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特許7210698耐火性セラミック部品にマーク付けをする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】耐火性セラミック部品にマーク付けをする方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20230116BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230116BHJP
   C04B 35/109 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
C04B35/488 500
B23K26/00 B
C04B35/109
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021504820
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070243
(87)【国際公開番号】W WO2020025497
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】1857213
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ボリー,オリヴィエ
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506898(JP,A)
【文献】特開平07-239189(JP,A)
【文献】特公昭60-039953(JP,B1)
【文献】特開平02-048485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B
B23K
F27D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーク付けされる表面として知られている、耐火性セラミック部品の表面にマーク付けをする方法であって、該部品は、
シリケート結合剤相によって結合された、50質量%超のZrOを含有するグレインを含むミクロ構造と、
5体積%未満の全多孔度と
を有し、
上記方法は、レーザービームで上記表面を照射することを含み、該ビームは、下記の関係式(1)に従うように設定されたレーザーデバイスによって放出され、
a.V+b.F+c.VF+d.V+e.F+f<0、ここで、
a=10.D+2×10
b=0.5×10.D-150×10
c=0.5×10.D-300×10
d=5×10.D-2.5×10
e=-5×10.D+2.0×10
f=-5×10.D+1.8×1012
Vは、上記耐火性セラミック部品の上記表面上の上記レーザービームの線形移動速度であり、mm/秒単位で表され、且つ30mm/秒超であり、
Dは、焦点距離であり、mm単位で表され、及び
Fは、パルス周波数であり、kHz単位で表され、
上記レーザービームの単位面積当たりの力が1000W/mm超であり、
上記レーザービームが、上記表面に、5J/mm~3000J/mmの露光エネルギーを伝達する、
前記方法。
【請求項2】
周波数Fが300kHz未満であり及び/又は速度Vが5000mm/秒未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周波数Fが100kHz未満であり及び/又は速度Vが3000mm/秒未満である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
消去可能なマークを製造する為に、F/V < D/800である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
露光エネルギーが、5~100μmの深さにわたり結合剤相を除去するように、及び/又はマーク付けされる表面のグレインの平均サイズの10%超且つ50%未満の深さにわたって結合剤相を除去するように適合される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
