IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニューヴェイジヴ,インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】前弯伸張可能な固定インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20230116BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
A61F2/44
A61F2/46
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021123821
(22)【出願日】2021-07-29
(62)【分割の表示】P 2018534738の分割
【原出願日】2016-12-30
(65)【公開番号】P2021166902
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】62/273,441
(32)【優先日】2015-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/273,390
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508296440
【氏名又は名称】ニューヴェイジヴ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ステイン,クリス
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0272743(US,A1)
【文献】米国特許第06102950(US,A)
【文献】特表2013-508031(JP,A)
【文献】特表2015-533337(JP,A)
【文献】特表2011-520580(JP,A)
【文献】特表2011-516181(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0185049(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0277510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに回動可能に連結されている複数の可動エンドプレートであって、前記複数の可動エンドプレートの各々は、前記可動エンドプレートを前記ハウジングに結合するピンの周りを回動するように構成され、それによって前弯角を修正する、複数の可動エンドプレートと、
前記ハウジング内に配置されている中央ボディと、
前記中央ボディと係合する送りネジと、
受動係止機構と、
を有し、
前記受動係止機構は、前記送りネジにおける一連の凹部と、前記ハウジングの内部から延びる複数のアームと、を含み、前記複数のアームの各アームは、前記一連の凹部の対応する凹部と係合するよう構成されている係合タブを含む、
伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項2】
前記中央ボディは、前記送りネジとねじ係合するように構成された送りネジ開口と、前記送りネジ開口に隣接して配置されたくさび部を含む、請求項1記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項3】
前記中央ボディは、前記ハウジングに対して横方向に並進可能である、請求項2記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項4】
前記複数の可動エンドプレートの各可動エンドプレートは、前記中央ボディの前記くさび部と対向し且つ前記くさび部に係合するように構成されたテーパ付きの第1の端壁上の傾斜部を含、請求項3記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項5】
前記受動係止機構は、前記送りネジにおける係止輪を含む、請求項1乃至4のいずれか1項記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項6】
前記係止輪は、1つ以上の係合タブを含む、請求項記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項7】
前記ハウジングは、内壁において1つ以上の凹部を含み、
前記1つ以上の凹部の各凹部は、前記1つ以上の係合タブのうちの1つを受け入れるよう構成されている、請求項記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項8】
ハウジングに回動可能に連結されている複数の可動エンドプレートと、
中央ボディと、
前記中央ボディと係合する送りネジと、
受動係止機構と、
を有し、
前記複数の可動エンドプレートの各々は、前記可動エンドプレートを前記ハウジングに結合するピンの周りを回動するように構成され、それによって前弯角を修正し、
前記受動係止機構は、前記送りネジにおける一連の凹部と、前記ハウジングの内部から延びる複数のアームと、を含み、前記複数のアームの各アームは、前記一連の凹部のうちの対応する凹部と係合するよう構成されている係合タブを含む、伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項9】
