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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】液体コーヒー濃縮物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/28 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
A23F5/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021036177
(22)【出願日】2021-03-08
(62)【分割の表示】P 2018073787の分割
【原出願日】2012-08-01
(65)【公開番号】P2021087453
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】11176077.3
(32)【優先日】2011-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512164779
【氏名又は名称】コーニンクラケ ダウ エグバート ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ゲルトヤン ヘイマン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルヘルムス ヨハネス デ ブルイン
(72)【発明者】
【氏名】マールテン ユリアーン フェルホーフェン
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-161103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
15重量%~50重量%のコーヒー固形物を含み、pH5~5.2を有し且つQA/QaL(キナ酸/キナ酸ラクトン)のモル比が10~100であり、かつアルカリ源が添加されていない、液体コーヒー濃縮物。
【請求項2】
QA/QaL(キナ酸/キナ酸ラクトン)のモル比が30~100である、請求項1に記載の液体コーヒー濃縮物。
【請求項3】
乾燥物質のkg当たり55g以下のカリウム含有量、及び/又は乾燥物質のkg当たり4g以下のナトリウム含有量を有する、請求項1又は2に記載の液体コーヒー濃縮物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境温度で改善された貯蔵安定性を有する液体コーヒー濃縮物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体コーヒーおよび液体コーヒー濃縮物は、商用及び/又は産業目的のための需要が増加している。液体コーヒー、例えばコーヒー販売機用の液体コーヒー濃縮物、の生産および販売は、十分な保存寿命を有する液体コーヒーを提供することを望ましいものにしている。これまで、そのような液体コーヒー製品は、冷凍状態で、時には冷蔵保存されて大抵入手できる。非冷蔵保存は、サプライチェーンコストを低減させるであろう。しかし、非冷蔵保存用に販売された何らかの製品は、望ましくない短い保存寿命を未だに有している。
【0003】
一般的に云えば、液体コーヒー(例えば、濃縮物または抽出物)は、経時的に不安定であり、室温で酸性を増すようになる。当業者に知られているように、pHの低下は、微生物作用と化学反応、例えばエステル及びラクトンのようないくつかの化合物の遅い加水分解反応、カルボニル基を含む化合物の酸化、または多糖類とタンパク質との間で生じるメイラード反応の故であろう。文献において、pH4.8は味の受容性の下限として一般に考えられている。このpH水準より下では、コーヒー抽出物は飲用に適さなくなる。
【0004】
微生物酸性化に打ち勝つために、液体コーヒーは、超高温(UHT:Ultra High Temperature)でしばしば処理される。特に適した超高温の処理は120℃で2~3秒間である。
【0005】
化学的酸性化に取り組んでいる文献は、米国特許出願公開第2010/0316784号明細書である。そこでは、食用アルカリ源を液体コーヒー濃縮物へ添加することを含む処理が提案されている。これは人工的にpHを増加させるように働く。アルカリの添加の前または後で、人工的に酸生成反応をコーヒー濃縮物中で終了させるために、熱処理が実施される。より具体的には、熱処理は、140℃と146℃との間でせいぜい3分間の保持時間で実施される。しかし、この方法では十分な保存寿命と品質の製品を製造できない。
【0006】
前述の方法の別の欠点は、アルカリの添加である。多くの司法判断において、そのような添加は望ましくないと考えられ、及び/又はEC食品規制の下でのように、得られた製品はもはや「コーヒー」と呼ばれる資格を与えられない。コーヒー抽出物自体から得られる以外の成分の添加が不要である液体コーヒーを作る方法を開発すること、なおかつ、貯蔵安定な良質の品質の液体コーヒー濃縮物を提供することが望ましい。
【0007】
別の文献で、アルカリを用いた処理による液体コーヒーの安定化に取り組んでいるのは、欧州特許第861 596号公報である。ここでは、コーヒー抽出物は、アルカリを用いて処理され、該アルカリは、コーヒー抽出物に存在する酸前駆物質をそれら個々の酸性塩へ転換するのに効果的な量で存在しており、その後、処理されたコーヒー抽出物を、第1段階からの在りうる過剰なアルカリを中和するのに十分な量の酸で中和する。前述のアルカリを用いる欠点はさておき、この方法も酸を加え、この酸は、液体コーヒー内に存在する外来の成分の量を増やす。さらにこの方法は、基本的に、風味に悪影響を与える傾向にあるイオン性物質(塩)を導入することに基づいている。