照射前に、マーク付けされる表面が、規格ISO 4287/1997に従って測定される粗さRa 20μm未満を有する、及び/又は該耐火性セラミック部品が、1%以下の水分のパーセンテージを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該グレインが、酸化物に基づく質量パーセンテージとして95%超のZrOを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該耐火性セラミック部品が、溶融された材料から成る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該耐火性セラミック部品が、その質量の90%超について、ZrO、Al、SiO、Cr、Y、及びCeOからなる群から選択される1つ以上の酸化物からなる材料から成る、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
マーク付けされる表面に当たった時のビームの断面の等価直径が、30μm超且つ100μm未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
炉を製造する方法であって、
1)複数の耐火性セラミック部品を製造し、請求項1~10のいずれか1項に記載のマーク付けをする方法に従って各部品上にマークを刻むこと、ここで、部品上に刻まれた該マークは、該炉内の該部品の意図される位置に依存する;
2)該複数の耐火性セラミック部品を、各部品がその上に刻まれた該マークに従う位置にあるように、組み立てること
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記炉が、ガラス炉又は冶金炉である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーク付けをする方法、特にガラス炉又は冶金炉の為に意図された耐火性セラミック部品にマーク付けをする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に大きい、高密度の耐火性セラミック部品(Dense refractory ceramic parts)は、特にガラス又は金属の融解炉において、高温で使用されうる。
【0003】
該部品は特に、電気融合(electrofusion)によって製造されうる。この方法は、原材料をアーク炉(arc furnace)内で融解し、そして次に、融解した材料を型に流し込み、そして、次に、該融解した材料を冷却して固化させることで構成される。次に、得られた「溶融された」ブロックが、機械加工されて、用途に好適な寸法が該ブロックに与えられることができる。
【0004】
耐火性セラミック部品の組成及び該部品を製造する方法は、対象とされる炉の領域に適合される。
【0005】
特に部品が所定の位置に配置されることができるように、該炉の組み立て中に部品のトレーサビリティーを確実にする為に且つ部品の特定を可能にする為に、製造現場で部品にマーク付けをすることが必要である。
【0006】
該マークは、
コントラストがなければならず、
その取扱い中、特に組み立て操作中に、摩耗に対して耐えなければならず、
特に部品の接合面の又は低温面のマーキングを可能にする為に、600℃よりも高い温度に耐えなければならない。
【0007】
用途に依存して、該マークは消去可能であることが必要であり又はそれが必要でない。
【0008】
低温面(cold face)で、消去不可能なマークは、組み立て後の且つ炉の使用後でさえも、該部品を認証すること且つ追跡することを可能にする。
【0009】
他の面上で、消去可能なマークは、組み立て中の該マークの修正を可能にし、且つ特にガラス炉での用途における膨れに関して、過度に迅速な劣化を回避する。
【0010】
該マーク付けをする方法は、毎秒数センチメートルのマーク付け速度で、迅速且つ効率的でなければならない。好ましくは、400cmの表面積は、1分でマーク付けされることができるべきである。
【0011】
該マーク付けをする方法は好ましくは、単純な拭取り、水中での機械加工後の周囲空気による乾燥、又は素材製造若しくは機械加工部品で観察されるバリ又はフラッシュを低減させる為のサンドブラスト処理以外に、表面の調製を必要とするべきではない。
【0012】
最後に、該マーク付けは、材料の配合にいかなる変化ももたらすべきでなく、それは、使用中の性能を常に低下させる傾向がある。
【0013】
部品にマーク付けをする為には、その表面上にインクを堆積することが既知の実務である。しかしながら、インクは、炉の作業温度に耐性がなく且つ環境に有害である。
【0014】
レーザーマーク付けをする方法がまた知られている。ジルコニアを含むグレインを含むセラミック部品に適用される場合、該方法は慣用的に、色のグラデーション及び/又は黒いマークをもたらし、それは該マークの読み易さを損なう。