前記中央ボディは、前記送りネジとねじ係合するように構成された送りネジ開口と、前記送りネジ開口に隣接して配置されたくさび部を含む、請求項記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項10】
前記中央ボディは、前記ハウジングに対して横方向に並進可能である、請求項記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項11】
前記複数の可動エンドプレートの各可動エンドプレートは、前記中央ボディの前記くさび部と対向し且つ前記くさび部に係合するように構成されたテーパ付きの第1の端壁上の傾斜部を含、請求項10記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項12】
前記受動係止機構は、前記送りネジにおける係止輪を含む、請求項記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項13】
前記係止輪は、1つ以上の係合タブを含む、請求項12記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【請求項14】
前記ハウジングは、内壁において1つ以上の凹部を含み、
前記1つ以上の凹部の各凹部は、前記1つ以上の係合タブのうちの1つを受け入れるよう構成されている、請求項13記載の伸張可能な脊椎インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脊椎インプラントの分野に関する。より詳細には、本開示は、脊椎手術において使用するための伸張可能な脊椎固定インプラント、伸張可能な脊椎固定インプラントとともに使用するための挿入器具、及び脊椎手術中に有用である測定器具に関する。
【0002】
(他の出願との相互参照)
本出願は、2015年12月30日に出願された係属中の米国仮特許出願第62/273,390号及び2015年12月31日に出願された係属中の米国仮特許出願第62/273,441号に対する優先権及びその利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
伸張可能な脊椎固定インプラントは、椎間領域にわたる固定を容易にするために、骨移植材と組み合わせて使用され得る。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様において、本開示は、ハウジングに回動可能に連結されている複数の可動エンドプレートを有する伸張可能な脊椎インプラントを提供する。第2の態様において、本開示は、ハウジングに回動可能に連結されている複数の可動エンドプレートと、中央ボディと、前記中央ボディと係合する送りネジと、受動係止機構と、を有する伸張可能な脊椎インプラントを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の利点及び特徴をさらに示すために、本発明のより具体的な説明が、図面に示されている特定の実施形態を参照することにより提供される。これらの図面は、範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。本発明が、添付の図面を使用して、より具体的且つ詳細に記載及び説明される。
図1】本出願において開示される伸張可能な脊椎インプラントの一実施形態を示す図。
図2】本出願において開示される伸張可能な脊椎インプラントのハウジングの一実施形態を示す図。
図3】本出願において開示される伸張可能な脊椎インプラントのハウジングの別の実施形態を示す図。
図4】本出願において開示される伸張可能な脊椎インプラントのさらに別の実施形態を示す図。
図5】本開示の伸張可能な脊椎インプラントの上側可動エンドプレートの一実施形態の外側表面の上面図。
図6】本開示の伸張可能な脊椎インプラントの下側可動エンドプレートの一実施形態の内側表面の上面図。
図7A】本開示の伸張可能な脊椎インプラントの中央ボディの一実施形態の斜視図。
図7B】本開示の伸張可能な脊椎インプラントの中央ボディの一実施形態の上面図。
図7C】本開示の伸張可能な脊椎インプラントの中央ボディの一実施形態の側面図。
図7D】本開示の伸張可能な脊椎インプラントの中央ボディ及び下側可動エンドプレートの一実施形態の側面図。
図8】本開示の伸張可能な脊椎インプラントの一実施形態の断面図。
図9】本開示の伸張可能な脊椎インプラントの別の実施形態の断面図。
図10】本開示の伸張可能な脊椎インプラントの送りネジ、中央ボディ、及び上側可動エンドプレートの一実施形態の上面図。
図11A】本開示の係止輪の一実施形態を示す図。
図11B】本開示の送りネジの一実施形態を示す図。
図12】本開示の送りネジに配置されている係止輪の一実施形態を示す図。
図13】ハウジングに挿入された送りネジの一実施形態を示す図。
図14】収縮された構成における、本開示の伸張可能な脊椎インプラントの一実施形態の斜視及び断面図。
図15】収縮された構成における、本開示の伸張可能な脊椎インプラントの一実施形態の斜視及び断面図。
図16】伸張された構成における、本開示の伸張可能な脊椎インプラントの一実施形態の斜視及び断面図。
図17】伸張された構成における、本開示の伸張可能な脊椎インプラントの一実施形態の斜視及び断面図。
図18】伸張された構成における、本開示の伸張可能な脊椎インプラントの別の断面図。
図19】伸張された構成における、本開示の伸張可能な脊椎インプラントの側面図。
図20】本開示の挿入器具の一実施形態を示す図。