【0008】
さらにもう一つの文献で、液体コーヒーの保存寿命に取り組んでいるのは、欧州特許第1 374 690号公報である。ここでは、コーヒー抽出物は、基本的に調製の直後に、塩基または陰イオン樹脂の添加によって酸性度の修正を受ける。得られた抽出物は加熱殺菌を受けている。加熱殺菌は、コーヒー抽出物の感覚刺激特性に影響を与えない保持時間および温度に言及しつつ議論されている。典型的な温度範囲は、せいぜい1分間の保持時間で100℃~140℃である。この方法も十分な保存寿命と品質を有する製品を製造できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、コーヒー濃縮物の品質の改善が、風味および貯蔵安定性について得られる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の要請の1以上により良く取り組むために、本発明は、1の局面において、以下の工程を含む、pH4.8~6の液体コーヒー濃縮物の製造方法を提供する。
a)焙煎され挽かれたコーヒーを、水による1回以上の抽出工程に付して、コーヒー抽出物を得ること、
b)a)における該抽出工程中の分別、または工程a)の後の芳香回収のどちらかによって、該コーヒー抽出物を分離して、高芳香性コーヒー抽出物および低芳香性コーヒー抽出物を得ること、
c)該低芳香性コーヒー抽出物の少なくとも50%を、少なくとも120℃でせいぜい30分間の保持時間の熱処理に付すこと、
d)少なくとも該処理された低芳香性コーヒー抽出物を濃縮すること、
e)少なくとも該濃縮された低芳香性コーヒー抽出物と該高芳香性コーヒー抽出物を混合すること、
を含み、それにより、液体コーヒー濃縮物を得る。
【0011】
別の局面において、本発明は、上述された該方法によって得ることが可能なpH4.8~6の液体コーヒー濃縮物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例2の液体コーヒー濃縮物のpHの経時変化を示す図である。
図2】実施例3における低芳香性コーヒー抽出物に施された熱処理の温度と保持時間を変えた結果を示す図である。
図3】実施例4に記載の液体コーヒー濃縮物のpHの経時変化を、熱処理のないものと比較して示す図である。
図4】実施例6に記載の液体コーヒー濃縮物のpHの経時変化を、熱処理のないものと比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
広い意味で本発明は、濃縮前に芳香成分が回収されたコーヒー抽出物に、比較的強い熱処理をある特定の保持時間で実施するという思慮深い洞察に基づいている。さらに、本発明は、好ましくは、そのような熱処理工程とpH上昇処理の思慮深い組み合わせを提供する。より好ましくは、pH上昇工程は、アルカリの添加を含まない。最も好ましくは、該方法は、最終製品における少なくとも150mモルの酸/kg乾燥物質固形成分含有量の加水分解をもたらす。これは、熱処理される前と後の、処理されるべき低芳香性コーヒー抽出物におけるmモル量/kg乾燥物質固形成分含有量の差に、最終製品における低芳香性コーヒー抽出物の乾燥物質固形成分含有量重量比を乗じられたものである。
【0014】
工程a)における抽出のために選択されるコーヒーは、焙煎されたコーヒーの任意の種類でよい。焙煎されたコーヒーの準備は、当業者によく知られている。例えば、出発物質は、工業的抽出方法用の普通のコーヒー豆原材料でよく、それらコーヒー原料は普通のやり方で焙煎される。一般にこの目的のために、様々な種類のコーヒー原料の混合物が使用される。焙煎されたコーヒー豆は挽かれ、一般的に挽く程度に関して、できる限り大きな表面を得ることと抽出槽内での圧力低下をできる限り小さくすることとの間で妥協点が探し求められる。一般に、挽かれた豆は2.0mmの平均サイズを有している。
【0015】
コーヒーの芳香をより良く保存するために、本発明の方法は、低芳香性コーヒー抽出物について実行される。これは以下によって得られる。
a)焙煎され挽かれたコーヒーを、水による1回以上の抽出工程に付して、コーヒー抽出物を得ること、および
b)a)における抽出工程中の分別によって、または工程a)の後の芳香回収のどちらかによって、該コーヒー抽出物を分離して、高芳香性コーヒー抽出物および低芳香性コーヒー抽出物を得ること。