【0015】
米国特許第5272120号明細書は例えば、典型的な力(power)が約7~10Wであり、周波数が8kHzであり且つ酸素欠乏雰囲気下で移動速度が22mm/秒であるYAG又はCOレーザー放射線を使用するマーク付け方法を開示する。
【0016】
米国特許第5543269号明細書は、マルチモードNd:YAGレーザー放射線を使用するマーク付け方法を提案する。該マークは消去可能である。
【0017】
特開2005-4175624号公報は、シンプルモード(YAGレーザーとは異なる)における振動レーザー放射線を使用する、特に力が6.5Wであり且つ波長が1064nmであるYVOレーザーを使用する、マーク付け方法を示唆する。
【0018】
米国特許第4769310号明細書は、レーザー放射線に感受性のある無機顔料をその中に組み込むことによってマーク付けされるセラミック部品の組成の改変を示唆する。しかしながら、これらの添加は、使用中のセラミック部品の性能を有意に劣化させ且つガラス炉の用途の場合に融解ガラス浴(molten glass bath)を汚染しうる。
【0019】
米国特許第5030551号明細書又は米国特許第6238847号明細書は、マーク付けされる表面上に、レーザー放射線に感受性のある層を堆積することを提案する。しかしながら、この層は、接着性が低く且つ耐摩耗性が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、上記列挙された制約を満たし且つ既知の方法の欠点を有しない、高密度の耐火性セラミック部品にマーク付けをする方法の為の必要性がある。
【0021】
本発明の1つの目的は、少なくとも部分的に、この必要性に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、「マーク付けされる表面」として知られている、耐火性セラミック部品の表面にマーク付けをする方法に関し、「高密度の耐火性セラミック部品」として知られている上記部品は、
シリケート結合剤相によって結合された、50質量%超のZrOを含有するグレイン、好ましくはZrOグレイン、を含む又は該グレインからさえなる、ミクロ構造と、
5体積%未満の全多孔度と
を有し、
上記方法は、レーザービームで上記表面を照射することを含み、該ビームは、下記の関係式(1)に従うように設定されたレーザーデバイスによって放出され、
a.V+b.F+c.VF+d.V+e.F+f<0、ここで、
a=10.D+2×10
b=0.5×10.D-150×10
c=0.5×10.D-300×10
d=5×10.D-2.5×10
e=-5×10.D+2.0×10
f=-5×10.D+1.8×1012
Vは、mm/秒単位で表され、Dは、mm単位で表され、及びFは、kHz単位で表される。
【0023】
本発明者等は、そのような方法が、先に説明された必要性を満たすマーク付けを有利に実行することを可能にすることを見出した。
【0024】
特に本発明者等は、該マークが、非常に良好なコントラスト且つ均一な色を有し、マーク付けされた文字又は区画の周辺の周りであってもグラデーション又は黒いマークが裸眼で認識されないことを見出した。
【0025】
理論に拘泥されるものではないが、本発明者等は、結合剤相の一部及びグレインの一部を除去するが上記グレインを露光することがない、レーザービームの特殊性によってこの結果を説明する。
【0026】
好ましくは、露光エネルギーは、マーク付けされる表面のグレインの平均サイズの10%超及び/又は50%未満、好ましくは30%未満、又は更には20%未満、の深さにわたって結合剤相を除去するように適合される。
【0027】
好ましくは、本発明に従う方法はまた、下記の任意的な特徴の1つ以上を有する:
周波数Fが300kHz未満であり及び/又は速度Vが5000mm/秒未満である;
周波数Fが100kHz未満であり及び/又は速度Vが3000mm/秒未満である;
消去可能なマークを製造する為に、レーザーデバイスが800.F/(V.D)<1になるように設定される;
読み易さを改善する為に、レーザーデバイスが800.F/(V.D)>0.1、好ましくは800.F/(V.D)>0.15、になるように設定される;
露光エネルギーが、5~100μm、好ましくは75μm未満、好ましくは50μm未満、の深さにわたり結合剤相を除去するように適合される;