図21】本開示の挿入器具の一実施形態を示す図。
図22】本開示の測定器具の図。
図23】本開示の測定器具の図。
図24】本開示の測定器具の図。
図25】本開示の測定器具の図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての用語は、本開示の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般に使用される辞書において定義されるような用語は、本明細書の本文脈における意味と整合する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的に定義されない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことが理解されよう。簡潔さ又は明瞭さのために、周知の機能又は構造は、本明細書において詳細には説明されないことがある。
【0007】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけにあり、限定することを意図するものではない。本明細書において使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が複数形でないことを明確に示す場合を除き、複数形も含むことが意図されている。
【0008】
「約」及び「おおよそ」という用語は、一般に、測定の性質又は精度を所与として測定された量に対する誤差又は変動の許容可能な程度を意味する。誤差又は変動の典型的な程度の例は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。本明細書において与えられる数量は、別途記載されない限りおおよそのものであり、「約」又は「おおよそ」という用語が、明示されていない場合に推測され得ることを意味する。
【0009】
本発明の例示的な実施形態が以下で説明される。明瞭さのために、実際の実施形態の全ての特徴が、本明細書において説明されるわけではない。そのような実際の実施形態の開発において、開発者の具体的な目標を達成するために、システム関連制約及びビジネス関連制約に対する準拠等、実装に応じて変わるであろう、多数の実装特有の決定を行わなければならないことが当然ながら理解されよう。さらに、そのような開発努力は、複雑で時間がかかるかもしれないが、それでも、本開示の恩恵を受ける当業者にとって日常的な仕事であろうことが理解されよう。本出願において開示される伸張可能な脊椎固定インプラント及び関連器具は、個々と組合せとの両方において、特許保護を保証する種々の新規な特徴及び構成要素を有する。
【0010】
概して、本明細書において説明されるインプラント10は、ハウジング20、上側可動エンドプレート30、下側可動エンドプレート40、ハウジング20内に上側可動エンドプレート30と下側可動エンドプレート40との間に配置されている中央ボディ70、及び送りネジ60を含む。インプラント10は、隣接する椎体間の椎間板腔に挿入されるように設計されている。インプラント10は、任意の適切な生体適合性材料又は材料の組合せで作られ得る。例えば、インプラント構成要素は、金属、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又は金属とPEEKとの組合せであってよい。インプラント10は、収縮された状態で椎間板腔に挿入されるよう構成され、椎間板腔内の所望の位置に配置されると、インプラントの遠位端は、ある前弯角を伴うインプラント10をもたらす高さに伸張される(すなわち、インプラント10の前方高さは、インプラント10の後方高さよりも大きく、それにより、腰椎の特定のセグメントのより自然な前弯湾曲を回復させる)。
【0011】
ここで図1図19を参照すると、インプラント10の様々な実施形態並びにその特徴及び要素が示されている。インプラント10は、ハウジング20、並びに、ピン50を介してハウジング20に回動可能に連結されている上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40を含む。上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、本明細書において説明されるように、中央ボディ70に結合される送りネジ60の動作により、ハウジング20の周りで回動される。
【0012】
ハウジング20は、互いと対向する第1の側壁21及び第2の側壁22を含み、第1の側壁21及び第2の側壁22は、同様に互いと対向する第1の端壁23及び第2の端壁24により離隔されている。第1の側壁21及び第2の側壁22並びに第1の端壁23及び第2の端壁24は、中空の又は空の空間を画定し、該空間は、(以下でより詳細に説明されるように)インプラント10を伸張するために必要とされる様々な要素及び癒合開口25を封入する役割を果たす。ハウジングは、図4B及び図4Cに示されているような平行四辺形等の様々な形状に成形され得る。もちろん、ハウジング20の長方形構成及び正方形構成も、本開示の範囲内にあるとみなされるべきである。第1の端壁23は、図1及び図2に示されているように、椎間板腔への挿入を助けるためにテーパ状であり得る。第1の端壁23はまた、打込みネジ60を定位置に固定するのを助けるための、打込みネジ60の丸みのある端部64を受け入れる開口27を含む。さらに、第2の端壁24は、インプラント10が挿入された後に骨移植複合材を癒合開口25へと通すことができる開口27Aを含む。