工程a)の後の芳香回収の例は、水蒸気ストリッピング、超臨界CO抽出、およびパーベーパレイションを含む。別の実施態様において、コーヒー抽出物は抽出工程a)中に分別される。そこから得られる高芳香性コーヒー抽出物に存在する特別なコーヒーの芳香は、工程a)の後の全体抽出物から水蒸気ストリッピングによって回収されたコーヒーの芳香に比べて、一層自然なコーヒー特性を有する。高芳香性コーヒー抽出物および低芳香性コーヒー抽出物が得られる。当業者に知られているように、高芳香性コーヒー抽出物は、準揮発性芳香化合物に比べて比較的に多量の揮発性芳香化合物を有することによって、低芳香性コーヒー抽出物と区別される。そのような化合物は、例えば、Clarke R.J. and Vitzthum O.G., Coffee Recent Developments, 2001(ISBN 0-632-05553-7)の第71ページの表3.3から知られる。この表から、一方において、プロパナール、メチルプロパナール、および2,3ブタンジオンはかなり揮発性の芳香化合物であることが明らかである。他方、ピラジン化合物およびグアイアコール化合物は準揮発性芳香化合物である。例えば、揮発性コーヒー芳香化合物の例として2,3ブタンジオンを取り上げ、そして準揮発性コーヒー芳香化合物の例としてエチルグアイアコール(4-エチル2-メトキシフェノール)を取り上げると、これら化合物が、特定のコーヒー抽出物において、2,3ブタンジオン/エチルグアイアコールの重量比>30のとき、該抽出物は高芳香性コーヒー抽出物として記載されうる。その結果、低芳香性コーヒー抽出物は、2,3ブタンジオン/エチルグアイアコールの重量比<30を有する。
【0016】
高芳香性コーヒー抽出物は保存される。
【0017】
低芳香性コーヒー抽出物は、希釈されていない又は濃縮されていない抽出物である。好ましくは、処理がそのままの抽出物に実施されるが、わずかの希釈またはわずかの濃縮による該抽出物の小さな変化は、本発明の主旨から逸脱しないことが理解されよう。これは、米国特許出願公開第2010/0316784号明細書で開示された方法と明らかに異なっている。そこでは、抽出物が熱処理の前に濃縮されることが明示的に必要とされている。抽出物は一般に、乾燥物質固形成分含有量15重量%以下、好ましくは2~10重量%を有している。濃縮物は、実質的な水除去、例えば水分蒸発を受けたことによって抽出物と区別される。濃縮物が一般に、乾燥物質固形成分含有量の6重量%から80重量%を有する一方、先行の抽出物においてより乾燥物質固形成分において少なくとも10重量%高く、そして通常は、乾燥物質固形成分含有量の10重量%以上、特に15重量%以上を有していることが通常であろう。
【0018】
低芳香性コーヒー抽出物の少なくとも50体積比%、より好ましくは少なくとも75体積比%、最も好ましくは全て(100%)が、少なくとも120℃でせいぜい30分間の保持時間で、好ましくは少なくとも135℃でせいぜい15分間の保持時間で、より好ましくは少なくとも150℃でせいぜい10分間の保持時間で熱処理を受ける。一般に、温度が高いほど保持時間は短くなる。特に、150℃未満では、保持時間は少なくとも10分間でなければならない。この点に関して、上述した公表文献は、開示された温度と保持時間が150℃未満で3分未満であるとして、本発明から乖離したことを教示している。好ましくは、熱処理は、120℃~200℃で30分間~10秒間の保持時間で実施される。より好ましくは、熱処理は、135℃~180℃で15分間~1分間の保持時間で実施される。最も好ましくは、熱処理は、150℃~180℃で10分間~1分間の保持時間で実施される。特別の例として、熱処理は、約150℃で約5分間の保持時間で実施される。
【0019】
加熱時間は、1~8分間の、好ましくは3~5分間の環境温度から保持温度への加熱を含みうる。
【0020】
冷却時間は、1~8分間の、好ましくは3~5分間の環境温度への冷却を含みうる。
【0021】
好ましい実施態様において、方法は、工程b)の後にpH上昇工程(脱酸またはpH調整工程)を含んでいる。このpH上昇工程は、濃縮工程d)の前または後で実施されうる。好ましくは、pH上昇工程は濃縮工程の前で実施され、それにより低芳香性コーヒー抽出物がpH上昇工程を受ける、すなわち低芳香性コーヒー抽出物が熱処理工程c)の前または後でpH上昇工程を受ける。
【0022】
pH上昇工程で、pHは、より少ない酸性(よりアルカリ性)pHへ、好ましくは5~10の値を有するpHへ引き上げられる。
【0023】
この引き上げは開始時のpHに相対的である。すなわち、もし開始時のpHが4であれば、pH上昇は、依然として酸性である値、例えば5まででありうる。しかし、好ましくは、コーヒー流体の開始時のpHは、4.5~6.5、より好ましくは、4.9~5.7である。処理工程の後で、pHは再び、正常な水準、例えば4.8~6の間になるであろう。
【0024】
本発明の方法の好ましい実施態様において、低芳香性抽出物のpH上昇は、熱処理の前に実施される。この実施態様において、該pHは6~8の値まで引き上げられることがさらに好ましい。別の好ましい実施態様において、pH上昇は熱処理の後に実施される。この実施態様において、該pHは5~7の値まで引き上げられることがさらに好ましい。
【0025】
pH上昇工程は、食用アルカリの添加によって実施されうる。食用アルカリの原料は公知であり、上述した米国特許出願公開第2010/0316784号明細書にも記載されている。
【0026】
しかし、より好ましくは、pH上昇工程は、アルカリの添加なしに実施される。外来物質の添加を回避することによって、処理後の製品は、多くの司法地域において適用される食品規制に従う「コーヒー」であると見なされ続けることが保証される。そのような司法地域において、抽出から得られる以外の物質の添加は、コーヒーとして表示されることが許されない製品を生じるであろう。そのような製品は消費者によって違うという認識を受けるということが理解されよう。したがって、基本的な技術上の問題は、外来物質、例えば食用アルカリの添加をせずに、十分な貯蔵安定性および芳香品質の製品を生み出すように、コーヒーを十分に処理する方法を提供することである。
【0027】