照射前に、マーク付けされる表面が、規格ISO 4287/1997に従って測定される20μm未満の粗さRaを有する、及び/又は耐火性セラミック部品が、1%以下の水分のパーセンテージを有する;
該グレインが、95質量%超のZrOを含む;
耐火性セラミック部品が、溶融された材料から成る;
耐火性セラミック部品が、その質量の90%超について、ZrO、Al、SiO、Cr、Y、及びCeOからなる群から選択される1つ以上の酸化物からなる材料から成る;
レーザービームが、マーク付けされる表面上で、30~100μmの間の等価直径を有する;
露光エネルギーが、5~3000J/mmである。
【0028】
本発明はまた、好ましくは本発明に従うマーク付けをする方法を用いて刻まれたマークを有する、高密度の耐火性セラミック部品に関し、該マークは、
5~100μm、好ましくは75μm未満、好ましくは50μm未満、の深さを備えた、及び/又は
空洞の底部から、グレインが、平均してその平均サイズの5%超、好ましくは10%超、及び/又はその平均サイズの50%未満、好ましくは30%未満、又は更には20%未満、の距離だけ突出する、
空洞を画定する。
【0029】
該マークが特に、英数文字、ライン若しくはドットマトリックス又はグラフ表示でありうる。
【0030】
好ましくは、該マークは複数のドットを含み、ドット密度がmm当たり100~1000ドットである。
【0031】
本発明はまた、炉、特にガラス炉又は冶金炉、を製造する方法に関し、該方法は、下記の工程を含む:
1)複数の耐火性セラミック部品を製造し、そして、本発明に従うマーク付けをする方法に従って各部品上にマークを刻むこと、ここで、部品上に刻まれた該マークは、該炉内の該部品の意図される位置上に依存する;
2)該複数の耐火性セラミック部品を、各部品がその上に刻まれた該マークに従う位置にあるように、組み立てること。
【0032】
本発明はまた、特にガラス炉の又は冶金炉の、炉内ライニングの耐火性部品の組み立てを制御する方法に関し、該方法において、上記耐火性部品の組み立て後、上記耐火性部品上に刻まれたマークが読み取られ、そして、次に、該部品の実際の位置が、該マークを用いて識別された所定の位置と比較される。
【0033】
定義
語「耐火性セラミック部品」は、非金属無機材料で作製された部品を意味する。
「高温面」(hot face)は、炉の内部に暴露されている面、すなわち融解材料(molten material)、例えばガラス若しくは金属、に接触する及び/又はこの材料の気体環境に接触する面である。低温面(cold face)は慣用的に、高温面とは反対の面である。ブロックの高温面及び低温面は、
同じ列のブロックにおける隣接するブロックの側面に面する側面、すなわち「接合面」(joint faces)を介して、及び
上記ブロック上に載置される少なくとも1つの上方ブロックの下面に面する上面を介して、及び上記ブロックが載置されている少なくとも1つの下方ブロックの上面に面する下面を介して、
互いに接続されている。
ブロックの厚さは慣用的に、その最小寸法である。炉の雰囲気に接触する高温面と、その反対側の低温面との間の距離が慣用的に、測定される。
ビームの断面の等価直径は、この断面と同じ面積を有するディスクの直径である。
語「グレイン」(grain)は、均質な組成又は共晶組成を有し且つ10μm超のサイズを有する結晶質要素を云う。
語「結晶子」(crystallite)は、表面積が0.1μm超であり且つ10μm未満である結晶質要素を云い、ここで、該表面積は、製品の断面で光学顕微鏡法により撮影された画像上で測定される。
語「グレインサイズ」(grain size)は、グレインの全長と全幅との合計半値を意味し、ここで、該長さ及び該幅は、製品の断面で光学顕微鏡法により撮影された画像において測定され、該幅は、上記長さに垂直な方向において測定される。
語「平均」は、算術平均を意味する。
語「ZrOグレイン」は、酸化物に基づく質量パーセンテージとして、80%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、好ましくは98%超、のZrOを含むグレインを意味する。
他に明示されない限り、該組成に関する全てのパーセンテージは、酸化物に基づく質量パーセンテージである。
全多孔度は、下記の関係式によって慣用的に与えられる:
全多孔度=100×(絶対密度-見掛け密度)/絶対密度。
【0034】
該見掛け密度は、正常なゾーン(healthy zone)における、部品の芯から得られたバーにおいて、規格ISO 5017に従って測定される。該絶対密度は、ヘリウムピクノメーターを使用して、粉砕された粉末で測定される。