【0013】
ハウジング20はまた、インプラント10が挿入される椎間板腔に隣接する椎体に接触する、1つ以上の固定された水平方向又はほぼ水平方向のセクション28を有することができる。固定された水平方向のセクション28は、インプラント10の挿入の移動を防止するのを助ける移動防止特徴29を有することができる。移動防止特徴29は、図面に示されているように歯状であってよく、また、骨成長を促進するために、移動防止特徴29上に粗い又は凸凹の表面をもたらすように(例えば、サンドブラスティングのような手順を通じて)処理され得る。
【0014】
ハウジング20はまた、平坦面26Cにより形成されている凹んだデッキ(recessed deck)を含み得る。凹んだデッキは、インプラントが収縮された構成であるときに上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40を受け入れるよう構成されている。凹んだデッキは、固定された水平方向のセクション28からハウジング20の内部に向かって垂直方向にオフセットされ、固定された水平方向のセクション28と平坦面26Cとの間の垂直方向の間隔は、図2図4に示されているように、出っ張り26の分だけ及び得る。凹んだデッキを有する実施形態において、ハウジング20はまた、インプラント10のテーパ状の第1の端壁22において傾斜部26B及び縁部26Aを含み得る。傾斜部26B及び縁部26Aは、組織又は他の望ましくない材料が、平坦面26Cと上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40との間の空間に入り込むのを防止しつつ、椎間板腔へのインプラント10の挿入を助ける役割を果たす。
【0015】
以下でより詳細に説明されるように、ハウジング20はまた、図2図4に示されているように、受動係止機構の諸部分を含む。
【0016】
インプラント10はまた、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40を含む。図1図19、特に図5図6に示されている例示的な実施形態において、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、互いの鏡像であるが、上側可動エンドプレート及び下側可動エンドプレートは各々、固有の構造的特徴を有することが企図されている。上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、インプラント10が挿入される椎間板腔に隣接する椎体に接触する骨接触面31及び骨接触面41を有する。骨接触面31及び骨接触面41は、インプラント10の挿入後にインプラント10が移動するのを防止するのを助ける移動防止特徴35及び移動防止特徴45を有する。移動防止特徴35及び移動防止特徴45は、図面に示されているように歯状であってよく、また、骨成長を促進するために、移動防止特徴35及び移動防止特徴45上に粗い又は凸凹の表面をもたらすように(例えば、サンドブラスティングタイプの手順を通じて)処理され得る。上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、打込みネジ60の回転を介してハウジング20に対して回動可能である。
【0017】
上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、ハウジング20と上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40とにおけるピン孔52を通るピン50を介して、ハウジング20に回動可能に連結されている。収縮された構成において、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、椎間板腔へのインプラント10の挿入を助けるために、ハウジング20の凹んだデッキにおいて平坦面26C上に平坦又はほぼ平坦に広がる。例えば、図1図6に示されているように、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、収縮された構成において上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40が固定された水平方向のセクション28と水平方向に位置が揃えられるように、平坦面26C上に載置される。上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40が、ハウジング20に対して回動するにつれ、前弯角が増大する。一実施形態において、インプラント10は、1~40度の前弯を提供し得る。
【0018】
インプラント10はまた、上側可動エンドプレート30と下側可動エンドプレート40との間の中央ボディ70であって、ハウジング20により少なくとも部分的に囲まれている中央ボディ70を有する。中央ボディ70は、第1の端壁23における開口27と垂直方向及び水平方向に位置が揃えられる送りネジ開口71を含む。送りネジ60は、丸みのある端部64が開口27に寄せられ又は接し、送りネジ60の反対側の端部が、送りネジ60におけるネジ山66と相補的であるネジ山72を有する送りネジ開口71内に存在するようになるまで、第1の端壁23における開口27を通って挿入され得る。送りネジ開口71内の送りネジ60の端部は、挿入器具100の操作により送りネジ60を回転させる挿入器具100に連結され得るソケット又は他の機構(例えば、溝付きの又は十字のネジドライバーヘッド構成)を含み得る。送りネジ60のこの端部は、開口27Aを介して到達可能である。