これは、本発明の好ましい実施態様において保証され、そこでは、pH上昇工程において、イオン交換樹脂及び/又は吸着材が使用される。吸着材は、炭素、ポリアクリレート、またはポリスチレンに基づきうる。市販吸着材の例は、Purolite(商標)MN 200、Purolite(商標)MN 202、およびLewatit(商標)AF5である。イオン交換樹脂の例は、強または弱塩基性陰イオン交換樹脂を含む。好ましくは、イオン交換樹脂は、弱塩基性陰イオン交換樹脂である。該樹脂は、ポリアクリレート、ポリスチレン、好ましくはポリアクリレートに基づく。官能基は、例えば、アミン官能基、例えば第1級、第3級および第4級アミン基、およびポリアミン基、好ましくは第3級アミン基である。次の表において、市販イオン交換樹脂の例が列記されている。
【0028】
比較的低い温度領域、すなわち120℃から150℃未満において、pH上昇は、好ましくは熱処理の前に達成される。理論に制約されることを望まないで、本発明者たちは、pH上昇は、酸放出反応を触媒できると考えている。その効果は、熱処理条件の比較的低い温度領域においてより顕著である。
【0029】
好ましくは、熱処理は、それが150℃以上のより高い温度領域で実施されるという意味で極熱処理である。ここで本方法は、pH上昇工程の強さならびに順序が余り重要でないという意味で、より頑健である。これは、より大きな処理の自由度(すなわち処理工程の順番)を生み出すだけでなく、より低い脱酸の程度で十分であるという重要な利点を有している。
【0030】
外来物質、例えば食用アルカリの添加に関連して、極熱処理の上述した条件を選ぶことはこの実施態様において特に好ましい。このようにして、アルカリの添加は最小化されうる。
【0031】
最後の工程において、低芳香性コーヒー抽出物は濃縮される。好ましい濃縮物は、6重量%~80重量%、好ましくは10重量%~65重量%、より好ましくは15重量%~50重量%のコーヒー固形物を含む。例えば水蒸発のような濃縮の方法は、当業者によく知られている。
【0032】
低芳香性コーヒー抽出物の部分(すなわち、少なくとも50%)が処理された事象において、処理されていない低芳香性コーヒー抽出物は、処理された低芳香性コーヒー抽出物(濃縮前の)と一緒にされてもよく、または処理され濃縮された低芳香性コーヒー抽出物(濃縮後の)と一緒にされてもよい。
【0033】
一般に、濃縮の後に、該濃縮され処理された低芳香性コーヒー抽出物は、高芳香性抽出物と混合される。これは、任意的な別の処理および梱包の前に工場でなされ、または消費者による摂取の直前になされる。後者の場合、2つの別々のパッケージが消費者に提供されて、コーヒー調製装置に導入される。
【0034】
工場では、一時的な、好ましくは冷却された、好ましくは25℃以下の温度での、より好ましくは10℃以下での、最も好ましくは0℃以下での貯蔵の後、高芳香性コーヒー抽出物は、別の処理をしないで直接に、濃縮された低芳香性コーヒー抽出物に添加されうる。高芳香性抽出物は、濃縮された低芳香性コーヒー抽出物へ添加するために、好ましくは不活性ガス、例えば窒素の雰囲気でできるだけ短期間貯蔵され、そして冷却されることが好ましい。これらの工程の故に、芳香の減少および芳香の劣化反応は、可能な限り制限される。
【0035】
その結果、本方法は、許容される保存寿命で、酸化が起きることなしに、環境温度(一般に5℃~25℃、かつ好ましくは冷蔵装置の必要なしの温度を指す)で貯蔵でき、そして起きる実質的な香りの喪失なしに維持できる、pH4.8~6の液体コーヒー濃縮物を提供する。
【0036】
好ましい実施態様において、工程a)における抽出は、好ましくは、分割抽出として行われる。分割抽出の方法は公知である。これに関する文献は、国際公開第2007/043873号である。より具体的には、この方法は一次および二次抽出を含む。
【0037】
分割抽出の好ましい実施態様において、本発明はコーヒー濃縮物を調製するための下記の方法において使用される。この方法において、焙煎され挽かれたコーヒーは、水による一次抽出を受け、それにより第1の一次抽出物(すなわち、高芳香コーヒー抽出物)が、せいぜい2.5、好ましくはせいぜい2.0、より好ましくはせいぜい1.5、および最も好ましくはせいぜい1.0のドローオフファクターで得られる。その後、任意的に、第2の一次抽出物が得られる。
【0038】
一次的に抽出された、焙煎され挽かれたコーヒーは、それから二次抽出セクションに供給される。該セクションにおいて、120℃~210℃の供給温度を有する水で、二次抽出物(低芳香性コーヒー抽出物)が得られる。二次抽出物のせいぜい50体積%、より好ましくは75体積%、最も好ましくは全て(100%)は、それから本発明の処理工程を受ける。任意的に、第2の一次抽出物は、本発明の処理工程の前または後で、二次抽出物(低芳香性コーヒー抽出物)へ添加され得、好ましくは、第2の一次抽出物が処理の前に二次抽出物に添加される。
【0039】
「ドローオフファクター」という用語は、抽出物の質量と、一次抽出槽内の乾燥した焙煎され挽かれたコーヒーの質量との比を意味するものと理解される。実際に、このドローオフファクターは、一方において、第1の一次抽出物における十分な程度のコーヒー芳香の回収と、他方において、第1の一次抽出物のできる限り小さな体積との間の妥協によって決定される。この問題についてのドローオフファクターは、焙煎されたコーヒーの挽きの使用された荒さ、すなわち程度、抽出槽、特に直列に設置されたパーコレーターの数、使用される水とコーヒーとの比率、サイクル時間、供給水の温度、および最終製品の所望の濃縮などに依存する。