【0035】
語「含む」(include)、語「有する」(have)、及び語「含む」(comprise)は、広範な非限定的手法で解釈されるべきである。
【0036】
本発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明を読むことによって且つ添付図面を検証することによって、より明瞭に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、レーザー照射によってマーク付けされた、本発明に従う部品の、マーク付けされた表面に垂直な切断面における断面を示す。
図2図2は、本発明に従う方法に従って得られた耐火性セラミック部品のマーク付けされた表面と、マーク付けされていない表面との間の遷移を示し、ここで、写真の左半分のマーク付けされたゾーンはガラス質の外観を有しており、及び写真の右半分のレーザーで照射されていないゾーンは、ベース製品のテクスチャーを明らかにする。
図3図3は、本発明に従う方法に従う耐火性部品上に刻まれたデータマトリックス(Datamatrix)の実施例を示し、ここで、約30mm×30mmのこの四角形のマークは、辺長が約1mmの一組の四角形からなる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
マーク付けされる耐火性セラミック部品は、焼結された材料又は好ましくは溶融された材料を含み又は好ましくは該材料からなる。その全多孔度は、好ましくは5%未満、好ましくは3%未満、又は好ましくは1%未満、である。
【0039】
マーク付けされる耐火性セラミック部品は好ましくは、耐火性粒子から構成される供給材料を融解し、そのように得られた液体浴を型に流し込み、そして、次に、該型内で液体の塊を冷却して固化させることによって得られる。好ましくは、マーク付けされる耐火性セラミック部品は、好ましくはアーク炉を使用するアーク炉(arc furnace)によって得られる。
【0040】
好ましくは、耐火性セラミック部品は、50mm超、又は75mm超、及び/又は好ましくは300mm未満、200mm未満、又は更には100mm未満、の最大厚さを有する。
【0041】
マーク付けされる耐火性セラミック部品は特に、タンクブロック、プレートブロック、バーナーアーチ、又はガラス炉の上部構造の他の部品からなる群から選択されてもよく、好ましくはタンクブロックでありうる。
【0042】
マーク付けされる表面は、耐火性セラミック部品の任意の面上にありうる。好ましくは、該表面は、高温面上又は側面上又は低温面上にある。
【0043】
該セラミック部品は慣用的に、結晶質グレインをつなぐ粒間結合剤相(intergranular binder phase)を含む。
【0044】
該結晶質グレインは好ましくは、80体積%超、90体積%超、95体積%超、又は更には実質的に100体積%、のZrOグレイン及び任意的に、コランダム-ジルコニア共晶混合物(corundum-zirconia eutectic mixtures)を含む。
【0045】
好ましくは、質量パーセンテージとして、該グレインの80%超、90%超、95%超、又は更には実質的に100%が、ZrOグレインである。
【0046】
耐火性セラミック部品におけるジルコニアは、グレインの形で存在する。これらの単結晶質又は多結晶質グレインは、Zr元素を含み、及び好ましくは、それらの質量の95%超、98%超、99%超、又は実質的に100%、がZrOからなる。
【0047】
平均グレインサイズ、特にマーク付けされる表面上での平均グレインサイズ、は好ましくは、10μm超、好ましくは20μm超、好ましくは30μm以上、及び/又は200μm未満、好ましくは100μm未満、である。
【0048】
耐火性セラミック部品は好ましくは、その質量の90%超が、ZrO、Al、SiO、Cr、Y及びCeOからなる群から選択される1つ以上の酸化物からなる。好ましくは、ZrO、Al及びSiOは一緒に、耐火性セラミック部品の質量の90%超を占める。
【0049】
耐火性セラミック部品は好ましくは、15%超のZrO、より好ましくは26%~95%、のZrOを含む。
【0050】
様々な好ましい実施態様において、ベース製品の組成は、合計90%超、95%超、又は更には98%超、について下記の通りである:
ZrO: 26~45%;
Al: 40~60%;
SiO: 5~35%;
又は下記の通りである
ZrO: 50~80%未満;
Al: 15~30%;
