔軟性、機械的な衝撃の分散の向上、ならびに低いコストという利点を提供する。本体610に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン621によって支持されたプーリ605は、ケーブルの近位側中心部が本体601に対するロータ602の動作によって引っ張られた際に、ケーブル604の各端部が二列のセグメントのうちの一方の関節セグメント610の中心通路を通して引っ張られるように、ケーブル604の各端部の動作のルートを定めている。プーリ605および616はピボットピン621および606によってそれぞれ直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、プーリ605および/または616のサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、プーリとピンとの間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0065】
ケーブル604の各遠位端は、一方の列のセグメントの遠位セグメント620に対し、刻み目が付けられた筒状クリート608で機械的に締結することができる。当然ながら、そのような機械的な取付けには、ケーブルとセグメントとの間に塗布された適切な接着剤によって影響が与えられてもよい。さらに、当然ながら、遠位セグメント520内にケーブル504の遠位端を保持するために、クリート508によって使用される同じくさびのメカニズムは、同様に、ケーブル604の各遠位端を遠位セグメント620内に保持するために、クリート608によっても使用される。
【0066】
ケーブル604は、同一の各セグメント610の各々の中に配置されたプーリ609上を通っている。こうして、ケーブル604の各側部は、ロータ602と遠位セグメント620との間に適切に取り付けられ、セグメントのピボットピン607の一方側に配置された緊張した内転用腱を効果的に形成する。プーリ609は、セグメント610に設けられた相補的な穴内に圧入されたピボットピン606によって直接支持されるものとして図示されているが、当然ながら、プーリ609のサイズが、介在を許容するだけの十分な大きさである場合には、プーリとピンとの間に商用の適切なベアリングブッシング、ラジアルボールベアリング、またはニードルベアリングが介在してもよい。
【0067】
工具部材600の二列のセグメントの各々が、把持される被加工物の輪郭に互いに個別に接触するとともに適合することができることが望ましい場合がある。そのように個別に適合することは、工具と被加工物との間の接触点の数を最大化することにより、複数の非対称な輪郭を有する被加工物を把持する際の助けになる。任意のセグメント列の関節動作は、その列が、把持される被加工物の輪郭に完全に適合した際に終了し、それに応じて、完全に適合したセグメント列に取り付けられたケーブル604の端部の動作を停止し、静止した状態にする。その後、プーリ616を越えて横方向に移動するケーブル604の能力により、ケーブルの長さを実質的に自由端から固定端にシフトさせることができ、ケーブル604の自由端を、本体601に対して回転するロータ602の動作によって引っ張り続けることができる。両方のセグメント列が被加工物に完全に適合すると、プーリ616を越えて横方向に移動するケーブル604の能力により、ケーブル604の2つの端部間のテンションを均一にする方法がさらに提供される。
【0068】
適切な弾性材料によって構成されたストリップ611は、ピボットピン607の反対側に位置する外転用腱を効果的に形成している。ストリップ611の遠位端は、任意の所望の締結具または接着剤、たとえば熱による結合または接着剤による結合によって、遠位セグメント620に設けられた相補的な溝に取り付けることができる。弾性ストリップ611の近位端は、本体601に設けられた相補的なスロット内に配置され、止めねじ612のクランプ動作または他の適切な熱による結合もしくは接着剤による結合によって本体601に取り付けられている。取り付けられた遠位端と、取り付けられた近位端との間のストリップ611の部分は、束縛されておらず、自在に伸長されるかまたは弛緩される。ストリップ611は、このストリップにテンションが生じるように、設置時に伸長される。このテンションは、遠位セグメント620をベース601に向けて引っ張るように作用する。この引張りにより、遠位セグメント620および共通のセグメント610内にトルクが発生する。このトルクは、各セグメントをピボットピン607に関してCWに回転させるように作用する。当業者には、ストリップ611が、弾性ストリップと同じ機能を提供するように、1つまたは複数の引張りコイルばね、または適切なばねに取り付けられた柔軟であるが伸縮不能な引張り部材によって置き換えることができることが自明である。