【0040】
分割抽出の別の好ましい実施態様において、同様に、第2の一次抽出物は一次抽出槽から回収される。この目的のために、第1の一次抽出物の抜き出し及び貯蔵の後で、更なる抽出が一次抽出槽内で起きる。
【0041】
第1と第2の一次抽出物の両方の回収は、高い水‐コーヒー比率が適用されるときに、特に魅力的である。好ましくは、水‐コーヒー比率は5.0~15である。より好ましくは、水‐コーヒー比率は10未満であり、そして最も好ましくは、水‐コーヒー比率は6.5~8.5である。
【0042】
第2の一次抽出物が回収されるとき、好ましくは、二次抽出物の第一の区画が、一次供給水として第1抽出槽内で実際に使われる。この実施態様について、欧州特許出願公開第0 352 842 号の教示が、引用されることによって本明細書に組み入れられる。
【0043】
第2の一次抽出物は、芳香の回収を受けうる。回収された芳香物は、高芳香性抽出物に添加される。芳香回収後の第2の一次抽出物は、本発明の処理工程の前または後で二次抽出物(低芳香性コーヒー抽出物)に添加されうる。好ましくは、第2の一次抽出物は、該処理前に二次抽出物に添加される。濃縮の後に、濃縮された低芳香性コーヒー抽出物および高芳香性コーヒー抽出物(回収された芳香物を含む)が混合される。
【0044】
本発明のこの実施態様において、一次抽出が、二次抽出において使用される温度未満の供給水温の水で実行される。好ましくは、一次抽出が実行される温度は70℃~120℃である。
【0045】
一次抽出は、徹底的な抽出として実行される。「徹底的な抽出」は、抽出物が抽出槽内へ導入された水とほとんど、あるいは全く異ならないまで、抽出が行われること意味すると理解される。実際にはしかし、それは、特に引き続く濃縮工程の故に、抽出が徹底的になされていないときに処理全体の効率に対して有益である。
【0046】
この事項についての「水」は、公知の工業的抽出処理においても使用されうる慣用の水溶液を包含すると理解される。
【0047】
一次および二次抽出は、慣用の抽出槽内で実行されうる。好ましい実施態様において、一次および二次抽出の両方が、1のパーコレーター内でまたは直列に設置された複数のパーコレーター内で実行される。特に、二次抽出は、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも4つの直列接続されたパーコレーター内で有利に実行される。一般に、一次抽出セクションにおいて用いられるパーコレーターの数は、少なくとも0.5であり、これは、サイクル期間の50%の間、1のパーコレーターが一次抽出セクションにおいて接続されることを意味する。好ましくは、少なくとも1または2のパーコレーターが一次抽出セクションにおいて接続される。
【0048】
本発明に従う方法の好ましい実施態様において、低芳香性コーヒー抽出物は、二次抽出物の、少なくとも部分、しかし好ましくは全体である。これに関する更に好ましい実施態様において、処理された低芳香性コーヒー抽出物は、濃縮工程の前に、第2の一次抽出物と混合される。これに関するもう一つの好ましい実施態様において、低芳香性コーヒー抽出物は、少なくとも部分のしかし好ましくは全部の二次抽出物と、第2の一次抽出物との混合物である。
【0049】
第2の一次抽出物が本発明の処理を受けうることも見出された。この点について、第2の一次抽出物と二次抽出物の両者は、低芳香性コーヒー抽出物と考えられ、そのうちの、第2の一次抽出物の少なくとも部分が処理され、処理されるべきその部分は、低芳香性コーヒー抽出物の少なくとも25体積比%、より好ましくは少なくとも35体積比%、最も好ましくは少なくとも50体積比%を含む。処理の後、第2の一次抽出物の処理された部分は、第2の一次抽出物の処理されなかった部分および二次抽出物へ添加され、濃縮される。好ましくは、第2の一次抽出物の全てが処理される。
【0050】
慣用の、液体または乾燥充填材成分の使用も好ましい。充填材成分は、第1の一次抽出物の顕著な香り特性をある程度中和するために時々使用される。充填材は好ましくは高収量コーヒー製品である。それは、濃縮前に、より好ましくは温度処理の前に、低芳香性コーヒー抽出物に添加されうる。
【0051】
本発明はまた、本発明に従う方法によって得ることが可能なpH4.8~6の液体コーヒー濃縮物に関係する。該液体コーヒー濃縮物は、6重量%~80重量%のコーヒー固形物、好ましくは10重量%~65重量%の、より好ましくは15重量%~50重量%のコーヒー固形物を含む。このコーヒー濃縮物は、減らされた又は好ましくは存在しないpH低下および減らされた又は好ましくは存在しない異臭に関して確認されうるように、環境温度でのより良い貯蔵安定性の理由で、本発明に従わないコーヒー濃縮物と区別される。好ましくは、液体コーヒー濃縮物は、6ヶ月を超える貯蔵安定性、より好ましくは12ヶ月を超える、最も好ましくは18ヶ月を超える貯蔵安定性を有する。
【0052】
本発明に従う方法によって処理された製品は、2-フェニル-3-(2-フリル)-2-プロペナールの少なくとも2mg/kg乾燥物を含有することによってそれ自体を区別する。
【0053】
したがって、本発明はまた、2-フェニル-3-(2-フリル)-2-プロペナールの少なくとも2mg/kg乾燥物質固形物、好ましくは4mg/kg乾燥物質固形物と80mg/kg乾燥物質固形物との間で、より好ましくは4mg/kg乾燥物固形物と40mg/kg乾燥物固形物との間で、2-フェニル-3-(2-フリル)-2-プロペナールを含有する、pH4.8~6の液体コーヒー濃縮物に関係する。