SiO: 5~15%;
又は下記の通りである
ZrO: 80~98%;
Al: 5~20%;
SiO: 1~12%;
又は下記の通りである
10%<ZrO≦25%;
50%<Al<75%;
5%<SiO<35%。
【0051】
好ましくは、特にこれら全ての実施態様について、NaO及びBの質量含有量は、ベース製品の酸化物に基づく質量パーセンテージとして2%未満である。
【0052】
該結合剤相は、1つ以上のガラス質又はガラスセラミック相を含み、好ましくは該1つ以上のガラス質又はガラスセラミック相からなる。それは好ましくは、耐火性セラミック部品の5質量%~50質量%、好ましくは10質量%~40質量%、である。
【0053】
好ましくは、該結合剤相はシリケート相であり、そのNaOの質量割合は、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、であり、及び/又はそのAlの質量割合は、30%未満である。
【0054】
耐火性セラミック部品の表面にマーク付けをする為に、所定の量のエネルギーが、所定の時間にわたって、小さい表面積において集中される。
【0055】
調製
レーザービームを投射する前に、マーク付けされる耐火性セラミック部品が調製される。
【0056】
好ましくは、マーク付けされる耐火性セラミック部品は、マーク付けされる表面が平らになるように研削される。好ましくは、少なくとも10cmの代表的な長さに関してマイクロメーターフィーラーゲージを使用して測定されるこの表面、すなわち「キャンバー」(camber)、の平坦性は、100μm未満、好ましくは50μm未満、である。
【0057】
マーク付けされる表面の粗さは好ましくは、規格ISO 4287/1997に従って測定される粗さRaが、100ミクロンの参照長さで20μm未満、好ましくは15μm未満、より好ましくは10μm未満、であるようにされる。従って、例えば、AZS型の材料では、150ミクロンのプロファイルでフィーラーゲージ(feeler gauge)で測定されたzの変動(谷(troughs)及び山(peaks))は、+30/-30マイクロメートル、好ましくは+20/-20マイクロメートルである。
【0058】
好ましくは、マーク付けされる部品は、その水分のパーセンテージが1%以下、好ましくは0.5%未満、になるように乾燥される。
【0059】
照射
レーザービームを放出するデバイスは、好ましくはCO型の、好ましくは1065±5nmの波長を有する、好ましくは10W~100ワット、好ましくは20W~60W、の平均レーザービーム力(すなわち、「平均出力」(mean output power)を有する、慣用的なレーザーデバイスでありうる。
【0060】
このデバイスは、レーザービームの位置決めを支援する標的デバイス、及び/又は画像、例えば、耐火性セラミック部品上に再現される記号若しくは商標若しくは2次元コードを表すJPEGフォーマットの画像、をインポートするグラフィックインターフェースを含みうる。
【0061】
該デバイスは、レーザー入射ビームを使用して、マーク付けされる表面を照射して、この表面に、好ましくは5J/mm超、好ましくは7J/mm超、好ましくは10J/mm超、好ましくは20J/mm超、又は更には30J/mm超、及び/又は2000J/mm未満、好ましくは1500J/mm未満、好ましくは1000J/mm未満、好ましくは500J/mm未満、の露光エネルギーを伝達するように、設定される。
【0062】
露光エネルギーは、ビームの単位面積当たりの力と、マーク付けされる表面での入射ビームの移動速度との間の比である。
【0063】
単位面積当たりの力は、入射ビームのワットを単位とする力を、マーク付けされる表面に入射ビームが当たった時の、入射ビームの断面のmmを単位とする表面積で除した比である。
【0064】
入射ビームの断面は、様々な形状のもの、例えば円形断面、でありうる。
【0065】
マーク付けされる表面に当たった時の入射ビームの断面の等価直径、すなわち「放射線幅」(radiation width)、は好ましくは、10μm超、好ましくは30μm超、好ましくは35μm超、及び/又は100μm未満、好ましくは55μm未満、である。そのような等価直径は特に、ガラス質又はガラスセラミック相によって結合されたセラミックグレインを有する耐火性セラミック部品にマーク付けの為に好適である。
【0066】