【0019】
送りネジ60が、時計回り又は反時計回りに回転すると、中央ボディ70におけるネジ山は、中央ボディ70が、インプラント10の第1の端壁23又は第2の端壁24のいずれかに向かって横方向に移動するようにさせる。一実施形態において、送りネジ60の時計回りの回転は、中央ボディ70が、第1の端壁23に向かって横方向に移動するようにさせるのに対し、送りネジ60の反時計回りの回転は、中央ボディ70が、第1の端壁23から離れるように第2の端壁24に向かって横方向に移動するようにさせる。
【0020】
中央ボディ70が移動するにつれ、くさび部73は、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40の内側表面における傾斜部36に接触し、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40が、中央ボディ70から離れるように外側に上昇するようにさせる(すなわち、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、インプラントが挿入された椎間板腔の上の椎体及び下の椎体に向かって移動する)。最終的に、インプラント10は、椎間板腔の高さを回復させるのに望まれる量だけ伸張される。図14図18は、インプラント10が収縮された構成から伸張された構成に移るときのインプラント10の様々な部分の動きを示している。
【0021】
図14は、線X-X’に沿った椎間板腔への挿入の準備ができている収縮された構成におけるインプラント10を示している。図15は、ハウジング20が示されていない、図14と同じインプラントの図を示している。図15において、くさび部73は、線X-X’の軸に沿って移動しておらず、したがって、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、線Y-Y’に沿って垂直方向に移動していない。図16及び図17は、それぞれ図14及び図15と同様にインプラント10の図であるが、インプラント10は、伸張された構成である。図16及び図17に示されているように、伸張された構成において、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40は、線X-X’に沿った傾斜部36に対するくさび部73の移動により、線Y-Y’に沿って垂直方向に移動している。
【0022】
ここで図3図4及び図5図13を参照すると、インプラント10はまた、受動係止機構80を含み得る。患者が通常の活動に戻ると、インプラント10は、送りネジ60が後退するようにさせ得る力及び歪みを受けるようになり、それにより、上側可動エンドプレート30、下側可動エンドプレート40、又はこれらの両方が、伸張された位置から元に戻るにつれ、インプラント10が収縮することを可能にしてします。受動係止機構80は、送りネジ60が緩む又は後退するのを防止する。本開示により企図されている受動係止機構のいくつかの実施形態が存在する。
【0023】
図11A図13に示されている第1の実施形態において、受動係止機構は、送りネジ60の一方の端部と嵌合する係止輪81を含む。係止輪81は、送りネジ60のネジ山66と、送りネジ60が開口27を通る第1の端壁23と、の間に配置される。係止輪81は、開口27を囲む、第1の端壁23の内側表面に存在する1つ以上の凹部83(図3に示されている)と係合する1つ以上の凹部係合タブ82を含む。1つ以上の凹部は、開口27の周りに均等に離間配置され得る。一実施形態において、インプラント10は、2~20個の凹部83を含む。別の実施形態において、インプラント10は、8~12個の凹部83を含む。
【0024】
係止輪81は、送りネジ60が回転すると係止輪81も回転するように、送りネジ60に取り付けられる。インプランテーション中に外科医により送りネジ60に加えられる力の量が、1つ以上の凹部係合タブ82を1つ以上の凹部83から移させるのに十分な量まで増大すると、1つ以上の凹部係合タブ82は、1つ以上の凹部係合タブ82が次の凹部83に収まる又は嵌るまで、次の凹部83に向かって回転する。その後、外科医が、送りネジ60の回転を止めた場合、係止輪81も回転を止める。受動係止機構80のこの実施形態において、正常な日常の患者活動を通じた、送りネジ60を介して係止輪81に加えられる力及び歪みは、1つ以上の凹部係合タブ82を1つ以上の凹部83に固定する力を超えるのに十分なほど大きくはないので、1つ以上の凹部83への1つ以上の凹部係合タブ82の嵌合は、送りネジ60が後退するのを防止し、したがって、送りネジ60が適所で係止される。
【0025】
図4及び図11Bに示されている受動係止機構80の別の実施形態において、送りネジ60は、丸みのある端部64とネジ山66との間に配置されている送りネジ輪68を含み、送りネジ輪68は、送りネジ輪68の周りに離間配置された1つ以上の凹部69を含む。第1の端壁23の内側表面は、(上述したように)送りネジ60が通る開口27と、第1の端壁23からハウジング20の中心に向かって延びる1つ以上の拡張アーム90と、を含む。拡張アーム90は、送りネジ輪68における1つ以上の凹部69と嵌合するよう構成されている隆起部を有する凹部係合タブ91を含む。上述した受動係止機構80の第1の実施形態と同様に、インプランテーション中に外科医により送りネジ60に加えられる力の量が、1つ以上の凹部係合タブ91を1つ以上の凹部69から移させるのに十分な量まで増大すると、1つ以上の凹部係合タブ91は、1つ以上の凹部係合タブ91が次の凹部69に収まる又は嵌るまで、次の凹部69に向かって回転する。受動係止機構80のこの実施形態において、正常な日常の患者活動を通じた、送りネジ60を介して送りネジ係止輪81に加えられる力及び歪みは、1つ以上の凹部係合タブ91を1つ以上の凹部69に固定する力を超えるのに十分なほど大きくはないので、1つ以上の凹部69への1つ以上の凹部係合タブ91の嵌合は、送りネジ60が後退するのを防止し、したがって、送りネジ60が適所で係止される。