【0054】
代わりに、本発明に従う方法による処理による製品は、pH5~5.2で10~100の間のQA/QaLモル/モル比を有することによって、それ自体を区別する。より具体的には、保存寿命の間、液体コーヒー濃縮物はpHの窓5~5.2に入るであろう。このpHの窓において、それは、10~100の間のQA/QaLモル/モル比を有するべきである。
【0055】
したがって、本発明はまた、pH5~5.2で、QA/QaLモル/モル比が10~100、好ましくは、30~100、および最も好ましくは60~100の液体コーヒー濃縮物質に関係している。好ましい実施態様において、この液体コーヒー濃縮物は、kg乾燥物質当たり55g以下の、好ましくは20~55g/kgのカリウム含有量、及び/又はkg乾燥物質当たり4g以下の、好ましくは0.1~4g/kgのナトリウム含有量を有するであろう。
【0056】
略語QAは、キナ酸、即ち、1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸を表す。略語QaLは、キナ酸ラクトン、即ち、1,3,4-トリヒドロキシ-6-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン-7-オンを表す。
【0057】
本発明の様々な実施態様は、実施例およびスキーム1および2を参照しつつさらに説明される。これらスキームは、コーヒー濃縮物を作るための方法の発明の処理工程を実行するための方法の構成を与える。これらのスキームは、説明目的に奉仕し、本発明を限定するものではない。
【0058】
【0059】
スキーム1に、本発明の好ましい実施態様が図示されている。焙煎されたコーヒーは、分岐された個所(第1および第2の一次抽出と、二次抽出とが描かれている)で、分割抽出を受ける。第2の一次抽出物は、第2の二次抽出物と混合され、それからこの流れは、濃縮の前に、pH調整(陰イオン交換による)および極熱処理(上述した温度で)を受ける。濃縮された抽出物は、第1の一次抽出物と混合されて、本発明の液体コーヒー濃縮物となる。
【0060】
【0061】
スキーム2は、別の好ましい実施態様を図示する。そこでは、第2の二次抽出物若しくは第2の一次抽出物のどちらかまたは両方およびこれらの混合物は、第1の一次抽出物と混合される前に、陰イオン交換によるpH調整および熱処理を受ける。第2の一次抽出物は芳香回収を受けうる。その結果、濃縮の後に、該濃縮されたコーヒー抽出物は、該芳香回収製品ならびに第1の一次抽出物と混合される。任意的に、濃縮の前または後のいずれにおいて、充填材成分が添加されうる。
QAおよびQaLの分析法
【0062】
キナ酸ラクトン(QaL)は、オランダGroningenのSyncomから入手された。約0.5mg/mlの希釈標準溶液が、QaLをアセトニトリル内へ希釈することによって得られた。この希釈標準溶液は、15ng/ml~15000ng/mlのキャリブレーション溶液を得るために、アセトニトリル内の0.1%酢酸内にさらに希釈された。
濃縮されたコーヒー製品は、0.28%乾燥物質まで水で希釈された。希釈されたコーヒー製品の50μlは、さらにアセトニトリル内の0.1%の酢酸の950μlで希釈される。
【0063】
定量化は、Thermo ScientificからのAccela UPLCと結合されたTriple Quad MS, TSQ Quantum Ultra;Thermo Scientific Mass spectrometer(質量分析器)によって行われた。
濃縮は、校正曲線から計算された。
【0064】
キナ酸(QA)はAldrichから入手された。1ml当たり約1mgの希釈標準溶液が、該化合物を水に溶かすことによって得られた。この希釈標準溶液は、10μg/ml~40μg/mlのキャリブレーション溶液を得るために、さらに0.4mMのヘプタフルオロ酪酸内に希釈された。
濃縮されたコーヒー製品は、0.4mMヘプタフルオロ酪酸で、乾燥物質と乾燥コーヒー固形物の重量比が0.1%まで希釈された。
【0065】
定量化は、Dionex ICS 5000 DC、サプレッサ式伝導度クラマトグラフによって行われた。
濃縮は、校正曲線から計算された。
2-フェニル-3-(2-フリル)-2-プロペナールの分析法
【0066】
2-フェニル-3-(2-フリル)-2-プロペナールは、Chemos GmbH, Werner-von-Siemens-Strasse, D-93128 Regenstauf,ドイツから入手された(純度97%)。1ml当たり約1mgの希釈標準溶液は、該化合物をヘキサンに希釈することによって得られた。この希釈標準溶液は、ヘキサンml当たり0、0.6、1、3、6、10および50μgの2-フェニル-3-(2-フリル)-2-プロペナールのキャリブレーション溶液を得るために、さらに希釈された。
【0067】
液体コーヒー濃縮物は、水によって2.5%乾燥物質まで希釈された。コーヒーの上部の空間内の揮発性物質が、基本的に、Tikunov et al., 2005, Plant Physiology 139, 1125-1137に記載されたように、ガスクロマトグラフィー/質量分析機(GC/MS)と結合された固相微量抽出(SPME)によって分析され、コーヒー母材の信頼できる標準の線形校正曲線から算出された。
<実施例1>
【0068】
抽出(分割された流れ)