好ましくは、ビーム幅(beam width)は、ベース製品の表面に存在するZrOグレインの平均サイズの関数として適合される。好ましくは、平均グレインサイズが大きくなるほど、該ビーム幅が大きくなる。好ましくは、該ビーム幅は、ZrOグレインの平均サイズの0.5~2倍である。
【0067】
入射ビームの単位面積当たりの力は、1000W/mm超、好ましくは5000W/mm超、好ましくは7000W/mm超、好ましくは10000W/mm超、及び/又は好ましくは100000W/mm未満、好ましくは50000W/mm未満、好ましくは30000W/mm未満、である。
【0068】
マーク付けされる表面に供給されるエネルギーは、結合剤相が除去される深さを限定するように供給されなければならない。
【0069】
使用されるデバイスはパルスレーザーであり、ここで、パルス周波数「F」は好ましくは、10kHz超、好ましくは20kHz超、及び/又は300kHz未満、好ましくは200kHz未満、好ましくは100kHz未満、である。
【0070】
パルス送出とビームの移動との組み合わせは有利には、複数のドットからなるマークを作製することを可能にし、ここで、各ドットは、マーク付けされる表面上のパルスの動作から得られる。
【0071】
好ましくは、ドット密度は100~1000ドット/mmである。
【0072】
マークは、人物又は機械にとって意味のある視覚表示、例えば英数文字、又は2次元コード、例えばドットマトリックス(例えば、データマトリックス又はQRコード)、又はグラフ表示、例えば記号、又は図面である。好ましくは、マークは、Trumpf社により販売されているDatalogicマトリックス210 Datamatrixリーダーによって、又は7tech社により販売されているインサイト7210カメラであって600×800画素の解像度を有するセンサーを備えた該カメラによって読み取ることができるコードである。
【0073】
好ましくは、該マークは、上記ドットの1つ以上の群からなる。好ましくは、マークが、特に該マークが英数文字又はコードを表す場合において、1~5cmの最大寸法を有する。
【0074】
耐火性セラミック部品上のマークの全ての表面積、すなわち「マーキングフィールド」(marking field)、例えば複数の英数文字が表面に拡がる表面積、は好ましくは、100cm超及び/又は1000cm未満、好ましくは200cm以下、である。該マーキングフィールドは例えば、一辺長が30cmの四角形でありうる。
【0075】
該マーキングフィールドは、一組の英数文字、例えば一連の5~15個の数字を含み得、ここで、各英数文字は好ましくは、1~5cmの高さを有する。これらの英数文字は好ましくは、100~1000ドット/mmの密度を有する一連のドットによって得られる。
【0076】
耐火性セラミック部品の表面上の入射ビームの線形移動速度「V」(mm/秒単位)は好ましくは、30mm/秒超、40mm/秒超、好ましくは50mm/秒超、及び/又は3000mm/秒未満、好ましくは2000mm/秒未満、好ましくは1500mm/秒未満、好ましくは1000mm/秒未満、である。
【0077】
入射ビームは慣用的に、1次ビームを集束させることによって得られる。
【0078】
焦点距離「D」が短くなるほど、単位面積当たりの力はより高くなる。
【0079】
焦点距離Dは好ましくは、50~500mm、好ましくは100~450mm、好ましくは150~400mm、である。そのような焦点距離は有利には、上述の等価直径と同等であり、特に10~100μmの等価直径と同等である。
【0080】
本発明者等は、下記の関係式(1):
a.V+b.F+c.VF+d.V+e.F+f<0
ここで、
a=10.D+2×10
b=0.5×10.D-150×10
c=0.5×10.D-300×10
d=5×10.D-2.5×10
e=-5×10.D+2.0×10
f=-5×10.D+1.8×1012
であり、Vは、mm/秒単位で表され、Dは、mm単位で表され、及びFは、kHz単位で表される、
に従うことがレーザーデバイスの設定について特に有利であることを発見した。
【0081】
一つの実施態様において、F/VはD/800よりも大きい。従って、該マークは、非常に耐熱性があり、特に耐火性セラミック部品が空気中800℃で24時間の熱処理を受けた後であっても依然として読み易い。
【0082】
一つの実施態様において、F/VはD/800未満である。従って、ガラス質相は、耐火性セラミック部品のグレインの平均サイズの典型的には20%未満の深さにわたってレーザービームによって除去される。該マークは、読み易いままであり且つ十分にコントラストを有するが、耐火性セラミック部品の耐摩耗性に影響を及ぼさない。しかしながら、空気中、800℃で24時間熱処理した後に、消去可能である。