【0069】
共通のセグメント610の側部から突出するボス613が、本体601およびセグメント610に設けられた相補的なスロット614と係合して、ベース601にピン留めされたセグメント、およびセグメント列における連続してピン留めされた各セグメントの、前のセグメントに対するCWの回転の角度を制限する。したがって、スロット614内のボス613の作用によって制限されることで、各セグメントは、各セグメントが直線状で、互いに垂直に整列した位置を越えてピボット607を中心としてCWに回転できない。
【0070】
外部のトルクの影響下での任意のセグメントのCCWの回転は、ストリップ611をさらに伸長させ、結果として、ストリップによってCCWに回転されたセグメントに加えられるトルクが増大する。こうして、ストリップ611は、外転用腱として機能する。この外転用腱は、セグメント610および620に対してピボットピン607を中心としてトルクを常に加え、これらセグメントを直線状の互いに垂直に整列した状態に戻す。セグメント610の中心通路を通る内転ケーブル604の下向きの動作により、セグメント610および620にCCWのトルクが加えられる。このようにトルクを加えることにより、これらセグメントがピボットピン607を中心としてCCWに回転し、外転ストリップ611がさらに伸長する。当然ながら、部材600の向きは、図24と比べた場合に図23では逆向きになっている。
【0071】
セグメント610に設けられた相補的な凹部にパッド615が適切に結合されている。ベース601に設けられた相補的な凹部にパッド622が適切に結合されている。パッド615および622は所定の材料、たとえば適切なエラストマーまたはナノダイアモンドが含浸された金属基板で構成され、高い静止摩擦係数を有している。それにより、パッドと、このパッドが接触し得る、把持される被加工物の任意の表面との間に発生する摩擦力が向上する。
【0072】
ここで特に図24を参照すると、一例の筒状の被加工物30を把持している工具部材500および600が示されている。ベース501が、被加工物30とのパッド522の接触によって静止した状態にされると、ロータ502は、グリッパジョー71の作用の下で、静止したベース501に対して矢印29Lの方向に回転し続ける。そのような相対動作により、プーリ505の周りに通された内転ケーブル504が、セグメント510の中心通路を通って下方に引っ張られる。ケーブル504の下向きの動作により、セグメント510および520にCWのトルクが加えられる。このようにトルクを加えることにより、これらセグメントがピボットピン507を中心として矢印31の方向でCWに回転し、外転ストリップ511が伸長されるとともに、セグメント510に結合されたパッド515および遠位セグメント520に結合されたストリップ511が、被加工物30の表面に等角で接触する。
【0073】
ベース601が、被加工物30とのパッド622の接触によって静止した状態にされると、スライダ602は、グリッパジョー72の作用の下で、静止したベース601に対して矢印29Rの方向に回転し続ける。そのような相対動作により、プーリ605の周りに通された内転ケーブル604が、セグメント610の中心通路を通って下方に引っ張られる。ケーブル604の下向きの動作により、セグメント610および620にCCWのトルクが加えられる。このようにトルクを加えることにより、これらセグメントがピボットピン607を中心として矢印32の方向でCCWに回転し、外転ストリップ611が伸長されるとともに、セグメント610に結合されたパッド615および遠位セグメント620に結合されたストリップ611が、被加工物30の表面に等角で接触する。ケーブル504,604がセグメント510,610のそれぞれの中心通路を通して引っ張られる際に各内転ケーブル504,604を動かす力となるテンションは、下方に向けられている。
【0074】
本発明を少なくとも1つの実施形態に関して説明してきたが、本発明は、本開示の精神および範囲内でさらに変更することができる。したがって、本願では、一般的な原理を利用して、本発明のあらゆる変化形態、用途または適用をカバーすることが意図されている。さらに、本願では、本発明が属する技術分野における周知または慣用の実施に含まれるものであって、添付の特許請求の範囲の限定に該当するような、本開示からの逸脱をカバーすることが意図されている。
図1
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