焙煎されたコーヒーの単一バッチから、コーヒー抽出物は、国際公開第2007/043873号に記載されているように、分割流抽出によって得られる。第1の一次抽出物(スキーム1の流れA)、これは香りが強く高芳香性コーヒー抽出物である、は、処理若しくは濃縮されず、その後に、超高温(UHT)処理および包装の前に、濃縮された低芳香性コーヒー抽出物(流れH)へ添加されるであろう。二次抽出物の全ては、第2の一次抽出物(流れC)と混合される。その結果の混合物(流れG)は、72.7重量%の二次抽出物および27.3重量%の第2の一次抽出物(流れC)から成る。
【0069】
充填材添加
濃縮されていない高収量抽出物(流れF)が、コーヒーの第2のバッチから作られる。この高収量抽出物は、低芳香性コーヒー抽出物に直接に添加される。これは、約6%の乾燥物質固形成分含有量の混合物をもたらす。
処理
【0070】
低芳香性コーヒー抽出物のpHは、該抽出物を陰イオンカラム(Lewatit(商標) XA945)を通過させることによってpH8に調整される。
【0071】
低芳香性コーヒー抽出物は、環境条件から150℃まで5分間で加熱され、そして引き続く5分間その温度に保持され、その後3分間の冷却工程が続く。
【0072】
熱処理された低芳香性コーヒー抽出物は、蒸発によって28%の乾燥物質固形含量まで濃縮される。
【0073】
これらの処理工程の間、150mモルを超える酸/kg乾燥物質固形成分含有量が、加水分解によって放出される。
【0074】
濃縮された低芳香性コーヒー抽出物は、高芳香性コーヒー抽出物(第1の一次抽出物)(流れA)と混合される。
【0075】
最終製品
液体コーヒー濃縮物の得られたpHは、6.2である。
検出可能な異臭は、該液体コーヒー濃縮物において検出されない。
8週間の保存期間中に、該液体コーヒー濃縮物は、味覚の専門家のチームによって、酸性化されたとは知覚されない。
【0076】
比較のため、米国特許出願公開第2010/0316784号明細書に記載された方法に従って製造された製品は、この保存寿命中に酸性化を示す。
<実施例2>
【0077】
アラビカコーヒーの単一バッチが、実施例1に記載されたように抽出を受ける。一次抽出物、すなわち高芳香性コーヒー抽出物は、全コーヒー乾燥物質の16重量%を含有し、100のBD/EG重量比を有する。低芳香性コーヒー抽出物は、全コーヒー乾燥物質の84重量%を含有する。そこから得られた、約6%の乾燥物質固形成分含有量を有する該低芳香性コーヒー抽出物のpHは、該抽出物を陰イオンカラム(Lewatit(商標) XA945)に通すことによってpH6に調整される。酸の量は、滴定によってpH8まで評価された。287mモル酸/kg乾燥物質を有する低芳香性コーヒー抽出物は、環境条件から160℃まで約3.5分間で加熱され、そして引き続く10分間その温度に保持され、その後2分間の冷却工程が続く。該処理された低芳香性コーヒー抽出物は、818mモル酸/kg乾燥物質を有する。該熱処理された低芳香性コーヒー抽出物は濃縮される。この処理は、最終製品((818-287)*0.84)において少なくとも446mモル酸/kg乾燥物質固形成分含有量、の加水分解をもたらす。
【0078】
濃縮された低芳香性コーヒー抽出物は、高芳香性コーヒー抽出物(第1の一次抽出物)(流れA)と混合される。液体コーヒー濃縮物の結果的なpHは、5.34である。該液体濃縮物は、28%の乾燥物質固形成分含有量を有している。
【0079】
検出可能な異臭は、該液体コーヒー濃縮物において検出されない。
該pHは、時間とともに、図1(▲)に示されたように変化した。28週間の保存寿命中、該製品は5以下のpHに下がらない。熟練の味利き達により評価されるとき、該製品において不快な酸味は検出されない。
【0080】
該液体コーヒー濃縮物は、7.5mg/kg乾燥物質固形成分の量の2-フェニル-3-(2-フリル)-2-プロペナールを含む。
【0081】
カリウムの量は、53g/kg乾燥物質であり、ナトリウムの量は、2g/kg乾燥物質である。8週間の貯蔵の後、該濃縮物のpHは、5.1であり、QA/QaLモル比は90である。
【0082】
比較のため、液体コーヒー濃縮物が、該熱処理が省略される以外は上記と同じやり方で調製される。得られた液体コーヒー濃縮物は、pH5.2を有する。4週間以内に、この製品はpH5以下に下がった(図1の(■)参照)。熟練の味利きたちにより評価されると、該製品は不快な酸っぱさがある。
<実施例3>
【0083】
実施例2は、低芳香性コーヒー抽出物が様々な温度および時間の処理を受けるように繰り返された。実験結果は図2に与えられている。y軸上にコーヒー抽出が実施された温度(摂氏)が与えられ、x軸は、熱処理の継続時間(分)を与える。図2中の数値は、加水分解によって放出された、最終製品中のmモル酸/kg乾燥物質固形成分含有量を示す。
【0084】
記号■は、加水分解によって放出された、最終製品中の150mモル酸/kg乾燥物質固形成分含有量超を与えたコーヒー抽出物を示し、よって、本発明に従う方法によって得られたものである。
記号●は、加水分解によって放出された、最終製品中の150mモル酸/kg乾燥物質固形成分含有量未満を与えたコーヒー抽出物を示す。したがって、これらは比較のための例である。
<実施例4>
【0085】
アラビカコーヒーの単一バッチは抽出を受け、それにより、欧州特許第0352842号公報に記載された水蒸気蒸留によって、高芳香性のコーヒーから芳香が分別された。これは、水蒸気蒸留留出物、すなわち高芳香性コーヒー抽出物(流れD)と、スキーム2の流れD’および流れEを備える低芳香性コーヒー抽出物とをもたらす。