【0083】
好ましくは、放射線の耐密閉性は慣用的に、マーク付けされる表面を隔離するドームによって確実にされ、ここで、空気の正圧がドーム内に維持される。
【0084】
マーク付けをする方法は、ZrOグレイン間に空洞を作成することによって、耐火性セラミック部品の表面の粗さを増大させる。しかしながら、これらの空洞の深さは、これらのグレインの平均サイズ未満である。例えば、AZS型の材料の場合、マーク付けされた表面の粗さは、規格に従って測定されたRaが典型的には5~50μmになるようなものである。長さ800ミクロンのプロファイルでフィーラーゲージにより測定されたzのばらつきは、平均して約+50/-20マイクロメートルであり、10~100μmのトラフが約100マイクロメートルの長さにわたり形成される。そのような表面プロファイルは、本発明に従う方法の識別特性を構成するように思われる。
【0085】
[実施例]
下記の実施例は、例示目的の為に提供されており、本発明を限定するものでない。
【0086】
Zefpro社により販売される溶融された製品ER1681から成る(32%ZrO、51%Al、15%SiO)、寸法が500mm×600mm×75mmの乾燥ブロックは、波長1064nm、平均出力力30W、及び円形断面を持つそのビームが約50ミクロンの直径を有する、イッテルビウムがドープされたYAG源クラスIV LASER Solution F-30ファイバーレーザーを使用して、空気中でマーク付けされた。2つの焦点距離160mm及び330mmが使用された。レーザーの機能は、ファイバーレーザーに直接接続された制御ユニットによって管理された。
【0087】
溶融された製品ER1681の全多孔度は、2.5%である。
【0088】
溶融された製品ER1681は、AZS溶融された製品の慣用的なミクロ構造、すなわちシリケート結合剤相に結合されたZrOグレイン、を有する。
【0089】
マーク付けをする為に、各ブロックは、寸法が500mm×600mmの面上に配置され、及び、レーザービームは、反対側の面に沿って移動する。次に、該ブロックが観察される。
【0090】
マークが消去可能かどうかを観察する為に、該マーク付けされた部品が、800℃の空気中で24時間にわたって焼成に供され、該マークが消去されたかどうかが観察される。
【0091】
表1は、これらの観察の結果を示す。
【0092】
溶融された製品ER1681は、AZS溶融された製品の慣用的なミクロ構造、すなわちシリケート結合剤相によって結合されたZrOグレイン、を有する。
【0093】
【表1】
【0094】
本発明に従う実施例は、変数F及びVが関係式(1)に従うように選択される場合、該マークは、グラデーションのない均一な色と、非常に良好な読み易さを確実にするコントラストとを有する。
【0095】
本発明に従う実施例1aのパルス周波数よりも低いパルス周波数で行われた比較例1aは、消えないが読み易さが不十分なコントラストの付いたマーキングを有する。該マーク付けされた表面の平均粗さは、より高い。
【0096】
比較例2a及び2bの移動速度はそれぞれ、本発明に従う実施例2a及び2bに対して有意に修正された。それによって、該マークの読み易さは、かなり低下する。
【0097】
実施例1cと実施例1bとの比較は、パルス周波数Fの低減が、800℃で24時間の熱処理後にマークを消去可能にすることができることを示す。
【0098】
本発明に従う実施例3及び4は、マーク付けされる耐火性ブロックの表面に沿ってレーザービームの移動速度を変化させることによって、一定の周波数で、該マークが(本発明に従う製品について)消去可能にされることができることを示す。
【0099】
本発明に従いマーク付けされた部品の膨れに対する満足のいく挙動は、1100℃で30時間のソーダ石灰ガラスによる慣用的な膨れ試験で観察された。従って、本発明に従うマーク付けをする方法に従いマーク付けされた部品は、ガラス融解炉のライニングにおいて使用する為に好適である。
【0100】
今はっきりと明らかにされる通り、本発明は、実行が容易であるマーク付けをする方法を提供し、該方法は、耐火性セラミック部品の特性を変更することなしに且つ冶金又はガラス炉の耐火性セラミック部品に好適なマークを得ることを可能にする。
【0101】
言うまでもなく、本発明は、非限定的な例示として提供されている、記述された実施態様に限定されない。
図1
図2
図3