【0026】
さらに、インプラント10は、中央ボディ70において1つ以上の前方支持部74を含み得る。脊椎固定手術において成功した手術結果を達成するために、インプラント10と隣接する椎体との間の動きの量が最小限に抑えられる必要がある。これは、当該技術分野において周知である、ネジ、ロッド、及び/又はプレートを使用することにより達成され得る。さらに、インプラント10内の動き自体も最小限に抑えられる必要がある。上述したように、1つ以上のくさび部73は、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40を上昇又は下降させる役目を果たし、1つ以上のくさび部73は、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40が収縮するのを防止するための、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40のための支持も提供する。しかしながら、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40が、1つ以上のピン50の周りで回動するのを防止するために、1つ以上の前方支持部74等の第2の支持手段を設けることが有利であり得る。1つ以上の前方支持部74は、中央ボディから1つ以上のくさび部73とは反対側に軸方向に延びている(例えば、図7A参照)。上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40が上昇させられ、インプラント10が伸張された構成であるときに、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40の一方の端部は、1つ以上の前方支持部に接触するようになり、それにより、上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40が、ピン50の周りで回転するのを防止し、したがって、インプラント10の挿入後のインプラント10内の動きの量を最小限に抑える。
【0027】
本開示はまた、図20及び図21に示されているように、インプラント10と係合し、手術中のインプラント10の挿入を助ける挿入器具100を提供する。挿入器具100は、インプラント10との取り付けポイント102とは反対側の端部に回転可能な要素101を含む。回転可能な要素101が外科医により回転されると送りネジ60も同様に回転し、したがって、くさび部73を並進させて上側可動エンドプレート30及び下側可動エンドプレート40を移動させるように、回転可能な要素101は、インプラントと、具体的には送りネジ60と、連通し得る。取り付けポイント101は、インプラント10を挿入器具100に取り付ける、可逆性であるが安全な手段を提供する役目を果たす。インプラント10は、インプラント10が椎体間に挿入される前に、挿入器具100に取り付けられ、インプラント10が椎体間に挿入された後に、外科医により挿入器具100から取り外され得る。インプラント10を挿入器具100に取り付ける手段は、インプラント10の挿入後にインプラント10を妨げないように、インプラント10を挿入器具100から素早く容易に取り外すことを可能にする必要がある。
【0028】
挿入器具100は、その長さに沿って延びる中空シリンダを含み得る。中空シリンダは、外科医が、インプラント10の挿入後、インプラント10が伸張された構成になった後に、インプラント10における癒合開口25に骨移植複合材を詰める又は挿入することを可能にする。図21に示されているように、挿入器具100の中空シリンダに骨移植複合材を詰めるのを助けるためのじょうご104を使用することが望ましいことであり得る。
【0029】
別の態様において、本開示は、椎体間への挿入の際にインプラント10により必要とされるおおよその高さを決定するのに有用な測定器具110を提供する。この測定器具の一実施形態が、図22図25に示されている。測定器具は、駆動部112を含む第1の端部111と、2つの可動エンドプレート114を含む第2の端部113と、を有する。
【0030】
駆動部112は回転可能であり、駆動部112が回転すると、その回転運動が、測定器具110のシャフト116内に配置されている一連の連結部115により、可動エンドプレート114を伸張させる力に変換される。エンドプレート114は、連結部115に取り付けられる一連のアーム117に取り付けられる。駆動部112が回転すると、エンドプレート114は、シャフト116から離れるように上昇し得るか、又は、シャフト116に向かって下降し得るかのいずれかである。
【0031】