【0086】
約5%の乾燥物質固形成分含有量を有する低芳香性コーヒー抽出物のpHは、該抽出物を陰イオンカラム(Lewatit(商標) XA945)を通すことによってpH6に調整される。低芳香性コーヒー抽出物は、環境条件から180℃まで6分間で加熱され、そして引き続く1.5分間その温度に保持され、その後3分間の冷却工程が続く。
該熱処理された低芳香性コーヒー抽出物は濃縮される。この処理は、最終製品中に395mモル酸/kg乾燥物質固形成分含有量の加水分解物をもたらす。
この濃縮された低芳香性コーヒー抽出物は、該高芳香性コーヒー抽出物(流れD)と混合される。
該液体コーヒー濃縮物の結果的なpHは、5.35である。該液体濃縮物は、28%の乾燥物質固形成分含有量を有している。
検出可能な異臭は、該液体コーヒー濃縮物において検出されない。
該pHは、時間とともに、図3(▲)に示されたように変化した。7週間の保存寿命中、該製品は5以下のpHに下がらない。熟練の味利き達により評価されるとき、該製品において不快な酸味は検出されない。
【0087】
該液体コーヒー濃縮物は、6mg/kg乾燥物質固形成分の量の2-フェニル-3-(2-フリル)-2-プロペナールを含む。カリウムの量は50g/kg乾燥物質であり、ナトリウムの量は3g/kg乾燥物質である。
【0088】
比較のため、液体コーヒー濃縮物が、該熱処理が省略される以外は上記と同じやり方で調製される。得られた液体コーヒー濃縮物は、pH5.2を有する。6週間以内に、この製品はpH5以下に下がった(図3の(■)参照)。熟練の味利きたちにより評価されると、該製品は不快な酸っぱさがある。
<実施例5>
【0089】
抽出(分割された流れ
焙煎されたコーヒーの単一バッチから、コーヒー抽出物は、国際公開第2007/043873号に記載されているように、分割流抽出によって得られる。
第1の一次抽出物(スキーム2の流れA)、高芳香性コーヒー抽出物である、は、処理されないままである。二次抽出物の全て(流れE)(約55体積比%)も、同様に処理されないままである。
【0090】
処理
該第2の一次抽出物(流れC)(約45体積比%)の全ては、該抽出物を陰イオンカラム(Lewatit(商標) XA945)を通過させることによって、pH6に調整することにより処理される。
該第2の一次抽出物は、環境条件から180℃まで約6分間で加熱され、そして引き続く2.5分間その温度に保持され、その後2.5分間の冷却工程が続く。
この処理は、最終製品において少なくとも176mモル酸/kg乾燥物質固形成分含有量の加水分解をもたらす。
該熱処理された第2の一次抽出物は、処理されていない二次抽出物と混合され、そして濃縮される。
該濃縮された低芳香性コーヒー抽出物は、高芳香性コーヒー抽出物(第1の一次抽出物)(流れA)と混合される。
該液体コーヒー濃縮物の得られたpHは、5.27であり、28%の乾燥物質固形成分含有量を有している。
検出可能な異臭は、貯蔵中、該液体コーヒー濃縮物において検出されない。
<実施例6>
【0091】
アラビカコーヒーの単一バッチは、実施例2で記載されたように抽出を受ける。そこから得られた、約6%の乾燥物質固形成分含有量を有する該低芳香性コーヒー抽出物のpHは、KOHの添加によってpH6に調整される。該低芳香性コーヒー抽出物は、環境条件から150℃まで約3.5分間で加熱され、そして引き続く10分間その温度に保持され、その後約2.5分間の冷却工程が続く。該熱処理された低芳香性コーヒー抽出物は、濃縮される。該濃縮された低芳香性コーヒー抽出物は、高芳香性コーヒー抽出物(第1の一次抽出物)(流れA)と混合される。
【0092】
該液体コーヒー濃縮物の得られたpHは、5.4であり、そして28%の乾燥物質固形成分含有量である。この方法は、最終製品中の少なくとも220mモル酸/kg乾燥物質固形成分含有量の加水分解をもたらす。検出可能な異臭は、該液体コーヒー濃縮物において検出されないけれども、KOHに存在の故に金属性の異味があった。
【0093】
該pHは、時間とともに、図4(▲)に示されたように変化した。28週間の保存寿命中、該製品は5以下のpHに下がらない。熟練の味利き達により評価されるとき、不快な酸味は該製品に検出されない。
【0094】
比較のため、液体コーヒー濃縮物が、該熱処理が省略される以外は上記と同じやり方で調製される。得られた液体コーヒー濃縮物は、pH5.2を有する。4週間以内に、この製品はpH5以下に下がった(図4の(■)参照)。熟練の味利きたちにより評価されると、該製品は不快な酸っぱさがある。
【0095】
<比較のための例7>
約30重量/重量%乾燥物質固形成分を有する液体コーヒー濃縮物は、50%のアラビカおよび50%のロブスタのコーヒー豆の混合物を抽出し、そして米国特許出願公開第2010/0316784号明細書で記載された工程に従って処理されることによって得られた。
液体コーヒー抽出物は、食用アルカリ、すなわち水酸化カリウムの添加によってpH5.7に調整された。
得られたコーヒー濃縮物は、145℃で90秒間の保持時間で処理され、その後、環境条件へ急速に冷却された。
最終製品のpHは、約5.2であった。
最終製品中に、わずか100mモル酸/kg乾燥物質含有量が放出された。該pHは、8週間以内で5.0以下に低下した。
専門家によって評価されると、該製品は酸っぱい味の悪さがあった。
図1
図2
図3
図4