測定器具110はまた、エンドプレート114の動きを、一連の予め定められたユニットに視覚的に変換する、第1の端部111の近くのインジケータ特徴117を含み得、これにより、外科医は、インジケータ特徴117を介して、エンドプレートの動きを観測することができる。例えば、インジケータ特徴は、シャフト116における開口であって、この開口の端部の周りに(レーザー印刷等により)印刷された1~10の範囲の数字を有するシャフト116における開口を含み得る。エンドプレート114が、収縮された構成で椎体間に挿入されると、インジケータ特徴は、収縮された位置におけるエンドプレート114の高さを位置「1」に対応付けている何らかのマーカを有し得、エンドプレート114が、駆動部112の回転により、伸張された構成に移されると、マーカは、位置「1」から位置「2」、位置「3」等に移り得る。位置の数字は、その後、エンドプレート114の実際の高さに対応付けられ得、特定の患者の解剖学的構造のために、インプラント10の高さの推定値を外科医に提供する。あるいは、インジケータ特徴117において提供される数字は、エンドプレート114の高さを直接提供してもよい。例えば、数字は、伸張された構成におけるエンドプレートのミリメートル単位の高さを表してもよい。
【0032】
本開示の特定の実施形態が説明されたが、そのような参照は、請求項に記載されるものを除いて、本開示の範囲に対する限定として解釈されることを意図するものではない。
【0033】
次の付記を記す。
(付記1) ハウジングに回動可能に連結されている複数の可動エンドプレート
を有する伸張可能な脊椎インプラント。
(付記2) 前記ハウジング内に配置されている中央ボディ
をさらに有し、
前記中央ボディはくさび部を含む、付記1記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記3) 前記中央ボディは、前記ハウジングに対して横方向に並進可能である、付記2記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記4) 前記複数の可動エンドプレートは、前記中央ボディの前記くさび部と対向する傾斜部を含み、
前記傾斜部は、前記くさび部と連動するよう構成されている、付記3記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記5) 前記中央ボディと係合する送りネジ
をさらに有する、付記4記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記6) 受動係止機構
をさらに有する、付記5記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記7) 前記受動係止機構は、前記送りネジにおける係止輪を含む、付記6記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記8) 前記係止輪は、1つ以上の係合タブを含む、付記7記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記9) 前記ハウジングは、内壁において1つ以上の凹部を含み、
前記1つ以上の凹部は、前記1つ以上の係合タブを受け入れるよう構成されている、付記8記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記10) 前記受動係止機構は、前記送りネジにおける一連の凹部と、前記ハウジングの内部から延びる複数のアームと、を含み、
前記複数のアームは、前記一連の凹部と係合するよう構成されている係合タブを含む、付記6記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記11) ハウジングに回動可能に連結されている複数の可動エンドプレートと、
中央ボディと、
前記中央ボディと係合する送りネジと、
受動係止機構と、
を有する伸張可能な脊椎インプラント。
(付記12) 前記中央ボディはくさび部を含む、付記11記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記13) 前記中央ボディは、前記ハウジングに対して横方向に並進可能である、付記12記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記14) 前記複数の可動エンドプレートは、前記中央ボディの前記くさび部と対向する傾斜部を含み、
前記傾斜部は、前記くさび部と連動するよう構成されている、付記13記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記15) 前記受動係止機構は、前記送りネジにおける係止輪を含む、付記14記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記16) 前記係止輪は、1つ以上の係合タブを含む、付記15記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記17) 前記ハウジングは、内壁において1つ以上の凹部を含み、
前記1つ以上の凹部は、前記1つ以上の係合タブを受け入れるよう構成されている、付記16記載の伸張可能な脊椎インプラント。
(付記18) 前記受動係止機構は、前記送りネジにおける一連の凹部と、前記ハウジングの内部から延びる複数のアームと、を含み、
前記複数のアームは、前記一連の凹部と係合するよう構成されている係合タブを含む、付記14記載の伸張可能な脊椎インプラント。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25